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特許7555495電気的に駆動される車両の電気エネルギ蓄積部を充電するための方法および充電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電気的に駆動される車両の電気エネルギ蓄積部を充電するための方法および充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20240913BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20240913BHJP
   B60L 53/20 20190101ALI20240913BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H02J7/10 B
B60L53/14
B60L53/20
H02J7/00 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023536347
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2021085823
(87)【国際公開番号】W WO2022136044
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】102020007867.2
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・アスパッハー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・ベネッケ
(72)【発明者】
【氏名】ウルス・ベーメ
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102020004780(DE,A1)
【文献】特開2019-004593(JP,A)
【文献】特開2016-010193(JP,A)
【文献】特開2016-226281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/10
B60L 53/14
B60L 53/20
H02J 7/00
H02M 3/155
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に駆動される車両(3)の電気エネルギ蓄積部(4)を充電するための方法であって、
-前記電気的に駆動される車両(3)は、車両外部の充電源(2)に接続され、
-前記接続された前記車両外部の充電源(2)及び前記電気的に駆動される車両(3)の充電装置(6)を用いて、前記電気エネルギ蓄積部(4)の充電過程が実施され、
-前記電気エネルギ蓄積部(4)のバッテリ電圧(UBatt)が、前記充電過程中に決定され、
-前記電気エネルギ蓄積部(4)の前記バッテリ電圧(UBatt)が、前記充電装置(6)によって、前記車両外部の充電源(2)の充電電圧と比較され、
-前記バッテリ電圧(UBatt)と前記充電電圧との比較に応じて、前記電気的に駆動される車両(3)の前記充電装置(6)の電圧変成器(7)が作動されるものであり、
-前記電気エネルギ蓄積部(4)の充電過程の第1段階において、前記電気エネルギ蓄積部(4)は、前記車両外部の充電源(2)の充電電流(I)に応じて、前記車両外部の充電源(2)の前記充電電圧としての第1の直流電圧(U1)により充電されるものであり、
前記充電過程の前記第1段階において、前記電気エネルギ蓄積部(4)が、前記充電装置(6)のバイパス回路を用いて、前記車両外部の充電源(2)と直接的に接続され、前記車両外部の充電源(2)の前記充電電流(I)は、前記電気エネルギ蓄積部(4)に直接的に流れ、特に前記電圧変成器(7)が前記充電過程の前記第1段階において、前記バイパス回路(8)を用いて橋絡され、
-前記第1段階に続く前記充電過程の第2段階において、前記電気エネルギ蓄積部(4)は、前記充電電流(I)よりも低い、前記電圧変成器(7)のチョーク電流(I)に応じて、前記充電電圧よりも高い、前記電圧変成器(7)の第2の直流電圧(U2)により充電されるものであり、
前記充電過程の前記第2段階において、前記バイパス回路(8)は、少なくとも1つの分離素子(9)により無電流に切り換えられることにより、前記バイパス回路(8)を介する、前記電気エネルギ蓄積部(4)への、前記車両外部の充電源(2)の前記充電電流(I)の電流の流れが中断され、前記充電電流(I)は前記充電源(2)から前記電圧変成器(7)を介して流れることで、前記電気エネルギ蓄積部(4)は前記電圧変成器(7)を介して間接的に充電される、前記方法において、
前記充電過程の前記第2段階において、前記車両外部の充電源の前記充電電流(I)が、前記チョーク電流(I)に応じて適合され、特に、前記充電電流(I)の電流値が、前記チョーク電流(I)の電流値に適合されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記電気エネルギ蓄積部(4)の前記バッテリ電圧(UBatt)に応じて、前記電圧変成器(7)は、前記チョーク電流(I)が前記充電電流(I)に応じて前記電圧変成器(7)のチョーク(L)に印加されるように駆動されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
電気的に駆動される車両(3)の電気エネルギ蓄積部(4)を充電するための充電システム(1)であって、
-充電電圧を供給するための車両外部の充電源(2)と、
-前記電気的に駆動される車両(3)を前記車両外部の充電源(2)に接続するための、前記電気的に駆動される車両(3)の充電端子(5)と、
-前記電気エネルギ蓄積部(4)の充電過程を実施するための、前記電気的に駆動される車両(3)の充電装置(6)と、
-前記充電過程中に前記電気エネルギ蓄積部(4)のバッテリ電圧(UBatt)を決定するための決定装置(16)と、
-前記電気エネルギ蓄積部(4)の前記バッテリ電圧(UBatt)を、前記車両外部の充電源(2)の前記充電電圧と比較するように設計されている評価ユニット(17)と、
前記バッテリ電圧(UBatt)と前記充電電圧との比較に応じて、充電電流(I)より低いチョーク電流(I)を供給するための、前記充電装置(6)の電圧変成器(7)と、
を有し、
-前記充電装置(6)は、前記充電電流(I)に応じて、前記電気エネルギ蓄積部(4)を充電するためのバイパス回路(8)を有するものであり、
前記バイパス回路(8)は、前記車両外部の充電源(2)の正電位と、前記電気エネルギ蓄積部(4)の正電位と、の間に結線されており、且つ前記車両外部の充電源(2)の負電位と、前記電気エネルギ蓄積部(4)の負電位と、の間に結線されており、
-前記充電装置(6)は、前記電気エネルギ蓄積部(4)の前記充電過程の第1段階において、前記電気エネルギ蓄積部(4)を、前記車両外部の充電源(2)の充電電流(I)に応じて、前記電気エネルギ蓄積部(4)の前記車両外部の充電源(2)の充電電圧としての第1の直流電圧(U1)により、前記バイパス回路を介して充電可能であるように構成されており、
-前記充電装置(6)は、前記第1段階に続く前記充電過程の第2段階において、前記電気エネルギ蓄積部(4)を、前記電圧変成器(7)の前記チョーク電流(I)に応じて、前記充電電圧よりも高い前記電圧変成器(7)の第2の直流電圧(U2)により充電するように構成されており、
前記充電過程の前記第2段階において、前記バイパス回路(8)は、少なくとも1つの分離素子(9)により無電流に切り換えられることにより、前記バイパス回路(8)を介する、前記電気エネルギ蓄積部(4)への、前記車両外部の充電源(2)の前記充電電流(I)の電流の流れが中断され、前記充電電流(I)は前記充電源(2)から前記電圧変成器(7)を介して流れることで、前記電気エネルギ蓄積部(4)は前記電圧変成器(7)を介して間接的に充電可能である、前記充電システム(1)において、
前記車両外部の充電源の前記充電電流(I)は、前記チョーク電流(I)に応じて適合可能であり、特に、前記充電電流(I)の電流値は、前記チョーク電流(I)の電流値に適合可能であることを特徴とする、前記充電システム(1)。
【請求項4】
前記バイパス回路(8)の第1の端子側は、前記電圧変成器(7)の一次側に結線されており、前記バイパス回路(8)の第2の端子側は、前記電圧変成器(7)の二次側に結線されていることを特徴とする、請求項3記載の充電システム(1)。
【請求項5】
前記バイパス回路(8)の前記第1の端子側と、前記バイパス回路(8)の前記第2の端子側との間に、前記分離素子(9)が結線されており、前記分離素子(9)によって、前記電圧変成器(7)を橋絡可能であることを特徴とする、請求項4記載の充電システム(1)。
【請求項6】
前記電圧変成器(7)は、電流制御型の昇圧コンバータとして構成されていることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項記載の充電システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、請求項1の前文に記載の電気的に駆動される車両の電気ネルギ蓄積部を充電するための方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、請求項6の前文に記載の電気的に駆動される車両の電気エネルギ蓄積部を充電するための充電システムに関する。
【背景技術】
【0003】
電気的に駆動される車両、例えば電気車両は、最大800ボルトの電圧レベルを有する。これに対し、今日使用されているDC充電スタンドは、750ボルトの最大出力電圧しか供給しない。
【0004】
多くのDC充電ステーションは、最大500ボルトの出力電圧しか有していない。従って、電気車両を充電できるようにするためには、500ボルトの最大電圧レベルを有する充電ステーションへの下位互換性を使用することができる。この場合、相対的に低い電圧を、昇圧コンバータを用いて、相対的に高い電圧レベルに変換することができる。
【0005】
700ボルト充電ステーションにおいて800ボルト車両を充電する場合、車両の電圧レベルが750ボルト以下となるように車両を設計する必要があるか、又は電気車両も相応の昇圧コンバータを有することによって、最初からその昇圧コンバータを用いて充電過程を実施するように車両を設計する必要がある。もっとも、この場合、昇圧コンバータの性能が電気車両の稼働時間にとって決定的なものとなる。コスト及び/又は寸法(出力密度)に起因して、非常に高い出力(例えば150kW超)を有する昇圧コンバータが車両に搭載されることは好適ではない。典型的な出力値は例えば50kWであるか、又は最大150kWである。それにもかかわらず、充電時間を短く留められるようにし、且つ昇圧コンバータのコンバータ出力を小さくするために、先ず、充電ステーションと車両バッテリとを直接的に接続して充電過程を開始することが推奨される。充電ステーションの最大充電電圧に達すると即座に、直接的な接続が解消され、充電過程は昇圧コンバータを介して実施される。しかしながら、この場合、解決すべき2つの課題が生じる。充電ステーションによる直接的な充電過程と昇圧コンバータを用いる充電過程を切り換える際に、充電が中断される可能性がある。同様に、直接的な接続による充電から、昇圧コンバータを介する充電への移行時に、バイパス接触器が開放され、昇圧コンバータが充電を継続する可能性があり、DC充電ステーションの出力チョークに蓄積されるエネルギ量(W=0.5×L×i)に起因して、昇圧コンバータにおける電流が流れていないインダクタンスに切り換えられた際に、高い過電圧が発生する可能性があり、その結果、同様に、充電が中断される恐れがあるという危険も生じる可能性がある。
【0006】
例えば、容量性のエネルギ蓄積部(例えばチャージポンプ又は電圧ダブラ)を備えた昇圧コンバータでは、直接的な接続を介する充電から、昇圧コンバータを介する充電には円滑に移行させることができない。
【0007】
特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4には、誘導性のエネルギ蓄積部を基礎とするタイプの変成器が開示されている。これらのタイプの変成器は、直接的な接続から、昇圧コンバータを介する充電への移行がどのように行われるかに応じて、充電ステーションによる充電過程が意図せずに中断される可能性があるという欠点を有する。
【文献】DE10 2015 101 187 A1
【文献】DE10 2017 009 355 A1
【文献】DE10 2017 009 352 A1
【文献】DE10 2017 010 390 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、電気的に駆動される車両のDC充電過程を、充電の中断に関してより安全に構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、独立請求項に記載の方法及び充電システムによって解決される。有用な更なる構成は、従属請求項より明らかになる。
【0010】
本発明の一態様は、電気的に駆動される車両の電気エネルギ蓄積部を充電するための方法に関し、この方法においては、
-電気的に駆動される車両が、車両外部の充電源に接続され、
-接続された車両外部の充電源及び電気的に駆動される車両の充電装置を用いて、電気エネルギ蓄積部の充電過程が実施され、
-電気エネルギ蓄積部の充電過程の第1段階において、電気エネルギ蓄積部は、車両外部の充電源の充電電流に応じて、車両外部の充電源の充電電圧としての第1の直流電圧により充電されるものであり、
-電気エネルギ蓄積部のバッテリ電圧が、充電過程中に決定され、
-電気エネルギ蓄積部のバッテリ電圧が、充電装置によって、車両外部の充電源の充電電圧と比較され、
-バッテリ電圧と充電電圧との比較に応じて、電気的に駆動される車両の充電装置の電圧変成器が作動され、
-第1段階に続く充電過程の第2段階において、電気エネルギ蓄積部は、充電電流よりも低い、電圧変成器のチョーク電流に応じて、充電電圧よりも高い、電圧変成器の第2の直流電圧により充電される。
【0011】
提案される方法でもって、過電圧による充電の中断又は充電電流の0アンペアへの低減が予期されることなく、充電源を電気エネルギ蓄積部に直接的に接続することによるDC充電から、電圧変成器を介する充電への移行が可能となる。このことは、特に、700ボルト充電ステーションにおける800ボルト車両のDC充電過程において有利である。この複合充電動作(直接的な接続による充電及び電圧変成器を介する充電)によって、充電過程の開始時点以降に、電圧変成器のみを介する充電過程の場合よりも高速に車両を充電することができる(電圧変成器の充電出力が直接的な接続を介する充電時の主力よりも低いことが前提となる)。
【0012】
特に、提案される方法を用いて、DC充電ステーションにおける車両の充電が中断されることを回避することができる。一方、電圧変成器のチョークに電流が存在しているときにのみ、2つの充電バリエーション(又は第1段階及び第2段階)の切り換えが実施されるので、充電電流が0アンペアに降下することを達成することができる。充電源の電流値及び電圧変成器の電流値が近くなるほど、第1段階と第2段階の切り換え時の電圧ピークは小さくなる。更に、電圧変成器においては、充電過程の2つの段階の切り換え前に、電圧変成器のチョークに充電源の電流に相当する電流が印加されることが必要となる。
【0013】
特に、提案される方法は、DC充電過程の安定化を実現する。特に、充電過程の第1段階から充電過程の第2段階への切り換えは、充電電流がチョーク電流と等しくなるように行われる。従って、安全上の理由から充電過程の充電を中断させる可能性がある誘導性の電圧ピークを阻止することができる。
【0014】
電気エネルギ蓄積部は、例えば、トラクションバッテリ又はバッテリ装置又は高電圧バッテリであってよい。特に、電気エネルギ蓄積部は、500ボルト、特に最大850ボルトの電圧レベルを有する。電気的に駆動される車両は、特に、電気車両又はハイブリッド車両又はプラグイン車両又は電気的にのみ駆動される車両である。特に、電気的に駆動される車両は、電気エネルギ蓄積部からエネルギが供給され、それによって電気的に駆動される車両を移動走行させることができる、電気的な駆動モータ又は駆動ユニット又は駆動装置を有する。
【0015】
車両外部の充電源は、例えば、DC充電局又はDC充電ステーション又は充電インフラストラクチャ又は充電システム又は直流電圧源であってよい。特に、車両外部の車両源を用いて、直流電圧を供給することができる。特に、車両外部の充電源は、最大750ボルトの電圧レベルを有する。
【0016】
特に、電気エネルギ蓄積部の充電過程は、充電装置を用いて実施及び監視される。充電装置は、特に、例えば車両内部の搭載充電部のような、電気的に駆動される車両の充電ユニットである。特に、充電装置は、電気的に駆動される車両の電気的な搭載電源網の一部であってよい。
【0017】
本発明によれば、充電過程の第1段階において、電気エネルギ蓄積部が、充電装置のバイパス回路を用いて、車両外部の充電源と直接的に接続され、車両外部の充電源の充電電流は、電気エネルギ蓄積部に直接的に流れ、特に電圧変成器が充電過程の第1段階において、バイパス回路を用いて橋絡される。特に、バイパス回路を用いて、電圧変成器が橋絡又はバイパスされ、それによって、車両外部の充電源と電気エネルギ蓄積部との間に直接的な電流の流れが確立される。従って、特に、電気エネルギ蓄積部を、車両外部の充電源によって直接的に電気的に充電することができる。この充電過程又は電気エネルギ蓄積部の直接的なこの充電過程は、電気エネルギ蓄積部の電圧レベルが充電源の電圧レベルと実質的に等しくなるまで行われる。例えば、車両外部の充電源は、最大750ボルトの電圧を供給することができるので、従って、電気エネルギ蓄積部は、バイパス回路を介して、最大750ボルトの電圧まで充電することができる。特に、バイパス回路は、2つの経路又は2つの電圧経路を含むことができる。一方で、バイパス回路を、正の電圧経路及び負の電圧経路に結線することができる。従って、2つの電圧電位を、電圧変成器に関する電気エネルギ蓄積部の充電過程について橋絡させることができる。
【0018】
本発明によれば、充電過程の第2段階において、バイパス回路は、少なくとも1つの分離素子によって無電流に切り換えられ、それによって、車両外部の充電源の充電電流の、電気エネルギ蓄積部への電流の流れが中断される。即ち、特に、少なくとも1つの分離素子又は分離スイッチ又は接触器を用いて、バイパス回路が分離され、それによって、車両外部の充電源と電気エネルギ蓄積部との間の直接的な電流の流れが中断される。特に、電気エネルギ蓄積部の電圧レベルが、車両外部の充電源の電圧レベルに実質的に等しくなると、第2段階が行われる。従って、充電源とエネルギ蓄積部との間の直接的な電流の流れが確立される第1の充電過程から、電気エネルギ蓄積部が電圧変成器を介して間接的に充電される第2段階への切り換えが行われる。従って、充電源の充電電流はバイパス回路を介して電気エネルギ蓄積部へは流れず、その代わりに、電圧変成器へと流れるので、電圧変成器を相応に動作させることができる。
【0019】
本発明の別の実施形態では、電圧変成器は、チョーク電流が充電電流に応じて電圧変成器のチョークに印加されるように、電気エネルギ蓄積部のバッテリ電圧に応じて駆動される。特に、第2段階におけるバイパス回路の分離後に、電圧変成器、特に電圧変成器のチョークへの充電電流の流れが生じる。従って、充電源の充電電流の流れを用いて、チョーク電流をチョーク(インダクタンス)に印加することができる。特に、チョークにおいてチョーク電流が形成される。特に、チョーク電流が105アンペア又は110アンペア又は115アンペアの電流値、又は105アンペアと115アンペアとの間の電流値を有するように、チョーク電流がチョークに印加される。これに基づいて、充電電流の電流値は、320アンペアと380アンペアとの間にあってよい。従って、電圧変成器を用いて、電気エネルギ蓄積部を充電するために、より小さいチョーク電流が提供される。充電電流に比べてチョーク電流が小さいことによって、電圧変成器は、第1の直流電圧に比べて高い電圧への昇圧を行うことができる。
【0020】
本発明の別の実施例では、充電過程の第2段階において、車両外部の充電源の充電電流が、チョーク電流に応じて適合され、特に、充電電流の電流値が、チョーク電流の電流値に適合される。電圧変成器、特に電圧変成器のチョークは、例えば110アンペアの大きさの電流しか必要とされないので、差し当たりそれに対して3倍の値を有する充電電流が低減される。特に、充電源の降圧コンバータを用いて、充電電流の電流値は、チョーク電流の電流値まで低減されるか、又はその電流値となるように指示される。従って、充電源の電流値と電圧変成器の電流値とが適合される。従って、充電過程の2つの段階間で誘導干渉によって引き起こされる電圧ピーク及び/又は電圧フラッシュオーバー及び/又はスイッチング効果を阻止することができる。
【0021】
特に、充電源の電流値及び電圧変成器の電流値が実質的に近い場合、バイパス回路の分離素子が開放された際の電圧ピークの低減及び/又は低下を阻止することができる。
【0022】
上述の電圧値及び電流値は、絶対値と解されるべきではない。示された電圧値及び電流値には、偏差が含まれてもよい。それらの偏差は、公差、特に測定公差によって生じる可能性がある。例えば、各値は、5%、特に10%の偏差を有してもよい。
【0023】
本発明の別の態様は、電気的に駆動される車両の電気エネルギ蓄積部を充電するための充電システムに関し、この充電システムは、
-充電電圧を供給するための車両外部の充電源と、
-電気的に駆動される車両を車両外部の充電源に接続するための、電気的に駆動される車両の充電端子と、
-電気エネルギ蓄積部の充電過程を実施するための、電気的に駆動される車両の充電装置であって、電気エネルギ蓄積部の充電過程の第1段階において、電気エネルギ蓄積部が、車両外部の充電源の充電電流に応じて、車両外部の充電源の充電電圧としての第1の直流電圧により充電可能である、充電装置と、を有するものであって、
-充電過程中に電気エネルギ蓄積部のバッテリ電圧を決定するための決定装置と、
-電気エネルギ蓄積部のバッテリ電圧を、車両外部の充電源の充電電圧と比較するように設計されている評価ユニットと、
-バッテリ電圧と充電電圧との比較に応じて、充電電流より低いチョーク電流を供給するための、充電装置の電圧変成器と、を有し、
-充電装置は、第1段階に続く充電過程の第2段階において、電気エネルギ蓄積部を、電圧変成器のチョーク電流に応じて、充電電圧よりも高い電圧変成器の第2の直流電圧により充電するように構成されていることを特徴とする。
【0024】
特に、上記において説明した充電システムを用いて、前述の態様又はその実施に即した方法を実施することができる。
【0025】
特に、充電システムを用いて、電気的に駆動される車両の、効率的で障害耐性のあるDC充電過程を実施することができる。特に、提案される充電システムは、第1段階において、先ず充電源を介して直接的に電気エネルギ蓄積部が充電され、後続の第2段階において、電気エネルギ蓄積部が電圧変成器を介して充電されることによって、2段階の充電過程を実現する。従って、特に、(850ボルトの電圧レベルを有する)電気エネルギ蓄積部を、DC充電ステーション(最大750ボルト)によって効率的に充電することができる。特に、提案される充電システムは、高速な充電過程のための効率的な実現形態を実現する。
【0026】
本発明によれば、充電装置が、充電電流に応じて電気エネルギ蓄積部を充電するためのバイパス回路を有し、バイパス回路は、車両外部の充電源の正の電位と電気エネルギ蓄積部の正の電位との間に結線されている。バイパス回路を用いて、電気エネルギ蓄積部を、充電源によって直接的に充電することができる。特に、バイパス回路は、電気エネルギ蓄積部と充電源との間の直接的な電流の流れを実現する。特に、バイパス回路は、橋絡分岐又は経路であってよい。特に、バイパス回路は、車両外部の充電源の正の電位(HV正電位)と電気エネルギ蓄積部の正の電位(HV正電位)との間に結線することができる。特に、バイパス回路は、充電システムのHV正電位に結線される。換言すれば、バイパス回路は、充電源と電気エネルギ蓄積部との間の正の電圧経路に結線される。特に、バイパス回路は、電圧変成器の橋絡を実現する。
【0027】
特に、バイパス回路は、正の電圧経路に結線させるだけでなく、負の電圧経路にも結線させることができる。従って、例えば、バイパス回路の一部を、充電源の正の電位とエネルギ蓄積部の正の電位との間に結線させることができ、またバイパス回路の第2の部分を、充電源の負の電位とエネルギ蓄積部の負の電位との間に結線させることができる。
【0028】
本発明の別の実施例では、バイパス回路の第1の端子側は、電圧変成器の一次側に結線されており、バイパス回路の第2の端子側は、電圧変成器の二次側に結線されている。従って、換言すれば、電圧変成器を電気的に橋絡させることができるので、充電源の充電電流は、電圧変成器を介するのではなく、バイパス回路を介して電気エネルギ蓄積部に流れる。従って、充電過程の第1段階において電圧変成器に不必要に負荷が掛かることなく、電気エネルギ蓄積部のより効率的な充電過程を実施することができる。
【0029】
本発明の別の実施例では、バイパス回路の第1の端子側と、バイパス回路の第2の端子側との間に、分離素子が結線されており、分離素子によって、電圧変成器を橋絡可能である。特に、分離素子は、分離スイッチ又は保護素子又は接触器であってよい。特に、分離素子を用いて、バイパス回路は、電流が流れるように切り換えられるか、又はバイパス回路が分離される。従って、分離素子によって、電圧変成器に充電電流を印加することができるか、又はバイパス回路に充電電流を印加することができる。
【0030】
本発明の別の実施例では、電圧変成器が電流制御型の昇圧コンバータとして形成されている。従って、電圧変成器は、特に充電源の充電電流を介して制御することができる。特に、電圧変成器は、電気エネルギ蓄積部を最大限充電できるように制御される。特に、電圧変成器を用いて、充電源の電圧が電気エネルギ蓄積部を充電するためのより高い電圧に変換される。
【0031】
本方法の有利な構成は、充電システムの有利な構成とみなされる。同様に、本方法の有利な構成は、充電システムの有利な構成とみなすことができる。このために、充電システムは、本方法又はその有利な構成を実現する具体的な特徴を有する。
【0032】
本発明の更なる利点、特徴、及び詳細は、好適な実施例並びに(1つ以上の)図面に基づく以下の説明より明らかになる。上記において言及した特徴及び特徴の組み合わせ、並びに以下の図面についての説明において言及する特徴、及び/又は1つ以上の図にのみ図示されている特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ記載された組み合わせだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせ又は単独で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図中、機能的に同一の要素には同一の参照符号を付している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明による充電システム1の一実施例の概略的な側面図を示す。特に、この充電システム1においては、車両外部の充電源2及び電気的に駆動される車両3が示されている。車両外部の充電源2を用いて、特に、電気的に駆動される車両3を充電することができる。換言すれば、充電システム1は、充電源2における電気的に駆動される車両3の電気的な充電過程において使用される全てのコンポーネント及び/又はユニットを含む。
【0035】
電気的に駆動される車両3は、特に、電気車両又はハイブリッド車両又はプラグイン車両又は電気的にのみ駆動される車両である。特に、電気的に駆動される車両3は、最大850ボルトの電圧レベルを有する車両である。特に、電気的に駆動される車両3は、電気エネルギ蓄積部4を有する。電気エネルギ蓄積部4は、車両バッテリ又はHVバッテリ又は高電圧バッテリ又は車両3のバッテリ装置である。特に、電気エネルギ蓄積部4は、500ボルトの電圧レベル、特に最大850ボルトの電圧レベルを有する。電気エネルギ蓄積部4を用いて、特に、電気的に駆動される車両3の電気的な駆動ユニット又は電気的な駆動系又は電気的な駆動モータにエネルギを供給することができ、それによって、電気エネルギ蓄積部4を用いて、電気的に駆動される車両3の運転走行を実施することができる。
【0036】
電気エネルギ蓄積部4の直流電圧充電過程を実施できるようにするために、車両3の充電端子5又はDC充電端子を介して、電気的に駆動される車両3は充電源2に連結又は接続される。充電源2は、例えば、DC充電ステーション又は充電インフラストラクチャ又は充電システムであってよい。特に、DC充電ステーション(充電源2)は、最大750ボルトの電圧レベルを有する。
【0037】
特に、電気的に駆動される車両3は、充電装置6を有する。充電装置6は、例えば、車両内部の搭載充電部又は車両内部の充電ユニットであってよい。充電装置6を用いて、特に、充電源3における電気充電過程を実施、制御、特に監視することができる。
【0038】
例えば、放電された状態にある電気エネルギ蓄積部4は、その接続端子に、例えば500ボルト、特に600ボルトを有することができる。
【0039】
例えば、充電装置6は、電圧変成器7を含む。電圧変成器7は、例えば、昇圧コンバータ又は直流電圧コンバータ又はDC-DCコンバータであってよい。特に、電圧変成器7は、充電源2の相対的に低い電圧を、電気エネルギ蓄積部4の充電に適した電圧に変換又は昇圧することができるように構成されている。充電源2が車両バッテリ(電気エネルギ蓄積部4)に適した電圧を供給できる限り、バイパス回路8を介して、例えば電圧変成器5を橋絡させることができるか、又は無電圧で切り換えることができる。例えば、このことを、バイパス回路8の分離素子9(バイパス接触器)を介して実施することができる。バイパス回路8は、特に、橋絡分岐又は分離分岐である。分離素子9は、例えば、接触器又は断路器であってよい。図1から見て取れるように、バイパス回路8を用いて、電気エネルギ蓄積部4と充電源2との間の正の電圧分岐及び負の電圧分岐を相応に橋絡させるか、又は橋絡させないようにすることができる。特に、電圧変成器7の出力が、電気的に駆動される車両3又は充電装置6の最大充電出力と比較して低い場合に、電圧変成器7が橋絡されると有利である。
【0040】
更に、充電装置6は、例えば、スイッチング素子11を有することができる。スイッチング素子11を用いて、特に、車両3の移動走行中又は電気エネルギ蓄積部4の非充電過程時に、車両側の充電端子5を無電圧で切り換えることができる。特に、スイッチング素子11は、接触器又はスイッチングユニットである。
【0041】
例えば、充電源2を用いて、電気エネルギ蓄積部4を充電するための充電電圧としての第1の電圧U1を供給することができる。その一方で、電圧変成器7を用いることによっても、電気エネルギ蓄積部4を充電するための、充電電圧よりも高い第2の直流電圧U2を供給することができる。特に、充電過程の第1段階では、電気エネルギ蓄積部4が第1の電圧U1により充電され、第1段階に続く、充電過程の第2段階では、電気エネルギ蓄積部4が第2の電圧U2により充電される。充電過程の両方の段階は、電気エネルギ蓄積部4の目下の充電状態に応じて変更される、又は実施される。
【0042】
例えば、バイパス回路8は、両HV電位(HV正電位、HV負電位)を相応に管理することができる。このことは、特に、電圧変成器7が両HV電位を制御することができ、且つその構成要素が充電源2と電気エネルギ蓄積部4との間の直接的な連結部の電流に合わせて設計されていない場合である。しかしながら、電圧変成器7が2つの電位の一方にしか影響を及ぼさない場合、繋がっている電位はより高い電流強度に合わせて設計されることが考えられ、従って、更にバイパス接触器(分離素子9)が必要になることが考えられる。
【0043】
図2は、図1に示した充電システム1の概略的なシミュレーション構造又はシミュレートされた回路装置を示す。ここでは特に、電圧源(750ボルト)と降圧コンバータ(バックコンバータ)を含む充電源2が図示されている。ここでは、電圧変成器7が、電流制御型の昇圧コンバータ(ブーストコンバータ)として示している。
【0044】
電気エネルギ蓄積部4の充電過程が分割される場合、以下のような問題が生じる、又は発生する可能性がある。充電過程の目的は、特に、充電の中断が惹起されることなく、連続した充電過程が実施されることである。バイパス回路8の分離素子9が開放されると、0アンペアの充電電流が生じる可能性があり、これが充電を中断させる原因となる。同様に、直接的な接続による充電から、電圧変成器7を介する充電に移行する際に、分離素子9が開放されることで、充電源2の出力チョークに存在するエネルギ量に起因して過電圧の危険が存在するという欠点もある。このことは、電圧変成器7の電流が流れていないチョークによって惹起される可能性がある。従って、ここでも同様に、充電が中断される危険性がある。
【0045】
これらの悪影響は、特にシミュレーション構造でもって判明されるべきである。特に、充電過程の第1段階(電気エネルギ蓄積部4のバッテリ電圧が720ボルトになるまで)の間に、充電電流I(350アンペア、特に320アンペアと380アンペアとの間)が電気エネルギ蓄積部4に供給されるように、シミュレーションが行われる。電気エネルギ蓄積部4の電圧レベルが720ボルトと750ボルトとの間にある場合、充電電流Iは110アンペアに調整される。特にこの場合、充電電流Iは、110アンペアと120アンペアとの間になるようにすることができる。電気エネルギ蓄積部4が750ボルトの電圧レベルを超えると、充電源2の降圧コンバータが持続的に導通される。分離素子9(DCバイパス接触器)は、730ボルトにおいて開放され、電圧変成器7が、735ボルトにおいてその機能又は動作を開始する。
【0046】
以下の図(図3及び図4)は、図2に示したシミュレーション構造の例示的なシミュレーション経過又はシミュレーションシーケンスを示す。ここで、図3及び図4は時間経過を示す。図4では、分離素子9の開放中又は開放過程中の図3に示した時間経過の時間インターバルが示されている。特に、図4は、分離素子9(バイパス接触器)が開放された時点を示す。
【0047】
例えば、電圧経過aは、充電源2の電圧の時間経過を示す。図3及び図4における各経過aでは、電圧ピーク12を確認できる。実施されたこの例示的なシミュレーションでは、電圧ピーク12は、864ボルトの値である。ここで、充電源2の当初の端子電圧は740ボルトであった。
【0048】
従って、ここでは約124ボルトの過電圧が発生しており、このことは、充電過程の中断をもたらす。過電圧の原因は、DC充電ステーション(充電源2)の出力チョークに依然として電流が印加されていることにある。接触器の開放により、電圧変成器7のチョークLに電流が流れ始める前に、充電源2の出力キャパシタンス及び電圧変成器7(昇圧コンバータ)の入力キャパシタンスが充電される。それらのキャパシタンスのこの充電を、過電圧として測定することができる。両図(図3及び図4)において、経過bでは、充電源2における電流経過が示されている。経過cでは、それぞれ、スイッチング素子SGのゲートにおける状態が示されている。
【0049】
経過dでは、特に、バイパス回路8における電流経過が表されている。時点13は、分離素子9(バイパス接触器)が開放される時点である。
【0050】
経過eでは、電圧変成器7のチョークの電流経過が表されている。時点14により、電圧変成器7のチョークLの電流が消費される、又は電流消費が開始される時点が表されている。
【0051】
経過fでは、スイッチング素子SG1のゲートの状態が表されている。ここで、時点15においては、電圧変成器7のクロック制御が、特に110アンペアの電流において開始されることが見て取れる。
【0052】
経過gでは、電気エネルギ蓄積部4の電圧経過が表されており、また経過hでは、電気エネルギ蓄積部4の電流経過が表されている。
【0053】
図5は、図1及び図2に示した充電システム1の別の概略的なブロック回路図、特にその一部を示す。
【0054】
特に、本発明による充電装置及び関連する方法を用いて、直接的に接続されたDC充電から電圧変成器7を介したDC充電への「ソフトな」切り換えをどのように行うことができるかについて検討する。ここでは、DC充電過程の充電中断がいかなる時点においても生じないことが重要である。このために、充電電流Iがいかなる時点においても停止しないこと、即ち0アンペアに低下しないことが達成されなければならない。またその一方で、その時点において電圧変成器7のチョークLが依然として無電流であるときに、分離素子9が開放されてはならない。従って、充電電流Iの電流値及びチョーク電流Iの電流値が実質的に同一であるか、又は同一にすることが推奨される。これによって、分離素子9の開放時の電圧ピークを阻止することができる。
【0055】
特に、電気エネルギ蓄積部4の充電過程の第1段階において、電気エネルギ蓄積部4を、充電源2の充電電流Iに応じて、充電電圧としての第1電圧U1により充電することができる。例えば、電気エネルギ蓄積部4は、これにより750ボルトまでの電圧により充電される。ここでは、決定装置16を用いて、電気エネルギ蓄積部4の目下のバッテリ電圧Ubattを継続的に求めることができるか、又は測定することができる。特に、電気エネルギ蓄積部4の目下のバッテリ電圧Ubattは、充電過程(DC充電過程)の間、継続的に決定される。
【0056】
決定装置16は、例えば、電圧測定器又は測定回路又は監視ユニット又はオシロスコープ又は電圧電流測定器又は測定ユニットであってよい。特に、決定装置16は、複数の個々のユニットを有することができるので、それによって、充電システム1のスイッチング回路の異なる箇所において、電流及び/又は電圧を測定することができる。
【0057】
特に、目下のバッテリ電圧Ubattは、充電過程中に継続的に決定されるか、又は求められる。例えば、決定装置16は、充電装置6の一部であってよい。充電装置6の評価ユニット17を用いて、決定された、又は求められたバッテリ電圧Ubattを充電電圧(第1の電圧U1)と比較することができる。バッテリ電圧Ubattの電圧値が、実質的に、特に±5パーセントの公差でもって、充電電圧(第1の電圧U1)の電圧値に相当する場合、電気エネルギ蓄積部4と直接的に接続された充電源2を介する直接的な充電過程を、バイパス回路8を介して終了させることができる(特に、終了過程が開始される)。この際、それと同時に、電圧変成器7を作動させることができるか、又はその動作を開始させることができる。
【0058】
従って、第1段階に続く(特に時間的に続く)、充電過程の第2段階において、電気エネルギ蓄積部4を、充電電流Iよりも低い、電圧変成器7のチョーク電流Iに応じて、充電電圧よりも高い、電圧変成器7の第2の直流電圧U2により充電することができる。例えば、充電電流Iは、350アンペアの電流値を有することができ、またチョーク電流Iは、110アンペアの電流値を有することができる。例えば、第2の直流電圧U2は、850ボルトの電圧値であってよく、それに対し、第1の電圧は、750ボルトの電圧値であってよい。
【0059】
2つの充電段階又は充電過程の各段階を変更するために、2つのバリエーションを使用できる。以下では、それらのバリエーションについて説明する。
【0060】
第1のバリエーションでは、最初に分離素子9が閉じられ、それによって、充電電流Iが、充電源2と電気エネルギ蓄積部4との間の直接的な接続を介して流れることができる。このことは、換言すれば、バイパス回路8を用いて行われる。この際、例えば、350アンペアの充電電流Iを、充電過程の第1段階に使用することができる。例えば、ここで、電流値は320アンペアと380アンペアの間の範囲にあってよい。この経過は、電流流れ方向18によって表されている。
【0061】
後続のステップにおいて、電圧変成器7がその動作を開始する。このことは、約710ボルトのバッテリ電圧Ubattにおいて行われる。この際、特に、スイッチング素子SG1が閉じられている。従って、チョークLのチョーク電流Iが形成される。105アンペアから115アンペアの電流範囲にあるチョークLの電流が印加される。この段階中は、充電源2の充電電流Iは変わらず維持される(例えば350アンペア)。このことは、電流流れ方向19によって表されている。バッテリ電圧Ubattが720ボルトのとき、充電源2の充電電流Iが指示される。従って、100アンペアから120アンペアまでの間の値の新しい電流値への充電ステーションの電流の低減が調整される。チョーク電流Iの形成は、特に電流流れ方向20でもって表されている。例えば、続いて、740ボルトのバッテリ電圧Ubattの電圧値において、分離素子9(バイパス接触器)を開放することができる。充電電流I及びチョーク電流Iの2つの電流値が実質的に同一であることによって、負の特性(充電の中断)が生じることなく、充電過程の第2段階が行われる。
【0062】
以下の2つの図面、図6及び図7においても、図2に示したシミュレーション構造のシミュレーションシーケンスが実行される。ここでは、第1のバリエーションが、充電過程の第1段階から充電過程の第2段階へのソフトな切り換えのために処理される。図6及び図7の両図における個々の経過又は態様において付された番号は、図3及び図4と同じ番号に対応し、また図7には、図6に示した時間間隔の一部が詳細に、特に分離素子9の開放又は開放過程の間が改めて示されている。図7には、特に分離素子9(バイパス接触器)が開放される時点が示されている。
【0063】
ここでは、図3及び図4における重要な点と同様の点についてのみ説明する。特に、図6及び図7の経過aにおいて、電圧ピーク12が754ボルトでしかないことが見て取れる。従って、分離素子9が開放された際、過電圧は14ボルトでしかない。このように過電圧が僅かであることに起因して、接触器(分離素子9)が開放されると、電圧変成器7のチョークには、既に充電源2の電流(より正確には充電源2の出力チョークの電流)と同じ大きさであった電流が印加されている。従って、充電過程における充電の中断が惹起されることはない。更に、経過e及びfにおいて、一方では、チョークLの電流消費の開始が見て取れ、他方では、電圧変成器7の動作開始が見て取れる。ここでは、特に経過eにおいて、時点14では、電圧変成器7のチョークLの電流がバイパス接触器の開放前後で同等のレベルにあることが見て取れる。従って、充電の中断は生じない。
【0064】
図8及び図9においては、図2に示したシミュレーション構造のシミュレーションシーケンスが改めて表されている。ここでもまた、図8及び図9の両図において、番号は図3及び図4における番号に対応し、また図9には、図8に示した時間間隔の一部が詳細に、特に分離素子9の開放又は開放過程の間が改めて示されている。図9には、特に分離素子9(バイパス接触器)が開放される時点が示されている。
【0065】
ここでは、充電源2の電流が先ず低減され、その後に、電圧変成器7が動作するか、又は起動されるバリエーションのみを説明する。
【0066】
このバリエーションにおいても、先ず分離素子9が閉じられ、その結果、充電電流Iを用いて、電気エネルギ蓄積部4が充電源9を介して直接的に充電される。ここで、充電電流Iは、例えば、350ボルトを有することができる。ここでは、特に、電圧変成器7は起動されていない。続いて、充電源2の充電電流Iは、充電過程の第2段階中に電圧変成器7を介して電気エネルギ蓄積部2を引き続き充電する際に用いられるべき電流値となるように指示される。例えば、この際、充電電流Iは、110アンペアの電流値に指示されるか、又は低減される。
【0067】
充電電流Iの電流値が110アンペア(100アンペアから120アンペアの間の例も考えられる)にされた後、電圧変成器7が起動又は始動が行われる。この際、チョーク電流IがチョークLに印加される。特に、チョークLには規定の電流値(例えば110アンペア)が印加される。この際、充電源2の充電電流Iは変わらず維持される。特に、充電電流I及びチョーク電流Iの電流値は、110アンペアを有することができる。特に、電圧変成器7の動作は、730ボルトのバッテリ電圧Ubattにおいて開始される。これに対して、充電ステーションの電流の低減は、720ボルトのバッテリ電圧において既に行われる。
【0068】
110アンペアのチョーク電流が印加され、バッテリ電圧Ubattが740ボルトに達した後、分離素子9が開かれ、電気エネルギ蓄積部4の充電過程を、電圧変成器7を介して行うことができる。
【0069】
特に、充電過程の第1段階から充電過程の第2段階への移行が円滑に行われる。
【0070】
図8及び図9に示した2つのシミュレーション結果では、図6及び図7の両図において既に示し、また説明したシミュレーション結果と同様のシミュレーションが示されている。ここでも同様に、経過aにおいては、754ボルトの電圧ピーク12を見て取ることができる。従って、このバリエーションにおいても、過電圧は14ボルトでしかなく、それによって、充電過程における充電の中断は生じない。
【0071】
特に、提案される充電システム1及び対応する方法でもって、充電過程の安定化を達成することができる。この場合、電圧変成器7を流れる電流は、バイパス回路8(バイパスライン)の開放前に、まだ閉じているバイパスラインを介する電流強度と同じ電流強度に調整される。何故ならば、そのような調整が行われない場合、バイパスラインの接触器が開かれた際の誘導電圧ピークによって、充電過程が安全上の理由から中断されるからである。この際、バイパスラインにおける電流を、先ず電圧変成器の最大電流強度に調整して、その後、電圧変成器において、それに並行して電流の流れを形成することができるか、又は電圧変成器を介する電流を先ず形成して、その後、バイパスラインにおける電流を相応に低減することができる。電流強度が同一であれば、実質的な電圧ピークが生じることなく、バイパスラインを開くことができる。
【0072】
特に、バイパス接触器(分離素子9)が開かれる瞬間に、電流(I)を、充電源2又は電圧変成器7の調整の電流デルタ(例えば、100アンペア超の代わりに±10アンペア)に低減することができる。これによって、バイパス接触器(分離素子9)の保持が大幅に低減される。
【0073】
特に、提示した電流値及び電圧値には、測定公差又は測定誤差を含んでもよい。従って、提示した電流値及び電圧値は、5パーセント、特に10パーセントの偏差を示してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9