(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】光学フィルムの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240913BHJP
B26F 1/00 20060101ALI20240913BHJP
B26D 5/34 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G02B5/02 A
B26F1/00 H
B26D5/34 B
B26D5/34 A
(21)【出願番号】P 2023052938
(22)【出願日】2023-03-29
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 奈津美
(72)【発明者】
【氏名】杉脇 正晃
(72)【発明者】
【氏名】望月 政和
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109722(JP,A)
【文献】特開2017-068062(JP,A)
【文献】特開2021-139981(JP,A)
【文献】特開2021-139982(JP,A)
【文献】特開2007-132857(JP,A)
【文献】特開平09-089540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02B 5/30
B26F 1/00
B26D 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出部を有する長尺状の帯状フィルムを切り抜くことを含み、
該帯状フィルムを切り抜く際、該被検出部の位置を検出し、検出された該被検出部の位置を基準として切り抜き線の位置決めを行い、検出された該被検出部を有するフィルム片としての光学フィルムを1枚ずつ得ることを含み、
該帯状フィルムが、ヘイズが5.0%以上のアンチグレア層を含み、
該被検出部が、該アンチグレア層の一部に形成されたヘイズが1.0%未満の非アンチグレア部であり、
赤色光を照射する照明手段とカメラを用いて、該被検出部の位置を検出する、
光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記照明手段がリング状であり、該照明手段を用いて前記被検出部を照射することを含む、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記リング状の照明手段は、所定幅のリング状のフレームに赤色光を発するLEDが配列されており、該フレームが径方向外側に向かって傾斜し、個々のLEDが径方向内側に向かって傾斜するよう構成されている、請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
幅方向において前記帯状フィルムを切り抜く前に、該帯状フィルムの幅方向の片側端辺を検出することと、
該帯状フィルムを切り抜く際、切り抜き手段を、該帯状フィルムの幅方向の一方から他方へ向けて、移動させることと、を含み、
検出された該片側端辺を基準に、該切り抜き手段の移動方向を決定する、
請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
帯状フィルムを所定の長さ方向送りピッチで搬送する搬送手段と、
該帯状フィルムが有する被検出部を赤色光で照射する照明手段と、照射された該被検出部を撮像する撮像装置と、を含み、該被検出部を検出する検出手段と、
該帯状フィルムの幅方向の一方から他方へ向けて移動し、かつ、検出された該被検出部の位置を基準として切り抜き線の位置決めを行う切り抜き手段とを含み、
該帯状フィルムが、ヘイズが5.0%以上のアンチグレア層を含み、
該被検出部が、該アンチグレア層の一部に形成されたヘイズが1.0%未満の非アンチグレア部である、
光学フィルムの製造装置。
【請求項6】
前記照明手段がリング状である、請求項5に記載の製造装置。
【請求項7】
前記リング状の照明手段は、所定幅のリング状のフレームに赤色光を発するLEDが配列されており、該フレームが径方向外側に向かって傾斜し、個々のLEDが径方向内側に向かって傾斜するよう構成されている、請求項6に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノート型パーソナルコンピューター(PC)等の画像表示装置には、カメラ等の内部電子部品が搭載されているものがある。このような画像表示装置には、多くの場合、一部に非光学機能部が形成された光学フィルムが用いられている。このような光学フィルムとしては、例えば、一部に非偏光部が形成された偏光子、一部に非アンチグレア部が形成されたアンチグレアフィルムが挙げられる。光学フィルムは、通常、原反フィルムロールを所定サイズ(適用される画像表示装置に対応するサイズ)のフィルム片に切り抜かれることにより作製され得る。光学フィルムの切り抜きにおいては、位置精度(結果として、切り抜き精度)を高めるためにアラインメントマークが設けられる場合がある。さらに、一部に非偏光部が形成された偏光子について非偏光部をアラインメントマークとして利用する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術においては、ほとんどの場合、偏光子(の偏光部)の単体透過率は45%以下であり非偏光部の透過率は90%以上であるので、偏光部と非偏光部との明るさ(輝度)の差が大きく、境界が明確である。一方、一部に非アンチグレア部が形成されたアンチグレアフィルムについては、アンチグレア部と非アンチグレア部との明るさ(輝度)の差が上記偏光子ほど大きくないので、非アンチグレア部をアラインメントマークとして利用できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、一部に非光学機能部を有する光学フィルムを長尺状の原反フィルムから切り抜く光学フィルムの製造方法において、非光学機能部と光学機能部との明るさの差が小さい場合であっても、非光学機能部が精度よく配置された光学フィルムを製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の1つの実施形態によれば、光学フィルムの製造方法が提供される。該製造方法は、被検出部を有する長尺状の帯状フィルムを切り抜くことを含み;該帯状フィルムを切り抜く際、該被検出部の位置を検出し、検出された該被検出部の位置を基準として切り抜き線の位置決めを行い、検出された該被検出部を有するフィルム片としての光学フィルムを1枚ずつ得ることを含む。本発明の実施形態においては、該帯状フィルムは、ヘイズが5.0%以上のアンチグレア層を含み;該被検出部は、該アンチグレア層の一部に形成されたヘイズが1.0%未満の非アンチグレア部であり;該製造方法は、赤色光を照射する照明手段とカメラを用いて、該被検出部の位置を検出する。
[2]上記[1]において、上記照明手段はリング状であり、上記製造方法は、該照明手段を用いて前記被検出部を照射することを含む。
[3]上記[2]において、上記リング状の照明手段は、所定幅のリング状のフレームに赤色光を発するLEDが配列されており、該フレームが径方向外側に向かって傾斜し、個々のLEDが径方向内側に向かって傾斜するよう構成されている。
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、上記製造方法は、幅方向において上記帯状フィルムを切り抜く前に、該帯状フィルムの幅方向の片側端辺を検出することと;該帯状フィルムを切り抜く際、切り抜き手段を、該帯状フィルムの幅方向の一方から他方へ向けて、移動させることと;を含み、検出された該片側端辺を基準に、該切り抜き手段の移動方向を決定する。
[5]本発明の別の実施形態によれば、光学フィルムの製造装置が提供される。該製造装置は、帯状フィルムを所定の長さ方向送りピッチで搬送する搬送手段と;該帯状フィルムが有する被検出部を赤色光で照射する照明手段と、照射された該被検出部を撮像する撮像装置と、を含み、該被検出部を検出する検出手段と;該帯状フィルムの幅方向の一方から他方へ向けて移動し、かつ、検出された該被検出部の位置を基準として切り抜き線の位置決めを行う切り抜き手段と;を含む。本発明の実施形態においては、該帯状フィルムは、ヘイズが5.0%以上のアンチグレア層を含み;該被検出部は、該アンチグレア層の一部に形成されたヘイズが1.0%未満の非アンチグレア部である。
[6]上記[5]において、上記照明手段はリング状である。
[7]上記[6]において、上記リング状の照明手段は、所定幅のリング状のフレームに赤色光を発するLEDが配列されており、該フレームが径方向外側に向かって傾斜し、個々のLEDが径方向内側に向かって傾斜するよう構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、一部に非光学機能部を有する光学フィルムを長尺状の原反フィルムから切り抜く光学フィルムの製造方法において、非光学機能部と光学機能部との明るさの差が小さい場合であっても、非光学機能部が精度よく配置された光学フィルムを製造し得る方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態による製造方法に用いられ得る帯状フィルムの概略平面図である。
【
図2】
図1の帯状フィルムのII-II線による概略断面図である。
【
図3】(a)、(a’)および(b)~(d)は、本発明の1つの実施形態による光学フィルムの製造方法を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施形態による製造方法に用いられ得る撮像装置と照明手段とを説明する概略図である。
【
図5】(a)~(c)は、本発明の実施形態に用いられ得る帯状フィルムの被検出部の配置パターンの例を説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の代表的な実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、見やすくかつ理解を容易にするために、図面は模式的または概念的に描かれており、長さ、幅、形状、大きさ、比率、方向、個数等は実際と異なっている場合があり、図面間(例えば、
図1と
図3)で対応していない場合がある。
【0009】
A.光学フィルムの製造方法の概要
本発明の実施形態による光学フィルムの製造方法は、被検出部を有する長尺状の帯状フィルムを切り抜くことを含み;該帯状フィルムを切り抜く際、該被検出部の位置を検出し、検出された該被検出部の位置を基準として切り抜き線の位置決めを行い、検出された該被検出部を有するフィルム片としての光学フィルムを1枚ずつ得ることを含む。本発明の実施形態においては、該帯状フィルムは、ヘイズが5.0%以上のアンチグレア層を含み;該被検出部は、該アンチグレア層の一部に形成されたヘイズが1.0%未満の非アンチグレア部であり;該製造方法は、赤色光を照射する照明手段とカメラを用いて、該被検出部の位置を検出する。以下、製造方法に用いられる帯状フィルムを説明した後、製造方法の詳細を説明する。
【0010】
B.帯状フィルム
図1は、本発明の実施形態による製造方法に用いられ得る帯状フィルムの概略平面図であり;
図2は、
図1の帯状フィルムのII-II線による概略断面図である。帯状フィルムは長尺状であり、代表的にはロール搬送可能である。帯状フィルムは、被検出部を有する。図示例の帯状フィルム100は、長尺状の反射防止層10と、反射防止層10に形成されたアンチグレア層20と、を有する。アンチグレア層20は、代表的には、アンチグレア層の大部分を占めアンチグレア機能を有するアンチグレア部21と、所定の位置に形成された非アンチグレア部22と、有する。本発明の実施形態においては、上記のとおり、非アンチグレア部22が被検出部となる。
【0011】
アンチグレア層20は、代表的には、反射防止層10の長尺方向および幅方向に所定の間隔で形成されている。1つの実施形態においては、アンチグレア層は、帯状フィルムが光学フィルム(フィルム片)に切り抜かれて適用される画像表示装置の形状に対応した形状に形成されている。言い換えれば、アンチグレア層は、最終的に使用される光学フィルム(フィルム片)の形状に対応した形状を有し得る。図示例のアンチグレア層は、反射防止層の長尺方向および幅方向においてそれぞれ対向する一対の辺で規定された矩形形状を有する。非アンチグレア部22は、代表的には、帯状フィルムを画像表示装置に取り付けるためにフィルム片に切り抜いた際に、画像表示装置のカメラ部に対応する位置に形成されている。
【0012】
反射防止層のヘイズは、1.0%未満であり、好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下である。ヘイズは低いほど好ましく、ヘイズの下限は例えば0.1%であり得る。反射防止層のヘイズがこのような範囲であれば、光学積層体(フィルム片)が最終的に画像表示装置に適用される場合に、表示性能に悪影響を与えることなく反射防止機能を付与することができる。
【0013】
反射防止層は、所望の反射防止特性を有し、上記のようなヘイズを満足する限りにおいて、任意の適切な構成が採用され得る。具体的には、反射防止層は、硬化性樹脂組成物の硬化層であってもよく、ドライプロセスにより形成された層であってもよい。硬化性樹脂組成物は、代表的には、バインダー樹脂と必要に応じて光重合開始剤とを含む。バインダー樹脂は、代表的には硬化性化合物を含む。硬化性化合物としては、例えば、多官能モノマー、当該多官能モノマー由来のオリゴマーまたはプレポリマーが挙げられる。ドライプロセスにより形成された層としては、例えば、低屈折率材料のWETコーティング層、スパッタリング層または蒸着処理層が挙げられる。
【0014】
アンチグレア層のアンチグレア部のヘイズは、5.0%以上であり、好ましくは15%~55%であり、より好ましくは25%~45%であり、さらに好ましくは30%~40%である。アンチグレア層のヘイズがこのような範囲であれば、光学積層体(フィルム片)が最終的に画像表示装置に適用される場合に、良好なアンチグレア機能(防眩機能)を付与することができる。非アンチグレア部のヘイズは、代表的には、反射防止層と同等であり得る。非アンチグレア部のヘイズは、例えば1.0%未満であり、好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下である。ヘイズは低いほど好ましく、ヘイズの下限は例えば0.1%であり得る。アンチグレア部21と非アンチグレア部22とのヘイズ差は、例えば4%より大きく50%以下であり、また例えば25%~45%であり得る。このように、本発明の実施形態に用いられ得る帯状フィルムは、被検出部(非アンチグレア部22)とそれ以外の部分(アンチグレア部21)とのヘイズ差が最小で4%程度である。したがって、従来の技術において非アンチグレア部を被検出部(アラインメントマーク)として利用しようとしても、被検出部とそれ以外の部分との明るさ(輝度)の差が不十分であり、被検出部とそれ以外の部分との境界を認識できない場合がある。本発明の実施形態によれば、このような帯状フィルムであっても、非アンチグレア部を被検出部(アラインメントマーク)として有効に利用することができる。
【0015】
アンチグレア層は、所望のアンチグレア機能(防眩機能)を有し、上記のようなヘイズを満足する限りにおいて、任意の適切な構成が採用され得る。具体的には、アンチグレア層は、バインダー樹脂と粒子とを含む硬化性樹脂組成物から形成され得る。硬化性樹脂組成物は、粒子を含むこと以外は反射防止層と同様である。アンチグレア層の詳細は、例えば特開2021-139981号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0016】
アンチグレア層は、1つの実施形態においては、反射防止層に直接形成されている。例えば、アンチグレア層は、所定のパターンを有するマスクを介して上記硬化性樹脂組成物を塗布し、塗布膜を硬化させることにより形成され得る。
【0017】
帯状フィルムは、代表的には上記のとおり、画像表示装置に取り付けるために光学フィルム(フィルム片)として切り抜かれて用いられる。その際、代表的には、アンチグレア層の外縁から所定距離内側の領域が切り抜かれ得る。このように切り抜けば、最終的に使用される光学フィルム(フィルム片)全体にわたってアンチグレア機能が付与される(ただし、非アンチグレア部を除く)。
【0018】
光学フィルムは、代表的には偏光板と貼り合わせられて、機能層付偏光板として用いられ得る。偏光板の偏光子は、代表的には非偏光部を有する。非偏光部は、代表的には、非アンチグレア部に対応する位置に形成されている。光学フィルムと偏光板とは、代表的には、それぞれがフィルム片に切り抜かれてから貼り合わせられる。機能層付偏光板において、非アンチグレア部および非偏光部は、画像表示装置のカメラ部に対応する位置に形成されている。このような構成であれば、画像表示装置に所望の特性を付与しつつ、カメラ性能に対する悪影響を抑制することができる。
【0019】
C.製造方法の詳細
図3(a)、(a’)および(b)~(d)は、本発明の1つの実施形態による光学フィルムの製造方法を示す概略図である。本発明の実施形態による製造方法においては、幅方向に2個以上および長さ方向に2個以上の被検出部(非アンチグレア部)22を有する帯状フィルム100を、所定の長さ方向送りピッチごとに、帯状フィルム100の幅方向の一方から他方へ向けて、順次切り抜くことを含み、帯状フィルム100を切り抜く際には、被検出部22の位置を検出し(
図3(a))、検出された被検出部22の位置を基準として切り抜き線の位置決めを行い(
図3(b))、検出された被検出部22を有するフィルム片60を1枚ずつ得ることを含む。なお、上記のとおり、フィルム片60は、アンチグレア層20(アンチグレア部21)の形状に対応した形状を有し得る。
【0020】
したがって、当該製造方法に用いられる製造装置は、帯状フィルムを所定の長さ方向送りピッチ(以下、単に送りピッチともいう)で搬送する搬送手段と、該帯状フィルムが有する被検出部を検出する検出手段と、切り抜き手段とを含む。好ましくは、上記切り抜き手段は、帯状フィルムの幅方向の一方から他方へ向けて移動し、かつ、検出された該被検出部の位置を基準として切り抜き線の位置決めを行う。
図3(a’)は、検出手段および切り抜き手段の一例を示す概略断面図である。この例においては、切り抜き手段50として矩形状の切り抜き刃(例えば、トムソン刃)が用いられている。本発明の実施形態においては、
図4に示すように、検出手段30として、撮像装置(カメラ)32と赤色光を照射する照明手段34とが組み合わされて用いられている。1つの実施形態においては、
図3に示すように、検出手段30と切り抜き手段50とは、一体に構成され、かつ、レール40に沿って移動可能なように設置される。別の実施形態においては、検出手段と切り抜き手段とは別個に配設され、検出手段は帯状フィルムの所定領域を照明および撮像して被検出部を検出し得るように固定され、切り抜き手段は移動可能なように設置される。また、
図4に示す形態では、撮像装置32と照明手段34とが一体に構成されているが、これらは別個に配設されてもよい。
【0021】
本発明の実施形態においては、上記のとおり、幅方向に2個以上および長さ方向に2個以上の被検出部22を有する帯状フィルム100を、送りピッチごとに、該帯状フィルム100の幅方向の一方から他方へ向けて(
図3に示す例においては、紙面左側から右側に向けて)、順次切り抜き、被検出部22を有するフィルム片60を1枚ずつ得る。なお、本明細書において、長さ方向とは、帯状フィルムの搬送方向Yに相当し得る方向であるが、搬送方向Yに平行である場合のみでなく、搬送方向Yを基準に-45°を超えて45°未満の方向を意味する。また、幅方向とは、搬送方向Yに直交する方向Xを基準に-45°~45°の方向を意味する。
【0022】
フィルム片60において、被検出部22は、上記のとおり非アンチグレア部である。言い換えれば、本発明の実施形態においては、非アンチグレア部を被検出部として、該非アンチグレア部を基準に切り抜き線を決める。本発明の実施形態によれば、被検出部の位置を検出した上で切り抜く位置を決めるので、被検出部(非アンチグレア部)が精度よく位置するフィルム片を得ることができる。また、帯状フィルム上の被検出部の間隔にばらつきがある場合、あるいは、帯状フィルムが蛇行している場合においても、被検出部が精度よく位置するフィルム片を得ることができる。さらに、詳細は後述するように、撮像装置32と特定の赤色照明手段34とを組み合わせて被検出部(非アンチグレア部)22を検出することにより(
図4)、被検出部(非アンチグレア部)とそれ以外の部分(アンチグレア部)との明るさ(輝度)等の差が小さい場合であっても、境界を良好に認識し、被検出部(非アンチグレア部)を良好に検出することができる。
【0023】
図5(a)は、帯状フィルム100における被検出部22の配置パターンの一例を説明する概略平面図であり、
図5(b)は、被検出部22の配置パターンの別の例を説明する概略平面図であり、
図5(c)は、被検出部22の配置パターンのさらに別の例を説明する概略平面図である。被検出部22は、光学フィルム(フィルム片)の用途等に応じて、任意の適切な配置とされ得る。被検出部22は、幅方向において、略一直線上に配置されていることが好ましい(
図5(a))。また、帯状フィルム100の幅方向端辺に対する被検出部22の配列方向は、任意の適切な角度であり得る。すなわち、被検出部の配列方向は、帯状フィルム100の幅方向端辺の方向に直交していてもよく(
図5(a))、直交していなくてもよい(
図5(b))。また、幅方向および長さ方向それぞれにおいて、被検出部22同士の間隔は、同じであってもよく(
図5(a))、異なっていてもよい(
図5(c))。本発明の実施形態によれば、様々な被検出部の配置パターンに対応して、被検出部が精度よく位置する光学フィルム(フィルム片)を得ることができる。また、例えば
図5(c)に示すように規則性のない配列パターンであっても、被検出部が精度よく位置する光学フィルム(フィルム片)を得ることができる。
【0024】
帯状フィルム100を切り抜く際には、
図3(a)に示すように被検出部22の位置を検出し、その後、
図3(b)に示すように、検出された被検出部22の位置を基準として切り抜き線25の位置決めが行われる。1つの実施形態においては、切り抜き線25の位置決めは、検出された被検出部22の位置を基準として、切り抜き線25が規定する形状における特定箇所の位置、ならびに、切り抜き線25が規定する平面形状の向きを制御するようにして行われ得る。切り抜き線25が規定する形状における特定箇所は、該形状のどの箇所であってもよく、例えば、該形状の重心、頂点、辺上の一点等が挙げられる。別の実施形態においては、被検出部(非アンチグレア部)22を検出する場合(後述)と同様に、検出手段30を用いてアンチグレア層20(アンチグレア部21)の端部を検出することにより、切り抜き線25の位置決めを行ってもよい。切り抜き線25の位置決めを行った後、帯状フィルム100を切り抜き、検出された被検出部22を有する光学フィルム(フィルム片)60を1枚ずつ得る。光学フィルム(フィルム片)60の形状は、任意の適切な形状であり得る。例えば、矩形、正方形、多角形、円形、楕円形等が挙げられる。光学フィルム(フィルム片)60の形状は、代表的には上記のとおり、光学フィルム(フィルム片)が適用される画像表示装置の形状に対応した形状である。1つの実施形態においては、光学フィルム(フィルム片)60として、アンチグレア層20の外縁から所定距離内側の領域が切り抜かれ得る。したがって、光学フィルム(フィルム片)60の形状は、帯状フィルムにおけるアンチグレア層の形状の相似形であり得る。なお、見やすくするために、
図3(a)、(b)、(c)および(d)においては、アンチグレア層20の記載は一部を除いて省略されている。
【0025】
本発明の実施形態においては、
図4に示すように、撮像装置32と特定の赤色照明手段34とを有する検出手段30により被検出部(非アンチグレア部)22を検出する。具体的には、非アンチグレア部22が、照明手段34を用いて照射され、その反射光が撮像装置32により検出される。検出の詳細な手順は以下のとおりである:(i)撮像装置の視野内で照明手段による明暗(コントラスト)の境界を検出する領域を設定し;(ii)検出点の数を設定し、検出した多数の点のエッジ情報から円の輪郭形状を最小二乗法によって求め;(iii)当該円の輪郭に対する近似円を形成し、円の中心位置と直径(または半径)とを求める。照明手段34は、好ましくは、図示例のようにリング状である。リング状の照明手段を用いることにより、直線状(棒状)の照明手段に比べて非アンチグレア部の輪郭をより良好に検出することができる。リング状の照明手段34は、代表的には、所定幅のリング状の(平面視ドーナツ状の)フレームにLEDが配列されている。LEDの種類に応じて、照射される赤色光の波長を変更することができる。リング状の照明手段60は、好ましくは
図4に示すように、フレームが径方向外側に向かってて傾斜(図示例では下方に傾斜)するよう構成されている。その結果、個々のLEDは、径方向内側に向かって傾斜(図示例では下方に傾斜)するよう配置される。このような構成であれば、照射光を非アンチグレア部により集中させることができ、その結果、測定ばらつきを小さくすることができる。照射角は、照射面(アンチグレア層表面、水平面)を基準にして、好ましくは85°~95°であり、より好ましくは約90°である。照明手段34から照射される光の色は、上記のとおり赤色である。理論的には明らかではないが、赤色光を照射することにより、非アンチグレア部とアンチグレア部のようにヘイズ(結果として、明るさ、輝度)の差が小さい場合であっても、境界を良好に認識し、被検出部(非アンチグレア部)を良好に検出することができる。さらに、検出精度のばらつきを小さくすることができる。赤色光の波長は、好ましくは620nm~750nmであり、より好ましくは630nm~640nmである。赤色光の波長がこのような範囲であれば、赤色光による上記の効果をより顕著なものとすることができる。赤色光は、波長分布がシャープなものが好ましい。例えば、赤色光の半値幅は、好ましくは15nm~30nmであり、より好ましくは15nm~20nmである。半値幅がこのような範囲であれば、波長を制御する場合と同様に、赤色光による上記の効果をより顕著なものとすることができる。なお、検出手段30は、図示例では帯状フィルムの上方に配置されているが、下方に配置されてもよい。また、撮像装置32および照明手段34の一方が上方に配置され、他方が下方に配置されてもよい。
【0026】
検出手段30による被検出部(非アンチグレア部)22の検出は、代表的には、明るさ(輝度)、光透過率、色調、またはこれらの組み合わせに基づいて行われ得る。本発明の実施形態によれば、被検出部(非アンチグレア部)とそれ以外の部分(アンチグレア部)との間で明るさ(輝度)のみならず、これらの光学特性の差が小さい場合であっても、境界を良好に認識し、被検出部(非アンチグレア部)を良好に検出することができる。
【0027】
帯状フィルム100を切り抜く際の切り抜き手段としては、任意の適切な手段が採用され得る。1つの実施形態においては、
図3に示すように、光学フィルム(フィルム片)60の形状に応じた打ち抜き刃50を用いて、帯状フィルム100を切り抜く。例えば、切り抜き手段としてトムソン刃のような打ち抜き刃50を用いる場合、切り抜き線25の位置決めは、被検出部22の位置を検出し、検出された被検出部22の位置を基準として、打ち抜き刃50が規定する平面形状における特定箇所の位置(例えば、該形状の重心、頂点、辺上の一点等)、ならびに、打ち抜き刃50が規定する平面形状の向き(すなわち、搬送方向Yおよび搬送方向と直交する方向Xに対する角度)を制御して、行われる。切り抜き線25の位置決めを行った後、打ち抜き刃50を帯状フィルム100に向けて、上方向または下方向に移動させて、帯状フィルム100を打抜くようにして、光学フィルム(フィルム片)60を得る。
【0028】
上記切り抜き手段の別の例としては、レーザー光照射による切り抜き、ドリルによる切削加工、ルータ加工、ウォータージェット加工等が挙げられる。
【0029】
1つの実施形態においては、幅方向において帯状フィルム100を切り抜く際、切り抜き手段50を、帯状フィルム100の幅方向の一方から他方へ向けて、移動させる。上記操作により、1枚のフィルム片を切り抜いた後、切り抜き手段を幅方向に移動させ、上記操作と同様の操作により、次のフィルム片を切り抜く(
図3(b)~(d))。好ましくは、切り抜き手段50の移動は、直線移動である。切り抜き手段50の移動方向は、被検出部22の配置に応じて、任意の適切な方向に設定され得る。切り抜き手段50の移動方向は、帯状フィルム100の幅方向の片側端辺の方向に対して、好ましくは90°±45°であり、より好ましくは90°±30°であり、さらに好ましくは90°±15°である。
【0030】
1つの実施形態においては、幅方向において帯状フィルム100を切り抜く前に、帯状フィルム100の幅方向の片側端辺を検出し、検出された該片側端辺(より具体的には該片側端辺の方向)を基準に上記切り抜き手段50の移動方向を決定する。帯状フィルムの幅方向端辺を基準に切り抜き手段の移動方向を決めることにより、帯状フィルムが蛇行している場合においても、被検出部(すなわち、機能部)が精度よく位置する光学フィルム(フィルム片)を得ることができる。
【0031】
帯状フィルム100の幅方向の片側端辺の検出には、被検出部22を検出する検出手段を用いてもよく、被検出部22を検出する検出手段とは別の検出手段を用いてもよい。すなわち、本発明の実施形態による製造装置は、1以上の検出手段を備え得る。
【0032】
幅方向の一列において、帯状フィルム100の切り抜きが完了した後は、帯状フィルム100を所定の送りピッチ分、搬送し、次の一列について、幅方向の一列における切り抜き操作を行う。幅方向の一列における切り抜き操作、および該操作後の帯状フィルム100の1ピッチ分の搬送を1サイクルとして、所定回数これを繰り返すことにより、長尺状の帯状フィルム(原反フィルム)100から複数枚の光学フィルム(フィルム片)60を得ることができる。送りピッチは、被検出部22の長さ方向間隔に応じて設定され得る。例えば、長さ方向における被検出部の配列が、搬送方向Yと平行である場合、送りピッチは、被検出部22の長さ方向間隔と同じ長さであることが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0034】
<実施例1>
アンチグレア部と非アンチグレア部を有する長尺状の帯状フィルムを準備した。アンチグレア層(アンチグレア部)のヘイズは25%であり、反射防止層および非アンチグレア部のヘイズはそれぞれ0.1%であった。帯状フィルムの非アンチグレア部を、リング状の照明手段を用いて波長635nmの赤色光を照射角90°で照射し、その反射光をカメラで撮影した。その結果、撮影画像のコントラストは高く、非アンチグレア部とアンチグレア部との境界を明確に認識することができた。
【0035】
<比較例1>
照明手段が照射する光を波長470nmの青色光としたこと以外は実施例1と同様にして、帯状フィルムの非アンチグレア部を照射し、その反射光をカメラで撮影した。その結果、撮影画像のコントラストは低く、非アンチグレア部とアンチグレア部との境界を明確に認識することができなかった。
【0036】
<比較例2>
照明手段が照射する光を白色光としたこと以外は実施例1と同様にして、帯状フィルムの非アンチグレア部を照射し、その反射光をカメラで撮影した。その結果、撮影画像のコントラストは低く、非アンチグレア部とアンチグレア部との境界を明確に認識することができなかった。
【0037】
<参考例1>
定法により、偏光子(厚み5μm)とその一方に保護層とを有する偏光板を作製した。この偏光板の偏光子表面を、マスクを介して水酸化ナトリウムで処理することにより、偏光子に非偏光部を形成した。偏光子の単体透過率は43%であり、非偏光部の透過率は95%であった。この偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして、非偏光部を照射し、その反射光をカメラで撮影した。その結果、撮影画像のコントラストは高く、非偏光部とそれ以外の部分との境界を明確に認識することができた。
【0038】
<参考例2>
照明手段が照射する光を波長470nmの青色光としたこと以外は参考例1と同様にして、非偏光部を照射し、その反射光をカメラで撮影した。その結果、撮影画像のコントラストは高く、非偏光部とそれ以外の部分との境界を明確に認識することができた。
【0039】
<参考例3>
照明手段が照射する光を白色光としたこと以外は参考例1と同様にして、非偏光部を照射し、その反射光をカメラで撮影した。その結果、撮影画像のコントラストは高く、非偏光部とそれ以外の部分との境界を明確に認識することができた。
【0040】
実施例1と比較例1および2との比較から明らかなように、非アンチグレア部に赤色光を照射することにより、非アンチグレア部とアンチグレア部との境界を良好に認識し、非アンチグレア部を良好に検出することができる。さらに、参考例1~3から明らかなように、上記のような効果は、反射防止層と一部に非アンチグレア部が形成されたアンチグレア層とを含む帯状フィルムに特有のものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の実施形態による製造方法は、例えば、スマートフォン等の携帯電話、ノート型PC、タブレットPC等のカメラ付き画像表示装置(液晶表示装置、有機ELデバイス)に備えられる光学積層体(例えば、機能層付偏光板)を製造する際に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0042】
10 反射防止層
20 アンチグレア層
21 アンチグレア部
22 被検出部(非アンチグレア部)
25 切り抜き線
30 検出手段
32 撮像装置
34 赤色照明手段
50 切り抜き手段
60 光学フィルム(フィルム片)
100 帯状フィルム
【要約】
【課題】一部に非光学機能部を有する光学フィルムを長尺状の原反フィルムから切り抜く光学フィルムの製造方法において、非光学機能部と光学機能部との明るさの差が小さい場合であっても、非光学機能部が精度よく配置された光学フィルムを製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光学フィルムの製造方法は、被検出部を有する長尺状の帯状フィルムを切り抜くことを含み;帯状フィルムを切り抜く際、被検出部の位置を検出し、検出された被検出部の位置を基準として切り抜き線の位置決めを行い、検出された被検出部を有するフィルム片としての光学フィルムを1枚ずつ得ることを含む。帯状フィルムは、ヘイズが5.0%以上のアンチグレア層を含み;被検出部は、アンチグレア層の一部に形成されたヘイズが1.0%未満の非アンチグレア部であり;上記製造方法は、赤色光を照射する照明手段とカメラを用いて、被検出部の位置を検出する。
【選択図】
図3