(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】相補的補償を用いる増幅器線形化のための周辺機器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/32 20060101AFI20240913BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20240913BHJP
H03F 1/14 20060101ALN20240913BHJP
【FI】
H03F1/32
H03F3/24
H03F1/14
(21)【出願番号】P 2023512238
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 US2021046784
(87)【国際公開番号】W WO2022040478
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-04-10
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】317005044
【氏名又は名称】キョウセラ インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェ,ジン-フー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジェームズ ジュン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ユー-ミン
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0349721(US,A1)
【文献】特開平07-183741(JP,A)
【文献】再公表特許第2006/126436(JP,A1)
【文献】特開2000-209044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0106337(US,A1)
【文献】中国実用新案第206759397(CN,U)
【文献】特表2017-521013(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0206062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅器(Power Amplifier:PA)であって、
入力信号を受信する入力ノードと、
増幅された出力信号を生成する出力ノードと、
MN1ゲートが前記入力ノードに結合され、MN1ドレインが前記出力ノードに結合されたMN1
の相補型差動NMOSトランジスタおよび
MN2ゲートが前記入力ノードに結合され、MN2ドレインが前記出力ノードに結合されたMN2の相補型差動NMOSトランジスタと
を含み、前記
相補型差動NMOSトランジスタのペアがコンデンサCgs,nを有する、MN1およびMN2の相補型差動NMOSトランジスタのペアと、
MP1ゲートが前記MN1ゲートおよびMP2ドレインに結合され、MP1ソースが電源に結合されたMP1のクロスカップルPMOSトランジスタと、MP2のゲートが前記MN2ゲートおよびMP1ドレインに結合され、、MP2ソースが電源に結合されたたMP2のクロスカップルPMOSトランジスタとを含み、前記クロスカップルPMOSトランジスタのペアが前記電力増幅器の線形性を改善するためのコンデンサCgs,pを有
し、リニアライザである、MP1およびMP2のクロスカップルPMOSトランジスタのペアと、
を備え
、
コンデンサCgs,pは、コンデンサCgs,n及びゲートを基準としたソースの電圧Vgsがともに上昇した場合、ゲートを基準としたソースの電圧Vgsの上昇に対して減少する、PA。
【請求項2】
前記電力増幅器の容量変化を低減することによって、前記電力増幅器の前記線形性を改善する、請求項1に記載のPA。
【請求項3】
前記電力増幅器が、Cgs=Cgs,n+Cgs,pの等価容量を有するコンデンサを有し、Cgsの前記容量変化がCgs,nに比べて低減される、請求項2に記載のPA。
【請求項4】
前記電力増幅器の信号振幅による入力インピーダンスの変化を低減することによって、前記電力増幅器の前記線形性を改善する、請求項1に記載のPA。
【請求項5】
前記PMOSトランジスタのペアのサイズが、Cgs,nの容量変化を補償するように選択される、請求項1に記載のPA。
【請求項6】
電力増幅器(Power Amplifier:PA)によって実行される方法であって、
前記電力増幅器の入力ノードから入力信号を受信することと、
MN1ゲートが前記入力ノードに結合され、MN1ドレインが前記出力ノードに結合されたMN1
の相補型差動NMOSトランジスタおよび
MN2ゲートが前記入力ノードに結合され、MN2ドレインが前記出力ノードに結合されたMN2の相補型差動NMOSトランジスタと
を含み、、前記
相補型差動NMOSトランジスタのペアがコンデンサCgs,nを有する、ことと、
MP1およびMP2のクロスカップルPMOSトランジスタのペアを使用して前記PAの非線形性を補償することであって、
MP1ゲートが前記MN1ゲートおよびMP2ドレインに結合され、MP1ソースが電源に結合されたMP1のクロスカップルPMOSトランジスタと、MP2のゲートが前記MN2ゲートおよびMP1ドレインに結合され、、MP2ソースが電源に結合されたたMP2のクロスカップルPMOSトランジスタとを含み、前記
クロスカップルPMOSトランジスタのペアが前記電力増幅器の線形性を改善するためのコンデンサCgs,pを有
し、リニアライザである、ことと、
前記電力増幅器の前記出力ノードへの出力信号を生成することと、
を含み、
コンデンサCgs,pは、コンデンサCgs,n及びゲートを基準としたソースの電圧Vgsがともに上昇した場合、ゲートを基準としたソースの電圧Vgsの上昇に対して減少する、方法。
【請求項7】
前記電力増幅器の容量変化を低減することによって、前記電力増幅器の前記線形性を改善する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電力増幅器が、Cgs=Cgs,n+Cgs,pの等価容量を有するコンデンサを有し、Cgsの前記容量変化がCgs,nに比べて低減される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電力増幅器の信号振幅による入力インピーダンスの変化を低減することによって、前記電力増幅器の前記線形性を改善する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記PMOSトランジスタのペアのサイズが、Cgs,nの容量変化を補償するように選択される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、米国特許法第119条の下で、2020年8月19日に出願された「Peripheral for Amplifier Linearization with Complimentary Compensation」と題する米国特許仮出願第63/067,519号に基づく優先権を主張するものであり、その主題は参照により本明細書に援用される。
【0002】
開示された実施形態は、一般に電力増幅器に関し、より詳細には、相補的補償を使用する無線周波数(Radio Frequency:RF)増幅器線形化のための周辺設計に関する。
【背景技術】
【0003】
移動通信システムの基本構成要素は、電力増幅器(Power Amplifier:PA)である。電力増幅器は、移動通信システムに不可欠な構成要素であり、本質的に非線形である。非線形性を低減するために、電力増幅器は、動作曲線の線形部分内で動作するようにバックオフさせることができる。その線形性を損なうことなく電力増幅器の効率を改善するには、電力増幅器の線形性が不可欠である。移動通信システムにおける線形性および電力効率の改善のために、電力増幅器の様々な線形化技術が使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1(先行技術)は、低バイアス条件でバイアスされたNMOS電力増幅器PA100を示す。優れた効率および高出力を実現するために、電力増幅器は通常、低バイアス条件、いわゆるAB級またはB級でバイアスされる。しかし、この種のバイアス条件は、特に高出力時に非線形な容量変化をもたらす。Cgsの非線形容量が主に、AB級電力増幅器の性能を制限している。AB級は通常、高効率のためにB級に近い、深いAB級でバイアスされる。しかし、
図1に示すように、Cgsの変化は、高出力時に大きな振幅を有する。Cgsの非線形容量が、入力大信号を歪ませる。
【0005】
図2(先行技術)は、PA200の線形化を達成するためにPMOSトランジスタと組み合わせたNMOS電力増幅器200を示す。
図1に示すように、このコンセプトは、PMOSトランジスタMPを使用してCgsの変化を補償することである。全体のCgsは、NMOS PAトランジスタの容量Cgs,nと、PMOSトランジスタの容量Cgs,pの和である(例えば、Cgs=Cgs,n+Cgs,p)。
理想的な場合、結果のCgsは一定であり、例えば、完全な線形性を達成する。PMOSリニアライザは、NMOSのCgsの変化を補償することしかできず、余分な寄生容量によって利得が損なわれる。Cgsの変化における変化低減によって、PAのAM-PM歪みを低減することができるが、線形化された電力範囲は小さい。
【0006】
より広い線形化された電力範囲を有する電力増幅器線形化技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
より広い線形化された電力範囲を有する電力増幅器(PA)線形化技術を提案する。クロスカップルPMOSおよびNMOS構成を用いた2つのタイプのリニアライザを提案する。このアイデアは、PAコアデバイスと比較して相補的なデバイスを使用し、リニアライザのCgsの挙動もまた、PA自体と相補的であるというものである。言い換えれば、リニアライザを用いたPA全体のCgsは、非線形波形を引き起こすことなく一定となる。どちらのリニアライザも、AMAMだけでなくAMPMも効果的に補償することができる。第1のタイプのリニアライザは、PAコアと一体化することができ、第2のタイプのリニアライザは、IMNに使用することができる。どちらのリニアライザも、異なるコーナーにおいて効果的なIM3低減を有する。
【0008】
一実施形態では、PAは、電力増幅器の入力ノードから入力信号を受信する。PAは、MN1およびMN2の相補型差動NMOSトランジスタのペアによって入力信号を増幅し、MN1ゲートおよびMN2ゲートは、入力ノードに結合され、MN1ドレインおよびMN2ドレインは、出力ノードに結合される。差動トランジスタのペアは、コンデンサCgs,nを有する。PAは、MP1およびMP2のクロスカップルPMOSトランジスタのペアを使用して非線形性を補償し、MP1のゲートは、MN1のゲートおよびMP2のドレインに結合され、MP2のゲートは、MN2のゲートおよびMP1のドレインに結合される。PMOSトランジスタのペアは、電力増幅器の線形性を改善するためのコンデンサCgs,pを有する。PAは、電力増幅器の出力ノードへの出力信号を生成する。一実施形態では、PMOSトランジスタのペアのサイズは、Cgs,nの容量変化を補償し、電力増幅器の線形性を改善するように選択される。
【0009】
別の実施形態では、線形化されたPAは、入力ノードから入力無線周波数(RF)信号を受信する。線形化されたPAは、出力ノードへの1つ以上の電力増幅器による入力RF信号を増幅する。線形化されたPAは、MN1およびMN2のクロスカップルNMOSトランジスタのペアを使用して1つ以上の電力増幅器の非線形性を補償し、MN1のゲートは、MN2のドレインに結合され、MN2のゲートは、MN1のドレインに結合される。
NMOSトランジスタのペアをトランスと組み合わせ、トランスを入力ノードおよび1つ以上の電力増幅器に直列に結合して、線形化されたPAの線形性を改善する。最後に、線形化されたリニアライザPAは、線形化されたPAの出力ノードへの出力RF信号を生成する。一実施形態では、線形化されたPAの入力インピーダンスの変化を低減することによって、線形化されたPAの線形性を改善する。
【0010】
他の実施形態および利点は、以下の詳細な説明で述べる。この発明の概要は、本発明を定義することを意味するものではない。本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、(先行技術)低バイアス条件でバイアスされたNMOS電力増幅器PAを示す。
【
図2】
図2は、(先行技術)NMOS電力増幅器PAのCgsの変化を補償するためにPMOSリニアライザを使用したNMOS PAを示す。
【
図3】
図3は、1つの新規な態様による、相互コンダクタンスGmリニアライザおよびクロスカップル構成を用いたCMOS差動電力増幅器の第1の実施形態を示す。
【
図4A】
図4Aは、PMOSリニアライザのないNMOS電力増幅器自体の入力インピーダンスおよび位相変化を示す。
【
図4B】
図4Bは、クロスカップルPMOSトランジスタのペアの入力インピーダンスおよび位相変化を示す。
【
図5】
図5は、1つの新規な態様による、PMOSリニアライザを用いたCMOS電力増幅器の、入力インピーダンスならびに位相変化対Vgおよび位相変化対Pinを示す。
【
図6】
図6は、1つの新規な態様による、クロスカップルNMOSトランジスタのペアをトランスと組み合わせて信号経路に直列に配置した、線形化された電力増幅器の第2の実施形態を示す。
【
図7】
図7は、1つの新規な態様による、トランスと組み合わせたクロスカップルNMOSトランジスタペアの入力インピーダンスの変化を示す。
【
図8】
図8は、新規な態様による、より広い線形化された電力範囲を有する電力増幅器線形化の方法のフローチャートである。
【
図9】
図9は、新規な態様による、より広い線形化された電力範囲を有する電力増幅器線形化の別の方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明し、その例を添付の図面に示す。
【0013】
図3は、1つの新規な態様による、相互コンダクタンスGmリニアライザおよびクロスカップル構成を用いたCMOS差動電力増幅器PA300の第1の実施形態を示す。NMOSは、n型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:MOSFET)である。NMOSトランジスタは、n型のソースおよびドレイン、ならびにp型基板から構成されている。電圧がゲートに印加されると、ボディ(p型基板)内の正孔がゲートから離れるように駆動される。これにより、ソースとドレイン間のn型チャネルの形成が可能になり、誘起されたn型チャネルを介してソースからドレインに電子が流れ、電流が流れる。PMOSは、p型MOSFETである。PMOSトランジスタは、p型のソースおよびドレイン、ならびにn型基板から構成されている。ソースとゲート間に正の電圧を印加すると(ゲートとソース間は負の電圧)、ソースとドレイン間に逆極性を有するp型チャネルが形成される。電流は、p型誘起チャネルを介して、ソースからドレインまで、正孔を通過する。CMOS技術は、NMOSとPMOSの組み合わせである。
【0014】
電力増幅器PA300は、MN1とMN2の相補型差動NMOSトランジスタのペアで構成される。CMOSトランジスタの電流-電圧(I-V)特性曲線が非線形であるため、電力増幅器は本質的に非線形である。非線形性は、入力-出力間の望ましくない歪みを引き起こす。AM-AM歪みは、電源電圧とRF出力電圧のエンベロープとの差である。AM-PM歪みは、電源電圧の変調による、RF出力キャリアの不要な位相変調である。その線形性を損なうことなく電力増幅器の効率を改善するには、電力増幅器の線形性が不可欠である。
【0015】
1つの新規な態様による、広帯域の増幅器線形化技術が提案され、これは、より多くの電力消費を消耗することなく線形出力電力範囲を拡張するために線形化を達成する新規な相互コンダクタンスGmリニアライザを採用する。
図3によって示された第1の実施形態では、PA300は、MN1とMN2の相補型差動NMOSトランジスタのペア、およびMP1とMP2のクロスカップルPMOSトランジスタのペアで構成される。MP1のゲートは、MN1のゲートおよびMP2のドレインに結合され、MP2のゲートは、MN2のゲートおよびMP1のドレインに結合される。差動NMOSトランジスタのペアMN1とMN2は、寄生コンデンサCgs,nを有し、クロスカップルPMOSトランジスタのペアMP1とMP2は、寄生コンデンサCgs,pを有し、寄生コンデンサCgs,pを使用して、CMOS差動PA300の全体のCgs線形性を改善することができる。
【0016】
図3は、さらに、CMOS電力増幅器PA300のCgsの変化を補償するためにPMOSリニアライザを使用した、CMOS PA300のCgs-Vgs曲線を示す。一般に、PMOSトランジスタは相補的な非線形容量変化を有し、これを使用してNMOSトランジスタのCgsの容量変化を補償することができる。
図3に示すように、差動NMOSトランジスタペア(MN1とMN2)の寄生コンデンサCgs,nの容量がVgsとともに増加する一方で、クロスカップルPMOSトランジスタのペア(MP1とMP2)の寄生コンデンサCgs,pの容量は、Vgsとともに減少する。一例として、MP1とMP2のPMOSサイズを適切に選択することで、相補的な容量変化を有することができる。別の例では、Vppは、Vth、n-Vth、p、PMOSとNMOSのサイズ比によって決定することができる。その結果、CMOS PA300の全体の容量Cgsは、NMOS PAトランジスタの容量Cgs,nとPMOSトランジスタの容量Cgs,pの和となる(例えば、Cgs=Cgs,n+Cgs,p)。理想的な場合、結果のCgsは一定であり、例えば、CMOS PA300では完全な線形性を達成する。
【0017】
図4Aは、PMOSリニアライザのないNMOS電力増幅器410自体の入力インピーダンスおよび位相変化を示す。
図4Aは、無線周波数28.5GHzにおける、入力インピーダンスZin、ならびに位相変化対バイアス電圧Vgおよび位相変化対入力電力Pinを示し、これは、1)VgをスイープしてPinによって駆動されるダイナミックバイアスをモデル化し、2)RF信号でPAを駆動してAM/PMを実現する。位相変化対-35dBから10dBまでの28.5GHz Pinである。
【0018】
図4Bは、クロスカップルPMOSトランジスタのペア420の入力インピーダンスおよび位相変化を示す。
図4Bは、無線周波数28.5GHzにおける、入力インピーダンスZin、ならびに位相変化対バイアス電圧Vgおよび位相変化対入力電力Pinを示し、これは、1)VgをスイープしてPinによって駆動されるダイナミックバイアスをモデル化し、2)RF信号でPAを駆動してAM/PMを実現する。位相変化対-35dBから10dBまでの28.5GHz Pinである。
【0019】
図5は、1つの新規な態様による、PMOSリニアライザを用いたCMOS電力増幅器500の、入力インピーダンスならびに位相変化対Vgおよび位相変化対Pinを示す。このアイデアは、PAのコアデバイス(差動NMOSトランジスタペア)と比較して相補的なデバイス(リニアライザとしてのクロスカップルPMOSトランジスタのペア)を使用し、リニアライザの挙動もまたCMOS PA自体と相補的であるというものである。言い換えれば、リニアライザを用いたCMOS PA全体のCgsは、非線形波形を引き起こすことなく一定となる。
図5は、無線周波数28.5GHzにおける、入力インピーダンスZin、ならびに位相変化対バイアス電圧Vgおよび位相変化対入力電力Pinを示し、1)VgをスイープしてPinによって駆動されるダイナミックバイアスをモデル化し、2)RF信号でPAを駆動してAM/PMを実現する。
図5に示すように、-35dBから10dBまでの広い電源範囲にわたって入力インピーダンスの変化が大幅に低減され、AM-PM歪みも5度以上から1度未満に緩和された。
【0020】
図6は、1つの新規な態様による、クロスカップルNMOSトランジスタのペア610をトランスカプラ620と組み合わせて電力増幅器(複数可)630の信号経路に直列に配置した、線形化された電力増幅器600の第2の実施形態を示す。
図6は、Pinが低いときにクロスカップルNMOSトランジスタのペア610が高インピーダンスを有し、振幅が大きくなりPinが増加するつれ、クロスカップリングNMOSトランジスタのペア610の入力インピーダンスが小さくなることを示す。信号経路と直列のトランスカプラの1次コイルに見られるインピーダンスの変化および位相変化は、PA630のAM-AMおよびAM-PMの歪み現象を補償する可能性を示している。その結果、PA600の全体のインピーダンスおよび位相変化が低減される。一実施形態では、NMOSトランジスタおよびトランスカプラのサイズを適切に選択することによって、PA600の線形化を達成することができる。一実施形態では、クロスカップルNMOSトランジスタのペアおよびトランスカプラは、入力インピーダンス整合を実現するための入力整合ネットワーク(Input Matching Network:IMN)の一部に属する。さらに、PA630の出力は出力整合ネットワーク(Output Matching Network:OMN)に結合され、出力インピーダンスの整合を実現する。
【0021】
図7は、1つの新規な態様による、トランス720と組み合わせたクロスカップルNMOS710の入力インピーダンスの変化を示す。
【数1】
【数2】
中程度に高いPinの場合、第2のコイルL2は開放されていない。
【数3】
【0022】
要約すると、クロスカップルNMOSおよびPMOSのトランジスタペアを用いた2種類のPAリニアライザを提案する。どちらのリニアライザも、AMAMだけでなくAMPMも効果的に補償することができる。
図3に示す実施形態1(クロスカップリングPMOSトランジスタのペアを使用したリニアライザ)は、PAコアと一体化することができる。
図6に示す実施形態2(トランスを組み合わせたクロスカップルNMOSトランジスタのペアを使用したリニアライザ)は、入力整合ネットワーク(IMN)に使用することができる。どちらのリニアライザも、異なるコーナーでIM3低減の効果を有する。リニアライザの同じ制御バイアスで、温度による影響を受けずに、スイートスポットを提供する。
【0023】
図8は、新規な態様による、より広い線形化された電力範囲を有する電力増幅器線形化の方法のフローチャートである。ステップ801では、PAは、電力増幅器の入力ノードから入力信号を受信する。ステップ802では、PAは、MN1およびMN2の相補型差動NMOSトランジスタのペアによって入力信号を増幅し、MN1ゲートおよびMN2ゲートは、入力ノードに結合され、MN1ドレインおよびMN2ドレインは、出力ノードに結合される。差動トランジスタのペアは、コンデンサCgs,nを有する。ステップ803では、PAは、MP1およびMP2のクロスカップルPMOSトランジスタのペアを使用して非線形性を補償し、MP1のゲートは、MN1のゲートおよびMP2のドレインに結合され、MP2のゲートは、MN2のゲートおよびMN1のドレインに結合される。PMOSトランジスタのペアは、電力増幅器の線形性を改善するためのコンデンサCgs,pを有する。ステップ804では、PAは、電力増幅器の出力ノードへの出力信号を生成する。一実施形態では、PMOSトランジスタのペアのサイズは、Cgs,nの容量変化を補償し、線形性を改善するように選択される。
【0024】
図9は、新規な態様による、より広い線形化された電力範囲を有する電力増幅器線形化の別の方法のフローチャートである。ステップ901では、線形化されたPAは、入力ノードから入力無線周波数(RF)信号を受信する。ステップ902では,PAは、出力ノードへの1つ以上の電力増幅器による入力RF信号を増幅する。ステップ903では、PAは、MN1およびMN2のクロスカップルNMOSトランジスタのペアを使用して1つ以上の電力増幅器の非線形性を補償し、MN1のゲートは、MN2のドレインに結合され、MN2のゲートは、MN1のドレインに結合される。NMOSトランジスタのペアをトランスと組み合わせ、トランスを入力ノードおよび1つ以上の電力増幅器に直列に結合して、線形化されたPAの線形性を改善する。ステップ904では、PAは、線形化されたPAの出力ノードへの出力RF信号を生成する。一実施形態では、入力インピーダンスの変化を低減することによって、線形化されたPAの線形性を改善する。
【0025】
本発明は、説明目的のために特定の具体的な実施形態に関連して説明されてきたが、本発明はこれに限定されるものではない。したがって、記載された実施形態の様々な特徴の様々な修正、適応、および組み合わせは、特許請求の範囲に明記した本発明の範囲から逸脱することなく実施することができる。