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特許7555513発電システム、監視装置、及び発電システムの監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】発電システム、監視装置、及び発電システムの監視方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20240913BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J13/00 301J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024098590
(22)【出願日】2024-06-19
【審査請求日】2024-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】平川 晋也
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-078242(JP,A)
【文献】特開2019-176685(JP,A)
【文献】特開2021-052498(JP,A)
【文献】特開2022-047353(JP,A)
【文献】特開2020-043647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に連系し、並列運転する2以上の発電機と、
前記電力系統と前記2以上の発電機との間が接続された連系運転状態と、前記電力系統と前記2以上の発電機との間が遮断された自立運転状態と、を切り替える遮断器と、
前記連系運転状態において、第1軸と第2軸とを含むグラフをモニタに表示する表示制御部と、を備え、
前記第1軸は、前記2以上の発電機のいずれか1つの発電機である対象発電機の発電出力に係る物理量を表し、
前記第2軸は、前記自立運転状態で前記2以上の発電機から電力が供給される重要負荷の消費電力を表し、
前記表示制御部は、前記グラフの前記第2軸において、前記自立運転状態に切り替えられた後での前記2以上の発電機の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表す運転許容範囲を表示する、発電システム。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記2以上の発電機の少なくとも1つの運転状況に応じて、前記運転許容範囲が経時的に変化するように、前記グラフを前記モニタに表示する、請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記2以上の発電機のうちのいずれか1つの発電機を制御する発電制御部から、前記運転状況の少なくとも一部として、当該発電機における回転速度又は周波数を取得する運転状況取得部を更に備え、
前記表示制御部は、前記運転状況取得部が取得した回転速度又は周波数に応じて、前記運転許容範囲が経時的に変化するように、前記グラフを前記モニタに表示する、請求項2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記グラフ内において、前記重要負荷の消費電力の現在値と、前記物理量の現在値とを含む運転点を前記運転許容範囲と共に表示する、請求項1に記載の発電システム。
【請求項5】
前記運転点と前記運転許容範囲との比較結果に基づいて、ユーザへ警告を報知する警告報知部を更に備える、請求項4に記載の発電システム。
【請求項6】
前記運転許容範囲の一部は、前記2以上の発電機の少なくとも1つが、過負荷となるか否かの境界を表す第1境界ラインによって規定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の発電システム。
【請求項7】
前記運転許容範囲の一部は、前記2以上の発電機の少なくとも1つが、軽負荷となるか否かの境界を表す第2境界ラインによって規定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の発電システム。
【請求項8】
前記第1軸は、前記発電機の前記発電出力を表し、
前記運転許容範囲は、前記グラフの前記第1軸及び前記第2軸の双方において、前記自立運転状態に切り替えられた後での前記2以上の発電機の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表し、
前記運転許容範囲のうち前記第1軸に関する範囲は、前記対象発電機が発電可能な最小の出力を表す第3境界ラインと、前記対象発電機が発電可能な最大の出力を表す第4境界ラインとの少なくとも一方によって規定される、請求項6に記載の発電システム。
【請求項9】
前記第1軸は、前記発電機の前記発電出力を表し、
前記運転許容範囲は、前記グラフの前記第1軸及び前記第2軸の双方において、前記自立運転状態に切り替えられた後での前記2以上の発電機の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表し、
前記運転許容範囲のうち前記第1軸に関する範囲は、前記対象発電機が発電可能な最小の出力を表す第3境界ラインと、前記対象発電機が発電可能な最大の出力を表す第4境界ラインとの少なくとも一方によって規定される、請求項7に記載の発電システム。
【請求項10】
前記2以上の発電機は、第1発電機と、第2発電機と、を含み、
前記発電システムは、
前記自立運転状態において、アイソクロナス特性に従って、前記第1発電機を制御する第1発電制御部と、
前記自立運転状態において、ドループ特性に従って、前記第2発電機を制御する第2発電制御部と、を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の発電システム。
【請求項11】
前記2以上の発電機は、第1発電機と、第2発電機と、を含み、
前記発電システムは、
前記自立運転状態において、ドループ特性に従って、前記第1発電機を制御する第1発電制御部と、
前記自立運転状態において、ドループ特性に従って、前記第2発電機を制御する第2発電制御部と、を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の発電システム。
【請求項12】
電力系統に連系し、並列運転する2以上の発電機と、
前記電力系統と前記2以上の発電機との間が接続された連系運転状態と、前記電力系統と前記2以上の発電機との間が遮断された自立運転状態と、を切り替える遮断器と、
を備える発電システムに設けられる監視装置であって、
前記連系運転状態において、第1軸と第2軸とを含むグラフをモニタに表示する表示制御部を備え、
前記第1軸は、前記2以上の発電機のいずれか1つの発電機である対象発電機の発電出力に係る物理量を表し、
前記第2軸は、前記自立運転状態で前記2以上の発電機から電力が供給される重要負荷の消費電力を表し、
前記表示制御部は、前記グラフの前記第2軸において、前記自立運転状態に切り替えられた後での前記2以上の発電機の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表す運転許容範囲を表示する、監視装置。
【請求項13】
電力系統に連系し、並列運転する2以上の発電機と、
前記電力系統と前記2以上の発電機との間が接続された連系運転状態と、前記電力系統と前記2以上の発電機との間が遮断された自立運転状態と、を切り替える遮断器と、
を備える発電システムの監視方法であって、
前記連系運転状態において、第1軸と第2軸とを含むグラフをモニタに表示する表示工程を含み、
前記第1軸は、前記2以上の発電機のいずれか1つの発電機である対象発電機の発電出力に係る物理量を表し、
前記第2軸は、前記自立運転状態で前記2以上の発電機から電力が供給される重要負荷の消費電力を表し、
前記表示工程では、前記グラフの前記第2軸において、前記自立運転状態に切り替えられた後での前記2以上の発電機の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表す運転許容範囲を表示する、発電システムの監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電システム、監視装置、及び発電システムの監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の発電機で系統連系又は自立運転を行う分散電源システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-81942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、自立運転時の安定運用を図ることが可能な発電システム、監視装置、及び発電システムの監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]電力系統に連系し、並列運転する2以上の発電機と、前記電力系統と前記2以上の発電機との間が接続された連系運転状態と、前記電力系統と前記2以上の発電機との間が遮断された自立運転状態と、を切り替える遮断器と、前記連系運転状態において、第1軸と第2軸とを含むグラフをモニタに表示する表示制御部と、を備え、前記第1軸は、前記2以上の発電機のいずれか1つの発電機である対象発電機の発電出力に係る物理量を表し、前記第2軸は、前記自立運転状態で前記2以上の発電機から電力が供給される重要負荷の消費電力を表し、前記表示制御部は、前記グラフの前記第2軸において、前記自立運転状態に切り替えられた後での前記2以上の発電機の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表す運転許容範囲を表示する、発電システム。
【0006】
[2]前記表示制御部は、前記2以上の発電機の少なくとも1つの運転状況に応じて、前記運転許容範囲が経時的に変化するように、前記グラフを前記モニタに表示する、上記[1]に記載の発電システム。
【0007】
[3]前記2以上の発電機のうちのいずれか1つの発電機を制御する発電制御部から、前記運転状況の少なくとも一部として、当該発電機における回転速度又は周波数を取得する運転状況取得部を更に備え、前記表示制御部は、前記運転状況取得部が取得した回転速度又は周波数に応じて、前記運転許容範囲が経時的に変化するように、前記グラフを前記モニタに表示する、上記[2]に記載の発電システム。
【0008】
[4]前記表示制御部は、前記グラフ内において、前記重要負荷の消費電力の現在値と、前記物理量の現在値とを含む運転点を前記運転許容範囲と共に表示する、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の発電システム。
【0009】
[5]前記運転点と前記運転許容範囲との比較結果に基づいて、ユーザへ警告を報知する警告報知部を更に備える、上記[4]に記載の発電システム。
【0010】
[6]前記運転許容範囲の一部は、前記2以上の発電機の少なくとも1つが、過負荷となるか否かの境界を表す第1境界ラインによって規定される、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の発電システム。
【0011】
[7]前記運転許容範囲の一部は、前記2以上の発電機の少なくとも1つが、軽負荷となるか否かの境界を表す第2境界ラインによって規定される、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の発電システム。
【0012】
[8]前記第1軸は、前記発電機の前記発電出力を表し、前記運転許容範囲は、前記グラフの前記第1軸及び前記第2軸の双方において、前記自立運転状態に切り替えられた後での前記2以上の発電機の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表し、前記運転許容範囲のうち前記第1軸に関する範囲は、前記対象発電機が発電可能な最小の出力を表す第3境界ラインと、前記対象発電機が発電可能な最大の出力を表す第4境界ラインとの少なくとも一方によって規定される、上記[6]又は[7]に記載の発電システム。
【0013】
[9]前記2以上の発電機は、第1発電機と、第2発電機と、を含み、前記発電システムは、前記自立運転状態において、アイソクロナス特性に従って、前記第1発電機を制御する第1発電制御部と、前記自立運転状態において、ドループ特性に従って、前記第2発電機を制御する第2発電制御部と、を更に備える、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の発電システム。
【0014】
[10]前記2以上の発電機は、第1発電機と、第2発電機と、を含み、前記発電システムは、前記自立運転状態において、ドループ特性に従って、前記第1発電機を制御する第1発電制御部と、前記自立運転状態において、ドループ特性に従って、前記第2発電機を制御する第2発電制御部と、を更に備える、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の発電システム。
【0015】
[11]電力系統に連系し、並列運転する2以上の発電機と、前記電力系統と前記2以上の発電機との間が接続された連系運転状態と、前記電力系統と前記2以上の発電機との間が遮断された自立運転状態と、を切り替える遮断器と、を備える発電システムに設けられる監視装置であって、前記連系運転状態において、第1軸と第2軸とを含むグラフをモニタに表示する表示制御部を備え、前記第1軸は、前記2以上の発電機のいずれか1つの発電機である対象発電機の発電出力に係る物理量を表し、前記第2軸は、前記自立運転状態で前記2以上の発電機から電力が供給される重要負荷の消費電力を表し、前記表示制御部は、前記グラフの前記第2軸において、前記自立運転状態に切り替えられた後での前記2以上の発電機の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表す運転許容範囲を表示する、監視装置。
【0016】
[12]電力系統に連系し、並列運転する2以上の発電機と、前記電力系統と前記2以上の発電機との間が接続された連系運転状態と、前記電力系統と前記2以上の発電機との間が遮断された自立運転状態と、を切り替える遮断器と、を備える発電システムの監視方法であって、前記連系運転状態において、第1軸と第2軸とを含むグラフをモニタに表示する表示工程を含み、前記第1軸は、前記2以上の発電機のいずれか1つの発電機である対象発電機の発電出力に係る物理量を表し、前記第2軸は、前記自立運転状態で前記2以上の発電機から電力が供給される重要負荷の消費電力を表し、前記表示工程では、前記グラフの前記第2軸において、前記自立運転状態に切り替えられた後での前記2以上の発電機の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表す運転許容範囲を表示する、発電システムの監視方法。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、自立運転時の安定運用を図ることが可能な発電システム、監視装置、及び発電システムの監視方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、発電システムの一例を示す模式図である。
図2図2(a)は、系統連系時の電力の流れの一例を示す模式図である。図2(b)は、自立運転時の電力の流れの一例を示す模式図である。
図3図3(a)は、ドループ特性を説明するためのグラフである。図3(b)は、アイソクロナス特性を説明するためのグラフである。
図4図4は、自立運転時の2台の発電機からの出力を説明するための図である。
図5図5(a)は、系統連系時の2台の発電機からの出力の一例を示す図である。図5(b)は、自立運転移行時に発生し得る問題を説明するための図である。
図6図6は、問題の回避方法の一例を説明するための図である。
図7図7は、上位制御装置の機能構成の一例を示す模式図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、表示制御部がモニタに表示するグラフの一例を示す図である。
図9図9は、上位制御装置のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
図10図10は、系統連系時において上位制御装置が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
図11図11(a)及び図11(b)は、表示制御部がモニタに表示するグラフの一例を示す図である。
図12図12(a)及び図12(b)は、表示制御部がモニタに表示するグラフの一例を示す図である。
図13図13は、自立運転時の2台の発電機からの出力を説明するための図である。
図14図14(a)は、系統連系時の2台の発電機からの出力の一例を示す図である。図14(b)は、自立運転移行時に発生し得る問題を説明するための図である。
図15図15(a)は、表示制御部がモニタに表示するグラフの一例を示す図である。図15(b)は、運転許容範囲の境界部分の演算を説明するための図である。
図16図16は、表示制御部がモニタに表示するグラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
[発電システム]
図1には、一実施形態に係る発電システムが模式的に示されている。図1に示される発電システム1は、電力系統と連系して発電を行うシステムである。発電システム1は、例えば、工場等の需要家設備、又は発電所内に設置されている。発電システム1は、並列運転する2以上の発電機を備える。以下では、発電システム1が、並列運転する2つの発電機(2台の発電機)を備える場合を例に用いて、本開示の内容を説明する。また、以下の説明において、「発電機」は、原動機を含む設備(広義の発電機)を意味する。
【0021】
発電システム1は、2以上の発電機として、発電機10Aと、発電機10Bと、を備える。発電機10A及び発電機10Bは、構内(例えば、工場等の設備内)に設置されている。発電機10A及び発電機10Bは、互いに並列に接続して発電を行うことができる。発電機10A及び発電機10Bは、電力系統200と連系して発電を行い、電力を負荷100に供給する。発電機10A及び発電機10Bのそれぞれは、例えば、ガスタービン及び蒸気タービンの一方、又は、ガスタービン及び蒸気タービンの双方に接続されている。発電機10A及び発電機10Bの間で、発電方式(すなわち、接続される原動機の種別)が異なっていてもよい。発電機10A及び発電機10Bの少なくとも一方の出力は、オペレータによって調節することが可能であってもよい。
【0022】
電力系統200は、例えば、電力会社が提供する商用の電力系統である。一例では、電力系統200は、需要家設備に対して、定格周波数が50Hz又は60Hzである交流電力(交流電圧)を供給可能である。
【0023】
負荷100は、発電システム1が設置される構内において電力を消費する。負荷100は、2以上の負荷機器を含む。負荷機器の具体例としては、モータ、ヒータ、クーラ、及び照明等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。負荷100は、重要負荷110と、一般負荷120とに分類されてもよい。例えば、発電システム1のオペレータが、負荷100に含まれる負荷機器の接続先を切り替えることで、重要負荷110と一般負荷120とに分類されてもよい。もしくは、予め建設時に重要負荷110と一般負荷120とに分けて接続されていてもよい。重要負荷110及び一般負荷120のそれぞれは、1以上の負荷機器を含む。重要負荷110及び一般負荷120が必要とする電力(消費電力)は、これらの負荷に含まれる機器の使用状況に応じて変動する。なお、負荷100は、一般負荷120を有さずに、重要負荷110のみから構成されてもよい。
【0024】
図2(a)には、発電機10A及び発電機10Bが電力系統200と連系して運転する際の電力の流れが模式的に示されている。図2(b)には、発電機10A及び発電機10Bが電力系統200と連系せずに運転する際の電力の流れが模式的に示されている。本開示では、発電機10A及び発電機10Bが電力系統200と連系して運転する状態を「連系運転状態」と称し、発電機10A及び発電機10Bが電力系統200と連系せずに運転する状態を「自立運転状態」と称する。
【0025】
発電システム1は、遮断器20を備える。遮断器20は、電力系統200と、2以上の発電機(発電機10A及び発電機10B)との間を接続又は遮断する機器である。すなわち、遮断器20は、電力系統200と発電機10A及び発電機10Bとの間が接続された状態(連系運転状態)と、電力系統200と発電機10A及び発電機10Bとの間が遮断された状態(自立運転状態)と、を切り替える。例えば、遮断器20がオン状態となることで、発電機10A及び発電機10Bと、電力系統200との間が接続され、遮断器20がオフ状態となることで、発電機10A及び発電機10Bと、電力系統200との間が遮断される。
【0026】
連系運転状態では、発電機10A及び発電機10Bは、電力系統200に対して並列運転を行う。この場合、例えば、図2(a)に示されるように、発電機10A及び発電機10Bは、重要負荷110及び一般負荷120に対して電力を供給する。発電機10A及び発電機10Bの発電出力が、重要負荷110及び一般負荷120が必要とする電力に満たない場合には、電力系統200からも、重要負荷110及び一般負荷120に対して電力が供給される。すなわち、電力系統200からの買電が行われる。発電機10A及び発電機10Bの発電出力が、重要負荷110及び一般負荷120が必要とする電力を超える場合には、発電機10A及び発電機10Bの発電出力の余剰分が、電力系統200に対して供給される。すなわち、電力系統200への売電が行われる。
【0027】
自立運転状態においては、例えば、図2(b)に示されるように、一般負荷120には発電機10A及び発電機10Bからの電力が供給されず、発電機10A及び発電機10Bは、重要負荷110に対して電力を供給する。重要負荷110は、自立運転状態において、発電機10A及び発電機10Bから電力が供給される負荷であるということができる。重要負荷110の消費電力(負荷電力)は、その重要負荷110に含まれる一部の負荷機器の停止、又は、負荷機器の動作状況の変更等によって、オペレータにより調節することが可能であってもよい。
【0028】
図1に戻り、発電システム1は、保護継電器22を備える。保護継電器22は、電力系統200に異常が発生した際に、連系運転状態から自立運転状態に切り替わるように、電力系統200と発電機10A及び発電機10Bとの間を遮断器20により遮断させる機器である。保護継電器22及び遮断器20が設けられることで、電力系統200において停電又は瞬時電圧低下等の異常が発生した際に、発電システム1が、連系運転状態から自立運転状態に移行(遷移)する。自立運転状態では、重要負荷110に対しての発電機10A及び発電機10Bからの電力供給が継続されるので、電力系統200での事故が発生しても、重要負荷110は、動作を継続することができる。
【0029】
発電システム1は、制御装置12A、及び回転速度測定部14Aを備える。制御装置12A(第1発電制御部)は、発電機10A(第1発電機)に接続されており、発電機10Aを制御する装置である。回転速度測定部14Aは、発電機10Aの回転速度(単位時間あたりの回転数)を測定する機器であり、測定した回転速度を制御装置12Aに出力する。発電機10Aの回転速度と発電機10Aにより生成される電力の周波数は、基本的には(極端な系統事故、又は発電機の異常が発生しない限り)相互に比例する。以下、発電機10Aにより生成された電力の周波数を単に「発電機10Aにおける周波数」と称する。回転速度測定部14Aは、発電機10Aにおける回転速度を示す情報として、発電機10Aの周波数を測定してもよい。また、制御装置12Aは、回転速度測定部14Aから得られる回転速度を、発電機10Aにおける周波数に換算してもよい。
【0030】
発電システム1は、制御装置12B、及び回転速度測定部14Bを備える。制御装置12B(第2発電制御部)は、発電機10B(第2発電機)に接続されており、発電機10Bを制御する装置である。回転速度測定部14Bは、発電機10Bの回転速度(単位時間あたりの回転数)を測定する機器であり、測定した回転速度を制御装置12Bに出力する。発電機10Bの回転速度と発電機10Bにより生成される電力の周波数は、基本的には(極端な系統事故、又は発電機の異常が発生しない限り)相互に比例する。以下、発電機10Bにより生成された電力の周波数を単に「発電機10Bにおける周波数」と称する。回転速度測定部14Bは、発電機10Bにおける回転速度を示す情報として、発電機10Bの周波数を測定してもよい。また、制御装置12Bは、回転速度測定部14Bから得られる回転速度を、発電機10Bにおける周波数に換算してもよい。
【0031】
上述の制御装置12A及び制御装置12Bのそれぞれは、「ガバナ」又は「調速機」とも称される。制御装置12A及び制御装置12Bは、遮断器20の接続状態を確認し、遮断器20がオン状態である場合には、連系運転制御モードで発電機10A及び発電機10Bを制御し、遮断器20がオフ状態である場合には、自立運転制御モードで発電機10A及び発電機10Bを制御する。
【0032】
連系運転制御モードにおいては、制御装置12Aは、ドループ特性に従って発電機10Aを制御し、制御装置12Bは、ドループ特性に従って発電機10Bを制御する。ドループ特性は、図3(a)に示される「ラインLd」のように、発電出力に応じて周波数が定まる特性である。ドループ特性(ラインLd)は、発電出力が大きくなるに従って、周波数が小さくなるように設定されている。ドループ特性では、周波数に代えて回転速度が用いられてもよい。また、制御装置12A及び制御装置12Bは、内部で回転速度と周波数を換算することで発電機の制御を行ってもよい。連系運転制御モードでは、負荷100に供給される電力の周波数は、電力系統200により決定される。そのため、電力系統200により決定される周波数に応じて、発電機10A及び発電機10Bそれぞれの発電出力が決定される。電力系統200から供給される電力の周波数は、定格周波数(例えば、60Hz)の近傍範囲内において変動する。制御装置12A及び制御装置12Bのそれぞれは、制御対象の発電機からの発電出力が、電力系統200の周波数及びドループ特性により定まる発電出力の目標値となるように、制御対象の発電機の原動機への入力(例えば、燃料又は蒸気の投入量)を調節する。ドループ特性のドループ率(ラインLdの傾き)は、例えば、発電機の製造業者により予め定められている。オペレータは、ドループ特性における速度設定値L0(ドループ特性を表すグラフ上でのラインLdの上下の位置)を、変更可能であってもよい。
【0033】
自立運転制御モードにおいては、2以上の発電機のうちのいずれか1つの発電機における制御方式が、ドループ特性を用いる方式(以下、「ドループ制御」という。)からアイソクロナス特性を用いる方式(以下、「アイソクロナス制御」という。)に切り替えられてもよい。一例では、自立運転制御モードにおいて、制御装置12Aが、アイソクロナス特性に従って発電機10Aを制御し、制御装置12Bが、ドループ特性に従って発電機10Bを制御してもよい。アイソクロナス特性は、図3(b)に示される「ラインLa」のように、発電出力に関わらず周波数を一定とする特性(周波数一定特性)である。アイソクロナス特性では、周波数に代えて回転速度が用いられてもよい。また、制御装置12A及び制御装置12Bは、内部で回転速度と周波数を換算することで発電機の制御を行ってもよい。アイソクロナス特性に従った制御が行われる場合、発電機からの発電出力は、当該発電機に接続されている負荷(負荷の消費電力)により決定される。アイソクロナス特性における周波数は、例えば、電力系統200の定格周波数と同じ値に定められている。制御装置12Aは、発電機10Aにおける周波数が、アイソクロナス特性における周波数の設定値となるように、発電機10Aへの入力(例えば、燃料又は蒸気の投入量)を調節する。
【0034】
発電システム1は、図1に示されるように、電力測定部16A、電力測定部16B、電力測定部40、周波数測定部18及び監視装置50を備える。電力測定部16Aは、発電機10Aからの発電出力を測定する機器であり、測定した発電出力を制御装置12Aに出力する。電力測定部16Bは、発電機10Bからの発電出力を測定する機器であり、測定した発電出力を制御装置12Bに出力する。電力測定部16A及び電力測定部16Bは、測定した発電出力を監視装置50に出力してもよい。また、制御装置12A及び制御装置12Bは、受け取った発電出力を監視装置50に出力してもよい。電力測定部40は、重要負荷110に供給される電力を測定する機器である。電力測定部40により測定される電力は、重要負荷110が消費している電力に相当する。電力測定部40は、測定した電力を監視装置50に出力する。周波数測定部18は、電力系統200の周波数、又は発電機10A及び発電機10Bから供給される電力の周波数を測定する機器である。
【0035】
監視装置50は、制御装置12A及び制御装置12Bの上位に設けられ、発電システム1における監視を行う装置である。監視装置50は、例えば、発電システム1を含む発電設備全体を制御するプラント制御装置の一部であってもよい。制御装置12Aは、回転速度測定部14Aから得られる回転速度の測定結果、又は、その測定結果を周波数に換算した結果を監視装置50に出力してもよい。制御装置12Bは、回転速度測定部14Bから得られる回転速度の測定結果、又は、その測定結果を周波数に換算した結果を監視装置50に出力してもよい。周波数測定部18は、周波数の測定結果を監視装置50に出力する。監視装置50の詳細については、後述する。
【0036】
ここで、本開示の内容の理解を容易にするために、図4図6を参照しながら、発電機10A及び発電機10Bに対する制御の内容について更に説明する。上述したように、自立運転状態(自立運転制御モード)においては、電力系統200から切り離された状態で、発電機10A及び発電機10Bが並列運転し、発電機10A及び発電機10Bから重要負荷110に対して電力が供給されている。また、図4に示されるように、制御装置12Aは、アイソクロナス特性に従って発電機10Aを制御し、制御装置12Bは、ドループ特性に従って発電機10Bを制御する。以下、電力系統200から切り離された状態で、発電機10A及び発電機10Bが行う並列運転を「並列自立運転」と称する場合がある。
【0037】
発電機10A及び発電機10Bは電気的に並列接続されているので、発電機10Aと発電機10Bとの間で、出力される電力の周波数は一致する。発電機10Aに対してはアイソクロナス制御が行われるので、並列自立運転で出力される電力の周波数は、発電機10Aが決定する。すなわち、並列自立運転で出力される電力の周波数は、発電機10Aに対するアイソクロナス制御での設定周波数fsとなる。そして、発電機10Bに対してはドループ制御が行われるので、発電機10Bの発電出力は、設定周波数fs(発電機10Aにおける周波数)によって決定された出力となる。設定周波数fsは、例えば、50Hz又は60Hz等に設定されるが、発電機10Aにおける実際の周波数は、誤差(長期的な経年での誤差変化)が含まれるため50Hz又は60Hz等からずれた値となる。
【0038】
図4において、発電機10Aからの発電出力が「x1」で示され、発電機10Bからの発電出力が「x2」で示されている。発電機10Bでは周波数によって発電出力が定まり、その周波数は設定周波数fsであるので、発電機10Bからの発電出力x2は実質的に固定(一定)である。一方、発電機10Aからの発電出力x1は、周波数に依存しないので変動可能である。この場合、発電出力x1と発電出力x2との和が、重要負荷110における負荷電力に一致するので、重要負荷110における負荷電力の変動に応じて、発電出力x2が一定に維持されたまま、発電出力x1が変化する。
【0039】
発電機には、運転可能な発電出力の範囲(以下、「運転可能範囲」という。)が存在する。例えば、負荷が要求する電力(発電機からの出力)が大きくなり過ぎると、発電機が過負荷となり、トリップ、すなわち故障停止する可能性がある。発電機が停止しなくても、出力される電力が不安定となり、負荷に含まれる機器が停止してしまう可能性もある。反対に、負荷が要求する電力(発電機からの出力)が小さ過ぎても、発電機が軽負荷となり、発電機の制御に異常をきたし、発電機を動作させる装置において構造上熱的及び機械的な無理が生じて、トリップする可能性がある。例えば、蒸気タービン発電機の場合、軽負荷になると、蒸気タービンからの排気温度が上昇し、熱的な無理が生じ得る。なお、本開示において、「軽負荷」とは、発電機の運転に支障をきたす可能性がある程度に負荷が軽くなることを意味する。
【0040】
図4では、発電機が軽負荷となるような発電出力の領域(以下、「軽負荷領域」という。)が「R1」で示されており、発電機が過負荷となるような発電出力の領域(以下、「過負荷領域」という。)が「R2」で示されている。軽負荷領域R1と過負荷領域R2との間の領域が、運転可能範囲である。連系運転制御モードでは、電力系統200から不足分の電力を供給することができるため、発電機10A及び発電機10Bは、運転可能範囲内で運転するように、制御装置12A及び制御装置12Bによって制御されるか、又は、オペレータによる調整が行われる。
【0041】
一方、連系運転制御モードから自立運転制御モードに移行すると、出力される電力の周波数を決定する要因が変化するために、当該周波数が変化し得る。周波数が変化すると、それに伴って、発電機からの出力が変化する。その結果、発電機の出力が、上記運転可能範囲から外れてしまう可能性がある。すなわち、発電機が軽負荷又は過負荷となる可能性がある。発電機からの出力の上記変化は、自立運転制御モードに移行してから瞬時又は短い時間で発生する。
【0042】
図5(a)には、連系運転制御モードでの各発電機の周波数と発電出力との関係が例示されている。図5(a)において、「fc」は、電力系統200における周波数を表している。この周波数fcは、電力会社により調整されているが、常時、50Hz又は60Hzといった定格周波数に対して変動している。発電機10Aは、ドループ特性を表すラインLdaに従って、周波数fcに応じた発電出力w1を出力する。発電機10Bは、ドループ特性を表すラインLdbに従って、周波数fcに応じた発電出力w2を出力する。
【0043】
図5(b)には、図5(a)に示される運転状態から自立運転制御モードに移行した際の、各発電機の周波数と発電出力との関係が例示されている。自立運転制御モードに移行すると、各発電機の周波数は、発電機10Aの制御に用いるアイソクロナス特性を表すラインLaaにおける設定周波数fsに変化する。図5(a)及び図5(b)に示される例では、周波数fc(変動値)は、設定周波数fs(一定値)よりも小さい。この場合、自立運転制御モードへの移行に伴って、各発電機の周波数が上昇する。これに伴い、発電機10Bからの発電出力が、発電出力w2から発電出力x2に減少する。
【0044】
発電出力w1と発電出力w2との合計が、重要負荷110における負荷電力と同程度であったと仮定すると、発電機10Bでの発電出力の減少により、発電機10Aからの発電出力が発電出力w1から発電出力x1に増加し得る。そうすると、発電機10Aからの発電出力が運転可能範囲から逸脱し、発電機10Aが過負荷となる可能性がある。図5(b)に示される例とは異なり、周波数fc、及び、重要負荷110における負荷電力によっては、自立運転制御モードに移行した際に発電機10Aが軽負荷となる可能性がある。
【0045】
連系運転制御モードでの系統連系中において、仮に現在の状態で自立運転制御モードに移行した際に、発電機10Aの発電出力が運転可能範囲から逸脱しないかを把握することができると、系統連系中に対策を行うことが可能となる。そのような対策の一例について、図6を用いて説明する。図6において、「変更前」は対策を行う前を意味し、「変更後」は対策を行った後を意味する。
【0046】
連系運転制御モード(変更前)において、発電機10Bは、ラインLdb0で表されるドループ特性に従って制御されており、電力系統200における周波数fcに応じた発電出力で発電を行っている。この状態で、仮に自立運転制御モードに移行することを想定すると、周波数が設定周波数fsとなり、発電機10Bからの発電出力はx20まで低下する。これに伴い、重要負荷110における現在の消費電力(負荷電力)によっては、発電機10Aからの発電出力x10が過負荷領域R2に入る可能性がある。
【0047】
そこで、上記対策として、系統連系中において、発電機10Bに対するドループ制御でのドループ特性を表すラインを上方に移動させて、ラインLdb1に従って発電機10Bを制御するように変更する対策が考えられる。この対策を行った場合、仮に自立運転制御モードに移行すると想定したときの発電機10Bでの発電出力が、変更前ではx20であったのに対して、x21まで増加する。そのため、仮に自立運転制御モードに移行すると想定したときの発電機10Aでの発電出力は、変更前ではx10であったのに対して、x11まで減少し、運転可能範囲から逸脱しない。
【0048】
なお、上記対策として、発電機10Bでの発電出力に代えて、又は加えて、重要負荷110の消費電力が調節されてもよい。例えば、重要負荷110の消費電力を減少させるために、重要負荷110に含まれる一部の機器を、自立運転制御モードで電力が供給される対象から外す処置が行われてもよく、発電システム1が生産設備に設置されている場合には、生産量を減少させる処置が行われてもよい。なお、本開示における重要負荷110は、自立運転で電力が供給される対象から外す対策が行われない場合に、自立運転状態において発電機10A及び発電機10Bから電力が供給される負荷である。
【0049】
上記対策では、系統連系中に常時変更(調整)を行う必要があり、且つ、変更前の運転状態から、どの程度の変更を行えばよいかを知る必要がある。図5(b)に示される例では、発電機10Bの発電出力が自立運転制御モードに移行した際に、どの程度になるかを少なくとも知る必要がある。また、重要負荷110に含まれる負荷機器の調整では、例えば、操作タイミングの調整、及び該当生産設備への連絡等、人手による対応を要する部分が多分にある。発電出力の調整を行う場合にも、例えば、使用済みの蒸気を生産設備等で用いる背圧タービンなどでは、生産設備への蒸気供給量を減らす処置が必要になる等、同様に人の判断によって調整を行う必要が出てくる場合がある。以上のことから、どのような調整がどの程度必要かを視覚的に表示するシステムが必要とされる。すなわち、連系運転制御モードでの系統連系中において、仮に現在の状態で自立運転制御モードに移行した際に、発電機10Aの発電出力が運転可能範囲から逸脱しないかを視覚的な情報から判断又は把握できれば、系統連系中に対策を行うことができる。上述した監視装置50は、発電機10Aの発電出力が運転可能範囲から逸脱しないかを判断又は把握するための視覚的な情報をオペレータ等のユーザに提供するように構成されている。
【0050】
図1に戻り、発電システム1は、モニタ52を備える。モニタ52は、監視装置50に接続されている。モニタ52は、監視装置50のユーザに対して情報を表示するための出力デバイスである。モニタ52は、情報を表示できれば、どのようなものであってもよいが、例えば、液晶ディスプレイである。モニタ52は、監視装置50のユーザに対して情報を表示し、また、タッチパネル又はボタン等を備えてユーザからの入力を受け付ける入出力デバイスであってもよい。
【0051】
図7図9を参照しながら、監視装置50の詳細について説明する。監視装置50は、連系運転状態(連系運転制御モード)において、発電機10Aの発電出力が運転可能範囲から逸脱しないかを把握するための情報として、グラフをモニタ52に表示するように構成されている。
【0052】
図7には、監視装置50の機能構成の一例が示されている。監視装置50は、機能上の構成要素(以下、「機能ブロック」という。)として、運転状況取得部62と、表示制御部66と、警告報知部68と、を有する。これらの機能ブロックが実行する処理は、監視装置50が実行する処理に相当する。
【0053】
運転状況取得部62は、発電システム1における各種の運転状況を取得する。発電システム1における運転状況には、発電機10A及び発電機10Bの運転状況も含まれる。運転状況取得部62は、所定周期で(所定周期ごとに)、各種の運転状況を取得することを繰り返してもよい。一例では、運転状況取得部62は、電力測定部16A、電力測定部16B、及び電力測定部40のそれぞれから、電力の測定結果を取得する。
【0054】
運転状況取得部62は、制御装置12Aから、発電機10Aの運転状況として、発電機10Aにおける回転速度又は周波数(例えば、回転速度測定部14Aで測定された回転速度)を取得してもよい。運転状況取得部62は、制御装置12Bから、発電機10Bの運転状況として、発電機10Bにおける回転速度又は周波数(例えば、回転速度測定部14Bで測定された回転速度)を取得してもよい。運転状況取得部62は、周波数測定部18から周波数(例えば、電力系統200の周波数)を取得してもよい。
【0055】
表示制御部66は、連系運転状態において、第1軸と第2軸とを含むグラフ(以下、「グラフGr」と表記する。)をモニタ52に表示する。グラフGrは、第1軸及び第2軸から成る2次元のグラフであってもよい(図8(a)を参照)。第1軸は、発電システム1が備える2以上の発電機のいずれか1つの発電機である対象発電機の発電出力に係る物理量を表す。第2軸は、自立運転状態で上記2以上の発電機から電力が供給される重要負荷110の消費電力(以下、「重要負荷電力」と表記する。)を表す。
【0056】
図8(a)には、モニタ52に表示されるグラフGrの一例が示されている。なお、グラフGrを示す図においては、モニタ52は省略されている。グラフGrの第1軸は、例えば横軸(x軸)であり、対象発電機の発電出力に係る物理量として、発電機10Bの発電出力を表す。なお、発電出力に係る物理量には、発電出力自体も含まれる。グラフGrの第2軸は、例えば縦軸(y軸)であり、重要負荷電力(重要負荷110が必要とする電力)を表す。
【0057】
表示制御部66は、グラフGrにおいて運転許容範囲PAを表示する。図8(a)に例示される運転許容範囲PAは、発電機10Bの発電出力の現在値と、重要負荷電力(重要負荷110の消費電力)の現在値とが、当該運転許容範囲PA内にある場合には、仮に現在の状態で自立運転状態に移行しても、発電機10Aの運転に支障をきたさないと想定される範囲を意味する。表示制御部66は、少なくともグラフGrの第2軸において、自立運転状態に切り替えられた後での上記2以上の発電機の運転に支障をきたさないと想定される範囲を運転許容範囲PAとして表示する。表示制御部66は、例えば、グラフGrの縦軸において、自立運転状態に切り替えられた後に(自立運転制御モードに移行した際に)発電機10Aが支障なく運転すると想定される範囲を、運転許容範囲PAとして表示する。図8(a)に示される例においては、多数のドットが付された領域が、運転許容範囲PAである。
【0058】
表示制御部66は、発電機10A及び発電機10Bの少なくとも一方(例えば、発電機10A)の運転状況に応じて、運転許容範囲PAが経時的に変化するように、グラフGrをモニタ52に表示してもよい。表示制御部66は、例えば、運転状況取得部62が運転状況として発電機10Aの回転速度を制御装置12Aから取得した場合には、発電機10Aの回転速度に応じて運転許容範囲PAが経時的に変化するように、グラフGrをモニタ52に表示する。表示制御部66は、運転状況取得部62が運転状況として発電機10Aの周波数を制御装置12Aから取得した場合には、発電機10Aの周波数に応じて運転許容範囲PAが経時的に変化するように、グラフGrをモニタ52に表示する。
【0059】
図8(a)に示される例では、運転許容範囲PAの一部は、自立運転制御モードに移行した際に、発電機10Aが過負荷となるか否かの境界を表す境界ラインy1(第1境界ライン)によって規定される。すなわち、運転許容範囲PAの一部は、境界ラインy1によって区画される。境界ラインy1は、例えば、次の式(1)~式(3)で示される関数(xを変数とする関数)で演算される。式(1)~式(3)において、「x」は、発電機10Bの発電出力[kW]である。式(3)において、「min[i,j]」は、i及びjのうち小さい方を出力する関数を意味する。
【数1】
【0060】
図8(a)に示される例では、運転許容範囲PAの他の一部は、自立運転制御モードに移行した際に、発電機10Aが軽負荷となるか否かの境界を表す境界ラインy2(第2境界ライン)によって規定される。グラフGrにおいて、境界ラインy1は、境界ラインy2よりも上方に位置する。境界ラインy2は、例えば、次の式(4)で示される関数で演算される。式(4)におけるPbi(x)は、式(2)によって示されている。
【数2】
【0061】
式(1)~式(4)において、各種の変数は、設定値と測定値とに分けて記載すると、下記のとおりである。
<設定値>
・Ta:発電機10Aの定格出力[kW]
・Tac:発電機10Aの最小出力[kW]
・Ka:自立運転時の負荷変動に対応するための、定格出力に対する出力の尤度
・Tb:発電機10Bの定格出力[kW]
・Nas:発電機10Aの自立時の主軸の定格回転速度[%rpm]、又は発電機10Aの自立時の周波数設定値[%Hz]
・Db:発電機10Bでのドループ制御におけるドループ率[%]
<測定値>
・Na:発電機10Aの主軸の現在の回転速度[%rpm]、又は発電機10Aの現在の周波数[%Hz]
【0062】
図8(a)に示されるグラフGrにおいて、発電機10Bの発電出力の現在値と、重要負荷電力の現在値との組み合わせからなる点(後述の運転点OP)が、境界ラインy1よりも上方に位置することは、自立運転制御モードに移行した際に発電機10Aが過負荷となることを意味する。また、発電機10Bの発電出力の現在値と、重要負荷電力の現在値との組み合わせからなる点(後述の運転点OP)が、境界ラインy2よりも下方に位置することは、自立運転制御モードに移行した際に発電機10Aが軽負荷となることを意味する。
【0063】
式(1)~式(4)を用いて、運転許容範囲PA(運転許容範囲PAの境界)を演算する場合、関数「Pbi(t)」には、測定値である「Na」が含まれる。そのため、運転許容範囲PAは、上記Na(発電機10Aにおける現在の回転速度又は周波数)に応じて経時的に変化する。なお、ある期間において、Naに変動がなければ、運転許容範囲PAも変化しない。Naは、制御装置12Aから得られる情報であってもよい。例えば、制御装置12Aが発電機10Aを制御する際に認識している周波数を用いて、運転許容範囲PAが演算されてもよい。Naは、制御装置12A以外から得られてもよく、例えば、周波数測定部18から得られる周波数であってもよい。
【0064】
表示制御部66は、グラフGr内において、重要負荷電力(重要負荷110の消費電力)の現在値と、発電機10Bの発電出力の現在値とを含む運転点OPを運転許容範囲PAと共に表示してもよい。運転点OPは、重要負荷電力の現在値と、発電機10Bの発電出力の現在値とからなる点であってもよい。グラフGr上の座標を(x座標,y座標)のように表すと、運転点OPは、OP=(Pb,Pi)のように表すことができる。「Pb」及び「Pi」は、いずれも測定値であり、下記の意味である。
・Pb:発電機10Bの現在の発電出力[kW]
・Pi:重要負荷110の現在の消費電力[kW]
「Pi」は、現在の状態のまま自立運転状態に移行した際に発電機10A及び発電機10Bが背負うことになる(電力を供給することとなる)負荷の消費電力ということができる。
【0065】
警告報知部68は、運転点OPと運転許容範囲PAとの比較結果に基づいて、ユーザへ警告を報知する。警告報知部68は、例えば、運転点OPが運転許容範囲PAから外れる場合に、ユーザへ警告を報知し、運転点OPが運転許容範囲PA内にある場合に、ユーザへ警告を報知しない。警告報知部68による警告の報知方法は、どのような方法であってもよいが、例えば、警告報知部68は、モニタ52に警告を示す情報を表示する。一例では、警告報知部68は、図8(b)に示されるように、モニタ52に警告を示すメッセージ58を表示する。
【0066】
警告報知部68は、警告を示すメッセージ58に代えて、又は加えて、モニタ52の画面上における運転点OP等の一部の領域において、警告を示す情報として、色を変化させてもよく、あるいは点滅させてもよい。警告報知部68は、モニタ52への表示に代えて、又は加えて、モニタ52以外の他の報知手段(例えば、音)により、ユーザへ警告を報知してもよい。
【0067】
図9には、監視装置50のハードウェア構成の一例が示されている。監視装置50は、PLC(Programmable Logic Controller)等のコンピュータによって構成される。監視装置50は、例えば、回路80を有する。回路80は、プロセッサ81と、メモリ82と、ストレージ83と、入出力ポート84と、通信ポート85と、タイマ86と、を有する。ストレージ83は、フラッシュメモリ、又はハードディスク等の1以上の不揮発性メモリデバイスにより構成されている。ストレージ83は、上記グラフGrをモニタ52に表示させることを監視装置50に実行させるプログラムを記憶している。例えばストレージ83は、上述した機能ブロックを監視装置50に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0068】
メモリ82は、例えばランダムアクセスメモリ等の1以上の揮発性メモリデバイスにより構成されている。メモリ82は、ストレージ83からロードされたプログラムを一時的に記憶する。プロセッサ81は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の1以上の演算デバイスにより構成されている。プロセッサ81は、メモリ82にロードされたプログラムを実行することで、上述した運転状況取得部62等の各機能ブロックを監視装置50に構成させる。プロセッサ81による演算結果は一時的にメモリ82に格納される。
【0069】
入出力ポート84は、プロセッサ81からの指令に従って、電力測定部16A,16B,40、保護継電器22、及びモニタ52等との間で電気信号の入出力を行う。通信ポート85は、プロセッサ81からの要求に応じ、制御装置12A及び制御装置12Bとの間で、無線、有線、又はネットワーク回線を介して通信する。タイマ86は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。なお、回路80は、必ずしもプログラムにより上述した運転状況取得部62等の各機能ブロックを構成するものに限られない。例えば回路80は、論理回路を集積した集積回路により少なくとも一部の機能ブロックを構成してもよい。
【0070】
監視装置50は、複数のコンピュータによって構成されてもよい。監視装置50が、複数のコンピュータで構成される場合、各機能ブロックがそれぞれ、個別のコンピュータによって実現されていてもよい。あるいは、これらの各機能ブロックがそれぞれ、2つ以上のコンピュータの組み合わせによって実現されていてもよい。これらの場合、複数のコンピュータは、互いに通信可能に接続された状態で、発電システム1における監視を連携して実行してもよい。監視装置50と、制御装置12A及び制御装置12Bの少なくとも一方とが、1つのコンピュータ(1つの回路)により構成されてもよい。
【0071】
[発電システムの監視方法]
続いて、発電システム1の監視方法について説明する。この監視方法は、少なくとも、表示工程を含む。表示工程は、連系運転状態において、第1軸と第2軸とを含むグラフGrをモニタ52に表示する工程である。
【0072】
発電システム1の監視方法では、監視装置50が、表示工程に関連する一連の処理を実行する。図10には、監視装置50が実行する一連の処理が示されている。自立運転制御モードに移行した際に、発電機10Aがアイソクロナス特性に従って制御され、発電機10Bに対する制御は、ドループ特性に従った制御に維持される場合を例に用いて、上記一連の処理について説明する。
【0073】
上記一連の処理では、遮断器20がオン状態に維持され、連系運転制御モードで発電機10A及び発電機10Bが制御されている状態で、監視装置50が、ステップS11を実行する。ステップS11では、例えば、監視装置50の運転状況取得部62が、遮断器20の開閉状態がオン状態であるか否かを判断する。運転状況取得部62は、遮断器20から当該遮断器20の状態を示す信号を取得してもよく、制御装置12A及び制御装置12Bから現在の制御モードを示す情報を取得してもよい。
【0074】
ステップS11において、遮断器20がオン状態であると判断された場合(ステップS11:YES)、監視装置50が実行する処理は、ステップS12に進む。ステップS12では、例えば、運転状況取得部62が、発電機10A及び発電機10Bの運転状況を示す情報を取得する。一例では、運転状況取得部62は、運転状況を示す情報として、制御装置12Aから発電機10Aにおける周波数を取得する。運転状況取得部62は、発電機10Aからの発電出力を電力測定部16Aから取得し、発電機10Bからの発電出力を電力測定部16Bから取得してもよい。運転状況取得部62は、重要負荷110に供給されている電力(重要負荷電力)を電力測定部40から取得してもよい。
【0075】
次に、監視装置50は、ステップS13を実行する。ステップS13では、例えば、監視装置50の表示制御部66が、運転許容範囲PAの演算を実行する。一例では、表示制御部66は、上述した式(1)で示される境界ラインy1と、上述した式(4)で示される境界ラインy2とを演算する。この場合、表示制御部66は、境界ラインy1及び境界ラインy2の演算において、ステップS12で取得された発電機10Aの周波数を利用する。
【0076】
次に、監視装置50は、ステップS14を実行する。ステップS14では、例えば、表示制御部66が、ステップS13で演算した結果を用いて、運転許容範囲PAを含むグラフGrをモニタ52に表示する。一例では、表示制御部66は、横軸が発電機10Bの発電出力であり、縦軸が重要負荷電力である2次元(2次元直交座標系)のグラフGrをモニタ52に表示し、縦軸に関して運転許容範囲PAを表示する。運転許容範囲PAを含むグラフGrがモニタ52に既に表示されている場合には、表示制御部66は、モニタ52上のグラフGrの描画を更新する。
【0077】
表示制御部66は、グラフGrにおいて、ステップS12で取得された情報を用いて、発電機10Bの発電出力の現在値と、重要負荷電力の現在値とを表す運転点OPを、運転許容範囲PAと共に表示してもよい。
【0078】
次に、監視装置50は、ステップS15を実行する。ステップS15では、例えば、監視装置50の警告報知部68が、ステップS13で演算された運転許容範囲PAと、ステップS12で取得された情報の一部から得られる運転点OPとを比較する。一例では、警告報知部68は、運転点OPが、境界ラインy1と境界ラインy2とによって規定される運転許容範囲PAの外に位置するか否かを判定する。警告報知部68は、運転点OPが、グラフGr上において、境界ラインy1よりも上方に位置するか、又は、境界ラインy2よりも下方に位置する場合に、運転許容範囲PAの外に位置すると判定してもよい。
【0079】
ステップS15において、運転点OPが、運転許容範囲PAの外に位置すると判定された場合(ステップS15:YES)、監視装置50が実行する処理は、ステップS16に進む。ステップS16では、例えば、警告報知部68が、運転点OPが、運転許容範囲PAの外に位置することを示す警告を、ユーザへ報知する。一例では、警告報知部68は、運転点OPが運転許容範囲PAから逸脱していることを示す文字情報(メッセージ、又はガイダンス)をモニタ52に表示する。
【0080】
ステップS16の実行後、又は、ステップS15において、運転点OPが運転許容範囲PAの外に位置しないと判定された場合(ステップS15:NO)、監視装置50が実行する処理は、ステップS11に戻る。監視装置50は、ステップS11において、遮断器20がオン状態であると判断される限り、ステップS11~ステップS15(又は、ステップS16)の一連の処理を繰り返す。この場合、監視装置50は、所定周期で(所定周期ごとに)、ステップS12~ステップS15の一連の処理を繰り返してもよい。これにより、発電機10A及び発電機10Bの少なくとも一方(例えば、発電機10A)の運転状況に応じて、グラフGrが経時的に変化する。
【0081】
一方、ステップS11において、遮断器20がオン状態ではないと判断された場合(ステップS11:NO)、監視装置50が実行する処理は、ステップS17に進む。ステップS17では、例えば、表示制御部66が、発電システム1が自立運転状態に切り替わったことを示す情報をモニタ52に表示する。ステップS17の処理は、ステップS11において、遮断器20がオン状態であると判断されるまで継続される。監視装置50による上記一連の処理は、発電システム1が稼働を停止するまでの間、継続して実行されてもよい。
【0082】
[変形例]
図10に示される一連の処理は、一例であり、適宜変更可能である。上記一連の処理において、監視装置50は、1つのステップと次のステップとを並列に実行してもよく、上述した例とは異なる順序で各ステップを実行してもよい。監視装置50は、上述した例とは異なる内容のステップを実行してもよい。ステップの実行に代えて、監視装置50による上記一連の処理の全てが、論理回路又はアナログ回路に展開されてもよく、割り込みにより実行されてもよい。
【0083】
表示制御部66は、図8(a)に示されるように、運転許容範囲PA内において、上側に位置する境界ラインy1に加えて、境界ラインy3を表示してもよい。境界ラインy3は、そのラインよりも上方に運転点OPがある場合、自立運転に移行した際に、発電機10Aにおける許容量を上回る急激な負荷投入によりトリップする可能性があるか、もしくは、発電機10Aが過負荷となるラインを意味する。境界ラインy3は、自立運転に移行して発電機10Aの負荷が増加した場合に安定して移行できる容量を考慮した制限値(制限ライン)ということもできる。
【0084】
境界ラインy3は、例えば、次の式(5)で示される関数(xを変数とする関数)で演算される。
【数3】

式(5)において、Kgm及びPgは、下記を意味する。なお、他の変数及び関数は、式(1)~式(4)と同様の意味である。以下、本開示において、運転許容範囲PAを定める種々の境界ラインの演算式を例示するが、共通した式番号、変数、及び関数は、同じ意味を有する。
・Kam:発電機10Aにおける瞬時負荷投入耐量[kW]
・Pa:発電機10Aにおける現在の発電出力[kW]
境界ラインy3は、式(5)に代えて、次の式(6)で示される関数で演算されてもよい。式(6)で示される境界ラインy3は、そのラインよりも上方に運転点OPがある場合、自立運転に移行した際に、発電機10Aにおける許容量を上回る急激な負荷投入によりトリップする可能性があるラインを意味する。
【数4】
【0085】
警告報知部68は、グラフGr上において、運転点OPが、境界ラインy3よりも上方に位置する場合に、ユーザへ警告を報知してもよい。警告報知部68は、運転点OPが、境界ラインy3よりも上方で、且つ境界ラインy1よりも下方にある場合と、境界ラインy1よりも上方にある場合とで、警告の報知方法を異ならせてもよい。
【0086】
図には示されないが、表示制御部66は、境界ラインy1に代えて、式(5)又は式(6)のいずれかで示される境界ラインy3によって規定される運転許容範囲PAを表示してもよい。この場合、グラフGr上において、運転許容範囲PAの上限が、境界ラインy3によって定められる。警告報知部68は、運転点OPが、境界ラインy3よりも上方に位置する場合に、警告を報知してもよい。
【0087】
運転許容範囲PAは、図11(a)に示されるように、境界ラインy1と第1軸(例えば、横軸)の軸線とによって規定されてもよい。この場合、グラフGrにおいて、運転許容範囲PAの下限は、第1軸の軸線によって規定される。警告報知部68は、運転点OPが、境界ラインy1を超えるか否かの判定のみによって、運転点OPが、運転許容範囲PA内に位置するか否かを判定してもよい。
【0088】
運転許容範囲PAは、経時的に変化せずに、時間の経過と共に変化しない固定された範囲であってもよい。図11(b)には、自立運転制御モードへ移行した際の周波数の最大変化幅の予測値(変化幅の最悪値)を用いて演算された運転許容範囲PAが示されている。表示制御部66は、次の式(7)~式(9)で示される関数(xを変数とする関数)を用いて、境界ラインy1を演算してもよい。
【数5】
【0089】
式(9)において、「Fs」は、電力系統200における定格周波数[Hz]を意味する。また、ΔF1は、系統周波数から、自立運転時の発電機10Aの周波数を減算して得られる値の最小値の予測値、又は、系統周波数における変動幅の減少方向(マイナス側)での最悪値の予測値である。ただし、ΔF1の演算においては、系統周波数が、自立運転時の発電機10Aの周波数よりも小さいと仮定している。
【0090】
表示制御部66は、次の式(10)で示される関数を用いて、境界ラインy3を演算してもよい。
【数6】

表示制御部66は、式(10)に代えて、次の式(11)で示される関数を用いて、境界ラインy3を演算してもよい。
【数7】
【0091】
表示制御部66は、次の式(12)~式(14)で示される関数を用いて、境界ラインy2を演算してもよい。
【数8】
【0092】
式(14)において、ΔF2は、系統周波数から、自立運転時の発電機10Aの周波数を減算して得られる値の最大値の予測値、又は、系統周波数における変動幅の増加方向(プラス側)での最悪値の予測値である。ただし、ΔF2の演算においては、系統周波数が、自立運転時の発電機10Aの周波数よりも大きいと仮定している。ΔF1及びΔF2は、電力系統200における周波数(系統周波数)の管理範囲によって定められてもよい。
【0093】
運転許容範囲PAは、図12(a)に示されるように、第2軸に関して、境界ラインy1を用いずに境界ラインy2によって規定されてもよい。図12(a)に示される例においては、グラフGr上において、境界ラインy2よりも上方の領域が、運転許容範囲PAである。警告報知部68は、運転点OPが、境界ラインy2を下回るか否かの判定のみによって、運転点OPが、運転許容範囲PA内に位置するか否かを判定してもよい。
【0094】
上述した各種例での運転許容範囲PAは、第2軸(例えば、縦軸)に関して範囲を示している。これに代えて、運転許容範囲PAは、グラフGrの第1軸及び第2軸の双方において、自立運転状態に切り替えられた後での発電機10A及び発電機10Bの運転に支障をきたさないと想定される範囲を表してもよい。図12(b)に示されるように、グラフGrにおいて、境界ラインy1及び境界ラインy2に加えて、縦軸に沿って延びる2つの縦線によっても、運転許容範囲PAが規定(区画)されてもよい。
【0095】
図12(b)に示される例において、境界ラインx5(第3境界ライン)は、発電機10Bが発電可能な最小の発電出力を表すラインである。例えば、発電機10Bに蒸気タービンが接続されている場合、x5は、蒸気タービンへ導入される蒸気の流量が最小であるときの発電機10Bの発電出力を意味する。また、発電機10Bが自立運転時にドループ制御で制御される場合、式(3)又は式(9)で表される、自立運転移行時の周波数変化による発電機10Bの出力変化が加味されてもよい。
【0096】
境界ラインx6(第4境界ライン)は、発電機10Bが発電可能な最大の出力を表すラインである。例えば、発電機10Bに蒸気タービンが接続されている場合、x6は、蒸気タービンへ導入される蒸気の流量が最大(導入可能な最大流量)であるときの発電機10Bの発電出力を意味する。あるいは、発電機10Bを含む発電装置の方式が、コンバインドサイクル方式である場合、x6は、自立運転時にガスタービンから導入される蒸気の流量の制限により規定される、発電機10Bの最大発電出力を意味してもよい。この場合、自立運転制御モードへの移行に伴うガスタービンの負荷変動による蒸気発生量の変動が加味されてもよい。また、発電機10Bが自立運転時にドループ制御で制御される場合、式(3)又は式(14)で表される、自立運転移行時の周波数変化による発電機10Bの出力変化が加味されてもよい。
【0097】
図12(b)に示される例においては、境界ラインy1、境界ラインy2、境界ラインx5、及び境界ラインx6によって、運転許容範囲PAが規定される。すなわち、運転許容範囲PAは、境界ラインy1、境界ラインy2、境界ラインx5、及び境界ラインx6に囲まれた(閉じられた)範囲であってもよい。警告報知部68は、運転点OPが、境界ラインx5よりも左側にある場合、あるいは、境界ラインx6よりも右側にある場合にも、警告を報知してもよい。
【0098】
図12(b)に示される例とは異なり、境界ラインy1及び境界ラインy2の少なくとも一方と境界ラインx5とによって、運転許容範囲PAが規定されてもよい。もしくは、境界ラインy1及び境界ラインy2の少なくとも一方と境界ラインx6とによって、運転許容範囲PAが規定されてもよい。以上のように、運転許容範囲PAのうち第1軸(横軸)に関する範囲は、境界ラインx5及び境界ラインx6の双方、境界ラインx5のみ、又は、境界ラインx6のみ(すなわち、境界ラインx5及び境界ラインx6の少なくとも一方)によって規定されてもよい。
【0099】
表示制御部66は、グラフGrの横軸に関して、自立運転時にドループ制御で制御される発電機10Bに代えて、自立運転時にアイソクロナス制御で制御される発電機10Aにおける発電出力を用いてもよい。
【0100】
自立運転状態(自立運転制御モード)において、図13に示されるように、制御装置12Aが、ドループ特性に従って発電機10Aを制御し、制御装置12Bが、ドループ特性に従って発電機10Bを制御してもよい。すなわち、連系運転制御モード及び自立運転制御モードの双方において、発電機10A及び発電機10Bのそれぞれに対してドループ制御が行われてもよい。
【0101】
自立運転状態に移行した際に、発電機10A及び発電機10Bの双方の制御方式がドループ制御に維持される場合でも、発電機10A及び発電機10Bは電気的に並列接続しているので、発電機10Aと発電機10Bとの間で、出力される電力の周波数は一致する。この場合、発電機10A及び発電機10Bから出力される電力が、重要負荷110が要求する電力を満たすように、発電機10A及び発電機10Bからの出力がバランスする。そして、発電機10A及び発電機10Bからの出力の合計(x1+x2)が重要負荷110が要求する電力と一致するように、発電機10A及び発電機10Bの周波数が決定される。図13に示される例では、発電機10A及び発電機10Bの周波数が「fx」において、発電機10A及び発電機10Bからの出力がバランスしている。
【0102】
自立運転制御モードにおいて、発電機10A及び発電機10Bそれぞれに対してドループ制御が行われる場合でも同様に、出力される電力の周波数を決定する要因の変化に伴い、発電機10A及び発電機10Bの少なくとも一方の出力が、上記運転可能範囲から外れてしまう可能性がある。すなわち、連系運転制御モードから自立運転制御モードに移行した際に、発電機10A及び発電機10Bの少なくとも一方が、軽負荷又は過負荷となる可能性がある。
【0103】
図14(a)には、連系運転制御モードでの各発電機の周波数と発電出力との関係が例示されている。図14(a)に示される運転状態は、図5(a)に示される運転状態と同様である。図14(b)には、図14(a)に示される運転状態から自立運転制御モードに移行した際の、各発電機の周波数と発電出力との関係が例示されている。自立運転制御モードに移行すると、各発電機の周波数は、重要負荷110が要求する電力に応じて出力がバランスするような周波数fxに変化する。
【0104】
図14(a)及び図14(b)に示される例では、電力系統200によって規定される周波数fc(変動値)は、周波数fx(変動値)よりも大きい。すなわち、自立運転制御モードへの移行に伴って、各発電機の周波数が低下する。これに伴い、重要負荷110の要求電力によっては、発電機10Aからの発電出力が、発電出力w1から発電出力x1に増加し、発電機10Bからの発電出力が、発電出力w2から発電機10Bからの発電出力が、発電出力w2から発電出力x2に増加する。この場合、図14(b)に示されるように、発電機10Bからの発電出力が運転可能範囲から逸脱し、発電機10Bが過負荷となる可能性がある。
【0105】
周波数fc及び重要負荷110が要求する電力によっては、発電機10Bに代えて、又は加えて、発電機10Aが過負荷となる可能性がある。あるいは、周波数fc及び重要負荷110の要求電力によって、発電機10A及び発電機10Bの一方、又は、発電機10A及び発電機10Bの双方が軽負荷となる可能性がある。以上のように、発電機10A及び発電機10Bの双方でドループ制御が自立運転中も継続される場合には、発電機10A及び発電機10Bのそれぞれについて、各発電機の出力が運転可能範囲に収まるか否かが問題となる。
【0106】
連系運転制御モードでの系統連系中において、仮に現在の状態で自立運転制御モードに移行した際に、発電機10A及び発電機10Bのそれぞれに関して、発電出力が運転可能範囲から逸脱しないかを把握することができると、系統連系中に対策を行うことが可能となる。上記対策の例として、ドループ特性を表すラインを上下に移動させる(速度設定値L0を増減させる)こと、又は/及び、重要負荷110における消費電力を調節することが挙げられる。監視装置50は、系統連系中に対策を行うことを可能にする情報として、グラフGrをモニタ52に表示する。上記対策において、オペレータは、発電機10Bの発電出力を調節可能であり、発電機10Aの発電出力を調節できなくてもよい。
【0107】
表示制御部66は、図15(a)に示されるような境界ラインy1及び境界ラインy2を演算して、運転許容範囲PAを含むグラフGrをモニタ52に表示してもよい。境界ラインy1は、下記の式(21)~式(27)に示される関数によって演算されてもよい。
【数9】
【0108】
式(21)に示されるPbamax(x)は、自立運転制御モードでの発電機10A及び発電機10Bの最大出力を表す。式(25)に示されるFbamin(x)は、自立運転制御モードでの発電機10A又は発電機10Bのいずれかが最大出力になる周波数を示す。式(26)に示されるFbmin(x)は、並列自立運転を考慮せず、発電機10Bを単独で最大出力としたときの周波数を意味し、式(27)に示されるFaminは、並列自立運転を考慮せず、発電機10Aを単独で最大出力としたときの周波数を意味する。Fpは、測定値であり、現在の周波数(電力系統200からの電力により決定される周波数)である。ただし、Fpに代えて、定格周波数Fs(一定値)を用いて演算が行われてもよい。Daは、発電機10Aに対するドループ制御におけるドループ率[%]である。式(25)等において、max[i,j]は、i及びjのうちの大きい値を出力する関数を意味する。
【0109】
境界ラインy2は、下記の式(31)~式(37)に示される関数によって演算されてもよい。
【数10】
【0110】
式(31)に示されるPbamin(x)は、自立運転制御モードでの発電機10A及び発電機10Bの最小出力(最低出力)を表す。式(35)に示されるFbamax(x)は、自立運転制御モードでの発電機10A及び発電機10Bの最小出力時の周波数を表す。式(36)に示されるFbmax(x)は、並列自立運転を考慮せず、発電機10Bを単独で最低出力としたときの周波数を意味し、式(37)に示されるFamaxは、並列自立運転を考慮せず、発電機10Aを単独で最低出力としたときの周波数を意味する。式(36)において、Tbminは、発電機10Bにおける許容最小出力[kW]であり、式(37)において、Taminは、発電機10Aにおける許容最小出力[kW]である。
【0111】
図15(a)に示される境界ラインy1は、図15(b)に示されるラインy11とラインy12とに分解することができる。反対に、図15(b)をもとに図15(a)を説明すると、境界ラインy1は、ラインy11とラインy12とよって規定されるラインと捉えることもできる。具体的には、境界ラインy1は、グラフGr上において、横軸の値を変化させながら観察した際にラインy11及びラインy12のうちの下方に位置する部分(縦軸の値が小さい方)によって規定される。また、図15(a)に示される境界ラインy2は、境界ラインy1と同様に、図15(b)に示されるラインy21とラインy22とによって規定されるラインと捉えることもできる。具体的には、境界ラインy2は、グラフGr上において、横軸の値を変化させながら観察した際にラインy21及びラインy22のうちの上方に位置する部分(縦軸の値が大きい方)によって規定される。
【0112】
ラインy11は、次の式(41)~式(43)によって演算される。
【数11】

ラインy12は、次の式(44)~式(46)によって演算される。
【数12】
【0113】
ラインy21は、次の式(47)~式(49)によって演算される。
【数13】

ラインy22は、次の式(50)~式(52)によって演算される。
【数14】
【0114】
ラインy11は、自立運転制御モードに移行した際に、発電機10Aが過負荷となるか否かの境界を表す。すなわち、グラフGr上において、運転点OPが、ラインy11よりも上方に位置する場合、その状態で自立運転制御モードに移行した際には、発電機10Aが過負荷となる。ラインy12は、自立運転制御モードに移行した際に、発電機10Bが過負荷となるか否かの境界を表す。すなわち、グラフGr上において、運転点OPが、ラインy12よりも上方に位置する場合、その状態で自立運転制御モードに移行した際には、発電機10Bが過負荷となる。グラフGr上において、運転点OPが、ラインy11及びラインy12の双方よりも上方に位置する場合、その状態で自立運転制御モードに移行した際には、発電機10A及び発電機10Bの双方が過負荷となる。以上のことから、ラインy11及びラインy12で規定される境界ラインy1は、発電機10A及び発電機10Bの少なくとも一方が過負荷となるか否かの境界を表す。
【0115】
ラインy21は、自立運転制御モードに移行した際に、発電機10Aが軽負荷となるか否かの境界を表す。すなわち、グラフGr上において、運転点OPが、ラインy21よりも下方に位置する場合、その状態で自立運転制御モードに移行した際には、発電機10Aが軽負荷となる。ラインy22は、自立運転制御モードに移行した際に、発電機10Bが軽負荷となるか否かの境界を表す。すなわち、グラフGr上において、運転点OPが、ラインy22よりも下方に位置する場合、その状態で自立運転制御モードに移行した際には、発電機10Bが軽負荷となる。グラフGr上において、運転点OPが、ラインy21及びラインy22の双方よりも下方に位置する場合、その状態で自立運転制御モードに移行した際には、発電機10A及び発電機10Bの双方が軽負荷となる。以上のことから、ラインy21及びラインy22で規定される境界ラインy2は、発電機10A及び発電機10Bの少なくとも一方が軽負荷となるか否かの境界を表す。
【0116】
表示制御部66は、図15(a)に示されるように、境界ラインy1及び境界ラインy2を表示したうえで、運転許容範囲PAを表示してもよい。表示制御部66は、図15(b)に示されるように、境界ラインy1及び境界ラインy2を表示せずに、ラインy11、ラインy12、ラインy21、及びラインy22を表示したうえで、運転許容範囲PAを表示してもよい。
【0117】
図16には、発電機10A及び発電機10Bの双方に対して自立運転時にドループ制御が行われる場合に表示されるグラフGrの別の例が示されている。表示制御部66は、図12に示される例と同様に、境界ラインy1、境界ラインy2、境界ラインx5、及び境界ラインx6によって規定される運転許容範囲PAを表示してもよい。
【0118】
表示制御部66は、図15(a)、図15(b)、又は図16に示されるグラフGrにおいて、横軸に関して、発電機10Bの発電出力に代えて、発電機10Aの発電出力を用いて、運転許容範囲PAを表示してもよい。
【0119】
表示制御部66は、運転点OPを、グラフGrに表示しなくてもよい。この場合、オペレータは、発電機10Bの発電出力の現在値、及び重要負荷電力の現在値を把握したうえで、グラフGr上の運転許容範囲PAから得られる情報と比較することで、上述した対策が必要か否かを判断してもよい。表示制御部66は、上述した各種の例とは異なる演算方法によって、運転許容範囲PAを規定する境界ラインを演算してもよい。
【0120】
表示制御部66は、上記第1軸及び第2軸に加えて、発電機10Aからの発電出力に係る物理量(例えば、発電機10Aの発電出力自体)を表す第3軸を含む3次元のグラフを演算してもよい。この場合、表示制御部66は、モニタ52上において、発電機10Bの発電出力と重要負荷電力とからなる2次元グラフの表示と、発電機10Aの発電出力と重要負荷電力とからなる2次元グラフの表示と、を切り替え可能であってもよい。例えば、ユーザによって、表示の切り替えの指示を示すユーザ指示が監視装置50に入力されてもよい。それぞれの2次元グラフにおいて、対応する運転許容範囲PAが表示されてもよい。
【0121】
軸の切り替えに代えて、表示制御部66は、第3軸の複数段階の値(例えば、1000、2000、及び3000といった値)のそれぞれについて、第1軸及び第2軸からなる2次元グラフをモニタ52に表示可能であってもよい。表示制御部66は、モニタ52上に、第3軸の複数段階の値それぞれについての2次元グラフを一緒に表示してもよく、ユーザ入力に応じて、表示する2次元グラフを切り替え可能であってもよい。
【0122】
第1軸等を表す発電出力に係る物理量として、発電機の発電出力自体に代えて、発電出力との間に比例関係等の一定の対応関係を有する物理量が用いられてもよい。そのような発電出力に相関する物理量として、発電機に接続された原動機へ導入される燃料又は作動流体(例えば、蒸気等)の流路に設けられたバルブの開度が用いられてもよく、燃料の導入量、又は作動流体の流量が用いられてもよい。背圧タービンにおいては、排気蒸気量を用いてもよい。ドループ制御で用いられるドループ特性においても、発電出力に代えて、以上に例示した物理量が用いられてもよい。
【0123】
運転許容範囲PAを演算する際に、発電機10B(又は/及び発電機10A)における周波数を用いる場合において、制御装置12B以外の別の測定手段から、当該周波数が監視装置50に出力されてもよい。
【0124】
警告報知部68は、運転点OPが運転許容範囲PAから逸脱した場合に加えて、運転点OPが、運転許容範囲PA内に位置し、且つ、運転許容範囲PAを規定(区画)する各種境界ラインに所定量だけ近づいた場合にも、警告を報知してもよい。
【0125】
保護継電器22に代えて、監視装置50が、遮断器20に対してオン状態及びオフ状態の切り替えを指示する信号を出力可能であってもよい。発電システム1が、連系運転状態から自立運転状態に切り替わるように、遮断器20により電力系統200と2以上の発電機(例えば、発電機10A及び発電機10B)との間を遮断させることが可能であれば、どの部材が遮断器20の状態の切替を実行してもよい。
【0126】
以上に説明した種々の例のうちの1つの例において、他の例において説明した事項の少なくとも一部が組み合われてもよい。
【0127】
[本開示のまとめ]
以上に説明した発電システム(1)は、電力系統(200)に連系し、並列運転する2以上の発電機(10A,10B)と、電力系統(200)と2以上の発電機(10A,10B)との間が接続された連系運転状態と、電力系統(200)と2以上の発電機(10A,10B)との間が遮断された自立運転状態と、を切り替える遮断器(20)と、連系運転状態において、第1軸と第2軸とを含むグラフ(Gr)をモニタ(52)に表示する表示制御部(66)と、を備える。上記第1軸は、2以上の発電機(10A,10B)のいずれか1つの発電機である対象発電機(10B)の発電出力に係る物理量を表し、上記第2軸は、自立運転状態で2以上の発電機(10A,10B)から電力が供給される重要負荷(110)の消費電力を表す。表示制御部(66)は、グラフ(Gr)の上記第2軸において、自立運転状態に切り替えられた後での2以上の発電機(10A,10B)の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表す運転許容範囲(PA)を表示する。
【0128】
上述したように、連系運転状態から自立運転状態に移行すると、出力される電力の周波数を決定する要因が変化するために、当該周波数が変化し得る。周波数が変化すると、それに伴って、少なくとも1つの発電機からの出力が変化する。その結果、少なくとも1つの発電機の出力が、上記運転可能範囲から外れてしまう可能性がある。この可能性を減らすために、経験則による発電出力の調整、又は/及び負荷電力調整を行ったり、あるいは、尤度を有する運転状態を作ることが考えられる。しかしながら、この場合、不経済に大きな発電設備容量が必要になったり、不経済な運転状況になる可能性がある。また、別の方法として、自立運転状態に移行した後に重要度の低い負荷を瞬時負荷遮断する方法もあるが、予期しない設備停止による損害が発生する上、そもそも単なる瞬低を起因とした自立運転への移行が発生した場合は、瞬時負荷遮断された負荷機器は瞬低ではなく停電となり、被害を拡大させてしまうことになる。さらには、自立運転状態に移行した後では、重要負荷には電力の供給が継続されるために、対策を講じても間に合わない場合がある。
【0129】
これに対して、上記発電システム(1)では、連系運転状態、すなわち、自立運転状態に切り替えられる前において、自立運転状態に切り替えられた後での2以上の発電機(10A,10B)の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表す運転許容範囲(PA)が、モニタ(52)に表示される。そのため、オペレータ等は、モニタ(52)に表示された運転許容範囲(PA)から、今の状態で自立運転状態に移行すると、発電機の運転に問題が生じるか否かを判断又は把握することができる。そして、オペレータ等は、発電機の運転に問題が生じそうな場合には、自立運転状態に移行する前の段階で、その対策(例えば、ドループ特性の調節、又は/及び、重要負荷電力の調節)を行うことができる。従って、上記発電システム(1)は、自立運転時の安定運用を図ることが可能である。
【0130】
発電システム(1)によって得られる有用性について、より詳細な具体例を用いて説明すると下記のようなものが挙げられる。
・上記グラフ(Gr)により現在の運転状態と、運転許容範囲PAとの関係が分かることで、オペレータは、発電機の出力変更か、重要負荷電力の調整かの対応を選択することができる。
・運転許容範囲PAが明確化されることで、設備運用としては人の判断(負荷設備の状況に応じた調整)が介在しつつも、経験及び尤度に頼らずに発電設備容量を最大限活用することができる。
・自立運転状態に移行した後に、発電機(発電機を含む発電装置)が過負荷となる可能性を減らすことができる。
・発電設備を新設する場合に、上記発電システム(1)を採用することを織り込むことで、設備容量の尤度を削減し、経済的な容量を有する設備を新設することができる。
・再生可能エネルギーの導入により、系統周波数が不安定になってきている昨今、系統周波数と自立運転時の周波数との差が大きくなってしまう可能性がある。この場合、自立運転時にドループ制御が行われる発電機(10B)の発電出力が大きく変動してしまうが、上記発電システム(1)で出力を予測することで、このような変動が起きる場合でも、安定して自立運転を行うことができる。
【0131】
表示制御部(66)は、2以上の発電機(10A,10B)の少なくとも1つの運転状況に応じて、運転許容範囲(PA)が経時的に変化するように、グラフ(Gr)をモニタ(52)に表示してもよい。この場合、オペレータは、2以上の発電機を含むシステムの実際の状況に応じた運転許容範囲PAを把握できる。
【0132】
発電システム(1)は、2以上の発電機(10A,10B)のうちのいずれかの1つの発電機(10A)を制御する発電制御部(12A)から、上記運転状況の少なくとも一部として、当該発電機(10A)における回転速度又は周波数を取得する運転状況取得部(62)を更に備えてもよい。表示制御部(66)は、運転状況取得部(62)が取得した回転速度又は周波数に応じて、運転許容範囲(PA)が経時的に変化するように、グラフ(Gr)をモニタ(52)に表示してもよい。この場合、発電制御部(12A)が認識している回転速度又は周波数が運転許容範囲PAに反映されるので(例えば、制御装置12Aが認識している定格周波数との差が運転許容範囲PAに反映されるので)、運転許容範囲PAを精度良く演算することができる。
【0133】
表示制御部(66)は、グラフ(Gr)内において、重要負荷(110)の消費電力の現在値と、上記物理量の現在値とを含む運転点(OP)を運転許容範囲(PA)と共に表示してもよい。この場合、運転許容範囲PAと運転点OPとが共に表示されることで、オペレータ等は、その表示内容から、容易に対策が必要か否かを判断することができる。
【0134】
発電システム(1)は、運転点(OP)と運転許容範囲(PA)との比較結果に基づいて、ユーザへ警告を報知する警告報知部(68)を更に備えてもよい。この場合、ユーザとしてのオペレータ等に警告が報知されるので、より確実に、対策が必要なことをオペレータに認識させることができる。
【0135】
運転許容範囲(PA)の一部は、2以上の発電機(10A,10B)の少なくとも1つが、過負荷となるか否かの境界を表す第1境界ライン(y1)によって規定されてもよい。この場合、運転許容範囲PAと、第1軸及び第2軸の現在値との関係を把握して、事前に対策を行うことで、自立運転モードへ移行した際に発電機が過負荷となる可能性を低減できる。
【0136】
運転許容範囲(PA)の一部は、2以上の発電機(10A,10B)の少なくとも1つが、軽負荷となるか否かの境界を表す第2境界ライン(y2)によって規定されてもよい。この場合、運転許容範囲PAと、第1軸及び第2軸の現在値との関係を把握して、事前に対策を行うことで、自立運転モードへ移行した際に発電機が軽負荷となる可能性を低減できる。
【0137】
上記第1軸は、発電機(10B)の発電出力を表してもよい。運転許容範囲(PA)は、グラフ(Gr)の上記第1軸及び上記第2軸の双方において、自立運転状態に切り替えられた後での2以上の発電機(10A,10B)の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表してもよい。運転許容範囲(PA)のうち上記第1軸に関する範囲は、対象発電機(10B)が発電可能な最小の出力を表す第3境界ライン(x5)と、対象発電機(10B)が発電可能な最大の出力を表す第4境界ライン(x6)との少なくとも一方によって規定されてもよい。この場合、オペレータ等は、運転許容範囲PAと、対象発電機(10B)の発電出力の現在値とから、対象発電機(10B)の発電出力の現在値と、発電可能な最小出力及び最大出力の少なくとも一方との関係を容易に把握することができる。
【0138】
2以上の発電機(10A,10B)は、第1発電機(10A)と、第2発電機(10B)と、を含んでもよい。発電システム(1)は、自立運転状態において、アイソクロナス特性に従って、第1発電機(10A)を制御する第1発電制御部(12A)と、自立運転状態において、ドループ特性に従って、第2発電機(10B)を制御する第2発電制御部(12B)と、を更に備えてもよい。この場合、上述したように、自立運転状態に移行した際に、発電機(10A)が過負荷又は軽負荷となる可能性があるが、運転許容範囲(PA)を表示することで、そのような可能性を回避することをオペレータ等に促すことができる。
【0139】
2以上の発電機(10A,10B)は、第1発電機(10A)と、第2発電機(10B)と、を含んでもよい。発電システム(1)は、自立運転状態において、ドループ特性に従って、第1発電機(10A)を制御する第1発電制御部(12A)と、自立運転状態において、ドループ特性に従って、第2発電機(10B)を制御する第2発電制御部(12B)と、を更に備えてもよい。この場合、上述したように、自立運転状態に移行した際に、2以上の発電機の少なくとも1つが過負荷又は軽負荷となる可能性があるが、運転許容範囲(PA)を表示することで、そのような可能性を回避することをオペレータ等に促すことができる。
【0140】
以上に説明した監視装置(50)は、電力系統(200)に連系し、並列運転する2以上の発電機(10A,10B)と、電力系統(200)と2以上の発電機(10A,10B)との間が接続された連系運転状態と、電力系統(200)と2以上の発電機(10A,10B)との間が遮断された自立運転状態と、を切り替える遮断器(20)と、を備える発電システム(1)に設けられる装置である。監視装置(50)は、連系運転状態において、第1軸と第2軸とを含むグラフ(Gr)をモニタ(52)に表示する表示制御部(66)を備える。上記第1軸は、2以上の発電機(10A,10B)のいずれか1つの発電機である対象発電機(10B)の発電出力に係る物理量を表し、上記第2軸は、自立運転状態で2以上の発電機(10A,10B)から電力が供給される重要負荷(110)の消費電力を表す。表示制御部(66)は、グラフ(Gr)の上記第2軸において、自立運転状態に切り替えられた後での2以上の発電機(10A,10B)の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表す運転許容範囲(PA)を表示する。この発電装置(50)は、上記発電システム(1)と同様に運転許容範囲(PA)が表示されるので、自立運転時の安定運用を図ることが可能である。
【0141】
以上に説明した監視方法は、電力系統(200)に連系し、並列運転する2以上の発電機(10A,10B)と、電力系統(200)と2以上の発電機(10A,10B)との間が接続された連系運転状態と、電力系統(200)と2以上の発電機(10A,10B)との間が遮断された自立運転状態と、を切り替える遮断器(20)と、を備える発電システム(1)の監視方法である。この監視方法は、連系運転状態において、第1軸と第2軸とを含むグラフ(Gr)をモニタ(52)に表示する表示工程を含む。上記第1軸は、2以上の発電機(10A,10B)のいずれか1つの発電機である対象発電機(10B)の発電出力に係る物理量を表し、上記第2軸は、自立運転状態で2以上の発電機(10A,10B)から電力が供給される重要負荷(110)の消費電力を表す。上記表示工程では、グラフ(Gr)の上記第2軸において、自立運転状態に切り替えられた後での2以上の発電機(10A,10B)の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表す運転許容範囲(PA)を表示する。この監視方法は、上記発電システム(1)と同様に運転許容範囲(PA)が表示されるので、自立運転時の安定運用を図ることが可能である。
【符号の説明】
【0142】
1…発電システム、10A,10B…発電機、12A,12B…制御装置、20…遮断器、22…保護継電器、50…監視装置、52…モニタ、62…運転状況取得部、66…表示制御部、68…警告報知部、Gr…グラフ、PA…運転許容範囲、OP…運転点、y1,y2,y3,x5,x6…境界ライン、110…重要負荷、200…電力系統。
【要約】
【課題】自立運転時の安定運用を図る。
【解決手段】電力系統に連系し、連系運転状態と自立運転状態とを切り替える遮断器と、前記連系運転状態において、第1軸と第2軸とを含むグラフをモニタに表示する表示制御部と、を備え、前記第1軸は、前記2以上の発電機のいずれか1つの発電機の発電出力に係る物理量を表し、前記第2軸は、前記自立運転状態で前記2以上の発電機から電力が供給される重要負荷の消費電力を表し、前記表示制御部は、前記グラフの前記第2軸において、前記自立運転状態に切り替えられた後での前記2以上の発電機の運転に支障をきたさないと想定される範囲を表す運転許容範囲を表示する、発電システム。
【選択図】図8
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