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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】縫合糸管理のための装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
A61B17/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022103718
(22)【出願日】2022-06-28
(62)【分割の表示】P 2020541406の分割
【原出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2022133341
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】62/626,181
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506243057
【氏名又は名称】エルエスアイ ソルーションズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サウアー, ジュード, エス.
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-517371(JP,A)
【文献】特開2012-245095(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0073233(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が第1端部から第2端部まで細長く延びる少なくとも2つのラック部であって、上記少なくとも2つのラック部の各々に複数のカセット位置が形成され、上記複数のカセット位置の各々が、上記少なくとも2つのラック部の各々の第1側縁側の第1端から、上記少なくとも2つのラック部の各々の第2側縁側の第2端まで延び、上記少なくとも2つのラック部のうち少なくとも1つが、上記少なくとも2つのラック部のうち少なくとも1つを手術器具に安定させるように構成された取付け機構を含み、上記取付け機構は上記少なくとも2つのラック部のうち少なくとも1つの中央に配置される少なくとも2つのラック部と、
上記少なくとも2つのラック部の1つに結合された安定化足部であって、上記安定化足部は縫合糸管理のための装置を安定させるように構成され、上記安定化足部は、足ベース軸に沿って延びる足ベースと、上記足ベース軸に沿って上記足ベースの頂部から離れるように延びる取付けポストとを備え、上記取付けポストは、上記少なくとも2つのラック部のうちの上記1つのラック部の下面側に形成される受容部に収容される安定化足部と、
上記少なくとも2つのラック部の各々に結合される少なくとも1つのインサート体であって、上記少なくとも1つのインサート体は、ベース部と、上記ベース部から延びる少なくとも1つの突出部とを有し、上記べース部は、上記少なくとも2つのラック部の各々の下面側に形成される空洞内に設けられ、上記少なくとも1つの突出部は、上記複数のカセット位置のうちの対応する1つを通り、上記少なくとも1つの突出部の端部が上記少なくとも2つのラック部の各々の外面から延びる少なくとも1つのインサート体と、を備え、
上記少なくとも1つの突出部の第一面と、上記複数のカセット位置のうちの対応する1つを画成する第一縁との間に第一時計回り保持スロットが画成され、上記第一時計回り保持スロットは縫合糸の第1セグメントを受け取るように構成され、
上記少なくとも1つの突出部の第二面と、上記複数のカセット位置のうちの対応する1つを画成する第二縁との間に第一反時計回り保持スロットが画成され、上記第一反時計回り保持スロットは縫合糸の第2セグメントを受け取るように構成され、
上記ベース部の一部に中央空洞が形成され、上記中央空洞は、上記複数のカセット位置のうちの対応する1つの上記第1端と上記第2端との間に設けられた、上記複数のカセット位置のうちの対応する1つにおけるカセット受部の下側に配置されており、上記中央空洞はカセットの先端部を解放可能に保持でき、
上記少なくとも2つのラック部は第一ラック部と第二ラック部とを含み、上記第一ラック部の第2端部は上記第二ラック部の第1端部に取り外し可能に結合され、
上記少なくとも1つのインサート体は、複数のインサート体を含み、上記複数のインサート体の各々が上記第一ラック部に形成された上記複数のカセット位置の各々に取り付けられ、上記複数のインサート体の各々が複数の色の1つをなし、上記複数の色の各々が手術の特定の工程に対応し、縫合糸の管理と、ユーザによる容易な視覚的な識別とを促進することを特徴とする縫合糸管理のための装置。
【請求項2】
請求項1に記載の縫合糸管理のための装置であって、
上記少なくとも2つのラック部の各々に結合される少なくとも1つのインサート体は弾力性のある材料を含むことを特徴とする縫合糸管理のためのラック。
【請求項3】
請求項2に記載の縫合糸管理のための装置であって、上記少なくとも2つのラック部の各々に結合される少なくとも1つのインサート体は、ポリウレタン材料又はシリコーン材料から成ることを特徴とする縫合糸管理のための装置。
【請求項4】
請求項1に記載の縫合糸管理のための装置であって、上記カセット受部は、上記ラック部に画成されていることを特徴とする縫合糸管理のための装置。
【請求項5】
請求項1に記載の縫合糸管理のための装置であって、上記少なくとも2つのラック部の各々に結合される少なくとも1つのインサート体は、織目加工された、又は他の特定の形状に成形された表面を有し、増大した摩擦又は保持力を提供することを特徴とする縫合糸管理のための装置。
【請求項6】
請求項1に記載の縫合糸管理のための装置であって、上記複数のインサート体のべース部の各々は、上記少なくとも2つのラック部の各々の下面側に形成される複数の空洞のうちの対応する1つの空洞の内に設けられることを特徴とする縫合糸管理のための装置。
【請求項7】
請求項1に記載の縫合糸管理のための装置であって、上記少なくとも2つのラック部は第1端部から第2端部に延びる第三ラック部を含み、上記第二ラック部の第2端部は上記第三ラック部の第2端部に取り外し可能に結合されることを特徴とする縫合糸管理のための装置。
【請求項8】
請求項7に記載の縫合糸管理のための装置であって、上記第一ラック部の第2端部は上記第二ラック部の第1端部に回動可能に結合され、上記第二ラック部の第2端部は上記第三ラック部の第2端部に回動可能に結合されることを特徴とする縫合糸管理のための装置。
【請求項9】
請求項1に記載の縫合糸管理のための装置であって、上記少なくとも2つのラック部の各々は、非線形であることを特徴とする縫合糸管理のための装置。
【請求項10】
請求項1に記載の縫合糸管理のための装置であって、上記ラック部はキャンバー形状であることを特徴とする縫合糸管理のための装置。
【請求項11】
請求項1に記載の縫合糸管理のための装置であって、上記第一ラック部の第2端部は上記第二ラック部の第1端部に回動可能に結合されることを特徴とする縫合糸管理のための装置。
【請求項12】
請求項1に記載の縫合糸管理のための装置であって、上記少なくとも1つのインサート体の上記少なくとも1つの突出部は第一突出部と第二突出部とを有し、上記第一突出部は上記対応するカセット位置の上記第1端に隣接して設けられ、上記第二突出部は上記対応するカセット位置の上記第2端に隣接して設けられることを特徴とする縫合糸管理のための装置。
【請求項13】
請求項1に記載の縫合糸管理のための装置であって、上記複数のカセット位置の各々が、上記ラック部の長手方向と垂直な方向に沿って上記第1端から上記第2端まで延びることを特徴とする縫合糸管理のための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術用機器に関し、より具体的には、低侵襲外科手術の縫合糸(suture)の管理に使用される機器に関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲心臓手術の最新の進歩により、患者の寿命を伸ばし、患者の生活の質を改善するとともに、術後の痛み、入院、及び術後の制限を軽減する、外科手術を、外科医は行うことができるようになった。そのような低侵襲手術のなかで、大動脈弁置換術は、より困難な手術の1つである。
【0003】
そのような手術を完了するのに必要とされる専門の医学知識と外科的スキルに加えて、外科医とその医療スタッフは、縫合糸管理にも非常に熟練していなければならない。縫合糸管理で外科スタッフを助ける装置が改良されたことは望ましい。最新の低侵襲外科用ツールと効果的に関わり合う縫合糸管理のための装置が改良されることも望ましいであろう。
【発明の概要】
【0004】
縫合糸管理用のラック(rack)が開示されている。縫合糸管理用のラックは、複数のカセット位置を含み、各カセット位置は、内側縫合糸ホルダ、外側縫合糸ホルダ、及びカセット受部(receiver)を有している。縫合糸管理用のラックはまた、複数の縫合糸溝を含む。縫合糸管理用のラックはさらに、複数のラック接続点を含む。縫合糸管理用のラックはまた、取付け機構(attachment feature)を含む。
【0005】
縫合糸管理のための装置も開示されている。縫合糸管理のための装置は、複数のラックをさらに含んでもよく、各ラックは複数のカセット位置を含み、各カセット位置は内側縫合糸ホルダ、外側縫合糸ホルダ、1つ以上の内側保持スロット(slot)、1つ以上の外側保持スロット、及びカセット受部を有している。縫合糸管理のための装置はまた、複数の縫合糸溝を含む。縫合糸管理のための装置はまた、複数のラック接続点を含む。この装置はまた、1つ以上の軟質インサート体(soft insert)を含む。縫合糸管理のための装置はまた、少なくとも1つの安定化足部及び取付け機構を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】低侵襲心臓外科手術の一部を受けている患者の斜視図である。
図1B】低侵襲心臓外科手術の一部を受けている患者の斜視図である。
図1C】低侵襲心臓外科手術の一部を受けている患者の斜視図である。
図1D】低侵襲心臓外科手術の一部を受けている患者の斜視図である。
図1E】低侵襲心臓外科手術の一部を受けている患者の斜視図である。
図1F】低侵襲心臓外科手術の一部を受けている患者の斜視図である。
図1G】低侵襲心臓外科手術の一部を受けている患者の斜視図である。
【0007】
図2A】低侵襲大動脈弁置換術の工程の概略図である。
図2B】低侵襲大動脈弁置換術の工程の概略図である。
図2C】低侵襲大動脈弁置換術の工程の概略図である。
図2D】低侵襲大動脈弁置換術の工程の概略図である。
図2E】低侵襲大動脈弁置換術の工程の概略図である。
図2F】低侵襲大動脈弁置換術の工程の概略図である。
図2G】低侵襲大動脈弁置換術の工程の概略図である。
図2H】低侵襲大動脈弁置換術の工程の概略図である。
図2I】低侵襲大動脈弁置換術の工程の概略図である。
図2J】低侵襲大動脈弁置換術の工程の概略図である。
図2K】低侵襲大動脈弁置換術の工程の概略図である。
【0008】
図3A】縫合糸管理のための装置の実施形態の斜視図である。
【0009】
図3B図3Aの縫合糸管理のための装置の組立て工程を右上方から見た斜視図である。
【0010】
図3C図3Aの縫合糸管理のための装置の図3Bの組立て工程を右下方から見た斜視図である。
【0011】
図3D図3Aの縫合糸管理のための装置の別の組立て工程を右上方から見た斜視図である。
【0012】
図3E図3Aの縫合糸管理のための装置の図3Dの組立て工程を右下方から見た斜視図である。
【0013】
図3F図3Aの縫合糸管理のための装置の分解された組立て工程を右上方から見た斜視図である。
【0014】
図4A図3Aの縫合糸管理のための装置の付加的な組立て工程を右上方から見た斜視図である。
【0015】
図4B】完全に組み立てられた図3Aの縫合糸管理のための装置を右上方から見た斜視図である。
【発明の詳細な説明】
【0016】
図1A図1Fは、低侵襲心臓外科手術の一部を受ける患者の斜視図である。図1Aは、予定される外科的シナリオの一部を示している。患者の胸30が露出され、切開線32が、右第2肋間腔(右第2及び第3肋骨の間)の患者の皮膚にマーク付けされる。実際の手術では、予定される切開部の周りの多くのエリアが布で覆われるが、明確にするため、そのような覆いはこの図に示されない。図1Bに示すように、切開部34は、第2肋間腔における皮膚及び筋肉組織を通して形成され得る。
【0017】
図1Cは、外科手術用の開創器具38のアームを示し、開創器具38のアームは切開部34に置かれ、切開部34の両側に患者の肋骨を係合する。外科医は、多種多様な開創器具を使用することができ、図示の開創器具38は単なる一例である。開創器具38の目的は、例えば、図1D図1Eに示すように、肋骨を広げることである。これにより、胸腔36及び心臓40へのより多くのアクセスを提供して、必要な低侵襲手術器具及び必要とされるかもしれない人工装具の胸腔への配置を可能にすることである。そのような低侵襲の外科的アプローチは、高侵襲で、激痛を引き起こすとともに、非常に長い、入院及び患者の回復時間をもたらす、完全な又は部分的な胸骨切開より、非常に好ましい。
【0018】
図1Fを参照すると、図示された開創器具38は取り外し可能なノブ42を有している。このタイプの開創器具38では、ノブ42は、開創器具38のアームの広がりと高さを調製するために使用されるように構成された、キー44及びギア46を有している。開創器具38は、そのような取り外し可能なノブ42を有するか否かにかかわらず、開創器具38はアクセサリ取付け点48を有してもよい。ノブ42が邪魔にならないように、縫合糸管理のための装置50は、開創器具38のアクセサリ取付け点48に結合されてもよい。図1Fでは、取付け機構52の上部、この例では、ボルト52を見ることができる。縫合糸管理のための装置50の取付け機構52は、アクセサリ取付け点48に位置合わせされ、この例では、アクセサリ取付け点48は、ボルト52のねじ山に対応するねじ山を有するタップ付きスロットである。
【0019】
図1Gに示すように、縫合糸管理のための装置50は、ボルト52をアクセサリ取付け点48(この図では見えない)に締めつけることにより、開創器具38に結合される。ボルト52を締め付けるために、任意の適切なツールが使用されてもよいが、取付け機構52は、容易に入手可能な外科用ツール(例えば、リブ開創器具38からの制御ノブ42などであるがこれに限定されない)を受け入れるように構成してもよい。図1Gの例では、取付け機構52は、開創器具38からのノブ42の端部のキー44により回転させることができる。縫合糸管理のための装置50は、必要に応じて切開部34の周りに配置され、次いで、取付け機構52が締め付けられるときに、所定の位置に固定されてもよい。縫合糸管理のための装置50の取付けは、開創器具38への取付けに限定される必要はない。その理由は、低侵襲外科手術の間、縫合糸管理のための装置50を適切な位置に締付け又は搭載するために、他の筋交い又は手術用器具ホルダが用いられてもよいからである。縫合糸管理のための装置50を手術用器具ホルダに搭載又は締め付けるには、オプションとしてアダプタが必要とされてもよい。限定はしないが、テーブルマウント、支持体、又は関節アームアッセンブリを含む様々な手術用器具ホルダが、当技術分野で知られており、説明されている。
【0020】
図2Aから図2Kは、縫合糸管理がなぜ非常に重要であり得るかについての理解を提供するために、低侵襲大動脈弁置換外科手術におけるいくつかの工程の一例を概略的に示している。図2Aは、大動脈切開(aortotomy)56がなされた大動脈54を示す。大動脈切開56は、大動脈弁の弁尖が大動脈54と出会う大動脈基部58へのアクセスを提供する。図2Aでは、罹患した弁尖は既に大動脈基部58から切開されている。左の冠状静脈洞60と右の冠状静脈洞62も見ることができる。さらに、大動脈基部58の左右の交連(left-right commissure)64、右の非冠状交連(right-non-coronary commissure)66、及び非冠状左交連(non-coronary-left commissure)68も見ることができる。大動脈切開56を開いたままにしてこれらの解剖学的構造のすべてを見ることができ、アクセスできるようにするために、通常、いくつかの支持縫合糸が大動脈切開56の端近くの大動脈54に配置され、大動脈54を邪魔にならないように引っ張る。支持縫合糸は、この図には示されていないが、このタイプの手術には多くの縫合糸が必要とされることを示すためのものである。また、組織に配置されたすべての縫合糸について、2つの縫合糸端があり、管理され、整理されるとともに、もつれないようにされることに留意すべきである。
【0021】
図2B及び図2Cにおいて、低侵襲縫合デバイス70は、左右の交連64で大動脈基部58と接触させられ、綿撒子マットレス縫合糸(pledgeted mattress suture)72は、図2Dに示されるように、大動脈基部58に縫合される。他のタイプの低侵襲縫合デバイスを使用することも、ステッチ(stitch)を手で配置することもできる。図2E及び図2Fに示すように、綿撒子マットレス縫合糸74は、右の非冠状交連66で大動脈基部58に配置される。図2G及び図2Hに示すように、綿撒子マットレス縫合糸76は、非冠状左交連68で大動脈基部58に配置される。これら交連のステッチの間の残りのステッチを埋めるための様々な方法が可能であるが、一般的に、外科医は、図2Iから図2Kに示す交連のそれぞれの間に約3つの追加ステッチ(72A,72B,72C,74A,74B,74C,76A,76B及び76C)を挿入(fit)することができる。図2Kに示されるように、大動脈基部だけに配置されたステッチだけで12個の縫合糸と24個の縫合糸端がある。縫合糸はもつれないままにするに必要があるだけでなく、同じ縫合糸からの縫合糸端は、手術の後の工程のためにペアとして一緒に保持される必要がある。支持縫合糸に、これらの縫合糸は手術器具が移動しなければならない狭くアクセス可能な領域から外に出るという事実を追加すれば、縫合糸管理のためのツールがなぜとても重要であるかを理解することがより容易になる。
【0022】
図3Aは、縫合糸管理のための装置の一実施形態の斜視図である。縫合糸管理のための装置50は、1つ以上のラック78A,78B,78Cを有する。ラック78Aは、ラック78A上のいくつかの接続点80A,82Aを規定する。同様に、ラック78Bは、ラック接続点80B,82Bを有し、ラック78Cは、ラック接続点80C,82Cを有する。2つの接続点を位置合わせし、それらをラック接続デバイスで結合することにより、1つのラックは、別のラックに接続されてもよい。図3Aの実施形態では、ラック78Aは、ボルト84及びナット(この図では見えない)によりラック78Bに結合される。ボルト84及びその対応するナットは、ラック取付けデバイスの一例である。ボルト84は、位置合わせされたラック接続点80B及び82Aを通過し、次に、ナット(この図では見えない)にねじ込まれ、次に、ラックが必要に応じて互いに相対的に位置合わせされたときに、締め付けられる。同様に、ラック78Bは、ボルト86及びナット(この図では見えない)によりラック78Cに結合される。ボルト86及びその対応するナットは、ラック取付けデバイスの別の例である。ボルト86は位置合わせされたラック接続点82B及び80Cを通過し、次に、ナット(この図では見えない)にねじ込まれ、次に、ラックが必要に応じて互いに相対的に位置合わせされたときに、締め付けられる。図3Aに示すように、ラックは事前に組み立てられてもよく、又は、ラックはエンドユーザの組立て用に分離されてもよい。ラック取付けデバイス、ここではボルト84,86及びそれらの対応するナット(この図では見えない)は、実施形態に応じて、必要に応じて、開創器具38又はその他のツールからのキーによって締めたり緩めたりするように構成されてもよい。
【0023】
複数のラック78A,78B,78Cが一緒に結合される場合、これを、結合されたラックが連続するループを形成しなくても、リング88と呼ぶ。先に述べたように、ラック78Bの1つは、開創器又は他の外科的サポート若しくは手術用器具ホルダに結合するための取付け機構52を備えてもよい。
【0024】
1つ以上のラック78A,78B,78C又はリング88は、クランプ(例えば布鉗子だがこれに限らない)を用いることにより、切開部位の周りに交互に配置されてもよい。各ラック78A,78B,78Cは、複数のクランプ受部又はアンカーポイント90を有し、それらは、ラック又はリングを外科用ドレープ又は外科用タオルに固定するために、布鉗子と併用してもよい。そのようなタオルクランプは、1つ以上のアンカーポイント90でリング88に取り付けることができる。或いは、縫い合わされた縫合糸のような、他の取付けクランプや他の固定方法が、切開部位の周りにリング88を保持又は配置するために、1つ以上のアンカーポイント90に用いられてもよい。
【0025】
各ラック78A,78B,78Cは、その縫合糸管理のための特徴において、同様であるので、便宜上、単一のラックの特徴のみが議論される。但し、リング内の追加のラックも同様であることを理解する必要がある。この実施形態では、ラック78Aは、複数のカセット位置92A,92B,92C,92D,92E及び92Fを有する。他の実施形態は、より多くの、又はより少ないカセット位置を有してもよい。カセット位置92A~92Fのそれぞれは、内側縫合糸ホルダ94及び外側縫合糸ホルダ96を有し、それぞれが、必須ではないが、好ましくは、可撓性材料で作られている。後で述べられるように、所与のカセット位置92A~92Fのそれぞれの内側及び外側の縫合糸ホルダ94,96は、ラック78Aの底部に押し込まれる軟質インサート体の一部である。
【0026】
各カセット位置92A~92Fにおける内側縫合糸ホルダ94は、各内側縫合糸ホルダ94の反時計回り側及び時計回り側に、それぞれ内側反時計回り保持スロット98及び内側時計回り保持スロット100を形成している。同様に、各カセット位置における外側縫合糸ホルダ96は、外側縫合糸ホルダ96の反時計回り側及び時計回り側に、外側反時計回り保持スロット102及び外側時計回り保持スロット104を形成している。カセット位置92A~92Fごとに、内側及び外側の反時計回り保持スロット98,102は、SEW-EASY(商標)カセット(この図に示されないが、エルエスアイソルーションズ社
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から入手可能)からの縫合糸(図示しない)の最初のセグメントを受け取って保持するように設計されている。同様に、対応する内側及び外側の時計回り保持スロット100,104は、SEW-EASY(商標)カセットからの縫合糸の第2のセグメントを受け入れて保持するように設計されている。各カセット位置92A~92Fはまた、SEW-EASY(商標)カセットからの縫合糸セグメントがそのカセット位置の保持スロットに挿入された後、そのカセットの先端を保持し、容易に解放する大きさに形成されたカセット受部106を有する。ある実施形態では、カセット受部106は、ラックにより規定されてもよく、又は後述する軟質インサート体によって規定されてもよい。
【0027】
ラック78Aはまた、複数の縫合糸溝108A,108B,108C,108Dを有する。以下の図面のうちの1つに見られるように、縫合糸溝108A~108Dは、それら自体の対応する軟質インサート体を有する。軟質インサート体は、ラックの底部に取り付けられ、縫合糸を捕捉するのを助けるために使用されてもよい。縫合糸溝108A~108Dは、支持縫合糸を保持し、まとめる(organize)ために、利用可能である。縫合糸溝108A~108Dはまた、外科医が止血帯の一部としてしばしば使用する縫合糸管を保持するのに便利な曲がりくねった(tortuous)経路形状を特徴としている。
【0028】
図3Bは、図3Aの縫合糸管理のための装置の組立て工程を右上方から見た斜視図である。図3Bは、カセット位置92A~92Fの軟質インサート体をそれぞれよりよく示すために、ラック78Aから分解された軟質インサート体110A,110B,110C,110D,110E,及び110Fを見えるようにしたラック78Aを示している。各軟質インサート体110A~110Fは、上述したように、内側縫合糸ホルダ94と外側縫合糸ホルダ96を有する。各軟質インサート体110A~110Fはまた中央空洞111を規定し、中央空洞111は、対応するカセット受部106を裏打ちし(line)、SEW-EASY(商標)カセットを、挿入時、適所に保持する摩擦を提供するのを助ける。図3Aの例では、各軟質インサート体は同系色である。図3Bの例では、軟質インサート体110Aは、第1の色であり、残りの軟質インサート体110B~110Fは、第2の色である。これは、縫合糸の管理に役立つ。例えば、3つのラックを組み合わせて1つのリングにする場合、第1の色を有する3つのカセット位置(各ラックに1つ)があることになる。残りの位置は、第2の色となる。第1の色の3つのカセット位置は、大動脈基部の交連に配置されるステッチに使用できる。次に、交連位置間の第2の色の利用可能な位置は、大動脈基部に配置される追加のステッチに対応する順序で埋めることができる。外科手術に応じて、複数の色の軟質インサート体は、手術の特定の工程に応じて利用され、縫合糸の管理と、ユーザ又はオペレータによる容易な視覚的な識別とを促進する。本明細書に記載される軟質インサート体は、当業者に知られた、ポリウレタン、シリコーン又は他の可撓性ポリマーなどの適切なポリマーのような弾性材料又は可撓性材料から作られてもよい。或いは、軟質インサート体は、織目加工された(textured)、又は他の特定の形状に成形された表面を規定し、これにより、縫合糸、モジュール式カセット、又は他の手術用アイテムを適所に解放可能に保持するための増大した摩擦又は保持力を提供するようにしてもよい。
【0029】
図3Cは、図3Aの縫合糸管理のための装置の図3Bの組立て工程を右下方から見た斜視図である。図3Cは、軟質インサート体110A~110Fがラック78Aに配置される場所をより明確に示す。図3D及び図3Eは、それぞれ右上方から見た分解斜視図及び右下方から見た分解斜視図であり、上述の縫合糸溝108A,108B,108C,108Dと位置合わせしてラック78Aに結合される、別個の組の軟質インサート体112A,112B,112C及び112Dを示す。
【0030】
図3Fは、図3Aの縫合糸管理のための装置の分解された組立て工程を右上方から見た斜視図である。図3Fは、以前の図では見えなかった各ラック78A,78B及び78Cの組み立てのためのボルト84,86、ナット116、及びワッシャ114、並びに、取付け機構52をラック78Bに搭載するためのワッシャ114、ピボットドーム118、及び、保持(retaining)クリップ120を、示す。SEW-EASY(商標)カセット122も、カセット受部の1つに位置合わせして描かれているが、SEW-EASY(商標)カセット122は、縫合糸管理のための装置50の一部を形成していない。
【0031】
図4Aは、図3Aの縫合糸管理のための装置の付加的な組立て工程を右上方から見た斜視図である。図4Aは、ラック78Aへの安定化足部124の追加を示す。足部124は、使用時に、例えば患者の胸に対して縫合糸管理のための装置50を安定させるように構成されている。安定化足部124は、組立て時にラック78Aの下側に挿入されるように構成された取付けポスト126を規定する。図4Bは、図3Aの完全に組み立てられた縫合糸管理のための装置50を右上方から見た斜視図である。図4Bは、完全に組み立てられた縫合糸管理のための装置50を示す。
【0032】
縫合糸管理のための装置のさまざまな利点については述べた。本明細書で説明した実施形態は、例として説明されている。上述の詳細な開示は、例としてのみ提示することを意図しており限定するものではないことは、当業者には明らかであろう。本明細書では明示的に述べられていないが、様々な変更、改善、及び修正が行われ、当業者を対象とする。これらの変更、改良、及び修正は、本明細書に示唆されることが意図されており、請求される発明の精神及び範囲内にある。本明細書に含められる図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。さらに、処理要素若しくはシーケンスの列挙された順序、又は、数字、文字若しくは他の記号の使用は、請求項で指定されている場合を除き、請求項を任意の順序に限定することを意図していない。したがって、本発明は特許請求の範囲及びその均等物によってのみ制限される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B