(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】微小球被覆ポリウレタン物品及びそれを作製する方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/14 20060101AFI20240913BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B32B3/14
C08G18/65 011
(21)【出願番号】P 2021568504
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(86)【国際出願番号】 IB2020054532
(87)【国際公開番号】W WO2020234697
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-12
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ジョン シー.
(72)【発明者】
【氏名】バエッツォルド,ジョン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ホー,チャーリー シー.
(72)【発明者】
【氏名】クゲル,アレクサンダー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ヨンシャン
(72)【発明者】
【氏名】ポマー,クリス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジェネン,ジャイ エム.
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-512683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/14
C08G 18/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)単層状に配置された複数の微小球を含む微小球層と、
(b)第1主面と、反対側の第2主面とを含むビーズ結合層であって、前記複数の微小球が前記ビーズ結合層の前記第1主面に部分的に埋め込まれており、且つ少なくとも35℃のガラス転移温度を有する熱硬化性ポリウレタンを含む、ビーズ結合層と、
(c)前記ビーズ結合層の前記第2主面上に配置されたプライマー層であって、前記プライマー層はポリ尿素とポリウレタンのコポリマーを含み、前記プライマー層は、尿素結合を介して前記ビーズ結合層と共有結合している、プライマー層と、
(d)前記プライマー層の、前記ビーズ結合層と反対側の上に配置されたエラストマー層であって、ポリウレタン熱可塑性エラストマーを含む、エラストマー層と、
を含む、物品。
【請求項2】
前記物品が、紫外線照射、熱、又はこれらの組み合わせに対して安定である、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記エラストマー層が、少なくとも200%の破断点伸びを有する、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記エラストマー層が、
ジイソシアネートと、
ポリマージオールと、
ジオール鎖延長剤と、
を含む反応混合物の反応生成物を含み、
任意選択的に、前記ジオール鎖延長剤が、約250ダルトン未満の重量平均分子量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記ポリウレタン熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が、80,000ダルトン~400,000ダルトンの範囲内である、請求項1~4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記ジイソシアネートが、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トルエン2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、ポリ(ヘキサメチレンジイソシアネート)、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4-クロロ-6-メチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトブタン、1,8-ジイソシアナトオクタン、又はこれらの混合物から選択される、請求項4
に記載の物品。
【請求項7】
前記ポリマージオールが、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、及びポリオレフィンジオールのうちの少なくとも1つから選択される、請求項4
又は6に記載の物品。
【請求項8】
前記ジオール鎖延長剤が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、又はこれらの混合物から選択される、請求項4
、6及び7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記ポリウレタン熱可塑性エラストマーが、約30重量%~約55重量%の範囲でハードセグメントを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記熱硬化性ポリウレタンが、
ポリイソシアネートと、
ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリオールと、
の反応生成物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記プライマー層が水性ポリウレタンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
前記プライマー層が、ヒドロキシ官能性シリコーンポリ(メタ)アクリレートを本質的に含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
前記複数の微小球の表面が求核基を含み、任意選択的に前記求核基がアミノ基である、請求項1~12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
前記エラストマー層の、前記プライマー層と反対側の上に配置された接着剤層を更に備え、任意選択的に、前記接着剤が(メタ)アクリル感圧接着剤である、請求項1~13のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
ビーズ被覆フィルムを作製する方法であって、
その上に微小球の単層が部分的に埋め込まれた転写ポリマー層を含む転写シートを提供することと、
前記埋め込まれた微小球の単層をビーズ結合反応混合物で被覆することと、
前記ビーズ結合反応混合物を部分的に硬化させてビーズ結合層を形成することであって、前記ビーズ結合層は熱硬化性ポリウレタンを含み、少なくとも35℃のガラス転移温度を有する、ことと、
プライマー反応混合物を前記ビーズ結合層上に接触させることと、
第2の反応混合物を硬化させてプライマー層を形成することであって、前記プライマー層は、ポリ尿素とポリウレタンのコポリマーを含み、前記プライマー層は、尿素結合を介して前記ビーズ結合層と共有結合している、ことと、
前記プライマー層上にポリウレタン熱可塑性エラストマーを配置することと、
前記転写シートを除去して、前記ビーズ被覆フィルムを形成することと、
を含み、任意選択的に、前記ポリウレタン熱可塑性エラストマーが、前記プライマー上に押出成形される、方法。
【請求項16】
車両、航空機、又は船舶における、請求項1~14のいずれか一項に記載の物品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリウレタン層に埋め込まれた微小球の単層を含む多層物品について、そのような物品を作製する方法とともに論じられる。本開示の物品は、例えば、機械的耐久性及び耐候性を必要とする用途において、例えば、自動車、船舶、及び航空宇宙産業のための塗料保護又は塗料交換用途において有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
ガラスビーズで構成された耐久性のあるラミネート体(laminates)及びフィルムが、広く知られている。これらの低光沢度の構造体は、典型的には、構造体に高い耐久性及び装飾性を付与する露出したガラスビーズ表面からなる。典型的には、ビーズが、密に詰められた単層にランダムに位置するように、ビーズがカスケード被覆され、又は、適用され、物品表面全体に連続した単層を形成する。米国特許第4,849,265号(Ueda et al.)及び同第5,620,775号(LaPerre)を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本開示の実施形態は、添付の図面において、限定としてではなく例として図示される。
【0004】
【
図1】本開示の一実施形態による微小球被覆ポリウレタン物品の概略断面図である。
【0005】
【
図2A】本開示の一実施形態による物品を作製する方法を示す。
【
図2B】本開示の一実施形態による物品を作製する方法を示す。
【
図2C】本開示の一実施形態による物品を作製する方法を示す。
【
図2D】本開示の一実施形態による物品を作製する方法を示す。
【
図2E】本開示の一実施形態による物品を作製する方法を示す。
【0006】
【
図3】比較例Aの表面の一部分のプロフィロメトリー画像である。
【0007】
【
図4】実施例1の表面の一部分のプロフィロメトリー画像である。
【発明の概要】
【0008】
良好な耐久性(耐摩耗性及びチップ耐性など)並びに耐候性を有する微小球被覆物品を特定することが望まれている。このような物品は、自動車、船舶、及び航空宇宙産業の塗料保護又は塗料交換用途における表面被覆としての用途を見出すことができる。
【0009】
一態様では、物品が提供される。物品(本明細書では多層物品とも呼ばれる)は、
(a)単層状に配置された複数の微小球を含む微小球層と、
(b)第1主面と、反対側の第2の主面とを含むビーズ結合層であって、該複数の微小球が該ビーズ結合層の第1主面に部分的に埋め込まれており、且つ少なくとも35℃のガラス転移温度を有する熱硬化性ポリウレタンを含む、ビーズ結合層と、
(c)該ビーズ結合層の第2主面上に配置されたプライマー層であって、該プライマー層はポリ尿素とポリウレタンのコポリマーを含み、該プライマー層は、尿素結合を介して該ビーズ結合層と共有結合している、プライマー層と、
(d)該プライマー層の、該ビーズ結合層と反対側の上に配置されたエラストマー層であって、ポリウレタン熱可塑性エラストマーを含む、エラストマー層と、を含む。
【0010】
別の態様では、ビーズ被覆フィルムを作製する方法が提供される。この方法は、
その上に微小球の単層が部分的に埋め込まれた転写ポリマー層を含む転写シートを提供することと、
該埋め込まれた微小球の単層をビーズ結合反応混合物で被覆することと、
該ビーズ結合反応混合物を部分的に硬化させてビーズ結合層を形成することであって、該ビーズ結合層は熱硬化性ポリウレタンを含み、少なくとも35℃のガラス転移温度を有する、ことと、
プライマー反応混合物を該ビーズ結合層上に接触させることと、
第2の反応混合物を硬化させてプライマー層を形成することであって、該プライマー層は、ポリ尿素とポリウレタンのコポリマーを含み、該プライマー層は、尿素結合を介して該ビーズ結合層と共有結合している、ことと、
該プライマー層上にポリウレタン熱可塑性エラストマーを配置することと、
該転写シートを除去して、該ビーズ被覆フィルムを形成することと、を含む。
【0011】
上記の本開示の概要は、各実施形態を説明することを意図したものではない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明においても記載される。その他の特徴、目的及び利点は、記載及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で用いる場合、
用語「a」、「an」及び「the」は、互換的に用いられ、1つ以上を意味し、
用語「及び/又は」は、述べられた事柄の一方又は両方が起こり得ることを示すために用いられ、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)並びに(A又はB)を含み、
「周囲条件」は、摂氏25度の温度及び1気圧(約100キロパスカル)の圧力を意味し、
「周囲温度」は、摂氏25℃の温度を意味する。
「触媒」は、化学反応の速度を増すことができる物質を意味し、
「ジオール」は、厳密に2個のヒドロキシル官能基を有する化合物を意味し、
「ジイソシアネート」は、厳密に2個のイソシアネート官能基を有する化合物を意味し、
「硬化」は、組成物の物理的状態及び/又は化学的状態を、流体から流動性がより少ない状態に、粘着性から非粘着性の状態に、可溶性から不溶性の状態に変化させるように、化学反応中の重合性材料の消費によりその量を低減するように、又は特定の分子量の材料からより高分子量にするように、変化させることを意味し、
「硬化性」は、硬化可能であることを意味し、
「本質的に含まない」とは、例えば、その物質の0.5%、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.02、0.01、0.005、又は0.001%未満を有する微量の所与の物質のみを有することを意味し、
「完全硬化」は、組成物がその意図される用途での使用に好適である状態に硬化することを意味し、
「部分的硬化」とは、完全硬化未満の状態に硬化することを意味し、
「ポリイソシアネート」は、2つ以上のイソシアネート官能基を有する化合物を意味し、
「ポリオール」は、2つ以上のヒドロキシル官能基を有する化合物を意味する。
【0013】
分子と関連して本明細書で使用される「置換(された)」という用語は、そこに含まれる1個以上の水素原子が1個以上の非水素原子で置き換えられている状態を指す。置換され得る置換基又は官能基の例としては、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、及びI);ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、オキソ(カルボニル)基、カルボン酸、カルボン酸塩、及びカルボン酸エステルを含むカルボキシル基等の基内の酸素原子;チオール基、アルキル及びアリールスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、スルホニル基、及びスルホンアミド基等の基内の硫黄原子;アミン、ヒドロキシアミン、ニトリル、ニトロ基、N-オキシド、ヒドラジド、アジド、及びエナミン等の基内の窒素原子並びに様々な他の基内の他のヘテロ原子が挙げられるが、これらに限定されない。置換された炭素(又は他の)原子と結合可能な置換基の非限定的な例としては、F、Cl、Br、I、OR、OC(O)N(R)2、CN、NO、NO2、ONO2、アジド、CF3、OCF3、R、O(オキソ)、S(チオノ)、C(O)、S(O)、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、N(R)2、SR、SOR、SO2R、SO2N(R)2、SO3R、C(O)R、C(O)C(O)R、C(O)CH2C(O)R、C(S)R、C(O)OR、OC(O)R、C(O)N(R)2、OC(O)N(R)2、C(S)N(R)2、(CH2)0~2N(R)C(O)R、(CH2)0~2N(R)N(R)2、N(R)N(R)C(O)R、N(R)N(R)C(O)OR、N(R)N(R)CON(R)2、N(R)SO2R、N(R)SO2N(R)2、N(R)C(O)OR、N(R)C(O)R、N(R)C(S)R、N(R)C(O)N(R)2、N(R)C(S)N(R)2、N(COR)COR、N(OR)R、C(=NH)N(R)2、C(O)N(OR)R、及びC(=NOR)Rが挙げられ、式中、Rは水素若しくは炭素をベースとした部分であり得、例えばRは、水素、(C1~C100)ヒドロカルビル、アルキル、アシル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、若しくはヘテロアリールアルキルであってもよく、又は式中、窒素原子と若しくは隣接窒素原子と結合した2つのR基が前述の1つ以上の窒素原子と一緒にヘテロシクリルを形成してもよい。
【0014】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、1個~40個の炭素原子、1個~約20個の炭素原子、1個~12個の炭素原子、又はいくつかの実施形態において1個~8個の炭素原子を有する、直鎖状及び分枝状アルキル基、並びにシクロアルキル基を指す。直鎖状アルキル基の例としては、1~8個の炭素原子を有するもの、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基が挙げられる。分岐状アルキル基の例としては、イソプロピル基、イソ-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、及び2,2-ジメチルプロピル基が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、n-アルキル、イソアルキル、及びアンテイソアルキル基並びにアルキルの他の分枝鎖形態を包含する。代表的な置換アルキル基は、本明細書に列挙されている基のいずれか、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ニトロ基、チオ基、アルコキシ基、及びハロゲン基で、1回以上置換されていてもよい。
【0015】
本明細書で使用する「アルケニル」という用語は、2つの炭素原子間に少なくとも1個の二重結合が存在すること以外は、本明細書で規定されている直鎖状及び分枝鎖並びに環状アルキル基を指す。したがって、アルケニル基は、2~40個の炭素原子、又は2~約20個の炭素原子、又は2~12個の炭素原子、又はいくつかの実施形態において2~8個の炭素原子を有する。例としては、特に、ビニル、-CH=CH(CH3)、-CH=C(CH3)2、-C(CH3)=CH2、-C(CH3)=CH(CH3)、-C(CH2CH3)=CH2、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキサジエニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、及びヘキサジエニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書で使用する「アシル」という用語は、カルボニル部分を含む基を指し、この基はカルボニル炭素原子を介して結合している。カルボニル炭素原子は、水素に結合して「ホルミル」基を形成しているか、又は別の炭素原子に結合しており、これは、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル基等の一部であってもよい。アシル基は、カルボニル基に結合した炭素原子を更に0~約12個、0~約20個、又は0~約40個含むことができる。アシル基は、本明細書における意味の範囲内で二重結合又は三重結合を含むことができる。アクリロイル基はアシル基の一例である。アシル基はまた、本明細書における意味の範囲内でヘテロ原子を含むこともできる。ニコチノイル基(ピリジル-3-カルボニル)は、本明細書における意味の範囲内でアシル基の一例である。他の例としては、アセチル基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基、ピリジルアセチル基、シンナモイル基、及びアクリロイル基等が挙げられる。カルボニル炭素原子に結合した炭素原子を含む基がハロゲンを含有する場合、この基は「ハロアシル」基と呼ばれる。一例はトリフルオロアセチル基である。
【0017】
本明細書で使用する「シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチル基などであるが、これらに限定されない環状アルキル基を指す。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、3から約8~12個の環員を有することができるが、他の実施形態では、環炭素原子の数は3~4、5、6、又は7個の範囲である。シクロアルキル基としては更に、ノルボルニル、アダマンチル、ボルニル、カンフェニル、イソカンフェニル、及びカレニル基などが挙げられるが、これらに限定されない多環式シクロアルキル基、並びにデカルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない縮合環が挙げられる。シクロアルキル基はまた、本明細書で定義されるように、直鎖又は分枝鎖アルキル基で置換された環も含む。代表的な置換シクロアルキル基は、一置換されたもの、又は2回以上置換されたもの、例えば、限定されないが、2,2-、2,3-、2,4-、2,5-若しくは2,6-二置換シクロヘキシル基、又は一置換、二置換若しくは三置換ノルボルニル又はシクロヘプチル基であり得、これらは、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ニトロ基、チオ基、アルコキシ基、及びハロゲン基で置換され得る。「シクロアルケニル」という用語は、単独で又は組み合わせて、環状アルケニル基を示す。
【0018】
本明細書で使用する「アリール」という用語は、環内にヘテロ原子を含有しない環状芳香族炭化水素基を指す。したがってアリール基としては、フェニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニル基、インダセニル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ナフタセニル基、クリセニル基、ビフェニレニル基、アントラセニル基及びナフチル基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、アリール基は、基の環部分に約6~約14個の炭素を含有する。アリール基は、本明細書で規定されている通り、非置換又は置換であり得る。代表的な置換アリール基は、一置換であってもよく、又は2回以上置換されていてもよく、例えば、フェニル環の2位、3位、4位、5位、若しくは6位のいずれか1つ以上が置換されたフェニル基、又はその2位~8位のいずれか1つ以上が置換されたナフチル基等であるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用する「アラルキル」という用語は、アルキル基の水素又は炭素結合が、本明細書で定義されるアリール基への結合で置き換えられている、本明細書で定義されるアルキル基を指す。代表的なアラルキル基としては、ベンジル基及びフェニルエチル基、並びに4-エチル-インダニルなどの縮合(シクロアルキルアリール)アルキル基が挙げられる。アラルケニル基は、アルキル基の水素又は炭素結合が、本明細書で定義されるアリール基への結合で置き換えられている、本明細書で定義されるアルケニル基である。
【0020】
本明細書で使用する「アルコキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、シクロアルキル基を含むアルキル基に結合した酸素原子を指す。直鎖アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。分岐鎖アルコキシの例としては、イソプロポキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、イソペンチルオキシ、イソヘキシルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。環状アルコキシの例としては、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルコキシ基は、酸素原子に結合した約1~約12個、約1~約20個又は約1~約40個の炭素原子を含むことができ、二重又は三重結合を更に含むことができ、またヘテロ原子も含むことができる。例えば、アリルオキシ基又はメトキシエトキシ基もまた、本明細書の意味の範囲内のアルコキシ基であり、構造の2つの隣接する原子がそれにより置換される状況においてメチレンジオキシオキシ基である。
【0021】
更に本明細書では、端点による範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~10は、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などを含む)。
【0022】
また、本明細書において、「少なくとも」に続く数字の記載は、特定の数及びその特定の数を超える全ての数を含む。例えば、「少なくとも1つ」は、1以上の全ての数を含む(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
【0023】
本明細書で用いる場合、「A、B及びCのうちの少なくとも1つを含む」は、単独の要素A、単独の要素B、単独の要素C、A及びB、A及びC、B及びC、並びに3つ全ての組み合わせを指す。
【0024】
本開示は、とりわけ、良好な機械的耐久性(例えば、耐摩耗性、チップ耐性、及び/又は鉛筆硬度)、並びに気候耐久性(熱、及び/又は紫外線耐性など)を有する、特定の微小球被覆多層物品を特定している。これらの構造体は、表面の特性を変更するために表面に適用される場合がある。
【0025】
図1は、本開示の多層物品の一実施形態の断面図を表す。多層物品10は、微小球11の単層を含む微小球層を備える。ビーズ結合層12は、第1主面と、第1主面と反対側の第2主面13とを備える。複数の微小球はビーズ結合層の第1主面に埋め込まれ、第2主面13はプライマー層14と接触している。プライマー層14がエラストマー層16上に配置されている。一実施形態では、
図1に示すように、構造体は接着剤層17、及び任意選択的にライナー18を更に含む。
【0026】
エラストマー層
【0027】
エラストマー層は、ポリウレタンを含む熱可塑性エラストマー層である。この層は、エラストマー特性を有する必要があり、それにより、層が、岩などの小さな物体からの衝撃を吸収することを可能にする一方で、多層物品の柔軟性も可能にする。
【0028】
一実施形態では、ポリウレタンは、例えば、ASTM D-882-18によって、例えば、Instronモデル5565(Norwood,MA)を使用して、1インチ(30cm)のジョーギャップを有する12インチ/分(30cm/分)の引張り速度で試験されるとき、少なくとも50、100、200、400、600、800又は更に1000%の破断点伸びを有する。
【0029】
一実施形態では、エラストマー層は、30、25、20、15、10、5、0、-5、-10、-15、又は更に-20℃未満のガラス転移温度を有する。ガラス転移温度は、当該技術分野において既知の技術を使用して、例えば、TA Instruments(New Castle,DE)製のDMA Q800などの動的機械分析器を使用して、1Hzで10℃/分の昇温速度にて決定することができる。
【0030】
エラストマー層中のポリウレタンは、少なくとも約80,000、85,000、90,000、100,000、150,000ダルトン、又は更に175,000ダルトン、及び最大で200,000、300,000、又は更に400,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有し得る。
【0031】
エラストマー層の厚さは、少なくとも25、30、40、50、60、70、又は更に100マイクロメートルであり得る。一実施形態では、エラストマー層の厚さは、最大で75、100、150、200、250、300、400、又は更に500マイクロメートルである。
【0032】
一実施形態では、エラストマー層のポリウレタンは、ジイソシアネート、ポリマージオール、及び鎖延長剤を含む反応混合物の反応生成物である。
【0033】
ジイソシアネートとは、2個のイソシアネート(-N=C=O)官能基を有する分子を指す。好適なジイソシアネートの例としては、以下の式Iによるジイソシアネートが挙げられる:
【化1】
[式中、Rは、置換若しくは非置換であり得る、(C
1~C
40)アルキレン、(C
2~C
40)アルケニレン、(C
4~C
20)アリーレン、(C
4~C
20)アリーレン-(C
1~C
40)アルキレン-(C
4~C
20)アリーレン、(C
4~C
20)シクロアルキレン、又は(C
4~C
20)アラルキレンである]。例示的なジイソシアネートとしては、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トルエン2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、ポリ(ヘキサメチレンジイソシアネート)、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4-クロロ-6-メチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトブタン、1,8-ジイソシアナトオクタン、2,6-トルエンジイソシアネート、2,5-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、メチレンビス(o-クロロフェニルジイソシアネート、メチレンジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート、(4,4’-ジイソシアナト-3,3’、5,5’-テトラエチル)ジフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメトキシビフェニル(o-ジアニシジンジイソシアネート)、5-クロロ-2,4-トルエンジイソシアネート、1-クロロメチル-2,4-ジイソシアナトベンゼン、テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート、1,6-ジイソシアナトヘキサン1,12-ジイソシアナトドデカン、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、メチレンジシクロヘキシレン-4,4’-ジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキシルジイソシアネート、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
エラストマー層を形成するために使用されるジイソシアネートの量は、反応混合物の少なくとも0.5、1、1.5、2、3、5、8、又は更に10重量%、及び最大で15、20、25、30、35、40、45、又は更に47重量%の範囲であり得る。エラストマー層の反応混合物中のジイソシアネートの量は、イソシアネート指数で表すことができる。イソシアネート指数は、概して、使用されるイソシアネート官能基の当量の、ヒドロキシ官能基の理論的当量に対する比を指すことが理解され得る。理論的当量は、1当量のヒドロキシル基当たり1当量のイソシアネート官能基に等しく、これは1.00の指数である。一実施形態では、エラストマー層を形成するために使用される反応混合物のイソシアネート指数は、少なくとも0.99、1.00、1.02、1.03、1.04、又は更に1.05、及び最大で1.10、1.12、1.14、1.16、1.18、又は更に1.20である。
【0035】
本明細書で使用されるポリマージオールという用語は、2つのヒドロキシル(-OH)基を有する、ポリマー及び小分子の両方を含む。ジオールは、カプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、アクリルジオール、ポリエーテルジオール、ポリオレフィンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0036】
エラストマー層を形成するために使用されるポリマージオールの量は、反応混合物の少なくとも43、45、又は更に50重量%、及び最大で55、60、65、又は更に70重量%の範囲であり得る。
【0037】
一実施形態では、ポリマージオールはポリエステルジオールである。一実施形態では、ポリエステルジオールは、重縮合反応などの縮合反応の反応生成物であり得る。しかしながら、ポリエステルポリオールは、開環重合反応を介しては製造されない。
【0038】
ポリエステルジオールが縮合反応により製造される例では、反応は、1つ以上のカルボン酸と1つ以上のポリマージオールとの間であってもよい。好適なカルボン酸の例としては、以下の構造を有する式IIによるカルボン酸が挙げられる:
【化2】
[式中、R
1は、置換若しくは非置換であり得る、(C
1~C
40)アルキレン、(C
2~C
40)アルキレン、(C
2~C
40)アルケニレン、(C
4~C
20)アリーレン、(C
4~C
20)シクロアルキレン、又は(C
4~C
20)アラルキレンである]。好適なカルボン酸の具体例としては、グリコール酸(2-ヒドロキシエタン酸)、乳酸(2-ヒドロキシプロパン酸)、コハク酸(ブタン二酸)、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、テレフタル酸(ベンゼン-1,4-ジカルボン酸)、ナフタレンジカルボン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシナフタラン-2-カルボン酸、シュウ酸、マロン酸(プロパン二酸)、アジピン酸(ヘキサン二酸)、ピメリン酸(ヘプタン二酸)、エタン酸、スベリン酸(オクタン二酸)、アゼライン酸(ノナン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、グルタル酸(ペンタン二酸)、ドデカンジオン酸、ブラシル酸、タプス酸、マレイン酸((2Z)-ブタ-2-エン二酸)、フマル酸((2E)-ブタ-2-エン二酸)、グルタコン酸(ペンタ-2-エン二酸)、2-デセン二酸、トラウマチン酸((2E)-ドデカ-2-エン二酸)、ムコン酸((2E,4E)-ヘキサ-2,4-ジエン二酸)、グルチン酸(glutinic acid)、シトラコン酸((2Z)-2-メチルブタ-2-エン二酸)、メサコン酸((2E)-2-メチル-2-ブテン二酸)、イタコン酸(2-メチリデンブタン二酸)、リンゴ酸(2-ヒドロキシブタン二酸)、アスパラギン酸(2-アミノブタン二酸)、グルタミン酸(2-アミノペンタン二酸)、タルトン酸(tartonic acid)、酒石酸(2,3-ジヒドロキシブテン二酸)、ジアミノピメリン酸((2R,6S)-2,6-ジアミノヘプタン二酸)、サッカリン酸((2S,3S,4S,5R)-2,3,4,5-テトラヒドロキシヘキサン二酸)、メキソシュウ酸(mexooxalic acid)、オキサロ酢酸(オキソブタン二酸)、アセトンジカルボン酸(3-オキソペンタン二酸)、アルビナリン酸、フタル酸(ベンゼン-1,2-ジカルボン酸)、イソフタル酸、ジフェン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
好適なジオールの例としては、以下の構造を有する式IIIによるジオールが挙げられる:
【化3】
[式中、R
2は、置換若しくは非置換であり得る、(C
1~C
40)アルキレン、(C
2~C
40)アルケニレン、(C
4~C
20)アリーレン、(C
1~C
40)アシレン、(C
4~C
20)シクロアルキレン、(C
4~C
20)アラルキレン、又は(C
1~C
40)アルコキシエンであり、R
3及びR
4は、-H、-OH、置換若しくは非置換であり得る、(C
1~C
40)アルキル、(C
2~C
40)アルケニル、(C
4~C
20)アリール、(C
1~C
20)アシル、(C
4~C
20)シクロアルキル、(C
4~C
20)アラルキル、及び(C
1~C
40)アルコキシから独立して選択される]。
【0040】
別の好適なポリオールの例としては、以下の構造を有する式IVによる化合物が挙げられる:
【化4】
[式中、R
5及びR
6は、置換若しくは非置換であり得る、(C
1~C
40)アルキレン、(C
2~C
40)アルケニレン、(C
4~C
20)アリーレン、(C
1~C
40)アシレン、(C
4~C
20)シクロアルキレン、(C
4~C
20)アラルキレン、又は(C
1~C
40)アルコキシエンから独立して選択され、nは、1以上の正の整数(例えば、2、4、5、又は更に10を超える)である]。
【0041】
別の好適なポリオールの例としては、以下の構造を有する式Vによる化合物が挙げられる:
【化5】
[式中、R
7は、置換若しくは非置換であり得る、(C
1~C
40)アルキレン、(C
2~C
40)アルケニレン、(C
4~C
20)アリーレン、(C
1~C
40)アシレン、(C
4~C
20)シクロアルキレン、(C
4~C
20)アラルキレン、又は(C
1~C
40)アルコキシエンであり、nは、1以上の正の整数(例えば、2、4、5、又は更に10を超える)である]。具体的な例では、ポリエステルポリオールとしては、ポリグリコール酸(ポリ[オキシ(1-オキソ-1,2-エタンジイル)])、ポリブチレンスクシネート(ポリ(テトラメチレンスクシネート))、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート)、ポリエチレンテレフタレート(ポリ(エチルベンゼン-1,4-ジカルボキシレート))、ポリブチレンテレフタレート(ポリ(オキシ-1,4-ブタンジイルオキシカルボニル-1,4-フェニレンカルボニル))、ポリトリメチレンテレフタレート(ポリ(トリメチレンテレフタレート);ポリ(オキシ-1,3-プロパンジイルオキシカルボニル-1,4-フェニレンカルボニル))、ポリエチレンナフタレート(ポリ(エチレン2,6-ナフタレート))、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(1,6-ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(エチレン-アジペート)、これらの混合物、及びこれらのコポリマーのうちの1つ以上が挙げられる。しかしながら、ポリエステルポリオールは、ポリカプロラクトンポリオール((1,7)-ポリオキセパン-2-オンを含まない。
【0042】
適切な溶融温度は、エラストマー層の結晶化度を増加させるのに役立ち得る。結晶化度は、示差走査熱量計によって決定することができ、ポリウレタン熱可塑性エラストマーにおける結晶化分率として表される。結晶化度は、少なくとも30、40、又は更に50%~最大55、60、65、又は更に70%の範囲であり得る。結晶化度は、エラストマー層の液化を開始するために比較的高い温度を要するときに、エラストマー層をより容易にロール処理することができる。
【0043】
エラストマー層を形成するために使用される反応混合物に鎖延長剤を添加して、得られるポリウレタンの分子量を増加させ、エラストマー層を強化することができる。鎖延長剤は、反応混合物の少なくとも1、1.5、2、2.5、3、4、又は更に5重量%、及び最大で6、7、8、10、11、又は更に13重量%の範囲であり得る。
【0044】
一実施形態では、鎖延長剤は、2つのヒドロキシル基を有するジオール鎖延長剤である。ジオール鎖延長剤は、少なくとも30、40、50、60、又は更に80ダルトン、及び最大で100、125、150、175、200、225、又は250更にダルトンの重量平均分子量を有する。ジオール鎖延長剤は、任意の好適な数の炭素を含み得る。例えば、ジオール鎖延長剤は、約2個の炭素~約20個の炭素、約3個の炭素~約10個の炭素、又は約2個の炭素、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20個より小さいか、それと等しいか、又はそれより大きい数平均数の炭素を含み得る。相対的に短鎖を含むジオール鎖延長剤は、より長鎖のジオールよりも剛性であり得、エラストマー層を強化することができる。短鎖ジオールは、例えば、短鎖ジオールが、鎖に沿った個々の結合の周りの回転に関してより制限されるため、より剛性であり得る。好適なジオール鎖延長剤の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0045】
一実施形態では、ポリウレタン熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを含む。ハードセグメントは、概して、ジイソシアネートとジオール鎖延長剤との重合から生じる、より硬い、より可撓性の低いポリマーセグメントを指す。ハードセグメントの量は、イソシアネート、鎖延長剤、及び架橋剤の総量(重量%)を計算することによって決定することができる。次いで、その総量をポリウレタン熱可塑性エラストマーの総重量で割る。ハードセグメントは、ポリウレタン熱可塑性エラストマーの少なくとも30、32、34、36、38、又は更に40重量%~最大45、48、50、53、又は更に55重量%の範囲であり得る。ハードセグメントは、互いに相互作用して、それらの間に架橋を効果的に形成することができる(例えば、水素結合を介して)ドメインとして存在する。例えば、機械的変形を通して応力下にあると、ハードセグメントは応力方向に整列するようになり得る。水素結合と連結したこの整列は、エラストマー層の剛性、エラストマー弾性、又は引裂き抵抗に寄与し得る。
【0046】
いくつかの例では、エラストマー層を形成するために使用される反応混合物は、架橋剤を含むことができる。架橋剤の例としては、ポリヒドロキシ基化合物及びポリイソシアネート化合物が挙げられる。例えば、ポリヒドロキシ化合物は、3つのヒドロキシ基又は4つのヒドロキシ基を含むことができる。ポリイソシアネートは、3つのシアノ基又は4つのシアノ基を含むことができる。多くの好適な架橋剤が存在するが、反応混合物はアジリジン架橋剤を含まない。存在する場合、架橋剤は、エラストマー層のポリウレタン鎖を架橋するように機能することができる。
【0047】
エラストマー層の厚さは、特に制限されない。好ましくは、エラストマー層は、多層物品全体を必要に応じて伸張させて、湾曲した又は不規則な形状の三次元輪郭を有する基材に適合するように十分に薄いが、使用中に遭遇する擦過及び衝撃に対して基材を保護するのに十分な厚さである。エラストマー層の厚さは、少なくとも50、60、70、80、100、又は更に150マイクロメートル、及び最大で200、250、300、250、300、350、400、450、500、550、又は更に600マイクロメートルであり得る。
【0048】
ビーズ結合層
【0049】
多層物品中の複数の微小球は、ビーズ結合層を介して定位置に保持される。ビーズ結合層は、熱硬化性ポリウレタンである(熱硬化性ポリマー(thermoset)は、バルク軟化温度を有さないポリマーであり、重合後に溶融又は成形することができないポリマーである)。一実施形態では、熱硬化性ポリウレタンは、少なくとも35、40、45、50、60、70、又は更に80℃のガラス転移温度を有する。一実施形態では、熱硬化性ポリウレタンは、最大で90、95、100、110、又は更に120℃のガラス転移温度を有する。ガラス転移温度は、当該技術分野において既知の技術を使用して、例えば、TA Instruments(New Castle,DE)製のDMA Q800などの動的機械分析器を使用して、1Hzで10℃/分の昇温速度にて決定することができる。熱硬化性ポリウレタンは、微小球に対して良好な接着性を示す必要がある。一実施形態では、接着促進剤をビーズ結合反応混合物に添加して、微小球とビーズ結合層との間の接着性を向上させる。接着促進剤は、ビーズ結合層を微小球の表面上に配置するためのプロセスウィンドウ内で適合可能である必要がある。
【0050】
一実施形態では、ビーズ結合層は、ポリウレタン組成物を硬化させることによって得られる。いくつかの実施形態では、ポリウレタン組成物は、硬化した硬化層を提供するために、成分が互いに反応する硬化性組成物である。ビーズ結合層を得るために使用される硬化性組成物は、ポリイソシアネートとポリオールとを含むことができる。
【0051】
好適なポリイソシアネートとしては、2超(例えば、3、4、6超、又は更にそれ以上)のイソシアネート官能基を有するジイソシアネート及びポリイソシアネートが挙げられる。例示的な実施形態では、ポリイソシアネートは、一級脂肪族ポリイソシアネートなどの一級ポリイソシアネートである。3以上のイソシアネート官能基を有する一級ポリイソシアネートは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソイカネート(diisoycanate)、1,3-キシレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレンジイソシアネート、又は1,4-シクロヘキサンジメチレンジイソシアネートなどの、一級ジイソシアネートから作製することができる。
【0052】
ビーズ結合層を形成するために使用された反応混合物において、ポリイソシアネートは、反応混合物の総重量に対して、少なくとも30、35、40、45、又は更に50重量%~最大60、70、75、80、85、又は更に90重量%を占めることができる。
【0053】
好適なポリオールとしては、ヒドロキシル官能基が2超であるジオール及びポリオールが挙げられる。ポリオールは、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0054】
合計で、ビーズ結合層を作製する際に使用されるポリオール成分は、ビーズ結合層を形成するために使用される反応混合物の総重量に対して、少なくとも25、30、又は更に35重量%~最大で60、65、70、75、又は更に80重量%を占めることができる。
【0055】
一実施形態では、ビーズ結合層を形成するために使用される反応混合物は、ヒドロキシ官能性シリコーンポリ(メタ)アクリレートを含む。ヒドロキシ官能性シリコーンポリ(メタ)アクリレートは、アクリル又はメタクリル主鎖と共有結合したポリジメチルシロキサン側基などのシロキサン側基からなるコポリマーである。コポリマーは、ちょうど1つのヒドロキシル基を有してもよく、その場合、それはモノヒドロキシルシリコーンポリ(メタ)アクリレートである。あるいは、ヒドロキシ官能性シリコーンポリ(メタ)アクリレートは、2つ以上のヒドロキシル基を有することができ、この場合、それはシリコーンポリ(メタ)アクリレートポリオールである。ヒドロキシ官能性シリコーンポリ(メタ)アクリレートの主鎖は、例えばヒドロキシエチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキサノール、スチレン、及びこれらの組み合わせを含む、任意の様々な繰り返し単位を含有することができる。一実施形態では、プライマー層は、本質的にヒドロキシ官能性シリコーンポリ(メタ)アクリレートによるものであり、ヒドロキシ官能性シリコーンポリ(メタ)アクリレートを0.5、0.2、0.1、0.05、0.01、0.005又は0.001%未満含有する。
【0056】
ヒドロキシ官能性シリコーンポリ(メタ)アクリレートの添加は、完全に硬化されたときのビーズ結合層の耐汚染性を改善することができる。ヒドロキシ官能性シリコーンポリ(メタ)アクリレートは、ビーズ結合層を形成するために使用される反応混合物の総重量に基づいて、少なくとも0.1、0.2、0.5、0.8、又は更に1重量%~最大1.5、2、2.5、3、3.5、又は更に4重量%であり得る。
【0057】
ビーズ結合層を形成するために使用される硬化性組成物は、ポリイソシアネートとポリオール成分との反応を促進するための触媒を更に含むことができる。ポリウレタンの重合に有用な触媒としては、アルミニウム、ビスマス、スズ、バナジウム、亜鉛、水銀、及びジルコニウム系触媒、アミン触媒、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい触媒としては、ジブチルスズ化合物などのスズ系触媒が挙げられる。特に好ましいのは、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズジメルカプチド、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズアセトニルアセトネート、及びジブチルスズオキシドからなる群から選択される触媒である。
【0058】
好適な量の触媒は、ビーズ結合層を形成するために使用される反応混合物の総重量に基づいて、少なくとも0.001、0.005、0.01、0.02、0.05、又は更に0.08重量%~最大0.1、0.12、0.15、0.17、又は更に0.2重量%であり得る。
【0059】
本開示の多層構造体は、耐候性を有する必要がある。したがって、紫外線吸収剤及び/又はヒンダードアミン(HALS)を、様々な層、特にビーズ結合層に添加し、物品、及び/又はそれが保護する表面への紫外線損傷を最小限に抑え、これらの層のひび割れ及び光沢低減によって引き起こされる欠陥を最小限に抑えるのに役立てることができる。例示的なUV吸収剤としては、ベンゾトリアゾール化合物、5-トリフルオロメチル-2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。他の例示的なベンゾトリアゾールとしては、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-α-クミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-クロロ-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾチアゾール、5-クロロ-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。追加の例示的なUV吸収剤としては、2(-4,6-ジフェニル-1-3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシ-フェノール、及びBASF(Florham Park,NJ)から商品名「TINUVIN 1577」、「TINUVIN 405」、及び「TINUVIN 900」で販売されているものが挙げられる。加えて、UV吸収剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)などの安定剤及び/又は抗酸化剤と組み合わせて使用することができる。安定剤は、ポリマーの光酸化によって生成されるフリーラジカルを排除することができる。例示的なHALSとしては、BASFから、商品名「CHIMASSORB 944」、「TINUVIN-292」、及び「TINUVIN 123」で入手可能なものが挙げられる。典型的には、紫外線吸収剤及び/又はヒンダードアミン光安定剤は、反応混合物及び/又は硬化層(ビーズ結合層、プライマー層、又はエラストマー層など)中に、少なくとも1、1.5、1.75、又は更に2重量%、及び最大で2.5、3、3.5、4、4.5、又は更に5重量%の総量で存在する。
【0060】
所望であれば、レベリング剤、着色剤、難燃剤、及び可使時間延長剤などの他の成分も、ビーズ結合層を形成するために反応混合物中に含むことができる。
【0061】
本開示のビーズ結合層は、溶媒系溶液から誘導される。換言すれば、溶媒(有機溶媒又は水など)を使用して反応成分を溶解してビーズ結合層を作製するが、ビーズ結合層を形成するとき、溶媒は重合又は硬化しない。ビーズ結合層を作製するために使用される反応混合物の粘度を調整するために、有機溶媒を使用することができる。このような有機溶媒としては、エーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ケトン、ベンゼン誘導体、及びこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、ビーズ結合層の反応混合物は、実質的に水を含まない(例えば、反応混合物中に1、0.5、0.1、又は更に0.05重量%を含む)。溶媒の量は、硬化性ポリウレタン組成物の適切な混合及びキャスティングを容易にするように選択することができる。使用される有機溶媒は、ビーズ結合層の硬化前に、又はそれと同時に除去することができるように、概して揮発性である。このような蒸発は、熱、真空、又は両方によって容易になり得る。
【0062】
ビーズ結合層の前述の反応性成分が混合され、十分に加熱されると、それらは重合し、架橋ネットワークになる。ビーズ結合層中のポリウレタンの架橋密度は、3以上の官能基を有する反応成分の重量をポリウレタンの総重量で除し、100を乗じることによって計算される。高架橋密度(例えば、30パーセントを超える)は、概して、剛性ポリウレタン材料と関連している。しかしながら、一級脂肪族ポリイソシアネートの使用は、可撓性と、高架橋密度の両方を有するポリウレタンを可能にすることができる。有用な架橋密度は、少なくとも25、30、35、40、又は更に45%~最大50、55、60、70、80、90、又は更に100%であり得る。
【0063】
一実施形態では、バルクビーズ結合層は、ポリ尿素を実質的に含まない。換言すれば、隣接する層との境界面の外側では、ビーズ結合層のバルクは、3、2、1、0.5、0.1重量%未満、更に又は尿素結合を含まない。
【0064】
ビーズ結合層における架橋密度が高いため、ビーズ結合層は薄くなる。典型的には、硬化したビーズ結合層の厚さは、微小球がビーズ結合層に埋め込まれる距離よりも小さい。例えば、ビーズ結合層の厚さは、微小球の平均直径の50、45、40、35、又は更に30%未満である。
図1に示されるように(縮尺通りには描かれていない)、ビーズ結合層は、多層物品の最も外側の表面の一部を形成する微小球間に広がり、微小球の下面を被覆する。
【0065】
プライマー層
【0066】
第2ポリウレタン層が提供され、ビーズ結合層とエラストマー層との間に配置される。この層の目的は、ビーズ結合層のエラストマー層への接着性を向上させることである。
【0067】
プライマー層は、ビーズ結合層の第2主面13に沿って延び、これと接触する。プライマー層は、第2ポリウレタン組成物を硬化させることにより作製される。プライマー層の使用は、プライマー層が、ビーズ結合層とプライマー層との間の界面における共有結合(尿素結合による)及び任意選択的に二次結合(水素結合など)をもたらし、層間接着性の向上を可能とするため、有利であり得る。
【0068】
プライマー層組成物は、上述したビーズ結合組成物のものと同様の特性を有することができる。一実施形態では、プライマー層は、ポリウレタン基(-NH-C(=O)-O-)だけでなく、ポリ尿素基(-NH-C(=O)-NH-)も含む点で、ビーズ結合組成物とは異なる。プライマー層を形成する反応混合物は、アミン基を含むか、又は、ビーズ結合層及び/又はエラストマー層のイソシアネート基と反応し得るアミン基を形成する能力を有し、プライマー層とその隣接層(換言すれば、ビーズ結合層の第2主面13とプライマー層の主面15)との間の共有(尿素)結合(及び場合によっては水素結合)につながり、層間接着性の向上をもたらす。
【0069】
いくつかの実施形態では、プライマー層組成物は、水性ポリウレタン分散体である。好ましい水性ポリウレタン分散体としては、脂肪族ポリカーボネートポリウレタン分散体が挙げられる。分散体は、水及び1種以上の共溶媒を含む溶媒系を使用することができる。ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどの特定の共溶媒は、分散体の揮発性を低減することによって被覆品質を改善するのに有用であり得る。
【0070】
プライマー層に使用されるポリウレタン分散体は、アニオン性界面活性剤などの多数の好適な界面活性剤のいずれかを含むことができる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸アンモニウム、及びラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどの硫酸塩、並びに、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム及びスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムなどのスルホコハク酸塩が挙げられる。水性被覆では、これらの界面活性剤は、共分散剤と組み合わせて使用することができる。共分散剤としては、アミノアルコールが挙げられる。2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどのアミノアルコールは、酸官能性樹脂を中和するのを補助することができ、水性被覆での使用に好適である。
【0071】
プライマー組成物は、多官能性アジリジン液体架橋剤などの任意の好適な架橋剤を含むことができる。架橋剤の量は重要ではなく、所望の架橋度を提供するように選択することができる。架橋剤の量は、プライマー層を形成するために使用される反応混合物の総重量に対して、少なくとも0.5、0.7、1、1.2、又は更に1.5重量%~最大2、2.5、3、3.5、4.5、又は更に5重量%であり得る。
【0072】
プライマー層の前述の反応性成分が混合され、十分に加熱されると、それらは重合し、架橋ネットワークになる。一実施形態では、プライマー層の架橋密度は、ビーズ結合層の架橋密度と同じ又はより低い。有用な架橋密度は、少なくとも25、30、35、40、又は更に45%~最大50、55、60、70、80、90、又は更に100%であり得る。
【0073】
上述したように、UV光吸収剤及び安定剤などの他の添加剤も、プライマー層に含むことができる。
【0074】
好ましい実施形態では、プライマー層は、30~40重量%の固形分含有量及び5~15重量%の全溶媒含有量を有するポリカーボネートポリウレタンである水性ポリウレタン分散体から形成される。
【0075】
プライマー層は、ビーズ結合層に恒久的に接着可能な化学組成を有する。好ましくは、ビーズ結合層及びプライマー層は、過酷な環境下であっても、多層物品の寿命中に互いに層間剥離(delaminate)しない。
【0076】
プライマー層の厚さは、特に制限される必要はない。いくつかの実施形態では、この厚さは、ビーズ結合層の厚さと同様であり得る。硬化時のプライマー層のフィルム厚さは、少なくとも12、15、20、25、30、35、又は更に40マイクロメートル、及び最大で50、60、75、又は更に85マイクロメートルであり得る。プライマー層は、多層物品全体にわたる連続的又は非連続的な層であり、典型的には、より波状でない、又はより平坦な表面を備え(ビーズ結合層に接触するその反対側の主面と比較して)、その上にエラストマー層が配置される。
【0077】
ビーズ結合層、プライマー層、及び/又はエラストマー層は、透明、半透明、又は不透明であってもよい。ビーズ結合層、プライマー層、及び/又はエラストマー層は、着色又は無色であってもよい。ビーズ結合層は、例えば、透明かつ無色であってもよい、又は、不透明、透明、若しくは半透明な染料及び/若しくは顔料で着色してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、金属のフレーク顔料などの特殊顔料を含ませることが有用な場合がある。
【0078】
微小球層
【0079】
微小球層は、複数の微小球を含む。複数の微小球は、ビーズ結合層全体にわたって単層(又は単一層)で配置される。本開示において有用な微小球は、ガラス、ガラスセラミックス、セラミックス、ポリマー、金属、及びこれらの組み合わせを含む。ガラスは非晶質材料であり、一方、セラミックは結晶性又は部分的に結晶性の材料を指す。ガラスセラミックスは、非晶質相と1つ以上の結晶性相とを有する。このような材料は、当該技術分野で既知である。
【0080】
いくつかの実施形態では、微小球はガラスビーズである。ガラスビーズは大部分が球形である。ガラスビーズは、典型的には通常のソーダ石灰ガラス又はホウケイ酸ガラスを粉砕することによって、典型的にはグレイジング及び/又はガラス製品などのリサイクル源から製造される。通常の工業用ガラスは、これらの組成に応じて様々な屈折率のものであり得る。ソーダ石灰ケイ酸塩及びホウケイ酸塩は、一般的な種類のガラスである。ホウケイ酸ガラスは、典型的には、ボリア及びシリカを、アルカリ金属酸化物、アルミナなどの他の元素酸化物と共に含有する。他の酸化物のうち、特にボリア及びシリカを含有する、当業界で用いられるいくつかのガラスとしては、Eガラス、及びSchott Industries(Kansas City,Missouri)から商品名「NEXTERION GLASS D」で入手可能なガラス、及びCorning Incorporated(New York,New York)から商品名「PYREX」で入手可能なガラスが挙げられる。
【0081】
粉砕処理によって、ガラス粒子サイズの広い分布がもたらされる。ガラス粒子は、加熱されたカラム中で処理し、ガラスを溶融して球形の液滴とすることによって球状化され、これらの液滴は、引き続き冷却される。全ての粒子が完全な球形であるわけではない。扁球状のものもあれば、溶融し合っているものもあり、また、小さな気泡を含むものもある。
【0082】
一実施形態では、微小球はプラスチック粒子である。選択されたプラスチック粒子は、下にある基材表面を保護するため、基材表面よりも高い硬度を有する必要がある。1つの例示的なプラスチック粒子としては、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリル及びメタクリル酸エステルポリマー並びにコポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート))並びにポリ尿素球が挙げられる。
【0083】
一実施形態では、微小球は、当該技術で既知のような、微小球のビーズ結合層に対する接着性を向上させるための表面改質を含む。このような処理は、微小球の第1のポリマー層への接着性を最大化するための、シランカップリング剤、チタン酸塩、有機クロム錯体などからなる群から選択されるものが挙げられる。好ましくは、カップリング剤は、微小球の表面上に存在する求核基を含み、ビーズ結合層の反応混合物中のイソシアネートと反応することができる。例示的なカップリング剤は、アミノシランなどのアミノ基を含んでもよい。微小球の表面上に存在する求核基を有することにより、ビーズ結合反応混合物からのイソシアネートが共有結合を形成し、それによってビーズ結合層と複数の微小球との間の接着性が向上する。
【0084】
一実施形態では、このようなカップリング剤の処理レベルは、百万重量部の微小球1つ当たり50~700重量部程度である。直径がより小さい微小球は、表面積がより大きいため、典型的には、より高いレベルで処理され得る。処理は、典型的には、スプレー乾燥する、又は、カップリング剤のアルコール溶液(例えば、エチルアルコール又はイソプロピルアルコールなど)などの希釈溶液を微小球と湿潤混合した後、回転式乾燥機又はオーガ供給ドライヤーで乾燥し、微小球が互いに付着し合うのを防止することによって、達成される。当業者であれば、微小球をカップリング剤によって最適に処理する方法を決定することができるであろう。
【0085】
一実施形態では、本開示の微小球は、Knoop硬度が少なくとも1,300kg/mm2又は更に1,800kg/mm2である。本明細書で用いる場合、「Knoop硬度」は、Knoop圧子を用いて測定される微小硬度の圧痕であり、試料の表面上に菱形の圧痕が形成されるのに加えられた荷重を、永久圧痕の長対角線から算出した圧痕の投影面積で除した値である。Knoop硬度の測定法は、ASTM C849-88(2011)「Standard Test Method for Knoop Indentation Hardness of Ceramic Whitewares」に記載されている。
【0086】
本開示において用いるための微小球は実質的に球形であり、例えば、真球度が少なくとも80%、85%、又は更に90%である。真球度は、球(所与の粒子と同じ体積)の表面積を粒子の表面積で除したものと定義され、百分率で報告される。
【0087】
球形粒子の好ましい例としては、溶融(fused)アルミナ、バイヤー法によって製造されたアルミナ、ジルコニア、及びこれらの共融混合物が挙げられる。
【0088】
無機粒子を球状のものに成形するための方法としては、不定形の上記の無機材料を粉砕し、高温のオーブン中でこれらの材料の融点よりも高い温度で溶融し、これによって表面張力を利用して球形粒子を得る方法、又は上記の無機材料をこれらの材料の融点よりも高い温度で溶融し、溶融物を噴霧して球形粒子を得る方法を適用することが可能である。
【0089】
本開示において有用な微小球は、得られる物品の所望の特性に応じて、透明、半透明、又は不透明であってもよい。
【0090】
別の実施形態では、微小球は、屈折率が1.30未満、1.40未満、1.49未満、1.50未満、1.55未満、1.60未満、1.70未満、1.80未満、又は更に1.90未満である。屈折率は、標準的なベッケ線法によって測定することができる。
【0091】
微小球は欠陥を含まないことが好ましい。本明細書で用いる場合、「欠陥を含まない」という表現は、微小球が有する気泡の量が少なく、不規則形状粒子の量が少なく、表面粗さが低く、不均質の量が少なく、望ましくない色若しくは色合いの量が少なく、又は他の散乱中心の量が少ないことを意味する。一実施形態では、微小球はグラスバブルズではなく、ガラス球に包み込まれた中空コアである。
【0092】
いくつかの実施形態では、平均微小球直径の有用な範囲は、少なくとも10、20、25、40、50、75、100、又は更に150μm(マイクロメートル)であり、かつ最大200、400、500、600、800、900、又は更に1000μmである。微小球は、用途に応じて単峰性又は多峰性(例えば、二峰性)のサイズ分布を有し得る。
【0093】
微小球は、典型的には、ふるい分けによってサイズを調整し、有用な粒子サイズ分布をもたらす。ふるい分けはまた、微小球のサイズの特徴付けにも用いられる。ふるい分けでは、管理されたサイズの目開きを有する一連のふるいを用い、目開きを通過する微小球は、その目開きのサイズに等しいか又はそれよりも小さいものとみなされる。微小球については、微小球がふるいの目開きに対してどのように方向付けされていても、微小球の断面直径はほとんど常に同一であるため、これが成り立つ。
【0094】
いくつかの実施形態では、微小球の混合物の「平均直径」を計算するため、所与の重量の粒子、例えば、100グラムの試料を、積み重ねた標準ふるいに通してふるい分けする場合がある。最上段のふるいは最大等級の目開きを有し、最下段のふるいは最小等級の目開きを有する。
【0095】
あるいは、平均直径は、粒子のサイズ測定のための任意の周知の顕微鏡法を用いて測定することができる。例えば、光学顕微鏡法又は走査電子顕微鏡法などを、任意の画像解析ソフトウェアと組み合わせて用いることができる。例えば、商標名「IMAGE J」でNIH(Bethesda,Maryland)よりフリーウェアとして商用利用可能なソフトウェア。
【0096】
一実施形態では、複数の微小球は、サイズ分布の差が、平均微小球直径に基づいて40%(30%又は更に20%)以下である。
【0097】
接着剤層
【0098】
いくつかの実施形態では、本開示の多層物品は、プライマー層にわたって延び、プライマー層から離れる方向に面するエラストマー層の主表面に直接接触する接着剤層を含む。
【0099】
一実施形態では、接着剤層は感圧接着剤であり、通常は周囲条件で粘着性である。好適な感圧接着剤は、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、合成及び天然ゴム系、ポリブタジエン及びコポリマー系、又はポリイソプレン及びコポリマー系であり得る。ポリジメチルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサンなどのシリコーン系接着剤も使用することができる。
【0100】
特に好ましい感圧接着剤としては、高い透明度、UV安定性、及びエージング耐性のような有利な特性を提示することができる、ポリ(メタ)アクリレート系接着剤が挙げられる。表面処理フィルム用途に使用することができるポリ(メタ)アクリレート接着剤は、例えば、米国特許第4,418,120号(Kealyら)、同RE24,906号(Ulrich)、同第4,619,867号(Charbonneauら)、同第4,835,217号(Haskettら)、及び国際特許公開公報WO87/00189号(Bonkら)に記載されている。
【0101】
好ましくは、ポリ(メタ)アクリレート感圧接着剤は、C4~C12アルキルアクリレートと(メタ)アクリル酸との架橋性コポリマーを含む。接着剤は、架橋剤あり又はなしで使用することができる。有用な架橋反応としては、化学架橋及びイオン架橋が挙げられる。化学架橋剤としては、ポリアジリジン及び/又はビスアミドを挙げることができ、イオン架橋剤としては、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウムの金属イオン、又はこれらの混合物が挙げられ得る。化学架橋剤とイオン架橋剤との混合物も使用することができる。いくつかの実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート感圧接着剤は、ロジンエステルなどの粘着付与剤を含む。本開示において有用な接着剤はまた、表面への接着剤の結合の品質を過度に劣化させない量で供給される限り、すりガラス、二酸化チタン、シリカ、ガラスビーズ、蝋、粘着付与剤、低分子量熱可塑性樹脂、オリゴマー種、可塑剤、顔料、金属フレーク、及び金属粉末などの添加剤を含有してもよい。
【0102】
感圧接着剤の代替として、接着剤層は、室温で粘着性ではなく、加熱時に粘着性となるホットメルト接着剤であってもよい。このような接着剤としては、アクリル、エチレンビニルアセテート、及びポリウレタン材料が挙げられる。
【0103】
概して、接着剤層は、少なくとも15、20、25、30、又は更に40マイクロメートル、かつ最大で50、60、75、又は更に90マイクロメートルの厚さを有する。
【0104】
特定の用途では、恒久的結合が形成される前に、所望の場所に適合させるようにシートを調節することができるように、少なくとも最初は位置変更可能であることが望ましい場合がある。このような位置変更可能性は、例えば、米国特許第3,331,729号(Danielsonら)において開示されているように、接着剤表面上に微小なガラスバブルの層を提供することによって達成され得る。
【0105】
任意選択のライナー
【0106】
感圧接着剤が使用される場合、ライナーは、エラストマー層と反対側の感圧接着剤上に配置されてもよい。ライナーは、接着剤物品の最終用途を意図したものではなく、製造中又は保管中に接着剤層を支持及び/又は保護するために使用される一時的な支持体である。ライナーは、使用前に接着剤層から取り外される。そのようなライナーは、当該技術分野において知られている。
【0107】
典型的には、ライナーは、剥離剤で被覆されたポリマーフィルム(ポリオレフィン又はポリエステルなど)又は紙(クレープ又はクラフト紙など)などの支持体を含む。このような剥離剤は、当該技術分野において既知であり、例えば、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」、D.Satas,editor,Van Nostrand Reinhold,New York,N.Y.,1989,pp.585-600に記載されている。剥離剤の例には、カルバメート、シリコーン及びフルオロカーボンが挙げられる。一実施形態では、ライナーは、シリコーン被覆ポリエステル又はシリコーン被覆紙を含む。
【0108】
一実施形態では、ライナーから接着剤層(例えば、(メタ)アクリル感圧接着剤)を分離するための180度剥離力は、12インチ/分(30cm/分)の速度で、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、又は更に0.6N/mm、及び最大で0.7、0.8、0.9、又は更に1.0N/mmである。
【0109】
作製する方法
【0110】
一実施形態では、本明細書に開示の物品は、転写プロセスによって作製することができ、微小球の単層が転写ポリマー中に保持され、転写ポリマーは、次いで、微小球の単層をビーズ結合層上に転写するのに用いられる。このような転写プロセスを
図2A~2Eに示す。
図2Aは、転写ポリマー29に部分的に埋め込まれた微小球21の単層を含む転写キャリアを示す。典型的には、転写ポリマーは、転写支持体(図示せず)上に支持されて、転写キャリアに取り扱い能力を提供する。このような転写支持体としては、例えばポリエステル層が挙げられる。このような転写キャリアは、例えば、米国特許出願公開第2015/0010723号(Krishnanら)の段落[0021]~[0029]、及び国際公開第2017/172888(A1)号(Walkerら)の段落[00130]~[0139]に記載されている。一実施形態では、転写ポリマーは、以下の実施例の項で論じられるように、転写支持層上に配置され、微小球で被覆される。別の実施形態では、支持体上に配置されたポリマーは、商業的に入手することができ(例えば、Felix Schoeller Group(Pulaski,NY)から)、次いで微小球を商業製品上に被覆する。
【0111】
一実施形態では、複数の微小球は、転写キャリア上にランダムに分布し、密に充填される(すなわち、概して、別の微小球を配置するのに十分なスペースが隣接する微小球間にはない)。
【0112】
一実施形態では、複数の微小球は、転写キャリアの表面上にパターン化され、したがって得られた仕上げた物品上にパターン化される。参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2017/106239号(Clarkら)は、微小周期的パターンで配列された微小球の単層を開示しており、微小球は、微小レベルにてパターンで(すなわち、他の微小球に関連するパターン)配列され、そのパターンは周期的である(すなわち、ランダムではなく、秩序を有する)。繰り返し単位、すなわち繰り返しパターンを消費する領域は、三角形、四角形(例えば、正方形、菱形、矩形、平行四辺形)、六角形、又は他の繰り返しパターン形状を有してもよく、これは、本質的に対称又は非対称であり得る。参照により本明細書に組み込まれる国際出願PCT/US第2017/024711号(Walkerら)は、表面上に所定のパターンで配列されたランダムに分布した微小球の単層を開示している。所定のパターンは、(i)複数の第1の領域、(ii)複数の第2の領域、及び(iii)これらの組み合わせ、のうちの少なくとも1つを含む。一実施形態では、第2の領域内の複数の微小球は、密に充填される。第1及び第2の領域の例示的な形状としては、線(又は縞)、三角形、六角形、矩形、又は楕円形が挙げられる。パターンは疑似ランダムであってもよく、すなわち、パターンはランダムに見えて、実際にはランダムではなくてもよい。疑似ランダムパターンは、典型的には、規則的なパターンよりも、肉眼には目立たない。
【0113】
図2Bに示すように、ビーズ結合層22は、複数の微小球がビーズ結合層22と転写ポリマー29との間に位置するように、転写キャリアに適用される。ビーズ結合層は、液体反応混合物から作製され、したがって、任意の既知の技術を使用して被覆することができる。このような技術としては、例えば、被覆又は押出成形が挙げられる。
【0114】
例示的な押出成形プロセスでは、ビーズ結合層の反応混合物成分を最初に2つの別個の部分に混合して、早期反応を防止する。1つの部分は、ポリオール成分をヒドロキシ官能性シリコーンポリ(メタ)アクリレート、好適な溶媒、及び任意の任意選択の添加剤とまず混合することによって調製することができる。他の部分は、任意の溶媒又は任意選択の添加剤と共にイソシアネート成分を含有する。次いで、第1及び第2の部分を適切な量で混合して、所望のNCO:OH比を得る。これらの実施形態では、NCO:OH比は、0.75~1.25であるように選択することができる。
【0115】
混合すると、ビーズ結合反応混合物は、微小球を含む転写キャリア上に被覆され得る。被覆は、ナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、ノッチ付きバーコータ、カーテンコータ、ロトグラビアコータ、又は回転プリンタなどの従来の装置を使用して作製することができる。被覆は、手で広げるか又は自動化することができ、バッチ又は連続プロセスのいずれかに従って実施してもよい。ビーズ結合反応混合物の粘度は、使用されるコータの種類に適するように、必要に応じて調整することができる。
【0116】
被覆後、ビーズ結合層は、熱及び/又は真空に供されて、有機溶媒及び任意の他の揮発性成分を除去し、ポリオールとイソシアネートとの間の硬化反応を熱活性化し、ビーズ結合層を部分的に硬化させることができる。一実施形態では、ビーズ結合層を形成するために使用される反応混合物は、光活性硬化剤を実質的に含まない(すなわち、1、0.5、0.1、若しくは更に0.05重量%未満、更に又は含まない)。いくつかの実施形態では、ビーズ結合層は、30%~90%硬化される。
【0117】
ビーズ結合層の部分硬化は、特にプライマー層が部分硬化ビーズ結合層上に配置され、両方の層が一緒に硬化されるとき、ビーズ結合層に対するプライマー層の接着性を向上させることが見出された。これに対して、ビーズ結合層の完全な硬化は、ビーズ結合層とプライマー層との間の接着性を低減することが観察された。
【0118】
オーブンを使用して、まず溶媒を蒸発させ、ビーズ結合層を部分的に硬化させることができる。一般に、乾燥/硬化工程は空気中で行われる。連続プロセスが使用される場合、これらのプロセスは、移動ウェブに作用することができる。例示的な連続プロセスでは、厚さ0.0076センチメートル(0.003インチ)の湿潤被覆は、約45%の固形分含有量を有し得、80℃で2分間の滞留時間、続いて125℃で10分の滞留時間を有する温度プロファイルを使用して乾燥及び硬化させることができる。
【0119】
概して、ビーズ結合層は、好ましくは、少なくとも25、20、35、40、50℃、又は更に60℃~最大80、90、100、110、120、130、140、又は更に150℃の所定温度で乾燥及び/又は硬化される。所与の温度での滞留時間は、温度に非常に依存しているが、少なくとも5、10、20、30、45、又は更に60秒~最大120、150秒、又は更に180秒であり得る。ビーズ結合層は、好ましくは、全体的なスループット及びエネルギー効率を有する溶媒除去及び硬化有効性をバランスさせる、滞留時間及び温度又は温度範囲に供される。
【0120】
図1に示すように、ビーズ結合層22は、その第2主面13(微小球の単層と反対側の表面)が波状になるように、複数の微小球に適合する。ビーズ結合反応混合物及び硬化条件に応じて、硬化したビーズ結合層は、層全体にわたって均一な厚さを有さなくてもよい。簡略化のために、ビーズ結合層の有効厚さについて、言及する。ビーズ結合層の有効厚さは、線形プロファイルを想定したビーズ結合層の平均理論厚さである。一実施形態では、ビーズ結合層の有効厚さは、少なくとも12、15、20、25、30、35、又は更に40マイクロメートルであり、最大50、60、75、又は更に85マイクロメートルである。一実施形態では、ビーズ結合層は、微小球を強く付着させるのに十分な厚さである必要があるが、曲げ時(例えば、仕上げた物品を丸めるか、又は仕上げた物品を湾曲した物体の周りに曲げるなど)に亀裂を生じ得るほどの厚さである必要はない。
【0121】
図2Cに示すように、プライマー層24は、ビーズ結合層22上に直接適用される。ビーズ結合層を被覆するために上述したもののいずれかを含む、任意の既知の方法を使用して、下にあるビーズ結合層上にプライマー層を配置することができる。
【0122】
典型的には、熱を適用して水及び/又は任意の他の揮発物種を蒸発させ、次いでプライマー層及びビーズ結合層を硬化させる。オーブン温度プロファイルは、ビーズ結合層を部分的に硬化させるために上述したものと同様であり得る。しかしながら、硬化の程度はこの第2の硬化サイクルに限定される必要はないため、温度が著しく上昇しない場合には、より高い温度を使用するか、又は硬化工程の継続時間を増加させることが有利であり得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、ビーズ結合層及びプライマー層は、加熱工程後及び任意の更なる被覆又はラミネート工程(lamination steps)の前に冷却された硬化を継続することができる。これは、これらの層を含む多層物品を周囲条件でエージングすることによって達成することができる。エージングは、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、又は少なくとも4週間行われて、ビーズ結合層及びプライマー層が概して安定かつ一貫した架橋度に達することを可能にする。
【0124】
プライマー層は、過剰な未反応アミン(例えば、少なくとも3、4、又は更に5%、及び最大6、7、8、9、又は更に10重量%のアミン)を含み、
図2Dに示すように、プライマー層が、ビーズ結合層22及び続いて添加されるエラストマー層26と共有結合することを可能にする。
【0125】
エラストマー層26は、プライマー層24の露出した主面上に配置される。一実施形態では、ビーズ結合層及びプライマー層の両方が完全に硬化されている。いくつかの実施形態では、エラストマー層は溶融処理され、その溶融物からプライマー層上に被覆され得る。代替的な実施形態では、エラストマー層は、溶融処理され、均一なシートに別個に形成され、次いで、その後、露出したプライマー層に熱間ラミネート(hot laminated)され得る。
【0126】
一実施形態では、エラストマー層26は、反応性ポリウレタン混合物を、ダイを介して直接プライマー層24上に押出成形する(例えば、二軸押出成形機又はプラネタリー押出成形機を使用して)ことによって形成することができる。反応性混合物の成分(例えば、ジイソシアネート、ジオール鎖延長剤、及びポリエステルポリオール)は、押出成形機に個別に又は同時に供給することができる。好適なダイの例としては、コートハンガーダイが挙げられる。均一なフィルムは、ポリウレタンの反応成形を熱的にクエンチするコールドローラーによって更に押圧され、それによりポリウレタン熱可塑性エラストマーを固化させることができる。押出成形は、任意の好適な温度で行うことができる。例えば、温度は、40、50、60、70、80、90、又は更に100℃~最大175、200、210、220、又は更に230℃の範囲であり得る。押出成形は、任意の好適な時間量で生じ得る。例えば、押出成形プロセス(例えば、連続ウェブの作製における)は、少なくとも0.5、1、2、4、又は更に6時間~最大10、12、15、又は更に17時間の範囲の時間で生じ得る。
【0127】
図2Dには示されていない、接着剤層及びライナーを含む多層物品に追加の層を付着させることができる。例えば、接着剤層は、物品の残りの層上に直接被覆されてもよく、又は接着フィルムに形成され、次いで、その後の工程においてバルク層にラミネートされ得る。後者の場合、犠牲剥離ライナーは、典型的には、ウェブの取り扱い及び保管を容易にするために、接着剤層と接触して配置される。感圧接着層をエラストマー層に適用するために、コロナ処理(例えば、空気又はN
2コロナ処理)して、押出成形されたエラストマー層の主面を、例えば、感圧接着層に結合されるように熱ラミネートする(thermally laminate)ことが望ましい場合がある。これを達成するために、プライマー層と接触していないエラストマー層の主面が露出され、次いでコロナ処理される。熱間ラミネートプロセス(hot laminating process)が使用される場合(例えば、エラストマー層が、剥離可能なキャリアウェブ又はライナー上に押出成形される)、キャリアウェブ又はライナーは、最初にエラストマー層から剥ぎ取られ得る。
【0128】
プライマー層及びエラストマー層は、例えば、層を高温及び高圧でラミネートすること(laminating)によって一緒に結合することができる。例えば、プライマー層の1つの主面は、押出成形されたエラストマー層の1つの主面に圧力下で冷間ラミネートされ(cold laminated)得る一方で、エラストマー層の、又はエラストマー層及びプライマー層の両方の少なくとも1つの主面は、プライマー層とエラストマー層との間の適切な結合を容易にするのに十分高い高温である。本明細書で使用するとき、冷間ラミネート(cold laminating)とは、2つのニップ表面の間で、ほぼ室温又は周囲温度環境で一緒にラミネートされる(laminated)層を指す(例えば、ラミネートプロセス(laminating process)中に層は意図的に加熱された環境では保たれない)。ニップ表面は、2つのニップローラ、固定ニップ表面(例えば、平坦又は湾曲したプレートの低摩擦表面)、及び1つのニップローラ、又は2つの静止ニップ表面であり得る。ラミネートプロセス(laminating process)は、周囲温度よりも低い環境でも実施することができる(すなわち、ラミネートプロセス(laminating process)中に層が意図的に冷却される)。例えば、ポリウレタン層の露出した主面(すなわち、ニップ表面が接触する主面)を冷却するために、ニップ表面の一方又は両方を周囲温度より低い温度に冷却することができる。このような冷却された表面の使用は、ラミネートプロセス(laminating process)から生じる層の反りを排除するか、又は少なくとも低減するのに役立つことができる。同時に、ポリウレタン層間の界面で接触する主面は、ニップ表面によって加えられるラミネート圧力(laminating pressure)によって十分に結合されるのに十分な高温で維持される。このような冷間ラミネート(cold laminating)は、新たに押出成形されたエラストマー層を予め形成されたプライマー層上に直接ラミネートする(laminating)ことによって達成することができ、一方、エラストマー層の材料は、押出成形プロセスからの著しい熱を依然として保持する。プライマー層を含む多層物品は、更なる構造的強度を提供するために、キャリアウェブ又はライナーに依然として剥離可能に結合され得る。
【0129】
あるいは、プライマー層の1つの主面はまた、熱間ラミネートプロセス(hot laminating process)を使用することによって、押出成形されたポリマー層の1つの主面に結合され得る。このプロセスでは、プライマー層及びエラストマー層の両方の初期温度は、ほぼ室温であるか、又は少なくとも、プライマー層とエラストマー層との間の適切な結合を容易にするために低すぎるほどの温度である。次いで、少なくともエラストマー層の1つの主面、少なくともプライマー層の1つの主面、又はプライマー層及びエラストマー層の両方の1つの主面は、室温より十分に高い高温まで加熱されて、ラミネート圧力下でプライマー層とエラストマー層との間の適切な結合を容易にする。熱間ラミネートプロセス(hot laminating process)では、層は、ラミネート圧力(laminating pressure)の適用前又は適用中に加熱される。熱間ラミネートプロセスが使用される場合、エラストマー層の主面は、新たなポリマー層に追加の構造的支持体を提供するために、エラストマー層が押出成形された直後、容易に剥離可能なキャリアウェブ又はライナー(例えば、ポリエステルキャリアウェブ)に剥離可能にラミネートすることができる。
【0130】
冷間又は熱間ラミネートプロセスのいずれかを使用して、層を一緒に結合するための許容可能な最低温度及び圧力には、少なくとも約200°F(93℃)の温度及び少なくとも約15lb/in2(ポンド/inch2又はpsi)(10.3N/cm2(ニュートン/センチメートル2))の圧力が含まれている。
【0131】
一実施形態では、転写ポリマー層29がビーズ結合層22から除去され、その結果、複数の微小球がビーズ結合層に転写され、最終的には、
図2Eに示されるように微小球被覆ポリウレタン物品20が得られる。転写ポリマー層(及び転写キャリア)は、典型的には、接着剤層及びライナーが多層物品上に組み立てられた後に除去される。典型的には、少なくとも1つの剛性層は、更なる処理中に物品の取り扱いを可能にするために、多層物品の一部である必要がある。典型的には、この剛性層は、物品の接着剤層に付着した剥離ライナーであるか、又は転写キャリアの一部であるかのいずれかである。転写キャリア(転写ポリマー及び対応する転写支持層を含む)は、製造中、又は保護される表面上に多層物品を適用する直前にエンドユーザによって除去されてもよい。
【0132】
追加の層
【0133】
前述の、エラストマー層、プライマー層、ビーズ結合層、及び微小球層、並びに任意選択の接着剤及び剥離ライナーに加え、本開示の得られる物品は、物品に望ましい特性を付与する追加の層も含む場合がある。
【0134】
一実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015-0343502号(Clarkら)に教示されているように、ナノ粒子を含有するアンダーコートが、微小球層とビーズ結合層との間に適用され、耐汚れ性をもたらすことができる。
【0135】
一実施形態では、多層物品は、それもまたグラフィック機能を有するように、顔料を含むことができる。典型的には、グラフィック画像が所望である場合、ビーズ結合層の、微小球層の反対側にある表面上に、少なくとも1つの着色ポリマー層によって別途設けられる。任意選択の着色ポリマー層は、例えば、インクを含んでもよい。本開示で用いるのに好適なインクの例としては、これらに限定されるものではないが、顔料で着色されたビニルポリマー及びビニルコポリマー、アクリル及びメタクリルコポリマー、ウレタンポリマー及びコポリマー、エチレンとアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸及びこれらの金属の塩、並びにこれらのブレンドのうちの少なくとも1つから選択されるものが挙げられる。着色ポリマー層はインクとすることができ、一連の方法、例えば、これらに限定されるものではないが、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、リソグラフィ、転写電子写真、転写箔、及び直接又は転写ゼログラフィによって印刷することができる。着色ポリマー層は透明、不透明、又は半透明であってもよい。
【0136】
一実施形態では、多層物品は、微小球の下側に金属(例えば、銀又はアルミニウム)の薄い被覆を含み、再帰反射用ミラーとして機能する。
【0137】
物品
【0138】
本開示の多層物品は、ビーズ結合層の表面上の単層(すなわち、単一層)に配列された複数の微小球を含む。複数の微小球は、ビーズ結合層に部分的に埋め込まれており、これは、微小球が、ビーズ結合層内への平均微小球直径の、少なくとも50、55、60、65、又は更に70%、及び80%以下で、(平均して)埋め込まれていることを意味するが、各微小球の一部(例えば、少なくとも10、20、又は更に25%)は、ビーズ結合層の表面から外向きに突出する。
【0139】
ビーズ結合層上の表面上の複数の微小球の配列(ランダム対パターン化)に応じて、複数の微小球は、ビーズ結合層の表面の10、15、20、25、又は更に30%超、かつ35、40、45、50、55、60、65、70、又は更に75%未満を被覆する。一実施形態では、複数の微小球は、ランダムに分布し、密に充填され(すなわち、概して、隣接する微小球間に、別の微小球を配置するのに十分な空間がない)、複数の微小球は、第1の表面の少なくとも65%及び最大で80%を被覆する。概して、適切な耐摩耗性を達成し、視覚的欠陥を最小限に抑えるために、隣接する微小球間が一平均微小球直径未満であることが好ましい。
【0140】
一実施形態では、仕上げた物品の表面を研磨して、微小球単層内の複数の微小球の露出した上面を切り詰めることができる。このような技術は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2019/046407号(Clarkら)に記載されている。
【0141】
一実施形態では、多層物品は、成形され得る。
【0142】
用途及び特性
【0143】
提供される多層物品は、塗料保護及び塗料交換用途において有用であり得る。これらのフィルムは、多種多様な基材のいずれかに適用することができる。このような基材は、平坦であっても湾曲していてもよい。これらの物品をそのような湾曲面に接着することが望ましい場合、物品は、縁部で層間剥離することもしわになることもなく、基材の表面に適合するのに十分な柔軟性を有することが好ましい。
【0144】
一実施形態では、提供された物品は、車両、航空機、又は船舶に適用される。いくつかの実施形態では、提供される物品は、自動車(バンパーフェイシア、ピラーポスト、ロッカーパネル、ホイールカバー、ヘッドライト、ドアパネル、トランク及びフード蓋、ミラーハウジング、ダッシュボード、床マット、及びドア枠など)、トラック、オートバイ、列車、飛行機(プロペラブレード、翼、又は胴体など)、回転翼機、船舶(船体、トランサム、ブルワークなど)、及びスノーモービルの外面に、保護のために適用される。代替的な実施形態では、本開示の物品は、固定具、建造物、及び建築面などの車両以外の構造体の表面に適用することができる。これらのフィルムの用途は、事実上、屋内又は屋外のいずれかであってもよい。
【0145】
適用の例示的な方法では、本明細書に開示される多層物品は、単一の連続運動でフィルムを基材上に適用しながら、剥離ライナーを接着剤層から同時に剥離することによって、好適な基材に取り付けることができる。
【0146】
有利には、ビーズ結合層は、保護フィルム用途において最も外側の層として特に好適になる、望ましい光学的特性と機械的特性との組み合わせを提供する。
【0147】
一実施形態では、本開示の物品は耐久性があり、すなわち、本開示の物品は、耐摩耗性及び/又は耐擦過性を有する。耐摩耗性は、回転式Taber研磨機を用い、試料の損傷を視覚的に検査して測定することができる。一実施形態では、本開示の装飾物品は、視覚的摩耗が、ほとんどまたは全くない耐摩耗性を有する。耐擦過性は、鉛筆硬度によって測定することができる。換言すれば、鉛筆が表面に擦り傷を付ける硬度である。一実施形態では、本開示の装飾物品は、2.5ニュートンの力にて、鉛筆硬度値が少なくとも6H、8H、又は更に10Hである。一実施形態では、本開示の物品は、7.5ニュートンの力にて、鉛筆硬度値が少なくとも3H、5H、6H、8H、9H、又は更に10Hである。
【0148】
一実施形態では、本開示の物品は、指紋を示さない。
【0149】
本開示の物品は、再帰反射性であってもなくてもよい。典型的には再帰反射性であるため、金属の薄層が、微小球の埋め込まれた部分の背後の構造体において使用され、再帰反射を達成する。物品の再帰反射性は、その再帰反射係数(coefficient of retroreflectivity:Ra)
Ra=Er
*d2/Es
*A
[式中、
Er=受光器上の照度
Es=試験片の位置の、入射光線に対して垂直な平面上の照度(Erと同じ単位で測定)
d=試験片からプロジェクタまでの距離
A=試験表面の面積]
によって表すことができる。
再帰反射係数(Ra)は、米国特許第3,700,305号(Bingham)に更に記載されている。一実施形態では、本開示の物品は、ASTM E810-03(2013)「Standard Test Method for Coefficient of Retroreflection of Retroreflective Sheeting Utilizing the Coplanar Geometry」に従い、0.2°の観察角及び5°の導入角で測定される再帰反射の係数が、10カンデラ/ルクス/平方メートル以下、5カンデラ/ルクス/平方メートル以下、1カンデラ/ルクス/平方メートル以下、0.5カンデラ/ルクス/平方メートル以下、又は更に0.3カンデラ/ルクス/平方メートル以下である。
【0150】
一実施形態では、多層物品は気候に耐える。例えば、物品は、水(雨及び水分など)に対して不透過性であり、紫外線への曝露下で安定でり、並びに/又は耐久性がある。例えば、天候試験は、例えば、Arizonaの地面に対して45度、及びFloridaの地面に対して5度の角度を有する、外側環境内に、多層物品のパネルを配置することを含み得る。微小球の単層が外向きに面する多層物品は、1~4年間、要素(例えば、雨、太陽、風など)に曝露される。
【0151】
一実施形態では、多層物品は、紫外線照射及び/又は熱に対して安定である。一実施形態では、本開示の多層物品は熱安定性である。熱安定性は、多層物品を白色の塗装パネルに接着剤で付着させ、80℃のオーブン内で7日間加熱することによって決定することができる。CIELAB色空間を使用して色の変化を監視する。CIELAB色空間では、L*は明度を、a*は赤/緑色を、b*は青/黄色を定義する。光学用途では、b*パラメータは、CIE(International Commission on Illumination 1976 Color Space)で定義される青黄色の尺度であるため、b*値が低いほど、より望ましいとして選択される。一実施形態では、本開示の物品は、加熱エージング後、b*の変化が、2、1、又は更に0.5未満である。
【0152】
一実施形態では、本開示の多層物品は、耐紫外線(UV)性である。耐UV性は、試料が所与の期間にわたって紫外線照射に曝露されることを除いて、熱安定性について上述したのと同様の方法で決定することができる。一実施形態では、本開示の物品は、紫外線照射への曝露時、b*の変化が、2、1、又は更に0.5未満である。
【実施例】
【0153】
別段断りのない限り、実施例及び明細書のその他の部分における、全ての部、百分率、比などは重量によるものであり、実施例で用いた全ての試薬は、総合的な化学物質供給元、例えば、Sigma-Aldrich Company(Saint Louis,Missouri)などから入手したもの、若しくは、入手可能なものであるか、又は、通常の方法によって合成することができる。
【表1】
【0154】
転写キャリア
【0155】
微小球の単層を含む転写キャリアは、以下のように得ることができる:ホウケイ酸ガラス粉末を、水素/酸素火炎に3グラム/分の速度で2回通過させて火炎処理し、次いでステンレス鋼容器に回収し、その際、磁石を使用して金属不純物を除去した。得られたガラス微小球を、以下の方法により、600ppmのA1100で処理した。シランを水に溶解した後、混合しながら微小球ビーズに添加し、終夜風乾した後、110℃で20分間乾燥した。次いで、乾燥したシラン処理微小球ビーズをふるい分けしてあらゆる粒塊を除去し、サイズが75μm以下で自由流動性のビーズを得た。得られた透明シラン処理微小球を、約140℃(284°F)まで予熱した、ポリエチレン被覆ポリエステル(PET)フィルムライナーを含む転写キャリアフィルム上に機械的シフターを使用してカスケード被覆して、拡大画像システムによって決定される直径の約30~40%に対応する深さまでポリエチレン層中に埋め込まれた透明微小球の均一層を有する、ビーズキャリアを形成した。
【0156】
試験方法
【0157】
加熱エージング
【0158】
この実施例は、アクリル感圧接着剤層を使用して、クリアコート白コート塗装パネル(ACT Painted Panels LLC(Hillsdale,MI)から入手可能)の前側に接着剤で付着させた。Hunterlab UltraScan Pro Spectrophotometer(Hunter Associates Laboratory Inc.(Reston,VA))を、構造体中の微小球の単層の前側に配置し、CIELAB色空間を決定するために使用した。試料(依然として塗装されたパネルに接着されていた)を、80℃で7日間保持されたオーブンに入れた。試料をオーブンから取り出し、冷却し、CIELAB色空間を決定した。
【0159】
テーバー摩耗試験
【0160】
摩耗試験は、ASTM 1044-13に記載の標準手順に従って実施した。Taber Industry(North Tonawanda,NY)から入手した5130 Abraserを使用して試験を実施した。500グラムの荷重を伴う粗い研磨ホイールCS17(同じ企業製)を使用した。試験を200サイクル実行した。試験後、ヘイズを目視検査した。
【0161】
耐砂利性
【0162】
SAE(Society of Automotive Society)J400に記載の標準手順に従って、-20℃で耐利試験を実施した。Q-Lab Corporation(Westlake,OH)製のGravel-O-Meterマシンを使用した。ビーズフィルムを、ACTクリアコート白色コート塗装パネル上に適用し、-20℃で24時間コンディショニングした。次いで、パネルに70psiで1パイントの砂利を用いて砂利試験を行った。砂利試験後、パネルを目視検査した。
【0163】
プロフィロメトリー
【0164】
プロフィロメトリー画像は、Bruker Corporation(Tucson,AZ)のBruker Nano Surfaces Divisionから入手可能なDektakXTプロフィロメーターで生成した。2マイクロメートル半径の鉄筆チップ及び3ミリグラムの鉄筆圧を使用して、524マイクロメートルのZ軸範囲を有する1mm×1mmの表面積にわたって、装置のMapScan機能を使用して画像を生成した。スキャン解像度は、スキャン中のデータポイントあたり0.3ミクロンであり、250回のスキャンをスキャン間の4ミクロンをつなぎ合わせて、画像を作成した。
【0165】
比較例A
【0166】
ビーズ結合組成物を、11グラムのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、18グラムのブチルアセテート、19グラムのメチルイソブチルケトン、2.2グラムのセルロースアセテートブチレート-381.01、0.7グラムのTINUVIN-405、0.35グラムのTINUVIN-292、6.8グラムのCAPA-2054、27.2グラムのJONCRYL-587AC、及び14.75グラムのキシレンを混合することによって調製した。混合物を30分間混合した。30分後、0.579グラムの2,4-ペンタンジオン、0.021グラムのジブチルスズジラウレート、及び11.72グラムのDESMODUR N3900を混合物に添加し、透明かつ無色の溶液を15分間完全に撹拌した。
【0167】
次いで、溶液を、ノッチバーコーターを使用して、約127マイクロメートルの湿潤厚さで、転写キャリアの微小球側の単層上に被覆した。ビーズ結合層を乾燥させ、195°F(90.6℃)で5分間、空気オーブン内で部分的に硬化させた。ビーズ結合層は、周囲条件で1週間静置した。ビーズ結合層は、動的機械分析器(DMA Q800など)を使用して、昇温速度10℃/分にて1ヘルツで測定して、90℃のガラス転移温度を有していた。
【0168】
ビーズ結合層の露出表面は、処理ガスとして空気を使用し、5分間、40キロヘルツで最大200ワットの電力に設定したプラズマ処理(Atto,Diener electronic GmbH+Co.KG、Ebhausen,Germany)によってプライマー処理した。
【0169】
プライマー処理したビーズ被覆構造体を一晩静置した後、エラストマー層をプラズマ処理したビーズ結合表面上に押出成形した:100℃の504.7グラムの予め溶融したFOMREZ-44-111(60℃の溶融温度を有する)、5グラムのIRGANOX-1076、0.3グラムのT12、88.6グラムの1,4ブタンジオール、401.9グラムのDESMODUR W、3グラムのTINUVIN-292、及び4.5グラムのTINUVIN-571を、二軸押出成形機に別々に供給した。押出成形機の設定、条件、及び温度プロファイルは、米国特許第8,551,285号(Hoら)の実施例1及び表1に記載されているものと同様であった。イソシアネート指数は、NCO/OH=1.03であり、ハードセグメントは、48.25重量%であった。得られた脂肪族熱可塑性ポリウレタンを、4mil(100マイクロメートル)厚の層としてプラズマ処理したビーズ結合層上に押出成形した。押出成形エラストマー層をビーズ結合層と熱ラミネートして、良好な境界面接着性を達成した。エラストマー層は、ASTM D-882-18によって、例えばInstronモデル5565(Norwood,MA)を使用して、1インチ(30cm)のジョーギャップを有する12インチ/分(30cm/分)の引張り速度で測定したときに、約600%の伸び率を有していた。
【0170】
2milのシリコーン被覆ポリエチレンテレフタレート剥離ライナー上に配置されたアクリル系感圧接着剤(イソオクチルアクリレート/アクリル酸コポリマー)を、35psi(0.24MPa)のニップロール圧力下、190°F(88℃)でエラストマー層に熱ラミネートした。1週間後、転写キャリアからポリエチレン被覆ポリエステルフィルムライナーを除去した。除去したポリエチレン被覆ポリエステルフィルムライナーの目視検査は、微小球が転写しなかったことを示した。
図3は、ポリエチレン被覆ポリエステルフィルムライナーを除去した後の、試料の露出面の約1mm×1mm部分を写したプロフィロメトリー画像である。
【0171】
実施例1
【0172】
ビーズ結合組成物を転写キャリアに適用し、比較例Aに記載のようにオーブン内で乾燥させた。
【0173】
プライマー層を以下のように調製した:89.30グラムのALBERDINGK U933に、0.35グラムのTINUVIN-123、0.05グラムのAMP-95、0.20グラムのTRITON GR-7M、8.5グラムのブチルカルビトール、1.16グラムのUVINUL N3039、及び2gのNEOCRYL CX-100を添加し、均質に混合した。溶液混合物を10グラムの脱イオン水で希釈し、100センチポアズ~200センチポアズの粘度を維持した。
【0174】
プライマー層を乾燥したビーズ結合層上に100マイクロメートルの湿潤厚さで被覆し、195°F(91℃)の空気オーブン内で10分間硬化させた。
【0175】
比較例Aに記載のようにエラストマー層を作製し、押出成形した。エラストマー層を、4mil(0.1mm)の厚さで構造体のプライマー層上に押出成形し、エラストマー層をプライマー層と熱ラミネートして、良好な境界面接着性を達成した。
【0176】
2mil(0.05mm)のシリコーン被覆ポリエチレンテレフタレート剥離ライナー上に配置されたアクリル系感圧接着剤(イソオクチルアクリレート/アクリル酸コポリマー)を、35psi(0.24MPa)のニップロール圧力下、190°F(88℃)でエラストマー層に熱ラミネートした。1週間後、転写キャリアからポリエチレン被覆ポリエステルフィルムライナーを除去した。除去されたポリエチレン被覆ポリエステルフィルムライナーの目視検査では、その上に微小球をほとんど又は全く示さなかった。
図4は、ポリエチレン被覆ポリエステルフィルムライナー除去後の、試料の露出面の約1mm×1mm部分を写したプロフィロメトリー画像である。次いで、構造体の微小球側の単層を、テーバー摩耗試験及び耐砂利性について試験したところ、磨耗構造体は、ヘイズも、欠けた塗料も示さなかった。実施例は、加熱エージングについても試験し、結果は以下の通りである:デルタL
*=-0.15、デルタa
*=-0.05、デルタb
*=0.45、及びデルタE
*=0.48。
【0177】
本発明の範囲及び趣旨を逸脱することのない、本発明の予見可能な改変及び変更が、当業者には明らかであろう。本発明は、例示目的のために本出願に記載されている実施形態に限定されるものではない。本明細書の記述と本明細書に述べられ又は参照により組み込まれる任意の文書中の開示との間に何らかの不一致又は矛盾が存在する場合、本明細書の記述が優先される。
本発明は以下の態様を包含する。
(1)(a)単層状に配置された複数の微小球を含む微小球層と、
(b)第1主面と、反対側の第2主面とを含むビーズ結合層であって、前記複数の微小球が前記ビーズ結合層の前記第1主面に部分的に埋め込まれており、且つ少なくとも35℃のガラス転移温度を有する熱硬化性ポリウレタンを含む、ビーズ結合層と、
(c)前記ビーズ結合層の前記第2主面上に配置されたプライマー層であって、前記プライマー層はポリ尿素とポリウレタンのコポリマーを含み、前記プライマー層は、尿素結合を介して前記ビーズ結合層と共有結合している、プライマー層と、
(d)前記プライマー層の、前記ビーズ結合層と反対側の上に配置されたエラストマー層であって、ポリウレタン熱可塑性エラストマーを含む、エラストマー層と、
を含む、物品。
(2)前記物品が、紫外線照射、熱、又はこれらの組み合わせに対して安定である、項目1に記載の物品。
(3)前記エラストマー層が、少なくとも200%の破断点伸びを有する、項目1又は2に記載の物品。
(4)前記エラストマー層が、
ジイソシアネートと、
ポリマージオールと、
ジオール鎖延長剤と、
を含む反応混合物の反応生成物を含み、
任意選択的に、前記ジオール鎖延長剤が、約250ダルトン未満の重量平均分子量を有する、項目1~3のいずれかに記載の物品。
(5)前記ポリウレタン熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が、80,000ダルトン~400,000ダルトンの範囲内である、項目1~4のいずれかに記載の物品。
(6)前記ジイソシアネートが、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トルエン2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、ポリ(ヘキサメチレンジイソシアネート)、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4-クロロ-6-メチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトブタン、1,8-ジイソシアナトオクタン、又はこれらの混合物から選択される、項目4又は5に記載の物品。
(7)前記ポリマージオールが、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、及びポリオレフィンジオールのうちの少なくとも1つから選択される、項目4~6のいずれかに記載の物品。
(8)前記ジオール鎖延長剤が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、又はこれらの混合物から選択される、項目4~7のいずれかに記載の物品。
(9)前記ポリウレタン熱可塑性エラストマーが、約30重量%~約55重量%の範囲でハードセグメントを含む、項目1~8のいずれかに記載の物品。
(10)前記熱硬化性ポリウレタンが、
ポリイソシアネートと、
ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリオールと、
の反応生成物である、項目1~9のいずれかに記載の物品。
(11)前記熱硬化性ポリウレタンが有機溶媒系ポリウレタンである、項目1~10のいずれかに記載の物品。
(12)前記ポリイソシアネートが一級脂肪族ポリイソシアネートである、項目10又は11に記載の物品。
(13)前記プライマー層が水性ポリウレタンである、項目1~12のいずれかに記載の物品。
(14)前記プライマー層が、ヒドロキシ官能性シリコーンポリ(メタ)アクリレートを本質的に含まない、項目1~13のいずれかに記載の物品。
(15)前記複数の微小球の屈折率が1.9未満である、項目1~14のいずれかに記載の物品。
(16)前記複数の微小球の表面が求核基を含み、任意選択的に前記求核基がアミノ基である、項目1~15のいずれかに記載の物品。
(17)前記エラストマー層の、前記プライマー層と反対側の上に配置された接着剤層を更に備え、任意選択的に、前記接着剤が(メタ)アクリル感圧接着剤である、項目1~16のいずれかに記載の物品。
(18)前記感圧接着剤層の、前記エラストマー層と反対側の上に配置された使い捨てライナーを更に備え、任意選択的に前記使い捨てライナーが、180°剥離力で0.1~1.0N/mmの接着剤からの剥離力を有する、項目17に記載の物品。
(19)ビーズ被覆フィルムを作製する方法であって、
その上に微小球の単層が部分的に埋め込まれた転写ポリマー層を含む転写シートを提供することと、
前記埋め込まれた微小球の単層をビーズ結合反応混合物で被覆することと、
前記ビーズ結合反応混合物を部分的に硬化させてビーズ結合層を形成することであって、前記ビーズ結合層は熱硬化性ポリウレタンを含み、少なくとも35℃のガラス転移温度を有する、ことと、
プライマー反応混合物を前記ビーズ結合層上に接触させることと、
第2の反応混合物を硬化させてプライマー層を形成することであって、前記プライマー層は、ポリ尿素とポリウレタンのコポリマーを含み、前記プライマー層は、尿素結合を介して前記ビーズ結合層と共有結合している、ことと、
前記プライマー層上にポリウレタン熱可塑性エラストマーを配置することと、
前記転写シートを除去して、前記ビーズ被覆フィルムを形成することと、
を含む、方法。
(20)前記ポリウレタン熱可塑性エラストマーが、前記プライマー上に押出成形される、項目19に記載の方法。
(21)車両、航空機、又は船舶における、項目1~18のいずれかに記載の物品の使用。