(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】組み換えMVA、及び免疫チェックポイントアンタゴニストまたは免疫チェックポイントアゴニストの静脈内投与によって、がんを治療する併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20240913BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240913BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240913BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240913BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240913BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240913BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240913BHJP
C12N 15/863 20060101ALN20240913BHJP
【FI】
A61K35/76 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 U
A61K48/00
A61K39/00 H
A61K38/17
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N15/863 Z
(21)【出願番号】P 2021518493
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2019076947
(87)【国際公開番号】W WO2020070303
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-13
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509296443
【氏名又は名称】バヴァリアン・ノルディック・アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ラウターバッハ・ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】メディナ・エチェベルス・ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ヒンターベルガー・マリア
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/037124(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/128542(WO,A1)
【文献】特表2016-537417(JP,A)
【文献】Hum. Vaccine. Immunother.,2018年01月,vol.14, no.1,p.140-145
【文献】THOMAS DUSCHEK,THE FUTURE OF VACCINES,[ONLINE],2018年09月18日,PAGE(S):1-20,http://www.bavarian-nordic.com/media/273243/180918-investordagen-en.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/76
A61K 39/395
A61P 35/00
C12N 15/863
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させるための組み合わせ物であって、前記組み合わせ物が、
(a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40リガンド(CD40L)をコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、静脈内投与すると、TAAをコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方が誘導される前記MVAウイルスと、
(b)
抗PD-1抗体であるPD-1アンタゴニストで
ある、免疫チェックポイント分子の少なくとも1つのアンタゴニストと、
を含み
前記(a)及び前記(b)が、併用治療として投与すべきものであり、前記(a)及び前記(b)を前記がん患者に投与することにより、前記(a)を単独で非IV投与するかまたは前記(b)を単独で投与する場合と比べて、前記がん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇
し、
前記(a)が静脈内投与される、前記組み合わせ物。
【請求項2】
前記(b)が腹腔内投与される、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項3】
前記TAAが内因性レトロウイルス抗原である、請求項1または2に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
前記TAAが、チロシン関連タンパク質2(TRP2)である、請求項1または2に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
さらに、TAAであるp15eまたはPRAMEを含む、請求項1、2または4に記載の組み合わせ物。
【請求項6】
前記TAAが、HER2である、請求項1または2に記載の組み合わせ物。
【請求項7】
前記第1の核酸がさらに、TAAであるBrachyuryをコードする、請求項6に記載の組み合わせ物。
【請求項8】
前記第1の核酸が、TAAとしてチロシン関連タンパク質2(TRP2)とp15eをコードするか、あるいはTAAとしてHER2とBrachyuryをコードする、請求項1または2に記載の組み合わせ物。
【請求項9】
前記MVAが、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項10】
前記(a)を前記(b)の投与と同時に、または前記(b)の投与前に投与する、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項11】
前記(a)及び前記(b)を前記がん患者にプライミング投与で投与してから、前記(a)及び前記(b)のブースティング投与を1回以上、前記がん患者に行う、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項12】
前記がん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌または結腸直腸癌からなる群から選択されるがんに罹患しており、及び/または前記がんと診断されている、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項13】
前記乳癌が、HER2を過剰発現する乳癌である、請求項12に記載の組み合わせ物。
【請求項14】
がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させるための医薬組成物であって、以下の(a):
(a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40リガンド(CD40L)をコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、静脈内投与すると、TAAをコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方が誘導される前記MVAウイルス、
を含み、
以下の(b):
(b)
抗PD-1抗体であるPD-1アンタゴニストで
ある、免疫チェックポイント分子の少なくとも1つのアンタゴニスト、
と組み合わせて使用される、医薬組成物において、
前記(a)及び前記(b)が、併用治療として投与すべきものであり、前記(a)及び前記(b)を前記がん患者に投与することにより、前記(a)を単独で非IV投与するかまたは前記(b)を単独で投与する場合と比べて、前記がん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇
し、
前記(a)が静脈内投与される、前記医薬組成物。
【請求項15】
前記(b)が腹腔内投与される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記TAAが内因性レトロウイルス抗原である、請求項14または15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記TAAが、チロシン関連タンパク質2(TRP2)である、請求項14または15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
さらに、TAAであるp15eまたはPRAMEを含む、請求項14、15または17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記TAAが、HER2である、請求項14または15に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記第1の核酸がさらに、TAAであるBrachyuryをコードする、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記第1の核酸が、TAAとしてチロシン関連タンパク質2(TRP2)とp15eをコードするか、あるいはTAAとしてHER2とBrachyuryをコードする、請求項14または15に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記MVAが、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記(a)を前記(b)の投与と同時に、または前記(b)の投与前に投与する、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記(a)及び前記(b)を前記がん患者にプライミング投与で投与してから、前記(a)及び前記(b)のブースティング投与を1回以上、前記がん患者に行う、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記がん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌または結腸直腸癌からなる群から選択されるがんに罹患しており、及び/または前記がんと診断されている、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記乳癌が、HER2を過剰発現する乳癌である、請求項25に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんを治療する併用療法に関するものであり、その治療は、CD40Lをコードする核酸を含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスを、免疫チェックポイント分子のアンタゴニストまたはアゴニストと組み合わせて静脈内投与することを含む。
【背景技術】
【0002】
組み換えポックスウイルスは、感染性生物に対する免疫療法ワクチンとして、さらに最近では、腫瘍に対する免疫療法ワクチンとして使用されてきた(Mastrangelo et al.(2000)J Clin Invest.105(8):1031-1034)。
【0003】
感染症及びがんに対する免疫療法ワクチンとして有用であることが証明されているポックスウイルス株の1つは、改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスである。MVAは、ニワトリ胚線維芽細胞で、ワクシニアウイルスのアンカラ株(CVA)を516代連続継代することによって作られた(論評については、Mayr et al.(1975)Infection 3:6-14を参照されたい)。これらの長期継代により、得られたMVAウイルスのゲノムは、その欠失ゲノム配列が約31キロベースであったので、トリ細胞での複製に関して、宿主細胞が非常に限られているものとして説明された(Meyer et al.(1991)J.Gen.Virol.72:1031-1038)。様々な動物モデルにおいて、この得られたMVAが、際立って非病原性であることが示された(Mayr & Danner(1978)Dev.Biol.Stand.41:225-34)。より安全な製品(ワクチンまたは医薬など)の開発用に、安全性プロファイルが向上されたMVA株が説明されてきている。(国際公開第2002042480号を参照されたい。例えば、米国特許第6,761,893号及び同第6,913,752号も参照されたいが、これらの特許はいずれも、参照により、本明細書に援用される)。このようなバリアントは、非ヒト細胞及び非ヒト細胞株、特にニワトリ胚線維芽細胞(CEF)においては、増殖的に複製できるが、ヒト細胞株(特にHeLa細胞株、HaCat細胞株及び143B細胞株を含む)においては複製能力がない。このような株は、例えば、著しく免疫力が低下しており、複製型ウイルスに対する感受性が高いトランスジェニックマウスモデルAGR129のような特定のマウス株においても、インビボでの増殖的複製が不可能である(米国特許第6,761,893号を参照されたい)。このようなMVAバリアント及びその誘導体(組み換え体を含む)は、「MVA-BN」と称され、説明されている(国際公開第2002/042480号を参照されたい。例えば、米国特許第6,761,893号及び同第6,913,752号も参照されたい)。
【0004】
腫瘍関連抗原(TAA)をコードするポックスウイルスベクターを用いると、がん患者の腫瘍サイズを縮小させ、全生存率を向上させる成果が見られることが示されている(例えば、WO2014/062778を参照されたい)。がん患者に、HER2、CEA、MUC1及び/またはBrachyuryのようなTAAをコードするポックスウイルスベクターを投与すると、そのがんと闘うために、その患者で、活発かつ特異的なT細胞応答が生じることが示されている(上記文献を参照されたい。Guardino et al.((2009)Cancer Res.69(24),doi 10.1158/0008-5472.SABCS-09-5089)、Heery et al.(2015)JAMA Oncol.1:1087-95も参照されたい)。
【0005】
MVAのようなポックスウイルスは、CD40リガンド(CD40L)のようなCD40アゴニストと組み合わせると、TAAによるその効果に加えて、有効性が増強されることが示されている(WO2014/037124を参照されたい)。CD40/CD40Lは、腫瘍壊死因子受容体/腫瘍壊死因子(「TNFR/TNF」)スーパーファミリーのメンバーである。CD40が、B細胞、マクロファージ及びDCを含む多くの種類の細胞上で構成的に発現するのに対して、そのリガンドであるCD40Lは、主に活性化CD4+ T細胞上に発現する(Lee et al.(2002)J.Immunol.171(11):5707-5717、Ma and Clark(2009)Semin.Immunol.21(5):265-272を参照されたい)。感染または免疫後の早い段階における、DCとCD4+ T細胞との同族相互作用により、DCに、CD8+ T細胞応答をプライミングすることが「許諾」される(Ridge et al.(1998)Nature 393(6684):474-478)。DCへの許諾により、共刺激分子がアップレギュレーションし、DCの生存率が上昇し、DCのクロスプレゼンテーション能が向上する。このプロセスは主に、CD40/CD40Lの相互作用によって媒介されるが(Bennet et al.(1998)Nature 393(6684):478-480、Schoenberger et al.(1998)Nature 393(6684):480-483)、CD40/CD40Lに依存しない機序も存在する(CD70、LT.β.R)。興味深いことに、DC上に発現したCD40Lと、CD8+ T細胞上に発現したCD40との直接的な相互作用も示唆されており、ヘルパーに依存しないCTL応答が生じることに対する考え得る説明が提示されている(Johnson et al.(2009)Immunity 30(2):218-227)。
【0006】
いくつかの研究により、アゴニスト抗CD40抗体が、ワクチンアジュバントとして有用であり得ることが示されている。加えて、CD40Lをコードする組み換えアデノウイルス(Kato et al.(1998)J.Clin.Invest.101(5):1133-1141)及び組み換えワクシニアウイルス(Bereta et al.(2004)Cancer Gen.Ther.11(12):808-818)であって、アジュバント非添加のウイルスよりも、インビトロ及びインビボでの免疫原性が優れたウイルスが作られている。
【0007】
CD40Lは、MVAの一部としてコードさせると、疾患関連抗原に対する全体的なT細胞応答を誘導及び増強できることが示された(WO2014/037124)。WO2014/037124では、CD40Lと異種抗原とをコードする組み換えMVAが、インビボでDCの活性化を増強し、その異種抗原に特異的なT細胞応答を増大させ、CD8 T細胞の質及び量を向上させることができることが示された(上記文献を参照されたい)。
【0008】
チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストの、がん治療での利用は、ここ数年でかなりの成功を収めてきた。免疫細胞上の抑制性受容体は、がんにおける免疫逃避の極めて重要な制御因子である(Woo et al.(2011)Cancer Res.72(4):917-27)。これらの抑制性受容体の中でも、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)は、顕著なオフスイッチとして機能するが、PD-1(プログラム死1、CD279)及びLAG-3(リンパ球活性化遺伝子、CD223)などのその他の受容体は、CTLA-4よりも弱い抑制機能を果たすと見られる(上記文献を参照されたい)。
【0009】
CTLA-4は、活性化T細胞上でアップレギュレートする免疫チェックポイント分子である(Mackiewicz(2012)Wspolczesna Onkol 16(5):363-370)。抗CTLA4 mAbは、CTLA-4とCD80/86との相互作用をブロックし、免疫抑制の機序をオフにし、DCによるT細胞の継続的な刺激を可能にすることができる。メラノーマの患者での臨床試験では、CTLA-4に対する2つのIgGモノクローナル抗体(mAb)、すなわち、イピリムマブ及びトレメリムマブが用いられている。しかしながら、抗CTLA-4抗体による処置では、高レベルの免疫関連有害事象が見られている(上記文献を参照されたい)。
【0010】
免疫系を調節する別のヒトmAbは、プログラム細胞死-1受容体(PD-1)に対するBMS-936558(MDX-1106)であり、PD-1のリガンド(PD-L1)をメラノーマ細胞上に直接発現させることができる(上記文献を参照されたい)。PD-1は、T細胞の活性化及び寛容性を調節する共刺激分子のB7:CD28ファミリーの一部であるので、PD-1抗体のようなPD-1アンタゴニストは、寛容性を破壊する役割を果たすことができる(上記文献を参照されたい)。
【0011】
PD-1/PD-L1経路の関与により、T細胞のエフェクター機能、サイトカインの分泌及び増殖が阻害される(Turnis et al.(2012)OncoImmunology 1(7):1172-1174)。PD-1のレベルが高い状態は、疲弊T細胞、すなわち慢性刺激状態のT細胞と関連付けられている(上記文献を参照されたい)。さらに、PD-1の発現増加は、がん患者の生存率の低下と相関する(上記文献を参照されたい)。
【0012】
現在、がんの治療用に認可されたPD-1抗体及びPD-L1抗体はいくつか存在する。これらのうちの一部としては、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ及びデュルバルマブが挙げられ、現在開発中のものは、さらに多く存在する(ピジリズマブ、AMP-224、AMP-514、PDR001、セミプリマブ、BMS-936559及びCK-3012)。
【0013】
別の免疫チェックポイント阻害剤LAG-3は、様々な種類のリンパ球細胞の活性化により発現する負の制御分子である(上記文献を参照されたい)。LAG-3は、免疫抑制性の内在性Treg細胞及び誘導性Treg細胞の両方が最適に機能するために必要となる(上記文献を参照されたい)。
【0014】
PD-1及びLAG-3をモノクローナル抗体でコンビナトリアルに遮断したところ、確立された腫瘍の成長が相乗的に制限された(Woo et al.(2011)Cancer Res.72(4):917-27)。コンビナトリアルな抗LAG-3/抗PD-1免疫療法では、確立されたSa1N腫瘍及びMC38腫瘍は効果的に除去されたが、この療法は、確立されたB16腫瘍に対しては効果がなかった(上記文献を参照されたい)。Turnisらにより、彼らの研究において、「併用治療の転帰を予測するのは困難であることが明らかになった」と報告された(Turnis et al.(2012)OncoImmunology 1(7):1172-1174)。
【0015】
誘導性共刺激分子(ICOS)は、メラノーマ及び卵巣癌を含む様々な腫瘍に浸潤しているTreg上で高度に発現することが報告されている(Faget et al.(2013)OncoImmunology 2:3,e23185)。ICOS/ICOSLの相互作用は、乳癌において、腫瘍関連(TA)TregとTA-pDCとの相互作用の最中に生じることも報告されている(上記文献を参照されたい)。ICOSに対するアンタゴニスト抗体は、ICOS/ICOS-Lの相互作用を阻害するとともに、pDCによって誘導されるTregの増殖を妨げるのに用いられている(WO2012/131004を参照されたい)。アンタゴニスト抗体は、乳房腫瘍のマウスモデルにおいて、腫瘍の進行を低減するのに使用された(上記文献を参照されたい)。
【0016】
ICOSに対するアゴニスト抗体は、腫瘍の治療の際に、抗CTLA-4ブロッキング抗体及び抗PD-1ブロッキング抗体と組み合わせると有用であるものとして示唆されている(WO2011/041613を参照されたい)。
【0017】
能動免疫療法及びがんワクチンを含むさらなるがん治療に対するアンメットメディカルニーズがかなり存在するは明らかである。多くの態様では、本開示の実施形態は、現在利用可能であるがん治療を増加及び改善させる併用療法を提供することによって、これらのニーズに対応する。
【発明の概要】
【0018】
本発明の様々な実施形態では、抗原CD40Lをコードする組み換えMVAは、免疫チェックポイントアンタゴニストまたは免疫チェックポイントアゴニストの投与と組み合わせて、患者に静脈内投与すると、がん患者の治療を増強すること、より具体的には、そのがん患者の腫瘍体積の縮小を大きくし、及び/または生存率を上昇させることが示された。
【0019】
したがって、一実施形態では、本発明は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させるのに用いる組み合わせ物を含み、その組み合わせ物は、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)であって、静脈内投与すると、TAAをコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導する組み換えMVAと、b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストを含み、a)及びb)をそのがん患者に投与することにより、a)またはb)のいずれかを単独で非静脈内投与する場合と比べて、腫瘍サイズが縮小し、及び/またはそのがん患者の生存率が上昇する。
【0020】
追加の実施形態では、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その方法が、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、静脈内投与すると、TAAをコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導する組み換えMVAを、そのがん患者に投与することと、b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストをそのがん患者に投与することを含み、(a)及び(b)が、併用治療として投与すべきものであり、a)及びb)をそのがん患者に投与することにより、a)を単独で非IV投与するかまたはb)を単独で投与する場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する方法が存在する。
【0021】
好ましい実施形態では、その少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストは、CTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、LAG-3アンタゴニスト、TIM-3アンタゴニストまたはICOSアゴニストを含む。より好ましい実施形態では、その少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストは、CTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストを含む。
【0022】
さらなる実施形態では、その少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストは、その免疫チェックポイント分子の機能をブロックできる抗体を含む。好ましい実施形態では、その抗体はそれぞれ、CTLA-4抗体、PD-1抗体、PD-L1抗体、LAG-3抗体、ICOS抗体及びTIM-3抗体から選択されている。より好ましい実施形態では、その少なくとも1つのアンタゴニストまたはアゴニストは、CTLA-4抗体、PD-1抗体またはPD-L1抗体を含む。
【0023】
さらに追加の実施形態では、そのTAAをコードする第1の核酸は、がん胎児性抗原(CEA)、Mucin1,細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質2(TRP2)、抗原Brachyuryまたはこれらを組み合わせたものからなる群から選択されている。
【0024】
1つ以上の好ましい実施形態では、その組み換えMVAは、MVA-BNまたはその誘導体である。
【0025】
本発明のさらなる目的及び利点は、一部が下記の説明に示されており、一部は、その説明から明らかとなるか、または本発明を実施することにより認識し得る。本発明の目的及び利点は、添付の請求項で特に指摘されている要素及び組み合わせによって認識及び実現されることになる。
【0026】
添付の図面は、本明細書に援用され、本明細書の一部を成すが、本発明の1つ以上の実施形態を例示するとともに、その明細と併せて、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】MVA-OVA(rMVA)の静脈内(IV)投与により、NK細胞の全身的な活性化が、皮下(SC)投与の場合よりも増強されることを示している。そのMVAがCD40Lをコードするときには(rMVA-CD40L)、NK細胞の活性化がさらに増強される。示されているのは、実施例1の結果であり、この図では、NK細胞の出現頻度、及びNKp46
+CD3
-細胞における、示されているタンパク質マーカーの発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示されている)を評価するための染色を、脾臓において評価した。A)は、NKp46
+ CD3
-細胞であり、B)はCD69であり、C)は、NKG2Dであり、D)は、FasLであり、E)は、Bcl-X
Lであり、F)は、CD70であり、G)は、IFN-γである。
【
図2】MVA-OVA(rMVA)のIV投与により、NK細胞の全身的な活性化が、SC投与の場合よりも増強されることを示している。そのMVAが、CD40Lをコードするときには(rMVA-CD40L)、NK細胞の活性化は、さらに増強される。示されているのは、実施例1の結果であり、この図では、NK細胞の出現頻度、及びNKp46
+CD3
-細胞における、示されているタンパク質マーカーの発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示されている)を評価するための染色を、肝臓において評価した。A)は、NKp46
+ CD3
-細胞であり、B)はCD69であり、C)は、NKG2Dであり、D)は、FasLであり、E)は、Bcl-X
Lであり、F)は、CD70であり、G)は、IFN-γである。
【
図3】MVA-OVA(rMVA)のIV投与により、NK細胞の全身的な活性化が、SC投与の場合よりも増強されることを示している。そのMVAがCD40Lをコードするときには(rMVA-CD40L)、NK細胞の活性化がさらに増強される。示されているのは、実施例1の結果であり、この図では、NK細胞の出現頻度、及びNKp46
+CD3
-細胞における、示されているタンパク質マーカーの発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示されている)を評価するための染色を、肺において評価した。A)は、NKp46
+ CD3
-細胞であり、B)は、CD69であり、C)は、NKG2Dであり、D)は、FasLであり、E)は、Bcl-X
Lであり、F)は、CD70であり、G)は、IFN-γである。
【
図4】MVA-HER2v1-Twist-CD40Lの静脈内(IV)投与により、NK細胞の全身的な活性化が、皮下(SC)投与の場合よりも増強されることを示している。示されているのは、実施例1の結果であり、この図では、NK細胞の出現頻度、及びNKp46
+CD3
-細胞における、示されているタンパク質マーカーの発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示されている)を評価するための染色を、脾臓において評価した。A)は、NKp46
+ CD3
-細胞であり、B)はCD69であり、C)は、FasLであり、D)は、Bcl-X
Lであり、E)は、CD70であり、F)は、IFN-γである。
【
図5】MVA-HER2v1-Twist-CD40LのIV投与により、NK細胞の全身的な活性化が、SC投与の場合よりも増強されることを示している。示されているのは、実施例1の結果であり、この図では、NK細胞の出現頻度、及びNKp46
+CD3
-細胞における、示されているタンパク質マーカーの発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示されている)を評価するための染色を、肝臓において評価した。A)は、NKp46
+ CD3
-細胞であり、B)は、CD69であり、C)は、FasLであり、D)は、Bcl-X
Lであり、E)は、CD70であり、F)は、IFN-γである。
【
図6】MVA-HER2v1-Twist-CD40LのIV投与により、NK細胞の全身的な活性化が、SC投与の場合よりも増強されることを示している。示されているのは、実施例1の結果であり、この図では、NK細胞の出現頻度、及びNKp46
+ CD3
-細胞における、示されているタンパク質マーカーの発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示されている)を評価するための染色を、肺において評価した。A)は、NKp46
+ CD3
-細胞であり、B)は、CD69であり、C)は、FasLであり、D)は、Bcl-X
Lであり、E)は、CD70であり、F)は、IFN-γである。
【
図7】MVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)のIV投与により、血清中のIL-12p70及びIFN-γのレベルが上昇することを示している。示されているのは、実施例2の結果である。A)IFN-γの濃度は、rMVA-CD40Lの投与後、MVA-OVA(rMVA)による免疫の場合よりも高かった。B)NK細胞活性化サイトカインIL-12p70は、MVA-CD40Lによる免疫後のみに検出可能であった。IFN-γの血清レベルが高かったことは、rMVA-CD40Lで免疫後、IFN-γ
+ NK細胞(
図1Gを参照されたい)及び脾臓におけるCD69
+グランザイムB
+ NK細胞(C)の出現頻度が上昇したことと一致する。同様の応答は、NHP(Macaca fascicularis)でも、MVA-MARV-GP-huCD40L(rMVA-CD40L)のIV注射後に見られ、すなわち、MVA-MARV-GP(rMVA)の場合よりも、IFN-γ(D)及びIL-12p40/70(E)の血清濃度が上昇し、(Ki67
+)NK細胞(F)が増殖した。
【
図8】IV免疫により、CD8 T細胞応答の増強が、SC免疫の場合よりも誘導されることを示している。実施例3に示されているように、0日目及び15日目に、C57BL/6マウスをMVA-OVAでSC免疫またはIV免疫した。H-2K
b/OVA
257-264デキストラマーで染色後、血液中のOVA特異的CD8 T細胞応答を評価した。
【
図9】MVA-CD40Lによって、CD8 T細胞応答をさらに増強できることを示している。実施例4に示されているように、0日目及び35日目に、C57BL/6マウスをMVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫した。H-2K
b/OVA
257-264デキストラマーで染色後、血液中のOVA特異的CD8 T細胞応答を評価した。
【
図10】プライム/ブースト免疫後、NK細胞の活性化及び増殖が反復されることを示している。実施例5に示されているように、表1に示されているようにして、C57BL/6マウスをPBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫した。2回目及び3回目の免疫から1日後及び4日後に、NK細胞(NKp46
+CD3
-)を血液において、フローサイトメトリーによって解析した。A)は、CD69のGMFIを示しており、B)は、Ki67
+ NK細胞の出現頻度を示している。
【
図11-1】プライム/ブースト免疫後の全身でのサイトカイン応答を示している。実施例6に示されているように、表1に示されているようにして、C57BL/6マウスをPBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫した。免疫から6時間後に、血清サイトカインレベルを測定した。示されているのは、A)IL-6、B)CXCL10、C)IFN-α、D)IL-22、E)IFN-γ、F)CXCL1、G)CCL4、H)CCL7)、I)CCL2、J)CCL5、K)TNF-α、L)IL-12p70及びM)IL-18の結果である。
【
図11-2】プライム/ブースト免疫後の全身でのサイトカイン応答を示している。実施例6に示されているように、表1に示されているようにして、C57BL/6マウスをPBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫した。免疫から6時間後に、血清サイトカインレベルを測定した。示されているのは、A)IL-6、B)CXCL10、C)IFN-α、D)IL-22、E)IFN-γ、F)CXCL1、G)CCL4、H)CCL7)、I)CCL2、J)CCL5、K)TNF-α、L)IL-12p70及びM)IL-18の結果である。
【
図12】MVA及びMVA-CD40Lによるプライム/ブースト免疫後のCD8エフェクターT細胞及びCD4エフェクターT細胞の誘導を示している。実施例7に記載されているように、C57BL/6マウスをPBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫した。表現型的に、エフェクターT細胞をCD44の発現及び表面CD62Lの欠損によって特定した。血液中のA)CD44
+ CD62L
- CD8 T細胞及びB)CD44+ CD62L- CD4 T細胞をモニタリングした。
【
図13】メラノーマモデルにおける異種でのプライムブーストスキームでのrMVA-CD40LによるIV免疫の優れた抗腫瘍作用を示している。実施例8に記載されているように、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをPBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)で、SCまたはIVによってプライミングした(点線)。プライミングから7日後及び14日後、マウスに、その後のブースティングをFPV-OVAで行った(破線)。腫瘍の成長を等間隔で測定した。示されているのは、A)腫瘍平均体積と、B)腫瘍を接種してから45日目までの腫瘍担持マウスの生存率(B)である。
【
図14】MVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫を1回行った後に、効率的に腫瘍が制御されたことを示している。実施例9に記載されているように、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをIVでプライミングするか、IVでプライミング及びブースティングした。腫瘍の成長を等間隔で測定した。示されているのは、腫瘍平均体積である。
【
図15】rMVA-CD40Lで免疫後、腫瘍微小環境(TME)内のT細胞浸潤が増加したことを示している。実施例10に記載されているように、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをPBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫した。7日後、マウスを殺処分した。A)は、脾臓、腫瘍流入リンパ節(TDLN)及び腫瘍組織中のCD45
+白血球におけるCD8
+ T細胞の出現頻度であり、B)は、免疫後の様々な器官におけるOVA
257-264特異的CD8
+ T細胞の分布であり、C)は、腫瘍内浸潤しているOVA
257-264特異的CD8
+ T細胞上のPD-1及びLag3のGMFIである。
【
図16】rMVA-CD40Lで免疫後、TME内の制御性T細胞(Treg)が長期的に減少したことを示している。実施例11に記載されているように、精製されたOVA特異的なTCRトランスジェニックCD8 T細胞(OT-I)をB16.OVA腫瘍担持マウスに、腫瘍が触知可能となったらIV移入した。腫瘍の体積が少なくとも60mm
3に達したら、マウスをMVA-BN(登録商標)、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫した。17日後、さらなる解析のために、マウスを殺処分した。腫瘍組織中のCD4
+ T細胞におけるFoxp3
+ CD4
+ Tregの出現頻度である。
【
図17】rMVA-CD40Lで免疫後、TMEにおいて、TAA特異的CD8 T細胞が、疲弊化の少ない表現型で持続することを示している。精製されたOVA特異的なTCRトランスジェニックCD8 T細胞(OT-I)をB16.OVA腫瘍担持マウスにIV移入した。腫瘍の体積が少なくとも60mm
3に達したら、マウスをMVA-BN(登録商標)、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫した。17日後、マウスを殺処分し、A)腫瘍組織中の白血球におけるCD8
+ T細胞の出現頻度、B)CD8
+ T細胞におけるLag3
+ PD1
+の出現頻度、C)CD8
+ T細胞におけるEomes
+ PD1
+ T細胞の出現頻度、D)免疫後のTMEにおけるOT-I-トランスジェニックCD8
+ T細胞の存在、E)OT-I CD8
+ T細胞におけるLag3
+ PD1
+疲弊T細胞の出現頻度、及びF)OT-I CD8
+ T細胞におけるEomes
+ PD1
+疲弊T細胞の出現頻度について解析した。
【
図18】MVA-HER2v1-Brachyury-CD40Lの導入遺伝子の発現を示している。実施例12に記載されているように、HeLa細胞を未処置のままにするか(モック、内側が灰色で塗りつぶされた線)、MVA-BNに感染させるか(内側が黒で塗りつぶされた線)、またはMVA-HER2v1-Brachyury-CD40Lに感染させるか(内側が塗りつぶされていない線)した。続いて、A)MVA、B)HER2v1、C)Brachyury及びD)CD40Lからのタンパク質発現をフローサイトメトリーによって求めた(ヒストグラムを参照されたい)。
【
図19】MVA-HER2v1-brachyury-CD40Lによって、ヒトDCの活性化が、MVA-HER2v1-brachyuryよりも、用量依存的に増強されることを示している。実施例14に記載されているように、ヒトPBMCからCD14
+単球を濃縮後、単球由来DCを作製し、7日間、GM-CSF及びIL-4の存在下で培養した。DCをMVA-HER2v1-brachyuryまたはMVA-HER2v1-brachyury-CD40Lで刺激した。A)CD40L、B)CD86及びC)クラスII MHCの発現をフローサイトメトリーによって測定した。D)では、IL-12p70の濃度を定量した。
【
図20】MVA-HER2v1-Twist-CD40LでIV免疫後、腫瘍微小環境において、HER2特異的CD8
+ T細胞が産生するIFN-γの浸潤が増加したことを示している。実施例16に記載されているように、触知可能なCT26.HER2腫瘍を有するBalb/cマウスをPBSまたはMVA-HER2v1-Twist-CD40LのいずれかでIV免疫した。7日後、脾臓のCD8
+ T細胞及び腫瘍に浸潤しているCD8+ T細胞を磁気細胞ソーティングによって単離し、HER2ペプチドをロードした樹状細胞の存在下で、5時間培養した。グラフには、CD8
+ T細胞におけるCD44
+ IFN-γ
+細胞のパーセンテージが示されている。
【
図21】抗PD1チェックポイントの遮断と組み合わせて、rMVA-CD40LをIV投与したところ、全生存率が上昇し、腫瘍が縮小したことを示している。85mm
3のMC38大腸癌を有するC57BL/6マウスをMVA-AH1A5-p15e-TRP2-CD40L(rMVA-p15eCD40Lとして示されている)でIV免疫するか、またはそのマウスにPBSを投与するかした。実施例17に記載されているように、その後、免疫後に抗PD-1抗体を投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。示されているのは、腫瘍平均体積(A)及び腫瘍なしの生存率(B)である。
【
図22】抗PD1剤によるチェックポイントの遮断と組み合わせて、MVA-Twist-Her2-CD40LをIV投与したところ、全生存率が上昇し、腫瘍が縮小したことを示している。85mm
3のMC38.HER2大腸癌を有するC57BL/6マウスをMVA-Twist-Her2v1-CD40L、MVA-Twist-Her2v1-CD40L及びPD-1、またはPD-1単独でIV免疫するか、そのマウスにPBSを投与するかした。実施例18に記載されているように、続いて、免疫後、抗PD-1抗体を投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。示されているのは、腫瘍平均体積(A)及び腫瘍なしの生存率(B)である。
【
図23】内因性レトロウイルス抗原Gp70をコードするMVAウイルスの静脈内注射の抗腫瘍作用を示している。CT26.wt腫瘍担持Balb/cマウス(n=5/群)を群分けし、腫瘍の接種から12日後、それらのマウスに、PBS、または5×10
7 TCID
50のMVA、MVA-Gp70もしくはMVA-Gp70-CD40Lを静脈内(i.v.)投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。示されているのは、腫瘍平均直径(
図23A)及び腫瘍平均体積(
図23B)である。免疫から7日後、血液細胞を再刺激し、刺激後の血液中のCD8+ T細胞におけるCD44+ IFN-γ+細胞のパーセンテージが示されている(
図23C)。
【
図24】内因性レトロウイルス抗原Gp70をコードするMVAウイルスの静脈内注射の抗腫瘍作用を示している。B16.F10腫瘍担持C57BL/6マウス(n=5/群)を群分けし、腫瘍の接種から7日後、それらのマウスに、PBS、または5×10
7 TCID
50のMVA、MVA-Gp70もしくはMVA-Gp70-CD40Lを静脈内(i.v.)投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。示されているのは、腫瘍平均体積(
図24A)、及び免疫から7日後に、p15eペプチドで刺激した後の血液中のCD8+ T細胞におけるCD44+ IFN-γ+細胞のパーセンテージ(
図24B)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上記の概要及び下記の詳細な説明のいずれも、例示及び説明のためのものに過ぎず、特許請求されているような本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【0029】
CD40Lは、MVAの一部としてコードされるときには、疾患関連抗原に対する全体的なT細胞応答を誘導及び増強できることが示された。WO2014/037124。WO2014/037124では、CD40Lと異種抗原とをコードする組み換えMVAが、インビボでDCの活性化を増強し、その異種抗原に特異的なT細胞応答を増大させ、CD8 T細胞の質及び量を高めることができることが示された。上記文献を参照されたい。相乗的な抗腫瘍応答を誘導するために、本発明の各種医薬組み合わせ物を開発した。いくつかの態様では、その各種医薬組み合わせ物は、チェックポイントアンタゴニストまたはチェックポイントアゴニストと組み合わせると、腫瘍細胞を殺傷できる高い効果の腫瘍特異的なキラーT細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞の両方を誘導する。このNK細胞及びT細胞の活性化の増強は、チェックポイントアンタゴニストまたはチェックポイントアゴニストと組み合わせると、MVAによって同様に誘導されるキラーT細胞応答の増強と組み合わさって、がんである対象において、相乗的に、腫瘍の縮小を大きくし、全生存率を上昇させることが示されている。
【0030】
一実施形態では、本発明は、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAの静脈内(IV)投与と、b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストを含む組み合わせ物または併用療法である。本明細書に示されているように、様々な実施形態では、その少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストは、CTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、LAG-3アンタゴニスト、TIM-3アンタゴニスト及びICOSアゴニストから選択されている。同様に本明細書に示されているように、より好ましい実施形態では、その少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストは、抗体を含む。さらに、より好ましい実施形態では、そのCTLA-4アンタゴニストは、CTLA-4抗体を含み、そのPD-1アンタゴニストは、PD-1抗体を含み、そのPD-L1アンタゴニストは、PD-L1抗体を含み、そのLAG-3アンタゴニストは、LAG-3抗体を含み、そのTIM-3アンタゴニストは、TIM-3抗体を含み、そのICOSアゴニストは、ICOS抗体を含む。
【0031】
本願で説明及び例示されているように、本発明の組み合わせ物及び/または併用療法は、がん患者の免疫応答の複数局面を増強する。少なくとも1つの態様では、その組み合わせ物は、自然免疫応答及び適応免疫応答の両方を相乗的に増強し、免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストと組み合わせると、がん患者の腫瘍体積を縮小し、生存率を上昇させる。その組み合わせ物及び/または療法の作用増強が1つ以上、以下に概括されている。
【0032】
組み換えMVAのIV投与により、NK細胞応答が増強される。
一態様では、本発明は、対象に静脈内投与する組み換えMVAであって、そのIV投与により、その対象において、自然免疫応答の増強、より具体的には、NK細胞応答の増強が、組み換えMVAをその対象に非IV投与することにより誘導されるNK細胞応答と比べて誘導される組み換えMVAを含む。
図1~7及び10~12に示されているように、組み換えMVAのIV投与により、いくつかの区画において、単回IV投与の場合、及び同種でのプライム-ブーストとして静脈内投与した場合のいずれでも、非IV投与の場合と比べて、全身での活発なNK細胞応答が誘導された。
【0033】
図1~6に示されているように、NK細胞応答の質が、非IV投与の場合よりも高まった。解析したすべての器官(脾臓、肝臓及び肺)で、活性化マーカーCD69が増加する。脾臓及び肺のいずれでも、NK細胞の生存性、共刺激CD70及びエフェクターサイトカインIFN-γを増強する抗アポトーシス性のBclファミリーメンバーBcl-X
Lが増加した。肝臓及び肺では、IV後、SC注射の場合よりも、活性化ナチュラルキラー群2D(NKG2D)受容体の発現が特に増大した。NKG2Dは、腫瘍細胞上のリガンドに結合して、その腫瘍細胞の除去を促す(Garcia-Cuesta et al.,2015。Spear et al.,2013で論評)。
【0034】
CD40Lをコードする組み換えMVAのIV投与により、NK細胞応答がさらに増強される。
本発明の別の態様では、その組み換えMVAに加えて、抗原CD40LをIV投与したところ、組み換えMVAを単独でIV投与した場合よりも、NK細胞応答がさらに増強されたことが明らかになった。
図1~7及び10~12に示されているように、抗原CD40Lをコードする組み換えMVAでは、単回投与の場合、及び同種でのプライミングブーストとして投与した場合のいずれでも、CD40Lをコードしない組み換えMVAよりも強力なNK細胞応答が誘導された。さらに、組み換えMVAを単独でIV投与した場合よりも、NK細胞応答の質が高くなった。解析したすべての器官で、NK細胞による、エフェクターサイトカインIFN-γの発現の増加が観察された(
図1~6、脾臓、肝臓、肺)とともに、解析したすべての器官で、NK細胞による、CD69の発現が観察された(
図5C)。さらに、
図7には、マウス及びNHPの両方において、rMVA-CD40LでIV免疫してから6時間後に、組み換えMVAの場合と比べて、IFN-γの血清レベルが増加したこと、より重要なことには、NK細胞活性化サイトカインIL-12p70の血清レベルが増加したことが示されている。加えて、NK細胞の増殖(Ki67の発現によって示される)の増強が、マウスの全身(
図7B)のみならず、NHPの末梢血(
図6F)でも観察された。これらの結果から、いくつかの動物研究モデルにおいて、rMVA-CD40LでのIV免疫が、rMVAの場合よりも、NK細胞の質を向上させることが示されている。
【0035】
組み換えMVAウイルスは以前に、静脈内投与されたことがあるが(例えば、WO2002/42480、WO2014/037124を参照されたい)、組み換えMVAの投与及び処置は、CD8 T細胞応答のような適応免疫応答の増強と関連があることが以前に分かった。例えば、WO2002/42480では、1匹のマウス当たり107 pfuのMVA-BNをIV投与するか、または1匹のマウス当たり107 pfuもしくは108 pfuのMVA-BNを皮下投与することによって、非組み換えMVAを用いた免疫を行った後、CTL応答を測定した。WO2014/037124では、マウスに、組み換えMVA、及びCD40Lをコードする組み換えMVAを静脈内接種した(WO2014/037124を参照されたい)。CTL応答が増強されたとともに、組み換えMVA-CD40Lの免疫原性の向上が、CD4+ T細胞に依存しないが、宿主におけるCD40に依存することが明らかになった。
【0036】
少なくとも1つの態様では、本発明で見られる、NK細胞応答の増強は、予想外である。当該技術分野では、MVAに誘導される、NK細胞の活性化は、皮下免疫後、リンパ節に常在するCD169陽性嚢下洞(SCS)マクロファージに依存することが示されたと認識されていたからである(Garcia et al.(2012)Blood 120:4744-50)。
【0037】
別の態様では、本発明の
医薬組み合わせ物は、同種及び/または異種でのプライム-ブーストレジメンの一部として投与する。
図10~12に示されているように、CD40Lをコードする組み換えMVAを同種及び/または異種でのプライムブーストレジメンの一部として、対象に投与すると、NK細胞応答の増強が延長及び再活性化されるとともに、対象のCD8 T細胞応答及びCD4 T細胞応答が増大する。
【0038】
本発明の少なくとも1つの態様では、組み換えMVA及び組み換えMVA-CD40Lの反復IV投与に起因する、NK細胞応答の増強は、驚くべきものであった。少なくとも1つの態様では、驚くべきことに、ブーストIV免疫から24時間後に、IFN-αの増加が見られない状態で、NK細胞の活性化及び増殖の増大が観察された。実際、二次感染症及びがんにおける、NK細胞の活性化及びプライミングは主に、IFN-αによって駆動されることが分かった(例えば、Stackaruk et al.(2013)Expert Rev.Vaccines.12(8):875-84及びMueller et al.(2017)Front.Immunol.8:304を参照されたい)。驚くべきことに、rMVA hom、rMVA-CD40L homまたはrMVA-CD40L hetでのIVブースト免疫から6時間後、IFN-αの血清レベルの上昇は観察されなかった(
図11C)。勘案すると、1つ以上の異種抗原をコードする核酸を含むrMVAによる、同種または異種で反復IV免疫を行ったところ、予想外にも、IFN-αに依存せずに、NK細胞の活性化及び増殖が見られた。
【0039】
本発明の以前には、組み換えMVAによってコードされるCD40Lが、CD4ヘルパーT細胞の代わりとなり得ると理解されていた(Lauterbach et al.(2013)Front.Immunol.4:251)。さらに、組み換えMVAによってコードされるCD40Lが、CD4 T細胞には作用を及ぼさないことが分かった。予想外にも、我々は、プライム免疫から25日後に、CD4
+メモリーT細胞の増加を認め(
図12B)、この増加は、rMVA-CD40L(rMVA-CD40L hom及びrMVA-CD40L het)でブーストIV免疫してから4日後のものと一致する(21日目。表1を参照されたい)。この知見は、MVA-CD40L hom及びMVA-CD40L hetの群でブーストIV免疫してから6時間後に定量した、IL-22(ヘルパーT細胞応答を示す重要なサイトカイン)の産生の増加によって裏付けられている(
図11D)。この予想外の観察結果は、rMVA-CD40Lによる、メモリー応答の維持に関連がある。さらに、CD4 T細胞は、腫瘍部位で腫瘍特異的なCD8 T細胞を補佐し、活性化誘導細胞の死滅を回避し、さらには、CD4 T細胞自体が細胞傷害性細胞になることができる(Kennedy and Celis(2008)Immunol.Rev.222:129-44、Knutson and Disis(2005)Curr.Drug Targets Immune Endocr.Metabol.Disord.5:365-71で論評されている)。これらの結果は、予想外である。アデノウイルス及び単純ヘルペスウイルスのような他のウイルスのベクターは、ブースト免疫の際に、ワクチンによってコードされる抗原に対する免疫応答の誘導を妨げるベクター特異的免疫を誘導するからである(Lauterbach et al.(2005)J.Gen.Virol.86:2401-10、Pine et al.(2011)PLoS One doi:10.1371/journal.pone.0018526)。
【0040】
MVAのIV投与により、腫瘍の免疫抑制作用が低下する。
図13~15及び19に示されているように、異種抗原とCD40Lとをコードする組み換えMVAを静脈内投与したところ、CD8
+ T細胞の腫瘍内浸潤が誘導され、複数の免疫抑制作用(典型的には、腫瘍が、免疫系を回避する目的で利用する作用)が低下した。CD40Lでのチャレンジとともに、またはCD40Lでのチャレンジを行わずに、組み換えMVAを投与したところ、腫瘍で内因性CD8
+細胞が増加したのに加えて、脾臓及び腫瘍で、CD40Lをコードする組み換えMVAをIV投与したところ、CD40LをコードしないMVAよりも、抗原(OVA)特異的T細胞が増加した。加えて、CD40Lをコードする組み換えMVAをIV投与したところ、腫瘍微小環境内で、エフェクターサイトカインIFN-γを産生する、抗原HER2に特異的なT細胞が増強された(
図19)。驚くべきことに、異種抗原とCD40Lとをコードする組み換えMVAを投与したところ、腫瘍微小環境内の免疫抑制性の制御性T細胞(Treg)数が減少した(
図16)。
【0041】
CD40Lをコードする組み換えMVAと、チェックポイントアンタゴニストまたはチェックポイントアゴニストとの併用は、がん患者の腫瘍量を減少させ、生存率を上昇させる。
様々な実施形態では、この併用治療は、a)CD40Lをコードする組み換えMVAのIV投与と、b)免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストの投与を含む。
図20及び21に示されているように、本開示の併用治療により、腫瘍体積が縮小し、全生存率が上昇した。両方のベクターにより誘導されるI型インターフェロン及びII型インターフェロン(
図11C及び11E)は、PD-1及びPD-L1の発現の既知の誘導因子であることが知られている(Dong et al.(2017)Oncotarget 8:2171-2186で論評されている)。少なくとも1つの態様では、本発明の
医薬組み合わせ物の抗腫瘍作用の増強(例えば、腫瘍体積の縮小及び/または生存率の上昇)は、本明細書に記載されている、チェックポイントの遮断、ならびに自然T細胞応答及び適応T細胞応答の増強を介して、腫瘍によって誘導される免疫抑制性微小環境に対する対抗作用を相乗的に組み合わせることから実現される。例示的な一実施形態では、これらの増強には、上で列挙したもの、例えば自然(例えばNK細胞)応答の増強、及び適応T細胞応答の増強のうちの1つ以上が含まれる。
【0042】
定義
本明細書で使用する場合、「a」、「an」及び「the」の付された単数形には、文脈上明らかに別段に示されていない限り、複数の言及物が含まれる。したがって、例えば、「核酸」という場合には、その核酸が1つ以上含まれ、「その方法」という場合には、当業者に知られている同等の工程及び方法であって、修正可能であるか、または本明細書に記載されている方法と置き換え可能である工程及び方法への言及が含まれる。
【0043】
別段に示されていない限り、一連の要素の前に付された「少なくとも」という用語は、その一連の要素の1つ1つを指すと理解されたい。当業者は、慣用的に過ぎない実験を用いて、本明細書に記載されている発明の具体的実施形態の均等物を数多く認識するか、または確認できるであろう。このような均等物は、本発明に含まれるように意図されている。
【0044】
本明細書及び下記の請求項の全体を通じて、「含む(comprise)」という単語、ならびに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」のような変形語は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、示されている整数もしくは工程、または整数群もしくは工程群を含むことを示唆しているが、いずれかの他の整数もしくは工程、または整数群もしくは工程群を除外しないことを理解されたい。本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(containing)」もしくは「含む(including)」という用語、または場合によっては、本明細書で使用する場合、「有する」という用語に置き換えることができる。あまり好ましくはないが、上記の用語(含む(comprising)、含む(containing)、含む(including)、有する)のいずれも、本明細書において、本発明の態様または実施形態の関連で使用する場合にはいずれも、「~からなる」という用語に置き換えることができる。本明細書で使用する場合、「~からなる」という場合には、その請求要素に定められていない要素、工程または成分はいずれも除外される。本明細書で使用する場合、「~から本質的になる」という場合には、その請求項の基本的かつ新規な特徴に重大な影響を及ぼさない材料または工程は除外されない。
【0045】
本明細書で使用する場合、示されている複数の要素間に置かれた「及び/または」という接続語は、個々の選択肢、及び選択肢を組み合わせたものの両方を含むものとして理解する。例えば、2つの要素が、「及び/または」によって接続されている場合、第1の選択肢は、その第2の要素を含まずに、その第1の要素を適用可能であることを指す。第2の選択肢は、その第1の要素を含まずに、その第2の要素を適用可能であることを指す。第3の選択肢は、その第1の要素及び第2の要素を併せて適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つが、その意味の範囲内に入り、すなわち、本明細書で使用する場合の「及び/または」という用語の要件を満たすと理解されたい。その選択肢のうちの2つ以上を同時に適用することも、その意味の範囲内に入り、すなわち、「及び/または」という用語の要件を満たすと理解されたい。
【0046】
本明細書に記載されているような「変異」または「改変」タンパク質または抗原は、本明細書では、欠失、付加、挿入及び/または置換のようないずれかの改変を核酸またはアミノ酸に加えたものとして定義する。
【0047】
本明細書で使用する場合、「宿主細胞」とは、外来の分子、ウイルスまたは微生物が導入された細胞である。非限定的な例の1つでは、本明細書に記載されているように、好適な細胞培養液の細胞(例えばCEF細胞など)に、ポックスウイルス、または他の代替的な実施形態では、外来または異種の遺伝子を含むプラスミドベクターを感染させることができる。したがって、好適な宿主細胞及び細胞培養液は、ポックスウイルス及び/または外来または異種の遺伝子に対する宿主として機能する。
【0048】
本明細書に記載されている核酸配列に関する「配列相同性パーセント(%)または配列同一性パーセント(%)」は、候補配列と参照配列をアラインメントし、必要に応じて、配列同一性パーセントが最大になるように、ギャップを導入した後、いずれの保存的置換も配列同一性としてみなさない場合に、候補配列内のヌクレオチドのうち、参照配列(すなわち、由来元の核酸配列)内のヌクレオチドと同一であるヌクレオチドのパーセンテージとして定義する。ヌクレオチドの配列同一性パーセントまたは配列相同性パーセントを求めるためのアラインメントは、例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)というソフトウェアのような公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて、当該技術分野の技術の範囲内である様々な方法で行うことができる。当業者は、比較する配列の完全長にわたって、アラインメントを最大限にするのに必要ないずれかのアルゴリズムを含め、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを定めることができる。
【0049】
例えば、核酸配列の適切なアラインメントは、Smith and Waterman,(1981),Advances in Applied Mathematics 2:482-489の局所相同性アルゴリズムによって得られる。このアルゴリズムは、Dayhoff(Atlas of Protein Sequences and Structure,Dayhoff(ed.),5 suppl.3:353-358,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USA)によって開発され、Gribskov(1986),Nucl.Acids Res.14(6):6745-6763によって標準化されたスコアリングマトリックスを用いることによって、アミノ酸配列に適用できる。配列の同一性パーセントを求めるための、このアルゴリズムの例示的なインプリメンテーションは、Genetics Computer Group(Madison,Wis.)によって、「BestFit」というユーティリティアプリケーション内に供給されている。この方法のためのデフォルトパラメーターは、Wisconsin Sequence Analysis programs Manual,Version 8(1995)(Genetics Computer Group(Madison,Wis.)から入手可能)に記述されている。本発明の関連において、同一性パーセントを求めるための好ましい方法は、University of Edinburghが著作権を有し、John F.Collins及びShane S.Sturrokが開発し、IntelliGenetics,Inc.(Mountain View,Calif)が流通させているプログラムのMPSRCH パッケージを使用することである。この一連のパッケージから、Smith-Watermanのアルゴリズムを用いることができ、その際、デフォルトパラメーターをスコア表に使用する(例えば、ギャップオープンペナルティー:12、ギャップエクステンションペナルティー:1、ギャップ:6)。生成されたデータから、「マッチ」値に「配列同一性」が反映される。配列間の同一性パーセントまたは類似性パーセントを算出するための他の好適なプログラムは概して、当該技術分野において知られており、例えば、別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメーターで使用するBLASTである。例えば、BLASTN及びBLASTPは、genetic code=standard、filter=none、strand=both、cutoff=60、expect=10、Matrix=BLOSUM62、Descriptions=50 sequences、sort by=HIGH SCORE、Databases=non-redundant、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIRというデフォルトパラメーターを用いて使用できる。これらのプログラムの詳細は、blast.ncbi.nlm.nih.gov/というインターネットアドレスで見ることができる。
【0050】
「プライム-ブーストワクチン接種」または「プライム-ブーストレジメン」という用語は、所定の抗原を標的とするワクチンの1回目のプライミング注射を行ってから、間隔を空けて、同じワクチンのブースティング注射を1回以上行うことを用いるワクチン接種策またはワクチン接種レジメンを指す。プライム-ブーストワクチン接種は、同種であっても異種であってもよい。同種でのプライム-ブーストワクチン接種(本明細書では、「hom」と称する場合もある)では、プライミング注射と1回以上のブースティング注射の両方に、同じ抗原及び同じベクターを含むワクチンを使用する。異種でのプライム-ブーストワクチン接種(本明細書では、「het」と称する場合もある)では、プライミング注射と1回以上のブースティング注射の両方で、同じ抗原を含むが、プライミング注射と1回以上のブースティング注射で、異なるベクターを含むワクチンを使用する。例えば、同種でのプライム-ブーストワクチン接種では、プライミング注射で、1つ以上の抗原を発現する核酸を含む組み換えポックスウイルスを使用し、1回以上のブースティング注射で、1つ以上の抗原を発現する同じ組み換えポックスウイルスを使用してよい。これに対して、異種でのプライム-ブーストワクチン接種では、プライミング注射で、1つ以上の抗原を発現する核酸を含む組み換えポックスウイルスを使用し、1回以上のブースティング注射で、1つ以上の抗原を発現する異なる組み換えポックスウイルスを使用してよい。
【0051】
「組み換え」という用語は、天然では見られないか、または天然では見られない構成で、別のポリヌクレオチドに連結されている、半合成または合成の供給源のポリヌクレオチド、ウイルスまたはベクターを意味する。
【0052】
本明細書で使用する場合、腫瘍体積の縮小(reducing)または縮小(reduction)は、腫瘍体積及び/または腫瘍サイズの縮小として特徴付けることができるが、当該技術分野において理解される臨床試験エンドポイントの観点で特徴付けることもできる。腫瘍体積及び/または腫瘍サイズの縮小と関連付けられた例示的ないくつかの臨床試験エンドポイントとしては、奏効率(RR)、客観的奏効率(ORR)などを挙げることができるが、これらに限らない。
【0053】
本明細書で使用する場合、生存率の上昇は、がん患者の生存率の上昇として特徴付けることができるが、当該技術分野において理解される臨床試験エンドポイントの観点で特徴付けることもできる。生存率の上昇と関連付けられた例示的ないくつかの臨床試験エンドポイントとしては、全生存率(OS)、無増悪生存率(PFS)などが挙げられるが、これらに限らない。
【0054】
本明細書で使用する場合、「導入遺伝子」または「異種」遺伝子は、野生型ポックスウイルスゲノム(例えば、ワクシニア、鶏ポックスまたはMVA)に存在しない核酸配列またはアミノ酸配列であると理解されたい。「導入遺伝子」または「異種遺伝子」とは、ワクシニアウイルスのようなポックスウイルスに存在するときには、その組み換えポックスウイルスを宿主細胞に投与後、その遺伝子が、対応する異種遺伝子産物として、すなわち「異種抗原」及び¥または「異種タンパク質」として発現するような方法で、そのポックスウイルスゲノムに導入されたものであると当業者は理解する。発現は通常、そのポックスウイルス感染細胞内での発現を可能にする調節エレメントに、その異種遺伝子を機能的に連結することによって行われる。好ましくは、その調節エレメントは、天然または合成のポックスウイルスプロモーターを含む。
【0055】
「ベクター」とは、異種のポリヌクレオチドを含むことができる組み換えDNAプラスミド、組み換えRNAプラスミド、または組み換えウイルスを指す。その異種のポリヌクレオチドは、予防目的または療法目的の、対象とする配列を含んでよく、任意に、発現カセットの形態であってよい。本明細書で使用する場合、ベクターは、最終標的の細胞または対象において複製できる必要はない。この用語には、クローニングベクター及びウイルスベクターが含まれる。
【0056】
組み合わせ物及び方法
様々な実施形態では、本発明は、がん患者において腫瘍体積を縮小させ、及び/または生存率を上昇させることによって、そのがん患者を治療するための組み合わせ物を含む。その組み合わせ物は、a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAであって、静脈内投与すると、TAAをコードする第1の核酸と、抗原CD40Lをコードする第2の核酸抗原とを含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答よりも、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導する組み換えMVAと、b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストを含む。
【0057】
NK細胞応答の増強
一態様では、本開示による、「NK細胞応答の増強」は、1)NK細胞出現頻度の上昇、2)NK細胞の活性化の増大、及び/または3)NK細胞の増殖の増加のうちの1つ以上によって特徴付けられる。したがって、本開示に従って、NK細胞応答が増強されたか否かは、NK細胞出現頻度の上昇、NK細胞の活性化の増大、及び/またはNK細胞の増殖の増加を示す1つ以上の分子の発現を測定することによって判断できる。NK細胞の出現頻度及び/または活性を測定するのに有用である例示的なマーカーには、NKp46、IFN-γ、CD69、CD70、NKG2D、FasL、グランザイムB、CD56及び/またはBcl-XLのうちの1つ以上が含まれる。NK細胞の活性化を測定するのに有用である例示的なマーカーには、IFN-γ、CD69、CD70、NKG2D、FasL、グランザイムB及び/またはBcl-XLのうちの1つ以上が含まれる。NK細胞の増殖を測定するのに有用である例示的なマーカーには、Ki67が含まれる。これらの分子及びその測定は、当該技術分野において理解されている実証済みのアッセイであり、既知の技法に従って行うことができる。例えば、Borrego et al.((1999)Immunology 97:159-165)を参照されたい。加えて、それらの分子を測定するためのアッセイは、本開示の実施例1~3及び9に見ることができる。少なくとも一態様では、1)NK細胞出現頻度の上昇は、CD3-NKp46+細胞が、治療前/ベースラインと比べて、少なくとも2倍増加することとして定義でき、2)NK細胞の活性化の増大は、IFN-γ、CD69、CD70、NKG2D、FasL、グランザイムB及び/またはBcl-XLの発現が、治療前/ベースラインの発現と比べて、少なくとも2倍増加することとして定義でき、及び/または3)NK細胞の増殖の増加は、Ki67の発現が、治療前/ベースラインの発現と比べて、少なくとも1.5倍増加することとして定義する。
【0058】
T細胞応答の増強
本願によれば、「T細胞応答の増強」は、1)CD8 T細胞の出現頻度の上昇、2)CD8 T細胞の活性化の増大、及び/または3)CD8 T細胞の増殖の増加のうちの1つ以上によって特徴付けられる。したがって、本願に従って、T細胞応答が増強されたか否かは、1)CD8 T細胞出現頻度の上昇、2)CD8 T細胞活性化の増大、及び/または3)CD8 T細胞の増殖の増加を示す1つ以上の分子の発現を測定することによって判断できる。CD8 T細胞の出現頻度、活性化及び増殖を測定するのに有用である例示的なマーカーにはそれぞれ、CD3、CD8、IFN-γ、TNF-α、IL-2、CD69及び/またはCD44、ならびにKi67が含まれる。抗原特異的T細胞の出現頻度は、ELIspotまたはMHCマルチマー(ペンタマー、もしくは本願によって示されているようデキストラマーなど)によって測定することができる。このような測定及びアッセイは、当該技術分野において、確立及び理解されている。
【0059】
一態様では、CD8 T細胞出現頻度の上昇は、IFN-γ及び/またはデキストラマー+CD8 T細胞が、治療前/ベースラインと比べて、少なくとも2倍増加することによって特徴付けられる。CD8 T細胞の活性化の増大は、CD69及び/またはCD44の発現が、治療前/ベースラインの発現と比べて、少なくとも2倍増大することとして特徴付けられる。CD8 T細胞の増殖の増加は、Ki67の発現が、治療前/ベースラインの発現と比べて、少なくとも2倍増加することとして特徴付けられる。
【0060】
代替的な態様では、T細胞応答の増強は、エフェクターサイトカインの発現の増加、及び/または細胞傷害性エフェクター機能の増加によって特徴付けられる。エフェクターサイトカインの発現の増加は、治療前/ベースラインと比べた場合の、IFN-γ、TNF-α及び/またはIL-2のうちの1つ以上の発現によって測定できる。細胞傷害性エフェクター機能の増加は、CD107a、グランザイムB及び/またはパーフォリンのうちの1つ以上の発現、及び/または標的細胞の抗原特異的な殺傷によって測定できる。
【0061】
本明細書に記載されているアッセイ、サイトカイン、マーカー及び分子、ならびにその測定は、当該技術分野において確立及び理解されており、既知の技法に従って行うことができる。加えて、T細胞応答を測定するためのアッセイは、T細胞応答を解析した実施例3、7、10及び15に見ることができる。
【0062】
本発明によって認識された、T細胞応答の増強は、NK細胞応答の増強と組み合わさると特に有益である。T細胞の増強により、がん患者において、初期の自然免疫応答を回避し、及び/または初期の自然免疫応答に耐えた腫瘍細胞が効果的に標的とされ、殺傷されるからである。さらに、抗体治療では、クラスI MHCによるTAAの提示を増強でき、その結果、TAA特異的T細胞による溶解に対するTAA発現腫瘍の感受性が高くなる(Kono et al.(2004)Clin.Cancer Res.10:2538-44)。
【0063】
追加の実施形態では、本発明の組み合わせ物は、少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストをさらに含む。好ましい実施形態では、その少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストは、CTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、LAG-3アンタゴニスト、TIM-3アンタゴニストまたはICOSアゴニストを含む。より好ましい実施形態では、その少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストは、CTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストを含む。
【0064】
さらなる実施形態では、その少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストは、免疫チェックポイント分子の機能をブロックできる抗体を含む。好ましい実施形態では、その抗体はそれぞれ、CTLA-4抗体、PD-1抗体、PD-L1抗体、LAG-3抗体、ICOS抗体及びTIM-3抗体から選択されている。より好ましい実施形態では、その少なくとも1つのアンタゴニストまたはアゴニストは、CTLA-4抗体、PD-1抗体またはPD-L1抗体を含む。
【0065】
さらに追加の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ物及び方法は、ヒトがん患者の治療に用いるものである。好ましい実施形態では、そのがん患者は、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌、尿路上皮、子宮頸部または結腸直腸癌からなる群から選択したがんに罹患しており、及び/またはそのがんと診断されている。さらに追加の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ物及び方法は、乳癌、結腸直腸癌またはメラノーマ、好ましくはメラノーマ、より好ましくは結腸直腸癌、最も好ましくは結腸直腸癌に罹患しており、及び/またはそのがんと診断されているヒトがん患者の治療に用いるものである。
【0066】
特定の例示的な腫瘍関連抗原
特定の実施形態では、免疫応答は、対象において、細胞関連ポリペプチド抗原に対して起きるものである。特定のこのような実施形態では、細胞関連ポリペプチド抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)である。
【0067】
「ポリペプチド」という用語は、2つ以上のアミノ酸が、ペプチド結合または改変ペプチド結合によって互いに連結したポリマーを指す。そのアミノ酸は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、または天然アミノ酸の化学的類似体であってよい。この用語は、タンパク質、すなわち、少なくとも1つのポリペプチドを含む機能性生体分子も指し、少なくとも2つのポリペプチドを含むときには、それらのポリペプチドは、複合体を形成するか、共有結合されているか、または非共有結合されていてよい。タンパク質におけるポリペプチド(複数可)は、糖化及び/または脂質化されていることができ、及び/または補欠分子族を含むことができる。
【0068】
好ましくは、そのTAAには、HER2、PSA、PAP、CEA、MUC-1、サバイビン、TRP1、TRP2もしくはBrachyuryが単独で含まれるか、またはこれらを組み合わせたものが含まれるが、これらに限らない。このような例示的な組み合わせとしては、CEA及びMUC-1(CV301としても知られる)を挙げてよい。他の例示的な組み合わせとしては、PAP及びPSAを挙げてよい。
【0069】
数多くのTAAが当該技術分野において知られている。例示的なTAAとしては、5αレダクターゼ、α-フェトプロテイン、AM-1、APC、April、BAGE、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、CA-125、CASP-8/FLICE、カテプシン、CD19、CD20、CD21、CD23、CD22、CD33、CD35、CD44、CD45、CD46、CD5、CD52、CD55、CD59、CDC27、CDK4、CEA、c-myc、Cox-2、DCC、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、FGF8b、FGF8a、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、GAGEファミリー、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、GD2/GD3/GM2、GnRH、GnTV、GP1、gp100/Pmel17、gp-100-in4、gp15、gp75/TRP1、hCG、ヘパラナーゼ、Her2/neu、HMTV、Hsp70、hTERT、IGFR1、IL-13R、iNOS、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、MAGEファミリー、マンマグロビン、MAP17、メラン-A/MART-1、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、PDGF、uPA、PRAME、プロバシン、プロジェニポエチン、PSA、PSM、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、TGF-α、TGF-β、サイモシン-β-15、TNF-α、TRP1、TRP2、チロシナーゼ、VEGF、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼが挙げられるが、これらに限らない。
【0070】
好ましいPSA抗原は、155位におけるイソロイシンのロイシンへのアミノ酸変化を含む。米国特許第7,247,615号(参照により、本明細書に援用される)を参照されたい。
【0071】
本発明の1つ以上の好ましい実施形態では、その異種TAAは、HER2及び/またはBrachyuryから選択されている。
【0072】
追加の各種実施形態では、そのTAAには、HER2v1及びHER2v2から選択した変異または改変HER2という抗原が含まれてもよい。HER2v1は配列番号1を含み、HER2v2は配列番号3を含む。抗原HER2v1は、配列番号2を含む核酸によってコードしてよく、抗原HER2v2は、配列番号4を含む核酸によってコードしてよい。
【0073】
好ましい実施形態では、抗原HER2は、配列番号1または3との同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であるアミノ酸配列を含む。最も好ましい実施形態では、抗原HER2は、配列番号1または3を含む。
【0074】
追加の実施形態では、そのTAAは、抗原Brachyuryを含んでよい。好ましい実施形態では、その抗原Brachyuryは、配列番号5、7、9または11との同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であるアミノ酸配列を含む。さらに追加の実施形態では、その抗原Brachyuryは、配列番号5、7、9及び11から選択されており、配列番号5は、配列番号6を含む核酸によって、配列番号7は、配列番号8を含む核酸によって、配列番号9は、配列番号10を含む核酸によって、配列番号11は、配列番号12を含む核酸によってコードし得る。
【0075】
改変腫瘍関連抗原
特定の実施形態では、細胞関連ポリペプチド抗原は、ポリペプチド抗原に由来するエピトープが、APCの表面上のクラスI MHC分子と会合した状態で提示されると、そのエピトープをその表面上に提示する細胞に対して、CTL応答が誘導されるように改変されている。特定のこのような実施形態では、少なくとも1つの第1の外来THエピトープは、提示されるときには、APCの表面上のクラスII MHC分子と会合している。特定のこのような実施形態では、細胞関連抗原は、腫瘍関連抗原である。
【0076】
エピトープを提示できる例示的なAPCとしては、樹状細胞及びマクロファージが挙げられる。追加の例示的なAPCとしては、1)クラスI MHC分子に結合したCTLエピトープ、及び2)クラスII MHC分子に結合したTHエピトープを同時に提示できるいずれかの飲作用APCまたは食作用APCが挙げられる。
【0077】
特定の実施形態では、CEA、MUC-1、PAP、PSA、HER2、サバイビン、TRP1、TRP2またはBrachyuryなど(これらに限らない)のTAAのうちの1つ以上に対する改変は、本明細書に記載されているTAAのうちのその1つ以上と主に反応するポリクローナル抗体が、対象への投与後に誘発されるように行われている。このような抗体は、腫瘍細胞を攻撃及び排除することができるとともに、転移性細胞が発現して転移に至るのを防ぐことができる。この抗腫瘍作用のエフェクター機構は、補体依存性及び抗体依存性の細胞傷害によって媒介されることになる。加えて、誘導された抗体は、成長因子依存性のオリゴ二量化と、受容体のインターナリゼーションの阻害を通じて、がん細胞の成長を阻害することもできる。特定の実施形態では、このような改変TAAは、腫瘍細胞によって提示される既知のTAAエピトープ及び/または推定TAAエピトープに対するCTL応答を誘導できる。
【0078】
特定の実施形態では、改変TAAポリペプチド抗原は、その細胞関連ポリペプチド抗原のCTLエピトープと、バリエーションを含み、そのバリエーションは、CTLエピトープまたは外来のTHエピトープを少なくとも1つ含む。特定のこのような改変TAAは、1つの非限定的な例では、CTLエピトープを少なくとも1つ含む1つ以上のポリペプチド抗原HER2と、外来のTHエピトープのCTLエピトープを少なくとも1つ含むバリエーションを含むことができ、このTAAの作製方法は、米国特許第7,005,498号、ならびに米国特許出願公開第2004/0141958号及び同第2006/0008465号に記載されている。
【0079】
特定のこのような改変TAAは、1つの非限定的な例では、CTLエピトープを少なくとも1つ含む1つ以上のポリペプチド抗原MUC-1と、外来のエピトープのCTLエピトープを少なくとも1つ含むバリエーションを含むことができ、このTAAの作製方法は、米国特許出願公開第2014/0363495号に記載されている。
【0080】
追加のプロミスキャスなT細胞エピトープは、様々なHLA-DRによってコードされる大部分のHLA-DR分子と結合できるペプチドを含む。例えば、WO98/23635(Frazer IHら。The University of Queenslandに譲渡)、Southwood et al.(1998)J.Immunol.160:3363 3373、Sinigaglia et al.(1988)Nature 336:778 780、Rammensee et al.(1995)Immunogenetics 41:178-228、Chicz et al.(1993)J.Exp.Med.178:27-47、Hammer et al.(1993)Cell 74:197-203及びFalk et al.(1994)Immunogenetics 39:230-242を参照されたい。この最後の参照文献では、HLA-DQリガンド及びHLA-DPリガンドについても論じられている。これらの参照文献に列挙されているすべてのエピトープは、本明細書に記載されているような天然エピトープの候補として関連がある。これらのエピトープ候補と共通のモチーフを共有するエピトープであるからである。
【0081】
特定の他の実施形態では、そのプロミスキャスなT細胞エピトープは、ハプロタイプの大部分と結合できる人工のT細胞エピトープである。特定のこのような実施形態では、人工のT細胞エピトープは、WO95/07707及び対応する論文Alexander et al.(1994)Immunity 1:751 761に記載されているようなpan DRエピトープペプチド(「PADRE」)である。
【0082】
CD40L
本開示によって示されているように、CD40Lを組み合わせ物及び関連方法の一部として含めることにより、腫瘍体積の縮小がさらに増大し、無増悪生存期間が長くなり、本発明によって実現する生存率が上昇する。したがって、様々な実施形態では、本発明の併用治療は、CD40Lをがん患者に投与することをさらに含む。好ましい実施形態では、そのCD40Lは、本明細書に記載されているような組み換えMVAの一部としてコードされる。
【0083】
CD40は、B細胞、マクロファージ及び樹状細胞を含む多くの種類の細胞上に構成的に発現するが、そのリガンドCD40Lは、主に活性化ヘルパーT細胞上に発現する。感染または免疫後の早い段階における、樹状細胞とヘルパーT細胞との同族相互作用により、樹状細胞に、CTL応答をプライミングすることが「許諾」される。樹状細胞への許諾により、共刺激分子がアップレギュレートされ、生存率が上昇し、クロスプレゼンテーション能が向上する。このプロセスは主に、CD40/CD40L相互作用によって媒介される。しかしながら、CD40Lでは、多様な刺激を誘導する、膜結合型の構成から、可溶性(単量体または三量体)の構成まで、様々な構成が説明されており、APCの活性化、増殖及び分化を誘導または抑制する。
【0084】
1つ以上の好ましい実施形態では、CD40Lは、本発明のMVAによってコードされる。1つ以上の他の好ましい実施形態では、CD40Lは、ヒトCD40Lである。さらに好ましい実施形態では、そのCD40Lは、配列番号13との同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸を含む。さらに好ましい実施形態では、そのCD40Lは、配列番号13をコードする核酸を含む。最も好ましい実施形態では、そのCD40Lは、配列番号13を含む。追加の実施形態では、そのCD40Lは、配列番号14との同一性が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である核酸によってコードされる。最も好ましい実施形態では、その核酸は、配列番号14を含む。
【0085】
免疫チェックポイント分子アンタゴニスト
本明細書に記載されているように、少なくとも一態様では、本発明は、免疫チェックポイントアンタゴニストを使用することを含む。このような免疫チェックポイントアンタゴニストは、免疫チェックポイント分子の機能に干渉し、及び/またはその機能をブロックするように機能する。いくつかの好ましい免疫チェックポイントアンタゴニストとしては、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム死リガンド1(PD-L1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、ならびにT細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン3(TIM-3)が挙げられる。
【0086】
加えて、例示的な免疫チェックポイントアンタゴニストとしては、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM-3、Igドメイン及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、ならびにT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)を挙げることができるが、これらに限らない。
【0087】
このような免疫チェックポイント分子アンタゴニストとしては、免疫チェックポイント分子に特異的に結合して、その免疫チェックポイント分子の生物学的な活性及び機能を阻害及び/またはブロックする抗体を挙げることができる。
【0088】
他の免疫チェックポイント分子アンタゴニストとしては、免疫チェックポイント分子の発現に干渉するアンチセンス核酸RNA、及び免疫チェックポイント分子の発現に干渉する低分子干渉RNAを挙げることができる。
【0089】
加えて、アンタゴニストは、免疫チェックポイントの機能を阻害またはブロックする低分子の形態であることができる。これらの低分子のいくつかの非限定的な例としては、NP12(Aurigene)、Tsinghua Univによる(D)PPA-1、高親和性PD-1(Stanford)、BMS-202及びBMS-8(Bristol Myers Squibb(BMS))、CA170/CA327(Curis/Aurigene)、ならびにCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3及びTIM-3の低分子阻害剤が挙げられる。
【0090】
加えて、アンタゴニストは、免疫チェックポイント分子の機能を阻害またはブロックするAnticalin(登録商標)の形態であることができる。例えば、Rothe et al.(2018)BioDrugs 32:233-243を参照されたい。
【0091】
加えて、アンタゴニストは、Affimer(登録商標)の形態であることができることが想定されている。Affimerは、免疫チェックポイント分子の機能を阻害またはブロックするFc融合タンパク質である。免疫チェックポイントアンタゴニストとして機能できる他の融合タンパク質は、免疫チェックポイント融合タンパク質(例えば抗PD-1タンパク質AMP-224)、及びUS2017/0189476に記載されているような抗PD-L1タンパク質である。
【0092】
免疫チェックポイント分子アンタゴニスト候補は、当該技術分野において知られている様々な技法及び/または本願で開示されている様々な技法によって、インビトロまたはマウスモデルで、機能(免疫チェックポイント分子の機能に干渉する能力など)に関してスクリーニングできる。
【0093】
ICOSアゴニスト
本発明は、ICOSアゴニストをさらに含む。ICOSアゴニストは、ICOSを活性化する。ICOSは、活性化T細胞上に発現する正の共刺激分子であり、そのリガンドに結合すると、活性化T細胞の増殖を促す(Dong(2001)Nature 409:97-101)。
【0094】
一実施形態では、そのアゴニストは、ICOSの天然のリガンドであるICOS-Lである。そのアゴニストは、結合特性及び活性化特性を保持する変異形態のICOS-Lであることができる。変異形態のICOS-Lは、インビトロで、ICOSを刺激する活性についてスクリーニングできる。
【0095】
抗体
一実施形態では、免疫チェックポイント分子アンタゴニスト及び/または免疫チェックポイント分子アゴニストはそれぞれ、抗体を含む。抗体は、合成のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることができ、当該技術分野において周知の技法によって作製できる。このような抗体は、その抗体の抗原結合部位を介して、その免疫チェックポイント分子に、(非特異的結合とは対照的に)特異的に結合する。免疫原と免疫反応する抗体を作製する際には、免疫チェックポイントのペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質などをその免疫原として用いることができる。より具体的には、そのポリペプチド、断片、バリアント、融合タンパク質などは、抗体の形成を誘発する抗原決定基、すなわちエピトープを含む。
【0096】
好ましい実施形態では、本発明の抗体は、ヒトがん患者の治療用として、主権国家の政府から認可されている抗体、または認可プロセスにある抗体である。すでに認可済みであるか、または認可プロセスにあるこれらの抗体のいくつかの非限定的な例としては、CTLA-4(イピリムマブ(登録商標)及びトレメリムマブ)、PD-1(ペムブロリズマブ、ランブロリズマブ、アンプリミューン-224(AMP-224)、アンプリミューン-514(AMP-514)、ニボルマブ、MK-3475(Merck)、BI754091(Boehringer Ingelheim))、PD-L1(アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MPDL3280A(Roche)、MED14736(AZN)、MSB0010718C(Merck))、LAG-3(IMP321、BMS-986016、BI754111(Boehringer Ingelheim)、LAG525(Novartis)、MK-4289(Merck)、TSR-033(Tesaro))が挙げられる。
【0097】
これらの抗原決定基、すなわちエピトープは、線状エピトープまたは立体構造(不連続)エピトープのいずれであることもできる。線状エピトープは、ポリペプチドのうちの単一のアミノ酸セクションで構成され、立体構造エピトープ、すなわち不連続エピトープは、ポリペプチド鎖の異なる領域に由来する複数のアミノ酸セクションであって、タンパク質フォールディングにより、近接するようになるアミノ酸セクションで構成される(Janeway,Jr.and Travers,ImmunoBiology 3:9(Garland Publishing Inc.,2nd ed.1996))。折り畳まれたタンパク質は、複雑な表面を有するので、利用可能なエピトープの数は非常に多い。しかしながら、タンパク質の立体構造及び立体障害性により、それらのエピトープに実際に結合する抗体の数は、利用可能なエピトープの数よりも少ない(Janeway,Jr.and Travers,ImmunoBiology 2:14(Garland Publishing Inc.,2nd ed.1996))。エピトープは、当該技術分野において知られている方法のいずれかによって特定できる。
【0098】
CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3もしくはICOSのような免疫チェックポイント分子に特異的に結合し、その機能をブロックする抗体(「アンタゴニスト抗体」)またはその機能を増強/活性化する抗体(「アゴニスト抗体」)が、scFV断片を含め、本発明に含まれる。このような抗体は、従来の手段によって作製できる。
【0099】
一実施形態では、本発明には、免疫チェックポイント分子に対するモノクローナル抗体であって、その免疫チェックポイント分子の機能をブロックする抗体(「アンタゴニスト抗体」)、またはその機能を増強/活性化する抗体(「アゴニスト抗体」)が含まれる。PD-1に対する例示的なブロッキングモノクローナル抗体は、WO2011/041613に記載されており、この特許は、参照により、本明細書に援用される。
【0100】
抗体は、その標的に、高いアビディティかつ高い特異性で結合できる。それらの抗体は、その抗体結合部位が、2つのタンパク質(例えば、PD-1とその標的リガンド)間の相互作用部位に近接すると、それらのタンパク質間の相互作用を立体的に阻害できる比較的大きい分子(約150kDa)である。本発明にはさらに、免疫チェックポイント分子リガンド結合部位のすぐ近くにあるエピトープに結合する抗体が含まれる。
【0101】
様々な実施形態では、本発明には、分子間相互作用(例えばタンパク質間相互作用)に干渉する抗体、及び分子内相互作用(例えば、分子内の立体構造の変化)を妨げる抗体が含まれる。抗体は、免疫チェックポイント分子の生物学的な活性をブロックするか、または増強/活性化する能力についてスクリーニングできる。
【0102】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれも、従来の技法によって調製できる。
【0103】
例示的な一態様では、免疫チェックポイント分子CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOS、ならびにCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアミノ酸配列ベースのペプチドを用いて、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3またはICOSに特異的に結合する抗体を調製できる。「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、その断片(F(ab’)2断片及びFab断片、一本鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体断片(VHHまたはナノボディ)、二価抗体断片(ダイアボディ)など)、ならびに組み換え及び合成によって作製したいずれかの結合パートナーが含まれるように意図されている。
【0104】
別の例示的な態様では、抗体は、免疫チェックポイント分子に、Kd約107M-1以上で結合する場合には、免疫チェックポイント分子に特異的に結合するものと定義する。結合パートナーまたは抗体の親和性は、従来の技法、例えばScatchardらが説明した技法((1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660)を用いて、容易に求めることができる。
【0105】
ポリクローナル抗体は、様々な供給源、例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウスまたはラットから、当該技術分野において周知である手順を用いて、容易に作製できる。概して、精製したCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOS、またはCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのアミノ酸配列ベースのペプチドであって、適切にコンジューゲートされているペプチドを宿主動物に、典型的には非経口注射によって投与する。CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSの免疫原性は、アジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバントを用いることを通じて増強できる。ブースター免疫後、少量の血清試料を採取し、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3及びICOSのポリペプチドに対する反応性について試験する。このような測定に有用である各種アッセイの例としては、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988に記載されているアッセイ、ならびに、向流免疫電気泳動(CIEP)、ラジオイムノアッセイ、放射性免疫沈降法、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ドットプロットアッセイ及びサンドイッチアッセイのような手順が挙げられる。米国特許第4,376,110号及び同第4,486,530号を参照されたい。
【0106】
モノクローナル抗体は、周知の手順を用いて、容易に調製できる。例えば、米国特許再発行特許第32,011号、米国特許第4,902,614号、同第4,543,439号、同第4,411,993号、Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,Kennett,McKeam,and Bechtol(eds.),1980に記載されている手順を参照されたい。
【0107】
例えば、マウスのような宿主動物に、単離及び精製した免疫チェックポイント分子を、任意にアジュバントの存在下で、少なくとも1回、好ましくは、約3週間の間隔で少なくとも2回、腹腔内注射できる。続いて、従来のドットプロット法または抗体捕捉(ABC)によって、マウス血清をアッセイして、融合するにはどのマウスが最良かを判断する。約2~3週間後、そのマウスに、免疫チェックポイント分子の静脈内ブーストを行う。その後、マウスを殺処分し、確立されたプロトコールに従って、脾臓細胞を市販のミエローマ細胞(Ag8.653(ATCC)など)と融合する。簡潔に述べると、ミエローマ細胞を培地中で数回洗浄し、1つのミエローマ細胞に対して約3個の脾臓細胞という比率で、マウス脾臓細胞に融合する。融合剤は、当該技術分野において用いられているいずれかの好適な融合剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)であることができる。融合細胞を選択的に成長させる培地を含むプレートに、融合細胞を播種する。続いて、融合細胞を約8日間成長させることができる。得られたハイブリドーマの上清を回収し、最初にヤギ抗マウスIgでコーティングしたプレートに加える。洗浄後、標識免疫チェックポイント分子ポリペプチドのような標識を各ウェルに加えてから、インキュベートする。その後、陽性のウェルを検出することができる。陽性のクローンをバルク培養で成長させることができ、その後、上清をプロテインAカラム(Pharmacia)で精製する。
【0108】
本発明のモノクローナル抗体は、Alting-Mees et al.(1990)Strategies in Molecular Biology 3:1-9,“Monoclonal Antibody Expression Libraries:A Rapid Alternative to Hybridomas”に記載されているような代替的な技法を用いて作製でき、この文献は、参照により、本明細書に援用される。同様に、結合パートナーは、特異的結合抗体をコードする遺伝子の可変領域を導入するための組み換えDNA技法を用いて構築できる。このような技法は、Larrick et al.((1989)Biotechnology 7:394)に記載されている。
【0109】
従来の技法によって作製できる、このような抗体の抗原結合断片も、本発明に含まれる。このような断片の例としては、Fab断片及びF(ab’)2断片が挙げられるが、これらに限らない。遺伝子操作技法によって作製される抗体断片及び誘導体も提供する。
【0110】
本発明のモノクローナル抗体には、キメラ抗体、例えば、ヒト化型のマウスモノクローナル抗体が含まれる。このようなヒト化抗体は、既知の技法によって調製でき、その抗体をヒトに投与したときに、免疫原性が低下するという利点をもたらすことができる。一実施形態では、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス抗体の可変領域(またはその抗原結合部位のみ)と、ヒト抗体に由来する定常領域を含む。あるいは、ヒト化抗体断片は、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位と、ヒト抗体に由来する可変領域断片(抗原結合部位が欠損している)を含むことができる。キメラ抗体、及びさらに操作されたモノクローナル抗体の作製手順としては、Riechmann et al.(1988)Nature 332:323、Liu et al.(1987)Proc.Nat’l.Acad.Sci.84:3439、Larrick et al.(1989)Bio/Technology 7:934及びWinter and Harris(1993)TIPS 14:139に記載されている手順が挙げられる。抗体をトランスジェニックに作製する手順は、GB2,272,440、ならびに米国特許第5,569,825号及び同第5,545,806号に見ることができ、これらの各特許は、参照により、本明細書に援用される。
【0111】
遺伝子操作法によって作製した抗体(ヒト部分及び非ヒト部分の両方を含むキメラモノクローナル抗体及びヒト化モノクローナル抗体など)であって、標準的な組み換えDNA技法を用いて作製できる抗体を使用できる。このようなキメラモノクローナル抗体及びヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野において知られている標準的なDNA技法を用いる遺伝子操作によって、例えば、Robinsonらの国際公開第87/02671号、Akiraらの欧州特許出願公開第0184187号、Taniguchiの欧州特許出願公開第0171496号、Morrisonらの欧州特許出願公開第0173494号、Neubergerらの国際公開第86/01533号、Cabillyらの米国特許第4,816,567号、Cabillyらの欧州特許出願公開第0125023号、Better et al.(1988)Science 240:1041-1043、Liu et al.(1987)Proc.Nat’l.Acad.Sci.84:3439-3443、Liu et al.(1987)J.Immunol.139:3521-3526、Sun et al.(1987)Proc.Nat’l.Acad.Sci.84:214-218、Nishimura et al.(1987)Cancer Res.47:999-1005、Wood et al.(1985)Nature 314:446-449、Shaw et al.(1988)J.Nat’l.Cancer Inst.80:1553-1559、Morrison(1985)Science 229:1202-1207、Oi et al.(1986)BioTechniques 4:214、Winterの米国特許第5,225,539号、Jones et al.(1986)Nature 321:552-525、Verhoeyan et al.(1988)Science 239:1534及びBeidler et al.(1988)J.Immunol.141:4053-4060に記載されている方法を用いて作製できる。
【0112】
合成及び半合成の抗体に関しては、そのような用語は、抗体断片、アイソタイプスイッチ抗体、ヒト化抗体(例えば、マウス-ヒト抗体、ヒト-マウス抗体)、ハイブリッド、複数の特異性を有する抗体、及び完全合成の抗体様分子(ただし、これらに限らない)を網羅するように意図されている。
【0113】
治療用途では、患者の、抗体に対する免疫応答を最小限にするために、ヒトの定常領域及び可変領域を有する「ヒト」モノクローナル抗体が好ましい場合が多い。このような抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含むトランスジェニック動物を免疫することよって作製できる。Jakobovits et al.(1995)Ann.NY Acad.Sci.764:525-535を参照されたい。
【0114】
免疫チェックポイント分子に対するヒトモノクローナル抗体は、対象のリンパ球に由来するmRNAから調製した、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のcDNAを用いて、FabファージディスプレイライブラリーまたはscFvファージディスプレイライブラリーのようなコンビナトリアルな免疫グロブリンライブラリーを構築することによって調製することもできる。例えば、McCaffertyらの国際公開第WO92/01047号、Marks et al.(1991)J.Mol.Biol.222:581-597及びGriffths et al.(1993)EMBO J.12:725-734を参照されたい。加えて、抗体可変領域のコンビナトリアルなライブラリーは、既知のヒト抗体を変異させることによって作製できる。例えば、ランダムに改変された変異誘発済みオリゴヌクレオチドを例えば用いることによって、免疫チェックポイント分子と結合することが知られているヒト抗体の可変領域を変異させて、変異可変領域のライブラリーを作製することができ、続いて、その免疫チェックポイント分子に結合するように、そのライブラリーをスクリーニングできる。免疫グロブリンの重鎖及び/または軽鎖のCDR領域内でランダム変異誘発を誘導する方法、ランダム化した重鎖及び軽鎖を掛け合わせて、対を形成する方法、ならびにスクリーニング方法は、例えば、Barbasらの国際公開第96/07754号、Barbas et al.(1992)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4457-4461に見ることができる。
【0115】
免疫グロブリンライブラリーは、ディスプレイパッケージの集団、好ましくは、繊維状ファージに由来するディスプレイパッケージの集団によって発現させて、抗体ディスプレイライブラリーを形成することができる。抗体ディスプレイライブラリーを作製する際に用いるのに特に適する方法及び試薬の例は、例えば、Ladnerらの米国特許第5,223,409号、Kangらの国際公開第92/18619号、Dowerらの国際公開第91/17271号、Winterらの国際公開第92/20791号、Marklandらの国際公開第92/15679号、Breitlingらの国際公開第93/01288号、McCaffertyらの国際公開第92/01047号、Garrardらの国際公開第92/09690号、Ladnerらの国際公開第90/02809号、Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370 1372、Hay et al.(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81-85、Huse et al.(1989)Science 246:1275-1281、Griffiths et al.(1993)supra、Hawkins et al.(1992)J.Mol.Biol.226:889-896、Clackson et al.1991)Nature 352:624-628、Gram et al.(1992)Proc.Nat’l.Acad.Sci.89:3576-3580、Garrad et al.(1991)Bio/Technology 9:1373-1377、Hoogenboom et al.(1991)Nucl.Acid Res.19:4133-4137及びBarbas et al.(1991)Proc.Nat’l.Acad.Sci.88:7978-7982に見ることができる。ディスプレイパッケージ(例えば繊維状ファージ)の表面に提示させたら、その抗体ライブラリーをスクリーニングして、免疫チェックポイント分子と結合する抗体を発現するパッケージを特定及び単離する。
【0116】
組み換えMVA
本発明のより好ましい実施形態では、本発明で開示されている1つ以上のタンパク質及びヌクレオチドは、組み換えMVAに含まれている。本開示によって説明及び例示されているように、様々な態様において、本開示の組み換えMVAの静脈内投与により、がん患者における免疫応答の増強が誘導される。したがって、1つ以上の好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載されているTAAのうちの1つ以上をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAを含む。
【0117】
本発明を実施する際に有用であるとともに、ブダペスト条約の規定下で寄託されているMVAウイルス株の例は、European Collection of Animal Cell Cultures(ECACC),Vaccine Research and Production Laboratory,Public Health Laboratory Service,Centre for Applied Microbiology and Research(Porton Down,Salisbury,Wiltshire SP4 0JG,United Kingdom)に、寄託番号ECACC94012707で、1994年1月27日に寄託されたMVA572株、及びECACC00120707で、2000年12月7日に寄託されたMVA575株であり、2000年8月30日に、European Collection of Cell Cultures(ECACC)に、V00083008という番号で寄託されたMVA-BN株及びその誘導体が、追加の例示的な株である。
【0118】
MVA-BNの「誘導体」とは、本明細書に記載されているようなMVA-BNと本質的に同じ複製特性を示すが、そのゲノムの部分の1つ以上が異なるウイルスを指す。MVA-BN及びその誘導体は、複製能力がなく、複製能力がないとは、インビボ及びインビトロで、増殖的に複製できないことを意味する。より具体的には、インビトロのMVA-BNまたはその誘導体は、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)で増殖的に複製できるが、ヒトケラチノサイト細胞株HaCat(Boukamp et al.(1988)J.Cell Biol.106:761-771)、ヒト骨肉腫細胞株143B(ECACC受託番号91112502)、ヒト胎児腎細胞株293(ECACC受託番号85120602)及びヒト子宮頸癌細胞株HeLa(ATCC受託番号CCL-2)では増殖的に複製できないものとして説明されている。加えて、MVA-BNまたはその誘導体は、Hela細胞及びHaCaT細胞株において、ウイルス増幅倍率が、MVA-575の少なくとも2分の1、より好ましくは3分の1である。MVA-BN及びその誘導体のこれらの特性に関する試験及びアッセイは、WO02/42480(米国特許出願公開第2003/0206926号)及びWO03/048184(米国特許出願公開第2006/0159699号)に記載されている。
【0119】
上の段落に記載されているように、インビトロで、ヒト細胞株において「増殖的に複製できない」または「増殖的複製能がない」という用語は、例えば、WO02/42480で説明されており、この特許には、上述のような所望の特性を有するMVAを得る方法も教示されている。この用語は、WO02/42480または米国特許第6,761,893号に記載されているアッセイを使用して、感染後4日でインビトロでウイルス増幅率が1未満であるウイルスに当てはまる。
【0120】
「生殖複製の失敗」という用語は、感染後4日で1未満という、前段落に記載されているような、インビトロでのヒト細胞株におけるウイルス増幅率を有するウイルスを指す。WO02/42480または米国特許第6,761,893号に記載されているアッセイは、ウイルス増幅率の決定に適用可能である。
【0121】
前の段落で説明したように、インビトロでのヒト細胞株におけるウイルスの増幅または複製は、通常、「増幅率」と呼ばれる、感染細胞から産生されたウイルス(出力)と、最初の位置で細胞に感染するために最初に使用された量(入力)との比率として表される。増幅率「1」は、感染細胞から産生されるウイルスの量が、細胞に感染するために最初に使用された量と同じである増幅状態を定義し、すなわち、感染細胞とはウイルスの感染及び再生を許容するということである。これに対して、増幅倍率が1未満であること、すなわち、侵入量よりも産生量が少ないことにより、増殖的に複製されていないこと、すなわち、ウイルスの減弱が示される。
【0122】
発現カセット/制御配列
様々な態様では、本明細書に記載されている1つ以上の核酸は、1つ以上の発現カセット内に組み込まれており、このカセットでは、その1つ以上の核酸が、発現制御配列に機能的に連結されている。「機能的に連結された」とは、記載されている構成要素が、意図した形式で機能可能になる関係にあること、例えば、プロモーターに、核酸を転写させて発現させるような関係にあることを意味する。コード配列に機能的に連結された発現制御配列は、そのコード配列の発現が、その発現制御配列と適合する条件下で行われるように連結されている。発現制御配列としては、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質をコードするオープンリーディングフレームの初めにある開始コドン、イントロンのスプライシングシグナル、及びフレーム内終止コドンが挙げられるが、これらに限らない。好適なプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、RSVプロモーター、レトロウイルスLTR、アデノウイルス主要後期プロモーター、ヒトCMV前初期Iプロモーター、ならびに各種ポックスウイルスプロモーター(30Kプロモーター、I3プロモーター、PrSプロモーター、PrS5Eプロモーター、Pr7.5K、PrHybプロモーター、Pr13.5ロングプロモーター、40Kプロモーター、MVA-40Kプロモーター、FPV 40Kプロモーター、30kプロモーター、PrSynIImプロモーター、PrLE1プロモーター及びPR1238プロモーターといったワクシニアウイルスまたはMVA由来のプロモーター及びFPV由来のプロモーターが挙げられるが、これらに限らない)が挙げられるが、これらに限らない。追加のプロモーターは、WO2010/060632、WO2010/102822、WO2013/189611、WO2014/063832及びWO2017/021776にさらに記載されており、これらの特許は、参照により、本明細書に全体が援用される。
【0123】
追加の発現制御配列としては、リーダー配列、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、ならびに所望の宿主系において、所望の組み換えタンパク質(例えば、HER2、Brachyury及び/またはCD40L)をコードする核酸配列の適切な転写及びその後に行われる翻訳に必要ないずれかの他の配列が挙げられるが、これらに限らない。本発明のポックスウイルスベクターは、所望の宿主系において、核酸配列を含む発現ベクターの移入及びその後に行われる複製に必要な追加のエレメントも含んでよい。当業者はさらに、このようなベクターが、従来の方法(Ausubel et al.(1987)in“Current Protocols in Molecular Biology,”John Wiley and Sons,New York,N.Y.)を用いて容易に構築されるとともに、市販されていることを理解するであろう。
【0124】
本発明の
組み合わせ物の投与方法及び投与レジメン
1つ以上の態様では、本発明の
組み合わせ物は、同種及び/または異種でのプライム-ブーストレジメンの一部として投与できる。
図10~12に示されているように、同種及び/または異種でのプライムブーストレジメンは、NK細胞応答の増強を延長及び再活性化するとともに、対象の特異的なCD8 T細胞応答及びCD4 T細胞応答を増大させる。したがって、1つ以上の実施形態では、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させるための
組み合わせ物及び/または方法であって、そのがん患者に、本開示の
組み合わせ物を投与することを含み、その
組み合わせ物を同種または異種でのプライム-ブーストレジメンの一部として投与する
組み合わせ物及び/または方法が存在する。
【0125】
導入遺伝子を含む組み換えMVAウイルスの作製
本発明で提供する組み換えMVAウイルスは、当該技術分野において知られている常法によって作製できる。組み換えポックスウイルスを得るか、または外来のコード配列をポックスウイルスゲノムに挿入するための方法は、当業者に周知である。例えば、DNAのクローニング、DNAの単離、RNAの単離、ウエスタンブロット解析、RT-PCR及びPCR増幅技法のような標準的な分子生物学的技法の方法は、“Molecular Cloning,A Laboratory Manual”(2nd Ed.)(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))に記載されており、ウイルスの取扱い及び操作の技法は、“Virology Methods Manual”(Mahy et al.(eds.),Academic Press(1996))に記載されている。同様に、MVAの取扱い、操作及び遺伝子組み換えの技法及びノウハウは、“Molecular Virology:A Practical Approach”(Davison & Elliott(eds.),The Practical Approach Series,IRL Press at Oxford University Press,Oxford,UK(1993)、例えば、Chapter 9:Expression of genes by Vaccinia virus vectorsを参照されたい)及び“Current Protocols in Molecular Biology”(John Wiley & Son,Inc.(1998)、例えば、Chapter 16,Section IV:“Expression of proteins in mammalian cells using vaccinia viral vector”を参照されたい)に記載されている。
【0126】
本発明で開示されている様々な組み換えMVAウイルスの作製には、様々な方法を適用可能である場合がある。ウイルスに挿入されるDNA配列は、ポックスウイルスのDNAのセクションに相同なDNAが挿入されているE.coliプラスミド構築物に配置されてもよい。これとは別に、挿入するDNA配列は、プロモーターにライゲーションできる。このプロモーター-遺伝子連結体をプラスミドコンストラクト内に配置して、そのプロモーター-遺伝子連結体の両端が、非必須の座位を含むポックスウイルスDNA領域に隣接するDNA配列と相同なDNAと隣接するようにできる。得られたプラスミドコンストラクトは、E.coli菌内で増殖させることによって増幅して、単離することができる。挿入したDNA遺伝子配列を含む単離プラスミドは、例えばニワトリ胚線維芽細胞(CEF)の細胞培養物にMVAウイルスを感染させるのと同時、その細胞培養物にトランスフェクションできる。それぞれ、そのプラスミド内の相同なMVAウイルスDNAと、そのウイルスゲノムとの間の組み換えによって、外来DNA配列の存在により改変されるポックスウイルスを作製できる。
【0127】
好ましい実施形態によれば、細胞の好適な細胞培養物、例えばCEF細胞にMVAウイルスを感染させることができる。続いて、感染した細胞に、本開示で提供される1つ以上の核酸などの外来または異種の遺伝子(複数可)を含む第1のプラスミドベクターをトランスフェクトしてもよい(好ましくは、ポックスウイルス発現制御エレメントの転写制御下で)。上で説明したように、そのプラスミドベクターは、そのMVAウイルスゲノムの所定部分への外来配列の挿入を誘導できる配列も含む。任意に、そのプラスミドベクターは、ポックスウイルスプロモーターに機能的に連結されたマーカー遺伝子及び/または選択遺伝子を含むカセットも含む。好適なマーカー遺伝子または選択遺伝子は、例えば、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、ネオマイシン-ホスホリボシルトランスフェラーゼまたはその他のマーカーをコードする遺伝子である。選択カセットまたはマーカーカセットの使用により、作製した組み換えポックスウイルスの特定及び単離が簡略になる。ただし、組み換えポックスウイルスは、PCR技術によっても識別され得る。その後、上記のようにして得た組み換えポックスウイルスを、さらなる細胞に感染させて、その細胞に、第2の外来遺伝子または異種の遺伝子を1つまたは複数含む第2のベクターをトランスフェクションすることができる。念のため、この遺伝子は、そのポックスウイルスゲノムの異なる挿入部位に導入するべきであり、その第2のベクターにおいても、そのポックスウイルスと相同な配列であって、そのポックスウイルスのゲノムへの1つまたは複数の第2の外来遺伝子の組み込みを誘導する配列が異なる。相同組み換えが行われた後、外来遺伝子または異種遺伝子を2つ以上含む組み換えウイルスを単離できる。追加の外来遺伝子をその組み換えウイルスに導入するには、前の感染工程で単離した組み換えウイルスを用いることによって、かつトランスフェクション用のさらなる外来遺伝子を1つまたは複数含むさらなるベクターを用いることによって、感染及びトランスフェクションの工程を繰り返すことができる。
【0128】
あるいは、上記のような、感染及びトランスフェクションの工程は、置き換えることが可能であり、すなわち、まず、外来遺伝子を含むプラスミドベクターによって、好適な細胞にトランスフェクションしてから、その細胞にポックスウイルスを感染させることができる。さらなる代替策として、各外来遺伝子を異なるウイルスに導入し、得られたすべての組み換えウイルスを細胞に共感染させ、すべての外来遺伝子を含む組み換え体についてスクリーニングすることも可能である。第3の代替策は、DNAゲノムと外来配列をインビトロでライゲーションし、ヘルパーウイルスを用いて、組み換えワクシニアウイルスDNAゲノムを再構築することである。第4の代替策は、E.coliまたは別の細菌種において、細菌人工染色体(BAC)としてクローニングしたMVAウイルスゲノムと、そのMVAウイルスゲノム内の所望の組み込み部位に隣接する配列と相同なDNA配列に挟まれた線状外来配列との間で相同組み換えを起こすことである。
【0129】
本開示の核酸の1つ以上は、MVAウイルスまたはMVAウイルスベクターの好適ないずれかの部分に挿入し得る。そのMVAウイルスの好適な部分は、MVAゲノムの非必須部分である。そのMVAゲノムの非必須部分は、そのMVAゲノムの遺伝子間領域または既知の欠失部位1~6であってよい。この代わりに、またはこれに加えて、その組み換えMVAの非必須部分は、MVAゲノムのコード領域のうち、ウイルスの成長には必須ではないコード領域であることができる。しかしながら、その挿入部位は、MVAゲノム内のこれらの好ましい挿入部位に限定されない。ニワトリ胚線維芽細胞(CEF細胞)のような少なくとも1つの細胞培養系において増幅及び増殖できる組み換え体を得ることが可能な限りは、そのウイルスゲノムのいずれの位置にも、本発明の核酸(例えば、HER2、Brachyury及びCD40L)、ならびに本明細書に記載されているようないずれかの付随のプロモーターを挿入し得ることは、本発明の範囲内であるからである。
【0130】
好ましくは、本発明の核酸は、そのMVAウイルスの遺伝子間領域(IGR)の1つ以上に挿入してよい。「遺伝子間領域」という用語は好ましくは、そのMVAウイルスゲノムの隣接する2つのオープンリーディングフレーム(ORF)の間、好ましくは、そのMVAウイルスゲノムの2つの必須ORFの間に位置するウイルスゲノム部分を指す。MVAにおいては、特定の実施形態では、IGRは、IGR07/08、IGR44/45、IGR64/65、IGR88/89、IGR136/137及びIGR148/149から選択する。
【0131】
これに加えてまたはこの代わりに、MVAウイルスでは、ヌクレオチド配列は、そのMVAゲノムの既知の欠失部位、すなわち、欠失部位I、II、III、IV、VまたはVIのうちの1つ以上に挿入し得る。「既知の欠失部位」という用語は、CEF細胞での連続継代を通じて欠失したMVAゲノム部分を指し、この部分は、516代目の継代時に、そのMVAの由来元である親ウイルス、特には、例えばMeisinger-Henschel et al.(2007)J.Gen.Virol.88:3249-3259に記載されているような親漿尿膜ワクシニアウイルスアンカラ(CVA)のゲノムと比べて特徴付けられたものである。
【0132】
ワクチン
特定の実施形態では、本開示の組み換えMVAは、ワクチンの一部として配合できる。ワクチンの調製の際には、そのMVAウイルスを生理学的に許容可能な形態に変換できる。
【0133】
例示的な調製法は、以下のとおりである。精製ウイルスを5×108 TCID50/mlの力価で、10mMのTris、140mMのNaCl(pH7.4)に配合した状態で、-80℃で保存する。ワクチン注射剤の調製の際には、例えば、1×108~1×109個のウイルス粒子をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で、2%のペプトン及び1%のヒトアルブミンの存在下で、アンプル、好ましくはガラスアンプル内で凍結乾燥できる。あるいは、ワクチン注射剤は、ウイルスを調合物中で段階凍結乾燥することによって調製できる。特定の実施形態では、その調合物は、マンニトール、デキストラン、糖、グリシン、ラクトース、ポリビニルピロリドンのような追加の添加剤、またはインビボ投与に適する抗酸化剤、不活性ガス、安定剤、もしくは組み換えタンパク質(例えばヒト血清アルブミン)を含む(ただし、これらに限らない)その他の添加剤を含む。続いて、そのアンプルを密閉し、好適な温度、例えば4℃~室温で、数カ月保存することができる。しかしながら、必要がない限りは、そのアンプルは、好ましくは-20℃未満、最も好ましくは約-80℃の温度で保存する。
【0134】
ワクチン接種または療法を伴う様々な実施形態では、その凍結乾燥体は、0.1~0.5mlの水溶液、好ましくは、生理食塩水、または10mMのトリス、140mMのNaCl(pH7.7)のようなトリス緩衝液に溶解する。本開示の組み換えMVA、ワクチンまたは医薬組成物は、溶液において、104~1010 TCID50/ml、105~5×109 TCID50/ml、106~5×109 TCID50/mlまたは107~5×109 TCID50/mlの濃度範囲で配合できることが想定されている。ヒトに対して好ましい用量には、106~1010 TCID50が含まれ、106 TCID50、107 TCID50、108 TCID50、5×108 TCID50、109 TCID50、5×109 TCID50または1010 TCID50という用量が含まれる。投与用量及び投与数の最適化は、当業者の技術及び知見の範囲内である。
【0135】
1つ以上の好ましい実施形態では、本明細書に定められているように、本発明の組み換えMVAは、がん患者に静脈内投与する。
【0136】
追加の実施形態では、本発明の免疫チェックポイントアンタゴニストもしくは免疫チェックポイントアゴニスト、または好ましくは抗体は、全身投与または局所投与、すなわち、腹腔内経路、非経口経路、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、鼻腔内経路、皮内経路または熟練施術者に知られているいずれかの他の投与経路によって投与できる。
【0137】
キット、組成物及び使用方法
様々な実施形態では、本発明には、a)本明細書に記載されている核酸を含む組み換えMVA、及びb)本明細書に記載されている1つ以上の抗体を含むキット、医薬組み合わせ物、医薬組成物及び/または免疫原性組み合わせ物が含まれる。
【0138】
そのキット及び/または組成物は、本開示の組み換えポックスウイルスの入った1つまたは複数の容器またはバイアル、本開示の抗体の入った1つ以上の容器またはバイアルを、その組み換えMVA及び抗体の投与に関する説明とともに含むことができることが想定されている。より具体的な実施形態では、そのキットは、最初のプライミング投与で、その組み換えMVA及び抗体を投与してから、その後に、その組み換えMVA及び抗体のブースティング投与を1回以上行うことについての説明を含むことができることが想定されている。
【0139】
本発明で提供するキット及び/または組成物は概して、薬学的に許容可能であり及び/または認可された担体、添加剤、抗生物質、保存剤、アジュバント、希釈剤及び/または安定剤を1つ以上含んでよい。このような補助物質は、水、生理食塩水、グリセロール、エタノール、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質などであることができる。好適な担体は典型的には、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質集合体などのようなゆっくり代謝される大きな分子である。
【0140】
特定の例示的な実施形態
実施形態1は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させるのに用いる組み合わせ物または医薬組み合わせ物であって、その組み合わせ物が、a)異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40リガンド(CD40L)をコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、静脈内投与すると、TAAをコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導するMVAウイルスと、b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストを含み、(a)及び(b)が、併用治療として投与すべきものであり、a)及びb)をそのがん患者に投与することにより、a)を単独で非IV投与するかまたはb)を単独で投与する場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する組み合わせ物または医薬組み合わせ物である。
【0141】
実施形態2は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、a)異種のTAAをコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、静脈内投与すると、CD40Lをコードする核酸を含む組み換えMVAの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導するMVAウイルスをそのがん患者に投与することと、b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストをそのがん患者に投与することを含み、(a)及び(b)が、併用治療として投与すべきものであり、a)及びb)をそのがん患者に投与することにより、a)を単独で非IV投与するかまたはb)を単独で投与する場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する方法である。
【0142】
実施形態3は、がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させるための併用療法であって、a)異種のTAAをコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、静脈内投与すると、CD40Lをコードする核酸を含む組み換えMVAの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方を誘導するMVAウイルスと、b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストを含み、(a)及び(b)が、併用治療として投与すべきものであり、a)及びb)をそのがん患者に投与することにより、a)を単独で非IV投与するかまたはb)を単独で投与する場合と比べて、そのがん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する併用療法である。
【0143】
実施形態4は、実施形態1~3のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、その免疫チェックポイント分子の抗体を含む組み合わせ物である。
【0144】
実施形態5は、実施形態1~4のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、LAG-3アンタゴニスト、TIM-3アンタゴニストまたはICOSアゴニストを含む組み合わせ物である。
【0145】
実施形態6は、実施形態1~5のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4抗体、PD-1抗体、PD-L1抗体、LAG-3抗体、TIM-3抗体またはICOS抗体を含む組み合わせ物である。
【0146】
実施形態7は、実施形態1~6のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4抗体、PD-1抗体及び/またはPD-L1抗体を含む組み合わせ物である。
【0147】
実施形態8は、実施形態1~7のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、PD-1抗体及び/またはPD-L1抗体を含む組み合わせ物である。
【0148】
実施形態9は、実施形態1~8に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、そのb)が、PD-1抗体である組み合わせ物である。
【0149】
実施形態10は、実施形態1~9のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その組み換えMVAが、異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第2の核酸をさらに含む組み合わせ物である。
【0150】
実施形態11は、実施形態1~10に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その異種の腫瘍関連抗原(TAA)が、がん胎児性抗原(CEA)、Mucin1,細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質2(TRP2)、抗原Brachyuryまたはこれらを組み合わせたものからなる群から選択されている組み合わせ物である。
【0151】
実施形態12は、実施形態1~11に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その異種の腫瘍関連抗原(TAA)が、がん胎児性抗原(CEA)、Mucin1,細胞表面関連(MUC-1)からなる群から選択されている組み合わせ物である。
【0152】
実施形態13は、実施形態1~12のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その異種の腫瘍関連抗原(TAA)が、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER2)である組み合わせ物である。
【0153】
実施形態14は、実施形態1~13に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、そのTAAが、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(AFP)、AM-1、APC、April、Bメラノーマ抗原遺伝子(BAGE)、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、Brachyury、CA-125、カスパーゼ-8(CASP-8)、カテプシン、CD19、CD20、CD21/補体受容体2(CR2)、CD22/BL-CAM、CD23/FcεRII、CD33、CD35/補体受容体1(CR1)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(LCA)、CD46/メンブレンコファクタープロテイン(MCP)、CD52/CAMPATH-1、CD55/崩壊促進因子(DAF)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、がん胎児性抗原(CEA)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ-2(cox-2)、結腸直腸癌欠失遺伝子(DCC)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞成長因子-8a(FGF8a)、線維芽細胞成長因子-8b(FGF8b)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(GAGEファミリー)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(GD2)/ガングリオシド3(GD3)/ガングリオシド-モノシアル酸-2(GM2)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、UDP-GlcNAc:R1Man(α1-6)R2[GlcNAc→Man(α1-6)]β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnT V)、GP1、gp100/Pme117、gp-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(gp75/TRP1)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘパラナーゼ、HER2、ヒト乳房腫瘍ウイルス(HMTV)、70キロダルトンの熱ショックタンパク質(「HSP70」)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インスリン様成長因子受容体-1(IGFR-1)、インターロイキン-13受容体(IL-13R)、誘導型一酸化窒素合成酵素(「iNOS」)、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原コード遺伝子1(MAGE-1)、メラノーマ抗原コード遺伝子2(MAGE-2)、メラノーマ抗原コード遺伝子3(MAGE-3)、メラノーマ抗原コード遺伝子4(MAGE-4)、マンマグロビン、MAP17、メラン-A/T細胞によって認識されるメラノーマ抗原-1(MART-1)、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、精巣特異抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来成長因子(PDGF)、μPA、PRAME、プロバシン、プロジェニポイエチン、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)、サイモシン-β-15、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、TRP1、TRP2、チロシナーゼ、血管内皮成長因子(VEGF)、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)からなる群から選択されている組み合わせ物である。
【0154】
実施形態15は、実施形態1~14のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、そのMVAが、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である組み合わせ物である。
【0155】
実施形態16は、実施形態1~15のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、a)をb)と同時に、またはb)の前に投与する組み合わせ物である。
【0156】
実施形態17は、実施形態1~16のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、a)及びb)をプライミング投与で、そのがん患者に投与してから、a)及びb)のブースティング投与を1回以上、そのがん患者に行う組み合わせ物である。
【0157】
実施形態18は、実施形態1~17のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、そのがん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌または結腸直腸癌からなる群から選択したがんに罹患しており、及び/またはそのがんと診断されている組み合わせ物である。
【0158】
実施形態19は、実施形態18に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その乳癌が、HER2を過剰発現する乳癌である組み合わせ物である。
【0159】
実施形態20は、実施形態19に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その抗原HER2が、配列番号1または配列番号3と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である組み合わせ物である。
【0160】
実施形態21は、実施形態19に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その抗原HER2が、配列番号1または配列番号3と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である組み合わせ物である。
【0161】
実施形態22は、実施形態19に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その抗原HER2が、配列番号1または配列番号3を含む組み合わせ物である。
【0162】
実施形態23は、実施形態11~13に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、その抗原Brachyuryが、配列番号5、配列番号7、配列番号9または配列番号11と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む組み合わせ物である。
【0163】
実施形態24は、がん患者の腫瘍体積を縮小させ、及び/または生存率を上昇させるための医薬または薬剤の調製に、実施形態1~23のいずれか1つに記載の組み合わせ物を使用することである。
【0164】
実施形態25は、
a)異種の腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスと、b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニスト、
を含む医薬組み合わせ物である。
【0165】
実施形態26は、実施形態25に記載の組み合わせ物であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、LAG-3アンタゴニスト、TIM-3アンタゴニストまたはICOSアゴニストを含む組み合わせ物である。
【0166】
実施形態27は、実施形態25~26に記載の組み合わせ物であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストを含む組み合わせ物である。
【0167】
実施形態28は、実施形態25~27に記載の組み合わせ物であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストを含む組み合わせ物である。
【0168】
実施形態29は、実施形態25~28に記載の組み合わせ物であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストを含む組み合わせ物である。
【0169】
実施形態30は、実施形態25~29に記載の組み合わせ物であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、抗体を含む組み合わせ物である。
【0170】
実施形態31は、実施形態25~30に記載の組み合わせ物であって、そのCTLA-4アンタゴニストが、CTLA-4抗体を含み、そのPD-1アンタゴニストが、PD-1抗体を含み、そのPD-L1アンタゴニストが、PD-L1抗体を含み、そのLAG-3アンタゴニストが、LAG-3抗体を含み、そのTIM-3アンタゴニストが、TIM-3抗体を含み、そのICOSアゴニストが、ICOS抗体を含む組み合わせ物である。
【0171】
実施形態32は、実施形態25~31に記載の組み合わせ物であって、その免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストが、PD-1抗体またはPD-L1抗体を含む組み合わせ物である。
【0172】
実施形態33は、実施形態25~32に記載の組み合わせ物であって、その異種の腫瘍関連抗原(TAA)が、がん胎児性抗原(CEA)、Mucin1,細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質2(TRP2)、抗原Brachyuryまたはこれらを組み合わせたものからなる群から選択されている組み合わせ物である。
【0173】
実施形態34は、実施形態25~33に記載の組み合わせ物であって、その異種の腫瘍関連抗原(TAA)が、がん胎児性抗原(CEA)、Mucin1,細胞表面関連(MUC-1)からなる群から選択されている組み合わせ物である。
【0174】
実施形態35は、実施形態25~34に記載の組み合わせ物であって、その異種の腫瘍関連抗原(TAA)が、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER2)である組み合わせ物である。
【0175】
実施形態36は、実施形態25~34に記載の組み合わせ物であって、そのTAAが、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(AFP)、AM-1、APC、April、Bメラノーマ抗原遺伝子(BAGE)、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、Brachyury、CA-125、カスパーゼ-8(CASP-8)、カテプシン、CD19、CD20、CD21/補体受容体2(CR2)、CD22/BL-CAM、CD23/FcεRII、CD33、CD35/補体受容体1(CR1)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(LCA)、CD46/メンブレンコファクタープロテイン(MCP)、CD52/CAMPATH-1、CD55/崩壊促進因子(DAF)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、がん胎児性抗原(CEA)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ-2(cox-2)、結腸直腸癌欠失遺伝子(DCC)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞成長因子-8a(FGF8a)、線維芽細胞成長因子-8b(FGF8b)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(GAGEファミリー)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(GD2)/ガングリオシド3(GD3)/ガングリオシド-モノシアル酸-2(GM2)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、UDP-GlcNAc:R1Man(α1-6)R2[GlcNAc→Man(α1-6)]β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnT V)、GP1、gp100/Pme117、gp-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(gp75/TRP1)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘパラナーゼ、HER2、ヒト乳房腫瘍ウイルス(HMTV)、70キロダルトンの熱ショックタンパク質(「HSP70」)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インスリン様成長因子受容体-1(IGFR-1)、インターロイキン-13受容体(IL-13R)、誘導型一酸化窒素合成酵素(「iNOS」)、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原コード遺伝子1(MAGE-1)、メラノーマ抗原コード遺伝子2(MAGE-2)、メラノーマ抗原コード遺伝子3(MAGE-3)、メラノーマ抗原コード遺伝子4(MAGE-4)、マンマグロビン、MAP17、メラン-A/T細胞によって認識されるメラノーマ抗原-1(MART-1)、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、精巣特異抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来成長因子(PDGF)、μPA、PRAME、プロバシン、プロジェニポイエチン、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)、サイモシン-β-15、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、TRP1、TRP2、チロシナーゼ、血管内皮成長因子(VEGF)、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)からなる群から選択されている組み合わせ物である。
【0176】
実施形態37は、実施形態25~36に記載の組み合わせ物であって、そのMVAが、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である組み合わせ物である。
【0177】
実施形態38は、実施形態25~37に記載の組み合わせ物であって、a)をb)と同時に、またはb)の後に投与する組み合わせ物である。
【0178】
実施形態39は、実施形態25~36に記載の組み合わせ物であって、a)及びb)をそのがん患者にプライミング投与で投与してから、a)及びb)のブースティング投与を1回以上、そのがん患者に行う組み合わせ物である。
【0179】
実施形態40は、実施形態25~39に記載の組み合わせ物であって、そのがん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌または結腸直腸癌からなる群から選択したがんに罹患しており、及び/またはそのがんと診断されている組み合わせ物である。
【0180】
実施形態41は、実施形態40に記載の組み合わせ物であって、その乳癌が、HER2を過剰発現する乳癌である組み合わせ物である。
【0181】
実施形態42は、実施形態1~40に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、そのがんが、MUC-1を過剰発現するがんである組み合わせ物である。
【0182】
実施形態43は、実施形態1~40に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、そのがんが、CEAを発現するがんである組み合わせ物である。
【0183】
実施形態44は、実施形態1~40に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、そのがんが、PSAを発現するがんである組み合わせ物である。
【0184】
実施形態45は、実施形態1~40に記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、そのがんが、Brachyuryを過剰発現するがんである組み合わせ物である。
【0185】
実施形態46は、実施形態1~17のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、そのがん患者が、乳癌、肺癌、メラノーマ、膀胱癌、前立腺癌、卵巣癌または結腸直腸癌からなる群から選択したがんに罹患しており、及び/またはそのがんと診断されている組み合わせ物である。
【0186】
実施形態47は、実施形態1~17のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、そのがん患者が、乳癌に罹患しており、及び/または乳癌と診断されている組み合わせ物である。
【0187】
実施形態48は、実施形態1~17のいずれか1つに記載の用途、方法及び/または併用療法のための組み合わせ物であって、そのがん患者が、結腸直腸癌に罹患しており、及び/または結腸直腸癌と診断されている組み合わせ物である。
【0188】
実施形態49は、実施形態1~24に記載の用途のための組み合わせ物であって、医薬組み合わせ物である組み合わせ物である。
【0189】
本開示の一部として含まれる参照文献は、参照により、その全体が本明細書に援用され、その参照文献には、World Health Report(2013),World Health Organization、Torre(2012)CA:A Cancer Journal for Clinicians 65:doi 10.3322/caac.21262,“Global Cancer Statistics”、Ross(2003)Oncologist 8:307-325,“The HER2/neu gene and protein in breast cancer 2003:biomarker and target of therapy”、Palena(2007)Clin.Cancer Res.13:2471-8,“The human T-box mesodermal transcription factor Brachyury is a candidate target for T-cell-mediated cancer immunotherapy”、Hynes and Lane(2005)Nat.Rev.Cancer 5:341-54,“ERBB receptors and cancer:the complexity of targeted inhibitors”、Cho(2003)Nature 421:756-60,“Structure of the extracellular region of HER2 alone and in complex with the Herceptin Fab”、Satyanarayanajois(2009)Chem.Biol.Drug Des.74:doi 10.1111/j.1747-0285.2009.00855.x,“Design,Synthesis,and Docking Studies of Peptidomimetics based on HER2-Herceptin Binding Site with Potential Antiproliferative Activity Against Breast Cancer Cell Lines”、Franklin(2004)Cancer Cell 5:317-28,“Insights into ErbB signaling from the structure of the ErbB2-pertuzumab complex”、Yang(2009),Targeting The Dimerization Of ERBB Receptor,All Theses and Dissertations(ETDs),Paper 391、Tan(2005)Cancer Res.65:1858-67,“ErbB2 promotes Src synthesis and stability:novel mechanisms of Src activation that confer breast cancer metastasis”、Roskoski(2014)Pharmacol.Res.87:42-59,“ErbB/HER protein-tyrosine kinases:Structures and small molecule inhibitors”、Roselli(2012)Clin.Cancer Res.18:3868-79,“Brachyury,a driver of the epithelial-mesenchymal transition, is overexpressed in human lung tumors:an opportunity for novel interventions against lung cancer”、Stoller and Epstein(2005)Hum.Mol.Gen.14:885-92,“Identification of a novel nuclear localization signal in Tbx1 that is deleted in DiGeorge syndrome patients harboring the 1223delC mutation”、Lauterbach(2013)Front.Immunol.4:251,“Genetic Adjuvantation of Recombinant MVA with CD40L Potentiates CD8 T Cell Mediated Immunity”、Guardino(2009)Cancer Res.69(24 Supp Abstract nr 5089),“Results of Two Phase I Clinical Trials of MVA-BN(登録商標)-HER2 in HER2 Overexpressing Metastatic Breast Cancer Patients,”Heery et al.(2015)J.Immunother.Cancer 3(Suppl.2):P132,“Phase I,dose-escalation,clinical trial of MVA-Brachyury-TRICOM vaccine demonstrating safety and brachyury-specific T cell responses”、Brodowicz et al.(2001)Br.J.Cancer 85:1764-70,“Anti-HER2/neu antibody induces apoptosis in HER2/neu overexpressing breast cancer cells independently from p53 status”、Stackaruk et al.(2013)Expert Rev.Vaccines 12:875-84,“Type I interferon regulation of natural killer cell function in primary and secondary infections”、Muller et al.(2017)Front.Immunol.,“Type I Interferons and Natural Killer Cell Regulation in Cancer”、Yamashita et al.(2016)Scientific Reports 6:(article number 19772),“A novel method for evalulating antibody dependent cell-mediated cytotoxicity by flow cytometry using human peripheral blood mononuclear cells,”、Broussas et al.(2013)Methods Mol.Biol.988:305-317,“Evaluation of antibody-dependent cell cytotoxicity using lactate dehydrogenase(LDH)measurement”、Tay et al.(2016)Human Vaccines and Immunotherapeutics 12:2790-96,“TriKEs and BiKEs join CARs on the cancer immunotherapy highway”、Kono et al.(2004)Clin.Cancer Res.10:2538-44,“Trastuzumab(Herceptin)Enhances Class I-Restricted Antigen Presentation Recognized by Her2/neu Specific T Cytotoxic Lymphocytes”が含まれる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる用途用の組み合わせ物であって、前記組み合わせ物が、
a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40リガンド(CD40L)をコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、静脈内投与すると、TAAをコードする第1の核酸と、CD40Lコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方が誘導される前記MVAウイルスと、
b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストと、
を含み
前記(a)及び前記(b)が、併用治療として投与すべきものであり、前記a)及び前記b)を前記がん患者に投与することにより、前記a)を単独で非IV投与するかまたは前記b)を単独で投与する場合と比べて、前記がん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する前記組み合わせ物。
2.前記免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは前記免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、LAG-3アンタゴニスト、TIM-3アンタゴニストまたはICOSアゴニストを含む、上記1に記載の用途用の組み合わせ物。
3.前記CTLA-4アンタゴニストが、CTLA-4抗体であり、前記PD-1アンタゴニストが、PD-1抗体であり、前記PD-L1アンタゴニストが、PD-L1抗体であり、前記LAG-3アンタゴニストが、LAG-3抗体であり、前記TIM-3アンタゴニストが、TIM-3抗体であり、前記ICOSアゴニストが、ICOS抗体である、上記2に記載の用途用の組み合わせ物。
4.前記TAAが、がん胎児性抗原(CEA)、Mucin1,細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質2(TRP2)、抗原Brachyuryまたはこれらを組み合わせたものからなる群から選択されている、上記1に記載の用途用の組み合わせ物。
5.前記TAAが、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(AFP)、AM-1、APC、April、Bメラノーマ抗原遺伝子(BAGE)、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、Brachyury、CA-125、カスパーゼ-8(CASP-8)、カテプシン、CD19、CD20、CD21/補体受容体2(CR2)、CD22/BL-CAM、CD23/FcεRII、CD33、CD35/補体受容体1(CR1)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(LCA)、CD46/メンブレンコファクタープロテイン(MCP)、CD52/CAMPATH-1、CD55/崩壊促進因子(DAF)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、がん胎児性抗原(CEA)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ-2(cox-2)、結腸直腸癌欠失遺伝子(DCC)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞成長因子-8a(FGF8a)、線維芽細胞成長因子-8b(FGF8b)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(GAGEファミリー)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(GD2)/ガングリオシド3(GD3)/ガングリオシド-モノシアル酸-2(GM2)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、UDP-GlcNAc:R1Man(α1-6)R2[GlcNAc→Man(α1-6)]β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnT V)、GP1、gp100/Pme117、gp-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(gp75/TRP1)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘパラナーゼ、HER2、ヒト乳房腫瘍ウイルス(HMTV)、70キロダルトンの熱ショックタンパク質(「HSP70」)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インスリン様成長因子受容体-1(IGFR-1)、インターロイキン-13受容体(IL-13R)、誘導型一酸化窒素合成酵素(「iNOS」)、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原コード遺伝子1(MAGE-1)、メラノーマ抗原コード遺伝子2(MAGE-2)、メラノーマ抗原コード遺伝子3(MAGE-3)、メラノーマ抗原コード遺伝子4(MAGE-4)、マンマグロビン、MAP17、メラン-A/T細胞によって認識されるメラノーマ抗原-1(MART-1)、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、精巣特異抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来成長因子(PDGF)、μPA、PRAME、プロバシン、プロジェニポイエチン、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)、サイモシン-β-15、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、TRP1、TRP2、チロシナーゼ、血管内皮成長因子(VEGF)、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)からなる群から選択されている、上記1に記載の用途用の組み合わせ物。
6.前記MVAが、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である、上記1に記載の用途用の組み合わせ物。
7.前記a)を前記b)の投与と同時に、または前記b)の投与前に投与する、上記1に記載の用途用の組み合わせ物。
8.前記a)及び前記b)を前記がん患者にプライミング投与で投与してから、前記a)及び前記b)のブースティング投与を1回以上、前記がん患者に行う、上記1に記載の用途用の組み合わせ物。
9.前記がん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌または結腸直腸癌からなる群から選択されるがんに罹患しており、及び/または前記がんと診断されている、上記1に記載の用途用の組み合わせ物。
10.前記乳癌が、HER2を過剰発現する乳癌である、上記9に記載の用途用の組み合わせ物。
11.がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させる方法であって、その併用方法が、
a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40リガンド(CD40L)をコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、静脈内投与すると、TAAをコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルスの非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方が誘導される前記MVAウイルスを前記がん患者に投与することと、
b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストを前記がん患者に投与することと、
を含み、
前記(a)及び前記(b)が、併用治療として投与すべきものであり、前記a)及び前記b)を前記がん患者に投与することにより、前記a)を単独で非IV投与するかまたは前記b)を単独で投与する場合と比べて、前記がん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する前記方法。
12.前記免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは前記免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、LAG-3アンタゴニスト、TIM-3アンタゴニストまたはICOSアゴニストを含む、上記11に記載の方法。
13.前記CTLA-4アンタゴニストが、CTLA-4抗体であり、前記PD-1アンタゴニストが、PD-1抗体であり、前記PD-L1アンタゴニストが、PD-L1抗体であり、前記LAG-3アンタゴニストが、LAG-3抗体であり、前記TIM-3アンタゴニストが、TIM-3抗体であり、前記ICOSアゴニストが、ICOS抗体である、上記12に記載の方法。
14.前記TAAが、がん胎児性抗原(CEA)、Mucin1,細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質2(TRP2)、抗原Brachyuryまたはこれらを組み合わせたものからなる群から選択されている、上記11に記載の方法。
15.前記TAAが、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(AFP)、AM-1、APC、April、Bメラノーマ抗原遺伝子(BAGE)、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、Brachyury、CA-125、カスパーゼ-8(CASP-8)、カテプシン、CD19、CD20、CD21/補体受容体2(CR2)、CD22/BL-CAM、CD23/FcεRII、CD33、CD35/補体受容体1(CR1)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(LCA)、CD46/メンブレンコファクタープロテイン(MCP)、CD52/CAMPATH-1、CD55/崩壊促進因子(DAF)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、がん胎児性抗原(CEA)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ-2(cox-2)、結腸直腸癌欠失遺伝子(DCC)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞成長因子-8a(FGF8a)、線維芽細胞成長因子-8b(FGF8b)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(GAGEファミリー)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(GD2)/ガングリオシド3(GD3)/ガングリオシド-モノシアル酸-2(GM2)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、UDP-GlcNAc:R1Man(α1-6)R2[GlcNAc→Man(α1-6)]β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnT V)、GP1、gp100/Pme117、gp-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(gp75/TRP1)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘパラナーゼ、HER2、ヒト乳房腫瘍ウイルス(HMTV)、70キロダルトンの熱ショックタンパク質(「HSP70」)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インスリン様成長因子受容体-1(IGFR-1)、インターロイキン-13受容体(IL-13R)、誘導型一酸化窒素合成酵素(「iNOS」)、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原コード遺伝子1(MAGE-1)、メラノーマ抗原コード遺伝子2(MAGE-2)、メラノーマ抗原コード遺伝子3(MAGE-3)、メラノーマ抗原コード遺伝子4(MAGE-4)、マンマグロビン、MAP17、メラン-A/T細胞によって認識されるメラノーマ抗原-1(MART-1)、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、精巣特異抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来成長因子(PDGF)、μPA、PRAME、プロバシン、プロジェニポイエチン、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)、サイモシン-β-15、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、TRP1、TRP2、チロシナーゼ、血管内皮成長因子(VEGF)、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)からなる群から選択されている、上記11に記載の方法。
16.前記MVAが、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である、上記11に記載の方法。
17.前記a)を前記b)と同時または前記b)の前に投与する、上記11に記載の方法。
18.前記a)及び前記b)を前記がん患者にプライミング投与で投与してから、前記a)及び前記b)のブースティング投与を1回以上、前記がん患者に行う、上記11に記載の方法。
19.前記がん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌または結腸直腸癌からなる群から選択したがんに罹患しており、及び/または前記がんと診断されている、上記11に記載の方法。
20.がん患者において腫瘍サイズを縮小させ、及び/または生存率を上昇させるための併用療法剤であって、前記併用療法剤が、
a)腫瘍関連抗原(TAA)をコードする第1の核酸と、CD40リガンド(CD40L)をコードする第2の核酸とを含む組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであって、静脈内投与すると、TAAをコードする第1の核酸と、CD40Lをコードする第2の核酸とを含む組み換えMVAウイルス非静脈内投与によって誘導されるナチュラルキラー(NK)細胞応答及びT細胞応答と比べて、NK細胞応答の増強及びT細胞応答の増強の両方が誘導される前記MVAウイルスと、
b)少なくとも1つの免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは免疫チェックポイント分子アゴニストと、
を含み、
前記(a)及び前記(b)が、併用治療として投与すべきものであり、前記a)及び前記b)を前記がん患者に投与することにより、前記a)を単独で非IV投与するかまたは前記b)を単独で投与する場合と比べて、前記がん患者の腫瘍サイズが縮小し、及び/または生存率が上昇する前記併用療法剤。
21.前記免疫チェックポイント分子アンタゴニストまたは前記免疫チェックポイント分子アゴニストが、CTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、LAG-3アンタゴニスト、TIM-3アンタゴニストまたはICOSアゴニストを含む、上記20に記載の併用療法剤。
22.前記CTLA-4アンタゴニストが、CTLA-4抗体であり、前記PD-1アンタゴニストが、PD-1抗体であり、前記PD-L1アンタゴニストが、PD-L1抗体であり、前記LAG-3アンタゴニストが、LAG-3抗体であり、前記TIM-3アンタゴニストが、TIM-3抗体であり、前記ICOSアゴニストが、ICOS抗体である、上記20に記載の併用療法剤。
23.前記TAAが、がん胎児性抗原(CEA)、Mucin1,細胞表面関連(MUC-1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮細胞成長因子受容体2(HER2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(TRP1)、チロシン関連タンパク質2(TRP2)、抗原Brachyuryまたはこれらを組み合わせたものからなる群から選択されている、上記20に記載の併用療法剤。
24.前記TAAが、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(AFP)、AM-1、APC、April、Bメラノーマ抗原遺伝子(BAGE)、β-カテニン、Bcl12、bcr-abl、Brachyury、CA-125、カスパーゼ-8(CASP-8)、カテプシン、CD19、CD20、CD21/補体受容体2(CR2)、CD22/BL-CAM、CD23/FcεRII、CD33、CD35/補体受容体1(CR1)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(LCA)、CD46/メンブレンコファクタープロテイン(MCP)、CD52/CAMPATH-1、CD55/崩壊促進因子(DAF)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、がん胎児性抗原(CEA)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ-2(cox-2)、結腸直腸癌欠失遺伝子(DCC)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞成長因子-8a(FGF8a)、線維芽細胞成長因子-8b(FGF8b)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(GAGEファミリー)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(GD2)/ガングリオシド3(GD3)/ガングリオシド-モノシアル酸-2(GM2)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、UDP-GlcNAc:R1Man(α1-6)R2[GlcNAc→Man(α1-6)]β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnT V)、GP1、gp100/Pme117、gp-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(gp75/TRP1)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘパラナーゼ、HER2、ヒト乳房腫瘍ウイルス(HMTV)、70キロダルトンの熱ショックタンパク質(「HSP70」)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インスリン様成長因子受容体-1(IGFR-1)、インターロイキン-13受容体(IL-13R)、誘導型一酸化窒素合成酵素(「iNOS」)、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原コード遺伝子1(MAGE-1)、メラノーマ抗原コード遺伝子2(MAGE-2)、メラノーマ抗原コード遺伝子3(MAGE-3)、メラノーマ抗原コード遺伝子4(MAGE-4)、マンマグロビン、MAP17、メラン-A/T細胞によって認識されるメラノーマ抗原-1(MART-1)、メソセリン、MIC A/B、MT-MMP、ムチン、精巣特異抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来成長因子(PDGF)、μPA、PRAME、プロバシン、プロジェニポイエチン、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)、サイモシン-β-15、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、TRP1、TRP2、チロシナーゼ、血管内皮成長因子(VEGF)、ZAG、p16INK4及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)からなる群から選択されている、上記20に記載の併用療法剤。
25.前記MVAが、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である、上記20に記載の併用療法剤。
26.前記a)を前記b)と同時または前記b)の前に投与する、上記20に記載の併用療法剤。
27.前記a)及び前記b)を前記がん患者にプライミング投与で投与してから、前記a)及び前記b)のブースティング投与を1回以上、前記がん患者に行う、上記20に記載の併用療法剤。
28.前記がん患者が、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌または結腸直腸癌からなる群から選択したがんに罹患しており、及び/または前記がんと診断されている、上記20に記載の併用療法剤。
【実施例】
【0190】
下記の実施例には、本発明が例示されているが、実施例は、いかなる場合も、請求項の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0191】
実施例1:組み換えMVAの静脈内投与により、NK細胞の活性化が増強される
C57BL/6マウスを5×10
7 TCID
50のMVA-OVA(rMVAとして示されている)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40Lとして示されている)で皮下(SC)免疫または静脈内(IV)免疫した。PBSをSC注射した。1日後、A)NKp46
+ CD3
-細胞、B)CD69、C)NKG2D、D)FasL、E)Bcl-X
L、F)CD70及びG)IFN-γに対して染色することによって、脾臓(
図1A~1Gに示されている)、肝臓(
図2A~2Gに示されている)、及び肺(
図3A~3Gに示されている)において、フローサイトメトリーを用いて、NK細胞の出現頻度及びタンパク質の発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示した)を評価した。
【0192】
加えて、抗原であるHER2v1、TWIST及びCD40Lをコードする組み換えMVA(MVA-HER2v1-Twist-CD40Lとして示されている)5×10
7 TCID
50で、C57BL/6マウスを皮下(SC)免疫または静脈内(IV)免疫した。PBSを皮下(SC)注射した。1日後、A)NKp46
+ CD3
-細胞、B)CD69、C)FasL、D)Bcl-X
L、E)CD70及びF)IFN-γに対して染色することによって、脾臓(
図4A~4Fに示されている)、肝臓(
図5A~5Fに示されている)、及び肺(
図6A~6Fに示されている)において、フローサイトメトリーを用いて、NK細胞の出現頻度及びタンパク質の発現(幾何平均蛍光強度(GMFI)として示されている)を評価した。
【0193】
図に示されているように、脾臓NK細胞の出現頻度は、rMVA、rMVA-CD40L及びMVA-HER2v1-Twist-CD40Lの注射後、適用経路にかかわらず、低下または維持された。A)においては、rMVAをIV適用した場合、肝臓及び肺におけるNK細胞の出現頻度が、SC適用よりも上昇した。B)においては、CD69は、NK細胞に対する刺激受容体であり(Borrego et al.,Immunology 1999)、rMVA、rMVA-CD40L及びMVA-HER2v1-Twist-CD40LのIV注射後、著しくアップレギュレートするが、SC注射ではあまりアップレギュレートしない。CD69の発現最高値は、rMVA-CD40LのIV適用によって誘導された。
図1~3のC)においては、rMVA及びrMVA-CD40Lで免疫後、活性化C型レクチン様受容体NKG2Dが、PBSで処置した場合とよりも、NK細胞上でアップレギュレートする。
図1~3の(D)及び
図4~6の(C)においては、rMVA及びrMVA-CD40Lで免疫後、アポトーシス誘導因子FasL(CD95L)が、PBSで処置した場合よりも、NK細胞上でアップレギュレートする。
図1~3の(D)及び
図4~6の(C)においては、rMVA-CD40L及びMVA-HER2v1-Twist-CD40LのIV注射後、脾臓及び肺でのFasLの発現が最も高かった。
図1~3の(E)及び4~6の(D)においては、rMVA-CD40L及びMVA-HER2v1-Twist-CD40LでのIV免疫では、抗アポトーシス性のBclファミリーメンバーBcl-x
Lの発現も、SC免疫よりも高くなる。
図1~3の(F)及び4~6の(E)においては、rMVA、rMVA-CD40L及びMVA-HER2v1-Twist-CD40LのIV注射によって、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバーである共刺激分子CD70のアップレギュレーションが、特に脾臓NK細胞において誘導される。
図1~3の(G)及び4~6の(F)においては、重要なことに、rMVA-CD40LまたはMVA-HER2v1-Twist-CD40LでのIV免疫後、脾臓、肺及び肝臓において、エフェクターサイトカインIFN-γが、最も顕著に発現した。これらのデータから、rMVA-CD40LまたはMVA-HER2v1-Twist-CD40LによるIV免疫によって、全身でNK細胞が著しく活性化されるが、SC免疫ではあまり活性化されないことが示されている。
【0194】
実施例2:組み換えMVA-CD40Lの静脈内投与により、NK細胞の全身的な活性化が増強される
C57BL/6マウスを5×10
7 TCID
50のMVA-OVA(rMVA)、MVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)またはPBSでIV免疫した。注射の6時間後、
図7A~7Fに示されているように、血清サイトカインレベル((A)IFN-γ、(B)IL-12p70及び(C)CD69
+グランザイムB
+)をビーズアッセイ(Luminex)(A及びB)ならびにフローサイトメトリー(C)によって定量した。NK細胞活性化サイトカインIL-12p70は、rMVA-CD40Lで免疫した後のみに検出可能であった。rMVA-CD40Lで免疫後、IFN-γの濃度は、rMVAで免疫した場合よりも高かった。IFN-γの血清レベルの上昇は、rMVA-CD40Lで免疫してから48時間後、NK細胞のIFN-γのGMFIが増加したこと(
図1Gと比較)と、脾臓CD69
+グランザイムB
+ NK細胞の出現頻度が上昇したことと一致する。
【0195】
同様の応答は、NHP(Macaca fascicularis)でも、MVA-MARV-GP-huCD40LのIV注射後に見られ、すなわち、MVA-MARV-GPの場合よりも、IFN-γ(D)及びIL-12p40/70(E)の血清濃度が上昇し、(Ki67
+)NK細胞(F)が増殖した。
図7D~Eに示されているこれらのデータによって、CD40LをコードするMVAワクチンは、マウス及びNHPにおける免疫特性が似通っていることが示されている。
【0196】
実施例3:組み換えMVAの静脈内投与により、強力なCD8 T細胞応答が誘導される
0日目及び16日目に、C57BL/6マウスを5×10
7 TCID
50のMVA-OVAで静脈内(IV)免疫または皮下(SC)免疫した。7日目及び22日目に、H-2Kb/OVA
257-264デキストラマーで染色後、血液中のOVA特異的CD8 T細胞応答をフローサイトメトリーによって評価した。
図8に示されているように、7日目において、OVA特異的CD8 T細胞の出現頻度は、SC注射の場合よりも9倍高かった。22日目には、OVA特異的T細胞は、SC注射後よりも4倍高かった。
【0197】
実施例4:組み換えMVA-CD40Lの静脈内投与により、CD8 T細胞応答がさらに増強される
図9に示されているように、0日目及び35日目に、C57BL/6マウスを5×10
7 TCID
50のMVA-OVAまたはMVA-OVA-CD40Lで静脈内免疫した。H-2Kb/OVA
257-264デキストラマーで染色後、血液中のOVA特異的CD8 T細胞応答をフローサイトメトリーによって評価した。一次応答(7日目)及び二次応答(39日目)のピークに関しては、OVA特異的CD8 T細胞の出現頻度は、MVA-OVA-CD40Lで免疫後、MVA-OVAで免疫した場合よりも、一次応答では4倍、二次応答では2倍増強された(Lauterbach et al.(2013),op.cit.)。
【0198】
実施例5:プライム-ブースト免疫により、NK細胞の活性化及び増殖の反復が見られる
【0199】
【0200】
表1に示されているようにして、C57BL/6マウスをIV免疫した(組み換えMVAの用量は、5×10
7 TCID
50であった)。「hom」とは、「同種でのプライミング-ブースティング」を指し、「het」とは、「異種でのプライミング-ブースティング」を指すことに留意されたい。2回目及び3回目の免疫から1日後及び4日後に、NK細胞(CD3- NKp46+)を血液において、フローサイトメトリーによって解析した。
図10A及び10Bに示されているのは、CD69のGMFI(A)と、Ki67+ NK細胞の出現頻度(B)である。
図10A及び10Bには、抗ベクター免疫の存在にかかわらず、NK細胞が、毎回の免疫によって活性化されることが示されている。この予想外の所見により、抗体療法とブースト免疫の併用が、NK細胞を活性化すると見られることが裏付けられている。すなわち、がん患者を組み換えMVAで複数回処置して、抗ベクター応答が生じるときにも、NK細胞の活性化は低減されない。対照的に、処置するたびに、デノボでNK細胞が活性化される。
【0201】
実施例6:プライム-ブースト免疫により、CD4ヘルパーT細胞の誘導が増強される
表1に示されているようにして、C57BL/6マウスを免疫した(組み換えMVAの用量は、5×107 TCID50であった)。免疫から6時間後に、血清サイトカインレベルをマルチプレックスビーズアッセイ(Luminex)によって定量した。示されているのは、11A)IL-6、11B)CXCL10、11C)IFN-α、11D)IL-22、11E)IFN-γ、11F)CXCL1、11G)CCL4、11H)CCL7、11I)CCL2、11J)CCL5、11K)TNF-α、11L)IL-12p70及び11M)IL-18というサイトカインの発現の結果である。
【0202】
図11A~11Mに示されているように、rMVA-CD40L homで処置したマウス(すなわち、同種でのプライミング-ブースティングで処置したマウス)は、サイトカインプロファイルが、rMVAでプライミングし、rMVA-CD40Lでブースティングしたマウス(rMVA-CD40L het)と似通っていた。rMVA homで処置したマウスでは、1回目及び2回目の免疫後、IL-6、IL12p70、IL-22、IFN-α、TNF-α、CCL2、CCL5及びCXCL1のレベルが、rMVA-CD40Lでプライミングしたマウスよりも低かった。プライミング後には見られなかったが、2回目及び3回目の免疫後に高度に産生されたサイトカインは、IL-22であった。IL-22は主に、エフェクターヘルパーT細胞、及び自然リンパ球細胞のサブ集団によって産生される。したがって、rMVA-CD40L hetまたはrMVA-CD40L homで処置したマウスにおけるIL-22の発現量が多いほど、rMVA-CD40Lでの免疫によるCD4 Tヘルパー応答の誘導が強力であることを示す。総合すると、rMVA及びrMVA-CD40LでのIV免疫により、全身での高度なサイトカイン応答が誘導され、その応答は、rMVA-CD40Lでプライミングしたマウスで最も高かった。
【0203】
実施例7:プライム-ブースト免疫により、CD8エフェクターメモリーT細胞及びCD4エフェクターメモリーT細胞の応答の増強が見られる
表1に示されているようにして、C57BL/6マウスをIV免疫した。その結果は、
図12に示されている。表現型的には、エフェクターT細胞及びエフェクターメモリーT細胞は、CD44の発現及び表面CD62Lの欠損によって特定できる。血液において、CD44+ CD62L- CD8 T細胞(A)及びCD44+ CD62L- CD4 T細胞(B)をモニタリングしたところ、IV免疫を繰り返すと、エフェクターT細胞及びエフェクターメモリーT細胞の増加が誘導されることが示された。興味深いことに、rMVA-CD40L homまたはrMVA-CD40L hetのいずれかを投与されたマウスは、循環CD4エフェクターT細胞が、rMVAでプライミングしたマウスよりも約2.5倍多かった(B、25日目)。このことから、rMVA-CD40Lでの全身プライミングにより、rMVAよりも強いCD4 T細胞応答が誘導されることが示されている。
【0204】
実施例8:メラノーマを治療する際、組み換えMVAの静脈内投与により、強力な抗腫瘍作用が得られる
B16.OVA腫瘍は、外来モデル抗原オボアルブミン(「OVA」)を発現する。触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをPBS、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)で、IVまたはSCによってプライミングした(点線)(組み換えMVAの用量は、5×10
7 TCID
50であった)。プライミング免疫から7日後及び14日後に、マウスに、その後のブースティングをFPV-OVAによって、5×10
7 TCID
50で行った(破線)。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図13に示されているのは、腫瘍平均体積(A)と、腫瘍を接種してから45日目までの腫瘍担持マウスの生存率(B)である。すなわち、B16.OVA腫瘍担持マウスをrMVA-CD40LでIVプライミングすると、抗腫瘍作用が、rMVA-CD40LによるSC免疫、rMVAによるSC免疫、またはrMVAによるIV免疫のいずれよりも強力になる。
【0205】
実施例9:組み換えMVAの単回静脈内投与により、強力な抗腫瘍作用が得られる
【0206】
【0207】
表2に示されているようにして、触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスにワクチンをIV接種した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図14に示されているのは、腫瘍平均体積である。この結果から、rMVA-CD40Lで治療的免疫を1回行うことは、同種または異種でのプライム/ブースト免疫と同程度の強度があることが示されている。重要なことに、これらのデータから、rMVA-CD40Lの強力な抗腫瘍活性が明らかになっている。
【0208】
実施例10:組み換えMVA-CD40Lの静脈内投与により、腫瘍微小環境内のT細胞浸潤が増加する
触知可能なB16.OVA腫瘍を有するC57BL/6マウスをPBS、rMVA(MVA-OVA)またはrMVA-CD40L(MVA-OVA-CD40L)で静脈内免疫した(組み換えMVAの用量は、5×10
7 TCID
50であった)。7日後、マウスを殺処分した。
図15A及び15Bに示されているように、脾臓、腫瘍流入リンパ節(TDLN)及び腫瘍組織の白血球において、CD8
+ T細胞及びOVA
257-264特異的CD8
+ T細胞の出現頻度及び分布を解析した。
図15Cに示されているように、腫瘍内浸潤しているOVA
257-264特異的CD8
+ T細胞上のPD-1及びLag3の幾何平均蛍光強度(GMFI)を解析した。
【0209】
勘案すると、これらのデータから、rMVA-CD40Lで免疫すると、腫瘍微小環境(TME)内へのTAA特異的CD8 T細胞の浸潤が、PBSの場合よりも顕著になり、rMVA-CD40Lで免疫すると、PD-1及びLag3の発現が減少することが示されている。
【0210】
実施例11:組み換えMVA-CD40Lの静脈内投与により、腫瘍微小環境内のTregのレベルが低下した
精製されたOVA特異的TCRトランスジェニックCD8 T細胞(OT-I)をB16.OVA腫瘍担持マウスに、腫瘍が触知可能となったら、静脈内移入した。腫瘍の体積が少なくとも60mm3に達したら、マウスをMVA-BN、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)で免疫した(組み換えMVAの用量は、5×10
7 TCID
50であった)。17日後、マウスを殺処分し、腫瘍組織中のCD4+ T細胞におけるFoxp3+ CD4+ Tregの出現頻度について解析した。その結果は、
図16に示されている。勘案すると、これらのデータから、TMEに長期間暴露された後でも、rMVA-CD40Lで1回免疫すると、Tregが、コントロールの処置(TAAをコードしないMVA-BN)またはrMVAによる免疫の場合よりも減少することが示されている。
【0211】
実施例12:組み換えMVA-CD40Lの静脈内投与により、腫瘍微小環境へのT細胞浸潤の継続時間が長くなった
TCRトランスジェニックOVA特異的CD8 T細胞(OT-I)をB16.OVA腫瘍担持マウスに、腫瘍が触知可能となったら、静脈内移入した。腫瘍の体積が少なくとも60mm
3に達したら、マウスをMVA-BN、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)で免疫した(組み換えMVAの用量は、5×10
7 TCID
50であった)。17日後、マウスを殺処分し、A)腫瘍組織中の白血球におけるCD8
+ T細胞の出現頻度、B)CD8
+ T細胞におけるLag3
+ PD1
+の出現頻度、C)CD8
+ T細胞におけるEomes
+ PD1
+ T細胞の出現頻度、D)免疫後のTMEにおけるOT-IトランスジェニックCD8
+ T細胞の存在、E)OT-I
+ CD8
+ T細胞におけるLag3
+ PD1
+疲弊T細胞の出現頻度、及びF)OT-I
+ CD8
+ T細胞におけるEomes
+ PD1
+疲弊T細胞の出現頻度について解析した。その結果は、
図17に示されている。これらのデータから、TMEに長期間暴露された後でも、rMVA-CD40Lで免疫すると、TMEに動員されるTAA特異的CD8 T細胞では、免疫疲弊の徴候が、コントロールの処置(TAAをコードしないMVA-BN)またはrMVAによる免疫の後よりも少ないことが示されている。
【0212】
図15及び17に示されているように、rMVAを静脈内投与したところ、PD1
+及びLag3
+の発現が減少したとともに、rMVA-CD40Lを静脈内投与したところ、PD1
+及びLag3
+の発現がさらに減少した。
【0213】
実施例13:組み換えMVAウイルスMVA-mBN445、MVA-mBN451、MVA-mBNbc197、MVA-mBNbc195、MVA-mBNbc388、MVA-mBNbc389及びMVA-mBN484の構築
本発明の併用療法の要素を実現させる組み換えMVAウイルス(例えば、MVA-mBN445、MVA-mBN451及びMVA-mBN484)の作製は、示されている導入遺伝子を、それらのプロモーターとともにベクターMVA-BNに挿入することによって行った。導入遺伝子及び選択カセットと、MVA-BN内の標的座位と相同な配列とを含む組み換えプラスミドを用いて、導入遺伝子を挿入した。MVA-BNに感染させたCEF細胞に、その組み換えプラスミドをトランスフェクションすることによって、そのウイルスゲノムとその組み換えプラスミドとの間の相同組み換えを生じさせた。続いて、その選択カセットを挟み込んでいるloxP部位を特異的に標的ととし、それにより、その介在配列を切除するCRE-リコンビナーゼを発現するプラスミドの助けにより、第2の工程中に、その選択カセットを欠失させた。
【0214】
mBNbc346の構築の際には、組み換えプラスミドには、導入遺伝子AH1A5、p15e及びTRP2(それぞれ、その前にはプロモーター配列を配置した)と、そのウイルスゲノムに相同組み換えが生じるように、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を含めた。
【0215】
mBNbc354の構築の際には、組み換えプラスミドには、導入遺伝子AH1A5、p15e及びTRP2、ならびにCD40L(それぞれ、その前にはプロモーター配列を配置した)と、そのウイルスゲノムに相同組み換えが生じるように、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を含めた。
【0216】
mBN451の構築の際には、組み換えプラスミドには、2つの導入遺伝子HER2v1(配列番号1)及びBrachyury(配列番号5)(それぞれ、その前にはプロモーター配列を配置した)と、そのウイルスゲノムに相同組み換えが生じるように、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を含めた。そのHER2のコード配列(すなわちヌクレオチド配列)は、配列番号2であり、Brachyuryのコード配列は、配列番号6である。
【0217】
mBN445の構築の際には、組み換えプラスミドには、3つの導入遺伝子HER2v1(配列番号1)、Brachyury(配列番号5)及びCD40L(配列番号13)(それぞれ、その前にはプロモーター配列を配置した)と、そのウイルスゲノムに相同組み換えが生じるように、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を含めた。そのHER2のコード配列(すなわちヌクレオチド配列)は、配列番号2であり、Brachyuryのコード配列は、配列番号6であり、CD40Lのコード配列は、配列番号14である。
【0218】
mBNbc388の構築の際には、組み換えプラスミドには、3つの導入遺伝子HER2v1(アミノ酸配列番号1)、Twist(アミノ酸配列番号15)及びCD40L(アミノ酸配列番号17)(それぞれ、その前にはプロモーター配列を配置した)と、そのウイルスゲノムに相同組み換えが生じるように、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を含めた。そのHER2v1のコード配列(すなわちヌクレオチド配列)は、配列番号2であり、Twistのコード配列は、配列番号16であり、CD40Lのコード配列は、配列番号18である。
【0219】
mBNbc389の構築の際には、組み換えプラスミドには、2つの導入遺伝子HER2v1(アミノ酸配列番号1)及びTwist(アミノ酸配列番号15)(それぞれ、その前にはプロモーター配列を配置した)と、そのウイルスゲノムに相同組み換えが生じるように、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を含めた。そのHER2v1のコード配列(すなわちヌクレオチド配列)は、配列番号2であり、Twistのコード配列は、配列番号16である。
【0220】
mBN484の構築の際には、組み換えプラスミドには、3つの導入遺伝子HER2v2(アミノ酸配列番号3)、Brachyury(アミノ酸配列番号5)及びCD40L(アミノ酸配列番号13)(それぞれ、その前にはプロモーター配列を配置した)と、そのウイルスゲノムに相同組み換えが生じるように、MVA-BN内の標的挿入部位と同一である配列を含めた。そのHER2v2のコード配列(すなわちヌクレオチド配列)は、配列番号4であり、Twistのコード配列は、配列番号6であり、CD40Lのコード配列は、配列番号14である。
【0221】
上記のmBN MVA(例えば、mBN445、mBN451及びmBN484)の作製の際には、CEF細胞培養物にそれぞれ、MVA-BNを接種し、それぞれ、対応する組み換えプラスミドをトランスフェクションした。次に、選択圧をかける薬剤を含む培地中のCEF培養物に、これらの細胞培養物から得た試料を接種し、蛍光を発現しているウイルスクローンをプラーク精製によって単離した。蛍光タンパク質を含む選択カセットをこれらのウイルスクローンから欠失させるのには、第2の工程において、CREを介した組み換え(各コンストラクトにおいて、その選択カセットを挟み込んでいる2つのloxP部位を伴う)を介在させた。その第2の組み換え工程後、MVA-BNの標的座位内にプロモーターが挿入された状態で、導入遺伝子配列のみ(例えば、HER2、Brachyury及び/またはCD40L)が保持された。選択カセットが欠失したプラーク精製済みウイルスのストックを調製した。
【0222】
その後、記載されているコンストラクトを接種した細胞で、その所定の導入遺伝子の発現を証明した(例えば、
図17を参照されたい)。
【0223】
mBNbc388、mBNbc389、mBNbc346及びmBNbc354の作製は、細菌人工染色体(BAC)でクローン型のMVA-BNを用いることによって行った。mBNbc388及びmBNbc389、ならびにmBNbc346及びmBNbc354用の異なる導入遺伝子をそれぞれ含む組み換えプラスミドを使用した。MVAにも存在することにより、組み込み部位の特異的な標的化を可能にする配列をそれらのプラスミドに含めた。抗原であるAH1A5、p15e、OVA、Her2v1、Twist、TRP2及び/またはCD40Lをコードするヌクレオチド配列は、MVAウイルスゲノムへの組み換えを可能にするMVA配列の間に置いた。したがって、それぞれプロモーターの下流に、AH1A5、p15e、OVA、HER2v1、Twist、TRP2及び/またはCD40Lのコード配列を含む各コンストラクトに対して、プラスミドを構築した。簡潔に述べると、BAC DNAをBHK-21細胞にトランスフェクションし、それらの細胞に、ヘルパーウイルスとしてのショープ線維腫ウイルスを重感染させることによって、感染性ウイルスをBACから再構築した。CEF細胞培養液で3代追加継代した後、ヘルパーウイルスを含まないMVA-mBNbc388及びMVA-mBNbc389を得た。例示的なMVA作製法は、Baur et al.(2010)Virol.84:8743-52,“Immediate-early expression of a recombinant antigen by modified vaccinia virus Ankara breaks the immunodominance of strong vector-specific B8R antigen in acute and memory CD8 T-cell responses”にも見られる。
【0224】
実施例14:MVA-HER2-Brachyury-CD40Lの異種発現
HeLa細胞を未処置のままにするか(モック)、またはMVA-BNもしくはMVA-HER2v1-Brachyury-CD40L(MVA-mBN445)に感染させるかした。一晩培養後、細胞を抗HER2-APC(クローン24D2)、抗Brachyury(ウサギポリクローナル)+抗ウサギIgG-PE及び抗CD40L-APC(クローンTRAP1)で染色した。
図18A~18Dに示されているように、フローサイトメトリー解析によって、3つのすべての導入遺伝子の発現が明らかになった。
【0225】
実施例15:MVA-HER2-Brachyury-CD40Lによる、ヒトDCの活性化の増強
プロトコール(Miltenyi、MO-DC Generation Tool Box)に従って、ヒトPBMCから得たCD14+単球を濃縮した後、単球由来樹状細胞(DC)を作製し、7日間、GM-CSF及びIL-4の存在下で培養した。DCをMVA-HER2v1-BrachyuryまたはMVA-HER2-Brachyury-CD40Lで刺激した。
図19に示されているように、A)CD40L、B)CD86及びC)クラスII MHCの発現をフローサイトメトリーによって解析した。D)に示されているように、一晩培養後、上清中のIL-12p70の濃度をLuminexによって定量した。
【0226】
この実験から、rMVA-HER2v1-Brachyury-CD40Lが、ヒトDCを刺激し、ヒトDCの活性化を誘導し、その結果、ヒトDCが抗原を提示する能力を増強することが示されている。Th1の分化を促し、NK細胞を活性化させるサイトカインIL-12p70が、刺激されたヒトDCにより産生されることから、MVA-HER2v1-Brachyury-CD40Lが、ヒトDCを炎症誘発性表現型の方向に活性化させることが示されている。
【0227】
実施例16:MVA-HER2-Twist-CD40L(mBNbc388)の静脈内投与により、HER2特異的CD8+ T細胞の腫瘍内浸潤が増強される
CT26.HER2腫瘍を有するBalb/cマウスに、PBSまたは5×10
7 TCID
50のMVA-HER2v1-Twist-CD40Lのいずれかを静脈内投与した。7日後、マウスを殺処分し、脾臓のCD8+ T細胞及び腫瘍内に浸潤しているCD8+ T細胞を磁気細胞ソーティングによって単離し、HER2ペプチドをロードした樹状細胞の存在下で、5時間培養した。グラフには、CD8+ T細胞におけるCD44+ IFNγ+細胞のパーセンテージが示されている。結果は、平均±標準誤差として示されている。
図20に示されている結果から、本発明の様々な実施形態が腫瘍特異的であることが示されている。
【0228】
実施例17:PD-1チェックポイントアンタゴニストによる遮断と組み合わせて、rMVA-CD40LをIV投与した際の全生存率の上昇及び腫瘍の縮小
【0229】
【0230】
90mm
3のMC38大腸癌を有するC57BL/6マウスを5×10
7 TCID
50のMVA-AH1A5-p15e-TRP2-CD40L(
図20には、rMVA-p15e-CD40Lとして示されている)でIV免疫した。続いて、表3に示されているように、免疫後、同日に10mg/kgのPD-1抗体またはPBSを投与してから、免疫後2週間以内に追加の抗体投与を3回行った。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図21に示されているのは、腫瘍平均体積(A)及び腫瘍なしの生存率(B)である。これらのデータから、大腸癌モデルにおいて、PD-1チェックポイントを遮断すると、腫瘍関連抗原及びCD40Lをコードする組み換えMVAで治療的免疫を1回行うことにより得られる抗腫瘍作用が増強されるので、腫瘍拒絶が誘導されることが示されている。
【0231】
実施例18:HER2を発現する大腸癌において、抗PD-1チェックポイントによる遮断と組み合わせて、rMVA-HER2-Twist-CD40LをIV投与した際の全生存率の上昇及び腫瘍の縮小
85mm3のMC38.HER2大腸癌を有するC57BL/6マウスをMVA-HER2v1-Twist-CD40LでIV免疫するか、またはそのマウスにPBSを投与するかした。続いて、免疫後、PD-1抗体を投与した。腫瘍の成長を等間隔で測定した。
図22に示されているのは、腫瘍平均体積(A)及び腫瘍なしの生存率(B)である。これらのデータから、HER2を発現する大腸癌モデルにおいて、PD-1チェックポイントを遮断すると、rMVA-HER2v1-Twist-CD40Lで治療的免疫を1回行うことにより得られる抗腫瘍作用が増強されるので、腫瘍拒絶が誘導されることが示されている。
【0232】
図21及び22の両方に示されているように、驚くべきことに、TAA及びCD40Lをコードする組み換えMVAに、PD-1チェックポイントアンタゴニストを加えたところ、抗腫瘍作用の増大が見られた。
図15及び17に示されているように、rMVAの静脈内投与により、PD1及びLag3の発現が減少し、rMVA-CD40Lの静脈内投与により、発現がさらに減少した。
【0233】
Brachyuryのマウスホモログは、正常なマウス組織でも高度には発現せず、マウス腫瘍組織でも顕著には発現しないので、能動免疫療法の標的としてのBrachyuryの有効性は、マウスモデル系では効果的には研究できない(WO2014/043535(参照により、本明細書に援用される)を参照されたい)。マウスモデルで用いられている、ヒトBrachyuryのマウスホモログであるTwistは、ヒトにおけるBrachyury機能の予測モデルである。このことは、WO2014/043535で立証された。Brachyuryと同様に、EMT制御因子のマウスホモログTwistは、発生の際に、E-カドヘリンによって媒介される細胞間接着をダウンレギュレートし、間葉系マーカーをアップレギュレートすることによってEMTを促すとともに、マウス腫瘍組織において主に発現する(例えば、WO2014/043535の
図5及び実施例8を参照されたい)。したがって、Twist特異的ながんワクチンのマウスにおける試験では、ヒトにおけるBrachyury特異的ながんワクチンの有効性に関する強力な予測値が得られる可能性が非常に高い。上記文献を参照されたい。
【0234】
実施例19:CTLA-4チェックポイントの遮断と組み合わせて、rMVA-CD40LをIV投与した際の全生存率の上昇及び腫瘍の縮小
85mm3のMC38大腸癌を有するC57BL/6マウスをMVA-AH1A5-p15e-TRP2-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫するか、そのマウスにPBSを投与する。続いて、免疫後、CTLA-4抗体を投与する。腫瘍の成長を等間隔で測定する。
【0235】
実施例20:Lag3チェックポイントの遮断と組み合わせて、rMVA-CD40LをIV投与した際の全生存率の上昇及び腫瘍の縮小
85mm3のMC38大腸癌を有するC57BL/6マウスをMVA-AH1A5-p15e-TRP2-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫するか、そのマウスにPBSを投与する。続いて、免疫後、Lag3抗体を投与する。腫瘍の成長を等間隔で測定する。
【0236】
実施例21:TIM-3チェックポイントの遮断と組み合わせて、rMVA-CD40LをIV投与した際の全生存率の上昇及び腫瘍の縮小
85mm3のMC38大腸癌を有するC57BL/6マウスをMVA-AH1A5-p15e-TRP2-CD40L(rMVA-CD40L)でIV免疫するか、またはそのマウスにPBSを投与する。続いて、免疫後、Tim3抗体の投与を行う。腫瘍の成長を等間隔で測定する。
【0237】
実施例22:組み換えMVA-CD40Lの静脈内投与により、腫瘍微小環境へのT細胞浸潤の継続時間が長くなった
TCRトランスジェニックOVA特異的CD8 T細胞(OT-I)をB16.OVA腫瘍担持マウスに、腫瘍が触知可能となったら静脈内移入する。腫瘍の体積が少なくとも60mm3に達したら、マウスをMVA-BN、MVA-OVA(rMVA)またはMVA-OVA-CD40L(rMVA-CD40L)で免疫する(組み換えMVAの用量は、5×107 TCID50であった)。17日後、マウスを殺処分し、A)CD8+ T細胞におけるLag3+の出現頻度、及びB)TIM3+ CD8+ T細胞の出現頻度について解析する。
【0238】
実施例23:内因性レトロウイルス抗原Gp70及びCD40LをコードするMVAウイルスの静脈内注射がCT26.wt腫瘍に及ぼす抗腫瘍作用
共刺激分子CD40Lとともに、またはCD40Lのコードはなしに、マウス内因性レトロウイルス抗原(ERV)タンパク質Gp70(マウス白血病ウイルスのエンベロープタンパク質)をコードする組み換えMVAを作製した。CT26.wt大腸癌モデルを用いて、これらのコンストラクトの潜在的な抗腫瘍作用を評価した。CT26.wt細胞は、高レベルのGp70を発現することが示されている(Scrimieri(2013)Oncoimmunol.2:e26889を参照されたい)。
【0239】
腫瘍が少なくとも5×5mmとなったら、CT26.wt腫瘍担持マウスを静脈内免疫した。MVA単独による処置では、腫瘍の緩やかな成長遅延が誘導されたが、GP70をコードするMVAによる処置では、5匹のうち3匹の腫瘍が完全に拒絶された(
図23A及びB)。MVA-Gp70-CD40Lで処置した場合には、5匹のうち4匹の腫瘍の拒絶という、さらに顕著な結果が得られた(
図23A及びB)。
【0240】
免疫後、抗腫瘍応答とGp70特異的T細胞の誘導が相関するか判断するために、H-2Kd拘束性gp70エピトープAH1を用いて、血液の再刺激を行った。その結果から、MVA-Gp70で処置したマウス及びMVA-Gp70-CD40Lで処置したマウスにおいて、Gp70特異的CD8 T細胞応答が強力に誘導されたことが示されている(
図23C)。
【0241】
実施例24:内因性レトロウイルス抗原Gp70及びCD40LをコードするMVAウイルスの静脈内注射がB16.F10腫瘍に及ぼす抗腫瘍作用
B16.F10は、C57BL/6に由来するメラノーマ細胞株である。CT26.wt細胞と同様に、B16.F10細胞は、高レベルのGp70を発現する(Scrimieri(2013)Oncoimmunol.2:e26889を参照されたい)。B16.F10腫瘍担持マウスを作製し、そのマウスを用いて、CD40Lとともに、またはCD40Lのコードなしに、gp70をコードするMVA(それぞれ、MVA-gp70-CD40L及びMVA-gp70とした)の抗腫瘍作用をさらに評価した。
【0242】
MVA単独(「MVA-BN」)で処置したところ、B16.F10腫瘍の多少の成長遅延が見られ、その作用は、MVA-Gp70の作用(
図24A)と同程度であったが、MVA-Gp70-CD40Lでは、さらに強い抗腫瘍作用が得られた。CD8 T細胞応答の評価により、CD40Lをコードさせた場合に観察された、T細胞応答の増大は、有意ではなかった(
図24B)。
【0243】
本明細書に記載されている方法または組成物の正確な詳細は、記載されている発明の趣旨から逸脱せずに変更または修正してよいことは明らかであろう。我々は、後述の請求項の範囲及び趣旨の範囲内である上記のような修正形態または変更形態のすべてを特許請求する。
【0244】
配列表
付随の配列表に列挙されている核酸配列アミノ酸配列は、米国特許法施行規則1.822に定義されているように、ヌクレオチド塩基については標準的な略記、アミノ酸については、1文字表記または3文字表記のいずれかを用いて示されている。各核酸配列の1本の鎖のみが示されているが、示されている鎖に言及することによっていずれも、その相補鎖が含まれるものとして理解されたい。
【0245】
配列番号1
合成Her2v1アミノ酸配列(1,145アミノ酸):
【化1】
【0246】
配列番号2
合成Her2v1ヌクレオチド配列(3441ヌクレオチド):
【化2】
【0247】
配列番号3
合成Her2v2アミノ酸配列(1,145アミノ酸):
【化3】
【0248】
配列番号4
合成Her2v2ヌクレオチド配列(3441ヌクレオチド):
【化4】
【0249】
配列番号5
合成Brachyuryアミノ酸配列(427アミノ酸ヌクレオチド):
【化5】
【0250】
配列番号6
合成Brachyuryヌクレオチド配列(1,287ヌクレオチド):
【化6】
【0251】
配列番号7(435aa)
GenBankアクセッション番号015178.1のBrachyuryタンパク質アイソフォーム1
【化7】
【0252】
配列番号8(1308nt)
GenBankアクセッション番号015178.1のBrachyuryタンパク質アイソフォーム1のコード配列
【化8】
【0253】
配列番号9(435aa)
Brachyuryタンパク質アイソフォーム1(L254V)
【化9】
【0254】
配列番号10(1308nt)
L254Vを有するBrachyuryタンパク質アイソフォーム1をコードするコード配列
【化10】
【0255】
配列番号11(449aa)
Brachyury-I3融合タンパク質
【化11】
【0256】
配列番号12(1350nt)
配列番号9のI3 Brachyury融合タンパク質をコードするコード配列
【化12】
【0257】
配列番号13
NCBI RefSeq NP_000065.1のhCD40L(261アミノ酸)
【化13】
【0258】
配列番号14
NCBI RefSeq NP_000065.1のhCD40L(789ヌクレオチド)
nt配列:
【化14】
【0259】
配列番号15
合成Twistアミノ酸配列(205アミノ酸):
【化15】
【0260】
配列番号16
合成Twistヌクレオチド配列(618ヌクレオチド):
【化16】
【0261】
配列番号17
合成マウスCD40Lアミノ酸配列(260アミノ酸):
【化17】
【0262】
配列番号18
合成マウスCD40Lヌクレオチド配列(786ヌクレオチド):
【化18】
【配列表】