(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】制御された弁流量のための構成及び方法
(51)【国際特許分類】
F16K 1/52 20060101AFI20240913BHJP
G05D 7/06 20060101ALI20240913BHJP
F16K 47/08 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
F16K1/52 E
G05D7/06 Z
F16K47/08
(21)【出願番号】P 2022528641
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 US2020060824
(87)【国際公開番号】W WO2021101855
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-11-14
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518337784
【氏名又は名称】スウェージロック カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】グリム,ウィリアム エイチ.サード
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/182756(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/52
G05D 7/06
F16K 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動弁アセンブリであって、
入口通路と出口通路との間に配置された弁座、及び前記入口通路及び前記出口通路のうち少なくとも一方の中に設けられた固定オリフィス制限部を含む弁体と、
前記弁体と一緒に組み立てられ、かつ、前記入口通路と前記出口通路との間の流れを遮断するべく前記弁座と密封係合する閉位置と、前記入口通路と前記出口通路との間の流れを許容するべく前記弁座から離間される開位置との間で軸方向に移動可能な弁要素と、
前記弁体と一緒に組み立てられ、かつ、前記閉位置と前記開位置との間での前記弁要素の軸方向移動のために前記弁要素と接続されたアクチュエータと、
前記弁座及び前記弁要素に関連する弁座環周流れ面積を、最大開位置での最大弁座環周流れ面積から、減少した閉位置における減少した弁座環周流れ面積に調整するべく前記弁要素の動きを制限するために、前記開位置を最大開位置から減少した開位置に調整するように動作可能なストローク調整機構と、
を備える、作動弁アセンブリであり、
前記作動弁アセンブリは、前記固定オリフィス制限部の第1の流量係数、及び前記固定オリフィス制限部なしでの前記作動弁アセンブリの残部の第2の流量係数に基づく有効流量係数を有し、
前記第2の流量係数対前記第1の流量係数の比は、最大有効流量係数に対応する、前記弁要素が前記最大開位置にあるときの3:2と4:1との間にあり、
前記固定オリフィス制限部は、前記第2の流量係数を半分だけ減少させる前記ストローク調整機構の動作が、前記有効流量係数の前記最大有効流量係数から8%の減少を提供するようにサイズ決定されている、作動弁アセンブリ。
【請求項2】
前記アクチュエータは、アクチュエータハウジング内の、かつ、前記開位置への前記弁要素の移動のための付勢ばねに抗するピストンの加圧移動のために加圧ガスを受け入れるアクチュエータポートを有する、前記閉位置に付勢された空気圧アクチュエータばねを備える、請求項1に記載の作動弁アセンブリ。
【請求項3】
前記弁要素は、ステム先端を有する軸方向に移動可能なステムを含み、前記ステム先端は、前記ステムの端部分と一緒に組み立てられ、前記ステム先端は、前記閉位置において前記弁座との密封係合のための環状シールを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の作動弁アセンブリ。
【請求項4】
前記固定オリフィス制限部は、前記弁体と一体的に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の作動弁アセンブリ。
【請求項5】
前記固定オリフィス制限部は、前記入口通路によって画定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の作動弁アセンブリ。
【請求項6】
前記ストローク調整機構は、前記アクチュエータのアクチュエータポート内に設置されたアパーチャ付きセットスクリューを含み、前記アパーチャ付きセットスクリューは、前記弁要素の開位置を制限するためにアクチュエータピストンの停止位置を定めるように軸方向位置の範囲にねじ回し式に調整可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載の作動弁アセンブリ。
【請求項7】
前記作動弁アセンブリは、前記弁座及び前記弁要素に起因する弁流量係数公差、及び前記固定オリフィス制限部に起因するオリフィス流量係数公差に基づいて有効流量係数公差を示し、前記ストローク調整機構は、弁流量係数範囲の上半分内の部分的に開かれた弁流量係数に前記開位置を調整することによって前記有効流量係数公差を排除するように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の作動弁アセンブリ。
【請求項8】
前記固定オリフィス制限部は、前記弁座から軸方向に離間されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の作動弁アセンブリ。
【請求項9】
前記固定オリフィス制限部は、前記入口通路と連続している、請求項8に記載の作動弁アセンブリ。
【請求項10】
作動弁アセンブリの所定の流量係数を設定する方法であって、前記方法は、
請求項1~9のいずれか一項に記載の作動弁アセンブリを提供することと、
前記所定の流量係数に対応するように前記有効流量係数を調整するべく前記ストローク調整機構を調整することと、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月18日に提出された、ARRANGEMENTS AND METHODS FOR CONTROLLED VALVE FLOW RATEと題する米国仮特許出願第62/936,769号の優先権及びすべての利益を主張し、その開示内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
作動弁は、流体源から構成要素への流体の適用を制御するためにしばしば使用される。いくつかの適用では、処理された構成要素の特性が適格であることを保証するために、正確で一貫した流量が必要とされる。一例として、膜厚とエッチング深さが重要なパラメータである半導体ウェハへの成膜において、開位置で所望の流れ能力又は流量係数Cvを有する作動弁が、制御された量の流体を供給するために使用される。このような弁の流量係数Cvは、例えば、ISA S75.02及びCvの測定及び計算のための他の従来の規格に記載されているように、流量試験及び方程式に基づいて流体システムパラメータ(例えば、流量、圧力損失、温度等)の測定値を使用して、又は流れをモデル化してCvを推定するために計算流体力学(CFD)を採用することによって、算出することが可能である。
【0003】
従来の作動弁を通る流量は、たとえ(例えば、全開又は部分開弁状態で)所望の流量設定に作動可能であっても、例えば、流体圧力及び/又は温度の変化、弁座及び/又は弁シール部材の変形、又は弁及び/又は弁アクチュエータ内の作動に対する抵抗に起因する小さな変動にさらされることがある。このような流量の変動は、システム及び/又は生産された構成要素が要求仕様を満たさず、システムのダウンタイム(弁の修理及び/又は調整のための)及び/又は生産性の損失をもたらす可能性がある。また、複数のシステムが並行して動作し、同一の出力が求められる生産環境では、他のシステムの相当弁と同一の流量出力を持つ弁を有することは有益である。
【発明の概要】
【0004】
本開示の例示的な実施形態において、作動弁アセンブリは、入口通路と出口通路の間に配置された弁座、及び入口通路と出口通路の少なくとも一方に設けられた固定オリフィス制限部を有する弁体と、弁体と一緒に組み立てられ、閉位置と開位置の間で軸方向に移動可能な弁要素と、弁体と一緒に組み立てられ、弁要素の閉位置と開位置の間の軸方向移動のために弁要素と接続されているアクチュエータとを含む。アクチュエータは、弁要素が開位置にあるときの最大弁座環周流量(seat annulus flow coefficient)係数から弁座及び弁要素に関連する弁座環周流量係数を調整するために、弁要素の移動を制限するために開位置を調整するように動作可能なストローク調整機構を含む。最大弁座環周流量係数対固定オリフィス制限部に関連するオリフィス流量係数の比は、約2:1~約8:1の間、又は約3:1~約5:1の間である。
【0005】
本開示の別の例示的な実施形態において、作動弁アセンブリは、入口通路と出口通路の間に配置された弁座、及び入口通路と出口通路の少なくとも一方に設けられた固定オリフィス制限部を含む弁体と、弁体と一緒に組み立てられ、閉位置と開位置の間で軸方向に移動可能な弁要素と、弁体と一緒に組み立てられ、弁要素の閉位置と開位置の間の軸方向移動のために弁要素と接続されているアクチュエータとを含む。アクチュエータは、弁要素が開位置にあるときの最大弁座環周流れ面積(seat annulus flow area)から弁座及び弁要素に関連する弁座環周流れ面積を調整するために、弁要素の移動を制限するために開位置を調整するように動作可能なストローク調整機構を含む。最大弁座環周流れ面積対固定オリフィス制限部の流れ面積の比は、約2:1~約8:1の間、又は約3:1~約5:1の間である。
【0006】
本開示の別の例示的な実施形態において、作動弁アセンブリは、入口通路と出口通路の間に配置された弁座、及び入口通路と出口通路の一方に設けられ、第1の流れ面積を有する固定オリフィス制限部を有し、入口通路と出口通路の他方は第2の流れ面積を有する弁体と、弁体と一緒に組み立てられ、閉位置と開位置の間で軸方向に移動可能な弁要素と、弁体と一緒に組み立てられ、弁要素の閉位置と開位置の間の軸方向移動のために弁要素と接続されているアクチュエータとを含む。第2の流れ面積対第1の流れ面積の比は、約3:2と約5:1の間、又は約2:1と約4:1の間である。
【0007】
本開示の別の例示的な実施形態において、作動弁アセンブリは、入口通路と出口通路の間に配置された弁座、及び入口通路と出口通路の少なくとも一方に設けられた固定オリフィス制限部を含む弁体と、弁体と一緒に組み立てられ、閉位置と開位置の間で軸方向に移動可能な弁要素と、弁体と一緒に組み立てられ、弁要素の閉位置と開位置の間の軸方向移動のために弁要素と接続されているアクチュエータとを含む。作動弁アセンブリは、固定オリフィス制限部なしで提供され、その結果入口通路と出口通路の両方が第2の流れ面積を有する場合、第1の最大流量係数を有し、固定オリフィス制限部を有する作動弁アセンブリは第2の最大流量係数を有し、第1の最大流量係数対第2の最大流量係数の比は約2:1と約5:1の間、又は約3:1と約4:1の間である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】オリフィス直径の関数として、0.0005インチ又は0.001インチの直径公差を有するオリフィスの有効流量変動を示すグラフである。
【
図2】弁対オリフィス流量係数(Cv)比の範囲に対する流量性能特性を示すグラフである。
【
図3】1%のオリフィスCv変動を排除するために必要な弁Cv調整を、弁対オリフィスCv比の関数として示すグラフである。
【
図4】閉(無流量)状態からのストロークの関数としての流量係数を示すグラフである。
【
図5】固定オリフィス制限部を有する弁体と、ストローク調整機構を含むアクチュエータとを含む例示的な作動弁を概略的に示る。
【
図6】固定オリフィス制限部を有する弁体と、ストローク調整機構を含むアクチュエータとを含む例示的な作動弁を示す。
【
図7】固定オリフィス制限部を含む弁アセンブリに対する弁流れドリフトの影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の様々な発明的態様、概念、及び特徴は、例示的な実施形態において組み合わせて具体化されるものとして本明細書に記載及び示され得るが、これらの様々な態様、概念及び特徴は、個別に又はそれらの様々な組み合わせ及び下位組み合わせにおいて、多くの代替の実施形態において使用することができる。本明細書で明示的に除外されない限り、すべてのそのような組み合わせ及び下位組み合わせは、本発明の範囲内にあることが意図される。さらに、本発明の様々な態様、概念及び特徴に関する様々な代替実施形態-例えば、代替材料、構造、構成、方法、回路、装置及び構成要素、形態、適合性及び機能に関する代替など-が本明細書に記載され得るが、かかる記載は、現在知られているか後に開発されるかどうかにかかわらず、利用可能な代替実施形態の完全又は網羅的なリストであることを意図するものではない。当業者は、本発明の態様、概念又は特徴の1つ又は複数を、たとえそのような実施形態が本明細書に明示的に開示されていなくても、本発明の範囲内で追加の実施形態及び用途に容易に採用し得る。さらに、本発明のいくつかの特徴、概念又は態様が好ましい配置又は方法であるとして本明細書に記載されることがあっても、そのような記載は、明示的にそう記載されない限り、そのような特徴が必要又は不可欠であることを示唆することを意図するものではない。さらに、本開示の理解を助けるために、例示的又は代表的な値及び範囲が含まれる場合があるが、そのような値及び範囲は、限定的な意味で解釈されるものではなく、そのように明示的に記載されている場合にのみ、重要な値又は範囲であることが意図される。「およそ」又は「約」付きの指定された値として識別されるパラメータは、明示的に別段の記載がない限り、指定された値、指定された値の5%以内の値、及び指定された値の10%以内の値を含むように意図されている。さらに、本開示に付随する図面は、一体の縮尺であり得るが、そうである必要はなく、したがって、図面に明らかな様々な比率及び割合を教示するものとして理解され得ることが理解されよう。さらに、様々な態様、特徴及び概念は、発明的であるか又は発明の一部を形成するものとして本明細書に明示的に特定され得るが、かかる特定は排他的であることを意図しておらず、むしろ、そのように又は特定の発明の一部として明示的に特定されずに本明細書に完全に記載されている発明的態様、概念及び特徴が存在し得、発明は代わりに添付の請求項に規定されている。例示的な方法又はプロセスの記載は、すべての場合に必要であるとしてすべてのステップを含めることに限定されず、また、ステップを提示する順序は、明示的にそう記載されない限り、必要又は不可欠であるものとして解釈されるものではない。
【0010】
本開示は、弁要素の限定的な作動によって流量を調整可能にしながら、例えば、弁を通る流れの一貫性及び均一性を確立し、時間の経過とともに流れの偏差を最小にする、作動式遮断弁を通る流量を制御する配置及び方法を企図する。
【0011】
システム内の弁は、しばしば、本質的に3つのタイプの流量偏差にさらされる。寸法に基づく流量偏差は、弁構成要素の幾何学的/寸法公差に起因し得る。この結果、「箱から出してすぐ」、あるいは弁が使用される前に、弁間で±10%以上の流量係数の偏差が発生する可能性がある。サイクルに基づく流量偏差(又は「弁ドリフト」)は、弁座やシール要素の摩耗や変形、弁やアクチュエータの作動に対する抵抗、又は他のそのような条件に起因し得る。システムに基づく流量偏差(又は「弁シフト」)は、例えば、温度変化(例えば、弁座の熱膨張をもたらす)や圧力変化(例えば、ダイヤフラム/ベローズの高さの変化をもたらす)を含む、システム条件の変化に起因し得る。いくつかの用途では、例えば、多くの半導体ウェハ処理用途のように、並行して使用される複数の弁が、各弁を通じて正確で一貫した(又は「整合した」)流れを提供することが求められるシステムにおいてなど、小さな流量の偏差でさえも重要である場合がある。システム内の弁は、同じ割合で弁ドリフト及び/又は弁シフトを経験することを当てにできないので、当初は適切に一貫した流量を提供するシステム内の弁は、時間の経過とともに、より大きく許容できない程度に互いに逸脱する可能性がある。
【0012】
従来の弁は、例えば、弁要素の開位置を手動又は自動で調整することにより(例えば、閉位置からの弁要素のストローク量を変えることにより)、弁の開位置における弁要素(例えば、ステム先端、ダイヤフラム)と弁座との間の流れ面積(「弁座環周流れ面積」)を最大弁座環周流れ面積から調整し、弁の対応する流れ能力又は流量係数を最大流れ能力又は流量係数から調整するように、流量偏差を補償するように調整可能である。このような調整により、(弁製造業者による、又は初期設置時の)弁間の「箱から出してすぐ」の流量偏差を効果的に補正することができる。しかしながら、これらの調整は、一般に、使用中の弁の弁ドリフト又は弁シフトを補正する際に反応的であり、弁流量が許容範囲又は公差から外れるまで実施されない。その結果、廃棄又は再加工しなければならない流体処理された製品、及び/又は必要な弁調整を行うためのシステムのダウンタイムが生じることがある。ある用途では、ドリフトを補正するための弁の調整は、装置の停止を必要とし、そのような中断はコストと時間のかかるものとなり得る。
【0013】
本開示の例示的な態様によれば、(例えば、上述の要因のために)必要以上の流れ能力と所望以上の流量公差とを有する弁は、流れ能力の低下を必要な流れ能力に制限するのに十分大きい一方、流量偏差を許容できる流量公差に低減するのに十分小さい、精密成形(例えば、リーミング)された固定オリフィス制限部を有する流路(例えば、弁座から上流及び/又は下流)を有するように適合されることができる。固定オリフィス制限部は、弁サイクル又はシステム条件の変化によって著しく影響を受ける構成要素を含まないので、固定オリフィス制限部に起因する流れの偏差は、オリフィスの寸法公差に実質的に制限され、弁ドリフト又は弁シフトによって(オリフィス規定材料の最小熱膨張を超えて)著しく影響を受けない。
【0014】
固定オリフィス制限部は、一体的に形成されたものであれ、挿入された構成要素に設けられたものであれ、オリフィス制限に起因する流量係数(Cv)公差を(オリフィス直径上で約±0.005インチ以内の従来の弁オリフィス公差と比較して)最小限に抑えるのに十分な高い精度(例えば、オリフィス直径上で約±0.001インチ以内又は約±0.0005インチ以内の公差)を有するように形成することができる。例示的な実施形態では、精密成形されたオリフィス制限に関連するCv公差は、既知の製造技術を使用して、±1%に制限され得る。
図1は、オリフィス直径の関数として、0.0005インチ又は0.001インチの直径公差を有するオリフィスの有効流量変動を示すグラフである。
【0015】
固定オリフィス制限部を有する弁アセンブリにおいて、オリフィス流量係数Cv
2が小さい(又は弁対オリフィス流量係数比Cv
1/Cv
2が大きい)ほど、有効流量係数Cvに対する影響が大きくなり、その公差/変動性を含む非制限弁流量係数Cv
1が有効流量係数に及ぼす影響が小さくなる。非制限流量係数Cv
1を有する弁の有効流量係数Cvは、低減オリフィス流量係数Cv
2を有する固定オリフィス制限部を備える場合、次式で表すことができる:
【化1】
【0016】
一例として、2:1の弁対オリフィスCv比(例えば、1.0の非制限流量係数Cv
1及び0.5のオリフィス流量係数Cv
2)を有する弁は、弁流量係数Cv
1の約45%の有効流量係数Cvをもたらす。3:1の弁対オリフィスCv比を有する弁は、弁流量係数Cv
1の約32%の有効流量係数Cvをもたらす。4:1の弁対オリフィスCv比を有する弁は、弁流量係数Cv
1の約24%の有効流量係数Cvをもたらす。
図2は、弁対オリフィスCv比の範囲に関する流量性能特性を示すグラフを示す。
【0017】
弁Cv公差が±3%、オリフィスCv公差が±1%の場合、2:1の弁対オリフィスCv比(例えば、0.97~1.03の非制限流量係数Cv1及び0.495~0.505のオリフィス流量係数Cv2)を有する弁は、約±1.4%の有効Cv公差をもたらす。同様に、3:1の弁対オリフィスCv比は、約±1.2%の有効Cv公差をもたらし、4:1の弁対オリフィスCv比は、約±1.1%の有効Cv公差をもたらす。
【0018】
上に示したように、弁の有効Cv公差は、低い(例えば、±1%)Cv公差を有する精密形成された固定オリフィス制限部によって低減されるが、無制限弁と固定オリフィス制限部の組み合わせられたCv公差から生じる流量偏差をさらに低減することが望ましい場合がある。本開示の別の態様によれば、「箱から出してすぐ」の弁の有効Cv公差をさらに低減又は排除するために、弁の作動ストロークを調整して、有効流量係数Cvを所望の範囲内に増加又は減少させて、所望の「箱から出してすぐ」の流量係数Cvに対応させてもよい。流量調整を行うために多くの異なる流量設定機構を利用することができ、その例は、米国特許第7,337,805号明細書(「’805特許」)、米国特許出願公開第2019/0257440号明細書(「’440出願」)、及び2020年10月8日に提出された米国特許出願第17/065,784号明細書(「’784出願」)に記載されており、これらのそれぞれの開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
固定オリフィス制限部を含む調整可能なストローク作動弁において、Cvを調整するために(例えば、望ましい値からのCvの偏差を排除又は最小化するために)必要な弁ストロークの調整は、最大の弁対オリフィスCv比率に比例している(すなわち、この際ストローク調整機構を用いて弁Cvを低減しない)。より大きな弁対オリフィスCv比(すなわち、より小さい固定オリフィス制限部)の場合、弁の有効Cvを調整するために、より大きな弁ストロークの調整が必要となる。
図3は、1%のオリフィスCv変動を排除するために必要な弁Cv調整を、弁対オリフィスCv比の関数として示すグラフを示す。
【0020】
多くの弁(例えば、ダイヤフラム弁)の弁ストローク-Cv曲線は、流量範囲の下端(例えば、閉状態と1/2最大流量状態の間)で比較的急であるので、低流量範囲への調整は、かかる弁状態が、より大きな程度の流量変動及び減少した流量安定性をもたらすので望ましくない可能性がある。弁ストローク調整を流量範囲の上限に制限することにより(例えば、1/2最大流量状態と最大流量状態との間)、流れの一貫性及び安定性が最大化され得る。
図4は、閉(無流量)状態からのストロークの関数としての流量係数を示すグラフを示す。
【0021】
このように、いくつかの用途では、最大の弁対オリフィスCv比を、使用中の弁ドリフト及び弁シフトを十分に最小化することと、「箱から出してすぐの」Cv公差から生じるあらゆるCv偏差を最小化できるように有効Cvを十分に調整できることの両方をもたらす範囲に制限することが望ましい場合がある。一実施形態では、弁は、3:2と5:1の間、又は2:1と5:1の間、又は5:2と4:1の間、又は3:1と4:1の間の最大の弁対オリフィスCv比を備えている。例えば、最大の弁対オリフィスCv比が2:1の弁は、弁Cv範囲の上半分内で、±13%の有効Cvのアクチュエータストローク調整(又は最大流量状態から26%の減少)を提供し得る。最大の弁対オリフィスCv比が3:1の弁は、弁Cv範囲の上半分の範囲内で、約±7%の有効Cvのアクチュエータストローク調整(又は最大流量状態から14%の減少)を提供し得る。最大の弁対オリフィスCv比が4:1の弁は、弁Cv範囲の上半分の範囲内で、約±4%の有効Cvのアクチュエータストローク調整(又は最大流量状態から8%の減少)を提供し得る。この流量調整の変動は、
図2のグラフの破線曲線で示されるように、調整された弁Cvが減少するにつれて増大する。
【0022】
一旦、作動弁が、弁におけるあらゆる箱から出してすぐのCv偏差を最小化又は排除するように調整されると、弁ドリフト及び弁シフトに関連するCv偏差は、固定オリフィス制限部によって著しく低減され得、その結果、許容できる精密かつ一貫したCvを維持するために弁使用中に弁流量設定の調整(例えば、作動ストローク調整)に対する要求が最小化又は排除され得る。例えば、最大の弁対オリフィスCv比が2:1の場合、弁ドリフト/シフトに起因するCv偏差(対応する無制限弁の場合)は約83%減少し、ほぼ6%の弁ドリフト/シフトを1%未満の偏差に減らすのに十分である。最大の弁対オリフィスCv比が3:1の場合、弁のドリフト/シフトに起因するCv偏差は約91%減少し、10%の弁ドリフト/シフトを1%未満の偏差に減少させるに十分である。最大の弁対オリフィスCv比が4:1の場合、弁ドリフト/シフトに起因するCv偏差は約95%低減され、ほぼ20%の弁ドリフト/シフトを1%未満の偏差に低減するのに十分である。
【0023】
上述のように、本明細書で企図される固定オリフィス制限部は、流量制限の流れ能力又は流量係数Cvに対する無制限弁の流れ能力又は流量係数Cvの最大比の観点から定義することができる。本明細書で使用する場合、「無制限弁」は、実質的に等しい断面積又は流れ面積を有する上流(又は入口)及び下流(又は出口)通路を有し、固定オリフィス制限部がなく、通路は、弁の流れ能力が弁座環周流れ面積、又は弁が開状態にあるときの弁座と弁要素(例えば、ステム先端、ダイヤフラム)の間の領域によって主に制限又は制御されるようにサイズ決定されているものとみなされる。流量制限弁、又は本明細書で企図される固定オリフィス制限部を有する弁は、上流及び下流通路のいずれか又は両方に固定オリフィス制限部を有し、弁の流れ能力が固定オリフィス制限部によって主に制限又は制御されるようにサイズ決定されている一方、寸法公差、弁シフト、及び/又は弁ドリフトの結果として生じる流量偏差を補正するのに十分な流れ能力又は流量係数調整が依然として可能であるものとみなされる。
【0024】
したがって、流量制限は、追加的又は代替的に、固定オリフィス制限部に関連する流れ能力又は流量係数Cvに対する弁座環状体に関連する流れ能力又は流量係数Cvの比という観点から定義されてもよい。1つのそのような実施形態では、弁座環状体の流れ能力又は流量係数Cv対固定オリフィス制限部の流れ能力又は流量係数Cvの比は、約2:1と約8:1の間、又は約3:1と約5:1の間である。
【0025】
別の例として、流量制限は、追加的又は代替的に、固定オリフィス制限部の流れ面積に対する弁座環状体の流れ面積の比の観点から定義することができる。1つのそのような実施形態では、弁座環状体の流れ面積対固定オリフィス制限部の流れ面積の比は、約2:1と約8:1の間、又は約3:1と約5:1の間である。
【0026】
別の例として、流量制限は、追加的又は代替的に、固定オリフィス制限部の流れ面積に対する無制限弁の通路の流れ面積の比の観点から定義されてもよい。例示的な実施形態では、無制限弁の通路の流れ面積対固定オリフィス制限部の流れ面積の比は、約3:2と約5:1の間、又は約2:1と約4:1の間であり得る。いくつかのそのような実施形態では、無制限弁の通路の流れ面積対最大の弁座環状体の流れ面積の比は、約1:2と約5:1の間、又は約2:3と約2:1の間であり得る。
【0027】
図5は、弁体10、弁要素20、及びアクチュエータ30を含む例示的な作動弁アセンブリ5を示す。弁体10は、入口及び出口通路11、13の間に配置された弁座12を含む。弁要素20は、弁体10と一緒に組み立てられ、弁座12と密封係合して入口及び出口通路11、13間の流れを遮断する閉位置と、弁座から離間して入口及び出口通路間の流れを許容する開位置との間で移動可能である。例えば、弁座12に対してシールを形成するシール面を有する軸方向に可動なステム、ポペット、又はダイヤフラムなど、多くの異なるタイプの弁要素を利用することができる。
【0028】
アクチュエータ30は、弁体10と一緒に組み立てられており、閉位置と開位置との間の弁要素の軸方向移動のために弁要素20と動作可能に接続されている。多くの異なるタイプのアクチュエータを利用することができるが、図示の実施形態では、アクチュエータ30は、弁要素20を開位置へ移動させるために、付勢ばね34に抗してアクチュエータハウジング31内でピストン33を加圧移動するための加圧ガスを受け入れるアクチュエータポート32を備える、閉位置(「通常閉」)に付勢された空気圧アクチュエータばねである。
【0029】
弁体10は、上述したように、弁座12と直列に低減されたCv制限を提供するように選択された固定オリフィス制限部15を含む。固定オリフィス制限部15は、弁座12から上流に(例えば、入口通路11に)、弁座から下流に(例えば、出口通路13に)、又は弁座から上流及び下流の両方に(例えば、入口及び出口通路の両方に)配置されてもよい。固定オリフィス制限部15は、例えば、入口通路11及び/又は出口通路13と連続して、又はそこから延びて、弁体10に一体的に形成(例えば、機械加工)されてもよく、又は、例えば、ねじ接続、溶接接続、ガスケットシールインサート、又は他のそのような組立品として、弁体10と組み立てられる構成要素(例えば、ディスク、プラグ、取り付け部品)に設けられてもよい。固定オリフィス制限部15は、流路の全体に沿って、流路の一部に沿って、又は流路の離散的な位置で、減少した流れ面積を提供し得る。
【0030】
アクチュエータ30は、例えば、上述のように、箱から出してすぐの弁間の流量変動を補正するために開放弁アセンブリのCvを調整するために、閉位置と開位置との間のアクチュエータによる弁ストロークの工場及び/又は現場調整のための、35で概略的に示すストローク調整機構を備えてもよい。多くの異なるタイプの流量調整機構が利用されてもよく、例えば、上記の組み込まれた’805特許、’440出願、及び’784出願に記載された機構が挙げられる。
【0031】
図6は、弁体110、弁要素120、及びアクチュエータ130を含む例示的な作動弁アセンブリ100を示す。弁体110は、入口及び出口通路111、113の間に配置された弁座112を含む。弁要素120は、弁体110と一緒に組み立てられ、弁座112と密封係合して、入口及び出口通路111、113間の流れを遮断する閉位置と、弁座から離間され、入口及び出口通路間の流れを許容する開位置との間で移動可能である。多くの異なるタイプの弁要素を利用することができるが、図示の実施形態では、弁要素120は、ステムの端部分と一緒に組み立てられたステム先端124を有する軸方向に可動のステム122を含み、ステム先端は、閉位置で弁座112と密封係合するための環状シール125(例えば、プラスチックシート)を含んでいる。
【0032】
アクチュエータ130は、弁体110と一緒に組み立てられ、閉位置と開位置との間の弁要素の軸方向移動のために弁要素120と接続されている。多くの異なるタイプのアクチュエータが利用され得るが、図示された実施形態では、アクチュエータ130は、弁要素120を開位置に移動させるために、付勢ばね134に抗してアクチュエータハウジング131内でピストン133を加圧移動するための加圧ガスを受け入れるアクチュエータポート132を備える、閉位置(「通常閉」)に付勢された空気圧アクチュエータばねである。
【0033】
弁体110は、上述したように、弁座112と直列に低減されたCv制限を提供するように選択された固定オリフィス制限部115を含む。図示された実施形態では、固定オリフィス制限部115は、弁座112の上流にある。他の実施形態では、固定オリフィス制限部は、弁座の下流に設けられてもよい。図示された実施形態では、固定オリフィス制限部115は、弁体110に一体的に形成(例えば、機械加工)されており、例えば、入口通路111と連続しているか、又は入口通路111から延びている。他の実施形態では、固定オリフィス制限部は、例えば、ねじ接続、溶接接続、ガスケットシールインサート、又は他のそのような組立品として、弁体と一緒に組み立てられた構成要素(例えば、ディスク、プラグ、取り付け部品)に設けられてもよい。
【0034】
アクチュエータ130は、例えば、上述のように、箱から出してすぐの弁間の流量変動を補正するために開放弁アセンブリのCvを調整するために、閉位置と開位置との間のアクチュエータによる弁ストロークの工場及び/又は現場調整のためのストローク調整機構135をさらに含む。多くの異なるタイプの流量調整機構が利用され得るが、図示された実施形態では、ストローク調整機構135は、アクチュエータポート132に設置され、弁要素120の開位置を制限するためにピストン133の停止位置を定めるために軸方向位置の範囲にねじ回し式に調整可能なアパーチャ付きセットスクリューを含む。
【0035】
例示的な実施形態では、入口及び出口通路111、113、弁座112、及び約1.7のCvを有する弁要素120構成を有する弁100は、約0.60のCvを有する弁アセンブリを提供するために、流路111、113の一方に約0.64のCvを有するオリフィス制限部115を設けるように適合されることができる。弁座/要素の流量変動が±3%、オリフィス制限部の変動が±1%であるこのような弁アセンブリに対して、±0.4%の低減した変動が期待され得る。
図6は、1.7Cvの弁構成及び0.64Cvのオリフィス制限部を含む弁アセンブリに対する弁流れドリフトの影響を示すグラフを示す。
【0036】
1つのこのような構成において、無制限弁は、一緒になって約3のCvをもたらす0.38インチ径(0.113平方インチ断面積)の入口及び出口通路と、約0.088平方インチの弁座環周流れ面積(すなわち、全開弁位置における弁座とステム先端との間の環状面積)及び約2のCvを提供する0.4インチの流れ環状体直径及び0.07インチの全開弁座流れギャップを有する弁座及びステム先端とを含み、約1.7のCvを有する弁を提供する。このような構成において、0.150インチ径(0.018平方インチ断面積)を入口通路に設けると、オリフィスを低減し、0.64Cvの流量制限部と約0.60の有効Cvを弁に提供する。
【0037】
別の例示的な構成では、無制限弁は、一緒になって約0.6のCvをもたらす0.23インチ径(0.041平方インチ断面積)の入口及び出口通路と、約0.021平方インチの弁座環周流れ面積(すなわち、全開弁位置における弁座とステム先端との間の環状面積)及び約0.7のCvを提供する0.33インチの流れ環状体直径及び0.02インチの全開弁座流れギャップを有するダイヤフラムとを含み、約0.6のCvを有する弁を提供する。このような構成において、0.1インチ径(0.008平方インチ断面積)の縮小オリフィスを入口通路に設けると、0.25Cvの流量制限部と約0.23の有効Cvを弁に提供する。
【0038】
本発明を、特定の例示的な実施形態に関連して開示し、記載してきたが、本明細書を読むと、当業者は特定の変形及び修正を思い付くであろう。そのような変形及び修正は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の定義的な制限にかかわらず、本発明の範囲内である。したがって、本出願人の一般的な発明概念の趣旨及び範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱することができる。