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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】荷電粒子線治療検証システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240913BHJP
   G01T 1/203 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61N5/10 Q
G01T1/203
A61N5/10 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021560559
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 NO2020050099
(87)【国際公開番号】W WO2020209730
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】20190493
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】521443117
【氏名又は名称】ヴェストランデッツ イノバスジョンセルズカップ エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】メリック,イルケル
(72)【発明者】
【氏名】イットラ-ハウゲ,クリスチャン スメランド
【審査官】立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0057194(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0145088(US,A1)
【文献】Kristian Smeland Tyre-Hauge et al.,A Monte Carlo feasibility study for neutron based real-time range verification in proton therapy,SCIENTIFIC REPORTS,2019年02月14日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
G01T 1/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線治療検証システムであって、
検出器であって、前記検出器は、セグメント化された有機シンチレータ素子のアレイ(10)を備え、前記シンチレータ素子が柱状であり、かつ、前記アレイが前記シンチレータ素子の長さに対して垂直な断面を有して配置されている、検出器を備え、
前記システムはさらに、
前記シンチレータ素子の両端部に配置された光検出器アレイ(40)と、
前記光検出器アレイに接続された処理ユニットであって、前記処理ユニットは、入来する高速中性子及びガンマ線の方向及びエネルギーを推定するように構成されている、処理ユニットとを備え
荷電粒子ビームで照射された標的から放出される、高速中性子及び即発ガンマ線の双方のタイプの二次粒子を検出するように構成された前記システムであって、
前記検出器は、双方の粒子タイプのために十分な統計数を達成するために、入射中性子のための少なくとも2つの連続的な(n,p)弾性散乱衝突と、入射即発ガンマ線のための少なくとも2つの非干渉性散乱衝突及びそれに続く任意の種類の第3イベントを異なる前記シンチレータ素子において検出するように構成され、イベント線に沿って位置している前記入射中性子の入射方向及びエネルギーを再構成するために、前記2つの連続的な弾性散乱衝突の反跳陽子運動量を再構成し、中性子プロファイル及び即発ガンマ線プロファイルの双方から得られる飛程ランドマークをミリメートル未満の精度で推定すること、
を特徴とする、システム。
【請求項2】
前記第3イベントが、二次即発ガンマ線に対する光電効果、非干渉性散乱又は対生成のうちの1つである、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記処理ユニットが、前記荷電粒子ビームの前記標的との核相互作用の位置を推定するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記処理ユニットが、前記検出されるとともに再構成された二次高速中性子及び即発ガンマ線の生成位置プロファイルから、前記標的における線量の分布を推定するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記処理ユニットが、前記高速中性子及び即発ガンマ線を弁別するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記処理ユニットが、パルス波形弁別(PSD)又は飛行時間(ToF)測定により前記高速中性子と前記即発ガンマ線とを弁別するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
[0001] 本発明は、荷電粒子線治療(Charged Particle Therapy)(CPT)、すなわち、加速したイオンビームを適用するがん治療の分野に関する。より詳細には、本発明は、標的物体又は人体若しくは動物の身体における荷電粒子ビームの飛程のリアルタイム測定とともに、線量分布の測定のための検出システムに関する。本システムは、マトリックスのような形状で配置されたプラスチックシンチレータベースの検出器モジュールを備える。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] 半数を超えるがん患者が、自身の治療の一部として放射線治療を受ける(Delaney, G. et al., The role of radiotherapy in cancer treatment, Cancer, 2005, vol.104, p.1129-1137)。根治的放射線治療(RT)の目的は、腫瘍への電離放射線の送達によりすべてのがん細胞を不活性化すると当時に、周囲の正常組織に対する照射損傷を最小限にすることである。陽子、ヘリウムイオン及び炭素イオン等の荷電粒子の物体又は腫瘍との相互作用により、こうしたRTは、メガ電圧(MV)光子を使用する従来のRTに対する非常に魅力的な代替物となっている。これは、荷電粒子からの線量は、標的物体内のある一定の飛程すなわち透過深さでより正確に堆積するが、その飛程を越えて透過しないためである。さらに、それらは、ブラッグピーク(Bragg-peak)と称される狭い領域内に最大量のエネルギーを堆積させ、周囲の正常組織に対して著しく低い線量でより高い腫瘍線量を提供する。荷電粒子はまた、光子と比較して、がん細胞を死滅させる能力が向上し、すなわち、同じ物理線量によってより大きい生物学的効果をもたらす。したがって、荷電粒子線治療(CPT)は、小児がんの管理における頭蓋底におけるいくつかの腫瘍(脊索腫、軟骨肉腫)(Patel, S. et al. Recommendations for the referral of patients for proton-beam therapy, an Alberta Health Services report: a model for Canada? Curr. Oncol., 2014, vol.21, p.251)及び中枢神経系の腫瘍(Mishra, M.V. et al. Establishing Evidence-Based Indications for Proton Therapy: An Overview of Current Clinical Trials. Int. J. Radiat. Oncol., 2017, vol.97, p.228-235)の治療における好ましい放射線治療モダリティである。
【0003】
[0003] CPTに関連する重要な難題は、組織不均質、治療の過程にわたる解剖学的変化とともに照射間の(interfractional)及び照射中の(intrafractional)臓器運動によってもたらされる組織における粒子飛程の相当な不確実性である。これらの不確実性により、臨床プロトコルにおける遠位治療マージンが増大することになるとともに、飛程不確実性に起因して治療照射野が腫瘍に対して遠位側の正常臓器の方向に向くのを回避しようとされるため、利用可能なビーム照射角が制限される。したがって、特に腫瘍が危険臓器の近くに位置するとき、及び臓器運動が送達される線量に対して悪影響を及ぼす可能性がある場合、組織における粒子の有限飛程の可能性を最大限活用することができなかった。したがって、処置中、正常組織に対する線量を最小限にするという最終的な目標で、およそ1~2mmの高精度で、粒子ビームの飛程をモニタリングしなければならない。
【0004】
[0004] 今日現在で、光子治療に対して開発された、且つこれらの不確実性の影響を緩和するようにCPTに適合された臨床上の解決策は、腫瘍の周りに安全マージンを追加していわゆる計画標的体積を画定し、可能な限りこれらのマージンを低減させるように画像誘導により解剖学的変化をモニタリングすることである(van Herk, M., Errors and margins in radiotherapy. Semin. Radiat. Oncol. 2004, Vol.14, p.52-64)。CPTにおいて、典型的な安全マージンは、内部臓器運動がある領域において公称飛程の約3.5%+1mm又は固定の5mm又はさらにはそれより大きい(Xie, Y. et al. Prompt Gamma Imaging for In Vivo Range Verification of Pencil Beam Scanning Proton Therapy. Int. J. Radiat. Oncol. 2017, vol.99, p.210-218)。
【0005】
[0005] 国際公開第2010/000857A1号は、粒子線治療飛程検証のための装置及び方法を開示している。この装置は、物体又は身体に照射するときに生成される即発ガンマ線を検出するように操作され、前記装置は、漂遊粒子の検出を回避するためにピンホールカメラ及び遮蔽手段を備える。
【0006】
[0006] 欧州特許第2977083B1号は、照射された標的の即発ガンマ線プロファイルの一次元線量関連分布を得るためにシンチレータの正面のコリメータを使用して、即発ガンマ線を検出及び定量化することによる粒子線治療検証のための装置を開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
[0007] 本発明の目標は、従来技術の問題を克服し、CPTにおけるリアルタイム飛程及び線量検証システムを開示することである。特に、本発明は、陽子、ヘリウムイオン又は炭素イオン等、荷電粒子で照射された標的物体又は身体における荷電粒子ビームの透過飛程のリアルタイム測定を提供することができる、オンライン検出器を提供する。さらに、本発明の目的は、荷電粒子によって照射される標的又は身体における送達された線量の検証を提供することである。
【0008】
[0008] 上述した問題を解決する本発明は、独立請求項によるシステムである。
【0009】
[0009] 本発明の少なくとも一実施形態の利点は、二次即発ガンマ線及び高速中性子の角度及びエネルギーの完全な運動学的再構成が可能であるということである。
【0010】
[0010] 本発明は、いくつかの実施形態では、従来技術と比較して、最大ある大きさで、リアルタイム飛程検証システムの効率を向上させることができる。
【0011】
[0011] 本発明の1つの態様によれば、荷電粒子線治療におけるリアルタイム飛程検証及び線量送達の検証の改善されたシステムを提供する。
【0012】
[0012] 本発明の別の態様によれば、高度な統計精度で荷電粒子ビームの透過深さの検証を提供する。
【0013】
[0013] さらに別の態様では、本発明は、以下に開示する粒子ビーム強度で、高度な統計精度で標的又は患者における中性子及び即発ガンマ線生成座標の時間分解二次元及び三次元再構成を可能にする。
【0014】
[0014] 本発明のさらなる態様は、臨床状況で重要である、既存のシステムと比較して、物理的サイズが低減するとともに汎用性が増大した、荷電粒子線治療における飛程検証及び画像誘導システムである。
【0015】
図面の簡単な説明
[0015] 図面は、本発明の実施形態又は部分的実施形態を例示し、保護の範囲の決定に対する限定としてみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】[0016]有機シンチレータの光学的にセグメント化されたバーに基づく検出器の概念的設計、すなわち、(10)シンチレータバー、(20)反射テープ、(30)アルミニウムケーシング、(40)光読出し用の光電子増倍管を示す。
図2A】[0017]検出器設計の二次中性子及び即発ガンマ線検出効率を決定するための、MCNP6.2モンテカルロシミュレーションジオメトリ設定、すなわち、(1)陽子ビーム、(2)水ファントム、(3)検出器及び(4)約30℃の角度を、概略表現で示す。
図2B】[0018]200MeV陽子ビームに対するビーム方向に沿った、二次中性子及び即発ガンマ線の生成位置分布の検出された一次元、1Dプロファイルを、対応する中性子プロファイル及び即発ガンマ線プロファイルに対する「飛程ランドマーク(range landmark)」位置とともに、すなわち、(1)検出された中性子プロファイルから推定された飛程ランドマーク位置、(2)検出された即発ガンマ線プロファイルから推定された飛程ランドマーク位置、(3)検出された中性子プロファイル、及び(4)検出された即発ガンマ線プロファイルを、グラフ表現で示す。
図2C】[0019]中性子(実線)及び即発ガンマ線(破線)の「飛程ランドマーク」位置対水中の公称陽子飛程の推定された線形フィットをグラフ表現で示し、(1)は100MeVの陽子エネルギーでの二次中性子及び即発ガンマ線の飛程ランドマーク位置であり、(2)は160MeVの陽子エネルギーでの二次中性子及び即発ガンマ線の飛程ランドマーク位置であり、(3)は200MeVの陽子エネルギーでの二次中性子及び即発ガンマ線の飛程ランドマーク位置であり、及び(4)は230MeVの陽子エネルギーでの二次中性子及び即発ガンマ線の飛程ランドマーク位置である。 [0020]図3は、検出器における中性子及び即発ガンマ線の検出及び撮像の原理を示す。
図3A】[0021]中性子検出を示す。検出器の有効容積における2つの連続的な(n,p)イベントの検出に基づくイベントコーン(event cone)の逆投影、すなわち(2)E-入射中性子のエネルギー、(3)第1(n,p)衝突、第1衝突における反跳陽子エネルギーの測定値、(5)第1イベントからの散乱中性子、(4)飛行時間測定値(タウ)及び衝突位置にのみ使用される第2(n,p)衝突。この略図は、(1)光読出しのためのピクセル化光検出器とともに「バー」形状シンチレータに対して与えられる。
図3B】[0022]即発ガンマ線検出を示す。(6)Eγ-入射即発ガンマ線のエネルギー、(7)ΔE-第1非干渉性散乱イベントにおける入射即発ガンマ光子によって堆積したエネルギーの測定値、(8)ΔE-第2非干渉性散乱イベントにおける散乱光子によって堆積したエネルギーの測定値、(9)非干渉性、光電効果又は対生成のような任意の種類であり得る第3散乱イベントにおける衝突位置の測定値。この略図は、(1)ピクセル化光検出器とともに「バー」形状シンチレータに対して与えられる。
図3C】[0023]超高エネルギー中性子の検出を示す。検出器の有効容積における(n,p)イベントからの反跳陽子のトラッキングと、イベントコーンの代わりのイベント線(event line)の結果としての逆投影とに基づく、入来する高エネルギー中性子の入射角及びエネルギーの完全な運動学的再構成。この状況は、CPTに関連して、二次中性子のエネルギーが極めて高い(陽子治療における最大一次ビームエネルギー及び炭素イオン治療における最大300~400MeV)ため起こる。(10)E-入射中性子のエネルギー、(11)第1(n,p)衝突、第1衝突における各透過したシンチレータバーにおける反跳陽子エネルギーとともにその方向の測定値、(12)第2(n,p)衝突、第2衝突における各透過したシンチレータ柱における反跳陽子エネルギーとともにその方向の測定値。この略図は、(1)光読出しのためのピクセル化光検出器とともに「バー」形状シンチレータに対して与えられる。 [0024]図4は、検出器における即発ガンマ線及び中性子到達時間(検出器における第1相互作用の時間)の分布をグラフで示す。
図4A】[0025]160MeV初期陽子ビームエネルギーでの初期中性子運動エネルギーの関数として、中性子到達時間を示す。
図4B】[0026]160MeV初期陽子ビームエネルギーでの初期即発ガンマ線エネルギーの関数として、即発ガンマ線到達時間を示す。
図4C】[0027](1)160MeV初期陽子ビームエネルギー及び即発ガンマ線での到達時間(第1相互作用の時間)対深さにおける主な領域、(2)160MeV初期陽子ビームエネルギーでの到達時間(第1相互作用の時間)対深さにおける主な領域を示す。
図5】[0028]飛行時間(ToF)測定及び弁別に基づく、本発明によるシステムの一実施形態のブロック図で示す。 [0029]図6は、パルス波形弁別(PSD)をグラフで示す。
図6A】[0030]中性子イベント及び即発ガンマ線イベントの分離を規定する性能指数法を示す。(1)即発ガンマ線に対するPSD信号分布の平均、μγ、(2)中性子に対するPSD信号分布の平均、μ、(3)即発ガンマ線に対するPSD信号分布の半値全幅(FWHM)、FWHMγ、(4)中性子に対するPSD信号分布の半値全幅(FWHM)、FWHMn。
図6B】[0031]中性子誘導イベントと即発ガンマ線誘導イベントとを弁別するための中性子誘導波形及び即発ガンマ線誘導波形の電荷積分を示す。(1)即発ガンマ線誘導イベントからの典型的なパルス形状(波形)、(2)中性子誘導イベントからの典型的なパルス形状(波形)、(3)パルスの短い積分、Qshort、(4)パルスの長い積分、Qlong。PSD数は、比(Qlong-Qshort)/Qlongとし得られる。
図7A】[0032]検出された中性子プロファイルから得られた中性子飛程ランドマークにおける不確実性を示す。(1)230MeVでの一次陽子強度の関数としての推定された中性子飛程ランドマークの標準偏差、(2)200MeVでの一次陽子強度の関数としての推定された中性子飛程ランドマークの標準偏差、(3)160MeVでの一次陽子強度の関数としての推定された中性子飛程ランドマークの標準偏差、(4)100MeVでの一次陽子強度の関数としての推定された中性子飛程ランドマークの標準偏差。
図7B】[0033]検出された即発ガンマ線プロファイルから得られた即発ガンマ線飛程ランドマークにおける不確実性を示す。(1)230MeVでの一次陽子強度の関数としての推定された即発ガンマ線飛程ランドマークの標準偏差、(2)200MeVでの一次陽子強度の関数としての推定された即発ガンマ線飛程ランドマークの標準偏差、(3)160MeVでの一次陽子強度の関数としての推定された即発ガンマ線飛程ランドマークの標準偏差、(4)100MeVでの一次陽子強度の関数としての推定された即発ガンマ線飛程ランドマークの標準偏差。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の実施形態
[0034] 以下の説明では、当業者に本発明のより完全な理解を提供するために、本発明のさまざまな例及び実施形態を示す。さまざまな実施形態に関連して且つ添付図面を参照して記載する具体的な詳細は、限定として解釈されるようには意図されていない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲において規定されている。
【0018】
[0035] 以下に記載する実施形態には番号が付けられている。さらに、番号付き実施形態に関連して規定する従属実施形態について記載する。別段の指定がない限り、1つ又は複数の番号付き実施形態と組み合わせることができる任意の実施形態は、参照する番号付き実施形態の従属実施形態のうちの任意のものとも直接組み合わせることができる。
【0019】
[0036] 第1実施形態において、本発明は、以下を備える、荷電粒子線治療検証システムである。
【0020】
[0037] 荷電粒子ビームで照射される標的から放出される二次粒子を検出するように構成された第1検出器、検出器は、二次中性子を検出するために、検出器の有効容積において、水素-1核における少なくとも2つの連続的な弾性散乱、すなわち(n,p)散乱をもたらすように構成され、検出器は、二次即発ガンマ線を検出するために、検出器の有効容積において少なくとも2つの連続的な非干渉性即発ガンマ線散乱をもたらした後、任意の種類の第3散乱をもたらすように構成されている。
【0021】
[0039] 第1関連実施形態では、検出器は、光学的にセグメント化された有機シンチレータ素子のアレイを含むシンチレータを備え、シンチレータは、二次中性子の検出のための少なくとも2つの連続的な弾性(n,p)散乱と、二次即発ガンマ線の検出のための2つの連続的な非干渉性散乱及びそれに続く任意の種類の第3散乱とをもたらすように構成され、すべての上述した散乱イベントは、別個のシンチレータ素子において検出される。
【0022】
[0040] 第2関連実施形態では、シンチレータ素子は柱状であり、シンチレータ素子の長さに対して垂直な断面においてアレイで配置されている。
【0023】
[0041] シンチレータは、30×30cm未満の断面と20cm以上の長さ/深さとを有することができる。
【0024】
[0042] 個々のシンチレータ素子は、2×2cm未満の断面を有することができる。
【0025】
[0043] 個々のシンチレータ素子は、2×2cm~0.5×0.5cmの断面を有することができる。
【0026】
[0044] シンチレータは、シンチレータ素子のうちの少なくともいくつかの間に反射ライナを備えることができる。
【0027】
[0045] 反射ライナは、二酸化チタン、又は例えばエンハンスド・スペキュラ・リフレクタ(Enhanced Specular Reflector)(ESR)フィルム等の反射体フィルムであり得る。
【0028】
[0046] シンチレータ素子は間隔を空けて配置することができる。
【0029】
[0047] シンチレータ素子は有機であり得る。
【0030】
[0048] 有機素子は、PSD能力又はスチルベンを有する高速プラスチックシンチレータであり得る。
【0031】
[0049] シンチレータは、有機シンチレータ素子及び無機シンチレータ素子の両方を含むことができる。
【0032】
[0050] 無機素子は、CeBr又はルテチウム-イットリウムオキシオルトシリケート(LYSO)結晶であり得る。
【0033】
[0051] シンチレータは、シンチレータ素子の少なくとも一部の周囲に金属ケーシングを含むことができる。アセンブリに機械的支持を提供するとともに、散乱及び二次荷電粒子に対する遮蔽を提供する可能性がある、金属ケーシング。
【0034】
[0052] 第1実施形態の関連実施形態のうちの任意のものと組み合わせることができる第2実施形態では、システムは、シンチレータ素子の両端部に配置された、シンチレーション光読出しのための光検出器アレイを備える。
【0035】
[0053] 光検出器アレイは、例えば、SiPM(シリコン光電子倍増管)又はMCP-PM(マイクロチャネルプレート-光電子倍増管)を含むことができる。
【0036】
[0054] 光検出器は、シンチレータ素子の各端部に配置することができる。
【0037】
[0055] 第2実施形態の関連実施形態のうちの任意のものと組み合わせることができる第3実施形態では、システムは、光検出器アレイと接続された処理ユニットを備え、処理ユニットは、入来する高速中性子及びガンマ線の方向及びエネルギーを推定するように構成されている。
【0038】
[0056] 処理ユニットは、荷電粒子ビームの標的との核相互作用の位置を推定するように構成することができる。
【0039】
[0057] 処理ユニットは、標的における線量の分布を推定するように構成することができる。
【0040】
[0058] 処理モジュールは、高速中性子及び即発ガンマ線を弁別するように構成することができる。
【0041】
[0059] 処理モジュールは、パルス波形弁別(PSD)又は飛行時間(ToF)測定により即発ガンマ線から二次中性子を弁別するように構成することができる。
【0042】
[0060] 処理モジュールは、パルス波形弁別(PSD)又は飛行時間(ToF)測定を同時に適用することにより、即発ガンマ線から二次中性子を弁別するように構成することができる。
【0043】
[0061] システム、例えば処理モジュールは、二次元又は三次元で標的における中性子及び即発ガンマ線生成分布のリアルタイム画像を提供するように構成することができる。
【0044】
[0062] 上記実施形態のうちの任意のものと組み合わせることができる第4実施形態では、システムは、第1検出器から空間的に分離されるとともに、標的から放出される二次粒子を検出するように構成された第2検出器を備える。
【0045】
[0063] 二次検出器は、第1検出器と同じ特徴の任意の組合せを備えることができる。
【0046】
[0064] 処理ユニットは、第2検出器の光検出器アレイと接続することができる。
【0047】
[0065] 第1検出器及び第2検出器は、一実施形態では、それぞれの光検出器からの入力を前処理する別個のプリプロセッサを有することができ、その後、前処理された信号は処理ユニットに転送される。
【0048】
[0066] いくつかの実施形態では、システムは、光学的にセグメント化された有機シンチレータのアレイと、セグメント化された無機シンチレータのアレイとを備えることができる。
【0049】
[0067] 1つのさらなる実施形態では、検出器は、有機シンチレータの光学的にセグメント化された「バー」又は柱と、各バーにおいて各イベントに対して同時に2つの波形の獲得(図6A及び図6B)を可能にする、検出器の各端部に取り付けられたピクセル化光検出器とを備える。
【0050】
[0068] 以下、本発明によるシステムの具体的な実施形態に関する更なる詳細について記載する。
【0051】
[0069] システムは、シンチレータベース検出器モジュールを備える。陽子ビームが、標的物体又は人体若しくは動物の身体に入り、陽子ビームが物体又は身体の内部で停止するまで、その経路に沿って二次粒子を生成する。二次粒子の中には、二次中性子及び即発ガンマ線がある。二次中性子の著しい割合が物体又は身体を離れ、これらのうちの一部が、検出器システムに達する。同じことが二次即発ガンマ線にも当てはまる。検出器を使用する検出及び撮像技法の原理について以下に記載する。従来、高速中性子の撮像は、有機シンチレータにおける水素-1核に対する2つの連続的な中性子弾性散乱、すなわち(n,p)の検出に依存する(Knoll, G. F. Radiation Detection and Measurement, John Wiley & Sons, 2010)。第1(n,p)散乱イベントにおいて、反跳陽子のエネルギーEpは、シンチレーション光の検出された強度から測定される。第2(n,p)散乱イベントは、図3Aにおいてτ(タウ)として与えられる飛行時間(TOF)測定値と、第1(n,p)散乱イベントと第2(n,p)散乱イベントとの間の、図3Aにおいてdとして与えられる距離との両方に対して使用される。
【0052】
[0070] 測定されたTOF及び距離に基づいて、散乱中性子エネルギーEn’が求められる。
【数1】
【0053】
[0071] そして、入射中性子のエネルギーはEn=Ep+En’として推定され、入射中性子の散乱角はθ=tan-1√Ep/En’として与えられる。しかしながら、方位角の決定における不明確さに起因して、正確な中性子入射方向を再構成することはできない。代わりに、中性子入射は、同様に図3Aに示す「イベントコーン」の表面のいずれかに位置することが既知である。
【0054】
[0072] 統計的に十分な数のこうした<<イベントコーン>>が、三次元空間における画像平面上に逆投影される場合、これらのコーンの底面の交差部から得られる結果としての画像は、中性子放出の位置を明らかにする。
【0055】
[0073] CPTにおいて、図3Cに示すような状況は、中性子放出位置のより正確な決定を可能にするあり得る検出機構でもある。(最大一次粒子ビームエネルギーの)極めて高いエネルギーの中性子は、水素-1核上に弾性的に衝突すると、いくつかのシンチレータ素子を透過するのに十分なエネルギーで高エネルギー反跳陽子を生成する。
【0056】
[0074] 各バー又は柱に対する断面積が0.25cmであり、40MeVを超える運動エネルギーを有する反跳陽子は、少なくとも3つの素子を透過することができる。これらの陽子を追跡するとともにそれらのエネルギーを再構成することにより、入射中性子の角度及びエネルギーの完全な運動学的再構成が可能になる。これにより、コーンの代わりにイベント線の逆投影が可能になり、これにより、入射中性子のエネルギーにおける不確実性とともに、第2中性子の発生点における不確実性が低減する。
【0057】
[0075] イベント線の計算は、第1(n,p)衝突から生じる反跳陽子飛跡の識別を含む。(n,p)弾性散乱衝突の非相対論的運動学において、散乱中性子運動量及び陽子反跳運動量は、互いに相互に直交している。2つの(n,p)衝突からの反跳陽子運動量は再構成され、2つの衝突場所を結合する直線が引かれ、第1(n,p)衝突からの散乱中性子の運動量が与えられる。そして、この運動量に略垂直である2つの反跳陽子運動量のうちの一方を使用して、散乱中性子の方向、したがって第1(n,p)衝突が特定される。
【0058】
[0076] 2つの(n,p)相互作用からの両反跳陽子のエネルギー及び方向を再構成することにより、高速中性子の従来の検出に対して上述した状況と比較して不確実性が低減した、入射中性子のエネルギー及び入射角の再構成が可能となる。したがって、再構成により、方位角の決定における不明確さがなくなり、入来する中性子の入射角における不明確さがなくなることにより、このときコーンの表面の代わりに「イベント線」に沿って位置している中性子入射方向の再構成が可能になる。
【0059】
[0077] 記載した検出器において、同様の原理は、入射即発ガンマ線の発生点及びエネルギーの再構成に適用される(図3B)。即発ガンマ線光子は、検出器に到達し、検出器の有効容積において非干渉性、すなわちコンプトン散乱相互作用を受ける(第1散乱)。コンプトン反跳電子のエネルギーは、散乱相互作用位置とともに測定しなければならない。すべての場合において、相互作用位置は、(x,y)方向における対応するシンチレータ素子の位置から求められる。z方向において、位置は、所与のシンチレータ素子の両端部における光検出器を通して収集される波形から再構成される。散乱即発ガンマ線光子は、再度、別の非干渉性散乱イベントを通して検出器の有効容積において相互作用する(第2散乱)。
【0060】
[0078] この場合もまた、第2コンプトン反跳電子のエネルギーは、第2散乱イベントの相互作用位置と同様に測定しなければならない。二重に散乱した即発ガンマ線は、非干渉性散乱、光電効果又は対生成のいずれかを通して、検出器の有効容積において第3時間にわたり相互作用する(第3散乱)。相互作用位置のみが必要である。第3散乱及び第2散乱からの情報を使用して、第2非干渉性散乱イベントにおける散乱角が求められる。
【0061】
[0079] そして、第1散乱及び第2散乱からの電子の反跳エネルギーが、第2散乱イベントの散乱角とともに使用されて、入来する即発ガンマ線のエネルギー及び入射角が求められる。
【0062】
[0080] 代替状況では、第3散乱は不要である。この場合、第1散乱に続く散乱ガンマ線のエネルギーを求めるために、補正係数を導出して、第2散乱からの測定された反跳電子エネルギーに適用する必要がある。
【0063】
[0081] そして、これらの2つの代替状況からの情報により、入射即発ガンマ線のおよその入射角及びエネルギーを求めることができる。この場合、「イベントコーン」が再構成され、即発ガンマ線放出点は、コーンの表面上のいずれかの場所に位置すると言われる。
【0064】
[0082] 上述したように、示した検出器では、ガンマ線非干渉性散乱が発生し、検出器が小型であるために、有用な二重又は三重散乱効率が得られ、これにより、中性子及び即発ガンマ線の同時撮像が可能になる。二重及び三重即発ガンマ線散乱効率は、検出器の全体的なサイズを増大させることにより、すなわち、より多くの検出器素子を追加することにより、さらに向上させることができる。
【0065】
[0083] 光検出器アレイは、シンチレータ素子のいずれかの端部に配置される。上述したような中性子及び即発ガンマ線の検出ステップにより、シンチレータに光学光子が生成され、その強度は、各シンチレータにおける堆積エネルギーに比例する。光学光子は、シンチレータ-空気界面において内部全反射(TIR)を受け、又は、高反射率の反射体を使用することによりシンチレータ内に戻るように反射される。このように、光学光子は、光検出器がアレイで取り付けられている、シンチレータバーのいずれかの端部まで伝播する。そして、光検出器において、到達する光学光子は電荷に変換される。
【0066】
[0084] 処理ユニットは、波形を読み出して光子誘導波形と中性子誘導波形とを弁別するように構成された光検出器アレイと通信するように配置されている。ユニットは、光検出器アレイから処理すべき波形を受け取る。そして、読出し回路によりパルスが検知される。中性子及びガンマ線の同時撮像を実施するために、両方によって誘導されるパルスを弁別しなければならない。
【0067】
[0085] 光子誘導信号と中性子誘導信号との弁別は、パルス波形弁別(PSD)測定又は飛行時間(TOF)測定のいずれかを使用して実施することができる。2つについて以下に説明する。
【0068】
[0086] 図6A及び図6Bに、パルス波形弁別(Soderstrom, P.A., et al., Digital pulse-shape discrimination of fast neutrons and rays. Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment, 2008, vol.594, p.79-89)を示す。入射光子及び中性子によって誘導された信号は、それらの時間強度プロファイルに関していくつかの有機シンチレータタイプ(液体及びプラスチック等)に対して異なる。有機シンチレータでは、高速中性子誘導イベントにより、ガンマ線誘導イベントと比較してシンチレーションパルスの寿命が長くなる。中性子誘導イベントと入射即発ガンマ線によって誘導されるイベントとを弁別するために、記録された信号パルスの積分が2つの部分(長い部分及び短い部分)において実施される(図6B)。この手法では、PSD法は、これらの信号の長い積分Qlong及び短い積分Qshortと、短い積分パルスと長い積分パルスとの比、すなわちPSD=(Qlong-Qshort)/Qlongに基づいて第3信号を導出することとに基づく。
【0069】
[0087] PSD弁別に対する1つの定量的手法は、図6Aに示すように検出器において展開される有機シンチレータのPSDの品質を定量化するために性能指数(FoM)を使用するというものである。FoMは、以下のように得られる。
【数2】

式中、μγは、即発ガンマ線に対するPSD信号分布の平均であり、μは、中性子に対するPSD信号分布の平均であり、即発ガンマ線に対するPSD信号分布のFWHMγ(半値全幅)、及び中性子に対するPSD信号分布のF FWHM(半値全幅)。
【0070】
[0088] 即発ガンマ線及び中性子の到達時間の測定値、すなわち飛行時間(ToF)測定値(図5)は、検出器の有効容積における中性子誘導イベントと即発ガンマ線誘導イベントとを弁別する追加の手段であり得る。即発ガンマ線対中性子の到達時間は、明らかな差を示す。高エネルギー中性子は、典型的には、即発ガンマ線と比較して数ns遅延して検出器に到達する。発生点と検出器面との間の初期距離及び標的自体における中性子減速に応じて、入射二次中性子は、到達時間の変動を示し、エネルギーが低く距離が大きいほど増大する。
【0071】
[0089] 大部分の即発ガンマ線は、水ファントム上の陽子ペンシルビームの入射と検出器の有効容積に記録された第1非干渉性散乱イベントとの間でかかる時間として測定された、2~3ns以内に検出器に到達する。中性子は、それらが水ファントム内で生成されたエネルギー及び深さに応じて大きい変動を示す。大部分の中性子は、最大約30~40nsのロングテールで、5~6ns以内で検出器に到達する。
【0072】
[0090] シンチレータ素子又は「バー」は、空隙及び反射材を含むライニングを通して単一素子に沿った中性子及び即発ガンマ線散乱イベントからのシンチレーション光の閉じ込めを提供する。この構造により、個々のチャネル間のクロストークがなくなり、したがって、一体型手法と比較して、データスループット及び後続するデータ解析の複雑性が著しく低減する。
【0073】
[0091] そして、光検出器からの2つの波形の振幅及び相対的なタイミングを使用して、所与のバーの高さ(z軸)に沿った衝突位置を再構成することができる。バー寸法、シンチレーション光収率、シンチレーション減衰時定数、バーを通る光チャネリング効率、光検出器の量子効率、及び光検出器の走行時間のばらつきは、シンチレーション光生成位置(すなわち、所与のシンチレータバーの長さに沿った衝突位置)と反跳粒子(陽子及び電子)エネルギーとを推定することができる精度に最終的に影響を与えるパラメータである。
【0074】
[0092] 各バーの物理的厚さは、最終的に、x軸及びy軸に沿った衝突位置の推定の精度を決定し、一方で、z軸に沿った衝突位置の推定における統計的不確実性は、中性子及び即発ガンマ線衝突位置を推定する際の全体的な不確実性よりも優位を占める。
【0075】
[0093] 一実施形態では、中性子及び即発ガンマ線の弁別手段は、スチルベン及びPSDプラスチックシンチレータ等、パルス波形弁別(PSD)能力を有するシンチレータを含む。
【0076】
[0094] これらは、中性子誘導イベントが、典型的には、即発ガンマ線誘導イベントよりも長いシンチレーション光パルスを生成する、シンチレーション結晶である(Pozzi, S. A. et al., Pulse shape discrimination in the plastic scintillator EJ-299-33. Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. Sect. Accel. Spectrometers Detect. Assoc. Equip., 2013, vol.723, p.19-23)。
【0077】
[0095] MCNP6.2を使用する水ファントムに突き当たる陽子によって生成される中性子及び即発ガンマ線の両方を検出することができるデュアル撮像デバイスとして示した検出器の予測された検出効率を明らかにする、モンテカルロ(MC)シミュレーション研究を実施した。MCNP6.2(Goorley, T. et al. Initial MCNP6 Release Overview. NT, 2012, vol.180, p.298-315)は、任意のジオメトリ及び材料における中性子、光子、電子、陽電子、アルファ、陽子及び他の重イオン(合計37の異なる粒子タイプ)の相互作用及び通過のシミュレーションのためのMCコードシステムである。
【0078】
[0096] 関連するMCシミュレーションは、100、160、200及び230MeVのエネルギーの陽子の単一エネルギービームと水ファントムとを含み、一方で、示した検出器は、水素富化液体有機シンチレータのモノリシックの10×10×20cm「ブロック」(0.959g/cmの密度及び1.25のH/C比)としてモデル化した。各エネルギーで、陽子ビーム強度は、1×10陽子に設定し、検出器は、予測された公称ブラッグピーク位置の真上の位置に配置した。
【0079】
[0097] 図2Aに、シミュレーションしたジオメトリの一例を示す。検出器容積内の水素-1核からの弾性散乱として最初の2つの相互作用を有する二次中性子の数を記録した。さらに、非干渉性、すなわちコンプトン散乱イベントとして最初の2つの相互作用を有する即発ガンマ線の数を記録した。一次陽子ごとの入射中性子の二重(n,p)散乱率とともに、一次陽子ごとの入射即発ガンマ線の二重非干渉性散乱率及びそれらの対応する統計的不確実性(1標準偏差)を以下の表に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
[0098] 結果から、入射即発ガンマ線に対する二重非干渉性散乱率が、入射中性子に対する二重(n,p)散乱率と比較して約1/5低くなることが明らかとなる。効率の低下は、より厳しい制約を適用する、すなわち、検出器の有効容積において第3相互作用が起こることも必要とするとき、より高くなることが予測される。
【0082】
[0099] 検出器は、低密度及び低原子数の有機シンチレータから構成されているが、検出器が小型であることとその全体的なサイズとがこれを補償する。したがって、高エネルギー即発ガンマ線の場合も有用な効率が達成可能である。即発ガンマ線撮像に基づく最新技術のリアルタイム飛程検証システムの効率は、10-5~5.6×10-5即発ガンマ線計数/陽子、又はさらにはコンプトンカメラ及び視準カメラの場合はさらに低い範囲である。したがって、本明細書に示す検出器設定は、即発ガンマ線のみの場合であっても、前例のない検出効率を達成することができる。検出器は、中性子及び即発ガンマ線の両方に高感度となり、これらの2つの粒子種からのデータを結合するという事実により、効率は無類となる。
【0083】
[0100] さらに、図2Bに示すように、ブラッグピークにすぐ近接する急峻な低下がある検出された中性子のプロファイルが好都合である。一次陽子ビーム飛程と相関させることができる「飛程ランドマーク」を得るために、中性子プロファイルに単純なロジスティック関数を適合させ、一方で、結果としての検出プロファイルをさらなる平滑化のために、即発ガンマ線プロファイルにサビツキー・ゴレイ(Savitsky-Golay)フィルタを適用した。中性子プロファイル及び即発ガンマ線プロファイル両方に対して、「飛程ランドマーク」として変曲点位置を取得した(図2C)。
【0084】
[0101] そして、1×10の一次陽子ビーム強度に対する収集されたデータセットを、1×10陽子の陽子強度に対応する10の等しいチャンクに分割した。そして、結果の統計的解析を可能にするように、これらのチャンクの各々に対して飛程ランドマークの計算を繰り返した。
【0085】
[0102] 次に、元のデータセットを、5×10陽子の陽子強度に対応する20の等しいチャンクに分割した。再度10回の試行に対して、飛程ランドマークを再計算した。手順を繰り返して、より低い陽子ビーム強度での飛程ランドマーク推定値における統計的不確実性を得た。
【0086】
[0103] 中性子プロファイル及び即発ガンマ線プロファイルの両方から得られる飛程ランドマークの推定における統計的精度により、約1×10陽子の初期陽子ビーム強度への低下を達成するためにミリメートル未満の精度が可能であり得ることが明らかとなり(図7A及び図7Bを参照)、これは、最新技術の飛程検証システムのMCシミュレーションに関連して非常に有望である。
【0087】
[0104] 100、160、200及び230MeV陽子ビームエネルギーにおいて繰り返すシミュレーションにより、中性子プロファイル及び即発ガンマ線プロファイルの両方からの飛程ランドマーク位置が、図2Cに示すように、ブラッグピーク位置に線形に相関することも明らかとなる。
【0088】
[0105] 結論として、CPTにおけるリアルタイム飛程検証及びCPTにおける画像誘導のための示した検出器概念は、優れた検出効率、検出された中性子プロファイル及び即発ガンマ線プロファイル、リアルタイムでの2D及び3D撮像を実施する可能性とともに、単一の小型装置における中性子及び即発ガンマ線撮像の統一の可能性により、明確に正当化される。
【0089】
[0106] 例は、単に例示を目的とするものであり、示した検出器システムを使用して、CPTにおける最新技術による飛程検証システムに対する優れた検出効率で中性子及び即発ガンマ線を検出することができることを例示する。中性子及び即発ガンマ線の両方の検出により、標的におけるブラッグピーク位置のより厳密な決定を通して治療のより正確な決定及び検証が可能になる。
【0090】
[0107] 例示的な実施形態では、さまざまな特徴及び詳細を組合せで示している。いくつかの特徴は特定の例に関して記載されているという事実は、それらの特徴が必然的に本発明のすべての実施形態に合わせて含まれなければならないことを示唆するものとして解釈されるべきではない。逆に、異なる実施形態に関して記載されている特徴は、相互に排他的であるものとしてみなされるべきではない。当業者には容易に理解されるように、本明細書に記載する特徴の任意のサブセットを組み込むとともに、明示的に互いに依存するものではない実施形態は、本発明者によって企図されており、意図された本開示の一部である。しかしながら、すべてのこうした実施形態の明示的な記載は、本発明の原理の理解に寄与せず、したがって、簡単又は簡潔のために、特徴のいくつかの入替えは省略している。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7A
図7B