(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】コーティング方法及び対応するコーティング設備
(51)【国際特許分類】
B05D 3/00 20060101AFI20240913BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05D7/14 L
(21)【出願番号】P 2021566258
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2020062674
(87)【国際公開番号】W WO2020225350
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】102019111760.7
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504389784
【氏名又は名称】デュール システムズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Durr Systems AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】クンツ、ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】バウダー、マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】スピラー、アレクサンダー
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-513315(JP,A)
【文献】特表2018-502702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0328773(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B05B1/00-17/08
B05C5/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品(4)、特に、自動車車体部品を、コーティング剤、特に、塗料で、コーティングするためのコーティング方法であって、
a)少なくとも1つのコーティング経路(13、15)であって、コーティング対象の前記部品(4)の表面にわたる事前設定済みの前記少なくとも1つのコーティング経路(13、15)に沿って塗布装置(3)の塗料衝突点を移動させるための、縁により境界されるコーティング対象の前記部品(4)の表面領域を通過する少なくとも1つのコーティング経路(13、15)を設定する工程と、
b)前記表面領域の前記縁上の縁点について空間的な縁点位置及び/又は縁点向きの基準値を設定する工程と、
c)測定系(5)によりコーティング対象の前記部品(4)の又はコーティング対象の前記部品(4)の一部の位置、向き、及び/又は形状を空間測定する工程であって、前記表面領域の前記縁上の前記縁点の前記縁点位置及び/又は前記縁点向きの測定値が当該空間測定の一部として測定される、工程と、
d)一方の前記縁点位置及び/又は前記縁点向きの前記測定値と他方の前記縁点位置及び/又は前記縁点向きの前記基準値との間の
ずれを決定する工程と、
e)前記縁点の前記基準値と前記縁点の前記測定値との間の前記
ずれに応じて前記コーティング経路(13、15)を適合させる工程と、
を含
み、
前記縁上の前記縁点の前記縁点位置及び/又は前記縁点向きの前記基準値は、前記部品(4)のCADモデルに基づき測定及び決定される、コーティング方法。
【請求項2】
a)特に多軸コーティングロボット(1)により、コーティング対象の前記部品(4)の表面にわたる適合済みの前記少なくとも1つのコーティング経路(13、15)に沿って塗布動作の過程で塗布装置(3)を移動させる工程と、
b)適合済みの前記少なくとも1つのコーティング経路(13、15)に沿った前記塗布装置(3)の前記移動の最中にコーティング対象の前記部品(4)の表面に前記塗布装置(3)により前記コーティング剤を塗布する工程と、
を含み、
コーティング対象の前記部品(4)の前記空間測定について、
c)コーティング対象の前記部品(4)の前記表面にわたり前記測定系(5)を移動させるための、前記コーティング経路(13、15)と本質的に一致する測定経路を設定する工程と、
d)測定動作の一部として所定の前記測定経路に沿って前記測定系(5)を移動させる工程であって、前記塗布装置(3)の前記塗料衝突点が所定の前記測定経路を追従する工程と、
e)前記測定経路に沿った前記測定動作の最中に前記測定系(5)によりコーティング対象の前記部品(4)を空間測定する工程と、
を含む、請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項3】
一方の前記測定経路に沿った測定動作の最中の前記塗料衝突点の空間的位置と他方の前記コーティング経路(13、15)に沿った塗布動作の最中の前記塗料衝突点の空間的位置との間の
ずれが、40mm、30mm、20mm、10mm、5mm、2mm、又は1mmより小さい、請求項2に記載のコーティング方法。
【請求項4】
前記塗布装置(3)が測定動作の最中に塗布動作の最中と本質的に同じ空間的向きを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項5】
a)一方の前記測定動作の最中の前記塗布装置(3)の向きと他方の前記塗布動作の最中の前記塗布装置(3)の向きとの間の角度
ずれが、45°、30°、20°、10°、5°、2°、又は1°より小さく、及び/又は、
b)一方の前記測定動作の最中の個別ロボット軸の向きと他方の前記塗布動作の最中の前記個別ロボット軸の向きとの間の角度
ずれが、少なくともロボット主軸の場合には、20°、10°、又は5°より小さい、
請求項4に記載のコーティング方法。
【請求項6】
a)前記少なくとも1つのコーティング経路(13、15)に沿った塗布動作が特定の運動動力学で行われ、
b)前記コーティング経路(13、15)に沿った測定動作が特定の運動動力学で行われ、かつ、
c)前記測定動作は前記塗布動作と本質的に同じ運動動力学で行われる、
請求項1から5のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項7】
a)前記測定動作及び前記塗布動作における前記運動動力学は前記塗布装置(3)の前記塗料衝突点の経路速度について本質的に本質的に同じであり、及び/又は、
b)前記測定動作及び前記塗布動作における前記運動動力学は前記塗布装置(3)の前記塗料衝突点の経路加速度について本質的に本質的に同じであり、及び/又は、
c)前記測定動作及び前記塗布動作における前記運動動力学はコーティングロボットのロボット軸の軸位置について本質的に同じであり、及び/又は、
d)前記測定動作及び前記塗布動作における前記運動動力学は前記コーティングロボットのロボット軸の軸速度について本質的に同じであり、及び/又は、
e)前記測定動作及び前記塗布動作における前記運動動力学は前記コーティングロボットのロボット軸の軸加速度について本質的に同じである、
請求項6に記載のコーティング方法。
【請求項8】
a)一方の前記測定動作の最中の前記塗料衝突点の前記経路速度と他方の前記塗布動作の最中の前記塗料衝突点の前記経路速度との間の
ずれは、
a1)60%、50%、40%、30%、20%、10%、又は5%、及び/又は、 a2)500mm/s、400mm/s、300mm/s、
よりも小さく、
b)一方の前記測定動作の最中の前記塗料衝突点の前記経路加速度と他方の前記塗布動作の最中の前記塗料衝突点の前記経路加速度との間の
ずれは、10%又は5%よりも小さく、及び/又は、
c)一方の前記測定動作の最中の前記ロボット軸の前記軸速度と他方の前記塗布動作の最中の前記ロボット軸の前記軸速度との間の
ずれは、10%又は5%よりも小さく、及び/又は、
d)一方の前記測定動作の最中の前記ロボット軸の前記軸加速度と他方の前記塗布動作の最中の前記ロボット軸の前記軸加速度との間の
ずれは、10%又は5%よりも小さい、 請求項7に記載のコーティング方法。
【請求項9】
a)前記表面領域の測定される縁の数は2から8の間であり、及び/又は、
b)前記コーティング経路(13、15)は、
b1)n次多項式(nは1から6)、
b2)3次スプライン、
b3)5次スプライン、
b4)3次ベジェ曲線、又は、
b5)5次ベジェ曲線、
により、個別の前記縁に沿った前記基準値と前記測定値との間の
ずれに応じて、適合される、
請求項1から8のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項10】
a)前記縁点位置の前記基準値は前記部品(4)のCADモデルに基づいて決定される、又は、
b)前記縁点位置の前記基準値は基準部品上での測定により測定される、
請求項1から9のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項11】
a)コーティング対象の前記部品(4)上の縁のある前記表面領域は2つのコーティングロボットにより測定及びコーティングされ、前記2つのコーティングロボット(1)は、前記表面領域の両側に、特に、コーティングラインの両側に、好ましくは配置されており、
b)前記表面領域は互いに直に隣接する2つの副領域に分割されており、
c)第1のコーティングロボット(1)はその測定系(5)により前記表面領域全体又は前記副領域の1つを空間測定し、
d)移動の経路は前記第1のコーティングロボット(1)による前記空間測定に応じて適合され、
e)前記第1のコーティングロボット(1)は前記コーティング剤で第1の副領域をコーティングし、
f)前記第1のコーティングロボットにより塗布される、前記2つの副領域の間の区切り塗布経路を好ましくは含む、第2の副領域を第2のコーティングロボット(1)は空間測定し、
g)移動の経路は前記第2のコーティングロボット(1)による前記空間測定に応じて適合され、かつ、
h)前記第2のコーティングロボット(1)は前記コーティング剤で前記第2の副領域をコーティングする、
請求項1から10のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項12】
第2の副領域の少なくとも1つの境界はコーティング経路(15)の外縁により画定されている、
請求項1から11のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項13】
a)前記部品(4)の位置、
b)前記部品(4)の形状、
c)前記
部品(4)をコーティングするためのコーティングロボット(1)の静的な位置決めの不正確性、
d)前記コーティングロボット(1)の動的な位置決めの不正確性、
e)前記コーティングロボット(1)の温度関連の位置決めの不正確性、
についての許容差が少なくとも部分的に補償されるように、前記コーティング経路(13、15)は適合される、
請求項1から12のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項14】
部品(4)、特に、自動車車体部品を、コーティング剤、特に、塗料で、コーティングするためのコーティング設備であって、
a)多軸コーティングロボット(1)、
b)コーティング対象の前記部品(4)の表面にわたる所定のコーティング経路(13、15)に沿って前記コーティングロボット(1)により移動させられる塗布装置(3)、
c)コーティング対象の前記部品(4)の空間測定のための測定系(5)、
d)制御装置(7)であって、
d1)前記塗布装置(3)を制御するための、及び、
d2)前記塗布装置(3)が所定の前記コーティング経路(13、15)に沿って移動しかつ前記コーティング経路(13、15)上の前記部品(4)をコーティングするように、所定の前記コーティング経路(13、15)に従い前記コーティングロボット(1)を制御するための、及び、
d3)コーティング対象の前記部品(4)の空間的位置を決定するために前記測定系(5)に問い合わせるための、
制御装置(7)、
を含み、
e)前記コーティング設備が請求項1から13のいずれか1項に記載のコーティング方法を実行するように、前記制御装置(7)は、前記コーティングロボット(1)及び前記塗布装置(3)を制御し、前記測定系(5)に問い合わせる、
コーティング設備。
【請求項15】
前記測定系(5)は、前記コーティングロボット(1)上に取り付けられ、かつ、コーティング対象の前記部品(4)の前記表面にわたり前記コーティングロボット(1)により移動させられる、
請求項14に記載のコーティング設備。
【請求項16】
a)前記測定系(5)は、
a1)光切断法センサー、及び/又は、
a2)カメラ、
を含み、
b)前記塗布装置(3)は、
b1)噴霧器、特に、回転噴霧器、又は、
b2)噴霧器とは対照的に前記コーティング剤を噴霧せず空間的に狭く限られたコーティング剤ジェットを放出する本質的にオーバースプレーのない塗布装置(3)、
であり、及び/又は、
c)前記コーティング剤は塗料であり、及び/又は、
d)コーティング対象の前記部品(4)は自動車車体又は自動車車体の一部である、
請求項14又は15に記載のコーティング設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング剤(例えば、塗料)により部品(例えば、自動車車体部品)をコーティングするためのコーティング方法に関する。さらに、本発明は、対応するコーティング設備に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体部品を塗装するための現代の塗装設備では、回転噴霧器が通常は塗布装置として用いられ、これは塗装対象の自動車車体部品の部品表面にわたる事前設定済みのコーティング経路に沿って直列ロボット運動学を有する多軸塗装ロボットによりガイドされる。塗装対象の自動車車体部品は通常は塗装設備を通る塗装ラインに沿ってリニアコンベアによって運搬されるが、リニアコンベアは位置決め許容差を有する。さらに、多軸塗装ロボットも位置決め許容差を有する。最後に、塗装対象の自動車車体部品も形状許容差を有する。結果として、これらの位置決め許容差は塗装対象の自動車車体部品に対する回転噴霧器の不正確な位置決めをまねき得る。
【0003】
この問題を解決するために先行技術では様々な構想が知られているが、これらは全て特定の欠点を伴うものである。
【0004】
ある既知の構想は、例えば4つのカメラで動作し得る位置検出系により塗装対象の自動車車体部品が塗装前に測定されることを要する。そして、塗装対象の自動車車体部品の測定された位置、向き、及び形状に応じて、事前設定済みのプログラムされたコーティング経路は応分に適合され得る。
【0005】
一方、別の既知の構想は、事前設定済みのコーティング経路がその後に測定結果に応じて適合され得るようにロボットでガイドされる移動式の系を用いて塗装対象の自動車車体部品を測定することを要する。塗装対象の自動車車体部品の測定は所定のプログラムされたコーティング経路とは独立して別個の測定処理において実行される。
【0006】
さらに、運転中の温度変化も塗装対象の自動車車体部品に対するロボットにガイドされた回転噴霧器の不正確な位置決めをまねき得る。例えば、塗装ロボットは電気的熱損失及び摩擦のため運転中に発熱するが、これはロボット幾何学を変形させ、結果として対応する不正確な位置決めをまねく。1mmまでの温度関連位置決め誤差がロボット運転中に生じ得る。回転噴霧器を用いる場合に塗装対象表面の正確な位置はスプレーコーンの範囲外でない限り重要ではない。しかし、このことはオーバースプレーのないアプリケーター(例えば、プリントヘッド)でコントラストルーフを塗装する場合には当てはまらない。
【0007】
温度関連位置決め誤差を補償するために、先行技術ではロボット温度を周期的に測定し測定された温度値に応じて計算に用いられたロボットモデルを適合させることが知られている。こうして、温度関連位置決め誤差を減らすことができる。
【0008】
しかし、上述した既知の構想は簡単に後述する様々な欠点を伴う。
【0009】
部品許容差及びロボット許容差が考慮されないので、複数のカメラを用いた全体的部品測定は、通常、必要とされる位置決め精度を達成するのに十分ではない。例えば、自動車車体部品についての位置決め誤差は1mm未満とすべきである。
【0010】
ロボットにガイドされる移動式の部品測定の場合、測定された領域のみが一度に局所的に補償され得る。また、大面積塗布では、部品縁はごく一部に過ぎず、一方で、囲まれた区域は、そこで測定可能な特徴(例えば、縁)がないため、ロボットにガイドされる移動式の測定により測定及び補償できない。
【0011】
他方、上述の温度補償は、極めて複雑であり、アーティファクトの質、測定位置の数及び位置、並びに、ロボットモデルの記述に依存する。さらに、ロボットがその実際の測定作業を妨害されないように、アーティファクトは塗布区域内に直接的に配置されない。温度補償のためのこうした系も、比較的に複雑であり、高価であり、高度な維持管理を必要とする。
【0012】
本発明の技術背景について、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2、及び特許文献2も参照されたい。
【0013】
最後に、非特許文献3は、請求項1のプリアンブルに記載の方法を開示する。しかし、この既知の方法はまだ完全に満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】独国特許出願公開第102016014944号明細書
【文献】独国実用新案第9001451号明細書
【非特許文献】
【0015】
【文献】VORGEL,W著、『Eine interaktive raeumliche Benutzerschnittstelle fuer die Programmierung von Industrierobotern』(Forschungsberichte IWB、228巻、ミュンヘン、2009年、また、博士論文としてTechnische Universitaet Muenchen、2008年)
【文献】『CAD-Systeme bilden Basis fuer Offline-Programmierung』(https://www.computerwoche.de/a/cad-systeme-bilden-basis-fuer-offlineprogrammierung/1157492(「https://archive.org/web/」にて2014年4月12日にアーカイブ済み))
【文献】GRUHLER,Gerhard著、『ISW Forschung und Praxis - Sensorgefuehrte Programmierung bahngesteuerter Industrieroboter.』(67巻、pringer-Verlag Berlin Heidelberg GmbH、1987年、ISBN 978-3-662-09860-8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上を鑑み、本発明は、応分に改善されたコーティング方法及び対応するコーティング設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、独立請求項に従い本発明に係るコーティング方法及び本発明に係るコーティング設備により解決される。
【0018】
以下では、実際の測定動作に関連する本発明に係る詳細を説明する。コーティング経路及び測定経路は通常は自動車車体のルーフなどのコーティング対象の部品の表面領域を通って延びており、この表面領域は測定可能な縁により区切られている。ここで、表面領域の縁上の縁点について空間的な縁点位置及び/又は縁点向きの基準値が事前設定される。これらの基準値は、例えば、所定のCADモデル(CAD:Computer Aided Design)に基づき決定されてもよいし、別個に測定されてもよい。その後、測定動作の最中に表面領域の縁上の縁点の縁点位置及び/又は縁点向きの測定値が測定される。その後、一方の測定値と他方の基準値との間の偏差が決定される。その後、コーティング経路はこの測定に応じて適合される。
【0019】
例えば、この適合は補正アルゴリズムにより行うことができ、例えば、数例を挙げれば、n次多項式(nは1から6)、3次スプライン、5次スプライン、3次ベジェ曲線、又は5次ベジェ曲線が挙げられる。
【0020】
可能な補正アルゴリズムの詳細を後述する。補正アルゴリズムの基本概念は、測定点と経路点との間の距離がより短いほど測定点の補正値が経路点に一層大きく影響するというものである。
【0021】
補正アルゴリズムについて、縁はセクション毎に直線方程式により近似される。それぞれについて、2つの隣接する測定点が直線を定義し、これは、当該2つの測定点の間で、また、一方向にさらなる測定点がない場合は、それを超えても、有効である。左及び右の縁上の測定点については、直線はy=f(x)の形式で表され、始点及び終点の縁については、x=f(y)である。したがって、直線方程式はmを無限大に近づけた時の数値的問題を伴わずにy=m×x+b又はx=m×y+bとして常に表すことができる。
【0022】
プログラムされた測定点(=ゼロボディ(Nullkarosse)上の測定点)について、及び、補正済み測定点(=プログラムされた測定点+測定コンピューターからの補正値)について、直線が計算される。
【0023】
経路点PのY方向の補正について、左/右の縁に関する方程式のどのセクションが当該点に属するかを決定するためにXP座標が用いられ、その後、XP座標が対応する方程式に代入される。
【0024】
左マージン:YL=fL(XP)かつYKorrL=fL(XP)。これより、DeltaL=YKorrL-YLが得られる。
右マージン:YR=fR(XP)かつYKorrR=fR(XP)。これより、DeltaR=YKorrR-YRが得られる。
【0025】
DeltaL及びDeltaRは、ここで、Y方向の補正を得るために左及び右の縁からの経路点Pの距離により重み付けされる。
【0026】
DistL=ABS(YP-YL)及びDist=ABS(YR-YL)を用いて、以下の重み付けが得られる。
fL=1-DistL/Dist(注記:DistLが小さくなるほど大きくなる)
fR=DistL/Dist
これは、fL+fR=1という性質を有する。
【0027】
Y方向における補正値:DeltaL×fL+DeltaR×fR
【0028】
経路点PのX方向の補正について、左/右の縁に関する方程式のどのセクションが当該点に属するかを決定するためにYP座標が用いられ、その後、YP座標が対応する方程式に代入される。
【0029】
始点マージン:XS=fS(YP)かつXKorrS=fS(XP)。これより、DeltaS=XKorrY-XSが得られる。
右マージン:XE=fR(YP)かつXKorrE=fE(XP)。これより、DeltaR=YKorrE-XEが得られる。
【0030】
DeltaS及びDeltaEは、ここで、X方向の補正を得るために始点及び終点の縁からの経路点Pの距離により重み付けされる。
【0031】
DistS=ABS(XP-XS)及びDist=ABS(XE-XS)を用いて、以下の重み付けが得られる。
fS=1-DistS/Dist(注記:DistSが小さくなるほど大きくなる)
fE=DistS/Dist
これは、fS+fE=1という性質を有する。
【0032】
X方向における補正値:DeltaS×fS+DeltaE×fE
【0033】
Z方向の補正については、左及び右の縁を伴うXZ平面における射影又は始点の縁及び終点の縁を伴うYZ平面における射影を用いることができる。前者の場合、z=f(x)の形態の直線方程式が得られ、後者の場合、z=f(y)の形式の直線方程式が得られる。いずれの平面においても、計算はY方向又はX方向における補正の計算と類似である。両方の変形式が計算され、2つの変形式の結果から得られた平均値がZ補正として用いられる。
【0034】
さらに、本発明の範囲内において、コーティング対象の部品上の縁のある表面領域(例えば、自動車車体のルーフ)を、2つのコーティングロボットにより測定及びコーティングすることが可能であり、この2つのコーティングロボットは、表面領域の両側に、例えば、塗装ラインの両側に配置されることが好ましい。この時、表面領域は互いに直に隣接する2つの副領域に分割される。例えば、これは左ルーフ半分及び右ルーフ半分であってもよい。そして、第1のコーティングロボットはその測定系により表面領域全体又は2つの副領域の1つを測定する。そして、コーティング経路は第1のコーティングロボットによる空間測定に応じて適合される。そして、第1のコーティングロボットはコーティング剤で第1の副領域(例えば、ルーフの半分)をコーティングし、この際に第1のコーティングロボットは最適化され適合されたコーティング経路に沿って移動する。そして、続いて、第2のコーティングロボットは、第2の副領域を測定し、この空間測定に応じてコーティング経路を適合する。そして、最後に、第2のコーティングロボットはコーティング剤で第2の副領域(例えば、ルーフのもう半分)をコーティングする。第2のロボットは、第1のロボットの第1の塗布経路を測定することにより、2つの副領域の間の境界を同時に表す残余の塗布区域を測定できる。
【0035】
本発明は上述の既知の構想とは全く異なる課題解決手法を取ることが好ましい。既知の構想は、ロボットの位置決め精度を、例えば、温度関連位置決め誤差を補償することにより、改善することを目的とする。したがって、この試みはアプリケーターの実際の位置を事前設定済みの対象位置に可能な限り近づけるようになされる。一方、本発明の手法は、塗布結果を最適化するために位置決めについてロボットの絶対的な精度を概して改善することに帰着するものではなく、むしろ、塗装対象の部品自体を直に測定することにより局所的に全ての偏差を検出し、ロボットプログラムの個別の適合により塗布精度を増加させることにある。理想的には、塗布対象の部品を測定するために、続く塗布のためのものと同じ動作が用いられるべきである。これにより、測定及び塗布の最中のロボットの振る舞い及び全ての誤差の影響は同じになる。ここで、各位置での全ての誤差を個々の測定値が反映しており、これにより最適な補償が可能となるので、位置決め誤差(例えば、部品形状、部品位置における偏差、又は、温度関連位置決め誤差)の正確な原因は重要ではない。
【0036】
本発明に係るコーティング方法は自動車車体部品をコーティングするために用いられるのが好ましい。しかし、原理的には本発明に係るコーティング方法は他種の部品をコーティングするためにも適する。
【0037】
さらに、本発明に係るコーティング方法が好ましくは部品の塗装に役立つことは特筆に値する。しかし、本発明は、コーティング剤の種類について塗料に限られるものではなく、原理的には他種のコーティング剤でも実行できる。
【0038】
本発明に係るコーティング方法では、既知のコーティング方法と同様に、コーティング経路が事前設定される。例えば、コーティング経路は手動の『ティーチング』により設定できる。この代わりに、コーティング経路は、ソフトウェアにより、例えば、オフラインのプログラミングシステムで、生成できる。この場合、塗布経路はCADデータに基づいて自動的に生成され、これはコーティング対象の部品の表面にわたる。そして、後にコーティング対象の部品の表面にわたる前述のコーティング経路に沿って塗布装置(例えば、回転噴霧器)の塗料衝突点がガイドされる。こうしたコーティング経路のプログラミングは、先行技術から既知であり、通常の技術用語に基づけば『ティーチング』とも呼ばれる。
【0039】
さらに、本発明に係るコーティング方法は、好ましくは、コーティング対象の部品(例えば、自動車車体部品)が、三次元空間位置、向き、及び/又は形状について、測定系により測定されることももたらす。
【0040】
この部品測定に応じて、その後、プログラムされたコーティング経路が位置決め誤差を避けるために相応に適合されることが好ましい。
【0041】
そして、実際の塗布の最中に、塗布装置(例えば、プリントヘッド、又は、明瞭な縁でオーバースプレーなくコーティング剤を塗布する他の塗布装置)は、好ましくは多軸コーティングロボットにより、コーティング対象の部品の表面にわたる適合されたコーティング経路に沿ってガイドされることが好ましい。そして、この塗布動作の最中に、塗布装置はコーティング剤をコーティング対象の部品の表面に分配する。
【0042】
塗布装置という用語は、一般的な意味で理解されるべきであり、コーティング剤を例えば空気及び/又は回転要素により噴霧するアプリケーターと、プリントヘッド又は少なくとも1つの狭く限られたコーティング剤ジェットを放出するアプリケーターなどのコーティング剤を噴霧なしで塗布するアプリケーターとの両方を包含する(例えば、独国特許出願公開第102013002433号、独国特許出願公開第102013002413号、独国特許出願公開第102013002412号、独国特許出願公開第102013002411号で記載のもの)。
【0043】
ここで、本発明に係るコーティング方法は、ロボットにガイドされる部品測定を伴う上述の既知のコーティング方法とは、好ましくは本質的にコーティング対象の部品の空間測定についての工程により、異なる。
【0044】
この目的で、コーティング対象の部品の表面にわたり導く塗布経路が事前設定されることが好ましく、この際に測定経路は本質的にコーティング経路に一致する。そして、部品を測定するために、測定系は部品表面にわたる測定動作の一部として事前設定済みの測定経路に沿ってガイドされ、この際に、塗布装置の塗料衝突点は事前設定済みの測定経路に追従する、すなわち、測定センサーは測定経路に追従する。そして、この測定動作の最中に、測定系はコーティング対象の部品の空間測定を実行する。
【0045】
重要なこととして、測定動作の最中に実際の塗布動作の最中と同じ温度関連位置決め誤差が生じるように測定動作が後の塗布動作と本質的に一致することが好ましいことに注意されたい。このため、複雑な温度測定により実際の塗布動作の最中に温度関連位置決め誤差を補償する必要がもはやない。むしろ、先行する測定動作の最中に既に考慮されているため、温度関連位置決め誤差は実際の塗布動作の最中に許容できる。
【0046】
したがって、本発明は冒頭のロボットにガイドされる測定系による部品測定とは好ましくは測定動作が塗布動作と本質的に一致する点で異なる。これとは対照的に、ロボットにガイドされる測定系による測定はこれまで全く異なる動作により実行されてきた。
【0047】
既に触れたように、測定動作は続く塗布動作と可能な限り正確に一致することが好ましい。これは先ず一方の測定動作の最中の塗料衝突点の空間的位置と他方の塗布動作の最中の塗料衝突点の空間的位置との間の偏差に適用される。したがって、一方の塗布動作と他方の測定動作との間の空間的偏差は、好ましくは、100mm、60mm、50mm、40mm、30mm、20mm、10mm、5mm、2mm、又は1mmよりも小さくすべきである。
【0048】
しかし、測定動作は塗料衝突点の位置について続く塗布動作に可能な限り正確に一致すべきことが好ましいだけではない。むしろ、測定動作の最中の塗布装置の向きも塗布動作の最中の後の向きに可能な限り正確に一致すべきである。したがって、一方の測定動作の最中の塗布装置の角度偏差と他方の塗布動作の最中の塗布装置の角度偏差とは、好ましくは、45°、30°、20°、10°、5°、2°、又は1°よりも小さくすべきである。
【0049】
さらに、ロボットにガイドされる塗布装置のある位置及び向きが、通常は、単一のロボット姿勢により実現できるのみならず、異なる複数のロボット姿勢によっても実現できることも考慮されねばならない。本発明の文脈において、『ロボット姿勢』という用語は、ロボットの複数の軸角度を意味する。あるロボット姿勢は、成分としてロボットの全ての軸角度を含むベクトルにより一意的に定義できる。また、好ましくは、測定動作は続く塗布動作と同じロボット姿勢で実行される。したがって、一方の塗布動作と他方の測定動作との間の個々のロボット軸の角度偏差は、好ましくは、20°、10°、又は5°よりも小さくすべきである。
【0050】
また、さらに、測定動作は、好ましくは、続く塗布動作と同じ運動動力学で、すなわち、塗料衝突点の同じ経路速度、塗料衝突点の同じ経路加速度、ロボット軸の同じ軸位置、ロボット軸の同じ軸速度、及び/又は、ロボット軸の同じ軸加速度で、実行されるべきである。
【0051】
したがって、測定動作と塗布動作との間の塗料衝突点の経路速度の偏差は、好ましくは、60%、50%、40%、30%、20%、10%よりも小さく、また、さらには、5%よりも小さくすべきである。絶対値では、経路速度の偏差は、好ましくは、500mm/s、400mm/s、又は300mm/sよりも小さくすべきである。経路加速度、ロボット軸の軸速度、及びロボット軸の軸加速度について、一方の測定動作と他方の塗布動作との間の偏差は、好ましくは、10%又は5%より小さくすべきである。
【0052】
それ故に、コーティング経路は以下の許容差が少なくとも部分的に補償されるように適合されることが好ましい。
・部品の位置、
・部品の形状、
・コーティングロボットの静的な位置決めの不正確性、
・コーティングロボットの動的な位置決めの不正確性、及び/又は、
・コーティングロボットの温度関連の位置決めの不正確性。
【0053】
また、本発明は、上述の本発明に係るコーティング方法についての権利保護のみを請求するわけではない。むしろ、本発明は、部品をコーティングするための対応するコーティング設備の権利保護も請求するものである。特に、これは自動車車体部品をコーティングするためのコーティング設備であってもよい。
【0054】
先ず、最初に、先行技術にならって、本発明に係るコーティング設備は少なくとも1つの多軸コーティングロボットを含み、これは、好ましくは、直列ロボット運動学を有し、また、コーティング対象の部品の部品表面にわたる所定のコーティング経路に沿って塗布装置(例えば、回転噴霧器)をガイドできる。
【0055】
さらに、本発明に係るコーティング設備は、技術水準にならって、コーティング対象の部品の空間測定のための測定系を含む。
【0056】
さらに、本発明に係るコーティング設備は、塗布装置及びコーティングロボットを制御するため、並びに、測定系に問い合わせるための、制御装置も含む。
【0057】
本発明に係るコーティング設備は、コーティング設備が本発明に係るコーティング方法を実行するように、制御装置がコーティングロボット及び塗布装置を制御し且つ測定系に問い合わせることを特徴とする。
【0058】
この場合、測定系は、好ましくは、ロボットにガイドされ、かつ、コーティングロボットに取り付けられ、また、コーティング対象の部品の表面にわたりコーティングロボットにより移動させられる。例えば、測定系は、数例を挙げれば、光切断法センサー又はカメラを有し得る。
【0059】
塗布装置は、噴霧器(例えば、回転噴霧器)であってもよい。ただし、塗布装置が噴霧器とは対照的にスプレージェットを放出しないものの空間的に狭く限られたコーティング剤ジェットを放出するオーバースプレーのない塗布装置であることも可能である。こうしたオーバースプレーのない塗布装置は、最近の先行技術から既知であり、プリントヘッドとも呼ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
他の有利な更なる本発明の実施形態が、従属請求項に示され、また、以下に図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態の記載とともにより詳細に説明される。
【0061】
【
図1】本発明に係るコーティング方法を例示するフローチャート。
【
図4B】補正されたコーティング経路を持つ部品表面。
【
図6C】部品のもう半分の測定を伴う
図6A及び6Bの部品表面。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下では、本発明に係るコーティング方法を示す
図1に記載のフローチャートを説明する。
【0063】
最初の工程S1では、まず、コーティング対象の部品の表面にわたり延び且つ用いられる塗布装置(例えば、回転噴霧器)の塗料衝突点の所望経路を再現するコーティング経路が事前設定される。なお、コーティング経路は、塗料衝突点の空間的位置を反映するのみならず、コーティング経路に沿った塗布装置の空間的向きも反映する。こうしたコーティング経路の定義は、通常、先行技術では『ティーチング』としても知られるプログラミングにより行われる。しかし、コーティング経路はオフラインでも設定できる。
【0064】
そして、さらなる工程S2では、コーティング経路について所望の運動動力学が事前設定される。ここで、運動動力学は事前設定済みのコーティング経路に沿った塗料衝突点の速度及び加速度を含む。
【0065】
そして、工程S3では、事前設定済みのコーティング経路と同様の測定経路が同様の運動動力学で走行され、この際に塗装ロボットによりガイドされる測定装置が部品を測定する。ここで、測定動作の最中の位置決め誤差が塗布動作の最中の位置決め誤差と可能な限り正確に一致するように、測定動作が続く塗布動作からの可能な限り小さい偏差を有することが重要である。
【0066】
そして、工程S4では、工程S1で事前設定済みのコーティング経路が測定動作の最中に工程S3で行われた空間測定に応じて適合される。
【0067】
そして、工程S5では、最適化されたコーティング経路が走行され、この際に塗布装置はコーティング剤を塗布する。したがって、工程S1-S4はコーティング経路の作成、測定、及び最適化を再現するが、一方、工程S5は実際の塗布操作を再現する。
【0068】
図2A及び2Bは、本発明に係るコーティング設備の模式的形態を示し、当該コーティング設備はコーティングロボット1を備え、コーティングロボット1は、ロボットフランジ2と、ロボットフランジ2に取り付けられている、回転噴霧器などの、アプリケーター3とを備える。運転中、アプリケーター3はコーティング剤を部品4に塗布するが、ここでは模式的にのみ示す。
【0069】
さらに、センサー5がロボットフランジ2に取り付けられており、これは、センサー測定窓6を有し、部品4の測定を可能とする。例えば、センサー5は、カメラベースのセンサーでもよいが、例えば光切断法センサーも可能である。
【0070】
さらに、コーティング設備は、コーティングロボット1を制御するためのロボットコントローラーを含む制御装置7を含む。さらに、制御装置7は、センサー5に問い合わせるための測定機構を含む。測定機構は、必ずしもロボット制御装置に組み込まれている必要はない。むしろ、それは独立系/PCに配置できる。
【0071】
そして、制御装置7は、本発明に係るコーティング方法が実行されるように、コーティングロボット1を制御し且つセンサー5に問い合わせる。
【0072】
以下では、
図4A及び4Bを参照しつつ
図3に記載のフローチャートを説明する。
【0073】
最初の工程S1では、周囲を巡っての部品表面8の輪郭測定が実行され、ここで、それは例えば自動車車体のルーフであってもよい。
【0074】
部品表面8は部品表面8を区切る縁9-12を有する。
【0075】
事前設定済みのコーティング経路13(該当図では模式的にのみ示す)が部品表面8内に延びている。
【0076】
工程S1では、周囲を巡っての部品表面8の輪郭測定が実行され、この際に部品表面8の縁9-12上の縁点14が測定される。
【0077】
そして、工程S2では、測定された縁点14の座標が基準測定値と比較され、ここで対応する基準値は例えばCADモデルにより事前設定できる。
【0078】
そして、工程S3では、縁点14の測定値と事前設定済みの基準値との間の偏差が計算される。
【0079】
そして、工程S4では、測定結果がロボットコントローラーに渡される。
【0080】
そして、工程S5では、コーティング経路13は位置決め誤差を考慮に入れるために再計算される。
【0081】
そして、工程S6では、最適化されたコーティング経路13で実際の塗布が実行される。
【0082】
図4Bは、最適化に従った対応する変形されたコーティング経路13を示す。
【0083】
以下では、
図6Aから6Dを参照しつつ
図5に記載のフローチャートを説明する。
【0084】
ここで、本発明のこの変形例では塗装ラインの両側に配置された2つのコーティングロボットによりコーティング方法が実行されることは特筆に値する。
【0085】
ここで、部品表面8は2つの副領域A、Bに分割されており、これらは例えば自動車車体の左及び右のルーフ半分であってもよい。
【0086】
工程S1では、周囲を巡っての、塗布区域の第1の副領域Aの、例えば、
図6Aに示す部品表面8の右半分の輪郭測定が先ず実行される。
【0087】
そして、工程S2では、縁点14の座標が基準値の対応座標と既に上述したように比較される。
【0088】
そして、工程S3では、測定差が計算される。
【0089】
工程S4では、測定結果が制御装置に送信され、これは次に工程S5で副領域A(例えば、ルーフの右半分)におけるコーティング経路を再計算する。
【0090】
そして、工程S6では、副領域Aは
図6Bに示すようにコーティングされる。
【0091】
また、工程S7では、部品表面8の第2の副領域Bの輪郭測定も実行され、ここで、それは例えばルーフのもう半分であってもよい。
【0092】
そして、工程S8では、境界輪郭との比較がなされ、ここで、当該境界輪郭は工程S6で前もって塗装されているコーティング経路15でもよく、ここで、コーティング経路15はコーティング経路13と独立していてもよい。
【0093】
工程S9では、基準測定値との比較もなされ、工程S10で測定差が計算される。
【0094】
次に、工程S11では、測定結果が制御装置に送信され、これは次に工程S11でコーティング経路を再計算する。
【0095】
そして、工程S13では、第2の副領域Bの塗布が
図6Dに示すように実行される。
【0096】
ルーフ表面の処理の上述の例は例示にすぎない。同じように、任意の他の表面、例えば、自動車車体のものが、測定及びコーティングでき、例えば、A-ピラー、ルーフレール、又はCピラーが挙げられる。
【0097】
本発明は上述の実施形態に限られるものではない。むしろ、本発明は、本発明の思想を利用し、それ故に、権利保護範囲に属する多数の変形例及び修正例を包含する。特に、本発明は、従属請求項の主題と特徴について、それぞれが引用する請求項とは独立して、権利保護を請求する。したがって、本発明は、互いに独立した権利保護を享受する本発明の様々な態様を含む。
【0098】
[付記]
[付記1]
部品(4)、特に、自動車車体部品を、コーティング剤、特に、塗料で、コーティングするためのコーティング方法であって、
a)少なくとも1つのコーティング経路(13、15)であって、コーティング対象の前記部品(4)の表面にわたる事前設定済みの前記少なくとも1つのコーティング経路(13、15)に沿って塗布装置(3)の塗料衝突点を移動させるための、縁により境界されるコーティング対象の前記部品(4)の表面領域を通過する少なくとも1つのコーティング経路(13、15)を設定する工程と、
b)前記表面領域の前記縁上の縁点について空間的な縁点位置及び/又は縁点向きの基準値を設定する工程と、
c)測定系(5)によりコーティング対象の前記部品(4)の又はコーティング対象の前記部品(4)の一部の位置、向き、及び/又は形状を空間測定する工程であって、前記表面領域の前記縁上の前記縁点の前記縁点位置及び/又は前記縁点向きの測定値が当該空間測定の一部として測定される、工程と、
d)一方の前記縁点位置及び/又は前記縁点向きの前記測定値と他方の前記縁点位置及び/又は前記縁点向きの前記基準値との間の偏差を決定する工程と、
e)前記縁点の前記基準値と前記縁点の前記測定値との間の前記偏差に応じて前記コーティング経路(13、15)を適合させる工程と、
を含む、コーティング方法。
【0099】
[付記2]
a)特に多軸コーティングロボット(1)により、コーティング対象の前記部品(4)の表面にわたる適合済みの前記少なくとも1つのコーティング経路(13、15)に沿って塗布動作の過程で塗布装置(3)を移動させる工程と、
b)適合済みの前記少なくとも1つのコーティング経路(13、15)に沿った前記塗布装置(3)の前記移動の最中にコーティング対象の前記部品(4)の表面に前記塗布装置(3)により前記コーティング剤を塗布する工程と、
を含み、
コーティング対象の前記部品(4)の前記空間測定について、
c)コーティング対象の前記部品(4)の前記表面にわたり前記測定系(5)を移動させるための、前記コーティング経路(13、15)と本質的に一致する測定経路を設定する工程と、
d)測定動作の一部として所定の前記測定経路に沿って前記測定系(5)を移動させる工程であって、前記塗布装置(3)の前記塗料衝突点が所定の前記測定経路を追従する工程と、
e)前記測定経路に沿った前記測定動作の最中に前記測定系(5)によりコーティング対象の前記部品(4)を空間測定する工程と、
を含む、付記1に記載のコーティング方法。
【0100】
[付記3]
一方の前記測定経路に沿った測定動作の最中の前記塗料衝突点の空間的位置と他方の前記コーティング経路(13、15)に沿った塗布動作の最中の前記塗料衝突点の空間的位置との間の偏差が、40mm、30mm、20mm、10mm、5mm、2mm、又は1mmより小さい、付記2に記載のコーティング方法。
【0101】
[付記4]
前記塗布装置(3)が測定動作の最中に塗布動作の最中と本質的に同じ空間的向きを有する、付記1から3のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0102】
[付記5]
a)一方の前記測定動作の最中の前記塗布装置(3)の向きと他方の前記塗布動作の最中の前記塗布装置(3)の向きとの間の角度偏差が、45°、30°、20°、10°、5°、2°、又は1°より小さく、及び/又は、
b)一方の前記測定動作の最中の個別ロボット軸の向きと他方の前記塗布動作の最中の前記個別ロボット軸の向きとの間の角度偏差が、少なくともロボット主軸の場合には、20°、10°、又は5°より小さい、
付記4に記載のコーティング方法。
【0103】
[付記6]
a)前記少なくとも1つのコーティング経路(13、15)に沿った塗布動作が特定の運動動力学で行われ、
b)前記コーティング経路(13、15)に沿った測定動作が特定の運動動力学で行われ、かつ、
c)前記測定動作は前記塗布動作と本質的に同じ運動動力学で行われる、
付記1から5のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0104】
[付記7]
a)前記測定動作及び前記塗布動作における前記運動動力学は前記塗布装置(3)の前記塗料衝突点の経路速度について本質的に本質的に同じであり、及び/又は、
b)前記測定動作及び前記塗布動作における前記運動動力学は前記塗布装置(3)の前記塗料衝突点の経路加速度について本質的に本質的に同じであり、及び/又は、
c)前記測定動作及び前記塗布動作における前記運動動力学はコーティングロボットのロボット軸の軸位置について本質的に同じであり、及び/又は、
d)前記測定動作及び前記塗布動作における前記運動動力学は前記コーティングロボットのロボット軸の軸速度について本質的に同じであり、及び/又は、
e)前記測定動作及び前記塗布動作における前記運動動力学は前記コーティングロボットのロボット軸の軸加速度について本質的に同じである、
付記6に記載のコーティング方法。
【0105】
[付記8]
a)一方の前記測定動作の最中の前記塗料衝突点の前記経路速度と他方の前記塗布動作の最中の前記塗料衝突点の前記経路速度との間の偏差は、
a1)60%、50%、40%、30%、20%、10%、又は5%、及び/又は、
a2)500mm/s、400mm/s、300mm/s、
よりも小さく、
b)一方の前記測定動作の最中の前記塗料衝突点の前記経路加速度と他方の前記塗布動作の最中の前記塗料衝突点の前記経路加速度との間の偏差は、10%又は5%よりも小さく、及び/又は、
c)一方の前記測定動作の最中の前記ロボット軸の前記軸速度と他方の前記塗布動作の最中の前記ロボット軸の前記軸速度との間の偏差は、10%又は5%よりも小さく、及び/又は、
d)一方の前記測定動作の最中の前記ロボット軸の前記軸加速度と他方の前記塗布動作の最中の前記ロボット軸の前記軸加速度との間の偏差は、10%又は5%よりも小さい、
付記7に記載のコーティング方法。
【0106】
[付記9]
a)前記表面領域の測定される縁の数は2から8の間であり、及び/又は、
b)前記コーティング経路(13、15)は、
b1)n次多項式(nは1から6)、
b2)3次スプライン、
b3)5次スプライン、
b4)3次ベジェ曲線、又は、
b5)5次ベジェ曲線、
により、個別の前記縁に沿った前記基準値と前記測定値との間の偏差に応じて、適合される、
付記1から8のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0107】
[付記10]
a)前記縁点位置の前記基準値は前記部品(4)のCADモデルに基づいて決定される、又は、
b)前記縁点位置の前記基準値は基準部品上での測定により測定される、
付記1から9のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0108】
[付記11]
a)コーティング対象の前記部品(4)上の縁のある前記表面領域は2つのコーティングロボットにより測定及びコーティングされ、前記2つのコーティングロボット(1)は、前記表面領域の両側に、特に、コーティングラインの両側に、好ましくは配置されており、
b)前記表面領域は互いに直に隣接する2つの副領域に分割されており、
c)第1のコーティングロボット(1)はその測定系(5)により前記表面領域全体又は前記副領域の1つを空間測定し、
d)移動の経路は前記第1のコーティングロボット(1)による前記空間測定に応じて適合され、
e)前記第1のコーティングロボット(1)は前記コーティング剤で第1の副領域をコーティングし、
f)前記第1のコーティングロボットにより塗布される、前記2つの副領域の間の区切り塗布経路を好ましくは含む、第2の副領域を第2のコーティングロボット(1)は空間測定し、
g)移動の経路は前記第2のコーティングロボット(1)による前記空間測定に応じて適合され、かつ、
h)前記第2のコーティングロボット(1)は前記コーティング剤で前記第2の副領域をコーティングする、
付記1から10のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0109】
[付記12]
第2の副領域の少なくとも1つの境界はコーティング経路(15)の外縁により画定されている、
付記1から11のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0110】
[付記13]
a)前記部品(4)の位置、
b)前記部品(4)の形状、
c)前記コーティングロボット(1)の静的な位置決めの不正確性、
d)前記コーティングロボット(1)の動的な位置決めの不正確性、
e)前記コーティングロボット(1)の温度関連の位置決めの不正確性、
についての許容差が少なくとも部分的に補償されるように、前記コーティング経路(13、15)は適合される、
付記1から12のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0111】
[付記14]
部品(4)、特に、自動車車体部品を、コーティング剤、特に、塗料で、コーティングするためのコーティング設備であって、
a)多軸コーティングロボット(1)、
b)コーティング対象の前記部品(4)の表面にわたる所定のコーティング経路(13、15)に沿って前記コーティングロボット(1)により移動させられる塗布装置(3)、
c)コーティング対象の前記部品(4)の空間測定のための測定系(5)、
d)制御装置(7)であって、
d1)前記塗布装置(3)を制御するための、及び、
d2)前記塗布装置(3)が所定の前記コーティング経路(13、15)に沿って移動しかつ前記コーティング経路(13、15)上の前記部品(4)をコーティングするように、所定の前記コーティング経路(13、15)に従い前記コーティングロボット(1)を制御するための、及び、
d3)コーティング対象の前記部品(4)の空間的位置を決定するために前記測定系(5)に問い合わせるための、
制御装置(7)、
を含み、
e)前記コーティング設備が付記1から13のいずれか1つに記載のコーティング方法を実行するように、前記制御装置(7)は、前記コーティングロボット(1)及び前記塗布装置(3)を制御し、前記測定系(5)に問い合わせる、
コーティング設備。
【0112】
[付記15]
前記測定系(5)は、前記コーティングロボット(1)上に取り付けられ、かつ、コーティング対象の前記部品(4)の前記表面にわたり前記コーティングロボット(1)により移動させられる、
付記14に記載のコーティング設備。
【0113】
[付記16]
a)前記測定系(5)は、
a1)光切断法センサー、及び/又は、
a2)カメラ、
を含み、
b)前記塗布装置(3)は、
b1)噴霧器、特に、回転噴霧器、又は、
b2)噴霧器とは対照的に前記コーティング剤を噴霧せず空間的に狭く限られたコーティング剤ジェットを放出する本質的にオーバースプレーのない塗布装置(3)、
であり、及び/又は、
c)前記コーティング剤は塗料であり、及び/又は、
d)コーティング対象の前記部品(4)は自動車車体又は自動車車体の一部である、
付記14又は15に記載のコーティング設備。
【符号の説明】
【0114】
1 コーティングロボット
2 ロボットフランジ
3 アプリケーター
4 部品
5 センサー
6 センサー測定窓
7 制御装置
8 部品表面
9-12 部品表面の縁
13 コーティング経路
14 縁点
15 コーティング経路