(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】インシュレータ、固定子、及び回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
H02K3/46 B
(21)【出願番号】P 2022530058
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2021016896
(87)【国際公開番号】W WO2021251022
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2020101680
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴志
(72)【発明者】
【氏名】望月 資康
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌明
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-312795(JP,A)
【文献】特開2009-118574(JP,A)
【文献】特開2017-188982(JP,A)
【文献】特開2008-148515(JP,A)
【文献】特開2010-136480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の固定子鉄心の径方向における一側面から前記径方向に沿って延びるティースに装着され、前記ティースに複数の巻数で巻回される平角線と前記ティースとの絶縁を確保するインシュレータであって、
前記固定子鉄心の軸方向に分割可能な第1インシュレータ及び第2インシュレータを備え、
前記第1インシュレータは、
前記ティースの前記軸方向における端面を覆う第1インシュレータ端面被覆部と、
前記ティースの周方向における両側面を覆う2つの第1インシュレータ側面被覆部と、
前記第1インシュレータ端面被覆部及び前記2つの第1インシュレータ側面被覆部における前記径方向の一端から立ち上がる第1インシュレータ第1壁部と、
前記第1インシュレータ端面被覆部及び前記2つの第1インシュレータ側面被覆部における前記径方向の他端から立ち上がる第1インシュレータ第2壁部と、
前記第1インシュレータ側面被覆部における前記第1インシュレータ第1壁部側の側端及び前記第1インシュレータ側面被覆部における前記第1インシュレータ第2壁部側の側端の少なくともいずれか一方に突出して形成され、前記軸方向に延びる凸条部と、
前記凸条部と前記第1インシュレータ端面被覆部とに渡って形成され
るとともに、前記凸条部と前記軸方向で同一直線状に配置され、前記平角線を収容する凹部と、
前記2つの第1インシュレータ側面被覆部の対向側とは反対側の外側面で、かつ
前記第2インシュレータ側の端部に形成され、前記第2インシュレータを受け入れる第1受け入れ凹部と、
を備え、
前記2つの第1インシュレータ側面被覆部のうち一方の第1インシュレータ側面被覆部には、前記複数の巻数で前記ティースに巻回される前記平角線のうちの第1巻き目の前記平角線が配置され、かつ、前記凸条部及び前記凹部が形成されており、
前記第1受け入れ凹部
における前記第2インシュレータ側の端部には、前記第2インシュレータに向けて凸形状となるガイドが形成されており、
前記第2インシュレータは、
前記ティースの前記軸方向における端面を覆う第2インシュレータ端面被覆部と、
前記ティースの周方向における両側面を覆う2つの第2インシュレータ側面被覆部と、
前記第2インシュレータ端面被覆部及び前記2つの第2インシュレータ側面被覆部における前記径方向の一端から立ち上がる第2インシュレータ第1壁部と、
前記第2インシュレータ端面被覆部及び前記2つの第2インシュレータ側面被覆部における前記径方向の他端から立ち上がる第2インシュレータ第2壁部と、
前記2つの第2インシュレータ側面被覆部の対向側の内側面で、かつ
前記第1インシュレータ側の端部に形成され、前記ガイドを受け入れる第2受け入れ凹部と、
を備え、
前記第2受け入れ凹部
における前記第1インシュレータとは反対側の端部には、前記ガイドが嵌るガイド嵌合凹部が形成されている、
インシュレータ。
【請求項2】
前記第1インシュレータ側面被覆部の前記第1インシュレータ第1壁部の側端及び前記第1インシュレータ第2壁部の側端のいずれにも前記凸条部が形成されている、
請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項3】
前記凸条部の突出高さは、前記平角線の短手方向における厚さよりも小さい、
請求項1又は請求項2に記載のインシュレータ。
【請求項4】
前記2つの第1インシュレータ側面被覆部は、第1側面被覆部及び第2側面被覆部であり、
前記第1側面被覆部には、前記第1巻き目の前記平角線が配置され、かつ、前記凸条部及び前記凹部が形成されており、
前記第2側面被覆部は、前記第2側面被覆部から突出して形成されているとともに前記軸方向に延びる嵩上げ部を備え、
前記嵩上げ部と前記第1インシュレータ第1壁部との間の幅は、前記平角線の前記径方向の幅の整数倍である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインシュレータ。
【請求項5】
前記嵩上げ部の突出高さは、前記平角線の短手方向における厚さよりも小さい、
請求項4に記載のインシュレータ。
【請求項6】
前記平角線の巻き始め端と巻き終わり端とは、前記ティースの前記軸方向の両側に別々に配置されている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のインシュレータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のインシュレータと、
前記インシュレータが装着される前記ティースと、
前記ティースと一体化された前記固定子鉄心と、
を備える、
固定子。
【請求項8】
請求項7に記載の固定子と、
前記固定子に対して回転自在に設けられた回転子と、
を備える、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インシュレータ、固定子、及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
固定子と回転子とを備えた回転電機が知られている。固定子は、例えば、円環状の固定子鉄心と、固定子鉄心の内周面から径方向内側に向かって突出された複数のティースと、ティースに巻回されたコイルと、ティースに装着されティースとコイルとの間の絶縁を確保するためのインシュレータと、を備える。インシュレータは、例えば、ティースの周囲を被覆する被覆部と、被覆部の径方向両側から立ち上がる壁部と、を備える。被覆部と壁部とにより形成される凹部に、コイルが収納される。
【0003】
回転子は、例えば、固定子の径方向内側に回転自在に配置された円柱状の回転子鉄心と、回転子鉄心に設けられたマグネットと、を備える。
このような構成のもと、コイルに電流を供給すると、各ティースに鎖交磁束が発生する。この鎖交磁束と回転子のマグネットとの間で磁気的な吸引力や反発力が生じ、回転子が回転される。
【0004】
ここで、ティースにインシュレータを介してコイルを巻回する際、このコイルの巻き崩れによってコイルの占積率が低下してしまう場合がある。このため、コイルの巻き崩れを防止するためのさまざまな技術が提案されている。
例えば、コイルとして丸線を用いる場合、インシュレータの被覆部に丸線の形状に対応する半円状の溝を径方向に並べて形成する技術が開示されている。溝にコイルが収まることによりインシュレータ上でのコイルのずれを防止し、この結果コイルの巻き崩れを防止できる。
【0005】
ところで、コイルの占積率を向上させるために、コイルとして丸線に代わって平角線を用いる場合がある。平角線を用いることで、コイル間の隙間を極力減少させることができるので、コイルの占積率を向上できる。
【0006】
しかしながら、コイルとして平角線を用いる場合、インシュレータに形成しようとする溝も四角状になる。このため、溝を径方向に並べて形成しようとすると、隣り合う溝の間に隙間を形成しなければならない。このため、結果的にコイルの占積率が低下してしまう可能性があった。
また、四角状の溝を形成しようとした場合、半円状の溝と比較してインシュレータの厚さが確保しづらい。このようなインシュレータの厚さの差分だけインシュレータの厚さを大きくしてインシュレータを形成すると、無駄にティースとコイルとの間の絶縁距離が長くなってしまうとともにコイルの占積率も低下してしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、コイルとして平角線を用いた場合に、コイルの巻き崩れを防止し、かつ、コイルの占積率を向上できるインシュレータ、固定子、及び回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のインシュレータは、環状の固定子鉄心の径方向における一側面から前記径方向に沿って延びるティースに装着される。実施形態のインシュレータは、ティースに複数の巻数で巻回される平角線と前記ティースとの絶縁を確保する。実施形態のインシュレータは、固定子鉄心の軸方向に分割可能な第1インシュレータ及び第2インシュレータを持つ。第1インシュレータは、第1インシュレータ端面被覆部と、2つの第1インシュレータ側面被覆部と、第1インシュレータ第1壁部と、第1インシュレータ第2壁部と、凸条部と、凹部と、第1受け入れ凹部とを持つ。第1インシュレータ端面被覆部は、ティースの軸方向における端面を覆う。2つの第1インシュレータ側面被覆部は、ティースの周方向における両側面を覆う。第1インシュレータ第1壁部は、第1インシュレータ端面被覆部及び2つの第1インシュレータ側面被覆部における径方向の一端から立ち上がる。第1インシュレータ第2壁部は、第1インシュレータ端面被覆部及び2つの第1インシュレータ側面被覆部における径方向の他端から立ち上がる。凸条部は、第1インシュレータ第1壁部の側端及び第1インシュレータ第2壁部の側端の少なくともいずれか一方に突出して形成され、軸方向に延びる。凹部は、凸条部と第1インシュレータ端面被覆部とに渡って形成されるとともに、前記凸条部と前記軸方向で同一直線状に配置され、平角線を収容する。第1受け入れ凹部は、2つの第1インシュレータ側面被覆部の対向側とは反対側の外側面で、かつ前記第2インシュレータ側の端部に形成され、第2インシュレータを受け入れる。2つの第1インシュレータ側面被覆部のうち一方の第1インシュレータ側面被覆部には、複数の巻数でティースに巻回される平角線のうちの第1巻き目の平角線が配置され、かつ、凸条部及び凹部が形成されている。第1受け入れ凹部における前記第2インシュレータ側の端部には、第2インシュレータに向けて凸形状となるガイドが形成されている。第2インシュレータは、第2インシュレータ端面被覆部と、2つの第2インシュレータ側面被覆部と、第2インシュレータ第1壁部と、第2インシュレータ第2壁部と、第2受け入れ凹部とを持つ。第2インシュレータ端面被覆部は、ティースの軸方向における端面を覆う。2つの第2インシュレータ側面被覆部は、ティースの周方向における両側面を覆う。第2インシュレータ第1壁部は、第2インシュレータ端面被覆部及び2つの第2インシュレータ側面被覆部における径方向の一端から立ち上がる。第2インシュレータ第2壁部は、第2インシュレータ端面被覆部及び2つの第2インシュレータ側面被覆部における径方向の他端から立ち上がる。第2受け入れ凹部は、2つの第2インシュレータ側面被覆部の対向側の内側面で、かつ前記第1インシュレータ側の端部に形成され、ガイドを受け入れる。第2受け入れ凹部における前記第1インシュレータとは反対側の端部には、ガイドが嵌るガイド嵌合凹部が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】実施形態の第1インシュレータを示す一方側から見た斜視図。
【
図5】実施形態の第1インシュレータを示す他方側から見た斜視図。
【
図6】実施形態の第2インシュレータを示す径方向内側から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の回転電機を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、回転電機1を示す平面図である。
回転電機1は、円筒状の固定子2と、固定子2の径方向内側に配置され固定子2に対して回転自在に設けられた回転子3と、を備える。
以下の説明では、回転子3の回転軸線Cと平行な方向を軸方向と称し、回転子3の回転方向を周方向と称し、軸方向及び周方向に直交する回転子3の径方向を単に径方向と称する。
【0013】
回転子3は、回転軸線C回りに回転するシャフト4と、シャフト4の外周面に嵌合された回転子鉄心5と、を備える。回転子鉄心5の径方向中央に軸方向に貫通する貫通孔5aが形成されている。この貫通孔5aに、シャフト4が例えば、圧入により固定されている。回転子鉄心5の外周部寄りには、図示しない複数のマグネットが周方向に並んで設けられている。
【0014】
固定子2は、円筒状の固定子ケース6の内周面に嵌合固定されている。固定子ケース6及び固定子2の軸方向は、回転軸線Cと一致している。固定子2は、円筒状の固定子鉄心7と、固定子鉄心7の内周面7aから径方向内側に向かって突出形成された複数(例えば、本実施形態では24個)のティース8と、ティース8の周囲を被覆するように装着された絶縁性のインシュレータ9と、各ティース8におけるインシュレータ9に集中巻き方式により巻回されるコイル10と、を備える。
【0015】
ここで、固定子2は、周方向に分割可能な方式が採用されている。すなわち、固定子2は、ティース8ごとに周方向に分割された分割固定子11を環状に連結して構成される。本実施形態では、分割固定子11の個数は、24個となる。換言すると、本実施形態では、24個の分割固定子11によって固定子2が構成されている。
【0016】
図2は、分割固定子11を示す斜視図である。
図3は、
図2のA-A線に沿う断面図である。
図2、
図3に示すように、分割固定子11は、固定子鉄心7が分割された分割鉄心12を有する。分割鉄心12は、周方向に延びる。分割鉄心12は、例えば、複数の金属板を積層したり軟磁性粉を加圧成形したりすることによって構成されている。
【0017】
分割鉄心12は、分割固定子11を環状に連結したときに固定子鉄心7の環状の磁路を形成する箇所である。分割鉄心12は、軸方向に直交する断面形状が円弧状となるように形成されている。
分割鉄心12の周方向における両端部には、連結部13a,13bが形成されている。互いに隣り合う2つの分割鉄心12は、連結部13a,13bにおいて連結される。具体的には、互いに隣り合う2つの分割鉄心12のうち一方の分割鉄心(第1分割鉄心)の連結部13aが他方の分割鉄心(第2分割鉄心)の連結部13bに圧入されることで、2つの分割鉄心12が連結される。2つの連結部13a,13bのうち、一方の連結部13a(第1連結部)は、凸形状に形成されている。2つの連結部13a,13bのうち、他方の連結部13b(第2連結部)は、連結部13aを受け入れ可能な凹形状に形成されている。このような構成を有する分割鉄心12は、ティース8を備える。ティース8は、分割鉄心12の周方向における中央位置から径方向内側に向かって突出するように形成されている。
【0018】
ティース8は、径方向に沿って延びるティース本体14と、鍔部15と、を備える。鍔部15は、ティース本体14の径方向内側の端部に位置する。鍔部15は、ティース本体14と一体に成形されている。鍔部15は、ティース本体14の先端部における周方向両側に沿って延びる。
これによって、ティース本体14と鍔部15と分割鉄心12(後述する分割鉄心12の内側面12a)とに囲まれたコイル収納凹部16aが形成される。コイル収納凹部16aには、複数の巻数でコイル10(平角線)が巻回される。コイル収納凹部16aは、固定子2において周方向に隣り合うティース8間に形成されるスロット16を構成する。
【0019】
インシュレータ9は、第1インシュレータ17と、第2インシュレータ18とによって構成されている。第1インシュレータ17及び第2インシュレータ18は、ティース8の軸方向において互いに分離又は結合が可能である。
第1インシュレータ17は、ティース8の軸方向における一方方向(例えば、ティース8の上方から下方に向かう方向)に沿って移動することで、ティース8に装着される。
第2インシュレータ18は、ティース8の軸方向における他方方向(例えば、ティース8の下方から上方に向かう方向)に沿って移動することで、ティース8に装着される。
つまり、インシュレータ9は、2つのインシュレータが軸方向に分割可能な分割構成を有する。
ティース8にインシュレータ9が装着された状態では、第1インシュレータ17と第2インシュレータ18とは隙間なく重なり合う。第1インシュレータ17と第2インシュレータ18との間からティース8が露出されることがない。詳細は後述するが、コイル10は、インシュレータ9が装着されたティース8に巻回される。コイル10をティース8に巻回する工程においては、コイル10が最初に第1インシュレータ17に巻回される(巻き始め)。ティース8に対するコイル10の巻回が終了した後、コイル10の巻き終わり端は、第2インシュレータ18から引き出される。
換言すると、コイル10はティース8にN回巻回されている。ここで、Nは、2以上の整数ある。N回は複数回を意味する。つまり、コイル10は、第1巻き目から第N巻き目の巻数で、ティース8に巻回されている。また、コイル10をティース8に巻回する工程を考慮すると、第1巻き目のコイル10は、1回目の巻回によって形成される最初の巻回部(第1巻回部)である。第N巻き目のコイル10は、N回目の巻回によって形成される最後の巻回部(第N巻回部)である。なお、後述するように、本実施形態におけるN回は、例えば、53回である。なお、以下の説明では、「54回目のコイル10」という文言があるが、この54回目のコイル10は、完全に1回分だけティース8に巻回されないコイルである。
【0020】
図4は、第1インシュレータ17を一方側から見た斜視図である。
図5は、第1インシュレータ17を他方側から見た斜視図である。
図3から
図5に示すように、第1インシュレータ17は、ティース8の軸方向における一端面(第1ティース端面)を覆う端面被覆部21と、ティース8の周方向における両側面を覆う2つの側面被覆部22,23(第1側面被覆部22、第2側面被覆部23)と、各被覆部21~23の径方向における外側端に一体に成形されている外壁部24(第1壁部)と、各被覆部21~23の径方向における内側端に一体に成形されている内壁部25(第2壁部)と、を備えている。第2側面被覆部23は、第1インシュレータ17における第1側面被覆部22とは反対側に位置する。
【0021】
外壁部24は、分割鉄心12の内側面12aを被覆する。外壁部24の内側面24aには、
図4、
図5における下側の位置に、外側受入れ凹部33が段差部33aを介して形成されている。外側受入れ凹部33は、第1インシュレータ17と第2インシュレータ18とが接続される位置に形成されている。
外側受入れ凹部33は、第2インシュレータ18を受け入れる凹部である。外側受入れ凹部33は、第2インシュレータ18と径方向で重なる。
外壁部24は、端面被覆部21及び側面被覆部22、23における径方向の一端(径方向の外側の位置)からティース8の軸方向に立ち上がるように設けられている。
【0022】
また、外壁部24は、分割鉄心12の軸方向における一端面から突出する外壁突出部27を有する。外壁突出部27の周方向における中央には、コイル導入スリット28が形成されている。コイル導入スリット28は、外壁部24の径方向外側から径方向内側へとコイル10を導く溝である。
外壁部24の径方向外側から径方向内側へコイル10を導く方向は、コイル10を巻回する巻回方向に沿っている。換言すると、コイル導入スリット28によって導かれたコイル10は、第1巻き目のコイル10となり、1回目の巻回によって形成される最初の巻回部である。
【0023】
コイル導入スリット28は、径方向及び周方向に交差するように軸方向からみて斜めに延びて形成されている。より具体的には、コイル導入スリット28は、径方向外側から径方向内側に向かうように、かつ、第1側面被覆部22から第2側面被覆部23に向かうように、斜めに延びている。換言すると、コイル導入スリット28は、第1側面被覆部22から第2側面被覆部23に向かう方向に対して傾斜する方向に延びている。コイル導入スリット28の径方向における外側端、及び径方向における内側端は、開口されている。つまり、コイル導入スリット28の径方向における外側端の開口よりも径方向における内側端の開口が、第2側面被覆部23寄りに配置されている。
【0024】
外壁突出部27の外側面27aには、コイル押え壁29が形成されている。コイル押え壁29は、外壁部24の径方向外側で引き回されるコイル10(渡り線)を収納する。コイル押え壁29は、底壁部29aと側壁部29bとを備える。底壁部29aは、外壁突出部27の根元(外壁部24における分割鉄心12の軸方向における一端面に近い位置)から径方向外側に向かって突出する。側壁部29bは、底壁部29aの径方向における外側端から外壁突出部27と平行に立ち上がる。これら底壁部29a及び側壁部29bと、外壁突出部27とにより、コイル10の渡り線部を収納する渡り線収納部30が形成される。渡り線収納部30を構成する外壁突出部27の外側面27aの一部には、凹部31が形成されている。凹部31は、コイル導入スリット28を避けるように配置されている。凹部31は、軸方向からみて四角形状に形成されている。
【0025】
内壁部25は、ティース8を構成する鍔部15の内側面15a(径方向外側の面)を被覆する。内壁部25の内側面25aには、
図4、
図5における下側の位置に、内側受入れ凹部34が段差部34aを介して形成されている。内側受入れ凹部34は、第1インシュレータ17と第2インシュレータ18とが接続される位置に形成されている。
内側受入れ凹部34は、第2インシュレータ18を受け入れる凹部である。内側受入れ凹部33は、第2インシュレータ18と径方向で重なる。
内壁部25は、端面被覆部21及び側面被覆部22、23における径方向の他端(径方向の内側の位置)からティース8の軸方向に立ち上がるように設けられている。
また、内壁部25は、鍔部15の軸方向における一端面から突出する内壁突出部32を有する。鍔部15から突出する内壁突出部32の突出高さと、分割鉄心12から突出する外壁突出部27の突出高さとは、ほぼ同一である。
【0026】
2つの側面被覆部22,23の外側面22a,23aには、
図4、
図5における下側の位置に、受入れ凹部36が段差部36aを介して形成されている。受入れ凹部36は、第1インシュレータ17と第2インシュレータ18とが接続される位置に形成されている。
受入れ凹部36は、第2インシュレータ18を受け入れる凹部である。受入れ凹部36は、第2インシュレータ18と径方向で重なる。受入れ凹部33の段差部33a,受入れ凹部34の段差部34a,受入れ凹部36の段差部36aは、同一高さを有し、滑らかに連なっている。
【0027】
また、受入れ凹部36の径方向の中央における大部分の領域には、第2インシュレータ18に向けて延出するガイド35(ガイド片)が形成されている。ガイド35は、
図4、
図5における下側に向けて延出する。ガイド35は、各受入れ凹部33,34,36に第2インシュレータ18を導く際のガイドとして機能する。第2インシュレータ18に面するガイド35の側端は、第2インシュレータ18に向けて膨出する凸形状となるように湾曲して形成されている。
【0028】
2つの側面被覆部22,23のうち、第1側面被覆部22には、第1側面被覆部22から突出する凸条部37が形成されている。具体的に、外壁部24に繋がる第1側面被覆部22の端部に、凸条部37(第1凸条部)が形成されている。内壁部25に繋がる第1側面被覆部22の端部に、凸条部37(第2凸条部)が形成されている。凸条部37は、端面被覆部21の表面21aと同一の面上にある位置と、受入れ凹部36の段差部36aと同一の面上にある位置との間の領域に形成されている。凸条部37は、軸方向に延びている。端面被覆部21に位置する凸条部37の側端、及び、端面被覆部21の表面21aには、コイル収容凹部38(凹部)が形成されている。コイル収容凹部38は、凸条部37と端面被覆部21とに渡って形成されている。コイル収容凹部38は、凸条部37の角部と端面被覆部21の表面21aの一部とを平面取りした形状を有する。凸条部37の突出高さH1、及び径方向の幅W1の詳細は、後述する。
【0029】
2つの側面被覆部22,23のうち、第2側面被覆部23には、径方向の中央部に、嵩上げ部39が形成されている。嵩上げ部39も、端面被覆部21の表面21aと同一の面上にある位置と、受入れ凹部36の段差部36aと同一の面上にある位置との間の領域に形成されている。嵩上げ部39は、軸方向に延びている。嵩上げ部39の突出高さH2、及び径方向の幅W2の詳細は、後述する。
【0030】
図6は、第2インシュレータ18を径方向内側から見た斜視図である。
図2、
図6に示すように、第2インシュレータ18は、ティース8の軸方向における他端面(第2ティース端面)を覆う端面被覆部41と、ティース8の周方向における両側面を覆う2つの側面被覆部42,43(第1側面被覆部42、第2側面被覆部43)と、各被覆部41~43の径方向における外側端に一体に成形されている外壁部44と、各被覆部41~43の径方向における内側端に一体に成形されている内壁部45と、を備えている。
【0031】
外壁部44は、分割鉄心12の内側面12aを被覆する。外壁部44の外側面44aには、
図6における上側の位置に、外側受入れ凹部53が段差部53aを介して形成されている。外側受入れ凹部53は、第1インシュレータ17と第2インシュレータ18とが接続される位置に形成されている。
また、外壁部44は、分割鉄心12の軸方向における他端面から突出する外壁突出部47を有する。外壁突出部47の周方向における中央には、コイル引出スリット48が形成されている。コイル引出スリット48を介してインシュレータ9に巻回されたコイル10が引き出される。
コイル引出スリット48からコイルガイド部49に向けてコイル10が引き出される方向は、コイル10を巻回する巻回方向に沿っている。換言すると、コイル引出スリット48からコイルガイド部49に向けて引き出されたコイル10は、第N巻き目のコイル10となり、N回目の巻回によって形成される最後の巻回部である。
【0032】
外壁突出部47の外側面47aには、コイルガイド部49が形成されている。コイルガイド部49は、外壁部44の径方向外側で引き回されるコイル10(渡り線)を収納する。コイルガイド部49は、周方向に沿う複数(例えば、本実施形態では3個)のガイド溝49aを有する。3個のガイド溝49aは、径方向に並んで配置されている。各ガイド溝49aには、それぞれ同相のコイル10が収納される。
【0033】
内壁部45は、ティース8を構成する鍔部15の内側面15a(径方向外側の面)を被覆する。内壁部45の外側面45aには、
図6における上側の位置に、内側受入れ凹部54が段差部54aを介して形成されている。内側受入れ凹部54は、第1インシュレータ17と第2インシュレータ18とが接続される位置に形成されている。
また、内壁部45は、鍔部15の軸方向における端面から突出する内壁突出部52を有する。鍔部15から突出する内壁突出部52の突出高さと、分割鉄心12から突出する外壁突出部47の突出高さとは、ほぼ同一である。
【0034】
2つの側面被覆部42,43の内側面42a,43aには、
図6における上側の位置に、受入れ凹部56が段差部56aを介して形成されている。受入れ凹部56は、第1インシュレータ17と第2インシュレータ18とが接続される位置に形成されている。受入れ凹部53の段差部53a,受入れ凹部54の段差部54a,受入れ凹部56の段差部56aは、同一高さを有し、滑らかに連なっている。
また、受入れ凹部56の径方向の中央における大部分の領域には、第1インシュレータ17のガイド35に対応する凹部55が形成されている。
【0035】
このような構成のもと、ティース8を挟むように軸方向におけるティース8の両端に第1インシュレータ17と第2インシュレータ18とが装着される。第1インシュレータ17と第2インシュレータ18とが装着された状態では、第1インシュレータ17における凹部33,34,36の径方向内側に、第2インシュレータ18の凹部53,54,56が配置される。これにより、ティース8のティース本体14の外周面全体、分割鉄心12の内側面12aの全体、及び鍔部15の内側面15aの全体は、隙間なくインシュレータ17,18によって覆われる。また、凹部33,34,36,53,54,56により、インシュレータ17,18が互いに重なり合った箇所の厚さが、他の箇所の厚さよりも大きくなることが防止される。
【0036】
ティース8に装着されたインシュレータ17,18は、端面被覆部21,41、側面被覆部22~43、外壁部24,44、及び内壁部25,45によって巻回コイル収容凹部60を形成する(
図2参照)。巻回コイル収容凹部60にコイル10が収納されるように、ティース8に装着されたインシュレータ9にコイル10が集中巻き方式により巻回される。
【0037】
次に、
図2、
図3に基づいて、コイル10の巻回手順について説明する。
図2、
図3に示すように、コイル10は、断面形状が長方形であるいわゆる平角線である。このような平角線のコイル10は、長手方向が径方向に沿うように、かつ短手方向が周方向に沿うように隙間なく整列されて巻回される。なお、
図3では、コイル10に巻数に応じた番号を付している。つまり、インシュレータ9が装着されたティース8に巻回されたコイル10のうち、例えば、「1」と記載されたコイル10は、1回目に巻回されたコイル10であり、第1巻回部である。換言すると、本実施形態では、コイル10は、第1巻回部~第53巻回部を有する。
【0038】
前述したように、コイル10をティース8に巻回する工程においては、コイル10が最初に第1インシュレータ17に巻回される(巻き始め)。ティース8に対するコイル10の巻回が終了した後、コイル10の巻き終わり端は、第2インシュレータ18から引き出される。
より具体的には、第1インシュレータ17に形成されたコイル導入スリット28を介してコイル10が巻回コイル収容凹部60内に引き込まれる。その後、コイル10は、第1インシュレータ17の端面被覆部21上を通って第2側面被覆部23側に引き回され、最も分割鉄心12(外壁部24,44)に寄った位置で1回巻回される。つまり、第2側面被覆部23から第2インシュレータ18の端面被覆部41を通って、第1インシュレータ17の第1側面被覆部22至るまでコイル10を引き回し、コイル10の1回目の巻回工程が終了する。
【0039】
ここで、コイル導入スリット28は、径方向外側から径方向内側に向かうに従って、第1側面被覆部22から第2側面被覆部23に向かうように斜めに延びている。このため、スムーズに第2側面被覆部23にコイル10を導くことができる。
なお、以下の説明では、各回の巻回工程によってティース8に巻回されるコイル10を、その回数目のコイル10と称する。つまり、例えば、1回目の巻回工程のコイル10は、1回目のコイル10と称する。換言すると、1回目の巻回工程によって第1巻回部が形成される。
【0040】
1回目のコイル10は、その後、径方向内側(鍔部15側)に向かってコイル10を1つ分ずらしながら巻回されていく。つまり、コイル10は、第1側面被覆部22から第2側面被覆部23に渡る際、コイル10を1つ分ずらして斜めに引きまわれる。
ここで、第1側面被覆部22の外側面22aには凸条部37が形成されている。凸条部37は、外側面22aにおける外壁部24(内側面24a)の近くの位置に形成されている。凸条部37の径方向の幅W1は、コイル10の長手方向の幅とほぼ同等である。また、凸条部37の突出高さH1は、コイル10の短手方向の幅の約1/2程度である。このため、第1側面被覆部22では、1回目のコイル10と2回目以降のコイル10とでは、コイル10の短手方向における約半分の高さでずれて配置される。
【0041】
また、端面被覆部21に位置する凸条部37の側端、及び、端面被覆部21の表面21aには、凸条部37と端面被覆部21とに渡ってコイル収容凹部38が形成されている。コイル収容凹部38に1回目に巻回されたコイル10が収納される。1回目に巻回されたコイル10が、コイル収容凹部38の内側面に引っ掛かることで、1回目の巻回工程から2回目の巻回工程に移る際に、1回目のコイル10の位置がずれることが防止される。
【0042】
また、第2側面被覆部23には、径方向の中央部に、嵩上げ部39が形成されている。嵩上げ部39と外壁部24との間の幅W3は、コイル10が4個収まる幅である。嵩上げ部39の径方向の幅W2は、コイル10の長手方向の幅2個分よりも若干小さい程度である。嵩上げ部39の突出高さH2は、コイル10の短手方向の幅の約1/2程度である。このため、第2側面被覆部23では、4回目の巻回工程から5回目の巻回工程へと移る際、また、5回目の巻回工程から6回目の巻回工程へと移る際、嵩上げ部39上にコイル10が配置される。第2側面被覆部23では、5回目、6回目のコイル10と4回目及び7回目以降のコイル10とでは、コイル10の短手方向における約半分の高さでずれて配置される。
【0043】
11回目のコイル10は、巻回コイル収容凹部60の最も鍔部15(内壁部25,45)に寄った位置に配置される。第1側面被覆部22には、内壁部25の端部に凸条部37が形成されているので、第1側面被覆部22では、10回目のコイル10と11回目以降のコイル10とで、コイル10の短手方向における約半分の高さでずれて配置される。
【0044】
12回目のコイル10の巻回工程は、11回目のコイル10の上で行われる。そして、12回目以降のコイル10の巻回工程は、分割鉄心12(外壁部24,44)に戻るように順次行われる。22回目のコイル10は、再び巻回コイル収容凹部60の最も分割鉄心12(外壁部24,44)に寄った位置に配置される。23回目のコイル10の巻回工程は、22回目のコイル10の上で行われる。この後、再び径方向に沿って往復動するようにコイル10の巻回工程が進む。
【0045】
コイル収納凹部16a(スロット16)のスペースにより、コイル10の巻回工程数が50回に達したところで、コイル10を分割鉄心12(外壁部24,44)に戻るように折り返して巻回工程を進める。
ここで、50回目におけるコイル10の巻回の位置は、巻回コイル収容凹部60の径方向のほぼ中央となる。より具体的には、嵩上げ部39が形成されている位置が、50回目のコイル10の巻回位置になる。49回目のコイル10と50回目のコイル10とは、嵩上げ部39が形成されている位置に配置される。
【0046】
50回目で折り返されたコイル10は、49回目のコイル10の隣に配置される。第2側面被覆部23において、49回目のコイル10は、嵩上げ部39によって48回目のコイル10とコイル10の短手方向における約半分の高さでずれて配置されている。つまり、49回目のコイル10は、コイル10の短手方向における約半分の高さ分だけ、48回目のコイル10よりも突出されている。このため、51回目のコイル10は、49回目のコイル10の突出部分に引っ掛かることで容易に位置決めが行われる。
【0047】
54回目のコイル10が第2側面被覆部23に引き回された位置は、巻回コイル収容凹部60の最も分割鉄心12(外壁部24,44)に寄った位置となる。54回目のコイル10は、第1側面被覆部22に引き回されることなく、第2インシュレータ18のコイル引出スリット48を介して径方向外側に引き出される。このコイル引出スリット48から引き出された箇所がコイル10の巻き終わり端となる。これにより、コイル10の巻回作業が完了する。
【0048】
ここで、54回目のコイル10は、完全に1回分だけティース8に巻回されないコイルなので、第1側面被覆部22では、53回目のコイル10と外壁部24,44との間にコイル10の1つ分の隙間(以下、残り隙間という)が生じる。しかしながら、第1インシュレータ17には凸条部37が形成されており、45回目のコイル10が残り隙間にコイル10の短手方向における約半分の高さ分だけ、突出されている。この突出部分にコイル10が引っ掛かることで、53回目のコイル10が残り隙間側にずれてしまうことが防止される。
【0049】
分割固定子11の軸方向両端から引き出されたコイル10の端末部は、それぞれ結線される。本実施形態では、回転電機1は、3相(U相、V相、W相)のコイルで構成され、コイル10は、スター結線(Y結線)される。例えば、第1インシュレータ17のコイル導入スリット28を介して引き出されたコイル10の端末部10a(
図2参照、巻き始め端)は、中性点として結線される。第2インシュレータ18のコイル引出スリット48を介して引き出されたコイル10の端末部10b(
図2参照、巻き終わり端)は、同相のコイルが互いに結線されて対応する相の図示しない端子に接続される。
【0050】
このように、図示しない端子に結線されるコイル10の端末部10b(巻き終わり端)と、中性点として結線されるコイル10の端末部10a(巻き始め端)とが、固定子鉄心7を挟んで軸方向の両側に別々に配置される。中性点として結線されるコイル10の端末部10aは、第1インシュレータ17の渡り線収納部30に収納されて引き回される。図示しない端子に結線されるコイル10の端末部10bは、第2インシュレータ18の各ガイド溝49aにそれぞれ同相のコイル10が収納されて引き回される。
【0051】
図示しない各端子を介して所望のコイル10に電力が供給されることにより、固定子2に所望の鎖交磁束が形成される。この鎖交磁束と回転子3の図示しないマグネットとの間で磁気的な吸引力や反発力が生じ、回転子3が回転される。
【0052】
このように上述の実施形態では、ティース8に装着され、かつ、ティース8とコイル10との絶縁を図るインシュレータ9(第1インシュレータ17、第2インシュレータ18)が設けられている。インシュレータ9は、ティース8の軸方向における端面を覆う端面被覆部21,41と、ティース8の周方向における両側面を覆う側面被覆部22~43と、端面被覆部21,41及び側面被覆部22~43から立ち上がる外壁部24,44及び内壁部25,45と、を備える。
第1インシュレータ17の第1側面被覆部22には、2つの凸条部37が形成されている。また、凸条部37と端面被覆部21とに渡ってコイル収容凹部38が形成されている。このコイル収容凹部38により、巻回工程の途中においてコイル10の位置がずれてしまうことを防止できる。
さらに、凸条部37を形成した箇所にコイル収容凹部38を形成することにより、このコイル収容凹部38が形成される箇所のインシュレータ9の厚さが薄くなってしまうことを防止できる。コイル収容凹部38を形成するために、第1側面被覆部22や端面被覆部21の厚さを無駄に増加する必要がないので、コイル10の占積率(コイルの断面に占める導体の割合)を向上できる。
【0053】
また、凸条部37を形成することにより、この凸条部37の上に巻回されるコイル10の位置を他の巻回工程のコイル10の位置からずらすことができる。このずれたコイル10の突出箇所を利用することにより、他の巻回工程によってティース8に巻回されるコイル10の位置ずれも防止できる。
また、第1側面被覆部22のうち、外壁部24の端部、及び内壁部25の端部に、凸条部37が形成されている。このため、とりわけコイル10の端末部がティース8の軸方向両端から別々に引き出される場合において、コイル10の位置ずれを確実に防止できる。本実施形態では、53回目のコイル10の位置ずれを確実に防止できる。
【0054】
凸条部37の突出高さH1は、コイル10の短手方向の幅の約1/2程度である。このため、凸条部37の上に巻回されたコイル10が完全にコイル1つ分だけずれてしまうことがなく、確実にコイル10のずれを防止できる。例えば、凸条部37によって、コイル1つ分だけずれてしまうと、隣り合うコイル10の間に引っ掛かりが生じなくなってしまい、凸条部37を利用したコイル10のずれを防止できなくなってしまう。上述した実施形態によれば、この問題を解決することができる。
【0055】
第1側面被覆部22のうち、外壁部24の端部に形成された凸条部37は、コイル10の1回目の巻回工程が完了する位置に配置されている。換言すると、凸条部37は、第1巻き目のコイル10の位置に配置されている。このため、2回目のコイル10の巻回工程に進む際、1回目のコイル10の位置がずれてしまうことを確実に防止できる。また、第1側面被覆部22と周方向で対向する第2側面被覆部23に嵩上げ部39が形成されている。つまり、コイル10の巻回工程のうち、最後にコイル10が引き回される第2側面被覆部23に嵩上げ部39が形成されている。嵩上げ部39と外壁部24との間の幅W3は、コイル10が4個収まる幅である。つまり、嵩上げ部39と外壁部24との間の幅W3は、コイル10の長手方向の幅の約4倍である。このため、嵩上げ部39と外壁部24との間に、コイル10を隙間なく整列させることができる。また、コイル10を巻回コイル収容凹部60の径方向の途中で折り返すように巻回した場合であっても、コイル10の位置ずれを確実に防止できる。つまり、本実施形態では、50回目の巻回工程から51回目の巻回工程に進む際にコイル10がずれてしまうことを確実に防止できる。
【0056】
嵩上げ部39の突出高さH2は、コイル10の短手方向の幅の約1/2程度である。このため、嵩上げ部39の上に巻回されたコイル10が完全にコイル1つ分だけずれてしまうことがなく、確実にコイル10のずれを防止できる。
【0057】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、第1インシュレータ17の第1側面被覆部22には、外壁部24の端部、及び内壁部25の端部に、凸条部37が形成されている。また、凸条部37と端面被覆部21とに渡ってコイル収容凹部38が形成されている。このため、巻回工程の途中において平角線であるコイル10の位置がずれてしまうことを防止できる。
【0058】
なお、上述の実施形態では、固定子2(固定子鉄心7)は、分割固定子11を環状に連結して構成される場合について説明した。分割固定子11の個数は、24個である場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。固定子2(固定子鉄心7)は、周方向に分割可能な方式が採用されていなくてもよい。
上述の実施形態では、凸条部37の突出高さH1及び嵩上げ部39の突出高さH2は、コイル10の短手方向の幅の約1/2程度である場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。各突出高さH1は、コイル10の短手方向の幅よりも小さければよい。
【0059】
上述の実施形態では、第1インシュレータ17の第1側面被覆部22には、外壁部24の端部、及び内壁部25の端部に、凸条部37及びコイル収容凹部38が形成されている場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。第1側面被覆部22のうち、外壁部24の端部、及び内壁部25の端部の少なくともいずれか一方に凸条部37及びコイル収容凹部38が形成されていればよい。
上述の実施形態では、嵩上げ部39と外壁部24との間の幅W3は、コイル10が4個収まる幅である場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。嵩上げ部39と外壁部24との間の幅W3は、コイル10の長手方向の幅の整数倍であればよい。このように構成することで、巻回コイル収容凹部60内でコイル10を確実に整列させることができる。
【0060】
上述の実施形態では、コイル収容凹部38が、凸条部37の角部と端面被覆部21の表面21aの一部とを平面取りした形状を有する場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。凸条部37の角部と端面被覆部21の表面21aの一部と切除してコイル収容凹部38が形成されればよい。
【0061】
上述の実施形態では、インシュレータ9が装着されたティース8にコイル10が合計54回巻回される場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。コイル10の巻数は任意に設定することができる。また、コイル10の巻数に応じて巻回コイル収容凹部60の径方向の途中からコイル10を折り返す位置も変化させてよい。この折り返す位置に応じて嵩上げ部39を形成すればよい。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1…回転電機、2…固定子、3…回転子、5…回転子鉄心、8…ティース、9…インシュレータ、10…コイル(平角線)、17…第1インシュレータ(インシュレータ)、18…第2インシュレータ(インシュレータ)、21…端面被覆部、22…第1側面被覆部(側面被覆部)、23…第2側面被覆部(側面被覆部)、24…外壁部(第1壁部)、25…内壁部(第2壁部)、37…凸条部、38…コイル収容凹部(凹部)、39…嵩上げ部、H1,H2…突出高さ