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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】荷電粒子源
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/08 20060101AFI20240913BHJP
   H01J 27/26 20060101ALI20240913BHJP
   H01J 37/073 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H01J37/08
H01J27/26
H01J37/073
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021069036
(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2021174772
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】20171308.8
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509316578
【氏名又は名称】アイエムエス ナノファブリケーション ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ゲルホルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー ルップ
(72)【発明者】
【氏名】マッティア カプリオッティ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュペングラー
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-349168(JP,A)
【文献】米国特許第06288401(US,B1)
【文献】特開2014-175104(JP,A)
【文献】特開2002-216686(JP,A)
【文献】特開平03-155029(JP,A)
【文献】特開平10-092358(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031399(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を荷電粒子ビームとして、放射方向(e)に沿って放射するように構成された荷電粒子源(100)であって、
荷電粒子源を高真空で作動させる、真空システム(121)に接続可能なハウジング(120)と、
放射方向に沿って、特定の粒子種の荷電粒子を、放射するように構成されたエミッタ表面(111)を持つ、エミッタ電極(101)と、
前記エミッタ電極(101)に対して、前記荷電粒子の電荷とは反対の符号の静電電圧が印加されるように構成され、前記放射方向に沿ってエミッタ表面の下流側の位置に、エミッタ開口部(113)を備えた対向電極(103)と、
エミッタ表面(111)とエミッタ開口部(113)との間として定義される線源空間(110)と、
ウェーネルト型のサプレッサ電極(102)、但し、前記サプレッサ電極(102)は前記エミッタ電極(101)と前記対向電極(103)との間に配置され、前記サプレッサ電極は、前記エミッタ電極に対して制御電圧が印加されるように構成され、かつ、前記放射方向(e)に沿って前記エミッタ電極の下流側の位置に開口部を有する、
を備え、
荷電粒子源(100)は、中心軸(cx)に沿った基本的な全体的回転対称性を備え、放射モードで作動可能であり、荷電粒子がエミッタ表面(111)から放射されエミッタ電極(101)と対向電極(103)との間に電圧が印加されて、電界が発生しその結果荷電粒子に作用する力が発生し、放射方向(e)に沿って開口部を通って荷電粒子の少なくとも一部を対向電極に向かって加速し、
荷電粒子源はさらに、
エミッタ電極と対向電極の間に設けられた線源空間(110)を半径方向において囲むように配置された少なくとも一つの調整電極(104,105,106,107)を備え、各調整電極はエミッタ電極(101)及び/又は対向電極(103)に対して制御された静電圧を印加されるように構成され、
少なくとも一つの調整電極(104,105,106,107)は、前記サプレッサ電極(102)から離隔されたステアリング電極であって、意図しない二次荷電粒子(sc)をエミッタ表面(111)から強制的に遠ざけるように構成された、線源の回転対称性を破壊する形状を有し、線源の電位の半径方向の軸対称性を中断するステアリング電極を備える。
【請求項2】
記サプレッサ電極は、前記対向電極(103)のエミッタ開口部(113)と同心をなすウェーネルト電極開口部を含むリング電極である
請求項1の荷電粒子源。
【請求項3】
前記サプレッサ電極(102)は前記エミッタ電極に近い位置に配置されている、
請求項の荷電粒子源。
【請求項4】
前記サプレッサ電極線源の半径方向の軸対称性から逸脱した形状(geometry)を備え、
前記サプレッサ電極は、中心軸(cx)に対して所定のゼロでない変位で配置された対称軸(18X2)を備えるサプレッサ電極であるシフトサプレッサ(1802b)である、及び/又は
対称軸(18X1)を持つサプレッサ電極であって、中心軸(cx)に対してゼロではない所定の角度で傾斜して配置されている傾斜サプレッサ(1802a)、である、
請求項の荷電粒子源。
【請求項5】
前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極が変位電極(901)である、すなわち開口部(901a)を備え、該開口部は開口部軸(ax)に沿って延び、開口部軸は中心軸(cx)からゼロではない所定のまたは調整可能な距離(p09)だけ変位して配置された電極である、
請求項1乃至4いずれか一の荷電粒子源。
【請求項6】
前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極はシアード(sheared)電極(1000)である、すなわち開口部(1001a)を備え、該開口部は開口部軸(ax)に沿って延在し、開口部軸は中心軸(cx)からゼロではない所定のまたは調整可能な角度(p10)だけ傾斜した電極である、
請求項1乃至5いずれか一の荷電粒子源。
【請求項7】
前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極はランプ電極(1101)である、すなわち開口部(1101a)を備え、中心軸(cx)の方向に沿って測定された変化する厚さを備え、前記厚さは、中心軸(cx)に対して互いに対向する位置で、ゼロではない所定のまたは調整可能な最大ステップサイズ(p11)だけ異なる最小値と最大値との間で変化する電極である、
請求項1乃至6いずれか一の荷電粒子源。
【請求項8】
前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極は傾斜電極(1201)である、すなわち開口部(1201a)を備え、本体軸(bx)が中心軸(cx)からゼロではない所定の又は調整可能な角度だけ傾斜した電極である、
請求項1乃至7いずれか一の荷電粒子源。
【請求項9】
放射方向に沿って傾斜電極の下流に位置する、請求項5に記載の変位電極である少なくとも一の第二のステアリング電極をさらに備える、
請求項8に記載の荷電粒子源。
【請求項10】
前記変位電極は、放射方向(e)に沿って傾斜電極の直後に位置する、
請求項9に記載の荷電粒子源。
【請求項11】
前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極は楕円電極(1301)であり、即ち、
前記楕円電極は楕円形の開口部(1301a)を有する電極であり、
前記楕円形の形状は、直交する二つの主軸(p13a、p13b)の長さによって定義され、
直交する二つの主軸の前記長さの所定の比率r13=p13a/p13bは1とは異なる、
請求項1乃至10いずれか一の荷電粒子源。
【請求項12】
前記ステアリング電極、または複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つのステアリング電極は、少なくとも二つのセクタ電極(701、702、703、及び704)で構成される分割電極(700)であり、
前記セクタ電極は、真空又は誘電体材料からなるギャップ(705)により分離されており、
分割電極のセクタ電極は個別に電源供給システム(157)に接続され、相互に異なる電位が印加されるように構成されている、
請求項1乃至11いずれか一の荷電粒子源。
【請求項13】
少なくとも一つの電極(1504、1505、1505)又は少なくとも一つのステアリング電極は、電極の位置を調整するための圧電アクチュエータ(1511、1525、1531、1535)を備え、
前記アクチュエータは、中心軸(cx)に対して電極をシフトし傾斜させるように構成されている、
請求項1乃至12いずれか一の荷電粒子源。
【請求項14】
少なくとも一つの電極(1602)又は少なくとも一つのステアリング電極が、中央開口部(1601a)を備えるリング形状の装着装置(1601)に装着されており、
前記開口部は、荷電粒子ビームが安定して伝播する電極(1602a)の開口部を妨げないようにしながら、電極を装着できるような十分な幅を有し、
前記電極は前記装着装置(1601)に接続するように構成された少なくとも3つのコネクタ(16A、16B、16C)を備え、前記3つのコネクタは前記リング形状上に配置可能な三角形の頂点に配置され、
前記電極(1602a)の位置は前記リング形状に沿った角度方向に関して、前記リング形状上で調整可能である、
請求項1乃至13いずれか一の荷電粒子源。
【請求項15】
エミッタ電極(1701a, 1701b)は、エミッタ表面(111)の法線方向の軸(17X1)を有する電極であり、かつ、
シフトエミッタ電極(1701b)は、中心軸(cx)に対してゼロではない所定の変位の位置に対称軸(17X2)を持つ、シフトされたエミッタ電極(1701b)であり、及び/又は
傾斜エミッタ電極(1701a)は、中心軸(cx)に対してゼロではない所定の角度で傾斜して配置された対称軸(17X1)を持つ、傾斜エミッタ電極である、
請求項1乃至14いずれか一の荷電粒子源。
【請求項16】
荷電粒子ビーム装置に装着されるように構成されており、
装着された状態における荷電粒子源の中心軸が、前記荷電粒子線装置の前記全体的な対称軸(cx)と一致するように構成されている、
請求項1乃至15いずれか一の荷電粒子源。
【請求項17】
請求項1乃至16いずれか一の荷電粒子源を備え、
荷電粒子を用いたナノパターニング又は検査に適することを特徴とする、
荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年4月24日に出願された欧州特許出願第20171308.8号についてのパリ条約上の優先権の利益を主張するものであり、当該出願の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【0002】
本発明は、荷電粒子ナノパターニング装置や検査装置、特にマルチビーム装置の一部として使用するのに適した荷電粒子源、に関するものである。より具体的には、本発明は、荷電粒子、特に電子を、放射方向に沿って荷電粒子ビームとして放射するための荷電粒子源に関するものであり、荷電粒子源は以下の構成を有する:
―真空システムに接続可能であり、荷電粒子源を高真空で動作させることができるハウジング、
―エミッタ電極(即ち、荷電粒子が正電荷を持つか負電荷を持つかにより、エミッタは陽極または陰極のいずれかになる)であって、特定の荷電粒子種(電子など、しかし代わってイオン、特に正の電荷を有するイオンも可能である)の荷電粒子を、放射方向に沿って放射するように構成された、エミッタ表面を有するエミッタ電極、
―対向電極であって、前記荷電粒子の符号と反対の符号で、前記エミッタ電極に対して静電電圧が印加されるように構成されており、前記放射方向に沿って前記エミッタ面の下流側の位置にエミッタ開口部を有する対向電極、及び
―前記エミッタ電極と前記対向電極との間の空間(線源空間ともいう)。
【背景技術】
【0003】
特に、このような荷電粒子源は、放射面から荷電粒子を放射し、エミッタ電極と対向電極との間に電圧を印加することにより、電界を発生させて荷電粒子に力を作用させ、荷電粒子の少なくとも一部を対向電極に向かって加速させ、放射方向に沿って開口部を通過させる、放射モードで動作することが好ましい。通常、荷電粒子の放射方向は、荷電粒子源の基本的な、回転対称性の軸(「中心軸」)と一致しているが、必ずしも一致している必要はない。放射とクリーニングの動作モードをよりよく制御するために、ここで議論されているタイプの荷電粒子源は、通常、エミッタ電極と対向電極の間のソース空間を取り囲むように配置された少なくとも1つの調整電極を有し、各調整電極は、エミッタ電極、及び/又は、対向電極に対して制御された静電電圧を印加されるように構成されている。
【0004】
このタイプの荷電粒子源は、例えば半導体基板のナノパターニングや、検査を行う荷電粒子マルチビームツールの、粒子ビームを生成する粒子源として使用される。
【0005】
本出願人は、荷電粒子マルチビーム装置を実現し、対応する荷電粒子光学系、パターン定義装置、マルチビームライティング方法を開発した。特に50keVの電子マルチビームライタは、193nm液浸リソグラフィ用の最先端の複雑なフォトマスク、EUVリソグラフィ用のマスク、ナノインプリントリソグラフィ用のテンプレートを実現した。本出願人のシステムは、eMET(electron Mask Exposure Tool)またはMBMW(multi-beam mask writer)と呼ばれ、6"マスクブランク基板の露光に使用されている。また、PML2(Projection Mask-Less Lithography)とも呼ばれ、シリコンウェハ基板上のEBDW(Electron Beam Direct Writer)アプリケーションに使用されている。また、マルチビームコラムと書き込み方式は、マルチビーム検査用途にも使用できる。
【0006】
図2はマルチビームライタータイプのリソグラフィ装置と、その主要な構成要素を示す概略図である。このタイプのリソグラフィ装置は、本出願人のUS 6,768,125, EP 2 187 427 A1 (= US 8,222,621) 、及び EP 2 363 875 A1 (= US 8,378,320) などの先行技術で、良く知られている。以降では、当業者が本発明を実施できるように、本発明を説明する際に必要な詳細のみを記載している。明確化のため、図2では構成要素は実際のサイズで示していない。
【0007】
リソグラフィ装置1の主要な構成要素は、荷電粒子ビームの光軸cxに沿った位置に対応して本実施例では垂直下方に向かって、照射システム3、パターン定義システム4、投影システム5、ターゲットステーション6がある。
【0008】
装置1の全体は真空ハウジング2に格納されており、一般的には高真空に維持されているが、それだけではなく、ビームが妨げられずに伝播するようになっている。本明細書における「高真空」とは0.1×10^-3Pa未満の圧力の真空を示すために使用される。ハウジング2の内部が高真空になっていても、残留ガスが残っている点は強調しておく。
【0009】
パターン定義装置は、ビームを照射ビームibと、パターン化されたビームpbの2つの部分に分割する。本装置の荷電粒子光学系、すなわち、ビーム照射システム3と投影システム5は、静電レンズ、及び/又は、磁気レンズを用いて実現されている。
【0010】
本例のビーム照射システム3は、本発明の対象の一つである荷電粒子源7、ビーム調整システム8、及び集光レンズ系9を備える。なお、本出願人が実現した装置では電子を使用しているが、一般的には、荷電粒子源が利用可能であれば、例えば、水素イオンやより重いイオン、荷電原子クラスタ、荷電分子など任意の電気的な荷電粒子を使用することができる。
【0011】
以下の記述では一般性を失うことなく、電子に関して荷電粒子源を記述するので、正の電荷による荷電粒子については反対の電荷であると理解される。これにより説明が容易になり、当業者であれば、例えば、すべての電荷を逆転することにより、代わりにイオンを使用する装置を配設するなどのように、記述を変更することができる。
【0012】
整合システム8は、定義されたエネルギー、典型的には数keV例えば5keVのビームを中心軸cxに整合(アライン)する。集光レンズシステム9により、線源7から放射された荷電粒子は、照射ビームibとして機能する広範囲の粒子ビーム50に形成される。この照射ビームibは、開口部24(図3)と呼ばれる複数の開口部が設けられた複数のプレートから構成されるパターン定義システム4に照射される。パターン定義システム4は、照射ビームibの経路内の特定の位置に保持されており、照射ビームibは複数の開口部を照射し、「ビームレット」と呼ばれる多数の小さなビームまたは光線に分割される。
【0013】
図3を参照すると、パターン定義システム4上のいくつかの開口部24は、透過するビームの部分(ビームレット51)がターゲット16に到達するという意味で入射ビームに対して透明である「スイッチオン」又は「オープン」と呼ばれる状態であり、他の開口部はビームの対応する部分(ビームレット52)がターゲットに到達できないという意味でビームに対して非透明(不透明)である「スイッチオフ」又は「クローズ」と呼ばれる状態である。
【0014】
パターン定義システム4から出てくる照射ビームibは、パターン化されたビームpbに構造化され、スイッチオンされた開口部(パターン定義システム4の、照射ビームibに対して透明である唯一の部分であり、ターゲット16上に露光されるパターンに従って開口部が選択される)のパターンとして構成される。ビームレットの「オン/オフの切り替え」は、通常、ある種の偏向によって実現されることに留意しなければならない。これは、パターン定義システム4のプレートの1つに設けられた偏向配列(ないし装置)(deflection arrangement)によって実現されることができる。「スイッチオフ 」ビームレットは小さな角度で偏向されるため、ターゲットに到達することはできず、リソグラフィ装置のどこか、例えば吸収プレート11(ストップアパーチャプレートとも呼ばれる)によって吸収されるだけである。
【0015】
パターン化されたビームpbで表現されたパターンは、電磁気光学投影システム5によってターゲット16に投影され、「スイッチオン」された開口部(複数)の画像を形成する。投影システム5は例えば200:1スケールの減光も実行し、ビームは複数のクロスオーバーたとえば図2に示すような2つのクロスオーバー点c1、c2を持つことができ、最終的にターゲット上により小さな画像を形成する。ターゲット(「基盤」または「マスク」とも呼ばれる)は、例えば6’’マスクブランク又は粒子感応レジスト層17で覆われたシリコンウェハであっても良い。ターゲットはチャック15によって保持されターゲットステージ14によって位置決めされ、いずれもターゲットステーション6に構成されている。
【0016】
リソグラフィ装置1、及び関連する処理、及び書き込み方法、などの粒子ビーム書き込み又は検査装置の操作は、例えば、本出願人のUS9,053,906、US6,768,125、US8,222,621、及びUS8,378,320において公開されており、これらの文書の開示内容は、参照により本明細書に含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】US6,768,125
【文献】EP2187427A1
【文献】US8,222,621
【文献】EP2363875A1
【文献】US8,378,320
【文献】US9,053,906
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ビームの主要のパラメータの一つである電流密度は、装置の運転中にモニターされ制御される。電流密度とは、単位時間内に選択した断面を通過する荷電粒子の量であり、ターゲットへの線量率(dose rate)を決定する。この電流密度を維持することにより、装置の動作を安定させることができる。ターゲットに到達する各ビームレットの線量率は、装置の光学的対称軸cxに直交する平面に対するビームの局所的な電流密度に関連しており、第一近似として、光軸からの半径方向からの距離に第一義的に依存する関数である。一般に電流密度は回転対称の関数であり、これに欠陥が生じると局所的な位置依存成分が加わるが、これは例えば局所的な異方性から生じる。後者は、例えば、電極の不均一性、装置内の汚染、またはハウジング2内に存在する残留ガス及びイオン、その他多くのものが考えられる。設計上の線量率と運用上の線量率との差などの線量率誤差を低減する方法は、例えば、US9,053,906、US6,768,125、US8,222,621、US8,378,320で説明されている。
【0019】
例えば残留ガスや電極表面から生じる粒子やイオンは、例えば発光材料の浸食を促進したり汚染したり構造欠陥を与えることにより、エミッタ電極の寿命に影響を与える。システムを高真空で動作させることでこれらの影響を低減できるが、完全に排除することはできない。エミッタ電極表面の汚染、及び/又は、構造の浅い欠陥に起因する荷電粒子源の欠陥は、表面を処理することにより低減できる。エミッタ電極表面の汚染物を除去したり前記表面のスパッタリングを低減したりすることで、装置の効率や稼働時間を向上できる。例えば残留ガスを利用したり、例えば出願人のEP 3 518 268(=US 2019/0237288)に記載されているような荷電粒子源をクリーニングする方法の目的で特定のガスを注入したり、あるいは電極の表面、例えばエミッタ電極の表面を意図的に一定のレベルまでスパッタリングしたりできる。
【0020】
線源空間における残存粒子による汚染やスパッタリングは、線源のデザインを悪化させる可能性がある。例えば逆の電荷をもつ粒子に対して電界が与える力は逆向きになる。そのため放射された荷電粒子を誘導及び加速するためのエミッタ表面近傍の電界は、逆向きの荷電粒子にも作用することになる。電界の展開や粒子の加速は線源空間で行われるため、例えば荷電粒子線源の設計段階では、この空間を無視できない。そのため、荷電粒子源の空間内では、荷電粒子源が対象とする荷電粒子と逆の電荷を持つ荷電粒子がエミッタ電極表面に投影される可能性がある。
【0021】
上記の観点から、本発明の目的の一つは、線源の稼働時間向上に関して設計が最適化された荷電粒子源を提供することで、線源が使用される装置の、全体的な動作時間を向上させることである。同時に、均質なビーム生成及び対称的な電流密度分布、全体を通した放射電流の安定を維持することが望まれる。これにより、例えば放射方向の不整合などにより、線源が最適に作動しない場合に線源を分解する必要がなくなり、特に荷電粒子線源7を粒子線源1から物理的に取り外す必要がなくなる。
【0022】
さらに、二次的な(そして意図しない)荷電粒子が上記の変更された経路を通って放射面から遠ざかることで、線源空間内の残留ガスやその他の汚染物質からの二次的な反対の電荷の荷電粒子によるスパッタリングや浸食など、一般的な線源劣化の意図しないプロセスからエミッタ表面を保護することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第一の視点によれば、荷電粒子を放射方向に沿って荷電粒子ビームとして放出するように構成された荷電粒子源が提供される。前記荷電粒子源は以下を備える。
―荷電粒子源を高真空で作動させる、真空システムに接続可能なハウジング、
―放射方向に沿って、特定の粒子種の荷電粒子を、放射するように構成されたエミッタ表面を持つ、エミッタ電極、
―前記エミッタ電極に対して、前記荷電粒子の電荷とは反対の符号の静電電圧が印加されるように構成され、前記放射方向に沿ってエミッタ表面の下流側の位置に、エミッタ開口部を備えた対向電極、
―エミッタ表面とエミッタ開口部との間として定義される線源空間、
―ウェーネルト型のサプレッサ電極、但し、前記サプレッサ電極は前記エミッタ電極と前記対向電極との間に配置され、前記サプレッサ電極は、前記エミッタ電極に対して制御電圧が印加されるように構成され、かつ、前記放射方向に沿って前記エミッタ電極の下流側の位置に開口部を有する。
荷電粒子源は、中心軸に沿った基本的な全体的回転対称性を備え、放射モードで作動可能であり、荷電粒子がエミッタ表面から放射されエミッタ電極と対向電極との間に電圧が印加されて、電界が発生しその結果荷電粒子に作用する力が発生し、放射方向に沿って開口部を通って荷電粒子の少なくとも一部を対向電極に向かって加速し、
荷電粒子源はさらに、
―エミッタ電極と対向電極の間に設けられた線源空間を半径方向において囲むように配置された少なくとも一つの調整電極を備え、各調整電極はエミッタ電極及び/又は対向電極に対して制御された静電圧を印加されるように構成され、
少なくとも一つの調整電極は、前記サプレッサ電極から離隔されたステアリング電極であって、意図しない二次荷電粒子をエミッタ表面から強制的に遠ざけるように構成された、線源の回転対称性を破壊する形状を有し、線源の電位の半径方向の軸対称性を中断するステアリング電極を備える(形態1)。
本発明の第二の視点によれば、荷電粒子ベースのナノパターニング、又は検査に使用するのに適した荷電粒子ビーム装置が提供される。前記装置は、本発明に係る荷電粒子源を備える(形態17)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[形態1]
上記本発明の第一の視点を参照。
[形態2]
形態1に係る荷電粒子源において
記サプレッサ電極は、前記対向電極のエミッタ開口部と同心をなすウェーネルト電極開口部を含むリング電極である
ことが好ましい。
[形態3]
形態に係る荷電粒子源において、
前記サプレッサ電極は前記エミッタ電極に近い位置に配置されている、
ことが好ましい。
[形態4]
形態に係る荷電粒子源において、サプレッサ電極線源の半径方向の軸対称性から逸脱した形状(geometry)を備え、
前記サプレッサ電極は、中心軸に対して所定のゼロでない変位で配置された対称軸を備えるサプレッサ電極であるシフトサプレッサである、
及び/又は、
対称軸を持つサプレッサ電極であって、中心軸に対してゼロではない所定の角度で傾斜して配置されている傾斜サプレッサである、
ことが好ましい。
[形態5]
形態1乃至4いずれか一に係る荷電粒子源において、前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極が変位電極である、すなわち開口部を備え、該開口部は開口部軸に沿って延び、開口部軸は中心軸からゼロではない所定のまたは調整可能な距離だけ変位して配置された電極である、ことが好ましい。
[形態6]
形態1乃至5いずれか一に係る荷電粒子源において、前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極はシアード(sheared)電極である、すなわち開口部を備え、該開口部は開口部軸に沿って延在し、開口部軸は中心軸からゼロではない所定のまたは調整可能な角度だけ傾斜した電極である、ことが好ましい。
[形態7]
形態1乃至6いずれか一に係る荷電粒子源において、前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極はランプ電極である、すなわち開口部を備え、中心軸の方向に沿って測定された変化する厚さを備え、前記厚さは、中心軸に対して互いに対向する位置で、ゼロではない所定のまたは調整可能な最大ステップサイズだけ異なる最小値と最大値との間で変化する電極である、ことが好ましい。
[形態8]
形態1乃至7いずれか一に係る荷電粒子源において、前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極は傾斜電極である、すなわち開口部を備え、本体軸が中心軸からゼロではない所定の又は調整可能な角度だけ傾斜した電極である、ことが好ましい。
[形態9]
形態8に係る荷電粒子源において、放射方向に沿って傾斜電極の下流に位置する、形態5に記載の変位電極である少なくとも一の第二のステアリング電極をさらに備える、ことが好ましい。
[形態10]
形態9に係る荷電粒子源において、
前記変位電極は、放射方向に沿って傾斜電極の直後に位置する、
ことが好ましい。
[形態11]
形態1乃至10いずれか一に係る荷電粒子源において、前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極は楕円電極であり、即ち、前記楕円電極は楕円形の開口部を有する電極であり、前記楕円形の形状は、直交する二つの主軸の長さによって定義され、直交する二つの主軸の前記長さの所定の比率r13=p13a/p13bは1とは異なる、ことが好ましい。
[形態12]
形態1乃至11いずれか一に係る荷電粒子源において、前記ステアリング電極、または複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つのステアリング電極は、少なくとも二つのセクタ電極で構成される分割電極であり、前記セクタ電極は、真空又は誘電体材料からなるギャップにより分離されており、分割電極のセクタ電極は個別に電源供給システムに接続され、相互に異なる電位が印加されるように構成されている、ことが好ましい。
[形態13]
形態1乃至12いずれか一に係る荷電粒子源において、少なくとも一つの電極又は少なくとも一つのステアリング電極は、電極の位置を調整するための圧電アクチュエータを備え、前記アクチュエータは、中心軸に対して電極をシフトし傾斜させるように構成されている、ことが好ましい。
[形態14]
形態1乃至13いずれか一に係る荷電粒子源において、少なくとも一つの電極又は少なくとも一つのステアリング電極が、中央開口部を備えるリング形状の装着装置に装着されており、前記開口部は、荷電粒子ビームが安定して伝播する電極の開口部を妨げないようにしながら、電極を装着できるような十分な幅を有し、前記電極は前記装着装置に接続するように構成された少なくとも3つのコネクタを備え、前記3つのコネクタは前記リング形状上に配置可能な三角形の頂点に配置され、前記電極の位置は前記リング形状に沿った角度方向に関して、前記リング形状上で調整可能である、ことが好ましい。
[形態15]
形態1乃至14いずれか一に係る荷電粒子源において、エミッタ電極は、エミッタ表面の法線方向の軸を有する電極であり、かつ、
シフトエミッタ電極は、中心軸に対してゼロではない所定の変位の位置に対称軸を持つ、シフトされたエミッタ電極であり、
及び/又は
傾斜エミッタ電極は、中心軸に対してゼロではない所定の角度で傾斜して配置された対称軸を持つ、傾斜エミッタ電極である、ことが好ましい。
[形態16]
形態1乃至15いずれか一に係る荷電粒子源において、荷電粒子線装置に装着されるように構成されており、装着された状態における荷電粒子源の中心軸が、前記荷電粒子線装置の前記全体的な対称軸と一致するように構成されている、ことが好ましい。
[形態17]
上記本発明の第二の視点を参照。
【0025】
上であげた問題を解決するために、本発明者は、例えば、電極を変位(シフト)させたり、傾斜させたり、又は抽出システムの一般的な回転軸対称性に他の摂動を導入することにより、意図的に回転対称性を破壊する構成要素を導入することを提案する。この回転対称性の破壊により、線源内で修正された電位分布が得られ、その結果、粒子の軌道が変化する。本開示では、「回転対称性」及び「半径方向の対称性(radial symmetry)」を、相互に互換可能な用語として使用して、回転軸(中心軸など)に対して任意の角度で対称軸を中心に回転しても周囲に対する物体の幾何学的形状(geometry)が変化しない物体(object)(この物体は、例えば、粒子源の電極または電極(複数)の配列である)の幾何学的対称性を示す。上述したように、放射方向は、基本的な全体の回転対称性の軸と一致してもよい。本発明の多くの実施形態では、回転対称軸は、エミッタ開口部の対称軸と一致する。
【0026】
このように、荷電粒子源の電極は一般的に、中心軸に沿った基本的な回転対称性を全体的に持っているが、少なくとも1つの「ステアリング電極」、すなわち、例えば偏心した位置や配向に変位(シフト)させたり傾斜させたりすることで、粒子源の幾何学的な(基本的な)全体的な半径方向の軸対称性を中断する電極がある。この半径方向の対称性からの幾何学的な逸脱の結果として、電位の半径方向の対称性が破壊され、意図しない二次荷電粒子を放射面から遠ざける役割を果たすことができる。本開示では、「ステアリング電極」という用語は、常にこのタイプの電極を意味している。
【0027】
非回転対称のレイアウトと摂動(perturbations)については、Munro E., "Finite difference programs for computing tolerances for electrostatic lenses", J. of Vacuum Science & Technology B, 1988, pp.941-948に記載されている。本開示の中で、新規の抽出システムを備えた本発明による荷電粒子源は、既述のMunro E.の文献に記述されている条件で作動する。
【0028】
だが、電位の摂動や変化は、それが「意図したもの」であると否とにかかわらず、あらゆる荷電粒子に影響を与えることを理解する必要がある。荷電粒子をエミッタ電極の表面領域から遠ざける摂動は、反対に帯電した荷電粒子も遠ざけることになる。これは、適切に機能する構成を設計する際の課題となる。なぜなら、ビームの摂動や偏向が発生しても、線源の作動と品質の特徴を維持しなければならないためである。
【0029】
本発明では、完全な回転対称形の構成を意図的に放棄することを提案しており、これは、例えば、偏心させた開口部や傾斜させた開口部など、電極の形状、及び/又は、配向の対称性を崩すことで実現される。これにより、放射面の保護が大幅に改善され、ビーム特性が保持されるなどの相乗効果も得られる。本発明は、均一で安定した電流密度や、荷電粒子源からの半径方向軸対称の荷電粒子ビームの放射などの所望の特性を維持しつつ、構成の特徴をスマートに利用することで、いくつかの摂動技術を相乗的に組み合わせている。本発明の利点は、例えばエミッタ電極表面の放射領域など、保護すべき領域からの粒子の偏向によって所望の機能を維持することである。
【0030】
本発明による荷電粒子源は、エミッタ電極上に、荷電粒子が放射される表面を持っている。この表面は「放射面」と呼ばれ、また、線源の重要な構成要素であるため「保護されるべき領域」とも呼ばれる。この表面の特性はビームに、特にその均質性と電流密度分布について、直接的な影響を与える。したがって、本発明の1つの目標は、線源の作動モード全体を通して表面の状態を維持することである。
【0031】
本発明は言い換えれば、荷電粒子源に対して、幾何学的に半径方向に対称(radial symmetric)な設計からの逸脱をもって特別に構成した電極を設けることで、多極の性質の摂動による荷電粒子の局所的な偏向を発生させ、逆帯電(counter charged)の荷電粒子に相互に反対の影響を与えることを提案している。以下では、半径方向の対称性から特定の意図的な逸脱を有するこの種の電極を、「対称性破壊電極」または短く「ステアリング電極」と呼ぶ。これらのステアリング電極は、回転対称な線源の場合と同様に、荷電粒子の経路を放射方向に対応する直線から意図的に歪ませる。
【0032】
ここで、「基本的な全体の対称性」、特に「基本的な全体の回転対称性」という語は、粒子源が全体として見て、一般的な対称性を持つ形状であることを示すために用いられる(もちろん、許容範囲内の不正確さ(tolerance)に起因する偏差は無視する)。ただし、粒子源のいくつかの構成要素は、問題となる対称性、特に回転対称性から一定の偏差を持つことが可能であり、その結果、わずか(それぞれ小さな角度または小さな距離)ではあるが、全体的な対称性を崩すことになる。 すなわち、線源の典型的な寸法よりも、少なくとも一桁は小さい位置の変化を引き起こす量である。
【0033】
本発明の別の視点では、本明細書ではサプレッサ電極とも呼ばれる「ウェーネルト」(Wehnelt)型の制御電極をさらに含むことができる。このようなウェーネルト電極は、通常、エミッタ電極と対向電極の間、好ましくはエミッタ電極の近くに配置され、エミッタ電極の電圧に近い(すなわち、他の電極の電圧に比べて近い)範囲の電圧が印加される。荷電粒子の放射方向に沿ってエミッタ電極の下流側の位置に開口部を設ける。ウェーネルト電極の目的は、放射された粒子を制御し、集束させることである。
【0034】
ビームの整形や集束のために、エミッタ電極と対向電極の間に追加の電極を導入してもよい。これらの追加電極は、荷電粒子の放射方向に沿ってエミッタ電極の下流側に開口部が設けられており、それぞれ適切な電圧に保持されている。少なくとも1つの電極の電圧が、エミッタ電極、及び/又は、対向電極の電圧と異なる場合、ビームにレンズ効果が生じることになる。このように、電極スタックは「レンズ」と呼ばれることもある。本開示では、「レンズ」という用語は常に電気光学レンズ、又は磁気光学レンズを指す。
【0035】
線源の寿命を延ばすための改善は、例えば、相互作用プロセス、残留ガス、又は線源空間内の他の表面からの放射物などから生じる、二次荷電粒子による害から、前記放射面を保護することを主たる目的としている。
【0036】
本発明によれば、線源は1つ以上の「ステアリング電極」を含む。ステアリング電極は、「調整電極」の改良型であり、線源に追加したり、既存の設計による電極を置き換えたりできる。「調整」という用語は、例えば、調整可能な空間的位置、線源の任意の作動モードにおける調整可能な電位、及び/又は、特定の設計パラメータ(例えば、厚さ、開口部の半径、又は材料)の調整を意味する。
「ステアリング電極」とは、荷電粒子ビームの特性(荷電粒子の軌跡、ビームの空間的プロファイル、ビーム内の粒子密度の分布など)を調整するための関連電極の能力を意味する。
【0037】
任意の数の電極がステアリング電極として実装されてもよい。例としては、特に(それだけではないが)段差付、傾斜、楕円形、又は変位(shifted)した構成が挙げられ、電極の開口部は、円筒形、又は円錐形であってもよい。さらに、これらの形状のうち、荷電粒子線装置1の全体的な中心軸cxに対して傾いている任意の変形(ないし形態)が可能である。
【0038】
したがって、本発明の一つの視点(aspect)によれば、中心軸に沿った基本的な全体的回転対称性を有する、冒頭で述べたようなタイプの荷電粒子線源は、少なくとも1つの調整電極をさらに備えており、この調整電極は、意図しない二次荷電粒子を放射面から強制的に離すように構成された、線源の電位の半径方向の軸対称性を中断するステアリング電極である。
【0039】
本発明の第2の視点によれば、荷電粒子源は、エミッタ電極と対向電極との間に配置された(好ましくは対向電極よりもエミッタ電極に近い位置に配置された)ウェーネルト型のサプレッサ電極をさらに備え、このサプレッサ電極は、エミッタ電極に対して対向電極の制御電圧とは逆の制御電圧が印加されるように構成され、前記放射方向に沿ってエミッタ電極の下流側の位置に開口部を備えるものである。さらに、サプレッサ電極は、ソースの一般的な半径方向の軸対称性から外れた電極、すなわちステアリング電極であってもよい。具体的には、いくつかの実施形態では、サプレッサ電極は、(i)「シフトしたサプレッサ」であってもよく、これは、中心軸に対し所定の(すなわち、意図的に導入された、非零の)変位をもって配置された対称軸を有する電極であり、及び/又は、(ii)「傾斜したサプレッサ」は、対称軸を持つ電極が、中心軸に対して所定の(すなわち、意図的に導入された非零の)角度を持って傾斜して配置されているものである。
【0040】
この荷電粒子線源は、エミッタ電極と対向電極の間の線源空間を取り囲むように配置された少なくとも一つの調整電極を含むことができ、この調整電極は、エミッタ電極、及び/又は、対向電極に対して制御された静電電圧が印加されるように構成されており、少なくとも一つの調整電極は、意図しない二次荷電粒子を放射面から遠ざけるように構成された線源の電位の半径方向の軸対称性を中断するステアリング電極である。
【0041】
上述した両方の視点(aspects)により、一つ以上のステアリング電極の様々な実現方法が可能であり、それらはそれぞれ半径方向の対称性からの偏差の定義パラメータ(非零)の特定の種類に対応する。すなわち以下の通りである。
―変位電極であるステアリング電極、すなわち開口部を含む電極で、開口部は開口部軸に沿って延び、開口部軸は中心軸から所定のまたは調整可能な距離だけ変位して配置されており、この距離がこの種類のステアリング電極を規定するパラメータとなる。
―シアード(sheared)電極であるステアリング電極、すなわち、開口部を含む電極で、開口部は開口部軸に沿って延び、開口部軸は中心軸から所定のまたは調整可能な角度だけ傾いており、この角度がこの種類のステアリング電極を規定するパラメータとなる。
―ランプ電極であるステアリング電極、すなわち開口部を含む電極であり、中心軸の方向に沿って測定された厚さが変化する電極であり、中心軸に対して互いに反対側の位置で測定されたときに前記厚さが最小値と最大値の間で変化し、これらの値は所定のまたは調整可能な最大のステップサイズで異なり、このステップサイズがこの種類のステアリング電極を規定するパラメータとなる。
―傾斜電極であるステアリング電極、すなわち開口部を含む電極であり、中心軸から所定の角度または調整可能な角度だけ傾いた本体軸を有する電極であり、この角度がこの種類のステアリング電極を規定するパラメータとなる。
―楕円電極であるステアリング電極、すなわち実質的に楕円形の開口部を含む電極であり、前記形状は直交する二つの主軸の長さによって記述され、直交する2つの主軸の長さの比(r13=p13a/p13b)が1から異なり、この1からずれた比がこの種類のステアリング電極を規定するパラメータとなる。
【0042】
本発明の多くの実施形態では、二以上のステアリング電極が存在し、同じタイプのステアリング電極であってもよいが、様々なタイプのステアリング電極を任意に組み合わせて実施することもできる。本発明の有利な展開では、二以上のステアリング電極が、生成される粒子ビームの一次(primary)粒子への影響を相互に低減しつつ、望ましくない二次粒子への影響を強化するように組み合わされる。例えば、本発明者らは、変位電極と傾斜電極の組み合わせが特に有利でありうることを見出した。より具体的には、この変位電極は、放射方向に沿って見て、この傾斜電極の下流に位置していてもよく、さらに、前記変位電極は、傾斜電極の直後に、すなわち、他の電極のいずれも介在しないように位置していてもよい。また、前記傾斜電極は、放射方向に沿った下流側から見て、前記エミッタ電極よりも下流側の最初の電極であってもよい。
【0043】
本発明の有利な展開では、ステアリング電極は、少なくとも二つのセクタ電極で構成される分割電極であってもよく、前記セクタ電極(複数)は、真空または誘電体からなるギャップによって分離されている。分割電極の各セクタ電極は、それぞれ電圧供給システムに接続され、相互に異なる電圧が印加されるように構成されていることが好ましい。電圧供給システムは、多くの場合、分割電極のセクタ電極に複数の静電電圧を供給する電圧供給ユニットとして実現されるが、電圧供給ユニットを実現するために複数の供給ユニットを使用することも可能である。
【0044】
さらに、電極、特にステアリング電極の調整を可能にするために、電極の位置を調整するための圧電アクチュエータなどのアクチュエータを備えてもよい。これらのアクチュエータは、制御ユニットや制御可能なスペーサを介して、マウントインターフェースや同様の電極キャリア上で制御されてもよい。これらのアクチュエータは、中心軸に対して、例えば中心軸に平行、及び/又は、垂直な軸に沿って、電極を移動、及び/又は、傾斜させるように構成することができる。さらに、圧電アクチュエータへのバイアス電位は、それぞれの制御ユニットを介して、可変パラメータとして電圧供給ユニットから印加することができ、この電圧は、好ましくはその場所(in situ)で、すなわち線源配列を分解することなく調整される。
【0045】
ステアリング電極の装着及び中心軸周りの調整を簡単に行うには、電極を通過する荷電粒子(すなわちビーム)の伝播を阻害しないような中心開口部を持つ、ステアリング電極を実装できるリング形状の実装装置が有利である。さらに、電極には機器に装着するためのコネクタが少なくとも3つ備わっていても良い。これらの3つのコネクタは、三角形、好ましくは二等辺三角形、又は正三角形の頂点部に位置し、リング形状上に配置可能であり、電極の位置は、リング形状に沿った角度方向に関して、リング形状上で調整可能であることが好ましい(図16(A)、16(B)参照)。
【0046】
本発明のさらなる発展として、エミッタ電極は、中心軸に対して所定の角度で配向された軸を有する電極、及び/又は、中心軸から所定の変位でシフトした軸を有する電極として実現されても良い。
【0047】
すでに述べたように、本発明による荷電粒子源は、荷電粒子ビーム装置に装着されることを意図しており、好ましくは、装着された状態で、線源の中心軸は、前記荷電粒子ビーム装置の全体的な対称軸と一致している。より一般的には、線源の中心軸は、荷電粒子ビーム装置への荷電粒子の放射の一次方向を定める。この一次方向は、荷電粒子線装置内の荷電粒子線の公称経路の少なくとも最初の部分と一致する。
【0048】
本発明による電極、特にステアリング電極、又は荷電粒子源は、CNC機械加工又は同等の方法で製造することができる。
【0049】
以下では、本発明をさらに実証するために、図面に示されているような例示的かつ非制限的な実施形態の議論を述べる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の第一の好ましい実施形態による荷電粒子源の縦断面図であり、中心軸が垂直に示され、一次粒子と二次粒子の平均経路が示されている。例示した電極はステアリング電極のデザインを示している。
図2】公知技術であるリソグラフィシステムの縦断面図であり、図1の線源を好適に組み込むことができる。
図3】公知技術であるパターン定義システムの縦断面図である。
図4図1に示す種類の荷電粒子源において、中心軸が水平になるように傾斜電極とシフト電極を備えたステアリング電極配置により生ずる、電位の空間分布の相違を示すものであり、一次粒子と二次粒子の経路を例示している。
図5】稼働中(放射モード)の例示的な荷電粒子源における一次荷電粒子の平均経路に対するステアリング電極の効果を示しており、(A)は参照用として回転対称性を持つ配置を示しており、(B)及び(C)は二段階の実装配置の場合に二次粒子が放射面から遠ざかる方向へ偏向される構成を示している。
図6図5の(A)から(C)の例示的な粒子源における二次荷電粒子の平均経路に対するステアリング電極の効果を示したものであり、図6(A)は参考として基本的な半径方向の対称配置を示し(図5(A)に対応)、図6の(B)と(C)はそれぞれ図5の(B)と(C)に対応するステアリング電極配置を実施する2段階を示している。
図7】4つに分割された電極で構成されている分割電極を、透視図(A)、上面図(B)で示した図である。
図8】公知技術である回転対称電極を、上面図(A)、縦断面図(B)、透視図(C)で示した図である。
図9】本発明の一実施形態による変位電極を、上面図(A)、縦断面図(B)、透視図(C)で示した図である。
図10】本発明の一実施形態によるシアード電極を、上面図(A)、縦断面図(B)、透視図(C)で示した図である。
図11】本発明の一実施形態によるランプ電極を、上面図(A)、縦断面図(B)、透視図(C)で示した図である。
図12】本発明の一実施形態による傾斜電極を、中心軸に沿った上面図(A)、縦断面図(B)、及び、透視図(C)を示した図である。
図13】本発明の一実施形態による楕円電極を、上面図(A)、縦断面図(B)、及び、透視図(C)を示した図である。
図14】本発明の一実施形態による荷電粒子源の、縦断面図であり、電極の調整可能な装着装置を含む。
図15】三角形形状のステアリング電極を装着するための、偏心した装着装置の2つの実現例のうちの1つを、上から見た図である。
図16】三角形形状のステアリング電極の装着位置を決めるための、偏心した装着装置の2つの実現例のうちもう一方の実現例を、上から見た図である。
図17】傾斜エミッタ電極(A)と変位エミッタ電極(B)を、長手方向に沿った断面図で示した図である。
図18】傾斜サプレッサ電極(A)と変位サプレッサ電極(B)を、長手方向に沿った断面図で示した図である。
【実施例
【0051】
以下に示す本発明の例示的な実施形態の詳細な考察は、本発明の基本的な概念とさらなる発展を開示するものである。各例は、本発明を説明するために提供されるものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。特に、1つの実施形態の一部として図示または説明された特徴は、任意の他の実施形態(複数可)上でまたはそれと組み合わせて使用することができるため、さらに別の実施形態が得られる。本開示は、そのような変更及び変形を含むことを理解されたい。本発明は、以下で議論される実施形態に限定されないことに留意されたい。これらの実施形態は、例示的、説明的な目的のために与えられたものであり、単に本発明の好適な実施形態を示すに過ぎない。
【0052】
一般的に、同じ参照番号は、同一の構成要素を指す。一般的に、連続した図面の説明では、簡潔にするために相対的な相違点のみが記載されていることが理解されるであろう。図面に示された構造は、縮尺に忠実に描かれているのではなく、本発明とその実施形態を適切に説明するために必要に応じて示されている。システムの説明は、本発明をその場合に限定することなく、極座標を参照して行われる。
【0053】
ここで取り上げた実施形態は、荷電粒子源に関するものだけでなく、特定の電極や、荷電粒子源の一部としての電極についても説明している。本発明の特定の用途に適していると考えられるように、ここで議論した実施形態のいくつかまたはすべてを自由に組み合わせることは、当業者には明らかであろう。本開示を通して、「例えば」、「有利な」、「例示的な」、又は「好ましい」などの用語は、本発明またはその実施形態に特に適した(必須ではない)要素または寸法を示す。これらの要素及び寸法は、他に明示的に要求されている場合を除き、当業者が適切と考えるところであればどこでも変更することができる。
【0054】
さらに、粒子の「経路」として示される図中の直線や曲線は、「光線」又は「飛跡」とも表記できるが、これらは例示的なものであり、説明のためにのみ与えられたものである。本発明の線源において推定される電位近傍での荷電粒子の振る舞い、つまり方向、角度、粒子の拡がりは、図中では複雑さを軽減するために一般化されており、情報は容易に取り扱えるように削減されているため、当業者による荷電粒子の振る舞いの特定が可能である。これは本発明の基礎となる原理を理解するために必ずしも必要としないものであり、本来の経路がより複雑になる可能性がある事実や、物理計算やレイアウトの評価においてより精密さを要する事実を、あいまいにすることを目的としたものではない。
【0055】
荷電粒子源は、一以上の作動モードで作動するように構成されている。まず、一般的には放射モードで作動する。これはエミッタ電極と対向電極との間に電圧を印加することで放射面から発生した高エネルギーの荷電粒子が、放射方向e(図1)に沿って下流側の対向電極に向かって移動し、荷電粒子ビームが発生する。粒子源の空間に存在するガスは、例えば、残留ガスを含めた(周囲の)大気から発生するものや、荷電粒子源自体の表面から放射されるものなどがある。高エネルギーの荷電粒子はガスをイオン化し、イオンはスパッタリング、コンタミネーション、及び浸食などにより線源特に電極に干渉する可能性がある。
【0056】
意図しない残留ガスのイオンを含めたいずれかの種類の粒子、例えば、放射面から放射され加速された荷電粒子(「一次」と呼ばれる)は、例えばイオン化を介して線源の空間において残留ガスと物体との相互作用により他の荷電粒子(「二次」と呼ばれる)を生成する。以降では、(一般性を損なうことなく)二次荷電粒子は一次荷電粒子とは反対の電荷を持つ二次粒子を示し、線源空間を横断し特に一次荷電粒子の飛跡に沿って局所的電界の影響を受けて最終的には一次荷電粒子とは逆方向に加速される可能性がある。従って一般的にはこのような二次粒子は一次荷電粒子の放射源即ち、放射面へ向かって、又は、より電位の低い他の面に向かって進行する。一方、一次粒子と同じ符号を持つ二次粒子は、装置の下流方向にある装置例えば、すなわちパターン定義システム(図2における4を参照)に向かって進行する。局所的な電界や粒子の属性にもよるが、最終的にこれらはセットアップした装置に支障をきたすことになる。
【0057】
ステアリング電極の実装は、最終的に二次荷電粒子をエミッタ電極の放射領域から遠ざけるのに役立ち、一方で一次荷電粒子の飛跡に導入された摂動は、放射方向のさらに下流にある別のステアリング電極によって補償される。言い換えれば、電極により非回転対称な抽出システムを実現し、即ち、荷電粒子に影響を与える電位とその結果として派生する電界の摂動を導入することになる。その結果、(等)電位線は回転対称性からあるずれを生じ、すなわち回転対称性の軸から「ずれて」(steering off)しまい、かくて、全体的な回転対称性を破壊する。その結果粒子に(クーロン相互作用により)追加の力がかかり、これは一次リソグラフビーム(ib)を劣化させることはないが、二次カウンタビームを主として再方向付ける(redirect)。その一つの効果として、線源の寿命が延びる。原理的に放射面は、システム(系)内の残留粒子の負の効果のため、劣化から保存される。
【0058】
既述のMunro E.の論文には、有限差分プログラムを用いた静電レンズ部品の公差の計算が記載されている。これらの公差(tolerance)は、静電レンズの電極を製造した際の意図しない変位、傾き、及び楕円率のことである。この記事では「スターロック(Sturrock)の原理」が紹介されており、電位の有効変化を次のように述べている。
【0059】
電極表面上の点Pをわずかな距離δrpだけ移動させたときの効果は、摂動されていない電極表面の電位を次の量だけ変化させることでシミュレートできる。

【0060】
表面は極座標 (r,θ,z)で記述され、表面上の任意の点Pにおけるポテンシャル勾配は次のようにして与えられる。


ここで (i, j, k) は、例えば電極のような表面上の座標の直交基底である。これをMunro E.が、変位、傾斜、楕円率から得られる摂動と組み合わせて、摂動ポテンシャルδΦを次のようにして得ることができる。
変位から得ることにより

傾斜から得ることにより、

そして楕円率から得ることにより、

【0061】
上述の摂動は、基本的に全体的に半径方向対称な静電位に対し、小さな変動分を遠ざけるように利用される。これらの摂動は、二次荷電粒子がエミッタ電極上の放射領域から遠ざかるような荷電粒子源の設計を実現するために使用される。
【0062】
本発明の実施形態に関する以降の説明をより明確にするために、用語や概念を以下に説明する。また、極座標を用いたシステムの記述も有用である。装置の主な構成要素は、荷電粒子ビームである。したがって、線源の中心となりツールの中心となる軸を「中心軸」(cx)と定義することで、これを図中のビームの1つの単純な近似として表記している。だが、以下でさらに説明するように、ビーム経路はこの軸からある程度逸脱する可能性がある。
【0063】
グローバルな極座標におけるZ軸は中心軸(cx)と同一である。特定の部品の形状を記述するには局所座標系が有用であり、特に局所極座標系においては、それぞれのZ軸が中心軸(cx)または中心軸から変位した(ずれた)軸、及び/又は、傾いた軸と一致するように選択することができる。
【0064】
電極には、金属または金属で覆われた材料で作られた、本体がある。電極にはビームの方向に関して上面と下面とがあり、粒子ビームを通過させるための開口部がある。局所的な「本体軸(bx)」は次のように電極の本体に定義出来る直線である。上側の中心点における法線と下側の面の中心点における法線が決定されこれら2つの法線が一致する場合、局所的な本体軸は単に一方の法線(任意に選択する)によって定義される。2つの法線が一致しない場合は平均化して局所的な本体軸を求める。具体的には、2つの法線が平行な場合には、その中間の平行線を局所的な本体軸とし、そうでない場合には2つの法線ベクトルの算術平均を局所的な本体軸の方向とし、その局所的な本体軸は、2つの法線の交点または最も近い距離の中間点を通る。
【0065】
本体の厚みは、上面と下面との間の距離である。厚みは位置の関数であっても良いし、パラメータ設計時に決定しても良い。一般的に本体軸は中心軸(cx)に一致する。
【0066】
電極の開口部は、開口部軸(ax)をZ軸として指定された、極座標形式によって記述される。この軸は、各開口部について上面の開口部の中心と下面の開口部の中心を結ぶ直線として、局所的に定義される。さらに、開口部の形状は、開口部軸の周りで変化させても良い。多くの場合開口部軸(ax)は本体軸(bx)と一致する。
【0067】
先行技術では、荷電粒子源の多くは回転対称のビームを生成するように設計されているため、電極即ち本体と開口部も回転対称になっている。この発明の視点(aspect)に、非回転対称の電極を利用することがある。言い換えれば、本発明におけるステアリング電極の実装は、回転対称性に意図的な摂動を採用するものであり、すなわち抽出システムの回転対称性を破壊するものである。ステアリング電極は次のように実現できる。
- 変位電極(図9)、開口部のオフセットで、数値化している。
- シアード電極(図10)、開口部の傾斜角度で、数値化している。
- ランプ電極(図11)、本体の厚さ方向の傾きで、数値化している。
- 傾斜電極(図12)、本体軸の傾斜角度で、数値化している。
- 楕円電極(図13)、開口部のスケール比率で、数値化している。
また、上記の設計を適切に組み合わせたものや、従来技術である回転対称型の電極と適切に組み合わせたものなどもある。
【0068】
ステアリング電極とは通常は調整電極の一つであるが、例えばエミッタ電極、サプレッサ電極や対向電極のような、線源の他の電極であっても良い。以下では、この発明のいくつかの実施形態に従って、ステアリング電極の具体的な構成について記述する:
【0069】
変位電極とは開口部軸(ax)を本体軸(bx)から意図的に変位させた電極であり、軸を平行移動させたことを意味する。この変位は、電極の開口部を線源の対称軸から、あるオフセット分だけずらしたものであり、これがこの設計において定義されるパラメータである。電位によるステアリング効果は、既述のMunro E.の文献に記載されているように、シフトによって導入される効果によるものになる。
【0070】
シアード電極とは傾いた開口部を備える電極であり、開口部軸(ax)が本体軸(bx)に対して平行ではなく角度を持っていることを意味する。この傾きは電極の開口部を本体の対称軸から傾けたものであり、これがこの設計において定義されるパラメータである。電位によるステアリング効果は、既述のMunro E.の文献に記載されているように傾きによって導入された効果によるものになる。
【0071】
ランプ電極とは厚さが変化する電極であり、電極の厚さが均一ではないことを意味する。このランプは電極の本体を本体軸に対して対称的な設計から逸脱させたものであり、本体の厚さのステップサイズは、軸を基準と下対角線上の点間で最大となり、これがこの設計において定義されるパラメータである。ランプの高さすなわちステップサイズは、一定又は極角の連続関数とすることができる。電位によるステアリング効果は、既述のMunro E.の文献に記載されているように、傾きと変位によって導入された効果によるものになる。
【0072】
傾斜電極とは本体が傾斜した電極であり、本体軸(bx)が中心軸(cx)に対して平行ではなく角度を持っていることを意味する。この傾斜は電極本体を中心軸から傾けたものであり、これがこの設計において定義されるパラメータである。電位によるステアリング効果は、既述のMunro E.の文献に記載されているように傾斜によって導入された効果によるものになる。
【0073】
楕円電極とは楕円型の開口部を持つ電極であり、開口部軸(ax)に関して意図的に非回転対称な開口部を設けたことを意味する。局所的な軸(ax)に関して対称性から逸脱させるために楕円形の開口部を持つ。楕円は直交する二つの主軸の長さの比によって定義されるものであり、これがこの設計において定義されるパラメータである。電位によるステアリング効果は、既述のMunro E.の文献に記載されているように楕円形によって導入された効果によるものになる。
【0074】
上で示した種類のステアリング電極により、荷電粒子の軌道制御が改善される。先行技術の対称的な設計の電極も含めて組み合わせが可能であり、モジュール化されているため荷電粒子源への組み込みが可能である。ステアリング電極による摂動は、既述のMunro E.の文献に記載されているように、静電レンズの公差を計算するための有限差分プログラムを用いてモデル化することができる。
【0075】
本発明により、荷電粒子源の設計パラメータに関する自由度が向上し、荷電粒子ビームの軌道を調整することが可能となった。すなわち、一次ビームと二次ビームを同様に調整して所望の結果を得ることができる。また、荷電粒子源の空間に関連する「ダンプロケーション」(dump location)として機能する定義済みの要素即ち荷電粒子源を劣化させずに二次カウンタビームの荷電粒子を吸収するかまたはその他の方法で廃棄することが可能である。
【0076】
さらに、この発明における多くの有利な実施形態によれば、エミッタシステムの設計は基本的に装置の中心軸cxからの距離の半径方向の関数である荷電粒子ビームの特性の回転対称な分布を依然として提供することができる。一般的に、一次荷電粒子は、パターン定義装置4を照射する照射ビームibで均質な電流密度を提供することが望まれる。荷電粒子源で使用されるステアリング電極の数は様々であり得る。もちろん、さらなる利点を得るために、上記の電極に加えて、任意のさらなる電極、例えばサプレッサ電極、レンズ電極、対向電極が線源内に存在してもよい。
【0077】
さらにプロセスを改善し、カウンタビームが投影される位置をよりよく制御するために、一部の電極を「分割電極」として実現することが有利な場合がある。分割電極は、少なくとも2つ例えば4つまたは8つの「セクタ電極」で構成される。セクタ電極は静電電圧(同じ分割電極の他のセクタ電極とは異なっても良い)が印加されるように構成されており、その本体は電極の本体の一部であっても良い。そして、1つの分割電極に結合された全てのセクタ電極の本体は、隣り合う各分割電極の間に小さなギャップを備える電極を形成している。なお、隣り合うセクタ電極は、電位やデザインが異なっていてもよい。
【0078】
さらにこの分割電極は、放射面上の特定の領域にある粒子のイオン化を促進することにより、クリーニングモードのような他の運用モードでも使える。このクリーニングモードは、表面をスパッタリングし、大きな汚染を防止し、表面を改修するために使用することができる。また、電極は静電電圧を変化させることで放射面に衝突するイオン化粒子の強度を調整するように構成されていても良い。これは本出願人の文書EP 3 518 268 (= US 2019/0237288)に記載されているように、クリーニングモードの改善に使用することができ、これによりたとえば電流密度、角度歪み、開口数などのビームパラメータのより高い均質性を得ることができる。また線源の任意の動作モードにかかわる電極(ステアリング電極さらには分割電極も含む)の電圧を経時的に変えることできる。これは段階的に行うことが可能であり、各段階での電極への印加電圧は一定の時間保持される。電圧レベルと適切な持続時間は、クリーニング作用の所望のプロファイルを達成させるために適切に選択される。
【0079】
本発明による荷電粒子源は、電気的に荷電された粒子のビームによる露光によって、ターゲットの処理または検査を行うように構成された荷電粒子マルチビーム装置に使用できる。好ましくは、このような荷電粒子マルチビーム装置は、本発明による荷電粒子源に加えて、放射装置、パターン定義装置、及び投影光学系を含んでいてもよい。
【0080】
電極の寸法例として、例えば以下の数値が適切である。
- 電極の開口部の半径は、0.5mmから1.0mmの範囲内であること。
- ビーム方向に沿った電極の物理的寸法は、0.5mmから3mmの範囲内で選択される。
- 隣接する電極との間の物理的空間は、1mmから2mmの間で選択される。
これらの寸法はすべての電極で同一であっても良いし、個々の電極ごとに異なっていても良い。線源空間の寸法、すなわち放射面から対向電極の開口部までの距離は、例えば4mmから37mmの範囲内であっても良い。
【0081】
電極はチタン、モリブデン、あるいは、316Lステンレススチールなどの導電性材料で構成されていることが好ましい。分割電極の間隙705(図7(B))の寸法は、例えば0.1mmから0.5mmの範囲で選択されることが望ましい。この間隙は、ギャップ(「何もない空間」、すなわち真空)として実現されてもよいし、機械加工されたMACOR、Al2O3、または他のセラミックなどによる誘電体スペーサで充填されて実現されてもよい。
【0082】
ステアリング電極の設計パラメータ例として例えば以下の項目が適切である:
- 変位電極(図9)の変位(電極の本体軸bxと中心軸cxのオフセット)は、0.005mmから0.100mmの範囲にすることができる。
- シアード電極(図10)のシアード角(電極の開口軸axと本体軸bxとで測定された角度)は、5.0mradから50.0mradの範囲内にすることができる。
- ランプ電極(図11)のランプ高(開口軸axに対する対向点の厚さ)は、0.500mmから2.500mmの範囲内にすることができる。
- 傾斜電極(図12)の傾斜角(電極の本体軸bxと中心軸cxで囲まれた角度)は、5.0mradから40.0mradの範囲内にすることができる
- 楕円電極(図13)の楕円率(非円形の楕円またはより一般的な卵型の半径の比)は101%超であっても良い。
【0083】
電極の物理的寸法は、電極を通るビームeの有効な経路長を考慮して選択されており、通常は0.5mmから3mmの範囲になる。隣接する電極間の必要最小限のスペースは、割り当てられた電圧とその間にある誘電体材料とにより設計され、例えば真空破壊電圧によって決定される。また、電極の形状や面の設計も、上記のように考慮されて行われる。特定の設計を製造し実現するための基本コンセプトは当業者には周知であり、一般的に理解されているため、詳細な説明はしない。一般的な金属加工については確立されており、CNC機械加工やレーザー加工などで電極の輪郭や面を仕上げることが可能である。また、荷電粒子源とその電極の電圧構成を変化させることで付加的な作動モードのさらに適切な構成を実現できることは当業者には明らかである。設計パラメータは図中では必ずしも縮尺通りに示されていない。また、図面を見やすくするために細部は視覚的に誇張されている。
【0084】
図1は、本発明の一実施形態による荷電粒子源100を、装置1(図2)の中心軸cxに沿った長手方向の断面で、模式的に示したものである。荷電粒子源100は、荷電粒子ビームeの設計された放射方向に沿って荷電粒子を放射するように構成された放射面111を備えるエミッタ電極101と、サプレッサ電極102、すなわちウェーネルト・シリンダと、荷電粒子ビームeが当該電極を通過する下流側の位置に開口部113を備える対向電極103とを備えている。エミッタ電極101、サプレッサ電極102、及び開口部103を備える対向電極の適切な配置については、当業者には周知である。線源はハウジング120に配置されており、線源を装置1のハウジング2に接続できる(図2)。またこのハウジングは独自の真空ポンプシステム121に接続されており、装置1の真空システムを介して真空に維持されている。粒子源空間110は素粒子源での有効な空間を示しており、荷電粒子ビームeの飛跡はこの殻状部分の内部を通過するが、これは特定の荷電粒子の飛跡を示すものではなく粒子源とその電極を設計する上で注意を払うべき領域を示している。相互作用領域iは粒子源空間の部分空間であると推定され、一次荷電粒子eの近傍が例示されており、粒子が残留物質と相互作用することで、二次対荷電粒子scが出現する可能性がある。例えば、二次粒子は、高電界領域などの電極の表面部や突起部からも、発生する。ここではわかりやすくするために、一次荷電粒子ビームeに対して逆符号に帯電した二次粒子のみを、取り上げる。粒子源の設計や局所的な電界により、二次荷電粒子は、ビームscを形成することが可能である。図中のビームscは二次荷電粒子の例示的な経路を示しているが、図をわかりやすくするために簡略化している。電子源100には、複数の調整用電極が設けられており、これらの電極はレンズの電極スタックを形成している。ステアリング電極、即ち非回転対称で設計された電極の例を、本発明の一実施形態として104、105、106、107に例示した。電極104、105、106、107の順番は入れ替えることが可能であり、電極の位置や電位についても、変更が可能である。粒子源における電極、及び/又は、電極の一部は、静電電圧を供給する電源供給部157に、電気的に接続可能である。必要ならば個別の電極の各々について、個別に供給可能であり、及び/又は、電極のサブセットに対してグループ単位でソートして、供給可能である。図面を明確にするために、電源供給部157から粒子源100内の複数の電極への電気的接続ラインは示されておらず、理解しやすくしている。
【0085】
図1に示した荷電粒子源100の組み合わせ設計は、本発明の実施形態に含まれる多数の実施形態と設計を強調する例示的なものとみなすことができる。異なる種類の荷電粒子の軌道を修正、及び/又は、制御するために、電極104~107の一部を分割電極700(図7)として実現する場合がある。分割電極は誘電体のギャップで隔てられた2つ以上のセクタ電極で構成されている。多数(特に少なくとも3つ)の調整可能な電極104、105、106は個別レンズを含むことができる。調整用電極は、たとえば開口部を持つ導電性のプレートとして実現され、さらに誘電体のギャップによって分離され、すべて上で示したような寸法である。
【0086】
図2は、本発明の分野と先行技術の説明で既に述べたような、典型的なマルチビームライタとその主な構成要素2を示す概略図である。
【0087】
図3は、本発明の分野と先行技術の説明で上述したパターン定義絞りシステムとその主要構成要素4の概略図である。
【0088】
図4は、粒子源内の差電位(電位の高低差)を示す図であり、差電位ΔΦの等電位線をプロットしたものである。この差電位ΔΦは、非摂動状態(半径方向に対称な場合)の構成での電位と、ステアリング電極を、図面に示すように変位/傾斜させた構成との電位との差である。図4に示すデータは、cx軸に沿って縦方向に切断した断面(cx軸は水平に示されている)であり、ステアリング電極と回転対称電極の間の電位差をシミュレーションさせたものから得られた。具体的にはサプレッサ電極410、傾斜電極420、シフト電極430であり、これらは「ストレートな」(即ちコーン状の開口部もシア―状の開口部もない)電極を有している。また、軸のスケールは放射面111の法線に対する物理的な寸例に対応してmmで示されている。縦軸は荷電粒子源のグローバル極座標系の半径方向に対応する。ここであげたスケールはすべて例示的なものであり、正確な尺度である必要はないことを理解すること。また電極の位置、形状や大きさなども例示であり本発明を制限するものではない。
【0089】
Φを回転対称線源におけるポテンシャルとし、Φを非回転対称線源すなわち採用したステアリング電極におけるポテンシャルとした場合、差ポテンシャルはΔΦ=Φとして与えられる。さらにこの設計による一次荷電粒子ビームeと二次荷電粒子ビームscの両方に与える効果を、装置1の全体的な中心軸を表す図として示している。すべての電極部品は、図の上半分については添字「a」で示しており、図の下半分については添字「b」で示している。この図における「上」と「下」という語は物理的な位置を示すものではなく、図中の位置を示すだけであり、例えば装置内の上下の位置を示すものではない。このシミュレーションのために示したサプレッサ電極410(図4では2つに分割された410a及び410bが見えているリング電極である)は、軸cxに関して回転対称である。
【0090】
一方の電極420(図4で見えるのは断面部分420aと420b)は、本体が軸cx上の回転中心の周りに回転した傾斜電極である。回転軸は図の平面に対して垂直である。断面部分420aの上面421aがサプレッサ電極側に回転するように、傾斜すなわち図4における反時計回りの微小回転が行われている。同様に面422a、422bも傾いている。このようにして部分410bと420bとの間の距離は軸cxからの半径方向の距離が増加するにつれて広くなる。
【0091】
別の電極430(図4で見えるのは断面部分430aと430b)は、開口部が中心軸cxからずれている変位電極である。開口部は図面上では上方にずれているため、上側の部分430aは軸cxから離れ、下側の部分430bは近づいている。そのため、電極の軸(部分430aと430bの間の中央に位置する)と軸cxはもはや一致しない。
【0092】
図4はさらに放射面111から放射される荷電粒子ビームeの経路を示している。また、電極420の中心点から放射される二次荷電粒子の例示的な経路も示している。下流側では、ビームeは電極420の傾きによって導入された差電位により中心軸cxから歪んでおり、これにより、到来する二次荷電粒子のビームscも放射面111から離れる方向に曲げられている。この効果は本発明の実施形態において奨励されているものであり、すなわち二次荷電粒子ビームによる上述の損傷、たとえば汚染、スパッタリングまたはその他の悪影響から放射面111を保護するものである。
【0093】
図4の上図では一次荷電粒子のビームeが中心軸cxから外れるのを打ち消すために、電極430は図4では上向きにシフトしている。これにより図4ではビームeの別の偏向をもたらすさらなる差電位が導入される。このようにして一次荷電粒子ビームeは軸cx上へと方向転換され、その結果概ね回転対称であるビームプロファイルを回復できる。言い換えればビームは粒子源(図4には示されていない)の最終開口部113(図1)において回転対称である歪みと密度を有することができる。対照的に、二次粒子scは粒子源の横方向に向けられ、好ましくは「ダンプ位置」として機能する表面で吸収される。図1を参照すれば、二次粒子のダンプ位置として機能する表面は、粒子源の内部の構成要素として配置されていても良い。
【0094】
図5の(A)~(C)及び図6の(A)~(C)は、従来技術のような回転対称性のある設計を回転対称性のない設計に置き換えるという本発明の主旨を示している。これは開発を反復的に行うことによっても行える。より分かりやすくするために、一次荷電粒子ビームeと二次荷電粒子ビームscへの影響を別々の図に分けている。図5の(A)~(C)は一次荷電粒子ビームeのみへの影響を、図6の(A)~(C)は二次荷電粒子ビームscのみへの影響を示している。この段落の次のセクションでは記号aは図5(A)と図6(A)の両方を意味し、同様に記号bとcはそれぞれ図5(B)と図6(B)、図5(C)と図6(C)を意味している。より分かりやすくするために図は構成の一部のみを示している。すなわち電極502、503、504、505、装置1の中心軸cx(図2)、及び放射面111である。変位や傾斜角といった「ステアリング」のパラメータを定義するための寸法は、大きく誇張されており強調されている。
【0095】
図5(A)に示されている先行技術から出発すると、電極502~505は、軸cxに対して回転対称の位置にあり、回転対称のデザインとなっている。放射された荷電粒子は放射面111から放射される一次荷電粒子ビームを形成する。二次粒子は一次ビームのどの位置でも発生する可能性があるが、図6(A)では例示的な相互作用領域iから発生する二次荷電粒子のみを示している。一次ビームと同符号の電荷を持つ荷電粒子は対向電極504に引き寄せられ、軸cxに沿って下流側に移動する。これに対し、反対の電荷を持つ二次荷電粒子例えばeMETの電子エミッタの場合は正電荷のイオンが放射面111に向かって移動する。この初期状態では二次荷電粒子は「保護されるべき領域」である放射面に向かって伝播し、深刻なダメージを与える。そこで、図5(B)に示すように、次の段階のレイアウトでは電極の位置や向きを換えることで電位を回転対称の軸から「誘導(ステアリング)」する(つまり回転対称性からのわずかなずれを加える)。例えば電極504は軸cx上の回転中心点を中心としてある角度a4だけ傾いている。これがステアリング電極504bとなる。このステアリング電極の定義するパラメータは、電極本体の中心を示す本体の軸bx4(電極本体の軸として記されている)と粒子源の中心軸cxとの間で定義される角度a4である。このように電極を傾けることで電位の傾きが生じ、その結果一次荷電粒子ビームeは電極504bに適切な電圧が印加されていると仮定すると、図面上では傾きの方向である上向きに偏向することになる。そして図6(B)を参照すると、反対の電荷を持つ二次対荷電粒子ビームscは、「保護すべき領域」から離れる方向、即ち放射面111から下方に偏向されることになる。次の段階では一次荷電粒子ビームeへの影響が補正される。これは例えば図5(C)や図6(C)の上方に向かって電極505をシフトさせた電極505cの位置に向かってシフトさせることで実現できる。このステアリング電極の特徴的なパラメータは変位d5であり、電極の本体軸bx5と装置の軸cxとの間のオフセットとして定義される。電極を移動させることで電位のさらなるステアリングが可能になる。従って、電極505cに適切な電圧を印加することにより、一次荷電粒子ビームeは再び今度は下方に変更され、軸cx上に戻り、従って最終的には好ましくは中心軸cxに沿った、荷電粒子源の最終的な開口部113(図1)の方向に向かうことになる。
【0096】
図7の(A)と(B)はステアリング電極である分割電極700の一実施態様であり特に変位電極(図9)を示したものである。これはセクタ電極701、702、703、704に分割される。一つの分割電極のセクタ電極は、異なる極角に配置されており、すなわち中心軸cxの周りに回転されており、例えば適切な誘電体材料で作られた隔離ギャップスペーサ705によって接続されている。電源供給部157は高電圧源であり、分割電極の様々なセクタ電極701~704に対して異なる電圧を供給できる。セクタ電極は個々の電圧で電気的にバイアスをかけられるように電圧供給源に接続されている。セクタ電極は個々の静電電圧で電気的にバイアスをかけられるように電源に接続されており、必要に応じて複数の電極またはすべての電極の電位についてバイアスできる。このように、分割された電極によって「単極」モードに加えて「多極」モードを実現できる。単極モードとは、分割電極のすべてのセクタ電極が同じ電位を共有するモードであり、多極モードとは、セクタ電極が一般に異なる電圧を印加されるモードと定義される。
【0097】
分割電極を構成するプレート(セクタ電極)の数は、与えられた要件に関して適切に変化させることができる。代表的で実現可能な分割電極の数は、例えば、2~12の偶数である。
【0098】
図8の(A)~(C)は、荷電粒子源で用いるための、先行技術での回転対称電極を、上面図(図8(A))、中心軸に沿った縦断面図(図8(B))、透視図(図8(C))で示したものである。このような電極は、前述の発明の分野と先行技術の説明で述べたように、典型的なマルチビームライタの荷電粒子源に使用されている。この電極801は、従来のレイアウトに従って、中心軸cxに対して回転対称となっている。製造及び設計に関する関連する詳細は、当業者に知られており、一般的に理解されている。
【0099】
なお、現実的な実装では、エミッタ電極101、対向電極103、サプレッサ電極102を含む電極104~107は、一般的には中心軸cxに対して回転対称の電位を与えることができるが、実装の詳細に応じて、ここで示したようなより複雑な形状で実現してもよいと考えられる。さらにまた、これらの電極104~107は、ステアリング電極であってもよい。
【0100】
以下の図では、本発明の枠組みの中で、異なるステアリング電極の様々な例を示す。これらの図では、中心軸をcx、それぞれの本体軸をbx、開口部軸をaxで示している。図面に示された中心軸cxは、例えばマルチビームライタツールのような、荷電粒子ビーム装置の一般化された回転対称軸を示しており、電極スタック(積み重ね)において複数の電極の整合(アラインメントないし光軸合わせ)を行うリファレンスとして用いることができる。
図8の(A)~図13(C)は、3つ組毎の図面になっており、左側の図(図8(A)~図13(A))は上面図、中の図(図8(B)~図13(B))は縦断面図、右側の図(図8(C)~図13(C))は透視図をそれぞれ示している。これらの図面における寸法やスケールは、それぞれの実施形態の原理を解明するための単なる例示であり、縮尺や大きさを示すものではなく、また本発明を制限するものと解釈されるものでもない。製造工程が説明されている場合の説明は例示的なものであり、当業者であれば機械加工において適切な変更を想定できるであろう。本発明によるステアリング電極を用いた線源は、本発明の分野及び先行技術の説明で既に述べたように、マルチビームライタの荷電粒子源に使用できる。
【0101】
図9の(A)~(C)は、荷電粒子源で用いるための、本発明の一実施形態における変位電極を示す。変位電極901は中心軸cxに対して非回転対称であり、開口部901aを持つ。設計におけるパラメータは、中心軸cxと、本体軸900bxと一致する開口部軸900axとの間で測定される物理的変位p09である。
【0102】
図10の(A)~(C)は、荷電粒子源で用いるための、本発明の一実施形態におけるシアード電極を示す。シアード電極1001は中心軸cxに対して非回転対称であり、開口部1101aを持つ。設計におけるパラメータは、中心軸cxと一致する本体軸1100bxと、開口部軸1100axとで測定されるシアード角p10である。
【0103】
図11の(A)~(C)は、荷電粒子源で用いるための、本発明の一実施形態におけるランプ電極を示す。ランプ電極1101は中心軸cxに対して非回転対称であり、開口部1101aを持つ。設計におけるパラメータは、中心軸cxと一致する開口軸1100axと本体軸1100bxを基準にして測定される電極開口部の対向する位置における電極の厚さの、最小値と最大値との差である、ランプ高p11である。電極の厚さは、中心軸cxに関して互いに対向する位置で最小値と最大値の間で変化しても良く、厚さの最小値と最大値の位置の接続線に沿った変化は、図11(B)で示すように線型、階段状線型、または一般的に単調増加関数であっても良い。
【0104】
図12の(A)~(C)は、荷電粒子源で用いるための、本発明の一実施形態における傾斜電極を示す。傾斜電極1201は中心軸cxに対して非回転対称であり、開口部1201aを持つ。設計におけるパラメータは、本体軸1200bxと、中心軸cxと一致する開口部軸1200axとの間で測定される傾斜角p12である。
【0105】
図13の(A)~(C)は、荷電粒子源で用いるための、本発明の一実施形態における楕円電極を示す。楕円電極1301は中心軸cxに対して非回転対称であり、開口部1301aを持つ。設計におけるパラメータは、中心軸cxと一致する本体軸1300bxと開口部軸1301aを基準にして、電極開口部の、対向する点の間で測定される、楕円の直交する2つの主軸の長さp13aとp13bとの比である。
【0106】
リング電極としてここで議論されている電極は、円筒形のリングや、リング形状の多角形や、特定のレイアウトに適した他の形状であっても良いことが理解されるであろう。上述した図面における円筒形のリング形状は例示的なものに過ぎない。
【0107】
図14は、本発明の別の実施形態による荷電粒子源1500の、中心軸cxに沿った長手方向の断面における、概略図である。図示した組み立て体(アセンブル)は、図2に示すような種類の装置で使用するために設計されている。この組み立て体は、線源の装着インターフェイスも提供するハウジング1510と、さらにエミッタ電極1501及びサプレッサ電極1502とを備え、電極は、絶縁体1520により、ハウジングから電気的に分離されている。開口部1513(図1の開口部113に対応)は、図14において、垂直下方にある放射方向の下流側に位置する。装着インターフェイスは、開口部1513の近傍で導電性材料から作られている場合、装着インターフェイスは対向電極として作用することができる(図1の電極103を参照)。電極1504、1505、1506は、絶縁体、すなわち構成要素1540、1550、1560を介して、装着インターフェイス1510、及び/又は、隣接する電極に接続される。各電極は、ハウジングに対して異なる電位を割り当てることができる。電極1504、1505、1506は電極スタックを構成する。図には示されていないさらに重要な構成要素として、電源供給部つまり線源にあるすべての電極に電圧を与えるもの(図1の157参照)と、線源内の安定した真空を実現するための圧力制御システム(図1の121参照)とがある。
【0108】
電極1504、1505、1506は、支持体1519、1529、及び1539にそれぞれ装着されている。電極は絶縁体1540、1550、1560上に配置され、これらの絶縁体は順に圧電アクチュエータ1511、1512、1525、1526、1531、1532、1535、1536上に装着される。それらの各々は制御ユニット1541、1551、1561に接続されている。接続されたアクチュエータの物理的変数、すなわち、長さ、高さ、又は幅は、それぞれの制御ユニットに印加される電圧を介して制御される。この設計により、1504、1505または1506の位置にステアリング電極を使用することができ、圧電アクチュエータは、前記電極のその現場(in situ)での必要に応じた傾斜及びその現場での必要に応じた変位を可能にする、すなわち、分解することなく変位、及び傾斜を行う。
【0109】
アクチュエータ1511及び1512を用いて、その現場での必要に応じて、中心軸cxに平行な方向に沿って圧電効果を用いて、一方のアクチュエータをわずかに伸ばし、他方のアクチュエータを縮めることで、電極1504を傾斜させることができる。アクチュエータの物理的高さは制御部1541に印加する電圧により制御可能である。
【0110】
アクチュエータ1525及び1526を用いて、その現場での必要に応じて、中心軸cxに垂直な方向に沿って圧電効果を用いて一方のアクチュエータをわずかに伸ばし、及び/又は、他方を縮めることで、電極1505を変位させることができる。アクチュエータの物理的幅は制御部1551に印加する電圧により制御可能である。
【0111】
アクチュエータ1535及び1536を用いて、その現場での必要に応じて、中心軸cxに垂直な方向に沿って圧電効果を用いて一方のアクチュエータをわずかに伸ばし、及び/又は、他方を縮めることで、電極1506を変位させることができる。アクチュエータの物理的幅は制御部1561に印加する電圧により制御可能である。さらにアクチュエータ1531及び1532を用いて、その現場での必要に応じて、中心軸cxに平行な方向に沿って圧電効果を用いて一方の電極をわずかに伸ばし、及び/又は、他方を縮めることもできる。
【0112】
図15及び図16は、ステアリング電極を偏心して装着するための装置1601の、一実施形態の二つの変形例の、上面図を示しており、この装置は、例えば、「三角形の電極」1602として実現され、すなわち、三角形、好ましくは二等辺三角形又は正三角形に配置された三つの装着点を提供する、装着フレームに保持される電極である。これにより電極の配置が大幅に簡素化され改良される。装着装置は中央部に開口部1602aが設けられた電極1602を収容できるような幅の、開口部1601aを有している。開口部1602aは、円形、楕円形、多角形など任意の適切な形状を有していても良い。言い換えれば、装着装置1601の本体は、電極1602の開口部1602aのどの部分をも妨害してはならない。電極の三角形の外形には、三角形の頂点に相当する3つの接続点16A、16B、16Cがある。中心軸cxは図15及び図16の軸断面点で示されており、これは図15に示すように開口部1602aの中心と一致していても良く、これをデフォルト位置と呼んでも良い。図16では変位電極が、例えば電極1602の軸cx周りの角度による回転を介して作成されており、この結果、開口部1602aの中心が前記軸cxからわずかな距離だけ変位することにもなる。
【0113】
もちろん、図15図16で示した例以外にも、他の位置を実現しても良い。そのため同一部品で多種類の変位電極を作ることができる。なお、図15及び図16に示した装着装置は、変位電極に限らず他の種類のステアリング電極の装着や調整にも適している。このような偏心デバイスを使用することで多数のバリエーションを簡単な製造・組み立て工程で組み合わせることができる。
【0114】
図17の(A)と(B)は、本発明のさらなる視点(aspect)として、傾斜したエミッタ電極1701aと、シフトしたエミッタ電極1701bを、中心軸cxに沿った縦断面図で示したものである。局所的な極座標系を定義する中心軸cxは、例えば荷電粒子源の対称軸と一致させることができる。また、図17の(A)及び(B)には、電極1701a、1701bの位置をより分かりやすくするために、サプレッサ電極102を示している。エミッタ電極は、例えばエミッタ電極の局所的な中心軸を示す軸17X1及び17X2を有している(局所的な極座標)。またエミッタ電極上の放射面111も示されている。図17(A)ではエミッタ電極を変更して、エミッタ電極軸17X1と中心軸cxとが平行ではなくある角度を持つように、傾斜したエミッタ電極1701aを形成している。図17(B)ではエミッタ電極101を変更して、エミッタ電極軸17X2が中心軸cxと並行であるが、一定の距離だけオフセットした変位エミッタ電極1701bを形成している。このような回転対称性への摂動は、荷電粒子源の電位にステアリングをもたらす。
【0115】
図18の(A)及び(B)は、本発明のさらなる視点(aspect)として、傾斜サプレッサ電極1802a、及びシフトサプレッサ電極1802bを、それぞれ中心軸cxに沿った縦断面図として示している。局所的な極座標系を定義する中心軸cxは、例えば荷電粒子源の対称軸と一致させることができる。また図18の(A)及び(B)には、電極1802a、及び電極1802bの位置をよりわかりやすくするために、エミッタ電極101を示している。サプレッサ電極は例えば局所中心軸サプレッサ電極を示す軸18X1及び18X2を有している(局所極座標)。放射面111もまた示されている。図18(A)では、サプレッサ電極102はサプレッサ電極軸18X1と中心軸cxとが平行ではなくある角度を持つような、傾いたサプレッサ電極1802aを形成するように、変更されている。図18(B)では、サプレッサ電極102はサプレッサ電極軸18X2が中心軸cxと並行であるが、一定距離のオフセットだけ、シフトしたサプレッサ電極1802bを形成するように、変更されている。このような回転対称性の摂動は荷電粒子源の電位にステアリングをもたらす。
【0116】
例えば、粒子源空間に真空を確立するための真空ポンプと適切な真空ラインとで構成される圧力制御装置や、本発明の電極に電圧を供給する電源供給装置と適切な電気ラインなど、粒子源の機能に不可欠な周辺装置が本発明による粒子源に含まれていることを理解していただきたい。したがって、各電極は対向電極またはエミッタ電極(基準点としてどちらを選択するかによる)に対して、制御された静電電圧に設定される。
【0117】
上で開示された形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
[付記1]
荷電粒子、特に電子を荷電粒子ビームとして、放射方向に沿って放射するように構成された荷電粒子源であり、前記荷電粒子源は以下を備える:
― 荷電粒子源を高真空で作動させる、真空システムに接続可能なハウジングと、
― 放射方向に沿って、特定の粒子種の荷電粒子を、放射するように構成されたエミッタ表面を持つ、エミッタ電極と、
― 前記エミッタ電極に対して、前記荷電粒子の電荷とは反対の符号の静電電圧が印加されるように構成され、前記放射方向に沿ってエミッタ表面の下流側の位置に、エミッタ開口部を備えた対向電極と、
― エミッタ表面とエミッタ開口部との間として定義される線源空間。
荷電粒子源は、中心軸に沿った基本的な全体的回転対称性を備え、放射モードで作動可能であり、荷電粒子がエミッタ表面から放射されエミッタ電極と対向電極との間に電圧が印加されて、電界が発生しその結果荷電粒子に作用する力が発生し、放射方向に沿って開口部を通って荷電粒子の少なくとも一部を対向電極に向かって加速し、
荷電粒子源はさらに、エミッタ電極と対向電極の間に設けられた線源空間を囲むように配置された少なくとも一つの調整電極を備え、各調整電極はエミッタ電極及び/又は対向電極に対して制御された静電圧を印加されるように構成され、少なくとも一つの調整電極は、意図しない二次荷電粒子をエミッタ表面から強制的に遠ざけるように構成された、線源の電位の半径方向の軸対称性を中断するステアリング電極を備える。
[付記2]
上記の荷電粒子源は、前記エミッタ電極と前記対向電極との間、好ましくは前記エミッタ電極に近い位置、に配置されたウェーネルト型のサプレッサ電極をさらに備える。
前記サプレッサ電極は、前記エミッタ電極に対して制御電圧が印加されるように構成され、かつ、前記放射方向に沿って前記エミッタ電極の下流側の位置に開口部を有する。
[付記3]
上記の荷電粒子源において、サプレッサ電極が線源の半径方向の軸対称性から逸脱した形状(geometry)を備えるステアリング電極でもあり、
前記サプレッサ電極は、中心軸に対して所定のゼロでない変位で配置された対称軸を備えるサプレッサ電極であるシフトサプレッサである、
及び/又は
対称軸を持つサプレッサ電極であって、中心軸に対してゼロではない所定の角度で傾斜して配置されている傾斜サプレッサ、である。
[付記4]
上記の荷電粒子源において、前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極が変位電極である、すなわち開口部を備え、該開口部は開口部軸に沿って延び、開口部軸は中心軸からゼロではない所定のまたは調整可能な距離だけ変位して配置された電極である。
[付記5]
上記の荷電粒子源において、前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極はシアード(sheared)電極である、すなわち開口部を備え、該開口部は開口部軸に沿って延在し、開口部軸は中心軸からゼロではない所定のまたは調整可能な角度だけ傾斜した電極である。
[付記6]
上記の荷電粒子源において、前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極はランプ電極である、すなわち開口部を備え、中心軸の方向に沿って測定された変化する厚さを備え、前記厚さは、中心軸に対して互いに対向する位置で、ゼロではない所定のまたは調整可能な最大ステップサイズだけ異なる最小値と最大値との間で変化する電極である。
[付記7]
上記の荷電粒子源において、前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極は傾斜電極である、すなわち開口部を備え、本体軸が中心軸からゼロではない所定の又は調整可能な角度だけ傾斜した電極である。
[付記8]
上記の荷電粒子源は、放射方向に沿って傾斜電極の下流に位置する、付記4に記載の変位電極である少なくとも一の第二のステアリング電極をさらに備え、好ましくは、前記変位電極は、放射方向に沿って傾斜電極の直後に位置する。
[付記9]
上記の荷電粒子源において、前記ステアリング電極、又は、複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つの前記ステアリング電極は楕円電極であり、即ち、前記楕円電極は楕円形の開口部を有する電極であり、前記楕円形の形状は、直交する二つの主軸の長さによって定義され、直交する二つの主軸の前記長さの所定の比率r13=p13a/p13bは1とは異なる。
[付記10]
上記の荷電粒子源において、前記ステアリング電極、または複数のステアリング電極の場合には少なくとも一つのステアリング電極は、少なくとも二つのセクタ電極で構成される分割電極であり、前記セクタ電極は、真空又は誘電体材料からなるギャップにより分離されており、分割電極のセクタ電極は個別に電源供給システムに接続され、相互に異なる電位が印加されるように構成されている。
[付記11]
上記の荷電粒子源において、少なくとも一つの電極、好ましくは少なくとも一つのステアリング電極は、電極の位置を調整するための圧電アクチュエータを備え、前記アクチュエータは、中心軸に対して電極をシフトし傾斜させるように構成されている。
[付記12]
上記の荷電粒子源において、少なくとも一つの電極、好ましくは少なくとも一つのステアリング電極が、中央開口部を備えるリング形状の装着装置に装着されており、前記開口部は、荷電粒子ビームが安定して伝播する電極の開口部を妨げないようにしながら、電極を装着できるような十分な幅を有し、前記電極は前記装着装置に接続するように構成された少なくとも3つのコネクタを備え、前記3つのコネクタは好ましくは前記リング形状上に配置可能な三角形の頂点に配置され、前記電極の位置は前記リング形状に沿った角度方向に関して、前記リング形状上で調整可能である。
[付記13]
上記の荷電粒子源において、エミッタ電極は、エミッタ表面の法線方向の軸を有する電極であり、かつ、
シフトエミッタ電極は、中心軸に対してゼロではない所定の変位の位置に対称軸を持つ、シフトされたエミッタ電極であり、
及び/又は、
傾斜エミッタ電極は、中心軸に対してゼロではない所定の角度で傾斜して配置された対称軸を持つ、傾斜エミッタ電極である。
[付記14]
上記の荷電粒子源は、荷電粒子線装置に装着されるように構成されており、装着された状態における荷電粒子源の中心軸が、前記荷電粒子線装置の前記全体的な対称軸と一致するように構成されている。
[付記15]
荷電粒子を用いたナノパターニング又は検査に適する荷電粒子ビーム装置である。この荷電粒子ビーム装置は、上記の荷電粒子源を備える。
【0118】
なお、本発明の開示全体(特許請求の範囲や図面を含む)の中で、その基本的な技術思想に基づいて、視点や実施例を修正・調整することは可能である。 さらに、本発明の開示全体の中で、開示されている要素(個々の請求項の個別要素、個々の実施例の個別要素、個々の図の個別要素を含む)を多様に組み合わせたり、選択したりする(「選択しない」を含む)ことが可能である。 すなわち、本発明は、特許請求の範囲および図面を含む開示全体、ならびに本発明の技術的思想に従って当業者が行うあらゆる種類の変形および変更を含むことは自明である。特に、本明細書で開示されている数値範囲は、具体的に記載されていなくても、開示されている範囲内の中間値や部分範囲も具体的に開示されていると解釈されるべきである。
【0119】
さらに、特許請求の範囲に記載されている参照番号は、特許請求の範囲に記載されている発明の理解を深めるために付けられたものであり、図面に示されている視点や実施例に限定する意図はないことに留意されたい。
【0120】
さらに、上述の引用文献は全内容を引照をもって本明細書に組み込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図17
図18