IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 関電プラント株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社Dshiftの特許一覧

<>
  • 特許-導線の断線検出方法 図1
  • 特許-導線の断線検出方法 図2
  • 特許-導線の断線検出方法 図3
  • 特許-導線の断線検出方法 図4
  • 特許-導線の断線検出方法 図5
  • 特許-導線の断線検出方法 図6
  • 特許-導線の断線検出方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】導線の断線検出方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20240913BHJP
【FI】
F03D80/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024061534
(22)【出願日】2024-04-05
【審査請求日】2024-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000157005
【氏名又は名称】関電プラント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521166283
【氏名又は名称】株式会社Dshift
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】三木 勝治
(72)【発明者】
【氏名】下町 宗一
(72)【発明者】
【氏名】角田 恵
(72)【発明者】
【氏名】松本 大輔
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-091240(JP,A)
【文献】特開2022-140959(JP,A)
【文献】特開2017-142071(JP,A)
【文献】特開2021-081305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を受けて主軸と一体的に回転する複数のブレードと、前記主軸を支持するナセルと、前記ナセルを支持し地面に立設されるタワーと、夫々のブレードの先端側に設けられた受雷部と、前記ブレードに設けられ、前記受雷部に接続される導線とを備え、
前記導線は、前記受雷部からタワー側へ電流を流し、前記受雷部から前記タワーに沿って地面の接地部までを結ぶ接地経路の一部をなす風力発電設備の導線の断線検出方法であって、
夫々の導線の主軸側において、前記接地経路が導通する状態と導通しない状態との切り替えが可能であり、
任意のブレードに設けられた第1の導線の主軸側及び前記ブレードと異なるブレードに設けられた第2の導線の主軸側において、前記接地経路が導通しない状態として、前記第1の導線と第2の導線とに同時に前記主軸側から交流信号を印加することにより第1及び第2の導線に磁界を発生させ、
第1の導線及び/又は第2の導線に沿う方向で、第1の導線及び/又は第2の導線に発生した磁界の強さの変化を検出することにより断線の有無を検出することを特徴とする導線の断線検出方法。
【請求項2】
磁界の強さが変化する箇所から磁界の強さの検知が無くなる箇所までのいずれかの位置において断線があると判定することを特徴とする請求項1に記載の導線の断線検出方法。

【請求項3】
磁界を検出可能な無人飛行体を前記第1の導線及び/又は第2の導線に沿って飛行させて、第1の導線及び/又は第2の導線に沿う方向における磁界の強さの変化を検出することを特徴とする請求項1に記載の導線の断線検出方法。
【請求項4】
交流信号を印加する送信器と第1の導線とを第1の単線ケーブルにて接続するとともに、前記送信器と第2の導線とを第2の単線ケーブルにて接続し、前記第1の単線ケーブルと前記第2の単線ケーブルとが前記送信器から異なる方向に延びることを特徴とする請求項1に記載の断線検出方法。
【請求項5】
前記タワーのいずれかに交流信号を印加する送信器を設置することを特徴とする請求項1に記載の導線の断線検出方法。
【請求項6】
主軸とブレードとの間にハブが介在し、前記導線の主軸側は、前記主軸に外嵌されるリング体にボルトを介しハブ及び主軸に接続され、ボルトの取付及び取外しにて、前記接地経路が導通する状態と導通しない状態とを切替えることを特徴とする請求項1に記載の導線の断線検出方法。
【請求項7】
主軸とブレードとの間にハブが介在し、前記主軸と前記ナセルの底部は、前記導線とは異なり、主軸とナセル底部との間を電気的に接続する接続導線にて接続され、前記導線、ハブ、主軸、接続導線、及びタワーにて前記接地経路が形成されることを特徴とする請求項1に記載の導線の断線検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備における導線の断線検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力発電設備は、ブレードの落雷対策として、ブレード先端部に金属製の受雷部(レセプタ)が設置されるとともに、夫々のブレードに引き下げ導線(ダウンコンダクタ)が設けられて、これらレセプタ及びダウンコンダクタを介して雷撃電流を大地に流すことができる。
【0003】
前記ダウンコンダクタを点検するための方法として、特許文献1や特許文献2のものがある。特許文献1のものは、引き下げ導線に信号電流を流し、ブレードに設けられたレセプタに対し、信号電流の電磁波を受信する受信器を備えた遠隔操縦式無人飛行体を接近させる。受信機にて信号電流の電磁波を受診できた場合には導通し、受診できなかった場合には導通しないと判断するものである。
【0004】
特許文献2のものは、受雷部、ダウンコンダクタ、タワー、電源、及び電位差センサが順に並んだ閉回路が構成される。そして、ダウンコンダクタと、ダウンコンダクタとの間の電位差を検出する電位差センサとの何れか一方に、電源から電圧を印加する。その状態でダウンコンダクタと電位差センサとの間で発生した電位差を、電位差センサによって検出することにより、ダウンコンダクタの導通を確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-91240号公報
【文献】特開2022-140959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように電磁波を測定する場合、電磁波は、発生源(ダウンコンダクタ)から距離が離れると、発生源からの距離による減衰にて急激に感度が低下し、受信できないおそれがある。一般的にダウンコンダクタはFRP等に覆われ、ブレード表面から距離が離れている。ブレードはハブ側において太くなるため、ハブ側に位置する程、ダウンコンダクタのブレード表面からの距離が長くなる。また、無人飛行体はブレード表面からの距離の確保が必要となる。これらの理由から、ブレードの中間位置やハブ側においては電磁波の受信が困難となり、測定が難しい。このため、特許文献1の方法では、電磁波の受信が無い原因が断線によるものなのか、測定上の問題であるのかの判別が不可能であり、ダウンコンダクタの導通検査が正確にできない上、断線の検出をすることはできない。また、特許文献1及び特許文献2のものは、電圧を印加する際にタワーに設けられた導線が回路の一部を形成する。このため、導線の検査時においてタワーにて発生する磁界の影響が無視できず、正確な測定を行うことができない。特にブレードの基端部はタワーと接近していることから、タワーからの磁界の影響が大きく正確な測定が難しいものとなる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、風力発電設備において正確に断線箇所を検出することができる導線の断線検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の導線の断線検出方法は、風を受けて主軸と一体的に回転する複数のブレードと、前記主軸を支持するナセルと、前記ナセルを支持し地面に立設されるタワーと、夫々のブレードの先端側に設けられた受雷部と、前記ブレードに設けられ、前記受雷部に接続される導線とを備え、前記導線は、前記受雷部からタワー側へ電流を流し、前記受雷部から前記タワーに沿って地面の接地部までを結ぶ接地経路の一部をなす風力発電設備の導線の断線検出方法であって、夫々の導線の主軸側において、前記接地経路が導通する状態と導通しない状態との切り替えが可能であり、任意のブレードに設けられた第1の導線の主軸側及び前記ブレードと異なるブレードに設けられた第2の導線の主軸側において、前記接地経路が導通しない状態として、前記第1の導線と第2の導線とに同時に前記主軸側から交流信号を印加することにより第1及び第2の導線に磁界を発生させ、第1の導線及び/又は第2の導線に沿う方向で、第1の導線及び/又は第2の導線に発生した磁界の強さの変化を検出するものである。
【0009】
本発明の導線の検出方法によれば、第1の導線と第2の導線とに同時に主軸側から交流信号(交流電圧)を印加する。すなわち、2線間の導線に交流信号を印加することにより、ダイポールアンテナの原理により電流を発生させることができ、これにより導線に磁界を発生させ、磁界を検知することにより導通の判断ができる。すなわち、磁界は距離が離れていても検出が可能であることから、ブレードの表面から距離がある導体であっても、導体から発生する磁界を検出することができ、断線を検出することができる。その際、夫々の導線の主軸側において、接地経路が導通しない状態としているため、タワー側から磁界が発生することなく(タワー側からの磁界の影響を受けることなく)、第1の導線と第2の導線のみから発生する磁界を検出することができる。
【0010】
前記構成において、磁界の強さが変化する箇所から磁界の強さの検知が無くなる箇所までのいずれかの位置において断線があると判定することができる。
【0011】
前記構成において、磁界を検出可能な無人飛行体を前記第1の導線及び/又は第2の導線に沿って飛行させて、第1の導線及び/又は第2の導線に沿う方向における磁界の強さの変化を検出することができる。
【0012】
前記構成において、交流信号を印加する送信器と第1の導線とを第1の単線ケーブルにて接続するとともに、前記送信器と第2の導線とを第2の単線ケーブルにて接続し、前記第1の単線ケーブルと前記第2の単線ケーブルとが前記送信器から異なる方向に延びるものとできる。これにより、電流の逆相における打消しを抑制し、ケーブルに流れる電流の損失を減少させることができるため、第1の導線6Aと第2の導線6Bに流れる電流を多くすることができる。
【0013】
前記構成において、前記タワーのいずれかに交流信号を印加する送信器を設置してもよい。これにより、第1の単線ケーブル及び第2の単線ケーブルの長さを長くすることができ、第1の導線6Aと第2の導線6Bに確実に電流を流すことができる。
【0014】
主軸とブレードとの間にハブが介在し、前記導線の主軸側は、前記主軸に外嵌されるリング体にボルトを介してハブ及び主軸に接続され、ボルトの取付及び取外しにて、前記接地経路が導通する状態と導通しない状態とを切替えるものであってもよい。これにより、簡単な方法で前記切替えが可能なものとなる。
【0015】
主軸とブレードとの間にハブが介在し、前記主軸と前記ナセルの底部は、前記導線とは異なり、主軸とナセル底部との間を電気的に接続する接続導線にて接続され、前記導線、、ハブ、主軸、接続導線、及びタワーにて前記接地経路が形成されるものであってもよい。すなわち、タワーを接地経路の一部とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の導線の断線検出方法では、タワー側からの磁界の影響を受けることなく、第1の導線と第2の導線のみから発生する磁界を検出することができるため、正確に断線箇所を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】風力発電設備の簡略側面図である。
図2】前記風力発電設備の簡略正面図である。
図3】前記図2の要部拡大図である。
図4】前記図3のハブ内における要部拡大正面図である。
図5】導線に電流が流れる概念を示す図であり、(a)は本発明の導線の配置を示す図であり、(b)はダイポールアンテナの説明図である。
図6】導線の断線検出方法において、導線の接続状態を説明する風力発電設備の簡略正面図である。
図7】導線の断線検出途中における要部拡大簡略平面図である。
【0018】
以下本発明の実施の形態を図1図7に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態が適用される風力発電設備1の構成例を示す外観図である。風力発電設備1は、タワー2と、タワー2の上部に連結され、主軸11を支持するナセル3と、ナセル3及び主軸11の正面に設けられたハブ4と、ハブ4に取り付けられた複数(図示例では3枚)のブレード5A,5B,5Cとを備える。
【0020】
タワー2は、地面Gに立設され、下端部に向かって外径が拡径する金属製の中空円筒体である。タワー2の内部には、図示を省略しているが、作業者がメンテナンス時に昇降するための昇降機及び梯子、電力変換装置等の発電に供される各種装置が収容されている。また、タワー下部には接地線17が連結されて地面Gの接地部に接地されている。タワー2の上部、すなわち、ナセル3の下方位置には、図3に示すように、後述する導線6A、6B、6Cに対して、交流電源として交流信号(交流電圧)を印加する送信器8を載置できる設置箇所9が設けられている。
【0021】
ナセル3はタワー2に支持されている。ナセル3の内部には、発電機10が収容されている。発電機10の主軸11はナセル3の外部に突出し、主軸11の先端部にハブ4が連結されている。
【0022】
ハブ4には、3枚のブレード5A、5B、5Cが取り付けられている。ブレード5A、5B、5Cが風を受けると、主軸11を中心にブレード5A、5B、5C及びハブ4が一体的に回転する。
【0023】
主軸11とナセル3の底部は、図3に示すように接続導線7にて接続されている。この接続導線7により、ナセル3とタワー2とは電気的に接続される。
【0024】
各ブレード5A、5B、5Cの先端部には、図2に示すように、金属製の受雷部(レセプタ)12A、12B、12Cが設けられ、各ブレード5A、5B、5Cには、夫々、その延在方向に沿って、レセプタ12A、12B、12Cと電気的に接続される導線(ダウンコンダクタ)6A、6B、6Cが設けられている。導線6A、6B、6Cは、一端側(ブレードの先端側)がレセプタ12A、12B、12Cに接続され、他端側(主軸側)がハブ内にて集合されている。
【0025】
すなわち、図4に示すように、ハブ内において主軸11には金属製のリング体16が外嵌されており、このリング体16にボルト15A、15B、15Cを介して夫々導線6A、6B、6Cが主軸11に接続される。リング体16は、接続部18を介して金属製のハブ4に接続されている。このような構成とすることにより、例えばボルト15Aを取り外せば、導線6Aが主軸11から縁切り(非接続)された状態となり、ボルト15Aを取り付けることにより導線6Aが主軸11と接続された状態となる。導線6B、6Cについても、夫々ボルト15B、15Cの取付・取外しにより、主軸11と接続・非接続とすることができる。
【0026】
夫々の導線6A(6B、6C)、主軸11、接続導線7、及びタワー2にて、レセプタ12A(12B、12C)からタワー2に沿って地面の接地部までを結ぶ接地経路が形成される。例えばレセプタ12A(12B、12C)に落雷すると、電流は、導線6A(6B、6C)、主軸11、接続導線7、及びタワー2の順に流れ、接地部へ流すことができる。すなわち、導線6A、6B、6Cは、夫々の接地経路の一部をなし、ボルト15A、15B、15Cの取付にて夫々の接地経路が導通する状態とし、ボルト15A、15B、15Cの取外しにて夫々の接地経路が導通しいない状態とでき、接地経路の導通/非導通を切替えることができる。
【0027】
次に、本実施形態の導線の断線検出方法について説明する。作業者は、交流信号(交流電圧)を印加する送信器8を設置する。本実施形態において、送信器8はタワー上部の設置箇所9に載置される。一方、作業者は任意のブレード(例えばブレード5A)に設けられた第1の導線6Aにおいてボルト15Aを取り外して、第1の導線6Aが主軸11から縁切りされた状態とし、このブレード5Aと異なるブレード(例えばブレード5B)に設けられた第2の導線6Bにおいてボルト15Bを取り外して、第2の導線6Bが主軸11から縁切りされた状態とする。すなわち、第1の導線6Aの主軸側及び第2の導線6Bの主軸側において、接地経路が導通しない状態とする。
【0028】
その後、図5(a)に示すように、第1の導線6Aの主軸側に送信器8を接続するとともに、第2の導線6Bの主軸側に送信器8を接続する。この場合、送信器8と第1の導線6Aとを給電線である第1の単線ケーブル13Aにて接続するとともに、送信器8と第2の導線6Bとを給電線である第2の単線ケーブル13Bにて接続し、第1の単線ケーブル13Aと第2の単線ケーブル13Bとが異なる方向(第1の単線ケーブル13Aと第2の単線ケーブル13Bとが平行とならない方向)に延びるものとしている。
【0029】
その後、第1の導線6Aと第2の導線6Bとに同時に主軸側から交流信号を印加する(図5(a)における矢印AC)。これにより、送信器8と第1の導線6Aと第2の導線6Bとで、ダイポールアンテナの原理により、2本のブレード5A、5B間に矢印Bに示すような電界が発生する。ここで電界とは、電気の力が働く空間(または場所)をいう。すなわち、図5(b)のダイポールアンテナの原理に示すように、2本のブレード5A、5Bは、給電点Sに対し2本の直線状の導線(第1の導線6Aと第2の導線6B)を両側に対称に取り付けたダイポールアンテナのように作用する。これにより、第1の導線6Aと第2の導線6Bを電極とするコンデンサと同様に、2本のブレード5A、5B(第1の導線6Aと第2の導線6B)には、図6の矢印Aに示すような双方向の電流が流れ、導線6A、6Bに磁界を発生させることができる。
【0030】
この場合、送信器8と第1の導線6Aとを給電線である第1の単線ケーブル13Aにて接続するとともに、送信器8と第2の導線6Bとを給電線である第2の単線ケーブル13Bにて接続し、第1の単線ケーブル13Aと第2の単線ケーブル13Bとが異なる方向に延びるものとしている。これは、図5(b)のように、単線ケーブル13A、13Bが平行となる状態において電圧を印加すると、2線に流れる電流の方向が逆方向となり打消し合う現象が発生する。このため、本発明の単線ケーブル13Aと単線ケーブル13Bのように、隣合わない別々のルートにてケーブルを布設することにより、電流の逆相による打消し合い現象を抑制し、単線ケーブル13A、13Bに流れる電流の損失を減少させることができるため、第1の導線6Aと第2の導線6Bに流れる電流を多くすることができる。
【0031】
また、送信器8をタワー2の上部に設置することにより、第1の単線ケーブル13A及び第2の単線ケーブル13Bの長さを、ナセル内に設置するよりも長くすることができる。ここで、静電容量Cの周波数fにおけるインピーダンスzは、次の式1で表される。
【数1】
【0032】
式1から、静電容量Cはインピーダンスzと周波数が重要な要素であり、第1の単線ケーブル13A及び第2の単線ケーブル13Bの長さを長くすることで、アンテナとしての長さを確保できる。すなわち、アンテナは波長に対して1/4で共振するものであり、共振する場所においてよく電流が流れる。したがって、単線ケーブルを長くすることにより1/4波長に近づけることができて、第1の導線6Aと第2の導線6Bに確実に電流を流すことができる。
【0033】
一方、磁界を検出する検出器21が、遠隔操作による無人飛行体(ドローン20)に設けられる。作業者は、例えばタブレットPC等の操作端末にて検出器21を備えたドローン20を操作して飛行させる。すなわち、ブレード5A及びブレード5Bに磁界が発生した状態で、図5に示すように、ドローン20は、第1の導線6Aの主軸側へ接近し、第1の導線6Aの方向に沿って、レセプタ側に向かって飛行する。その際、検出器21は、第1の導線6Aより放射されている磁界の強さを制御の設定値としてドローン20を自律制御させ、磁界を検知することにより導通の判断ができる。すなわち、断線が無ければ電流が一定値流れるため、磁界の強さは変化しない。これにより、断線は無いと判断できる。一方、磁界の強さが変化する箇所から磁界の強さの検知が無くなる箇所までのいずれかに断線が有りとし、断線位置を特定することができる。なお、「導線の方向に沿って」とは、導線が全体的に延びる方向であり、ブレードの延びる方向、つまりブレードの先端側(レセプタ側)とハブ側とを結ぶ方向をいう。また、ブレードの近傍を直線状に飛行する必要はなく、図7のように導線の延びる方向が変化する場合は、それに応じて導線近傍を飛行するように制御して(つまり飛行方向を適宜変更させて)もよい。
【0034】
第1の導線6Aの断線検出が終了すれば、次いで第2の導線6Bについても、第1の導線6Aと同様の方法で、断線の有無及び断線位置を検出することができる。なお、磁界検出は、第1の導線6A及び第2の導線6Bの両方で行ってもよいし、第1の導線6A又は第2の導線6Bの片方のみ行ってもよい。また、第1の導線6Aの一部、第2の導線6Bの一部において磁界検出を行ってもよい。要は、第1の導線6A及び第2の導線6Bの範囲内であれば、断線を確認したい任意の場所で、磁界の測定をすることができる。ドローン20は、最初に導線6のレセプタ側へ接近し、導線6の方向に沿って、主軸側に向かって飛行してもよい。
【0035】
本発明の導線の断線検出方法では、第1の導線6Aと第2の導線6Bとに同時に主軸側から交流信号を印加する。すなわち、2線間の導線に交流信号を印加することにより、ダイポールアンテナの原理により電流を発生させることができ、これにより導線6A、6Bに磁界を発生させ、磁界を検知することにより導通の判断ができる。すなわち、磁界は距離が離れていても検出が可能であることから、ブレード5A、5Bの表面から距離がある導体であっても、導体6A、6Bから発生する磁界を検出することができ、断線を検出することができる。その際、夫々の導線6A、6Bの主軸側において、接地経路が導通しない状態としているため、タワー側から磁界が発生することなく(タワー側からの磁界の影響を受けることなく)、第1の導線6Aと第2の導線6Bのみから発生する磁界を検出することができるため、正確に断線箇所を検出することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、風力発電設備としては、洋上に設置されるものでも陸上に設置されるものでもよい。ドローンの操作は自動的に行われるものであってもよい。検出対象となる導線が設けられるブレードは、実施形態ではナセルよりも下方に位置するものであったが、その位置は問わない。例えば、図2においてブレード5Cのように、ナセルよりも上方に位置するブレードであっても検出可能である。実施形態では、接続導線はナセルの底面へ接続されるものであったが、タワー内部を延びるものであり、さらに地面まで延びて、接続導線が接地線に接続されるものであってもよい。また、送信器はタワー上部に設置するのが望ましいが、タワーの上部以外の場所に設置してもよい。第1の単線ケーブルと第2の単線ケーブルとが異なる方向に延びるようにするのが好ましいが、その角度は問わず、要は第1の単線ケーブルと第2の単線ケーブルとが平行とならなければよい。
【0037】
夫々の導線の主軸側において、前記接地経路が導通する状態と導通しない状態との切り替えの構造については実施形態のものに限らず、導線の接続と非接続とができるものであれば、種々の構成を採用できる。接地経路を構成する部材は、夫々の導線から接地部までの間に介在する部材で電気的に接続されていれば種々の組み合わせとすることができ、例えば導線と接続導線とが接続されていたり(この場合、主軸は接地経路とはならない)、接続導線が接地部と接続されていたり(この場合、タワーは接地経路とはならない)、接続導線及びタワーが接地経路であったりしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 風力発電設備
2 タワー
3 ナセル
4 ハブ
5A、5B、5C ブレード
6A、6B、6C 導線
7 接続導線
8 送信器
11 主軸
12A、12B、12C レセプタ
13A、13B 単線ケーブル
20 ドローン
G 地面
【要約】
【課題】風力発電設備において正確に断線箇所を検出することができる導線の断線検出方法を提供する。
【解決手段】複数のブレードとナセルとタワーと受雷部と導線とを備え、導線は、受雷部からタワー側へ電流を流し、受雷部から前記タワーに沿って地面の接地部までを結ぶ接地経路の一部をなす風力発電設備の導線の断線検出方法である。夫々の導線の主軸側において、接地経路が導通する状態と導通しない状態との切り替えが可能であり、任意のブレードに設けられた第1の導線の主軸側及び前記ブレードと異なるブレードに設けられた第2の導線の主軸側において、前記接地経路が導通しない状態として、前記第1の導線と第2の導線とに同時に前記主軸側から交流信号を印加することにより第1及び第2の導線に磁界を発生させ、第1の導線及び/又は第2の導線に沿う方向で、第1の導線及び/又は第2の導線に発生した磁界の強さの変化を検出する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7