(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
A47J27/00 102
A47J27/00 103E
(21)【出願番号】P 2021085786
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】貫名 明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須賀 圭
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 仁
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-239501(JP,A)
【文献】実開昭61-103028(JP,U)
【文献】特開2013-236796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端を開口した有底筒状の鍋と、
前記鍋を着脱可能に収容する本体と、
前記本体に配設され、前記鍋の上端開口を開放可能に密閉する内蓋が配置された蓋体と、
前記内蓋に設けられ、前記鍋内で発生した蒸気を排気するための蒸気孔と、
筒状の側壁部と、底部と、前記鍋の内部と連通し水が流出入するための通水孔とを有し、前記側壁部と前記底部とが前記鍋の内面から離間するように前記鍋の前記内部に配置され、上端が開口しているパックホルダと、
前記パックホルダの前記開口の一部を覆うように着脱可能に前記パックホルダに固定され、調理袋を前記パックホルダの内側に保持するためのパックホルダカバーと、
前記パックホルダカバーに設けられ、前記鍋の前記内部と前記パックホルダの内側とに水を注ぐための注水口と、
前記パックホルダカバーの前記注水口を囲む部分に設けられ、前記鍋の前記内部と前記パックホルダの前記内側とに既定の水量を注水するための目印と
を備え、
前記既定の水量は、前記鍋の全容積から、前記パックホルダの前記内側における前記パックホルダカバーの底面より下側の容積と、前記パックホルダと前記パックホルダカバーとの体積とを除いた容積と同量である、調理器。
【請求項2】
前記パックホルダは、前記側壁部に設けられ、横方向に開口している受部を備え、
前記パックホルダカバーは、
前記パックホルダに着脱可能に配置されるカバー本体部と、
前記カバー本体部の側面から横方向に突出している突出部と
を備え、
前記突出部が前記受部に横方向から係合することで、前記パックホルダカバーは前記パックホルダに固定されている、請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記注水口は、前記カバー本体部に設けられている、請求項2に記載の調理器。
【請求項4】
前記通水孔は、前記パックホルダの前記底部に複数設けられている、請求項1から3のいずれかに記載の調理器。
【請求項5】
前記パックホルダカバーは、前記カバー本体部の上面に設けられ、前記カバー本体部から縦方向に延びる把持部を備える、請求項
2又は3に記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耐熱性の調理袋に食材を入れ、その調理袋を鍋で湯煎するパッククッキングという調理方法が流行している。パッククッキングでは、調味料を含む食材に水を介して全方向から熱が加えられるため、フライパン等で調理する場合に比べ、効率的に調理できる。特許文献1に記載されているように、炊飯器等の調理器内でパッククッキングが行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パッククッキングの際、調理袋の口を閉じた状態で湯煎されることがある。この場合、調理袋内に空気が残っていると、調理中に調理袋内の空気が膨張し、調理袋が膨れるおそれがある。その結果、調理袋によって内蓋に設けられている蒸気穴が塞がれ、鍋内の蒸気を排気できなくなり、鍋内が高圧になるといった問題が生じる。
【0005】
また、調理袋が膨張すると、鍋内の水が調理袋によって押し出され、鍋から水が溢れるおそれもある。
【0006】
本発明は、調理器において、パッククッキングの際、調理袋が膨張しても、蒸気穴が塞がれることと、鍋内の水が溢れることとを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上端を開口した有底筒状の鍋と、前記鍋を着脱可能に収容する本体と、前記本体に配設され、前記鍋の上端開口を開放可能に密閉する内蓋が配置された蓋体と、前記内蓋に設けられ、前記鍋内で発生した蒸気を排気するための蒸気孔と、筒状の側壁部と、底部と、前記鍋の内部と連通し水が流出入するための通水孔とを有し、前記側壁部と前記底部とが前記鍋の内面から離間するように前記鍋の前記内部に配置され、上端が開口しているパックホルダと、前記パックホルダの前記開口の一部を覆うように着脱可能に前記パックホルダに固定され、調理袋を前記パックホルダの内側に保持するためのパックホルダカバーと、前記パックホルダカバーに設けられ、前記鍋の前記内部と前記パックホルダの内側とに水を注ぐための注水口と、前記パックホルダカバーの前記注水口を囲む部分に設けられ、前記鍋の前記内部と前記パックホルダの前記内側とに既定の水量を注水するための目印とを備え、前記既定の水量は、前記鍋の全容積から、前記パックホルダの前記内側における前記パックホルダカバーの底面より下側の容積と、前記パックホルダと前記パックホルダカバーとの体積とを除いた容積と同量である、調理器を提供する。
【0008】
本発明の調理器によれば、加熱された調理袋が調理袋の内部の空気等によって膨らんだ場合であっても、パックホルダに固定されたパックホルダカバーによって、パックホルダの内側におけるパックホルダカバーの底面より下側に保持され得る。そのため、内蓋に設けられている蒸気孔が、調理袋によって塞がれることが防止され得る。また、鍋内には、パックホルダの内側におけるパックホルダカバーの底面より下側の空間の容積と、パックホルダとパックホルダカバーとの体積とを除いた容積と同量の水が注がれている。そのため、加熱された調理袋が、パックホルダの内側におけるパックホルダカバーの底面より下側の空間全体を占めるように膨らんだとしても、水が鍋から溢れることが防止され得る。また、鍋から水が溢れない最大水量を注水できるため、鍋内の水の保有熱量も最大となり、調理中の水の温度変化が小さい安定した調理が可能になる。また、パックホルダカバーに注水口が設けられているため、パックホルダに調理袋を載置しパックホルダカバーを固定した後、鍋の内部に水を注水することになる。そのため、例えば、パックホルダカバーの下側を満たすように、すなわち、調理袋全体が水に浸かるように水を注水することができる。また、注水口がパックホルダカバーに設けられていることから、パックホルダカバーを固定することなく注水し難くなる。換言すると、パックホルダカバーを固定し忘れることを防止できる。また、調理袋はパックホルダの内側に載置されている、すなわち、調理袋は鍋から離間して載置されているため、水よりも高温になっている鍋に調理袋が直接接触し、溶けて破れることが防止され得る。また、調理袋がパックホルダカバーによって上から覆われているため、調理袋が水面に浮くことが防止され得る。そのため、例えば、食材の加熱が不十分となることが防止され得る。
【0009】
前記パックホルダは、前記側壁部に設けられ、横方向に開口している受部を備え、前記パックホルダカバーは、前記パックホルダに着脱可能に配置されるカバー本体部と、前記カバー本体部の側面から横方向に突出している突出部とを備え、前記突出部が前記受部に横方向から係合することで、前記パックホルダカバーは前記パックホルダに固定されていてもよい。
【0010】
前記の構成によれば、パックホルダカバーの突出部をパックホルダの受部に係合させるだけで、パックホルダカバーをパックホルダに固定することができる。
【0011】
前記注水口は、前記カバー本体部に設けられていてもよい。
【0012】
前記通水孔は、前記パックホルダの前記底部に複数設けられていてもよい。
【0013】
前記の構成によれば、鍋の内部とパックホルダの内側とが、パックホルダの底部に設けられた複数の通水孔を介して連通している。そのため、例えばパックホルダの上部に通水孔が設けられる場合と比較して、鍋の内部とパックホルダの内側との水の交換および熱の伝達が効率的に行われ得る。
【0014】
前記パックホルダカバーは、前記カバー本体部の上面に設けられ、前記カバー本体部から縦方向に延びる把持部を備えてもよい。
【0015】
前記の構成によれば、パックホルダカバーをパックホルダに固定し忘れても、カバー本体部から縦方向に延びる把持部によって調理袋が蒸気孔を塞ぐことが防がれ得る。具体的には、加熱された調理袋がパックホルダカバーとパックホルダとの間で膨らんだとしても、把持部が内蓋に当接する位置までしか、調理袋は膨らみ得ないため、調理袋は蒸気孔を塞ぎ得ない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の調理器によれば、パッククッキングの際、調理袋が膨張しても、蒸気穴が塞がれることと、鍋内の水が溢れることとを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】内蓋、パックホルダカバー、パックホルダ、及び鍋の分解斜視図。
【
図4】パックホルダカバー、パックホルダ、及び鍋の組立状態の斜視図。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る調理器のパックホルダカバーの斜視図。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る調理器の使用方法を示す概略図。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る調理器のパックホルダの斜視図。
【
図9】本発明の第4実施形態に係る調理器のパックホルダとパックホルダカバーとの斜視図。
【
図11】本発明の第5実施形態に係る調理器のパックホルダとパックホルダカバーとの斜視図。
【
図14】本発明の第6実施形態に係る調理器のパックホルダとパックホルダカバーとの斜視図。
【
図15】本発明の第7実施形態に係る調理器のパックホルダとパックホルダカバーとの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
本実施形態のマルチクッカー(調理器)1を、以下、説明する。以下の説明において、縦方向とは使用者が通常使用する際のマルチクッカー1の高さ方向を表し、横方向とは縦方向に対して横向きの方向を表す。
【0019】
図1及び
図2を参照すると、マルチクッカー1は、本体10、蓋体20、及び鍋30を備える。本体10は、筒形状をなす胴体11と、胴体11の下端開口を閉塞する底体12と、胴体11の上端開口を覆うように取り付けられた肩体13とからなる外装体を備える。肩体13は、略中央に鍋30を着脱可能に配置するための開口部(図示せず)を備える。また、肩体13の下部には、鍋30の下部を加熱する加熱手段(図示せず)と、鍋30の温度を検出するための鍋温度センサ(図示せず)とが配設されている。
【0020】
鍋30は、上端を開口した有底筒状で、本体10の開口部に着脱可能に収容されている。
【0021】
蓋体20は、本体10の背部に形成されたヒンジ受部(図示せず)に回動可能に配設され、蓋体20の下面に設けられた内蓋21を介して、鍋30の上端開口を開放可能に密閉する。内蓋21は、パッキン22と板状の蓋板23とを備える。パッキン22が鍋30の開口を形成する縁31に密着することで、鍋30の上端開口が内蓋21で密閉される。
【0022】
蓋板23には、鍋30内で発生した蒸気を排気するための複数の蒸気孔24が設けられている。鍋30内で発生した蒸気は、蒸気孔24、蓋体20の内部に設けられた蒸気路(図示せず)、及び蓋体20に設けられた蒸気口25を介してマルチクッカー1の外部に排気される。
【0023】
蓋体20の上面には、操作部26が設けられている。操作部26によって、加熱時間や加熱温度等が制御される。
【0024】
図3を参照すると、鍋30の内部には、樹脂製の成形品であるパックホルダ40が収容されている。パックホルダ40は、筒状の側壁部41と、側壁部41の下端に設けられた底部42とを有し、上端が開口している。本実施形態では、側壁部41は円筒状である。側壁部41は、上部の側壁部41a、側壁部41aより径が小さい下部の側壁部41c、及び側壁部41aと側壁部41cとを接続し、横方向に延びる中部の側壁部41bを備える。
【0025】
横方向に開口している受部43が、側壁部41bの上面に設けられている。受部43は側壁部41bと略平行に延び略矩形の天面43aと、天面43aの端部から側壁部41bに向かって縦方向に延び略矩形の側面43bとを備える。天面43aの一辺は上部の側壁部41aに接続されており、側面43bは一辺が上部の側壁部41aに接続され、一辺が中部の側壁部41bに接続されている。受部43は、天面43aのみを備えていてもよい。また、
図3には受部43は1つしか図示されていないが、本実施形態では、パックホルダ40の中心に関して反対の位置に、さらに1つの受部43が設けられている。受部43の数は適宜設定され得る。
【0026】
パックホルダ40には、鍋30の内部と連通し水が流出入するための通水孔44が設けられている。すなわち、水は、通水孔44を介して鍋30内とパックホルダ40の内側とを移動し得る。本実施形態では、通水孔44は、底部42に複数設けられている。通水孔44は、例えば側壁部41に1つ設けられていてもよい。
【0027】
図5を参照すると、脚部45が底部42に設けられている。パックホルダ40は、脚部45を介して鍋30内に載置されている。また、パックホルダ40は、側壁部41と底部42とが鍋30の内面32から離間するように鍋30の内部に配置されている。本実施形態では、脚部45は底部42の外周側に等間隔で4つ設けられている。脚部45の数は適宜設定され得る。
【0028】
図3及び
図4を参照すると、パックホルダ40の内部には、パックホルダカバー50が収容されている。パックホルダカバー50は、樹脂製の成形品で、カバー本体部51、把持部52、フック部53、及び突出部54を備える。
【0029】
カバー本体部51は、横方向に延び、略楕円形である。後述の突出部54を含めたカバー本体部51の長軸方向の長さは、パックホルダ40の上側の側壁部41aの直径と概ね同じで、カバー本体部51の短軸方向の長さは、パックホルダ40の下側の側壁部41cの直径より短い。そのため、
図5に示されているように、カバー本体部51の短軸側とパックホルダ40との間に隙間46が形成されている。
【0030】
図3を参照すると、カバー本体部51には、注水口55が設けられている。注水口55は、鍋30の内部とパックホルダ40の内側とに水を注ぐために設けられている。注水口55は、カバー本体部51の長軸方向の両端側に設けられている。注水口55を囲むように傾斜壁56が設けられている。すなわち、傾斜壁56は、注水口55を囲む部分である。傾斜壁56は、カバー本体部51の上面から注水口55に向かって傾斜して延びている。
【0031】
注水口55の平面視における外形は、略台形である。すなわち、傾斜壁56は、カバー本体部51の長軸方向の端部側の外形に沿って延びる傾斜壁56aと、傾斜壁56aのカバー本体部51の短軸方向における両端からカバー本体部51の外形に沿って延びる傾斜壁56b,56cとを備える。また、傾斜壁56は、傾斜壁56b,56cの先端を接続し、傾斜壁56aと略平行に延びる傾斜壁56dを備える。
【0032】
傾斜壁56dには、目印57が設けられている。目印57は、鍋30の内部とパックホルダ40の内側とに既定の水量を注水するために設けられている。本実施形態では、目印57には、注水量を指示する既定線や印と共に、例えば「ここまで」といった文字が記載されている。
【0033】
把持部52は、カバー本体部51の上面の略中央に設けられ、カバー本体部51から縦方向に延びている。把持部52は、略矩形の頂面部52aと、頂面部52aの周囲からカバー本体部51の上面に向かって延びている筒状の立壁部52bとを備える。頂面部52aの略中央には通気孔52cが設けられている。
【0034】
フック部53は、平面視において略矩形である。フック部53は、把持部52から横方向に、すなわちカバー本体部51と略平行に突出するように設けられている。
図5を参照すると、本実施形態では、フック部53は、把持部52の高さ方向の中央より下側に設けられている。横方向の長さaは、カバー本体部51の短軸方向における把持部52から端部までの長さbの半分より長い(a>b/2)。
【0035】
図3を参照すると、突出部54は、板状で、カバー本体部51の側面から横方向に突出している。具体的には、突出部54は、カバー本体部51の長軸方向の先端部に位置する側面から横方向に突出している。
【0036】
図4を参照すると、パックホルダカバー50は、突出部54が受部43に横方向から係合することで、パックホルダ40の開口の一部を覆うように着脱可能にパックホルダ40に固定されている。すなわち、パックホルダカバー50をパックホルダの中部の側壁部41bの上に置き、把持部52を掴んで横方向に回転させ、突出部54を受部43に係合させることで、パックホルダカバー50はパックホルダ40に固定されている。
【0037】
以下、本実施形態に係るマルチクッカー1の使用方法を説明する。
【0038】
図4及び
図5を参照すると、鍋30の内部に配置されたパックホルダ40の内側に、調理袋60が載置されている。調理袋60は、90℃より高い耐熱性を有し、袋状で袋の口部分に口部61を備える。好ましくは、調理袋60は、口部61にチャックが付いているポリエチレン製の袋(所謂ポリ袋)である。調理袋60には、食材と調味料とが入れられている。
【0039】
パックホルダカバー50は、パックホルダ40に載置された調理袋60と、パックホルダ40の開口の一部とを覆うように着脱可能にパックホルダ40に配置され固定されている。
【0040】
口部61は、隙間46を介して、カバー本体部51の上側に通されている。隙間46を通過した口部61は、把持部52の方向に折り曲げられ、フック部53とカバー本体部51の上面との間に横方向に開口した状態で差し込まれ、保持されている。すなわち、フック部53は、調理袋60の口部61を保持するために設けられている。
【0041】
鍋30内に、パックホルダ40、パックホルダカバー50、及び調理袋60が配置された状態で、注水口55から水が注水される。水は、目印57の既定線まで注水されることで、既定の水量が注がれる。既定の水量は、鍋30の全容積から、パックホルダ40の内側におけるパックホルダカバー50の底面より下側の容積と、パックホルダ40とパックホルダカバー50との体積とを除いた容積と同量である。本実施形態では、既定の水量は、水位がパックホルダカバー50の下面付近となる水量である。すなわち、
図5に図示されている水位h1まで注水される。
【0042】
鍋30内に水が注水された状態で、蓋体20を閉め、操作部26を操作することで、設定された時間、設定された温度で加熱される。本実施形態に係るマルチクッカー1では、水温は90℃より高くはならない。
【0043】
本実施形態のマルチクッカー1によれば、調理袋60の口部61がフック部53によって保持されているため、例えば加熱中に発生する水流によって調理袋60が倒れることが防止され得る。その結果、口部61を介して調理袋60内の食材又は調味料が鍋30内に流出する、又は鍋30内の水が調理袋60内に流入することが防止され得る。また、調理袋60はパックホルダ40の内側に載置されている、すなわち、調理袋60は鍋30から離間して載置されているため、水よりも高温になっている鍋30に調理袋60が直接接触し、溶けて破れることが防止され得る。また、調理袋60がパックホルダカバー50によって上から覆われているため、調理袋60が水面に浮くことが防止され得る。そのため、例えば、食材の加熱が不十分となることが防止され得る。
【0044】
また、調理袋60は開口した状態で保持されているため、鍋30内に水が注がれた際、水圧によって調理袋60内の空気が排気される。さらに、調理袋60内に空気が残っていたとしても、調理袋60が加熱されることで空気が膨張し、調理袋60内から排気される。そのため、食材の周りに調味料が満たされ味の染み込み具合が向上する。
【0045】
また、調理袋60の口部61は、カバー本体部51とフック部53との間に横方向に向いた状態で保持され得る。そのため、調理袋60が開口した状態で保持されていても、蓋体20の底面に生じた水滴が落下して調理袋60に混入することが防止され得る。
【0046】
また、パックホルダ40に調理袋60を載置しパックホルダカバー50を配置した後、鍋30の内部に水を注水することになる。そのため、例えば、パックホルダカバー50の下側、すなわち、調理袋60のうち食材が入っている部分が完全に水に浸かるように水を注水することができる。また、注水口55がパックホルダカバー50に設けられていることから、パックホルダカバー50を配置することなく注水し難くなる。換言すると、パックホルダカバー50を配置し忘れることを防止できる。
【0047】
また、鍋30の内部とパックホルダ40の内側とが、パックホルダ40の底部に設けられた複数の通水孔44を介して連通している。そのため、例えばパックホルダ40の上部に通水孔44が設けられる場合と比較して、鍋30の内部とパックホルダ40の内側との水の交換および熱の伝達が効率的に行われ得る。
【0048】
使用者が誤って調理袋60の開口を閉じた状態で加熱した場合、調理袋60内の空気が膨張し、内蓋21に設けられている蒸気孔24が調理袋60によって塞がれ、鍋30内が高圧となるおそれがある。また、調理袋60が膨張することで、鍋30内の水が溢れるおそれもある。
【0049】
しかし、本実施形態に係るマルチクッカー1では、加熱された調理袋60が調理袋60の内部の空気等によって膨らんだ場合であっても、パックホルダ40に固定されたパックホルダカバー50によって、パックホルダ40の内側におけるパックホルダカバー50の底面より下側に保持され得る。そのため、内蓋21に設けられている蒸気孔24が、調理袋60によって塞がれることが防止され得る。また、鍋30内には、パックホルダ40の内側におけるパックホルダカバー50の底面より下側の空間の容積と、パックホルダ40とパックホルダカバー50との体積とを除いた容積と同量の水が注がれている。また、把持部52に通気孔52cが設けられているため、把持部52の内部に空気が溜まり得ない。そのため、加熱された調理袋60が、パックホルダ40の内側におけるパックホルダカバー50の底面より下側の空間全体を占めるように膨らんだとしても、水が鍋30から溢れることが防止され得る。
【0050】
また、本実施形態に係るマルチクッカー1では、鍋30から水が溢れない最大水量を注水できるため、鍋30内の水の保有熱量も最大となり、調理中の水の温度変化が小さい安定した調理が可能になる。
【0051】
また、パックホルダカバー50をパックホルダ40に載置しただけの場合、すなわち、パックホルダカバー50を固定し忘れた場合であっても、カバー本体部51から縦方向に延びる把持部52によって調理袋60が蒸気孔24を塞ぐことが防がれ得る。具体的には、加熱された調理袋60がパックホルダカバー50とパックホルダ40との間で膨らんだとしても、把持部52が内蓋21に当接する位置までしか、調理袋60は膨らみ得ない。そのため、調理袋60は蒸気孔24を塞ぎ得ない。
【0052】
以上より、本実施形態に係るマルチクッカー1によれば、パッククッキングの際、調理袋60を開口状態で安定的に保持でき、良好な調理結果を得ることができる。
【0053】
また、パッククッキングの際、調理袋60が膨張しても、蒸気穴24が塞がれることと、鍋30内の水が溢れることとを防止できる。
【0054】
(第2実施形態)
図6及び
図7を参照すると、本発明の第2実施形態に係るマルチクッカー1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第2実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0055】
図6を参照すると、第2実施形態に係るマルチクッカー1では、パックホルダ40は配置されておらず、パックホルダカバー150のみが鍋30内に収容されている。第2実施形態に係るパックホルダカバー150は、第1実施形態に係るパックホルダカバー50とは異なり、カバー本体部151と、カバー本体部151の中央に配置されている中空の把持部152とを備える。カバー本体部151と把持部152とは樹脂製である。第2実施形態に係るパックホルダカバー150では、カバー本体部151と把持部152とは別体で構成されている。
【0056】
カバー本体部151は、鍋30の断面形状に沿った円形状で、横方向に延びている。また、カバー本体部151には、複数の通水孔153と切欠部154とが設けられている。また、カバー本体部151の中心付近に、把持部152を固定するための受部155が設けられている。
【0057】
把持部152は、円形状の頂面部152aと、頂面部152aの周囲からカバー本体部151に向かって延びている立壁部152bとを備える。立壁部152bの先端には、受部155と係合する突出部156が設けられている。突出部156を受部155に係合させることで、把持部152はカバー本体部151に取り付けられる。
【0058】
図7を参照すると、パックホルダカバー150は、食材と調味料とが入れられた調理袋60を覆うように鍋30内に収容されている。調理袋60の口部61は把持部152の内側に挿入されている。
【0059】
カバー本体部151と把持部152との材質は、例えばポリプロピレン等の水より比重が軽い合成樹脂である。この場合、パックホルダカバー150は水面上に浮いている、すなわち、水面が水位h2の状態である。そのため、口部61が把持部152の内側で水面より上に出ている状態で、調理袋60は保持され得る。
【0060】
第2実施形態の変形例として、カバー本体部151と把持部152との材質は、例えばシンジオタクチックポリスチレン等の水より比重が重い合成樹脂である。この場合、パックホルダカバー150は水面上に浮かばず、水中に沈んでいる、すなわち、水面が水位h3の状態である。しかし、パックホルダカバー150は鍋30の食材がある位置までしか沈まない、又は、把持部152の内部に空気が溜まるため、パックホルダカバー150全体が沈むことはない。そのため、把持部152の一部は水面より上側に位置する。そのため、口部61が水面から上に出ている状態で調理袋60は保持され得る。また、パックホルダカバー150によって調理袋60が上から押さえられているため、食材の上側に常に熱せられた水が存在する。従って、食材の周囲全体が熱水で加熱されるため、効率的な調理が可能になる。
【0061】
第2実施形態に係るパックホルダカバー150は固定されていない。そのため、調理袋60の口部61が密閉された状態で加熱された場合、調理袋60が膨張し、パックホルダカバー150は上方に向かって押し上げられる。しかし、把持部152が内蓋21に当接する位置までしかパックホルダカバー150は押し上げられず、調理袋60はパックホルダカバー150の下側でしか膨らみ得ない。従って、調理袋60によって内蓋21の蒸気孔24が塞がれ得ない。
【0062】
(第3実施形態)
図8を参照すると、本発明の第3実施形態に係るマルチクッカー1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第3実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0063】
第3実施形態に係るマルチクッカー1では、パックホルダカバー50は配置されておらず、パックホルダ240のみが鍋30内に収容されている。パックホルダ240は、円形状の底部242と、底部242の周囲から上方に向かい延びている側壁部241とを備える。底部242と側壁部241とには複数の通水孔244が設けられている。側壁部241の上部には側壁部241の上端から横方向に外側に向かって延びる段部246が設けられている。段部246には、複数の挟持部247が等間隔に設けられている。挟持部247は、段部246と略平行に延びる挟持本体部247aと、挟持本体部247aの端部から段部246に向かって延びる支持部247bとを備える。
【0064】
パックホルダ240内に調理袋60を入れ、調理袋60の口部61を密閉せずに開口したまま挟持部247に引っ掛けることで、調理袋60はパックホルダ240内に保持される。2つの挟持部247が、近接するように設けられ、調理袋60をその2つの挟持部247の両方に引っ掛けて保持してもよい。この場合、調理袋60は強固に保持され得る。
【0065】
調理袋60の口部61は、挟持部247に引っ掛けられている程度にしか押さえられていないため、調理袋60内の空気は口部61から排気され得る。また、口部61を挟持部247に引っ掛けることで、口部61は少なくとも一部分が横方向に折り曲げられた状態となり、内蓋21に生じ落下した水滴が調理袋60内に入り得ない。
【0066】
(第4実施形態)
図9及び
図10を参照すると、本発明の第4実施形態に係るマルチクッカー1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第4実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0067】
図9を参照すると、第4実施形態に係るマルチクッカー1では、パックホルダカバー350は、円形状に横方向に延びるカバー本体部351と、カバー本体部351の側面から横方向に突出している突出部354とを備える。突出部354が受部43に横方向から係合することで、パックホルダカバー350はパックホルダ40に固定されている。カバー本体部351には、カバー本体部351の中心を通る直線状の切欠部355が設けられている。また、カバー本体部351には複数の通水孔353が設けられている。
【0068】
図10を参照すると、パックホルダ40に載置された調理袋60の口部61は、切欠部355を介してカバー本体部351の上側に通され、横方向に折り曲げられている。そのため、口部61が開口状態で調理袋60は保持され得る。また、内蓋21で生じた水滴が調理袋60に混入することが防がれ得る。また、パックホルダカバー350がパックホルダ40に固定されているため、調理袋60の口部61が密閉された状態で加熱され、調理袋60が膨張したとしても、調理袋60はパックホルダカバー50の下側で保持され得る。従って、調理袋60によって内蓋21の蒸気孔24が塞がれることが防止され得る。
【0069】
(第5実施形態)
図11、
図12、及び
図13を参照すると、本発明の第5実施形態に係るマルチクッカー1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第5実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0070】
図11及び
図12を参照すると、第5実施形態に係るマルチクッカー1では、パックホルダカバー450は、円形状に横方向に延びるカバー本体部451と、カバー本体部451の側面から横方向に突出している突出部454とを備える。突出部454が受部43に横方向から係合することで、パックホルダカバー450はパックホルダ40に固定されている。また、カバー本体部451の直径は、パックホルダ40の下側の側壁部41cの直径より小さい、つまりカバー本体部451と下側の側壁部41cとの間に隙間446が生じている。また、カバー本体部451には、調理袋60の口部61を通すための複数の孔455と、水が出入りするための複数の通水孔453が設けられている。
【0071】
パックホルダ40に載置された調理袋60の口部61は、隙間446を介して、パックホルダカバー450の上側に通され、横方向に向けて折り曲げられている。そのため、口部61が開口状態で調理袋60は保持され得る。また、調理袋60が内面32に接触して溶けて破れることがない。また、内蓋21に生じた水滴が調理袋60に混入することが防がれ得る。また、パックホルダカバー450がパックホルダ40に固定されているため、仮に調理袋60を閉じた状態で加熱して、調理袋60が膨張したとしても、内蓋21の蒸気孔24が塞がれることが防止され得る。
【0072】
図13を参照すると、第5実施形態の変形例として、パックホルダ40に載置された調理袋60の口部61は、孔455を介して、パックホルダカバー450の上側に通され、横方向に向けて折り曲げられている。そのため、口部61が開口状態で調理袋60は保持され得る。また、調理袋60が内面32に接触して溶けて破れることがない。また、内蓋21に生じた水滴が調理袋60に混入することが防がれ得る。また、パックホルダカバー450がパックホルダ40に固定されているため、仮に調理袋60を閉じた状態で加熱して、調理袋60が膨張したとしても、内蓋21の蒸気孔24が塞がれることが防止され得る。
【0073】
(第6実施形態)
図14を参照すると、本発明の第6実施形態に係るマルチクッカー1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第6実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0074】
第6実施形態に係るマルチクッカー1では、パックホルダカバー50は、中空の円柱形状の把持部552を備える。すなわち、把持部552は円形の頂面部552aと円筒状の立壁部552bとを備える。また、把持部552には、第1実施形態に係るフック部53は設けられておらず、カバー本体部51の長軸方向の両端部にフック部553A,553Bが設けられている。フック部553A,553Bはそれぞれ、カバー本体部51から上方に延びる縦部553aと、縦部553aの先端から把持部552の方向に延びる横部553bとを備える。
【0075】
調理袋60の口部61は、フック部553A,553Bによって保持される。すなわち、口部61の両端がフック部553A,553Bに亘って配置され、横部553bとカバー本体部51との間に挿入されることで、調理袋60は保持される。そのため、第6実施形態に係るパックホルダカバー50では、幅広の調理袋60であっても安定的に保持され得る。
【0076】
(第7実施形態)
図15及び
図16を参照すると、本発明の第7実施形態に係るマルチクッカー1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第7実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0077】
図15を参照すると、第7実施形態に係るマルチクッカー1では、パックホルダカバー50は、中空の円柱形状の把持部652を備える。すなわち、把持部652は円形の頂面部652aと円筒状の立壁部652bとを備える。また、パックホルダカバー50は、把持部652に、第1実施形態に係るフック部53の代わりに切欠部653が設けられている。
【0078】
図16を参照すると、パックホルダ40に載置された調理袋60の口部61は、開口が下向きとなるように切欠部653に挿入されている。そのため、調理袋60が開口した状態で保持されても、内蓋21に生じ落下した水滴が調理袋60に混入することが防がれ得る。
【符号の説明】
【0079】
1 マルチクッカー(調理器)
10 本体
11 胴体
12 底体
13 肩体
20 蓋体
21 内蓋
22 パッキン
23 蓋板
24 蒸気孔
25 蒸気口
26 操作部
30 鍋
31 縁
32 内面
40 パックホルダ
41 側壁部
41a,41b,41c 側壁部
42 底部
43 受部
43a 天面
43b 側面
44 通水孔
45 脚部
46 隙間
50 パックホルダカバー
51 カバー本体部
52 把持部
52a 頂面部
52b 立壁部
52c 通気孔
53 フック部
54 突出部
55 注水口
56 傾斜壁
57 指示部
60 調理袋
61 口部
150 パックホルダカバー
151 カバー本体部
152 把持部
152a 頂面部
152b 立壁部
153 通水孔
154 切欠部
155 受部
156 突出部
240 パックホルダ
241 側壁部
242 底部
244 通水孔
246 段部
247 挟持部
247a 挟持本体部
247b 支持部
350 パックホルダカバー
351 カバー本体部
353 通水孔
354 突出部
355 切欠部
446 隙間
450 パックホルダカバー
451 カバー本体部
453 通水孔
454 突出部
455 孔
552 把持部
552a 頂面部
552b 立壁部
553A,553B フック部
553a 縦部
553b 横部
652 把持部
652a 頂面部
652b 立壁部
653 切欠部