IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特許7555329熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体
<>
  • 特許-熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体 図1
  • 特許-熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体 図2
  • 特許-熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体 図3
  • 特許-熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体 図4
  • 特許-熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体 図5
  • 特許-熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体 図6
  • 特許-熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体 図7
  • 特許-熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体 図8
  • 特許-熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体 図9
  • 特許-熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/42 20060101AFI20240913BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240913BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240913BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240913BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240913BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240913BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240913BHJP
【FI】
C08J9/42 CFF
C08G18/00 F
B32B5/18
B32B27/40
C09D201/00
C09D5/00
C08G101:00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021506724
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019047496
(87)【国際公開番号】W WO2020041464
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】62/720,409
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】粟生 薫
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、ウェンポ
(72)【発明者】
【氏名】クー、イーペイ
(72)【発明者】
【氏名】ブリュヌ、ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ディエッシュ、ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ブラック、マーク
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-307126(JP,A)
【文献】特開2017-077719(JP,A)
【文献】中国実用新案第204797376(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
C08J9/00-9/42
C08J7/04-7/06
B32B1/00-43/00
C09D1/00-10/00
C09D101/00-201/10
C08G18/00-18/87
C08G71/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体であって、
第1の主表面および前記第1の主表面の反対側の第2の主表面を有する可撓性連続気泡ポリウレタンフォームと、
前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの前記第1の主表面の表面積の30~90パーセントを単一の連続ストリップまたは一連の平行なストリップの形状で覆う(cov.(被覆率)、%で表される)可撓性熱伝導性材料であって、前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームを前記可撓性熱伝導性材料の画定された縁部の間で露出させる1つ以上のギャップを提供し、前記1つ以上のギャップの各ギャップが、式I:
ギャップ幅(mm)≦-0.196×cov.(%)+20.6(式I)
に従うギャップ幅を有し、
前記1つ以上のギャップの総表面積が、前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの前記第1の主表面の前記表面積の70~10パーセントを提供する、可撓性熱伝導性材料と、を含み、前記可撓性熱伝導性材料が、カプセル化された相変化材料を含有する、
、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体。
【請求項2】
前記カプセル化された相変化材料が、前記可撓性熱伝導性材料1グラムあたり80~300ジュールの潜熱転移を有する、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記可撓性熱伝導性材料が、ゲルであるか、または
前記可撓性熱伝導性材料が、金属である、請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
前記可撓性熱伝導性材料の前記形状が、0.1~2ミリメートルの厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項5】
前記可撓性熱伝導性材料の前記形状が、前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの前記第1の主表面上の単一の連続ストリップであるか、または
前記可撓性熱伝導性材料の前記形状が、前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの前記第1の主表面上の一連の平行なストリップである。請求項1~4のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項6】
前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの前記第1の主表面上の前記単一の連続ストリップが、蛇行形状を有する、請求項5に記載の構造体。
【請求項7】
前記1つ以上のギャップの各ギャップの前記ギャップ幅が、同じ値を有するか、または前記1つ以上のギャップの各ギャップの前記ギャップ幅が、異なる値を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項8】
前記可撓性熱伝導性材料の少なくとも一部が、前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの前記第1の主表面と同一平面上にある前記コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの外面を形成するか、または
前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの少なくとも一部が、前記可撓性熱伝導性材料を完全に覆う、請求項1~7のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項9】
前記可撓性熱伝導性材料が、ポリマー膜にカプセル化されているか、または前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームが、粘弾性ポリウレタンフォームである、請求項1~8のいずれか一項に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、連続気泡ポリウレタンフォーム構造体に関し、より具体的には、熱吸収能力を備えたコーティングされた連続気泡ポリウレタンフォーム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性粘弾性ポリウレタンフォーム(緩徐回復フォーム、記憶性フォーム、および高減衰フォームとしても知られる)は、圧縮からの比較的緩徐で緩やかな回復を特徴とし、粘弾性フォームは、比較的より低い弾力性を有し得る。粘弾性フォームの例示的な用途は、形状適合、エネルギー減弱化、および/または音減衰などのフォームの特徴を利用する。例えば、粘弾性ポリウレタンフォームは、快適用途(寝具および枕など)、衝撃吸収用途(運動パッドおよびヘルメットなど)、騒音および/または振動減衰用途(例えば、耳栓、自動車パネルなど)、および濾過用途(真空エアフィルター、雨どい/雨受けを植物の葉などの破片および融雪物から保護するための溝ガードなど)において使用されてもよい。
【0003】
粘弾性フォームなどのフォームに対するコーティングは、部分的に、人体から環境への熱および/または水分の移動が不十分なことにより生じ得る温かい睡眠(「睡眠暑い」または「暑い睡眠」とも呼ばれる)に関連するような問題を最小化、軽減、および/または回避するために提案される。例えば、暖かい睡眠は、部分的に、人体の上にある毛布および/または人体の下にあるマットレスにより生じ得る。例えば、フォーム自体(フォームは大部分が空気であり得る)と比較して、ゲル層が提供し得る、より大きい固体質量および接触面積(「ヒートシンク効果」)のために、ポリウレタン系フォームの枕上にコーティングまたはラミネートされる(成形中または製造後の段階のいずれかで)固体ポリマーゲル層が、これらの問題を軽減するのに役立つことが示唆されている。固体ポリマーゲルの非通気性は、人間の頭部が通常は睡眠中に毛布で覆われず、人間の頭部が室内空気にさらされて余分に冷却されているため、枕では問題として見られない。しかしながら、使用中に毛布が人体を覆うマットレス材料では、固体ポリマーゲルの非通気性が、「ヒートシンク効果」によって克服されない不利益(例えば、暖かい睡眠、不快をもたらす人体に近い水分レベルの上昇など)をもたらすと考えられる。従って、当該技術分野では、先行技術に存在するこれらの不利益を克服する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、先行技術に存在する不利な点を克服するのを助けることができる熱吸収能力を備えたコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体を提供する。コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体は、第1の主表面および第1の主表面の反対側の第2の主表面を有する、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームを含む。コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォームは、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの第1の主表面の表面積の30~90パーセントを所定の形状で覆う(「cov.(被覆率)」、%で表される)可撓性熱伝導性材料であって、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームを可撓性熱伝導性材料の画定された縁部の間で露出させる1つ以上のギャップを提供し、1つ以上のギャップの各ギャップが、式I:
ギャップ幅(mm)≦-0.196×cov.(%)+20.6 (式I)
に従うギャップ幅を有し、
1つ以上のギャップの総表面積が、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの第1の主表面の表面積の70~10パーセントを提供する、可撓性熱伝導性材料をさらに含む。様々な実施形態では、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームは、粘弾性ポリウレタンフォームである。
【0005】
本明細書で提供される様々な実施形態について、可撓性熱伝導性材料は、カプセル化された相変化材料を含有する。様々な実施形態では、カプセル化された相変化材料は、可撓性熱伝導性材料1グラムあたり80~300ジュールの潜熱転移を有する。追加の実施形態では、可撓性熱伝導性材料は、ゲルである。他の実施形態では、可撓性熱伝導性材料は、金属である。様々な実施形態について、可撓性熱伝導性材料は、ポリマー膜にカプセル化され得る。
【0006】
所定の形状の可撓性熱伝導性材料は、0.1~2ミリメートルの厚さを有することができる。可撓性熱伝導性材料の所定の形状は、連続気泡粘弾性ポリウレタンフォームの第1の主表面上に単一の連続ストリップを含むことができる。一実施形態では、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの第1の主表面上の単一の連続ストリップは、蛇行形状を有する。代替の実施形態では、可撓性熱伝導性材料の所定の形状は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの第1の主表面上の一連の平行なストリップである。
【0007】
様々な実施形態について、1つ以上のギャップのそれぞれのギャップ幅は、同じ値を有する。代替の実施形態では、1つ以上のギャップのそれぞれのギャップ幅は、異なる値を有する。本明細書で提供されるギャップ幅の各値は、式Iの式を使用して決定される。
【0008】
コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体の実施形態は、可撓性熱伝導性材料の少なくとも一部が、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの第1の主表面と同一平面上にあるコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの外面を形成する、構造体を含む。追加の実施形態では、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの少なくとも一部は、可撓性熱伝導性材料を完全に覆う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体の実施形態である。
図2】本開示のコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体の実施形態である。
図3】本開示のコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体の実施形態である。
図4】本開示のコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体の実施形態である。
図5】本開示のギャップ幅を計算するための式IおよびIIを求めるために分析された、本発明の実施例および比較例の両方からのデータへの適合を示すグラフである。
図6】眠っている人とマットレスとに使用される簡略化された形状モデルである。
図7】本開示の一実施形態による、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体を通る熱および水分輸送をモデル化するために使用される可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体上のコーティングパターンの形状モデルの図である。
図8】楕円を中心に原点を有する極座標で主軸から測った角度座標の図である。
図9】本開示の一実施形態による、70%のPCM被覆率、7つのギャップを有するコーティングパターンの一例を示す。
図10図9に示す70%のPCM被覆率および7つのギャップを有するコーティングパターンの2Dモデルの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、先行技術に存在する不利な点を克服するのを助けることができる熱吸収能力を備えたコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体を提供する。本開示のコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームと、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体の第1の主表面の表面積の所定の割合を覆う可撓性熱伝導性材料と、を含む。しかしながら、他のコーティングとは異なり、本開示の可撓性熱伝導性材料は、可撓性熱伝導性材料の画定された縁部間に可撓性連続気泡ポリウレタンフォームを露出させる1つ以上のギャップを提供するために事前定義された形状を有する。1つ以上のギャップの各ギャップの幅は、本明細書で提供される非常に特定の式によって決定され、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体からの熱および水分の移動の両方のバランスを可能にし、これが、両方を冷却し、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体と相互作用する人の皮膚表面の水分レベルを維持するのに役立つ。
【0011】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、および「1つ以上」は互換的に使用される。「および/または」という用語は、列挙された項目のうちの1つ、1つ以上、またはすべてを意味する。端点による数値範囲の列挙は、その範囲内のすべての数値が含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。本明細書の図は、最初の1桁または複数桁が図面の図番号に対応し、残りの桁が図面内の要素を識別するという番号付け規則に従っている。異なる数字間の同様の要素は、同様の数字を使用することによって識別することができる。例えば、354は、図3の要素「54」を指定することができ、同様の要素は、図4の454として指定することができる。図の目的は例示することであり、図は決して限定することを意図したものではないことを強調される。本明細書の図は、縮尺通りではない場合があり、図中の要素の関係は誇張されている場合がある。これらの図は、本明細書で説明する概念的な構造体および方法を説明するために使用されている。
【0012】
様々な実施形態について、本開示のコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体は、マットレス、クッション、枕、布張りの家具、または支持および/もしくは緩衝に加えて熱および水分移動の両方が望ましい任意の他の物品に使用することができる。しかしながら、これらは、本明細書に開示される実施形態の単なる例示的な実装形態であることに留意されたい。実施形態は、上述したものと同様の問題(例えば、熱および水分の移動)の影響を受けやすい他の技術にも適用可能である。例えば、本明細書に記載のコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体は、とりわけ、履物、履物インサート、保護スポーツ器具(例えば、ヘルメット、肩パッド、すねパッドなど)および保護衣類(例えば、オートバイのジャケット、耳栓など)に使用され得、これらはすべて本実施形態の範囲内にある。
【0013】
本明細書で論じられるような可撓性熱伝導性材料は、本明細書で論じられるように、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム上に事前定義された形状を有し、その結果、可撓性熱伝導性材料の画定された縁部間に可撓性連続気泡ポリウレタンフォームを露出させる1つ以上の「ギャップ」を提供する。本明細書で使用される場合、ギャップは、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの埋められていない空間もしくは間隔、または可撓性連続気泡ポリウレタンフォームを露出する可撓性熱伝導性材料の連続性の破断部である。
【0014】
一実施形態では、可撓性熱伝導性材料は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームに適用され、その中におよびその上に吸着することができる。あるいは、チャネルまたは溝が、可撓性の連続気泡ポリウレタンフォームに形成または提供され、そこでは、可撓性熱伝導性材料が、チャネルまたは溝の少なくとも一部を埋める。かかる(チャネルまたは溝が可撓性連続気泡ポリウレタンフォームに形成または提供される)構造体の場合には、可撓性熱伝導性材料は、可撓性熱伝導性材料の少なくとも一部が可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの第1の主表面と同一平面上にあるコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの外面を形成するように、チャネルまたは溝を少なくとも埋めることができる。代替の実施形態では、可撓性熱伝導性材料は、可撓性熱伝導性材料が、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの第1の主表面と同一平面上にあるコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの外面を形成するように、チャネルまたは溝を完全には埋めない。かかる構造体の場合、可撓性熱伝導性材料は、可撓性熱伝導性材料が、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム第1の主表面と同一平面上にないように、チャネルまたは溝を部分的にだけ埋める。構成に関係なく、可撓性熱伝導性材料は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームと一体の三次元構造体を形成する。かかる構造体は、本明細書で定義されるように、可撓性熱伝導性材料が、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体の第1の主表面の少なくとも一部を形成することを可能にする。かかる構造体はまた、可撓性熱伝導性材料が、第1の主表面の近くまたは隣接して、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体の内部部分の少なくとも一部を形成することを可能にする。
【0015】
ここで図1を参照すると、本開示の一実施形態による、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体100の例が示されている。コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体100は、第1の主表面104および第1の主表面104の反対側の第2の主表面106を有する、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102を含む。コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体100は、本明細書で論じられるように、可撓性熱伝導性材料108のアレイをさらに含む。様々な実施形態について、可撓性熱伝導性材料108は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102の第1の主表面104の表面積の30~90パーセントを覆う(「cov.%(被覆率)」、%で表される)。第1の主表面104の表面積の30~90パーセントを覆う可撓性熱伝導性材料108は、可撓性熱伝導性材料108の画定された縁部112間に可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102を露出させる1つ以上のギャップ110を提供する所定の形状である。1つ以上のギャップ110の各ギャップ110は、式Iに従って決定されるギャップ幅114(本明細書ではミリメートル(mm)で表される)を有する。
ギャップ幅(mm)≦-0.196×cov.%+20.6(式I)。
【0016】
式Iを使用して計算されたギャップ幅114は、すべての場合でゼロ(0)より大きくなる。様々な実施形態について、ギャップ幅114は、式IIに従って決定することができる。
ギャップ幅(mm)=-0.196×cov.%+20.6(式II)。
【0017】
様々な実施形態について、ギャップ幅114は、ギャップ110を画定する縁部112の長さに対して直角に取られた水平方向の測定値として解釈される。あるいは、ギャップ幅114は、ギャップ110を画定する縁部112間で垂直に取られた、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102の第1の主表面110に沿って測定された長さであり得る。ギャップ幅114を測定するためのこれ以降の実施形態は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102の第1の主表面110が湾曲(曲率がゼロではない)または非平面(平面とは対照的に)構成にあるときにギャップ幅114を測定することを可能にする。様々な実施形態について、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102の第1の主表面110の湾曲または非平面構成は、第1の主表面110がその初期形状(例えば、平面形状)から湾曲または非平面構成を有する形状に少なくとも部分的に変形するように、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102上の人および/または物体の存在によって(すなわち、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体100が「使用中」であるとき)付与することができる。
【0018】
可撓性熱伝導性材料108は、第1の主表面104の表面積の30~90パーセントを覆うので、1つ以上のギャップ110の総表面積は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102の第1の主表面104の表面積の70~10パーセントを提供する。可撓性熱伝導性材料108の表面積および1つ以上のギャップ110の表面積は、合計で第1の主表面104の100パーセントとなり得る。一実施形態では、可撓性熱伝導性材料108の表面積および1つ以上のギャップ110の表面積は、合計で第1の主表面104の100パーセントである。
【0019】
前述のように、可撓性熱伝導性材料108は、第1の主表面104の表面積の30~90パーセントを覆う。この範囲の表面積のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、かつ開示されている。例えば、いくつかの実施形態では、可撓性熱伝導性材料108は、第1の主表面104の表面積の30~80パーセント、30~70パーセント、30~60パーセント、30~50パーセント、40~90パーセント、50~90パーセント、60~90パーセント、または70~90パーセントを覆う。同様に、1つ以上のギャップ110の表面積は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102の第1の主表面104の表面積の70~10パーセントを提供し、ここで、この範囲の表面積のすべての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、かつ開示される。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上のギャップ110の表面積は、第1の主表面104の表面積の70~20パーセント、70~30パーセント、70~40パーセント、70~50パーセント、60~10パーセント、50~10パーセント、40~10パーセント、または30~10パーセントを覆う。
【0020】
図1に示すように、第1の主表面104および第2の主表面106は、互いに平行な平面であるとして示されている。しかしながら、主表面が平面ではない、および/または互いに平行でないものを含む、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体の表面の他の形状が可能であることが理解される。他の表面形状としては、とりわけ、球形、半球形、円錐形、半円錐形、円筒形、半円筒形、楕円形、半楕円形、または多角形が挙げられ得る。
【0021】
可撓性熱伝導性材料が、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの第1の主表面上に着座することも可能である。この本実施形態では、可撓性熱伝導性材料が可撓性連続気泡ポリウレタンフォームのギャップ幅を維持できるように、可撓性熱伝導性材料を接着剤で可撓性連続気泡ポリウレタンフォームに結合することができる。
【0022】
様々な実施形態では、所定の形状の可撓性熱伝導性材料108は、0.1~2mmの厚さを有することができる。一実施形態では、可撓性熱伝導性材料108の厚さは、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームに達している。あるいは、可撓性熱伝導性材料108の厚さは、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームのチャネルまたは溝まで達している。この範囲の厚さのすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、かつ開示されている。例えば、所定の形状の可撓性熱伝導性材料108は、0.1~1.5mm、0.1~1.0mm、0.1~0.5mm、0.5~2.0mm、1.0~2.0mm、または1.5~2.0mmの厚さを有することができる。
【0023】
可撓性熱伝導性材料108の所定の形状は、様々な形状および/または構成を有することができる。例えば、図1に示されるように、可撓性熱伝導性材料108は、連続気泡可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102の第1の主表面104上の単一の連続ストリップである。また、図1に示すように、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102の第1の主表面104上の単一の連続ストリップは、蛇行形状を有する。連続気泡可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102の第1の主表面104上の単一の連続ストリップの形態の可撓性熱伝導性材料108は、他の形状を有することができる。例としては、アルキメデススパイラル、または本明細書で論じられるように1つ以上のギャップを維持しながら、連続気泡可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム102の第1の主表面104の中心点の周りに本質的に延びる可撓性熱伝導性材料108の単一の連続ストリップで可能な他の任意の幾何学的形状が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
代替の実施形態では、可撓性熱伝導性材料の所定の形状は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの第1の主表面上の一連の平行なストリップである。この実施形態の図が図2で見られ、ここでは、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体200は、第1の主表面204および第1の主表面204の反対側の第2の主表面206を有する、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム202を含む。コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体200は、本明細書で論じられるように、可撓性熱伝導性材料208のアレイをさらに含み、可撓性熱伝導性材料208の所定の形状は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム202の第1の主表面204上の一連の平行ストリップである。また、図2には、1つ以上のギャップ210のそれぞれのギャップ幅214が同じ値を有する実施形態が示されている。
【0025】
図3は、本開示による、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300の追加の実施形態を提供する。コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300は、本明細書で論じられるように、第1の主表面304および第1の主表面304の反対側の第2の主表面306を有する、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム302を含む。コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300は、本明細書で論じられるように、可撓性熱伝導性材料308のアレイをさらに含み、ここでは、1つ以上のギャップ310のそれぞれのギャップ幅314は、異なる値を有する。図3に示されるように、中心長手方向軸316の近くのギャップ310のギャップ幅314は、第1の主表面304の外側長手方向縁部318の近くにあるギャップ310よりも大きい。この構成は、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300の中心長手方向軸316の近くのギャップ310が、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300が使用されているときに、式Iまたは式IIのいずれかを使用して決定されたギャップ幅値の範囲に入るか、またはそのままであるギャップ幅を維持することを可能にする。例えば、人がコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300(例えば、マットレスの形態の)上に横たわっている場合、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300上に横たわっている人の湾曲した形状は、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300に、中心長手方向軸316に対して垂直に見られるような細長い湾曲形状を取らせるであろう。この形状をとる際に、中心長手方向軸316内およびその周辺の「より大きな」ギャップ幅は、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300が屈曲および圧縮して、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300上に横たわる人を受け入れて支持するので減少する。変形されていないコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300にこの「より大きな」ギャップ幅を提供することにより、人がコーティングされた可撓性オープンセルポリウレタンフォーム構造体300上に横たわったときに生じるギャップは、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300が使用されているとき、式Iまたは式IIのいずれかを使用して決定されたギャップ幅値内に依然としてあるか、またはそれを達成するであろう。
【0026】
同様に、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300が、この構造体300に横たわる人のために湾曲し始める領域内および領域の周りの(上記の湾曲形状が開始するところの縁部の近くの)可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300のギャップ幅は伸長し、それによってギャップのサイズが大きくなる。この伸長に対応するために、中心長手方向軸316から離れたコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300のギャップ幅を、中心長手方向軸316の周りのギャップ幅よりもわずかに小さくさせることができ、これにより、これらのギャップは、伸長状態にあるときに、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体300が使用されているとき、式Iまたは式IIのいずれかを使用して決定されたギャップ幅値内に依然としてあるか、またはそれを達成するであろう。
【0027】
ここで図4を参照すると、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体400の実施形態が示されており、ここでは、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム402-1および401-2の少なくとも一部が可撓性熱伝導性材料408を完全に覆っている。図4の図は、可撓性熱伝導性材料408が見えるように分解図で示され、動作中、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの部分が可撓性熱伝導性材料408を完全に覆っている。図4に示されるように、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体400は、可撓性熱伝導性材料408を含む可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム402の第1の部分402-1を含む。可撓性熱伝導性材料408は、本明細書で提供されるような形状および/または構成のいずれか1つであり得、ここで、1つ以上のギャップ410のギャップ幅414は、本明細書で提供される式Iまたは式IIを使用して決定される。可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム402の第2の部分402-2は、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体400の第1の部分402-1の可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム402と第2の部分402-2との間に可撓性熱伝導性材料408を「挟む」ように、可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム402の第1の部分402-1の上に配置される。
【0028】
本明細書で論じられるように、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体において、可撓性熱伝導性材料の2つ以上のアレイを有することも可能である。例えば、可撓性熱伝導性材料の第1のアレイは、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体の第1の部分と第2の部分の可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの間に挟まれることができ(図4に見られるように)、一方、可撓性熱伝導性材料の第2のアレイは、(例えば、図1図2、または図3のいずれか1つに見られる可撓性熱伝導性材料のアレイと同様に)コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体の第2の部分の外面に配置することができる。このように、可撓性熱伝導性材料のアレイは、本開示のコーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体内により多くの可撓性熱伝導性材料が存在することを可能にするのに役立つ積み重ね構成にある。
【0029】
可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム
本明細書で論じられるように、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体の実施形態は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームを使用する。本明細書で論じられるように、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームは、粘弾性連続気泡ポリウレタンフォームであり得る。粘弾性ポリウレタンフォームは、一実施形態において、反発弾性試験としても称され得るASTM D3574試験Hに従って測定されたとき、20%以下の弾力性を有するものとして特徴付けられ得る。例えば、弾力性は、15%未満、10%未満、8%未満、7%未満、4%未満、および/または3%未満であり得る。いずれの場合も、弾力性は、1%超であり得る。
【0030】
粘弾性ポリウレタンフォームは、イソシアネート成分およびイソシアネート反応性成分を含む反応系を使用して調製され得る。具体的には、粘弾性フォームは、イソシアネート成分とイソシアネート反応性成分との反応生成物として形成される。イソシアネート成分は、少なくとも1つのイソシアネート、例えば、イソシアネート末端プレポリマーおよび/またはポリイソシアネートを含む。イソシアネート反応性成分は、イソシアネート反応性水素原子基、例えば、ヒドロキシル基および/またはアミン基を有する少なくとも1つの化合物を含む。イソシアネート成分および/またはイソシアネート反応性成分は、他の材料の中でもとりわけ、触媒、硬化剤、界面活性剤、発泡剤、ポリアミン、および/または充填剤などの添加剤を含み得る。
【0031】
実施形態によれば、イソシアネート反応性成分は、少なくとも3つの成分を含むことができる。具体的には、イソシアネート反応性成分は、ポリオール成分、添加剤成分、および事前形成された水性ポリマー分散物を含むことができる。
【0032】
ポリオール成分は、粘弾性ポリウレタンフォームを形成するための反応系の大部分の成分となるように、イソシアネート反応性成分の50.0重量パーセント(重量%)~99.8重量%を占める。ポリオール成分の他の値の範囲としては、60.0重量%~99.8重量%、70.0重量%~99.5重量%、80.0重量%~99.0重量%、および90.0重量%~99.0重量%を挙げることができる。ポリオール成分は、少なくとも1つのポリエーテルポリオールを含み、任意選択で、少なくとも1つのポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0033】
添加剤成分は、触媒、硬化剤、界面活性剤、発泡剤、ポリアミン、水、および/または充填剤を含み得る。添加剤成分は、イソシアネート反応性成分の総重量に基づいて、添加剤成分の0.1重量%~50.0重量%を占める。添加剤成分の他の値の範囲としては、0.1重量%~40.0重量%、0.1重量%~30.0重量%、0.1重量%~20.0重量%、0.1重量%~15.0重量%、0.1重量%~10.0重量%または0.1重量%~5.0重量%を挙げることができる。例示的な実施形態における添加剤成分は、少なくとも1つの触媒および少なくとも1つの界面活性剤を含む。
【0034】
任意の事前形成された水性ポリマー分散物は、イソシアネート反応性成分の0.1重量%~6.0重量%を占めてもよい。任意の事前形成された水性ポリマー分散物の他の値の範囲としては、0.1重量%~5.0重量%、0.1重量%~4.5重量%、0.1重量%~4.0重量%、0.1重量%~3.5重量%、0.1重量%~3.0重量%、0.4重量%~2.5重量%、または0.5重量%~2.0重量%を挙げることができる。事前形成された水性ポリマー分散物は、水性酸ポリマー分散物または水性酸改質ポリオレフィンポリマー分散物のうちの1つであり、ポリオレフィンは少なくとも1つのC~C20α-オレフィン(例えば、少なくとも1つのC~C20α-オレフィンおよび/またはC~Cα-オレフィン)から誘導される。事前形成された水性ポリマー分散物は、事前形成された水性ポリマー分散物の総重量に基づいて、10重量%~80重量%の固形分を有する。水性ポリマー分散物は、粘弾性ポリウレタンフォームを形成するために使用される1つ以上の水性ポリマー分散物の組み合わせであってもよい。
【0035】
粘弾性フォームは、組成によって互いに異なるが、事前形成された水性ポリマー分散物および事前形成された水性ポリマー分散剤の群から選択される少なくとも1つを使用して任意選択で調製されるフリーライズフォームまたは成形フォームであり得る。例示的な実施形態は、事前形成された水性ポリマー分散物のみ、事前形成された水性ポリマー分散剤のみ、または事前形成された水性ポリマー分散物と事前形成された水性ポリマー分散剤との組み合わせを含み得る。
【0036】
事前形成された水性ポリマー分散剤添加剤を使用して調製された粘弾性フォームは、標準条件下で毎分4.0標準立方フィート(scfm)(およそ1.9L/秒)超の空気流を有し得る。粘弾性フォームは、標準条件下で毎分5.0標準立方フィート(scfm)(およそ2.4L/秒)超の空気流を有し得る。粘弾性フォームは、20秒未満(例えば、10秒未満および/または5秒未満)の回復時間(粘弾性回復時間とも呼ばれる)を有し得る。例えば、弾力性を犠牲にすることなく、増加した空気流を有する粘弾性ポリウレタンフォームが調製され得る。
【0037】
ポリオール成分
ポリオール成分は、少なくとも1つのポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールを含む。例示的なポリエーテルポリオールは、アルキレンオキシド(例えば、少なくとも1つのエチレンオキシド、プロピレンオキシド、および/またはブチレンオキシド)と1分子当たり2~8個の活性水素原子を含有する開始剤との反応生成物である。例示的な開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ポリメチレンポリフェニレンポリアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびかかる開始剤の混合物が挙げられる。例示的なポリオールとしては、The Dow Chemical Companyから入手可能なVORANOL(商標)製品が挙げられる。ポリオール成分は、粘弾性ポリウレタンフォームを形成するために使用可能なポリオールを含んでもよい。
【0038】
例えば、ポリオール成分は、(ポリオールを形成するために使用されるアルキレンオキシドの総重量に基づいて)少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量を有し、2~6(例えば、2~4)の公称ヒドロキシル官能基を有し、500g/mol~5000g/mol(例えば、500g/mol~4000g/mol、600g/mol~3000g/mol、600g/mol~2000g/mol、700g/mol~1500g/mol、および/または800g/mol~1200g/mol)の数平均分子量を有するポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールを含んでもよい。少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量を有するポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールは、イソシアネート反応性成分の5重量%~90重量%(例えば、10重量%~90重量%、25重量%~90重量%、25重量%~85重量%、35重量%~85重量%、45重量%~85重量%、50重量%~80重量%、および/または55重量%~70重量%)を占め得る。少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量を有するポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールは、イソシアネート反応性成分において主成分であってもよい。
【0039】
ポリオール成分は、(ポリオールを形成するために使用されるアルキレンオキシドの総重量に基づいて)少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量を有し、4~8(例えば、5~8)の公称ヒドロキシル官能基を有し、5,500g//mol~20,000g//mol(例えば、5,500g//mol~17,500g//mol、5,500g//mol~15,500g//mol、5,500g//mol~14,500g//mol、6,500g//mol~14,500g//mol、8,500g//mol~14,500g//mol、および/または10,500g//mol~14,500g//mol)の数平均分子量を有する高分子量ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールを含んでもよい。少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量を有するポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールは、イソシアネート反応性成分の5重量%~90重量%(例えば、5重量%~75重量%、5重量%~55重量、5重量%~50重量%、5重量%~45重量%、5重量%~35重量%、5重量%~25重量%、および/または10重量%~20重量%)を占め得る。高分子量ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールは、本明細書で論じられる比較的低分子量のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールに加えてもよい。
【0040】
ポリオール成分は、ポリオールを形成するために使用されるアルキレンオキシドの総重量に基づき、20重量%未満のエチレンオキシド含有量を有し、2~6(例えば、2~4)の公称ヒドロキシル官能基を有し、1000g/mol超(または1500g/mol超)、6000g/mol未満の数平均分子量を有するポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリエーテルポリオールを含んでもよい。例えば、分子量は、1500g/mol~5000g/mol、1600g/mol~5000g/mol、2000g/mol~4000g/mol、および/または2500g/mol~3500g/molであり得る。エチレンオキシド含有量が20重量%未満であるポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリエーテルポリオールは、イソシアネート反応性成分の5重量%~90重量%(例えば、5重量%~70重量%、5重量%~50重量%、10重量%~40重量%、および/または10重量%~30重量%)を占め得る。20重量%未満のエチレンオキシド含有量を有するポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリエーテルポリオールは、少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量を有するポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールとブレンドされていてもよく、一方、後者はより大きい量で含まれる。
【0041】
ポリオール成分は、2~6(例えば、2~4)の名目ヒドロキシル官能価を有し、500g/mol~6000g/mol(例えば、500g/mol~5500g/mol、600g/mol~5000g/mol、700g/mol~1500g/mol、800g/mol~1200g/mol、3000g/モル~6000g/mol、3000g/mol~5500g/mol、3500g/mol~5500g/mol、および/または4500g/mol~5500g/mol)の数平均分子量を有する、ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールを含んでもよい。ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールは、イソシアネート反応性成分の5重量%~90重量%(例えば、5重量%~70重量%、5重量%~50重量%、10重量%~40重量%、および/または10重量%~30重量%)を占め得る。ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールは、少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量を有するポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールとブレンドされていてもよく、一方、後者はより大きい量で含まれる。
【0042】
例示的な実施形態では、ポリオール成分は、少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量を有するポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオール、20重量%未満のエチレンオキシド含有量を有するポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオール、および/またはポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールのブレンドを含み得る。他の例示的な実施形態では、ポリオール成分は、少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量を有するポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオール、少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量を有する高分子量ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオール、20重量%未満のエチレンオキシド含有量を有するポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリエーテルポリオール、および/またはポリオキシプロピレンポリエーテルポリオールのブレンドを含んでもよい。
【0043】
ポリオール成分は、イソシアネート成分に接触する前に、事前形成された水性ポリマー分散物(および任意選択で、添加剤成分の少なくとも一部)と混合されてもよい。
【0044】
添加剤成分
添加剤成分は、事前形成された水性分散物およびポリオール成分を形成する成分から分離される。添加剤成分は、イソシアネート反応性成分の一部であるが、他の添加剤はイソシアネート成分に組み込まれてもよい。添加剤成分は、触媒、硬化剤、架橋剤、界面活性剤、発泡剤(水性ポリマー分散物から分離された、水性および非水性)、ポリアミン、可塑剤、芳香剤、色素、抗酸化剤、UV安定剤、水(水性ポリマー分散物から分離された)、ならびに/または充填剤を含み得る。他の例示的な添加剤としては、鎖延長剤、難燃剤、煙抑制剤、乾燥剤、タルク、粉末、離型剤、ゴムポリマー(「ゲル」)粒子、ならびに粘弾性フォームおよび粘弾性フォーム製品で使用するための当該技術分野において既知の他の添加剤が挙げられる。
【0045】
添加剤成分は、スズ触媒、亜鉛触媒、ビスマス触媒、および/またはアミン触媒を含み得る。イソシアネート反応性成分における触媒の総量は、0.1重量%~3.0重量%であってもよい。
【0046】
界面活性剤は、例えば、フォームが膨張して硬化する際にそれを安定させるのを助けるために、添加剤成分に含まれ得る。界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤および湿潤剤、例えば、プロピレンオキシド、次いでエチレンオキシドの、プロピレングリコール、固体または液体の有機ケイ素、および長鎖アルコールのポリエチレングリコールエーテルへの順次添加によって調製されるものが挙げられる。イオン性界面活性剤、例えば長鎖アルキル酸硫酸エステルの3級アミンまたはアルカノールアミン塩、アルキルスルホン酸エステル、およびアルキルアリールスルホン酸を使用してもよい。例えば、配合物は、オルガノシリコーン界面活性剤などの界面活性剤を含み得る。イソシアネート反応性成分中の有機シリコーン界面活性剤の総量は、0.1重量%~5.0重量%、0.1重量%~3.0重量%、0.1重量%~2.0重量%、および/または0.1重量%~1.0重量%であり得る。
【0047】
添加剤成分は、事前形成された水性ポリマー分散物から分離される、水を含んでもよい。水は、イソシアネート反応性成分の総重量の2.0重量%未満を占めてもよい。事前形成された水性ポリマー分散物からの水と追加成分からの水とを含む全体の水は、イソシアネート反応性成分の総重量の5重量%未満を占めてもよい。
【0048】
添加剤成分は、水性ポリマー分散物の使用を基準にして、任意の従来のポリウレタンフォーム化学セルオープナ(cell openers)を除外してもよい。添加剤成分は、ポリブチレン、ポリブタジエン、およびワックス状脂肪族炭化水素、例えば低弾力性フォームにおいて一般に用いられるセルオープナである油(例えば、鉱油、パラフィン油、および/またはナフテン系油)を除外してもよい。添加剤成分は、例えば、米国特許第4,596,665号で述べられるように、少なくとも4つの炭素原子を有するα,β-アルキレンオキシドのアルコキシル化から主に誘導されたポリオールであるセルオープナを除外してもよい。添加剤成分は、例えば、米国特許第4,863,976号の背景技術の節で述べられるように、エチレンオキシドまたはブチレンオキシドから誘導された単位の高い比率(通常、50パーセント以上)を含有する最大約3500の分子量のポリエーテルであるセルオープナを除外してもよい。添加剤成分は、例えば、米国特許第4,863,976号の特許請求の範囲において述べられるように、少なくとも5000の分子量を有し、かつ少なくとも50重量%のオキシエチレン単位を有するポリエーテルポリオールであるセルオープナを除外してもよい。
【0049】
イソシアネート成分
イソシアネート成分は、少なくとも1つのイソシアネートを含む。イソシアネート成分は、50~150のイソシアネート指数で存在する。イソシアネート指数の他の値の範囲としては、60~140、65~130、65~100、65~95、65~90、および/または65~85が挙げられる。イソシアネート指数は、100を乗算した、イソシアネート反応性単位(イソシアネート部分と反応するために利用可能な活性水素)のモル数に対する、反応混合物中のイソシアネート部分のモル化学量論的過剰量として定義される。100のイソシアネート指数は、100を乗算した、1.0モルのイソシアネート反応性基当たり1.0モルのイソシアネート基が存在するように、化学量論的過剰量が存在しないことを意味する。
【0050】
イソシアネート成分は、1つ以上のイソシアネート、例えば、ポリイソシアネートおよび/またはイソシアネート末端プレポリマーを含み得る。イソシアネートは、脂肪族、脂環式、脂環の、アリール脂肪族、および/もしくは芳香族ポリイソシアネート、またはそれらの誘導体であるイソシアネート含有反応物であってもよい。例示的な誘導体としては、アロファネート、ビウレット、およびNCO(イソシアネート部分)末端プレポリマーが挙げられる。例えば、イソシアネート成分は、少なくとも1つの芳香族イソシアネート、例えば、少なくとも1つの芳香族ポリイソシアネートまたは芳香族ポリイソシアネートから誘導された少なくとも1つのイソシアネート末端プレポリマーを含んでもよい。イソシアネート成分は、トルエンジイソシアネート(TDI)の少なくとも1つの異性体、粗TDI、ジフェニルメチレンジイソシアネート(MDI)の少なくとも1つの異性体、粗MDI、および/またはより高い官能性のメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含み得る。例としては、その2,4および2,6-異性体、ならびにそれらの混合物の形態のTDI、およびその2,4’-、2,2’-、および4,4’-異性体、ならびにそれらの混合物の形態のMDIが挙げられる。MDIおよびそのオリゴマーの混合物は、粗もしくはポリマー性MDI、ならびに/またはウレタン、アロファネート、尿素、ビウレット、カルボジイミド、ウレトンイミン、および/もしくはイソシアヌレート基を含むMDIの既知の変異体であってもよい。例示的なイソシアネートとしては、VORANATE(商標)M220(The Dow Chemical Companyから入手可能なポリマー性メチレンジフェニルジイソシアネート)が挙げられる。他の例示的なポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびキシレンジイソシアネート(XDI)、ならびにそれらの修飾物が挙げられる。
【0051】
事前形成された水性ポリマー分散物
水性ポリマー分散物は、少なくとも(a)酸性ポリマーおよび/または酸改質ポリオレフィンポリマーを含むベースポリマーと、(b)流体媒体(この場合、水)とを含み、ベースポリマーは、流体媒体中で分散される。事前形成された水性ポリマー分散物は、室温および気圧の周囲条件で連続液相成分であってもよく、液相(すなわち、流体媒体)および固相(すなわち、ベースポリマー)から誘導される。
【0052】
実施形態において、事前形成された水性ポリマー分散物は、水性酸ポリマー分散物または水性酸改質ポリオレフィンポリマー分散物のうちの1つであり、ポリオレフィンは少なくとも1つのC~C20α-オレフィンから誘導される。水性酸ポリマー分散物とは、酸系ポリマーを用いて調製された水性分散物を意味する。水性酸改質ポリオレフィンポリマー分散物とは、酸改質ポリオレフィンポリマーを用いて調製された水性分散物を意味する。少なくとも1つのC~C20α-オレフィンから誘導されるとは、ポリオレフィンが、少なくとも1つのα-オレフィンを使用して調製されたポリマーであることを意味し、使用される各α-オレフィンは、C~C20α-オレフィンのうちの1つである(例えば、ポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセン、および/またはオクテンのうちの少なくとも1つから誘導され得る)。例示的な実施形態において、ポリオレフィンは、エチレン系ポリマーおよび/またはプロピレン系ポリマーであり得る。
【0053】
本明細書で使用する場合、ポリマーとは、同じ種類であるかまたは異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合させることによって調製される化合物を意味する。したがって、ポリマーという用語は、通常、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられるホモポリマーという用語、およびインターポリマーという用語を包含する。それはまた、すべての形態のインターポリマー、例えば、ランダム、ブロック、均質、不均質等を包含する。コポリマー/インターポリマーとは、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。これらの用語は、古典的コポリマー、すなわち、2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマー、および2つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマー等の両方を含む。
【0054】
エチレン系ポリマーとは、(重合性モノマーの総重量を基準にして)主要重量パーセントの重合エチレンモノマーを含むポリマーを意味し、任意選択で、エチレン系インターポリマーを形成するように、エチレンと異なる少なくとも1つの重合コモノマー(例えば、C~C20α-オレフィンから選択される少なくとも1つ)を含み得る。例えば、エチレン系ポリマーがエチレン-プロピレンコポリマーであるとき、エチレンの量は、コポリマーに対する総重量に基づいて、50重量%超であってもよい。「エチレンから誘導された単位」などの用語は、重合エチレンモノマーから形成されたポリマーの単位を意味する。
【0055】
プロピレン系ポリマーとは、(重合性モノマーの総重量を基準にして)主要重量パーセントの重合プロピレンモノマーを含むポリマーを意味し、任意選択で、プロピレン系インターポリマーを形成するように、プロピレンと異なる少なくとも1つの重合コモノマー(例えば、CおよびC~C20α-オレフィンから選択される少なくとも1つ)を含み得る。例えば、プロピレン系ポリマーがプロピレン-エチレンコポリマーであるとき、プロピレンの量は、コポリマーに対する総重量に基づいて、50重量%超であってもよい。「プロピレンから誘導された単位」などの用語は、重合プロピレンモノマーから形成されたポリマーの単位を意味する。
【0056】
例示的な水性酸ポリマー分散物は、エチレンアクリル酸インターポリマー、エチレンメタアクリル酸インターポリマー、および/またはエチレンクロトン酸インターポリマーを含み得る。エチレンアクリル酸インターポリマーは、少なくともエチレンとアクリル酸との共重合によって調製される。エチレンメタクリル酸インターポリマーは、少なくともエチレンとメタクリル酸との共重合によって調製される。エチレンクロトン酸インターポリマーは、少なくともエチレンとクロトン酸との共重合によって調製される。かかる水性酸ポリマー分散物において、例示的な実施形態は、エチレンアクリル酸インターポリマー、エチレンメタアクリル酸インターポリマー、および/またはエチレンクロトン酸インターポリマーだけに限定されるものではないことが理解される。例えば、エチレンは、以下のアクリル酸、メタアクリル酸、および/またはクロトン酸のうちの複数と共重合することができる。
【0057】
例示的な水性酸ポリマー分散物は、流体媒体(この場合、水)中に分散されるベースポリマーとして、少なくとも1つのエチレンアクリル酸(EAA)コポリマー(および/またはエチレンメタアクリル酸コポリマー)を含み得る。分散物は、The Dow Chemical CompanyまたはThe Dow Chemical Companyの系列会社の所有財産であり、それらの商標である特許を受けた機械的分散技術である、BLUEWAVE(商標)技術によって可能になり得る。例えば、EAAは、エチレンアクリル酸EAAコポリマーを生じる、エチレンとアクリル酸との共重合によって調製され得る。エチレン-アクリル酸コポリマーは、少なくとも10重量%(例えば、10重量%~70重量%、10重量%~60重量%、10重量%~50重量%、10重量%~40重量%、10重量%~30重量%、および/または15重量%~25重量%)のアクリル酸含有量を有し得る。例示的なEAAコポリマーは、SK Global Chemicalから入手可能なPRIMACOR(商標)製品として入手可能である。EAAコポリマーは、100~2000g/10分のメルトインデックス(190℃および2.16kgでのASTM法D-1238)を有してもよい。EAAコポリマーは、350°Fで5,000~13,000cpsのブルックフィールド粘度を有してもよく、The Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0058】
エチレンメタアクリル酸コポリマーは、エチレンとメタアクリル酸との共重合によって調製され得る。例示的な、エチレン-アクリル酸、エチレン-メタアクリル酸、および/またはエチレン-クロトン酸コポリマーは、米国特許第4,599,392号および/または同第4,988,781号において述べられている。
【0059】
例示的な水性酸改質ポリオレフィンポリマー分散物としては、The Dow Chemical Companyから入手可能なHYPOD(商標)製品として販売される分散物が挙げられる。HYPOD(商標)製品は、The Dow Chemical CompanyまたはThe Dow Chemical Companyの系列会社の所有財産であり、それらの商標である特許を受けた機械的分散技術である、BLUEWAVE(商標)技術によって可能になり得る。BLUEWAVE(商標)技術は、慣習的な熱可塑性ポリマーおよびエラストマーを取得し、それらを極微粒子に砕くことによって機能し得る、高せん断機械的プロセスを利用してもよい。水性酸改質ポリマー分散物は、プロピレン系分散物およびエチレン系分散物を含んでもよく、それは、高分子量の熱可塑性樹脂およびエラストマーの性能を、高固形分の水系分散物の適用利点と組み合わせ得る。分散物のポリオレフィンは、メタロセン触媒ポリオレフィンであってもよい。例示的なポリオレフィンは、The Dow Chemical Companyから入手可能な、AFFINITY(商標)、ENGAGE(商標)、VERSIFY(商標)、およびINFUSE(商標)製品において販売されている。
【0060】
水性ポリマー分散物は、中和剤を使用することによって調製され得る。例示的な中和剤としては、アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、ベースポリマーの極性基が事実上酸性または塩基性である場合、ポリマーは、中和剤によって部分的にまたは完全に中和され、対応する塩を形成し得る。EAAを使用して調製された酸性ポリマー改質分散物が使用される場合、中和剤は、塩基、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、および/または水酸化ナトリウムである。当業者であれば、適切な中和剤の選択が、配合される特定の組成物に依存し得ること、およびかかる選択が当業者の知識の範囲内であることを認識するであろう。
【0061】
水性ポリマー分散物は、例えば、米国特許第8,318,257号において述べられるように、押出プロセスにおいて調製され得る。
【0062】
事前形成された水性ポリマー分散剤
事前形成された水性ポリマー分散剤は、少なくとも(a)20重量%~100重量%(例えば、30重量%~100重量%、40重量%~100重量%、50重量%~100重量%など)の、少なくとも1つのカルボニル基、リン酸基、ホスホン酸基、もしくはスルホニル基、または他の酸性基を有する(これらの任意の組み合わせを含む)、少なくとも1つの親水性酸モノマーから誘導され、また任意選択で、少なくとも1つの疎水性末端不飽和炭化水素モノマーから誘導されるベースポリマーを含むポリマー成分と、(b)少なくとも水を含む流体媒体と、を含み、この流体媒体中にベースポリマーが分散されている。本明細書で使用する場合、ポリマーとは、同じ種類であるかまたは異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合させることによって調製される化合物を意味する。したがって、ポリマーという用語は、通常、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられるホモポリマーという用語、およびインターポリマーという用語を包含する。それはまた、すべての形態のインターポリマー、例えば、ランダム、ブロック、均質、不均質等を包含する。コポリマー/インターポリマーとは、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。これらの用語は、古典的コポリマー、すなわち、2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマー、および3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されたポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマー等の両方を含む。ベースポリマーは、1つのモノマーから誘導されてもよいし、少なくとも2つの異なるモノマーから誘導されるコポリマーであってもよい。ベースポリマーは、制御された微細構造、分子量分布、および/または分子量を有し得る。ベースポリマーは、1000~25,000g/モルの数平均分子量(M)を有し得る。
【0063】
Mnは、例えば、以下の任意の方法によって決定されるような、分散剤の数平均分子量を指す:分散剤を、pH7のリン酸二水素ナトリウムの20mM溶液に2mg/mLの濃度で溶解し、0.45μmフィルタに通し、100μLをTSKgel GMPW XL充填カラム(7.5mm×30cm、Tosoh)にTSKgel G2500PW XLパックカラム(7.5mm×30cm、Tosoh)と並行して流速1mL/分で注入する。溶出は、屈折率検出器および分子量が216g/mol~1,100,000g/molの範囲のポリ(アクリル酸)参照標準に対して評価された分子量プロファイルによって監視される。
【0064】
例えば、ベースポリマーは、少なくとも1つのカルボニル基を有する少なくとも1つの親水性酸モノマーから誘導され得、例えばエチレン性不飽和カルボキシル化モノマーから誘導され得るか、または加水分解されて複数のカルボン酸官能基をもたらすことができるモノマーから誘導され得る。エチレン性不飽和カルボキシル化モノマーの例としては、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、桂皮酸、α-クロロアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、トラウマチン酸、シトラコン酸、メサコン酸、およびアコニット酸が挙げられる。加水分解されて複数のカルボン酸官能基をもたらすことができるモノマーの例としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トラウマチン酸、および無水グルタコン酸が挙げられる。例えば、加水分解されて複数のカルボン酸官能基をもたらすことができるモノマーは、酸無水物であってもよい。例示的な実施形態では、親水性酸モノマーは、2つ以上のカルボニル基を有するカルボン酸または酸無水物であり得る。
【0065】
ベースポリマーは、少なくとも1つのリン酸基を有する少なくとも1つの親水性酸モノマーから誘導されてもよく、例えば、リン酸またはそのエステル(例えば、当業者に既知のもの)から誘導されてもよい。ベースポリマーは、少なくとも1つのホスホン酸基を有する少なくとも1つの親水性酸モノマーから誘導されてもよく、例えば、ホスホン酸またはそのエステル(例えば、当業者に既知のもの)から誘導されてもよい。ベースポリマーは、少なくとも1つのスルホニル基を有する少なくとも1つの親水性酸モノマーから誘導されてもよく、例えば、スルホン酸またはスルホン酸から得られる置換体(例えば、当業者に既知のもの)から誘導されてもよい。
【0066】
例示的な実施形態では、ベースポリマーは、少なくとも1つのカルボニル基(例えば、酸無水物基)、リン酸基、ホスホン酸基、またはスルホニル基を有する親水性酸モノマーの任意の組み合わせから誘導され得る。例えば、ベースポリマーは、2つの異なる親水性酸モノマーから誘導されるコポリマー、例えば、2つの異なるエチレン性不飽和カルボキシル化モノマーから誘導されるコポリマー、加水分解されて複数のカルボン酸官能基をもたらすことができる2つの異なるモノマーから誘導されるコポリマーであり得る。例えば、ベースポリマーは、1つのエチレン性不飽和カルボキシル化モノマー、および加水分解されて複数のカルボン酸官能基をもたらすことができる1つのモノマーから誘導され得る。
【0067】
さらなる例示的な実施形態では、ベースポリマーは、少なくとも1つのカルボニル基(例えば、酸無水物基)、リン酸基、ホスホン酸基、またはスルホニル基を有する親水性酸モノマーと、疎水性末端不飽和炭化水素モノマーとの任意の組み合わせから誘導され得る。例えば、ベースポリマーは、加水分解されて複数のカルボン酸官能基をもたらすことができる1つのモノマー、および1つの疎水性末端不飽和炭化水素モノマーから誘導され得る。
【0068】
疎水性末端不飽和炭化水素モノマーの例としては、C~C20α-オレフィン、エチレン性不飽和芳香族化合物(例えば、スチレン)、およびエチレン性不飽和カルボキシル化モノマーのアルキルエステル(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、およびブチルメタクリレート)が挙げられる。例えば、疎水性末端不飽和炭化水素モノマーは、C~C10α-オレフィンから選択される1つであってもよいし、スチレンであってもよい。スルホン化エチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびその塩が挙げられる。リン酸化エチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、2-(ホスホノオキシ)エチルメタクリレートおよびその塩が挙げられる。ホスホン化エチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、ビニルホスホン酸およびその塩が挙げられる。例示的な実施形態は、少なくとも1つのエチレン性不飽和カルボキシル化モノマーを含む。
【0069】
事前形成された水性ポリマー分散剤は、5重量%~60重量%(例えば、5重量%~50重量%、10重量%~50重量%、15重量%~45重量%、15重量%~40重量%、20重量%~36重量%など)のポリマー成分と、40重量%~95重量%の、少なくとも水を含む流体媒体と、を含む。例えば、事前形成された水性ポリマー分散剤は、ポリマー成分および流体媒体から本質的になり得る。ポリマー成分は、ベースポリマーから本質的になり得る。事前形成された水性ポリマー分散剤は、他の成分を含有してもよく、その非限定的な例としては、界面活性剤、有機溶媒、開始剤および連鎖移動残渣、ならびに充填剤が挙げられる。
【0070】
事前形成された水性ポリマー分散剤は、6.0~12.0(例えば、6.5~12.0、8.0~12.0、8.0~11.5、8.0~11.0、8.0~10.5、8.0~10.0等)のpHを有する。事前形成された水性ポリマー分散剤は、室温および気圧の周囲条件で連続液相成分であってもよく、液相(すなわち、流体媒体)および固相(すなわち、ベースポリマー)から誘導される。事前形成された水性ポリマー分散剤は、事前形成された水性ポリマー分散剤の総重量に基づいて、10重量%~80重量%(例えば、25重量%~75重量%など)の固形分を有してもよい。
【0071】
水性ポリマー分散剤は、中和剤を使用することによって調製され得る。例示的な中和剤としては、アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、およびこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、ベースポリマーの極性基が事実上酸性または塩基性である場合、ポリマーは、中和剤によって部分的にまたは完全に中和され、対応する塩を形成し得る。例えば、アクリル酸を使用して調製された分散剤が使用される場合、中和剤は、塩基、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、および/または水酸化ナトリウムである。当業者であれば、適切な中和剤の選択が、配合される特定の組成物に依存し得ること、およびかかる選択が当業者の知識の範囲内であることを認識するであろう。
【0072】
事前形成された水性ポリマー分散剤は、イソシアネート反応性成分の0.1重量%~6.0重量%(例えば、0.1重量%~5.0重量%、0.1重量%~4.1重量%、0.1重量%~4.0重量%、0.1重量%~3.5重量%、0.1重量%~3.0重量%、0.4重量%~2.5重量%、0.5重量%~2.4重量%など)を占める。水性ポリマー分散剤は、粘弾性ポリウレタンフォームを形成するために使用される1つ以上の水性ポリマー分散剤の組み合わせであってもよい。
【0073】
粘弾性フォームを形成するために使用される反応系のための算出総含水量は、粘弾性ポリウレタンフォームを形成するための反応系の総重量に基づいて、5重量%未満、3重量%未満、2.0重量%未満、および/または1.6重量%未満であってもよい。算出総含水量は、事前形成された水性ポリマー分散物の一部として配合物に添加された水量に加えて、配合物に添加されたDI(脱イオン)水の総量として算出される。例えば、算出総含水量は、0.5重量%~1.6重量%、0.5重量%~1.5重量%、および/または1.0重量%~1.5重量%であり得る。
【0074】
例示的な水性ポリマー分散剤は、Dow Chemical Companyから入手可能なTAMOL(商標)およびOROTAN(商標)製品、BYK GmbHから入手可能なBYKおよびDISPERBYK製品、Rhodia Groupから入手可能なRhodaline(登録商標)製品、Arkemaから入手可能なCoadis(商標)製品、ならびにBASFから入手可能なHydropalat(登録商標)製品として販売されている。
【0075】
コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体
コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体は、様々な包装用途、快適用途(マットレストッパ、枕、家具、シートクッションなどを含むマットレスなど)、衝撃吸収用途(例えば、バンパーパッド、スポーツおよび医療機器、ヘルメットライナなど)、騒音および/または振動減衰用途(例えば、耳栓、自動車パネルなど)、ならびに濾過用途(真空エアフィルター、雨どい/雨受けを植物の葉などの破片および融雪物から保護するための溝ガードなど)において有用であり得る。
【0076】
コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体を形成するための可撓性連続気泡ポリウレタンフォームは、スラブ材プロセス(例えば、フリーライズフォームとして)、成形プロセス(箱発泡プロセスなど)、または当技術分野において既知の任意の他のプロセスで調製され得る。可撓性熱伝導性材料は、それが形成された後、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームに添加され得る。スラブ材プロセスにおいて、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームを形成するための成分(例えば、可撓性熱伝導性材料を形成するための成分ではない)は、混合されて、配合物が反応し、少なくとも一方向に自由に膨張し、硬化するトラフまたは他の領域に注がれてもよい。スラブ材プロセスは、一般に、商業規模で継続的に作動される。成形プロセスにおいて、フォームを形成するための成分は、混合され、配合物が反応し、少なくとも一方向に型を用いずに膨張して、硬化する、型/箱(加熱または非加熱)内に注がれてもよい。成形プロセスにおいて、配合物はまた、反応し、配合物がすべての側面(型の少なくとも1つの側面上に通気孔または孔を有する)上で型に接触するように閉鎖可能な型内で膨張し、次いで硬化することができる。
【0077】
コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体は、初期の周囲条件(すなわち、20℃~25℃の範囲の室温および約1気圧の標準大気圧)で調製されてもよい。例えば、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームは、酸性ポリマーおよび/またはイソシアネート反応性成分に対する加熱もしくは加圧を必要としない酸改質ポリオレフィンポリマー(例えば、100℃超の融点を有するポリマー)を含んでもよい。気圧未満の圧力条件でフォーム形成を行って、フォーム密度を低減させ、フォームを軟化させることもできる。気圧超の圧力条件でフォーム形成を行って、フォーム密度を増大させ、その結果、押し込み力たわみ(IFD)によって測定されるようなフォーム耐荷重性を増大させることができる。成形加工において、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームは、周囲条件を超える初期成形温度、例えば、50℃以上で調製されてもよい。型を過剰充填して、すなわち、型にフォーム形成材料を過剰に充填して、フォーム密度を増大させることができる。
【0078】
可撓性連続気泡ポリウレタンフォームを形成するために使用される反応系についての算出総含水量(コーティングの含水量を除く)は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームを形成するための反応系の総重量に基づいて、5重量%未満、3重量%未満、2.0重量%未満、および/または1.6重量%未満であってもよい。算出総含水量は、事前形成された水性ポリマー分散物の一部として配合物に添加された水量に加えて、配合物に添加されたDI(脱イオン水)の総量として算出される。例えば、算出総含水量は、0.5重量%~1.6重量%、0.5重量%~1.5重量%、および/または1.0重量%~1.5重量%であり得る。
【0079】
得られた可撓性連続気泡ポリウレタンフォームは、改善されたウィッキング効果および/または改善された水分/熱管理を呈し得る。得られたフォームの水分および熱管理に関して、例えば、粘弾性ポリウレタンフォームマットレスまたは枕に関して、良好なウィッキング効果は、汗が使用者の皮膚から即座に離れることを可能にし得る。快適温度を維持するための人体の重要な側面は、発汗による水蒸気によるものである。発汗は、体それ自体を涼しく保つ体のメカニズムである。良好なウィッキング効果は、向上した快適さを提供するように、使用者の身体が乾燥し涼しいままであることを可能にし得る。良好なウィッキング効果はまた、汗/水に蒸発するためのより多くの表面積を提供し得る。別の方法で述べると、汗/水がより大きい面積にわたって分散されるとき、それは、水が小さい表面積にわたって一緒に貯蔵されるときよりも急速に蒸発し得る。さらに、良好な水分透過性は、水分が使用者の皮膚から離れることを可能にし得、天然水蒸気が使用者の皮膚から熱を連れ去ることを可能にし得る。ウィッキング特性は、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの特性を向上させ得る。
【0080】
例えば、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームは、視覚的に観察可能なウィッキング高さ(例えば、1.0インチ×0.5インチ×2.0インチの寸法を有する可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの試料上で、試料の縁が5.0mmの着色水に浸されるとき)を呈することができ、そのウィッキング高さは、事前形成された水性ポリマー分散物が除外されることを除けば、同じイソシアネート成分、同じ算出総含水量、および同じイソシアネート反応性成分を使用して調製される、異なる可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの試料(この試料は同じ寸法を有する)の視覚的に観察可能なウィッキング高さよりも大きい。例えば、ウィッキング高さは、少なくとも3倍大きくてもよい(例えば、3~10倍大きく、かつ/または3.5~5.5倍大きくてもよい)。ウィッキング特性により、コーティング溶液は、フォームにより容易に吸い上げられ得、したがって、すべての溶液が、その上で均一なコーティング層に平坦化される合計時間が短くなる。
【0081】
可撓性連続気泡ポリウレタンフォームは、視覚的に観察可能なウィッキング時間(可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの試料を使用する)を呈することができ、3滴の着色水を試料の表面上に配置されるとき、そのウィッキング時間は、事前形成された水性ポリマー分散物が除外されることを除けば、同じイソシアネート成分、同じ算出総含水量、および同じイソシアネート反応性成分を使用して調製される、異なる可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの試料を使用する視覚的に観察可能なウィッキング時間よりも短い。当業者によって理解されるように、比較された試料は、同じ厚さ/深さを有し得るが、試料の長さおよび幅は、結果に依存しない。ウィッキング時間は、3滴の着色水が試料の表面から消失する(すなわち、フォームによって吸収される)のにかかる時間として視覚的に観察される。ウィッキング時間は、事前形成された水性ポリマー分散物が使用されるとき著しくより速くなるように、少なくとも30秒減少し得る。例えば、ウィッキング時間は、事前形成された水性ポリマー分散物を使用して調製されたポリウレタンフォームについて5秒未満であり得る(例えば、5秒未満であるが、0.5秒を超える)。
【0082】
可撓性連続気泡ポリウレタンフォームは、例えば、ASTM E96/E96Mに従って(任意選択で、ASTM E2321-03を考慮して)測定する場合、改善された水蒸気透過性を呈し得る。例えば、水蒸気透過性は、事前形成された水性ポリマー分散物を使用して調製されたポリウレタンフォームについて、少なくとも5%(例えば、5%~20%)改善され得る。
【0083】
粘弾性ポリウレタンフォームは、30以下のショアOO硬度を呈する場合があり、および/または3を超える場合がある。
【0084】
当業者によって理解されるように、2つの異なるフォームの上記の比較は、比較例における事前形成された水性ポリマー分散物を除外することを説明するように、事前形成された水性ポリマー分散物および/または事前形成された水性ポリマー分散剤ならびに増加した含水量の除外を除けば、同じプロセス条件、同じ器具、および同じ配合物を使用して調製されるフォームを指す。
【0085】
可撓性熱伝導性材料
本明細書でより完全に論じられるように、本明細書で提供される様々な実施形態について、可撓性熱伝導性材料は、様々な材料から形成することができる。例えば、可撓性熱伝導性材料は、カプセル化された相変化材料であり得る。様々な実施形態では、可撓性熱伝導性材料の相変化材料は、相変化材料ベースのコーティングがフォーム材料中に浸透することができるように、水性組成物(ラテックスバインダーなど)を有する相変化材料ベースのコーティングの一部であり得る。さらに、高い水ウィッキング性ポリウレタンフォーム形成組成物の使用は、例えば、寝具用マットレスおよびマットレストップ層(「トッパー」)に使用するために、かかるフォームと相変化材料ベースのコーティングとを組み合わせた使用と同様の通気性を得るのに有益であり得る。様々な実施形態では、カプセル化された相変化材料は、可撓性熱伝導性材料1グラムあたり80~300ジュールの潜熱転移を有する。
【0086】
例示的な実施形態では、可撓性熱伝導性材料は、可撓性熱伝導性材料を形成する成分の総重量(すなわち、可撓性熱伝導性材料の総重量)に基づいて、5重量%~95重量%(例えば、10重量%~90重量%、20重量%~70重量%、20重量%~50重量%、20重量%~40重量%など)の1つ以上の相変化材料(PCM)を含み得る。例示的な実施形態では、可撓性熱伝導性材料は、可撓性熱伝導性材料の総重量に基づいて、5重量%~95重量%(例えば、10重量%~90重量%、10重量%~50重量%、10重量%~30重量%、10重量%~25重量%、20重量%~90重量%、30重量%~80重量%、40重量%~80重量%、50重量%~70重量%など)の1つ以上の水性ポリマーエマルジョンを含み得る。使用される1つ以上の水性ポリマーエマルジョンの量は、可撓性熱伝導性材料に使用される他の添加剤の量に依存し得る。
【0087】
添加剤に関する例示的な実施形態では、可撓性熱伝導性材料は、コーティング溶液の総重量に基づいて、0重量%~30重量%(例えば、1重量%~20重量%、3重量%~15重量%、5重量%~10重量%など)の1つ以上の界面活性剤(任意の成分)を含み得る。界面活性剤は、シリコーン界面活性剤であってもよい。可撓性熱伝導性材料は、コーティング溶液の総重量に基づいて、0重量%~30重量%(1重量%~20重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、1重量%~3重量%など)の1つ以上のシリカを含み得る。シリカは、フュームドシリカであってもよい。
【0088】
可撓性熱伝導性材料は、コーティング溶液の総重量に基づいて、0重量%~90重量%(例えば、1重量%~80重量%、10重量%~70重量%、20重量%~70重量%、30重量%~70重量%、40重量%~60重量%、45重量%~55重量%など)の水を含み得る。界面活性剤および/またはシリカは、例えば、界面活性剤/シリカの重量が5重量%~90重量%(例えば、20重量%~80重量%、20重量%~70重量%、30重量%~60重量%、45重量%~55重量%など)の水を含み得るように、水中で事前ブレンドされてもよい。
【0089】
可撓性熱伝導性材料は、コーティング溶液の総重量に基づいて、0重量%~30重量%(1重量%~20重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、1重量%~3重量%など)のレオロジー調整剤を含み得る。例えば、レオロジー調整剤は、エチレンオキシドウレタン、プロピレンオキシドウレタン、および/またはブチレンオキシドウレタンベースの材料であってもよい。
【0090】
可撓性熱伝導性材料は、可撓性熱伝導性材料の総重量に基づいて、0重量%~30重量%(5重量%~30重量%、10重量%~25重量%、10重量%~20重量%など)のグリコールを含み得る。例えば、グリコールは、150~1000g/モル(例えば、150g/モル~800g/モル、150g/モル~600g/モル、200g/モル~500g/モル、300g/モル~500g/モル等)の数平均分子量を有し得る。グリコールは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールであり得る。
【0091】
相変化材料は、人体を冷たく保つのに役立つ温度、すなわち、人の皮膚温度よりも低い温度で相を変化させ、相変化に関連する潜熱で身体から熱を吸収する物質である。PCMの潜熱蓄熱は、液-固相、固-液相、固-気相、および/または液-気相の変化によって達成され得る。例示的な実施形態では、可撓性熱伝導性材料中の相変化材料は、固-液相変化を受ける。可撓性熱伝導性材料は、有機PCMおよび/または無機PCMを含んでもよい。例示的な実施形態では、PCMは、可撓性熱伝導性材料がフォームに適用された後に、PCM材料が閉鎖領域内で相変化を受け得るように、カプセル化されていてもよい。例えば、カプセル化PCMは、1つ以上のPCMおよび外側シェルまたはカプセル壁を含む、コア材料を含み得る。カプセル壁は、PCMを含有するので、PCMが液体状態であるか固体状態であるかに関わらず、カプセル自体は、コア材料を含有する(例えば、完全に包囲する)固体粒子またはゲル粒子として維持し得る。カプセル壁は、不活性ポリマーを含んでもよい。PCMのカプセル化(例えば、マイクロカプセル化)は、噴霧乾燥、遠心、および流動床などの方法によって達成され得る。カプセル化のための例示的な方法は、例えば、国際公開第WO2010/042566号において述べられている。
【0092】
カプセル壁は、例えば、ポリアクリレート、ゼラチン、ポリウレタン、ポリ尿素、尿素-ホルムアルデヒド、尿素-レゾルシノール-ホルムアルデヒド、および/またはメラミンホルムアルデヒドで形成され得る。カプセル壁は、可撓性熱伝導性材料を形成する前に、1つ以上のPCMの周りに形成されてもよく、すなわち、可撓性熱伝導性材料は、事前形成されたカプセル化PCMを含む。カプセル化されたPCMは、カプセル化PCMの総重量に基づいて、50重量%~99重量%(例えば、60重量%~99重量%、70重量%~99重量%、80重量%~98重量%、および/または85重量%~95重量%)の総PCM含有量(1つ以上のPCMを含む)を有し得る。カプセル化PCMは、乾燥粉末では5ミクロン~100ミクロンの平均粒径を有してもよい。湿潤ケーキ形態のカプセル化PCMは、1ミクロン~20ミクロンの平均粒径を有してもよい。例えば、カプセル化PCM(例えば、マイクロカプセルの形態)は、Nextek(登録商標)、Microtek(登録商標)およびMicronal(登録商標)製品ラインとして、Microtek Laboratories,Inc.から入手可能であり、またEnFinit(商標)製品ラインとして、Encapsys LLCから入手可能である。
【0093】
コア材料、すなわちPCMは、人体温度の調節のための用途で最も頻繁に使用される材料から選択することができる。例えば、コア材料(1つ以上のPCMを含み得る)は、0~50℃および/または10~40℃の溶融温度を有し得る。PCMは、特定の温度を維持するために熱を吸収および放出する、パラフィンワックスまたは脂肪酸エステルであってもよい。例えば、PCMは、14~28個の炭素原子および/または16~21個の炭素原子を含むパラフィン(例えば、直鎖パラフィンまたは直鎖アルカン)であってもよい。PCMは、脂肪酸または脂肪酸エステルであってもよく、そのいずれも飽和または不飽和であり得る。PCMは、カプリル酸、カンペニロン、グリセリン、乳酸、パルミチン酸メチル、またはポリエチレンオキサイド誘導体(600~1000g/モルの数平均分子量を有するものなどのポリエチレングリコールを含む)であってもよく、融点が人体に関連する範囲(例えば、0~50℃および/または10~40℃)のものから選択されてもよい。PCMは、無機塩、特に塩水和物、例えば、NaCl・NaSO・10HO、NaSO・10HO等であってもよい。
【0094】
カプセル化PCM(例えば、事前形成されたカプセル化PCM)を水性組成物に添加して、可撓性熱伝導性材料を形成してもよい。水性組成物は、水性エマルジョンポリマーであってもよく、例えば、水性組成物は、水および少なくとも1つのエマルジョンポリマーを含む。水性エマルジョンポリマーは、事前形成されてもよく、事前形成されたカプセル化PCMの存在下で形成されてもよく、および/またはカプセル化PCMを形成するための材料の存在下で形成されてもよい。
【0095】
例示的な水性組成物としては、The Dow Chemical Companyから入手可能なPRIMAL(商標)ブランドのエマルジョン、The Dow Chemical Companyから入手可能なRHOPLEX(商標)ブランドのアクリルエマルジョン、およびThe Dow Chemical Companyから入手可能なHYDRHOLAC(商標)ブランドの水性ポリマー分散物が挙げられる。水は、水性組成物の総重量の10重量%~99重量%を占めてもよい。既知の技術を水性エマルジョンポリマーの調製に使用してもよく、例としては、水、ポリマー(例えば、モノマー)、および任意選択で界面活性剤を組み込んだエマルジョンで開始する乳化重合が挙げられる。例示的な水性コーティング組成物は、欧州特許第EP1422276(B1)号(米国特許公開第2004/0102568号としても入手可能)に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
例示的な実施形態では、水性組成物は、共重合単位として、乾燥ポリマー重量を基準にして、50重量%~99.75重量%の、(メタ)アクリル酸のエステル、アミド、およびニトリルを含むモノエチレン性不飽和非イオン性(メタ)アクリル酸モノマー、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルを含む(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ウレイド(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、および(メタ)アクリルアミドを含有する水性アクリルエマルジョンポリマーを含む(またはそれから本質的になる)。本開示を通して使用される場合、「(メタ)」のあとにアクリレート、アクリロニトリル、またはアクリルアミドなどの別の用語が続く用語の使用は、それぞれアクリレートおよびメタクリレート、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、またはアクリルアミドおよびメタクリルアミドの両方を指す。本明細書において、「非イオン性モノマー」とは、共重合したモノマー残基が、pH=1~14のイオン電荷を有しないことを意味する。
【0097】
例えば、水性組成物は、共重合単位として、乾燥ポリマー重量に基づいて、0.25重量%~10重量%の、モノエチレン性不飽和酸モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、スルホエチルメタクリレート、ホスホエチルモノブチルメタクリレート、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、フマレート、および無水マレイン酸を含有する水性エマルジョンポリマーを含む(または、これから本質的になる)。好ましくは、エマルジョンポリマーは、共重合単位として、乾燥ポリマー重量を基準にして、0.3重量%~2.5重量%の(メタ)アクリル酸を含有する。
【0098】
例えば、水性組成物は、乾燥ポリマー重量に基づいて、0~60重量%の、非イオン性モノエチレン性不飽和非イオン性(メタ)アクリル酸モノマーでもモノエチレン性不飽和酸モノマーでもない任意のモノマーを、共重合単位として含有する水性エマルジョンポリマーを含む(または、これから本質的になる)。任意選択のモノマーとしては、例えば、スチレンまたはアルキル置換スチレン;ブタジエン;アミノアルキル(メタ)アクリレート、N-アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N、N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、または他のビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、N-ビニルピロリドンなどのビニルモノマー;アリルメタクリレート、ビニルトルエン、ビニルベンゾフェノン、ジアリルフタレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、およびジビニルベンゼンが挙げられる。
【0099】
水性エマルジョンポリマーのエマルジョンポリマーは、低いレベルの意図的または偶発的な架橋が存在し得るが、それが可撓性熱伝導性材料としてフォームに適用される場合、実質的に非架橋であってもよい。低レベルの予備架橋またはゲル含有が所望される場合、低レベルの任意選択の非イオン性多エチレン性不飽和モノマー、例えば、乾燥ポリマー重量を基準にして、0.1重量%~5重量%を使用することができる。しかしながら、膜形成の質が著しく損なわれないことが重要である。
【0100】
水性エマルジョンポリマーにおいて、例示的な界面活性剤、例えば、アルキル、アリール、もしくはアルキルアリールスルフェート、スルホネート、またはホスフェートのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩;アルキルスルホン酸;スルホコハク酸塩;脂肪酸;エチレン性不飽和界面活性剤モノマー;およびエトキシル化アルコールまたはフェノールなどのアニオン性および/または非イオン性乳化剤などを使用してもよい。重合性界面活性剤も使用することができる。好ましい重合性界面活性剤モノマーは、ノニルフェノキシプロペニルポリエトキシル化スルフェート(例えば、Dai-ichi CorpのHitenolとして)、ナトリウムアルキルアリルスルホサクシネート(例えば、Henkel CorpのTrem LF-40として)、アンモニウムジ-(トリシクロ(5.2.1.0 2,6)デ-3-エン-(8または9)オキシエチル)スルホスクシネート、およびアンモニウムジ-(トリシクロ(5.2.1.0 2,6)デカ-3-エン-(8または9)スルホスクシネートである。さらに、不飽和C~C30有機酸のアンモニウム塩および金属塩を、単独でまたは上記界面活性剤と組み合わせて使用することができる。これらの酸の例としては、α-メチル桂皮酸、α-フェニル桂皮酸、オレイン酸、リノール酸(米国特許第5,362,832号に記載)、リシノール酸、トール油ロジンおよび脂肪酸の不飽和画分、不均化ロジン酸、大豆油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ベニバナ油脂肪酸、ソルビタンモノオレエート、アビエチン酸、ポリ(オキシエチレン)ソルビトールセスキオレエート、およびEmpol1010ダイマー酸が挙げられる。また好適な重合性界面活性剤モノマーとしては、例えば、マレイン酸誘導体(米国特許第4,246,387号に記載)、およびアルキルフェノールエトキシレートのアリル誘導体(JP-62227435に記載)も挙げられる。使用される界面活性剤の量は、ポリマーの総重量に基づいて、0.1重量%~25重量%であってもよい。界面活性剤は、水と事前ブレンドしてもよい。
【0101】
低揮発性有機化合物(VOC)含有量のコーティングは、フォームで使用するために求められる場合がある。低VOCコーティング組成物は、VOCSではない合体剤を含有し得る。合体剤は、水系エマルジョンポリマー、塗料、またはコーティングに添加され、エマルジョンポリマー、塗料、またはコーティングの最低造膜温度(MFFf)を少なくとも1℃低下させる化合物である。MFFfは、ASTM試験方法02354を使用して測定される。VOCではない合体剤の例としては、可塑剤、低分子量ポリマー、および界面活性剤が挙げられる。すなわち、非VOC合体剤は、大気圧で280℃超の沸点を有する合体剤である。
【0102】
塗料またはコーティング調製の典型的な方法は、エマルジョンポリマー、殺生物剤、消泡剤、石鹸、分散剤、および増粘剤からの偶発的なVOCを導入することができる。これらは、典型的には、コーティング組成物の総重量を基準にして、0.1重量%のVOCを占める。水蒸気ストリッピング、ならびに殺生物剤、消泡剤、石鹸、分散剤、および増粘剤のような低VOC含有添加剤の選択などの追加の方法を使用して、塗料またはコーティングを、コーティング組成物の総重量を基準にして、0.01重量%未満のVOCにさらに減少させることができる。
【0103】
可撓性熱伝導性材料は、直線状の平坦な表面を有するフォームに適用されてもよい。可撓性熱伝導性材料はまた、曲面(例えば、輪郭切断枕)、フォームおよびマットレス業界で知られているより複雑なトポロジー表面(例えば、畳み込みフォームシートとしても知られているいわゆる「卵クレート(egg crate)」フォームパッド、別の例は、波状パターンがある)にも適用されてもよい。可撓性熱伝導性材料は、フォーム表面上に直接適用されてもよく、例えば、フォーム表面上にスプレーコーティングおよび/または注がれてもよい。可撓性熱伝導性材料は、それ自体で拡散もよく、または木製もしくは金属のロッドまたはスティックなどの道具を使用して、あるいはエアーナイフを使用して拡散してもよい。カーテンコーティング機器も同様に使用され得、コンベアベルトの補助によって、フォームを、コーティング液のカーテンを通って移動させることができる。様々な種類のロールツーロールコーティングも同様に使用することができる。可撓性熱伝導性材料がそれ自体でフォーム上にスプレーコーティングもしくは拡散させられる場合、あるいは拡散が補助されるか、またはカーテンコーティング機器が使用される場合、取り外し可能なマスクを使用して表面の特定の部分をコーティングせずに残すことができ、コーティング後、マスクを取り外して、目的のコーティングパターンに到達させることができる。
【0104】
可撓性熱伝導性材料はまた、ゲルであり得る。様々な実施形態について、ゲルはポリウレタン;鉱油などの希釈剤(増量剤(extender)としても知られる)で膨潤させたゴム;シリコーンエラストマーから作製することができるが、他の様々なポリマーをゲルに作製することができる。ポリウレタンゲルは、例えば、米国特許出願公開第2017/0166681(A1)号に記載されている。ゴムは、例えば、天然ゴムまたはSBゴム、SBS、SEBS、SIBS、SEPS、SEEPS、および他の様々なものなどのスチレンブロックコポリマーゴムであり得、これらのそれぞれは、希釈剤、最も一般的には鉱油を使用して膨潤させることができる。希釈剤で膨潤されたかかるゴムは、例えば、米国特許第5,618,882号に見出すことができる。コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体を形成する際に、可撓性熱伝導性材料を形成するために使用されるゲルは、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームに埋め込まれるか、または可撓性連続気泡ポリウレタンフォームが構造体の周りに形成され得る。
【0105】
可撓性熱伝導性材料はまた、金属であり得る。適切な金属の例としては、とりわけ、銅およびアルミニウムが挙げられる。本明細書で使用される場合、金属は、銅およびアルミニウムなどの元素金属だけでなく、真ちゅうおよび青銅などの銅を含む金属合金も含む。好適な金属の他の例としては、鋼、ニッケル、銀、金、白金、および前述の金属のいずれかを含むがこれらに限定されない金属合金が挙げられるが、これらに限定されない。また、人体からの熱の除去をさらに強化するために、コンピュータプロセッサの冷却に使用されるようなヒートパイプを使用することができ、ケースとして使用される金属または材料は、前述の金属または高分子材料のいずれかであり得、水または有機溶剤などの相変化材料が内部に収納されている。コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体を形成する際に、可撓性熱伝導性材料を形成するために使用される金属は、可撓性構造体に織られるかまたは編まれたワイヤの形態であり得る。かかる構造体は、可撓性連続気泡ポリウレタンフォームに埋め込むことができるか、または可撓性連続気泡ポリウレタンフォームを構造体の周囲に形成することができる。
【0106】
すべての部およびパーセンテージは、特に示されない限り、重量による。すべての分子量データは、特に示されない限り、数平均分子量に基づく。
【実施例
【0107】
材料
実施例は、次の材料を使用する。
【0108】
本例のコンピュータモデルに入力されたプロパティーのソースとして使用される連続気泡粘弾性ポリウレタンフォームは、米国特許出願公開第2017/0362375A1号の表3に見られる実施例4と同じタイプである。
【0109】
本実施例のコーティング配合物は、ポリエチレングリコールおよびアクリルラテックスベースのバインダーを含む相変化材料(PCM)を使用して、水ベースのコーティングを形成する。相変化材料は、Microtek28D(Microtek Laboratories,Inc.)であり、これは、28℃の相変化温度を有するカプセル化パラフィン系ワックス材料である。本実施例のMicrotek28Dの目標荷重は、33J/インチの潜熱を達成するために0.18g/インチである。コーティング中のPCMの重量分率は、約48%である。PCMコーティングおよびその構成材料の物理的特性を表1にまとめている。
【表1】
【0110】
人体からの熱伝達のシミュレーション
シミュレーションの詳細は、以下の表4に記載する。以下の各例では、連続気泡粘弾性ポリウレタンフォームの開始温度および湿度は、40%の相対湿度で20℃である。人体は、幅400mmの細長い楕円を使用してモデル化され、中央の70mmの連続気泡粘弾性ポリウレタンフォームに沈められる。人体の楕円と連続気泡粘弾性ポリウレタンフォームとの間の接触弧長cは、次の式で表される(この場合は1%以内の誤差)。
【数1】
ここで、aは半長軸(すなわち、長軸の長さの半分)であり、bは半短軸である。cの値は、449mmと計算される。
【0111】
連続気泡粘弾性ポリウレタンフォームは、場合によっては、70%のコーティング被覆率を有し、全被覆率の残りの30%は、通気性のある開口部を可能にするためにコーティングされていない。これにより、開口部の全幅を134.7mmにすることができた。与えられた全幅に対して、破断部が次の数のギャップに均等に分割されると、次の数のギャップが提供される:7個のギャップ=それぞれ19.2mm、15個のギャップ=それぞれ9.0mm、23個のギャップは、それぞれ5.9mmに均等に分割し、31個のギャップ=それぞれ4.3mm。コーティング被覆率の他の値(例えば、50%、60%、および90%)のギャップ数からギャップ幅への変換は、同様の計算に従う。
【0112】
次のシナリオが考慮される。
比較例(C.E)A=PCMコーティングを施していないメモリーフォーム
C.E.B=表面の100%にPCMコーティングを施したメモリーフォーム
C.E.C=表面の70%にPCMコーティングを施したメモリーフォームであり、通気性を確保するために7つのギャップが等間隔に配置されており、各ギャップの幅は19.2mmである。
C.E.D=表面の70%にPCMコーティングを施したメモリーフォームであり、通気性を確保するために15個のギャップが等間隔に配置されており、各ギャップの幅は9.0mmである。
本発明の実施例(I.E.)#1=表面の70%にPCMコーティングを施したメモリーフォームであり、通気性を確保するために23個のギャップが等間隔に配置されており、各ギャップの幅は5.9mmである。
I.E.#2=表面の70%にPCMコーティングを施したメモリーフォームであり、通気性を確保するために31個のギャップが等間隔に配置されており、各ギャップの幅は4.3mmである。
I.E.#3=表面の50%にPCMコーティングを施したメモリーフォームであり、通気性を確保するために25個のギャップが等間隔に配置されており、各ギャップの幅は9.0mmである。
I.E.#4=表面の50%にPCMコーティングを施したメモリーフォームであり、通気性を確保するために35個のギャップが等間隔に配置されており、各ギャップの幅は6.4mmである。
C.E.E=表面の60%にPCMコーティングを施したメモリーフォームであり、通気性を確保するために20個のギャップが等間隔に配置されており、各ギャップの幅は9.0mmである。
C.E.F=表面の90%にPCMコーティングを施したメモリーフォームであり、通気性を確保するために5個のギャップが等間隔に配置されており、各ギャップの幅は9.0mmである。
C.E.G=表面の90%にPCMコーティングを施したメモリーフォームであり、通気性を確保するために10個のギャップが等間隔に配置されており、各ギャップの幅は4.5mmである。
【0113】
すべての場合において、PCMコーティングを施した材料(C.E.B~GおよびI.E.#1~#4)は、より低い温度で開始する(表2および3を参照)。人体が表面を加温すると、120分までにC.E.BからGまでは、C.E.A(コーティングなしの裸のフォーム)と同じかそれよりも暖かくなるか、あるいは、120分で、Jonesにより例証されたStevens & Chooの参考文献(Stevens,J.C.,& Choo,K.K.(1998).Temperature sensitivity of the body surface over the life span.Somatosensory & Motor Research,15,13-28.Jones,L.(2009).Thermal Touch.Scholarpedia,4(5):7955.http://www.scholarpedia.org/article/Thermal_touchにより引用)に記載されているように、温度の低下を検出するための0.11℃の閾値未満だけC.E.Aよりも冷たくなる。しかしながら、I.E.#1から#4までについては、温度は常にC.E.A(およびC.E.BからGまで)の温度を下回り、0.11℃の閾値を超えて低くなる。したがって、多くの通気性のあるコーティングされていないスペーサー(すなわち、狭いコーティングされていないギャップ)を使用すると、向上した冷却性能を可能にする。
【0114】
本発明の実施例および比較例の両方からのデータをさらに分析して、PCMコーティングされたフォームがC.E.A(PCMコーティングなし)のフォームよりも0.11℃の閾値だけ低温であるという意味で本発明のギャップサイズの範囲を決定した。図5は、コーティング被覆率およびギャップサイズを入力変数として使用して直線当てはめから作成した等高線プロットの結果と、PCMコーティングフォーム対C.E.Aフォーム(PCMコーティングなし)の到達最高温度の差を示している。曲線当てはめは、特に冷却効果があることが判明したI.E.#2を含めずに行われた。結果として得られた曲線当てはめは、I.E.#2がC.E.Aのフォームと比較して0.11℃を超える冷却を有することを予測することができた。等高線は、ギャップサイズとコーティング被覆率との組み合わせであり、ここでは、PCMコーティングされたフォームは、C.E.Aのフォーム(PCMコーティングなし)よりも0.11℃低い、120分での最高温度を有する。したがって、本発明の範囲は、図5の等高線より下にあるギャップサイズとコーティング被覆率との組み合わせである。言い換えれば、所与のPCMコーティング被覆率(「cov」)に対する通気性開口部のサイズ(「ギャップサイズ」)は、特定のレベル未満であり、以下の不等式に従う:
ギャップサイズ[mm単位]≦-0.196*cov[%単位]+20.6
【0115】
この不等式の妥当性は、シミュレーション結果(C.E.#Aと比較した120分でのTの低下が、0.11℃より大きいかどうか)を不等式に基づく予測と比較する、表4の最後の2列で検証される。
【表2】
【表3】
【表4】
【0116】
シミュレーションの詳細-モデル開発
2Dモデル
マットレスの温熱快感は、主に眠っている人とのその境界における温度および湿度によって決定される。フォームの機械的応答も材料選択の因子であるが、温熱快適に焦点を当てた現在のモデルでは直接シミュレートされていない。図6に示すように、眠っている人およびマットレスの複雑な形状が、モデルで簡略化されている。マットレスは、異なるフォーム材料の2つの層からなる。最上層は連続気泡粘弾性ポリウレタンフォームであり、これは、柔らかな感触を提供し、一方、ベース層は、十分な支持を提供するためにより硬いフォームであり、十分な支持を提供する。シミュレーションを簡略化するための近似として、硬質フォーム層は非圧縮性であると想定され、これは、十分に硬い層、例えば30~50重量ポンド(lb-force)のIFDが使用されている場合に現実的でである。かかるフォームの例は、Herrington R.& Hock K.,eds.“Dow Polyurethane Flexible Foams”(The Dow Chemical Company,Midland,Michigan 1997)のページ9.37に記載されている。眠っている人の胴体は、長軸が40cmおよび短軸が14cmの楕円形の断面を有する円柱で再現される。最上層の上面は楕円形に一致しており、眠っている人の体重によって引き起こされる圧縮を模倣している。半楕円形の領域の深さはフォームの高さの70%であり、これは最上層の接触領域の下部での70%の圧縮率に相当する。ベース層には、圧縮がないと想定される。最上フォーム層およびベース層は、それぞれ幅80cm、高さ10cmおよび5cmであり、どちらの寸法も長手方向の寸法(約2m以上)に比べて短い。3D組立品は、その断面の2Dモデルで再現することができる。
【0117】
マットレスの上面はPCMの交互のパターンでコーティングされており、相変化によって熱を放散する。PCMコーティングの上に、布地層を模倣するために薄層ドメインが追加され、寝具シートからの潜在的な影響を考慮する。
【0118】
2Dモデルにおける主な現象
2Dモデルは、フォームマットレスの熱伝達、水分輸送、および空気の自然対流を含む、マットレスの快適な睡眠に影響を与える可能性のある主な現象をシミュレートする。熱および水分の輸送に対する自然対流の寄与も考慮される。これらの現象はすべて、異なる材料特性を有するマットレスモデルの各層(すなわち、フォーム、PCMコーティング、および布地層)に対して定義されている。次のセクションでは、各現象のモデルを紹介する。このモデルは、商用ソフトウェアパッケージCOMSOL Multiphysics(登録商標)5.0を使用して実装されている。COMSOL(登録商標)は、様々な物理現象を単一のモデルに結合して、それらの相互作用を分析するためのブルトインインターフェースを提供する有限要素シミュレーションソフトウェアである。
【0119】
マットレス内の水蒸気の輸送
多孔質フォーム内の水蒸気の輸送は、次の式を使用してシミュレートされる。
【数2】
式中、cはフォーム内の空気の水蒸気濃度(単位:mol/m)であり、εは、フォーム気孔率(単位なし)であり、
【数3】
は、対流速度(単位:m/s)であり、Dは、水蒸気の有効拡散率(単位:m/s)であり、Sはフォーム内の水蒸気源(この研究ではS=0)である。蛇行した多孔質構造体内の水蒸気の有効拡散率、Dは、自由空気中の水蒸気の拡散率、D=2.82×10-5/sよりも小さいであろう。2Dモデルは、マットレス内部の水蒸気の有効拡散率にも影響を与える圧縮による、フォーム気孔率、εの変動を考慮している。水蒸気の有効拡散率は異なる圧縮率で測定されており、測定値の曲線当てはめ式を使用して、D決定する。フォーム内の対流速度を決定するために使用される自然対流式、
【数4】
は、以下に説明されている。
【0120】
マットレス内の熱の輸送
マットレス全体の熱伝達は、エネルギーバランス式を使用してシミュレートされる。
【数5】
式中、Tはフォーム内の温度(単位:K)であり、ρ空気は、空気の密度(単位:kg/m)であり、Cp、空気は、一定圧力での空気の比熱容量(単位:J/(kg・K))であり、(ρC有効は、一定の圧力でフォームの有効体積熱容量であり、k有効は、有効熱伝導率(単位:W/(m・K))であり、Qは、マットレスの熱源(この研究ではQ=0)である。
【0121】
有効体積熱容量、(ρC有効は、次のように定義される:
(ρC有効=ερ空気p、空気+(1-ε)ρPUp、PU (3)
式中、ρPUおよびCp、PUは、それぞれモノリシックポリウレタン(「PU」)の密度および比熱容量である。この研究で使用される有効熱伝導率k有効は、連続気泡粘弾性ポリウレタンフォームを使用してLasercomp熱伝導装置で、ASTM法C518により測定される。
【0122】
マットレス内の空気の自然対流
フォーム内の自然対流は、多孔質媒体内の運動量バランスの連続の式およびブリンクマン(Brinkman)の式に基づいて、次のようにモデル化される:
【数6】
【数7】
式中、pは、静水圧(単位:Pa)であり、μ空気は、空気の動的粘度(単位:Pa・s)であり、κは、PUフォームの透過率(単位:m)であり、
【数8】
は、体積力(単位:N/m)である。
フォーム内の空気は、加熱されたときの空気の熱膨張を説明するために運動量式に加えられた追加の体積力の項を除いて、非圧縮性の理想気体として動作すると想定される。温度によるガス密度の小さな変化についてのブシネスク(Boussinesq)近似を浮力式に適用して、次の式を得る:
【数9】
式中、
【数10】
は、重力定数であり、α空気は、空気の熱膨張係数であり、T基準は、基準温度(20℃)である。
【0123】
空気および固体(モノリシック)PUの物理的特性を、表5および表6に示す。それらは、本明細書で提供される温度および湿度の範囲内で一定として扱われる。空気特性(例えば、ρ空気、Cp、空気、μ)に対する水分含有量および温度の影響は考慮されない。
【表5】
【表6】
【0124】
透過性相変化材料(PCM)コーティングのモデリング
透過性PCMコーティングパターン
PCMコーティングは、相変化の潜熱の形態で熱を放散し、これにより、ヒトの皮膚に接触するとより涼しい感触をもたらす。しかしながら、PCMコーティングの緻密層は、通常不浸透性であり、眠っている人と連続気泡粘弾性ポリウレタンフォームとの間の境界面から離れる水分の拡散を制限するバリアを作り出す。かかる制限により、PCMコーティングの効率が低下し、眠っている人とフォームとの境界に水分が蓄積するため、向上した快適性を提供する。
【0125】
PCMコーティング層を通る水分の拡散速度を改善するための1つの解決策は、水分がコーティング層のこれらの開口部を通って輸送できるように、コーティングにギャップを追加することである。かかるギャップのパターンの1つが図7に示されており、ここでは、PCMコーティングのストリップがマットレス/眠っている人の境界に交互に配置されている。PCMコーティングのパターンは、等しいストリップ幅および隣接するPCMストリップ間の等しいギャップ距離で、マットレス/眠っている人の境界の特定の割合を覆う。
【0126】
フォームと眠っている人との間の境界は、半楕円の形を有すると想定される。境界のアーチの全長は、次のように楕円積分を解くことによって計算することができる。
【数11】
ここで、aおよびbは、それぞれ超半径および短半径の長さである。図8に示すように、βは主軸から極座標で測定された角度座標であり、原点は楕円の中心である。PCMコーティングのパターンは、PCMストリップ間のギャップの数、Nギャップ、およびコーティングによって覆われた境界の割合、αPCMによって決定することができる。コーティングパターンは、次のように設計される。
PCMストリップの数:NPCM=Nギャップ+1 (8)
各PCMストリップのアーチ長:lPCM=LαPCM/NPCM (9)
隣接するPCMストリップ間のギャップのアーチ長:lギャップ=L(1-αPCM)/Nギャップ (10)
PCMストリップのそれぞれの位置は、境界セグメントが必要なアーチ長に達する角度座標を計算することによって決定される。図8に示すように、点Aと点Bとの間のアーチ長は、次のように計算することができる。
【数12】
【0127】
境界の半分にある分割点のそれぞれの角度座標が決定されると、残りの半分にあるそれらの位置は対称性によって決定することができる。図9は、PCM被覆率が70%で7つのギャップを有するコーティングパターンの例を示しており、図10は、コーティングパターンの2Dモデルに適用される境界条件の例を示している。
【0128】
相変化材料のモデル
相変化材料は、Comsol Multiphysics(登録商標)(Comsol Inc.)の「相変化を伴う熱伝達」モジュールを使用してモデル化される。Comsol Multiphysics(登録商標)では、温度が相変化温度、TPCに達すると、相変化に関連する潜熱がエネルギー出納式に突然追加されることはない。代わりに、Comsol Multiphysics(登録商標)は、TPC-ΔT/2からTPC+ΔT/2までの温度範囲内で起こる相変化を想定している。この温度間隔内で、相変化材料の有効特性は、相変化の前後の材料の混合規則によって決定される。変化しない材料の割合は、TPC-ΔT/2からTPC+ΔT/2まで温度が変化すると、1から0に変化する平滑化関数θで表される。
【0129】
有効密度ρおよび熱伝導率κは、次のように計算される。
ρ=θρ+(1-θ)ρ(12)
κ=θκ+(1-θ)κ(13)
ここで、下付き文字「o」および「1」は、それぞれ元の相または相変化後の材料を示す。
【0130】
温度間隔内見かけ比熱容量Cは、下記のように計算される:
【数13】
第2の項Cは、下記の従って、温度間隔における潜熱分布を近似する:
【数14】
ここで、αは、下記のように定義される。
【数15】
【0131】
相変化中に単位体積あたりに放出される総熱は、式17で計算されるように、測定された総潜熱、λに等しい。
【数16】
【0132】
ヒトの体温調節系のモデリング
図10に示すように、2Dモデルは様々な境界条件を使用して周囲環境を模倣する。周囲の空気にさらされる境界では、温度および湿度のレベルは、周囲条件(すなわち、相対湿度40%で20℃)に指定され、空気はフォームに自由に出入りすることができる。さらに、眠っている人/マットレスの境界では、空気は接線方向にのみ流れると想定されている(すなわち、空気は身体に向かって流れることはできない)。最初は、フォームマットレスが停滞した周囲空気(20℃、相対湿度40%)で満たされていると想定される。基準圧力は、1気圧である。
【0133】
眠っている人との境界では、眠っている人の体温調節系が常に周囲温度と水分レベルを追跡し、ヒトの皮膚での熱および水分の放散を調整して、安定した深部体温を維持する。したがって、体温調節系を組み込むことは、マットレスと眠っている人との間の熱および水分の輸送を推定するために不可欠である。現在の研究は、マットレス/眠っている人の境界で米国暖房冷凍空調学会(American Society of Heating,Refrigerating,and Air-Conditioning Engineers)が公開したモデル(別名「ASHRAEモデル」)を利用して、ヒトの体温調節系をマットレス内の熱および水分の輸送と関連付けた。
【0134】
ASHRAEモデルは、人体を皮膚と身体深部とを表す2つの熱区画と見なす。各区画内の温度は均一であると想定され(皮膚の場合はtsk、中央部の場合はtcrとして示される)、人体内部の熱交換は、皮膚および中央部を表す2つのノード間の熱伝達として扱うことができる。一般的に、快適性に関連する中立温度は、皮膚区画で34℃、身体深部区画で37℃である。体温調節系は、様々な生理学的メカニズムを継続的に制御して、安定した身体深部温度を維持する。式18および式19のそれぞれに示すように、各区画のエネルギー出納式は、それぞれ、皮膚および深部の温度、tskおよびtcrについて解くことができる。2つの式は、単位皮膚面積に基づいて、エネルギー出納および熱損失を考慮する。2つの式のパラメーターおよび変数を、表7および表8に示す。
【数17】
【表7】
【数18】
【表8】
【0135】
式19では、ヒトの代謝活動と寒気の両方によって、深部区画で熱が発生すると想定される。代謝性熱産生率、M、および機械的仕事率、W、(単位:W/m)は、どちらも活動レベルに依存する。眠っている人については、M=40W/mであり、W=0である。
【0136】
ASHRAEモデルの2つのエネルギー出納式は、Comsol Multiphysics(登録商標)において特別なモジュールを使用して、以前の2Dモデルの特別な境界条件として適用された。眠っている人/マットレスの境界で、ASHRAEモデルは、2Dマルチフィジックスモデルによって計算された温度および水分濃度をインポートし、安定した深部温度を維持するために熱放散および発汗率を調整する。一方、ASHRAEモデルは、熱および水分の流束を境界条件として2Dモデルに返す。2つのプロセスは同時に協調して機能し、眠っている人とフォームマットレスとの間の相互作用を模倣する。
【0137】
眠っている人/マットレスの境界での熱流束は、眠っている人の皮膚からの顕熱損失、C+Rに等しい。顕熱損失は、衣類の熱抵抗、および皮膚温度と眠っている人/マットレスの境界での温度、tの温度に等しい有効作用温度との差に依存する。眠っている人からフォームまで伝達される熱流束、Qは、以下の式から計算することができる。
【数19】
h=h+h (21)
ここで、hおよびh(単位:W/(m・K))は、それぞれ、放射熱伝達係数および対流熱伝達係数である。典型的な屋内条件では、h=4.7W/(m・K)である。以前の分析は、眠っている人/マットレスの境界での空気流量は、10-4m/sのオーダーであることが示されており、空気流量が0.15m/Sを下回る場合、h=5.1W/(m・K)である。Rclは衣類の熱抵抗(単位:m・K/W)であり、fclは、着衣の体の実際の覆われた領域を説明する着衣面積係数である。現在の研究では、眠っている人/マットレスの境界での熱および水分の移動に対する抵抗は非常に低く、ウォーキングパンツと半袖シャツを着て眠っている人の抵抗で表すことができると想定した。対応する着衣パラメーターは、Rcl=0.0558m・K/Wおよびfcl=1.1である。
【0138】
式22に示すように、境界での水分の流束、Sは、皮膚から蒸発した水分がすべてマットレスに移動したと仮定すると、蒸発性熱損失、Eskに関連している。
【数20】
ここで、hfgは、水の蒸発熱(30℃で2.43×10J/kg)でであり、12
【数21】
は、水のモル質量(18×10-3kg/mol)である。蒸発性熱損失、Eskは、式23に示すように、最大蒸発性熱損失、E最大に対するEskの比として定義される皮膚の湿り度、wに依存する。
sk=wE最大 (23)
以下の式に示すように、最大蒸発性熱損失、E最大は、皮膚に近い湿度と周囲の環境の湿度との差に依存する。
【数22】
ここで、psk、sは、皮膚での水蒸気圧(単位:kPa)であり、皮膚温度での飽和水蒸気圧、tskであると想定される。pは、眠っている人/マットレスの境界での水蒸気圧(単位:kPa)である。hは、蒸発性熱伝達係数(単位:W/(m・kPa))であり、Re、clは、衣類の蒸発性熱伝達抵抗(単位:m・kPa/W)である。psk、s、h、およびRe、clを計算するための式は、2013 ASHRAE Handbookに、ASHRAE Model for Human Thermal Regulationとして記載されている。
【0139】
眠っている人/マットレスの境界での水蒸気圧、pは、2Dマルチフィジックスモデルによって予測される水分濃度、c、(単位:mol/m)から計算することができる。
=10-3RT (25)
ここで、pは、kPa単位であり、Rは、気体定数(R=8.314J・K-1・mol-1)であり、T(単位:K)は、境界で2Dモデルによって予測された対応する温度である。
【0140】
2D合成モデルでは、熱流束、Q、および水分流速、Sは、眠っている人/マットレスの境界で適用され、眠っている人からマットレスへ伝達される熱および水分を表す。眠っている人/マットレスの境界での水分濃度、c、および境界での対応する温度、Tは、2Dマルチフィジックスモデルによって計算され、境界における水分および熱流束を計算するために、ASHRAEモデルの入力として使用される。2Dシミュレーションの境界上の各ポイントは、ASHRAEモデルのコピーにリンクされており、このモデルは、2D形状によって提示される局所的な熱/水分伝達環境を感知する。
本願は以下の態様にも関する。
(1)コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体であって、
第1の主表面および前記第1の主表面の反対側の第2の主表面を有する可撓性連続気泡ポリウレタンフォームと、
前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの前記第1の主表面の表面積の30~90パーセントを所定の形状で覆う(cov.(被覆率)、%で表される)可撓性熱伝導性材料であって、前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームを前記可撓性熱伝導性材料の画定された縁部の間で露出させる1つ以上のギャップを提供し、前記1つ以上のギャップの各ギャップが、式I:
ギャップ幅(mm)≦-0.196×cov.(%)+20.6(式I)
に従うギャップ幅を有し、
前記1つ以上のギャップの総表面積が、前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの前記第1の主表面の前記表面積の70~10パーセントを提供する、可撓性熱伝導性材料と、を含む、コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォーム構造体。
(2)前記可撓性熱伝導性材料が、カプセル化された相変化材料を含有する、前記(1)に記載の構造体。
(3)前記カプセル化された相変化材料が、前記可撓性熱伝導性材料1グラムあたり80~300ジュールの潜熱転移を有する、前記(2)に記載の構造体。
(4)前記可撓性熱伝導性材料が、ゲルである、前記(1)に記載の構造体。
(5)前記可撓性熱伝導性材料が、金属である、前記(1)に記載の構造体。
(6)前記可撓性熱伝導性材料の前記所定の形状が、0.1~2ミリメートルの厚さを有する、前記(1)~(5)のいずれかに記載の構造体。
(7)前記可撓性熱伝導性材料の前記所定の形状が、前記連続気泡粘弾性ポリウレタンフォームの前記第1の主表面上の単一の連続ストリップである、前記(1)~(6)のいずれかに記載の構造体。
(8)前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの前記第1の主表面上の前記単一の連続ストリップが、蛇行形状を有する、前記(7)に記載の構造体。
(9)前記可撓性熱伝導性材料の前記所定の形状が、前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの前記第1の主表面上の一連の平行なストリップである、前記(1)~(6)のいずれかに記載の構造体。
(10)前記1つ以上のギャップの各ギャップの前記ギャップ幅が、同じ値を有する、前記(1)~(9)のいずれかに記載の構造体。
(11)前記1つ以上のギャップのそれぞれの前記ギャップ幅が、異なる値を有する、前記(1)~(9)のいずれかに記載の構造体。
(12)前記可撓性熱伝導性材料の少なくとも一部が、前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの前記第1の主表面と同一平面上にある前記コーティングされた可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの外面を形成する、前記(1)~(11)のいずれかに記載の構造体。
(13)前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームの少なくとも一部が、前記可撓性熱伝導性材料を完全に覆う、前記(1)~(11)のいずれかに記載の構造体。
(14)前記可撓性熱伝導性材料が、ポリマー膜にカプセル化されている、前記(1)~(13)のいずれかに記載の構造体。
(15)前記可撓性連続気泡ポリウレタンフォームが、粘弾性ポリウレタンフォームである、前記(1)~(14)のいずれかに記載の構造体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10