(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】医療機器用補助具、ガイドワイヤアッセンブリ及び医療機器アッセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/01 20060101AFI20240913BHJP
A61M 25/088 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61M25/01 510
A61M25/088
(21)【出願番号】P 2024013938
(22)【出願日】2024-02-01
【審査請求日】2024-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591004146
【氏名又は名称】平河ヒューテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住谷 淳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇太郎
(72)【発明者】
【氏名】高江 潤
(72)【発明者】
【氏名】北野 雅之
(72)【発明者】
【氏名】小倉 健
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-255001(JP,A)
【文献】特開2010-029559(JP,A)
【文献】特開2008-142351(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092387(WO,A1)
【文献】特開2016-179008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/01
A61M 25/088
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径及び外径がそれぞれ同径のまま先端側から基端側に延びる内壁及び外壁を有する管状本体部を備え、
ガイドワイヤが前記内壁の内側に進退可能に挿入され、カテーテルが前記基端側から交換可能に前記外壁の外側に装着される
医療機器用補助具であって、
前記管状本体部の前記先端側に設けられ、少なくとも表面が樹脂から形成された先端部と、
前記管状本体部の前記基端側に設けられ、少なくとも表面が樹脂から形成された基端部と、をさらに備え、
前記先端部は、断面環状を有し、前記管状本体部側の端部の外径が前記管状本体部の外径よりも大きくなく、先端に向かうほど外径が小さくなるように外周面が形成され、
前記基端部は、断面環状を有し、前記管状本体部側の端部の外径が前記管状本体部の外径よりも大きくなく、基端に向かうほど外径が小さくなるように外周面が形成されている、
医療機器用補助具。
【請求項2】
前記内壁は、細経の前記ガイドワイヤが挿入可能な内径を有し、
前記外壁は、挿入される前記ガイドワイヤよりも太いガイドワイヤの外径に相当する外径を有する、
請求項1に記載の医療機器用補助具。
【請求項3】
前記管状本体部は、線状部材により形成された補強層を含む、
請求項2に記載の医療機器用補助具。
【請求項4】
前記管状本体部は、前記内壁を構成するとともに、前記ガイドワイヤに対して滑り性を有する材料から形成された内層と、前記外壁を構成するとともに、柔軟性及び剛性を有する材料から形成された外層と、を備え、
前記補強層は、前記内層と前記外層との間に形成された、
請求項3に記載の医療機器用補助具。
【請求項5】
前記補強層は、前記線状部材を螺旋状に巻回することにより形成されたコイル体を含む、
請求項4に記載の医療機器用補助具。
【請求項6】
前記補強層は、複数の前記線状部材を編み込むことにより形成された編組体を含む、
請求項4に記載の医療機器用補助具。
【請求項7】
前記外層を構成する材料のショア硬度は、63D以上、78D以下である、
請求項4に記載の医療機器用補助具。
【請求項8】
当該医療機器用補助具の全長が1500mm以上である、
請求項
7に記載の医療機器用補助具。
【請求項9】
当該医療機器用補助具の全長が4000mm以上である、
請求項
7に記載の医療機器用補助具。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか1項に記載の医療機器用補助具と、
前記医療機器用補助具の前記内壁の内側に挿入されるガイドワイヤと、
を備えたガイドワイヤアッセンブリ。
【請求項11】
請求項1から
9のいずれか1項に記載の医療機器用補助具と、
前記医療機器用補助具の前記内壁の内側に挿入されるガイドワイヤと、
前記医療機器用補助具の前記外壁の外側に装着されるカテーテルと、
を備えた医療機器アッセンブリ。
【請求項12】
前記医療機器用補助具の前記外壁の外径と前記カテーテルのルーメンの内径とのクリアランスが0.005mm以上、0.05mm以下である、
請求項
11に記載の医療機器アッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器用補助具、ガイドワイヤアッセンブリ及び医療機器アッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使用しているガイドワイヤを変更せずに、そのガイドワイヤのサイズより大径のカテーテルを使用可能にするカテーテル補助具が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
内視鏡的逆行性胆管膵管造影、超音波内視鏡下胆道ドレナージ術等のカテーテル検査・治療では、カテーテルに先だってガイドワイヤを生体管腔内に挿入し、カテーテルをガイドワイヤに被せるように生体管腔内の目的の部位に進めることが行われている。生体管腔内に挿入されるカテーテルは、検査・治療する部位や目的に応じて複数種のカテーテルを交換して使用することが多い。カテーテルを交換する際に、ガイドワイヤがそのカテーテルのルーメンに適合していなければ、適合したガイドワイヤに交換する必要がある。
【0004】
薬物療法や放射線療法、ガイドワイヤを始めとした医療機器デバイスの進化により高度狭窄を伴う病変や深部末梢への医療機器デバイスの送達が行われるケースが増えている。そのため、ガイドワイヤのトルク性能が要求されるだけでなく、従来の内視鏡治療において使用される0.035インチ(約0.89mm)や0.025インチ(約0.64mm)のガイドワイヤだけでなく、0.018インチ(約0.46mm)の細径のガイドワイヤを使用する場面が微増傾向にある。
【0005】
しかしながら、細径(例えば、0.018インチ(約0.46mm))のガイドワイヤに適合したカテーテルは少なく、併用するカテーテルとガイドワイヤとのクリアランスが大きいことによる引っ掛かりやガイドワイヤの剛性不足により、カテーテルがガイドワイヤに追従できずガイドワイヤ挿通後の他の医療機器の挿通が困難となる場合が生じている。
【0006】
特許文献1に記載されたカテーテル補助具は、カテーテル補助具よりも長さが長く、外径が0.010インチ(0.25mm)のガイドワイヤが挿入可能な内径(0.30mm)と、カテーテルの内径0.014インチ(0.36mm)のルーメンに収まる外径(0.04mm)と、を有する管と、カテーテルに対して補助具を先行させないようにするとともに、カテーテルからカテーテル補助具が脱落しないようにするために管の最も近位端側(基端側)に設けられ、近位端側に向かうほど管の外径よりも外径を拡径させた拡径部と、血管内で引っ掛かりにくくするために管の最も遠位端側に設けられ、遠位端側に向かうほど管の外径よりも外径を縮径させた減径部とを備え、心臓に血液を供給するための冠動脈等の治療に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のカテーテル補助具によると、近位端側(基端側)に拡径部が設けられているため、カテーテルを交換する側がカテーテル補助具の遠位端側(先端側)に限られていることから、ガイドワイヤを挿入したままカテーテルを交換する場合に、カテーテルだけでなくカテーテル補助具も交換する必要があり、カテーテルの交換に手間がかかる。
【0009】
本発明の課題は、検査・治療中にガイドワイヤのサイズの変更が必要になった場合でも使用中のガイドワイヤをそのまま使用可能であるとともに、カテーテルの交換を容易に行うことができる医療機器用補助具、ガイドワイヤアッセンブリ及び医療機器アッセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]内径及び外径がそれぞれ同径のまま先端側から基端側に延びる内壁及び外壁を有する管状本体部を備え、
ガイドワイヤが前記内壁の内側に進退可能に挿入され、カテーテルが前記基端側から交換可能に前記外壁の外側に装着される医療機器用補助具であって、
前記管状本体部の前記先端側に設けられ、少なくとも表面が樹脂から形成された先端部と、
前記管状本体部の前記基端側に設けられ、少なくとも表面が樹脂から形成された基端部と、をさらに備え、
前記先端部は、断面環状を有し、前記管状本体部側の端部の外径が前記管状本体部の外径よりも大きくなく、先端に向かうほど外径が小さくなるように外周面が形成され、
前記基端部は、断面環状を有し、前記管状本体部側の端部の外径が前記管状本体部の外径よりも大きくなく、基端に向かうほど外径が小さくなるように外周面が形成されている、医療機器用補助具。
[2]前記内壁は、細経の前記ガイドワイヤが挿入可能な内径を有し、
前記外壁は、挿入される前記ガイドワイヤよりも太いガイドワイヤの外径に相当する外径を有する、前記[1]に記載の医療機器用補助具。
[3]前記管状本体部は、線状部材により形成された補強層を含む、前記[2]に記載の医療機器用補助具。
[4]前記管状本体部は、前記内壁を構成するとともに、前記ガイドワイヤに対して滑り性を有する材料から形成された内層と、前記外壁を構成するとともに、柔軟性及び剛性を有する材料から形成された外層と、を備え、
前記補強層は、前記内層と前記外層との間に形成された、前記[3]に記載の医療機器用補助具。
[5]前記補強層は、前記線状部材を螺旋状に巻回することにより形成されたコイル体を含む、前記[4]に記載の医療機器用補助具。
[6]前記補強層は、複数の前記線状部材を編み込むことにより形成された編組体を含む、前記[4]に記載の医療機器用補助具。
[7]前記外層を構成する材料のショア硬度は、63D以上、78D以下である、前記[4]に記載の医療機器用補助具。
[8]当該医療機器用補助具の全長が1500mm以上である、前記[7]に記載の医療機器用補助具。
[9]当該医療機器用補助具の全長が4000mm以上である、前記[7]に記載の医療機器用補助具。
[10]前記[1]から[9]のいずれか1つに記載の医療機器用補助具と、
前記医療機器用補助具の前記内壁の内側に挿入されるガイドワイヤと、を備えたガイドワイヤアッセンブリ。
[11]前記[1]から[9]のいずれか1つに記載の医療機器用補助具と、
前記医療機器用補助具の前記内壁の内側に挿入されるガイドワイヤと、
前記医療機器用補助具の前記外壁の外側に装着されるカテーテルと、を備えた医療機器アッセンブリ。
[12]前記医療機器用補助具の前記外壁の外径と前記カテーテルのルーメンの内径とのクリアランスが0.005mm以上、0.05mm以下である、前記[11]に記載の医療機器アッセンブリ。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、10、11に係る発明によれば、検査・治療中にガイドワイヤのサイズの変更が必要になった場合でも使用中のガイドワイヤをそのまま使用可能であるとともに、医療機器用補助具の生体管腔内への挿入が容易になり、カテーテルの医療機器用補助具への装着が容易になり、カテーテルの交換を容易に行うことができる。
請求項2に係る発明によれば、ガイドワイヤを医療機器用補助具の管状本体部の内壁の内側に挿入することにより、ガイドワイヤを外径、機械的性質(剛性、硬度、引張弾性率等)等の点で太径化することができる。
請求項3に係る発明によれば、補強層の線状部材の材質や太さを選択することで、目標とする曲げ剛性を得ることができる。
請求項4~6に係る発明によれば、ガイドワイヤに対して滑り性を有するとともに、線状部材の材質や太さ、内層及び外層の材料を選択することで、目標とする機械的性質を得ることができる。
請求項7に係る発明によれば、細径(例えば、0.018インチ(約0.46mm))のガイドワイヤを管状本体部の内壁の内側に挿入することで、ガイドワイヤ及び医療機器用補助具全体として太径(例えば、0.025インチ(約0.64mm))のガイドワイヤに相当する機械的性質を得ることができる。
請求項8に係る発明によれば、超音波内視鏡や他の内視鏡を用いないカテーテル検査・治療に用いることができる。
請求項9に係る発明によれば、超音波内視鏡や他の内視鏡の案内の下でカテーテル検査・治療に用いることができる。
請求項12に係る発明によれば、医療機器用補助具の外壁の外径とカテーテルのルーメンの内径とのクリアランスを小さくすることにより、カテーテルの操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る医療機器アッセンブリの一例を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す医療機器用補助具を用いない場合の問題を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す医療機器用補助具を用いた場合の効果を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す医療機器用補助具の具体的な構成例を示す縦断面図である。
【
図5】
図5(a)は、コイル体による補強層の一例を模式的に示す正面図、
図5(b)は、コイル体による補強層の変形例を示す要部正面図である。
【
図6】
図6(a)は、編組体による補強層の一例を模式的に示す正面図、
図6(b)は、
図6(a)のC部拡大図である。
【
図7】
図7は、超音波内視鏡下胆道ドレナージ術の一例を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、本実施の形態に係る医療機器用補助具の変形例1を示す縦断面図である。
【
図9】
図9は、本実施の形態に係る医療機器用補助具の変形例2を示す縦断面図である。
【
図10】
図10(a)~(e)は、変形例2の製造工程の一例を示す要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0014】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る医療機器アッセンブリの一例を示す正面図である。本明細書では、生体内に挿入する側を先端側A、術者が操作する手元側を基端側Bという。
【0015】
(医療機器アッセンブリの構成)
この医療機器アッセンブリ100は、内径及び外径がそれぞれ同径のまま先端側A(先端1aの側)から基端側B(基端1bの側)に延びる断面環状の内壁1c及び外壁1dを有する長尺の管状本体部2を備えた医療機器用補助具1と、管状本体部2の内壁1cの内側(内壁1cにより画定された内腔1e)に進退可能に挿入されるガイドワイヤ110と、先端側A及び基端側Bのどちらの側からも交換可能に外壁1dの外側に装着されるカテーテル120とを備え、生体管腔(例えば、消化管、胆管、膵管等)の検査・治療に用いられる。ガイドワイヤ110及びカテーテル120は、それぞれ医療機器の一例である。医療機器用補助具1及びガイドワイヤ110は、ガイドワイヤアッセンブリを構成する。
【0016】
(医療機器用補助具の構成の概要)
医療機器用補助具1は、細径(例えば、0.018インチ(約0.46mm))のガイドワイヤ110が挿入可能な内腔1eと、細径のガイドワイヤ110よりも太径(例えば、0.025インチ(約0.64mm))のガイドワイヤの外径に相当する外径を有する外壁1dとを備える。この構成により、医療機器用補助具1は、細径のガイドワイヤ110を内腔1eに挿入することで、ガイドワイヤ110を外径、機械的性質(剛性、硬度、引張弾性率等)等の点で太径化(すなわち、実質的に太径化)したことになる。この構成による機能については後述する。なお、0.018インチ(約0.46mm)のガイドワイヤ110を0.035インチ(約0.89mm)のガイドワイヤの外径に相当する外径まで太径化してもよい。また、0.014インチ(約0.36mm)又は0.016インチ(約0.41mm)の細径のガイドワイヤ110を0.025インチ(約0.64mm)又は0.035インチ(約0.89mm)に太径化してもよい。
【0017】
また、医療機器用補助具1は、挿入されるガイドワイヤ110の全長に対応した全長(例えば、1500mm以上、又は4000mm以上)を有する。医療機器用補助具1の全長を1500mm以上、4000mm未満とすることにより、超音波内視鏡やその他の内視鏡を用いないカテーテル検査・治療を行うことができる。また、医療機器用補助具1の全長を4000mm以上とすることにより、超音波内視鏡やその他の内視鏡を経由したカテーテル検査・治療、すなわち超音波内視鏡やその他の内視鏡の案内の下でカテーテル検査・治療を行うことができる。なお、医療機器用補助具1の全長は、挿入されるガイドワイヤ110の全長よりも長い場合もあれば、短い場合もある。カテーテル120は、医療機器用補助具1の外壁1dに対して交換する側は制限されず、先端側Aから交換してもよく、基端側Bから交換してもよい。
【0018】
(ガイドワイヤの構成)
ガイドワイヤは、目的に応じて種々のものが市販されている。例えば、外径が0.018インチ(約0.46mm)、全長が4500mm程度の細径長尺のガイドワイヤ110(例えば、内視鏡用ガイドワイヤ)を用いた場合、例えば、生体の深部にある胆管や膵管等の細径の管状器官(生体管腔)にガイドワイヤ110を挿入することができる。
【0019】
ガイドワイヤ110は、例えば、剛性を有する材料(例えば、ステンレス鋼)から形成された本体部と、本体部の先端側に設けられ、50~130mm程度の長さを有し、柔軟性及び復元性を有する材料(例えば、コイルスプリング)から形成された先端柔軟部とを備える。本体部は、生体管腔内での滑り性を高めるために表面にコーティング(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)が施されている。
【0020】
(カテーテルの構成)
カテーテル120には、治療部位や治療目的に応じて複数種のもの、例えば、バルーンカテーテル、ステントデリバリーカテーテル、カニューラ(胆管造影用カテーテルともいう。)等がある。0.25インチのガイドワイヤに適合するカテーテル120の場合、全長は1800~2100mm程度である。
【0021】
(医療機器用補助具が有する機能)
医療機器用補助具1が有する機能について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は、
図1に示す医療機器用補助具1を用いない場合(比較例)の問題を説明するための模式図である。
図3は、
図1に示す医療機器用補助具1を用いた場合(本実施の形態)の効果を説明するための模式図である。
【0022】
医療機器用補助具1を用いない場合(比較例)、
図2(a)に示すように、カテーテル120を目的の部位の消化管(例えば、小腸、十二指腸、胆管等)500に進行させるに先立ってガイドワイヤ110を消化管500に挿入し、ガイドワイヤ110に沿ってカテーテル120を進行させようとすると、カテーテル120とガイドワイヤ110とのクリアランスが大きいことによる引っ掛かりやガイドワイヤ110の剛性不足により、
図2(b)に示すように、ガイドワイヤ110に撓み110a(又は蛇行)が発生し、カテーテル120の進行が困難となることがある。このため、太径のガイドワイヤ又は曲げ剛性の高いガイドワイヤに交換するか、使用するガイドワイヤの本数を増やすことで、カテーテル120を目的の部位に進行させている。
【0023】
一方、医療機器用補助具1を用いた場合(本実施の形態)、
図3(a)に示すように、カテーテル120を目的の部位の消化管(例えば、小腸、十二指腸、胆管等)500に進行させるに先立って医療機器用補助具1の内腔1eに挿入したガイドワイヤ110を消化管500に挿入させる。次に、
図3(b)に示すように、ガイドワイヤ110に沿ってカテーテル120を進行させても、ガイドワイヤ110は実質的に太径化しているので、カテーテル120とのクリアランスによる引っ掛かりがなく、ガイドワイヤ110の機械的性質(剛性、硬度、引張弾性率等)が補われているので、比較例のような撓み110aの発生を抑制できる。このため、カテーテル120を目的の部位の消化管500に進行させることができる。
【0024】
(医療機器用補助具の構成の詳細)
図4は、
図1に示す医療機器用補助具1の具体的な構成例を示す縦断面図である。なお、後述する補強層22は模式的に示す。医療機器用補助具1は、長尺の管状本体部2と、管状本体部2の先端側Aに設けられた先端部3と、管状本体部2の基端側Bに設けられた基端部4とを備える。管状本体部2、先端部3及び基端部4は、管状部材の一例である。
【0025】
(管状本体部の構成)
管状本体部2は、可撓性を有するとともに、細径(例えば、0.018インチ(約0.46mm))のガイドワイヤ110と管状本体部2とを組み合わせた機械的特性(例えば、曲げ剛性)が太径化(例えば、0.025インチ(約0.64mm))したガイドワイヤの本体部が有する機械的特性(例えば、曲げ剛性)と同程度となるようにしてもよい。
【0026】
管状本体部2は、内側の面が内壁1cを構成するとともに、ガイドワイヤ110に対して滑り性を有する材料から形成された内層21と、内層21の外側に線状部材22aにより形成された補強層22と、外側の面が外壁1dを構成するとともに、補強層22の外側に設けられ、柔軟性及び高硬度を有する材料から形成された外層23とを備える。
【0027】
内層21は、内腔1eを画定する。内層21は、ガイドワイヤ110に対して滑り性を有する材料、例えば、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカンポリマー等)、ポリエチレン系樹脂(例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等)等を用いることができる。内層21の内径は、0.018インチ(約0.46mm)のガイドワイヤ110の本体部とのクリアランスが小さく(例えば、外径と内径との差が0.005mm以上、0.05mm以下)、円滑に進退可能な大きさ(例えば、0.48mm)を有する。
【0028】
外層23は、ガイドワイヤ110の機械的性質(剛性、硬度、引張弾性率等)を補助するためにある程度の硬度(例えば、JIS 6253に準拠したショア硬度Dが63D以上、78D以下)が必要であるが、同時に耐キンク性も必要になるため、柔軟性も合わせもった材料、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂を用いることができる。なお、上記ショア硬度Dの範囲63D以上、78D以下は、引張弾性率に換算すると、280MPa以上、1300MPa以下に相当する。外層23の外径は、0.025インチ(約0.64mm)のガイドワイヤの外径に相当するため、カテーテル120のルーメン121(内径が拡径された大径基端部等を除く。)とのクリアランスが小さく(例えば、外径と内径との差が0.005mm以上、0.05mm以下)、円滑に交換可能な大きさ(例えば、0.66mm)を有する。
【0029】
補強層22は、線状部材22aを螺旋状に巻回することにより形成されたコイル体や、線状部材22aを編み込むことにより形成された編組体から構成されていてもよく、複数層の編組体又はコイル体から構成されていてもよく、編組体とコイル体とを層状に組み合わせて構成されていてもよい。線状部材22aとしては、例えば、金属又は非金属からなる素線を用いることができる。線状部材22aの形状としては、例えば、円線、平線等が挙げられる。金属の線状部材22aとしては、例えば、ステンレス鋼、タングステン鋼、チタンニッケル合金(Ti-Ni)等の素線を用いることができる。非金属の素線としては、例えば、フッ素繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアリレート繊維等の素線を用いることができる。なお、補強層22の態様の詳細については後述する。
【0030】
(先端部の構成)
先端部3は、断面環状を有し、管状本体部2側の端部の外径が管状本体部2の外径よりも大きくなく、先端1aに向かうほど外径が小さくなるように外周面31が形成されている。外周面31は、医療機器用補助具1の生体管腔における通過性を向上させるため、例えば、先端側Aの角が丸く形成されている。なお、外周面31は、
図4(b)に示すように、先端1aに向かうほど外径が小さくなるテーパー形状に形成されてもよい。先端部3は、生体管腔の損傷防止のため、補強材が無く、少なくとも表面が管状本体部2の外層23を構成する樹脂と同様の樹脂から形成されていることが好ましい。先端部3は、管状本体部2の内層21が延在しており、後述する端末部22b(
図5参照)を固定するX線造影性を有するPt系金属等からなるマーカ32を有し、端末部22b及びマーカ32を覆っている。マーカ32により、医療機器用補助具1の先端1aの位置をX線撮影下で確認することができる。また、マーカ32の代わりにX線不透過性材料を樹脂材料に混練して先端部3を形成してもよい。また、マーカ32は設けなくてもよい。
【0031】
(基端部の構成)
基端部4は、断面環状を有し、管状本体部2側の端部の外径が管状本体部2の外径よりも大きくなく、基端1bに向かうほど外径が小さくなるように外周面41が形成されている。基端部4は、管状本体部2の内層21が延在しており、後述する端末部22b(
図5参照)を覆っている。外周面41は、カテーテル120の医療機器用補助具1への装着を容易にするため、例えば、基端側Bの角が丸く形成されている。なお、外周面41は、基端1bに向かうほど外径が小さくなるテーパー形状に形成されてもよい。基端部4は、カテーテル120の損傷防止のため、補強材が無く、少なくとも表面が管状本体部2の外層23を構成する樹脂と同様の樹脂から形成されていることが好ましい。また、基端部4の外周面41の形状は、先端部3の外周面31の形状と同一とし、基端部4にもマーカを設けてもよい。これにより先端部3及び基端部4のどちらも先端側Aとして使用することができる。
【0032】
(補強層の構成)
図5(a)は、コイル体による補強層22の一例を模式的に示す正面図である。
図5(b)は、コイル体による補強層22の変形例を示す要部正面図である。補強層22は、
図5(a)に示すように、線状部材22aを螺旋状に巻回することにより形成されたコイル体でもよい。端末部22bは、クローズドエンド(コイルの端末が隣のコイルと接している形状)としている。コイルのピッチ及び角度を制御することで、目標の曲げ剛性を得ることができる。補強層22をコイル体により構成し、端末部22bを設けることで、カシメ等により端末を処理しなくても線状部材22aが外壁1dの表面から飛び出して露出するのを抑制することができる。
【0033】
また、補強層22は、
図5(b)に示すように、内層21上に線状部材22aを螺旋状に巻回することにより内側コイル体221を形成し、内側コイル体221の外側に線状部材22aを内側コイル体221の巻回方向と逆の方向に螺旋状に巻回することにより外側コイル体222を形成してもよい。コイル体を二重にすることで、一重のコイル体よりも曲げ剛性を高めることができる。
【0034】
図6(a)は、編組体による補強層22の一例を模式的に示す正面図、
図6(b)は、
図6(a)のC部拡大図である。補強層22は、
図6に示すように、複数本の線状部材22aを網目状に編み込むことで構成してもよい。線状部材22aのピッチ及び角度を制御することで、目標の曲げ剛性を得ることができる。補強層22の端部には、複数本の線状部材22aがばらけるのを抑制するためにカシメ22cが形成されている。なお、補強層22を複数層の編組体により構成してもよく、編組体とコイル体とを層状に組み合わせて構成してもよい。
【0035】
(医療機器用補助具の製造方法)
次に、医療機器用補助具1の製造方法の一例について説明する。まず、管状本体部2の内層21を構成する溶融樹脂材料を押出成形機により押出形成する。次に、内層21と線状部材22aを相対的に回転させながら内層21の外周面に線状部材22aを螺旋状に巻回し、折り返し部分にクローズドエンドによる端末部22bを形成して補強層22を形成する。次に、内層21及び補強層22の外側に外層23を被覆形成する。内層21、補強層22及び外層23からなる管状体の両端を、レーザカッタ等の切断手段により切断して所定の長さの管状本体部2を形成する。先端部3及び基端部4は、例えば、押出成形、射出成形等により形成する。管状本体部2の先端側Aに先端部3を公知の接合方法(接着剤、融着等)により接合し、管状本体部2の基端側Bに基端部4を公知の接合方法(接着剤、融着等)により接合する。以上のようにして医療機器用補助具1を製造する。
【0036】
(医療機器アッセンブリの使用例)
次に、医療機器アッセンブリ100の使用例を、
図7を参照して説明する。
図7は、超音波内視鏡下胆道ドレナージ術の一例を説明するための模式図である。同図は、超音波内視鏡下胆道ドレナージ術における穿刺ルートとして、例えば、胃から経肝的に肝内胆管にアプローチする方法を示す。
【0037】
同図に示すように、超音波内視鏡130の挿入管131を食道から胃510に挿入し、挿入管131の先端に設けられた超音波プローブ132による超音波画像や造影剤を用いたX線画像で観察しながら、胃510から肝臓530内の左胆管531を穿刺し、ガイドワイヤ110を生体の深部、例えば、左胆管531及び肝内胆管532を経て総胆管533に挿入する。その後、カテーテル120をガイドワイヤ110に追従させて総胆管533に進行させ、総胆管533の閉塞部位を検査・治療する。
【0038】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態に係る医療機器アッセンブリ100によれば、以下の効果を奏する。
(a)細径のガイドワイヤ110を医療機器用補助具1の内腔1eに挿入することで、細径のガイドワイヤ110を実質的に太径化できる。これにより、細径のガイドワイヤ110に関係なく併用するカテーテル120のルーメン121に対して適正なクリアランスとなり、ガイドワイヤ110の機械的性質(剛性、硬度、引張弾性率等)を補うことができる。したがって、ガイドワイヤ110及び医療機器用補助具1に追従してカテーテル120を目的の部位に進行させることができる。
(b)例えば、0.025インチ(約0.64mm)に太径化することで、太径化した0.025インチ(約0.64mm)に適合したカテーテルが多いことから、ガイドワイヤ110を入れ替える必要がほとんど無くなる。
(c)細径のガイドワイヤ110を実質的に太径化して併用するカテーテル120の装着を補助できるので、併用するカテーテル120を交換する度に医療機器用補助具1を交換する必要がほとんど無くなる。
(d)細径(例えば、0.018インチ(約0.46mm))のガイドワイヤ110を太径化(例えば、0.025インチ(約0.64mm))できるので、細径のガイドワイヤ110として長尺(例えば、全長4500mm)のもの、医療機器用補助具1として長尺(例えば、全長4000mm以上)のものを用いた場合、内視鏡的逆行性胆管膵管造影、超音波内視鏡下胆道ドレナージ術等のカーテル検査・治療、例えば、高度狭窄を伴う病変や深部末梢に対する検査・治療に好適な医療機器アッセンブリ100を提供することができる。
【0039】
(変形例1)
図8は、本実施の形態に係る医療機器用補助具1の変形例1を示す縦断面図である。
図4では、単線の線状部材22aを内層21の外周面に螺旋状に巻回したが、変形例1は、複数本(同図では3本)の線状部材22aを内層21の外周面に螺旋状に巻回したものである。これにより、単線の線状部材22aを用いた場合よりも曲げ剛性を高めることができる。なお、先端部3の外周面31は、先端側Aの角が丸くに形成されているが、
図4(b)に示すように、先端1aに向かうほど外径が小さくなるテーパー形状に形成されてもよい。また、基端部4の外周面41は、基端側Bの角が丸くに形成されているが、基端1bに向かうほど外径が小さくなるテーパー形状に形成されてもよい。
【0040】
(変形例2)
図9は、本実施の形態に係る医療機器用補助具1の変形例2を示す縦断面図である。
図4では、補強層22の端部に端末部22bを設けたが、変形例2は、端末部22bを省き、カシメ22cを追加したものである。先端部3の外周面31は、先端側Aの角が丸くに形成されているが、
図4(b)に示すように、先端1aに向かうほど外径が小さくなるテーパー形状に形成されてもよい。また、基端部4の外周面41は、基端側Bの角が丸くに形成されているが、基端1bに向かうほど外径が小さくなるテーパー形状に形成されてもよい。
【0041】
図10(a)~(e)は、変形例2の製造工程の一例を示す要部正面図である。同図は、先端側Aの製造工程を示すが、基端側Bも先端側Aと同様に製造される。目的の長さ(医療機器用補助具1の全長)よりも長い内層21を準備し、内層21の外周面に線状部材22aを螺旋状に両端まで巻回して補強層22を形成する。ここでは、クローズドエンドによる端末部22bは形成しない。次に、補強層22の外側に外層23を形成して管状体を作製する。次に、管状体を目的の長さに切断する。次に、
図10(a)に示すように、管状体の両端側の外層23を研磨、レーザ等により除去して線状部材22aを露出させる。
【0042】
次に、
図10(b)に示すように、線状部材22aの端部付近をカシメ22cにより固定する。次に、
図10(c)に示すように、カシメ22cから露出している線状部材22aを電解研磨等により除去する。なお、先端部3のカシメ22cは、X線造影性を有するPt系合金等から形成してもよい。また、先端部3及び基端部4のカシメ22cは、X線造影性を有するPt系金属等から形成してもよい。これにより先端部3及び基端部4のどちらも先端側Aとして使用することができる。
【0043】
次に、
図10(d)に示すように、先端部3を構成するチューブを押出成形等により成形した成形体をカシメ22c及びカシメ22cから露出している内層21を被覆する。次に、
図10(e)に示すように、熱溶着等により成形体をカシメ22c及び内層21に密着させて一体化させ、研磨等により角部を丸くし、先端側Aの先端部3を形成する。基端側Bの基端部4も先端部3と同様に形成する。
【0044】
変形例2によれば、内層21を複数個取りが可能な長さを準備することにより、複数の医療機器用補助具1を容易に製造することができる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施の形態は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形、実施が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…医療機器用補助具、1a…先端、1b…基端、1c…内壁、1d…外壁、1e…内腔、2…管状本体部、3…先端部、4…基端部、21…内層、22…補強層、22a…線状部材、22b…端末部、22c…カシメ、23…外層、31…外周面、32…マーカ、41…外周面、42…貫通孔、100…医療機器アッセンブリ、110…ガイドワイヤ、110a…撓み、120…カテーテル、121…ルーメン、130…超音波内視鏡、131…挿入管、132…超音波プローブ、221…内側コイル体、222…外側コイル体、500…消化管、510…胃、520…胆管、530…肝臓、531…左胆管、532…肝内胆管、533…総胆管、A…先端側、B…基端側
【要約】
【課題】検査・治療中にガイドワイヤのサイズの変更が必要になった場合でも使用中のガイドワイヤをそのまま使用可能であるとともに、カテーテルの交換が容易な医療機器用補助具、ガイドワイヤアッセンブリ及び医療機器アッセンブリを提供する。
【解決手段】医療機器用補助具1は、内径及び外径がそれぞれ同径のまま先端側Aから基端側Bに延びる内壁1c及び外壁1dを有する管状本体部2を備え、ガイドワイヤ110が内側1cの内側に進退可能に挿入され、カテーテル120が基端側Bから脱着可能に外壁1dの外側に装着される。
【選択図】
図1