(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】非酸化物セラミック物品を製造するための積層造形方法、並びにエアロゲル、キセロゲル、及び多孔質セラミック物品
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20240913BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240913BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240913BHJP
C04B 35/632 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y10/00
B33Y70/00
C04B35/632
(21)【出願番号】P 2021510722
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 US2019047604
(87)【国際公開番号】W WO2020046687
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-19
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ,ガレス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ラッキー,メリッサ エー.
(72)【発明者】
【氏名】コルブ,ブラント ユー.
(72)【発明者】
【氏名】マグナント,ジェローム ジー.
(72)【発明者】
【氏名】パーカー,ゼバ
(72)【発明者】
【氏名】ケーシー,ケビン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウレン,ニコラス エス.
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/127569(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107586136(CN,A)
【文献】国際公開第2016/191162(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107686351(CN,A)
【文献】国際公開第2017/066584(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107158474(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108002843(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102807391(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
C04B 35/00ー35/84
B33Y 10/00
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非酸化物セラミック部品の製造方法であって、
a)光重合性スラリーを得ることであって、前記光重合性スラリーが、複数の非酸化物セラミック粒子と、
前記光重合性スラリーの総重量に基づいて最大30重量%である少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、前記光重合性スラリーの総重量に基づいて40重量%以上である溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、任意成分である分散剤と、を含む、得ることと、
b)
積層造形プロセスにより前記光重合性スラリーを選択的に硬化させてゲル化物品を得ることと、
c)超臨界流体乾燥工程を適用することにより前記ゲル化物品を乾燥させてエアロゲル物品又はキセロゲル物品を形成することと、
d)前記エアロゲル物品又は前記キセロゲル物品を熱処理して多孔質セラミック物品を形成することと、
e)前記多孔質セラミック物品を焼結して焼結セラミック物品を得ることと、
を含み、前記非酸化物セラミック粒子は、炭化ケイ素、窒化ケイ素(Si
3N
4)、炭化ホウ素(B
4C)、二ホウ化チタン(TiB
2)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB
2)、窒化ホウ素(BN)、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、窒化アルミニウム(AlN)、六ホウ化カルシウム(CaB
6)、MAX相(M
n+1AX
n)、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、製造方法。
【請求項2】
前記光重合性スラリーが、前記光重合性スラリーの総重量に基づいて30重量パーセント未満の前記非酸化物セラミック粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非酸化物セラミック粒子が、窒化ケイ素である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記非酸化物セラミック粒子の平均粒径が、(i)250ナノメートル~1マイクロメートル、(ii)500ナノメートル~1.5マイクロメートル、(iii)1マイクロメートル~10マイクロメートル、のいずれかを満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光開始剤が、ヨードニウム塩、可視光増感剤、及び電子供与体化合物、を含む系を含み、前記電子供与体化合物は、アルキル芳香族ポリエーテル、アリール基が1つ以上の電子求引基により置換されているアルキルアリールアミノ化合物、多環式芳香族化合物、N-アルキルカルバゾール化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光重合性スラリーを前記選択的に硬化させることが、3マイクロメートル~50マイクロメートルの厚さを有する前記光重合性スラリーの一部を硬化させることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記焼結セラミック物品が、前記非酸化物セラミック粒子の理論密度に対して95%以上の密度を示す、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
物品の製造方法であって、
a)1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、物品の複数の層を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信することと、
b)積層造形プロセスによる前記製造デバイスを用いて前記デジタルオブジェクトに基づく前記物品を生成することであって、前記物品が、光重合性スラリーを選択的に硬化させることにより得られるゲル化物品を超臨界流体乾燥工程を適用することにより乾燥させて得られるエアロゲル物品又はキセロゲル物品を含み、前記光重合性スラリーが、
1)複数の非酸化物セラミック粒子と、
2)
前記光重合性スラリーの総重量に基づいて最大30重量%である少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、
3)前記光重合性スラリーの総重量に基づいて40重量%以上である溶媒と、
4)光開始剤と、
5)阻害剤と、
6)少なくとも1種の焼結助剤と、を含む、生成することと、
を含み、前記非酸化物セラミック粒子は、炭化ケイ素、窒化ケイ素(Si
3N
4)、炭化ホウ素(B
4C)、二ホウ化チタン(TiB
2)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB
2)、窒化ホウ素(BN)、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、窒化アルミニウム(AlN)、六ホウ化カルシウム(CaB
6)、MAX相(M
n+1AX
n)、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概括的に、非酸化物粒子を含有するスラリーを構造材料として用いたセラミック物品を作製するための積層造形(additive manufacturing)方法に関する。本発明はまた、このような方法により得ることが可能な物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセラミックの加工処理において、例えば、セラミックスラリーをキャスティングするスリップは、通常、高いグリーン密度の中間体を得るため、可能な限り高い粒子充填を有する必要があった。高いグリーン密度が、高密度の焼結セラミックの作製を可能とするために望まれ、かつ必要とされる。粉末ベースの積層造形技術では、低充填密度の粉末床が高度に多孔質の三次元物体をもたらし、典型的には、加熱処理中に大きな圧力を加えずには高密度セラミックを得られず、高密度の複雑な三次元形状の実現を困難としている。典型的には、この方法は、セラミック材料の理論密度の95%未満の密度をもたらす。
【0003】
セラミック充填フォトポリマーに基づくスラリーの光造形法による加工処理は、比較的高密度の三次元構造を有するセラミック物品の作製においてグリーン体としての役割を果たすその能力のため、有望視されている。一方で、セラミック物品を作製するために、ポリマーの加工処理に主に使用される(光造形法のような)積層造形技術もまた用いようとする取り組みがある。例えば、国際公開第2016/191162号(Mayrら)には、ナノサイズ粒子を含有するゾルを使用してセラミック物品を作製するための積層造形プロセスが記載されている。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様では、非酸化物セラミック部品の製造方法が提供される。方法は、a)光重合性スラリー(photopolymerizable slurry)を得ることと、b)光重合性スラリーを選択的に硬化させてゲル化物品を得ることと、c)ゲル化物品を乾燥させてエアロゲル物品又はキセロゲル物品を形成することと、d)エアロゲル物品又はキセロゲル物品を熱処理して多孔質セラミック物品を形成することと、e)多孔質セラミック物品を焼結して焼結セラミック物品を得ることと、を含む。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0005】
第2の態様では、エアロゲルが提供される。エアロゲルは、a)有機材料と、b)エアロゲルの総重量パーセントに基づいて29~75重量パーセントの範囲の非酸化物セラミック粒子と、c)少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0006】
第3の態様では、キセロゲルが提供される。キセロゲルは、a)有機材料と、b)キセロゲルの総重量パーセントに基づいて29~75重量パーセントの範囲の非酸化物セラミック粒子と、c)少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0007】
第4の態様では、多孔質セラミック物品が提供される。多孔質セラミック物品は、a)多孔質セラミック物品の総重量に基づいて90~99重量パーセントの範囲の非酸化物セラミック粒子と、b)少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。非酸化物セラミック粒子は、多孔質セラミック物品中に、1つ以上の蛇行状若しくは弓状チャネル、1つ以上の内部建築ボイド(internal architectural voids)、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔、又はこれらの組み合わせを画定する。多孔質セラミック物品は、長さ0.5mm以下の大きさを有する多孔質セラミック物品に必須の少なくとも1つの特徴を有する。
【0008】
第5の態様では、非酸化物セラミック物品が提供される。非酸化物セラミック材料は、非酸化物セラミック物品中に、1つ以上の蛇行状若しくは弓状チャネル、1つ以上の内部建築ボイド(internal architectural voids)、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔、又はこれらの組み合わせを画定する。非酸化物セラミック物品は、非酸化物セラミック材料の理論密度に対して95%以上の密度を示す。非酸化物セラミック物品は、長さ0.5mm以下の大きさを有する非酸化物セラミック物品に必須の少なくとも1つの特徴を有する。
【0009】
第6の態様では、別の方法が提供される。方法は、a)非一時的機械可読媒体から物品の3Dモデルを表すデータを取得することと、b)1つ以上のプロセッサによって、このデータを使用して製造デバイスとインタフェースする3Dプリンティングアプリケーションを実行することと、(c)製造デバイスによって物品の物理的オブジェクトを生成することであって、物品が、光重合性スラリーを選択的に硬化させることにより得られるゲル化物品を含む、生成することと、を含む。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0010】
第7の態様では、更なる方法が提供される。方法は、a)1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、物品の複数の層を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信することと、b)積層造形プロセスによる製造デバイスを用いてデジタルオブジェクトに基づく物品を生成することであって、物品が、光重合性スラリーを選択的に硬化させることにより得られるゲル化物品を含む、生成することと、を含む。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0011】
第8の態様では、システムが提供される。システムは、物品の3Dモデルを表示するディスプレイと、ユーザによって選択された3Dモデルに応じて3Dプリンタに物品の物理的オブジェクトを作製させる1つ以上のプロセッサであって、物品が、光重合性スラリーを選択的に硬化させることにより得られるゲル化物品を含む、1つ以上のプロセッサと、を備える。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0012】
第9の態様では、非一時的機械可読媒体が提供される。非一時的機械可読媒体は物品の3次元モデルを表すデータを含み、3Dプリンタとインタフェースする1つ以上のプロセッサによってアクセスされた際、3Dプリンタに、光重合性スラリーの反応生成物を含む物品を作製させる。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0013】
本開示の少なくとも特定の実施形態に従って製造されたセラミック部品は、光重合性組成物が低い粒子充填量であるにもかかわらず、許容可能な密度を示すことが見出された。
【0014】
本開示の上記の概要は、開示されるそれぞれの実施形態、又は本開示の全ての実装形態を説明することを意図していない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願を通していくつかの箇所において、例を列挙することによって指針が示されるが、それらの例は様々な組み合わせで使用することができる。それぞれの事例において、記載された列挙項目は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本明細書で開示される光重合性組成物を使用して物品を構築するプロセスのフロー図である。
【
図3A】本開示の一実施形態に従って調製されたゲル化物品の斜視図である。
【
図3B】
図3Aのゲル化物品から形成されたエアロゲル物品の斜視図である。
【
図3C】
図3Bのエアロゲル物品から形成された多孔質セラミック物品の斜視図である。
【
図3D】
図3Cの多孔質セラミック物品から形成された焼結セラミック物品の斜視図である。
【
図4A】比較例1のエアロゲル物品の斜視図である。
【
図4B】
図4Aのエアロゲル物品から形成された
図4Aの焼結セラミック物品の複数の破片の斜視図である。
【
図5】放射線が収容器を通過して方向付けられる装置の全般概略図である。
【
図6】物品の積層造形のためのシステム600全般のブロック図である。
【
図7】物品のための製造プロセス全般のブロック図である。
【
図8】例示的な物品製造プロセスの高レベルフロー図である。
【
図9】例示的な物品積層造形プロセスの高レベルフロー図である。
【
図10】例示的なコンピューティングデバイス1000の概略正面図である。
【
図13C】
図13Bのエアロゲル物品から形成された焼結セラミック物品の斜視図である。
【0016】
上記で特定された図は、本開示のいくつかの実施形態を説明するものであるが、本明細書で言及されるとおり、他の実施形態もまた企図される。図は必ずしも原寸に比例して描かれているとは限らない。全ての場合において、本開示は、限定ではなく代表例の提示によって、本発明を提示する。当業者によって多数の他の改変及び実施形態が考案され得、それらは、本発明の原理の範囲内及び趣旨内に含まれることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、概して光散乱性が強い粒子充填スラリー(particle loaded slurry)からの積層造形、及び積層造形技術を使用してスラリーを紫外線で光硬化させることを使用して、非酸化物セラミック部品の作製方法を提供する。このような技術により、ホットプレス又は機械加工といった従来の非酸化物セラミック製造プロセスを使用することでは得られない複雑な形状及び微細な特徴を備えた部品が入手可能となり、同様サイズの部品の加工処理機器におけるオーバーヘッドを更に低減するものとなる。典型的には、非酸化物セラミック粒子をナノ粒子サイズで経済的に製作することは困難である。したがって、スラリーは通常、サブミクロンからミクロンまでの範囲の粒子で製造される。このようなスラリーは粒子からの散乱が強いため、典型的には光に対して不透明である。これは、このようなスラリーが、スラリーベースの積層造形技術のほとんどが必要とする光硬化技術と概して不適合であることを意味する。
【0018】
本開示の少なくとも特定の実施形態による非酸化物粒子の低い充填量により、積層造形方法(例えば、光造形法)における光重合中に組成物粘度をより低く、かつ硬化深さをより深くすることが可能となり、更に予想外にも、後加工処理工程の後にセラミック部品を作製することができる。例えば、非酸化物粒子を含有するスラリーの硬化深さを、直径4mmの円のフォトマスクを使用し、Asiga Pico 2 3Dプリンタ(Asiga USA,Anaheim Hills,CA)上で光曝露の時間調整をすることで分析したところ、10秒未満の硬化時間で妥当な硬化深さを示した。しかしながら、より長い時間スケールでは、光散乱により、硬化した円の周囲のより明るい領域として広範囲の過硬化が生じた。硬化深さと過硬化との間の関係は重要である。プリンティングから好適な硬化深さを得るために必要な曝露量が増加するにつれて、過硬化の量が増加する。過硬化は部品の端部が剥離する原因となり、プリント不良をもたらす可能性があるため、正確にプリントされた部品を得るには過硬化を最小限に保つ必要がある。
【0019】
用語解説:
本明細書で使用されるとき、「セラミック」又は「セラミック物品」は、熱を加えることにより作製される非金属材料を意味する。セラミックは、通常、硬く、かつ脆性であり、ガラス又はガラスセラミックとは対照的に、本質的に純粋な結晶質構造を示す。セラミックは通常、無機材料に分類される。「結晶質」とは、三次元の周期的なパターンで配置された原子から構成される(すなわち、X線回折などの技術によって決定され得る長周期結晶構造を有する)固体を意味する。「微結晶」は、画定された結晶構造を有する固体の結晶質ドメインを意味する。微結晶は、1種の結晶相のみを有することができる。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「積層造形」は、3次元物品を製造するために用いられるプロセスを意味する。積層造形技術の例は、コンピュータ制御下で材料の連続層が配置される、光造形法(stereolithography、SLA)である。物品はほとんど全ての形状又は外形にすることができ、三次元モデル又は他の電子データソースから作製される。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「スラリー」は、1ナノメートル(nm)~50マイクロメートル又は1nm~10マイクロメートルの範囲の径を有する離散粒子を含有する連続した液相を指す。典型的には、粒子の過半(すなわち、50%超)は100nm以上の直径を有する。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「機械加工」は、機械による材料のミリング加工、研削、切断、カービング、又は成形を指す。ミリング加工は、通常、研削よりも速く、費用対効果が高い。「機械加工可能な物品」は、三次元形状を有し、かつ機械加工されるのに十分な強度を有する物品である。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「粉末」は、振盪された又は傾けられた際に自由に流動し得る多数の微粒子から構成される乾燥したバルク材料を指す。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「粒子」は、幾何学的に決定され得る形状を有する固体である物質を指す。その形状は規則的であっても不規則的であってもよい。粒子は、典型的には、例えば粒径及び粒径分布に関して分析することができる。粒子は、1つ以上の微結晶を含み得る。したがって、粒子は、1つ以上の結晶相を含み得る。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「会合した(associated)」は、凝集した(aggregated)及び/又は粒塊化した(agglomerated)2つ以上の一次粒子の群を指す。同様に、用語「非会合の(non-associated)」は、凝集(aggregation)及び/若しくは粒塊化(agglomeration)していないか又は実質的にしていない、2つ以上の一次粒子を指す。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「凝集」は、2つ以上の一次粒子の強い会合を指す。例えば、一次粒子は、互いに化学的に結合され得る。概して、凝集体をより小さい粒子(例えば一次粒子)に分割することは困難である。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「粒塊化」は、2つ以上の一次粒子の弱い会合を指す。例えば、粒子は、電荷又は極性により共に保持され得る。粒塊をより小さい粒子(例えば、一次粒子)に分割することは、凝集体をより小さい粒子に分割するほど困難ではない。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「一次粒径」は、非会合の単結晶非酸化物セラミック粒子の径を指し、この粒子は一次粒子とみなされる。X線回折(XRD)は、典型的には一次粒径の測定に用いられる。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「可溶な」は、成分(例えば固体)が溶媒中に完全に溶解できることを意味する。すなわちこの物質は、23℃の水に分散させた際、(グルコースのような)個別の分子、(塩化ナトリウムのような)個別のイオン、又は(スラリーのような)個別の非沈降性粒子を形成することができる。しかしながら、可溶化プロセスにはいくらか時間がかかる場合があり、例えば、成分を数時間(例えば、10~20時間)にわたり撹拌する必要がある場合がある。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「密度」は、物体質量の体積に対する比を意味する。密度の単位は、典型的には1立方センチメートル当たりのグラム数(g/cm3)である。物体の密度は、例えば、物体の体積を(例えば、計算により又はアルキメデスの原理若しくは方法を適用することにより)求め、物体の質量を測定することにより算出することができる。サンプルの体積は、サンプルの全体の外形の大きさに基づいて求めることができる。サンプルの密度は、測定されたサンプル体積及びサンプル質量から算出することができる。材料サンプルの総体積は、サンプルの質量及び用いた材料の密度から算出することができる。サンプル中の気泡の総体積は、サンプル体積の残部であると想定される(100%から材料の総体積を減算したもの)。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「理論密度」は、全ての細孔が除去された場合に焼結物品において得られる可能な最大の密度を指す。焼結物品の理論密度に対する割合は、例えば、焼結物品の断面の電子顕微鏡写真から決定することができる。電子顕微鏡写真で、焼結物品の細孔に帰属できる面積の割合が計算できる。言い方を換えると、理論密度に対する割合は、100%からボイドの割合を差し引くことによって計算され得る。すなわち、焼結物品の電子顕微鏡写真の面積の1パーセントが細孔に帰属できる場合、焼結物品は、理論密度の99パーセントに等しい密度を有すると考えられる。密度は、アルキメデス法によっても求めることができる。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「多孔質材料」は、セラミックの技術分野では、ボイド、細孔、又は気泡により形成される部分的な体積を含む材料を指す。したがって、材料の「連続気泡(open-celled)」構造は「開多孔質(open-porous)」構造と呼ばれることがあり、「独立気泡(closed-celled)」材料の構造は「閉多孔質(closed-porous)」構造と呼ばれることがある。この技術分野では、用語「気泡」の代わりに「細孔」が使用される場合があることもまた見出され得る。材料構造分類である「連続気泡」及び「独立気泡」は、DIN 66133に従って、様々な材料サンプル(例えば、Quantachrome Inc.,USAからの水銀「Poremaster 60-GT」を用いて)について測定された様々な空隙率に関して判定することができる。連続気泡又は開多孔質構造を有する材料には、例えば気体を通過させることができる。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「熱処理」又は「脱バインダー(debindering)」は、(例えば、物理的に結合している水を加熱により除去する乾燥に対し、)固体材料を加熱して、揮発性化学結合成分(例えば、有機成分)の少なくとも90重量パーセントを除去するプロセスを指す。熱処理は、焼結工程の実施に必要な温度よりも低い温度で実施される。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「焼結」及び「焼成」は、互換的に使用される。多孔質(例えば、予備焼結された)セラミック物品は、焼結工程中、すなわち、適切な温度が適用された場合に収縮する。適用される焼結温度は、選択されたセラミック材料に応じて異なる。焼結は、典型的には、多孔質材料を、より高い密度を有する、あまり多孔質ではない材料(又はより少ない気泡を有する材料)に高密度化することを含み、いくつかの事例では、材料相の組成の変化(例えば、非晶質相から結晶質相への部分的変換)を含むこともある。
【0035】
本明細書で使用されるとき、「素地ゲル/グリーン体ゲル(green body gel)」、「ゲル化物品」、及び「ゲル化体(gelled body)」は互換的に使用され、有機バインダー及び溶媒を含むスラリー中に含有される重合性成分の硬化反応から生じる3次元のゲルを意味する。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「エアロゲル」は、3次元の低密度固体を意味する。エアロゲルは、ゲルの液体成分が気体で置き換えられている、ゲルに由来する多孔質材料である。この溶媒除去は、多くの場合、超臨界条件下で行われる。このプロセス中、ネットワークは実質的に縮小せず、高度に多孔質で低密度の材料を得ることができる。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「キセロゲル」は、ゲルの液体成分が周囲条件下又は高温において蒸発により除去された、グリーン体ゲルに由来する3次元の固体を指す。
【0038】
本明細書で使用されるとき、「素地/グリーン体」は、未焼結のセラミック品、典型的には有機バインダーが存在するセラミック品を意味する。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「白体(white body)」及び「多孔質セラミック物品」は互換性があり、予備焼結したセラミック品を指す。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「幾何学的に定義された物品」は、その形状が幾何学的な用語、例えば、円形、正方形、長方形のような2次元の用語、及び層、立方体、立方体様、球体のような3次元の用語で描写可能な物品を意味する。
【0041】
本明細書で使用されるとき、「等方性線状焼結挙動」は、焼結プロセス中の多孔質体の焼結が、方向x、y及びzに対して本質的に一様に生じることを意味する。「本質的に一様」は、方向x、y及びzに対する焼結挙動における差が、約±5%、又は±2%、又は±1%以下の範囲であるということを意味する。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「ひび割れ」は、任意の2方向において少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも10:1、少なくとも12:1、又は少なくとも15:1に等しい比である材料分離又は分割(すなわち、欠陥)を指す。
【0043】
材料又は組成物は、その材料又は組成物が本質的な特徴として特定の成分を含有しない場合、本発明の意味内において、その特定の成分を「本質的に含まない」又は「実質的に含まない」。したがって、上記の成分は、それだけで、又は他の成分若しくは他の成分の原料との組み合わせのいずれによっても、組成物又は材料に意図的には加えられない。特定の成分を本質的に含まない組成物又は材料は、通常、その成分を、組成物又は材料全体に対して、約1重量%未満、若しくは約0.1重量%未満、若しくは約0.01重量%未満(又は溶媒1L当たり約0.05モル未満、若しくは溶媒1L当たり約0.005モル未満、若しくは溶媒1L当たり約0.0005モル未満)の量で含有する。理想的には、組成物又は材料は、上記の成分を全く含有しない。しかしながら、例えば、不純物が原因となり、上記成分が少量存在することを回避できない場合がある。
【0044】
本明細書で使用されるとき、「脂肪族基」は、飽和又は不飽和の直鎖、分枝鎖、又は環状の炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を包含するものとして使用される。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」は、1~32個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖の、環状又は非環状の、飽和一価炭化水素、例えば、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、ペンチルなどを意味する。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「アルキレン」は、1~12個の炭素原子を有する直鎖飽和二価の炭化水素、又は3~12個の炭素原子を有する分枝鎖飽和二価の炭化水素基、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレンなどを意味する。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する、一価の直鎖又は分枝鎖不飽和脂肪族基、例えば、ビニルを指す。別段の指示がない限り、アルケニル基は、典型的には、1~20個の炭素原子を含有する。
【0048】
本明細書で使用されるとき、「硬質化可能」という用語は、例えば、加熱して溶媒を除去することや、加熱して重合、化学的架橋、放射線誘起重合又は架橋を生じさせることなどにより、硬化又は凝固され得る材料を指す。
【0049】
本明細書で使用されるとき、「硬化」とは、例えば、熱、光、放射線、電子ビーム、マイクロ波、化学反応又はこれらの組み合わせの何らかの機構による組成物の硬質化又は部分的硬質化を意味する。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「硬化した」は、硬化によって硬質化又は部分的硬質化された(例えば、重合した又は架橋した)材料又は組成物を指す。
【0051】
本明細書で使用されるとき、「一体型」は、同時に製造されること、又は(一体型)部品のうちの1つ以上を損傷することなく分離することが不可能であることを指す。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの組み合わせを指す省略表現であり、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリル、又はこれらの組み合わせを指す省略表現であり、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリル基を指す省略表現である。「アクリル」は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、及びメタクリルアミドなどのアクリル酸の誘導体を指す。「(メタ)アクリル」とは、少なくとも1つのアクリル基若しくはメタクリル基を有するモノマー又はオリゴマーであって、2つ以上の基を含有する場合、脂肪族セグメントによって結合される、モノマー又はオリゴマーを意味する。本明細書で使用されるとき、「(メタ)アクリレート官能性化合物」は、とりわけ(メタ)アクリレート部分を含む化合物である。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「非架橋性」とは、化学線又は高熱に曝露されたときに架橋しないポリマーを指す。典型的には、非架橋性ポリマーは、架橋に関与する官能基を欠くような非官能化ポリマーである。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「オリゴマー」とは、単一の更なる繰り返し単位の付加時に変化する1つ以上の特性を有する分子を指す。
【0055】
本明細書で使用されるとき、「ポリマー」とは、単一の更なる繰り返し単位の付加時に変化しない1つ以上の特性を有する分子を指す。
【0056】
本明細書で使用されるとき、「重合性スラリー(polymerizable slurry)」及び「重合性組成物」は各々、開始時(例えば、フリーラジカル重合開始時)に重合することができる硬化性組成物を意味する。典型的には、重合(例えば、硬質化)に先立って、重合性スラリー又は重合性組成物は、1つ以上の積層造形(例えば、3Dプリンティング)システムの要件及びパラメータと一致する粘度プロファイルを有している。例えば、いくつかの実施形態では、硬質化は、「光重合性スラリー」に対して十分なエネルギーを有する化学線を照射して、重合又は架橋反応を開始させることを含む。例えば、いくつかの実施形態では、紫外線(UV)、電子ビーム放射線、又はこれらの両方を使用することができる。
【0057】
本明細書で使用されるとき、「樹脂」は、硬化性スラリー又は硬化性組成物中に存在する全ての重合性成分(モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマー)を含有する。樹脂は、ただ1つの重合性成分化合物又は異なる重合性化合物の混合物を含有してもよい。
【0058】
本明細書で使用されるとき、「焼結物品」は、乾燥し、加熱して有機マトリックスを除去した後、更に加熱して空隙率を低下させて高密度化させたゲル化物品を指す。焼結後の密度は、理論密度の少なくとも40パーセントである。理論密度の40~93パーセントの範囲の密度を有する物品は、典型的には、連続多孔質(表面に開放した細孔)を有する。理論密度の93パーセント又は95パーセント以上では、典型的には独立細孔(表面に開放していない細孔)がある。
【0059】
本明細書で使用されるとき、「熱可塑性」とは、そのガラス転移点を十分に超えて加熱されると流動し、冷却されると固体になるポリマーを指す。
【0060】
本明細書で使用されるとき、「ヒートセット性」とは、硬化時に恒久的にセットされ、その後の加熱時に流動しないポリマーを指す。ヒートセット性ポリマーは、典型的には架橋ポリマーである。
【0061】
「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」という言葉は、特定の状況下で特定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0062】
本出願では、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、全般分類を含み、その具体例を、例示のために使用し得る。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つの」と互換的に使用される。列挙に後続する「~のうちの少なくとも1つ」及び「~のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0063】
本明細書で使用されるとき、用語「又は」は、内容がそうでない旨を特に明示しない限り、概して「及び/又は」を含む通常の意味で使用される。用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0064】
また、本明細書では、全ての数は「約」という用語で修飾されるものと想定され、好ましくは「厳密に」という用語で修飾されると想定される。本明細書で使用されるとき、測定した量との関連において、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。更に本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0065】
特性又は属性に対する修飾語として本明細書で使用されるとき、用語「概して」は、特に定めのない限り、その特性又は属性が、当業者によって容易に認識されるものであるが、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではないこと(例えば、定量化可能な特性に関しては、±20%の範囲内)を意味する。用語「実質的に」は、特に定めのない限り、高い近似度(例えば、定量化可能な特性に関しては、±10%の範囲内)を意味するが、この場合もまた、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではない。同一の、等しい、均一な、一定の、厳密に、などの用語は、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではなく、特定の状況に適用可能な、通常の許容誤差又は測定誤差の範囲内にあるものと理解される。
【0066】
第1の態様では、本開示は非酸化物セラミック部品の製造方法を提供する。方法は、
a)光重合性スラリーを得ることであって、この光重合性スラリーが、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む、得ることと、
b)光重合性スラリーを選択的に硬化させてゲル化物品を得ることと、
c)ゲル化物品を乾燥させてエアロゲル物品又はキセロゲル物品を形成することと、
d)エアロゲル物品又はキセロゲル物品を熱処理して多孔質セラミック物品を形成することと、
e)多孔質セラミック物品を焼結して焼結セラミック物品を得ることと、を含む。
【0067】
別の言い方をすれば、
図1を参照すると、非酸化物セラミック部品の製造方法は、光重合性スラリーを得る工程110と、光重合性スラリーを選択的に硬化させてゲル化物品を得る工程120とを含む。特定の実施形態では、光重合性スラリーを選択的に硬化させることは、3マイクロメートル以上、4マイクロメートル以上、5マイクロメートル以上、7マイクロメートル以上、10マイクロメートル以上、15マイクロメートル以上、20マイクロメートル以上、又は25マイクロメートル以上の厚さを有し、かつ50マイクロメートル以下、45マイクロメートル以下、40マイクロメートル以下、35マイクロメートル以下、又は30マイクロメートル以下の厚さを有する、例えば3マイクロメートル~50マイクロメートルの厚さを有する、光重合性スラリーの一部を硬化させることを含む。
【0068】
光重合性スラリーは、典型的には、積層造形デバイスによって又は積層造形デバイス内で使用するため、リザーバ、カートリッジ、又は他の好適な収容器に導入される。積層造形デバイスは、コンピュータ化された設計命令のセットに従って、光重合性スラリーを選択的に硬化する。本方法は任意に、工程120を繰り返してゲル化物品の複数の(例えば少なくとも2つ、少なくとも3つなど)層を形成する工程130を含む。
【0069】
再び
図1を参照すると、この方法は、ゲル化物品を乾燥させてエアロゲル物品を形成する工程140a、又はゲル化物品を乾燥させてキセロゲル物品を形成する工程140bのいずれかを更に含む。任意に、乾燥は超臨界流体乾燥工程を適用することにより行われる。この方法は、エアロゲル物品を熱処理して多孔質セラミック物品を形成する工程150a、又はキセロゲル物品を熱処理して多孔質セラミック物品を形成する工程150bのいずれか、更には多孔質セラミック物品を焼結して焼結セラミック物品を得る工程160を更に含む。特定の実施形態では、焼結セラミック物品は、長さ0.5ミリメートル以下の大きさを有する焼結セラミック物品に必須の少なくとも1つの特徴を有する。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0070】
更に、本明細書に記載の3D物品の製造方法はいわゆる「光造形法/液槽重合」3Dプリンティング方法を含むことができ、選択的な硬化工程では光造形法によるプリンティングを使用することができることを理解すべきである。3次元製造のための他の技法が知られており、本明細書に記載の用途で使用するために好適に適応されてもよい。より全般的には、3次元製作技法が次々と利用可能になってきている。そのような技術は全て、それらが指定された物品特性にかなう製作粘度及び解像度を提供する限り、本明細書に記載の光重合性スラリーで使用するために適応されてもよい。製作は、本明細書に記載の製作技術のいずれかを、単独で又は様々な組み合わせのいずれかで使用し、3次元のオブジェクトを表すデータを使用して行われてもよく、このデータは必要に応じて、特定のプリンティング技術又は他の製作技術に合わせてフォーマットし直すか、又は他の方法で適応されてもよい。
【0071】
本明細書に記載の光重合性スラリーから液槽重合(例えば、光造形法)を使用して3D物品を形成することは、完全に可能である。例えば、いくつかの事例では、3D物品のプリント方法は、本明細書に記載の光重合性スラリーを流体状態で収容器内に保持し、収容器内の光重合性組成物に選択的にエネルギーを加えて光重合性組成物の流体層の少なくとも一部を凝固させ、それによって、3D物品の断面を画定する硬質化された層を形成することを含む。更に、本明細書に記載の方法は、光重合性スラリーの硬質化された層(例えば、グリーン体)を昇降させて、未硬質化光重合性スラリーの新たな、つまり第2の流体層を収容器内の流体の表面に提供し、続いて収容器内の光重合性スラリーに再び選択的にエネルギーを加えて、光重合性スラリーの新たな、つまり第2の流体層の少なくとも一部を凝固させ、3D物品の第2の断面を画定する第2の凝固された層を形成することを更に含むことができる。更に、光重合性スラリーを凝固させるため、エネルギーを加えることによって、3D物品の第1及び第2の断面をz方向(つまり、上記の昇降の方向に相当する構築方向)に互いに結合又は接着することができる。更に、収容器内の光重合性スラリーに選択的にエネルギーを加えることは、光重合性スラリーを硬化させるのに十分なエネルギーを有する、紫外線、可視放射線又は電子ビーム放射線などの化学線を加えることを含むことができる。本明細書に記載の方法はまた、昇降機のプラットフォームを昇降させることによって提供される光重合性スラリーの流体の新たな層を平坦化することを含むことができる。このような平坦化は、いくつかの事例では、ワイパー又はローラ又はリコータを利用することにより行うことができる。平坦化では、分注された材料を平らにして余分の材料を除去し、プリンタの支持プラットフォーム上に均一かつ滑らかに露出した又は平らな上向きの面を作り出すことによって、1つ以上の層の厚さを、材料を硬化させる前に補正する。
【0072】
3D物品を提供するために前述のプロセスを選択された回数だけ繰り返すことができることについて、更に理解されたい。例えば、いくつかの事例では、このプロセスを「n」回繰り返すことができる。更に、光重合性スラリーの層に選択的にエネルギーを加える工程などの、本明細書に記載の方法の1つ以上の工程をコンピュータ可読形式の3D物品の画像に従って行うことができると理解されたい。好適な光造形プリンタとしては、3D Systems、Rock Hill,SCから入手可能なViper Pro SLA及び、Asiga USA,Anaheim Hills,CAから入手可能なAsiga PICO PLUS39が挙げられる。
【0073】
図2は、本明細書に記載の光重合性スラリー及び方法で使用されてもよい例示的な光造形装置(「SLA」)を示す。全般に、SLA200は、レーザ202、光学素子204、ステアリングレンズ206、昇降機208、プラットフォーム210、及び直線状縁部212を、光重合性スラリーで満たされた液槽214内に備えてもよい。動作中、レーザ202が光重合性スラリーの表面にわたって導かれて光重合性スラリーの断面を硬化させ、その後、昇降機208がプラットフォーム210をわずかに降下させて別の断面を硬化させる。直線状縁部212が層と層の間の硬化組成物の表面を掃引して、新しい層を積層する前に表面を平滑化及び正規化してもよい。他の実施形態では、光重合性スラリーの上面に1層ずつ物品が描かれる間に、液槽214に、液体の樹脂をゆっくりと満たしてもよい。
【0074】
関連技術である、デジタル光処理(Digital Light Processing、「DLP」)による液槽重合ではまた、硬化性ポリマー(例えば、光重合性スラリー)の収容器を使用する。しかしながら、DLPに基づくシステムでは、硬化性材料の上に2次元の断面を投影して、投影されたビームを横切る平面全体の所望の部分を一度に硬化させる。本明細書に記載の光重合性スラリーで使用するように適応されてもよいこのような硬化性ポリマー系は全て、本明細書で使用されるとき、「液槽重合」及び「光造形法」という用語の範囲内にあることが意図される。一定の実施形態では、例えば、米国特許第9,205,601号及び同第9,360,757号(両方ともDeSimoneら)に記載されているように、連続モードでの使用に適応した装置、例えば、Carbon 3D,Inc.(Redwood City,CA)から市販されている装置が用いられてもよい。
【0075】
図5を参照すると、本明細書に記載の光重合性スラリー及び方法で使用されてもよい別のSLA装置の全般概略図が提供されている。全般に、装置500は、レーザ502、光学素子504、ステアリングレンズ506、昇降機508、及びプラットフォーム510を、光重合性スラリー519で満たされた液槽514内に含んでもよい。動作中、レーザ502は、液槽514の壁520(例えば、床)を通って光重合性スラリーに導かれ、光重合性スラリー519の断面を硬化させて物品517を形成し、その後、昇降機508がプラットフォーム510をわずかに上昇させ、別の断面が硬化される。したがって、放射線は、側壁又は底壁などの光重合性スラリーを保持する収容器(例えば、液槽)の壁を通過して方向付けられてよい。
【0076】
より全般的には、光重合性スラリーは、典型的には、紫外線、電子ビーム放射線、可視放射線、又はこれらの任意の組み合わせなどの化学線を使用して硬化される。当業者は、過度の実験を行うことなく、特定の用途に好適な放射線源及び波長の範囲を選択することができる。
【0077】
3D物品は、形成された後に、典型的には積層造形装置から取り外されてすすぎ洗浄される(例えば、未硬化光重合性スラリーの一部を溶解するが、硬化した固体状態物品(例えば、グリーン体)は溶解しない溶媒中での超音波すすぎ洗浄、泡沫すすぎ洗浄、又は噴霧すすぎ洗浄)。また、物品を洗浄し、物品表面の未硬化材料を除去するために、任意の他の従来的方法を利用してもよい。この段階で、3次元物品は、典型的には、方法の残りの(例えば、任意による)工程での取り扱いのための十分なグリーン強度を有する。
【0078】
硬化した状態の本明細書に記載の光重合性スラリー(例えば、ゲル化体)は、いくつかの実施形態では、1つ以上の所望の特性を示すことができる。「硬化した」状態の光重合性スラリーは、少なくとも部分的に重合及び/又は架橋された重合性成分を含む光重合性スラリーを含むことができる。例えば、いくつかの例では、ゲル化物品は、少なくとも約10%重合若しくは架橋されているか、又は少なくとも約30%重合若しくは架橋されている。いくつかの事例では、ゲル化物品は、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%重合又は架橋されている。ゲル化物品はまた、約10%~約99%重合又は架橋され得る。
【0079】
物品表面、及びバルク物品そのものが、典型的には、未硬化光重合性材料を依然として保持しており、更なる硬化を示唆している。残留する未硬化光重合性組成物を除去することは、物品が以降に後硬化される場合、好ましくなく物品上で直接硬化することによる未硬化の残留する光重合性組成物を最小限に抑える上で特に有用である。
【0080】
更なる硬化は、化学線での更なる照射、加熱、又はその両方に加えて、任意にゲル化物品を別の溶媒(例えば、ジエチレングリコールエチルエーテル又はエタノール)に浸すことにより、実現することができる。化学線への曝露は、約10分~60分超の範囲の時間にわたる、任意の好都合な放射線源、概して紫外線、可視放射線及び/又は電子ビーム放射線により行われ得る。加熱は概して、不活性雰囲気下で、約10~60分超の範囲の時間、約35~80℃の範囲の温度で行われる。紫外線と熱エネルギーとを組み合わせる、いわゆる後硬化オーブンは、後硬化プロセスでの使用に特に好適である。概して、後硬化は、後硬化されていない同じ3次元物品と比較して、3次元物品の機械的特性及び安定性を改善する。
【0081】
光重合性スラリー(例えば、非酸化物セラミック粒子、放射線硬化性モノマー、光開始剤、阻害剤、及び焼結助剤)の成分は、各々以下で詳細に論じられる。
【0082】
非酸化物セラミック粒子
本開示の光重合性組成物は、少なくとも1種の非酸化物セラミック材料の粒子を含む。
【0083】
好ましくは、非酸化物セラミック粒子は、炭化ケイ素、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ホウ素(B4C)、二ホウ化チタン(TiB2)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB2)、窒化ホウ素(BN)、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、窒化アルミニウム(AlN)、六ホウ化カルシウム(CaB6)、MAX相(Mn+1AXn)、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。選択された実施形態では、金属不純物の総含有量が好ましくは100ppm未満、特に好ましくは50ppm未満である高純度粉末が使用される。代替的実施形態では、金属不純物の総含有量が約2,000ppmである粉末が使用される。
【0084】
好適な窒化ケイ素粒子としては、例えば、0.5~20マイクロメートル、例えば1~10マイクロメートルの中間(mean)粒径又は粒塊径(D50)を有する粉末が挙げられるが、これらに限定されない。窒化ケイ素粉末の酸素含有量は好ましくは2重量%未満であり、総炭素含有量は好ましくは0.35重量%未満である。市販の窒化ケイ素粉末は、AlzChem Group AG(Trastber,Germany)から商品名SILZOTで入手することができる。
【0085】
好適な炭化ホウ素粒子としては、例えば、純度が97重量%以上であり、中間粒径(D50)が0.1~8マイクロメートルであるB4C粉末が挙げられるが、これらに限定されない。好適な炭化ホウ素粉末の例は、3M Company(St.Paul,MN)から市販されている3M Boron Carbide Powderである。
【0086】
好適な二ホウ化チタン粒子としては、例えば、中間粒径(D50)が約2~20マイクロメートルであるTiB2粉末が挙げられるが、これらに限定されない。好適な二ホウ化チタン粉末の例は、3M Companyから市販されている3M Titanium Diboride Powderである。
【0087】
好適な二ホウ化ジルコニウム粒子としては、例えば、American Elements(Los Angeles,CA)から入手可能な高純度又は超高純度ZrB2粉末が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
好適な窒化ホウ素粒子としては、例えば、小板形状の六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒塊が挙げられるが、これに限定されない。ここで、六方晶窒化ホウ素一次粒子は、無機結合相によって互いに接続されている。無機結合相は、少なくとも1種の窒化物及び/又は酸窒化物を含む。窒化物又は酸窒化物は、好ましくは、アルミニウム、ケイ素、チタン、及びホウ素の元素の化合物である。好適な窒化ホウ素粉末の例は、3M Companyから市販されている3M Boron Nitride Cooling Fillers Plateletsである。
【0089】
好適な炭化チタン粒子としては、例えば、中間粒径(D50)が1~3マイクロメートルであるTiC粉末が挙げられる。好適な炭化チタン粉末の例は、HC-Starck(Munich,Germany)から市販されているTiC Grade High Vacuum 120である。
【0090】
好適な炭化ジルコニウム粒子としては、例えば、中間粒径(D50)が3~5マイクロメートルであるZrC粉末が挙げられる。好適な炭化ジルコニウム粉末の例は、HC-Starckから市販されているZrC Grade Bである。
【0091】
好適な窒化アルミニウム粒子としては、例えば、中間粒径(D50)が0.8~2マイクロメートルであるAlN粉末が挙げられる。好適な窒化アルミニウム粉末の例は、HC-Starckから市販されているAlN Grade Cである。
【0092】
好適な六ホウ化カルシウム粒子としては、例えば、3M Companyから3M Calcium Hexaborideとして市販されているCaB6粉末が挙げられる。
【0093】
MAX相粒子は、一般式Mn+1AXn(式中、n=1~3であり、Mは前周期遷移金属であり、AはA族元素であり、Xは炭素及び窒素から独立して選択される)を有する層状の六方晶炭化物及び窒化物である。A族元素は、好ましくは13~16族元素である。好適なMAX相粉末の例は、Kanthal(Hallstahammar,Sweden)から市販されているMAXTHAL 312粉末である。
【0094】
いくつかの実施形態では、光重合性スラリーは、光重合性スラリーの総重量に基づいて、20重量%以上の非酸化物セラミック粒子、光重合性スラリーの総重量に基づいて、21重量%以上、22重量%以上、23重量%以上、24重量%以上、25重量%以上、26重量%以上、27重量%以上、又は28重量%以上、かつ30重量%未満、29.5重量%以下、28.5重量%以下、27.5重量%以下、26.5重量%以下、25.5重量%以下、又は24.5重量%以下の非酸化物セラミック粒子を含む。別の言い方をすれば、光重合性スラリーは、光重合性スラリーの総重量に基づいて20重量パーセント~30重量パーセント未満の非酸化物セラミック粒子を含有することができる。
【0095】
非酸化物セラミック粒子は、典型的には、250ナノメートル(nm)以上、350nm以上、500nm以上、750nm以上、1マイクロメートル以上、1.25マイクロメートル以上、1.5マイクロメートル以上、1.75マイクロメートル以上、2マイクロメートル以上、2.5マイクロメートル以上、3.0マイクロメートル以上、3.5マイクロメートル以上、4.0マイクロメートル以上、又は4.5マイクロメートル以上の平均(average)(中間)粒径(すなわち、D50)、かつ10マイクロメートル以下、9.5マイクロメートル以下、9マイクロメートル以下、8.5マイクロメートル以下、8マイクロメートル以下、7.5マイクロメートル以下、7マイクロメートル以下、6.5マイクロメートル以下、6マイクロメートル以下、5.5マイクロメートル以下、5マイクロメートル以下、4.5マイクロメートル以下、3マイクロメートル以下、2マイクロメートル以下、1.5マイクロメートル以下、又は1マイクロメートル以下のD50を有する。別の言い方をすれば、非酸化物セラミック粒子は、1マイクロメートル~10マイクロメートル、500ナノメートル~1.5マイクロメートル、又は250nm~1マイクロメートルの平均粒径(D50)を有し得る。平均(中間)粒径(D50)は、レーザ回折により測定した際に、粒子分布における粒子の50体積パーセントがその直径又はそれより小さな直径を有する粒径(particle diameter)を指す。好ましくは、平均粒径は一次粒子のものである。
【0096】
焼結助剤
本開示の光重合性組成物は、少なくとも1種の焼結助剤を含む。焼結助剤は多くの場合、焼結プロセス中に酸素を除去することで補助を行う。また、焼結助剤は、非酸化物セラミック材料よりも低い温度で固体から液体に溶融する相を提供することができ、又はセラミックイオンの輸送を改善し、これにより焼結助剤を含有しない組成物と比較して高密度化を向上させるいくつかの代替機構を提供することができる。
【0097】
好適な焼結助剤は特に限定されず、希土類酸化物、アルカリ土類酸化物、アルカリ酸化物、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。非酸化物セラミック粒子の焼結温度で液体を生成する材料が有用であり得る。
【0098】
希土類酸化物としては、酸化セリウム(例えば、CeO2)、酸化ジスプロシウム(例えば、Dy2O3)、酸化エルビウム(例えば、Er2O3)、酸化ユーロピウム(例えば、Eu2O3)、ガドリニウム(例えば、Gd2O3)、酸化ホルミウム(例えば、Ho2O3)、酸化ランタン(例えば、La2O3)、酸化ランタンアルミニウム(LaAlO3)、酸化ルテチウム(例えば、Lu2O3)、酸化ネオジム(例えば、Nd2O3)、酸化プラセオジム(例えば、Pr6O11)、酸化サマリウム(例えば、Sm2O3)、テルビウム(例えば、Tb2O3)、酸化トリウム(例えば、Th4O7)、ツリウム(例えば、Tm2O3)、及び酸化イッテルビウム(例えば、Yb2O3)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0099】
アルカリ土類酸化物としては、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ベリリウム(BeO)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0100】
アルカリ酸化物としては、酸化リチウム(Li2O2)、酸化ナトリウム(Na2O2)、酸化カリウム(K2O)、酸化ルビジウム(Rb2O)、及び酸化セシウム(Cs2O)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態では、酸化アルミニウムと酸化イットリウムとの組み合わせなどの、アルカリ土類酸化物と希土類酸化物との混合物が好ましい。
【0102】
追加の好適な焼結助剤としては、例えば、ホウ素、炭素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケル、銅、窒化アルミニウム、アルミナ、ケイ酸エチル、Mg(NO3)2を含むケイ酸ナトリウム、他のガラス、Fe2O3、MgF2、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
多くの実施形態では、少なくとも1種の焼結助剤は、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、炭素、ホウ素、炭化ホウ素、アルミニウム、窒化アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含む。例えば、市販の好適な焼結助剤としては、Almatis(Ludwigshafen,Germany)からの焼成アルミナ、及びTreibacher Industrie AG(Althofen,Austria)からの酸化イットリウムが挙げられる。
【0104】
放射線硬化性モノマー
本明細書に記載の光重合性スラリーは、有機マトリックスの一部である、又は有機マトリックスを形成する、1種以上の放射線硬化性モノマーを含む。
【0105】
光重合性スラリー中に存在する放射線硬化性モノマーは、第1、第2、第3などのモノマーとして記載する場合がある。放射線硬化性モノマーの性質及び構造は、所望の結果が達成不能でない限り、特に限定されない。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーは、アクリレートを含む。
【0106】
放射線硬化性モノマーは、重合の際に、(好ましくは)均質に分散された非酸化物セラミック粒子と共にネットワークを形成する。
【0107】
一実施形態によると、光重合性スラリーは、第1のモノマーとして重合性表面改質剤を含有する。光重合性スラリー中の非酸化物セラミック粒子の少なくとも一部は、任意に、非酸化物セラミック粒子の表面に結合した表面改質剤を含んでもよい。表面改質剤は、スラリーに含有された粒子と、同じくスラリー中に存在する有機マトリックス材料との相溶性の改善に役立ち得る。表面改質剤は、式A-B(式中、A基は非酸化物セラミック粒子の表面に結合することができ、B基は放射線硬化性である)により表すことができる。
【0108】
基Aは、吸着、イオン結合の形成、共有結合の形成、又はこれらの組み合わせにより非酸化物セラミック粒子の表面に結合することができる。好適な基A部分の例としては、(カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基、及びこれらのアニオンのような)酸性部分並びにシランが挙げられる。基Bは、放射線硬化性部分を含む。好適な基B部分の例としては、ビニル、特にアクリル部分又はメタクリル部分が挙げられる。
【0109】
好適な表面改質剤は、重合性カルボン酸及び/又はこれらのアニオン、重合性スルホン酸及び/又はこれらのアニオン、重合性リン酸及び/又はこれらのアニオン、並びに重合性シランを含む。好適な表面改質剤は、例えば、国際公開第2009/085926号(Kolbら)に更に記載されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
ラジカル重合性表面改質剤の例は、酸性部分又はそのアニオン、例えばカルボン酸基を含む、重合性表面改質剤である。例示的な酸性ラジカル重合性表面改質剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、及びモノ-2-(メタクリルオキシエチル)スクシネートが挙げられる。
【0111】
例示的なラジカル重合性表面改質剤は、ヒドロキシル含有重合性モノマーの、無水コハク酸、無水マレイン酸及び無水フタル酸などの環式無水物との反応生成物であり得る。例示的な重合性ヒドロキシル含有モノマーとしては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、及びヒドロキシブチルメタクリレートが挙げられる。アクリルオキシ及びメタクリルオキシ官能性ポリエチレンオキサイド、並びにポリプロピレンオキサイドもまた、重合性ヒドロキシル含有モノマーとして使用してもよい。
【0112】
極性と反応性の両方を非酸化物セラミックナノ粒子に付与するための例示的なラジカル重合性表面改質剤は、モノ(メタクリルオキシポリエチレングリコール)スクシネートである。
【0113】
ラジカル重合性表面改質剤の別の例は、重合性シランである。例示的な重合性シランとしては、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン又はアクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン(例えば、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-(メタクリルオキシ)プロピルトリエトキシシラン;3-(メタクリルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、及び3-(アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシランとして);メタクリルオキシアルキルジアルキルアルコキシシラン又はアシルオキシアルキルジアルキルアルコキシシラン(例えば、3-(メタクリルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン);メルカプトアルキルトリアルコキシシラン(例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン);アリールトリアルコキシシラン(例えば、スチリルエチルトリメトキシシラン);ビニルシラン(例えば、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン)が挙げられる。
【0114】
表面改質剤は、従来の技術を用いて非酸化物セラミック粒子に加えることができる。表面改質剤は、非酸化物セラミック粒子系スラリーからカルボン酸及び/又はこれらのアニオンの少なくとも一部を何らか除去する前又は除去した後に加えることができる。表面改質剤は、非酸化物セラミック粒子系スラリーから水を除去する前又は除去した後に加えることができる。有機マトリックスは、表面改質の前又は後に、又は表面改質と同時に加えることができる。表面改質剤を加える各種の方法は、例えば、国際公開第2009/085926号(Kolbら)に更に記載されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
表面改質反応は、室温(例えば、20℃~25℃)で、又は高温(例えば、最大95℃)で実施することができる。表面改質剤がカルボン酸などの酸である場合、典型的には、非酸化物セラミック粒子を室温で表面改質することができる。表面改質剤がシランである場合、典型的には、非酸化物セラミック粒子は高温で表面改質される。
【0116】
第1のモノマーは、重合性表面改質剤として機能することができる。複数の第1のモノマーを用いることができる。第1のモノマーは、唯一の種類の表面改質剤とすることができ、又は1種以上の他の非重合性表面改質剤と組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、第1のモノマーの量は、重合性材料の総重量に基づいて少なくとも20重量%である。例えば、第1のモノマーの量は、多くの場合、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、又は少なくとも40重量%である。第1のモノマーの量は、最大100重量%、最大90重量%、最大80重量%、最大70重量%、最大60重量%、又は最大50重量%であり得る。一部の光重合性スラリーは、重合性材料の総重量に基づいて、20~100重量%、20~80重量%、20~60重量%、20~50重量%、又は30~50重量%の第1のモノマーを含有する。
【0117】
第1のモノマー(すなわち、重合性表面改質剤)は、重合性材料中の唯一のモノマーとすることができ、又は以下で更に詳細に記載するように1種以上の第2のモノマーと組み合わせることができる。
【0118】
一実施形態によると、光重合性スラリーは、少なくとも1つ又は2つの放射線硬化性部分を含む1種以上の第2のモノマーを含む。特に、少なくとも2つの放射線硬化性部分を含む第2のモノマーは、ゲル形成工程中に架橋剤として働き得る。表面改質基を有していない任意の好適な第2のモノマーを、用いることができる。第2のモノマーは、非酸化物セラミック粒子の表面に結合可能な基を有していない。
【0119】
好結果の構築には、典型的には、ある程度のグリーン体ゲル強度及び形状解像度が必要とされる。架橋させる手法では、重合によってより強固なネットワークが作り出されるため、多くの場合、より低いエネルギー線量で、より大きなグリーン体ゲル強度が実現できる。いくつかの例では、より高いエネルギー線量を適用しており、非架橋系の層の接着を向上させた。物品が首尾よく構築される一方で、より高いエネルギーが最終物品の解像度に影響を及ぼす場合が多く、特に、高度に半透明な材料の場合、光及び光と共に硬化深さが材料に更に貫入する可能性があり、過剰な構築を場合により引き起こす。複数の重合性基を有するモノマーが存在すると、光重合性スラリーが重合する際に形成されるゲル組成物の強度が高くなる傾向がある。このようなゲル組成物は、ひび割れなしに、加工処理がより容易であり得る。複数の重合性基を有するモノマーの量は、グリーン体ゲルの可撓性及び強度を調整するために用いることができ、グリーン体の解像度及び最終物品の解像度を間接的に最適化することができる。
【0120】
光源が下方から適用される場合、例えば架橋の化学的作用を適用すると層間の接着強度増加の助けとなり得、その結果、硬化工程後に構築プラットフォームが引き上げられる際、新たに硬化された層は、構築物の残りの部分から分離されて透明なフィルム上に取り残される(これは構築の失敗とみなされる)のではなく、構築されつつある形状と共に移動することが見出された。構築の成功は、材料が、構築トレイフィルムに対してよりも先に硬化された層に対して良好に接着し、3次元構造体を一度に1層ずつ成長させることができる場合のシナリオとして定義することが可能である。この性能は、理論的には、より高いエネルギー線量(より高い出力、又はより長い光曝露)の適用により達成可能であり、バルク材料の特徴である特定の点までは、より強固な接着をもたらすことができる。しかしながら、光吸収添加剤が存在しないかなり透明な系では、より高いエネルギーに曝露させると最終的に「スライス厚」よりも著しく大きい硬化深さがもたらされ、部品の解像度が「スライス厚」の解像度よりも著しく大きい過硬化した状況が作り出される。
【0121】
少なくとも2つの放射線硬化性部分を含む放射線硬化性成分を本明細書に記載の光重合性スラリーに加えることにより、解像度並びにグリーン体強度の最適化が促進され得る。グリーン体を十分に高密度のセラミックに変換した場合、グリーン体ゲルの増加した強度が、構築手順後の頑健性の助けとなる。
【0122】
すなわち、任意による第2のモノマーは、カルボン酸基又はシリル基を有さない。第2のモノマーは、多くの場合、極性モノマー(例えば、非酸性の極性モノマー)、複数の重合性基を有するモノマー、アルキル(メタ)アクリレート及びこれらの混合物である。
【0123】
重合性材料の総合的な組成は、多くの場合、重合した材料が溶媒媒体に可溶であるように選択される。有機相の均質性は、ゲル組成物中の有機成分の相分離を回避するために好ましい場合が多い。これにより、結果として、その後に形成されるエアロゲル又はキセロゲルにおいて、より小さくより均質な細孔(径分布がより狭い細孔)が形成される傾向がある。更に、重合性材料の総合的な組成は、溶媒媒体との相溶性を調整するため、並びにゲル組成物の強度、可撓性、及び均一性を調整するために選択することができる。更にまた、重合性材料の総合的な組成は、焼結前の有機材料のバーンアウト特性を調整するために選択することができる。
【0124】
多くの実施形態では、第2のモノマーは、複数の重合性基を有するモノマーを含む。重合性基の数は、2~6の範囲又はより多数であり得る。多くの実施形態では、重合性基の数は、2~5又は2~4の範囲である。重合性基は、典型的には、(メタ)アクリロイル基である。
【0125】
2つの(メタ)アクリロイル基を有する例示的なモノマーとしては、1,2-エタンジオールジアクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,12-ドデカンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレン/ポリプロピレンコポリマージアクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレートが挙げられる。
【0126】
3つ又は4つの(メタ)アクリロイル基を有する例示的なモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Cytec Industries,Inc.(Smyrna,GA,USA)から商品名TMPTA-Nで、及びSartomer(Exton,PA,USA)から商品名SR-351で市販)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-444で市販)、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-454で市販)、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-494で市販)、トリス(2-ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-368で市販)、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(例えば、Cytec Industries,Inc.から、商品名PETIAでテトラアクリレート対トリアクリレートの比が約1:1のもの、及び商品名PETA-Kでテトラアクリレート対トリアクリレートの比が約3:1のものが市販)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-295で市販)及びジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-355で市販)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
5つ又は6つの(メタ)アクリロイル基を有する例示的なモノマーとしては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-399で市販)及び六官能性ウレタンアクリレート(例えば、Sartomerから商品名CN975で市販)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
一部の光重合性スラリー組成物は、重合性材料の総重量に基づいて0~80重量%の複数の重合性基を有する第2のモノマーを含有する。例えば、その量は、10~80重量%、20~80重量%、30~80重量%、40~80重量%、10~70重量%、10~50重量%、10~40重量%、又は10~30重量%の範囲であり得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、任意による第2のモノマーは極性モノマーである。本明細書で使用される場合、用語「極性モノマー」は、フリーラジカル重合性基及び極性基を有するモノマーを指す。極性基は、典型的には、非酸性であり、また多くの場合、ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、又はエーテル基(すなわち、式-R-O-R-(式中、各Rは、1~4個の炭素原子を有するアルキレンである)のアルキレン-オキシ-アルキレン基を少なくとも1つ含有する基)を含有する。
【0130】
ヒドロキシル基を有する、好適な任意による極性モノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート)、並びにヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド)、エトキシル化ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、Sartomerから商品名CD570、CD571、及びCD572で市販されているモノマー)、並びにアリールオキシ置換ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシ-2-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
一級アミド基を有する例示的な極性モノマーとしては、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。第二級アミド基を有する例示的な極性モノマーとしては、これらに限定されるものではないが、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-オクチル(メタ)アクリルアミド、及びN-オクチル(メタ)アクリルアミドなどのN-アルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。三級アミド基を有する例示的な極性モノマーとしては、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、並びにN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジブチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
アミノ基を有する極性モノマーとしては、様々なN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。例としては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びN,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
エーテル基を有する例示的な極性モノマーとしては、これらに限定されるものではないが、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシル化アルキル(メタ)アクリレート;並びにポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、及びポリ(プロピレンオキシド)(メタ)アクリレートなどのポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリ(アルキレンオキシド)アクリレートは、多くの場合、ポリ(アルキレングリコール)(メタ)アクリレートと称される。これらのモノマーは、ヒドロキシル基又はアルコキシ基などの任意の好適な末端基を有することができる。例えば、末端基がメトキシ基である場合、モノマーは、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレートと称され得る。
【0134】
第2のモノマーとして使用可能な好適なアルキル(メタ)アクリレートは、直鎖構造、分枝鎖構造、又は環状構造を有するアルキル基を有し得る。好適なアルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びヘプタデカニル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アルキル(メタ)アクリレートは、国際公開第2014/151179号(Colbyら)に記載されているような同じ数の炭素原子を有する様々な異性体の混合物である。例えば、オクチル(メタ)アクリレートの異性体混合物を用いることができる。
【0135】
極性モノマー及び/又はアルキル(メタ)アクリレートモノマーである第2のモノマーの量は、多くの場合、重合性材料の総重量に基づいて、0~40重量%、0~35重量%、0~30重量%、5~40重量%、又は10~40重量%の範囲である。
【0136】
重合性材料の総量は、多くの場合、光重合性スラリーの総重量に基づいて、少なくとも10重量%、少なくとも12重量%、少なくとも15重量%、又は少なくとも18重量%である。重合性材料の量は、光重合性スラリーの総重量に基づいて、最大50重量%、最大40重量%、最大30重量%、又は最大20重量%であり得る。例えば、重合性材料の量は、光重合性スラリーの総重量に基づいて、10~50重量%、15~40重量%、15~30重量%、又は10~20重量%の範囲であり得る。
【0137】
全体としては、重合性材料は、典型的には、重合性材料の総重量に基づいて、20~100重量%の第1のモノマー及び0~80重量%の第2のモノマーを含有する。例えば、重合性材料は、30~100重量%の第1のモノマー及び0~70重量%の第2のモノマー、30~90重量%の第1のモノマー及び10~70重量%の第2のモノマー、30~80重量%の第1のモノマー及び20~70重量%の第2のモノマー、30~70重量%の第1のモノマー及び30~70重量%の第2のモノマー、40~90重量%の第1のモノマー及び10~60重量%の第2のモノマー、40~80重量%の第1のモノマー及び20~60重量%の第2のモノマー、50~90重量%の第1のモノマー及び10~50重量%の第2のモノマー、又は60~90重量%の第1のモノマー及び10~40重量%の第2のモノマーを含む。
【0138】
光開始剤
本明細書に記載の光重合性スラリーは、1種以上の光開始剤を更に含む。特定の実施形態では、光開始剤は、スラリー中に含有される溶媒に可溶であること、及び/又は200~500若しくは300~470nmの範囲内の放射線を吸収することにより特徴付けることができる。光開始剤は、光重合性スラリー中に存在する放射線硬化性成分の硬化又は硬質化反応を始める又は開始させることができる必要がある。
【0139】
以下の部類の光開始剤が使用可能である:a)供与体化合物からの水素原子の引き抜きによりラジカルが生成する二成分系、b)開裂により2つのラジカルが生成する一成分系、並びに/又はc)ヨードニウム塩、可視光増感剤、及び電子供与体化合物、を含む系。
【0140】
タイプ(a)による光開始剤の例は、典型的には、脂肪族アミンと組み合わせた、ベンゾフェノン、キサントン又はキノンから選択される部分を含有する。
【0141】
タイプ(b)による光開始剤の例は、典型的には、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンゾイルオキシム、又はアシルホスフィンから選択される部分を含有する。好適な例示的光開始剤は、IGM Resins(Waalwijk,The Netherlands)から商品名OMNIRADで入手可能なものであり、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(OMNIRAD 184)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(OMNIRAD 651)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(OMNIRAD 819)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(OMNIRAD 2959)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン(OMNIRAD 369)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(OMNIRAD 907)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(OMNIRAD 1173)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(OMNIRAD TPO)、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(OMNIRAD TPO-L)が挙げられる。更なる好適な光開始剤としては、例えば、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]ESACURE ONE(Lamberti S.p.A.,Gallarate,Italy)、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル、芳香族スルホニルクロリド、光活性オキシム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
タイプ(c)による光開始剤の例は、典型的には、各成分に関して以下の部分を含有する:好適なヨードニウム塩は、米国特許第3,729,313号、同第3,741,769号、同第3,808,006号、同第4,250,053号、及び同第4,394,403号に記載されており、これらの特許のヨードニウム塩に関する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。ヨードニウム塩は、Cl-、Br-、I-、若しくはC4H5SO3
-などのアニオンを含有する単塩、又はSbF5OH-若しくはAsF6
-などのアンチモネート、アルセネート、ホスフェート、若しくはボレートを含有する金属錯塩であり得る。所望により、ヨードニウム塩の混合物を使用することができる。例えば、好適なヨードニウム塩としては、両方がSigma-Aldrich(St.Louis,MO)から市販されている、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート及びジフェニルヨードニウムクロリドの各々が挙げられる。可視光増感剤は、ケトン、クマリン染料(例えば、ケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p-置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリルメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、及びピリジニウム染料から選択されてもよい。好ましくは、可視光増感剤はα-ジケトンである。カンファーキノンが特に好ましく、これはSigma-Aldrichから市販されている。電子供与体化合物は、典型的には、アルキル芳香族ポリエーテル又はアルキル、アリールアミノ化合物であり、アリール基は1つ以上の電子求引基により置換されている。好適な電子求引基の例としては、カルボン酸、カルボン酸エステル、ケトン、アルデヒド、スルホン酸、スルホネート、及びニトリル基が挙げられる。電子供与体化合物は、多環式芳香族化合物(ビフェニレン、ナフタレン、アントラセン、ベンゾアントラセン、ピレン、アズレン、ペンタセン、デカサイクレン、及び誘導体(例えば、アセナフテン)並びにこれらの組み合わせなど)、並びにN-アルキルカルバゾール化合物(例えば、N-メチルカルバゾール)から選択されてもよい。好ましい供与体化合物としては、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、3-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノベンゾイン、4-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-ジメチルアミノベンゾニトリル、及び1,2,4-トリメトキシベンゼンが挙げられる。タイプ(c)による光開始剤は、例えば、共有の米国特許第6,187,833号(Oxmanら)に詳細に記載されている。
【0143】
光開始剤は、本明細書に記載の光重合性スラリー中に、積層造形プロセスの特定の制約に従う任意の量で存在することができる。いくつかの実施形態では、光開始剤は、光重合性スラリーの総重量に基づいて、0.0051重量%以上、0.01重量%以上、0.1重量%以上、又は0.3重量%以上の量で、かつ5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は0.5重量%以下の量で、光重合性スラリー中に存在する。いくつかの事例では、光開始剤は、光重合性スラリーの総重量に基づいて、約0.01~5重量%、又は0.1~2重量%の量で存在する。
【0144】
加えて、本明細書に記載の光重合性スラリーは1種以上の増感剤を更に含み、同様に存在し得る1種以上の光開始剤の有効性を向上させることができる。いくつかの実施形態では、増感剤は、イソプロピルチオキサントン(isopropylthioxanthone、ITX)又は2-クロロチオキサントン(chlorothioxanthone、CTX)を含む。他の増感剤もまた使用されてもよい。光重合性組成物中で使用する場合、増感剤は、光重合性スラリーの総重量に基づいて、約0.01重量%、又は約1重量%の範囲の量で存在することができる。
【0145】
阻害剤
本明細書に記載の光重合性スラリーはまた、任意に1種以上の重合阻害剤を含む。重合阻害剤は、多くの場合、組成物に更なる熱安定性を与えるために光重合性スラリーに含まれる。阻害剤は、光重合性スラリーの貯蔵寿命を延長し、望ましくない副反応の防止を助け、スラリー中に存在する放射線硬化性成分の重合プロセスを調整することができる。1種以上の阻害剤を光重合性スラリーに加えることは、セラミック物品表面の精度又は細部の解像度の改善に更に役立つ場合がある。使用可能な阻害剤の具体例としては、以下が挙げられる:p-メトキシフェノール(MOP)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノール(BHT:Ionol)、フェノチアジン、2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-1-オキシルラジカル(TEMPO)及びこれらの混合物。
【0146】
いくつかの実施形態では、重合阻害剤を使用する場合、重合阻害剤は、光重合性スラリーの総重量に基づいて、約0.001~2重量%、0.001~5重量%、又は0.01~1重量%の量で存在する。更に、安定剤を使用する場合、安定剤は、本明細書に記載の光重合性組成物中に、光重合性組成物の総重量に基づいて、約0.1~5重量%、約0.5~4重量%、又は約1~3重量%の量で存在する。
【0147】
本明細書に記載の光重合性スラリーはまた、化学線の貫入度を制御するために、1種以上の吸収調整剤(例えば、染料、光学増白剤、顔料など)を含むことができる。1つの好適な光学増白剤は、BASF Corporation(Florham Park,NJ)から入手可能なTinopal OB(ベンゾオキサゾール、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)])である。吸収調整剤を使用する場合、吸収調整剤は、光重合性スラリーの総重量に基づいて、約0.001~5重量%、約0.01~1重量%、約0.1~3重量%、又は約0.1~1重量%の量で存在し得る。
【0148】
溶媒
多くの実施形態では、本開示による光重合性スラリーは、少なくとも1種の(例えば、有機)溶媒を更に含む。好適な溶媒は、典型的には、水と混和性であるように選択される。更に、これらの溶媒は、多くの場合、超臨界二酸化炭素又は液体二酸化炭素に可溶であるように選択される。溶媒の分子量は、通常、少なくとも25グラム/モル(g/mol)、少なくとも30g/mol、少なくとも40g/mol、少なくとも45g/mol、少なくとも50g/mol、少なくともg/mol、又は少なくとも100g/molである。分子量は、最大300g/mol、最大250g/mol、最大225g/mol、最大200g/mol、最大175g/mol、又は最大150g/molであり得る。分子量は、多くの場合、25~300g/mol、40~300g/mol、50~200g/mol、又は75~175g/molの範囲である。1種以上の溶媒は、ゲル化物品における溶媒の蒸発及び関連する細孔の形成を最小化するため、積層造形プロセス中に使用される温度よりも高い沸点を有することが特に好ましい。例えば、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上、又は190℃以上の沸点を有する少なくとも1種の溶媒を使用してもよい。特定の実施形態では、光重合性スラリー中の1種以上の溶媒の量は、光重合性スラリーの総重量に基づいて、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、又は45重量%以上であり、かつ、光重合性スラリーの総重量に基づいて、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、又は50重量%以下である。別の言い方をすれば、光重合性スラリーは、光重合性スラリーの総重量に基づいて、20~70重量%の溶媒、又は20~50重量%の溶媒を含有し得る。有利には、特定の実施形態では、溶媒の存在は、物品から有機材料を除去するための物品内の細孔構造が維持されるのを補助し得る。溶媒媒体は、典型的には、溶媒交換(例えば、蒸留)プロセスの後に、15重量パーセント未満の水、10パーセント未満の水、5パーセント未満の水、3パーセント未満の水、2パーセント未満の水、1重量パーセント未満、又は更には0.5重量パーセント未満の水を含有する。
【0149】
好適な溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール(すなわち、メトキシプロパノール)、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適な溶媒は、多くの場合、グリコール若しくはポリグリコール、モノエーテルグリコール若しくはモノエーテルポリグリコール、ジエーテルグリコール若しくはジエーテルポリグリコール、エーテルエステルグリコール若しくはエーテルエステルポリグリコール、カーボネート、アミド、又はスルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)である。溶媒は通常、1つ以上の極性基を有する。溶媒は重合性基を有していない。すなわち、この(有機)溶媒はフリーラジカル重合することができる基を含まない。更に、溶媒媒体の成分はいずれも、フリーラジカル重合することができる重合性基を有さない。
【0150】
好適なグリコール又はポリグリコール、モノエーテルグリコール又はモノエーテルポリグリコール、ジエーテルグリコール又はジエーテルポリグリコール、及びエーテルエステルグリコール又はエーテルエステルポリグリコールは、多くの場合、式(I)である。
【化1】
式(I)中、各R
1は、独立して、水素、アルキル、アリール、又はアシルである。好適なアルキル基は、多くの場合、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する。好適なアリール基は、多くの場合、6~10個の炭素原子を有し、また、多くの場合、フェニル、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニルである。好適なアシル基は、多くの場合、式-(CO)R
3(式中、R
3は1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、2個の炭素原子、又は1個の炭素原子を有するアルキルである)のものである。アシルは、多くの場合、アセテート基(-(CO)CH
3)である。式(I)において、各R
2は、典型的には、エチレン又はプロピレンである。変数nは、少なくとも1であり、また、1~10、1~6、1~4、又は1~3の範囲であり得る。
【0151】
式(I)のグリコール又はポリグリコールは、水素である2つのR1基を有する。グリコールの例としては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びトリプロピレングリコールが挙げられる。
【0152】
式(I)のモノエーテルグリコール又はモノエーテルポリグリコールは、水素である第1のR1基及びアルキル又はアリールである第2のR1基を有する。モノエーテルグリコール又はモノエーテルポリグリコールの例としては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
【0153】
式(I)のジエーテルグリコール又はジエーテルポリグリコールは、アルキル又はアリールである2つのR1基を有する。ジエーテルグリコール又はジエーテルポリグリコールの例としては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びペンタエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0154】
式(I)のエーテルエステルグリコール又はエーテルエステルポリグリコールは、アルキル又はアリールである第1のR1基及びアシルである第2のR1基を有する。エーテルエステルグリコール又はエーテルエステルポリグリコールの例としては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0155】
他の好適な溶媒は、式(II)のカーボネートである。
【化2】
式(II)において、R
4は、水素、又は1~4個の炭素原子、1~3個の炭素原子、若しくは1個の炭素原子を有するアルキルなどのアルキルである。例としては、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが挙げられる。
【0156】
更に他の好適な溶媒は、式(III)のアミドである。
【化3】
式(III)において、基R
5は水素、アルキルであり、又はR
6と組み合わせて、R
5に結合したカルボニル及びR
6に結合した窒素原子を含む5員環を形成する。基R
6は水素、アルキルであり、又はR
5と組み合わせて、R
5に結合したカルボニル及びR
6に結合した窒素原子を含む5員環を形成する。基R
7は、水素又はアルキルである。R
5、R
6、及びR
7に好適なアルキル基は、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、1~3個の炭素原子、又は1個の炭素原子を有する。式(III)のアミド有機溶媒の例としては、これらに限定されるものではないが、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、及びN-エチル-2-ピロリドンが挙げられる。
【0157】
更に、特定の実施形態では、光重合性スラリーは、光重合性スラリー中に非酸化物セラミック粒子が分散するのを補助する分散剤を更に含む。典型的には、1種以上の分散剤は、光重合性スラリーの総重量に基づいて0.5重量%以上、光重合性スラリーの総重量に基づいて、0.55重量%以上、0.60重量%以上、0.65重量%以上、又は0.70重量%以上、かつ1.0重量%以下、0.95重量%以下、0.90重量%以下、0.85重量%以下、0.80重量%以下、又は0.75重量%以下の量で光重合性スラリー中に存在し得る。別の言い方をすれば、任意による分散剤は、光重合性スラリーの総重量に基づいて0.5重量%~1.0重量%の量で存在し得る。好適な分散剤としては、例えば、Lubrizol(Wickliffe,OH)から商品名SOLPLUS又はSOLSPERSEで入手可能な分散剤である、SOLPLUS D510、R700、R720、D540、D545、及びD570、SOLSPERSE 20000、S71000、M387、M389、S41000、及びS79000、並びにこれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
本明細書の光重合性組成物材料はまた、未硬化の、硬化した、及び後硬化した物品として、種々の望ましい特性を示すことができる。光重合性スラリー(例えば、未硬化のもの)は、1つ以上の積層造形デバイス(例えば、3Dプリンティングシステム)の要求事項及びパラメータに従う粘度プロファイルを有する。特定の実施形態では、光重合性スラリーは、摂氏23度で500ミリパスカル秒(mPa・s)以下、400mPa・s以下、300mPa・s以下、200mPa・s以下、100mPa・s以下、50mPa・s以下、又は25mPa・s以下の動的粘度を示す。いくつかの例では、本明細書に記載の光重合性スラリーは、未硬化時に、ディスク及びシリンダースピンドルを使用したBrookfield DV-E粘度計(Brookfield Engineering Laboratories,Middleboro,MA)を使用して、摂氏23度かつ剪断速度2[1/s]~20[1/s]で、1~500mPa・s、1~100mPa・s、又は1~50mPa・sの動的粘度を示す。いくつかの事例では、本明細書に記載の光重合性組成物は、未硬化時に、約50Pa・s未満の動的粘度を示す。
【0159】
スラリー
光重合性スラリーの調製は、典型的には、望ましくない早期の重合を回避するため、光を制限した条件下で実施する。光重合性スラリーは多くの場合、好ましくは均質なスラリーを形成するために、成分を高速混合することにより調製される。スラリーは、典型的には、使用前に、容器(vessel)、瓶、カートリッジ、又は収容器(container)のような好適なデバイス内に保存される。
【0160】
物品
第2の態様では、本開示はエアロゲルを提供する。エアロゲルは、
a)有機材料と、
b)エアロゲルの総重量パーセントに基づいて29~75重量パーセントの範囲の非酸化物セラミック粒子と、
c)少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0161】
第3の態様では、本開示はキセロゲルを提供する。キセロゲルは、
a)有機材料と、
b)キセロゲルの総重量パーセントに基づいて29~75重量パーセントの範囲の非酸化物セラミック粒子と、
c)少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0162】
第2の態様及び第3の態様各々の、有機材料、非酸化物セラミック粒子、及び焼結助剤の成分は、上で詳細に論じたとおりである。積層造形方法を使用して形成される場合、エアロゲル物品又はキセロゲル物品は、典型的には複数の層を含む。
【0163】
上記のように、エアロゲルは、ゲルの液体成分が気体で置き換えられた、ゲルに由来する多孔質材料である。この溶媒除去は、多くの場合、超臨界条件下で行われる。対照的に、キセロゲルは、ゲルの液体成分が周囲条件下又は高温において蒸発により除去された、グリーン体ゲルに由来する3次元の固体である。このタイプの乾燥に関して毛管効果はなく、線収縮率は、多くの場合、0~25%、0~20%、0~15%、5~15%、又は0~10%の範囲である。密度は、典型的には、構造全体にわたって均一なままである。
【0164】
非酸化物セラミック粒子を含有する光重合性スラリーは、硬化(例えば、ゲル化)により凝固する。好ましくは、ゲル化プロセスにより、グリーン体ゲルが任意の形状でひび割れなしに形成され、また、ひび割れを誘発することなく更に加工処理できるグリーン体ゲルが可能となる。例えば、好ましくは、ゲル化プロセスは、溶媒が除去される際に崩れることがない構造を有するグリーン体ゲル、いわゆる「自立型ゲル」をもたらす。ゲルは、最小限の量の有機材料又はポリマー改質剤を含有することが好ましい。光重合性スラリーを加工処理してグリーン体ゲルを形成した後、ゲル化物品は、典型的には、積層造形プロセスを実施するために用いたデバイスから取り外される。所望により、例えば、溶媒ですすぎ洗浄する、又は溶媒に浸漬することにより、ゲル化物品の表面を洗浄する。好適な溶媒としては、好ましくは、本明細書に記載のスラリーで用いられる溶媒の混合物、又は本明細書に記載のスラリーで用いられる溶媒と同一の溶媒が挙げられる。
【0165】
このグリーン体ゲル構造は、多様な溶媒及び超臨界抽出に必要とされ得る条件と適合性があり、かつこれらにおいて安定である。更に、ゲル構造は、超臨界抽出流体(例えば、超臨界二酸化炭素)と適合性がある必要がある。換言すれば、ゲルは、安定なエアロゲル及び/又はキセロゲルを作製し、ひび割れを誘発することなく、加熱されて有機物をバーンアウトさせ、予備焼結され、かつ高密度化され得る材料を与えるように、乾燥に耐えるべく十分に安定かつ強固である必要がある。好ましくは、得られるエアロゲル及び/又はキセロゲルは比較的小さく均一な細孔径を有し、低い焼結温度でこれらを高密度に焼結させるのに役立つ。しかしながら、好ましくは、細孔は、エアロゲル又はキセロゲルのひび割れを起こさずに有機物のバーンアウトで生じたガスを逃がせるよう、十分に大きい。ゲル化工程の迅速な性質により、ゲル全体にわたって非酸化物セラミック粒子の本質的に均質な分布がもたらされると考えられる。これは、超臨界抽出、有機物のバーンアウト、及び焼結などの後続の加工処理工程において役立ち得る。
【0166】
適用される場合、超臨界乾燥工程は、以下の特色のうちの少なくとも1つ、より多く又は全てを特徴とし得る:
a)温度:20℃~100℃、30℃~80℃、又は15℃~150℃、
b)圧力:5~200MPa、10~100MPa、1~20MPa、又は5~15MPa、
c)継続時間:2~175時間、5~25時間、又は1~5時間、及び
d)抽出又は乾燥媒体:その超臨界段階の二酸化炭素。
【0167】
特色(a)、(b)及び(d)の組み合わせが好ましい場合がある。
【0168】
超臨界抽出により、プリントされたゲル物品中の(例えば、有機)溶媒の全て又はほとんどを除去することができる。いくつかの実施形態では、エアロゲルは、いくらかの残留溶媒を含有する。残留溶媒は、エアロゲルの総重量に基づいて最大6重量%であり得る。例えば、エアロゲルは、最大5重量%、最大4重量%、最大3重量%、最大2重量%、又は最大1重量%の(例えば、有機)溶媒を含有し得る。溶媒を除去した結果、乾燥された構造体内に細孔が形成される。好ましくは、細孔は、乾燥された構造体を更に加熱して有機材料をバーンアウトさせ、焼結物品を形成する際、構造体にひび割れを起こさずに、ポリマー材料の分解生成物によるガスを逃がせるよう、十分大きい。
【0169】
超臨界乾燥工程を実施した後に得られた物品は、典型的には、以下の特性のうちの少なくとも1つ以上を特徴とし得る:
・ヒステリシスループを伴うN2吸着及び/又は脱着等温線を示すこと、
・IUPAC分類によるIV型の等温線のN2吸着及び脱着、並びにヒステリシスループを示すこと、
・IUPAC分類によるH1型のヒステリシスループを伴うIV型のN2吸着及び脱着等温線を示すこと、
・p/p0範囲0.70~0.99において、IUPAC分類によるH1型ヒステリシスループを伴うIV型N2吸着及び脱着等温線を示すこと。
【0170】
多孔質セラミック物品を形成するためのエアロゲル物品又はキセロゲル物品の熱処理は、(通常は酸素を含む雰囲気中で)摂氏200度(℃)以上、300℃以上、400℃以上、500℃以上、600℃以上、又は700℃以上、かつ1200℃以下、1100℃以下、1000℃以下、900℃以下、又は800℃以下の温度で行うことができる。別の言い方をすれば、熱処理は200℃~摂氏1200度の温度で行われ得る。
【0171】
第4の態様では、多孔質セラミック物品が提供される。多孔質セラミック物品は、
a)多孔質セラミック物品の総重量に基づいて90~99重量パーセントの範囲の非酸化物セラミック粒子と、
b)少なくとも1種の焼結助剤と、を含み、
非酸化物セラミック粒子が、多孔質セラミック物品中に、1つ以上の蛇行状若しくは弓状チャネル、1つ以上の内部建築ボイド(internal architectural voids)、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔、又はこれらの組み合わせを画定し、多孔質セラミック物品が、長さ0.5mm以下の大きさを有する多孔質セラミック物品に必須の少なくとも1つの特徴を有する。
【0172】
第4の態様の非酸化物セラミック粒子及び焼結助剤の成分は、上で詳細に論じたとおりである。物品の形状は限定されず、成形一体型物品を含んでもよい。多くの実施形態では、物品は、大きさの2つ以上のバリエーションが、単一の一体型物品によってもたらされる成形一体型物品を含む。例えば、物品は、1つ以上の蛇行状若しくは弓状チャネル、1つ以上の内部建築ボイド(internal architectural voids)、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔、又はこれらの組み合わせを含み得る。このような特徴は、典型的には、従来の成形方法を使用して一体型物品において実現することが不可能である。「内部建築ボイド(internal architectural voids)」は、セラミック物品内部に完全に包含されている(例えば、セラミック物品のいかなる外面にも及ばない)、光重合性スラリーを選択的に硬化させてセラミック物品の形状を作り出すために使用される積層造形デバイス内にプログラムされるように設計された形状を有する、ボイドを指す。内部建築ボイド(internal architectural voids)は、セラミック物品の製造中に形成される内部の細孔とは対照的である。選択された実施形態では、物品は、高い耐薬品性を有するガスケット又はワッシャを構成する。
【0173】
最終的に、焼結工程を実施して、理論密度の95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、又は99.9%以上の密度を有する非酸化物セラミック物品を得る。多孔質セラミック物品の焼結は、典型的には、以下の条件下で実施する:
・温度:1700℃~2300℃、1700℃~2000℃、2050℃~2300℃、若しくは1800℃~2100℃、又は1700℃以上、1750℃以上、1800℃以上、1850℃以上を上回る、若しくは1900℃以上、かつ2300℃以下、2250℃以下、2200℃以下、2150℃以下、2100℃以下、2050℃以下、又は2000℃以下、
・雰囲気:不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)、
・圧力:大気圧(例えば1013mbar)、及び
・継続時間:材料の最終密度の95%~100%の密度に到達するまで。
【0174】
大気圧の代わりに、焼結を高圧又は減圧にて実施してもよい。
【0175】
第5の態様では、非酸化物セラミック物品が提供される。非酸化物セラミック物品は、非酸化物セラミック物品中に、1つ以上の蛇行状若しくは弓状チャネル、1つ以上の内部建築ボイド(internal architectural voids)、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔、又はこれらの組み合わせを画定する非酸化物セラミック材料を含み、非酸化物セラミック物品が、非酸化物セラミック材料の理論密度に対して95%以上の密度を示し、非酸化物セラミック物品が、長さ0.5mm以下の大きさを有する非酸化物セラミック物品に必須の少なくとも1つの特徴を有する。
【0176】
第5の態様における非酸化物セラミック粒子の成分は、上で詳細に論じたとおりである。好ましくは、非酸化物セラミック粒子は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、二ホウ化チタン、二ホウ化ジルコニウム、窒化ホウ素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0177】
少なくとも特定の実施形態に従って形成された材料の個々の体積における関係は、体積Aが100にスケール決めされている場合、以下のとおりである:
体積A(ゲル化物品)=100。
体積B(後硬化したゲル化物品)=90~100。
体積C(キセロゲル物品)=75~90
体積D(エアロゲル物品)=85~95
体積E(白体)=40~75
体積F(完全に焼結したセラミック物品)<45。
【0178】
したがって、ゲル化物品は体積Aを有し、焼結セラミック物品は体積Fを有し、焼結セラミック物品の体積Fはゲル化物品の体積Aの45%未満である。
【0179】
物品(例えば、ゲル化物品)を表すデータは、コンピュータ支援設計(computer aided design、CAD)データなどのコンピュータモデリングを使用して生成されてもよい。物品の設計を表す画像データは、STLフォーマット又は任意の他の好適なコンピュータ処理可能なフォーマットにて、積層造形機器にエクスポートすることができる。3次元オブジェクトを走査するための走査方法も、物品を表すデータの作成に使用することができる。データを取得するための1つの例示的な技法は、デジタル走査である。X線写真、レーザ走査、コンピュータ断層撮影(computed tomography、CT)、磁気共鳴画像化(magnetic resonance imaging、MRI)、及び超音波画像化を含む、任意の他の好適な走査技法を、物品を走査するために使用できる。他の可能な走査方法が、例えば米国特許出願公開第2007/0031791号(Cinader,Jr.ら)に記載されている。走査オペレーションからの生データ、及び生データから導出した物品を表すデータの両方を含み得る初期デジタルデータセットを処理して、任意の周囲構造(例えば、物品用支持具)から物品の設計を分割することができる。
【0180】
多くの場合、機械可読媒体は、コンピューティングデバイスの一部として提供される。コンピューティングデバイスは、1つ以上のプロセッサ、揮発性メモリ(RAM)、機械可読媒体を読み取るためのデバイス、並びに、例えば、ディスプレイ、キーボードなどの入力/出力デバイス、及びポインティングデバイスを有し得る。更に、コンピューティングデバイスは、オペレーティングシステム及び他のアプリケーションソフトウェアなどの他のソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせも含み得る。コンピューティングデバイスは、例えば、ワークステーション、ラップトップ、携帯情報端末(PDA)、サーバ、メインフレーム又は任意の他の汎用若しくは特定用途向けコンピューティングデバイスであってもよい。コンピューティングデバイスは、コンピュータ可読媒体(例えば、ハードドライブ、CD-ROM、又はコンピュータメモリ)から実行可能なソフトウェアの命令を読み出してもよく、又は別のネットワーク化コンピュータなどの、コンピュータに論理的に接続された別のソースからの命令を受信してもよい。
図10を参照すると、コンピューティングデバイス1000は、多くの場合、内部プロセッサ1080、ディスプレイ1100(例えば、モニタ)、並びにキーボード1140及びマウス1120などの1つ以上の入力デバイスを備える。
図10では、ゲル化物品1130がディスプレイ1100に表示されている。
【0181】
図6を参照すると、一定の実施形態では、本開示はシステム600を提供する。システム600は、物品(例えば、
図10のディスプレイ1100に表示されているようなゲル化物品1130)の3Dモデル610を表示するディスプレイ620と、ユーザにより選択された3Dモデル610に応じて、物品660の物理的オブジェクトを3Dプリンタ/積層造形デバイス650に作製させる、1つ以上のプロセッサ630と、を備える。多くの場合、入力デバイス640(例えば、キーボード及び/又はマウス)は、特にユーザが3Dモデル610を選択するために、ディスプレイ620及び少なくとも1つのプロセッサ630と共に使用される。物品660は、光重合性スラリーを選択的に硬化させることにより得られるゲル化物品を含む。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。非酸化物セラミック粒子、放射線硬化性モノマー、光開始剤、阻害剤、及び焼結助剤の成分は、上で詳細に論じたとおりである。
【0182】
図7を参照すると、プロセッサ720(又は2つ以上のプロセッサ)は、機械可読媒体710(例えば、非一時的媒体)、3Dプリンタ/積層造形デバイス740、及び任意にユーザが見るためのディスプレイ730のそれぞれと通信する。3Dプリンタ/積層造形デバイス740は、機械可読媒体710から、物品750(例えば、
図10のディスプレイ1100に表示されているようなゲル化物品1130)の3Dモデルを表すデータを提供するプロセッサ720からの命令に基づいて、1つ以上の物品750を製造するように構成されている。
【0183】
図8を参照すると、例えば、限定するものではないが、積層造形方法は、(例えば、非一時的)機械可読媒体から、本開示の少なくとも1つの実施形態による物品の3Dモデルを表すデータを取得すること810を含む。方法は、1つ以上のプロセッサによって、データを使用して造形デバイスとインタフェースする積層造形アプリケーションを実行すること820と、製造デバイスによって、物品の物理的オブジェクトを生成すること830と、を更に含む。積層造形機器は、光重合性スラリーを選択的に硬化してゲル化物品を形成することができる。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。非酸化物セラミック粒子、放射線硬化性モノマー、光開始剤、阻害剤、及び焼結助剤の成分は、上で詳細に論じたとおりである。1つ以上の様々な任意による後加工処理工程840を実行してもよい。典型的には、ゲル化物品を乾燥させ、熱処理し、焼結してセラミック物品を形成する。
【0184】
更に、
図9を参照すると、物品の製造方法は、1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、物品の複数の層を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信すること910と、積層造形プロセスによる製造デバイスを用いて、このデジタルオブジェクトに基づく物品を生成すること920と、を含む。この場合も、物品に後加工処理930の1つ以上の工程を実施してもよい。
【0185】
本開示の選択された実施形態
実施形態1は、非酸化物セラミック部品の製造方法である。方法は、a)光重合性スラリーを得ることと、b)光重合性スラリーを選択的に硬化させてゲル化物品を得ることと、c)ゲル化物品を乾燥させてエアロゲル物品又はキセロゲル物品を形成することと、d)エアロゲル物品又はキセロゲル物品を熱処理して多孔質セラミック物品を形成することと、e)多孔質セラミック物品を焼結して焼結セラミック物品を得ることと、を含む。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0186】
実施形態2は、乾燥が超臨界流体乾燥工程を適用することにより行われる、実施形態1に記載の方法である。
【0187】
実施形態3は、光重合性スラリーが、光重合性スラリーの総重量に基づいて30重量パーセント未満の非酸化物セラミック粒子を含む、実施形態1又は実施形態2に記載の方法である。
【0188】
実施形態4は、光重合性スラリーが、光重合性スラリーの総重量に基づいて20重量パーセント~30重量パーセント未満の非酸化物セラミック粒子を含有する、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法である。
【0189】
実施形態5は、ゲル化物品が体積Aを有し、焼結セラミック物品が体積Fを有し、焼結セラミック物品の体積Fがゲル化物品の体積Aの45%未満である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法である。
【0190】
実施形態6は、非酸化物セラミック粒子が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、二ホウ化チタン、二ホウ化ジルコニウム、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化アルミニウム、六ホウ化カルシウム、MAX相、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法である。
【0191】
実施形態7は、非酸化物セラミック粒子が、250ナノメートル~10マイクロメートル、1マイクロメートル~10マイクロメートル、又は500ナノメートル~1.5マイクロメートルの平均粒径を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法である。
【0192】
実施形態8は、光開始剤が、ヨードニウム塩、可視光増感剤、及び電子供与体化合物、を含む系を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法である。
【0193】
実施形態9は、ヨードニウム塩がジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート及び/又はジフェニルヨードニウムクロリドを含み、可視光増感剤がカンファーキノンを含み、電子供与体化合物が4-ジメチルアミノ安息香酸エチルを含む、実施形態8に記載の方法である。
【0194】
実施形態10は、焼結セラミック物品が、長さ0.5ミリメートル以下の大きさを有する焼結セラミック物品に必須の少なくとも1つの特徴を有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0195】
実施形態11は、光重合性スラリー中の非酸化物セラミック粒子の少なくとも一部が、非酸化物セラミック粒子の表面に結合した表面改質剤を有する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法である。
【0196】
実施形態12は、光重合性スラリーが、光重合性スラリーの総重量に基づいて20~70重量パーセントの溶媒を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0197】
実施形態13は、溶媒が、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、N-メチルピロリドン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法である。
【0198】
実施形態14は、光重合性スラリーが分散剤を更に含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法である。
【0199】
実施形態15は、少なくとも1種の焼結助剤が、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、炭素、ホウ素、炭化ホウ素、アルミニウム、窒化アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法である。
【0200】
実施形態16は、光重合性スラリーが光学増白剤を更に含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法である。
【0201】
実施形態17は、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーがアクリレートを含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0202】
実施形態18は、光重合性スラリーが摂氏23度で500mPa・s未満の粘度を示す、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法である。
【0203】
実施形態19は、光重合性スラリーを選択的に硬化させることが、3マイクロメートル~50マイクロメートルの厚さを有する光重合性スラリーの一部を硬化させることを含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法である。
【0204】
実施形態20は、光重合性スラリーを選択的に硬化させることを少なくとも2回繰り返してゲル化物品を形成する、実施形態19に記載の方法である。
【0205】
実施形態21は、熱処理が摂氏200度~摂氏1200度の温度で行われる、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0206】
実施形態22は、多孔質セラミック物品を焼結することが大気圧で行われる、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0207】
実施形態23は、多孔質セラミック物品を焼結することが摂氏1700度~摂氏2300度の温度で行われる、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法である。
【0208】
実施形態24は、焼結セラミック物品が、非酸化物セラミック粒子の理論密度に対して95%以上の密度を示す、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法である。
【0209】
実施形態25は、選択的に硬化させることが光造形法によるプリンティングを使用することを含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法である。
【0210】
実施形態26は、エアロゲルである。エアロゲルは、a)有機材料と、b)エアロゲルの総重量パーセントに基づいて29~75重量パーセントの範囲の非酸化物セラミック粒子と、c)少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0211】
実施形態27は、非酸化物セラミック粒子が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、二ホウ化チタン、二ホウ化ジルコニウム、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化アルミニウム、六ホウ化カルシウム、MAX相、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態26に記載のエアロゲルである。
【0212】
実施形態28は、非酸化物セラミック粒子が250ナノメートル~10マイクロメートルの平均粒径を有する、実施形態26又は実施形態27に記載のエアロゲルである。
【0213】
実施形態29は、非酸化物セラミック粒子が1マイクロメートル~10マイクロメートルの平均粒径を有する、実施形態26~28のいずれか1つに記載のエアロゲルである。
【0214】
実施形態30は、非酸化物セラミック粒子が500ナノメートル~1.5マイクロメートルの平均粒径を有する、実施形態26~29のいずれか1つに記載のエアロゲルである。
【0215】
実施形態31は、焼結セラミック物品が、長さ0.5ミリメートル以下の大きさを有するエアロゲルに必須の少なくとも1つの特徴を有する、実施形態26~30のいずれか1つに記載のエアロゲルである。
【0216】
実施形態32は、非酸化物セラミック粒子の少なくとも一部が、非酸化物セラミック粒子の表面に結合した表面改質剤を含む、実施形態26~31のいずれか1つに記載のエアロゲルである。
【0217】
実施形態33は、少なくとも1種の焼結助剤が、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、炭素、ホウ素、炭化ホウ素、アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態26~32のいずれか1つに記載のエアロゲルである。
【0218】
実施形態34は、キセロゲルである。キセロゲルは、a)有機材料と、b)キセロゲルの総重量パーセントに基づいて29~75重量パーセントの範囲の非酸化物セラミック粒子と、c)少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0219】
実施形態35は、非酸化物セラミック粒子が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、二ホウ化チタン、二ホウ化ジルコニウム、窒化ホウ素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態34に記載のキセロゲルである。
【0220】
実施形態36は、非酸化物セラミック粒子が250ナノメートル~10マイクロメートルの平均粒径を有する、実施形態34又は実施形態35に記載のキセロゲルである。
【0221】
実施形態37は、非酸化物セラミック粒子が1マイクロメートル~10マイクロメートルの平均粒径を有する、実施形態34~36のいずれか1つに記載のキセロゲルである。
【0222】
実施形態38は、非酸化物セラミック粒子が500ナノメートル~1.5マイクロメートルの平均粒径を有する、実施形態34~37のいずれか1つに記載のキセロゲルである。
【0223】
実施形態39は、焼結セラミック物品が、長さ0.5ミリメートル以下の大きさを有するキセロゲルに必須の少なくとも1つの特徴を有する、実施形態34~38のいずれか1つに記載のキセロゲルである。
【0224】
実施形態40は、非酸化物セラミック粒子の少なくとも一部が、非酸化物セラミック粒子の表面に結合した表面改質剤を含む、実施形態34~39のいずれか1つに記載のキセロゲルである。
【0225】
実施形態41は、少なくとも1種の焼結助剤が、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、炭素、ホウ素、炭化ホウ素、アルミニウム、窒化アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態34~40のいずれか1つに記載のキセロゲルである。
【0226】
実施形態42は、多孔質セラミック物品である。多孔質セラミック物品は、a)多孔質セラミック物品の総重量に基づいて90~99重量パーセントの範囲の非酸化物セラミック粒子と、b)少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。非酸化物セラミック粒子は、多孔質セラミック物品中に、1つ以上の蛇行状若しくは弓状チャネル、1つ以上の内部建築ボイド(internal architectural voids)、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔、又はこれらの組み合わせを画定する。多孔質セラミック物品は、長さ0.5mm以下の大きさを有する多孔質セラミック物品に必須の少なくとも1つの特徴を有する。
【0227】
実施形態43は、非酸化物セラミック粒子が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、二ホウ化チタン、二ホウ化ジルコニウム、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化アルミニウム、六ホウ化カルシウム、MAX相、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態42に記載の多孔質セラミック物品である。
【0228】
実施形態44は、非酸化物セラミック粒子が250ナノメートル~10マイクロメートルの平均粒径を有する、実施形態42又は実施形態43に記載の多孔質セラミック物品である。
【0229】
実施形態45は、非酸化物セラミック粒子が1マイクロメートル~10マイクロメートルの平均粒径を有する、実施形態42~44のいずれか1つに記載の多孔質セラミック物品である。
【0230】
実施形態46は、非酸化物セラミック粒子が500ナノメートル~1.5マイクロメートルの平均粒径を有する、実施形態42~44のいずれか1つに記載の多孔質セラミック物品である。
【0231】
実施形態47は、焼結セラミック物品が、長さ0.5ミリメートル以下の大きさを有する多孔質セラミック物品に必須の少なくとも1つの特徴を有する、実施形態42~46のいずれか1つに記載の多孔質セラミック物品である。
【0232】
実施形態48は、非酸化物セラミック粒子の少なくとも一部が、非酸化物セラミック粒子の表面に結合した表面改質剤を含む、実施形態42~47のいずれか1つに記載の多孔質セラミック物品である。
【0233】
実施形態49は、少なくとも1種の焼結助剤が、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、炭素、ホウ素、炭化ホウ素、アルミニウム、窒化アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態42~48のいずれか1つに記載の多孔質セラミック物品である。
【0234】
実施形態50は、非酸化物セラミック物品である。非酸化物セラミック材料は、非酸化物セラミック物品中に、1つ以上の蛇行状若しくは弓状チャネル、1つ以上の内部建築ボイド(internal architectural voids)、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔、又はこれらの組み合わせを画定する。非酸化物セラミック物品は、非酸化物セラミック材料の理論密度に対して95%以上の密度を示す。非酸化物セラミック物品は、長さ0.5mm以下の大きさを有する非酸化物セラミック物品に必須の少なくとも1つの特徴を有する。
【0235】
実施形態51は、非酸化物セラミック粒子が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、二ホウ化チタン、二ホウ化ジルコニウム、窒化ホウ素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態50に記載の非酸化物セラミック物品である。
【0236】
実施形態52は、方法である。方法は、a)非一時的機械可読媒体から物品の3Dモデルを表すデータを取得することと、b)1つ以上のプロセッサによって、このデータを使用して製造デバイスとインタフェースする3Dプリンティングアプリケーションを実行することと、(c)製造デバイスによって物品の物理的オブジェクトを生成することであって、物品が、光重合性スラリーを選択的に硬化させることにより得られるゲル化物品を含む、生成することと、を含む。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0237】
実施形態53は、方法である。方法は、a)1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、物品の複数の層を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信することと、b)積層造形プロセスによる製造デバイスを用いてデジタルオブジェクトに基づく物品を生成することであって、物品が、光重合性スラリーを選択的に硬化させることにより得られるゲル化物品を含む、生成することと、を含む。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0238】
実施形態54は、実施形態53に記載の方法を用いて生成された物品である。
【0239】
実施形態55は、システムである。システムは、物品の3Dモデルを表示するディスプレイと、ユーザによって選択された3Dモデルに応じて3Dプリンタに物品の物理的オブジェクトを作製させる1つ以上のプロセッサであって、物品が、光重合性スラリーを選択的に硬化させることにより得られるゲル化物品を含む、1つ以上のプロセッサと、を備える。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【0240】
実施形態56は、非一時的機械可読媒体である。非一時的機械可読媒体は物品の3次元モデルを表すデータを含み、3Dプリンタとインタフェースする1つ以上のプロセッサによってアクセスされた際、3Dプリンタに、光重合性スラリーの反応生成物を含む物品を作製させる。光重合性スラリーは、非酸化物セラミック粒子と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、溶媒と、光開始剤と、阻害剤と、少なくとも1種の焼結助剤と、を含む。
【実施例】
【0241】
本開示の目的及び利点を以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例に記載の特定の材料及びそれらの量並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものと解釈してはならない。
【0242】
特に指示がない限り、全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。更に、特に指示がない限り、全ての実験は周囲条件(23℃、1013mbar)で実施した。
【0243】
【0244】
方法
1.プリンティング
セラミックスラリーからオブジェクトをプリントするため、以下の手順を使用した。フルオロポリマー剥離フィルムで構築トレイを組み立てた。およそ50mLのスラリーを、室温で構築トレイ内に入れた。UVフィルタをかけた部屋(黄色のライト)で、又はUVフィルタを使用できない場合低照度条件で手順を行うことにより、光曝露を防止するための注意を払った。構築プラットフォームをサンドペーパーで研磨し、必要に応じてIPAで洗浄した。構築プラットフォームへの接着を改善するため、不織布シートを貼る場合もあった。一部の構築では、スラリーの硬化を始める前に、アクリレート系層を最初に構築プラットフォーム上に硬化させた。.stlファイルをソフトウェアにロードし、必要に応じて支持構造を適用した。Asiga(Sydney,Australia)Picoplus 27光造形プリンタにおけるプリンティングの設定を表2に列挙する。
【0245】
【0246】
構築後、サンプルを直ちに構築プラットフォームから取り外し、汚れのないCARBITOL溶媒で短時間すすぎ洗浄した。その後、次の工程までサンプルを密封収容器内に置いた。
【0247】
2.超臨界抽出
Thar Process,Inc.,Pittsburgh,PA,USAにより設計され、同社から入手した10Lの実験室規模の超臨界流体抽出器ユニットを使用して、超臨界抽出工程を行った。SiO2系ゲルをステンレス鋼製ラックに取り付けた。十分なエタノールを10Lの抽出容器に加え、ゲルを覆った(約3500~6500mL)。湿潤シリカ系ゲルを収容するステンレス鋼製ラックを、湿潤ゲルがジャケット付き抽出容器内の液体エタノールに完全に浸漬するように10Lの抽出器に装填し、これを60℃に加熱してこの温度を維持した。抽出容器の蓋を所定位置に封止した後に、液体二酸化炭素を、CO2を60℃まで加熱するための熱交換器を介して、冷却ピストンポンプ(設定点:-8.0℃)によって、13.3MPaの内部圧に達するまで10Lの抽出容器に送り込んだ。これらの条件において、二酸化炭素は超臨界となる。抽出器の操作条件である13.3MPa及び60℃が満たされると、ニードルバルブの開閉により抽出容器内の圧力を調節し、抽出器の溶出液が多孔質の316Lステンレス鋼フリット(型番1100S-5.480 DIA-062-10-AとしてMott Corporation,New Britain,CT,USAから入手)を通過するようにした。その後、熱交換器を通過させて溶出液を30℃まで冷却し、最終的には溶出液を室温及び5.5MPa未満の圧力で維持された5Lサイクロンセパレータ容器に送った。ここで、リサイクル及び再利用のために、抽出サイクル全体を通して抽出エタノール及び気相のCO2を分離及び回収した。超臨界二酸化炭素(scCO2)は、操作条件を達成した時点から8時間、10Lの抽出容器を通して連続的にポンプで送り込まれた。8時間の抽出サイクルの後に、抽出容器を、60℃で16時間にわたってサイクロンセパレータにゆっくりベントして、13.3MPaから大気圧にした後、蓋を開けて乾燥エアロゲルを収容したステンレス鋼製ラックを取り出した。乾燥したエアロゲルをステンレス鋼製ラックから取り出し、ラベル付けしたバッグに入れた。
【0248】
3.バインダーのバーンアウト
バインダーのバーンアウトは、CM管状炉(CM FRANNES,Inc.Bloomfield,NJ)内で、空気中で完了した。以下のバーンアウトプロファイルを使用して実施例を調製した。
・空気中、フローあり又はなし、ヒュームのために通気する
・15時間で210℃まで昇温させ、30分間保持する
・28時間で250℃まで昇温させ、30分間保持する
・32時間で400℃まで昇温させ、30分間保持する
・7時間で600℃まで昇温させ、1時間保持する
・6時間で室温まで降温させる
【0249】
4.焼結
焼結は、Astroの、窒素で不活性化した(nitrogen-inerted)炉(Thermal Technology,LLC,Santa Rosa,CA)内で、高温計で測定した際に75mV/時間で305mV(見る場所から別のハンドヘルド高温計で測定した際の1770℃に対応する)まで上昇させることにより完了した。温度を1770℃で3時間保持した後、機器の冷却速度で室温まで降温させた。一部の部品を、先に広口瓶内で一晩回転させることにより一緒に混合した、45重量%のSi3N4、45重量%のBN、5重量%のAl2O3、及び5重量%のY2O3からなる、粉末の固まっていない床内で焼結させた。
【0250】
5.硬化深さ分析
スラリーの硬化深さを、4mm円のフォトマスクを使用し、Asiga Pico 2 3Dプリンタ(Asiga USA,Anaheim Hills,CA)上で光曝露の時間調整をすることで分析した。いくつかの組成物に関して、時間の関数としての硬化深さを以下の表3に示す。
【0251】
【0252】
(メタ)アクリレート混合物の配合
S1メタクリレートの調製
このメタクリレートモノマー混合物は、83重量%のBPA4EO-DMA、10重量%のHPMA、4.67重量%のCAPA400、1.6重量%のOMNIRAD 819、0.08重量%のSolvaperm-Rot PFS、及び0.04重量%のMacrolex Violett B染料を、均質な混合物が得られるまで混合しながら組み合わせることにより調製した。
【0253】
531アクリレートの調製
このアクリレートモノマー混合物は、51重量%のSR399、28.8重量%のSR351、及び20.2重量%のSR506Aを、透明で均質な混合物が得られるまで混合しながら組み合わせることにより調製した。
【0254】
Si3N4粉末混合物
Si3N4粉末混合物は、SILZOT又はSN-E10タイプいずれかの90gのSi3N4粉末を、5gのアルミナ粉末及び5gのイットリア粉末と組み合わせることにより調製した。いくつかの事例では、混合物をエタノール中に分散させ、一晩ボールミルにかけ、溶媒所定の(solvent-rated)オーブン内で乾燥させ、次に粉砕して150マイクロメートルの開口径でふるいにかけた。他の事例では、混合物をスラリーの液体成分に直接加え、スラリーとして一晩ボールミルにかけた。
【0255】
【0256】
比較例1(CE1)
ポリマー製の広口瓶(polymer jar)内で上記表4による樹脂原料をミリング媒体と組み合わせ、一晩回転させて粉末を完全に分散させた。スラリーを、Asiga Picoplus 3Dプリンタ(Asiga USA,Anaheim Hills,CA)の構築プラットフォーム上にテープで貼り付けられた不織布スパンボンドのナイロン上に、フルオロポリマー剥離フィルムを用いた液槽トレイ及び上記のプリントパラメータを使用して、25マイクロメートルの層毎に10秒間曝露させてプリントした。CO
2超臨界流体抽出を用いて溶媒を除去した。SFE後、プリントした部品の層は、
図4Aに示すようにいくらかの分離を示した。バーンアウト及び焼結は、上記のプロファイルを使用して完了した。バーンアウト中に追加のひび割れが形成され、焼結後、部品は
図4Bに示すように複数の破片になった。
【0257】
比較例2(CE2)
ポリマー製の広口瓶内で上記表4による樹脂原料をミリング媒体と組み合わせ、一晩回転させて粉末を完全に分散させた。スラリーを、Asiga Picoplusの構築プラットフォーム上に硬化させたメタクリレート層上に、フルオロポリマー剥離フィルムを用いた液槽トレイ及び上記のプリントパラメータを使用して、10マイクロメートルの層毎に10秒間曝露させてプリントした。超臨界流体抽出を用いて溶媒を除去した後、層間にいくつかのひび割れが観察された。バーンアウト及び焼結は、上記のプロファイルを使用して完了した。バーンアウト中にひび割れが形成され、焼結後、部品は複数の破片になった。
【0258】
実施例3(E3)
ポリマー製の広口瓶内で上記表4による樹脂原料をミリング媒体と組み合わせ、一晩回転させて粉末を完全に分散させた。
図11Aに示すように、スラリーを、Asiga Picoplusの構築プラットフォーム上にテープで貼り付けられた不織布スパンボンドのナイロン上に、フルオロポリマー剥離フィルムを用いた液槽トレイ及び上記のプリントパラメータを使用して、10マイクロメートルの層毎に3秒間曝露させてプリントした。超臨界流体抽出を用いて溶媒を除去した。バーンアウト及び焼結は、上記のプロファイルを使用して完了した。
図11Bに示すように、焼結部品は壊れた破片が単一であり、損傷はなかった。
【0259】
実施例4(E4)
ポリマー製の広口瓶内で上記表4による樹脂原料をミリング媒体と組み合わせ、一晩回転させて粉末を完全に分散させた。スラリーを、Asiga Picoplusの構築プラットフォーム上にテープで貼り付けられた不織布スパンボンドのナイロン上に、フルオロポリマー剥離フィルムを用いた液槽トレイ及び上記のプリントパラメータを使用して、10マイクロメートルの層毎に3秒間曝露させてプリントした。超臨界流体抽出を用いて溶媒を除去した。バーンアウト及び焼結は、上記のプロファイルを使用して完了した。焼結部品に損傷はなかった。アルキメデス密度を3.230g/cm3と測定した。
【0260】
比較例5(CE5)
ポリマー製の広口瓶内で上記表4による樹脂原料をミリング媒体と組み合わせ、一晩回転させて粉末を完全に分散させた。スラリーを、Asiga Picoplusの構築プラットフォーム上にテープで貼り付けられた不織布スパンボンドのナイロン上に、フルオロポリマー剥離フィルムを用いた液槽トレイ及び上記のプリントパラメータを使用して、10マイクロメートルの層毎に1秒間曝露させてプリントした。プリントした部品を
図12Aに示す。超臨界流体抽出を用いて溶媒を除去した後、
図12Bに示すように、広範囲のひび割れが観察された。この部品には、その後、後加工処理を継続しなかった。
【0261】
実施例6(E6)
ポリマー製の広口瓶内で上記表4による樹脂原料をミリング媒体と組み合わせ、一晩回転させて粉末を完全に分散させた。スラリーを、Asiga Picoplus 3Dプリンタの構築プラットフォーム上にテープで貼り付けられた不織布スパンボンドのナイロン上に、フルオロポリマー剥離フィルムを用いた液槽トレイ及び上記のプリントパラメータを使用して、10マイクロメートルの層毎に1秒間曝露させてプリントした。プリントした部品を
図13Aに示す。
図13Bに示すように、超臨界流体抽出を用いて溶媒を首尾よく除去した。上記のプロファイルを使用してバーンアウト及び焼結もまた首尾よく完了し、結果として
図13Cに示すような固体最終部品を得た。アルキメデス密度を3.232g/cm
3と測定した。
【0262】
実施例7(E7)
ポリマー製の広口瓶内で上記表4による樹脂原料をミリング媒体と組み合わせ、一晩回転させて粉末を完全に分散させた。スラリーを、Asiga Picoplus 3Dプリンタの構築プラットフォーム上にテープで貼り付けられた不織布スパンボンドのナイロン上に、フルオロポリマー剥離フィルムを用いた液槽トレイ及び上記のプリントパラメータを使用して、10マイクロメートルの層毎に2秒間曝露させてプリントした。超臨界流体抽出を用いて溶媒を首尾よく除去した。上記のプロファイルを使用してバーンアウト及び焼結もまた首尾よく完了し、結果として固体最終部品を得た。アルキメデス密度を3.221g/cm3と測定した。
【0263】
実施例8(E8)
ポリマー製の広口瓶内で上記表4による樹脂原料をミリング媒体と組み合わせ、一晩回転させて粉末を完全に分散させた。スラリーを、460nmのLEDを使用するよう改変したAsiga Picoplus 3Dプリンタの構築プラットフォーム上にテープで貼り付けられた不織布スパンボンドのナイロン上に、フルオロポリマー剥離フィルムを用いた液槽トレイ及び上記のプリントパラメータを使用して、10マイクロメートルの層毎に10秒間曝露させてプリントした。超臨界流体抽出を用いて溶媒を首尾よく除去した。上記のプロファイルを使用してバーンアウト及び焼結もまた首尾よく完了し、結果として固体最終部品を得た。
【0264】
上記の特許及び特許出願の全ては、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。上述の実施形態は本発明を例示するものであり、他の構造もまた可能である。したがって、本発明は、上記に詳細に説明し、添付図面に示した実施形態に限定されるものと見なされるべきではなく、均等物を併せた以下の特許請求の範囲の正当な範囲によってのみ限定されるものである。