IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本車輌製造株式会社の特許一覧 ▶ アルナ輸送機用品株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-規制装置 図1
  • 特許-規制装置 図2
  • 特許-規制装置 図3
  • 特許-規制装置 図4
  • 特許-規制装置 図5
  • 特許-規制装置 図6
  • 特許-規制装置 図7
  • 特許-規制装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】規制装置
(51)【国際特許分類】
   B61D 25/00 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
B61D25/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023203850
(22)【出願日】2023-12-01
【審査請求日】2023-12-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年8月3日に東海旅客鉄道株式会社 神領車両区へ納入
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502203015
【氏名又は名称】アルナ輸送機用品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 雄大
(72)【発明者】
【氏名】中村 征広
(72)【発明者】
【氏名】三宅 祐司
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-147091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の窓枠に対して上部が車室側に倒れて開く内折れ窓の閉じ動作を規制可能に構成される規制装置において、
前記内折れ窓の側面に取り付けられ、前記窓枠の内面側へ向けて突出される突出手段と、
前記窓枠の内面に取り付けられ、前記内折れ窓の開閉に伴う前記突出手段の軌跡に干渉する下降位置および前記内折れ窓の開閉に伴う前記突出手段の軌跡に干渉しない上昇位置の間で変位可能に構成されると共に、前記上昇位置から前記下降位置に少なくとも自重により変位可能に構成される変位手段と、を備え、
前記変位手段は、
前記変位手段が少なくとも前記下降位置にある状態において、全閉状態にある前記内折れ窓の前記突出手段に対向される第1対向部と、
前記変位手段が少なくとも前記下降位置にある状態において、全開状態にある前記内折れ窓の前記突出手段に対向される第2対向部と、を備え、
前記全閉状態にある前記内折れ窓の開き動作が行われると、前記突出手段が前記第1対向部に沿って摺動され、前記変位手段が前記下降位置から前記上昇位置へ持ち上げられることで、前記内折れ窓の開き動作が許容され、
前記全開状態にある前記内折れ窓の閉じ動作が行われると、前記突出手段が前記第2対向部に当接され、前記変位手段が前記下降位置に維持されることで、前記内折れ窓の閉じ動作が規制されることを特徴とする規制装置。
【請求項2】
前記変位手段は、前記変位手段が前記下降位置から所定距離だけ変位された閉じ可能位置に少なくともある状態において、前記全開状態にある前記内折れ窓の前記突出手段に対向される第3対向部を備え、
前記変位手段が前記閉じ可能位置にある状態において、前記全開状態にある前記内折れ窓の閉じ動作が行われると、前記突出手段が前記第3対向部に沿って摺動され、前記変位手段が前記閉じ可能位置から前記上昇位置へ持ち上げられることで、前記内折れ窓の閉じ動作が許容されることを特徴とする請求項1記載の規制装置。
【請求項3】
前記変位手段の変位を案内可能に構成される案内手段を備え、
前記変位手段は、少なくとも前記下降位置と前記上昇位置との間において鉛直方向に沿って変位可能となるように前記案内手段に案内されることを特徴とする請求項2記載の規制装置。
【請求項4】
前記変位手段は、前記案内手段により案内される被案内部を備え、
前記被案内部の車外側を向く車外側面とその車外側面を案内する前記案内手段の案内面との間の間隔が鉛直方向下方から鉛直方向上方に向かうに従って広くされ、
前記変位手段が前記下降位置にある状態において、前記被案内部の車外側面と前記案内手段の案内面とが当接されることで、前記変位手段が前記閉じ可能位置に変位されることを特徴とする請求項3記載の規制装置。
【請求項5】
前記変位手段は、車室側に延設されるハンドル部を備え、
前記ハンドル部の少なくとも先端側は、前記全開状態にある前記内折れ窓よりも車室側に位置されることを特徴とする請求項4記載の規制装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規制装置に関し、特に、負圧が作用された際の閉じ動作を規制する機能の信頼性を確保しつつ、ユーザーが閉じ動作を行う際の操作性を向上できる規制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の窓枠と上部が車室側に倒れて開く可倒窓4(内折れ窓)との間の隙間に配設され、可倒窓4の閉じ動作を規制する規制装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1の規制装置によれば、トンネルへの進入に伴う負圧の作用により、可倒窓4が全開状態から閉じ方向に素早く動かされると、ステー22が自重で降下される前に、ピンPが、全開位置部A1から閉制限位置部A4に移動され、閉制限部25bに干渉される。これにより、可倒窓4が急に閉じられることが規制される。
【0004】
一方、ユーザーの操作により、可倒窓4が全開状態から閉じ方向に緩やかに動かされると、その緩やかな動きの間にステー22が自重で降下され、ピンPが、閉制限位置部A4ではなく、導入通路部A3aに移動される。これにより、可倒窓4を閉じることが可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-147091号公報(例えば、段落0027,0029、図6図8など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、ピンPの通路となる案内溝25が分岐されており、可倒窓4の閉じ方向への動作速度に応じて、ピンPの移動先が決定される。そのため、トンネルへの進入に伴う負圧が作用された際、その負圧の作用の仕方によっては、ピンPが、閉制限位置部A4ではなく、導入通路部A3aに移動される虞がある。即ち、可倒窓4が閉じ方向へ動くことが規制されるのか許容されるのかが、可倒窓4の閉じ方向への動作速度に依存される。そのため、動作が不安定で、負圧が作用された際の閉じ動作を規制する機能の信頼性が低いという問題点があった。
【0007】
また、可倒窓4をユーザーが閉じる際には、可倒窓4を緩やかに閉じ方向に操作する必要があり、操作方法を知らないユーザーが可倒窓4を閉じ方向に急いで操作すると、閉じることが規制される。そのため、ユーザーが閉じ動作を行う際の操作性が悪いという問題点があった。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、負圧が作用された際の閉じ動作を規制する機能の信頼性を確保しつつ、ユーザーが閉じ動作を行う際の操作性を向上できる規制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明の規制装置は、鉄道車両の窓枠に対して上部が車室側に倒れて開く内折れ窓の閉じ動作を規制可能に構成されるものであり、前記内折れ窓の側面に取り付けられ、前記窓枠の内面側へ向けて突出される突出手段と、前記窓枠の内面に取り付けられ、前記内折れ窓の開閉に伴う前記突出手段の軌跡に干渉する下降位置および前記内折れ窓の開閉に伴う前記突出手段の軌跡に干渉しない上昇位置の間で変位可能に構成されると共に、前記上昇位置から前記下降位置に少なくとも自重により変位可能に構成される変位手段と、を備え、前記変位手段は、前記変位手段が少なくとも前記下降位置にある状態において、全閉状態にある前記内折れ窓の前記突出手段に対向される第1対向部と、前記変位手段が少なくとも前記下降位置にある状態において、全開状態にある前記内折れ窓の前記突出手段に対向される第2対向部と、を備え、前記全閉状態にある前記内折れ窓の開き動作が行われると、前記突出手段が前記第1対向部に沿って摺動され、前記変位手段が前記下降位置から前記上昇位置へ持ち上げられることで、前記内折れ窓の開き動作が許容され、前記全開状態にある前記内折れ窓の閉じ動作が行われると、前記突出手段が前記第2対向部に当接され、前記変位手段が前記下降位置に維持されることで、前記内折れ窓の閉じ動作が規制される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の規制装置によれば、内折れ窓の側面に取り付けられ、窓枠の内面側へ向けて突出される突出手段と、窓枠の内面に取り付けられ、内折れ窓の開閉に伴う突出手段の軌跡に干渉する下降位置および内折れ窓の開閉に伴う突出手段の軌跡に干渉しない上昇位置の間で変位可能に構成されると共に、上昇位置から下降位置に少なくとも自重により変位可能に構成される変位手段と、を備え、変位手段は、変位手段が少なくとも下降位置にある状態において、全閉状態にある内折れ窓の前記突出手段に対向される第1対向部と、変位手段が少なくとも下降位置にある状態において、全開状態にある内折れ窓の突出手段に対向される第2対向部と、を備え、全閉状態にある内折れ窓の開き動作が行われると、突出手段が第1対向部に沿って摺動され、変位手段が下降位置から上昇位置へ持ち上げられることで、内折れ窓の開き動作が許容され、全開状態にある内折れ窓の閉じ動作が行われると、突出手段が第2対向部に当接され、変位手段が下降位置に維持されることで、内折れ窓の閉じ動作が規制される。
【0011】
全閉状態にある内折れ窓をユーザーが開く際には、ユーザーは、内折れ窓の開き動作のみを行えば良く、変位手段を別途操作する必要がない。よって、内折れ窓の開き動作を簡易に行うことができる。
【0012】
この場合、内折れ窓が全開状態まで開かれた状態では、変位手段が少なくとも自重により上昇位置から下降位置へ変位され、突出手段が第2対向部に対向された状態が形成される。よって、全開状態にある内折れ窓の閉じ動作が行われると、突出手段が第2対向部に当接され、内折れ窓の閉じ動作が規制される。即ち、全開状態にある内折れ窓の閉じ動作をその動作速度に寄らずに規制することができる。例えば、トンネルへの進入に伴う負圧が作用された際、その負圧の作用の仕方に寄らず、内折れ窓が閉じることを確実に規制できる。従って、閉じ動作を規制する機能の信頼性を確保できる。
【0013】
また、全開状態にある内折れ窓をユーザーが閉じる際には、ユーザーは、変位手段を上昇位置に持ち上げれば、内折れ窓の閉じ動作をその動作速度に寄らずに行うことができる。例えば、ユーザーは、内折れ窓を緩やかに閉じることも急いで閉じることもできる。よって、閉じ動作の操作性を向上できる。
【0014】
請求項2記載の規制装置によれば、変位手段は、変位手段が少なくとも下降位置から所定距離だけ変位された閉じ可能位置にある状態において、全開状態にある内折れ窓の突出手段に対向される第3対向部を備え、変位手段が閉じ可能位置にある状態において、全開状態にある内折れ窓の閉じ動作が行われると、突出手段が第3対向部に沿って摺動され、変位手段が閉じ可能位置から上昇位置へ持ち上げられることで、内折れ窓の閉じ動作が許容される。
【0015】
よって、請求項1記載の規制装置の奏する効果に加え、以下の効果を奏する。全開状態にある内折れ窓をユーザーが閉じる際には、ユーザーは、変位手段を閉じ可能位置まで変位させた後、内折れ窓の閉じ動作のみを行えば良く、変位手段を別途操作することを不要とできる。即ち、変位手段を上昇位置まで持ち上げることを不要とできると共に、突出手段が第3対向部に当接された後は、変位手段から一方の手を離して、内折れ窓の閉じ動作のみを他方の手(又は両手)により行うことができるので、閉じ動作の操作性を向上できる。
【0016】
請求項3記載の規制装置によれば、請求項2記載の規制装置の奏する効果に加え、変位手段の変位を案内可能に構成される案内手段を備え、変位手段は、少なくとも下降位置と上昇位置との間において鉛直方向に沿って変位可能となるように前記案内手段に案内されるので、変位手段の自重を利用して、変位手段を上昇位置から下降位置へ変位させやすくできる。
【0017】
請求項4記載の規制装置によれば、請求項3記載の規制装置の奏する効果に加え、被案内部の車外側を向く車外側面とその車外側面を案内する案内手段の案内面との間の間隔が鉛直方向下方から鉛直方向上方に向かうに従って広くされ、変位手段が下降位置にある状態において、被案内部の車外側面と案内手段の案内面とが当接されることで、変位手段が閉じ可能位置に変位されるので、変位手段を閉じ可能位置に変位させる操作を容易とできる。
【0018】
請求項5記載の規制装置によれば、請求項4記載の規制装置の奏する効果に加え、変位手段は、車室側に延設されるハンドル部を備え、ハンドル部の少なくとも先端側は、全開状態にある内折れ窓よりも車室側に位置されるので、ハンドル部を操作することで、窓枠と内折れ窓との間に手を差し入れることを不要とできる。また、ハンドル部を持ちあげることで、変位手段の上部を車外側に倒すことができる。即ち、変位手段を閉じ可能位置に変位させる操作を容易とできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は、第1実施形態における規制装置が取り付けられた窓枠および内折れ窓の正面図であり、(b)及び(c)は、図1(a)のIb-Ib線における窓枠および内折れ窓の部分拡大断面図である。
図2】(a)は、内折れ窓の部分拡大正面図であり、(b)は、図2(a)の矢印IIb方向視における内折れ窓の部分拡大側面図である。
図3】(a)は、窓枠の内面の部分拡大図であり、(b)は、図3(a)のIIIb-IIIb線における窓枠の部分拡大断面図である。
図4】(a)は、掛金の正面図であり、(b)は、図4(a)のIVb-IVb線における掛金の断面図であり、(c)は、図4(a)の矢印IVc方向視における掛金の側面図である。
図5】(a)及び(b)は、窓枠の内面の部分拡大図であり、(c)は、図5(a)のVc-Vc線における窓枠の部分拡大断面図である。
図6】(a)から(d)は、内折れ窓の開き動作に伴う規制装置の状態遷移図である。
図7】(a)から(d)は、内折れ窓の閉じ動作に伴う規制装置の状態遷移図である。
図8】(a)は、第2実施形態における規制装置の掛金が取り付けられた窓枠の内面の部分拡大図であり、(b)は、図8(a)のVIIIb-VIIIb線における窓枠の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、第1実施形態における規制装置100が取り付けられた窓枠30及び内折れ窓70の正面図であり、鉄道車両1の車室Rm側から視た状態が図示される。図1(b)及び図1(c)は、図1(a)のIb-Ib線における窓枠30及び内折れ窓70の部分拡大断面図であり、図1(b)では、内折れ窓70の全閉状態が、図1(c)では、内折れ窓70の全開状態が、それぞれ図示される。なお、図1(b)及び図1(c)では、内折れ窓70及び固定窓50の断面線の図示が省略される。
【0021】
図1に示すように、鉄道車両1の側構体には、正面視矩形の窓枠30が配設され、窓枠30には、その窓枠30に囲まれる窓開口を上下に仕切る仕切枠31が配設される。仕切枠31は、鉄道車両1の長手方向(図1(a)左右方向)に延設され、仕切枠31の下側の窓開口は、固定窓50により閉鎖され、仕切枠31の上側の窓開口は、内折れ窓70により開閉可能とされる。
【0022】
内折れ窓70は、上部が車室Rm側に倒れて開く内折れ式の窓として構成される。即ち、内折れ窓70の下部は、鉄道車両1の長手方向(図1(b)及び図1(c)紙面垂直方向)に沿う支軸71を介して窓枠30に軸支され、内折れ窓70の上部には、内折れ窓70を開閉する際にユーザーが把持して操作する把持部72が配設される。
【0023】
把持部72は、窓枠30に係合される係合位置とその係合を解除する解除位置との間で操作可能に構成される。ユーザーが把持部72を係合位置から解除位置に操作し車室Rm側に引き込むと、内折れ窓70が支軸71を中心として回動(傾動)され、開き動作が行われる。ステー73により開き動作が規制されると、内折れ窓70が全開状態に維持される(図1(c)参照)。
【0024】
内折れ窓70の側面70a(図2参照)と窓枠30の内面30aとの間の隙間には、規制装置100が配設される。規制装置100は、内折れ窓70の側面70aに取り付けられる窓側部材110(図2参照)と、窓枠30の内面30aに取り付けられる掛金130及び案内部材150とを備え、窓側部材110を掛金130に干渉させることで、内折れ窓70の閉じ動作を規制することが可能に構成される。
【0025】
図2を参照して、窓側部材110について説明する。図2(a)は、内折れ窓70の部分拡大正面図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印IIb方向視における内折れ窓70の部分拡大側面図である。
【0026】
図2に示すように、窓側部材110は、平板状に形成される取付板部111と、その取付板部111から突出される円柱状の突出部112とを備える。取付板部111は、内折れ窓70の側面70aに皿ねじCSにより取り付けられ、この取り付け状態では、突出部112が、支軸71と略平行な姿勢(鉄道車両1の長手方向(図2(a)左右方向)に軸方向を沿わせた姿勢)とされる。
【0027】
窓側部材110は、内折れ窓70の側面70aよりも突出部112が窓枠30の内面30a側へ向けて突出され、内折れ窓70が開閉される際に突出部112の外周面を掛金130(干渉部136)に干渉(当接)させることが可能とされる(図6及び図7参照)。
【0028】
図3を参照して、掛金130及び案内部材150について説明する。図3(a)は、窓枠30の内面30aの部分拡大図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb-IIIb線における窓枠30の部分拡大断面図である。なお、図3(a)では、全開状態および全閉状態における内折れ窓70がそれぞれ二点鎖線を用いて模式的に図示され、図3(b)では、全閉状態における内折れ窓70が二点鎖線を用いて模式的に図示される。
【0029】
図3に示すように、窓枠30の内面30aには、案内部材150が取り付けられる。案内部材150は、掛金130を保持すると共に、その掛金130の変位を案内する(変位可能範囲を規定する)。
【0030】
掛金130は、内折れ窓70の開閉に伴う突出部112の軌跡に干渉する下降位置(図5(a)及び図5(b)参照)と内折れ窓70の開閉に伴う突出部112の軌跡に干渉しない上昇位置との間で変位可能とされると共に、上昇位置から下降位置に自重により変位(下降)可能とされる。
【0031】
なお、下降位置を、案内部材150におけるねじ座151の上面151b(図5(b)参照)に掛金130における接続部134の下面134aが支持される位置(即ち、図3(a)に示す位置)と定義し、上昇位置を、突出部112によって掛金130が持ち上げられる範囲の中で最も鉛直方向上方となる位置(図6(c)参照)と定義する。
【0032】
図4を参照して、掛金130について説明する。図4(a)は、掛金130の正面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb-IVb線における掛金130の断面図であり、図4(c)は、図4(a)の矢印IVc方向視における掛金130の側面図である。
【0033】
図4(a)に示すように、掛金130は、水平方向に延設される基部131と、その基部131の一端側(図4(a)右側)及び他端側(図4(a)左側)のそれぞれから上方へ延設される被案内部132及び立設部133と、それら被案内部132及び立設部133の上端どうしを接続する接続部134と、基部131の一端側から車室Rm側へ延設されるハンドル部135と、基部131の正面から突出される干渉部136とを備える。
【0034】
基部131、被案内部132、立設部133、接続部134及びハンドル部135は、1枚の板材から形成され、これら各部131~135が同一平面状に位置される。但し、ハンドル部135の先端側(基部131と反対側)は、屈曲して形成され、窓枠30に配設される装飾パネル32(図3(b)参照)の外面(車室Rm側の面)に対面される。
【0035】
被案内部132は、案内部材150(図5参照)に案内される部位であり、その被案内部132の幅寸法(車室Rm側を向く車室側面132aと車外Out側を向く車外側面132bとの間の間隔)が鉛直方向上方に向かうに従って小さくなるように構成される。即ち、被案内部132の上端側(接続部134側)の幅寸法W1は、被案内部132の下端側(基部131側)の幅寸法W2よりも小さくされる(W1<W2)。
【0036】
本実施形態では、車室側面132aは、接続部134の下面134aに直交する平坦面として形成され、車外側面132bは、鉛直方向上方に向かうに従って車室側面132aに近づく平坦面として形成される。
【0037】
ハンドル部135は、その少なくとも先端側が、全開状態にある内折れ窓70よりも車室Rm側に位置される(図1(c)参照)。よって、ハンドル部135を操作することで、掛金130を上昇位置や後述する閉じ可能位置(図7(b)参照)に変位させることができ、掛金130を変位させるために窓枠30と内折れ窓70との間にユーザーが手を差し入れることを不要とできる。
【0038】
干渉部136は、基部131の正面に溶接固定される正面視略5角形の板材により形成される部位であり、第1対向面136a、第2対向面136b及び第3対向面136cを備える。
【0039】
第1対向面136aは、鉛直方向下方へ向かうに従って車室Rm(第2対向面136b)側に近づく平坦面として形成され、第2対向面136bは、鉛直方向に沿う平坦面(接続部134の下面134aに直交する平坦面)として形成される。第3対向面136cは、第1対向面136a及び第2対向面136bを接続し、鉛直方向下方へ向かうに従って車外Out(第1対向面136a)側に近づく平坦面として形成される。
【0040】
第1対向面136aは、掛金130が下降位置にある状態において、全閉位置にある内折れ窓70の突出部112に対向し(図3(a)及び図5(a)参照)、第2対向面136bは、掛金130が下降位置にある状態において、全開位置にある内折れ窓70の突出部112に対向する(図3(a)及び図5(d)参照)。第3対向面136cは、掛金130が後述する閉じ可能位置にある状態において、全開位置にある内折れ窓70の突出部112に対向する(図7(b)参照)。
【0041】
なお、第1対向面136a、第2対向面136b又は第3対向面136cが突出部112に対向するとは、内折れ窓70が開閉動作される際の突出部112の軌跡に対し、第1対向面136a、第2対向面136b又は第3対向面136cが交差する位置にあることを意味する。
【0042】
図5を参照して、案内部材150について説明する。図5(a)及び図5(b)は、窓枠30の内面30aの部分拡大図であり、図5(c)は、図5(a)のVc-Vc線における窓枠30の部分拡大断面図である。なお、図5(b)では、案内部材150の押え金153が取り外された状態が図示される。
【0043】
図5に示すように、案内部材150は、一対のねじ座151,152と、押え金153とを備え、ねじ座151,152の案内面151a,152aと、押え金153の背面と、窓枠30の内面30aとにより掛金130を鉛直方向に沿ってスライド変位可能に保持する。
【0044】
ねじ座151,152は、窓枠30の内面30aに複数(本実施形態では各2本)のリベットRVにより取り付けられる。押え金153は、ねじ座151,152の正面に皿ねじCSにより取り付けられる。
【0045】
案内面151a,152aは、互いに平行であって、それぞれねじ座151の上面151bに直交する平坦面として形成される。また、案内面151a,152aの対向間隔は、被案内部132の下端側の幅寸法W2(図4(a)参照)と同一または若干大きくされる。
【0046】
よって、ねじ座151の上面151bに掛金130の接続部134の下面134aが支持(当接)された状態(即ち、掛金130が下降位置にある状態)では、案内面152aと掛金130の被案内部132における車室側面132aとは、平行となる一方、案内面151aと掛金130の被案内部132における車外側面132bとは、非平行となる。
【0047】
即ち、掛金130が少なくとも下降位置にある状態において、掛金130の被案内部132の車外側面132bとねじ座151の案内面151aとの間の間隔が、鉛直方向下方から鉛直方向上方に向かうに従って広くされる。これにより、被案内部132の車外側面132bがねじ座151の案内面151aに当接されるように掛金130を傾斜させることが可能とされる(図7(b)参照)。
【0048】
なお、案内面151a,152aの対向間隔が被案内部132の幅寸法W1よりも大きくされるため、掛金130は、下降位置にある状態(ねじ座151の上面151bに掛金130の下面134aを当接させた状態)では、その状態を維持しつつ、水平方向(図5(a)及び図5(b)左右方向)に変位可能とされる。
【0049】
本実施形態では、下降位置にある掛金130が車室Rm側または車外Out側のどちらに変位された状態においても、全開状態にある内折れ窓70の突出部112が第2対向面136bに対向されると共に、支軸71の軸心を含み鉛直方向に沿う仮想平面よりも第2対向面136bが車外Out側に配置される。
【0050】
図6を参照して、内折れ窓70の開き動作について説明する。図6(a)から図6(d)は、内折れ窓70の開き動作に伴う規制装置100の状態遷移図であり、全閉状態から全開状態まで内折れ窓70の開き動作が行われる際の遷移が図示される。
【0051】
図6(a)に示すように、内折れ窓70が全閉状態にある状態では、窓側部材110の突出部112が掛金130の第1対向面136aに対向される。突出部112と第1対向面136aとの間には所定間隔が隔てられ、掛金130が自重により下降位置に維持される。
【0052】
内折れ窓70の開き動作が行われると、突出部112が第1対向面136aに当接される。第1対向面136aは、車室Rm側へ向けて下降傾斜されているので、内折れ窓70の開き動作が更に行われると、図6(b)に示すように、突出部112が第1対向面136aに沿って摺動され、掛金130が下降位置から持ち上げられる。
【0053】
なお、本実施形態では、掛金130が立設部133を備え、これにより、掛金130の重心が被案内部132に位置される。即ち、掛金130は、被案内部132よりも車室Rm側となる部分(ハンドル部135)の重量と、被案内部132よりも車外Out側となる部分の重量とが釣り合うように構成される。よって、掛金130を下降位置から鉛直方向上方に上昇させやすくできる。
【0054】
図6(c)に示すように、突出部112が第1対向面136aの終端(第3対向面136cとの境界)に達すると、掛金130が上昇位置に配置される。なお、掛金130が上昇位置に配置された状態において、案内部材150の下面と掛金130における基部131及びハンドル部135の上面とは、所定間隔を隔てて対向され、その所定間隔の分、掛金130を上昇位置よりも更に鉛直方向上方に持ち上げることが可能とされる。
【0055】
図6(c)に示す状態から内折れ窓70の開き動作が更に行われ、図6(d)に示すように、内折れ窓70が全開状態とされると、掛金130が自重により下降位置に配置され、突出部112が第2対向面136bに対向される。
【0056】
なお、掛金130は、上述したように、案内部材150により、鉛直方向に沿ってスライド変位可能に案内されるので、掛金130の自重を利用して、掛金130を上昇位置から下降位置へ変位させやすくできると共に、掛金130を下降位置に維持しやすくできる。
【0057】
以上のように、全閉状態にある内折れ窓70をユーザーが開く際には、ユーザーは、内折れ窓70の開き動作のみを行えば良く、掛金130を別途操作する必要がない。よって、内折れ窓70の開き動作を簡易に行うことができる。
【0058】
図7を参照して、内折れ窓70の閉じ動作について説明する。図7(a)から図7(d)は、内折れ窓70の閉じ動作に伴う規制装置100の状態遷移図であり、全開状態から全閉状態まで内折れ窓70の閉じ動作が行われる際の遷移が図示される。
【0059】
図7(a)に示すように、内折れ窓70が全開状態にある状態では、窓側部材110の突出部112が掛金130の第2対向面136bに対向される。突出部112と第2対向面136bとの間には所定間隔が隔てられ、掛金130が自重により下降位置に維持される。
【0060】
図7(a)に示す状態において、トンネルへの進入に伴う負圧の作用により、内折れ窓70の閉じ動作が発生すると、突出部112が第2対向面136bに当接される。第2対向面136bは、上述したように、鉛直方向に沿う平坦面とされると共に、支軸71の鉛直方向上方に位置されるため、突出部112により第2対向面136bが押圧されても、掛金130を持ち上げる方向の力成分の発生が抑制される。よって、内折れ窓70が閉じることを規制できる。
【0061】
即ち、規制装置100によれば、全開状態にある内折れ窓70の閉じ動作をその動作速度に寄らずに規制する(内折れ窓70が素早く閉じ方向に動く場合だけでなく、緩やかに動く場合も規制する)ことができる。よって、トンネルへの進入に伴う負圧が作用された際に、その負圧の作用の仕方に寄らず、内折れ窓70が閉じることを確実に規制できる。従って、閉じ動作を規制する機能の信頼性を確保できる。
【0062】
全開状態にある内折れ窓70の閉じ動作をユーザーが行う場合には、まず、掛金130を閉じ可能位置に配置し、次いで、内折れ窓70の閉じ動作を行う。
【0063】
なお、掛金130の閉じ可能位置への配置は、掛金130の高さ位置をユーザーが目視により確認しつつ操作する必要がなく、ハンドル部135の操作のみで容易に行うことができる。即ち、上述したように、案内面151aと車外側面132bとの間の間隔が鉛直方向上方ほど広くされているので(図5(b)参照)、ハンドル部135を車外Out側(図7(a)左側)に押し込みつつ少し持ち上げることで、案内部材150の案内面151a(図5(b)参照)の下端を支点として、掛金130の上部が車外Out側に倒され、被案内部132の車外側面132bが案内部材150の案内面151aに当接される。これにより、図7(b)に示すように、掛金130が閉じ可能位置に配置される。
【0064】
なお、本実施形態では、掛金130が立設部133を備える。よって、下降位置にある掛金130のハンドル部135を少し持ち上げた際に、立設部133の重量の分、掛金130を車外Out側に倒しやすくできる。よって、掛金130を閉じ可能位置に変位させる操作を行いやすくできる。
【0065】
図7(b)に示すように、掛金130が閉じ可能位置に配置され、内折れ窓70が全開状態にある状態では、突出部112が第3対向面136cに対向される。突出部112と第3対向面136cとの間には所定間隔が隔てられる。
【0066】
内折れ窓70の閉じ動作が行われると、突出部112が第3対向面136cに当接される。こにより、掛金130が突出部112に支持されるので、ユーザーは、ハンドル部135から手を離すことができる。
【0067】
第3対向面136cは、車外Out側へ向けて下降傾斜されているので、内折れ窓70の閉じ動作が更に行われると、図7(c)に示すように、突出部112が第3対向面136cに沿って摺動され、掛金130が閉じ可能位置から持ち上げられる。
【0068】
突出部112が第3対向面136cの終端(第1対向面136aとの境界)に達すると、掛金130が上昇位置(突出部112によって掛金130が持ち上げられる範囲の中で最も鉛直方向上方となる位置)に配置される(図6(c)参照)。
【0069】
内折れ窓70の閉じ動作が更に行われ、図7(d)に示すように、内折れ窓70が全閉状態とされると、掛金130が自重により下降位置に配置され、突出部112が第1対向面136aに対向される。
【0070】
このように、全開状態にある内折れ窓70の閉じ動作をユーザーが行う際には、ユーザーは、掛金130を閉じ可能位置に操作すれば、その後は、内折れ窓70の閉じ動作のみを行えば良く、掛金130を別途操作することを不要とできる。即ち、掛金130を上昇位置まで持ち上げることを不要とできると共に、突出部112が第3対向面136cに当接された後は、掛金130(ハンドル部135)から一方の手を離して、内折れ窓70の閉じ動作のみを他方の手(又は両手)により行うことができる。これにより、閉じ動作の操作性を向上できる。
【0071】
次に、図8を参照して、第2実施形態における規制装置200について説明する。第1実施形態では、掛金130が案内部材150によりスライド変位可能に案内される場合を説明したが、第2実施形態における掛金230は、案内部材250により回転可能に軸支される。なお、上記第1実施形態で説明した構成と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
図8(a)は、第2実施形態における規制装置200の掛金230が取り付けられた窓枠30の内面30aの部分拡大図であり、図8(b)は、図8(a)のVIIIb-VIIIb線における窓枠30の部分拡大断面図である。なお、図8(a)では、全開状態および全閉状態における内折れ窓70がそれぞれ二点鎖線を用いて模式的に図示され、図8(b)では、全閉状態における内折れ窓70が二点鎖線を用いて模式的に図示される。
【0073】
図8に示すように、第2実施形態における規制装置200の掛金230は、第1実施形態における規制装置100の掛金130と同様に、窓枠30の内面30aに取り付けられ、内折れ窓70の開閉に伴う突出部112の軌跡に干渉する下降位置(図8(a)に示す状態)と内折れ窓70の開閉に伴う突出部112の軌跡に干渉しない上昇位置(図示せず)との間で変位(回転)可能とされると共に、上昇位置から下降位置に自重により回転(下降)可能とされる。
【0074】
掛金230は、基部231と、その基部231の一端側(図8(a)右側)から車室Rm側へ延設されるハンドル部235と、基部231の正面から突出される干渉部136とを備える。基部231及びハンドル部235は、1枚の板材から形成され、これら各部231,235が同一平面状に位置される。
【0075】
案内部材250は、円筒状の軸部と、その軸部の外周面から径方向外方にフランジ状に張り出す張出部とを備える。掛金230の基部231には、円形の孔が開口されており、その基部231の孔に挿通された案内部材250の軸部によって掛金230が回転可能に軸支される。また、張出部は、基部231の孔の内径よりも大径とされ、基部231(掛金230)の脱落が規制される。
【0076】
なお、案内部材250は、窓枠30の内面30aにリベットRVにより取り付けられる。また、この取り付け状態では、案内部材250の軸部が、支軸71と略平行な姿勢(鉄道車両1の長手方向(図2(a)左右方向)に軸方向を沿わせた姿勢)とされる。
【0077】
掛金230の回転中心(案内部材250により軸支される位置)は、基部231の他端側(ハンドル部235が接続される側と反対側、即ち、車外Out側)に偏心した位置であって、干渉部136よりも車外Out側となる位置に設定される。また、掛金230の回転中心は、干渉部136及びハンドル部235よりも鉛直方向上方となる位置に設定される。よって、基部231、干渉部136及びハンドル部235の重量を利用して、掛金230を、自重により下降位置へ向けて回転(下降)させやすくできると共に、下降位置に維持しやすくできる。なお、掛金230は、図示しないストッパとの当接により下降位置に維持される。
【0078】
干渉部136(各対向面136a~136c)と内折れ窓70の支軸71との位置関係は、第1実施形態の場合と同一とされる。即ち、第1対向面136aは、掛金230が下降位置にある状態において、全閉位置にある内折れ窓70の突出部112に対向し、第2対向面136bは、掛金230が下降位置にある状態において、全開位置にある内折れ窓70の突出部112に対向する。第3対向面136cは、掛金230が閉じ可能位置にある状態において、全開位置にある内折れ窓70の突出部112に対向する。
【0079】
第2実施形態における規制装置200によれば、全閉位置にある内折れ窓70の開き動作が行われると、突出部112が第1対向面136aに沿って摺動され、掛金230が下降位置から持ち上げられる(図8(a)において左回りに回転される)。内折れ窓70の開き動作が更に行われ、突出部112が第3対向面136cを通過されると、掛金230が自重により下降位置に配置され、全開状態とされた内折れ窓70の突出部112が第2対向面136bに対向される。
【0080】
よって、第2実施形態の規制装置200においても、全閉状態にある内折れ窓70をユーザーが開く際には、ユーザーは、内折れ窓70の開き動作のみを行えば良く、掛金230を別途操作する必要がない。よって、内折れ窓70の開き動作を簡易に行うことができる。
【0081】
内折れ窓70が全開状態にある状態では、突出部112が掛金230の第2対向面136bに対向されるので、トンネルへの進入に伴う負圧の作用により、意図しない内折れ窓70の閉じ動作が発生すると、突出部112が第2対向面136bに当接される。突出部112により第2対向面136bが押圧されても、掛金230を持ち上げる方向の力成分の発生が抑制される。よって、内折れ窓70が閉じることを規制できる。
【0082】
全開状態にある内折れ窓70の閉じ動作をユーザーが行う場合には、まず、掛金230を上昇位置に配置し、次いで、内折れ窓70の閉じ動作を行う。なお、掛金230は、ハンドル部235がユーザーにより持ち上げられ、図示しないストッパに当接される位置まで回転されることで、上昇位置(又は上昇位置よりも鉛直方向上方となる位置)に配置される。
【0083】
これにより、内折れ窓70が全閉状態とされる。また、ユーザーの手がハンドル部235から離されると、掛金230が自重により下降位置に配置され、突出部112が第1対向面136aに対向される。
【0084】
よって、第2実施形態の規制装置200においても、トンネルへの進入に伴う負圧が作用された際には、その負圧の作用の仕方に寄らず、内折れ窓70が閉じることを確実に規制できる。また、閉じ動作をユーザーが行う際には、一方の手で掛金230を上昇位置に操作した後は、内折れ窓70の閉じ動作のみを他方の手により行えば良く、閉じ動作の操作性を向上できる。
【0085】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0086】
上記各実施形態では、掛金130,230が自重により下降位置に変位される場合を説明したが、窓枠30と掛金130,230との間に弾性ばね(付勢手段)を弾性変形させた状態で介在させ、その弾性ばねの弾性回復力(付勢力)を、掛金130,230を下降位置に変位させる方向に付与するようにしても良い。自重に加え、弾性回復力も付与されることで、掛金130,230を、下降位置に変位させやすくできると共に、下降位置に維持しやすくできる。よって、鉄道車両1の走行中の振動で掛金130,230が下降位置から持ち上がることをより確実に抑制できる。
【0087】
弾性ばね(付勢手段)としては、例えば、コイルスプリング(圧縮ばね、引張ばね)、ねじりばね、板ばねが例示される。なお、付勢手段に代えて、或いは、付勢手段に加えて、磁石の吸着力を、掛金130,230を下降位置に変位させる方向に付与するようにしても良い。
【0088】
上記第1実施形態では、掛金130を閉じ可能位置に配置した上で内折れ窓70の閉じ動作を行う操作方法を説明したが、他の操作方法を採用しても良い。他の操作方法としては、掛金130を上昇位置(又は上昇位置よりも鉛直方向上方となる位置)に配置した上で内折れ窓70の閉じ動作を行う操作方法が例示される。
一方、上記第2実施形態では、掛金230を上昇位置に配置した上で内折れ窓70の閉じ動作を行う操作方法を説明したが、他の操作方法を採用しても良い。他の操作方法としては、掛金230を閉じ可能位置(全開位置にある内折れ窓70の突出部112が第3対向面136cに対向する位置)に配置した上で内折れ窓70の閉じ動作を行う操作方法が例示される。
上記各実施形態において、掛金130,230の干渉部136は、第1対向面136a及び第2対向面136bを備えていれば足り、第3対向面136cは省略されても良い。即ち、第1対向面136aの鉛直方向下方側と第2対向面136bの鉛直方向下方側とが接続され、干渉部136が正面視略V字形状に形成されても良い。
【0089】
上記各実施形態では、干渉部136の基部131,231への固定が溶接により行われる構成を説明したが、他の固定方法を採用しても良い。他の固定方法としては、接着剤による接着固定、ねじによる締結固定、リベットによるかしめ固定が例示される。なお、一の素材に切削加工を施して、基部131,231の正面に干渉部136を削り出しにより形成する方法を採用しても良い。
【0090】
上記第1実施形態では、掛金130の被案内部132における車外側面132bが鉛直方向に対して傾斜される構成を説明したが、これに代えて、又は、これに加えて、案内部材150(ねじ座151)の案内面151aが鉛直方向に対して傾斜される構成であっても良い。即ち、車外側面132bと案内面151aとの間の間隔が、鉛直方向下方から鉛直方向上方に向かうに従って広くされる構成であれば良い。
【0091】
上記第1実施形態において、掛金130は、干渉部136を保持するための部位(基部131の一部)、案内部材150に案内される部位(被案内部132)、掛金130を下降位置に維持するための部位(接続部134の一部)、ユーザーが操作するための部位(ハンドル部135)を備えていれば足り、案内部材150及び干渉部136よりも車外Out側となる部分(基部131の残部、立設部133、接続部134の残部)は省略されても良い。
【0092】
上記第2実施形態において、掛金230が閉じ可能位置に配置された際のハンドル部235の先端位置を示す目印を装飾パネル32に設けても良い。その目印に先端位置が一致するようにハンドル部235を持ち上げることで、掛金230を閉じ可能位置に配置できる。よって、ユーザーの操作性を向上できる。
【符号の説明】
【0093】
1 鉄道車両
30 窓枠
30a 内面
70 内折れ窓
70a 側面
100,200 規制装置
112 突出部(突出手段)
130,230 掛金(変位手段)
132 被案内部
132b 車外側面
135,235 ハンドル部
136a 第1対向面(第1対向部)
136b 第2対向面(第2対向部)
136c 第3対向面(第3対向部)
150,250 案内部材(案内手段)
151a 案内面
Rm 車室
Out 車外

【要約】
【課題】負圧が作用された際の閉じ動作を規制する機能の信頼性を確保しつつ、ユーザーが閉じ動作を行う際の操作性を向上できる規制装置を提供することを目的とする。
【解決手段】内折れ窓70の全開状態では、掛金130が自重により下降位置に配置され、突出部112が第2対向面136bに対向されているので、トンネルへの進入に伴う負圧の作用により内折れ窓70の閉じ動作が発生すると、突出部112と第2対向面136bとの当接により、内折れ窓70の閉じ動作を規制できる。即ち、動作速度に寄らずに閉じ動作を規制できるので、閉じ動作を規制する機能の信頼性を確保できる。閉じ動作をユーザーが行う場合には、内折れ窓70を緩やかに閉じることも急いで閉じることもできる。よって、閉じ動作の操作性を向上できる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8