(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造方法およびブロー成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/22 20060101AFI20240913BHJP
B29C 49/64 20060101ALI20240913BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20240913BHJP
B29B 11/08 20060101ALI20240913BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20240913BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B29C49/22
B29C49/64
B29C49/06
B29B11/08
B29C45/16
B29C45/26
(21)【出願番号】P 2022541546
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2021028666
(87)【国際公開番号】W WO2022030461
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2020131764
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】大池 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】市橋 侑大
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-104362(JP,A)
【文献】特開2020-097229(JP,A)
【文献】特開2001-105478(JP,A)
【文献】特開2000-043126(JP,A)
【文献】特許第2931428(JP,B2)
【文献】国際公開第2020/138292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/22
B29C 49/64
B29C 49/06
B29B 11/08
B29C 45/16
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1射出成形金型を用いて、有底筒状のプリフォームの第1層を、第1の樹脂材料で射出成形する第1射出成形工程と、
前記第1射出成形工程で製造された前記第1層を
前記第1射出成形金型とは異なる温度調整用金型に収容し、前記第1層の温度調整を行うとともに、前記第1層の底部に開口部を形成する温度調整工程と、
前記温度調整用金型とは異なる第2射出成形金型を用いて、前記開口部から前記第1層の内周側に第2の樹脂材料を射出し、前記第1層の内周側に第2層を積層する第2射出成形工程と、
前記第2射出成形工程で得られた多層のプリフォームを、射出成形時の保有熱を有する状態でブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を含む
樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
第1射出成形金型を用いて、有底筒状のプリフォームの第1層を、第1の樹脂材料で射出成形する第1射出成形部と、
前記第1射出成形部で製造された前記第1層を前記第1射出成形金型とは異なる温度調整用金型に収容し、前記第1層の温度調整を行うとともに、前記第1層の底部に開口部を形成する温度調整部と、
前記温度調整用金型とは異なる第2射出成形金型を用いて、前記開口部から前記第1層の内周側に第2の樹脂材料を射出し、前記第1層の内周側に第2層を積層する第2射出成形部と、
前記第2射出成形部で得られた多層のプリフォームを、射出成形時の保有熱を有する状態でブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を含む
ブロー成形装置。
【請求項3】
前記温度調整用金型は、
前記
第1層の内部形状に対応する外形を有し、前記
第1層の内部に挿入可能なコア金型と、
前記
第1層を収容し、前記
第1層の温度を調整するキャビティ型と、
前記
第1層の底部に臨む可動部材と、を備え、
前記コア金型または前記可動部材のいずれかに、前記
第1層の底部を貫通する開口を形成する穿孔部を有する
請求項2に記載のブロー成形装置。
【請求項4】
前記穿孔部は、前記コア金型の先端から前記
第1層の軸方向に突出して形成され、
前記可動部材は、前記穿孔部を受ける凹部を有する
請求項
3に記載の
ブロー成形装置。
【請求項5】
前記穿孔部は、前記コア金型の軸方向に突出して前記可動部材に形成され、
前記コア金型は、前記穿孔部を受ける凹部を有する
請求項
3に記載の
ブロー成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の製造方法およびブロー成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から樹脂製容器は様々な用途に適用されており、複数の樹脂層を有する樹脂製容器も種々実用化されている。例えば、内層および外層の二層構造を有し、内容物の排出に応じて内層が外層から剥離してゆく樹脂製の剥離容器が知られている。この種の剥離容器は、デラミボトルまたはエアレスボトルとも称され、例えば醤油などの調味液や化粧品の化粧液、シャンプーやハンドソープなどの液状洗剤、消毒・殺菌などで用いられる液状薬剤の容器に利用されている。
現状、この種の剥離容器の製造では、押出ブロー方式の利用が一般的であって、延伸ブロー方式の利用は少ない(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、剥離容器の外観、寸法精度、物性強度などの向上や、無駄な材料の抑制による環境負荷の低減の観点から、剥離容器の製造において、射出成形工程からブロー成形工程までを連続して行う1ステージのホットパリソン式のブロー成形法を適用することが検討されている。
【0005】
しかしながら、剥離容器は、水分バリア性やガスバリア性などの機能面、耐座屈性(耐荷重性)や耐衝撃性(落下強度)などの物性面、外観デザイン面といった要望に全て応えるよう設計すると、外層用の樹脂材料の融点が内層用の樹脂材料の融点より高く設定される場合がある。二層構造のプリフォームを成形する射出成形工程において、内層を形成した後に高温の外層の樹脂材料を充填すると、外層の樹脂材料に接触した内層の表面が溶融して熱変形してしまう。このため、ホットパリソン式のブロー成形法を適用して剥離容器を製造すること自体が極めて困難である。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、外層、内層の順で複数段階の射出成形を行ってプリフォームを成形するとともに、ホットパリソン式のブロー成形法を適用して樹脂製容器を製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である樹脂製容器の製造方法は、第1射出成形金型を用いて、有底筒状のプリフォームの第1層を、第1の樹脂材料で射出成形する第1射出成形工程と、第1射出成形工程で製造された第1層を第1射出成形金型とは異なる温度調整用金型に収容し、第1層の温度調整を行うとともに、第1層の底部に開口部を形成する温度調整工程と、温度調整用金型とは異なる第2射出成形金型を用いて、開口部から第1層の内周側に第2の樹脂材料を射出し、第1層の内周側に第2層を積層する第2射出成形工程と、第2射出成形工程で得られた多層のプリフォームを、射出成形時の保有熱を有する状態でブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、外層、内層の順で複数段階の射出成形を行ってプリフォームを成形するとともに、ホットパリソン式のブロー成形法を適用して樹脂製容器を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の多層構造のプリフォームの縦断面図である。
【
図2】本実施形態の樹脂製容器の例を示す図である。
【
図3】本実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。
【
図5】第1温度調整部の第1例の金型ユニットを示す図である。
【
図6】第1温度調整部の第2例の金型ユニットを示す図である。
【
図8】容器の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、多層構造のプリフォームを用いたホットパリソン式のブロー成形法による容器の製造例として、剥離容器を製造する場合について説明する。
【0011】
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0012】
<プリフォームの構成例>
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る剥離容器用のプリフォームの構成例を説明する。
図1は本実施形態のプリフォーム10の縦断面図である。プリフォーム10の全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム10は、円筒状に形成された胴部14と、胴部14の他端側を閉塞する底部15と、胴部14の一端側の開口に形成された首部13とを備えている。
【0013】
プリフォーム10は、第1層(外層)11の内側に第2層(内層)12が積層された二層構造を有している。この第1層11と第2層12は、後述のように2段階の射出成形によりそれぞれ異なる熱可塑性の樹脂材料で形成される。第1層11は、成形性や透明性に優れた性質を有し、容器に求められる耐座屈性や耐衝撃性を付与できる合成樹脂で構成される。一方、第2層12は、容器の内容物の安定的な保管や内容物の劣化(酸化)の抑制に資する性質(例えば、水分バリア性、ガスバリア性、耐熱性、耐薬品性)を有する合成樹脂で構成される。また、第1層11の樹脂材料には、第2層12の樹脂材料よりも融点が高いものが選択される。なお、第1層11も内容物の安定的な保管や内容物の劣化の抑制に資する性質を備えていてもよい。さらに、第1層11と第2層12とがそれぞれ異なる性質を備えていてもよい。例えば、第1層11が水分バリア性を担う材料で形成され、第2層12がガスバリア性を担う材料で形成されていてもよい。さらに、第1層11と第2層12は同種の合成樹脂で構成されてもよい(第1層11と第2層12の樹脂材料の融点は同じでもよい)。この場合、第1層11と第2層12の少なくとも一方には、内容物の安定的な保管や内容物の劣化(酸化)の抑制に資する添加剤を含有させることが好ましい。
【0014】
以下、第1層11の樹脂材料を第1の樹脂材料とも称し、第2層12の樹脂材料を第2の樹脂材料とも称する。
第1の樹脂材料と第2の樹脂材料の組み合わせは、剥離容器の仕様に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0015】
一例として、第1の樹脂材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)であり、第2の樹脂材料は、PP(ポリプロピレン)である。PPの融点は160~170℃程度であり、PETの融点はPPの融点よりも高く、245~260℃程度である。
【0016】
また、プリフォーム10の胴部14において、第2層12の厚さt2に対する第1層11の厚さt1の比(t1/t2)は1.5以上であることが好ましい。当該厚さの比は、成形される剥離容器の透明性を確保する観点から3.0以下であることが好ましい。
【0017】
また、プリフォーム10の底部15において、第1層11の底部の中心には第1層11を貫通して開口部16が形成されている。第1層11の開口部16は、第2層12によって内側から塞がれている。また、プリフォーム10において、開口部16の外側には、第2層12からなる露出部が形成されている。露出部の直径は、開口部16の直径より大きく形成されている。
【0018】
また、プリフォーム10の底部15には、剥離容器に空気導入孔を形成するための凹部17が形成されている。凹部17は、例えば円形状であって、プリフォーム10の底部15の中心から径方向に間隔を空けて少なくとも1か所形成されるが、周方向に沿って凹部17が複数形成されていてもよい。容器の厚さ方向における凹部17の深さは、少なくとも凹部17が第1層11を貫通して、第2層12の表面が凹部17内に露出する寸法に設定されている。
【0019】
<剥離容器の構成例>
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る樹脂製の剥離容器20の構成例を説明する。
図2は、本実施形態の剥離容器20の縦断面図である。
【0020】
剥離容器20は、プリフォーム10を延伸ブロー成形することで得られるボトル形状の樹脂製容器であり、例えば、例えば醤油などの調味液が収容される。なお、剥離容器20の用途は、化粧品の化粧液やシャンプー(液状洗剤)または消毒・殺菌液(薬剤)など、他の内容物を収容するものでもよい。
【0021】
剥離容器20は、プリフォーム10と同様に、第1層11の内側に第2層12が積層された二層構造を有している。剥離容器20の胴部22において、第2層12の厚さt12に対する第1層11の厚さt11の比(t11/t12)は、プリフォーム10の胴部14における厚さの比(t1/t2)とほぼ同様である。
【0022】
剥離容器20は、上端に開口を有する首部21と、首部21から連続する円筒状の胴部22と、胴部22から連続する底部23とを有している。剥離容器20の製造においては、プリフォーム10の胴部14および底部15が延伸ブローで膨らむことで、剥離容器20の胴部22および底部23に賦形される。また、延伸ブローの際には、プリフォーム10の凹部17が延伸されることで、剥離容器20の底部23には第1層11を貫通する空気導入孔24が形成される。なお、首部21には、不図示の栓体が気密状態で係合される。栓体は、プッシュ式のポンプ機構または外気の流入を遮断/抑制する吐出機構を備えている。首部21に栓体を係合させることで、内容物の吐出時以外には、首部21から胴部22への外気の流入が抑制されて内容物の劣化(酸化)が抑制できる。さらに、栓体により、第1層11と第2層12との間にも首部21から外気が流入することもない。
【0023】
剥離容器20においては、第2層12の内側の空間に内容物が充填される。剥離容器20では、第2層12から内容物が排出される際に空気導入孔24から第1層11と第2層12の間に徐々に空気が流入し、第1層11と第2層12が剥離していく。これにより、第2層12の内容物を空気に触れさせずに容器内で内容物の占める容積を空気に置き換えることができ、第2層12に充填された内容物を容器外に排出できる。さらに、剥離容器20では、第2層12の容積が内容物の消費に応じ自動的に小さくなり、内容物が少なくなったときは内容物を栓体のポンプ機構や吐出機構の側に集約させることが可能になる。そのため、剥離容器20では、吐出不能となる内容物の残量を最小限にすることができる。
【0024】
また、剥離容器20の底部23の中心には、プリフォーム10と同様に第1層11を貫通する開口部25(非積層部25、単層部25)が形成されている。開口部25には第2層12の材料が開口部25を塞いで充填され、剥離容器20の底部23の開口部25近傍においては第1層11の外側に第2層12が露出した状態となっている。この第2層12の露出部(膨出部)は径方向の外側に向けて張り出しており、開口部25の直径より大きく形成されている。剥離容器20の露出部は、プリフォーム10の露出部が延伸されることで形成される。剥離容器20の開口部25において第2層12が第1層11の外側に露出することで第2層12が第1層11に部分的に固定(係止)され、第1層11に対する第2層12の位置ずれが抑止される。
【0025】
<剥離容器の製造装置の説明>
図3は、本実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。本実施形態のブロー成形装置30は、容器の製造装置の一例であって、プリフォーム10を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用して剥離容器20をブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式または1ステップ方式とも称する)を採用する。
【0026】
ブロー成形装置30は、第1射出成形部31と、第1温度調整部32と、第2射出成形部33と、第2温度調整部34と、ブロー成形部35と、取り出し部36と、搬送機構37とを備える。第1射出成形部31、第1温度調整部32、第2射出成形部33、第2温度調整部34、ブロー成形部35および取り出し部36は、搬送機構37を中心として所定角度(例えば60度)ずつ回転した位置に配置されている。
【0027】
(搬送機構37)
搬送機構37は、
図3の紙面垂直方向の軸を中心に回転する回転板(移送板)37aを備える。回転板37aには、プリフォーム10の首部13(または剥離容器20の首部21)を保持するネック型37b(
図3では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1つ以上配置されている。搬送機構37は、回転板37aを回転させることで、ネック型37bで保持されたプリフォーム10(または剥離容器20)を、第1射出成形部31、第1温度調整部32、第2射出成形部33、第2温度調整部34、ブロー成形部35、取り出し部36の順に搬送する。なお、搬送機構37は、回転板37aを昇降させることもでき、第1射出成形部31や第2射出成形部33における型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。
【0028】
(第1射出成形部31)
第1射出成形部31は、キャビティ型40、コア型41、ホットランナー型42を備え、成形時に搬送されるネック型37bと協働し、プリフォーム10の第1層11を製造する。キャビティ型40は、開口側(上方側)の第1のキャビティ型40Aと底面側(下方側)の第2のキャビティ型40Bから構成される。
図3に示すように、第1射出成形部31には、ホットランナー型42に第1の樹脂材料を供給する第1射出装置38が接続されている。キャビティ型40とホットランナー型42は、一体化した状態で、ブロー成形装置30の機台に固定されている。コア型41は、コア型昇降機構に固定されている。
【0029】
キャビティ型40は、第1層11の外周の形状を規定する。第1のキャビティ型40Aは、キャビティ型40の開口側に臨む金型であって、第1層11の胴部外周の形状を規定する。第2のキャビティ型40Bは、キャビティ型40の底面側に臨む金型であって、第1層11の底部外周の形状を規定する。また、ホットランナー型42は、第1射出装置38から第1の樹脂材料を導入する樹脂供給部42aを有する。コア型41は、第1層11の内周側の形状を規定する金型であって、キャビティ型40の内周側に上側から挿入される。ネック型37bはプリフォーム10(第1層11)の首部13の外形を規定する。
図4では、キャビティ型40が第1のキャビティ型40Aと第2のキャビティ型40Bに分割されている例を示したが、キャビティ型40は分割されずに一体的に構成されていてもよい。
【0030】
また、キャビティ型40のホットランナー型42は、コア型41に近接する位置まで軸方向に移動可能な不図示のバルブピン(樹脂供給部42aを開閉する棒状部材)を内部に有していてもよい。ホットランナー型42のバルブピンは、例えば、第1の樹脂材料が型空間に充填されるまではホットランナー型42の内部に収容され、第1の樹脂材料が型空間に充填された後、第2のキャビティ型40Bの底面よりもコア型41に近接する位置まで突出する。
【0031】
図4に示すように、第1射出成形部31においては、上記のキャビティ型40、コア型41と、搬送機構37のネック型37bとを型閉じして第1層11の型空間を形成する。そして、上記の型空間の底部からホットランナー型42を介して第1の樹脂材料を流し込むことで、第1射出成形部31においてプリフォーム10の第1層11が製造される。なお、ホットランナー型42が上記のバルブピンを有する場合は、第1層11の型空間に第1の樹脂材料を流し込んだ後にバルブピンを上昇させ、第2のキャビティ型40Bの底面より突出しコア型41に近接する位置まで移動させてもよい。これにより、第1層11の底部中央を周辺部より肉厚の薄い薄膜状に成形できるため、後述する第1温度調整部32における開口部16の形成がより確実に行える。
【0032】
第1層11の底部外周に臨む第2のキャビティ型40Bの上面側には、所定位置に第1の突起部44が設けられている。例えば、第1の突起部44は、円柱形状、円錐状(テーパ円柱状)、角柱状、角錐状であって、樹脂供給部42aの位置する底部中央から径方向に間隔を空けて少なくとも1つ配置されている。
第1の突起部44の形状は、例えば軸方向に延長するリブ形状などの他の形状であってもよく、底部中央を基準として回転対称をなすように複数形成されていてもよい。また、第1の突起部44の数は、複数であってもよい。その際に、各々の第1の突起部44は中心軸を基準として点対称の位置関係で配置されていてもよい。
【0033】
図4に示すように、第1層11の底部外周面(または第2のキャビティ型40Bのキャビティ基準面)からの第1の突起部44の突出量h1は、第1層11の厚さとほぼ同じ寸法である。そのため、第1射出成形部31を型閉じしたときには、第1の突起部44の先端はコア型41の表面に臨む(すなわち、第1の突起部44の先端はコア型41の表面近傍に配置される)。これにより、第1射出成形部31の射出成形においては、第1の突起部44により、プリフォーム10の凹部17に対応する位置に円形等の凹部11aが第1層11に形成される。第1層11の凹部11aは、第1層11を貫通していてもよく、コア型41と第1の突起部44に挟まれて形成された薄膜を有するものであってもよい。
【0034】
また、第1射出成形部31の型開きをしたときにも、搬送機構37のネック型37bは開放されずにそのままプリフォーム10の第1層11を保持して搬送する。第1射出成形部31で同時に成形されるプリフォーム10の数(すなわち、ブロー成形装置30で同時に成形できる剥離容器20の数)は、適宜設定できる。なお、
図3では、4つのプリフォームを同時に搬送する構成を示している。
【0035】
(第1温度調整部32)
第1温度調整部32は、後述する第1例の金型ユニット50aまたは第2例の金型ユニット50bのいずれかを備える。第1温度調整部32は、射出成形後の保有熱を備えた(高温状態にある)プリフォーム10の第1層11を、所定温度に保たれた金型ユニット50a,50bに収容することで温度調整する(第1層11が加熱または冷却される)。また、第1温度調整部32は、第2射出成形部33に搬送される前に、プリフォーム10の第1層11の温度分布を所定の状態に調整する機能も担う。
さらに、第1温度調整部32は、プリフォーム10の第1層11を金型ユニット50a,50bに収容する際に、第1層11の底部中心に開口部16を形成する。
【0036】
図5は、第1温度調整部32の第1例の金型ユニット50aを示す図である。
第1例の金型ユニット50aは、キャビティ型(ポット型)51と、コア型52aと、可動型53aとを備える。
【0037】
キャビティ型51は、第1射出成形部31で製造されたプリフォーム10の第1層11を収容可能な温調空間を有する金型である。キャビティ型51は、プリフォーム10の軸方向に沿って上下3段に分割された構成であり、上から順に、上段型51a、中段型51b、下段型51cを有する。キャビティ型51の下段型51cは、支持台56に載置されている。また、プリフォーム10の底部15に臨む下段型51cの底部中央と、支持台56には、可動型53aを挿通する空間が軸方向に沿って形成されている。
【0038】
上段型51a、中段型51b、下段型51cのそれぞれには、ヒーターが設けられていたり、内部に温度調整媒体(冷却媒体)の流れる流路(不図示)が形成されていたりする。そのため、キャビティ型51の温度は、ヒーターや温度調整媒体により所定の温度に保たれる。なお、上段型51a、中段型51b、下段型51cのヒーターや温度調整媒体の温度を変更することで、プリフォーム10の温度分布を軸方向において変化させてもよい。なお、ヒーターが設けられたキャビティ型はプリフォーム10を非接触で加熱し、温度調整媒体の流路が設けられたキャビティ型はプリフォーム10に接触して温調または冷却を行う。
【0039】
コア型52aは、キャビティ型51に対して軸方向に移動可能な金型であって、キャビティ型51に収容される第1層11の内側に挿入される。コア型52aの内部には温度調整媒体(冷却媒体)の流れる流路(温調部材または冷却部材(不図示))が形成または内蔵され、上記の温度調整媒体によりコア型52aは所定の温度に保たれる。また、コア型52aの形状は、第1層11の内周面に対応する形状に形成されている。そのため、第1層11にコア型52aを挿入したときには、第1層の内周面はコア型52aの表面と面接触して両者の間で効率的に熱交換が行われる。
【0040】
また、第1層11の底部15に臨むコア型52aの先端中心には、下側に向けて軸方向に突出する円錐形状の穿孔部(パンチングニードル)54が設けられている。穿孔部54は、コア型52aが第1層11に挿入されたときに第1層11の底部を貫通し、第1層11の底部中心に開口部16を形成する機能を担う。
【0041】
可動型53aは、第1層11の底部中心に下側から臨む金型であって、下段型51cおよび支持台56に昇降可能に挿通される。可動型53aの表面には、コア型52aの穿孔部54の形状に対応し、型閉時に穿孔部54を受ける凹部55aが形成されている。
【0042】
次に、
図6を参照しつつ、第2例の金型ユニット50bの構成を説明する。第2例の金型ユニット50bの説明において、第1例の金型ユニット50aと同様の構成については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0043】
第2例の金型ユニット50bは、キャビティ型(ポット型)51と、コア型52bと、可動型53bとを備える。
【0044】
第2例の金型ユニット50bのコア型52bは、キャビティ型51に対して軸方向に移動可能な金型であって、キャビティ型51に収容される第1層11の内側に挿入される。コア型52bの内部には温度調整媒体(冷却媒体)の流れる流路(不図示)が形成または内蔵され、上記の温度調整媒体によりコア型52bは所定の温度に保たれる。また、コア型52bの形状は、第1層11の内周面に対応する形状に形成されている。そのため、第1層11にコア型52bを挿入したときには、第1層の内周面はコア型52bの表面と面接触して両者の間で効率的に熱交換が行われる。
また、第1層11の底部15に臨むコア型52bの先端中心には、可動型53bに設けられた後述の穿孔部54bの形状に対応し、型閉時に穿孔部54bを受ける凹部55bが形成されている。
【0045】
可動型53bは、第1層11の底部中心に下側から臨む金型であって、下段型51cおよび支持台56に昇降可能に挿通される。可動型53bには、上側に向けて軸方向に突出する円錐形状の穿孔部54b(パンチングニードル)が設けられている。穿孔部54bは、可動型53bが上昇して型閉されたときに、コア型52bが挿入された状態の第1層11の底部15を貫通し、第1層11の底部中心に開口部16を形成する機能を担う。
【0046】
また、
図5、
図6に示す金型ユニット50a、50bは、キャビティ型51からの放射熱(輻射熱)で第1層11を外側から加熱しつつ、温度調整媒体の流れるコア型52a、52bを接触させることで第1層11を内側から冷却している。
【0047】
第2射出成形部33では、後述のように、第1層11の外側がキャビティ型60との接触により冷却されて温度が低下する。そのため、ブロー成形時にプリフォーム10が膨らみにくくなることを抑制するために、第1温度調整部32では外側から第1層11を加熱して保有熱を確保することが好ましい。
【0048】
また、第2射出成形部33では、後述のように第1層11の内側が第2の樹脂材料で加熱されるため、第1層11の白化が生じやすくなる。そのため、第1温度調整部32では内側から第1層11を冷却して第1層11の白濁化(結晶化)を抑制することが好ましい。
【0049】
(第2射出成形部33)
第2射出成形部33は、
図7に示すように、キャビティ型60、コア型61、ホットランナー型62を備え、成形時に搬送されるネック型37bと協働し、第1層11の内周部に第2層12を射出成形する。キャビティ型60は、開口側(上方側)の第1のキャビティ型60Aと底面側(下方側)の第2のキャビティ型60Bから構成される。また、
図3に示すように、第2射出成形部33には、ホットランナー型62に第2の樹脂材料を供給する第2射出装置39が接続されている。
【0050】
キャビティ型60は、第1層11を収容する金型である。第1のキャビティ型60Aは、キャビティ型60の開口側に臨む金型であって、第1層11の胴部14を収容する。第2のキャビティ型60Bは、キャビティ型60の底面側に臨む金型であって、第1層11の底部15を収容する。また、ホットランナー型62は、第2射出装置39から第2の樹脂材料を導入する樹脂供給部62aを有する。コア型61は、第2層12の内周側の形状を規定する金型であって、キャビティ型60の内周側に上側から挿入される。ネック型37bはプリフォーム10(第2層12)の首部13の上部形状を規定する。なお、キャビティ型60は、第1のキャビティ型60Aと第2のキャビティ型60Bが分割されずに一体的に構成されていてもよい。
【0051】
図7に示すように、第2射出成形部33は、第1射出成形部31で射出成形されたプリフォーム10の第1層11を収容する。第2射出成形部33を型閉じした状態では、第1層11の内周側と、コア型61の表面との間に型空間が形成される。第2射出成形部33においては、上記の型空間の底部からホットランナー型62を介して第2の樹脂材料を流し込むことで、第1層11の内周側に第2層12が積層されたプリフォーム10が形成される。
【0052】
また、第1層11の底部外周に臨む第2のキャビティ型60Bの上面側には、第1射出成形部31の第1の突起部44と対応する所定位置に、プリフォーム10の凹部17の形状に対応した円柱状等の第2の突起部64が設けられている。第2の突起部64は、第2射出成形部33に第1層11が収容されたときに、第1層11の凹部11aに挿通される。
【0053】
図7に示すように、第1層11の底部外周面(または第2のキャビティ型60Bのキャビティ基準面)からの第2の突起部64の突出量h2は、第1層11の厚さよりも大きい寸法である。つまり、第2の突起部64の突出量h2は、第1の突起部44の突出量h1よりも大きい(h2>h1)。そのため、第2射出成形部33を型閉じしたときには、第2の突起部64の先端は第1層11の凹部11aを貫通して第1層11の内周側まで突出する。第2射出成形部33の第2のキャビティ型60Bに第2の突起部64を設けることで、プリフォーム10の底部15に凹部17を形成することができる。
【0054】
また、第2の突起部64の突出量h2は、プリフォーム10の厚さよりも小さく設定されている。つまり、第2射出成形部33での射出成形では、コア型61と第2の突起部64の間に第2の樹脂材料が流れ込むので、第2の突起部64により第2層12を貫通する孔は形成されない。
【0055】
なお、第2射出成形部33において、第1層11を収容するキャビティ型60の型空間の軸方向深さは、第1層11の軸方向長さよりも短くしてもよい。これにより、キャビティ型60に第1層11を収容したときに、第1層11の底部がキャビティ型60の底面に押し当てられて両者が接触し、第1層11の底部とキャビティ型60の間に隙間が生じることを抑制できる。また、第2層12が第1層11の開口部16から露出できるよう、第2のキャビティ型60Bの底部中央領域に凹部形状の成形空間を設け、底部中央領域において第1層11と第2のキャビティ型60Bとの間に僅かな隙間が形成されるようにしてもよい。
【0056】
(第2温度調整部34)
第2温度調整部34は、第2射出成形部33で製造されたプリフォーム10の均温化や偏温除去を行い、プリフォーム10の温度を最終ブローに適した温度(例えば約90℃~105℃)に調整する。また、第2温度調整部34は、射出成形後の高温状態のプリフォーム10を冷却する機能も担う。さらに、第2温度調整部34はプリフォーム10を加熱する機能を有していてもよい。
【0057】
(ブロー成形部35)
ブロー成形部35は、第2温度調整部34で温度調整されたプリフォーム10に対してブロー成形を行い、剥離容器20を製造する。
ブロー成形部35は、剥離容器20の形状に対応した一対の割型であるブローキャビティ型と、底型と、延伸ロッドおよびエア導入部材(いずれも不図示)を備える。ブロー成形部35は、プリフォーム10を延伸しながらブロー成形する。これにより、プリフォーム10がブローキャビティ型の形状に賦形されて剥離容器20を製造することができる。
【0058】
(取り出し部36)
取り出し部36は、ブロー成形部35で製造された剥離容器20の首部21をネック型37bから開放し、剥離容器20をブロー成形装置30の外部へ取り出すように構成されている。
【0059】
<容器の製造方法の説明>
次に、本実施形態のブロー成形装置30による剥離容器20の製造方法について説明する。
図8は、容器
20の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【0060】
(ステップS101:第1射出成形工程)
まず、
図4に示すように、第1射出成形部31において、キャビティ型40、コア型41および搬送機構37のネック型37bで形成された型空間に第1射出装置38から第1の樹脂材料が射出され、プリフォーム10の第1層11が成形される。このとき、第1の突起部44により、第1層11の底部には凹部11aが形成される。
【0061】
その後、第1射出成形部31が型開きされると、搬送機構37の回転板37aが所定角度回転し、ネック型37bに保持されたプリフォーム10の第1層11が、射出成形時の保有熱を含んだ状態で第1温度調整部32に搬送される。
【0062】
(ステップS102:第1温度調整工程)
次に、第1温度調整部32において、第1例の金型ユニット50aまたは第2例の金型ユニット50bにプリフォーム10の第1層11が収容され、第1層11の冷却と温度分布の調整(均温化や偏温除去)が行われる。
【0063】
第1例の金型ユニット50aが採用される場合、第1層11の内側にコア型52aを挿入するとコア型52aの先端に設けられた穿孔部54aが第1層11の底部15と接触する。このとき、可動型53aを第1層11に向けて上昇させると、第1層11がコア型52aに押し付けられることで穿孔部54aが第1層11の底部15を貫通し、第1層11の底部中心に開口部16が形成される。
【0064】
第2例の金型ユニット50bが採用される場合、第1層11の内側にコア型52bを挿入するとコア型52bが第1層11の底部15の内面と接触する。このとき、可動型53bを第1層11に向けて上昇させると、可動型53bの穿孔部54aが第1層11の底部15を貫通し、第1層11の底部中心に開口部16が形成される。
【0065】
また、第1温度調整部32での第1層11は射出成形時の保有熱を有し、比較的変形しやすい状態にある。そのため、第1層11に開口部16を形成すると、第1層11の底部中心にあった第1の樹脂材料は、穿孔部54a,54bに押しのけられて開口部16の周囲の材料と一体化する。したがって、本実施形態では、開口部16の形成の際に廃材を生じさせずに済む。
その後、搬送機構37の回転板37aが所定角度回転し、ネック型37bに保持されたプリフォーム10の第1層11が、第2射出成形部33に搬送される。
【0066】
(ステップS103:第2射出成形工程)
続いて、第2射出成形部33にプリフォーム10の第1層11が収容され、第2層12の射出成形が行われる。
第2射出成形部33においては、
図7に示すように、第1層11の内周側と、第1層11の内周に臨むコア型61の表面との間に型空間が形成され、上記の型空間内にホットランナー型62から第2の樹脂材料を充填する。なお、射出成形のときには、第1層11の開口部16から第2の樹脂材料が第1層11の内周側に導かれる。
【0067】
ここで、第2射出成形部33で充填する第2の樹脂材料の温度は、第1の樹脂材料の融点よりも低い温度に設定される。また、第2射出成形部33で第2の樹脂材料を充填するときの第1層11の表面温度は、第2の樹脂材料の融点以下の温度に冷却されている。
【0068】
第2射出成形部33では、第1層11の外周側にはキャビティ型60が臨み、キャビティ型60によって第1層11の形状が外周側から保持される。このため、第2の樹脂材料が第1層11と接触しても第1層11の熱変形を抑制できる。
【0069】
また、第2射出成形部33では、第2の突起部64が第1層11の凹部11aを貫通して塞いでいるので、プリフォーム10の凹部17が第2の樹脂材料で塞がれることはない。また、第2射出成形部33における第2の突起部64は第1層の内周側まで先端が突出するので、第2の突起部64により形成されるプリフォーム10の凹部17は、第1層11を貫通して第2層12の表面が凹部17内に露出する形状となる。
【0070】
また、第2射出成形部33において、第1層11を収容するキャビティ型60の型空間の軸方向深さは第1層11の軸方向長さよりも短い。そのため、第1層11の底部15がキャビティ型60の底面に押し当てられ、第1層11の底部15とキャビティ型60の間に隙間が生じることが抑制される。したがって、第1層11とキャビティ型60の間に第2の樹脂材料が流れ込みにくくなり、第2の樹脂材料が第1層11の外周を被覆する成形不良の発生が抑制される。
【0071】
以上のようにして、第1射出成形工程および第2射出成形工程により、第1層11の内周側に第2層12が積層されたプリフォーム10が製造される。
その後、第2射出成形部33が型開きされると、搬送機構37の回転板37aが所定角度回転し、ネック型37bに保持されたプリフォーム10が、射出成形時の保有熱を含んだ状態で第2温度調整部34に搬送される。
【0072】
(ステップS104:第2温度調整工程)
続いて、第2温度調整部34にプリフォーム10が収容され、プリフォーム10の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。
その後、搬送機構37の回転板37aが所定角度回転し、ネック型37bに保持された温度調整後のプリフォーム10が、ブロー成形部35に搬送される。
【0073】
(ステップS105:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部35において、剥離容器20のブロー成形が行われる。
まず、ブローキャビティ型を型閉じしてプリフォーム10を型空間に収容し、エア導入部材(ブローコア)を下降させることで、プリフォーム10の首部13にエア導入部材が当接される。そして、延伸ロッドを降下させてプリフォーム10の底部15を内面から抑えて、必要に応じて縦軸延伸を行いつつ、エア導入部材からブローエアを供給することで、プリフォーム10を横軸延伸する。これにより、プリフォーム10は、ブローキャビティ型の型空間に密着するように膨出して賦形され、剥離容器20にブロー成形される。なお、プリフォーム10が剥離容器20より長い場合、底型は、ブローキャビティ型の型閉じ前はプリフォーム10の底部15と接触しない下方の位置で待機させ、型閉じ後に成形位置まで素早く上昇させる。
【0074】
なお、本実施形態では、底部15に凹部17が形成されたプリフォーム10をブロー成形することで、剥離容器20において、第1層11を貫通し第2層12の表面まで至る空気導入孔24を確実に形成することができる。
【0075】
(ステップS106:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブローキャビティ型が型開きされる。これにより、ブロー成形部35から剥離容器20が移動可能となる。
続いて、搬送機構37の回転板37aが所定角度回転し、剥離容器20が取り出し部36に搬送される。取り出し部36において、剥離容器20の首部21がネック型37bから開放され、剥離容器20がブロー成形装置30の外部へ取り出される。
【0076】
以上で、剥離容器20の製造方法における1つのサイクルが終了する。その後、搬送機構37の回転板37aを所定角度回転させることで、上記のS101からS106の各工程が繰り返される。なお、ブロー成形装置30の運転時には、1工程ずつの時間差を有する6組分の容器の製造が並列に実行される。
【0077】
また、ブロー成形装置30の構造上、第1射出成形工程、第1温度調整工程、第2射出成形工程、第2温度調整工程、ブロー成形工程および容器取り出し工程の各時間はそれぞれ同じ長さになる。同様に、各工程間の搬送時間もそれぞれ同じ長さになる。
【0078】
以下、本実施形態のブロー成形装置およびブロー成形方法の効果を説明する。
本実施形態では、第1射出成形工程でプリフォーム10の第1層11(外層)を成形し、第2射出成形工程で第1層11の開口部16から第1層11の内側に第2層12(内層)を射出成形して二層構造のプリフォーム10が製造される。本実施形態によれば、融点の高い樹脂材料で外層を先に形成し、その後に外層よりも融点の低い樹脂材料で内層を形成できる。つまり、外層が射出成形時の保有熱を有する状態のまま内層の射出成形を連続的に行って、剥離容器20の仕様に適した二層構造のプリフォーム10を製造できる。本実施形態では、外層および内層がいずれも射出成形時の保有熱を有する状態で二層構造のプリフォーム10が離型されるので、ホットパリソン式のブロー成形法で剥離容器20を製造するときに好適なプリフォーム10を得ることができる。
【0079】
そして、本実施形態では、射出成形時の保有熱を有する状態で、上記の二層構造のプリフォーム10を延伸ブロー成形して剥離容器20を製造する。そのため、本実施形態では、ホットパリソン式のブロー成形法によって、美的外観や物性強度等に優れた剥離容器20を製造できる。コールドパリソン式のブロー成形と比べると、本実施形態では製造されたプリフォーム10を常温近くまで冷却せずにすみ、プリフォーム10の再加熱の工程も不要となる。そのため、本実施形態によれば、プリフォーム10の射出成形から剥離容器20のブロー成形までの一連の工程を比較的短時間で完了させることができ、剥離容器20をより短いサイクルで製造できる。
【0080】
また、本実施形態では、第1射出成形工程と第2射出成形工程の間に第1温度調整工程を設け、この第1温度調整工程で第1層11に開口部16を形成する。第1温度調整工程を経ることで、第1射出成形工程での金型内での冷却時間を短縮できるとともに、第2層12を成形する前に第1層11の偏温を抑制できる。また、第1温度調整工程で第1層11に開口部16を形成することで、射出金型内に開口部16を形成する機構を組み込まずにすむので、射出成形装置の構成を簡素化することができる。
【0081】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0082】
上記実施形態では、積層構造のプリフォームを用いたホットパリソン式のブロー成形法で剥離容器を製造する場合について説明した。しかし、本発明のブロー成形方法は、剥離容器の製造に限定されず、他の樹脂製容器の製造にも適用可能である。例えば、異なる色の樹脂材料を用いて外層、内層の順で射出成形を行ってグラデーションや色分け模様を有するプリフォームを成形し、ホットパリソン式のブロー成形法で樹脂製の装飾容器を製造する場合にも本発明を適用できる。
【0083】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば、ブロー成形装置30の成形ステーション数は適宜増減させてもよい(例えば第2温度調整部34や取り出し部36などを省略して5つにする、など)。また、金型ユニット50a、50bはブロー成形部35を備えない射出成形装置に搭載して剥離容器用プリフォームを成形する目的で利用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
10…プリフォーム、11…第1層、12…第2層、15…底部、16…開口部、20…剥離容器、30…ブロー成形装置、31…第1射出成形部、32…第1温度調整部、33…第2射出成形部、34…第2温度調整部、35…ブロー成形部、38…第1射出装置、39…第2射出装置、50a,50b…金型ユニット、51…キャビティ型、52a,52b…コア型、53a,53b…可動型、54a,54b…穿孔部、55a,55b…凹部