(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】パワー半導体装置及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240913BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240913BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240913BHJP
H01L 21/607 20060101ALI20240913BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240913BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 321E
H01L21/607 A
H01L23/12 K
H01L23/48 G
(21)【出願番号】P 2023523433
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2022020678
(87)【国際公開番号】W WO2022249951
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2021088340
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳本 辰則
(72)【発明者】
【氏名】浦地 剛史
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康裕
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-159780(JP,A)
【文献】特開平08-252679(JP,A)
【文献】特開2018-190930(JP,A)
【文献】特開2016-139635(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005555(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 21/60
H01L 21/607
H01L 23/12
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、前記絶縁層上に設けられている導電回路パターンとを含む絶縁基板と、
前記導電回路パターンに接合されているパワー半導体素子と、
前記導電回路パターンに超音波接合されている電極端子とを備え、
前記電極端子は、端部を含む帯状導体と、導電膜とを含み、
前記端部は、前記導電回路パターンに対向する第1表面を含み、
前記導電膜は、前記第1表面を覆っており、かつ、前記導電回路パターンに固相拡散接合されており
、
前記導電膜の第1ビッカース硬さは、前記導電回路パターンの第2ビッカース硬さより大きい、パワー半導体装置。
【請求項2】
前記端部と前記導電回路パターンとは、前記導電膜によって互いに離れている、請求項1に記載のパワー半導体装置。
【請求項3】
前記帯状導体の第3ビッカース硬さは、前記導電膜の第1ビッカース硬さより小さく、かつ、前記導電回路パターンの第2ビッカース硬さより大きい、請求項1に記載のパワー半導体装置。
【請求項4】
前記端部は、前記第1表面とは反対側の第2表面を含み、
前記第2表面に凹凸構造が形成され
ている、請求項
3に記載のパワー半導体装置。
【請求項5】
前記端部は、前記第1表面と前記第2表面とを接続する端面を含み、
前記導電膜は、前記第1表面と、前記凹凸構造を含む前記第2表面と、前記端面とを覆っている、請求項
4に記載のパワー半導体装置。
【請求項6】
前記端部は、前記第1表面と前記第2表面とを接続する端面を含み、
前記導電膜は、前記第1表面と、前記凹凸構造を含む前記第2表面とを覆っており、
前記端面は、前記導電膜から露出している、請求項
4に記載のパワー半導体装置。
【請求項7】
前記端部の厚さは、前記端部を除く前記帯状導体の厚さより小さい、請求項
1に記載のパワー半導体装置。
【請求項8】
前記導電回路パターンと前記電極端子との間の接合部における前記導電回路パターンの第1結晶粒径は、1μmより大きく、
前記接合部における前記帯状導体の第2結晶粒径は、1μmより大きい、請求項
1に記載のパワー半導体装置。
【請求項9】
前記導電膜の厚さは、2μm以上15μm以下である、請求項
1に記載のパワー半導体装置。
【請求項10】
前記帯状導体は、無酸素銅またはタフピッチ銅で形成されており、
前記導電膜は、ニッケルめっき膜である、請求項
1に記載のパワー半導体装置。
【請求項11】
前記導電回路パターンは、圧延銅箔である、請求項
1に記載のパワー半導体装置。
【請求項12】
前記絶縁層は、窒化アルミニウム
または窒化ケイ素で形成されている、請求項
1に記載のパワー半導体装置。
【請求項13】
請求項1から請求項
12のいずれか一項記載の前記パワー半導体装置を有し、かつ、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路とを備える、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワー半導体装置及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-199813号公報(特許文献1)は、放熱ベースと、絶縁回路基板と、電極端子と、パワー半導体素子とを備える半導体装置を開示している。絶縁回路基板は、絶縁基板と、絶縁基板の下面に設けられている第1の導体層と、絶縁基板の上面に設けられている第2の導体層とを含む。第1の導体層は、接合部材を用いて、放熱ベースに接合されている。パワー半導体素子は、絶縁回路基板上に搭載されている。電極端子は、超音波ホーンを用いて、第2の導体層に超音波接合されている。第2の導体層と電極端子との接合界面における第2の導体層及び電極端子の結晶粒径は、1μm以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された半導体装置では、電極端子を第2の導体層に超音波接合する際に、電極端子と第2の導体層との界面において、多くの金属粉が発生する。この金属粉は、第2の導体層などの半導体装置内の部材に付着して、半導体装置の動作時に半導体装置の絶縁破壊を引き起こすことがある。本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、向上された信頼性を有するパワー半導体装置及び電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のパワー半導体装置は、絶縁基板と、パワー半導体素子と、電極端子とを備える。絶縁基板は、絶縁層と、絶縁層上に設けられている導電回路パターンとを含む。パワー半導体素子は、導電回路パターンに接合されている。電極端子は、導電回路パターンに超音波接合されている。電極端子は、端部を含む帯状導体と、導電膜とを含む。帯状導体の端部は、導電回路パターンに対向する第1表面を含む。導電膜は、第1表面を覆っており、かつ、導電回路パターンに固相拡散接合されている。帯状導体の端部と導電回路パターンとは、導電膜によって互いに離れている。導電膜の第1ビッカース硬さは、導電回路パターンの第2ビッカース硬さより大きい。
【0006】
本開示の電力変換装置は、本開示のパワー半導体装置を有し、かつ、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、主変換回路を制御する制御信号を主変換回路に出力する制御回路とを備える。
【発明の効果】
【0007】
電極端子を導電回路パターンに超音波接合する際に発生する金属粉が減少する。そのため、パワー半導体装置に、絶縁破壊が発生する可能性が減少する。本開示のパワー半導体装置及び電力変換装置は、向上された信頼性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1のパワー半導体モジュールの概略部分拡大平面図である。
【
図2】実施の形態1のパワー半導体モジュールの、
図1に示される断面線II-IIにおける概略断面図である。
【
図3】実施の形態1のパワー半導体モジュールの、
図2に示される領域IIIの概略部分拡大断面図である。
【
図4】実施の形態1のパワー半導体モジュールの、電極端子の接合工程を示す概略断面図である。
【
図5】実施の形態1のパワー半導体モジュールの電極端子と導電回路パターンとの接合部の断面SEM像である。
【
図6】実施の形態2のパワー半導体モジュールの概略部分拡大断面図である。
【
図7】実施の形態3のパワー半導体モジュールの概略部分拡大断面図である。
【
図8】実施の形態3のパワー半導体モジュールに含まれる電極端子の製造方法のフローチャートを示す図である。
【
図9】実施の形態3のパワー半導体モジュールに含まれる電極端子の製造方法の一工程を示す概略部分拡大斜視図である。
【
図10】実施の形態3のパワー半導体モジュールに含まれる電極端子の製造方法における、
図9に示される工程の次工程を示す概略部分拡大斜視図である。
【
図11】実施の形態3のパワー半導体モジュールに含まれる電極端子の製造方法における、
図10に示される工程の次工程を示す概略部分拡大斜視図である。
【
図12】実施の形態4の電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
実施の形態1.
図1から
図5を参照して、実施の形態1のパワー半導体装置1を説明する。パワー半導体装置1は、絶縁基板12と、パワー半導体素子(20,25)と、電極端子31,34,37と、導電ワイヤ41,42a,42b,43a,43bとを主に備える。パワー半導体装置1は、ベース板11と、ケース30と、封止部材48とをさらに備えてもよい。
【0011】
ベース板11は、例えば、Cuのような金属、CuMoのような合金、または、AlSiCのような金属基複合材料によって形成されている。ベース板11は、ケース30に固定されている。ベース板11は、絶縁基板12を支持する。ベース板11は、パワー半導体素子(20,25)において発生した熱をパワー半導体装置1の外部へ放散させるヒートシンクである。
【0012】
絶縁基板12は、絶縁層13と、導電回路パターン15とを含む。絶縁基板12は、導体層14をさらに含んでもよい。
【0013】
絶縁層13は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)もしくは窒化ケイ素(Si3N4)のようなセラミックスで形成されてもよい。絶縁層13は、エポキシ樹脂もしくは液晶ポリマーのようなバインダー樹脂に、シリカ、アルミナもしくは窒化ホウ素(BN)のようなフィラーが分散されている有機絶縁材料で形成されてもよい。絶縁層13の厚さは、例えば、0.3mm以上1.0mm以下である。
【0014】
導電回路パターン15は、絶縁層13の第1主面上に設けられている。導電回路パターン15は、絶縁層13にロウ付けされている。導電回路パターン15は、銅のような金属で形成されている。導電回路パターン15は、例えば、圧延銅箔である。導電回路パターン15のビッカース硬さは、導電膜33のビッカース硬さより小さい。導電回路パターン15を絶縁層13にロウ付けする際に導電回路パターン15は熱処理されるため、導電回路パターン15のビッカース硬さは、帯状導体32のビッカース硬さより小さい。導電回路パターン15のビッカース硬さは、例えば、40HV以上50HV以下である。導電回路パターン15の厚さは、例えば、0.25mm以上1.0mm以下である。
【0015】
導電回路パターン15は、例えば、導体パターン15a,15b,15c,15dを含む。
図5を参照して、導電回路パターン15(導体パターン15
b)と電極端子31との間の接合部における導電回路パターン15(導体パターン15
b)の結晶粒径は、1μmより大きい。本明細書において、結晶粒径は、導電回路パターン15(導体パターン15
b)と電極端子31との間の接合部の断面SEM像から計測される結晶粒の直径の平均値を意味する。
【0016】
導体層14は、絶縁層13の第1主面とは反対側の絶縁層13の第2主面上に設けられている。導体層14は、銅のような金属で形成されている。導体層14は、例えば、圧延銅箔である。導体層14は、電解銅箔であってもよい。電解銅箔のビッカース硬さは圧延銅箔のビッカース硬さよりも小さい傾向がある。そのため、導体層14が電解銅箔である場合のパワー半導体装置1の効果は、導体層14が圧延銅箔である場合のパワー半導体装置1の効果と同様である。導体層14の厚さは、例えば、0.25mm以上1.0mm以下である。導体層14の厚さは、導電回路パターン15の厚さと同じであってもよいし、導電回路パターン15の厚さと異なってもよい。導体層14は、絶縁層13の熱膨張係数と導電回路パターン15の熱膨張係数との差に起因する絶縁基板12の反りを減少させ得る。絶縁基板12は、ベース板11に固定されている。具体的には、導体層14は、はんだのような導電性接合部材17を用いて、ベース板11に接合されている。
【0017】
パワー半導体素子(20,25)は、例えば、スイッチング素子20と、還流ダイオード25とを含む。スイッチング素子20は、例えば、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)または絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)である。スイッチング素子20は、例えば、ドレイン電極21と、ソース電極22と、ゲート電極23とを含む。還流ダイオード25は、スイッチング素子20に逆並列接続されている。還流ダイオード25は、ショットキーバリアダイオード(SBD)またはフリーホイールダイオード(FWD)である。還流ダイオード25は、カソード電極26と、アノード電極27とを含む。パワー半導体素子(20,25)は、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)または窒化ガリウム(GaN)のような半導体材料で形成されている。
【0018】
パワー半導体素子(20,25)は、導電性接合部材24,28を用いて導電回路パターン15に接合されている。具体的には、スイッチング素子20(ドレイン電極21)は、導電性接合部材24を用いて、導体パターン15aに接合されている。還流ダイオード25(カソード電極26)は、導電性接合部材28を用いて、導体パターン15aに接合されている。導電性接合部材24,28は、鉛フリーはんだのようなはんだであってもよいし、銀ナノ粒子焼結体のような金属微粒子焼結体であってもよい。
【0019】
電極端子31,34,37は、ケース30に固定されている。電極端子31は、帯状導体32と、導電膜33とを含む。
【0020】
帯状導体32は、例えば、無酸素銅(例えば、C1020-1/2H、C1020-1/4HもしくはC1020-H)またはタフピッチ銅で形成されている。帯状導体32の厚さt1は、例えば、0.8mm以上2.5mm以下である。帯状導体32のビッカース硬さは、例えば、100HV以上130HV以下である。帯状導体32は、端部32eを含む。帯状導体32は、端部32eにおいて折り曲げられている。端部32eは、導電回路パターン15(導体パターン15b)に対向する第1表面32aと、第1表面32aとは反対側の第2表面32bと、第1表面32aと第2表面32bとを接続する端面32cとを含む。
【0021】
導電膜33は、第1表面32aと、第2表面32bと、端面32cとを覆っている。導電膜33は、帯状導体32の全表面を覆ってもよい。導電膜33は、例えば、ニッケルめっき膜である。導電膜33の厚さt3は、帯状導体32の厚さt1より小さい。導電膜33の厚さt3は、例えば、2μm以上15μm以下である。導電膜33のビッカース硬さは、帯状導体32のビッカース硬さより大きい。導電膜33のビッカース硬さは、例えば、200HV以上350HV以下である。
【0022】
電極端子34,37の構成は、電極端子31の以上の構成と同様である。
電極端子31は、導電回路パターン15(特定的には、導体パターン15b)に超音波接合されている。帯状導体32の端部32eは、導電回路パターン15に接合されている。導電膜33は、帯状導体32の端部32e(または帯状導体32の第1表面32a)と導電回路パターン15との間にある。帯状導体32の端部32e(または帯状導体32の第1表面32a)と導電回路パターン15とは、導電膜33によって互いに離れている。導電膜33は、導電回路パターン15に固相拡散接合されている。例えば、NiとCuとは、全率固溶型合金を構成し得る。そのため、導電膜33がNiで形成されており、かつ、導電回路パターン15がCuで形成されている場合、導電膜33は、導電回路パターン15に固相拡散接合され得る。
図5を参照して、導電回路パターン15と電極端子31との間の接合部における帯状導体32の結晶粒径は、1μmより大きい。
【0023】
帯状導体32の第2表面32bに、凹凸構造32fが形成されている。凹凸構造32fは、超音波ホーン50(
図4を参照)の加圧痕である。具体的には、超音波ホーン50の先端に形成されているローレット部53の形状に相補的な凹凸構造32fが、第2表面32bに形成される。導電膜33は、凹凸構造32fを覆っている。凹凸構造32fと同様の凹凸構造が、導電膜33にも形成されている。
【0024】
電極端子31の帯状導体32の端部32eの厚さt2は、電極端子31の帯状導体32(端部32eを除く)の厚さt1より小さくてもよい。そのため、パワー半導体装置1の動作時に導電回路パターン15と電極端子31との間の接合部に作用する応力が減少し得る。この応力には、電極端子31の熱膨張係数と絶縁層13の熱膨張係数との間の差に起因する第1応力と、ケース30の膨張または収縮に起因する第2応力とが含まれる。第1応力は、導電回路パターン15(導体パターン15b)と電極端子31(導電膜33)との間の接合界面に沿う方向に作用する。第2応力は、導電回路パターン15(導体パターン15b)と電極端子31(導電膜33)との間の接合界面に垂直な方向に作用する。
【0025】
導電ワイヤ41,42a,42b,43a,43bは、例えば、Alワイヤ、AuワイヤまたはCuワイヤのような金属ワイヤである。導電ワイヤ41には、導電ワイヤ42a,42b,43a,43bより多くの電流が流れる。そのため、導電ワイヤ41の各々の直径は、導電ワイヤ42a,42b,43a,43bの各々の直径より大きい。導電ワイヤ41の各々の直径は、例えば、200μmより大きく600μm以下である。導電ワイヤ42a,42b,43a,43bの各々の直径は、例えば、50μm以上200μm以下である。電極端子31,34,37は、導電ワイヤ41,42a,42b,43a,43b及び導電回路パターン15によって、パワー半導体素子(20,25)に電気的に接続されている。
【0026】
具体的には、導電ワイヤ41は、導体パターン15aと還流ダイオード25のアノード電極27とスイッチング素子20のソース電極22とにボンディングされている。こうして、電極端子31は、導電ワイヤ41によって、パワー半導体素子(20,25)及び還流ダイオード25に電気的に接続されている。電極端子31は、ソース電極22とドレイン電極21との間を流れる主電流が流れる主電極端子である。導電ワイヤ41に主電流が流れる。
【0027】
導電ワイヤ42aは、電極端子34と導体パターン15dとにボンディングされている。導電ワイヤ42bは、導体パターン15dとスイッチング素子20のソース電極22とにボンディングされている。こうして、電極端子34は、導電ワイヤ42a,42bによって、スイッチング素子20に電気的に接続されている。電極端子34は、ソース用制御電極端子である。
【0028】
導電ワイヤ43aは、電極端子37と導体パターン15cとスイッチング素子20のゲート電極23とにボンディングされている。導電ワイヤ43bは、導体パターン15cとスイッチング素子20のゲート電極23とにボンディングされている。こうして、電極端子37は、導電ワイヤ43a,43bによって、スイッチング素子20に電気的に接続されている。電極端子37は、ゲート用制御電極端子である。
【0029】
ケース30は、ポリフェニルサルファイド樹脂(PPS)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)またはポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)のような絶縁性樹脂で形成されている。絶縁基板12及びパワー半導体素子(20,25)は、ケース30によって囲まれている。ケース30は、接着剤(図示せず)などを用いて、ベース板11に固定されている。
【0030】
封止部材48は、パワー半導体素子(20,25)と、絶縁基板12と、電極端子31,34,37の端部32eを含む電極端子31,34,37の一部と、導電ワイヤ41,42a,42b,43a,43bとを封止する。封止部材48は、エポキシ樹脂またはシリコーンゲルのような絶縁樹脂で形成されている。封止部材48の絶縁樹脂に、フィラーが分散されてもよい。
【0031】
本実施の形態のパワー半導体装置1の製造方法のうち、電極端子31を得る工程を説明する。Cu板のような金属板を切断して、帯状導体32を得る。帯状導体32をめっき液に浸す。アノード電極27と、帯状導体32であるカソード電極との間に電流を流す。帯状導体32の表面に導電膜33が形成される。導電膜33がニッケル膜である場合、めっき液として、例えば、ワット浴、ウッド浴またはスルファミン酸浴が用いられ得る。ワット浴は、硫酸ニッケル、塩酸ニッケル及びホウ酸を主成分として含む。ウッド浴は、塩化ニッケル及び塩酸を主成分として含む。スルファミン酸浴は、塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケル及びホウ酸を主成分として含む。
【0032】
図4を参照して、本実施の形態のパワー半導体装置1の製造方法のうち、電極端子31を導電回路パターン15(導体パターン15
b)に超音波接合する工程を説明する。
【0033】
電極端子31を導電回路パターン15(導体パターン15b)上に載置する。電極端子31に超音波ホーン50を押し当てる。超音波ホーン50は、導電回路パターン15(導体パターン15b)と電極端子31(導電膜33)との間の界面に、当該界面に沿う超音波振動と当該界面に垂直な方向の圧力とを印加する。導電膜33は、導電回路パターン15に固相拡散接合される。導電膜33は、帯状導体32の端部32e(または帯状導体32の第1表面32a)と導電回路パターン15(導体パターン15b)との間にある。帯状導体32の端部32e(または帯状導体32の第1表面32a)と導電回路パターン15とは、導電膜33によって互いに離れている。こうして、電極端子31は、導電回路パターン15に超音波接合される。
【0034】
導電回路パターン15(導体パターン15b)のビッカース硬さは、導電膜33のビッカース硬さより小さい。そのため、電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に、導電回路パターン15及び導電膜33のうち主に導電回路パターン15が変形する。導電回路パターン15の変形は、電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に導電膜33に印加される衝撃を緩和する。超音波ホーン50によって印加される圧力によって導電膜33が割れることが防止され得る。電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に、導電膜33は、導電回路パターン15と帯状導体32とが直接接触することを防止する。そのため、導電回路パターン15と電極端子31との間の接合界面において発生する金属粉の量が減少する。導電膜33は、導電回路パターン15に良好に固相拡散接合される。
【0035】
図5を参照して、導電回路パターン15と電極端子31との間の接合部における導電回路パターン15の結晶粒径は、1μmより大きい。導電回路パターン15と電極端子31との間の接合部における帯状導体32の結晶粒径は、1μmより大きい。これは、電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に、導電膜33が、導電回路パターン15と帯状導体32とが直接接触することを防止して、導電回路パターン15の結晶粒及び帯状導体32の結晶粒が微細化されることを抑制するためである。その結果、導電回路パターン15の結晶粒及び帯状導体32の結晶粒が微細化される際に発生する金属粉は減少する。パワー半導体装置1内の部材に付着する金属粉は減少する。パワー半導体装置1が絶縁破壊されることが防止され得る。パワー半導体装置1は、向上された信頼性を有する。
【0036】
これに対し、比較例のパワー半導体装置では、電極端子31は導電膜33を含んでおらず、導電回路パターン15と帯状導体32とは互いに直接接触する。また、導電回路パターン15及び帯状導体32の両方は、同じ材料(例えば、Cu)で形成されている。そのため、電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に導電回路パターン15と電極端子31(帯状導体32)との間の接合界面に印加される超音波振動と圧力とによって、導電回路パターン15の結晶粒と帯状導体32の結晶粒とは微細化される。導電回路パターン15と帯状導体32との間の接合部における導電回路パターン15の結晶粒径は、1μm以下となり、導電回路パターン15と電極端子31との間の接合部における帯状導体32の結晶粒径も1μm以下となる。導電回路パターン15の結晶粒及び帯状導体32の結晶粒が微細化される際に、多くの金属粉が発生する。多くの金属粉が、比較例のパワー半導体装置内の部材に付着して、比較例のパワー半導体装置の絶縁破壊を引き起こす。比較例のパワー半導体装置は、より低い信頼性を有する。
【0037】
表1に、本実施の形態のパワー半導体装置1の一例である実施例と比較例とにおいて、電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に発生する金属粉の数を示す。金属粉の数は、以下のようにしてカウントされた。導電回路パターン15のうち、電極端子31が超音波接合される部分を除く部分に、黒色スプレーを吹き付けて、導電回路パターン15の当該部分を黒色に着色する。電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合することにより導電回路パターン15の黒色領域上に飛散した金属粉の数を、光学顕微鏡を用いて数える。実施例及び比較例では、超音波ホーン50によって電極端子31に印加される荷重は、700Nである。表1に示されるように、実施例において発生する金属粉の数は、比較例において発生する金属粉の数よりも大幅に少ない。
【0038】
【0039】
超音波ホーン50にローレット部53が形成されている。電極端子31に超音波ホーン50を押し当てると、ローレット部53が電極端子31に食い込む。帯状導体32及び導電膜33のうち主に帯状導体32が変形する。帯状導体32の第2表面32bに、超音波ホーン50の加圧痕として、凹凸構造32fが形成される。凹凸構造32fと同様の凹凸構造が、導電膜33にも形成される。
【0040】
ローレット部53が電極端子31に食い込む際に、電極端子31から金属屑が発生する。金属屑の一部は、ローレット部53に付着する。しかし、本実施の形態では、帯状導体32の第2表面32bは、帯状導体32より大きなビッカース硬さを有する導電膜33によって覆われている。そのため、電極端子31から発生する金属屑は減少する。パワー半導体装置1内の部材に付着する金属屑は減少する。パワー半導体装置1が絶縁破壊されることが防止され得る。パワー半導体装置1は、向上された信頼性を有する。また、ローレット部53に付着する金属屑も減少する。ローレット部53に付着した金属屑を硫酸のような薬液を用いて除去する頻度が減少する。パワー半導体装置1の生産性が向上する。
【0041】
電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に、第1表面32a上の導電膜33が破れて、第1表面32aの一部が導電膜33から露出することがある。第1表面32aの一部が導電膜33から露出しても、本実施の形態では金属粉の発生量を減らすことができる。
【0042】
本実施の形態のパワー半導体装置1の効果を説明する。
本実施の形態のパワー半導体装置1は、絶縁基板12と、パワー半導体素子(20,25)と、電極端子31とを備える。絶縁基板12は、絶縁層13と、絶縁層13上に設けられている導電回路パターン15とを含む。パワー半導体素子(20,25)は、導電回路パターン15に接合されている。電極端子31は、導電回路パターン15に超音波接合されている。電極端子31は、端部32eを含む帯状導体32と、導電膜33とを含む。帯状導体32の端部32eは、導電回路パターン15に対向する第1表面32aを含む。導電膜33は、第1表面32aを覆っており、かつ、導電回路パターン15に固相拡散接合されている。帯状導体32の端部32eと導電回路パターン15とは、導電膜33によって互いに離れている。導電膜33の第1ビッカース硬さは、導電回路パターン15の第2ビッカース硬さより大きい。
【0043】
そのため、電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に、導電回路パターン15と帯状導体32とが互いに直接接触することなく、導電回路パターン15及び導電膜33のうち主に導電回路パターン15が変形する。電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に発生する金属粉が減少する。パワー半導体装置1に、絶縁破壊が発生する可能性が減少する。パワー半導体装置1は、向上された信頼性を有する。また、電極端子31は導電回路パターン15に超音波接合されているため、電極端子31を導電回路パターン15にはんだを用いて接合した場合よりも、電極端子31に大きな電流を流すことができるとともに、電極端子31と導電回路パターン15との間の接合部は、より長い寿命を有する。
【0044】
本実施の形態のパワー半導体装置1では、帯状導体32の第3ビッカース硬さは、導電膜33の第1ビッカース硬さより小さく、かつ、導電回路パターン15の第2ビッカース硬さより大きい。
【0045】
そのため、電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に、導電回路パターン15、帯状導体32及び導電膜33のうち主に導電回路パターン15が変形する。電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に発生する金属粉が減少する。パワー半導体装置1は、向上された信頼性を有する。
【0046】
本実施の形態のパワー半導体装置1では、帯状導体32の端部32eは、第1表面32aとは反対側の第2表面32bを含む。第2表面32bに凹凸構造32fが形成されている。導電膜33は、凹凸構造32fをさらに覆っている。
【0047】
電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に、帯状導体32及び導電膜33のうち主に帯状導体32が変形する。超音波ホーン50を用いて電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に発生する金属屑が減少する。パワー半導体装置1は、向上された信頼性を有する。パワー半導体装置1の生産性が向上する。
【0048】
本実施の形態のパワー半導体装置1では、帯状導体32の端部32eは、第1表面32aと第2表面32bとを接続する端面32cを含む。導電膜33は、第1表面32aと、凹凸構造32fを含む第2表面32bと、端面32cとを覆っている。
【0049】
電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に発生する金属粉及び金属屑が減少する。パワー半導体装置1は、向上された信頼性を有する。パワー半導体装置1の生産性が向上する。
【0050】
本実施の形態のパワー半導体装置1では、導電回路パターン15と電極端子31との間の接合部における導電回路パターン15の第1結晶粒径は、1μmより大きい。導電回路パターン15と電極端子31との間の接合部における帯状導体32の第2結晶粒径は、1μmより大きい。
【0051】
そのため、電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に発生する金属粉が減少する。パワー半導体装置1は、向上された信頼性を有する。
【0052】
本実施の形態のパワー半導体装置1では、導電膜33の厚さt3は、2μm以上15μm以下の厚さである。
【0053】
導電膜33の厚さt3が2μm以上であるため、電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に導電回路パターン15と帯状導体32とが互いに直接接触することが、より確実に防止され得る。電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合する際に発生する金属粉がより確実に減少する。パワー半導体装置1は、向上された信頼性を有する。導電膜33の厚さt3が15μm以下であるため、導電膜33を形成する時間が短くなる。パワー半導体装置1の生産性が向上する。
【0054】
実施の形態2.
図6を参照して、実施の形態2のパワー半導体装置1b及びその製造方法を説明する。本実施の形態のパワー半導体装置1bは、実施の形態1のパワー半導体装置1と同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、主に以下の点で異なる。
【0055】
パワー半導体装置1bでは、帯状導体32の端面32cは、導電膜33から露出している。
【0056】
本実施の形態のパワー半導体装置1bの製造方法のうち、電極端子31を得る工程を説明する。Cu板のような金属板をめっき液に浸す。アノード電極と、金属板であるカソード電極との間に電流を流す。金属板の表面に導電膜33が形成される。金属板を切断して、帯状導体32を得る。このように、本実施の形態では、金属板をめっきした後に、めっきされた金属板を切断することによって、電極端子31を得ている。そのため、帯状導体32の端面32cは、導電膜33から露出する。一度のめっきで複数の電極端子31を得ることができるため、パワー半導体装置1bの製造コストが低減され得る。
【0057】
実施の形態3.
図7を参照して、実施の形態3のパワー半導体装置1c及びその製造方法を説明する。本実施の形態のパワー半導体装置1cは、実施の形態1のパワー半導体装置1と同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、主に以下の点で異なる。パワー半導体装置1cでは、帯状導体32の端部32eの厚さt
2は、端部32eを除く帯状導体32の厚さt
1より小さい。
【0058】
図8から
図11を参照して、本実施の形態のパワー半導体装置1cの製造方法のうち、電極端子31を得る工程を説明する。
【0059】
図8及び
図9を参照して、Cu板のような金属板38を準備する(ステップS1)。
図8及び
図10を参照して、金属板38をプレス加工することにより、金属板38から帯状導体32を得る(ステップS2)。具体的には、金属板38を切断しつつ、金属板38を曲げ加工するとともに金属板38の端部を鍛造によって薄肉化する。
図8を参照して、帯状導体32を洗浄する(ステップS3)。
図8及び
図11を参照して、帯状導体32の表面に導電膜33を形成する(ステップS4)。例えば、帯状導体32をめっき液に浸す。アノード電極27と、帯状導体32であるカソード電極との間に電流を流す。めっき膜である導電膜33が帯状導体32の表面に形成される。
図8を参照して、導電膜33で覆われた帯状導体32を洗浄する(ステップS5)。こうして、本実施の形態の電極端子31が得られる。
【0060】
本実施の形態では、ステップS2において、金属板38を切断し、曲げ加工し、薄肉化することによって帯状導体32を得た後に、ステップS4において、導電膜33を形成している。そのため、金属板38を曲げ加工及び薄肉化する際に、導電膜33が破れることがない。
【0061】
本実施の形態のパワー半導体装置1cの効果は、実施の形態1のパワー半導体装置1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0062】
本実施の形態のパワー半導体装置1cでは、帯状導体32の端部32eの厚さt2は、端部32eを除く帯状導体32の厚さt1より小さい。
【0063】
端部32eを除く帯状導体32の厚さt1を増加させることができるため、電極端子31の許容電流を増加させることができる。また、帯状導体32の端部32eの厚さt2が減少するため、電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合するために必要な超音波エネルギーが減少し得る。そのため、電極端子31を導電回路パターン15に超音波接合し終えるまでに発生する金属粉の量が減少し得る。
【0064】
実施の形態4.
本実施の形態は、上述した実施の形態1から実施の形態3のパワー半導体装置1,1b,1cのいずれかを電力変換装置に適用したものである。本開示は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態4として、三相のインバータに本開示のパワー半導体装置1,1b,1cのいずれかを適用した場合について説明する。
【0065】
図12に示される電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は、特に限定されないが、例えば、直流系統、太陽電池または蓄電池で構成されてもよいし、交流系統に接続された整流回路またはAC/DCコンバータで構成されてもよい。電源100は、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成されてもよい。
【0066】
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、
図12に示されるように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201を制御する制御信号を主変換回路201に出力する制御回路203とを備えている。
【0067】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道車両、エレベーター、または、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0068】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子(図示せず)と還流ダイオード(図示せず)を備えている。スイッチング素子が電源100から供給される電圧をスイッチングすることによって、主変換回路201は、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換して、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態の主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードとから構成され得る。主変換回路201の各スイッチング素子及び各還流ダイオードとして、上述した実施の形態1から実施の形態3のパワー半導体装置1,1b,1cのいずれかに含まれるスイッチング素子20及び還流ダイオード25が適用され得る。主変換回路201を構成するパワー半導体装置202として、上述した実施の形態1から実施の形態3のパワー半導体装置1,1b,1cのいずれかが適用され得る。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相及びW相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0069】
また、主変換回路201は、各スイッチング素子を駆動する駆動回路(図示せず)を備えている。駆動回路は、パワー半導体装置202に内蔵されてもよいし、パワー半導体装置202の外部に設けられてもよい。駆動回路は、主変換回路201に含まれるスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成して、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に駆動信号を供給する。具体的には、制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。
【0070】
制御回路203は、負荷300に電力が供給されるように主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、負荷300に出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって、主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、主変換回路201が備える駆動回路に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0071】
本実施の形態の電力変換装置200では、主変換回路201に含まれるパワー半導体装置202として、実施の形態1から実施の形態3のパワー半導体装置1,1b,1cのいずれかが適用される。そのため、本実施の形態の電力変換装置200は、向上された信頼性を有する。
【0072】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに本開示を適用する例を説明したが、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に本開示を適用することができる。本実施の形態では2レベルの電力変換装置としたが、3レベルの電力変換装置であってもよいし、マルチレベルの電力変換装置であってもよい。電力変換装置が単相負荷に電力を供給する場合には、単相のインバータに本開示が適用されてもよい。電力変換装置が直流負荷等に電力を供給する場合には、DC/DCコンバータまたはAC/DCコンバータに本開示が適用されてもよい。
【0073】
本開示が適用される電力変換装置は、負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機もしくはレーザー加工機の電源装置、または、誘導加熱調理器もしくは非接触器給電システムの電源装置に組み込まれ得る。本開示が適用された電力変換装置は、さらに、太陽光発電システムまたは蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いられ得る。
【0074】
今回開示された実施の形態1-4はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態1-4の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本開示の範囲は、上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0075】
1,1b,1c パワー半導体装置、11 ベース板、12 絶縁基板、13 絶縁層、14 導体層、15 導電回路パターン、15a,15b,15c,15d 導体パターン、17 導電性接合部材、20 スイッチング素子、21 ドレイン電極、22 ソース電極、23 ゲート電極、24 導電性接合部材、25 還流ダイオード、26 カソード電極、27 アノード電極、28 導電性接合部材、30 ケース、31 電極端子、32 帯状導体、32a 第1表面、32b 第2表面、32c 端面、32e 端部、32f 凹凸構造、33 導電膜、34,37 電極端子、38 金属板、41,42a,42b,43a,43b 導電ワイヤ、48 封止部材、50 超音波ホーン、53 ローレット部、100 電源、200 電力変換装置、201 主変換回路、202 パワー半導体装置、203 制御回路、300 負荷。