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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】回路基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/38 20060101AFI20240913BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240913BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H05K3/38 D
H01L23/12 J
H05K1/02 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023533899
(86)(22)【出願日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 JP2023000025
(87)【国際公開番号】W WO2023188670
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-06-02
【審判番号】
【審判請求日】2024-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2022059773
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【弁理士】
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 晃正
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】江嶋 善幸
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 厚樹
【合議体】
【審判長】馬場 慎
【審判官】寺谷 大亮
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-311294(JP,A)
【文献】特開2007-311527(JP,A)
【文献】特開平10-190176(JP,A)
【文献】特開2022-871(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003725(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00- 1/02
H05K 3/10- 3/26
H05K 3/38
H01L23/12-23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック板と、金属板と、前記セラミック板と前記金属板とを接合する接合層と、を備え、
前記接合層が設けられる前記セラミック板の主面に直交し、前記金属板の中心部、前記接合層及び前記セラミック板を通る断面でみたときに、前記金属板の端部と前記セラミック板との間における前記接合層の厚みD の方が、前記金属板の前記中心部と前記セラミック板との間における前記接合層の厚みD よりも大きく、前記厚みDに対する前記厚みDの比が5以上であり、
前記接合層は、前記金属板の前記端部と前記セラミック板との間から、前記金属板の前記中心部と前記セラミック板との間まで連なって形成され、
平面視において、前記接合層は、前記金属板の外縁に沿って前記金属板を取り囲むように形成されるはみ出し部を有し、
前記はみ出し部は、前記セラミック板の前記主面に向かってスカート状に拡がっている、回路基板。
【請求項2】
前記断面でみたときに、前記セラミック板と前記金属板との間における前記接合層の空隙部の面積の最大値が1000μm以下である、請求項に記載の回路基板。
【請求項3】
前記断面でみたときに、前記接合層は、前記金属板の側面における下端よりも外側にはみ出すように形成される前記はみ出し部を有し、前記接合層の前記厚みDに対する、前記はみ出し部の長さLの比が0.1以上である、請求項に記載の回路基板。
【請求項4】
前記断面でみたときに、前記接合層は、その中心部から端部に向かうにつれて厚みが大きくなる勾配部を有する、請求項に記載の回路基板。
【請求項5】
前記断面でみたときに、前記金属板は凸形状を有しており、前記金属板の凸面が前記接合層によって前記セラミック板と接合されている、請求項に記載の回路基板。
【請求項6】
前記凸面における凸部の高さが10~100μmである、請求項に記載の回路基板。
【請求項7】
セラミック板の主面にろう材を塗布してろう材層を設ける工程と、
前記ろう材層を挟むようにして前記セラミック板と金属板とを積層して積層体を作製する工程と、
前記積層体を加熱して前記セラミック板と前記金属板とが接合層で接合された接合体を得る工程と、を有し、
前記ろう材層を設ける際に、前記金属板の中心部に接触する前記ろう材層の第1部分の厚みよりも、前記金属板の端部に接触する前記ろう材層の第2部分の厚みを、前記第1部分よりも前記第2部分の前記ろう材の塗布回数を多くすることによって大きくする、回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記第1部分における前記ろう材の塗布回数をn回、前記第2部分における前記ろう材の塗布回数をn回としたときに、n-n≧2を満たすようにして前記ろう材を塗布して前記ろう材層を設ける、請求項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記セラミック板の主面に直交し、前記金属板の中心部、前記接合層及び前記セラミック板を通る断面でみたときに、前記金属板の端部と前記セラミック板との間における前記接合層の厚みDの方が、前記金属板の前記中心部と前記セラミック板との間における前記接合層の厚みDよりも大きくなっており、
前記接合層は、前記金属板の前記端部と前記セラミック板との間から、前記金属板の前記中心部と前記セラミック板との間まで連なって形成されている、請求項又はに記載の回路基板の製造方法。
【請求項10】
平面視において、前記接合層は、前記金属板の外縁に沿って前記金属板を取り囲むように形成されるはみ出し部を有する、請求項に記載の回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット及びモーター等の産業機器の高性能化に伴い、大電流及び高電圧を制御するパワーモジュールが使用されている。このようなパワーモジュールに備えられる回路基板は、セラミック基板と銅板と備えており、これらは活性金属を含有するろう材を介して接合される。このような回路基板は、パワーモジュールに搭載される半導体素子から発生する熱の影響を受ける。
【0003】
そこで、特許文献1では、TCT(Temperature cycle Test)により評価されるTCT信頼性を向上するため、セラミック基板と銅回路板とを接合する接合層の一部で、はみ出し部を形成することが提案されている。特許文献2では、セラミック基板の両面上において、第1ろう材層(Ag-Tiろう材の層)の周囲を囲むように第2ろう材層(Ag-Cu-Tiろう材の層)を形成し、セラミック基板と銅板との間に第1ろう材層が配置され、銅板の外側に第2ろう材層が配置されるように積層する技術が提案されている。このような技術によってろう材固化層の剥離を防止し、絶縁回路基板の接合信頼性を向上することが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/019602号
【文献】特開2020-107671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回路基板の使用環境は、今後益々過酷になっていくことが予想される。このため、一層高水準の信頼性を有する回路基板が求められるようになると考えられる。そこで、本開示は、セラミック板と金属板との接合信頼性に優れる回路基板及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る回路基板は、セラミック板と、金属板と、セラミック板と金属板とを接合する接合層と、を備え、接合層が設けられるセラミック板の主面に直交し、金属板の中心部、接合層及びセラミック板を通る断面でみたときに、金属板の端部と前記セラミック板との間における接合層の厚みDの方が、金属板の中心部とセラミック板との間における接合層の厚みDよりも大きくなっており、接合層は、金属板の端部とセラミック板との間から、金属板の中心部とセラミック板との間まで連なって形成されている回路基板を提供する。
【0007】
セラミック板と金属板とを接合する接合層のうち、金属板の中心部を接合する部分と、金属板の端部を接合する部分とを比べると、端部を接合する接合層の方が剥離及び空隙等の欠陥が生じやすい。このような欠陥が生じると、ヒートサイクル特性及び電気特性が低下することが懸念される。金属板の端部を接合する接合層の方が欠陥が生じやすい要因としては、例えば次のようなことが考えられる。
【0008】
金属板とセラミック板とを例えばろう材層を用いて積層する際、金属板とセラミック板を積層方向に沿って加圧すると、ろう材層は、金属板の中心部付近では十分に加圧され、密に充填される。一方、金属板の端部付近では、ろう材は金属板とセラミック板との間から外部にはみ出すように移動するため、中心部付近よりも十分に加圧されない。このため、金属板の端部では、中心部付近よりもろう材が密に充填され難い。したがって、金属板の端部付近の方が接合層の剥離及び空隙等の欠陥が発生し、接合層が分断され易い傾向にある。
【0009】
本開示の回路基板の接合層は、金属板の端部とセラミック板との間から、金属板の中心部とセラミック板との間まで連なって形成されている。これによって、金属板とセラミック板とを強固に接合することができる。そして、金属板の端部とセラミック板の間における接合層の厚みDの方が、金属板の中心部とセラミック板の間における接合層の厚みDよりも大きくなっている。このような回路基板は、金属板の中心部とセラミック板との間よりも、金属板の端部とセラミック板との間におけるろう材層の厚みを大きくして製造することができる。このため、金属板の端部とセラミック板との間における接合層も十分に加圧された状態で形成されることとなる。これによって、金属板の端部付近における接合層の剥離及び空隙等の欠陥を抑制できる。したがって、本開示の回路基板は、セラミック板と金属板との接合信頼性に優れる。また、接合層における欠陥の発生を抑制することによって、電圧を印加したときに電荷が集中する放電源を低減して電気特性を向上することができる。
【0010】
上記厚みDに対する上記厚みDの比は5以上であってよい。これによって、金属板の端部付近における接合層の剥離及び空隙等の欠陥を十分に低減することができる。したがって、セラミック板と金属板との接合信頼性を一層向上することができる。
【0011】
本開示の回路基板は、上記断面でみたときに、セラミック板と金属板との間における接合層の空隙部の面積の最大値が1000μm以下であってよい。このような回路基板は、一層優れた接合信頼性を有する。
【0012】
上記断面でみたときに、接合層は、金属板の側面における下端よりも外側にはみ出すように形成されるはみ出し部を有し、接合層の厚みDに対する、はみ出し部の長さLの比が0.1以上であってよい。通常、セラミック板と金属板の熱膨張係数は異なるため、ヒートサイクルによって熱応力が発生する。このような熱応力は、金属板の端部における接合層に集中して発生する。上記接合層のはみ出し部は、十分に長い長さLを有するため、熱応力を十分に緩和することができる。このような回路基板はヒートサイクルに対する耐久性に優れる。
【0013】
上記断面でみたときに、上記接合層は、その中心部から端部に向かうにつれて厚みが大きくなる勾配部を有してよい。このような接合層は、セラミック板と金属板とをろう材を用いて接合する際に、金属板の中心部から端部に向かって接合層となるろう材が円滑に流動し、ろう材が万遍なく塗り拡げられて形成される。これによって、端部のみならず、中心部においても接合層の欠陥を十分に低減することができる。これによって、回路基板の接合信頼性を一層向上することができる。
【0014】
上記断面でみたときに、金属板は凸形状を有しており、金属板の凸面が接合層によってセラミック板と接合されてよい。これによって、回路端部における接合を十分良好にしつつ、回路基板の主面にろう材が流れ出すことを抑制して回路基板の外観を向上することができる。凸面における凸部の高さは10~100μmであってよい。これによって、回路端部における接合を一層良好にすることができる。また、回路基板の主面にろう材が流れ出すことを十分に抑制して回路基板の外観を一層向上することができる。
【0015】
本開示の一側面に係る回路基板の製造方法は、セラミック板の主面にろう材を塗布してろう材層を設ける工程と、ろう材層を挟むようにしてセラミック板と金属板とを積層して積層体を作製する工程と、積層体を加熱してセラミック板と金属板とが接合層で接合された接合体を得る工程と、を有し、ろう材層を設ける際に、金属板の中心部に接触するろう材層の第1部分の厚みよりも、金属板の端部に接触するろう材層の第2部分の厚みを大きくする。
【0016】
金属板とセラミック板とをろう材層を介して積層する際、金属板とセラミック板を積層方向に沿って加圧すると、ろう材は、金属板の中心部付近では十分に加圧され、密に充填される。一方、金属板の端部付近では、ろう材は金属板とセラミック板との間から外部にはみ出すように移動するため十分に加圧されない。このため、金属板の端部では、中心部付近よりもろう材が密に充填され難い。したがって、金属板の端部付近の方が金属板とセラミック板を接合する接合層の剥離及び空隙等の欠陥が発生し易い傾向にある。
【0017】
そこで、上記製造方法では、セラミック板の主面にろう材を塗布してろう材層を設ける際に、金属板の中心部に接触するろう材層の第1部分の厚みよりも、金属板の端部に接触するろう材層の第2部分の厚みを大きくしている。このため、ろう材層を挟むようにして金属板とセラミック板とを積層する際、金属板の端部に接触する第2部分も十分に加圧される。これによって、回路基板を形成したときに、金属板の端部における接合層の剥離及び空隙等の欠陥を抑制できる。したがって、セラミック板と金属板との接合信頼性に優れる回路基板を製造することができる。このような回路基板は、接合層における欠陥の発生を抑制することによって、電圧を印加したときに電荷が集中する放電源を低減して電気特性を向上することができる。
【0018】
上記第2部分は、上記第1部分よりもろう材の塗布回数を多くすることによって形成してもよい。これによって、第1部分よりも厚みの大きい第2部分を円滑に形成することができる。
【0019】
上記第1部分におけるろう材の塗布回数をn回、上記第2部分におけるろう材の塗布回数をn回としたときに、n-n≧2を満たすようにしてろう材を塗布してろう材層を設けてもよい。このような製造方法であれば、第2部分の厚み及び第1部分と第2部分の厚みの差を十分に大きくすることができる。したがって、金属板の端部付近における接合層の剥離及び空隙等の欠陥を一層低減し、接合信頼性に一層優れる回路基板を製造することができる。
【0020】
上記製造方法で得られる回路基板は、セラミック板の主面に直交し、金属板の中心部、ろう材層及びセラミック板を通る断面でみたときに、金属板の端部とセラミック板との間における接合層の厚みDの方が、金属板の中心部とセラミック板との間における接合層の厚みDよりも大きくてよい。接合層は、金属板の端部とセラミック板との間から、金属板の中心部とセラミック板との間まで連なって形成されていてよい。このような回路基板は、セラミック板と金属板との接合信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0021】
本開示は、セラミック板と金属板との接合信頼性に優れる回路基板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、回路基板の平面図である。
図2図2は、図1の回路基板のII-II線断面図である。
図3図3は、図2の断面の一部を拡大して示す拡大断面図である。
図4図4は、回路基板の製造方法を説明するための模式断面図である。
図5図5は、実施例1の回路基板の断面のSEM写真である。
図6図6は、実施例1の回路基板の断面のSEM写真である。
図7図7は、実施例2の回路基板の断面のSEM写真である。
図8図8は、比較例1の回路基板の断面のSEM写真である。
図9図9(A)は、実施例1の回路基板の光学電子顕微鏡写真である。図9(B)は、実施例2の回路基板の光学電子顕微鏡写真である。図9(C)は、比較例1の回路基板の光学電子顕微鏡写真である。
図10図10(A)は、実施例1の回路基板の超音波探傷検査(SAT)の画像である。図10(B)は、実施例2の回路基板の超音波探傷検査(SAT)の画像である。図10(C)は、比較例1の回路基板の超音波探傷検査(SAT)の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。複数の成分が例示されている場合、特に断らない限り、複数の成分の少なくとも一つを含んでいてもよいし、任意に組み合わされる複数の成分を含んでいてもよい。「~」の記号で示される数値範囲は、下限値及び上限値を含む。すなわち、「A~B」で示される数値範囲は、A以上且つB以下を意味する。
【0024】
一実施形態に係る回路基板は、セラミック板と、金属板と、セラミック板と金属板とを接合する接合層と、を備える。セラミック板の材質は特に制限されず、例えば、窒化物焼結体、炭化物焼結体、又は酸化物焼結体で構成されていてよい。具体的には、窒化ケイ素焼結体、窒化アルミニウム焼結体、酸化アルミニウム焼結体、及び炭化ケイ素焼結体等が挙げられる。セラミック板の板状であれば特に制限されない。セラミック板の厚みは、例えば0.2~2mmであってよく、0.32~1.1mmであってもよい。
【0025】
金属板は、例えば銅板であってよい。形状は板状であれば特に制限されない。金属板の厚みは、例えば0.1~1.2mmであってよく、0.2~0.8mmであってもよい。金属板は表面にめっき膜を有していてもよい。金属板は、一方及び他方の主面が凸状になっていてもよい。金属板は、一方の主面が凸状、他方の主面が凹状になるように反りを有していてもよい。また、金属板の少なくとも一方の主面は、中心部の方が端部よりも突出するようなテーパー面となっていてもよい。
【0026】
接合層は、銀、銅、錫、及び活性金属からなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属を含有してよい。二種以上の金属は合金となっていてもよい。活性金属は、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、及びニオブからなる群より選ばれる一種又は二種以上を含んでいてよい。
【0027】
接合層は、銀、銅及びこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。接合層に含まれる銀及び銅は、例えばAg-Cu共晶合金等の合金として接合層に含まれていてもよい。接合層における銀の含有量は、Ag換算で60~95質量%であってよい。接合層における銀及び銅の含有量は、それぞれAg及びCuに換算して75~100質量%であってよく、85~99質量%であってよく、90~98質量%であってもよい。これによって、接合層における残留応力を十分に低減しつつ、接合層の緻密性を向上することができる。
【0028】
接合層における活性金属の含有量は、Ag及びCuの合計100質量部に対して、0.5~5質量部であってよい。活性金属の含有量を0.5質量部以上とすることで、セラミック板と接合層との接合性を向上することができる。一方、活性金属の含有量を5質量部以下とすることで、接合界面に脆弱な合金層が形成されることを抑制できる。
【0029】
接合層に含有される上記金属は、窒化物、酸化物、炭化物又は水素化物として含まれていてもよい。一例として、接合層は、窒化チタン及び/又は水素化チタン(TiH)を含んでいてよい。これによって、セラミック板と金属板との接合強度を十分に高くすることができる。AgとCuの合計100質量部に対するTiHの含有量は例えば1~8質量部であってよい。
【0030】
接合層に含まれる窒化チタン相は、接合層のセラミック板との接触面において層状に形成されていてもよい。接合層の全体にわたって、窒化チタン相が層状に連なって形成されていてもよい。窒化チタン相が層状に連なって形成されることによって、セラミック板と金属板との接合強度を一層高くすることができる。窒化チタン相が層状に連なっていることは、断面を例えば電子線マイクロアナライザ(EPMA)によって確認することができる。ここで、本開示における断面とは、接合層が設けられるセラミック板の主面に直交し、金属板の中心部、接合層及びセラミック板を通る断面である。
【0031】
上記断面でみたときに、金属板の端部とセラミック板との間における接合層の厚みDの方が、金属板の中心部とセラミック板との間における接合層の厚みDよりも大きい。このような回路基板は、セラミック板と金属板との接合信頼性に優れる。本開示における接合層の厚みD及び厚みDの測定方法は後述する。
【0032】
図1は、本実施形態の回路基板の一例を示す平面図である。回路基板100は、セラミック板10と、セラミック板10の主面10Aに接合層31を介して接合された金属板21を有する。この例では、セラミック板10の主面10Aに2つの金属板21が設けられているが、これに限定されない。例えば、金属板は一つであってよく、3つ以上であってもよい。また複数の金属板の形状は、互いに同じであってよく、異なっていてもよい。図1に示すような平面視において、接合層31は、金属板21の外縁に沿って、金属板21を取り囲むように形成されるはみ出し部31Aを有する。
【0033】
図2は、図1の回路基板のII-II線断面図である。すなわち、図2は、接合層31が設けられるセラミック板10の主面10A(主面10B)に直交し、金属板21(金属板22)の中心部21C(中心部22C)、接合層31(接合層32)及びセラミック板10を通る断面を示している。接合層31は、金属板21の端部21Eとセラミック板10との間から、金属板21の中心部21Cとセラミック板10との間まで連なって形成されている。すなわち、接合層31は、その中心部31Cから端部31Eまで分断されることなく繋がっている。
【0034】
回路基板100は、セラミック板10の主面10Aとは反対側の主面(主面10B)にも、金属板22が設けられている。金属板22も、金属板21と同様に接合層32を介してセラミック板10の主面10Bに接合されている。この例では、主面10Bにも金属板22が設けられているが、これに限定されない。すなわち、セラミック板の一方の主面のみに金属板が設けられていてもよい。主面10A及び主面10Bに接合される金属板の形状、サイズ及び個数は、互いに同じであってよく異なっていてもよい。
【0035】
図3は、図2に示す断面のうち、金属板21の端部21E、及び接合層31の端部31E付近を拡大して示す拡大断面図である。金属板21の端部21Eとセラミック板10の間における接合層31の厚みDは、次のようにして測定される。金属板21の側面21Sの下端70(金属板21と接合層31の境界)を基準とし、下端70からの距離がW(W=100μm)となるように主面10Aと直交する仮想直線VL1を描く。このとき、距離Wは、主面10Aに沿って計測される。このようにして描いた仮想直線VL1に沿う接合層31の厚みが「厚みDE」となる。
【0036】
厚みDは、金属板21とセラミック板10との接合強度を十分に高くする観点から、例えば、20μm以上であってよく、30μm以上であってよく、40μm以上であってよい。一方、厚みDは、高価な銀を節約する観点から、100μm以下であってよく、80μm以下であってよく、60μm以下であってよい。厚みDの範囲の一例は、20~100μmである。図2図3)に示すような断面を複数みたときに、厚みDは、断面毎に異なっていてもよい。いずれの断面においても、厚みDは、上述の範囲であってよい。
【0037】
金属板21の中心部21Cとセラミック板10との間における接合層31の厚みDは、次のようにして測定される。図2に示すように、金属板21の主面21Aの中心から、セラミック板10の主面10Aに直交するように仮想直線VL2を描く。図2の仮想直線VL2と図3の仮想直線VL1は互いに平行であってよい。このようにして描いた仮想直線VL2に沿う接合層31の厚みが「厚みD」となる。
【0038】
厚みDは、金属板21とセラミック板10との接合強度を十分に高くする観点から、例えば、1μm以上であってよく、2μm以上であってよく、3μm以上であってよい。一方、厚みDは、粉末を含むろう材の融解時間を短縮する観点から、15μm以下であってよく、10μm以下であってよく、8μm以下であってよい。厚みDの範囲の一例は、1~15μmである。図2図3)に示すような断面を複数みたときに、厚みDは、断面毎に異なっていてもよい。いずれの断面においても、厚みDは、上述の範囲であってよい。
【0039】
接合層31の端部31Eの厚みDの方が接合層31の中心部31Cの厚みDよりも大きい。すなわち、D>Dの関係が成立する。このような接合層31は、端部31E付近においても、十分に加圧された状態で形成される。このため、端部31Eにおいて金属板21が剥離したり、接合層31に空隙が発生したりすることを抑制できる。剥離及び空隙の発生を十分に抑制する観点から、厚みDに対する厚みDの比(D/D)は、5以上であってよく、6以上であってもよい。一方、接合層31の中心部31Cにおける接合強度を維持する観点から、厚みDに対する厚みDの比(D/D)は20以下であってよく、15以下であってもよい。厚みDに対する厚みDの比(D/D)の範囲の一例は、5~20である。
【0040】
図2及び図3に示すように、接合層31は、接合層31の厚みが中心部31Cから端部31Eに向かうにつれて厚みが大きくなる勾配部35を有していてよい。このような勾配部35を有する接合層31は、セラミック板10と金属板21とをろう材を用いて接合する際に、中心部31Cから端部31Eに向かって接合層31となるろう材が十分円滑に流動して形成される。このような接合層31は、ろう材が十分に万遍なく拡がって形成される。したがって、接合層31の端部31E付近のみならず、中心部31C付近においても接合層31の欠陥を十分に低減することができる。図2に示すように、接合層31は、中心部31Cよりも端部31E寄りに勾配部35を有していてよい。これによって、端部31Eにおける欠陥の発生を一層抑制することができる。
【0041】
回路基板100の接合層31は、図2及び図3に示すように、金属板21の下端70よりも外側にはみ出すように形成されるはみ出し部31Aを有する。はみ出し部31Aは、セラミック板10の主面10Aに向かってスカート状に拡がっていてよい。このようなはみ出し部31Aを有することによって、セラミック板10と金属板21の熱膨張係数の違いに起因して接合層31の端部に生じる熱応力の集中を緩和することができる。熱応力の集中を十分に緩和する観点から、はみ出し部31Aの長さLは、5μm以上であってよく、10μm以上であってよく、30μm以上であってよく、50μm以上であってもよい。はみ出し部31Aの長さLは、例えば、セラミック板10のサイズとの兼ね合いから、500μm以下であってよく、300μm以下であってもよい。はみ出し部31Aの長さLの範囲の一例は、5~500μmである。
【0042】
はみ出し部31Aの長さLは、次のようにして測定される。図3に示すように、セラミック板10の主面10Aにおけるはみ出し部31Aの端点E1を通り、主面10Aに直交する仮想直線VL3を描く。仮想直線VL3は、仮想直線VL1と平行である。金属板21の側面21Sの下端70(金属板21と接合層31の境界)と仮想直線VL3との最短距離が「長さL」となる。図2図3)に示すような複数の断面をみたときに、はみ出し部31Aの長さLは、断面毎に異なっていてもよい。いずれの断面においても、長さLは上述の範囲であってよい。
【0043】
接合層31の厚みDに対する、はみ出し部31Aの長さLの比(L/D)は、0.1以上であってよく、0.5以上であってよく、1以上であってもよい。このような接合層31は、十分に長い長さLのはみ出し部31Aを有するため、熱応力を十分に緩和することができる。このような回路基板100はヒートサイクルに対する耐久性に優れる。厚みDに対する長さLの比(L/D)は、セラミック板10のサイズとの兼ね合いから、10以下であってよく、5以下であってよく、3以下であってもよい。厚みDに対する長さLの比(L/D)の範囲の一例は、0.1~10である。
【0044】
接合層31における空隙部は小さいほうが好ましく、接合層31は空隙部を有しないことが好ましい。空隙部は、セラミック板10と金属板21との未接合部となる。このため、空隙部が大きくなるとセラミック板10と金属板21との剥離が発生し易くなり、接合信頼性が低下する。回路基板100の接合信頼性向上の観点から、空隙部の面積の最大値は1000μm以下であってよく、500μm以下であってよく、300μm以下であってもよい。空隙部の面積は図2及び図3に示すように、セラミック板10の主面10Aに直交し、金属板21の中心部21C、接合層31及びセラミック板10を通る断面において測定される。具体的には、この断面のSEM(走査型電子顕微鏡)を観察し、空隙部を含む領域を画像処理することによって求めてもよい。
【0045】
図2の断面でみたときに、金属板21,22は凸形状を有している。金属板21,22の一方の主面が凸面となっており、当該凸面が接合層31,32と接している。すなわち、金属板21,22の凸面が接合層31,32によってセラミック板10と接合されている。凸面における凸部の高さは10~100μmであってよい。凸部の高さを10μm以上にすることによって、金属板21,22の端部に接する部分にろう材を複数回塗布した場合にろう材が過剰となることを抑制できる。これによって、主面10A,10Bに流れ出すことを十分に抑制し、回路基板100の外観を十分に向上することができる。凸部の高さを、100μm以下にすることによって、金属板21,22の端部に接する部分のろう材が不足することを回避し、金属板21,22の端部(回路端部)の接合性を十分に向上することができる。凸部の高さは、厚みDと厚みDの差(D-D)として求めることができる。すなわち、凸部の高さは、金属板21,22の外縁における高さを基準として測定される。
【0046】
セラミック板10の主面10B側に設けられる接合層32及び金属板22の構造及び形状は、主面10A側に設けられる接合層31及び金属板21と同じである。回路基板100がパワーモジュールに搭載されたときに、金属板21及び金属板22は、電気信号を伝達する機能を有する回路板、又は熱を伝達する機能を有する放熱板として機能してよい。また、金属板21,22は、熱を伝達する機能と、電気信号を伝達する機能を兼ね備えていてもよい。変形例では、一対の主面のそれぞれに設けられる接合層及び金属板の構造及び形状は、互いに異なっていてもよい。
【0047】
一実施形態に係る回路基板の製造方法は、セラミック板の主面にろう材を塗布してろう材層を設ける工程と、ろう材層を挟むようにしてセラミック板と金属板とを積層して積層体を作製する工程と、積層体を加熱してセラミック板と金属板とが接合層で接合された接合体を得る工程と、を有する。
【0048】
各工程の詳細について説明する。まず、無機化合物の粉末、バインダ樹脂、焼結助剤、可塑剤、分散剤、及び溶媒等を含むスラリーを成形してグリーンシートを作製する。無機化合物の例としては、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)、炭化ケイ素、及び酸化アルミニウム等が挙げられる。焼結助剤としては、希土類金属、アルカリ土類金属、金属酸化物、フッ化物、塩化物、硝酸塩、及び硫酸塩等が挙げられる。これらは一種のみ用いてもよいし二種以上を併用してもよい。焼結助剤を用いることにより、無機化合物粉末の焼結を促進させることができる。バインダ樹脂の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、及び(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0049】
可塑剤の例としては、精製グリセリン、グリセリントリオレート、ジエチレングリコール、ジ-n-ブチルフタレート等のフタル酸系可塑剤、及びセバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等の二塩基酸系可塑剤等が挙げられる。分散剤の例としては、ポリ(メタ)アクリル酸塩、及び(メタ)アクリル酸-マレイン酸塩コポリマーが挙げられる。溶媒としては、エタノール及びトルエン等の有機溶媒が挙げられる。
【0050】
スラリーの成形方法の例としては、ドクターブレード法及び押出成形法が挙げられる。次に、成形して得られたグリーンシートを脱脂して焼結する。脱脂は、例えば、400~800℃で、0.5~20時間加熱して行ってよい。これによって、無機化合物の酸化及び劣化を抑制しつつ、有機物(炭素)の残留量を低減することができる。焼結は、窒素、アルゴン、アンモニア又は水素等の非酸化性ガス雰囲気下、1700~1900℃に加熱して行ってよい。これによって、例えばセラミック板10を得ることができる。必要に応じてセラミック板のレーザー加工を行い、端部を切断したり、セラミック板の主面にスクライブラインを設けたりしてもよい。
【0051】
上述の脱脂及び焼結は、グリーンシートを複数積層した状態で行ってもよい。積層して脱脂及び焼結を行う場合、焼成後の基材の分離を円滑にするため、グリーンシート間に離型剤による離型層を設けてよい。離型剤としては、例えば、窒化ホウ素(BN)を用いることができる。離型層は、例えば、窒化ホウ素の粉末のスラリーを、スプレー、ブラシ、ロールコート、又はスクリーン印刷等の方法により塗布して形成してよい。積層するグリーンシートの枚数は、セラミック板の量産を効率的に行いつつ、脱脂を十分に進行させる観点から、例えば8~100枚であってよく、30~70枚であってもよい。
【0052】
このようにして得られたセラミック板の主面に、ろう材を塗布する。ろう材は、例えば、Ag、Cu、Sn、活性金属、及びこれらを構成元素とする金属化合物、有機溶媒、並びにバインダ等を含有する。ろう材の粘度(20℃)は、例えば5~20Pa・sであってよい。ろう材における有機溶媒の含有量は、例えば、5~25質量%、バインダの含有量は、例えば、2~15質量%であってよい。
【0053】
セラミック板の主面に、ロールコーター法、スクリーン印刷法、又は転写法等の方法によってろう材を塗布してろう材層を設ける。ろう材層を設ける際に、金属板の中心部に接触するろう材層の第1部分の厚みよりも、金属板の端部に接触するろう材層の第2部分の厚みを大きくする。塗布条件を変えてろう材層の厚みを変更し、互いに厚みの異なる第1部分と第2部分を設けてもよい。ろう材の塗布回数を変えて、互いに厚みの異なる第1部分と第2部分を設けてもよい。すなわち、第2部分は、第1部分よりもろう材の塗布回数を多くすることによって形成してもよい。これによって、セラミック板の主面上に、簡便に互いに厚みの異なる第1部分と第2部分を設けることができる。
【0054】
図4は、回路基板の製造方法の一例を説明するための模式断面図である。この例では、セラミック板10の主面10A,10Bにろう材を塗布して第1部分81と第2部分82を形成している。第1部分81では、ろう材の塗布を1回のみ行って第1ろう材層41が形成されている。一方、第2部分82では、ろう材の塗布を3回行って、第1ろう材層41の上に、第2ろう材層42及び第3ろう材層43がこの順に設けられている。第1部分81及び第2部分82のろう材層の積層数は特に限定されない。例えば、第1部分81を2層構造とし、第2部分82を4層構造としてもよい。
【0055】
このようにろう材層が設けられたセラミック板10の主面10A及び主面10Bに、金属板21及び金属板22をそれぞれ貼り合わせて積層する。金属板21,22の主面21B,22Bは、セラミック板10の主面10A,10Bに対して、それぞれ凸状となるようなテーパー面(凸面)になっている。このため、金属板21,22は、それぞれ、端部21E,22Eの厚みの方が、中心部21C,22Cの厚みより小さくなっている。なお、このような金属板21,22を用いることに限定されず、例えば、セラミック板10に対向する主面21B,22Bが凸形状となるように反っている金属板を用いてもよい。
【0056】
金属板21,22をセラミック板10に向かう方向(図4の矢印方向)に押圧して積層体を得る。押圧に伴って、ろう材層が円滑に拡がって、ろう材層でセラミック板と金属板21,22とが良好に接着された積層体が得られる。得られた積層体を、加熱炉で加熱してセラミック板10と金属板21,22とを接合し接合体を得る。加熱温度は例えば700~900℃であってよい。炉内の雰囲気は窒素等の不活性ガスであってよく、大気圧未満の減圧下で行ってもよいし、真空下で行ってもよい。加熱炉は、複数の接合体を連続的に製造する連続式のものであってもよいし、一つ又は複数の接合体をバッチ式で製造するものであってもよい。加熱は、接合体を上記積層体の積層方向に押圧しながら行ってもよい。
【0057】
積層体を加熱すると、各ろう材層は流動しつつ金属板と反応し、接合層が形成される。このようにして、セラミック板の主面に直交し、金属板の中心部、接合層及びセラミック板を通る断面でみたときに、端部における厚みDの方が、中心部における厚みDよりも大きい接合層が形成される。その後、金属板にめっき膜を形成する等の表面処理を行ってよい。このとき、接合層の形状を整える切削加工等を行ってもよい。このようにして、例えば、回路基板100を製造することができる。
【0058】
上記製造方法において、第1部分におけるろう材の塗布回数をn回、第2部分におけるろう材の塗布回数をn回としたときに、n-n≧2を満たすようにしてろう材を塗布してろう材層を設けてもよい。これによって、金属板の端部とセラミック板との間における接合層の厚みDを、金属板の中心部とセラミック板との間における接合層の厚みDよりも十分に大きくすることができる。
【0059】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、セラミック板に複数の接合層及び金属板が設けられる場合、全ての接合層が上述の構造である必要はなく、少なくとも一つの接合層において、端部の厚みDの方が中心部の厚みDよりも大きければよい。上記各実施形態で具体的に記載された上限値及び下限値を任意に組み合わせた数値範囲も、本開示に含まれる。また、上限値及び/又は下限値を、以下に説明する実施例の値で置換した数値範囲も本開示に含まれる。
【0060】
本開示は、以下の[1]~[11]の内容を含む。
[1]セラミック板と、金属板と、前記セラミック板と前記金属板とを接合する接合層と、を備え、
前記接合層が設けられる前記セラミック板の主面に直交し、前記金属板の中心部、前記接合層及び前記セラミック板を通る断面でみたときに、前記金属板の端部と前記セラミック板との間における前記接合層の厚みDの方が、前記金属板の前記中心部と前記セラミック板との間における前記接合層の厚みDよりも大きくなっており、
前記接合層は、前記金属板の前記端部と前記セラミック板との間から、前記金属板の前記中心部と前記セラミック板との間まで連なって形成されている、回路基板。
[2]前記厚みDに対する前記厚みDの比が5以上である、[1]に記載の回路基板。
[3]前記断面でみたときに、前記セラミック板と前記金属板との間における前記接合層の空隙部の面積の最大値が1000μm以下である、[1]又は[2]に記載の回路基板。
[4]前記断面でみたときに、前記接合層は、前記金属板の側面における下端よりも外側にはみ出すように形成されるはみ出し部を有し、前記接合層の前記厚みDに対する、前記はみ出し部の長さLの比が0.1以上である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の回路基板。
[5]前記断面でみたときに、前記接合層は、その中心部から端部に向かうにつれて厚みが大きくなる勾配部を有する、[1]~[4]のいずれか一つに記載の回路基板。
[6]前記断面でみたときに、前記金属板は凸形状を有しており、前記金属板の凸面が前記接合層によって前記セラミック板と接合されている、[1]~[5]のいずれか一つに記載の回路基板。
[7]前記凸面における凸部の高さが10~100μmである、[6]に記載の回路基板。
[8]セラミック板の主面にろう材を塗布してろう材層を設ける工程と、
前記ろう材層を挟むようにして前記セラミック板と金属板とを積層して積層体を作製する工程と、
前記積層体を加熱して前記セラミック板と前記金属板とが接合層で接合された接合体を得る工程と、を有し、
前記ろう材層を設ける際に、前記金属板の中心部に接触する前記ろう材層の第1部分の厚みよりも、前記金属板の端部に接触する前記ろう材層の第2部分の厚みを大きくする、回路基板の製造方法。
[9]前記第2部分は、前記第1部分よりも前記ろう材の塗布回数を多くすることによって形成する、[8]に記載の回路基板の製造方法。
[10]前記第1部分における前記ろう材の塗布回数をn回、前記第2部分における前記ろう材の塗布回数をn回としたときに、n-n≧2を満たすようにして前記ろう材を塗布して前記ろう材層を設ける、[8]又は[9]に記載の回路基板の製造方法。
[11]前記セラミック板の主面に直交し、前記金属板の中心部、前記接合層及び前記セラミック板を通る断面でみたときに、前記金属板の端部と前記セラミック板との間における前記接合層の厚みDの方が、前記金属板の前記中心部と前記セラミック板との間における前記接合層の厚みDよりも大きくなっており、
前記接合層は、前記金属板の前記端部と前記セラミック板との間から、前記金属板の前記中心部と前記セラミック板との間まで連なって形成されている、[8]~[10]のいずれか一つに記載の回路基板の製造方法。
【実施例
【0061】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
[回路基板の作製]
厚さ0.32mmの窒化ケイ素製のセラミック板、複数の銅製の金属板(縦×横×厚さ=35mm×35mm×0.8mm)及びろう材を準備した。金属板は、打ち抜き加工によって得られたものであり、一方の主面が凸形状、他方の主面が凹形状となるように反っているものを準備した。ろう材は、Ag、Cu、Sn、及びTiHを含んでいた。AgとCuの質量比は9:1であった。ろう材は、AgとCuの合計100質量に対し、Snを3質量部、及びTiHを3.5質量部含んでいた。
【0063】
セラミック板の両主面の所定箇所に、スクリーン印刷でろう材を塗布した。このとき、図4に示すように、金属板の端部が接触する部分にはろう材を三度塗りして、3層構造の第2部分を形成した。一方、金属板の中心部が接触する部分は、1層構造の第1部分を形成した。ろう材層を形成した後、ろう材層を介してセラミック板の主面に金属板を貼り合わせた。このとき、金属板の凸形状の主面とセラミック板の主面とが対向するように貼り合わせた。
【0064】
セラミック板の主面上の金属板をセラミック板に向けて0.015MPaでプレスして積層体を得た。セラミック板の主面に合計24枚の金属板を貼り合わせた。その後、積層体を、真空中、790℃で1時間加熱した。このようにしてセラミック板の主面に接合層を介して金属板が接合された接合体を得た。その後、Ni-Pめっき液(リン濃度:8~12質量%)を用いて無電解メッキ処理を行い、金属板上にめっき膜を有する回路基板を形成した。
【0065】
[回路基板の評価]
セラミック板の主面に直交する方向に沿って、金属板の中心部、接合層及びセラミック板を通るように回路基板を切断した。切断して得られた断面をSEMで観察した。図5及び図6は、実施例1の回路基板の断面を撮影したSEM写真である。このような断面画像から、接合層の端部の厚みD、接合層の中心部の厚みD、及び、はみ出し部の長さLを測定した。また、接合層における空隙部(ボイド)の有無を調べた。結果は表1に示すとおりであった。
【0066】
図5図6は互いに異なる位置を撮影したSEM写真である。図6の方が図5よりも高倍率の断面画像を示している。実施例1の回路基板において、金属板21の端部とセラミック板10との間における接合層31の厚みDは、金属板21の中心部とセラミック板10との間における接合層31の厚みDよりも大きかった。厚みDは、金属板の側面の下端(銅回路板と接合層との境界)から、内部に距離W(=100μm)移動した位置において測定した。具体的な測定手順は以下のとおりとした。
【0067】
金属板21の側面に凹凸があったため、まず、金属板21の側面の下端をとおり、セラミック板10の主面に直交する仮想直線VL0を描いた。そして、仮想直線VL0と互いに平行で仮想直線VL0との間隔が100μmとなるように仮想直線VL1を描いた。この仮想直線VL1上において、接合層31の厚みDを測定した。
【0068】
実施例1の回路基板の接合層31には空隙部はなかった。接合層31のはみ出し部は、セラミック板10の主面に向かってスカート状に拡がる形状を有していた。このはみ出し部の長さLは、セラミック板10の主面におけるはみ出し部31Aの端点E1を通り、主面10Aに直交する仮想直線VL3と、これに平行な仮想直線VL0との距離として求めた。金属板21の凸面(接合層との接触面)における凸部の高さを、計算式(D-D)によって算出した。
【0069】
(実施例2)
セラミック板にろう材を塗布する際、金属板の端部が接触する部分にろう材を二度塗りして2層構造の第2部分を形成したこと以外は、実施例1と同様にして回路基板を形成し、評価を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0070】
図7は、実施例2の回路基板の断面を撮影したSEM写真である。実施例2の回路基板において、金属板21の端部とセラミック板10との間における接合層31の厚みDは、金属板21の中心部とセラミック板10との間における接合層31の厚みDよりも大きかった。図7に示す断面には空隙部がなかったが、別の断面では空隙部があった。最も大きい面積を有する空隙部の面積Sは表1に示すとおりであった。空隙部の面積Sは、SEM画像を画像処理して求めた。
【0071】
(比較例1)
セラミック板にろう材を塗布する際、金属板の端部が接触する部分にろう材の重ね塗りを行わず、ろう材層を全て1層構造としたこと以外は、実施例1と同様にして回路基板を形成し、評価を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0072】
図8は、比較例1の回路基板の断面を撮影したSEM写真である。金属板121の端部とセラミック板110の間には、接合層131が形成されていなかった。接合層131は、金属板121の端部とセラミック板110との間から、金属板121の中心部とセラミック板110との間まで連なっておらず、分断されていた。
【0073】
【表1】
【0074】
[光学顕微鏡観察の結果]
図9は、実施例1、実施例2及び比較例1の回路基板を側方から撮影した光学電子顕微鏡写真である。図9の写真(A)は実施例1の回路基板である。図9の写真(B)は実施例2の回路基板である。図9の写真(C)は比較例1の回路基板である。写真(A)、写真(B)及び写真(C)では、いずれも上側に金属板の一部、下側にセラミック板の一部、及び、その間に接合層が示されている。
【0075】
図9の写真(C)では、接合層の端部に空隙部が露出していることが確認できた(四角枠の内部)。図9の写真(A)及び(B)では、空隙部は露出していなかった。図9の写真(A)、(B)及び(C)を対比すると、実施例1の接合層の厚みが最も大きく、比較例1の接合層の厚みが最も小さかった。
【0076】
[超音波探傷検査の結果]
図10は、実施例1、実施例2及び比較例1の回路基板の超音波探傷検査(SAT)の画像である。図10の画像(A)は実施例1の回路基板である。図10の画像(B)は実施例2の回路基板である。図10の画像(C)は比較例1の回路基板である。図10の画像(C)では幾つかの金属板の端部が白くなっていた(図中、丸印で示している)。この白色部分は、接合層に空隙部があることを示している。図10の画像(B)でも、幾つかの金属板を接合する接合層に空隙部があることが確認された。これに対し、図10の画像(A)では空隙部は一切確認されたなかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示によれば、接合信頼性に優れる回路基板、及びその製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0078】
10,110…セラミック板、10A,10B,21A,21B,22B…主面、31,32,131…接合層、21,22,121…金属板、21C,22C,31C…中心部、21E,22E,31E…端部、21S…側面、41…第1ろう材層、42…第2ろう材層、43…第3ろう材層、31A…はみ出し部、35…勾配部、70…下端、81…第1部分、82…第2部分、100…回路基板。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10