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特許7555402生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
C12M1/00 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022516613
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 IB2020058339
(87)【国際公開番号】W WO2021053458
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】102019000016376
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】501193001
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO-Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョルダーノ カルメン
(72)【発明者】
【氏名】ライモンディ マヌエラ テレサ
(72)【発明者】
【氏名】イッツォ ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ラガーナ マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】アルバーニ ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】ペトリーニ パオラ
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-532432(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0177678(US,A1)
【文献】国際公開第2017/091718(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M1/00-3/10
B01L3/00
G01N33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
なくとも1個の第1穴(40)であって、底部が閉じた第1穴(40)を備える本体部(11)と、セパレータ(35)と、前記セパレータに固定された膜(36)と、前記第1穴(40)を固定するプラグ(15)とを有する生物由来物質の培養用ミリ流体デバイスであって、
前記セパレータ(35)は、前記第1穴(40)内に設けられるようになっており、前記セパレータ(35)は、前記第1穴(40)から取り出し可能であり、前記膜(36)は、上方チャンバー・ハーフ下方チャンバー・ハーフよりも前記第1穴(40)内で上方に位置するように前記第1穴(40)を分割するようになっており、
さらに、前記下方チャンバー・ハーフを潅流する一対の管体(25)と、前記上方チャンバー・ハーフを潅流する一対の管体(26)と、前記プラグ(15)の中央に設けた第1スライド(22)と、前記第1穴(40)の中央に設けられる第2スライド(42)と、前記第1(40)から突出する円筒体(41)とを有し、前記第2スライド(42)は、前記円筒体(41)の頂部に設けられ、前記円筒体(41)には、第2穴(43)が、前記円筒体(41)と軸線を同じくして備えられる、生物由来物質の培養用ミリ流体デバイス。
【請求項2】
前記膜(36)は、透過性膜、不透過性膜及び半透性膜の中から選択されることを特徴する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記膜(36)は、ポリカーボネート、PET、PVC、TEFLON、PDMS、セルロースアセテート、ポリエステル、又はナイロンの1種以上で形成されることを特徴する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記膜(36)は、前記セパレータ(35)の頂部に設けられることを特徴する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記膜(36)は、前記セパレータ(35)の頂部から所定距離離して設けられることを特徴する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記下方チャンバー・ハーフ用の第1導電電極(50)であって、円形の冠状本体部を備える第1導電電極を有することを特徴する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記上方チャンバー・ハーフ用の第2導電電極(55)であって、円形の冠状本体部を備える第1導電電極を有することを特徴する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記上方チャンバー・ハーフは、前記下方チャンバー・ハーフから流体力学的に分離され、前記膜の種類のみに応じて、両チャンバー・ハーフ間の透過性が定まることを特徴する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記セパレータ(35)は、底部が開口し、頂部が膜(36)により閉じられた中空円筒体形状であり、前記中空円筒体形状の頂部は、前記中空円筒体形状の底部よりも前記プラグ側に位置することを特徴する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記円筒体(41)は、その下部に円形の冠状をしたベース(45)を備え、前記ベース部は、前記プラグ(15)と前記セパレータ(35)の双方にとって基準接触点として機能することを特徴する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
細胞(例えば、微小胞又は細胞器官)、生体分子(例えば、たんぱく質又は単離DNA)、又は生物活性分子(例えば、薬剤)に由来する部分を含む潅流溶液を生成することを目的とした、懸濁式又は粘着式に、二次元培養又は三次元培養で、不死化型又は初代型の細胞又は細菌の細胞培養するための、請求項1に記載した生物由来物質の培養用ミリ流体デバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養用デバイスとして、例えば、互いに分離された潅流チャンバーを備えた、モジュール式バイオリアクターがあり、個々のチャンバーは、独立し、潅流回路のように他のチャンバーから隔離されているが、バイパスによる接続も可能になっている。個々のチャンバーは、光学的に内部をチェックでき、標準的な共焦点光学顕微鏡による細胞培養の観察が、白色光又は位相差を持つ蛍光で可能である。
【0003】
上述したデバイスは、本願出願人の名義である国際公開第2017/199121号特許出願に記載されている。
【0004】
類似のデバイスが、国際公開第2017/091718号特許出願に記載されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、従来技術よりもモジュール性が高い、生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスの提供にある。
【0006】
本発明のもう一つの目的は、使い易さが向上したデバイスの提供にある。
【0007】
本発明のさらにもう一つの目的は、製造し易いデバイスの提供にある。
【0008】
本発明によれば、これらの目的、及びその他の目的は、請求項1に記載した生物由来物質の培養用ミリ流体デバイスにより達成される。
【0009】
本発明の、請求項1に記載された以外の構成上の特徴は、従属請求項に記載されている。
【0010】
従来技術の解決手段と比較した、本発明の効果は、数多もある。
【0011】
本発明は、細胞(例えば、マイクロ又はナノベシクル)、生体分子(例えば、たんぱく質又は単離DNA)、又は生物活性分子(例えば、薬剤)に由来する部分を含む潅流溶液を生成することを目的とした、懸濁式又は粘着式での、二次元培養又は三次元培養で、細胞又は細菌の灌流培養するための、密閉デバイスである。
【0012】
本発明によるデバイスは、互いに独立した別々の培養又は希釈チャンバーで構成された宿主システムであって、各チャンバーは、取り出し自在で、異なる直径又は寸法を有する。取り出し自在であるため、膜の両側では細胞播種が容易で、使用済みの培養チャンバーを新品のチャンバーと交換したものを殺菌することによって、デバイスの本体を再び利用可能になる。
【0013】
各チャンバーは、膜を備え、透過性、気孔率を異にする半透過性、又は不透過性のポリカーボネート、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、TEFLON、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、セルロースアセテート、ポリエステル、又はナイロン等の種々の材料で形成可能な膜により、各チャンバーを2個のチャンバー・ハーフに分割する。
【0014】
両チャンバー・ハーフは、材料及び膜の気孔率を適切に選択することにより、互いに接続又は独立していてよい。
【0015】
細胞培養は、培養チャンバー内に設けた膜の一方又は双方の側で、行うことができる。
【0016】
本発明によるデバイスは、共焦点顕微鏡により、又は、位相差を持って、直立又は倒立したまま、白色光又は蛍光で普及品の光学顕微鏡により、光学的に観察可能である。したがって、本発明によるデバイスは、培養自体を中断させることなく、上述した顕微鏡技術を用いることによって、細胞培養を両チャンバーで観察可能である。光学的な観察ができるので、本発明によるデバイスは、種々の光学センサ、例えば、pH、酸素又は二酸化炭素を測定するセンサとともに使用可能となり、潅流溶液内での溶質の濃度を測定することができる。
【0017】
本発明によるデバイスは、電極を備えた状態又は備えない状態で製造してよく、電極は、細胞又は細菌の行動に関連する電気パラメータを測定し、光学的な観察を損なわないことにより、培養チャンバーの内容物と接する広い表面を確保する構造で、培養チャンバーに収容された細胞又は細菌培養物を電気的に刺激するのに役立つ。電極は、例えば、厚さが0.05乃至0.2mmであるステインレス鋼又は貴金属製の、適切な金属シートからレーザカットで、簡便かつ経済的に形成できる。
【0018】
本発明によるデバイスは、種々の点でモジュール式である。
a)種々の大きさに製造可能で、細胞及び細菌を、懸濁状態で、単層(二次元培養)で、ゲル(三次元培養)状態で、又は三次元媒体(三次元培養)で、単独、又は培養チャンバー自体内に設けた分離膜を通じての連動した形態で収容できる、潅流培養チャンバーの配置形状。
【0019】
b)個々のチャンバーは、潅流回路のように独立しているが、バイパスにより互いに接続も可能になっている潅流チャンバーの数。
【0020】
c)個々の潅流チャンバーは、それぞれのカバーを備え、他のチャンバーとは無関係に作動できる開閉機構。
特に、複数個の培養デバイスは、上述の配置内で、懸濁状態、又は、二次元又は三次元培養された接着細胞状態で、細胞/細菌の誘導体、すなわち化学的合成された分子を含有する種々の種類の細胞及び細菌培養を、同時に取り扱い、接触させることが可能な多段プラットフォームを形成することによって互いに接続できる。
【0021】
本発明に係る培養デバイス、及びそのプラットフォームは、直接的に、又は細菌培養を行う専用デバイスを介して、通常の液体培養条件において、懸濁状態でも、二次元培養でも、三次元培養の適切なマトリックスでの培養でも、培養デバイスの培養チャンバーに似た形状寸法で、液体細菌培養デバイスと連動可能である。
【0022】
d)培養デバイスから容易に取り出すことができ、取り扱い易い膜支持手段。この特徴により、確立された常用方法で、細胞播種作業、及び/又は培養デバイス外での評価及び測定を行うことができる。取り出し可能な支持手段は、使用中の膜ハウジングのタイプを単に変更し、殺菌され細胞培養に適した市販のインサートを用いることによって、潅流チャンバーの形状寸法を迅速に変更することもできる。この高度にモジュール式化されたデバイスの利点は、実験装置全体を全面的に再構成する必要なく、培養デバイスの基本的な構成を利用することによって、個々のチャンバーで異なる実験条件にできることである。
【0023】
e)膜の両側で2個の流路を隔離し、チャンバー外へ液体が漏出するのを防止する構造になった、二段階でのシールを特徴とする機構。
【0024】
f)高圧力及び高容量でも稼働可能にするねじ等の固定手段を備える、プラグ用持上げ防止機構。この防止機構により、長時間に亘って培養デバイスを使用しても安全であり、細胞培養器を備えた顕微鏡内に安定的に取り付けて、顕微鏡による観察を頻繁に行える。
【0025】
本発明に係る培養デバイスは、生物学的、医学的、生化学的及び化学的、並びに薬学的及び毒学的分野で、生物活性分子の調査研究を行うのに利用できる。本発明に係る培養デバイスは、全般的に、光学的な観察、電気的な刺激、及び/又は、膜(又は非多孔質隔膜)の両側で潅流され、生命系組織又は化学的性質に由来する、培養可能な生物学的材料を含む、二つの液体(同種又は異種)間での相互作用後の生物学的パラメータの電気的測定が必要であるという特徴を持つ、こうした分野の全てに、既に知られている、又は未知であるとを問わず、適用可能である。膜又は隔膜には、別個の部材(接着状態又は単に置いた状態)を設けても、設けなくてもよい。
【0026】
本発明の特徴及び効果は、添付図面に非限定的な例示として図示する、本発明の実施形態についての以下の詳細な説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスの一例の上面斜視図を示す。
図2】本発明による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスの一例の下面斜視図を示す。
図3】本発明による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスの一例において、プラグを外した上面斜視図を示す。
図4】本発明による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスの一例において、プラグを外し、セパレータも外した上面斜視図を示す。
図5】本発明による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスの一例の斜視断面図を示す。
図6】本発明による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスにおけるチャンバーの一例の断面図を示す。
図7】本発明による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスにおけるプラグの一例の上面斜視図を示す。
図8】本発明による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスにおけるプラグの一例の下面斜視図を示す。
図9】本発明による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスにおけるセパレータの一例の斜視断面図を示す。
図10】本発明による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスにおける第1電極を示す。
図11】本発明による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスにおける第2電極を示す。
図12】本発明の第1変形態様による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスの一例の上面斜視図を示す。
図13】本発明の第2変形態様による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスの一例の上面斜視図を示す。
図14】本発明の第3変形態様による生物由来物質の培養を促進するミリ流体デバイスの一例の上面斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付図面を参照すると、本発明に係る細胞培養デバイス10は、角形本体部11を備え、その平面視での全体寸法は、標準的な共焦点顕微法用のスライドホルダ(例えば、長さが、60mm乃至80mmで、幅が、20乃至30mmで、好ましくは、長さが68mmで、幅が25mm)に収容できる大きさである。
【0029】
本体部11は、図示のように、それぞれ、液体用回路を備えた、3個のチャンバー12、13及び14を有する。
【0030】
チャンバーの数は、必要に応じて1個乃至複数個に亘る。
【0031】
3個のチャンバー12、13及び14には、それぞれ、本体部の両縁に達する楕円形の細長いプラグ15が設けられる。本体部11の両縁には、複数個の凹部16が設けられ、プラグ部の両端が、位置付けられることにより、プラグ15の正確な位置付け用のガイドとなる。
【0032】
プラグ15の各々は、好ましくは、2個の貫通穴17を両端に設けて、ねじによりプラグを本体部11に強固に固定する。こうする代わりに、プラグ15を本体部11に固定する他の手段、例えば、フック又は押し付け具を用いてもよい。
【0033】
プラグ15は、実質的にフラットな上部部材20と、円筒形の下部部材21を備える。
【0034】
好ましくは円形のスライド22が、プラグ15の上部中央部材に固定されて、顕微鏡を使用する際に、チャンバー内を隈なく観察できる。
【0035】
下部部材21の外周には、Oリングシール23が設けられる。
【0036】
図示のように、本体部11の下には、チャンバー毎に、2対の管体があり、本体部11に対して垂直に突出、より具体的には、チャンバー12乃至14用のスペースをもたらす、本体部11の下部拡大部24から突出する。
【0037】
第1チャンバー・ハーフ(後段で詳述する)用の、流入管と流出管とを備えた、1対の内側管体25と、第2チャンバー・ハーフ用の、流入管と流出管とを備えた、1対の外側管体26とが、設けられる。
【0038】
図示にように、本体部11には、ねじ切りされた穴30が、複数個形成され、これらの穴は、ねじ27により本体部11にプラグ15を固定するための貫通穴17に対応する。
【0039】
プラグ15を取り外すと、セパレータ35が露出する。セパレータは、チャンバー12乃至14の各々を2個のチャンバー・ハーフに分割する。
【0040】
セパレータ35は、底部が開口し、頂部が膜36により閉口する、中空の円筒形状をしており、頂部が膜36により閉じられた、コップをひっくり返した形状をしている。
【0041】
膜36により、上方チャンバー・ハーフと下方チャンバー・ハーフとに分けられる。
【0042】
膜36は、図3及び図9に示すように、各セパレータ35の頂部に設けられる(接着される)が、図5及び図6に示すように、セパレータ35内の複数箇所に、特に、セパレータ35の頂部から所定の距離の箇所に、設けてもよい。
【0043】
とりわけ、膜36をセパレータ35の頂部に設ける場合には、上方チャンバー・ハーフの高さは、0.3mmである。膜36を他の箇所に設ける場合、セパレータ35は、予め定められた高さを持つ2個の部品で構成する。膜36を、セパレータの下部に接着し、セパレータの上部を上に接着して、膜を所望の高さに位置付け、所定の高さを持つ2個のチャンバー・ハーフを得る。
【0044】
膜36の取付位置を調整することにより、上方チャンバー・ハーフの容量を増減でき、ひいては、下方チャンバー・ハーフの容量を増減できる。
【0045】
各セパレータ35の内側には、Oリングシール37を、好ましくは、膜36から離れた箇所に設ける。
【0046】
セパレータ35を取り外すと、チャンバー用に予め用意された領域が、本体部11に露出する。
【0047】
チャンバー12乃至14毎に、底部が閉じた穴40が、本体部11に設けられる。各穴40の中央部には、穴と軸線を同じくして、円筒体41が突出する。円筒体41の頂部には、好ましくは円形をしたスライド42が、設けられ、顕微鏡使用時に、チャンバー内を隈なく観察できる。
【0048】
本デバイスを形成するのに用いる材料が、透明である場合には、スライド42を省略してもよい。
【0049】
円筒体41の内側は、中空で、円筒体41と軸線を同じくする穴43を構成し、穴は、底部が開口し、頂部がスライド42で塞がれる。
【0050】
穴43は、顕微鏡の光路内において需要ではないが、チャンバー・ハーフの内部をよりよく観察できるようにする。
【0051】
セパレータ35は、膜36を備えたまま、円筒体41の上方の所定位置にセットされる。
【0052】
セパレータ35は、プラグ15を開け、引っ張り出すことにより、設置個所から取り出し、円筒体41の頂部に嵌めることにより、元の位置にセットできる。
【0053】
対をなす管体25及び26は、穴43に対しては横方向において、本体部11に対しては横断方向において、整列する。
【0054】
本発明に係るデバイスは、好ましくは、2個の導電電極を、チャンバー・ハーフ毎に1個ずつ備える。
【0055】
電極は、電気的パラメータを測定するとともに、各培養チャンバーに収容された培養物に電気的な刺激を与える、例えば、生理学的又は神経生物学的な研究に役立つ、経上皮又は経皮内抵抗の測定に、細胞膜を通るイオン電流の開始の検知に、若しくは、組織収縮の引き起しに、又は、蠕動等の筋肉収縮をシミュレートするのに役立つ、組織収縮の引き起こしに用いることができる。
【0056】
下方チャンバー・ハーフ用の電極50は、2個のバー52を備えた冠状の主円形部51を有し、2個のバーは、主円形部51から突出して、下方に向かう。
【0057】
電極50は、円筒体41の上方に設けられ、主円形部51は、スライド42の外側で、下方チャンバー・ハーフの領域内に設けられる。2個のバー52の底部は、本体部11(下部拡大部24)から突出する。
【0058】
上方チャンバー・ハーフ用の電極55は、円形の冠状本体部56を有し、位置付けを容易にするための複数個のバー57と、これらのバーよりも長く、円形本体部から突出する電気接続用のバー58とを備える。
【0059】
電極55は、プラグ15に設けたハウジング内に置かれ、円形の冠状本体部56は、スライド22の外部でスライド22の下方に位置することにより、上方チャンバー・ハーフの領域内に位置付けられる。
【0060】
電極50及び55は、円形の冠状本体部を備えるので、中央に穴があり、光学的観察の邪魔にならない。
【0061】
各チャンバー・ハーフは、密閉隔離され、対をなす管体25及び26を通じてのみ、外部と連通する。上方及び下方チャンバー・ハーフ間の透過性は、膜36の種類により決まる。例えば、ポリカーボネート、PET、PVC、TEFLON、PDMS、セルロースアセテート、ポリエステル、又はナイロンであって、予め定められた気孔率を持つもので形成された膜を上方及び下方チャンバー・ハーフ間に設けることができる。
【0062】
セパレータ35の内側シール37は、円筒体41の外側側面と接触し、下方チャンバー・ハーフを、上部が膜36により、底部がスライド42により、側部がセパレータ35により画定された状態で密閉する。
【0063】
プラグ15の外側シール23は、穴40の内側側面と接触し、チャンバー・ハーフを、上部がスライド22により、底部が膜36により、側部がプラグ15の下方部材21又はセパレータ35により画定された状態で密閉する。
【0064】
円筒体41は、穴40から露出し、円筒体41の周囲に、プラグ15(下方部材21)とセパレータ35のベース部の双方にとって下方基準接触点として機能する円形の冠状形状をしたベース部45を構成する。
【0065】
したがって、プラグ15を開いて、セパレータ35を取り出した後、両者を再び挿入しなければならない場合、両者は、元の位置に正しく位置付けられることになる。
【0066】
チャンバーの灌流は、対をなす管体25及び26を通じて行われる。
【0067】
上方チャンバー・ハーフは、外側対の管体26を使用する。これらの管体は、本体部11の穴60内に固定され、ベース部45に至り、セパレータ35とプラグ15とが横並びになる線と一直線上に位置する。
【0068】
セパレータ35とプラグ15との間には、上方チャンバー・ハーフに達する通路が、予め設けられる。この通路は、プラグ15の内側側壁に予め設けられた1対の溝61で構成され、上方チャンバー・ハーフ内でのセパレータ35の挿入を促進する。各溝は、スライド22及び/又は電極55に到達するまで、その一部がプラグ15の上方内側壁上を延伸する。
【0069】
この流体通路は、プラグに接続され、プラグと一体化した金属管で構成するのが好ましく、本発明によるデバイスが、組み立て終えると、金属管は、密閉されて、好ましくは管体26の内側ルーメンに直接接触する。
【0070】
下方チャンバー・ハーフは、内側対の管体25を使用する。これらの管体は、セパレータ35の内壁に対して横並びになった状態で、穴65内に固定され、セパレータ35の外端とスライド42との間で貫通穴66に至る。
【0071】
電極50を設ける場合、電極は、穴66の箇所で面取り部67を持ち、灌流を可能にする。
【0072】
導電材料製の電極50及び55は、必要に応じて、本発明に係るデバイスに設けても設けなくてもよい。
【0073】
本発明に係る一実施形態では、本体部11は、大きさが25×68mmであり、各チャンバー・ハーフ(上方及び下方とも)は、平均直径が5乃至12mm(好ましくは、10mm)で、深さが0.3mm乃至1.8mm(好ましくは、上方チャンバー・ハーフについて、0.3mmであり、下方チャンバー・ハーフについては、1.8mm)である。この場合、膜36は、セパレータ35よりも上方に設けられる。本発明に係る細胞培養デバイス10は、不死化型(すなわち、培地で無制限に複製できるもの)と、初代型(すなわち、培地の複製が限定的又は不可能なもの)の双方の生体に由来する細胞の培養に、懸濁タイプと粘着タイプとを問わず、適切な高分子媒体又はマトリックスでの二次元培養又は三次元培養で、利用可能である。本発明に係る細胞培養デバイスは、薬剤等の化学分子を含む溶液又は細菌用の用途と共に、細胞由来の部分(例えば、細胞外小胞又は特定の細胞小器官)を培養するのにも適する。
【0074】
本発明に係る細胞培養デバイスは、1個のチャンバー・ハーフでの、腸内微生物のように、個別に培養又は共培養される、神経細胞、内皮細胞又は特定の細菌等の培養と、他のチャンバー・ハーフでの、星状細胞、血球、腸の内皮細胞等の培養とを組み合わせて、反応が、どのような生理的な又は病理的関連性を持つのかを分析するのにも利用できる。
【0075】
本発明の第1変形態様では、本発明に係る細胞培養デバイスは、単一のデバイスとして図示してあるが、先行技術のように、2個以上のデバイスを単一のシステムに組み込む形にしてもよい。
【0076】
この場合、単一のデバイス70は、実質的に円形の本体部71を有し、円形ディスクで構成された抜き取り可能なセパレータ72を備え、円形ディスクの底部には、膜73が固定され、これにより、円形の本体部71を2個のチャンバー・ハーフ、すなわち上方チャンバー・ハーフと下方チャンバー・ハーフとに分割する。円形の本体部71に組み込むと、セパレータ72は、円形の本体部71自体の設けた縁部に載る。
【0077】
灌流用流路74及び75は、円形の本体部71内に形成され、2個のチャンバー・ハーフと側部でアクセスでき、膜と平行である。接続管体(図示せず)を、灌流用流路74及び75に適用してもよい。
【0078】
細胞培養デバイス70は、単独で使用してもよいし、本発明に係る細胞培養デバイス10と組み合わせて使用してもよい。
【0079】
特に、細胞培養デバイス70では、チャンバー・ハーフに入れた細菌培養物を供給することができる。細胞培養デバイス70では、例えば、三次元細菌培養における腸内粘液に似た高分子マトリックスで細菌を混合できるデバイスにも接続可能な発酵槽又は適切な容器入れた細胞培養物を供給することもできる。こうして得られたセクレトーム、すなわち、得られた培養物によりできた分子群は、膜を通って、他方のチャンバー・ハーフに移動され、本発明による細胞培養デバイス10の1個以上のチャンバーに送られて、例示であって以下のものに限定されないが、腸内内皮、肝臓、免疫システム、血液脳関門、脳等の生理学的状態又は病理学的状態での特定の臓器分子、又は生物学的システムに生じる分子の衝撃を評価する。この場合、多孔質膜を分子切断とともに用いて、細胞ではなく物質が通過できるようにする(通常、細菌とセクレトームの間はで、0.1μmであり、細胞培養の宿主となる他方のチャンバー・ハーフについては、0.4μm)。
【0080】
本発明の第2変形態様では、下方チャンバー・ハーフの潅流は、下方から延びてくる、第2変形態様に係るデバイス内に設けられた管体82から、既に述べたようにして行われる。これに対して、上方チャンバー・ハーフの潅流は、プラグ84に設けた管体83を通じて行われる。両チャンバー・ハーフは、小型の円筒部材80により支持される膜81によって分離される。この円筒部材は、既に市販されているものでもよい。例えば、グライナー・バイオーワン・インターナショナル・ミット・ベシュレンクター・ハフトゥング製造の、半透明又は透明な膜を持つ、トランズウェル型細胞培養インサートと互換性があるチャンバーを使用してよい。
【0081】
本発明の第3変形態様では、下方チャンバー・ハーフの潅流は、細胞培養デバイスの下に設けられた管体91を用いて行われ、上方チャンバー・ハーフの潅流は、プラグに設けた管体83を通じて行われる。両チャンバー・ハーフは、膜93を支持するセパレータ92によって分離される。
【0082】
全ての部材は、合成樹脂製のエラストマ材料で形成され、合成樹脂材料の射出成形により、又は、工業的規模で実施できる他の製造方法により、製造されるようになっている。
【0083】
使用する寸法及び形状と共に、材料も、必要と技術水準に応じて種々のタイプのものとすることができる。例えば、チャンバー及び全ての接続部材は、円形として説明したが、チャンバー及び全ての接続部材は、正方形又は楕円形等の他の形状にされることを妨げない。
【0084】
もう一つの実施形態として考えられるのは、細胞培養デバイスが、複数個のチャンバーを備え、細胞培養のバイオ分野で市販され、既に使用されているホスト・インサートと膜に分割できる構造である。複数個のチャンバーの下方部と上方部の双方は、市販のインサートと相互作用して十分な液圧的シーリングが確保できる適切なガスケット(例えば、Oリング)を備えて、上述した流路の形状と細胞培養デバイス同士の組合せに応じて、膜の両側を潅流できるようにする。これら個々のチャンバーには、潅流流体により加わる圧力でチャンバーの分割を防ぐのに適する、スクリュ又はその他の機械的手段を通じての接続も備える。これら個々のチャンバーは、細胞培養デバイスの他の実施形態について既に述べたように光学的に内部状況を観察可能である。これら個々のチャンバーは、複数個のチャンバーを含めることができ、各チャンバー内への光学的な観察を通じて潅流された培養物を検査するのに適した、顕微鏡に収容できる、適切なハウジング内に設けられる。これら個々のチャンバーは、他の実施形態に関して記載したように、複数個の電極を収容でき、直列及び並列配置の双方において、互いに、又は、他のミリ又はマイクロ流体デバイスに容易に接続することもできる。
【0085】
このような細胞培養デバイスは、種々の変形及び変更が可能であるが、これら変形及び変更は、本発明の要旨の範囲内に入る。さらに、個々の部材は、技術的に等価な部材により置換可能である。
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