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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
B65D47/08 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021125703
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020377
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-151402(JP,A)
【文献】特開2007-91281(JP,A)
【文献】特開2018-2237(JP,A)
【文献】特開2009-184682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、
前記キャップ本体にヒンジ部を介して回動可能に連結され、前記キャップ本体を覆う蓋体と、を備え、
前記キャップ本体は、前記容器本体の口部に装着される装着部と、前記装着部に連設されると共に前記容器本体の口部を閉塞する閉塞壁と、を有し、
前記装着部には、上方に向けて突出すると共に前記蓋体を下方から支持する環状の支持壁が形成され、
前記閉塞壁には、内側が内容物を注出する注出口とされ、上方に向かって突出する注出筒が形成され、
前記蓋体は、頂壁と、前記頂壁の外周縁部から下方に向けて延びると共に、前記支持壁に対して着脱可能に嵌合する周壁と、前記頂壁から下方に向けて延びるように形成され、前記注出筒の内側を密封すると共に、前記ヒンジ部回りの前記蓋体の開操作に伴って前記注出筒から離脱可能とされた栓体と、を有し、
前記支持壁の一部は、前記キャップ本体の径方向に弾性変形可能な可動壁とされ、
前記周壁には、前記可動壁に対して前記径方向の内側から接触すると共に、前記径方向の内側に向けた前記可動壁の弾性変形を規制し、且つ前記径方向の外側に向けた前記可動壁の弾性変形を許容する規制部が形成されていることを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のヒンジキャップにおいて、
前記規制部及び前記可動壁は、前記蓋体の閉蓋時、キャップ軸方向から見た平面視で、前記注出筒、前記規制部、前記可動壁及び前記ヒンジ部がこの順に前記径方向に沿って並ぶように配置されている、ヒンジキャップ。
【請求項3】
請求項2に記載のヒンジキャップにおいて、
前記注出筒、前記規制部、前記可動壁及び前記ヒンジ部が前記径方向に沿って並んだ方向を第1方向としたときに、
前記可動壁は、前記キャップ軸方向から見た平面視で、前記第1方向に交差する第2方向に沿って延びるように形成されている、ヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体の口部に装着されるキャップとして、例えば下記特許文献1には、内容物が収容される容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して連結される蓋体と、を備えるヒンジキャップが知られている。
キャップ本体には、内容物を注出する注出口が開口した閉塞壁と、閉塞壁から立設されると共に内側が注出口を通じて容器本体内に連通する注出筒と、が設けられている。蓋体には、閉蓋時に注出筒の内側に嵌合して、注出筒を密封するシール筒が設けられている。
このように構成されたヒンジキャップでは、蓋体を開操作することで、注出筒からシール筒を離脱させて注出口を開放することができる。従って、例えば容器本体を傾倒させることで、注出筒を通じて容器本体内から内容物を外部に注出することができる。
【0003】
ところで、この種のヒンジキャップでは、成形後に閉蓋し、注出筒とシール筒との間のシール性(密封性)が適切であるか否かを確認するためのリーク検査(密封検査)を行う場合、キャップ本体と蓋体との間の嵌合部(外周気密部分)等、空気通路となる隙間を設ける必要がある。
しかしながら、このような隙間を設けた場合には、徐冷用のシャワー水が、空気通路を通じてキャップ内に侵入してしまう課題があった。なお、シャワー水は、ヒンジキャップを装着した容器本体内に高温の内容物(内容液)を充填した後、ヒンジキャップを含む容器本体の全体を徐冷するためにかける冷却水である。
【0004】
特許文献1に記載のヒンジキャップでは、キャップ本体に形成された蓋係合部のうち、ヒンジ側に位置する部分を切り欠くことで切欠部を形成している。さらに、切欠部の内側に位置するように、閉塞壁の上面から内壁を上方に向けて延びるように形成している。そして蓋体の閉蓋時に、切欠部と内壁との間に空気通路を画成している。
これにより、キャップ内へのシャワー水の侵入を抑制しながら、リーク検査時の空気通路を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-151402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のヒンジキャップでは、切欠部を形成するために、キャップ本体における蓋係合部の一部を周方向に切り欠いている。そのため、依然としてシャワー水が侵入するおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、シャワー水の侵入を抑制することができると共に、リーク検査を行うことができるヒンジキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るヒンジキャップは、内容物が収容される容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、前記キャップ本体にヒンジ部を介して回動可能に連結され、前記キャップ本体を覆う蓋体と、を備え、前記キャップ本体は、前記容器本体の口部に装着される装着部と、前記装着部に連設されると共に前記容器本体の口部を閉塞する閉塞壁と、を有し、前記装着部には、上方に向けて突出すると共に前記蓋体を下方から支持する環状の支持壁が形成され、前記閉塞壁には、内側が内容物を注出する注出口とされ、上方に向かって突出する注出筒が形成され、前記蓋体は、頂壁と、前記頂壁の外周縁部から下方に向けて延びると共に、前記支持壁に対して着脱可能に嵌合する周壁と、前記頂壁から下方に向けて延びるように形成され、前記注出筒の内側を密封すると共に、前記ヒンジ部回りの前記蓋体の開操作に伴って前記注出筒から離脱可能とされた栓体と、を有し、前記支持壁の一部は、前記キャップ本体の径方向に弾性変形可能な可動壁とされ、前記周壁には、前記可動壁に対して前記径方向の内側から接触すると共に、前記径方向の内側に向けた前記可動壁の弾性変形を規制し、且つ前記径方向の外側に向けた前記可動壁の弾性変形を許容する規制部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るヒンジキャップによれば、製品輸送時や製品流通時等の未開封時では、栓体が注出筒の内側を密封して注出口を閉塞しているので、容器本体内から外部への内容物の漏出を適切に防止することができる。使用時においては、ヒンジ部回りに蓋体を開操作することで、蓋体を開蓋状態にすることができると共に、注出筒から栓体を離脱させて注出口を開放することができる。これにより、例えば容器本体を傾倒させることで、注出筒を通じて容器本体内の内容物を外部に注出することができる。
【0010】
ヒンジキャップの成形後、注出筒と栓体との間の密封性(シール性)のリーク検査を行う場合には、蓋体を閉蓋状態にした後、例えば閉塞壁の下方から注出口を通じて注出筒の内側に検査用のエアーを供給する。注出筒と栓体との間に密封性の不良があった場合には、注出筒から漏れたエアーが閉塞壁と蓋体の頂壁との間の空間内に入り込む。この空間は、閉塞壁、支持壁、蓋体の周壁、及び蓋体の頂壁によって囲まれているため、密閉された状態となっている。ただし、支持壁の一部が可動壁とされているため、空間内にエアーが入り込むことで空間内の圧力が上昇すると、可動壁は径方向の外側に向けて弾性変形すると共に規制部から離間する。これにより、規制部と可動壁との間を通じて、空間内から外部に向けてエアーを排出することが可能となる。これにより、排出されるエアーの有無等に基づいて、リーク検査を行うことができる。
【0011】
特に可動壁は、規制部に接触していると共に、規制部によって径方向の内側に向けた弾性変形が規制されている。そのため、例えば可動壁に対して外部から応力が作用したとしても、可動壁が径方向の内側に向けて弾性変形することがなく、規制部と可動壁との間の接触状態を維持することができる。従って、内容物が充填された容器本体の口部にヒンジキャップを装着した後、徐冷のためにシャワー水をかけたとしても、シャワー水が規制部と可動壁との間を通じて、上記空間内に侵入することを効果的に抑制することができる。
【0012】
(2)前記規制部及び前記可動壁は、前記蓋体の閉蓋時、キャップ軸方向から見た平面視で、前記注出筒、前記規制部、前記可動壁及び前記ヒンジ部がこの順に前記径方向に沿って並ぶように配置されても良い。
【0013】
この場合には、規制部及び可動壁をヒンジ部の近傍に配置できるので、蓋体の回動操作に影響され難く、蓋体の閉蓋時に、可動壁に対して規制部を径方向の内側から確実に接触させ易い。
【0014】
(3)前記注出筒、前記規制部、前記可動壁及び前記ヒンジ部が前記径方向に沿って並んだ方向を第1方向としたときに、前記可動壁は、前記キャップ軸方向から見た平面視で、前記第1方向に交差する第2方向に沿って延びるように形成されても良い。
【0015】
この場合には、可動壁を第2方向に沿って直線状に延びるように形成できるので、上述した空間内の圧力が上昇したときに、可動壁を全体に亘って均一に弾性変形させ易い。これにより、エアーをスムーズに排出することができ、リーク検査を精度良く行い易い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シャワー水の侵入を抑制することができると共に、リーク検査を行うことができるヒンジキャップとすることができる。従って、使い易いヒンジキャップとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るヒンジキャップの実施形態を示す縦断面図である。
図2図1に示す蓋体をヒンジ部回りに開操作した状態を示す縦断面図である。
図3図2に示すヒンジキャップの上面図である。
図4図1に示す状態から可動壁が後方側に弾性変形している状態を示す縦断面図である。
図5】可動壁及び規制部の変形例を示す図であって、可動壁が後方側に弾性変形している状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るヒンジキャップ1の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のヒンジキャップ1は、内容物が収容される容器本体2の口部2aに装着された筒状のキャップ本体10と、キャップ本体10に対してヒンジ部11を介して連結され、キャップ本体10を覆う有頂筒状の蓋体12と、を備えている。
なお、キャップ本体10及び蓋体12は、例えば射出成形等によって一体に形成された成形品とされている。
【0019】
ヒンジキャップ1及び容器本体2は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置された状態で配設されている。本実施形態では、この共通軸をキャップ軸O1といい、キャップ軸O1に沿った蓋体12側を上側といい、容器本体2側を下側という。さらにキャップ軸O1方向から見た平面視において、キャップ軸O1に交差する方向を径方向といい、キャップ軸O1回りに周回する方向を周方向という。
さらに径方向のうち互いに直交し合う一方向を前後方向(第1方向)L1といい、他方向を左右方向(第2方向)L2という。さらには前後方向L1のうちヒンジ部11側を後方とし、その反対側を前方とする。
【0020】
図1に示すように、容器本体2の口部2aの外周面には、径方向の外側に向けて突出した第1係合突起3が形成されている。第1係合突起3は、環状に形成されていても構わないし、周方向に間隔をあけて複数形成されていても構わない。
なお、容器本体2の口部2aに第1係合突起3を形成する場合に限定されるものではなく、例えば第1係合突起3に代えて、容器本体2の口部2aの外周面に雄ねじ部を形成しても構わない。
【0021】
容器本体2内に収容される内容物は、特に限定されるものではないが、例えば、液体食品や液体調味料等の流動性を有する液状の内容物等を好適に利用することができる。さらには、内容物として、例えば塩や紛体食品調味料、小麦粉等の紛体状の内容物や、肥料、除草剤等の粒体状の内容物等を用いることも可能である。
【0022】
図1及び図2に示すように、キャップ本体10は、容器本体2の口部2aに装着される装着部20と、装着部20に連設されると共に、容器本体2の口部2aを覆って閉塞する閉塞壁40と、を備えている。
【0023】
装着部20は、容器本体2の口部2aの上端開口縁上に位置する環状のフランジ部21と、フランジ部21の内周縁部から下方に向けて延びると共に、容器本体2の口部2aの内側に嵌合するシール筒22と、フランジ部21の外周縁部から下方に向けて延びると共に、容器本体2の口部2aを径方向の外側から囲む装着筒23と、を備えている。
【0024】
フランジ部21には、上方に向けて突出すると共に蓋体12を下方から支持する環状の支持壁24が形成されている。
シール筒22及び装着筒23は、例えば打栓によって、シール筒22と装着筒23との間に形成された装着溝25内に口部2aが入り込むことで、口部2aに対して嵌合固定されている。この際、シール筒22及び装着筒23は、口部2aを内外から挟み込んでいるので、強固な嵌合力で口部2aに装着されている。なお、シール筒22は、容器本体2の口部2aの内側に例えば気密に嵌合され、容器本体2を適切に密封している。
【0025】
図示の例では、装着筒23は、容器本体2の口部2aに対してアンダーカット嵌合されている。
具体的には、装着筒23の下端部における内周面には、口部2aの外周面に形成された第1係合突起3に係合する第2係合突起26が径方向の内側に向けて突出しており、第2係合突起26が第1係合突起3に対してアンダーカット嵌合されている。
なお、第2係合突起26は、第1係合突起3に対してアンダーカット嵌合可能とされていれば、環状に形成されていても構わないし、周方向に間隔をあけて複数形成されていても構わない。
【0026】
ただし、容器本体2の口部2aに対する装着筒23の装着方法は、打栓等によるアンダーカット嵌合に限定されるものではない。例えば先に述べたように、容器本体2の口部2aの外周面に雄ねじ部を形成した場合には、装着筒23の内周面に雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を形成することで、螺着によって容器本体2の口部2aに対して装着筒23を装着しても構わない。
【0027】
図1図3に示すように、装着筒23の上端部のうち前方側に位置する部分には、キャップ軸O1を中心として略180°の範囲に亘って下方に凹むように形成された平面視円弧状の段差部30が形成されている。なお、装着筒23の上端部のうち後方側に位置する残りの部分は、上端面が閉塞壁40の上面と略面一とされた平面視円弧状の後方部35とされている。
【0028】
段差部30は、閉塞壁40の上面よりも下方に位置すると共に周方向に延びる平面視円弧状の平坦面31と、平坦面31の周端部と後方部35との間をそれぞれ接続する第1傾斜面32及び第2傾斜面33と、を備えている。
第1傾斜面32及び第2傾斜面33は、キャップ軸O1を挟んで径方向に向かい合うように配置されている。つまり、第1傾斜面32及び第2傾斜面33は、キャップ軸O1を挟んで左右方向L2に沿って並ぶように配置されている。さらに第1傾斜面32及び第2傾斜面33は、平坦面31から後方部35側に向かうにしたがって上方に向けて延びるように、傾斜した状態で形成されている。
【0029】
装着筒23における後方部35のうち、後方側に位置する部分の外周面には、ヒンジ部11が連結されている。
図3に示すように、装着筒23における後方部35の外周面には、径方向の内側に向けて、平面視略V字状に切り込まれた切り込み部36が形成されている。切り込み部36は、後方部35のうちヒンジ部11と第1傾斜面32との間に位置する部分に形成されている。切り込み部36は、後方部35の上端面から下方に向けて延びるように形成され、上方に向けて開口している。なお、切り込み部36は、下端部に図示しない薄肉底壁が残るように形成されている。
【0030】
さらに、装着筒23における後方部35のうち切り込み部36に対応する部分の内周面には、図示しない内側切り込み部が切り込み部36に対応して上下方向に沿って縦長に形成されている。これにより、切り込み部36の内側には、薄肉の縦方向引き裂きラインとして機能する縦弱化部37が形成されている。
【0031】
図2及び図3に示すように、装着筒23における後方部35には、上方に向けて開口したスリット溝38が形成されている。スリット溝38は、縦弱化部37を挟んで切り込み部36とは周方向の反対側に位置する部分を起点として、第2傾斜面33に向けて周方向に延びるように形成されている。スリット溝38は、第2傾斜面33に達する程度の長さで平面視円弧状に形成されていると共に、平坦面31に連なるように形成されている。
なお、スリット溝38の底面のうち、該スリット溝38の起点付近に位置する部分の内周側は、周方向に延びる薄肉の横弱化部39とされている。この横弱化部39は、薄肉の周方向引き裂きラインとして機能する。
さらに装着筒23における後方部35のうち、切り込み部36と第1傾斜面32との間に位置する部分は、厚肉部34とされている。
【0032】
上述のように、キャップ本体10に切り込み部36、縦方向引き裂きラインとして機能する縦弱化部37、及び周方向引き裂きラインとして機能する横弱化部39が形成されているので、容器本体2の口部2aからヒンジキャップ1を分別廃棄することが可能とされている。この点については、後に説明する。
【0033】
図1図3に示すように、閉塞壁40は、シール筒22の上端部に外周縁部が全周に亘って繋がるように形成されている。これにより、閉塞壁40は、装着部20に連設されると共に、容器本体2の口部2aを上方から覆って塞いでいる。
【0034】
閉塞壁40には、内容物を注出する注出口41を有する注出筒42が設けられている。
注出筒42は、キャップ軸O1よりも前方側に配置され、閉塞壁40から上方に向けて突出するように形成されている。注出口41は、注出筒42の内側に配置され、閉塞壁40を上下に貫通するように形成されている。これにより、注出筒42は、注出口41を通じて容器本体2内に連通している。そのため、注出筒42の内側を通じて内容物を外部に注出することが可能とされている。
なお、注出口41の中心を上下に貫く軸線を、注出軸O2と称する。
【0035】
注出筒42は、上端部側の内径が上方に向かうにしたがって漸次拡径するように形成されている。さらに注出筒42の突出高さは、全周に亘って同一ではなく、周方向に沿って変化している。具体的には、注出筒42は、突出高さが最も高い頂上部42aが前方側に位置し、突出高さが最も低い低位置部42bが後方側に位置するように形成されている。これにより、注出筒42は、頂上部42a及び低位置部42bが、注出軸O2を挟んで前後方向L1に向かい合うように形成されている。
このように注出筒42が形成されているため、頂上部42aが下向きとなるように容器本体2を前方に向けて傾けることで、内容物をスムーズに注出することが可能とされている。
【0036】
上述のように構成されたキャップ本体10において、支持壁24の一部はキャップ本体10の径方向に弾性変形可能な可動壁50とされている。
図1図4に示すように、可動壁50は、支持壁24のうち後方側に位置する部分に配置され、支持壁24の他の部分よりも薄肉に形成されている。図示の例では、可動壁50は、キャップ軸O1方向から見た平面視で、左右方向L2に沿って延びる直線状の平坦壁とされている。よって、可動壁50の肉厚は、左右方向L2に沿って均一な厚みとされている。
ただし、可動壁50のうち閉塞壁40の上面に接続される下端部は、前後方向L1に僅かに括れるように形成されている。これにより、可動壁50の下端部の厚みは、可動壁50の他の部分より薄肉とされている。従って、可動壁50は、下端部を起点として前後方向L1に弾性変形し易い構成とされている。
【0037】
なお、可動壁50は、左右方向L2に沿った長さがヒンジ部11よりも短く形成されている。さらに可動壁50の高さは、支持壁24の高さと同等とされている。
さらに図3に示すように、可動壁50のうち左右方向L2の両側に位置する両端縁と、支持壁24の残りの部分との間は、周方向に分断されている。これにより、可動壁50の両端縁と、支持壁24の残りの部分との間には、径方向及び上方に開口した隙間51がそれぞれ形成されている。
【0038】
図1図3に示すように、蓋体12は、キャップ周壁(周壁)60及びキャップ頂壁(頂壁)61を有する有頂筒状に形成され、キャップ本体10における注出筒42を上方から覆っている。
【0039】
キャップ周壁60の下端面は、キャップ本体10における装着筒23の上端面に対して接触する。これにより、キャップ本体10に対して蓋体12を閉めた際に、蓋体12を安定した姿勢で閉蓋状態に維持することが可能とされている。
さらに、キャップ周壁60の下端部側の内周面には、キャップ本体10の支持壁24に対して着脱可能に嵌合される蓋係合部62が形成されている。蓋係合部62は、キャップ周壁60の全周に亘って形成されている。
【0040】
蓋係合部62は、キャップ周壁60の内周面から径方向の内側に向けて突出すると共に、支持壁24の上端開口縁に対して上方から接触する係合面を有する第1蓋係合部63と、キャップ周壁60のうち第1蓋係合部63よりも下方に位置する部分の内周面から径方向の内側に向けて突出すると共に、支持壁24に対しアンダーカット嵌合される第2蓋係合部64と、を備えている。
ただし、第1蓋係合部63は、キャップ周壁60のうち該キャップ周壁60の後側部分を除いた部分に、キャップ周壁60に沿って平面視円弧状に形成されている。
【0041】
このように、キャップ周壁60に蓋係合部62が設けられているので、キャップ本体10に対して蓋体12が意図せずに開蓋してしまうことを抑制することができる。さらに、キャップ周壁60の下端面のうち、装着筒23に形成された段差部30(平坦面31、第1傾斜面32及び第2傾斜面33)に対向する部分には、下方に向けて延びる被覆壁65が形成されている。
被覆壁65は、段差部30に対応して周方向に延びる平面視円弧状に形成されている。被覆壁65の下端部は、段差部30を構成する平坦面31、第1傾斜面32及び第2傾斜面33のそれぞれに対して、近接或いは当接するように形成されている。
【0042】
キャップ周壁60における後側部分の外周面には、ヒンジ部11が連結されている。これにより、ヒンジ部11は、キャップ軸O1方向から見た平面視で、注出筒42及び可動壁50よりも後方に配置される。従って、注出筒42とは径方向の反対側に向けて、すなわち後方側に向けて、蓋体12の全体を開操作することが可能となる。蓋体12を開操作することで、注出口41及び注出筒42を外部に露出させることが可能となる。
【0043】
なお、キャップ周壁60のうち、キャップ軸O1を挟んでヒンジ部11とは反対側に位置する前側部分には、径方向の外側に向けて突出した摘み片66が形成されている。この摘み片66を利用することで、蓋体12を容易に開閉操作することが可能とされている。
【0044】
さらに、図1に示すように、キャップ周壁60の下端部側の内周面には、蓋体12の閉蓋時に、支持壁24における上端部側の内周面に対して径方向の内側から接触して、キャップ周壁60の径方向の外側に向けた広がりを抑制する係止凸部67が形成されている。
係止凸部67は、キャップ周壁60における後側部分を除いた部分において、周方向に間隔をあけて複数形成されている。さらに係止凸部67は、第1蓋係合部63よりも径方向の内側に突出し、且つ第1蓋係合部63の係合面よりも下方に突出するように形成されている。これにより、係止凸部67は、蓋体12の閉蓋時に、支持壁24における上端部側の内周面に対して径方向の内側から接触することが可能とされている。
【0045】
図1及び図2に示すように、キャップ頂壁61には、注出筒42の内側を密封すると共に、ヒンジ部11回りの蓋体12の開操作に伴って注出筒42から離脱可能とされた注出栓(栓体)68が設けられている。
注出栓68は、キャップ頂壁61から下方に向けて延びるように形成された円筒状に形成され、注出軸O2と同軸に形成されている。注出栓68は、注出筒42の内側に上方から入り込むことで、注出筒42を密封すると共に注出口41を閉塞している。なお、注出栓68は、円筒状に形成される場合に限定されるものではなく、例えば中実の円柱状に形成されても構わない。
【0046】
なお、キャップ頂壁61のうち注出栓68の上端部を囲む部分は、環状の薄肉部69とされている。薄肉部69は、キャップ頂壁61の下面側に形成された環状の凹部によって形成されている。
このように、キャップ頂壁61に薄肉部69が形成されているため、例えば内容物が高温充填された容器本体2にヒンジキャップ1を打栓するときに、打栓によって容器本体2内の圧力が上昇したとしても、薄肉部69による変形を利用して圧力を緩和することができる。従って、圧力上昇に起因して、キャップ本体10から蓋体12が意図せずに開いてしまうことを防止することができる。
【0047】
上述のように構成された蓋体12において、図1図4に示すように、キャップ周壁60における後側部分には、キャップ本体10に形成された可動壁50に対して、径方向の内側から接触する規制部70が形成されている。
規制部70は、キャップ周壁60の後側部分の内周面から前方に向けて突出すると共に、下方に向けて折り曲げられるように形成されている。これにより、規制部70の下端部は、可動壁50よりも前方側に配置されている。さらに規制部70の下端部の外周面は、可動壁50に対して前方から当接している。
また規制部70は、可動壁50に対応して左右方向L2に沿って延びるように形成されている。これにより、規制部70の下端部の外周面は、可動壁50の全長に亘って前方から当接している。そのため、規制部70と可動壁50との間は、両者の当接によってシール性が維持されている。
【0048】
可動壁50の前方に規制部70が配置されているので、規制部70は、前方に向けた(径方向の内側に向けた)可動壁50の弾性変形を規制し、且つ後方に向けた(径方向の外側)に向けた可動壁50の弾性変形を許容している。これにより、可動壁50は、規制部70とキャップ周壁60との間において、弾性変形可能とされている。
【0049】
上述のように本実施形態のキャップ本体10では、閉塞壁40にキャップ軸O1よりも前方側に注出筒42が設けられ、キャップ軸O1よりも後方側に可動壁50が設けられている。さらに、蓋体12の閉蓋時に、可動壁50よりも前方に規制部70が配置されている。
従って、図1に示すように、蓋体12の閉蓋時、キャップ軸O1方向から見た平面視で、注出口41を含む注出筒42、規制部70、可動壁50及びヒンジ部11は、キャップ本体10の径方向(前後方向L1)に沿って並ぶように配置されている。つまり、蓋体12の閉蓋時、キャップ軸O1方向から見た平面視で、注出口41を含む注出筒42、規制部70、可動壁50及びヒンジ部11は、前後方向L1に沿って並ぶように配置され、且つ前方から後方に向けて、この順番で並ぶように配置されている。
【0050】
なお、図3に示すように、上述した規制部70における左右方向L2の両端部には、後方に向けて延びると共に、キャップ周壁60の内周面に接続される側壁71がそれぞれ形成されている。側壁71は、蓋体12の閉蓋時に、可動壁50よりも左右方向L2の外側に配置され、且つ可動壁50の左右方向L2の外側に形成された隙間51に配置される。これにより、蓋体12の閉蓋時、上記隙間51は側壁71によって埋められた状態となっている。
【0051】
(ヒンジキャップの作用)
上述のように構成されたヒンジキャップ1の作用について説明する。
製品輸送時や製品流通時等の未開封時では、図1に示すように、注出栓68が注出筒42内に入り込んで注出口41を閉塞している。これにより、容器本体2内を密封することができ、外部への内容物の漏出を適切に防止することができる。
【0052】
次に、内容物の注出を行う場合について説明する。
この場合には、図2に示すように、摘み片66等を利用して蓋体12をヒンジ部11回りに開操作することで、注出筒42から注出栓68を離脱させることができ、注出口41を開放することができる。これにより、例えば容器本体2を前方に向けてスクイズすることにより、容器本体2内の内容物を、注出口41を通じて注出口41内に流動させることができる。そのため、内容物を、注出筒42の頂上部42aから外部に注出することが可能である。
【0053】
(リーク検査)
次に、ヒンジキャップ1の成形後、容器本体2に装着する前段階において、注出筒42と注出栓68との間の密封性(シール性)のリーク検査を行う場合について説明する。
ヒンジキャップ1の成形後、蓋体12をキャップ本体10に被せて、図1に示す閉蓋状態にする。これにより、注出筒42の内側に注出栓68を入り込ませることができ、注出筒42の内側を密封することができる。
【0054】
次いで、閉塞壁40の下方から、注出口41を通じて注出筒42の内側に検査用のエアーを供給する。このとき、注出筒42と注出栓68との間に密封性の不良があった場合には、注出筒42から漏れたエアーが、閉塞壁40とキャップ頂壁61との間の空間R内に入り込む。この空間Rは、閉塞壁40、キャップ頂壁61、支持壁24、蓋係合部62及び側壁71によって囲まれているため、密封された状態となっている。
【0055】
ただし、支持壁24の一部が可動壁50とされているため、空間R内にエアーが入り込むことで、空間R内の圧力が上昇すると、図4に示す矢印の如く、可動壁50は後方に向けて(径方向の外側に向けて)弾性変形すると共に、規制部70から離間する。これにより、規制部70と可動壁50との間を通じて、空間R内から外部に向けてエアーを排出することが可能となる。
従って、排出されるエアーの有無等に応じて、リーク検査を行うことができる。
【0056】
(ヒンジキャップの装着)
上述したリーク検査後、検査に合格した良品のヒンジキャップ1は、例えば内容物が高温充填された容器本体2の口部2aに対して打栓等によって装着される。その後、ヒンジキャップ1を含む容器本体2の全体にシャワー水を欠けて徐冷を行う。
この場合において、図1に示すように、可動壁50は規制部70に対して接触していると共に、規制部70によって前方に向けた(径方向の内側に向けた)弾性変形が規制されている。そのため、例えば可動壁50に対して外部から応力が作用したとしても、可動壁50が前方に向けて弾性変形することがなく、規制部70と可動壁50との間の当接状態を維持することができる。
【0057】
従って、ヒンジキャップ1を含む容器本体2の全体にシャワー水をかけたとしても、シャワー水が規制部70と可動壁50との間を通じて、上記空間R内に侵入することを効果的に抑制することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のヒンジキャップ1によれば、シャワー水の侵入を抑制することができると共に、リーク検査を行うことができる。従って、使い易いヒンジキャップ1とすることができる。
さらに、規制部70及び可動壁50をヒンジ部11の近傍に配置できるので、蓋体12の回動操作に影響され難く、蓋体12の閉蓋時に可動壁50に対して規制部70を確実に接触させ易い。しかも、可動壁50を左右方向L2に沿って延びるように形成しているので、空間R内の圧力が上昇したときに、可動壁50を全体に亘って均一に弾性変形させ易い。これにより、エアーをスムーズに排出することができ、リーク検査を精度良く行い易い。
【0059】
なお、内容物を注出し終わった後、ヒンジキャップ1を廃棄する場合について、簡単に説明する。
この場合には、ヒンジ部11回りに蓋体12を開操作した後、蓋体12の全体を指先等で把持しながら引き上げるように外方に引っ張る。これにより、切り込み部36によって形成された縦弱化部37を破断させることができると共に、続けて横弱化部39を破断させながら、蓋体12を引き上げることができる。さらに、蓋体12を引き上げることで、破断不能な厚肉部34を含むキャップ本体10の全体を容器本体2の口部2aから取り外すことができ、ヒンジキャップ1の全体を取り外すことができる。その結果、ヒンジキャップ1と容器本体2とを分別廃棄することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0061】
例えば、上記実施形態では、可動壁50を左右方向L2に沿って延びるように形成したが、この場合に限定されるものではなく、例えば周方向に延びる平面視円弧状に形成しても構わない。ただし、可動壁50を左右方向L2に沿って延びるように形成することで、可動壁50を弾性変形し易くすることができるので、好ましい。
【0062】
さらに上記実施形態では、可動壁50と規制部70とを互いに当接させることで、規制部70を利用して可動壁50の径方向の内側に向けた弾性変形を規制させたが、この場合に限定されるものではない。例えば図5に示すように、第1蓋係合部63及び第2蓋係合部64を有する蓋係合部62を、キャップ周壁60の全周に亘って環状に形成したうえで、第1蓋係合部63に可動壁50が係合する係合部(規制部)80を設けても構わない。
【0063】
係合部80は、第1蓋係合部63よりも前方に向けて(径方向の内側に向けて)突出すると共に、下方に向けて突出するように形成され、可動壁50よりも前方側に位置している。これにより、可動壁50は、係合部80に対して後方から係合することで、前方に向けた弾性変形が規制され、且つ後方に向けた弾性変形が許容される。従って、この場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【符号の説明】
【0064】
O1…キャップ軸
L1…前後方向(第1方向)
L2…左右方向(第2方向)
1…ヒンジキャップ
2…容器本体
2a…容器本体の口部
10…キャップ本体
11…ヒンジ部
12…蓋体
20…装着部
24…支持壁
40…閉塞壁
41…注出口
42…注出筒
50…可動壁
60…キャップ周壁(蓋体の周壁)
61…キャップ頂壁(蓋体の頂壁)
68…注出栓(栓体)
70…規制部
80…係合部(規制部)
図1
図2
図3
図4
図5