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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】太陽発電設備
(51)【国際特許分類】
   H02S 10/40 20140101AFI20240913BHJP
【FI】
H02S10/40
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023072734
(22)【出願日】2023-04-26
(62)【分割の表示】P 2018558132の分割
【原出願日】2017-05-31
(65)【公開番号】P2023106409
(43)【公開日】2023-08-01
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】20160927
(32)【優先日】2016-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(31)【優先権主張番号】20170728
(32)【優先日】2017-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】518387066
【氏名又は名称】オーシャン サン エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョルンクレット,ボーエ
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-135502(JP,A)
【文献】特開2007-173710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0307566(US,A1)
【文献】特開2005-285969(JP,A)
【文献】特開2009-202697(JP,A)
【文献】実開昭63-080867(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第103944494(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性マット(2)を備える水上光起電発電設備であって、前記可撓性マット(2)は、孔を含まず、かつ前記可撓性マット(2)を取り囲む、環状の細長の浮遊要素(3’)に固定されており、前記可撓性マット(2)は、水域の表面(33)上に配置され、かつ該表面(33)に接触し、前記可撓性マット(2)は、前記可撓性マット(2)上に固定された複数の光起電モジュール(1)を有し、かつ前記可撓性マット(2)が前記浮遊要素(3’)の内側に位置するように前記浮遊要素(3’)によって取り囲まれており、
前記可撓性マット(2)は、溜まった水を排出するためのポンプを備え、
前記水上光起電発電設備は、沖合の場所に配置され、かつ陸上電力網に接続されている、
水上光起電発電設備。
【請求項2】
前記可撓性マット(2)は、少なくとも部分的に浮揚性材料で作製されている、請求項1に記載の水上光起電発電設備。
【請求項3】
前記浮遊要素(3’)は、円形である、請求項1及び2のいずれかに記載の水上光起電発電設備。
【請求項4】
前記可撓性マット(2)は、前記浮遊要素(3’)を介して海底(5)に固定される、請求項1から3のいずれかに記載の水上光起電発電設備。
【請求項5】
前記可撓性マット(2)は、前記光起電モジュール(1)を前記可撓性マット(2)に固定するコネクタ(9)を備える、請求項1から4のいずれかに記載の水上光起電発電設備。
【請求項6】
前記可撓性マット(2)は、少なくとも部分的にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、EVA、合成ゴム若しくは共重合体材料、又はこれらの材料のうち2つ以上の組み合わせで作製されている、請求項1から5のいずれかに記載の水上光起電発電設備。
【請求項7】
前記複数の光起電モジュール(1)のそれぞれは、枠(8)と、前記枠(8)内に配設されたシリコンベースの太陽電池セル(13)をカプセル封入する積層物(12)とを備える、請求項1から6のいずれかに記載の水上光起電発電設備。
【請求項8】
前記複数の光起電モジュール(1)のそれぞれは、前記積層物(12)を支持するように配置された補強要素(6,7,11)を有する、請求項7に記載の水上光起電発電設備。
【請求項9】
前記可撓性マット(2)は、積層された織布で作製されている、請求項1から8のいずれかに記載の水上光起電発電設備。
【請求項10】
前記可撓性マット(2)は、柔軟性を有し、流力弾性挙動を示す、請求項1から9のいずれかに記載の水上光起電発電設備。
【請求項11】
前記複数の光起電モジュール(1)のそれぞれは、後面を有し、前記複数の光起電モジュール(1)のそれぞれの前記後面は、前記可撓性マット(2)に直接接触し、それにより前記光起電モジュール(1)が前記可撓性マット(2)を介して海水と熱的に接続される、請求項1から10のいずれかに記載の水上光起電発電設備。
【請求項12】
前記複数の光起電モジュール(1)のそれぞれは、前記後面に後板(15)を有し、前記後板(15)は、前記可撓性マット(2)に接するように敷設される、請求項11に記載の水上光起電発電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生可能エネルギ生産に係り、より詳細には水上型太陽発電設備に関する装置及び方法に係る。
【背景技術】
【0002】
水上型光起電(PV)太陽発電システムは、現在のところ広く使われてはいないが、既知である。そのようなシステムは、典型的には穏やかな水面上、すなわち湖、水力発電ダム、貯水池、河川などに配備される。水上型太陽発電システムに関連する課題のいくつかは、波及び水流による負荷への曝露、設備(又はその構成要素)の挑戦的且つ労働集約的な配備、及びシステムの保守及び洗浄(例えば設備表面に堆積する塩又は固体粒子)のためのアクセスに関連する問題を含む。現在利用可能な水上型太陽発電システムは、その比較的高いコストによっても制限される。
【0003】
背景を理解するために有用であろう従来技術の例には、以下のものがある。大規模海洋移動型太陽発電システムを記載した米国特許出願公開第2012/0242275号明細書、太陽電池パネルの支持装置を記載した米国特許出願公開第2015/0162866号明細書、光起電力パネルを支持する装置を記載した米国特許出願公開第2014/0224165号明細書、ならびに水上型装置上に配置された太陽電池セルを記載した韓国特許第1011013316号公報及び韓国特許第101612832号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在のところ、水上型PV発電設備に関連しては、技術的課題及び経済的課題の両方が存在する。したがって、様々な用途及び目的でのそのような再生可能電力生産のために、改良されたシステム及び方法が必要とされている。本発明は、水上型太陽発電設備に関する改良された装置及び方法を提供して、利点をもたらし及び/又は既知のシステム及び技術に関連した現在の課題又は欠点を改善しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態においては、水域の表面に配置されるように構成された可撓性マットを備える沖合光起電発電設備が提供され、マットはこのマットに固定された複数の光起電モジュールを有する。さらなる代替的及び/又は特に有利な実施形態は添付の特許請求の範囲において概説される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
次に、例示的な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【0007】
図1】海に浮かんでいる光起電システムの概略図を示す。
図2】有孔浮遊マットに取り付けられたPVモジュールを示す。
図3】ヒートシンクを含む補強要素を有するPVモジュールの断面を示す。
図4】波形のプロファイルからなる補強冷却要素を有するPVモジュールの断面を示す。
図5】一実施形態によるマットの断面を示す。
図6】一実施形態による光起電システムを示す。
図7a】一実施形態による光起電システムを示す。
図7b】一実施形態による光起電システムを示す。
図7c】一実施形態による光起電システムを示す。
図8a】一実施形態による光起電システムを示す。
図8b】一実施形態による光起電システムを示す。
図9】一実施形態による光起電システムを示す。
図10】PVモジュールの態様を示す。
図11】波形のプロファイルからなる補強冷却要素を有するPVモジュールの断面を示す。
図12a】一実施形態による光起電システムを示す。
図12b】一実施形態による光起電システムを示す。
図13】一実施形態による太陽発電設備を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
石油及びガス生産プラットフォーム、掘削又は加工施設のような多くの固定又は浮遊型沖合ユニットは、運転のためにかなりの量のエネルギを必要とする。他の電力需要施設には、大きな養魚場、又は送電網から離れた場所にある有人島がある。こうした場所のエネルギ需要は、一般的にディーゼル又はガスタービン発電機を介して供給される。化石燃料源に由来する高いエネルギ消費及びそれに続く二酸化炭素の放出に起因して、この行為は、環境保護主義者及び政治家の間でかなりの論争を引き起こしてきた。また、エネルギのコストも、そのような施設の運営者及び所有者の重要な検討事項である。
【0009】
本明細書に記載された実施形態によれば、通常の陸上電力網へのケーブルを通じた接続に適した、又は独立式で送電網に繋がっていない発電に適した、水上型再生可能発電施設が提供される。実施形態は、遠隔地又は海岸近く/沖合の場所又は内陸水域において用いられてもよく、例えば化石燃料ベースの発電機又は発電設備に取って代わり、それによって発電のCOフットプリントを削減するように設計されることが可能である。例えば、多くのメガシティを含む多くの人口密集エリアは、海岸近くに位置している。そのようなエリアでは、風力や太陽など、従来の再生可能エネルギのために利用可能なエリア又は使用可能な屋上が非常に限られている。本明細書に記載された実施形態によれば、そのようなエリアにおいて、手頃なコストで、且つ高い動作信頼性をもって、再生可能発電に有意な貢献がなされることが可能である。
【0010】
システムの実施形態は様々な用途に適しており、例えば春、夏及び秋の日中のエネルギ需要の主要部に取って代わるか又はこれを提供するように設計されることが可能である。例えば、PVは、雲と太陽の位置とに起因する太陽エネルギシステムからの出力の変動によって発生する典型的な不規則性をフレキシブル燃料ベースの発電機が容易に平準化することのできるハイブリッド電力システムにおいて、良好に動作するであろう。代替的には、エネルギ貯蔵のためにバッテリも用いられ得る。
【0011】
大きな発電設備で使用される標準的な60又は72セルの光起電モジュールは、海での波スラミング及び/又は強風によって生じ得る機械的な力に耐えるように直接的に設計されてはいない。また、これらのモジュールは通常、地面にしっかりと固定された頑丈なラックを必要とする。設置ラックは、理論的にはバージ又は他の水上船舶上に配置され得るが、例えば大規模な陸上施設と比較して、実質的なコストペナルティなしには配置することができない。本明細書に記載された実施形態は、従来の技術に関連するそのような問題を軽減する。
【0012】
図1(正確な縮尺ではない)は、細長の柔軟な浮遊マット2上に設置された相互接続されたPVモジュール1を備える実施形態を示す。マット2は、例えば鎖、ポリエステル又はナイロンのロープ4で係留されたブイ3に取り付けられており、ロープは錨5によって海底にも固定されている。
【0013】
図2(正確な縮尺ではない)は、シャックル10を用いたパッドアイ9による浮遊マット2への取り付けのための取り付け点を備えた枠8を有するPVモジュール1を示している。マット2には、マット2の上側に溜まった水を排出したりするための孔30が開けられていてもよい。
【0014】
図3は、上述のようなマット2と共に使用するのに適したPVモジュール1の一実施形態の断面を示す。PVモジュール1は、シリコンベースの太陽電池セル13をカプセル封入する積層物12を有する。モジュール1は、複合芯材6とヒートシンク要素7との軽量サンドイッチによって設計されている。ヒートシンク要素7は、積層物12の後面から海への放熱を促進するために配置されている。
【0015】
図4は第2の実施形態の断面を示しており、ヒートシンクは、アルミニウムのプロファイル又はモジュール1のアルミニウム枠8に固定された波形のヒートシンク板11で作製されている。
【0016】
上述した実施形態は、列状又はマトリクス状に相互接続され、海に浮かぶ大きく薄い柔軟なマット又は片2上に設置された、複数の頑強で堅牢なPVモジュール1に基づくものである。基材マット又は細長片2は柔軟性に富み、海の波の動きに本質的に従うとともに、概していわゆる流力弾性挙動(hydro-elastic behaviour)を示す。大きなエリアを覆い得るマット2の存在によって、波の刻み(chopped waves)又は海水のしぶきが効果的に防止される。複数のマット2が相互接続されてもよい。
【0017】
マット2は有孔であっても有孔でなくてもよく、凹部、一方向弁、ポンプ又は溜まった水(雨水など)の排出を可能にする他の構成を有していても有していなくてもよい。マット2は、代替的にはネットで作製されていてもよく、すなわち比較的大きな開口を有していてもよい。図2はマット2の全体を横断するように配置されたそのような孔30の一例を示す。望ましい場合には、マット2の浮揚性は、マット2の一部又は実質的に全部の上に水の薄膜を維持するように設計されることが可能である。これは、マット2自体及び/又はPVモジュール1の冷却に有益であろう。
【0018】
マット2は、大きなセクションで製造することが可能な、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、EVA、合成ゴム又は共重合体からなる、シート、ネット、織布、フィルム又は板から構成されることが可能である。代替的には、織物は、多層構造であってもよく、及び/又は、ガス、低塩度の水、浮揚性固体、油、ゼリー、泡又は他の構成要素を包含するポケット又は細長トンネルによって部分的に膨張されてもよい。これは図5に概略的に図示されており、同図は、孔30と、水の密度よりも低い、すなわち1kg/dmよりも低い密度を有する流体又は固体材料を含むポケット31とを備える、図2に示されたマット2の断面図を示している。ポケット31はマット2の長さに沿った細長のトンネルとして形成されてもよい。
【0019】
PVモジュール1は、例えば、マット2にしっかりと溶接され又は一体化されたパッドアイ9に取り付けられたクイックロックカラビナ又はシャックル10によって、マット2に固定される。代替的な固定手段としては、例えば、ストラップ、縫い付けられたポケット、溶接されたブラケット、相互接続案内レールなどが可能である。多くの固定方法が本発明の範囲内で予想され得る。
【0020】
有利なことには、枠8及びモジュール1の構造は、三つの目的をもって設計される。すなわち、第一に、改善された頑強性を提供して太陽電池セルの破損を防止すること、第二に、より冷たいマット2及び水への熱伝導によって放熱を促進すること、そして最後に、気密封入を提供することにより任意選択的に海洋モジュールを浮揚性にすることである。
【0021】
PVモジュール1の比較的薄いシリコンベースの太陽電池セルは、元来脆く、破断しやすい。海の波によって生じる繰り返し動作及び/又はスラミング力によって引き起こされる破断の問題を解消するために、モジュール1は補強することが可能である。補強は、例えば、支持枠8の設計によって、及び/又はモジュール1の後面1bに補強芯材を追加することによって、達成され得る。ヒートシンク要素7及び/又はヒートシンク板11もまた、モジュール1内に構造的な強度をもたらすように設計され得る。こうして、非常に頑強なモジュール1を創出し、積層された太陽電池セルの耐屈曲性及び有効屈曲半径を増大させて、極端な損傷を回避することが可能である。そのような補強は、例えば、過酷な沖合エリアにおいて、損傷を回避するとともにシステムの信頼性を保証するために用いられ得る。内陸水域など、それほど厳しくない場所では、補強の要求は緩められてもよい。
【0022】
従来、PVモジュール1の後面は、セルを過度に熱くして電気効率を喪失させ得る断熱を回避するために、随意に空気循環できるようになっている。一実施形態においては、この問題は、後面1bを海水に熱的に接続させることによって対処される。これは、モジュール1の後面1bに取り付けられた又はその一部を構成するアルミニウムのヒートシンク7,11を提供することによって達成することができる。このような太陽電池セルの水冷の有利な効果は、既に確立したものであって、業界では既知である。ヒートシンク6としても作用する補強芯材は、水への放熱を直接的に可能にする冷却チャンネルも備え得る。複合芯材6も、好適には有益な熱伝導率を有する材料で作製されてもよい。
【0023】
沖合PVアレイは、浮遊するのに十分な浮揚性をもって設計されることが可能で、PVモジュール1の後面が部分的に浸水して、水による伝熱を可能にする。モジュール1は、それ自体が浮揚性であってもよく、浮上性でなくてもよい。モジュール列2、又はアレイを形成する複数の列は、錨5、鎖によって、及び例えばポリエステル又はナイロンからなる軽量ロープと組み合わせて、海底に係留される。代替的な係留の方法も可能である。例えば、モジュール列2は、例えば海岸近く又はダムでの適用の場合には、陸地に固定されることができる。PV施設が海流及び/又は波漂流力によって引きずられるのを防止するために、ブイ3も設置される。錨5及びブイ3のジオメトリならびに数及びサイズは、横方向の漂流力を最小化するように設計されることが可能である。錨泊のための十分な浮揚性及び固定点は、マットの周辺を包囲する1つ又はいくつかの環状の管状要素によっても提供され得る。ブイ3は、船乗りのために発電設備の位置を目立たせる適切なランタンも備えていてもよい。
【0024】
PVモジュール1の容易な取り付けのために、マット2とモジュール1との間には、クイックコネクタを使用することが可能であり、これは、柔軟なマット2、マット片又はホースに取り付けられたPVモジュール1を、適当な船舶から又は波止場地帯など陸上の場所から水面上に配備することによって、迅速に且つコスト効率よく設置することを可能にする。モジュール1は積み重ね可能であり、容易に配備され、又は極端な天候の場合には撤収されることができる。PVモジュール1は、高品質の、水浸可能な非分解性の接点(non-degradable contacts)を用いて電気的に相互接続される。また、任意選択的には、通常の接続箱端末(junction box terminals)によって提供されるものを超えて応力緩和特性を強化するために、電気ケーブルが不撓性のモジュール1に機械的に取り付けられることが可能である。
【0025】
PVシステムは、PVアレイのサイズ、列2の数、ピークワット数設計などに応じて、電力を沿岸又は沖合の消費者向けに変換可能なインバータに接続される。インバータ及び変圧器は、エンドユーザの沖合施設に直接設置されない場合には、カプセル封入して浮揚性にすることが可能である。後者は、例えば複数列のインバータを備え電力が主電力ケーブルを通じてエンドユーザに送達される広域施設に特に関連する。
【0026】
一実施形態においては、例えば冬に、極めて極端な天候を回避するため及び限定的な日光に起因して発電可能性が低くなるときにシステムを保管するために、容易に配備又は撤収できるように、事前に組み立てられたモジュールの列を船舶又はバージのデッキ上に積み重ねることが可能である。代替的には、PVシステムは、季節に従って運転され、例えば冬季のフィヨルドなど、より穏やかな水域に曳航されることが可能である。より赤道寄りの水域では、施設はことによると年中同様の日射条件下で運転されることが可能である。配備されたときにモジュール1が水平配置であるのは、赤道水域周辺での近垂直日射にとっては理想的であるが、水上システム又はモジュール自体は、代替的には、北半球又は南半球での最適化のために、例えば20~30度の固定的な傾きをもって製造されてもよい。モジュールの傾斜は、マットの上面を、高い浮揚性のあるトンネル又はセクションによって容易にされる線又は稜線に沿って持ち上げることによっても達成され得る。同様に、例えばケーブル又は鎖など、より緻密な材料を用いて凹部又はトレンチを設けることが可能である。モジュールのわずかな傾きは、時には、雨水を誘導するため及び/又はモジュールの自然洗浄を可能にするために好都合であろう。
【0027】
光起電システムは、バッテリと組み合わせられてもよく、好適には低エネルギ密度のレドックスフロー電池技術と組み合わせて用いられ得る。
【0028】
いくつかの大きなアレイは、荒れた海域における油膜又はグリースアイスと同様、沖合施設の付近の海域に対する鎮静効果を有するであろう。海域の表面を本質的に覆うPVシステムは、風に誘発されて波が砕けたり、さざ波が立ったり、海に刻みが入る(chopped sea)のを防止するが、その一方で、個々のPVモジュールは、大きなうねりに曝されたときに、ゆっくりと波打つ動きを経験するであろう。したがって、本明細書に記載された実施形態によるPVシステムは、風力発電装置など、他の沖合再生可能発電機と有利に組み合わせられ得る。
【0029】
図6及び7a~7cは沖合光起電発電設備の他の実施形態を示しており、ここで、浮遊要素3’は、マット2を取り囲む、環状の細長の浮遊要素である。図6は、上面図、断面図(左側)及び側面図(図の上)をそれぞれ示す。浮遊要素3’は、この例に示されるように実質的に円形であってもよく、又は異なる形態を有していてもよい。モジュール1は浮遊要素3’の内側のマット2に固定される。図7a~cは、浮遊要素3’の直径がより大きく、より多くのモジュール1がマット2に固定されている、代替的な実施形態を示す。
図7cは、4点係留具によって係留された発電設備を示す。マット2が接続された環状の細長の浮遊要素3’を提供することにより、運転時のマット2の形態及び形状がより良好に保証され、浮遊要素3’は風及び/又は波からの保護を提供する。施設は、任意選択的には、荒海での波スラミング又はマットの浸水を減少させるために、浮遊要素の周辺の外側に配置された追加的な消波堤(wave breaker)を備えていてもよい。
【0030】
一実施形態においては、上述した実施形態のいずれかによる沖合光起電発電設備を備えた養魚場が提供される。沖合光起電発電設備を有する養魚場を提供することは、発電設備の電力生産プロファイルが養魚場からの電力需要に良好に一致するという点で利点をもたらす。養魚場の給餌システムを運転するのに必要な電力は、概して主に日中、光起電生産が最も高くなるときに要求される。同じことは、高緯度での季節的な変化、例えば、鮭の食欲が夏の長い昼間及びそれに続く盛んなPV発電と良好に一致する場合にも当てはまる。
【0031】
マット2を取り囲む環状の細長の浮遊要素3’を有する沖合光起電発電設備を提供することによって、養魚場での発電設備の係留はより容易になる。なぜなら、養魚場は多くの場合、そのような環状の細長の浮遊要素を定位置に係留するための設備を有するからである。
【0032】
図8a及び8bは、マット2が長手方向34に交互の浮揚性を有するセクションA,Bを備え、モジュール1がそのセクションA,Bの間に配置された、別の一実施形態を示している。図8a及び8bの各々の上の図は、モジュール1が配置された状態のマット2の側面図である。マット2は、海など、水域の表面33上に浮かんでいる。(図8a及び8bの図解は明瞭にするために概略的になっており、要素の相対的なサイズは実際のシステムを表していないかもしれない。例えば、モジュールのサイズに対するマット2の厚さは、図8a及び8bに示されているよりも薄くてもよい。)図8a及び8bの各々の下の図は、マットの上面図を示している。
【0033】
第1組のセクションAの各セクションは1kg/dmよりも低い密度を有し、第2組のセクションBの各セクションは1kg/dmよりも高い密度を有する。これを達成するために、低密度材料の浮遊要素又はポケット31が、第1組のセクションのセクションAの各々に配置される。追加的(又は代替的)には、第2組のセクションBは、その中又は上に配置されたおもり32を備えている。おもり32は、マット2のポケット内に配置された材料であってもよく、マット2に固定されたおもりであってもよく、又はより高い密度をもって配置されたこれらのセクションのマット2の材料それ自体であってもよい。
【0034】
この配置によれば、モジュール1を、図示されるように、水平に対してある角度で配置することが可能である。モジュールは、太陽に向かって最も有益な方向に従ってポケット31の片側に配置されてもよく、又は、所望であれば両側に配置されてもよい。水平に対して傾きをもってモジュールを配置することは、モジュール1の性能及び発電を向上させ得る。さらに、これにより、自己洗浄効果を高めるとともにモジュール1の表面における汚染物の蓄積を回避することができる。
【0035】
図9は、伝熱要素7又は伝熱板11がマット2を貫通して海中33へと伸びる、別の一実施形態を示している。このために、マット2には適当な開口が設けられてもよい。これは伝熱特性を高めるとともに、ひいては積層物12の冷却を増進する。この構成は、例えば、温暖な気候において、モジュール1の冷却を増進するのに有利であろう。
【0036】
図10は別の一実施形態を示している。この実施形態においては、枠8は後板15を備えている。後板15は、マット2に支えられるように配置され、シーム溶接された管又は薄壁の押出部の形態をしたアルミニウムの伝熱要素7に熱的に接続されている。図3に示される実施形態のように、これらは後板15から積層物12を支持する支持板(図10では見えないが、図11に示される支持板14に等しい)へと横断するように伸びている。後板15はその外周15’で枠8に固定されている。また、図10の切り抜き図において見えるのは、枠8をマット2に固定する固定要素10’である。枠8の他の角には、対応する固定要素10’が配置されている。この実施形態において、伝熱要素7は、枠8への構造的強度及び頑強性の追加に寄与するものであり、所望の/必要な強度及び頑強性を達成するために、伝熱要素7の適当な厚さ及び配置(例えば図10に見られるようなパターン配置)が選択可能である。
【0037】
図11は別の一実施形態を示している。この実施形態においては、伝熱板11は、後板15と支持板14との間に配置された波形の冷却板11として構成されている。中板14は積層物12を支持するように配置されており、その一方で後板15は枠8の後面に、マット2に支えられるように配置されている。波形の冷却板11は、板14と15との間にろう付けされてもよく、又は他の手段によって固定されてもよい。図11には、太陽からの放射の流入40も図示されている。この値は、天候、地理的位置、及び他の要因に応じて、例えば1000W/m程度であり得る。後板15からマット2及び/又は下にあり相対的に冷たい水への放熱41も図示されている。これは、太陽電池セル13が許容可能に低い動作温度に維持されること、及びその結果、より効率的に動作する(すなわちより多くの電気エネルギを生産する)ことを保証する。
【0038】
図12aは、ポケット31がより大きなサイズであり且つ浮揚性の液体で満たされている、別の一実施形態の側面図を示す。サイズがより大きいポケット31を配置することによって、例えば、マット2が浮かんでいる水33よりもほんのわずかに密度が低い液体を用いることが可能になり得る。例えば、海上に配置される設備については、淡水で満たされたポケットが用いられ得る。ポケット31の間にはおもり32が配置される。この実施形態ではマット2の上に配置されており、マット内に統合されてはいない。ポケット31の間のおもり32はマット2の窪みをもたらし、これはマット2から水を流し去るための排水トレンチとしても利用され得る。ポケット31は、例えば、マット2の材料にシーム溶接され又は縫い込まれてもよく、又はポケット31を有するマット2が異なる手法で製造されてもよい。
【0039】
図12bは、ポケット31がスペーサ要素35を備える代替的な一実施形態の側面図を示す。スペーサ要素35は、マット2と同一の材料で作製されてもよく、又は異なる材料で作製されてもよい。スペーサ要素35は、マット2の少なくとも一部の形状を定義するように配置されることが可能である。図12bに示される実施形態においては、スペーサ要素は、マット2の上側におけるモジュール1の取り付けのために、より平らな表面を有利に提供する。
【0040】
図13は、沖合光起電発電設備100の一実施形態を図示している。発電設備100は、都市など人口密集エリア101の付近の海岸近くの場所に配置される。発電設備100は図7a~cに示されるように複数のユニットを備えているが、個々のユニットは上述の実施形態のいずれによる設計及び構成であってもよい。図13に示される実施形態においては、6つのユニットが海岸近くに係留されている。発電設備100は、生産された電力を都市101及び/又は他の沿岸の消費者に沿岸の送電網(図示しない)を介して分配するために、沿岸の発電所101に電気的に接続されている。したがって、図13に示されるような実施形態は、人口密集エリアの付近では通常土地面積が限られることに鑑みて、例えば、沿岸の太陽発電設備から利用可能であると思われるよりも有意に多くの電力を提供し得る。
【0041】
このように、本発明による実施形態は、新規で且つ改良された沖合光起電発電設備及び関連する方法を提供する。いくつかの実施形態によれば、そのような発電設備を過酷な沖合環境に設置することを、より少ない設置コストで、より容易に且つより安全に行うことができる。
【0042】
いくつかの実施形態においては、太陽電池セルの加熱によって引き起こされる電力生産の減少の問題を軽減することが可能であり、エネルギ効率を高める低い電池運転温度が可能となる。発電設備の設置、運転及び構造的完全性に対する波の影響は既知の解決策よりも低いであろうから、信頼性高く長寿命の運転が保証される。
【0043】
本発明の実施形態は、荒海では風車へ及び風車からのアクセスが困難になるであろう沖合ウインドパークと組み合わせて良好に機能することが可能である。太陽PVはまた、例えば低風及び高太陽放射ならびにその逆の際に、発電天候条件の重なり合いによって、風力と組み合わせて良好に機能する。そのような適用に関しては、水上太陽PVと沖合の風車とは、陸への電力ケーブルインフラストラクチャを共有してもよい。沖合光起電発電設備と少なくとも1つの沖合風力発電機とを備える沖合発電設備の有益な効果は、マット2が沖合施設全体の運転に対して、及び特に風力発電機に対して、有益な効果を有するということである。荒れた海域に対する油の効果又は例えばグリースアイスによって波を弱めることと同様に、波を弱めることは、沖合での建設工事の労働環境及び/又は全体的な疲労寿命に対して甚大な影響を有し得る。これは風力発電機の寿命を向上させるとともに、検査及び保守の必要を減少させ、その一方で風力発電機へのアクセスを容易にもする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12a
図12b
図13