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特許7555341レーザパターニングされた有機薄膜太陽電池の安定化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】レーザパターニングされた有機薄膜太陽電池の安定化
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20240913BHJP
   H10K 30/88 20230101ALI20240913BHJP
   H10K 39/10 20230101ALI20240913BHJP
   H10K 71/20 20230101ALI20240913BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/88
H10K39/10
H10K71/20
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021534305
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 DE2019101097
(87)【国際公開番号】W WO2020119865
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102018132342.5
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521258371
【氏名又は名称】ヘリアテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】ウルリケ ベヴェルスドルフ-サルレット
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ファイファー-ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル トップ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ファイルタイヒ
(72)【発明者】
【氏名】ニコイル パーガー
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168798(JP,A)
【文献】特開2015-157370(JP,A)
【文献】特開2012-190612(JP,A)
【文献】特開2012-023070(JP,A)
【文献】特開2017-011066(JP,A)
【文献】特開2003-115598(JP,A)
【文献】特開2019-050196(JP,A)
【文献】米国特許第09590133(US,B1)
【文献】中国実用新案第202167502(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザパターニングされた有機薄膜太陽電池(OPV)をロールツーロール法において安定化し封止する方法であって、
a.基板(1)上に基板電極を設置し、前記基板電極(2)をレーザパターニングし、前記基板電極(2)上にスタック(3)を設置し、前記スタック(3)をレーザパターニングし、対向電極(4)を設置することにより、前記基板(1)上にレーザパターニングされたOPVを提供するステップと、
b.ステップa)の後に、安定化層(5)を設置するステップであって、前記安定化層(5)はナノポーラスで柔軟性のある特性を有し、少なくともケイ素と、酸素又は窒素と、炭素と、を含み、前記ナノポーラスで柔軟性のある安定化層(5)は2nm未満、及び/又は2~50nmの孔の大きさを有するステップと、
c.ステップb)の後に、平坦化層(6)を設置するステップと、
d.ステップc)の後に、封止材(7)を設置するステップと、を含み、
前記安定化層(5)はPECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法によって設置されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記対向電極(4)のパターニングはステップa)で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対向電極(4)のパターニングはステップb)とc)の間で行われ、前記対向電極(4)のパターニング後にさらなる安定化層(5)が設置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対向電極(4)のパターニングはステップc)の直後に続いて行われ、ステップd)の前にさらなる安定化層(5)が設置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記安定化層(5)は、中空陰極法、又はマグネトロンPECVDで設置されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
a.安定化層(5)は、テトラメチルシラン(TMS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDSN)、シラン(SiH4)、トリエトキシシラン(TriEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、及びトリメトキシシラン(TriMOS)の群から選択された1つ又は複数の前駆体を用いて形成され、
b.窒素及び/又は酸素から選択された反応ガスを用いて形成され、
c.希ガス群から選択された不活性ガスを用いて形成されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ロールツーロールのコーティング装置に係るコーティング圧力は50Pa未満であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
反応ガスと前駆体の比率は2より大きく、20未満であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
反応ガスと前駆体の比率は2より大きく、10未満であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前駆体1sccmあたりのプラズマパワーは100W/sccm以下であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記平坦化層は、UV架橋層を印刷することによって、又はPECVD法によって、前駆体を用いて実現され
前記前駆体は、テトラメチルシラン(TMS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDSN)、シラン(SiH4)、トリエトキシシラン(TriEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、及びトリメトキシシラン(TriMOS)の群から選択された少なくとも1つの前駆体である
ことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
レーザパターニングされたOPVのレーザ処理された突起物(A)を安定化するための安定化層(5)であって、テトラメチルシラン(TMS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDSN)、シラン(SiH4)、トリエトキシシラン(TriEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、及びトリメトキシシラン(TriMOS)の群から選択された少なくとも1つの前駆体を用いて形成されるものにおいて、前記安定化層(5)は、ナノポーラスで柔軟性のある特性を有し、少なくともケイ素又はチタンと、酸素又は窒素と、炭素と、を含み、前記ナノポーラスで柔軟性のある安定化層(5)は2nm未満、及び/又は2~50nmの孔の大きさを有することを特徴とする安定化層(5)。
【請求項13】
前記安定化(5)の厚さは100nmより大きいことを特徴とする、請求項12に記載の安定化層(5)。
【請求項14】
炭素含有量は、15at%よりも大きいことを特徴とする、請求項12または13に記載の安定化層(5)。
【請求項15】
請求項1に記載の方法に従って作られた安定化層(5)を含み、レーザパターニングされた突起物を有する薄膜太陽電池部品。
【請求項16】
前記PECVD法は、中空陰極PECVD法を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザパターニングされた有機薄膜太陽電池(OPV)の突起物を安定化させるための層の製造方法、及びレーザパターニングされた有機薄膜太陽電池の安定化層について記載している。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池モジュールは、2つの電極を含む、基板上に設置されたスタックから構成されており、一方の電極が基板上に設置され、他方の電極が対向電極として基板から離れて設置されている。2つの電極間には、有機積層体が配置されている。有機薄膜太陽電池モジュールは、例えば、材料を蒸発させたり、ポリマーを印刷したり、液体から処理したりすることで製造できる。有機光活性部品の原理的な構造は、例えば、国際公開第2004083958号や国際公開第2011138021号に開示されている。
【0003】
発明者達は、小分子を、十分に定義された数のモノマー、典型的には10個以下のモノマーを含み、十分に定義された質量、典型的には1500g/mol以下、好ましくは1200g/mol以下の質量を有し、重合連鎖反応の副産物としてポリマーに存在し得るように、分子鎖の末端に未定義の、場合によって反応性の基を持たない吸収体材料であると理解している。小分子系のこれらの吸収体材料の利点は、真空中での蒸発性と、それに関連する勾配昇華による精製の可能性である。それにより、異なる純粋な材料を順次蒸発させることで、任意に複雑な多層システムを製造することができる。さらに、これらの吸収体材料は、光活性ヘテロ接合(例えばバルクヘテロ接合)を可能にする。
【0004】
セルの積層体内の光活性層は、1つのアクセプタ吸収体材料のみ、若しくは1つのドナー吸収体材料のみを含んでもよく、又は異なる種類及び/又は同じ種類の複数の吸収体材料の組み合わせを含んでもよく、励起子の形成に寄与する。さらに、吸収特性を向上させるために、吸収層に材料を添加してもよい。
【0005】
さらに、電極間の有機積層体は、光活性(吸収)層のみから構成されなくてもよい。マルチセルシステムを構築するために、さらなる層、例えば輸送層、好ましくは個々の光活性(吸収)層/(吸収)層システムの間や、有機光活性(吸収)層システムと電極との間のドープされた輸送層を、積層体に導入してもよい。これにより、光電界の電界強度分布に関連して光活性層を最適に配置することが可能である。
【0006】
有機薄膜太陽電池モジュール(有機太陽電池又は有機光検出器)は、空気及び/又は酸素及び/又は水と直接接触することにより耐用年数が著しく低下するため、封止によって十分に保護する必要がある。封止は、バリアフィルム又は直接的な封止剤によって行われる。
【0007】
レーザ処理された有機薄膜太陽電池モジュールは、レーザ処理によってパターニングされる。この方法は、とりわけロールツーロール法で、モジュール上の個々の太陽電池ストリングの接続や、太陽モジュールの電気分離にも使用される/使用することができる。有機薄膜太陽電池ストリングのモジュールへの接続は、レーザ接続(P1、P2、P3、P4)によって実現することができ、この原理は、例えば、独国特許出願公開第102016118177A1号明細書に記載されている。
【0008】
これにより、とりわけ電極のパターニングの際に、有機薄膜太陽電池モジュールのスタックの平坦形状の積層体の高さを何倍も超える場合がある、いわゆるレーザスクライブと呼ばれる突起物が発生する。有機積層体の約100~400nmの厚さで、すでに2μm以上の高さの突起物が測定された。これらは、カバー層なしでモジュールを巻き取る場合はモジュールを損傷し、その後封止する場合は、使用された接着剤によって有機層を損傷し得る。
【0009】
独国特許出願公開第102015116418A1号明細書では、巻回保護層としてUV架橋層の印刷を提案されており、さらなる方法ステップの範囲で、例えばモジュールを巻き取る際に、突起部の折り返し又は折り込みが短絡の原因となることを防ぐために、この層はケイ素ベースで液体の形態で塗布される。
【0010】
米国特許出願公開第2008/0102206A1号明細書では、処理パラメータを変化させることにより、1つの方法ステップにおいて多層コーティングを製造する方法が開示されている。
【0011】
Gebhard,M. et al.:Laser structuring of flexible organic solar cells.Laser Technik Journal 1013,H.1,S.25-28.に、ポリマー太陽電池の製造のためのP1、P2、及びP3レーザパターニングについて記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先行技術の欠点
独国特許出願公開第102015116418A1号明細書で提案されている印刷されたUV架橋層は、架橋後もガスを発生する可能性があり、これにより、後続の封止の接着性が損なわれる可能性がある。さらに、対向電極の剥がれがまれに観察された。また、液状の材料をその下に位置する有機スタックに設置することは、有機物、すなわち電極間に配置された有機積層体を攻撃する可能性があり、有機太陽電池の耐用年数や性能の低下につながるため好ましくない。大面積のモジュールを製造するためのロールツーロール法では、試験室の小さなサンプルで用いられるように、有機物を単にカバーするだけでは、これによって短絡が発生し得るため十分ではない。さらに、ロールツーロール法では、材料を均一に塗布するために、プロセスパラメータを一定の変動幅で一定に保つ必要がある。
【0013】
米国特許出願公開第2008/0102206A1号明細書に開示されている方法は、チャンバ内における当該方法によれば、この方法ステップの間、チャンバ内でプラズマ混合物が変化し(パラメータの強い変動)、これにより、複数の異なるコーティング層の塗布が行われるため、ロールツーロール法による大面積モジュールの製造には適切でない。これは、「固定された」チャンバでのみ使用でき、コーティングされる対象物がチャンバ内を移動する場合は使用できない。米国特許出願公開第2008/0102206A1号明細書に記載されている方法は、封止材として使用する範囲でウォータバリアを実現するという課題がある。さらに、米国特許出願公開第2008/0102206A1号明細書に記載されている方法で製造されたコーティングは、これらのパラメータがむしろ硬いコーティングを可能にするため、巻回保護層として使用することはできない。
【0014】
本発明が基づく技術的問題点は、一方では、太陽電池の各層をレーザパターニングすることによって生じる突起物を安定化させて、先行技術において確認された欠点を解消し、他方ではロールツーロール法において統合できる薄層を用いた密封や密閉を可能にすることであった。とりわけ小分子系OPVでは使用可能性が重要である。この層を設置した後、平滑な表面に封止材を設置することができる。さらに、この層自体が半製品の巻取りを可能にし、さらにその後の完成品の巻取りや巻戻しに悪影響を及ぼさないことが重要である。
【0015】
発明者達は、半製品とは、まだ封止されていないOPVモジュールであると理解している。完成品は封止され、作動に必要な端子が搭載される。封止の課題は、OPVモジュールの耐用年数が延びるように、例えば水/水蒸気などの環境の影響に対するバリアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
レーザ処理によって発生した突起物を安定化させるための技術的問題点は、例えばSiOCHなどのナノポーラスプラズマポリマー系安定化層によって解決される。
【0017】
ナノポーラス材料は、規則的な多孔質構造を持つ規則的な骨格で構成されている。孔の大きさはナノメートルの範囲である。IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)によると、ナノポーラス材料は、2nm未満のサイズのマイクロポーラス材料、2~50nmのサイズのメソポーラス材料、50nm以上のサイズのマクロポーラス材料の3つのグループに分けられている。
【0018】
その後、この安定化層に封止材を設置することができ、封止には事前の平坦化が必要な場合がある。
【0019】
SiOCH層の成膜は、例えば中空陰極PECVD(arcPECVD)法などのPlasma Enhanced Chemical Vapor Deposition(PECVD)法によって、HMDSO前駆体又はビストリメチルシリメタン(BTMSM)前駆体又はテトラエチルオルトシリケート(TEOS)前駆体又はテトラメチルシラン(TMS)前駆体又はヘキサメチルジシラザン(HMDSN)前駆体(さらなる前駆体(前駆体材料)が考えられる)を介して堆積できる。マイクロ波PECVD法の使用は、OLED(有機発光ダイオード)の封止のための製造分野から知られている。OLEDの製造では、層のレーザパターニングは必要なく、知られていないため、OLEDでは平坦な形状が得られ、封止は、例えば、マイクロ波PECVD堆積によって行われる薄膜封止(thin film encapsulation=TFE)によって直接実現することができる。OLEDの製造においては、バリア材料の一つとして、低い誘電率k(Low-k材料)を持つプラズマポリマーが提案されている。
【0020】
本発明にかかる方法は、主に酸化的な性質を持ち、直流電源の使用によって層の有機物含有量に影響を与える、OLED分野で使用されるマイクロ波PECVD法とは異なる。これにより、本発明によれば、典型的に約100°nmの厚さである直接的なSiN封止材よりも厚い、最大500°nm又は最大約1若しくは2μmの層を堆積することができる。
【0021】
レーザパターニングされた突起物の安定化のための層を使用するためには、この層がナノポーラス特性を有し、それにより安定化層がさらなる製造プロセスにおいても巻き取ることができることが特に重要である。先行技術で知られている製造パラメータでは、ナノポーラスで柔軟性のある層は得られず、むしろ非常に安定した柔軟性のない層が得られる。広範囲にわたって検査し、パラメータを調整することによってのみ、先行技術の欠点を解消するナノポーラスで柔軟性のある層を製造することができた。
【0022】
SiOCHは、炭素含有量によって有機的な特性を獲得する酸化ケイ素(SiOx)である。すなわち、炭素含有量は、化学構造と、ポリマー状の部分的に架橋された鎖構造に影響を与える。その材料はSiOxよりも弾力性および柔軟性があり、柔軟で弾性的な特性を有するナノポーラス材料である。
【0023】
レーザパターニングされた突起物(A、B)の安定化と封止に対する技術的問題点は、プラズマポリマー層の設置とそれに続く封止によって解決され、これは以下のステップを含む。
1.少なくとも有機スタックと基板電極のパターニングを含む、基板上にレーザパターニングされたOPVを提供するステップと、
2.安定化層を設置するステップと、
3.任意の平坦化層を設置するステップと、
4.封止材を設置するステップ。
【0024】
レーザパターニングされたOPVを提供するステップは、少なくとも以下のステップを含む。
1.基板(1)を提供するステップと、
2.基板電極(2)を設置し、基板電極(2)をパターニングするステップと、
3.有機積層体のパターニングを含む、スタック(3)と呼ばれる輸送層と光活性吸収層とを含む有機太陽電池の層を設置するステップと、
4.対向電極(4)を設置するステップ。
【0025】
理想的には、安定化層はSiOCH材料、又はナノポーラス特性を持つSiOCHに類似した材料を含む。
【0026】
これにより、その後の封止に備えるため、及び製造過程での巻回保護層として、レーザパターニングされた突起物の安定化が提供される。
【0027】
他のプラズマポリマーの使用は、これが薄膜太陽電池モジュールの有機物への影響(損傷、耐用年数の低下)がなく、長期安定性のある透明な材料であり、十分な機械的安定性、すなわち接着性及び柔軟性、又は熱膨張性を有し、その結果、異なる材料(有機物と安定化層)の異なる膨張によって追加のストレスが生じない場合に可能である。
【0028】
理想的には、安定化層は、その後、モジュール全体をバリアフィルムと接着剤で封止する際に、太陽電池の有機スタックをバリアフィルムの接着剤との意図しない相互作用から保護することができる。
【0029】
理想的には、安定化層は、ロールツーロール法で完成品を製造するための後続の方法ステップの間、及び/又は完成品の巻取りの間に、巻取り及び巻戻しを可能にする。
【発明の効果】
【0030】
当該技術的問題点を解決することで、有機スタックのレーザ処理された突起物を安定化させ、その結果、続いてモジュールを封止することができた。これにより、以下のことがもたらされる。
a)レーザパターニング後の突起物の折り返し又は折り込みによる短絡が防止される。
b)後続の封止材、例えば薄膜封止材を、封止プロセスに必要な平面形状に設置できるように、閉鎖した平面形状が提供される。
c)有機太陽電池の十分な機械的保護性を確保することにより、例えば安定化層及び任意の平坦化層を設置した後、ロールツーロール法の間の巻取り及び巻戻しを可能にする。
d)続いてモジュール全体をバリアフィルムと接着剤で封止する際に、本発明にかかる安定化層は、太陽電池の有機スタックを、バリアフィルムの接着剤との意図しない相互作用から、よりよく保護することができる。
【0031】
PECVD法の中空陰極堆積法と、それによって堆積されたSiOCH層を用いることにより、レーザパターニングされた突起物をカバーするために必要な高い層厚であっても、窒化ケイ素バリア層(SiN)を用いた場合よりも優れた弾性構造が得られる。さらに、これにより水蒸気バリアが実現され、水蒸気バリアによって、次のプロセスステップでの水蒸気からの保護性が向上し、有機スタックへの封入時に使用される材料のガス排出を阻止/低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明にかかる安定化層(5)、任意の平坦化層(6)、及び封止材(7)を含む、封止のために安定化及び平坦化が必要な突起物(A)(及び(B))を有するレーザパターニングされた有機太陽電池の形状を例示的に示す。
図2】安定化層(5)と、任意の平坦化層(6)及び封止材(7)との関係における、レーザパターニングされた突起物のサイズを示す。
図3】安定化層(5)と、任意の平坦化層(6)及び封止材(7)との関係における、レーザパターニングされた突起物のサイズを示す。
図4】安定化層(5)と、任意の平坦化層(6)及び封止材(7)との関係における、レーザパターニングされた突起物のサイズを示す。
図5】安定化層(5)と、任意の平坦化層(6)及び封止材(7)との関係における、レーザパターニングされた突起物のサイズを示す。
図6】安定化層がある場合及びない場合のレーザパターニングされたOPVの、物理的実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ロールツーロール法による有機太陽電池モジュールの製造は、第1電極(基板電極)が設置され、その後パターニングされた基板の提供と、第1電極及び第2電極(対向電極)の間に設置された有機積層体であって、吸収層と、(部分的に)ドープされた輸送層及びドープされていない輸送層との両方を含み、続いて第2電極(対向電極)が設置される有機積層体によって行われる。
【0034】
本発明によれば、レーザパターニングされた突起物を保護するために、ナノポーラスプラズマポリマー系安定化層が上記の積層体に設置される。
【0035】
安定化は、以下の処理ステップを含む方法によって、その後の封止に備えて行われる。
a)P3パターニングを有する太陽電池の有機スタックを提供するステップ。
b)安定化層(5)を設置し、それに続いて封止材(7)を設置するステップ。
【0036】
安定化層(5)は、テトラメチルシラン(TMS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDSN)、シラン(SiH)、トリエトキシシラン(TriEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、及びトリメトキシシラン(TriMOS)の群から選択された少なくとも1つの前駆体を含む、ナノポーラスプラズマポリマーを含む。
【0037】
一実施形態によれば、安定化層(5)は、その厚さが100nmより大きく、好ましくは150nmより大きく、特に好ましくは200nmより大きく、非常に特に好ましくは300nmより大きく、より特に好ましくは500nmより大きい。
【0038】
本発明にかかる一実施形態によれば、安定化層(5)は、少なくとも2at%のケイ素又はチタンと、少なくとも2at%の酸素又は窒素とを含み、少なくとも2at%の炭素を含む。
【0039】
本発明にかかる一実施形態によれば、安定化層(5)は、15at%よりも大きい、好ましくは20at%よりも大きい、特に好ましくは25at%よりも大きい炭素含有量を含む。
【0040】
一実施形態によれば、安定化層(5)は勾配として構成されてもよく、炭素含有量は層の厚さにわたって少なくとも約2at%、好ましくは少なくとも約4at%、特に好ましくは約6at%よりも大きく変化する。
【0041】
ナノポーラスプラズマポリマーの製造時には、窒素及び/又は酸素から選択された反応ガスが使用される。
【0042】
他の実施形態では、安定化層は、例えばSiONCH、SiNCHなどのSiOCHに類似した材料を含む。
【0043】
これらは、上記の群から選択された前駆体を、反応ガスとしての窒素と組み合わせて使用することで製造される。
【0044】
さらに/代替的に、安定化層としてチタン含有層を用いてもよい。これは、チタンを含むモノマー、例えばチタンプロポキシドやテトライソプロポキシルオルソチタネート(TIPT)、又はTiClを用いて製造することができる。
【0045】
他の実施形態では、テトラメチルアルミニウム、トリメチルアルミニウムが、NOと組み合わせてAlを使用することで製造できる安定化層として提案されている。
【0046】
さらに、製造時には、例えばアルゴン、キセノン、ネオンなど、好ましくはアルゴンの希ガス群から選択された不活性ガスが使用される。
【0047】
本発明者達は、広範囲にわたる検査の結果、安定化層の製造のためのパラメータを調整した。好ましくないケースでは、先行技術で既知なパラメータを使用した場合、安定化層が得られるが、この安定化層は非常に強固であるため、巻取り中に有機スタックから電極が剥離する。
【0048】
本発明によれば、反応ガスと前駆体の比率は4より大きく、好ましくは6より大きく、20未満であり、好ましくは12未満であり、特に好ましくは10未満である。比率が低すぎる場合、安定化層の層応力が大きくなりすぎる。
【0049】
本発明によれば、コーティング圧力は50Pa未満であり、好ましくは10Pa未満であり、特に好ましくは5Pa未満である。
【0050】
本発明によれば、前駆体モノマー1sccmあたりのプラズマパワーは100W/sccm以下であり、好ましくは15~80W/sccmの範囲であり、30~80W/sccmの範囲であり、特に好ましくは40~50W/sccmの範囲である。
【0051】
続く封止材(7)は、バリアフィルムや直接的な封止剤によって実施することができる。これは既知の方法で実現できる。
【0052】
突起物が非常に大きい場合、状況によっては安定化後に平坦化層を設置し、平面上で封止ができるようにする必要がある。
【0053】
平坦化層(6)は、例えば、独国特許出願公開第102015116418A1号明細書で提案されている印刷されたUV架橋層を設置することによって、又は別の材料によって行うことができ、それによって、平坦な表面を提供することができる。
【0054】
直接的な封止剤で封止する場合、他の前駆体を使用することが有益な場合がある。これにより、孔の大きさを変化させることができる。
【0055】
さらに、モジュールの封止は、少なくとも1つのPECVD_層又はALD(atomic layer deposition)層で行うこともできる。
【実施例
【0056】
考えられる実施例での製造は、小分子系材料からなる有機層を有する有機太陽電池を、ロールツーロールのコーティング装置で製造することを含む。
【0057】
実施例1
この太陽電池モジュールは、巻込み及び巻出しを含むSiOCH堆積を特徴としており、以下の方法ステップを含む。
1.ロールツーロールのコーティング装置において、陰極堆積まで有機太陽電池を製造し、続いて、太陽電池フィルムを巻き取るステップ。
2.窒素雰囲気下で、より低圧で作動可能な別のロールツーロールPECVD装置に輸送するステップ。
3.太陽電池フィルムを巻き出してP3レーザパターニングするステップ。
4.巻回保護層として平坦化層を堆積するステップ。
5.バリアフィルムによって封止するステップ。
【0058】
実施例2
この太陽電池モジュールは、巻込み及び巻出しを行わないSiOCH堆積を特徴としており、以下の方法ステップを含む。
1.ロールツーロールのコーティング装置において、陰極堆積まで有機太陽電池を製造し、P3レーザパターニングするステップ。
2.続いて、統合されたPECVD装置/チャンバにおいて平坦化層を堆積するステップ(注意:圧力調整が必要である)。
3.続いてバリアフィルムによって封止するステップ。
【0059】
図6は、SiOCH安定化層のある有機タンデム太陽電池(不透明又は透明な太陽電池)を、SiOCH安定化層のない現在の配置構成と比較して、耐用年数検査を行った際の正規化効率を示し、封止材として異なる接着剤(エポキシ対アクリル)を有するバリア層(バリアフィルム)が用いられる。各線はそれぞれ、安定化層ありで、続いてエポキシ系接着剤を有するバリアフィルムで封止する場合と(塗りつぶした丸)、▲安定化層なしで、続いてエポキシ系接着剤を有するバリアフィルムで封止する場合と(塗りつぶした三角)、安定化層ありで、続いてアクリル系接着剤を有するバリアフィルムで封止する場合と(空の丸)、△安定化層なしで、続いてアクリル系接着剤を有するバリアフィルムで封止する場合と(空の三角)、を表す。
【0060】
耐用年数は、どちらの場合も(安定化層の有無にかかわらず)同じか、エポキシ系接着剤を使用した場合は若干向上する。
【0061】
実施例3
この太陽電池モジュールは、巻込み及び巻戻しを含む全プロセス薄膜封止におけるSiOCH堆積によって分離し、以下の方法ステップを含む。
1.ロールツーロールのコーティング装置において、陰極堆積まで有機太陽電池を製造し、続いて、太陽電池フィルムを巻き取るステップ。
2.窒素雰囲気下で、より低圧で作動可能な別のPECVD装置に輸送するステップ。
3.太陽電池フィルムを巻き出してP3レーザパターニングするステップ。
4.平坦化層と、バリア層又は対応するバリア積層体とを堆積するステップ。
【0062】
実施例4
この太陽電池モジュールは、巻込み及び巻戻しを含む全プロセス薄膜封止におけるSiOCH堆積によって分離し、以下の方法ステップを含む。
1.ロールツーロールのコーティング装置において、陰極堆積まで有機太陽電池を製造し、P3レーザパターニングするステップ。
2.続いて、統合されたPECVD装置/チャンバにおいて平坦化層を堆積し(この場合圧力調整が必要である)、バリア封止層又は対応するバリア積層体とを堆積するステップ。
【符号の説明】
【0063】
1 基板
2 第1電極/基板電極
3 有機物
4 第2電極/対向電極
5 安定化層
6 平坦化層
7 封止材
P1、P2、P3、P4 レーザパターニング
A、B 対向電極のレーザパターニングとOPVのパターニングによる突起物
図1
図2
図3
図4
図5
図6