(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】採血装置用の5斜角のカニューレ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/153 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
A61B5/153 300
(21)【出願番号】P 2023062236
(22)【出願日】2023-04-06
(62)【分割の表示】P 2021151328の分割
【原出願日】2016-09-20
【審査請求日】2023-04-20
(32)【優先日】2015-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マシュー シアン シー ウー
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィ アトリ
(72)【発明者】
【氏名】アルン ユー.ナイア
(72)【発明者】
【氏名】ボー ヨン リリアン ユー
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-262615(JP,A)
【文献】特開平10-057490(JP,A)
【文献】国際公開第2014/172239(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/033901(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61M 3/00 - 9/00
A61M 31/00
A61M 39/00 -39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多斜角付先端部を有するニードルであって、
内腔を有し、貫通する中心軸線を画定するカニューレであって、近位端と遠位端とを有し、前記多斜角付先端部が前記カニューレの前記遠位端に設けられる、カニューレ、を備え、
前記多斜角付先端部は、
主斜角と、
2つの中間斜角と、
隣接する中間斜角と先端斜角がそれぞれ交差部で交わり、尖った先端を形成する2つの先端斜角と、を備え、
前記中間斜角の各々は、前記主斜角と前記先端斜角の1つとの間に延在し、
前記主斜角は、前記中心軸線に対して第1の傾斜角度と前記中心軸線に対して第1の回転角度とで前記カニューレに設けられ、前記2つの中間斜角は、前記中心軸線に対して第2の傾斜角度と前記中心軸線に対して第2の回転角度とで前記カニューレに設けられ、且つ、前記2つの先端斜角は、前記中心軸線に対して第3の傾斜角度と前記中心軸線に対して第3の回転角度とで設けられており、
前記第3の傾斜角度は、前記第2の傾斜角度より大きく、前記第2の傾斜角度は、前記第1の傾斜角度より大きく、
前記第2の回転角度は、前記第3の回転角度と等しく、
前記尖った先端から前記主斜角の最も近位部分までの長さは、0.08乃至0.13インチであり、前記尖った先端から隣接する中間斜角と先端斜角との前記交差部までの先端部の長さは、0.02乃至0.04インチであ
り、前記2つの先端斜角の長さは、前記多斜角付先端部の全長の25%と31%との間であることを特徴とするニードル。
【請求項2】
前記第1の傾斜角度は、8°と12°との間であることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項3】
前記第1の傾斜角度は、10°であることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項4】
前記第2の傾斜角度は、10°と20°との間であることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項5】
前記第2の傾斜角度は、15°と20°との間であることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項6】
前記第2の傾斜角度は、15°であることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項7】
前記第3の傾斜角度は、18°と28°との間であることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項8】
前記第3の傾斜角度は、21°と28°との間であることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項9】
前記第3の傾斜角度は、23°であることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項10】
前記第1の回転角度は、前記第2の回転角度と前記第3の回転角度とは異なることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項11】
前記第1の回転角度は、0°であることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項12】
前記第2の回転角度と前記第3の回転角度とは、30°と50°との間であることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項13】
前記第2の回転角度と前記第3の回転角度とは、36°と50°との間であることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項14】
前記第2の回転角度と前記第3の回転角度とは、40°と50°との間であることを特徴とする請求項1に記載のニードル。
【請求項15】
注射器アセンブリであって、
注射器バレルと、
当該注射器バレルに取付けられるニードルであって、内腔を有し、貫通する中心軸線を画定するカニューレを有し、前記カニューレが近位端と遠位端とを有し、多斜角付先端部が前記カニューレの前記遠位端に設けられる、ニードルと、を備え、
前記多斜角付先端部は、
主斜角と、
2つの中間斜角と、
隣接する中間斜角と先端斜角がそれぞれ交差部で交わり、尖った先端を形成する2つの先端斜角と、を備え、
前記中間斜角の各々は、前記主斜角と前記先端斜角の1つとの間に延在し、
前記主斜角は、前記中心軸線に対して第1の傾斜角度と前記中心軸線に対して第1の回転角度とで前記カニューレに設けられ、前記2つの中間斜角は、前記中心軸線に対して第2の傾斜角度と前記中心軸線に対して第2の回転角度とで前記カニューレに設けられ、且つ、前記2つの先端斜角は、前記中心軸線に対して第3の傾斜角度と前記中心軸線に対して第3の回転角度とで設けられており、
前記第3の傾斜角度は、前記第2の傾斜角度よりも大きく、前記第2の傾斜角度は、前記第1の傾斜角度よりも大きく、
前記第2の回転角度は、前記第3の回転角度と等しく、
前記尖った先端から前記主斜角の最も近位部分までの長さは、0.08乃至0.13インチであり、前記尖った先端から隣接する中間斜角と先端斜角との前記交差部までの先端部の長さは、0.02乃至0.04インチであ
り、前記2つの先端斜角の長さは、前記多斜角付先端部の全長の25%と31%との間であることを特徴とする注射器アセンブリ。
【請求項16】
前記第1の傾斜角度は、8°と12°との間であることを特徴とする請求項15に記載の注射器アセンブリ。
【請求項17】
前記第2の傾斜角度は、10°と20°との間であることを特徴とする請求項15に記載の注射器アセンブリ。
【請求項18】
前記第3の傾斜角度は、18°と28°との間であることを特徴とする請求項15に記載の注射器アセンブリ。
【請求項19】
前記第1の回転角度は、前記第2の回転角度と前記第3の回転角度とは異なることを特徴とする請求項15に記載の注射器アセンブリ。
【請求項20】
前記第1の回転角度は、0°であることを特徴とする請求項15に記載の注射器アセンブリ。
【請求項21】
前記第2の回転角度及び前記第3の回転角度は、30°と50°との間であることを特徴とする請求項15に記載の注射器アセンブリ。
【請求項22】
採血装置であって、
ハブと、
当該ハブから延在するニードルであって、内腔を有し、貫通する中心軸線を画定するカニューレであって、前記カニューレが近位端と遠位端とを有し、多斜角付先端部が前記カニューレの前記遠位端に設けられる、ニードルと、を備え、
前記多斜角付先端部は、
主斜角と、
2つの中間斜角と、
隣接する中間斜角と先端斜角がそれぞれ交差部で交わり、尖った先端を形成する2つの先端斜角と、を備え、
前記中間斜角の各々は、前記主斜角と前記先端斜角の1つとの間に延在し、
前記主斜角は、前記中心軸線に対して第1の傾斜角度と前記中心軸線に対して第1の回転角度とで前記カニューレに設けられ、前記2つの中間斜角は、前記中心軸線に対して第2の傾斜角度と前記中心軸線に対して第2の回転角度とで前記カニューレに設けられ、且つ、前記2つの先端斜角は、前記中心軸線に対して第3の傾斜角度と前記中心軸線に対して第3の回転角度とで前記カニューレに設けられており、
前記第3の傾斜角度は、前記第2の傾斜角度より大きく、前記第2の傾斜角度は、前記第1の傾斜角度より大きく、
前記第2の回転角度は、前記第3の回転角度と等しく、
前記尖った先端から前記主斜角の最も近位部分までの長さは、0.08乃至0.13インチであり、前記尖った先端から隣接する中間斜角と先端斜角との前記交差部までの先端部の長さは、0.02乃至0.04インチであ
り、前記2つの先端斜角の長さは、前記多斜角付先端部の全長の25%と31%との間であることを特徴とする採血装置。
【請求項23】
前記ハブから横方向に延在する一対のウィングを、さらに備えることを特徴とする請求項22に記載の採血装置。
【請求項24】
前記一対のウィングは、前記ハブに対して回転可能であることを特徴とする請求項23に記載の採血装置。
【請求項25】
内部に採取容器を収容するための前記ハブに接続されるホルダを、さらに備えることを特徴とする請求項22に記載の採血装置。
【請求項26】
前記第1の傾斜角度は、8°と12°との間であることを特徴とする請求項22に記載の採血装置。
【請求項27】
前記第2の傾斜角度は、10°と20°との間であることを特徴とする請求項22に記載の採血装置。
【請求項28】
前記第3の傾斜角度は、18°と28°との間であることを特徴とする請求項22に記載の採血装置。
【請求項29】
前記第1の回転角度は、前記第2の回転角度及び前記第3の回転角度とは異なることを特徴とする請求項22に記載の採血装置。
【請求項30】
前記第1の回転角度は、0°であることを特徴とする請求項22に記載の採血装置。
【請求項31】
前記第2の回転角度及び前記第3の回転角度は、30°と50°との間であることを特徴とする請求項22に記載の採血装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、「採血装置用の5斜角のカニューレ」と題され、2015年9月24日に出願された米国仮出願第62/222,807号の優先権を主張し、その全体の開示が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、ニードルのための先端部幾何学形状に関し、より詳細には、ニードルの刺入力を低減するニードルのための5つの斜角付先端部幾何学形状に関する。
【背景技術】
【0003】
ニードルは、血液などのサンプルを患者から得るために、医療分野で使用されている。このようなニードルは、流体導通の内腔及び中心軸線を有する細長いチュ-ブすなわちカニューレから形成されている。ニードルの近位端は、典型的には、注射器アセンブリ又は採血アセンブリのような流体採取装置に嵌合するように構成されているか、又はそうでなければ取り付けられている。ニードルの遠位端には、患者からのサンプルを得るために、患者の皮膚又は組織を穿刺する尖った先端形状が設けられている。患者の不快感を最小にし、適切なサンプルアクセスを達成する、改良されたニードルの必要性が存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニードルの尖った先端部を設計する際には、多くの考慮点が考慮されなければならない。例えば、患者の皮膚及び肉体構造を通してのニードルの尖った先端部を付勢するのに必要なニードルの刺入力を、最小にすることが望ましい。この力は、皮膚及びその下の組織を通って移動する際の、カニューレの先端部の抵抗に直接に関係する。ニードルの刺入力を減少させることによって、患者は、より少ない痛みを経験し、サンプル採取がより快適になることが一般に認識されている。さらに、ニードルの挿入中に患者が経験する痛みは、カニューレ先端部における斜角付縁部による組織への切込みと、その後のカニューレ本体部による組織の引き伸ばしとによって引き起こされると考えられる。先端部の異なる斜角の間での移行がより緩やかになればなるほど、カニューレの切込み及び伸長作用はより滑らかになる。
【0005】
先端部の形状を設計する際のもう1つの考慮点は、組織のコアリング(芯を取除くこと)を防止するか、さもなければ最小化することである。コアリングは、ニードルが突き通っている材料の一部分が、尖った先端に隣接する内腔内に留められるときに生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、多斜角付先端部を有するニードルは、内腔とそれを貫通して画定された中心軸線とを有するカニューレを含み、多斜角付先端部は、カニューレの一端部に設けられている。多斜角付先端部は、主斜角と2つの中間斜角と2つの先端斜角とを含み、中間斜角の各々は、主斜角と先端斜角の1つとの間に延在している。主斜角は、中心軸線に対して第1の傾斜角度で、及び中心軸線に対して第1の回転角度でカニューレに設けられ、2つの中間斜角は、中心軸線に対して第2の傾斜角度で、及び中心軸線に対して第2の回転角度でカニューレに設けられ、そして2つの先端斜角は、中心軸線に対して第3の傾斜角度で、及び中心軸線に対して第3の回転角度でカニューレに設けられている。第3の傾斜角度は第2の傾斜角度より大きく、且つ第2の傾斜角度は第1の傾斜角度より大きく、そして第2の回転角度は第3の回転角度に等しい。
【0007】
ある特定の実施形態において、第1の傾斜角度は8°乃至12°である。第1の傾斜角度は10°であってもよい。他の実施形態において、第2の傾斜角度は10°乃至20°、例えば15°乃至20°である。第2の傾斜角度は15°であってもよい。他の実施形態において、第3の傾斜角度は18°乃至28°、例えば21°乃至28°である。第3の傾斜角度は23°であってもよい。
【0008】
第1の回転角度は、第2の回転角度及び第3の回転角度とは異なってもよい。第1の回転角度は0°であってもよい。第2の回転角度及び第3の回転角度は、30°乃至50°の間であってもよい。任意選択的に、第2の回転角度及び第3の回転角度は、36°乃至50°、例えば40°乃至50°であってもよい。
【0009】
本発明の別の実施形態によれば、注射器アセンブリは、注射器バレルと、注射器バレルに取り付けられたニードルとを含み、ニードルは、内腔及びそれを通って画定される中心軸線を有するカニューレを有している。ニードルは、カニューレの一端部に設けられた多斜角付先端部を含んでいる。多斜角付先端部は、主斜角と2つの中間斜角と2つの先端斜角とを含み、中間斜角の各々は、主斜角と先端斜角の1つとの間に延在している。主斜角は、中心軸線に対して第1の傾斜角度で、及び中心軸線に対して第1の回転角度でカニューレに設けられ、2つの中間斜角は、中心軸線に対して第2の傾斜角度で、及び中心軸線に対して第2の回転角度でカニューレに設けられ、そして2つの先端斜角は、中心軸線に対して第3の傾斜角度で、及び中心軸線に対して第3の回転角度でカニューレに設けられている。第3の傾斜角度は第2の傾斜角度より大きく、且つ第2の傾斜角度は第1の傾斜角度より大きい。第2の回転角度は第3の回転角度に等しい。
【0010】
ある特定の実施形態において、第1の傾斜角度は8°乃至12°である。第2の傾斜角度は10°乃至20°である。第3の傾斜角度は18°乃至28°である。ある特定の実施形態において、第1の回転角度は、第2の回転角度及び第3の回転角度とは異なってもよい。第1の回転角度は0°、そして第2の回転角度及び第3の回転角度は、30°乃至50°の間であってもよい。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、採血装置は、ハブと、ハブから延在するニードルとを備え、ニードルは、内腔を有してそれを貫通する中心軸線を画定するカニューレを有している。ニードルは、カニューレの一端部に設けられた多斜角付先端部を含んでいる。多斜角付先端部は、主斜角と2つの中間斜角と2つの先端斜角とを含む。中間斜角の各々は、主斜角と先端斜角の1つとの間に延在している。主斜角は、中心軸線に対して第1の傾斜角度で、及び中心軸線に対して第1の回転角度でカニューレに設けられ、2つの中間斜角は、中心軸線に対して第2の傾斜角度で、及び中心軸線に対して第2の回転角度でカニューレに設けられ、そして2つの先端斜角は、中心軸線に対して第3の傾斜角度で、及び中心軸線に対して第3の回転角度でカニューレに設けられている。第3の傾斜角度は第2の傾斜角度より大きく、且つ第2の傾斜角度は第1の傾斜角度より大きい。第2の回転角度は第3の回転角度に等しい。
【0012】
特定の構成では、採血装置は、ハブから横方向に延在する一対のウィングをさらに含んでいる。選択肢として、一対のウィングは、ハブに対して回転可能である。特定の構成では、採血装置は、その中に採集容器を受入れるための、ハブに接続された管ホルダを、さらに含んでいる。
【0013】
特定の構成では、第1の傾斜角度は8°乃至12°の間であってもよい。第2の傾斜角度は、10°乃至20°の間であってもよい。第3の傾斜角度は、18°乃至28°の間であってもよい。特定の構成では、第1の回転角度は、第2の回転角度及び第3の回転角度とは異なる。選択肢として、第1の回転角度は0°であり、第2の回転角度及び第3の回転角度は、30°と50°との間である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明による多斜角付ニードルの正面斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の多斜角付ニードルの先端部の上面図である。
【
図3a】
図3aは、
図1の多斜角付ニードルの側面図であり、主斜角の傾斜角度を示している。
【
図3b】
図3bは、中間斜角の傾斜角度を示すべく、中心軸線の回りに回転された
図1の多斜角付ニードルの側面図である。
【
図3c】
図3cは、先端斜角の傾斜角度を示すべく、中心軸線の回りに回転された
図1の多斜角付ニードルの側面図である。
【
図5】
図5は、
図2の多斜角付ニードルの先端部の線5‐5に沿った断面図である。
【
図6】
図6は、
図2の多斜角付ニードルの先端部の線6‐6に沿った断面図である。
【
図7】
図7は、
図2の多斜角付ニードルの先端部の線7‐7に沿った断面図である。
【
図8】
図8は、本発明による多斜角付ニードルを含む注射器アセンブリの斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明による多斜角付ニードルを含む採血アセンブリの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明の目的のために、空間方向の用語は、使用される場合、参照された実施形態が添付の図面又は他の方法で以下の詳細な説明に記載されている通りに関連するものとする。しかしながら、以下に説明する実施形態は、多くの代替的な変形形態及び実施形態を想定することができることを理解されたい。添付の図面に示され、本明細書に記載された特定の装置は単なる例示であり、限定的なものとみなされるべきではないことも理解されたい。本明細書では、特定された範囲には、列挙された範囲の最も外側の範囲及びそれらの間のすべての数値評価が含まれることが理解されよう。
【0016】
図1乃至
図3cに示すように、本発明は、多斜角付先端部12を有するニードル10を対象としている。ニードル10は、流体運搬導管すなわち内腔16を内部に画定する管すなわちカニューレ14から形成されている。ニードル10は、医療グレードのステンレス鋼のような金属及び/又は医療グレードのポリマー材料で形成することができる。ニードル10は、注射器アセンブリ44(
図8)又はBecton、Dickinson and Companyから市販されているプッシュボタン式の採血セット「Vacutainer(登録商標)」のような採血アセンブリ46(
図9)などの医療用送達器具5に固定され得る近位端部18を含んでいる。
【0017】
図8に関して、ニードル10は、接続されたストッパ64を有するプランジャーロッド62の注射器バレル60の内外への移行が、それぞれ、ニードル10を介しての流体の注射器バレル60への吸入又は注射器バレル60からの排出を行うように、注射器バレル60の内部と流体連通して設けられている。同様に、
図9に関して、ニードル10は、患者へのニードル10の挿入を補助するために、使用者による容易な把持及び操作のための、回転可能なウィング72を選択肢として有するハブ70によって支持されている。ハブ70は、ニードル10と、選択肢としての流体ライン76を介するような従来の管ホルダ74との間に、流体連通を提供することができる。管ホルダ74は、従来から知られているように、真空採集容器のようなサンプル採集容器を受入れるように構成されている。
【0018】
ニードル10の多斜角付先端部12は、流体運搬内腔16への及び流体運搬内腔16からの流体の通過のための流体開口20を画定している。ニードル10は、中心軸線22に沿って及び中心軸線22の周りに延在する内腔を画定している。
【0019】
カニューレ14は、21G(外径0.03225インチ(0.82mm)、内径0.02025インチ(0.51mm))、23G(外径0.02525インチ(0.64mm)、内径0.01325インチ(0.34mm))、及び25G(外径0.02025インチ(0.51mm)、内径0.01025インチ(0.26mm))を含むが、これらに限定されない直径、及び0.002乃至0.005インチ(0.051乃至0.127mm)の壁厚を有することができる。
【0020】
図1乃至
図4に示すように、多斜角付先端部12は長さ「L」を有し、且つ複数の個別の斜角を有しており、それらは一緒になって流体開口20の周囲に斜角付面24を画定している。多斜角付先端部12は、1つの主斜角26と、一対の中間斜角28a、28bと、一対の先端斜角30a、30bとを備えている。一対の中間斜角28a、28b及び一対の先端斜角30a、30bのそれぞれは、主斜角26の両側に略対称に形成されている。隣接する中間及び先端の斜角28a、30aは、中間及び先端の斜角28a、30aが形成されているそれぞれの平面を画定する交差32aで合流している。隣接する中間及び先端の斜角28b、30bも同様に、交差32bで合流している。先端斜角30a、30bは、患者の皮膚又は流体搬送容器に関連する封止材料に最初に入る尖った先端34で合流している。
【0021】
主斜角26、中間斜角28a、28b及び先端斜角30a、30bは、中心軸線22及び中心軸線22を通過する基準平面36に対して計測された一連の角度に、カニューレ14を傾斜させ及び/又は回転させることによって、カニューレ14上に形成されるか、又は他の方法で提供される。主斜角26は、ニードル10の中心軸線22を基準平面36に対して計測された角度26X(
図3a及び
図5参照)に傾けることによって、ニードル10上に形成されるか又は他の方法で設けられる。
図1に示されるように、基準平面36は、カニューレ14の一方の側において、主斜角26の中央点40と尖った先端34との間でカニューレ14の円周のまわりの中間の第1の点38、カニューレ14の反対側において、主斜角26の中央点40と尖った先端34との間でカニューレ14の円周のまわりの中間の第2の点42、及び中心軸線22を通り、カニューレ14の長手方向に延在する平面である。基準平面36は、カニューレ14を二等分している。
【0022】
中間斜角28a、28b及び先端斜角30a、30bは、同様に、ニードル10の中心軸線22を基準平面36に対してある角度に傾斜させることによって、また、ニードル10を、中心軸線22を中心にして基準平面36に対してある角度に回転させることによって、ニードル10上に形成されるか、又は他の方法で提供される。中間斜角28a、28bの各々は、ニードル10の中心軸線22を基準平面36に対して角度28Xで傾斜させ、そして、ニードル10を中心軸線22の回りに、それぞれ中間斜角28a、28bを形成するべく基準平面36に対して回転角度28Yで時計回り及び反時計回りの方向に回転させることによって、ニードル10上に形成されるか、又は他の方法で提供される(
図3b及び
図6参照)。これは、外側に向けられた表面を備える中間斜角28a、28bを提供する。同様に、先端斜角30a、30bは、ニードル10の中心軸線22を基準平面36に対して傾斜角度30Xで傾斜させ、そして、ニードル10を中心軸線22の回りにそれぞれ先端斜角30a、30bを形成するべく基準平面36に対して回転角度34Y(図示せず)で時計回り及び反時計回りに、回転させることによって、ニードル10上に形成されるか、又は他の方法で提供される(
図3c及び
図7参照)。これは、外向きの表面を有する先端斜角30a、30bを提供する。
【0023】
先端斜角30a、30bの傾斜角度30Xは、中間斜角28a、28bの傾斜角度28Xより大きくてもよく、中間斜角28a、28bの傾斜角度28Xは、主斜角26の傾斜角度26Xより大きくてもよい。中間斜角28a、28bの回転角度28Yは、先端斜角30a、30bの回転角度30Yに等しくてもよく、そして主斜角26の回転角度26Yは、中間斜角28a、28bの回転角度28Yと、先端斜角30a、30bの回転角度30Yと異なっていてもよい。
【0024】
主斜角26の傾斜角度26Xは、8°乃至12°、好ましくは、10°であり、主斜角26の回転角度26Yは0°であってもよい。
【0025】
中間斜角28a、28bの傾斜角度28Xは、10°乃至20°、15°乃至20°、好ましくは、15°であり、中間斜角28a、28bの回転角度28Yは、30°乃至50°、36°乃至50°、40°乃至50°、好ましくは、40°であってもよい。
【0026】
先端斜角30a、30bの傾斜角度30Xは、18°乃至28°、21°乃至28°、好ましくは、23°であり、先端斜角30a、30bの回転角度30Yは、30°乃至50°、36°乃至50°、40°乃至50°、好ましくは、40°であってもよい。
【0027】
主斜角26の回転角度26Xが、
図1乃至
図4及び
図6に示すように、0°のとき、中間斜角28a、28b及び先端斜角30a、30bの表面は、主斜角26の表面から外側に、
図3a乃至3cから分かるように、それらの回転角度28Y、30Yに従って回転されている。
【0028】
あるニードルのための傾斜角度及び回転角度は、注射のために使用される小径ニードル、例えば、31G及び32G(外径0.00925インチ(0.235mm)乃至0.01025インチ(0.26mm))用に選択されてもよく、一方、開示された傾斜角度及び回転角度は、血液採取のために使用される大径ニードル、例えば、21G、23G、及び25G(外径0.02025インチ(0.51mm)乃至0.03225インチ(0.82mm))と共に使用される。より大きい直径のニードルに対して開示された傾斜角度及び回転角度での斜角を提供することによって、累積効果が、組織/挿入媒体を貫通するのに必要とされる力を低減する。組織/挿入媒体を貫通するのに必要とされる力は、主斜角26の傾斜角度が中間斜角28a、28bの傾斜角度と等しい場合、ニードルに亘って、特に低減される。ニードル10は、先端斜角30a、30bによって形成される尖った先端34から主斜角26へのより緩やかな移行を有するので、ニードル10を患者の組織内に挿入するために要求される刺入力が少なくてすみ、患者にとって不快感が少ない。
【0029】
先端斜角30a、30bによって形成される尖った先端34から主斜角26の最も近位部分までの長さLは、0.08乃至0.13インチ(2.03乃至3.3mm)であり、そして先端斜角30a、30bによって形成される尖った先端34から中間斜角28a、28bと先端斜角30a、30bとの間の交差部32a、32bまでの先端部の長さ「l(エル)」は、0.02乃至0.04インチ(0.51乃至1.02mm)であってもよい。
【0030】
本発明によるニードル10は、鋼のような従来の材料から形成することができる。医療グレードのプラスチック、複合材、セラミックス、又は同様の材料が代用されてもよい。ニードルは、本発明の幾何学的形状によって得られる効果を高めるために、シリコーンオイルのような種々の従来の潤滑剤で潤滑されてもよい。斜角は、研削などによるような従来のプロセスによってニードル上に形成され得る。
【0031】
多斜角付先端部12の各斜角は、連続する斜角付面24に帰するのなら、いずれの順で形成されてもよい。1つの態様では、主斜角26及び中間斜角28a、28bが、先端斜角30a、30bより前に形成され得る。別の態様では、先端斜角30a、30bが、中間斜角28a、28b又は主斜角26のいずれかを製造する前に形成され得る。さらなる態様では、中間斜角28a、28bが、主斜角26及び先端斜角30a、30bを形成する前に形成され得る。例えば、主斜角26の形成のために、ニードル10の中心軸線22が傾斜角度26Xにまで傾斜されてもよい。次いで、先端斜角30a、30bを形成するために、ニードル10の中心軸線22が傾斜角度30Xまで傾斜され、そして中心軸線22を中心として時計回り及び反時計回りに回転角度30Yまで回転される。中間斜角28a、28bを形成するためには、ニードル10の中心軸線22が傾斜角度28Xに再傾斜され、そして中心軸線22を中心として時計回り及び反時計回りに回転角度28Yまで回転される。
【0032】
本発明のニードルは、血液又は他の流体を収集及び/又は移送するための任意の適切なアセンブリと共に使用することができる。そのようなアセンブリは、これらに限定されるわけではないが、注射器アセンブリ及び採血装置を含んでいる。注射器アセンブリは、注射器バレルを含むことができ、本発明のニードルは当該注射器バレルに取り付けられ得る。
【0033】
本発明が、現在において、最も実用的で好ましい実施形態であると考えられているものに基づいて、説明を目的として詳細に記載されたが、そのような詳細はその目的のためだけのものであり、本発明は、開示された実施形態に限定されず、それどころか、添付の請求項の精神及び範囲内にある修正及び均等な構成をカバーすることが意図されていることを理解されたい。例えば、本発明は、可能な限り、任意の実施形態の1つ又は複数の特徴を任意の他の実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせ得ることを企図していることを理解されたい。