(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ポリエステル製造用の新規触媒物質、それを用いてポリエステルを製造する方法、およびそれを用いて製造されたポリエステル
(51)【国際特許分類】
C08G 63/12 20060101AFI20240913BHJP
C08G 63/85 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C08G63/12
C08G63/85
(21)【出願番号】P 2023516568
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 KR2021012442
(87)【国際公開番号】W WO2022060043
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】10-2020-0119294
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0120593
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ホ ソブ
(72)【発明者】
【氏名】ノ,キョン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ヨン ソン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,チュン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク,キ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ノ ウ
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-234428(JP,A)
【文献】米国特許第05714570(US,A)
【文献】特表2019-530787(JP,A)
【文献】特開2015-160871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-64/42
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを製造するための触媒であって、
前記触媒は下記化学式1~化学式3のいずれか一つの構造を含
み、
前記触媒は、下記化学式4または化学式5で表される構造を含むジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体を重合させてポリエステルを生成する、ポリエステル製造用触媒。
[化学式1]
[化学式2]
[化学式3]
[化学式4]
[化学式5]
【請求項2】
前記触媒は、25℃で測定した比重(specific gravity)が0.94~0.99である、請求項1に記載のポリエステル製造用触媒。
【請求項3】
ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体を、触媒の存在下にアルキレン提供原料とエステル化反応
させてエステル生成物を生成した後に、縮重合反応してポリエステルを製造する方法であって、
前記触媒は請求項1または2のいずれか一項に記載のポリエステル製造用触媒であり、
前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体は、下記化学式4または化学式5で表される構造を含む、ポリエステルの製造方法。
[化学式4]
[化学式5]
【請求項4】
前記アルキレン提供原料は、脂肪族ジオールまたは芳香族ジオールである、請求項
3に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項5】
前記アルキレン提供原料は、前記化学式4または化学式5で表されるジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体1モルを基準として1.2~3.6のモル比で使用する、請求項
3に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項6】
前記エステル化反応は、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ
環化合物と前記アルキレン提供原料を窒素雰囲気下に150~240℃および1~6bar圧力条件下で処理して前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体のエステル生成物を得る、請求項
3に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項7】
前記縮重合反応は、前記エステル生成物を減圧条件下に230~285℃で縮重合する、請求項
3に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項8】
前記触媒の使用量は5ppm超過~300ppm未満である、請求項
3に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項9】
ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体とアルキレン提供原料のエステル結合を含む繰り返し単位を含み、
25℃で測定した固有粘度と35℃で測定した固有粘度の差(ΔIV)が0.06以上であり、
Lab色差計でb値が12以下であり、
前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体は下記化学式4または化学式5で表される構造を含む、ポリエステル。
[化学式4]
[化学式5]
【請求項10】
前記アルキレン提供原料は脂肪族ジオールまたは芳香族ジオールである、請求項
9に記載のポリエステル。
【請求項11】
前記25℃で測定した固有粘度は0.5以上であり、
前記35℃で測定した固有粘度は0.43以上である、請求項
9に記載のポリエステル。
【請求項12】
前記ポリエステル2gをHexafluoroisopropanol(HFIP)20mlに溶かした後(0.1g/ml in HFIP)測定した溶液状態のLab色差計でb値が7.12未満である、請求項
9に記載のポリエステル。
【請求項13】
下記数式1の値が0.5以上である、請求項
9に記載のポリエステル。
<数式1>
(前記数式1において、ΔIVは35℃および25℃それぞれで測定された固有粘度値の差異値であり、b値はLab色差計でのb値である。)
【請求項14】
下記数式2の値が0.4以上である、請求項
9に記載のポリエステル。
<数式2>
(前記数式2において、ΔIVは、35℃および25℃のそれぞれで測定された固有粘度値の差の値であり、b値はLab色差計でのb値であり、Tgはガラス転移温度である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体からポリエステルを製造するために使用される新規触媒物質、それを用いてポリエステルを製造する方法、およびそれを用いて製造されたポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
温室ガスの削減のために、米国、欧州などの先進国では、二酸化炭素排出の規制を強化しつつある。したがって、既存の化石原料資源への依存度を低下させ、温室ガスを低減できるバイオ化学産業に対する需要が増加している。すなわち、化学産業が石油依存からバイオ依存に変化している。
【0003】
一例として、飲料ボトルや食品保管容器として主に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)を、バイオベースのポリエステルに置き代える技術研究が活発に進められている。
【0004】
ポリエステルの製造において、単量体として有用なジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体は、通常、5-ヒドロキシメチルフルフラールを酸化させて製造される誘導体であって、代表的な例として2,5-フランジカルボン酸が挙げられる。参考までに、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)は、糖から得られるので、自然で広範囲に利用可能な原料の誘導体である。
【0005】
前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体を、ジオール類とのエステル化反応、およびこれにより得られたオリゴマーの縮重合反応により、ポリエステルを製造する技術が開発されている。
【0006】
前記エステル化反応は、常圧または加圧の条件で、不活性ガス雰囲気下にて起こる、二塩基酸のカルボキシル基とグリコールのOH基との間の結合反応であって、副産物として水が生成される(式1)。
【0007】
【0008】
前記反応は、生成された水を流出水で除去することによって促進され、流出水が発生しないと当該エステル化反応が終了したと類推することができる。必要に応じて重合触媒を添加することによっても反応が加速される。
【0009】
また、前記縮重合反応は、減圧環境下に前述したエステル化反応により得られたオリゴマーのうちの、片方のオリゴマーの末端グリコールが抜け、他の片方のオリゴマーの末端グリコールとの結合を起こす。副産物としてはグリコールが生成され(式2)、これを流出させて除去することによって、反応が促進されて重合度が増大する。
【0010】
【0011】
前記縮重合工程では、炭素原子間の二重結合の生成に起因して着色が発生し得る(式3)。ポリエステルの着色は、ボトル、フィルム、繊維などに加工した時の美観を損なう原因になる。また、衣類を染める際に、適切な発色が困難になる場合がある。
【0012】
【0013】
ポリマーが着色されると、ボトル、フィルム、繊維などに加工した時の美観を損なう原因になるという問題がある。そのため、着色(以下、熱変色ともいう)を解消するために、熱安定剤といった添加剤を、縮重合工程の途中の適切な時点に投入する技術が提案されているが、熱変色と分子量というトレードオフ関係にある物性をすべて満たす技術は、いまだ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、各種成形加工に耐えることができる分子量を有して、製造の途中にポリエステルの着色を抑制できるポリエステル製造用触媒、それを用いたポリエステルの製造方法、およびそれを用いて製造されたポリエステルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1側面によれば、ポリエステルを製造するための触媒であって、前記触媒は式CaHbOcPdTie(aが30~120の整数、bが50~250の整数、cが5~30の整数、dが0~4の整数、eが1~2の整数、c/e≧5である)で表される構造を含むポリエステル製造用触媒を提供する。
【0017】
この時、前記式CaHbOcPdTieにおいて、aが44~100の整数であり、bが98~194の整数であり、cが8~18の整数であり、dが2~4の整数であり、eが1~2の整数であり、8≦c/e≦18であり得る。
【0018】
前記触媒は、-Ti-O-P-結合、-Ti-P-O-結合および-Ti-O-結合の少なくとも一つを含むものであり得る。
【0019】
また、前記触媒は下記化学式1~化学式3で表される構造を含むものであり得る。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
また、前記触媒は、25℃で測定した比重(specific gravity)が0.94~0.99であり得る。
【0024】
また、前記触媒は、下記化学式4または化学式5で表される構造を含むジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体を重合させて、ポリエステルを生成するものであり得る。
【0025】
【0026】
【0027】
本発明の第2側面によれば、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体を、触媒の存在下に、アルキレン提供原料とエステル反応させた後、縮重合反応してポリエステルを製造する方法であって、前記触媒は前述したポリエステル製造用触媒であり、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体は、下記化学式4または化学式5で表される構造を含むポリエステルの製造方法を提供する。
【0028】
【0029】
【0030】
ここで、前記アルキレン提供原料は、脂肪族ジオールまたは芳香族ジオールであり得る。
【0031】
また、前記アルキレン提供原料は、前記化学式4または化学式5で表されるジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体1モルを基準として、1.2~3.6のモル比で使用することができる。
【0032】
前記エステル化反応は、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ化合物と前記アルキレン提供原料とを、窒素雰囲気下に150~240℃および1~6bar圧力条件下で処理して、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体のエステル生成物を得ることであり得る。
【0033】
前記縮重合反応は、前記エステル生成物を減圧条件下に230~285℃で縮重合処理することであり得る。
【0034】
前記触媒の使用量は5ppm超過~300ppm未満であり得る。
【0035】
本発明の第3側面によれば、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体とアルキレン提供原料のエステル結合を含む繰り返し単位を含み、25℃で測定した固有粘度と、35℃で測定した固有粘度との差(ΔIV)が0.06以上であり、Lab色差計でのb値が12以下であり、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体は、下記化学式4または化学式5で表される構造を含むポリエステルを提供する。
【0036】
【0037】
【0038】
この時、前記アルキレン提供原料は、脂肪族ジオールまたは芳香族ジオールであり得る。
【0039】
前記ポリエステルは、前記25℃で測定した固有粘度が0.5以上であり、前記35℃で測定した固有粘度が0.43以上であり得る。
【0040】
前記ポリエステル2gをヘキサフルオロイソプロパノール(Hexafluoroisopropanol;HFIP)20mlに溶かした後(0.1g/ml in HFIP)、測定した溶液状態のLab色差計でのb値が7.12未満であり得る。
【0041】
前記ポリエステルは、下記数式1の値が0.5以上であり得る。
【0042】
【0043】
(前記数式1において、ΔIVは35℃および25℃のそれぞれで測定された固有粘度値についての差の値であり、b値はLab色差計でのb値である。)
【0044】
前記ポリエステルは、下記数式2の値が0.4以上であり得る。
【0045】
【0046】
(前記数式2において、ΔIVは35℃および25℃のそれぞれで測定された固有粘度値についての差の値であり、b値はLab色差計でのb値であり、Tgはガラス転移温度である。)
【発明の効果】
【0047】
本発明の一側面によるポリエステル製造用触媒は、熱安定剤または酸化防止剤を投入せずとも、ポリエステルにて、熱変色と分子量のトレードオフ関係にある物性を提供するという効果がある。
【0048】
本発明の他の側面によるポリエステルは、環境内に存在する微生物によって自然分解できる点で、環境にやさしいだけでなく、従来より使用していたPETの代わりとするのに適するという効果がある。
【0049】
ひいては、本発明のさらに他の側面によるポリエステルの製造方法は、別途のPEF製造のための反応器を必要とせず、従来のPET製造に使用されていた反応器をそのまま使用できるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体を原料物質として、ポリエステルの製造方法およびそれに使用される触媒について詳細に説明する。
【0051】
明細書全体で、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0052】
<本発明の第1側面>
本発明の第1側面は、ポリエステルを製造するための触媒であって、式CaHbOcPdTie(aが30~120の整数、bが50~250の整数、cが5~30の整数、dが0~4の整数、eが1~2の整数であり、c/e≧5である)で表される構造を含むポリエステル製造用触媒である。
【0053】
ここで、aは44~100の整数であり得る。
【0054】
また、bは98~194の整数であり得る。
【0055】
また、cは8~18の整数であり得る。
【0056】
また、dは2~4の整数であり得る。
【0057】
また、8≦c/e≦18であり得る。
【0058】
一例として、前述したa、b、c、d、e、c/eの条件を満たし、かつ-Ti-O-P-結合を含む触媒、-Ti-P-O-結合を含む触媒、または-Ti-O-結合を含む触媒を使用することができる。
【0059】
具体的な例として、前述したa、b、c、d、e、c/eの条件を満たし、かつ-Ti-O-P-結合を含む触媒、または-Ti-P-O-結合を含む触媒を使用することによって、熱変色と分子量とのトレードオフ関係を解消できるためより好ましい。
【0060】
前記触媒は、下記化学式1~化学式3で表される構造を含むこともできるが、これに限定するものではない。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
本発明の実施形態によれば、前記触媒は25℃で測定した比重(specific gravity)が0.94~0.99、または0.94~0.97の範囲内であり得、前記範囲内で重合反応内の最適化された比重を提供することができ、熱変色と分子量とのトレードオフ関係を解消する側面からより好ましい。
【0065】
触媒の使用量は特に限定するものではないが、一例として5ppm超過~300ppm未満の含有量の範囲で使用することができる。
【0066】
また、前記触媒は、下記化学式4または化学式5で表される構造を含む、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体を重合させて、ポリエステルを生成するものであり得る:
【0067】
【0068】
【0069】
<本発明の第2側面>
ポリエステルの製造方法は、前述したジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体原料を、ポリエステル製造用触媒の存在下に、アルキレン提供原料とエステル化反応させてオリゴマーを得た後に、オリゴマー同士の間の縮重合によりポリエステルを製造する。
【0070】
本発明の原料物質は、前述した通り、前記化学式4または化学式5で表される構造を含む、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体であり得る。
【0071】
【0072】
【0073】
前記アルキレン提供原料は、脂肪族ジオールまたは芳香族ジオールであり得るのであり、具体的な例として、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオールなどが挙げられ、これに限定するものではない。
【0074】
前記アルキレン提供原料は、前記化学式4または化学式5で表される、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体1モルを基準として1.2~3.6のモル比、または1.2~2.4のモル比で使用することが、高い分子量および低いb値のポリエステルを製造できるため好ましい。
【0075】
また、ポリエステルの製造方法には必要に応じて、多様な共重合成分を含むことができる。一例として、イソソルビド、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、グリセリンなどが挙げられ、これに限定するものではない。
【0076】
本発明の実施形態によれば、前記エステル化反応は、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ化合物と、前記アルキレン原料物質とを窒素雰囲気下に処理して、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体のエステル生成物を得る段階である。
【0077】
この際、反応温度は150~240℃範囲内であり得るのであり、反応圧力は1bar~6barであり得、反応は1hr~6hrの間行うことができる。
【0078】
前述した温度および圧力条件で、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体に対するエステル化の工程を十分に行うことができるため好ましい。
【0079】
また、前記縮重合段階は、前記反応段階の収得物を減圧条件および厳しい温度条件の下で収得し、縮重合物としてポリエステルを製造する段階である。
【0080】
ここで減圧条件とは、別に特定しない限り、真空条件を指す。
【0081】
また、前記縮重合反応の温度条件は、生成されたオリゴマー同士の間のグリコール分離-グリコール結合を、十分に繰り返すことができる温度範囲であれば限定されず、一例として230~285℃の条件下で行うことができる。
【0082】
前記縮重合反応は1~24hrの間行うことができる。
【0083】
特に、本発明では、オリゴマーの生成時に使用した触媒内に-Ti-P-O-結合または-Ti-O-P-結合を含んでいて、縮重合反応の厳しい高温条件下で、反応時間を短縮しても、分子量を増大させて熱変色に対する安定性を有するポリエステルを製造することができる。
【0084】
<本発明の第3側面>
本発明の第3側面は、第1側面によるポリエステル製造用触媒を使用して第2側面による製造方法により製造されたポリエステルである。
【0085】
前記ポリエステルは、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体から由来した繰り返し単位を含み、具体的にはジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体と、アルキレン提供原料とのエステル結合を含む繰り返し単位を含むことができる。
【0086】
前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体は、下記化学式4または化学式5で表される構造を含むことができる。
【0087】
【0088】
【0089】
前記アルキレン提供原料は、脂肪族ジオールまたは芳香族ジオールであり得るのであり、具体的な例として、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオールなどが挙げられるのであるが、これに限定するものではない。
【0090】
前記ポリエステルは、25℃で測定した固有粘度と35℃で測定した固有粘度との差(ΔIV)が0.06以上であり、一例として0.59以上であり得るのであり、0.68以下であり得る。
【0091】
同時に、前記ポリエステルは、Lab色差計でのb値が12以下であり得るのであり、一例として14.5未満であり得る。
【0092】
すなわち、前記ポリエステルは、b値に対比してΔIV値が、一般のポリエステルより高い。通常、縮重合工程により得られるポリエステルの分子量が高いほど、熱変色による色数値(b値)が高くなる傾向があるが、前記ポリエステルは、前記触媒を用いて製造されることにより、ΔIVが高くても色数値(b値)が低くて熱変色がなく、かつ分子量が大きい高分子を得ることができる。
【0093】
ここで、前記ポリエステルは前記25℃で測定した固有粘度が0.5以上であり、一例として0.59以上であって、0.68以下であり得るのであり、前記35℃で測定した固有粘度が0.43以上であって、一例として0.476以上であり、0.512以下であり得る。
【0094】
また、前記ポリエステルは、溶液状態のLab色差計でのb値が7.12未満であり得るのであり、一例として6.12以下であり、0.501以上であり得る。溶液状態のLab色差計でのb値は一例としてポリエステル2gをヘキサフルオロイソプロパノール(Hexafluoroisopropanol;HFIP)20mlに溶かした後(0.1g/ml in HFIP)、Konica Minolta社CM-3700A製品でもって、溶液色差計測定専用の石英セル(Quartz cell)に上記の溶液状態のLab色差計を測定することができる。
【0095】
前記ポリエステルは、下記数式1の値が0.5以上であり得るのであり、一例として1.0以上であり、1.5以下であり得る。
【0096】
【0097】
前記数式1において、ΔIVは35℃および25℃のそれぞれで測定された固有粘度値についての差の値であり、b値はLab色差計でのb値である。
【0098】
また、前記ポリエステルは、下記数式2の値が0.4以上であり得るのであり、一例として0.6以上であり、1.21以下であり得る。
【0099】
【0100】
前記数式2において、ΔIVは35℃および25℃のそれぞれで測定された固有粘度値についての差の値であり、b値はLab色差計でのb値であり、Tgはガラス転移温度である。
【0101】
すなわち、前記ポリエステルは、常圧・25℃で測定した固有粘度と、常圧・35℃で測定した固有粘度との差(ΔIV)、チップ状態の色純度b値、およびガラス転移温度の間の相関関係計算値(数式2)が、0.4以上と計算され、b値に対するΔIV及びTgの値が、一般のポリエステルより高い。通常、縮重合工程により得られるポリエステルの分子量が高いほど、熱変色による色数値(b値)が高くなる傾向があるが、前記ポリエステルは、前記触媒を用いて製造されることによってΔIVが高くても色数値(b値)が低く、熱変色がなく、かつ分子量が大きい高分子を得ることができる。
【0102】
また、ポリエステルのCOOH末端基は、10~12meq/kgの範囲内であり得る。
【0103】
また、ポリエステルの水分含量は7067~7947ppmの範囲内であり得る。
【0104】
また、ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は84.7~86℃の範囲内であり得る。
【0105】
<本発明の第4側面>
本発明の第4側面は、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体原料を、触媒の存在下に、アルキレン原料物質を使用して重合させてポリエステルを製造する装置である。
【0106】
第4側面の製造装置は、反応器、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体原料の貯蔵タンク、およびアルキレン原料物質の供給装置を含む。ここで、反応器は活性触媒が担持された担持体が内部に充填されたシリンダ型カラム反応器であり得るが、これに限定するものではない。
【0107】
また、前記アルキレン提供原料の供給装置は、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体原料の貯蔵タンクと、前記反応器とを連結する配管に連結された構造を有し、前記原料を加圧された状態で前記反応器内に供給することができる。
【0108】
これらのアルキレン提供原料の供給装置の配置構造は、原料物質が、加圧された状態で反応器内に移送されて、反応器内の加圧条件を別途に、あるいは追加で制御する必要がないだけでなく、原料物質により反応活性化程度を上げることができるため好ましい。
【0109】
前記反応器圧力は、前記アルキレン提供原料の供給装置を介して供給されるアルキレン原料物質により1~6気圧の範囲内に制御され、前記反応器温度は40℃~260℃の範囲内に制御されることができる。
【0110】
前記アルキレン原料物質は、前述した内容と同様であるため具体的な記載は省略する。
【0111】
この時、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体原料は、前記化学式4または化学式5で表される構造を含むものであり得る。
【0112】
前記シリンダ型カラム反応器は、前述した触媒が内部に充填されたものであり得る。触媒については、前述した内容と同様であるため具体的な記載は省略する。
【0113】
前記反応器から排出された気相ポリエステルは、精製反応器または結晶化反応器から分離され、前記精製反応器または前記結晶化反応器の下方に、ポリエステル収集部を含むことができる。
【0114】
前記反応器は、第1重合反応器および第2重合反応器を含み得るのであり、この場合、第1重合反応器がエステル化反応用反応器として用いられ、第2酸化反応器が縮重合反応用反応器として用いられ得る。
【0115】
必要に応じて、前記反応器は、第1重合反応器が1次エステル化反応用および2次エステル化反応用反応器として用いられ、第2重合反応器が縮重合反応用反応器として用いられ得る。
【0116】
一例として、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体をアルキレン提供原料に溶解させた溶液は、反応器と、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体原料の貯蔵タンクとの圧力差によって供給され、弁(バルブ)を用いて流量を調節して反応時間(滞留時間)を調節する。
【0117】
また、反応器としての、触媒が固定充填されたカラム(一例としてシリンダ型カラム)を通過して、反応が終了した溶液は、後処理反応器に移送されて、精製および/または結晶化の工程により収集容器に貯蔵される。
【0118】
前記収集容器に貯蔵されたポリエステル転換溶液は、下部から排出され、触媒およびポリエステルを分離して、反応生成物としてポリエステルを回収する。
【0119】
原料であるジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体の供給位置は、反応器の上端部であることが反応速度を極大化できるが、これに限定するものではない。
【0120】
前記反応器で原料であるジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体溶液が、固定相触媒と不活性化の雰囲気で接触してエステル化反応が起こり、この際、反応器の上端部に備えられた液体質量供給器とコントロール弁を通じて、反応器内に自動または半自動で投入される原料であるジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体溶液の含有量などを、共に制御することができる。
【0121】
また、原料ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体の貯蔵タンクには、一例として0.5~10.0重量%、あるいは0.5~5.0重量%の濃度で、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体を前述したアルキレン提供原料に溶解して充填するかあるいはジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体を単独で充填する。
【0122】
ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体は単独で充填される場合、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体の貯蔵タンクと、前記反応器とを連結する配管に、アルキレン提供原料供給タンクから供給されたアルキレン提供原料を供給して前述した濃度を合わせてもよい。
【0123】
前記反応器に充填される触媒としては前述した第1側面の触媒を含む触媒を準備する。
【0124】
具体的な例として、前述した触媒を垂直に設けられた管形反応器に充填する。この際、エステル化反応器と縮重合反応器が存在する場合、当該触媒は前記エステル化反応器用の管形反応器に充填する。
【0125】
充填後の反応器温度を100~500℃とし真空を維持して、吸着した不純物を除去して反応器の触媒充填を行う。
【0126】
前記反応器(触媒が充填された塔に該当)は1~10barの範囲に調節し、1bar以下では反応速度の低下が発生し、10bar以上では反応速度の上昇が非常にわずかである。したがって、前記圧力は2~4barが最適である。
【0127】
また、反応器の反応温度は40~260℃範囲で行う。40℃以下では反応速度が遅く、260℃以上では触媒表面の吸着が減少して反応性が減少する。最適条件は40~250℃が最も優れる。
【0128】
反応器(触媒充填塔)の上部に、液体質量供給器を用いて、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体が溶解した溶液を供給する。供給されたジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体溶液は、重力により反応器の下部に流れ、触媒と反応してエステル化反応をする。
【0129】
前記エステル化反応生成物と未反応アルキレン提供原料との分離は、通常の化学製品の製造工程で用いられる方法を用いることができる。
【0130】
また、特定の温度条件で反応生成物を加熱しながら真空処理して、過剰量の未反応アルキレン提供原料を揮発させることで、高純度生成物を回収することができる。
【0131】
本発明の方法によれば、目的とする生成物質を提供するのに最適な原料物質と触媒を使用して、適切な条件で反応を行うことができるので、熱安定剤または酸化防止剤といった添加剤を別途に投入せずとも、熱変色と分子量のトレードオフ関係を効果的に解消し、目的とする反応生成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0132】
以下、本発明の実施例を参照して説明するが、下記実施例は本発明を例示するために限定された反応時間と条件で実施例を行ったのであり、本発明の範疇はこれらだけに限定されるものではない。
【0133】
<実施例>
<実施例1-1~1-6、比較例1-1>
2LサイズのAutoclave反応器に下記表1に示した構造を含む触媒(Sigma Aldrich社製品)を含有量別に投入し、下記化学式4で表すジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体(Sigma Aldrich社製品)428gと、エチレングリコール(Sigma Aldrich社製品)283gとについて、窒素雰囲気で150~240℃の温度条件下に1~6barの圧力条件を用いてエステル化反応を行った。
【0134】
【0135】
触媒の含有量に応じた、所要時間と理論上の流出水含有量とを確認した。
【0136】
次に、常圧まで圧力を与えて反応を終了した後に、真空下に230~285℃の温度条件で縮重合反応を始めて、5hrの間にわたって行ってポリエステルを得た。
【0137】
【0138】
<比較例1-2および1-3>
比較例1-2として、2LサイズのAutoclave反応器に、下記表2に示した構造を含む触媒(Sigma Aldrich社製品)を含有量別に投入し、前記化学式4で表すジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体428gと、エチレングリコール283gとについて、窒素雰囲気で150~240℃の温度条件下に1~6barの圧力条件を用いてエステル化反応を行った。
【0139】
また、比較例1-3として、2LサイズのAutoclave反応器に、下記表2に示した構造を含む触媒(Sigma aldrich社製品)を含有量別に投入し、下記化学式4で表すジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体428gと、エチレングリコール283gとについて、窒素雰囲気で150~240℃の温度条件下に1~6barの圧力条件を用いてエステル化反応を行った。
【0140】
触媒含有量に応じた、所要時間と理論上の流出水含有量とを確認した。
【0141】
次に、常圧まで圧力を与えて反応を終了した後に、下記表2に示した熱安定剤(TEP,Triethylphosphate,sigma-aldrich社製品)を投入し、真空下に230~285℃の温度で縮重合反応を始めて、5hrの間にわたって行ってポリエステルを得た。
【0142】
触媒含有量に応じた、所要時間と理論上の流出水含有量とを確認した。
【0143】
次に、常圧まで圧力を与えて反応を終了した後、真空下に230~285℃の温度条件で縮重合反応を始めて、5hrの間にわたって行ってポリエステルを得た。
【0144】
【0145】
<物性評価>
1)Tg測定:TA Instrument社のDSCを用いてN2,20psi、常温~300℃まで20℃/min条件で測定した。
【0146】
2)L/a/b測定:Nippon Denshoku(sa-4000)社の製品でもって、Chip色差計でのL/a/b値を測定した。
【0147】
3)IV測定:試料2gを、溶媒フェノール/テトラクロロエタン(Phenol/Tetrachloro ethane)25mlに溶かして、オスワルド粘度計でもってIVを測定した。
【0148】
4)DEG含有量測定:Agilent社のGC-MSでもってカラムRtx-5MS(0.25μm×0.25mm×30m)を用いて測定して、%単位で示した。
【0149】
5)末端COOH基含有量測定:Metrohm社の製品でもって100℃前処理後に、常温で分析して、meq/kg単位で示した。
【0150】
6)水分含量測定:Metrohm社の製品でもって160℃まで加熱して測定し、ppm単位で示した。
【0151】
<実験例1>
前記実施例1-1~1-6、比較例1-1~1-3で得たポリエステルに対してTg、L/a/b、IV、DEG含有量、末端COOH基含有量、水分含量を測定して、下記表3に示した。
【0152】
【0153】
前記表3に示すように、化学式1で表されてc/eが18であって25℃で測定した粘度が0.97である触媒、化学式2で表されてcてc/eが11であって25℃で測定した粘度が0.94である触媒、または、化学式3で表されてc/eが8であって25℃で測定した粘度が0.94である触媒を、適正量である5ppm超過~300ppm未満の範囲で使用した、実施例1-1~1-4によれば、得られたポリエステルは、固有粘度(IV)が0.591~0.680であり、色差計で測定したL値が45.1~47.5であり、a値が1.7~1.8であり、b値が10.7~11.8であり、分子量と熱変色とのトレードオフの問題を解決したことが分かる。
【0154】
また、ポリエステルのTgが84.9~85.7℃であり、DEGが1.47%~2.23%であり、COOH末端基が10~12meq/kgであり、水分含量が7123~7486ppmで測定された。
【0155】
一方、前述した触媒を0ppmで添加しなかった比較例1-1によれば、縮重合が起こらず、オリゴマー(Oligomer)の分子量の水準であり、分子量が低いために縮重合の工程で熱変色が現れるということを確認することができる。なお、前述した触媒を300ppmの過剰量で投入した実施例1-5または実施例1-6によれば、固有粘度(IV)は、それぞれ0.665、0.692と改善されたが、L値、a値、b値などの色の側面から良くないという結果を確認することができた。
【0156】
結果的に、前述した化学式1の構造を含む触媒を5ppm超過~300ppm未満の含有量の範囲で使用する場合、分子量と熱変色とのトレードオフの問題を解消することに適することが確認された。
【0157】
さらに、化学式4で表されてc/eが4であって25℃で測定した比重が1.0である触媒を、適正量である5ppm超過~300ppm未満の範囲で使用した比較例1-2によれば、得られたポリエステルは、固有粘度(IV)が0.62で実施例に比べて相対的に低い値であることを確認し、L値とa値、b値などの色の側面からも良くない結果であることを確認した。
【0158】
結果的に、前述した化学式4の構造を含む触媒の場合は、適正範囲を使用しても不適切であることが確認された。
【0159】
また、化学式4で表されてc/eが4であって25℃で測定した比重が1.0である触媒を、適正量である5ppm超過~300ppm未満の範囲で使用した比較例1-2に、追加で熱安定剤を縮重合工程に投入した比較例1-3によれば、得られたポリエステルは固有粘度(IV)が0.50で、実施例に比べて相対的に低い結果を確認したのに対して、色値は熱安定剤の投入により非常に改善された結果を示した。
【0160】
結果的に、前述した化学式4の構造を含む触媒の場合は、縮重合工程に熱安定剤などの添加剤を投入してこそ熱変色を防止することが確認された。
【0161】
<実験例2>
前記実施例1-1~1-6、比較例1-1~1-3で得たポリエステルに対して、IV(25℃)、IV(35℃)、チップ(chip)状態の色差計(L/a/b)、溶液(solution)状態の色差計(L/a/b)、およびTgについて測定して下記表4に示した。
【0162】
また、表4に、25℃及び35℃でそれぞれ測定した固有粘度の差の値(ΔIV)、下記数式1および数式2により計算された値を、共に示した。
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
1)溶液(Solution)状態の色差計測定方法:合成したポリエステル2gをヘキサフルオロイソプロパノール(Hexafluoroisopropanol;HFIP)20mlに溶かした後(0.1g/ml in HFIP)、Konica Minolta社のCM-3700A製品でもって、溶液色差計測定専用の石英セル(Tuartz cell)に上記の溶液状態のLab色差計を測定した。
【0167】
前記表4の結果から、実施例によるポリエステルは、常圧・25℃で測定した固有粘度と、常圧・35℃で測定した固有粘度との差(ΔIV)と、チップ状態の色純度(b値)との間の相関関係計算値(数式1)が0.06以上であり、かつチップ状態でb値が12以下であり、溶液状態b値が7.12未満であって、b値に対するΔIV値が比較例より高いことを確認した。通常、縮重合工程により得られるポリエステルの分子量が高いほど、熱変色による色数値(b値)が高くなる傾向があるが、実施例の場合は比較例よりΔIVが高くても色数値(b値)が低いことを確認することでトレードオフ関係を解消したことを確認し、熱変色がなく、かつ分子量が大きい高分子を得ることができることが確認された。
【0168】
反面、比較例によるポリエステルは、25℃で測定した固有粘度と35℃で測定した固有粘度の差(ΔIV)とチップ状態の色純度(b値)の間の相関関係計算値(数式1)が0.5未満で計算され、通常、縮重合工程により得られるポリエステルの分子量が高いほど色数値(b値)もともに高くなる関係を示した。
【0169】
また、前記表4の結果から、実施例によるポリエステルは、常圧・25℃で測定した固有粘度と、常圧・35℃で測定した固有粘度との差(ΔIV)、チップ状態の色純度b値、およびガラス転移温度の、相互間の相関関係計算値(数式2)が、0.4以上と計算され、b値に対するΔIV、Tgの値が、比較例より高いことを確認した。これは、通常、縮重合工程によりポリエステルの分子量(ΔIV)が高いほど熱変色による色数値(b値)が高くなる傾向があるが、実施例の場合は比較例よりΔIVが高くても色純度(b値)が低いポリエステルを得ることができるためトレードオフ関係を解消したことを確認した。
【0170】
前述した各実施例で例示した特徴、構造、効果などは実施例が属する分野の通常の知識を有する者によって他の実施例についても、組み合わせまたは変形して実施することが可能である。したがって、このような組み合わせと変形に関係する内容は本発明の範囲に含まれると解釈しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明は、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物またはその誘導体からポリエステルを製造するために使用される新規触媒物質、それを用いてポリエステルを製造する方法およびそれを用いて製造されたポリエステルに関するものであって、前記ポリエステル製造用の触媒は、熱安定剤または酸化防止剤を投入せずとも、ポリエステルにおいて熱変色と分子量のトレードオフ関係にある物性を提供する効果がある。