(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】基板上に材料を堆積させる方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20240913BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240913BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240913BHJP
【FI】
C23C14/34 C
H01M4/139
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2022528178
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(86)【国際出願番号】 GB2020052894
(87)【国際公開番号】W WO2021094770
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-06-30
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エドワード レンダル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート イアン ジョセフ グルアー
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-186581(JP,A)
【文献】国際公開第2011/131921(WO,A1)
【文献】特開昭49-101273(JP,A)
【文献】特開2003-007291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0048157(US,A1)
【文献】菊地直人ほか,スパッタリング成膜における薄膜構造制御,真空,Vol. 50, No. 1,2007年,pp.15-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H01M 4/00-4/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に材料を堆積させる方法であって、
プラズマスパッタリングに適した二以上のスパッタターゲットから離れたプラズマを発生させることであって、二以上のターゲットの少なくとも一つの異なる領域が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属含有化合物、アルカリ土類金属含有化合物又はそれらの組み合わせを含むことと、
二以上のターゲットにプラズマを閉じ込めることと、
閉じ込められたプラズマを使用して、二以上のターゲットからスパッタされた材料を発生させることと、
基板上にスパッタされた材料を堆積させることであって、ターゲットと基板の間の作動距離が、系の理論的な平均自由行程の+/-50%以内であることと、
ドラム上で基板を移動させることであって、ドラムが回転中心を有することと、
二以上のターゲットを、回転中心の周りでドラムの角速度よりも遅い角速度で移動させることと、
を含み、
前記二以上のターゲットが、第一のターゲット及び第二のターゲットを備え、第一のターゲットが、各第二のターゲットに対して曲げられている、基板上に材料を堆積させる方法。
【請求項2】
作動距離が、系の平均自由行程よりも短い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
材料を堆積させるときに、アルカリ金属含有化合物又はアルカリ土類金属含有化合物が、結晶材料として生じる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アルカリ金属含有化合物又はアルカリ土類金属含有化合物が、層状酸化物材料の形態をとる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
堆積のエネルギーが基板に損傷を与えるか、又はアルカリ金属含有化合物若しくはアルカリ土類金属含有化合物の構成元素の好ましくない酸化物状態の形成を引き起こす作動距離によって定義される下限よりも作動距離が長い、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
作動距離が、5cmよりも長い、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
作動距離が、層状酸化物構造が生じない作動距離によって定義される下限よりも長い、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
作動距離が、8cmから9cmの間である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
プロセスが堆積チャンバー内で起こり、作動圧力が遠隔プラズマの点火前のチャンバー圧力として定義され、堆積プロセスを通して前記作動圧力が実質的に一定値であって、前記値が0.00065mBarと1e
-2mBarの間である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
スパッタリングが、スパッタガスのイオンの衝突によって引き起こされ、前記スパッタガスのチャンバーへの流量が、堆積プロセスを通して実質的に一定値であって、前記値が5sccmから100sccmの間である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
作動圧力が、基板の損傷又は基板の軟化が起こる作動圧力によって定義される上限よりも低い、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
作動圧力が、0.0010mBarと0.0065mBarの間であり得る、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
作動圧力が、層状酸化物構造が生じない作動圧力によって定義される下限よりも高い、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
作動圧力が、4.5e
-3mBarよりも高い、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
形成される膜の結晶サイズが、8nmから65nmの間である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
結晶サイズの範囲が、膜にわたる平均結晶サイズの2標準偏差を超えない、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
基板に材料を堆積させるスパッタ堆積技術を使用するステップは、材料を堆積させる表面とは反対の表面上で測定して、1秒間の平均を取った、面積が1cm
2の基板材料の任意の所与の正方形で到達する最高温度が、どの時点でも、200℃未満であるような温度で実行される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
堆積速度が、4Ås
-1よりも大きい、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
層状酸化物材料の堆積のために構成される遠隔プラズマ堆積システムの最適な作動距離を決定する方法であって、
作動距離の範囲を選択することであって、前記範囲内の作動距離が、系の理論的な平均自由行程の+/-50%であることと、
多数の試験試料について、選択した範囲内の異なる作動距離で、請求項4から18のいずれかによる方法を、各試料に対して実行することと、
堆積が起こった後に、各試験試料で層状酸化物構造の特有の性質を決定できる特性評価技術を実行することと、
前記特有の性質がある試料を識別することと、
それらの試料から前記特有の性質を最も強く示す試料を選択し、続いて、前記試験試料の堆積の間に使用された作動距離に対する系の作動距離を選択することと、を含む、層状酸化物材料の堆積のために構成される遠隔プラズマ堆積システムの最適な作動距離を決定する方法。
【請求項20】
層状酸化物材料の堆積のために構成される遠隔プラズマ堆積システムの最適な作動距離を決定する方法であって、
作動距離の範囲を選択することであって、前記範囲内の作動距離が、系の理論的な平均自由行程の+/-50%であることと、
多数の試験試料について、選択した範囲内の異なる作動距離で、請求項4から18のいずれかによる方法を各試料に対して実行することと、
堆積が起こった後、各試験試料でX線回折を実行することと、
層状酸化物構造の特性を示す回折ピークが存在する試料を識別することと、
それらの試料から(正規化された)前記特性ピークの強度が最も高い試料を選択し、続いて、前記試験試料の堆積の間に使用された作動距離に対する系の作動距離を選択することと、を含む、層状酸化物材料の堆積のために構成される遠隔プラズマ堆積システムの最適な作動距離を決定する方法。
【請求項21】
システムを操作するために最適な作動距離の範囲を見いだせるように、任意で方法を多数回実行し得る、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
層状酸化物材料の堆積のために構成される遠隔プラズマ堆積システムの作動圧力の最適な範囲を決定する方法であって、
0.00065mBarと1.0e
-2mBarの間で、作動圧力の初期範囲を選択することと、
多数の試験試料について、選択した範囲内の異なる作動圧力で、請求項4から18のいずれかによる方法を各試料に対して実行することと、
堆積が起こった後、各試験試料で特性評価技術を実行することと、
層状酸化物材料の特有の特徴を示す試験試料のグループから、最も低い作動圧力で堆積させた試験試料を選択し、この作動圧力を範囲の下限として設定することと、
観測可能な基板への損傷の兆候を示さない試験試料のグループから、最も高い作動圧力で堆積させた試験試料を選択し、この作動圧力を範囲の上限として設定することと、を含む、層状酸化物材料の堆積のために構成される遠隔プラズマ堆積システムの作動圧力の最適な範囲を決定する方法。
【請求項23】
使用される特性評価技術がX線回折を含み、特有の特徴が、層状酸化物材料の特性X線回折ピークを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
方法の試験試料が多数の試験試料についての平均値を含み、請求項4から18のいずれかによる方法が、同一の作動圧力又は作動距離で多数回実行されており、平均値がとられている、請求項19から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
最適な作動圧力の範囲内で、系の最適な作動圧力を選択することをさらに含み、最適な作動圧力が、最も高い堆積速度をもたらす最適な作動圧力の範囲内の作動圧力である、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
電池を製造する方法であって、方法が請求項1から25のいずれかを含む、電池を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上への材料の堆積に関する。より具体的には、限定されないが、この発明は、基板上に材料を堆積させる方法に関する。また、この発明は、遠隔プラズマ堆積システムのための最適な作動距離及び/又は最適な作動圧力を決定する方法、電池を製造する方法及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ堆積を使用する材料の堆積は、当業者によく知られている。特定の環境において、そのような堆積の制御は困難な場合があり、基板上に堆積させる材料が必要とされる性質及び/又は構造を有することを保証するために、堆積条件の最適化が望まれる。本発明は、上記の問題を軽減しようとするものである。代わりに又は加えて、本発明は、材料を堆積させる方法の向上を提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、プラズマスパッタリング技術を用いた材料を堆積させる方法に関係する。
【0004】
より具体的には、本開示は、プラズマスパッタリング技術を用いた材料の堆積方法に関係し、プラズマは、スパッタされる材料から離れて生成される。
【0005】
本発明の第一の態様に基づくと、基板上に材料を堆積させる方法が提供され、該方法は、
プラズマスパッタリングに適した一つの又は複数のプラズマターゲットから離れたプラズマを発生させることであって、一つ又は複数のターゲットの少なくとも一つの異なる領域が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属含有化合物、アルカリ土類金属含有化合物又はそれらの組み合わせを含むことと、
一つ又は複数のプラズマターゲットをプラズマに曝し、それによって一つ又は複数のターゲットから材料をスパッタすることと、
基板上にスパッタされた材料を堆積させることであって、ターゲットと基板の間の作動距離が、系の理論的な平均自由行程の+/-50%以内であることと、を含む。
【0006】
理論に拘束されることを望むものではないが、作動距離は、基板に堆積させるときのスパッタされた材料の「吸着原子」エネルギーに影響を与えると考えられている。作動距離が系の平均自由行程よりも長い場合、基板に到達する前にスパッタフラックス中のイオンが衝突する可能性が高くなり、比較的低い吸着原子エネルギーになると考えられる。反対に、作動距離が系の平均自由行程よりも短い場合、吸着原子エネルギーは、比較的高くなる。
【0007】
平均自由行程の定義は、プラズマ中のイオンの衝突から衝突までの平均距離である。平均自由行程は、(作動距離により変化する)相互作用体積と(作動圧力により変化する)単位体積当たりの分子の数に基づいて計算される。
【0008】
作動距離は、任意で系の理論的な平均自由行程の50%から150%、任意で系の理論的な平均自由行程の70%から120%、任意で系の理論的な平均自由行程の80%から100%である。
【0009】
作動距離は、任意で3.0cm以上、任意で4.0cm以上、任意で5.0cm以上、任意で6.0cm以上、任意で7.0cm以上、及び任意で8.0cm以上である。作動距離は、任意で20cm以下、任意で15cm以下、任意で13cm以下、任意で12.0cm以下、任意で10.0cm以下、及び任意で9.0cm以下である。ターゲットと基板の間の作動距離は、任意で3.0cmから20.0cm、任意で4.0cmから15.0cm、任意で5.0cmから13.0cm、任意で6.0cmから12.0cm、任意で7.0cmから10.0cm、及び任意で8.0cmから9.0cmである。
【0010】
作動距離は、スパッタされた材料の平均自由行程よりも短くてもよい。
【0011】
理論に拘束されることを望むものではないが、作動距離が短すぎると、スパッタされた材料のエネルギーが、基板を変形又は損傷させるほど高くなり得る。このような高エネルギーのスパッタフレックスは、スパッタフレックス中のプラズマ誘起誘導によって、好ましくない高エネルギーの酸化物状態の形成も引き起こす可能性がある。望ましくは、作動距離は、基板の損傷及び/又は好ましくない酸化物状態の形成が観測されるときにより定義される下限よりも長い。
【0012】
作動距離は、3.0cmから20.0cmであってもよい。
【0013】
作動距離は、5.0cmから15cmであってもよい。この範囲内であると、膜で生じる望ましくない酸化化合物が少なく、吸着原子エネルギーが比較的高いままで材料が堆積され得る。
【0014】
作動距離は、6.0cmから14.0cmであってもよい。作動距離は、7.0cmから13.0cmであってもよい。
【0015】
作動距離は、8.0cmから12.0cmであってもよい。この範囲内であると、結晶材料が、一次結晶子プレートレットで生じ、特に層状酸化物材料が生じる。
【0016】
作動距離は、8.0cmから9.0cmであってもよい。この範囲内であると、より高い比率の結晶材料が、層状酸化物構造になる。
【0017】
作動圧力は、遠隔プラズマの点火前のチャンバー圧力と定義してもよい。作動圧力は、堆積プロセスを通して一定であってもよく、又はターゲットが抜かれるのに伴ってわずかに変動してもよいし、堆積中にターゲットが消耗するのに伴ってわずかに変動してもよい
。
【0018】
出願人は、直接基板に材料の結晶膜を形成することが可能であることを見いだした。「直接」が意味するところは、膜が、実質的にアニールステップなしで結晶膜を形成するということである。他のものではアニールステップを必要とする高エネルギー結晶構造を形成する材料であっても、これが当てはまることが示されている。この方法は、幅広い基板材料に効果的であることが示されている。
【0019】
遠隔プラズマシステムにおいて、プラズマはプラズマターゲットから離れて生成される。従来のプラズマ堆積において、プラズマを生成し、且つ、維持するのは、ターゲットのバイアスである。遠隔プラズマ堆積システムでは、プラズマが他の場所で発生し、次に様々な電場及び/又は磁場によってターゲットに向かう。ターゲットのバイアスは、スパッタリング速度の制御を可能にする。
【0020】
堆積させた材料は、結晶性であってもよい。堆積させた材料の少なくとも一部及び任意で堆積させた材料の全体が、六方晶の結晶構造を有してもよい。堆積させた材料の少なくとも一部及び任意で堆積させた材料の全体が、結晶「層状酸化物」構造を有してもよい。そのような「層状酸化物」構造は、固体電池を製造するときに重要である。層状酸化物構造は、アルカリ金属イオンが結晶構造からより簡単にデインターカレーションすることを可能にし、より高速の充電、より高容量の固体電池をもたらす。
【0021】
層状酸化物のフレームワークは、通常、化学式ABO2で定義してもよく、Aは典型的に、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン又は混合物であり、Bは典型的に、一以上の酸化還元活性遷移金属、一以上の遷移金属又はそれらの混合物である。アルミニウムなどのいわゆる「ポスト遷移金属」グループの金属元素も、層状酸化物のフレームワークに包含され得る。
【0022】
アニールステップを必要とせずに結晶材料を形成する利点は、比較的低い融点の基板を使用できることである。基板は、ポリマーを含んでもよい。基板は、柔軟であってもよい。基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)を含んでもよい。PEN及びPETは、半結晶構造であるため、かなり柔軟かつ比較的高い引張強度である。プラズマ堆積プロセスの間、基板の温度は、任意の時点で200度を超え得ない。
【0023】
堆積が、酸素を含む反応性雰囲気下で起こってもよい。
【0024】
作動圧力は、任意で0.0005mBar以上、任意で0.00065mBar以上、任意で0.0010mBar以上、任意で0.0020mBar以上、任意で0.0030mBar以上、任意で0.0040mBar以上、及び任意で0.0045mBar以上である。作動圧力は、任意で0.0100mBar以下、任意で0.0090mBar以下、任意で0.0080mBar以下、任意で0.0070mBar以下、及び任意で0.0065mBar以下である。作動圧力は、任意で0.0005mBarから0.0100mBar、任意で0.0020mBarから0.0090mBar、任意で0.0030mBarから0.0080mBar、任意で0.0040mBarから0.0070mBar、及び任意で0.0045mBarから0.0065mBarである。
【0025】
作動圧力は、0.0010mBarから0.0065mBarであってもよい。この範囲内のより高い作動圧力は、より高い堆積速度をもたらし得る。これは、より高い作動圧力が、ターゲットの表面上でより多くのプロセスイオン(通常Ar+)の衝撃をもたらすためであり、それゆえ、材料がより高速でターゲットからスパッタされる。
【0026】
作動圧力が0.0010mBarから0.0065mBarの間であると、生じる結晶材料の結晶サイズ(結晶プレートレットのサイズ)は、8nmから65nmになり得る。通常、結晶サイズがより大きいと、より低い割合の膜が不規則な粒界の材料で構成されるため、より高い比率の規則正しい材料の薄膜をもたらす。結晶サイズがより大きいと、通常、より高い使用可能容量の薄膜電池をもたらすため、これは薄膜電池にとって重要である。アルカリ金属含有材料が、任意で(ここでは非特異的な化学量論で説明する)次の化合物:LiCoO、LiCoAlO、LiNiCoAlO、LiMnO、LiNiMnO、LiNiMnCoO、LiNiO、LiNiCoOのうち少なくとも一つを含むとき、この範囲内の結晶サイズが観測され得る。
【0027】
作動距離が8.0から9.0cmであるとき、0.0010mBarから0.0065mBarの作動圧力を使用すると、得られる結晶サイズの範囲がより狭くなり得る。結晶サイズは、14nmから25nmになり得る。これは、これらのパラメーターの範囲内で、狭く、予測可能な薄膜範囲の膜を形成することが可能であることの証拠である。これは、堆積ステップを、工業規模でより予測可能に及びより繰り返し可能にし得るため、重要であり得る。
【0028】
理論に拘束されることを望むものではないが、層状酸化物構造は、生じるのに高い活性化エネルギーを必要とすると考えられている。作動圧力は、系内のエネルギーに直接関係する。それゆえ、作動圧力の下限値が存在してもよく、下限値より低いと所望の層状酸化物構造が生じない。好ましくは、系内で所望の層状酸化物構造が生じるための十分な活性化エネルギーが存在するように、作動圧力が、所望の層状酸化物構造が生じない圧力によって定義される下限を上回ることである。例えば、アルカリ金属含有化合物がLiCoO2である場合、層状酸化物構造の特性X線回折ピークが、19度2θ((003)面に関係する)で現れる。系の作動圧力が低すぎると、所望の層状酸化物構造が生じず、この特性ピークが現れないかもしれない。
【0029】
作動圧力は、1.2e-3mBar以上であってもよい。好ましくは、作動圧力が、4.6e-3mBar以上であってもよい。
【0030】
高い作動圧力であると、基板が損傷し始めるほど系内のエネルギーが高くなり得る。損傷は、温度の上昇に誘発されたプラズマによって引き起こされ得る。好ましくは、作動圧力が上限値より低いことであり、上限値は、観測可能な損傷が基板に引き起こされる圧力によって定義される。好ましくは、作動圧力が0.0065mBar未満である。
【0031】
存在する場合、アルカリ金属は、好ましくはLi、Na、K、Cs、Rbのうちの一以上、任意でLi、Na又はKのうちの一以上、任意でLi又はNa、及び任意でLiであってもよい。リチウムイオンは、時には、固体電池のカソード内の伝導種として使用される。存在する場合、アルカリ土類金属は、任意でマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムのうちの一以上、任意でマグネシウム、カルシウム及びバリウムのうちの一以上、及び任意でマグネシウム及びカルシウムのうち一つ又はその両方であってもよい。
【0032】
一以上の遷移金属及び/又は一以上の酸化還元活性遷移金属は、周期表の第4周期、第5周期であり得る。以下の記述は酸化還元活性であり得る遷移金属又は酸化還元活性であり得えない遷移金属に関する。少なくとも一つの遷移金属及び任意でそれぞれの遷移金属が、任意で、Fe、Co、Mn、Ni、Ti、Nb及びVからなる群から選択されてもよい。
【0033】
基板上に堆積させる材料は、実験式AaM1bM2cO2であってもよく、式中、Aはアルカリ金属(任意でリチウム)、M1は一以上の遷移金属(任意でコバルト、ニッケル、ニオブ、バナジウム及びマンガンのうちの一以上)(bは遷移金属の合計数)、M2はアルミニウムであり、aは0.5から1.5であって、zは0から0.5である。
【0034】
任意で、aが1、bが1、cが0である。任意で、M1は、コバルト、ニッケル、バナジウム、ニオブ及びマンガンのうちの一つである。
【0035】
任意で、aが1より大きく、Aがリチウムである。この場合において、材料は、時には、「リチウムリッチ」材料として知られている。そのようなリチウムリッチ材料は、
【化1】
であってもよく、例えばx=0、0.06、0.12、0.2、0.3及び0.4である。
【0036】
他のそのような材料は、
【化2】
であり、式中、yは0.12より大きく、0.4以下の値である。
【0037】
他のそのような材料は、
【化3】
であり、式中、xは0.175以上0.325以下、yは0.05以上0.35以下の値である。
【0038】
【化4】
は、他のそのような材料であり、式中、xは0以上0.4以下、yは0.1以上0.4以下、zは0.02以上0.3以下である。
【0039】
アルカリ金属含有材料は、リチウムを含んでもよい。アルカリ含有金属は、(ここでは、非特異的な化学量論で説明する)次の化合物:LiCoO、LiCoAlO、LiNiCoAlO、LiMnO、LiNiMnO、LiNiMnCoO、LiNiO及びLiNiCoOのうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0040】
この方法は、基板を移動させることと、及び基板上にスパッタされた材料を堆積させることを含み、それによって基板上に材料を形成する。例えば、基板の第一の部分上に材料を堆積させたら、次に基板を移動させ、基板の第二の部分上に材料を堆積させてもよい。
【0041】
これは、材料の比較的大きい領域をかなり短時間で生産することを促進する。
【0042】
基板は、シート、任意で細長いシートを含んでもよく、或いはシート状、任意で細長いシート状であってもよい。そのようなシートは、ロール形式又は積み重ね形式で提供されてもよい。好ましくは、基板がロールとして提供される。これは、単純かつ安全に基板を貯蔵、操作することを促進する。
【0043】
基板は、(任意でシート状の)基板の移動を促進するように移動可能なように取り付けられてもよい。基板は、ロールツーロール配置で組み込まれてもよい。プラズマ堆積プロセスの上流で、基板はローラー又はドラムで保持される。プラズマ堆積プロセスの下流で、基板はローラー又はドラムで保持される。これは、単純かつ迅速に基板の柔軟なシートを操作することを促進する。シャッターを設けて、基板の一部を遠隔生成プラズマに曝すことを可能にしてもよい。
【0044】
ロールツーロール配置を使用することは、多くの利点がある。これは、基板の第一の部分、続いて基板の第二の部分などで一連の堆積が行われるが、高い材料スループットを促進し、一つの大きい基板上に大きい材料領域を堆積させることを可能にする。ロールツーロール処理の主な利点の一つは、真空を破壊せずに多くの堆積を起こせることである。これは、新しい基板を装填するために、堆積後にチャンバーを真空から大気圧に戻す必要があるシステムに比べて、時間とエネルギーを節約する。
【0045】
基板を運ぶ上流のドラム又はローラーは、プロセスチャンバーの内側に位置してもよく又はチャンバーの外側に位置してもよい。基板を運ぶ下流のドラム又はローラーは、チャンバーの内側に位置してもよく、又はチャンバーの外側に位置してもよい。
【0046】
基板は、比較的平たいシートで操作及び保管される個別のシートで供給されてもよい。材料を上に堆積させるため、基板は平面形状であってもよい。これは、基板が個別のシート状で提供され、ロールへ運ばれたり、ロールから運ばれたりしない場合であり得る。シートは、より大きい構造剛性を有するキャリヤ上でそれぞれ固定されてもよい。これは、ローラー上に基板フィルムが保持される場合よりも、より薄い基板を使用することを可能にし得る。基板は、犠牲基板であってもよい。基板は、材料の層の前に除去されてもよい。基板の一部又は全部は、電子製品パッケージ、部品又は他の最終製品に結晶層又はその一部を組み込む前に、除去されてもよい。例えば結晶材料の層が、基板から離脱してもよい。ベース基板と結晶材料の間に、他の介在材料の層が存在してもよい。この層は、結晶材料と離脱してもよいし、或いはベース基板からの結晶材料の分離の助けとなってもよい。レーザーベースのリフトオフ技術を使用してもよい。基板は、レーザーアブレーションを利用するプロセスによって除去されてもよい。
【0047】
同様の技術が、従来技術で説明されている。例えばKR20130029488では、電池層を得るために犠牲基板及びレーザー光線を使用することを含む電池の作製方法が説明されている。他の例において、十分高い製品スループットが可能ならば、他の適切な処理体制が使用される。
【0048】
上流のローラー又はドラムと下流のローラー又はドラムの間を通るとき、基板は、任意で、どの点においても温度補正された降伏強度を超え得ない。基板が様々なロールやローラー、ドラムを通して運ばれるとき、ロールツーロール処理装置は、基板に張力をかける必要があるため、これは重要である。ポリマーが温まると、降伏強度が低下し始め得る。ポリマーの温度が過度に上昇すると、ロールツーロール装置を通過するときに、ポリマーが変形し始め得る。これは、ゆがみ、詰まり及び一様でない基板への堆積につながる可能
性がある。
【0049】
堆積プロセス中の基板の温度は、任意で500℃以下、任意で300℃以下、任意で200℃以下、任意で150℃以下、任意で120℃以下、及び任意で100℃以下である。本発明の方法は、低温で行ってもよく、低温であると高温で使用できない基板及び他の材料の使用を促進する。さらに、より高温では基板の操作がより難しくなり得る。
【0050】
材料を堆積させる表面とは反対の表面上で測定して、1秒間の平均を取った、面積が1cm2の基板材料の任意の所与の正方形で到達する最高温度は、どの時点でも、500℃以下であってもよく、任意で300℃以下であってもよく、任意で200℃以下であってもよく、任意で150℃以下であってもよく、任意で120℃以下であってもよく、及び任意で100℃以下であってもよい。
【0051】
方法終了時の堆積したアルカリ金属含有化合物の厚さは、任意で10ミクロン以下、任意で1.0ミクロン以下である。
【0052】
基板の厚さは、任意で1.6ミクロン以下である。供給される基板の厚さは、任意で1.0ミクロン未満である。
【0053】
基板に固体電池を設計するとき、できるだけ薄くすることは有益である。これは、より高エネルギー密度の電池の製造を可能にする。好ましくは、より薄い基板を使用でき、該より薄い基板が、比較的高い温度補正された降伏強度及び高い分解点の必要な条件を満たす場合、本方法でこの基板が使用されるであろう。アルカリ金属含有化合物がLiCoO2である場合、結晶は、任意で、基板に実質的に平行な(101)面及び(110)面で配列する。これは、薄膜のイオンチャネルが基板に垂直に向き、電池からのイオンのインターカレーション及びデインターカレーションをより容易にすることを意味するため、有益である。これは、電池の作動容量及び充電速度を向上させる。
【0054】
基板は、任意で集電層を含む。集電層は、不活性金属を含んでもよい。集電層は、白金であってもよい。集電層は、ニッケルであってもよい。集電層は、金であってもよい。集電層は、白金であってもよい。集電層は、アルミニウムであってもよい。集電層は、表面積を増加させる改質構造を有してもよい。また、集電層が、アノードとして働いてもよい。
【0055】
堆積速度は、4Ås-1より大きくてもよい。堆積速度は、250Ås-1より大きくてもよい。堆積速度は、1000Ås-1より大きくてもよい。
【0056】
この方法は、第一のターゲット及び第二のターゲットを供給することを含んでもよい。第一のターゲット及び第二のターゲットのターゲット材料は、任意で異なってもよい。基板に対する第一のターゲット及び第二のターゲットの向きは、互いに異なってもよい。
【0057】
この方法は、第一のターゲットをプラズマに曝すこと及び第二のターゲットをプラズマに曝すことを含んでもよく、それによって第一のターゲット及び第二のターゲットから材料をスパッタする。基板は、第一のターゲット及び第二のターゲットからスパッタされた材料に曝されてもよい。第一のターゲットからの材料のスパッタリングは、第一のターゲットアセンブリから基板への粒子の軌跡に対応する第一のプルームを発生させ得る。第二のターゲットからの材料のスパッタリングは、第二のターゲットアセンブリから基板への粒子の軌跡に対応する第二のプルームを発生させ得る。第一のプルーム及び第二のプルームは、基板で集中してもよい。第一のターゲット及び第二のターゲットのうちの一方で、第一のターゲット及び第二のターゲットのうちのもう一方よりもプラズマエネルギーが受
け取られ得るように、第一のターゲット及び第二のターゲットが構成されてもよい。第一のターゲット又は第二のターゲットの材料をスパッタするのに必要なエネルギーが、第一のターゲット又は第二のターゲットのうちの他方の材料をスパッタするのに必要なエネルギーよりも大きい場合に、これは有益である。例えば第一のターゲットがリチウム元素を含み、第二のターゲットがコバルトを含む場合、第一のターゲット及び第二のターゲットは、ターゲットからスパッタするためにコバルトがリチウムよりもエネルギーを必要とするため、第二のターゲットが第一のターゲットよりもプラズマエネルギーを受け取るように構成される。
【0058】
この方法は、プラズマの電子密度分布の形状が、誤差の範囲内で、プラズマの幅の大部分にわたってどの断面積とも同一になるように、磁場及び/又は電場を使用してプラズマを含むこと及びプラズマを形作ることを含む。誤差の範囲は、任意で最大30%、任意で最大20%、任意で最大10%、及び任意で最大5%であってもよい。
【0059】
プラズマの電子密度分布の形状は、任意で誤差の範囲内で同一である。これは、可視のグローがプラズマの幅に沿って実質的に同一であると、視覚検査を用いて試験できる。プラズマは、ブランケット状であってもよい。これに関連して、可視プラズマ雲の幅及び長さは、それぞれ厚さよりも少なくとも五倍大きくなってもよい。プラズマの発生が、基板の幅に平行な方向に延びる少なくとも一つのアンテナによって実行されてもよい。プラズマの発生が、プラズマの両側で距離L離れ、それぞれのアンテナの長さがWである一組のアンテナを使用して実行されてもよい。プラズマの厚さ(可視スペクトルにおけるグローの最大の広がり又はプラズマ内の自由電子の90%を覆うL及びWの両方に実質的に垂直な方向で測定される最大距離のいずれかにより定義される)。
【0060】
第一のターゲット又は第二のターゲットが、第一のターゲット及び第二のターゲットの他方よりもプラズマに接近してもよい。そのような配置は、第一のターゲット又は第二のターゲットが、第一のターゲット及び第二のターゲットのうちの他方よりも多くプラズマエネルギーを受け取ることを促進し得る。
【0061】
第一のターゲット及び第二のターゲットは、プラズマの幅の大部分にわたって取られる任意の所与の断面に関し、第一のターゲット及び第二のターゲットの他方と比べて、水平に対して異なるように曲げられてもよい。そのような配置は、第一のターゲット又は第二のターゲットが、第一のターゲット及び第二のターゲットの他方よりも多くのプラズマエネルギーを受け取ることを促進し得る。
【0062】
第一のターゲット及び第二のターゲットのうち一つ又はその両方が、平面であってもよい。
【0063】
プラズマの幅の大部分にわたって取られる任意の所与の断面に対して、第二のターゲットアセンブリのターゲットは、第一のターゲットアセンブリのターゲットと実質的に同量の材料をプラズマにあてる。
【0064】
一以上のターゲットは、任意で基板と向かい合う。そのような配置は、プラズマが離れて生成されるときに効果的である。
【0065】
材料を堆積させる表面は、XS又はこれより小さい表面粗さを有してもよく、ここでXS=100nmであって、堆積させる層は、0.01μmから10μmの厚さ及びX1以下の表面粗さを有してもよく、ここでX1はFとXSの積と等しく、Fは1から2の範囲の係数である。
【0066】
XSは、基板の厚さの10%以下であってもよい。基板の厚さとXSの積は、105nm2以下であってもよい。
【0067】
基板、任意でポリマー基板は、埋設粒子及びポリマー材料内及びポリマー材料上の埋設粒子のすべてと共に供給されてもよく、基板の表面粗さに寄与するそれらの大部分は、XSの10%から125%のメジアン径を有する。
【0068】
代わりに、基板、任意でポリマー基板は、埋設粒子及びポリマー材料内及びポリマー材料上の埋設粒子のすべてと共に供給されてもよく、基板の表面粗さに寄与するそれらの大部分は、XSの150%以下のメジアン径を有する。
【0069】
この方法は、スパッタ堆積を使用して、表面に材料を堆積させ、0.01μmから10μmの厚さ及びXSの150%以下の表面粗さを有するさらなる層を形成するステップを含んでもよく、結晶層の材料の組成は、さらなる層の材料の組成と異なる。
【0070】
この方法は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む第一のターゲットから基板の表面又は基板によって支持される表面に、材料をプラズマスパッタすることであって、少なくとも第一のターゲットから表面への粒子の軌跡に対応する第一のプルームが存在することと、遷移金属(コバルトなど)を含む第二のターゲットから表面に材料をプラズマスパッタすることであって、少なくとも第二のターゲットから表面への粒子の軌跡に対応する第二のプルームが存在することとを含んでもよく、ここで、第一のターゲットが第二のターゲットと非平行に配置され、第一のプルームと第二のプルームが、基板の表面又は基板によって支持される表面に最も近い領域で集中し、任意で、結晶層が、前記領域で表面上に形成される。
【0071】
第二のターゲットよりも第一のターゲットで、より多くのプラズマエネルギーを受け取ってもよい。
【0072】
第一のターゲットは、第一の方向で基板に向かって面してもよく、第二のターゲットは、第二の方向で基板に向かって面してもよく、第一の方向と第二の方向は、基板に向かって集中する。
【0073】
第一のターゲットの表面の中心から延び、第一の方向に平行な概念線は、断面図において、第二のターゲットの表面の中心から延び、第二の方向に平行な概念線と、ターゲットの一方より基板に近い位置で交差してもよい。交差の位置は、ターゲットの一方から基板までの最短距離の半分より基板に近くてもよい。
【0074】
基板、第一のターゲット及び第二のターゲットのうち少なくとも一つが、任意で表面上に結晶層が形成されるように移動していてもよい。
【0075】
基板は、第一のプルーム及び第二のプルームが集中する領域で曲率半径を有してもよく、ターゲットが曲率半径の中心の周囲に配置される。
【0076】
本発明の第二の態様によると、層状酸化物材料の堆積のために構成される遠隔プラズマ堆積システムの最適な作動距離を決定する方法が提供され、該方法は、
作動距離の範囲を選択することであって、系の理論的な平均自由行程が前記範囲内に収まるように作動距離の範囲を選択することと、
多数の試験試料について、選択した範囲内の異なる作動距離で発明の第一の態様による方法を、各試料に対して実行することと、
堆積が起こった後、各試験試料でX線回折を実行することと、
層状酸化物構造の特性を示す回折ピークが存在する試料を識別することと、
それらの試料から(正規化された)特性ピークの強度が最も高い試料を選択し、続いて、前記試験試料の堆積の間に使用された作動距離に対する系の作動距離を選択することと、を含む。
【0077】
この方法の試験試料は、任意で、多数の試験試料の平均値に置き換えてもよく、該試験試料は、発明の第一の態様の方法が同一の作動距離で複数回実行され、平均を取られている多数の試験試料を含む。また、この方法は、当業者に知られている任意の標準誤差分析技術を含んでもよい。
【0078】
この方法は、システムを操作するために最適な作動距離の範囲を見いだせるように、任意で多数回実行されてもよい。
【0079】
本発明の第三の態様によると、層状酸化物材料の堆積のために構成される遠隔プラズマ堆積システムの最適な作動圧力の範囲を決定する方法が提供され、該方法は、
0.00065mBarから0.01mBarで(任意で0.001mBarと0.007mBarの間で)、作動圧力の初期範囲を選択することと、
多数の試験試料について、選択された範囲内の異なる作動圧力で、発明の第一の態様による方法を、各試料に対して実行することと、
堆積が起こった後、各試験試料でX線回折を実行することと、
層状酸化物材料の特性X線回折ピークを表す試験試料のグループから、最も低い作動圧力で堆積させた試験試料を選択し、この作動圧力を範囲の下限と定めることと、
観測可能な基板への損傷の兆候を示さない試験試料のグループから、最も高い作動圧力で堆積させた試験試料を選択し、この作動圧力を範囲の上限と定めることと、を含む。
【0080】
作動圧力の初期範囲は、本発明の方法に関して上記で説明した作動圧力の選択に従って選択してもよい。この方法の試験試料は、任意で、多数の試験試料の平均値に置き換えてもよく、該試験試料は、発明の第一の態様の方法が同一の作動圧力で複数回実行され、平均がとられている多数の試験試料を含む。この方法は、当業者に知られている任意の標準誤差分析技術を含んでもよい。
【0081】
この方法は、所望の範囲内で系の最適な作動圧力を選択することをさらに含んでもよい。最適な作動圧力は、最も速い堆積速度をもたらす範囲内の作動圧力であってもよい。本発明の一つの態様に関連して説明する特徴が、本発明の他の態様に組み込まれてもよいことを当然のことながら理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
本発明の実施形態を、単なる例として、以下に簡潔に要約した添付の概略図を参照しつつ説明する。
【
図1a】第1の例に従って使用されるプラズマ堆積チャンバーの概略側面図である。
【
図1b】第1の例に従って電池カソードを製造する方法のステップを示す。
【
図1c】様々なポリマー基板材料の断面の概略図である。
【
図1d】様々なポリマー基板材料の断面の概略図である。
【
図1e】様々なポリマー基板材料の断面の概略図である。
【
図1f】様々なポリマー基板材料の断面の概略図である。
【
図1g】様々なポリマー基板材料の断面の概略図である。
【
図1h】様々なポリマー基板材料の断面の概略図である。
【
図2a】第2の例の方法に従って使用されるプラズマ堆積チャンバーの概略側面図である。
【
図2b】第2の例の方法に従って作製された電池カソードの第一のサンプルのX線回折(XRD)スペクトルである。
【
図2c】
図2bのXRDデータが得られた電池カソードのラマンスペクトルである。
【
図2d】第2の例の方法に従って作製した電池カソードの第二のサンプルのXRDスペクトルである。
【
図2e】
図2dのXRDデータが得られた電池カソードのラマンスペクトルである。
【
図3a】第3の例に従う方法で使用されるプラズマ堆積チャンバーの概略側面図である。
【
図3b】
図3aに示されるプラズマ堆積チャンバーの概略平面図である。
【
図3c】
図3a及び3bで示されるプラズマ堆積チャンバーのさらなる概略側面図である。
【
図3d】エネルギーの関数として、コバルト及びリチウムのスパッタ収率を比較するグラフである。
【
図3e】第4の例に従う方法で使用されるプラズマ堆積チャンバーの概略側面図である。
【
図4a】第2の例の方法に従って作製された第一のサンプルに関係する電池カソードの断面走査型電子顕微鏡写真である。
【
図4b】第2の例の方法に従って作製された第二のサンプルに関係する電池カソードの走査型電子顕微鏡写真の鳥瞰図である。
【
図5a】第5の例の方法を使用して作製された第一のサンプルに関連する電池カソードの概略横断面図である。
【
図5b】第5の例の方法を使用して作製された第二のサンプルに関連する電池カソードの概略横断面図である。
【
図5c】第5の例に従って電池カソードの半電池を製造する方法のステップを示す。
【
図6】第6の例に従って電池を作製する方法の例の概略図である。
【
図7a】第7の例に従って固体薄膜電池を製造する方法の例の概略図である。
【
図7b】第7の例の第一のサンプルに従う固体薄膜電池の概略横断面図である。
【
図7c】第7の例の第二のサンプルに従って作製された固体薄膜電池サンプルの概略横断面図である。
【
図8a】第8の例に従って層状酸化物材料を堆積させるように構成された遠隔プラズマ堆積システムの最適な作動距離を決定する方法の概略図である。
【
図8b】
図8aの方法の一部として収集した多数のX線回折スペクトルを示しており、ここで、特性評価技術はX線回折であり、特有の特徴は、層状酸化物構造に関係する特性X線回折ピークである。
【
図9a】発明の第1の例に従って形成された膜サンプルの顕微鏡写真である。
【
図9b】
図9aで示される膜から得られたX線回折スペクトルである。
【
図10a】第9の例に従って層状酸化物材料を堆積させるように構成された遠隔プラズマ堆積システムの最適な作動圧力を決定する方法の例の概略図である。
【
図10b】
図10aに関して説明した方法の一部として収集した二つのX線回折スペクトルを示しており、ここで、特性評価技術がX線回折であって、特有の特徴は、層状酸化物構造に関係する特性X線回折ピークである。
【
図11a】第10の例に従って層状酸化物材料の結晶サイズを決定する方法のステップの例である。
【
図11b】16cmの作動距離について、第10の例に従って異なる作動圧力における結晶サイズを決定する方法を示すグラフであり、第1の例に従って堆積させた複数の膜の結晶サイズを示している。
【
図11c】8.5cmの作動距離について、第10の例に従って異なる作動圧力における結晶サイズを決定する方法を示すグラフであり、第1の例に従って堆積させた複数の膜の結晶サイズを示している。
【
図12】発明の第11の例に従って基板上に材料を堆積させる方法の概略図である。
【
図13】第12の例に従って電子デバイスの部品を製造する方法の例の概略図である。
【
図14】発明の第13の例に従って電子デバイスの部品を製造する方法の例の概略図である。
【
図15】発明の第14の例に従って発光ダイオード(LED)を製造する方法の例の概略図である。
【
図16】発明の第15の例に従って永久磁石を製造する方法の例の概略図である。
【
図17】発明の第16の例に従って酸化インジウムスズ(ITO)の層を備える電子デバイスを製造する方法の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図1aは、第1の方法に従って基板に(結晶)材料を堆積させる方法で使用されるプラズマ堆積プロセス装置の概略側面図である。この方法は、通常、参照数字1001により与えられ、
図1bで概略的に示されており、一つ又は複数のターゲットから離れたプラズマを発生させること1002と、ターゲット材料が一以上のターゲットからスパッタされるように、一つ又は複数のターゲットをプラズマに曝すこと1003と、スパッタされた材料を基板の第一の部分上に堆積させるように、基板の第一の部分をスパッタされた材料に曝すこと1004とを含み、それによって基板の第一の部分に結晶材料を形成する。基板に(結晶)材料を堆積させる方法は、電池カソードを製造する方法の一部として実行されてもよい。
【0084】
この例の結晶材料は、ABO2構造をとる。本例において、ABO2材料は、層状酸化物構造をとる。本例において、ABO2材料は、LiCoO2である。しかし、本例の方法は、幅広いABO2材料で有効であることが示されている。他の例において、ABO2材料構造は、以下の(ここでは非特異的な化学量論で説明する)化合物:LiCoO、LiCoAlO、LiNiCoAlO、LiMnO、LiNiMnO、LiNiMnCoO、LiNiO及びLiNiCoOのうち少なくとも一つを含む。これらの材料は、電池カソードを製造するための有力候補である。当業者は、化学量論が異なってもよいことがわかるだろう。
【0085】
この例において、ABO2材料は、LiCoO2であり、約1ミクロンの厚さの層として堆積する。他の例では、ABO2材料は、約5ミクロンの厚さの層として堆積する。他のさらなる例において、ABO2材料は、約10ミクロンの厚さの層として堆積する。
【0086】
図1aを参照すると、プラズマ堆積プロセス装置は、通常、参照数字100で与えられ、ターゲット104を備えるプラズマターゲットアセンブリ102、遠隔プラズマ発生器106、遠隔プラズマ発生器106により発生するプラズマを閉じ込めるための一連の電磁石108、ターゲット電力供給装置110、遠隔プラズマ源電力供給装置112、及びハウジング114を備える。遠隔プラズマ発生器106は、二組の無線周波数(RF)アンテナ116を備える。ハウジング114は、チャンバーの外側に位置している一連の真空ポンプにつながれている真空排気口120を備えるため、ハウジング114により画定されるチャンバー122を排気できる。また、ハウジング114には、一以上の気体をチャンバー122に導入するための気体供給装置(図示せず)につながれ得る気体注入口124が設けられている。他の例において、気体注入口124は、ターゲットアセンブリ102の表面より上に位置してもよい。
図1aから分かるように、プラズマは、ターゲット104から離れて発生する。
【0087】
この例において、ターゲット104は、材料LiCoO2を含む。簡潔には、チャンバー122は、十分な低圧に達するまで排気される。電力供給装置112により供給される電力は、プラズマを発生させる遠隔プラズマ発生器106に電力を供給するために使用される。プラズマがターゲット104と相互作用するように、電力がターゲット104に印加され、LiCoO2が、ターゲット104からスパッタされ、基板128上に生じる。本例において、基板128は、ポリマーシートを含み、該ポリマーシートは、注入口130を経由してハウジング114に導入され、排出口132を経由してハウジングから外に出る。電動ローラー134は、基板128の移動を手助けするために使用される。LiCoO2は、結晶性の(アモルファスでない)材料として基板128上に堆積する。
【0088】
装置100は、基板128へのスパッタされた材料の堆積を制限するために、シャッター136も備え、ドラムを冷却するために、インプット138も備える。シャッター136は、基板128の一部をスパッタされた材料に曝すことが可能である。
【0089】
上述のとおり、電動ローラー134は、基板128のプラズマ堆積装置100内への移動及び基板128のプラズマ堆積装置100外への移動を助けるために使用される。電動ローラー134は、ロールツーロール基板操作装置(図示せず)の一部であってもよく、該ロールツーロール基板操作装置は、少なくとも上流でプラズマ堆積装置100の第一の貯蔵ローラー備え、下流でプラズマ堆積装置100の第二の貯蔵ローラーを備える。ロールツーロール基板操作装置は、この例で使用されるポリマー基板のような薄く、柔軟な基板の操作、貯蔵及び移動に便利な手段である。そのようなロールツーロールシステムは、他の多くの利点がある。これは、基板の第一の部分、続いて基板の第二の部分などにおける一連の堆積を通して、高い材料スループットを可能にし、一つの基板上に広いカソード領域を堆積させることを可能にする。さらに、そのようなロールツーロール処理は、真空を破壊せずに多くの堆積を起こすことができる。これは、新しい基板を装填するために、堆積後、チャンバーを真空から大気圧まで戻す必要があるシステムに比べて、時間及びエネルギーの両方を節約できる。他の例において、シートツーシート処理が、ロールツーロール処理の代わりに使用され、ここで、基板には支持部が設けられている。代わりに、基板が、比較的平たいシートで操作され、貯蔵される個別のシートで供給されてもよい。材料を基板上に堆積させるため、基板は平面状であってもよい。これは、基板が個別のシート状で供給され、ロールに運ばれたり、ロールから運ばれたりしない場合であり得る。シートは、より高い構造剛性を有する運搬装置上にそれぞれ取り付けられていてもよい。これは、ローラー上に保持される基板フィルムの場合よりも、より薄い基板を使用できるようにし得る。基板は、犠牲基板であってもよい。材料の層の前に、基板を除去してもよい。電子製品パッケージ、部品又は他の最終製品に結晶層又は結晶層の一部を組み込む前に、基板の一部又は全部を除去してもよい。例えば、結晶材料の層が、基板から離脱してもよい。ベース基板と結晶材料の間に他の介在材料の層が存在してもよい。この層は、結晶材料と共に離脱してもよく、又はベース基板から結晶材料の分離の助けとなってもよい。レーザーベースのリフトオフ技術を使用してもよい。基板は、レーザーアブレーションを使用するプロセスによって除去してもよい。
【0090】
同様の技術が、従来技術で説明されている。例えばKR20130029488では、電池層を収集するために犠牲基板及びレーザー光線を使用することを含む電池を作製する方法が説明されている。他の例においては、十分高い製品スループットが可能ならば、他の適切な処理体制が使用される。
【0091】
ポリマー基板128は、システムを通って移動するとき張力がかかっており、例えば処理の少なくとも一部の間、少なくとも0.001Nの張力に耐えている。ポリマーは、ロールツーロール装置を通って送られるとき、引張応力下でも変形しないほど頑丈である。
この例において、ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート(PET)であり、基板128は、1ミクロン以下の厚さを有し、複数の例においては、厚さは0.9ミクロンである。基板128は、集電層でプレコートされ、該集電層は不活性金属から成る。この例において、集電層として使用される不活性金属は、白金である。PET膜の降伏強度は、ロールツーロール輸送装置の圧力下で基板がへこまないか又は塑性変形しないほど十分強い。他の例において使用される不活性金属は、代わりに金、イリジウム、銅、アルミニウム又はニッケルであってもよい。これはより高いエネルギー密度を持つ電池の製造を容易にするため、そのような薄いポリマー基板の使用は有益である。他の例において、高い電池密度及び堆積後の操作が容易になるように、十分薄く、柔軟な様式で製造できるならば、重合体でない材料が使用される。
【0092】
しかしながら、プラズマ堆積プロセスとその後の製造プロセスは、そのような薄い層を用いる仕組みによって課される技術的な課題がある。
【0093】
基板128がプレコートされる前に、基板128は、(a)(例えば、保持されているポリマー膜をドラムからほどくのに必要な力を増大させる)静電気力に起因する望ましくない影響を低減するのに十分大きくなるように、また、(b)基板に材料を堆積させるとき、粗さにより問題が生じないほど十分小さくなるように、注意深く設計される表面粗さを有する。この例において、表面粗さは、約50nmに設計される。この例において、基板の厚さ(0.9ミクロン)と表面粗さの積が4.5×104nm2であり、それゆえ、105nm2未満及び5×104nm2未満であることに注意されたい。薄膜の取り扱いを容易にするために必要とされる粗さは、厚さの減少に伴って増加することが分かっている。一般的に、より薄い基板(すなわち、10ミクロン未満、特に1ミクロン未満)の取り扱い性を向上させるために必要とされる粗さは、基板の厚さが減少すると、増加することが分かっている。
【0094】
図1cは、約1ミクロンの厚さで、粗さをもたらす埋設粒子を有する典型的な薄膜ポリマーを示している(正確な縮尺ではない)。粒子によりもたらされる表面の特徴である粗さは、少なくとも90nm、場合によっては90nmより大きい。これは、予想される特定の例では粗すぎる(しかし、他の例では許容され得る)。
【0095】
図1dは、所望の粗さを達成できる一つの状態を示している(正確な縮尺ではない)。ポリスチレンの球状粒子は、基板の粗さに寄与する球状粒子の少なくとも90%が、粒子の半分以下の体積で特定の基板表面からはみ出るように、基板材料に埋め込まれる。粒子は、約90nmの直径を有する。それゆえ、基板の表面粗さに寄与する埋設粒子の大部分は、基板の表面粗さの約180%のメジアン径を有する。他の例において、球状埋設粒子は、酸化ケイ素などの異なる材料から作られる。
【0096】
図1eは、所望の粗さを達成することができる代わりの状態を示している(正確な縮尺ではない)。ポリスチレンの球状埋設粒子は、基板の粗さに寄与する球状埋設粒子の少なくとも90%が、粒子の体積の半分より多く特定の基板表面からはみ出るように、基板の材料の表面上に存在する。
図1eの例で使用される粒子は、
図1dの例で使用される粒子よりも小さい。
【0097】
図1d及び1eのような例は、製造環境において薄い基板上に結晶材料として良質の膜を堆積させることができる。埋設粒子が存在する利益を保ちつつ、そのような粒子の位置及びサイズ分布を注意深く制御することだけで、潜在的な不利益を回避又は減少させることができる。
図1fから1hは、基板表面上に結晶材料の層が形成された後の
図1cから1eで示した基板に対応する断面図を概略的に示している。金属集電体の中間層は、
図1fから1hから省略されている。
図1c及び1fで示される基板の粗さは、問題が生じる
ようなものである。ある埋設粒子152によって引き起こされる影響を及ぼすはみ出しは、シャドーイング及び競合する結晶成長を引き起こし、
図1fで対照的な影154を用いて概略的に示されている。相反する方向に配列している競合する結晶成長は、最終製品の性能に影響を与える層の不連続性を増加させる。また、堆積させる材料の層の、基板からの層間剥離の可能性に驚くほど深刻な影響がある。これは、局所的な凹凸のある範囲が小さい中央の平たい表面から遠く離れて突き出ているいくつかの埋設粒子に近い領域において(
図1fで空間156により概略的に示される)、堆積させる層と下地基板の間の接触不良の結果として生じ得る。その一方で、そのような問題が生じることは、
図1g及び1hでは見られない。基板上に堆積する材料の表面の粗さは、おおよそ50nmである。
【0098】
基板の粗さは、表面形状測定装置を用いて測定できる。この器具は、固定針を有する。測定される表面が針の下で移動し、針のふれで表面プロファイルを測定し、該表面プロファイルから様々な粗さのパラメーターが計算される。
【0099】
粗さは、「非接触」方法を使用して測定することもできる。粗さを測定するのに適した装置は、「Omniscan MicroXAM 5000B 3d」であり、該装置は、光位相シフト干渉を使用して表面プロファイルを測定する。
【0100】
【数1】
の公式を使用して、粗さRaが計算でき、滑らかな表面からの逸脱yは、n個のデータ点について測定される。
【0101】
【数2】
の公式を使用して、x方向及びy方向に延びる面積Aの表面粗さSaが計算でき、Zは数学的に完全に滑らかな表面からの逸脱である。
【0102】
本例において、平均表面粗さは、非接触方法で測定している。
【0103】
遠隔生成プラズマは、電力供給装置112によってアンテナ116に供給される電力により生み出される。それゆえ、プラズマを発生させる電力に関係する測定可能な電力が存在する。プラズマは、ターゲット104に電気的にバイアスをかけることによってターゲットに向かって加速され、結果的に関係する電流が流れる。それゆえ、ターゲット104におけるバイアスに関係する電力が存在する。この例において、プラズマを発生させるために使用される電力の、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力に対する比率は、1:1より大きく、任意で1.0:1.0より大きい。この例において、プラズマ発生源の電力効率が50%になるという仮定のもとに比率が計算されることに注意されたい。ターゲットにおけるバイアスに関係する電力は、少なくとも1Wcm
-2である。さらなる例において、プラズマを発生させるために使用される電力の、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力に対する比率は、1:1より大きく、7:2以下であり、任意で7.0:2.0以下である。他のさらなる例において、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力は、1:1より大きく、3:2以下であり、任意で3.0:2.0以下である。いくつ
かの例において、プラズマ発生源の電力効率は、80%とされる。いくつかの例では、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力は、10Wcm
-2である。他のさらなる例において、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力は、100Wcm
-2である。他のさらなる例では、ターゲットにおけるバイアスに関係する電力は、800Wcm
-2である。他の例においては、プラズマ発生源の効率が異なってもよく、電力比率も異なってもよい。LiCoO
2膜を基板に堆積させるとき、LiCoO
2の結晶膜を形成する。基板に生じる結晶構造は、
である。この構造は、層状酸化物構造である。この構造は、Fd3m空間群の構造を有するLiCoO
2の低エネルギー構造と比較して、利用可能な容量が大きく、充電及び放電が高速であるなどの多くの利益がある。
の結晶性のLiCoO
2は、しばしば固体電池アプリケーションのために好まれる。
【0104】
プラズマ堆積プロセスを通して、基板128の温度は、ポリマー基板128の分解点を超えない。さらに、基板の温度は、ポリマー基板がロールツーロール処理装置からかかる圧力下で変形しないように、温度調節されたポリマー基板の降伏強度をかなり高いままに保つよう、堆積プロセスを通して十分低い。
【0105】
遠隔プラズマ発生器106から作り出される閉じ込められたプラズマの全体的な形状は、
図1aにおいて破線Bで示される。一連の電磁石108は、所望の形状/体積にプラズマを閉じ込めるために使用される。この第1の例において、基板128は注入口130でチャンバーに供給され、排出口132でチャンバーから排出されるが、代わりの配置も可能である。例えば上流にロール又はシャッター136の他の貯蔵場所が、プロセスチャンバー122の内側にあってもよい。下流のロール又はシャッター136の他の貯蔵場所が、プロセスチャンバー122の内側にあってもよいし、或いはプロセスチャンバー122の内側で格納できる。
【0106】
加えて、プラズマ源に電力を供給する手段112は、RF型、(直流)DC型又はパルスDC型であってもよい。
【0107】
この第一の例において、ターゲットアセンブリ102は、一つのターゲット104のみを備える。このターゲットはLiCoO2から作られている。例えばリチウム元素の異なる領域、コバルト元素の異なる領域、酸化リチウムの異なる領域、酸化コバルトの異なる領域、LiCo合金の異なる領域、LiCoO2の異なる領域又はそれらの任意の組み合わせを含む代わりの及び/又は複数のターゲットアセンブリが使用されてもよいことを理解されたい。他の例において、ABO2材料はLiCoO2でなくてもよい。それらの例において、一つ又は複数のターゲットアセンブリは、Aの異なる領域、Bの異なる領域、A及び/又はBを含む化合物の異なる領域、並びに/或いはABO2を含む異なる領域を含む。
【0108】
誤解を避けるために、ターゲットアセンブリ103のターゲット104は、単独で材料の素として働き、RF電力供給装置、DC電力供給装置又はパルスDC電力供給装置から電力が印加されるときにカソードとして機能しない。
【0109】
この例において、系の作動圧力は、0.0050mBarである。系の理論的な平均自由行程は、おおよそ10cmである。理論的な平均自由行程は、プラズマ内でのイオンの衝突から衝突までの平均距離である。ターゲット104と基板128の間の作動距離は、おおよそ8.5cmである。それゆえ、作動距離は、系の理論的な平均自由行程のおおよそ85%である。
【0110】
この例において、作動圧力は、層状酸化物構造の結晶材料が生じない下限より高いが、観測可能な損傷が基板に生じる上限より低い。作動距離は、層状酸化物構造の結晶材料が生じない上限より短いが、堆積のエネルギーが基板に観測可能な損傷を生じさせたり、好ましくない酸化状態を生じさせたりする下限より長い。
【0111】
この例における膜上に生じる結晶の平均結晶サイズは、約20nmである。他の例において、膜上に生じる結晶の平均結晶サイズは、約50nmである。
【0112】
代わりの例において、系の作動圧力は、0.0020mBarである。系の理論的な平均自由行程は、おおよそ12cmである。ターゲット104と基板128の間の作動距離は、おおよそ9cmである。それゆえ、この作動距離は、系の理論的な平均自由行程のおおよそ75%である。
【0113】
代わりの例において、系の作動圧力は、0.0065mBarである。系の理論的な平均自由行程は、おおよそ15cmである。ターゲット104と基板128の間の作動距離は、おおよそ7.5cmである。それゆえ、この作動距離は、系の理論的な平均自由行程のおおよそ50%である。
【0114】
第2の方法例は、
図2aで示される装置を使用する。
図1aの装置と
図2aの装置の主な違いを説明する。
図2aは、第一の例であった柔軟な基板128の代わりに、堅い平面のガラス基板228を使用することを示している。さらに、この例ではシャッターが存在しない。ガラス基板の厚さは、ミリメートルのオーダーである。単一のターゲット204がこの例では使用される。温度標識ステッカーを、カソード材料を堆積させるスライドガラスの面とは反対の面に取り付けた。温度標識ステッカーは、プラズマ体積プロセスの間、基板228が270℃以上の温度になるかどうかを示すように設定される。堆積後、ステッカーは、堆積プロセスの間、基板が270℃以上の温度にならなかったことを示した。プラズマの一般的な形状は、
図2aにおいて破線B’で囲まれた領域により示される。
【0115】
表1は、第2の例に従って製造し、得られた電池カソード例の性質を示す。
【0116】
【表1】
表1―堆積パラメーターの機能としてのLiCoO
2カソード膜の性質
【0117】
上の表1において、膜の元素組成は、MAGCISイオン銃が付いたThemo Fisher K-alpha分光計を使用して、X線光電子分光法により決定した。引用した組成は、約10のレベルで、膜で測定した深さプロファイリングから得た。プラズマ源電力は、プラズマを発生させるために供給される電力である。スパッタリング電力は、ターゲット204に印加される電力である。プロセス圧力は、チャンバー内の圧力である。膜厚と膜粗さの測定値は、Omniscan MicroXAM 5000b 3d光学プロファイラーを使用して、堆積後に得た。マスクされた端でのステップ高と粗さの測定値を約400ミクロン×500ミクロンのサンプル領域から得たため、膜厚を堆積後に測定した。
【0118】
図2bは、サンプル1の電池カソードのX線回折(XRD)スペクトルを示している。膜の構造は、ニッケルでフィルタしたCuKα線(λ=1.5406Å)で回折装置(Rigaku-Smartlab)を使用して、X線回折により特徴付けた。回折パターンは、10°<2θ<80°の範囲で、<5°の固定した入射角を使用して室温で得た。データは、0.04°/stepの分解能及び0.5s/stepのカウント時間のステップスキャンを使用して収集した。おおよそ37°のピークは、基板表面に平行に実質的に配向した結晶の(101)面に関係する。おおよそ66°のピークは、(110)面が基板に平行であるように実質的に配向する結晶に関係する。おおよそ55°のピークは、ガラス基板に関係し、LiCoO
2の結晶構造を決定するために、無視する必要がある。
【0119】
Fd3m空間群に関係する余分な反射光がないことは、堆積させるLiCoO
2が
であるという初期標識となる。
【0120】
(003)面に関係するピークもとりわけ存在しない。これは、(003)面が基板表面に平行になるように、極めて少ない結晶が配向していることを示唆する。このように極めて少ない結晶が配向していることは有益である。詳細な説明は本願の範囲を超えるが、簡潔には、(003)面が基板に平行になるように配列するのとは対照的に、(101)面及び(110)面が基板に平行になるようにより高比率の結晶が配列すると、イオン移動の見かけの抵抗がより低くなるため、カソードの使用可能容量が増加する。結晶は、結晶の長手方向軸が基板の法線であるように生じている。言い換えると、結晶がエピタキシャル成長で生じている。出願人は、プラズマを発生させるために使用される電力の、ターゲットのバイアスに関係する電力に対する比率が1:1より大きいと、ほとんどの場合、結晶材料が堆積することを見いだした。サンプル1では、比率が1800:500(3.6:1)であり、サンプル2では、1800:800(9:4)である。この例において、プラズマ発生源の電力効率が50%であると仮定して比率が計算されることに注意されたい。
【0121】
比較例では、プラズマ源電力を1kW、ターゲットへのバイアスに関係する電力を1kWとして実験を繰り返した。堆積した材料は、実質的にアモルファスであった。比較例の膜のカソードとしての性能を、電解質(この場合ではLiPON)及びアノード金属をカソード層上に堆積させ、それによって固体電池を作製することにより調査した。電池の充放電特性を調査したところ、カソードの比容量は約10mAh/gで不十分であることが分かった。サンプル1及びサンプル2で生じたような結晶性LiCoO2を使用して類似の電池を作製した場合、充放電特性がはるかに優れ、通常のカソード比容量は約120mAh/gであった。
【0122】
図2cは、サンプル1の電池カソードのラマンスペクトルを示している。膜の結合環境
は、ラマン分光法によって特徴づけられている。532nm励起を使用したJY Horiba LabRAM ARAMISイメージング共焦点ラマン顕微鏡を使用して、ラマンスペクトルを収集した
。600cm
-1における強く鋭いピークは、ピークの鋭さの非物質的な特質に起因する特異なピークであると考えてよい。487cm
-1で観測された強い特性ピークは、LiCoO
2の
の結晶構造に関係することが、当該技術分野で周知である。
【0123】
図2dは、サンプル2のカソードの(サンプル1と同じ方法で収集した)XRDスペクトルを示している。示されているスペクトルは、
図2bで示されるスペクトルと同様である。しかし、
図2dにおいて、おおよそ66°のピークの相対強度が、37°のピークの強度よりはるかに強くなっている。これは、サンプル2について、基板に平行な(110)面を有する結晶の数が、基板に平行な(101)面を有する結晶の数より多いことを示す。これは、薄膜のイオンチャネルが基板に垂直に配向し、カソードの結晶構造内から、格子間位置からのイオンのインターカレーション及びデインターカレーションが容易になることを意味するため、有益である。これは、カソードの使用可能容量及び充電速度を向上させる。
図2eは、サンプル2のカソードのラマンスペクトルであり、
図2cに適用した同一のコメントを
図2eに適用する。
【0124】
図3aから3cは、第3の例によるプラズマスパッタリングを使用して、表面に結晶材料の層を製造する方法の他の例を使用する代わりの装置例を示している。使用される装置及び製造の方法は、第1の例に関して説明した装置と同様である。ここでは、大きな相違のみ説明する。同一の部分は、同一の下二桁の参照数字で表示する。例えば、
図3aの回転ドラム334は、
図1aの回転ドラム134と同一である。
図3aの装置は、回転ドラム334を備え、該回転ドラム334上で、ポリマー基板328が、プロセスチャンバー322(明確にするために、チャンバーの壁は省略している)によって画定される領域内で支持される。ターゲットアセンブリ302は、複数のターゲットを備える。リチウム元素で構成される第一のターゲット304及びコバルト元素で構成される複数のターゲット303(ここでは、第二のターゲットと称する)が存在する。ターゲットは、基板328から約10cmの作動距離(作動距離は最も短いそれらの間の隔たりである)ですべて配置される。ドラム334に面する各ターゲット303、304の表面は、平らである(平面である)。ドラム334の半径は、作動距離よりもかなり大きい(説明の目的のため、図で示されているドラム334のサイズは、現実のものより比較的小さい)。ターゲット303、304は、ドラム334の円周の周りで周辺に配置される。装置は、スパッタされた材料が基板328に堆積するのを制限するために、シャッター336も備える。
【0125】
アルゴンイオンと電子から成るプラズマは、二つの一定間隔で離れた電動アンテナ316を用いて生成される。プラズマは、二組の電磁石308により制御される磁場によって閉じ込められ及び集められ、各組は、アンテナ316のうちの一つ及びシステムによって生成される電場に近接して配置される。プラズマの全体の形状(
図3cでプラズマ雲Bにより非常に概略的な方法で示されている90%最高濃度)は、プラズマ雲の長さ及び幅が厚さよりもはるかに大きい点でブランケット状である。プラズマの幅は、アンテナ316の長さによって部分的に制御される。二組のアンテナ316は、プラズマの長さに相当する距離だけ離れている。プラズマの長さ及び幅は、それぞれ基板の長さ及び幅と同一の一般的な方向である。
【0126】
プラズマ源は、ターゲットから離れて配置され、それゆえ、遠隔生成プラズマと考えてよい。系の理論的な平均自由行程(すなわち、プラズマ内のイオンの衝突から衝突までの平均距離)は約12cmであり、粒子の大部分が、プラズマ内の任意のアルゴンイオンと衝突せずにターゲットから基板まで移動することを意味する。
【0127】
図3aは、ドラム334上を移動する基板の一部を示す部分的な概略断面図であり、ターゲット303、304から基板に移動する粒子の軌跡を概略的に示している。それゆえ、第一のターゲット304から基板328の表面までの粒子の軌跡に対応する第一のプルーム、及び第二のターゲット303から基板328の表面までの粒子の軌跡に対応する第二のプルームが存在する。第一のプルームは、斑点領域で示され、各第二のプルームは、濃い灰色の領域で示されている。第一のプルームと第二のプルームが、基板に近接する領域で集中することが
図3aから分かるだろう。第一のターゲット304は、(この例において、ターゲット304の表面の中心から延びる概念的な線により画定される)第一の方向で基板に向かって面しており、
図3aで示されるように、左の隣接する第二のターゲット303は、(この例において、ターゲット303の表面の中心から延びる概念的な線により画定される)第二の方向で基板に向かって面している。第一の方向及び第二の方向は、基板に向かって集中しており、基板を少し過ぎた位置(位置は基板を約3cm過ぎた位置である)で交差する。酸素ガスは、制御された速度で、導入口325を通ってプロセスチャンバー322に供給される。基板はドラムの回転とともに移動するが、ターゲットは固定されている。他の例において、不活性のスパッタリングガスが、気体注入口(ここでは図示していないが、
図1aで示されるものと実質的に同一の形状である)を通って導入される。
【0128】
チャンバーに導入する酸素の量は、酸化リチウム及び酸化コバルトの異なる領域がターゲット304、303中にある場合、いくつかの他の例において減らしてもよく、そのようなターゲットの酸素含有量は、いくつかの例において、追加の酸素ガスをチャンバー322に導入する必要が全く必要ないほど高くてもよい。
【0129】
図3bは、ドラムからターゲットに向かって見た図である。
図3cは、第一のターゲット304、第二のターゲット303及びドラム334上の基板328の切断面を含む断面図である。
【0130】
図3c(断面図)において、第一のターゲット304が、各第二のターゲット303に対して曲げられていることが分かるだろう。
【0131】
この方法の実行において、生成されるプラズマは、第一のターゲット及び第二のターゲットから基板に材料をスパッタするために使用される。
【0132】
図3dで示されるように、リチウム元素材料は、所与のエネルギーで表面に到達するイオン当たりの原子の収率として測定されるスパッタ収率が、コバルトよりも低い(10keVで半分より小さい)。これに伴い、第一のターゲットに印加される(負)電位は、第二のターゲットに印加される電位よりも大きいマグニチュードを有する。また、第一のターゲットのプラズマに曝される表面積は、第二のターゲットの面積の和よりもわずかに大きい。それによって、基板の各ユニットに到達するイオン化されたLi原子の数は、基板の各ユニットに到達するイオン化されたCo原子の数と実質的に同一である。プラズマからの電子と同様に、イオン化された酸素原子も存在する。遠隔プラズマによって可能になる高エネルギー粒子は、六方晶の結晶構造を有する結晶性LiCoO
2材料を、原位置で基板の表面上に形成することを可能にする。プラズマからのより多数の高エネルギー粒子が、(第二のターゲットの両方の表面積全体にわたる合計の)第二のターゲット303よりも(ターゲットの表面積全体にわたる)第一のターゲット304に到達する。
【0133】
図3eは、第4の例に従う装置のさらなる例の概略断面図を示しており、
図3aから3cで示される断面図と同様であるが、該断面図において、ターゲットが移動し、ドラム334の周囲で組になって配置される。各組のターゲット(すなわち各アセンブリ302)は、ドラム上の基板に非常に近い位置に向かって面するように、角度を付けて配置される。各組302は、リチウム元素の第一のターゲット304及びコバルト元素の第二のターゲット303を備える。ターゲットは、基板から約15cmの作動距離で全て配置され、作動距離は、それらの間の最小の隔たりである。
系の理論的な平均自由行程(つまり、プラズマ内のイオンの衝突から衝突までの平均距離)は約20cmである。各組のターゲット(302)対して、使用中に、第一のターゲット(304)からの粒子の第一のプルーム及び第二のターゲット(303)からの粒子の第二のプルームが存在し、該プルームは、基板に近接する領域で集中する。メインドラム334の回転中心は、ターゲットの回転中心でもある。ターゲットは、回転中心の周りで、ドラムよりも遅い角速度で移動する。回転の原理で、ターゲットがプラズマの外に移動したときに、ターゲットを取り換えてもよく、それゆえ、移動する基板上に絶え間なく材料を堆積させることを可能にする。
【0134】
第2の例に従って作製される電池カソードの例を、
図4a、4b及び5aを参照して説明する。基板428、528は、集電層429、529を含み、この場合において集電層はプラチナの層であって、前記集電層上にLiCoO
2の層442、542を堆積させる。他の例において、別の不活性金属が集電層として使用され、例えば金、イリジウム、銅、アルミニウム又はニッケルが使用される。他のさらなる例においては、集電層は炭素ベースであってもよい。いくつかの例において、集電層は表面改質され、いくつかの例で、集電層は棒状構造を含む。
【0135】
図4a(膜を堆積させた第一のサンプルの断面図)及び
図4b(膜を堆積させた第二のサンプルの鳥瞰図)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真で示されるように、両サンプルのLiCoO
2膜層442、542は、実際は多結晶である。
図4a、4b及び5aの電池カソードは、第3の例の方法又は第4の例の方法に従って作製することもできる。
【0136】
第5の例に従ってカソード半電池を作製する方法を、
図5a(第一のサンプル)、
図5b(第二のサンプル)及び
図5cを参照して説明する。通常、参照数字3001で説明されるこの方法は、基板(この例において、集電層529を含む)に電池カソード材料542を堆積させること3002と、前記電池カソード材料542に電池電解質材料544を堆積させること3003とを含む。この例において、電解質544として堆積させる材料は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)である。他の例において、堆積させる材料は、別の適した電解質材料である。発明の第5の例のいくつかのサンプル(第二のサンプルなど)において、半電池が電極材料544を含んでもよく、第5の例の他のサンプルにおいて、半電池が電極材料544を含まなくてもよい(第一のサンプルなど)。
【0137】
この例においては、遠隔生成プラズマを使用して、第1の例、第2の例、第3の例又は第4の例におけるABO2材料と実質的に同一の方法で、LiPONを堆積させる。しかしながら、この例において、使用されるターゲット材料はLi3PO4であり、反応性窒素雰囲気で堆積が起こる。他の例において、ターゲットアセンブリが、リチウムの異なる領域及び/又はリン含有化合物、リチウム元素、又は酸化リチウムの異なる領域を有する多数のターゲットを含んでもよい。他の例において、堆積は、さらに反応性酸素雰囲気で起こる。
【0138】
第6の例に従って固体電池を作製する方法の例を、
図6を参照して説明する。この方法は、一般的に参照数字5001によって与えられ、該方法は、(例えば
図5b及び5cに関して上記で説明した)第6の例に従ってカソード半電池を作製すること5002、及び
前記カソード半電池をアノードと接触させること5003を含む。この例においては、遠隔プラズマスパッタリング、マグネトロンスパッタリング、CVDなどの便利な方法で、アノードを堆積させる。他の例においては、熱蒸着、eビーム蒸着、パルスレーザー堆積又は簡単なDCスパッタリングによって、アノードを堆積させる。
【0139】
第7の例に従って固体電池を作製する方法の例を、
図7aを参照して説明する。この方法は、一般的に参照数字6001によって与えられ、該方法は、固体薄膜電池の複数のカソード半電池を作製すること6002と、固体薄膜電池の複数のアノード半電池を作製すること6003と、前記カソード半電池及びアノード半電池を互いに接触させること6004とを含み、それによって少なくとも一つの電池を形成する。本発明の第7の例の第一のサンプルによってこのように作製される電池を、
図7bで概略的に示している。
図7bを参照すると、628及び628’は基板材料であり、629及び629’は集電層であり、642はカソード材料であって、この場合においてカソード材料はLiCoO
2であり、644はLiPONであって、電解質及びアノードの両方として働く。
【0140】
代わりに、他の例において、集電体材料はアノード材料として働く。代わりに、発明の第7の例の第二のサンプルにおいて、さらにアノード材料が堆積されてもよい。これは、
図7cにおいて概略的に示されている。
図7cを参照すると、628及び628’は基板材料であり、629及び629’は集電層であり、642はカソード材料であって、この場合ではLiCoO
2であり、644はLiPONであって、電解質として働き、646は適切なアノード材料である。
【0141】
第8の例に従って層状酸化物材料を堆積させるために構成される遠隔プラズマ堆積システムに最適な作動距離を決定する方法の例を、
図8aを参照して説明する。この方法は、通常、数字7001によって説明され、
・ 作動距離の範囲を選択すること7002であって、前記範囲内の作動距離が
系の理論的な平均自由行程の+/-50%であることと、
・ 多数の試験試料について、選択した範囲内の異なる作動距離で、第1の例による材料を堆積させる方法を、各試料に対して実行すること7003と、
・ 堆積が起こった後、各試験試料上で層状酸化物構造の特有の特徴を決定できる特性評価技術を実行すること7004と、
・ 前記特有の性質が存在する試料を識別すること7005と、
・ それらの試料から(正規化された)前記特性ピークの強度が最も高い試料を選択すること7006、及び続いて、前記試験試料の堆積の間に使用された作動距離に対する
系の作動距離を選択すること7007と、を含む。
【0142】
この第8の例において、使用される特性評価技術はX線回折であり、特有の性質は一つの回折ピーク又は一連の回折ピークである。
図8bには、異なる作動距離で堆積させた膜の記録された多数のX線回折パターンが示されている。一番上の回折パターンから一番下の回折パターンは、それぞれ作動距離が、5cm(731)、8cm(733)、12cm(735)及び15cm(737)である。図から分かるように、8cmの作動距離が、19度2θ(六方晶のLiCoO
2に必要なピーク位置739の一つであり、この特定のピークは立方晶構造のLiCoO
2又はスピネル構造のLiCoO
2では存在しない)で最も高い強度のピーク733を示している。それゆえ、この例においては、8cmを作動距離として選択する。他の例において、X線回折と異なる他の特性評価技術が使用されてもよい。5cmの作動距離について測定された回折パターン731の強度は、8cmの作動距離の回折パターン733よりも19度2θにおける強度が低い。12cmの作動距離について収集した回折パターン735及び15cmの作動距離について収集した回折パターン737は、19度2θにおける六方晶の特性ピークを全く示していない。
【0143】
いくつかの例において、この方法の試験試料は、多数の試験試料についての平均値に置き換えられ、該試験試料は、多数の試験試料を含み、第1の例の方法が、同一の作動距離で多数回実行され、平均値が取られている。いくつかの例において、この方法は、システムを操作するために最適な作動距離を見いだせるように多数回実行してもよい。
【0144】
図9aは、第8の例の方法を実行する間に、第1の例に従って形成されたサンプルを示しており、また、
図9aは、作動距離が短すぎる場合の堆積によって生じる(望ましくない酸化物を有する)損傷した基板表面を示している。この例において、作動距離は5cmであり、堆積した材料はLiCoO
2であった。図から分かるように、結晶が基板表面全体にわたって生じておらず、基板が変形していることが分かる。加えて、Co(II)Oの領域、すなわち望ましくない酸化コバルトの相が、この作動距離で基板上に生じることがわかる。これは、
図9bで示されるスペクトルによって確認でき、
図9bは、六方晶のLCOの(2θの五つの値839で特定される)ピークに加えて、作動距離が5cmであるサンプルについて得られる回折パターン831で検出される(2θの二つの値843で特定される)Co(II)Oの相に関係するピークを示している。六方晶のLiCoO
2とCO(II)Oの相の両方を含む構造改良モデル831’は、831の収集した回折パターンから得た。回折パターン831と改良モデル831’の差は、差分線841によって示されている。それゆえ、第8の例の方法の間、過度に短い作動距離は、最適な作動距離として選択されない。
【0145】
第9の例に従って層状酸化物材料の堆積させるために構成される遠隔プラズマ堆積システムの作動圧力の最適な範囲を決定する方法の例を、
図10aを参照して説明する。この方法は、通常、数表示8001によって説明され、該方法は、
・ 0.00065mBarから0.01mBar(任意で、0.001mBarから0.007mBar)で、作動圧力の初期範囲を選択すること8002と、
・ 多数の試験試料について、選択した範囲内の異なる作動圧力で第1の例に従って材料を堆積させる方法を、各試料に対して実行すること8003と、
・ 堆積が起こった後、各試験試料上で、層状酸化物構造の特有の性質を決定できる特性評価技術を実行すること8004と、
・ 層状酸化物材料の特有の特徴を表す試験試料のグループから、最も低い作動圧力で堆積させた試験試料を選択すること8005、及びこの作動圧力を範囲の下限として設定すること8006と、
・ 観測可能な基板への損傷の兆候を示さない試験試料のグループから、最も高い作動圧力で堆積させた試験試料を選択すること8007、及びこの作動圧力を範囲の上限として設定すること8008と、を含む。
【0146】
第9の例において、使用される特性評価技術はX線回折であり、特有の特徴は、層状酸化物材料の特性X線回折ピークを含む特徴である。
図10bは、ある作動圧力より低いと、この特有の特徴が存在しないことを示すX線スペクトル例を示している。この例において、0.0046mBarで堆積させたサンプルのパターン947中の19度2θにおけるピークの存在は、六方晶の結晶相の形成につながり、0.0012mBarで堆積させたサンプルのパターン945は、ピークが存在しないことによって示されるように、六方晶の結晶相の形成につながらない。他の例において、特性評価技術は、X線回折ではなく他のものが使用されてもよい。
【0147】
さらなる例において、この方法の試験試料は、多数の試験試料についての平均値と置き換えられ、該試験試料は、第1の例の方法が、同一の作動圧力で多数回実行され、平均を取られている、多数の試験試料を含む。
【0148】
いくつかの例において、この方法は、所望の範囲内で系の最適な作動圧力を選択することも含む。この例において、最適な作動圧力は、最も速い堆積をもたらす範囲内の作動圧力である。
【0149】
第10の例に従って層状酸化物材料の堆積させるための結晶サイズを決定する方法の例を、
図11aを参照して説明する。この方法は、通常、数表示9001によって説明され、該方法は、
・ 0.00065mBarと0.01mBarから作動圧力の初期範囲を選択すること9002と、
・ 多数の試験試料について、選択した範囲内の異なる作動圧力で第1の例による材料を堆積させる方法を、各試料に対して実行すること9003と、
・ 堆積が起こった後、各試験試料の各膜の結晶サイズを決定できる特性評価技術を実行すること9004と、を含む。
【0150】
作動圧力の選択される範囲は、例えば0.001mBarから0.007mBarであってもよい。
【0151】
図11bは、所与の範囲の作動圧力で第10の例の方法を実行した後、16cmの作動距離について、0.001mBarと0.0065mBarの間の異なる作動圧力で、第1の例に従って堆積させた多数の膜で生じる結晶サイズの範囲が、
図11cと比べると比較的広いことを示すグラフである。
【0152】
図11cは、所与の範囲の作動圧力で第10の例の方法を実行した後、8.5cmの作動距離について、0.001mBarと0.0065mBarの間の異なる作動圧力で、第1の例に従って堆積させた多数の膜で生じる結晶子のサイズの範囲が、
図11bと比べると比較的狭いことを示すグラフである。
【0153】
結晶サイズの狭い分布を有することは、工業規模で堆積させる膜の結晶サイズを、予測可能かつ繰り返し可能にするため、有益である。
【0154】
第11の例に従って基板上に材料を堆積させる方法の例を、
図12を参照して説明する。この方法は、通常、数表示1101によって説明され、該方法の例は、
・ プラズマスパッタリングに適した一つ又は複数のプラズマターゲットから離れたプラズマを発生させること1102と、
・ 一つ又は複数のプラズマターゲットをプラズマに曝すこと1103であって、それによって一つ又は複数のターゲットからスパッタされた材料を発生させることと、
・ 基板の第一の部分上にスパッタされた材料を堆積させること1104と、を含む。
【0155】
第11の例により説明するように、基板上に材料を堆積させる方法は、この例においては、ターゲット材料は任意の材料であってもよいが、第1の例の堆積のすべての特徴を含む。この例において、ターゲット材料は結晶構造であるが、他の例において、堆積させる材料は半結晶構造又はアモルファスであってもよい。
【0156】
第12の例も示されており、第12の例は、基板を備える電子デバイスの部品を製造する方法に関し、
図13を参照して説明する。この方法は、通常、数表示1201によって説明され、第11の例で説明したような方法を使用して、基板に材料を堆積させること1202を含む。この例における第11の例の方法は、多層膜を堆積させるために、複数回実行される1203。この例において、多層膜のうち少なくともいくつかは、半導体層であってもよい。この例では、それゆえ、この方法は半導体デバイス及びその一部を製造する方法である。この例においては、電子デバイスを製造するために、隣接する層を、異なるパラメーター及び/又は各層の堆積に使用される異なるターゲット材料で堆積させる。
他の例においては、複数の材料の層の多層膜を、実質的に同一のターゲット材料及び実質的に同一のパラメーターで堆積させる。
【0157】
この例において、基板は一つの中間層を含み、該中間層は、任意で集電層として働いてもよい。他の例においては、より多くの中間層が存在し、堆積ステップ中の付着に役立つ。いくつかの他の例において、中間層は存在しない。基板への中間層の堆積は、第11の例で説明した方法に従って実行してもよい。他の例において、基板への中間層の堆積は、スパッタリング、熱蒸着、電子ビーム蒸着、パルスレーザー堆積、又は他の薄膜堆積技術などの他の適切な堆積技術により実行される。
【0158】
この例において、本方法は、材料の第一の半導体層を堆積させることを含む。この例では、第一の半導体層を、材料の中間層の上に堆積させる。他の例において、第一の半導体層を、基板上に直接堆積させる。この例では、第一の半導体層はケイ素を含む。他の例において、第一の半導体層はアルミニウムを含み、さらなるいくつかの例では、窒化ガリウムを含む。材料の半導体層が窒化ガリウムである例において、反応性窒素雰囲気下で堆積が起こる。この例では、材料の第一の半導体層はn型にドープされる。これは、この例において、リン含有化合物を含むターゲットをスパッタすることによって得られる。他の例において、これは、ヒ素、アンチモン、ビスマス又はリチウムなどの異なるドーパントを使用することによって得られる。さらなるいくつかの例において、材料の半導体層は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム又はインジウムなどのドーパントによってp型にドープされる。さらなる例では、材料の半導体層はドープされず、真性半導体である。それらの例のいくつかにおいて、ドーパント材料が、スパッタされ得る材料として導入されず、代わりに、ドーパントが半導体層の表面に拡散するように、堆積後に気体として導入される。
【0159】
この例において、本方法は、材料の第一の半導体層の上に材料の第二の半導体層を堆積させることを含む。他の例においては、材料の第二の半導体層を、基板上又は(もしあれば)中間層上に直接堆積させる。この例において、材料の第二の半導体層は、真性半導体である。この例では、材料の第二の導電層は窒化ガリウムである。さらなる例において、材料の第二の半導体層は、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス又はリチウムなどのドーパントでn型にドープされる。いくつかのさらなる例において、材料の第二の半導体層は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム又はインジウムなどのドーパントでp型にドープされる。それらの例のいくつかでは、ドーパント材料は、スパッタされ得るターゲットとして導入されず、代わりに、ドーパントが半導体層の表面で拡散するように、堆積後に気体として導入される。
【0160】
この例において、本方法は、材料の第三の半導体層を堆積させることを含む。この例では、第三の半導体層を、材料の第二の半導体層の上に堆積させる。他の例においては、第三の半導体層を、第一の半導体層、第二の半導体層、中間層又は基板上に直接堆積させる。この例では、第三の半導体層はケイ素を含む。他の例において、第三の半導体層はアルミニウムを含み、さらなるいくつかの例においては、窒化ガリウムを含む。半導体層の材料が窒化ガリウムであるいくつかの例において、反応性窒素雰囲気下で堆積が起こる。この例では、材料の第三の半導体層はp型にドープされる。この例において、これは、ホウ素含有化合物を含むターゲットをスパッタすることによって得られる。他の例において、これは、アルミニウム、ガリウム又はインジウムなどの異なるドーパントを使用することにより得られる。いくつかのさらなる例において、材料の第三の半導体層は、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス又はリチウムなどのドーパントでn型にドープされる。さらなる例では、材料の第三の半導体層は、ドープされず、真性半導体である。それらの例のいくつかにおいて、ドーパント材料は、スパッタされ得るターゲットとして導入されず、代わりに、ドーパントが半導体層の表面で拡散するように、堆積後に気体として導入される。
【0161】
この例の方法は、p-n接合又はp-i-n接合を形成するために使用してもよい。
【0162】
この例において、さらなるドーパントは、今まで説明した半導体層のいくつかに導入されない。いくつかの例では、ゲルマニウムが、第一の層、第二の層及び/又は第三の層にドーパントとして導入される。ゲルマニウムは、電子デバイスのバンドギャップを変化させ、材料の各半導体層の力学的性質を向上させる。いくつかの例において、窒素が、材料の第一の層、第二の層及び/又は第三の層にドーパントとして導入される。窒素は、形成される半導体層の力学的性質を向上させるために使用される。
【0163】
第13の例も示されており、該第13の例は、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)の結晶層を製造する方法に関し、
図14を参照して説明する。この方法は、通常、数表示1301により説明され、第11の例で説明した方法を使用すること1302を含み、YAGは、少なくとも一つのf-ブロック遷移金属でドープされる1303。
【0164】
この例において、ドーパント材料は、ランタノイドである。
【0165】
この例において、ドーパント材料は、ネオジムを含む。他の例において、ドーパント材料は、ネオジムに加えてクロム及びセリウムを含む。この例では、材料の結晶層は、1.0モル%のネオジムを含む。また、いくつかの例において、材料が、0.5モル%のセリウムを含む。
【0166】
他のさらなる例において、ドーパント材料はエルビウムを含む。この例において、ドーパント材料はターゲットとして提供され、第11の例で説明したようにスパッタされる。このさらなる例の材料の結晶層は、40モル%のエルビウムを含む。一例では、材料の結晶層は、55%のエルビウムを含む。
【0167】
他のさらなる例において、ドーパント材料はイッテルビウムを含む。それらの例のうち一つにおいて、材料の結晶層は15モル%のイッテルビウムを含む。
【0168】
他のさらなる例において、ドーパント材料はツリウムを含む。さらなる例では、ドーパント材料はジスプロシウムを含む。さらなる例では、ドーパント材料はサマリウムを含む。さらなる例では、ドーパント材料はテルビウムを含む。
【0169】
他のさらなる例において、ドーパント材料はセリウムを含む。ドーパント材料がセリウムを含むいくつかの例では、ドーパント材料はガドリニウムも含む。
【0170】
いくつかの例において、一つ又は複数のターゲットの異なる領域として供給されるドーパント材料の代わりに、結晶材料の層の堆積後、ドーパント材料を気体として供給することによって、結晶材料の層に拡散するように、少なくとも部分的にドーパント材料が導入される。
【0171】
第14の例によると、発光ダイオードを製造する方法が示されており、該方法は、
図15を参照して説明する。この方法は、通常、数表示1401によって説明され、第12の例による方法を実行すること1402と、その後又はそのときに、第13の例による方法を実行すること1403と、を含み、第13の例の方法の間に使用されるドーパントはセリウムを含む1404。この例において、セリウムドープYAGの層は、LEDでシンチレーターとして使用される。
【0172】
第12及び13の例による方法は、同一のプロセスチャンバー内で実行されてもよい。
【0173】
第15の例によると、永久磁石を製造する方法が示されており、該方法を、
図16を参照して説明する。この方法は、通常、数表示1501によって説明され、第11の例による方法を実行すること1502を含み、供給される一つ又は複数のターゲットの異なる領域が、ネオジム、鉄、ホウ素及びジスプロシウムを含み1503、この方法は、材料の層が永久磁石になるように膜を処理すること1504を含む。
【0174】
この例において、材料の最終層は、6.0モル%のジスプロシウムを含む。さらなる例において、ジスプロシウムのモル%は、6.0モル%より小さい。
【0175】
本方法が提供する高いターゲット利用率は、ジスプロシウムなどの希少な元素から電子デバイスを作るときに有益である。ジスプロシウムが、限られた地球存在度の中で利用でき、高いターゲット利用率の堆積システムは、材料の損失をより少なくする。
【0176】
第16の例によると、酸化インジウムスズ(ITO)の層を製造する方法が示されており、
図17を参照して説明する。この方法は、通常、数表示1601によって説明され、第11の例による方法を実行すること1602を含み、供給されるターゲットの異なる領域が、インジウムとスズを含む1603。堆積1604で、材料の透明な結晶層を基板上に直接形成する方法で、ITOの層を堆積させる。他の例において、複合ターゲットが使用され、該複合ターゲットは、インジウムとスズを両方含む。他のさらなる例において、複合ターゲットは、インジウムとスズの酸化物を含む。それゆえ、使用されるターゲットの数は、さらなる例で異なってもよいし、単一のターゲットが使用されてもよい。
【0177】
他のさらなる例において、ターゲットは、インジウム酸化物又はスズ酸化物を含んでもよい。基板上に酸化インジウムスズを形成するために、ターゲットからスパッタされた材料が酸素と反応するように、さらなる例における堆積プロセスは酸素を供給することを含む。
【0178】
第17の例によると、個別に示していないが、光電池を製造する方法が示されている。この例において、本方法は、第15の例で説明したようにITOの堆積をさらに含む。さらなる例では、ITOの層を堆積させない。この例において、半導体材料のn型ドープされた層と半導体材料のp型ドープされた層の間に、ペロブスカイト材料の層を堆積させることも含む。この場合においては、材料のペロブスカイト層を、説明した第11の例の方法によって堆積させる。さらなる例においては、物理気相成長又は湿式化学手法などの他の適した方法によって堆積させる。さらなる例では、材料のペロブスカイト層を堆積させない。
【0179】
代わりの例において、本方法は、第11の例に従って、セレン化銅インジウムガリウムの層を堆積させることを含む。銅、インジウム、ガリウム及びセレン化物は、一つ又は複数のターゲットの異なる領域として提供される。この例において、銅は、元素ターゲットとして提供され、インジウム、ガリウム及びセレン化物は、酸化物ターゲットとして提供される。さらなる例では、酸化物、元素、化合物又は複合物のターゲットの他の組み合わせが使用される。それゆえ、使用されるターゲットの数は、さらなる例において異なってもよいし、単一のターゲットが使用されてもよい。
【0180】
いくつかの例において、本方法は、第11の例に従って硫化カドミウムの層を堆積させることを含む。この例では、カドミウムと硫化物は、酸化物生成のターゲットの異なる領域として提供される。酸化物、元素、化合物又は複合物のターゲットの他の組み合わせが、さらなる例で使用される。それゆえ、使用されるターゲットの数は、さらなる例におい
て異なってもよいし、単一のターゲットが使用されてもよい。
【0181】
いくつかの例において、本方法は、第11の例に従ってテルル化カドミウムの層を堆積させることを含む。カドミウムとテルル化物は、この例において元素ターゲットの異なる領域として提供される。他の例において、カドミウム及びテルル化物は、元素、酸化物、複合物又は任意のそれらの組み合わせの一つ又は複数のターゲットの異なる領域として提供される。それゆえ、使用されるターゲットの数は、さらなる例において異なってもよいし、単一のターゲットが使用されてもよい。
【0182】
前述の説明では、特定の例に関して説明し、図示したが、当業者は、この発明が本明細書では具体的に示されていない多くの異なる変化に適していることを、理解するであろう。単なる例として、ある可能な変化の例を説明する。
【0183】
前述の説明において、既知の、自明な又は予測可能な均等物を有する整数又は要素が言及される場合、そのような均等物が、個別に示されるように本明細書で組み入れられる。例の正確な範囲を決定するために特許請求の範囲を参照すべきであり、特許請求の範囲は、任意のそのような均等物を含むように解釈されるべきである。また、好ましい、有利な、便利な又は類似のものとして説明されている発明の整数又は特徴は、任意であり、独立請求項の範囲を限定しないことを読者に理解されたい。さらに、そのような任意の整数又は特徴は、発明のいくつかの実施形態では見込まれる利益が望ましくないことがあり、それゆえ、他の実施形態ではなくてもよいことを理解されたい。