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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】つり合い錘及びエレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/00 20060101AFI20240913BHJP
   B66B 5/22 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B66B11/00 D
B66B5/22 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023570522
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2021048604
(87)【国際公開番号】W WO2023127032
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸村 好貴
(72)【発明者】
【氏名】橋本 智
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 剛
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 智貴
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-354373(JP,A)
【文献】特開2001-192184(JP,A)
【文献】特開2005-104653(JP,A)
【文献】国際公開第2011/135648(WO,A1)
【文献】特開2004-210423(JP,A)
【文献】中国実用新案第211594722(CN,U)
【文献】中国実用新案第211920594(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28;
11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路に設けられたガイドレールに案内されて移動する枠体と、
前記枠体内に配置される複数の第1錘片と、
前記枠体に接続され、引き上げられることで前記ガイドレールを挟持して前記枠体の移動を停止させる制動子を有する制動機構と、
前記制動子を引き上げる引き上げ機構と、
前記引き上げ機構を前記枠体に取り付けると共に第2錘片を保持する引き上げ機構取付部材と、を備える
つり合い錘。
【請求項2】
昇降路の底部に設置されたバッファ装置に接触するバッファ台と、
前記バッファ台を前記枠体に固定すると共に第3錘片を保持するバッファ台取付部材と、を備える
請求項1に記載のつり合い錘。
【請求項3】
前記引き上げ機構は、前記引き上げ機構取付部材に固定される引き上げ機構本体と、前記引き上げ機構本体と前記制動子との間に介在されるリンク部材と、を有し、
前記バッファ台取付部材は、前記引き上げ機構本体の下方に配置される
請求項2に記載のつり合い錘。
【請求項4】
前記引き上げ機構本体の一部は、前記引き上げ機構取付部材の下方において、前記枠体内に配置される
請求項3に記載のつり合い錘。
【請求項5】
前記枠体は、一対の縦枠を有し、
前記引き上げ機構取付部材は、
前記一対の縦枠に接続され、前記第2錘片を保持する縦枠接続部と、
前記縦枠接続部に接続され、前記引き上げ機構本体が固定される引き上げ機構固定部と、を有する
請求項3に記載のつり合い錘。
【請求項6】
前記枠体は、一対の縦枠を有し、
前記バッファ台取付部材は、
前記一対の縦枠に接続され、前記第3錘片を保持するバッファ台用接続部と、
前記バッファ台用接続部に接続され、前記バッファ台が固定されるバッファ台固定部と、を有する
請求項2に記載のつり合い錘。
【請求項7】
前記バッファ台用接続部は、前記一対の縦枠の下部を連結する下枠を兼ねる
請求項6に記載のつり合い錘。
【請求項8】
ロープで接続された乗りかごとつり合い錘を互いに異なる方向に昇降駆動させるエレベーターにおいて、
前記つり合い錘は、
ガイドレールに案内されて移動する枠体と、
前記枠体内に配置される複数の第1錘片と、
前記枠体に接続され、引き上げられることで前記ガイドレールを挟持して前記枠体の移動を停止させる制動子を有する制動機構と、
前記制動子を引き上げる引き上げ機構と、
前記引き上げ機構を前記枠体に取り付けると共に第2錘片を保持する引き上げ機構取付部材と、を備える
エレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つり合い錘、及びそのつり合い錘を備えたエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
つるべ式のエレベーターは、乗りかごとつり合い錘とをロープで繋げて、両者の質量のバランスをとってつり合わせている。これにより、ロープが巻き掛けられる巻上機にかかる負荷を軽くすることができる。乗りかごの質量が大きなエレベーターでは、必然的につり合い錘の質量を大きくする必要がある。
【0003】
つり合い錘の質量を大きくするには、比重が大きい錘を採用する、又は、つり合い錘を大型化して積載する錘の個数を増やすことが考えられる。しかし、比重が大きい錘は、高価であるため、比重が大きい錘を採用すると、つり合い錘のコストが上がってしまう。
【0004】
特許文献1には、縦枠、縦枠の上部に架設される上側板、及び縦枠の下部に架設される下側板を有するエレベーターつり合い重り枠構造が開示されている。このエレベーターつり合い重り枠構造は、対となる第1の縦枠間に第1の格納部を形成すると共に、対となる第2の縦枠間に第2の格納部を形成している。そして、第1の格納部と第2の格納部に重りを積載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-215034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されたエレベーターつり合い重り枠構造は、非常止め装置が設けられていない。非常止め装置は、一般的に、つり合い錘における枠体の下部に設けられる。したがって、非常止め装置を設ける場合は、枠体の下部に錘を積載することが難しい。
【0007】
本目的は、上記の問題点を考慮し、非常止め装置を設ける場合であっても、枠体の下部に錘を積載するスペースを確保することができるつり合い錘、及びそのつり合い錘を備えたエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本目的を達成するため、本発明のつり合い錘は、昇降路に設けられたガイドレールに案内されて移動する枠体と、枠体内に配置される複数の第1錘と、制動機構と、引き上げ機構と、引き上げ機構取付部材とを備える。制動機構は、枠体に接続され、引き上げられることでガイドレールを挟持して枠体の移動を停止させる制動子を有する。引き上げ機構は、制動子を引き上げる。引き上げ機構取付部材は、引き上げ機構を枠体に取り付けると共に第2錘を保持する。
また、本発明のエレベーターは、ロープで接続された乗りかごと上記つり合い錘を互いに異なる方向に昇降駆動させる。
【発明の効果】
【0009】
上記構成のつり合い錘によれば、非常止め装置(制動機構及び引き上げ機構)を設ける場合であっても、枠体の下部に錘を積載するスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態にかかるエレベーターを示す概略構成図である。
図2】一実施形態にかかるつり合い錘の正面図である。
図3】一実施形態にかかるつり合い錘の側面図である。
図4】一実施形態にかかるつり合い錘における制動機構の拡大図である。
図5】一実施形態にかかるつり合い錘における引き上げ機構の正面図である。
図6】一実施形態にかかるつり合い錘における引き上げ機構の側面図である。
図7】一実施形態にかかるつり合い錘における引き上げ機構取付部材の拡大図である。
図8】一実施形態にかかるつり合い錘におけるバッファ台取付部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施形態
以下、一実施形態にかかるつり合い錘及びエレベーターについて、図1図8を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0012】
[エレベーターの構成]
まず、一実施形態にかかるエレベーターの構成について、図1を参照して説明する。
図1は、一実施形態にかかるエレベーターの構成例を示す概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、エレベーター1は、建築構造物内に形成された昇降路100の上方に機械室を有しない、いわゆる機械室レスエレベーターである。なお、本発明のエレベーターは、機械室レスエレベーターに限定されるものではなく、昇降路100の上方に機械室を有するエレベーターであってもよい。
【0014】
エレベーター1は、昇降路100内を昇降する乗りかご110と、巻上機120と、つり合い錘130と、第1の従動プーリ140と、第2の従動プーリ150と、ロープ170を有している。
【0015】
乗りかご110の下部には、せり上げ用プーリ111が設けられている。せり上げ用プーリ111には、ロープ170が巻き掛けられている。つり合い錘130の上部には、錘側プーリ33が設けられている。錘側プーリ33には、ロープ170が巻き掛けられている。
【0016】
巻上機120は、昇降路100の最下部に配置されている。巻上機120には、ロープ170が巻き掛けられている。巻上機120は、ロープ170を介して乗りかご110及びつり合い錘130をつるべ式に昇降させる。巻上機120の駆動は、不図示の制御部によって制御される。
【0017】
第1の従動プーリ140と、第2の従動プーリ150は、昇降路100の最上部に回転可能に取り付けられている。ロープ170の一端と他端は、昇降路100の最上部に固定されている。ロープ170は、つり合い錘130に設けられた錘側プーリ33から第1の従動プーリ140に巻き掛けられ、そして巻上機120、第2の従動プーリ150、乗りかご110のせり上げ用プーリ111の順に巻き掛けられている。
【0018】
巻上機120が駆動することで、乗りかご110及びつり合い錘130が昇降路100内を昇降移動する。以下、乗りかご110及びつり合い錘130が昇降移動する方向を上下方向とする。
【0019】
[つり合い錘の構成]
次に、つり合い錘130の構成について、図2及び図3を参照して説明する。
図2は、つり合い錘130の正面図である。図3は、つり合い錘130の側面図である。
【0020】
図2及び図3に示すように、つり合い錘130は、枠体31と、枠体31に搭載される複数の錘片32と、錘側プーリ33と、非常止め装置34と、バッファ台35と、を備える。
【0021】
枠体31は、一対の縦枠41A,41Bと、一対の縦枠41A,41Bの上部を連結する一対の上枠42と、を備える。縦枠41A,41Bは、上下方向に延びる部材である。縦枠41A,41Bは、水平方向に平行な断面が略C字状となるように折り曲げ加工されている。
【0022】
縦枠41A,41Bは、正面と、正面に対向する背面と、正面と背面に連続する側面とを有する。以下、縦枠41A,41Bの正面と背面が対向する方向を枠体31の厚み方向とする。また、一対の縦枠41A,41Bの側面が対向する方向を枠体31の幅方向とする。
【0023】
上枠42は、略T字状の板体からなる。上枠42は、幅が狭い部分を上方に向けた姿勢で一対の縦枠41A,41Bの上部に配置されている。そして、上枠42における幅が広い部分の両端部が、一対の縦枠41A,41Bの正面(又は背面)にボルトにより取り付けられている。一対の上枠42は、錘側プーリ33を回転可能に支持している。
【0024】
一対の縦枠41A,41Bの上部における側面には、それぞれ上ガイドシュー43が固定されている。上ガイドシュー43は、昇降路100(図1参照)に設けられるガイドレール131に摺動可能に係合する。すなわち、枠体31は、ガイドレール131に案内されて昇降する。
【0025】
また、一対の縦枠41A,41Bの中間部には、サポート45が取り付けられている。これにより、枠体31の剛性を高めることができる。さらに、一対の縦枠41A,41Bの内側には、複数の錘押さえ(不図示)が接続されている。複数の錘押さえは、複数の錘片32のうちの第1錘片32Aを保持する。
【0026】
非常止め装置34は、2つの制動機構51A,51Bと、2つの制動機構51A,51Bの上方に配置される引き上げ機構52と、を有する。2つの制動機構51A,51Bは、一対の縦枠41A,41Bの下端にボルトにより取り付けられている。2つの制動機構51A,51Bは、同一の構成を有している。引き上げ機構52は、引き上げ機構取付部材53を用いて一対の縦枠41A,41Bに取り付けられている。
【0027】
バッファ台35は、2つの制動機構51A,51B間に配置されている。バッファ台35の下端は、2つの制動機構51A,51Bよりも下方に位置する。バッファ台35は、バッファ台取付部材54を用いて一対の縦枠41A,41Bに固定されている。バッファ台35は、昇降路100の底部に設置されたバッファ装置に対向する。バッファ台35は、つり合い錘130が所定位置よりも下降した場合に、バッファ装置に接触して衝撃を緩和する。
【0028】
[制動機構の構成]
次に、制動機構51A,51Bの構成について、図4を参照して説明する。
図4は、制動機構51Aの拡大図である。
【0029】
制動機構51A,51Bは、同じ構成を有している。そのため、ここでは制動機構51Aについて説明する。図4に示すように、制動機構51Aは、ハウジング61と、一対の制動子62A,62Bと、一対のガイド部材63A,63Bと、付勢部材64と、支持部材65と、引き上げ棒66とを有している。
【0030】
ハウジング61は、側方に開口する収容室61aを有する筐体状に形成されている。収容室61aは、ハウジング61の上面及び下面に開口している。そして、収容室61aには、ガイドレール131が貫通する。ハウジング61の上面は、縦枠41Aの下端にボルトにより取り付けられている。
【0031】
ハウジング61の下面には、下ガイドシュー44が固定されている(図2参照)。下ガイドシュー44は、上下方向において、ハウジング61を挟んで対向する。下ガイドシュー44は、昇降路100(図1参照)に設けられるガイドレール131に摺動可能に係合する。
【0032】
ハウジング61の収容室61aには、一対の制動子62A,62B、一対のガイド部材63A,63B、付勢部材64、及び支持部材65が収容されている。一対の制動子62A,62Bは、ガイドレール131を間に挟んで枠体31の厚み方向で互いに対向している。そして、非常止め装置34が作動する前の状態では、一対の制動子62A,62Bとガイドレール131との間には、所定の間隔が形成されている。
【0033】
一対の制動子62A,62Bは、くさび状に形成されている。一対の制動子62A,62Bにおけるガイドレール131と対向する一面は、ガイドレール131の一面と平行に形成されている。また、一対の制動子62A,62Bにおけるガイドレール131と対向する一面とは反対側の他面は、下方から上方に向かうにつれてガイドレール131に接近するように傾斜している。
【0034】
支持部材65は、一対の制動子62A,62Bを枠体31の厚み方向に移動可能に支持している。また、支持部材65には、引き上げ棒66が接続されている。そして、引き上げ棒66が上方に引き上げられると、一対の制動子62A,62B及び支持部材65は、上方に向けて移動する。
【0035】
また、一対の制動子62A,62Bは、一対のガイド部材63A,63Bによって上下方向及び枠体31の厚み方向に移動可能に支持されている。ガイド部材63Aは、ハウジング61における収容室61aの壁面に固定されている。また、ガイド部材63Bは、ハウジング61によって枠体31の厚み方向に移動可能に支持されている。一対のガイド部材63A,63Bは、ガイドレール131と一対の制動子62A,62Bを間に挟んで枠体31の厚み方向に所定の間隔を空けて対向する。
【0036】
ガイド部材63A,63Bにおける制動子62A,62Bと対向する一面は、上方に向かうにつれてガイドレール131に接近するように傾斜している。そのため、一対のガイド部材63A,63Bにおける制動子62A,62Bと対向する一面の間隔は、上方に向かうにつれて狭まっている。
【0037】
付勢部材64は、ガイド部材63Bとハウジング61における収容室61aの壁面との間に介在されている。付勢部材64は、ガイド部材63Bをガイド部材63A側に付勢する。付勢部材64は、例えば、皿ばねを採用することができる。なお、制動機構に係る付勢部材としては、板ばねや圧縮コイルばねを採用してもよい。
【0038】
ハウジング61には、ガイド部材63Bのガイド部材63A側への移動を係止する係止部が設けられている。これにより、ガイド部材63Bは、所定位置よりもガイド部材63A側へ移動しない。一方、ガイド部材63Bは、付勢部材64の付勢力に抗してガイド部材63Aから離れる方向に移動可能である。
【0039】
引き上げ棒66が上方へ引き上げられると、一対の制動子62A,62Bが一対のガイド部材63A,63Bに対して相対的に上方に移動する。これにより、一対の制動子62A,62Bは、一対のガイド部材63A,63Bに係合して互いに接近する方向、すなわちガイドレール131に接近する方向へ移動する。さらに、制動子62Bは、ガイド部材63Bを介して付勢部材64の付勢力によりガイドレール131に押し付けられる。これにより、つり合い錘130の昇降(上下方向の移動)が制動される。
【0040】
[引き上げ機構の構成]
次に、引き上げ機構52の構成について、図5及び図6を参照して説明する。
図5は、引き上げ機構52の正面図である。図6は、引き上げ機構52の側面図である。
【0041】
図5及び図6に示すように、引き上げ機構52は、引き上げ機構本体71と、一対のリンク部材72A,72Bとを有する。引き上げ機構本体71の一部は、引き上げ機構取付部材53の下方において、枠体31内に配置されている(図6参照)。これにより、引き上げ機構52における枠体31から突出する長さを短くすることできる。その結果、つり合い錘130の薄型化を図ることができる。
【0042】
引き上げ機構本体71は、回転軸74と、回転軸74の両端部を回転可能に支持する軸支持部75と、回転軸74に固定された連結部76,77と、回転軸74を一方の回転方向に付勢する付勢部材78とを有する。
【0043】
回転軸74は、枠体31の幅方向に沿って延びている。軸支持部75は、枠体31の正面側に開口する筐体状に形成されている。軸支持部75は、上面を形成する上面板751と、下面を形成する下面板752と、背面を形成する背面板753と、側面を形成する側面板754,755とを有する。
【0044】
上面板751は、引き上げ機構取付部材53の後述する引き上げ機構固定部82にボルトにより固定されている。下面板752は、上下方向において上面板751と対向する。背面板753は、上面板751及び下面板752に連続している。側面板754,755は、枠体31の幅方向において互いに対向している。側面板754,755は、それぞれ上面板751、下面板752、及び背面板753に連続している。
【0045】
側面板754,755は、回転軸74の両端部を回転可能に支持する。回転軸74の両端は、側面板754,755を貫通している。また、側面板754の外面には、ストッパ79が取り付けられている。ストッパ79は、上下方向において連結部76と接触する。これにより、ストッパ79は、連結部76の回転を係止する。
【0046】
図6に示すように、連結部76は、略長方形の板状に形成されている。連結部76の長手方向の一端部は、回転軸74における側面板754から突出した端部に固定されている。これにより、連結部76は、回転軸74と一緒に回転する。連結部76の長手方向の他端部には、ロープ接続部761が設けられている。ロープ接続部761は、不図示の調速機ロープに接続される。また、連結部76の長手方向の中間部には、リンク部材72Aが接続される。
【0047】
図5に示すように、連結部77は、連結部76よりも短い略長方形の板状に形成されている。連結部77の長手方向の一端部は、回転軸74における側面板755から突出した端部に固定されている。これにより、連結部77は、回転軸74と一緒に回転する。連結部77の長手方向の他端部には、リンク部材72Aが接続される。
【0048】
付勢部材78は、回転軸74が貫通するねじりばねである。付勢部材78は、軸支持部75の側面板754,755間に配置されている。付勢部材78は、図6において時計回り方向に回転軸74を付勢する。これにより、回転軸74に接続された連結部76は、時計回り方向に付勢される。その結果、連結部76の下方を向く側面がストッパ79に当接する。ストッパ79に当接した連結部76は、長手方向が枠体31の厚み方向(水平方向)に略平行な姿勢で停止している。
【0049】
不図示の調速機ロープは、両端が連結された、いわゆる無端状に形成されている。調速機ロープは、つり合い錘130の昇降動作に合わせて循環移動する。そのため、調速機ロープの移動速度と、つり合い錘130の昇降速度は、互いに連動している。調速機ロープの移動速が停止されると、つり合い錘130と調速機ロープの相対的な位置が変化し、連結部76は、付勢部材78の付勢力に抗して、図6において反時計回り方向に回転する。
【0050】
リンク部材72A,72Bは、略L字状に折り曲げ加工された部材である。図5に示すように、リンク部材72Aの一端部は、カラー721(図2参照)を介して連結部76に回転可能に接続されている。リンク部材72Aの他端部は、制動機構51Aの引き上げ棒66に回転可能に接続されている。連結部76が付勢部材78の付勢力に抗して回転すると、リンク部材72Aは、連結部76の回転に応じて変位して、制動機構51Aの引き上げ棒66を上方に引き上げる。
【0051】
リンク部材72Bの一端部は、連結部77(図5参照)に回転可能に接続されている。リンク部材72Bの他端部は、制動機構51Bの引き上げ棒66に回転可能に接続されている。連結部77が回転軸74及び連結部76と一緒に、付勢部材78の付勢力に抗して回転すると、リンク部材72Bは、連結部77の回転に応じて変位して、制動機構51Bの引き上げ棒66を上方に引き上げる。
【0052】
[引き上げ機構取付部材の構成]
次に、引き上げ機構取付部材53の構成について、図2及び図7を参照して説明する。
図7は、引き上げ機構取付部材の拡大図である。
【0053】
図2及び図7に示すように、引き上げ機構取付部材53は、一対の縦枠接続部81A,81Bと、引き上げ機構固定部82と、を有している。一対の縦枠接続部81A,81Bは、長方形の板状に形成されている。縦枠接続部81Aは、一対の縦枠41A,41Bの正面にボルトにより固定されている。縦枠接続部81Bは、一対の縦枠41A,41Bの背面にボルトにより固定されている。
【0054】
図7に示すように、一対の縦枠接続部81A,81Bは、枠体31の厚み方向において互いに対向している。一対の縦枠接続部81A,81Bは、ボルト84及びナット85により連結されている。そして、一対の縦枠接続部81A,81Bは、複数の錘片32のうちの複数の第2錘片32Bを保持する。
【0055】
複数の第2錘片32Bは、一対の縦枠接続部81A,81B間に配置されている。複数の第2錘片32Bは、ボルト84が貫通するボルト貫通孔を有している。すなわち、複数の第2錘片32Bは、ボルト84及びナット85を用いて一対の縦枠接続部81A,81Bに取り付けられている。
【0056】
図7に示すように、引き上げ機構固定部82は、L字状に折り曲げ加工された部材である。引き上げ機構固定部82は、縦枠固定板821と、引き上げ機構固定板822とを有する。縦枠固定板821は、縦枠接続部81Aにボルトにより固定されている。引き上げ機構固定板822には、引き上げ機構52の軸支持部75がボルトにより固定されている。
【0057】
なお、引き上げ機構固定部82は、縦枠接続部81Bに固定してもよい。また、引き上げ機構取付部材に係る引き上げ機構固定部としては、略C字状に折り曲げ加工して形成し、一対の縦枠接続部81A,81Bに固定するようにしてもよい。
【0058】
[バッファ台取付部材の構成]
次に、バッファ台取付部材54の構成について、図2及び図8を参照して説明する。
図8は、バッファ台取付部材の側面図である。
【0059】
図2及び図8に示すように、バッファ台取付部材54は、引き上げ機構本体71の下方に配置されている。バッファ台取付部材54は、一対のバッファ台用接続部86A,86Bと、バッファ台固定部87と、を有している。
【0060】
一対のバッファ台用接続部86A,86Bは、長方形の板状に形成されている。バッファ台用接続部86Aは、一対の縦枠41A,41Bの正面にボルトにより固定されている。バッファ台用接続部86Bは、一対の縦枠41A,41Bの背面にボルトにより固定されている。一対のバッファ台用接続部86A,86Bは、一対の縦枠41A,41Bの下部を連結する一対の下枠を兼ねる。
【0061】
図8に示すように、一対のバッファ台用接続部86A,86Bは、枠体31の厚み方向において互いに対向している。一対のバッファ台用接続部86A,86Bは、ボルト84及びナット85により連結されている。そして、一対のバッファ台用接続部86A,86Bは、複数の錘片32のうちの複数の第3錘片32Cを保持する。
【0062】
複数の第3錘片32Cは、一対のバッファ台用接続部86A,86B間に配置されている。複数の第3錘片32Cは、ボルト84が貫通するボルト貫通孔を有している。すなわち、複数の第3錘片32Cは、ボルト84及びナット85を用いて一対のバッファ台用接続部86A,86Bに取り付けられている。
【0063】
バッファ台固定部87は、略C字状に折り曲げ加工された部材である。バッファ台固定部87は、縦枠固定板871A,871Bと、縦枠固定板871A,871Bに対して略垂直な引き上げ機構固定板872とを有する。
【0064】
図8に示すように、縦枠固定板871Aは、バッファ台用接続部86Aにボルトにより固定されている。縦枠固定板871Bは、バッファ台用接続部86Bにボルトにより固定されている。引き上げ機構固定板872には、バッファ台35がボルトにより固定されている。
【0065】
2.まとめ
このように、本実施形態に係るつり合い錘130は、昇降路100に設けられたガイドレール131に案内されて移動する枠体31と、枠体31内に配置される複数の第1錘片32Aと、制動機構51A,51Bと、引き上げ機構52と、引き上げ機構取付部材53とを備える。制動機構51A,51Bは、枠体に接続され、引き上げられることでガイドレール131を挟持して枠体31の移動を停止させる制動子62A,62Bを有する。引き上げ機構52は、制動子62A,62Bを引き上げる。引き上げ機構取付部材53は、引き上げ機構52を枠体31に取り付けると共に第2錘片32Bを保持する。
これにより、制動機構51A,51B及び引き上げ機構52を設ける場合であっても、枠体31の下部に第2錘片32Bを積載するスペースを確保することができ、積載する錘片の個数を増やすこができる。その結果、比重が大きくて高価な材料で錘片を形成しなくて、もよい。つり合い錘130に必要な重量を確保することができる。
【0066】
また、上述した実施形態に係るつり合い錘130は、昇降路100の底部に設置されたバッファ装置に接触するバッファ台35と、バッファ台35を枠体31に固定すると共に第3錘片32Cを保持するバッファ台取付部材54とを備える。
これにより、枠体31の下部に第3錘片32Cを積載するスペースを確保することができ、積載する錘片の個数を増やすこができる。その結果、比重が大きくて高価な材料で錘片を形成しなくても、つり合い錘130に必要な重量を確保することができる。
【0067】
また、上述した実施形態に係る引き上げ機構52は、引き上げ機構取付部材53に固定される引き上げ機構本体71と、引き上げ機構本体71と制動子62A,62Bとの間に介在されるリンク部材72A,72Bとを有する。そして、バッファ台取付部材54は、引き上げ機構本体71の下方に配置される。
これにより、バッファ台35を引き上げ機構本体71との干渉を避ける形状にする必要が無い。その結果、バッファ台35を簡単な形状にすることができため、バッファ台35の耐久性を高めることができる。
【0068】
また、上述した実施形態に係る引き上げ機構本体71の一部は、引き上げ機構取付部材53の下方において、枠体31内に配置される。
これにより、引き上げ機構52における枠体31から突出する長さを短くすることできる。その結果、つり合い錘130の薄型化を図ることができる。
【0069】
また、上述した実施形態に係る枠体31は、一対の縦枠41A,41Bを有する。そして、引き上げ機構取付部材53は、一対の縦枠41A,41Bに接続され、第2錘片32Bを保持する縦枠接続部81A,81Bと、縦枠接続部81A(81Bでもよい)に接続され、引き上げ機構本体71が固定される引き上げ機構固定部82と、を有する。
これにより、第2錘片32Bを保持する縦枠接続部81A,81Bを一対の縦枠41A,41Bに接続したまま、引き上げ機構固定部82に対して引き上げ機構本体71の取り付け、及び取り外しを行うことができる。その結果、つり合い錘130の組立作業を効率よく行うことができる。
【0070】
また、上述した実施形態に係る枠体31は、一対の縦枠41A,41Bを有する。そして、バッファ台取付部材54は、一対の縦枠41A,41Bに接続され、第3錘片32Cを保持するバッファ台用接続部86A,86Bと、バッファ台用接続部86A,86Bに接続され、バッファ台35が固定されるバッファ台固定部87と、を有する。
これにより、第3錘片32Cを保持するバッファ台用接続部86A,86Bを一対の縦枠41A,41Bに接続したまま、バッファ台固定部87に対してバッファ台35の取り付け、及び取り外しを行うことができる。その結果、つり合い錘130の組立作業を効率よく行うことができる。
【0071】
また、上述した実施形態に係るバッファ台用接続部86A,86Bは、一対の縦枠41A,41Bの下部を連結する下枠を兼ねる。
これにより、部品点数の削減を図ることができると共に、枠体31の剛性を高めることができる。
【0072】
また、上述した実施形態に係るエレベーター1は、ロープ170で接続された乗りかご110とつり合い錘130を互いに異なる方向に昇降駆動させる。そして、つり合い錘130は、昇降路100に設けられたガイドレール131に案内されて移動する枠体31と、枠体31内に配置される複数の第1錘片32Aと、制動機構51A,51Bと、引き上げ機構52と、引き上げ機構取付部材53とを備える。制動機構51A,51Bは、枠体に接続され、引き上げられることでガイドレール131を挟持して枠体31の移動を停止させる制動子62A,62Bを有する。引き上げ機構52は、制動子62A,62Bを引き上げる。引き上げ機構取付部材53は、引き上げ機構52を枠体31に取り付けると共に第2錘片32Bを保持する。
これにより、制動機構51A,51B及び引き上げ機構52を設ける場合であっても、枠体31の下部に第2錘片32Bを積載するスペースを確保することができ、積載する錘片の個数を増やすこができる。その結果、比重が大きくて高価な材料で錘片を形成しなくて、もよい。つり合い錘130に必要な重量を確保することができる。
【0073】
本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0074】
上述した実施形態では、付勢部材78としてねじりばねを採用した引き上げ機構52を備える構成にした。しかし、本発明に係るつり合い錘としては、例えば、圧縮コイルばねを用いた引き上げ機構を備える構成にしてもよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、付勢部材64として皿ばねを採用した制動機構51A,51Bを備える構成にした。しかし、本発明に係るつり合い錘としては、例えば、水平方向で切断した断面形状がU字状の板ばねにより2つの制動子を付勢する制動機構を備える構成にしてもよい。
【0076】
また、上述した実施形態では、引き上げ機構取付部材53の縦枠接続部81A,81Bが、複数の第2錘片32Bを保持する構成にした。しかし、本発明に係る引き上げ機構取付部材としては、少なくとも1つの第2錘片32Bを保持する構成であればよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、バッファ台取付部材54のバッファ台用接続部86A,86Bが、複数の第3錘片32Cを保持する構成にした。しかし、本発明に係るバッファ台取付部材としては、少なくとも1つの第3錘片32Cを保持する構成であればよい。
【0078】
また、上述した実施形態では、引き上げ機構取付部材53が複数の第2錘片32Bを保持し、バッファ台取付部材54が複数の第3錘片32Cを保持する構成にした。しかし、本発明に係るつり合い錘としては、引き上げ機構取付部材とバッファ台取付部材が、共通の錘片を保持する構成にしてもよい。
【0079】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…エレベーター、 31…枠体、 32…錘片、 32A…第1錘片、 32B…第2錘片、 32C…第3錘片、 33…錘側プーリ、 34…非常止め装置、 35…バッファ台、 41A,41B…縦枠、 42…上枠、 43…上ガイドシュー、 44…下ガイドシュー、 45…サポート、 51A,51B…制動機構、 52…引き上げ機構、 53…引き上げ機構取付部材、 54…バッファ台取付部材、 61…ハウジング、 61a…収容室、 62A,62B…制動子、 63A,63B…ガイド部材、 64…付勢部材(皿ばね)、 65…支持部材、 66…引き上げ棒、 71…引き上げ機構本体、 72A,72B…リンク部材、 74…回転軸、 75…軸支持部、 76,77…連結部、 78…付勢部材(ねじりばね)、 79…ストッパ、 81A,81B…縦枠接続部、 82…引き上げ機構固定部、 84…ボルト、 85…ナット、 86A,86B…バッファ台用接続部、 87…バッファ台固定部、 100…昇降路、 111…上げ用プーリ、 120…巻上機、 130…つり合い錘、 131…ガイドレール、 140…第1の従動プーリ、 150…第2の従動プーリ、 170…ロープ、 721…カラー、 751…上面板、 752…下面板、 753…背面板、 754,755…側面板、 761…ロープ接続部、 821…縦枠固定板、 822…引き上げ機構固定板、 871A,871B…縦枠固定板、 872…引き上げ機構固定板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8