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特許7555496分散型光ファイバセンシングを用いた未知の異常検出のための道路交通抽出
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】分散型光ファイバセンシングを用いた未知の異常検出のための道路交通抽出
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240913BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G01D5/353 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023538931
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 US2022012411
(87)【国際公開番号】W WO2022155401
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】63/137,883
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/575,610
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ミン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジ、 フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ユハン
(72)【発明者】
【氏名】サレミ、 ミラド
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107591002(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0193177(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2069843(KR,B1)
【文献】特開2016-214937(JP,A)
【文献】国際公開第2020/116030(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/116032(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/132169(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0401784(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01D 5/353
G01H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DFOSインタロゲータおよび異常検出器と光通信するある長さの光センシングファイバを含む分散型光ファイバセンシング(DFOS)システムを動作させるための方法であって、
前記光センシングファイバが道路に近接して配備される前記DFOSシステムを提供することと、
前記DFOSを動作させて、道路交通と前記センシングファイバに近接する他のインフラストラクチャの振動パターンとを含む前記道路の正常な特性を取得することと、
前記DFOSの動作中に生成されたウォーターフォール画像から、コンテキストエンコーダ/デコーダの確率的ハフ変換(PPHT)演算の動作を通して前記ウォーターフォール画像内の交通パターンを決定することと、
前記光センシングファイバに沿って顕著な振動点を決定することと、前記PPHT演算においてそれらの決定された顕著な振動点を使用して前記交通パターンを決定することと、
前記決定された交通パターンを除去することによって、振動異常の振動パターンを決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記振動パターンは、振動点群
【数1】
で表される感知データを含み、ここで、各振動点はタプル(ti,xi,νi)であり、tiはタイムスタンプであり、xiは前記光センシングファイバに沿った空間位置であり、νiは振動の強度である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
顕著な振動点は、その振動強度によって決定され、該振動強度が
顕著な点>Q3+1.5×IQR
によって表される第3四分位数の1.5倍の四分位範囲(IQR)を超える場合、顕著な振動点になり、振動強度
【数2】
のIQRは、上位四分位数および下位四分位数Q 3 -Q 1 の差分である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、分散型光ファイバセンシング(DFOS)に関する。より詳細には、本開示は、分散型光ファイバセンシングシステム及び方法を用いた、正常な道路交通からの未知の異常の検出/決定に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者であれば理解できるように、分散型光ファイバセンシング(DFOS)技術は、光ファイバケーブルの近傍で振動信号を感知し、振動のタイムスタンプ付きデータストリームを生成することができるため、脅威検出に採用されており、道路交通管理および通信設備保護の意思決定者に貴重な情報を提供する。DFOSを介した交通監視/管理と異常検出の両方の目標を達成するためには、正常な交通による振動の原因を異常源から分離することが困難な課題となっている。
【発明の概要】
【0003】
当技術分野における進歩は、異常検出が可能であるようにDFOS振動パターンから道路交通を有利に抽出する、DFOSシステム、方法、および構造を対象とする本開示の態様に従ってなされる。
【0004】
従来技術とは大きく異なり、本発明の方法は、感知されたデータを点の集合として正確に表し、各点は、タイムスタンプ、DFOS光センシングケーブルの長さに沿った位置、およびその時点でその位置で検出された振動強度を示す要素を有するタプルとして表される。
【0005】
本発明の交通パターン検出は、漸進的確率的ハフ変換(PPHT)に基づく。画像上のローカルカーネルマッチングに基づく従来技術の方法とは大きく異なり、本発明の検出方法は、時空間データのスナップショット全体からのグローバル情報を利用して、検出された振動の原因を評価する。重要なことは、本発明の方法は、画像の規則的なグリッドを必要としないため、タイムスタンプが等距離ではない実用的なセンシングシナリオに適用できることである。直線検出のための従来のハフ変換(HT)とは異なり、本方法は、特定の領域で交通軌跡が不連続および/または曖昧であったとしても、個々の車両からの交通軌跡をセグメント化する。本開示の態様によるPPHTの追加のパラメータ、すなわち、車両軌跡の最小指定長さおよび隣接軌跡間の最大ギャップは、従来技術で可能であったものよりも正確な交通カウントを可能にする。最後に、本方法の漸進的な性質は、必要な演算を最小限に抑え、その結果、限られた処理能力しか必要としないストリーミング性質のデータに最適である。
【0006】
動作上、振動が検出される光センシングファイバに沿った各点の顕著性は、四分位範囲(IQR)の規則を使用して局所的に決定される。センシングファイバに沿った各振動点の顕著性は、局所的に決定することができるが、その原因を判断するために関連する点の時空間パターンを考慮する。PPHTアルゴリズムを適用すると、センシングファイバに沿った他の振動点を評価することで、各振動点の原因を全体的に帰属させることができる。その結果、振動点群が、得られた事前知識とよく一致する線形形状を集合的に形成する場合、その振動点群は、交通によって引き起こされたものとして分類される。有利なことに、手順全体は、訓練を必要とせず、交通領域または異常領域のラベル付けも必要としない。
【0007】
交通フィルタモジュールは、許容される最小速度制限および最大速度制限に従って、識別された交通軌跡をさらに絞り込む。ウォーターフォールプロットで交通軌跡が検出されると、近くの振動点が所定の距離内にある場合、近くの振動点も同様に帰属させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のより完全な理解は、添付図面を参照することによって実現され得る。
【0009】
図1】当技術分野で知られている例示的なDFOS構成の概略図である。
【0010】
図2(A)】本開示の態様による、交通センシングおよびケーブル安全保護アプリケーションのための全体的なシステム実装を例示する図である。
図2(B)】本開示の態様による、不均一な時間経過で感知されたタイムスタンプ付きデータストリームを例示する図である。
図2(C)】本開示の態様による、不正確な車両速度推定および結果につながる可能性のある、規則的なグリッド上の画像への感知されたデータの伝統的なマッピングを例示する図である。
【0011】
図3】データ処理ユニットを示す概略フロー図である。手順は、以下のステップで定義することができる。
【0012】
図4(A)】本開示の態様による交通の検出、要約、および除去のプロセスを概略的に示す図である。
図4(B)】本開示の態様による交通の検出、要約、および除去のプロセスを概略的に示す図である。
図4(C)】本開示の態様による交通の検出、要約、および除去のプロセスを概略的に示す図である。
図4(D)】本開示の態様による交通の検出、要約、および除去のプロセスを概略的に示す図である。
【0013】
図5】本開示の態様による未知の異常検出を示す概略ベン図である。
【0014】
図6】本開示の態様による、異常のない正常な交通の実地試験例の関連するウォーターフォール、マスク、交通、残留、異常スコアおよびアラームを示す一連の図である。
【0015】
図7】本開示の態様による、交通騒音下の未知の異常を伴う実地試験例の関連するウォーターフォール、マスク、交通、残留、異常スコアおよびアラームを示す一連の図である。
【0016】
図8】本開示の態様による、新しいイベントロギングおよびライブイベントテーブル更新のためのフローチャートである。
【0017】
例示的な実施形態は、図面および詳細な説明によってより完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は様々な形態で実施することができ、図面および詳細な説明に記載された特定のまたは例示的な実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0019】
さらに、本明細書に記載されているすべての実施例および条件付き用語は、本開示の原理および技術を促進するために発明者によって寄与された概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためだけのものであることを意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0020】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を記載する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物と、将来開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発された要素との両方を含むことが意図されている。
【0021】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図が、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことは、当業者には理解されるであろう。
【0022】
本明細書で特に明記しない限り、図面を構成する図は、縮尺通りに描かれていない。
【0023】
いくつかの追加の背景として、近年、分散型振動センシング(DVS)や分散型音響センシング(DAS)を含む分散型光ファイバセンシング(DFOS)システムが、インフラストラクチャ監視、侵入検出、および地震検出を含むがこれらに限定されない多くの用途で広く受け入れられていることに改めて留意する。DASおよびDVSでは、後方レイリー散乱効果を用いてファイバの歪みの変化を検出し、ファイバ自体が後続の分析のために光センシング信号をインタロゲータに戻す伝送媒体として機能する。
【0024】
いくつかの追加の背景として、また当技術分野で一般に知られている例示的な分散型光ファイバセンシングシステムの概略図である図1を参照して、まず、分散型光ファイバセンシング(DFOS)は、インタロゲータに順に接続される光ファイバケーブルに沿った任意の場所で環境条件(温度、振動、伸縮レベルなど)を検出するために重要かつ広く使用される技術であることに留意する。知られているように、現代のインタロゲータは、ファイバへの入力信号を生成し、反射/散乱され、その後に受信された信号を検出/分析するシステムである。信号が分析され、ファイバの長さに沿って遭遇する環境条件を示す出力が生成される。このように受信された信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、およびブリリオン後方散乱などのファイバ内の反射から生じ得る。また、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号とすることもできる。一般性を失うことなく、以下の説明では、反射信号を想定しているが、同じアプローチを転送信号にも適用することができる。
【0025】
理解されるように、現代のDFOSシステムは、光パルス(または任意の符号化信号)を周期的に生成し、それらを光ファイバに送るインタロゲータを含む。送られた光パルス信号は、光ファイバに沿って伝送される。
【0026】
ファイバの長さに沿った位置では、信号のごく一部が反射してインタロゲータに戻される。反射信号は、例えば、機械的振動を示す電力レベルの変化など、インタロゲータが検出するために使用する情報を搬送する。
【0027】
反射信号は電気領域に変換され、インタロゲータ内で処理される。パルス注入時間と信号が検出された時間とに基づいて、インタロゲータは信号がファイバに沿ったどの位置から来ているかを判断し、ファイバに沿った各位置の活動を感知することができる。
【0028】
本開示の一態様は、センシングファイバに近接する異常振動を検出/決定するために、既存の配備された光ファイバケーブルをセンシング媒体として使用することに、もう一度留意する。例えば、掘削機、掘削リグ、削岩機などの異常イベントを、ケーブル切断イベントが発生する前に、分散型光ファイバセンシング(DFOS)技術によって早期に自動的に検出することができる。光ファイバネットワークは、サービス提供とエンドユーザの双方にとって通信の重要な役割を果たしているため、ケーブルの安全保護システムが急務であることに改めて留意されたい。したがって、ファイバ切断イベントは、ダウンタイムを引き起こし、メンテナンスコストを上昇させ、サービスプロバイダのサービスレベル契約違反を増加させるため、重大な問題である。
【0029】
このように、DFOSは、埋設ケーブルの近傍の振動信号を感知し、振動のタイムスタンプ付きデータストリームを生成することができ、道路交通管理や通信ケーブル保護における意思決定のための貴重な情報を提供するので、分散型光ファイバセンシング(DFOS)技術を使用することは、脅威レベル検出に対する魅力的なアプローチである。ファイバセンシングによる交通監視と異常検出の両方には、正常な交通振動の原因と他の発生源による振動とを分離することが困難な課題となっている。
【0030】
しかしながら、本発明の目的のために、予め配備されたファイバケーブルの感度の低下、道路状況の悪化、および車両と道路の相互作用の不均一性などのために、感知された交通パターンは、通常、ノイズが多く、断続的で、強度が変化する。さらに、DFOSインタロゲータの処理ユニットは、個々の測定間の時間間隔が60ミリ秒未満から250ミリ秒を超えるまで一定でないデータを出力するため、時間間隔が一定でない不規則なサンプリングデータが生成される。また、正常な交通に起因する振動パターンは、人間の目で識別しやすい直線的な構造で豊富であるが、ケーブルを脅かす不正な行為に起因する振動パターンは不明である。その結果、想定されるすべてのクラスの異常をカバーするラベル付き訓練データを取得することは困難であり、また、すべての交通パターンにアノテーションを付けることは非常にコストがかかる。ラベルは高価であるので、ウォーターフォールデータを自動的に解釈するための教師ありモデルを訓練することは困難である。
【0031】
したがって、本開示の一態様は、道路交通センシングのタスクと激しい交通ノイズ下での未知の異常検出のタスクとの両方において必要とされる、分散型光ファイバセンサからの破損した不均一なサンプリングストリームデータから交通関連の振動パターンを識別することを説明する。
【0032】
有利なことに、感知されたデータを点の集合として正確に表し、各ポイントは、タイムスタンプ、ファイバセンシングケーブル上の位置、および振動強度を示す要素を有するタプルとして表される。
【0033】
本発明の交通パターン検出動作/モジュールは、漸進的確率的ハフ変換(PPHT)に基づいている。画像上のローカルカーネルマッチングに基づく方法とは異なり、このモジュールは、時空間データのスナップショット全体からのグローバル情報を利用して、振動の原因を評価する。重要なのは、画像の規則的なグリッドを想定していないため、タイムスタンプが等距離でない実際のセンシングシナリオに適用できることである。
【0034】
直線検出のための従来のハフ変換(HT)とは明らかに異なり、本発明の動作/モジュールは、たとえ領域内で交通軌跡が不連続および/または曖昧であっても、個々の車両からの交通軌跡をセグメント化する。決定したように、車両軌跡の最小指定長さおよび隣接する軌跡間の最大ギャップに関するPPHTの追加パラメータにより、従来の方法と比較して、交通カウントがより正確になる。計算上、本方法の漸進的性質は、必要とされる演算を最小化し、エッジでの処理能力が限られているデータのストリーミング性によく適している。異常検出アプリケーションの場合、識別された交通関連の振動パターンは、拡張(dilation)から導出されたバイナリマスクによって除去される。
【0035】
本明細書に記載される本発明のアプローチの1つの目標は、分散型ファイバセンシングを介して光ケーブルを不正な第三者の介入から保護する監視及びアラートシステムである。運用中は、異常な信号特性に関する知識が不足しているため、一般に車両の速度と、交通状況や交通制御(すなわち、信号機)に起因する加速および/または減速とに対応する直線的な勾配を示す正常な交通から振動パターンを決定する。交通データは豊富であるが、異常データはまばらであることに留意されたい。
【0036】
本開示の態様によれば、分散型光ファイバセンシングを使用して、長い光ファイバケーブル経路(すなわち、40km超)に沿った複数の単一光ファイバケーブル点における振動をリアルタイムで検出する。各振動点の顕著性は、四分位範囲(IQR)の規則の下で局所的に決定される。各振動点の顕著性は局所的に決定することができるが、その原因を決定する際には、関連する点の時空間パターンを考慮する。漸進的確率的ハフ変換(PPHT)アルゴリズムを適用し、他の振動点から証拠を探すことにより、各振動点の原因を全体的に帰属させることができる。その結果、振動点のグループが集合的に直線形状を形成し、先験的な知識によく一致している場合、交通によって引き起こされたものとして分類される。有利なことに、本発明の手順は、訓練を必要とせず、交通領域または異常領域のラベル付けを必要としない。
【0037】
交通フィルタ操作では、許容される最小速度制限と最大速度制限に従って、識別された交通軌跡をさらに絞り込む。例えば、速度制限の範囲に基づいて、ゆっくりと移動する車両とスピードを出す車両とを区別することができる。勾配の正負の符号は、当然、感知されている高速道路の両方向からの交差交通を処理する。これは、交差する交通パターンに悩まされることが多い従来技術のローカルパターンマッチングベースの方法とは明らかに異なる。
【0038】
これから説明するように、DFOS動作の結果としてウォーターフォールプロット上で交通軌跡が検出されると、点からセグメントまでの距離が指定された範囲内にある場合は、近くの振動点も同様に帰属させることができる。しかしながら、この処理を点毎に繰り返すと、計算コストが高くなる。あるいは、検出された軌跡セグメントの拡張に基づいてバイナリマスクを作成する。各領域の路面状態やケーブルの埋設深さが異なるため、交通軌跡の幅にばらつきが生じる。拡張係数は適切な整数で指定することができ、これにより、異なる幅の交通軌跡を除去することができる。
【0039】
当業者には理解されるように、本発明のアプローチは、最も原始的なユニット、すなわち、光センシングファイバの長さに沿った振動点で動作し、スライディングウィンドウは必要ない。したがって、各光ファイバケーブル点における異常スコアは、顕著であるが交通によって引き起こされたものではない残留振動パターンからの総強度から自然に計算することができる。
【0040】
図2(A)、図2(B)、および図2(C)は、本開示の態様による例示的な図である。図2(A)は本開示の態様による、交通センシングおよびケーブル安全保護アプリケーションのための全体的なシステム実装を示し、図2(B)は不均一な時間経過で感知されたタイムスタンプ付きデータストリームを示し、図2(C)は不正確な車両速度推定および結果につながる可能性のある、規則的なグリッド上の画像への感知されたデータの伝統的なマッピングを示す。
【0041】
これらの図を同時に参照すると、一般に制御室または他の中央局内に配置され得る、センシングファイバ、インタロゲータ、交通監視、および未知の異常検出動作を含むDFOSシステムを含む、分散型光ファイバセンシングシステムが示されている。光センシングファイバは、道路または隣接領域の下に埋設できる十分な長さのものである。道路が車両交通を受けると、DFOSシステムは、車両交通によって引き起こされる振動を検出することができる。
【0042】
前述のように、道路に近接して行われる建設工事やその他の作業は、センシングに使用されるDFOS光ファイバの完全性を脅かす可能性がある。このような脅威は、図では道路の隣にある掘削機として示されており、その道路の下には光センシングファイバが配置されている。
【0043】
図2(B)は、DFOSシステムによって感知された振動パターンの時間対距離のプロットである。プロットされているように、個々の交通パターンが表示され、データの小さなギャップを示すものと、収集されたデータの大きなギャップを示すものがある。観測されるように、データが直線的にプロットされる場合、このようなパターンは、ギャップがあっても、車両交通である可能性があることを示すことがある。交通パターンの一部ではないデータのクラスタがさらに示されている。このようなクラスタは、異常と判断される場合がある。
【0044】
一方、図2(C)は、振動と交通パターンおよび/または異常との間の関連付けが行われない、より「伝統的」なアプローチである可能性のある時間対距離プロットを示す。
【0045】
図3は、本開示の態様によるデータ処理ユニットを示す概略フロー図である。この図に示すように、振動の潜在的な原因には、正常な交通および/または未知の異常が含まれる。動作上、個々の振動点が感知され、四分位範囲(IQR)フィルタリング動作が、そのような点が所与の時点で顕著な振動点であるかどうかを決定する。このような動作は、光センシングファイバの長さに沿った複数の点に対して実行される。
【0046】
顕著な振動点が特定されると、交通パターンおよび異常振動を特定するPPHTベースの大域的解釈動作が実行される。交通パターンは、交通監視アプリケーションによって要約され、利用され得る。同様に、交通パターンが除去された後、異常振動をさらに分析し、ケーブル/ファイバの完全性が懸念されるかどうかを判断することができる。
【0047】
データ表現
【0048】
シーンを含む感知データは、振動点群
【数1】
として表される。各振動点は、タプル(ti,xi,νi)であり、ここで、tiはタイムスタンプであり、xiはケーブルに沿った空間位置であり、νiは振動の強度である。
【0049】
動作的には、本発明の革新的な方法の1つの態様は、顕著な振動点をフィルタ除去(決定)し、続いてその原因を特定し、その結果を、交通センシングや異常検出の下流タスクに使用する。
【0050】
手順1:顕著性フィルタ-局所的に強い振動点を見つける。
【0051】
センシングシーン
【数2】
の下では、条件
【数3】
および
【数4】
を満たす振動点群
【数5】
が得られる。振動の顕著性は、その振動の強度によって決定される。振動点の振動強度が第3四分位数の1.5×IQRを超えて低下する場合、その振動点は顕著な振動点である。すなわち、顕著な点>Q3+1.5×IQRである。振動強度
【数6】
のIQRは、上位四分位数および下位四分位数Q3-Q1の差分として計算される。IQRは、一定期間にわたる各ゾーンの統計から計算されるため、顕著性フィルタは適応的であり、ロバストである。
【0052】
手順2:PPHTに基づいて振動の原因を全体的に評価する。
【0053】
現在、例示的に実装されているように、PPHTベースの大域的解釈は、セグメント検出、交通軌跡の認定、および近傍画素の関連付けの3つのモジュールを含む。
【0054】
図4(A)、図4(B)、図4(C)、および図4(D)は、本開示の態様による、交通の検出、要約、および除去のプロセスを概略的に示す。
【0055】
セグメント検出:これらの図に示すように、顕著な振動点群が予め指定された形状(例えば、線形)を形成している場合は、元の空間(図4(A))からアキュムレータ空間(accumulator space)内の1つの点(図4(B))にマッピングすることができる。このパラメータは、元の空間にマッピングし直したときのセグメントを完全に指定する(図4(C))。セグメントに続いて、対応する直線の最長の長さを見つけ、セグメントのギャップを確認する。
【0056】
交通軌跡の認定
【0057】
検出されたセグメントは、次の条件を満たす場合、正常な交通軌跡として認定される:a)十分な証拠(すなわち、顕著な振動点の数)に裏付けられている;b)軌跡の長さが指定された閾値より大きい;c)軌跡のギャップが指定された閾値より小さい;およびd)勾配によって示される速度が制限速度内である。
【0058】
近傍画素の対応付け
【0059】
認定された交通軌跡の近くの振動点も交通に起因する。図4(D)では、検出された交通軌跡に基づいて、開始点から終了点までのセグメントをマトリクス上に描画することにより、バイナリマスクが生成される。拡張カーネルは畳み込みによって適用することができ、その結果、交通を残差でセグメント化するバイナリマスクが得られる。このマスクは、交通関連の振動を除去するために使用することができる。
【0060】
手順3(オプション):交通パターンの要約
【0061】
交通情報は、修飾セグメントのセットに格納される。交通監視のニーズに応じて、高レベルの要約統計を簡単に計算できる。例えば、特定の期間中の特定の領域における車両の平均速度、最高速度、および最低速度は、勾配に基づいて計算することができる。交通カウントは、クエリ位置のセグメントと垂直線との間の交差点の数によって計算することができる。
【0062】
手順4:残差から異常スコアを計算する。
【0063】
図5は、本開示の態様による未知の異常検出を示すベン図である。顕著な振動点(手順1で特定)の大部分は、正常な交通に起因する(手順2)。ただし、累積強度が位置固有の閾値を超える場合、残留する顕著な振動点は異常と見做す。
【0064】
現場でチェックする担当者を割り当てるか、可能な場合は、分類器をトリガして機械/動作の種類を確認することができる。正常な交通パターンは拡張によって除去されているので、交通関連の誤警報率は非常に低くなる。
【0065】
当業者であれば理解し、認識するように、本発明の方法は計算効率が高い。PPHTは、候補となる振動点のサブセット上でのみ動作するので、従来のHTよりも大幅に計算量を削減することができる。振動点およびセグメントの処理は並列化可能である。
【0066】
図6は、本開示の態様による、異常のない正常な交通の実地試験例の関連するウォーターフォール、マスク、交通、残留、異常スコアおよびアラームを示す一連の図であり、図7は、本開示の態様による、交通騒音下の未知の異常を伴う実地試験例の関連するウォーターフォール、マスク、交通、残留、異常スコアおよびアラームを示す一連の図である。
【0067】
これらの図を参照すると、両方とも、本開示の態様による検出された交通軌跡の結果とともに、実地試験で取得された例示的なウォーターフォールデータを示していることが分かる。感知されたウォーターフォールデータ内の振動点は、2つのグループ、すなわち、交通および残差にセグメント化される。位置固有の異常スコアは、異常イベントの有無を示す。異常スコアがしきい値を超えた場合に、アラームがトリガされる。
【0068】
図8は、本開示の態様による、新しいイベントロギングおよびライブイベントテーブル更新のためのフローチャートを示す。この図に示すように、異常イベントの追跡およびリアルタイムアラートを目的として、イベントログを維持および更新する方法について説明する。
【0069】
本開示によれば、すべてのイベントは、新規、継続、または完了の3つのステータスのうちの1つである可能性がある。異常イベントが検出されると、ライブイベントテーブル内の既存のイベントと比較される。時間と位置が互いに十分に近い場合、それらは、「継続」イベントとして古いイベントにマージされる。それ以外の場合は、「新規」イベントとしてテーブルに追加され、アラートが送信される。テーブル内のイベントは、最終更新時刻が現在時刻より一定時間遅れている場合(すなわち、忍耐)に削除される。
【0070】
この時点で、当業者は本発明の開示の多くの際立った特徴を理解し、認識するであろう。第1に、本開示は、光ケーブル上に分散型光ファイバセンシング(DFOS)を有利に採用しており、a)DFOSシステムは分散型音響センシング(DAS)または分散型振動センシング(DVS)とすることができ、b)光ファイバケーブルは既存の配備されたケーブルおよび/または新たに敷設されたファイバとすることができ、c)既存の配備されたケーブルについては、本開示の方法は、ダークファイバおよび/または運用ファイバに統合することができる。
【0071】
第2に、本開示のデータ収集は、a)交通センシングおよびケーブル安全保護のために配備されたファイバに沿って理解されたDFOS技術を有利に使用し、b)空中ケーブル領域および/または中央局(CO)関連領域を有利に空白にすることができる。
【0072】
第3に、本開示の態様によれば、データ表現は、データ(すなわち、不規則にサンプリングされたセンシングデータ)が規則的なグリッド上の画像とは対照的に、時間、位置、強度などを含む要素を有する順序付けられたリストのセットとして表されるという点で、最も有用である。
【0073】
第4に、本開示のデータ処理動作は、a)IQR規則およびロバストゾーン統計を用いて適応強度閾値に基づいて各振動点に適用されるローカル顕著性フィルタと、b)交通軌跡、交通ノイズ下での未知の異常を検出するために、複数の点からの顕著な振動の原因を一括して評価し、c)より精度が高く、より少ない計算量で検出するために、古典的なハフ変換(HT)の代わりに、漸進的確率的ハフ変換(PPHT)を適用し、d)正常な道路交通に関する事前知識に従って、アキュムレータ閾値、最小線長、制限速度、および最大線ギャップを含むPPHTの調整されたパラメータに基づいて、検出されたセグメントを正常な交通軌跡として認定し、e)効率的な交通軌跡の除去のためのバイナリ拡張演算子とを含む。
【0074】
第5に、本開示の方法は、有利には、a)感知された各光ケーブル点において位置固有の閾値を提供し、b)誤警報を低減するために、より長期間にわたって異常スコアを蓄積する、イベントロギングを含むことができる。
【0075】
最後に、第6に、本発明の方法は、有利には、以下に起因する異常を報告することができる:a)複数のパッチからの集計された異常スコアの累積証拠(誤警報を低減する);b)ユーザにアラートメッセージを送信するためのカスタマイズされた閾値レベル;c)正常な統計から適応的に導出された位置固有の閾値;およびd)イベントが発見されたときにGPS位置を報告するために地図上のケーブル情報と統合される。
【0076】
この時点で、いくつかの具体例を使用して本開示を提示したが、当業者は本教示がそのように限定されないことを認識するのであろう。したがって、本開示は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2(A)】
図2(B)】
図2(C)】
図3
図4(A)】
図4(B)】
図4(C)】
図4(D)】
図5
図6
図7
図8