(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】連続亜鉛めっきラインにおける生産をスケジューリングするための方法
(51)【国際特許分類】
C23C 2/00 20060101AFI20240913BHJP
C21D 9/56 20060101ALI20240913BHJP
C21D 11/00 20060101ALI20240913BHJP
C23C 2/02 20060101ALI20240913BHJP
C23C 2/06 20060101ALI20240913BHJP
C23C 2/20 20060101ALI20240913BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20240913BHJP
C22C 18/00 20060101ALN20240913BHJP
C22C 18/04 20060101ALN20240913BHJP
C22C 21/02 20060101ALN20240913BHJP
C22C 21/10 20060101ALN20240913BHJP
【FI】
C23C2/00
C21D9/56 101C
C21D11/00 105
C23C2/02
C23C2/06
C23C2/20
C23C2/40
C22C18/00
C22C18/04
C22C21/02
C22C21/10
(21)【出願番号】P 2022527116
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(86)【国際出願番号】 IB2020060459
(87)【国際公開番号】W WO2021094883
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/059691
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディアス・フィダルゴ,ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス・アルスエタ,シルビーノ
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス・ガルシア,セグンド
(72)【発明者】
【氏名】メンデス・エレス,ダビド
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-183044(JP,A)
【文献】特開2013-008268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0155204(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0175713(US,A1)
【文献】国際公開第2019/012002(WO,A1)
【文献】特開2014-028394(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104376424(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00 - 2/40
C21D 9/52 - 11/00
G05B 15/00 - 15/02
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニーリング炉と、亜鉛ポットと、ワイピング機とを含む連続亜鉛めっきライン上の金属ストリップの複数の亜鉛めっきコイルの生産スケジュールを設定するための方法であって、
亜鉛めっきされる各未めっきコイルを定義する複数の特性と、各亜鉛めっきコイルについて満たされるべき複数の仕様と、
前記複数の特性に基づいて各亜鉛めっきコイルの
前記複数の仕様を満たすのに必要な複数のプロセスパラメータと、
生産される各亜鉛めっきについての複数のライン制約とを収集するステップ(100)、
2つの未めっきコイルのあり得る各組合せについて、
前記複数のプロセスパラメータのうち少なくとも以下の2つのパラメータセット、
アニーリング炉内の金属ストリップの温度T
Pおよび速度Sの調整、
ワイピング媒体の圧力Pおよび亜鉛ポットの出口における金属ストリップからのワイピング機の距離Dの調整
に関して、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が亜鉛めっきコイルの品質に与える影響を評価するステップ(110)、
各パラメータセットに関する、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響に、重み係数を関連付け、少なくとも2つのパラメータセットに関連付けられた重み係数の合計または行列に基づいて、前のステップ(110)の結果に依存し、
前記複数のライン制約を考慮に入れた重みファクタを、未めっきコイルのあり得る各組合せに割り当てるステップ(120)、
複数の未めっきコイルのいくつかの可能なスケジュールについて、所与のスケジュールに関与する未めっきコイルの組合せに関連付けられた重みファクタの合計に依存するスコアを算出することによって、および、
前記いくつかの可能なスケジュールについて算出されたスコアのうち最適スコアを有するスケジュールを選択することによって、前のステップ(120)の結果を計算するステップ(130)
を含む、方法。
【請求項2】
各未めっきコイルを定義する複数の特性が、厚さと、鋼グレードと、力学的特性と、幅と、硬度とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各亜鉛めっきコイルについて満たされるべき複数の仕様が、亜鉛めっき量と、亜鉛めっき量許容差と、調質圧延の実行と、調質圧延時に達せられるべき伸張とを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各亜鉛めっきコイルの仕様を満たすのに必要な複数のプロセスパラメータが、アニーリング炉における目標温度と、アニーリング炉における温度許容差と、ライン速度と、アニーリング炉におけるライン速度許容差と、ワイピング圧力Pと、ワイピング距離Dと、調質圧延の張力および荷重とを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
複数のライン制約が、ラインの最大能力と、ラインオペレータによって許されていない移行とを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
収集ステップにおいて、データが手作業で収集されるか、または既存のデータベースから取得されるか、または計算される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
収集するステップが、複数のプロセスパラメータの少なくとも一部が経験的および/または物理的および/または統計的法則または式から計算されるモデリングサブステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
2つの未めっきコイルの可能な各組について、アニーリング炉におけるバンド温度および速度の調整に、2つのコイルの温度許容差の差および/または2つのコイルの速度許容差の差に基づく重み係数が関連付けられる、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
未めっきコイルのあり得る各組合せに割り当てられる重みファクタが、パラメータセットに関連付けられた重み係数の合計である、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
連続亜鉛めっきラインが、調質圧延をさらに含み、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響が、調質圧延の張力T
Sおよび荷重Fの調整に関してさらに評価される、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
2つの未めっきコイルのあり得る各組合せについて、調質圧延の張力T
Sおよび荷重Fの調整に、ライン速度と、1つの張力から別の張力への移行および/または1つの圧力から別の圧力への移行に要する時間とに依存する重み係数が関連付けられる、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
連続亜鉛めっきラインが、エントリーアキュムレータをさらに含み、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響が、エントリーアキュムレータおよび/またはアニーリング炉における張力の調整に関してさらに評価される、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
連続亜鉛めっきラインがテンションレベラーをさらに含み、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響が、テンションレベラーにおける張力の調整に関してさらに評価される、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
連続亜鉛めっきラインがガルバニーリング炉をさらに含み、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響が、ガルバニーリング炉における加熱力の調整に関してさらに評価される、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
連続亜鉛めっきラインが、亜鉛めっきコイルに油を塗布するように構成された注油機をさらに含み、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響が、注油機における油の品質および/または油の性質の調整に関してさらに評価される、請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
複数の未めっきコイルの所与のスケジュールについて算出されるスコアが、スケジュールを構成する未めっきコイルの組合せに関連付けられた重みファクタの合計である、請求項1から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
複数の未めっきコイルの所与のスケジュールについて算出されるスコアが、スケジュールを構成する未めっきコイルの組合せに関連付けられた重みファクタの合計に加えてシーケンス重み項を含む、請求項1から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
最適スコアを有するスケジュールを表示し、それを手動または自動で修正するステップ(140)、
修正されたスケジュールのスコアを計算するステップ(150)
をさらに含む、請求項1から
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
プロセッサによって実行されると、請求項1から
18のいずれか一項に記載の方法を実施するソフトウェア命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項20】
アニーリング炉と、亜鉛ポットと、ワイピング機とを含む連続亜鉛めっきライン上の金属ストリップの複数の亜鉛めっきコイルの生産スケジュールを設定するための電子スケジューリングデバイス(1)であって、電子モニタリングデバイスが、
亜鉛めっきされる各未めっきコイルを定義する複数の特性と、各亜鉛めっきコイルについて満たされるべき複数の仕様と、
前記複数の特性に基づいて各亜鉛めっきコイルの
前記複数の仕様を満たすのに必要な複数のプロセスパラメータと、
生産される各亜鉛めっきについての複数のライン制約とを収集するために構成された獲得モジュール(2)、
2つの未めっきコイルのあり得る各組合せについて、
前記複数のプロセスパラメータのうち以下の少なくとも2つのパラメータセット、
アニーリング炉における金属ストリップの温度T
Pおよび速度Sの調整、
ワイピング媒体の圧力Pおよび亜鉛ポットの出口における金属ストリップからのワイピング機の距離Dの調整
に関して、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響を評価するために、
各パラメータセットに関する、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響に、重み係数を関連付けるために、および
少なくとも2つのパラメータセットに関連付けられた重み係数の合計または行列に基づいて、影響評価の結果に依存し、
前記複数のライン制約を考慮に入れた重みファクタを、未めっきコイルのあり得る各組合せに割り当てるために構成された割り当てモジュール(4)、
複数の未めっきコイルのいくつかの可能なスケジュールについて、所与のスケジュールに関与する未めっきコイルの組合せに関連付けられた重みファクタの合計に依存するスコアを算出することによって、および、
前記いくつかの可能なスケジュールについて算出されたスコアのうち最適スコアを有するスケジュールを選択することによって、割り当てモジュールにおいて得られた結果を計算するために構成された計算モジュール(5)
を含む、電子スケジューリングデバイス。
【請求項21】
計算モジュールにおいて選択されたスケジュールの閲覧を提供するために、および選択されたモジュールの検証または手動もしくは自動調整を可能にするために構成された検証モジュール(6)をさらに含む、請求項
20に記載の電子スケジューリングデバイス。
【請求項22】
複数の亜鉛めっきコイルを供給するための設備であって、
複数の亜鉛めっきコイルを生産するための連続亜鉛めっきライン、
複数の亜鉛めっきコイルの生産スケジュールを設定するための電子スケジューリングデバイス
を含み、電子スケジューリングデバイスが請求項
20または
21のいずれか一項に記載の電子スケジューリングデバイスである、設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続亜鉛めっきラインにおける亜鉛めっきコイルの生産をスケジューリングするための方法に関し、スケジューリング方法は好ましくは電子スケジューリングデバイスによって実装される。
【0002】
本発明は、プロセッサによって実行されると上記のようなスケジューリング方法を実施するソフトウェア命令を含むコンピュータプログラムにも関する。
【0003】
本発明は、連続亜鉛めっきラインにおける亜鉛めっきコイルの生産をスケジューリングするための電子スケジューリングデバイスにも関する。
【0004】
本発明は、亜鉛めっきコイルを供給するための設備にも関し、設備は亜鉛めっきコイルを生産するための連続亜鉛めっきラインと、上記のような電子スケジューリングデバイスとを含む。
【背景技術】
【0005】
亜鉛めっきラインは、亜鉛または亜鉛合金の層で鋼ストリップの表面を被覆することが知られている。概略的に言うと、鋼コイルがライン入口において展開され、炉内でアニールされ、溶融亜鉛の槽に浸漬され、再度コイル状に巻かれる。このプロセスを連続的にするため、各コイルの後端部が後続のコイルの先端部に結合される。ラインの観点から見ると、原材料は、幅、厚さ、断面、グレード、などの特徴がストリップ全長に沿って異なる複合ストリップである。
【0006】
同様に、仕上がり製品は、亜鉛厚さ、粗さ、仮保護などの最終的特性がストリップ全長に沿って異なる複合ストリップである。
【0007】
したがって、鋼ストリップの特徴の変化を考慮に入れ、鋼ストリップのこの部分の技術仕様を満たすために、亜鉛めっきラインのプロセスパラメータを定期的に調整する必要がある。
【0008】
プロセスパラメータの新たな目標に達するにはある程度の時間を要するため、鋼ストリップの一定の長さが技術仕様から外れる場合があり、その結果として廃棄されるかまたは二次選択として販売されなければならなくなる。鋼ストリップの一定の長さが、亜鉛過剰被覆、油汚損、表面欠陥などの欠陥を示すこともある。
【0009】
また、2つの連続コイル間の相違が困難を生じさせることがある。たとえば、きわめて異なるグレードの2つのコイルを溶接するのは困難であり得、コイルのより広い先端部がラインの要素に衝突する可能性があり、2つのコイルの断面がきわめて異なるときに張力を適応化させるのが困難な場合がある。
【0010】
最悪の場合、2つの連続するコイル間の相違は、特にアニーリング炉内でストリップが破断する可能性があるほど重大である。その場合、炉が冷却するまでラインを停止してからでなければ鋼ストリップを取り除けない。その後、生産が再開される前に再び炉が加熱される。
【0011】
亜鉛めっきされる裸コイルの順序を慎重に選択することによって、廃棄されるストリップの長さと、欠陥の発生および重大度と、ストリップ破断の発生とを制限する移行を選択することができる。
【0012】
オペレータの専門知識に基づいて生産を手作業でスケジューリングすることが知られているが、それでも移行コイル、すなわち互いに適合性を持たせるために2つのコイル間に顧客オーダーなしに挿入される小さいコイルを、定期的に使用する必要が生じる。これはラインの生産性を低下させ、動作の複雑さを増大させる。
【0013】
また、いくつかの製品変数(幅、厚さ、亜鉛めっき量など)に応じて移行をできる限り円滑にするコイルのシーケンスを見つけることを目的とする市販ソフトウェアを使用することも知られている。所与の製品変数に応じた各種類の移行が任意のペナルティまたはボーナスを得る。たとえば、2つのコイル間で亜鉛めっき量の差が大きい程、ペナルティが大きくなる。すべてのペナルティとボーナスが加算され、総合スコアが最小にされる必要がある。残念ながら、1つの製品変数に応じて移行を円滑にすることは、別の製品変数に応じて移行を円滑にすることと両立しないことが多く、所与の製品変数に応じた移行がプロセスのいくつかのステップに異なる影響を与える可能性がある。また、ペナルティ/ボーナス手法は、製品の混在の変動に適応化されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、コイル間の移行時に処理されるストリップの品質を向上させ、ライン生産性を向上させ、動作の複雑さを低減する、複数の亜鉛めっきコイルの生産のスケジューリングのための方法を提供することによって、従来技術の上記の欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明の第1の主題は、アニーリング炉と、亜鉛ポットと、ワイピング機とを含む連続亜鉛めっきライン上の金属ストリップの複数の亜鉛めっきコイルの生産スケジュールを設定するための方法であって、
- 亜鉛めっきされる各未めっきコイルを定義する複数の特性と、各亜鉛めっきコイルについて満たされるべき複数の仕様と、各亜鉛めっきコイルの仕様を満たすのに必要な複数のプロセスパラメータと、複数のライン制約とを収集するステップ、
- 2つの未めっきコイルのあり得る各組合せについて、少なくとも以下の2つのパラメータセット:
・ アニーリング炉内の金属ストリップの温度TPおよび速度Sの調整、
・ ワイピング媒体の圧力Pおよび亜鉛ポットの出口における金属ストリップからのワイピング機の距離Dの調整
に関して、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が亜鉛めっきコイルの品質に与える影響を評価するステップ、
- 前のステップの結果に依存し、ライン制約を考慮に入れた重みファクタを、未めっきコイルのあり得る各組合せに割り当てるステップ、
- 複数の未めっきコイルのいくつかの可能なスケジュールについて、所与のスケジュールに関与する未めっきコイルの組合せに関連付けられた重みファクタの合計に依存するスコアを算出することによって、および最適スコアを有するスケジュールを選択することによって、前のステップの結果を計算するステップ
を含む、方法からなる。
【0016】
本発明による方法は、個別にまたは組み合わせて考えられる以下に列挙する任意選択による特徴も有し得る:
- 各未めっきコイルを定義する複数の特性が、厚さと、鋼グレードと、力学的特性と、幅と、硬度とを含む、
- 各亜鉛めっきコイルについて満たされるべき複数の仕様が、亜鉛めっき量と、亜鉛めっき量許容差と、調質圧延の実行と、調質圧延時に達せられるべき伸張とを含む、
- 各亜鉛めっきコイルの仕様を満たすのに必要な複数のプロセスパラメータが、アニーリング炉における目標温度と、アニーリング炉における温度許容差と、ライン速度と、アニーリング炉におけるライン速度許容差と、ワイピング圧力Pと、ワイピング距離Dと、調質圧延の張力および荷重とを含む、
- 複数のライン制約が、ラインの最大能力と、ラインオペレータによって許されていない移行とを含む、
- 収集ステップにおいて、データが手作業で収集されるか、または既存のデータベースから取得されるか、または計算される、
- 収集ステップが、複数のプロセスパラメータのうちの少なくとも一部が経験的および/または物理的および/または統計的法則または式から計算されるモデリングサブステップを含む、
- 1つのパラメータセットに関する、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響に、重み係数が関連付けられる、
- 2つの未めっきコイルのあり得る各組合せについて、アニーリング炉におけるバンド温度および速度の調整に、2つのコイルの温度許容差の差、および/または、2つのコイルの速度許容差の差に依存する重み係数が関連付けられる、
- 未めっきコイルのあり得る各組合せに割り当てられる重みファクタが、パラメータセットに関連付けられる重み係数の合計である、
- 連続亜鉛めっきラインが調質圧延をさらに含み、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響が調質圧延の張力TSおよび荷重Fの調整に関してさらに評価される、
- 2つの未めっきコイルのあり得る各組合せについて、調質圧延の張力TSおよび荷重Fの調整に、ライン速度と、1つの張力から別の張力および/または1つの圧力から別の圧力への移行に要する時間とに依存する重み係数が関連付けられる、
- 連続亜鉛めっきラインがエントリーアキュムレータ(entry accumulator)をさらに含み、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響が、エントリーアキュムレータおよび/またはアニーリング炉における張力の調整に関してさらに評価される、
- 連続亜鉛めっきラインがテンションレベラーをさらに含み、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響が、テンションレベラーにおける張力の調整に関してさらに評価される、
- 連続亜鉛めっきラインがガルバニーリング炉を含み、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響が、ガルバニーリング炉における加熱力の調整に関してさらに評価される、
- 連続亜鉛めっきラインが亜鉛めっきコイルに油を塗布するように構成された注油機をさらに含み、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響が、注油機における油の品質および/または油の性質の調整に関してさらに評価される、
- 連続亜鉛めっきラインが亜鉛めっきコイルに不動態化被覆を施すように構成された化学処理セクションをさらに含み、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響が、不動態化プロセス調整に関してさらに評価される、
- 複数の未めっきコイルの所与のスケジュールについて算出されるスコアが、そのスケジュールを構成する未めっきコイルの組合せに関連付けられる重みファクタの合計である、
- 複数の未めっきコイルの所与のスケジュールについて算出されるスコアが、そのスケジュールを構成する未めっきコイルの組合せに関連付けられる重みファクタの合計に加えてシーケンス重み項を含む、
- 方法は、
・ 最適スコアを有するスケジュールを表示し、それを手動または自動で変更するステップ、
・ 変更されたスケジュールのスコアを計算するステップ
をさらに含む。
【0017】
本発明の第2の主題は、プロセッサによって実行されると本発明による方法を実施するソフトウェア命令を含むコンピュータプログラムからなる。
【0018】
本発明の第3の主題は、アニーリング炉と、亜鉛ポットと、ワイピング機とを含む連続亜鉛めっきライン上の金属ストリップの複数の亜鉛めっきコイルの生産スケジュールを設定するための電子スケジューリングデバイスであって、電子モニタリングデバイスが:
- 亜鉛めっきされる各未めっきコイルを定義する複数の特性と、各亜鉛めっきコイルについて満たされるべき複数の仕様と、各亜鉛めっきコイルの仕様を満たすのに必要な複数のプロセスパラメータと、複数のライン制約とを収集するために構成された獲得モジュール、
- 2つの未めっきコイルのあり得る各組合せについて、少なくとも以下の2つのパラメータセット:
・ アニーリング炉における金属ストリップの温度TPおよび速度Sの調整、
・ ワイピング媒体の圧力Pおよび亜鉛ポットの出口における金属ストリップからのワイピング機の距離Dの調整
に関して、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響を評価するために、
および影響評価の結果に依存し、ライン制約を考慮に入れた重みファクタを、未めっきコイルのあり得る各組合せに割り当てるために構成された割り当てモジュール、
- 複数の未めっきコイルのいくつかの可能なスケジュールについて、所与のスケジュールに関与する未めっきコイルの組合せに関連付けられた重みファクタの合計に依存するスコアを算出することによって、および最適スコアを有するスケジュールを選択することによって、割り当てモジュールにおいて得られた結果を計算するために構成された計算モジュール
を含む、電子スケジューリングデバイスからなる。
【0019】
本発明による電子スケジューリングデバイスは、任意選択により、計算モジュールにおいて選択されたスケジュールの閲覧を提供するために、および選択されたモジュールの検証または手動もしくは自動調整を可能にするために構成された検証モジュールを含んでもよい。
【0020】
本発明の第4の主題は、複数の亜鉛めっきコイルを供給するための設備であって:
- 複数の亜鉛めっきコイルを生産するための連続亜鉛めっきライン、
- 複数の亜鉛めっきコイルの生産スケジュールを設定するための電子スケジューリングデバイス
を含み、
電子スケジューリングデバイスが本発明による電子スケジューリングデバイスである、設備からなる。
【0021】
本発明は、単に説明を目的として示し、いかなる点でも制限的であることを意図していない以下の説明を、以下の図面を参照しながら読めばよりよく理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】電子スケジューリングデバイスを示す概略図である。
【
図2】本発明による、連続亜鉛めっきラインにおける複数の亜鉛めっきコイルの生産のスケジューリングのための方法であって、本スケジューリング方法は
図1の電子スケジューリングデバイスによって実施される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による連続亜鉛めっきラインは、少なくともアニーリング炉と、亜鉛ポットと、ワイピング機とを含む。「亜鉛ポット」とは、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、マグネシウムなどの溶融金属元素の槽を意味する。槽の構成に応じて、たとえば、亜鉛めっき鋼と、アルミニウムを5wt.%含む亜鉛合金で被覆された鋼(Galfan(R))と、アルミニウムを55wt.%、ケイ素を約1.5wt.%含み、残りが亜鉛と加工に起因する不可避の不純物とからなる亜鉛合金で被覆された鋼(Aluzinc(R)、Galvalume(R))と、ケイ素を8wt.%から11wt.%と鉄を2wt.%から4wt.%含み、残りがアルミニウムと加工に起因する不可避の不純物からなるアルミニウム合金で被覆された鋼(Alusi(R))と、アルミニウムの層で被覆された鋼(Alupur(R))と、アルミニウムを0.5%から20%、マグネシウムを0.5%から10%含み、残りが亜鉛と加工に起因する不可避の不純物からなる亜鉛合金で被覆された鋼とを生産することが可能である。他の元素も鋼ストリップに施される金属被覆の一部であり得ること、さらには亜鉛が含まれなくてもよいこととを承知した上で、本説明の残りの部分では亜鉛についてのみ言及することとする。
【0024】
連続亜鉛めっきラインは、以下のデバイス:溶接機、エントリーアキュムレータ、冷却塔、調質圧延部、注油機、サイドトリマー、化学処理セクション、ガルバニーリング炉のうちの少なくとも1つを追加で含み得る。
【0025】
この方法の最初のステップ100は、代表データと総称する、各亜鉛めっきコイルを生産するために使用される各未めっきコイルを定義する複数の特性と、各亜鉛めっきコイルについて満たすべき複数の仕様と、各亜鉛めっきコイルの仕様を満たすのに必要な複数のプロセスパラメータと、複数のライン制約とを収集することを含む。
【0026】
未めっきコイルに関しては、収集される特性は亜鉛めっきラインにおいて加工される鋼ストリップの固有特性である。固有特性の例には、特に、鋼グレード、鋼基板の化学的性質、鋼基板の力学的特性、ストリップ幅、ストリップ断面、ストリップ厚さ、ストリップ長、コイル重量、鋼硬度が含まれる。
【0027】
好ましい一実施形態によれば、各未めっきコイルを定義する複数の特性は、厚さと、鋼グレードと、力学的特性と、幅と、硬度とを含む。
【0028】
亜鉛めっきコイルに関しては、仕様は、特に、亜鉛めっきコイルの力学的特性と、塗布される亜鉛めっきの量と、亜鉛めっき量許容差と、亜鉛めっきの表面外見と、調質圧延の実行と、調質圧延時に達せられるべき伸張と、調質圧延における伸張許容差と、調質圧延後の粗さと、調質圧延における粗さ許容差と、調質圧延後の化学処理の実行と、亜鉛めっき鋼ストリップにおける平坦度目標と、テンションレベラー機における平坦度許容差と、油の種類と、不動態化の種類と、調質圧延後の熱処理の実行と、熱処理された亜鉛めっき内の鉄含有量と、顧客によって要求される品質のレベルとである。
【0029】
好ましい一実施形態によれば、各亜鉛めっきコイルの満たされるべき複数の仕様は、亜鉛めっき量と、亜鉛めっき量許容差と、調質圧延の実行と、調質圧延時に達せられるべき伸張とを含む。
【0030】
仕様を満たすために必要なプロセスパラメータの例は、特に、アニーリング炉における熱サイクルと、アニーリング炉における目標温度および温度許容差と、アニーリング炉における目標速度および速度許容差と、ワイピング圧力と、ワイピング距離と、ライン速度と、調質圧延荷重と、調質圧延張力と、ガリングバニーリング炉における加熱力目標および加熱許容差である。
【0031】
好ましい一実施形態によれば、各亜鉛めっきコイルの仕様を満たすのに必要な複数のプロセスパラメータは、アニーリング炉における目標温度と、アニーリング炉における温度許容差と、ライン速度と、アニーリング炉におけるライン速度許容差と、ワイピング圧力Pと、ワイピング距離Dと、調質圧延の張力および荷重とを含む。
【0032】
ライン制約に関しては、特に、溶接機の溶接能力と、エントリーストリップアキュムレータの長さと、最大ライン速度と、最大ライン加速度と、アニーリング炉の長さと、最大炉管温度と、ワイピング機のワイピング圧力の最大変化速度と、ワイピング機のワイピング距離の最大変化速度と、調質圧延荷重の最大調整速度と、ライン製造業者によって指定されたストリップ幅、厚さおよび/または断面において許容される最大変化と、1件のオーダーのすべてのコイルをグループ化する義務と、アニーリング炉における望ましくない設定および許されていない移行を回避するために特定のコイルをグループ化する義務となど、ラインの最大能力を含み得る。許されていない移行とは、何らかの理由により困難過ぎる移行と、ラインオペレータが禁止することに決めた移行である。許されていない移行の例は、特に、めっき量範囲が重なり合わない移行、速度範囲が重なり合わない移行、アニーリング許容差が重なり合わない移行、第2のコイルが第1のコイルより250mm超広く、両方の厚さが1mm未満である移行、互いに溶接不可能な2つの鋼グレード間の移行、調質圧延で加えられる荷重の急増が200Tを超える移行、可視自動車部品として使用される製品のための幅拡大、すなわち、幅がより広いコイルへの移行、移行コイルなしで行うことができない移行である。
【0033】
この方法の最初のステップでは、代表データ、すなわち複数の特性/仕様/プロセスパラメータ/ライン制約を、手作業で収集または既存のデータベースから取得、さらには計算することも可能である。具体的には、所与の仕様を満たすために必要なプロセスパラメータは、新たな複数の未めっきコイルをスケジュールする必要があるたびに最初から新規に取得しなくても済むように、既存のデータベースから取得することができる。プロセスパラメータは、値もしくは範囲の形態で、または、プロセスパラメータを仕様および/または未めっき製品特性にリンクさせる経験的および/または物理的および/または統計的法則または式の形態で予め設定可能である。好ましくは、最初のステップで、スケジュールされる複数の未めっきコイルの仕様に関連する複数のプロセスパラメータが、すべての事前設定プロセスパラメータの中から選択される。同様に、ライン制約は、好ましくは既存のデータベースから取得される。好ましくは、ライン制約は、スケジュール中に生産されるべき亜鉛めっきコイルの種類、たとえばガルバニール(GA)製品、亜鉛めっき(GI)製品、ガルバリウム(GU)製品、自動車用露出外面(EXP)、二相(DP)製品、熱延(HR)初期製品などに関するライン制約の事前設定された組合せである稼働モードを選択することによって取得される。
【0034】
一実施形態によれば、最初のステップは、複数のプロセスパラメータのうちの少なくとも一部が、プロセスパラメータを仕様および/または未めっき製品特性にリンクさせる経験的および/または物理的および/または統計的法則または式を使用して計算されるモデリングサブステップ101を含む。好ましくは、各コイルの目標速度が適宜計算される。
【0035】
この方法の2番目のステップ110で、2つの未めっきコイルのあり得る各組合せについて、選択されたプロセスパラメータセットに関して、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響が評価される。2つの未めっきコイルの所与の組合せの評価時に、選択された各パラメータセットに関して重み係数が関連付けられる。「2つの未めっきコイルのあり得る各組合せ」と言う場合、2つのコイルAとBについて、組合せABが組合せBAとは異なることに留意されたい。
【0036】
本発明人らは、利用可能な数十のプロセスパラメータのうちのどのプロセスパラメータが、1つのコイルから後続のコイルに移行するときに製品品質に影響を与えるかを評価するために、広範な調査研究を行った。
【0037】
1つのコイルから別のコイルに移行するとき、アニーリング炉の熱サイクルを適応化させる必要がある場合がある。この調整時、炉内のストリップの部分と炉に導入された部分とが、目標範囲外のピークメタル温度に達することがある。その場合、これらの部分は廃棄されなければならない可能性がある。移行に関与するコイルの厚さに応じて、2つのコイル間の移行においていくつかの可能性がある:
- 両方のコイルの厚さが、ラインを最高ストリップ速度で稼働させ、炉を所与のアニーリングサイクルの間、最高管温度で稼働させるストリップ厚さと定義される、アニーリング炉の臨界厚さよりも厚い。その場合、ラインは最高管温度で稼働し、移行を管理するためにライン速度を調整する必要がある。
【0038】
- 両方のコイルの厚さが臨界厚さよりも薄い。その場合、ラインは最高速度で稼働し、移行を管理するために管温度を適応化させる必要がある。
【0039】
- 一方のコイルが臨界厚さよりも厚く、第2のコイルが臨界厚さより薄い。その場合、移行を管理するためにライン速度と管温度の両方を適応化させる必要がある。
【0040】
移行の影響を評価するステップで、2つの未めっきコイルのあり得る各組合せの厚さおよび/または鋼グレードおよび/または力学的特性および/または幅の相違が、アニーリング炉内の金属ストリップのバンド温度TPおよび/または速度Sの調整がどのように製品品質に影響を与えるかの評価をトリガーする。温度および/または速度の調整には、2つのコイルの温度許容差の差、および/または、2つのコイルの速度許容差の差に依存し得る重み係数が関連付けられ得る。
【0041】
一実施形態によれば、アニーリング炉内の温度および/または速度の調整が製品品質にどのように影響を与えるかの評価は、アニーリング炉の数値モデルから数値シミュレーションによって得られる。
【0042】
1つのコイルから別のコイルに移行するとき、亜鉛ポットの出口におけるワイピング条件を適応化させる必要がある場合がある。この調整時、ストリップのワイピング機を通過する部分が被覆不足となるかまたは過剰被覆される。その場合、その部分が破棄されるかまたはコイルが再加工されなければならない場合がある。品質管理の点から見たライン制約に応じて、2つのコイル間の移行においていくつかの可能性がある:
- 移行タイプ1:両方のコイルの目標最小めっき量が満たされるように、ワイピング媒体の圧力Pと、ワイピング機と鋼ストリップとの間の距離Dとが制御される。より高いめっき量範囲に移行するとき、第1のコイルの後端部の過剰被覆を示唆する。より低いめっき量範囲への移行のとき、次のコイルの先端部の過剰被覆を示唆する。最善でも、この移行タイプは亜鉛の過剰消費を生じさせる。さらに、2つのコイルのめっき量範囲が重なり合わないとき、第1のコイルまたは第2のコイルいずれかの一部が仕様から外れ、したがって廃棄されるかコイルが再加工される必要がある。
【0043】
- 移行タイプ2:ワイピング機の圧力Pと距離Dとが第2のコイルの先端部で規則的に適応化される。この移行タイプは、より小さい被覆範囲に移行するときに亜鉛の過剰消費を生じさせ、場合によっては第2のコイルの先端部が仕様から外れる。第2のコイルの先端部が廃棄されなければならない場合がある。この移行タイプは、より大きい被覆範囲に移行するときに亜鉛被覆不足も生じさせる。したがって、第2のコイルの先端部が廃棄されるかまたはコイルが再加工される必要がある。
【0044】
- 同様に、特に厚さおよび/または鋼グレードおよび/または力学的特性および/または幅の相違のために2つのコイルが異なるライン速度で処理される必要がある場合、速度調整の結果としてワイピング条件調整時にワイピング機を通過する鋼ストリップの部分が、仕様から外れる可能性がある。
【0045】
移行の影響を評価するステップで、2つの未めっきコイルの各組合せのめっき量および/またはライン速度の相違が、ワイピング媒体の圧力Pと、亜鉛ポットの出口におけるストリップからのワイピング機の距離Dとの調整がどのように製品品質に影響を与えるかの評価をトリガーし、圧力Pと距離Dの調整に重み係数が関連付けられ得る。
【0046】
ライン制約に応じて、重み係数は特に下記のいずれかに依存し得る:
- 第2のコイルの最小めっき量許容差と第1のコイルのめっき量目標との差、または、
- 第1のコイルのめっき量目標と第2のコイルの最大めっき量許容差との差、または、
- 比((第2のコイルの最小めっき量許容差-第1のコイルのめっき量目標)/(第2のコイルのめっき量目標-第1のコイルのめっき量目標))、または
- 比((第1のコイルのめっき量目標-第2のコイルの最大めっき量許容差)/(第2のコイルのめっき量目標-第1のコイルのめっき量目標))。
【0047】
1つのコイルから別のコイルに移行するとき、調質圧延が開かれるかまたは閉じられる場合があり、あるいは調質圧延の張力および荷重が適応化される必要がある場合がある。この調整時、調質圧延を通過する鋼ストリップの部分が伸張仕様から外れる可能性があり、および/またはしわができる可能性があり、および/または耳伸びを示す可能性があり、または破断する可能性さえある。その場合、この部分が廃棄されるかまたはコイルが再加工される必要がある。
【0048】
本発明の一変形態様では、移行の影響を評価するステップで、2つの未めっきコイルの各組合せの鋼グレードおよび/または力学的特性および/または硬度および/または伸張目標の相違、または2つのコイルのうちの一方について調質圧延がないことが、調質圧延の張力TSおよび荷重Fの調整が製品品質にどのように影響を与えるかの評価をトリガーし、張力および荷重の調整に重み係数が関連付けられ得る。
【0049】
ライン制約に応じて、重み係数は特に下記に依存し得る:
- ライン速度と、1つの張力から別の張力および/または1つの圧力から別の圧力への移行に要する時間。各製品変数の動作範囲と調質圧延の能力とを知っている当業者は、この移行時間を容易に推定することができる。
- あるいは、コイルの一部が仕様から外れる確率。1つの張力から別の張力および/または1つの圧力から別の圧力への移行に要する平均時間を知っている当業者は、この確率を容易に推定することができる。
【0050】
亜鉛めっきラインのエントリーセクションにおいて異なる幅の2つのコイルを結合するとき、サイドストリーマーに幅の変化を通知するために、溶接後に任意選択により切り欠きが形成される。幅の差が大きい場合、実現されるのにより時間を要する二重切り欠きが形成される。これを行うために要する追加の時間がエントリールーパーにおけるストリップ堆積の残り時間を超える場合、ラインは停止されなければならず、アニーリング炉と調質圧延との間に位置するストリップの部分が廃棄されなければならない。
【0051】
本発明の一変形態様では、移行の影響を評価するステップで、2つの未めっきコイルの各組合せの幅の差が、切り欠き形成時間が製品品質にどのように影響を与えるかの評価をトリガーする。切り欠き形成時間には、2つのコイルを溶接し、切り欠き形成するのに要する時間がエントリールーパーにおけるストリップ堆積の時間を超える確率に依存し得る重み係数が関連付けられる。検討中の亜鉛めっきラインでの溶接と切り欠き形成に要する平均時間を知っている当業者は、この確率を容易に計算することができる。
【0052】
第1のコイルの後端部が第2のコイルの先端部に溶接された後は、コイルのこれら2つの部分が一緒にラインの様々な装置を通って駆動される。各装置には所定のストリップ張力が設定されるため、その装置は第1のコイルの張力要件と第2のコイルの張力要件の両方には対応しない場合があり、両者はコイルの断面に依存する。2つのコイルの断面の相違が重大である場合、コイルのうちの一方のコイルのための適切な張力が、他方のコイルには著しく高過ぎる場合があり、ストリップ破断を生じさせ得る。
【0053】
本発明の一変形態様では、移行の影響を評価するステップで、2つの未めっきコイルの各組合せの断面の相違が、エントリーアキュムレータにおけるストリップ張力の調整が製品品質にどのように影響を与えるかの評価をトリガーし、エントリーアキュムレータにおけるストリップ張力の調整に重み係数が関連付けられる。この重み係数は、たとえばエントリーアキュムレータにおける破断の確率に依存し得る。両方のコイルと溶接部に適用可能な最大ソリシテーション(solicitation)を知っている当業者は、この確率を容易に計算することができる。
【0054】
同様に、アニーリング炉におけるストリップ張力の調整には、たとえばアニーリング炉における破断の確率に依存し得る重み係数が関連付けられ得る。
【0055】
調質圧延の出口において、ストリップはその平坦度を向上させるために、任意選択によりテンションレベラーを通過することができる。1つのコイルから別のコイルに移行するとき、テンションレベラーが開かれるか閉じられる場合があり、またはテンションレベラーの張力が適応化される必要がある場合がある。この調整時、テンションレベラーを通るストリップの部分が伸張仕様から外れる場合があり、および/または縁部の緩みを示す場合がある。その場合、その部分が廃棄されるかまたはコイルが再加工される必要がある。
【0056】
本発明の一変形態様では、移行の影響を評価するステップで、2つの未めっきコイルの各組合せの厚さおよび/または鋼グレード、または第1のコイルのテンションレベリングがないことが、テンションレベラーにおける張力の調整が製品品質にどのように影響を与えるかの評価をトリガーし、張力調整には重み係数が関連付けられる。
【0057】
ライン制約に応じて、重み係数は下記に依存し得る:
- ライン速度と、1つの張力から別の張力への移行に要する時間。各製品変数の動作範囲とテンションレベラーの能力とを知っている当業者は、この移行時間を容易に計算することができる。
【0058】
- あるいは、コイルの一部が仕様から外れる確率。1つの張力から別の張力への移行に要する平均時間を知っている当業者は、この確率を容易に計算することができる。
【0059】
ストリップに施される金属被覆は、ガルバニーリング被覆を得るために任意選択によりアニールされてもよい。1つのコイルから別のコイルに移行するとき、特に、厚さおよび/または鋼グレードおよび/または力学的特性および/または幅の相違の結果として生じる化学的性質の変化またはライン速度の変化のために、ガルバニーリング炉の加熱力が適応化される必要がある場合がある。この調整時、ガルバニーリング面を通過するストリップの部分が光輝面またはパウダリングを示す場合がある。
【0060】
本発明の一変形態様では、移行の影響を評価するステップで、2つの未めっきコイルの各組合せのライン速度および/または鋼基板の化学的性質の相違、または2つのコイルのうちの一方のガルバニーリングの必要が、ガルバニーリング炉における加熱力の調整が製品品質にどのように影響を与えるかの評価をトリガーし、加熱力調整に重み係数が関連付けられる。この重み係数は、たとえば、炉の出口において、またはラインの終端においてのみのいずれかで欠陥を検出するラインの能力に依存し得る。
【0061】
ラインの出口において、ストリップの腐食耐性および引き抜き性を向上させるために、任意選択により注油機においてストリップが注油されてもよい。1つのコイルから別のコイルに移行するとき、注油機がオンまたはオフにされる場合があり、あるいは油の種類および/または油の量が変更される必要がある場合がある。この調整時、ストリップの一部が特に多すぎる油を受ける可能性があり、それによってコイルが工場内(in the yard)で倒壊につながる可能性がある。その場合、コイルは再加工されなければならない。ストリップの一部が、注油されずに乾燥したままとなる可能性もある。その場合、その部分は廃棄されなければならない。
【0062】
本発明の一変形態様では、移行の影響を評価するステップで、2つの未めっきコイルの各組合せの油の性質または油被覆量の相違、あるいは2つのコイルのうちの一方への注油の必要性が、油の品質および/または油の性質の調整が製品品質にどのように影響を与えるかの評価をトリガーし、その油調整に重み係数が関連付けられる。この重み係数は、たとえばこの欠陥を生じさせる確率に依存し得る。
【0063】
ラインの出口において、ストリップの腐食耐性とストリップの引き抜き性を向上させるために、ストリップは化学処理セクションで任意選択により不動態化されてもよい。1つのコイルから別のコイルに移行するとき、化学処理セクションが顕著にオンまたはオフされる場合がある。この動作時に、ストリップの一部が適正な不動態化被覆量を受けない場合があり、または乾燥したままとされる代わりに不動態化される場合がある。その場合、その部分は廃棄されなければならない。
【0064】
本発明の一変形態様では、移行の影響を評価するステップで、2つのコイルのうちの一方の不動態化の必要が、不動態化プロセス調整が製品品質にどのように影響を与えるかの評価をトリガーし、その調整に重み係数が関連付けられる。この重み係数は、たとえばこの欠陥を生じさせる確率に依存し得る。
【0065】
上述の原理は、該当するプロセスパラメータセットおよびそれらが依存する対応する特性がスケジューリング方法の第1のステップの前に選択されるように、特に亜鉛めっきラインのレイアウト、ラインが処理する製品、またはラインの特定の制約に応じて亜鉛めっきラインごとに適応させることができる。
【0066】
ただし、すべての亜鉛めっきラインが、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響の評価が、少なくとも下記のセットを含むプロセスパラメータセットの集合に関して行われるという点で共通していることが観察された:
- アニーリング炉内の金属ストリップの温度TPと速度Sの調整、
- ワイピング媒体の圧力Pと、亜鉛ポットの出口における金属ストリップからのワイピング機の距離Dの調整。
【0067】
定義されたパラメータセットに関して2つの未めっきコイル間の移行の影響が評価され、各パラメータセットに関して重み係数が関連付けられた後は、これらの2つのコイルの組合せに、各パラメータセットに関して関連付けられた重み係数に依存する重みファクタが関連付けられる。その際に、検討中の移行に関連するライン制約が考慮に入れられ、すなわち、2つのコイル間の移行がライン制約のうちの少なくとも1つに違反している場合には重みファクタが調整される。
【0068】
好ましくは、すべてのライン制約を順守する移行には、個々の重み係数の合計である重みファクタが関連付けられる。別の変形態様によれば、すべてのライン制約を順守する移行には、個々の重み係数の行列の形態の重みファクタが関連付けられる。
【0069】
ライン制約のうちの少なくとも1つに違反する移行、特に、許されていない移行には、好ましくはその違反の重大度に基づくペナルティが関連付けられる。好ましくは、そのような移行には、個々の重み係数の合計に加算される値の形態、または二次重みファクタの形態のペナルティが関連付けられる。ペナルティは、各違反の重大度に依存する個々のペナルティの合計であってもよい。別の変形態様によれば、そのような移行には個々のペナルティの行列の形態のペナルティが関連付けられる。
【0070】
「重みファクタ」という用語は、重みファクタと二次重みファクタとの可能な組合せと、個々の重み係数の行列と個々のペナルティの行列の可能な組合せとを含むものと理解されたい。
【0071】
未めっきコイルのあり得る各組合せに重みファクタが割り当てられた後は、検討中の複数の未めっきコイルの最適化されたスケジュールを得るために、その結果が計算される。概略的に言うと、この計算は、一定時間内の未めっきコイルの可能なスケジュールの可能最大数について、スケジュールに関与する組合せに関連付けられた重みファクタの合計に依存するスコアを計算し、重み係数が製品品質にどのように関係するかに応じて最小スコアまたは最高スコアとすることができる最適スコアを選択することによって行われる。好ましくは、最適スコアは最小スコアである。膨大な数の可能なスケジュールがある可能性があり、結論に至るまでの時間が限られているため、解は近似されてもよい。言い換えると、アルゴリズムが、考慮したスケジュールのうちで最低のスコアを有するスケジュールを選択してもよい。計算は、好ましくは有名な巡回セールスマン問題を解くように開発または構成されたアルゴリズムに基づいて行われる。本事例において、セールスマンが訪問する都市は、スケジュールされるコイルであり、都市の各対間の距離はコイルの各対に関連付けられる重みファクタである。ヘルド-カープアルゴリズム、分枝限定アルゴリズムなど、この問題を解くための多数のアルゴリズムが開発されており、本発明の範囲で使用可能である。妥当な時間枠内で目下の問題を解くのに十分な近似解を生成することを目的とするヒューリスティックおよびメタヒューリスティックアルゴリズも使用可能である。このようなアルゴリズムの例は、最近傍アルゴリズム、Match twice and Stitch(MTS)、クリストファイズのアルゴリズム、Pairwise Exchanage、リン-カーニハンヒューリスティクス、可変オプト(Variable-opt)法、最適化マルコフ連鎖、タブ検索アルゴリズム、蟻コロニー最適化などである。
【0072】
この計算において、アルゴリズムは好ましくは、構築中のシーケンスにおける次の候補として、構築中のシーケンスの最後のコイルとの重みファクタがペナルティを含む未めっきコイルを選択しない。それが実現不可能な場合、アルゴリズムは好ましくは構築中のシーケンスの最後のコイルとの重みファクタが最低ペナルティを有する未めっきコイルを選択する。同様に、アルゴリズムは好ましくは、許されていない移行なしに、したがって移行コイルなしに複数の未めっきコイルをスケジュールすることができない場合を除き、許されていない移行を含むスケジュールを選択しない。
【0073】
一実施形態によれば、スコアはスケジュールを構成する組合せに関連付けられた重みファクタの合計である。
【0074】
別の実施形態によれば、スコアは、シーケンス全体または部分シーケンスに関係し、スケジュールがわかった後またはスケジュールの作成中にのみ計算可能なシーケンス重み項を、重みファクタの合計に加えて、含む。
【0075】
一実施形態によれば、スコアは、亜鉛ポット内に浸漬されたロール上の生じ得る堆積に関係するシーケンス重み項を含む。より幅広のコイルに移行する場合、すなわち幅拡大の場合、ポットロール上の生じ得る堆積は線状欠陥を生じさせる可能性がある。その場合、一定の長さの鋼ストリップが廃棄されるかまたは二次選択として販売されなければならない。この欠陥を生じさせる確率は、幅拡大前に亜鉛ポット内に浸漬されているより狭いコイルの数に依存する。したがって、幅拡大を含むスケジュールについては、より幅広のコイルへの各移行には、幅拡大前に亜鉛ポット内に浸漬されているより狭いコイルの数に依存し得る重み項が関連付けられ、対応するシーケンス重み項は、より幅広のコイルへの移行に関連付けられた重み項の合計である。
【0076】
一実施形態によれば、スコアは、調質圧延ロール上に生じ得る傷に関係するシーケンス重み項を含む。より幅広のコイルに移行するとき、前のコイルの縁によってロール上にできる可能性がある傷は、線状欠陥を生じさせることがある。その場合、一定の長さの鋼ストリップが廃棄されるかまたは二次選択として販売されなければならない。この欠陥を生じさせる確率は、幅拡大前に調質圧延されるより狭いコイルの数に依存する。したがって、幅拡大を含むスケジュールについては、より幅広のコイルへの各移行に、幅拡大前に調質圧延されるより狭いコイルの数に依存し得る重み項が関連付けられ、対応するシーケンス重み項は、より幅広のコイルへの移行に関連付けられた重み項の合計である。
【0077】
一実施形態によれば、スコアは、化学処理セクションにおける不動態化ロール上に生じ得る傷に関係するシーケンス重み項を含む。より幅広のコイルに移行するとき、前のコイルの縁によってロール上にできる可能性がある傷が線状欠陥を生じさせることがある。その場合、一定の長さの鋼ストリップが廃棄されるかまたは二次選択として販売されなければならない。この欠陥を生じさせる確率は、幅拡大の前に不動態化されるより狭いコイルの数に依存する。したがって、幅拡大を含むスケジュールについては、より幅広のコイルへの各移行に、幅拡大前に不動態化されるより狭いコイルの数に依存し得る重み項が関連付けられ、対応するシーケンス重み項は、より幅広のコイルへの移行に関連付けられた重み項の合計である。
【0078】
アルゴリズムが終了した後は、アルゴリズムによって検討されたスケジュールのうちの最低スコアを示すスケジュールが、検証または調整のためにラインオペレータに示される。この調整は任意であり、ラインオペレータによってラインオペレータの専門知識に基づいて行われる。スケジュールの調整は、2つのコイルを交換すること、または、互いに適合しない2つのコイルの間に移行コイルまたは在庫にある利用可能なコイルを挿入し、スケジューリングを待つことを含み得る。これは手動で行われてもよく、またはオペレータの要求で自動的に行われてもよい。コイルが交換される場合、その交換が製品品質に与える好影響が評価され得るように、変更されたスケジュールのスコアが再計算されてもよい。
【0079】
図1に示すように、このスケジューリング方法は、好ましくは電子スケジューリングデバイス1によって実施される。
【0080】
電子スケジューリングデバイス1は、代表データと総称する、亜鉛めっきされる各未めっきコイルを定義する複数の特性と、各亜鉛めっきコイルについて満たされるべき複数の仕様と、各亜鉛めっきコイルの仕様を満たすのに必要な複数のプロセスパラメータと、複数のライン制約とを収集するために構成された、獲得モジュール2を含む。
【0081】
一実施形態によれば、獲得モジュール2は、プロセスパラメータを仕様および/または未めっき製品特性にリンクさせる経験的および/または物理的および/または統計的法則または式から複数のパラメータの少なくとも一部を計算するために構成された、モデリングサブモジュール3を含む。
【0082】
「モデリング」という用語は、パラメータを決定するための経験的および/または物理的および/または統計的法則または式の使用を指す。これは、コンピュータ上でのシミュレーション実行などの数値シミュレーションも指す場合がある。
【0083】
電子スケジューリングデバイス1は、2つの未めっきコイルのあり得る各組合せについて、選択されたパラメータセットに関して第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響を評価するために、および未めっきコイルのあり得る各組合せに、影響評価の結果に依存し、ライン制約を考慮に入れた重みファクタを割り当てるために構成された、割り当てモジュール4をさらに含む。
【0084】
電子スケジューリングデバイス1は、割り当てモジュールにおいて得られた結果を計算するために、および検討したスケジュールのうちで最低のスコアを有するスケジュールを選択するために構成された、計算モジュール5をさらに含む。
【0085】
好ましい一実施形態では、電子スケジューリングデバイス1は、計算モジュールにおいて選択されたスケジュールの閲覧を提供するために、および提案されたスケジュールの検証または調整を可能にするために構成された、検証モジュール6を含む。コイルが交換される場合、交換が製品品質に与える好影響を評価することができるように、変更されたスケジュールのスコアが計算モジュール5において再計算されてもよい。
【0086】
図1の例では、電子スケジューリングデバイス1は、たとえばメモリ8と、メモリに結合されたプロセッサ9とから形成される処理ユニット7を含む。電子モニタリングデバイスは、それぞれが処理ユニットに接続された、ディスプレイ画面10と、キーボードおよびマウスなどの入力/出力手段11とをも含み得る。
【0087】
この実施形態では、獲得モジュール2と、割り当てモジュール4と、計算モジュール5と、好ましい実施形態における検証モジュール6とは、たとえばそれぞれ、プロセッサまたはプロセッサのグループ(以下ではプロセッサと呼ぶ)9によって実行可能なソフトウェアとして実現、すなわち実装される。処理ユニット7のメモリ8は、亜鉛めっきされる各未めっきコイルを定義する複数の特性と、各亜鉛めっきコイルについて満たされるべき複数の仕様と、各亜鉛めっきコイルの仕様を満たすために必要な複数のプロセスパラメータと、複数のライン制約とを収集するために構成された獲得ソフトウェアと;2つの未めっきコイルのあり得る各組合せについて、少なくとも下記2つのパラメータセット:
- アニーリング炉におけるストリップのバンド温度TPおよび速度Sの調整、
- ストリップが亜鉛ポットの出口にある状態でのワイピング媒体の圧力Pとワイピング機の距離Dの調整
に関して、第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響を評価するために、および未めっきコイルのあり得る各組合せに、影響評価の結果に依存し、ライン制約を考慮に入れた重みファクタを割り当てるために構成された割り当てソフトウェアと;複数の未めっきコイルの可能なスケジュールについて、その所与のスケジュールに関与する未めっきコイルの組合せに関連付けられた重みファクタの合計に依存するスコアを計算することと、最適スコアを有するスケジュールを選択することとによって、割り当てモジュールにおいて得られた結果を計算するために構成された計算ソフトウェアとを記憶するように構成される。好ましい一実施形態では、処理ユニット7のメモリ8は、計算モジュールにおいて選択されたスケジュールの閲覧を提供するために、および選択されたスケジュールの検証またはその手動調整を可能にするために構成された検証ソフトウェアを記憶するようになされる。
【0088】
次に、処理ユニット7のプロセッサ9は、取得ソフトウェアと、割り当てソフトウェアと、計算ソフトウェアと、好ましい実施形態における検証ソフトウェアとを実行するように構成される。
【0089】
電子スケジューリングデバイス1が1つ以上のソフトウェアプログラムの形態、すなわちコンピュータプログラムの形態であるとき、コンピュータ可読媒体に記録することもできる。コンピュータ可読媒体は、たとえば、電子命令を記憶することができ、コンピュータシステムのバスに結合可能な媒体である。たとえば、可読媒体は光ディスク、磁気光ディスク、ROMメモリ、RAMメモリ、任意の種類の不揮発性メモリ(たとえばEPROM、EEPROM、フラッシュ、NVRAM)、磁気カードまたは光カードである。その場合、ソフトウェア命令を有するコンピュータプログラムが可読媒体に記憶される。
【0090】
次に、本発明による電子スケジューリングデバイス1の動作について、連続亜鉛めっきライン上の複数の亜鉛めっきコイルの生産をスケジューリングするための本発明による方法のフローチャートを表す
図2を参照しながらここで説明する。
【0091】
まず、ステップ100で、電子スケジューリングデバイス1はその獲得モジュール2を介して、亜鉛めっきされる各未めっきコイルを定義する複数の特性と、各亜鉛めっきコイルについて満たされるべき複数の仕様と、各亜鉛めっきコイルの仕様を満たすために必要な複数のプロセスパラメータと、複数のライン制約とを獲得する。
【0092】
好ましい一実施形態では、所与の仕様を満たすのに必要なプロセスパラメータは、新たな複数の未めっきコイルがスケジュールされる必要があるたびに最初から新規に獲得しなくてもよいように、獲得モジュールによるアクセスが可能な既存のデータベースに記憶されるか、または獲得モジュールに事前設定される。プロセスパラメータは、値または範囲の形態で、あるいは、プロセスパラメータを仕様および/または未めっき製品特性にリンクさせる経験的および/または物理的および/または統計的法則または式の形態で、記憶または事前設定可能である。好ましくは、獲得モジュールは、事前設定されたすべてのプロセスパラメータの中から、スケジュールされる複数の未めっきコイルの仕様に関係するプロセスパラメータを選択する。同様に、ライン制約が、好ましくは、獲得モジュールによるアクセスが可能な既存のデータベースに記憶されるか、または獲得モジュールに事前設定される。より好ましくは、ライン制約は、稼働モードと呼ばれる、スケジュール中に生産される亜鉛めっきコイルの種類に関係するライン制約の事前設定された組合せの形態で記憶される。
【0093】
任意選択により、モデリングサブステップ101で、獲得モジュール2がそのモデリングサブモジュール3を介して、プロセスパラメータを仕様および/または未めっき製品特性にリンクさせる経験的および/または物理的および/または統計的法則または式から、複数のプロセスパラメータのうちの少なくとも一部を計算またはモデリングする。
【0094】
次のステップ110で、電子スケジューリングデバイス1は、その割り当てモジュール4を介して、2つの未めっきコイルのあり得る各組合せについて、少なくとも下記2つのパラメータセットに関して第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響を評価する:
・ アニーリング炉における金属ストリップのバンド温度TPと速度Sの調整、
・ ワイピング媒体の圧力Pと、亜鉛ポットの出口における金属ストリップからのワイピング機の距離Dの調整。
【0095】
前述のように、2つの未めっきコイルのあり得る各組合せについて、収集された特性に依存する重み係数が各パラメータセットに関連付けられる。
【0096】
任意選択により、ステップ110で、割り当てモジュール4が、他のパラメータセットに関して第1の未めっきコイルから第2の未めっきコイルへの移行が製品品質に与える影響を評価することができる。
【0097】
次のステップ120で、電子スケジューリングデバイス1は、その割り当てモジュール4を介して、未めっきコイルのあり得る各組合せに、前のステップ110の結果に依存し、ライン制約を考慮に入れた重みファクタを割り当てる。
【0098】
前述のように、未めっきコイルのあり得る各組合せに、各パラメータセットに関して関連付けられた重み係数に依存する重みファクタが関連付けられる。
【0099】
次のステップ130で、電子スケジューリングデバイス1は、その計算モジュール5を介して、未めっきコイルのいくつかの可能なスケジュールについて、具体的には一定時間内の未めっきコイルの可能な最大数の可能なスケジュールについて、そのスケジュールに関与する組合せに関連付けられた重みファクタの合計に依存するスコアを算出することによって、さらに、検討されたスケジュールのうちの最低スコアを有するスケジュールを選択することによって、割り当てモジュール4において得られた結果を計算する。可能なスケジュールの数は、場合によってはスケジューリングデバイスに入力された、所与の数とすることができるか、または単純に、選択されたスケジュールを表示するために計算モジュールに与えられた時間の結果によるものであってもよい。この算出は、通常、数百の可能なスケジュールについて行われる。
【0100】
前述のように、計算は好ましくは、巡回セールスマン問題を解くために開発されたアルゴリズム、またはそれから適応化されたアルゴリズムに基づいて行われる。
【0101】
任意選択により、次のステップ140で、電子スケジューリングデバイス1は、その検証モジュール6を介して、提案スケジュールの検証または調整のために、計算モジュールで選択されたスケジュールを表示する。ラインオペレータによってスケジュールが妥当であると検証された場合、このスケジューリング方法は終了する。
【0102】
それ以外の場合、スケジュールは手動により、または自動的に修正され、スケジューリング方法は次のステップ150に進み、修正が製品品質に与える好影響を評価することができるように、電子スケジューリングデバイス1がその計算モジュール5を介して、修正されたスケジュールのスコアを計算する。スコアが再計算された後、スケジューリング方法はステップ140に戻り、電子スケジューリングデバイス1はその検証モジュール6を介して、最初に計算モジュールにおいて選択されたスケジュールと、修正されたスケジュールとを表示する。ラインオペレータは、2つのスケジュールの一方が妥当であると検証するか、または修正されたスケジュールに追加の手動調整を加えることができる。
【0103】
以上、本発明を個々のコイルのスケジューリングについて説明した。しかし、この方法は、各オーダーが複数のコイルを含む複数のオーダーの生産スケジュールを設定することも対象として含む。一変形態様によれば、各オーダーのすべてのコイルが同じである。その場合、各オーダーは一般コイルとして識別される。したがって、上記で定義した「金属ストリップの複数の亜鉛めっきコイル」は、すべての一般コイルで構成される。1つのコイルから別のコイルへの移行の影響を評価するときと、計算するときとに、一般コイルの組合せが考慮される。別の変形態様によれば、各オーダーのすべてのコイルが同じとは限らない。その場合、各オーダーはその最初のコイルと、その最後のコイルとによって定義可能である。したがって上記で定義した「金属ストリップの複数の亜鉛めっきコイル」は、各オーダーのすべての最初のコイルと最後のコイルで構成され得る。その場合、第1のオーダーの最後のコイルと第2のオーダーの最初のコイルとの組合せのみが可能であり、1つのコイルから別のコイルへの移行が与える影響を評価するときと、計算するときとに考慮される。
【0104】
比較シミュレーションが行われ、本発明による方法がコイル間の移行時に処理されるストリップの品質を向上させることを示した。
【0105】
シミュレーションは、3つの既存の亜鉛めっきライン上でスケジュールされ、処理される未めっきコイルの連続に基づく。従来技術により(すなわち、所与の製品変数に従って移行の各種類に任意のペナルティまたはボーナスを関連付けることによって)スケジュールされた連続は品質損失を生じさせ、この品質損失が測定され、定量化された。同じ連続が、本発明による方法を使用して再スケジュールされた。従来技術によるスケジューリングを使用して得られた品質損失との比較を容易にするために、計算の結果が品質損失に変換された。
【0106】
表1は、3つの亜鉛めっきライン各々のために選択されたパラメータセットを詳細に示す。
【0107】
表2は、従来技術によるスケジューリング(「参照品質損失」)と本発明によるスケジューリング(「最適化品質損失」)の両方で得られた結果を詳細に示す。改善ファクタは、参照品質損失と最適化品質損失との比で定義されている。
【0108】
3つの亜鉛めっきラインすべてについて、亜鉛ポット内に浸漬されたロール上の亜鉛堆積と調質圧延ロールの傷とに関係するシーケンス重み項が考慮された。
【0109】
ライン3について、不動態化ロールの傷に関係するシーケンス重み項も考慮された。
【0110】
表2に詳細に示されている結果から明らかなように、本発明によるスケジューリング方法は品質損失を大幅に減少させる。
【0111】
【0112】