IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オーレッドワークス エルエルシーの特許一覧 ▶ フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァー フェーデルング デア アンゲバンテン フォルシュング エー ファーの特許一覧

特許7555517低電圧シリコンバックプレーンを有する積層型OLEDマイクロディスプレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】低電圧シリコンバックプレーンを有する積層型OLEDマイクロディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
G09F9/30 338
G09F9/30 365
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024124276
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2021549818の分割
【原出願日】2021-01-26
【審査請求日】2024-07-31
(31)【優先権主張番号】62/966,757
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/054,387
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315010824
【氏名又は名称】オーレッドワークス エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】598080163
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト ツァー フェーデルング デア アンゲバンテン フォルシュング エー ファー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイマー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スピンドラー ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】コンダコワ マリナ
(72)【発明者】
【氏名】リヒター ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ワルテンベルク フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】バンク ゲルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーゲル ウーベ
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168803(JP,A)
【文献】特表2009-506513(JP,A)
【文献】特表2004-517363(JP,A)
【文献】特開2019-020677(JP,A)
【文献】特開2018-088417(JP,A)
【文献】特開2006-332323(JP,A)
【文献】特開2004-302289(JP,A)
【文献】特開2019-200435(JP,A)
【文献】特表2008-511100(JP,A)
【文献】特表2015-506092(JP,A)
【文献】特開2004-039617(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021159(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/064866(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0304386(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0247591(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/317107(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108335672(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101621198(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0051542(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-9/46
G02F 1/13-1/141
1/15-1/19
H05B 33/00-33/28
44/00
45/60
H10K 50/00-99/00
G09G 1/00-5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別にアドレス指定可能な画素および制御回路を有するシリコンベースのバックプレーンの上に発光OLEDスタックを備えるマイクロディスプレイであって、
前記発光OLEDスタックが、上部電極と下部電極との間に3つ以上のOLEDユニットを有し、
前記シリコンベースのバックプレーンの前記制御回路が、個別にアドレス指定可能な画素ごとに、外部電源VDDと前記発光OLEDスタックの前記下部電極との間にチャネルが直列で接続されている少なくとも2つのトランジスタを備え、
前記外部電源VDDに最も近いトランジスタは、駆動トランジスタであり、5V以下の定格であり、前記発光OLEDスタックの前記下部電極に最も近いトランジスタは、スイッチトランジスタであり、5V超の定格であることを特徴とする、マイクロディスプレイ。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロディスプレイであって、前記発光OLEDスタックのVthが、少なくとも7.5V以上であることを特徴とするマイクロディスプレイ。
【請求項3】
請求項1に記載のマイクロディスプレイであって、前記発光OLEDスタックのVthが、少なくとも10V以上であることを特徴とするマイクロディスプレイ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロディスプレイであって、前記発光OLEDスタックが、4つ以上のOLEDユニットを備えることを特徴とするマイクロディスプレイ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のマイクロディスプレイであって、前記OLEDユニットが各々、電荷発生層(CGL)によって互いから分離されることを特徴とするマイクロディスプレイ。
【請求項6】
請求項5に記載のマイクロディスプレイであって、前記下部電極が、セグメント化され、各セグメントが、前記バックプレーン内の前記制御回路と電気接触状態にあることを特徴とするマイクロディスプレイ。
【請求項7】
請求項6に記載のマイクロディスプレイであって、前記発光OLEDスタックが、上面発光であることを特徴とするマイクロディスプレイ。
【請求項8】
請求項7に記載のマイクロディスプレイであって、前記発光OLEDスタックは、セグメント化された前記下部電極と前記上部電極との間の物理的距離がすべての画素にわたって一定であるマイクロキャビティを形成することを特徴とするマイクロディスプレイ。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロディスプレイであって、チャネルが直列で接続されている前記2つのトランジスタが共に、pチャネルトランジスタであることを特徴とするマイクロディスプレイ。
【請求項10】
請求項9に記載のマイクロディスプレイであって、チャネルが直列で接続されている前記2つのトランジスタが各々、別個のウェル内に位置することを特徴とするマイクロディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低電圧シリコンバックプレーンを有する積層型OLEDマイクロディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、“STACKED OLED MICRODISPLAY WITH LOW-VOLTAGE SILICON BACKPLANE”という表題のついた、代理人整理番号OLWK-0021-USPで2020年1月28日に出願された米国仮出願第62/966,757号、ならびに“STACKED OLED MICRODISPLAY WITH LOW-VOLTAGE SILICON BACKPLANE”という表題のついた、代理人整理番号OLWK-0021-USP2で2020年7月21日に出願された米国仮出願第63/054387号に対する優先権を主張するものである。
【0003】
典型的には、マイクロディスプレイは、対角線が0.25インチ未満の超小型ディスプレイサイズに至るまで、対角線が2インチ(およそ5cm)未満である。大半の場合、マイクロディスプレイの解像度は高く、画素ピッチは、通常、5~15ミクロンである。初めて市販されたのは1990年代後半であり、それらは、背面投影TV、ヘッドマウント式ディスプレイ、およびデジタルカメラファインダに一般に使用される。近年では、スマートウォッチなどのデバイスが、これらのディスプレイの高解像度および低電力消費を活用している。マイクロディスプレイは、世界市場が今後数年で20%の複合年間成長率に上り、急速に成長することが予期される。この成長を推進する傾向のうちの1つは、ヘッドマウント式ディスプレイ(HMD)、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、および電子ファインダ(EVF)などの、ニアアイディスプレイ、拡張現実デバイス、および仮想現実デバイスの採用の増加である。
【0004】
マイクロディスプレイの主なカテゴリは2つある。1つ目は、表面上に投影される高度に拡大された画像を伴う、投影マイクロディスプレイである。投影マイクロディスプレイのタイプとしては、背面投影TVおよび小型データプロジェクタが挙げられる。2つ目は、アイピース(仮想現実ヘッドセットまたはカムコーダファインダなど)を通して見られる高度に拡大された虚像からなる、ニアアイディスプレイ(NED)である。これらのディスプレイは、特に軍事および医療産業において、HMDおよびHUDにますます使用されている。
【0005】
両方のタイプのマイクロディスプレイが、フラットパネルLCDなどの従来の直視ディスプレイに勝る大きな利点を提供する。マイクロディスプレイの利点としては、超小型の軽量ソースディスプレイユニットから大きい画像を生成して、ウェアラブルなどのスペースに制限のある技術へそれらを容易に統合させる能力、高解像度および明瞭性をもたらす大画素容量、ならびに他のディスプレイタイプと比較してより大きい電力効率が挙げられる。解像度および明度が高いほど、ならびに電力消費が低いほど、マイクロディスプレイの品質は優れている。しかしながら、マイクロディスプレイ製造業者の課題は、高明度およびコントラストならびに長い稼働寿命の必要性と共に、比較的高い生産費用であった。
【0006】
マイクロディスプレイは、エルコス(LCoS:Liquid Crystal-On-Silicon)、液晶ディスプレイ(LCD)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、デジタルライトプロセッシング(DLP)、ならびに、より最近では、マイクロLED(発光ダイオード)および有機発光ダイオード(OLED)を含む、様々なディスプレイ技術から作製され得る。
【0007】
LCDは、近年、マイクロディスプレイ市場を占有してきた。LCD技術は、高い明度、比較的低い費用、および比較的単純な製造プロセスを提供する。LCDを使用することにより、デバイス製造業者は、徐々にマイクロディスプレイ部品のサイズを低減することができている。LCDディスプレイは、現在、一部のHMD、HUD、EVF、ならびにサーマルイメージンググラスおよびウェアラブルに使用されている。しかしながら、LCDマイクロディスプレイは、光を変調するために液晶アレイと一緒に画像を作成するために、光源またはバックライトを必要とする。この技術は、偏光、色空間、最大輝度限界、LC温度感受性、視野角、LCD透過および消光比、システム制限された寸法および他など、制限を有し、これにより、所望の性能特性のすべてを提供することができない。
【0008】
マイクロLED技術に基づいたマイクロディスプレイは、自己発光、より大きい色域、広い視野角、より良好なコントラスト、より速いリフレッシュレート、より低い電力消費(画像依存)、および広い動作温度範囲など、LCDマイクロディスプレイに勝る利点を提供し得る。現在、マイクロLEDマイクロディスプレイは、標準LEDから採用される標準窒化ガリウム(GaN)ウェハに基づく。この手法は、比較的低価格で、寿命問題なしに高輝度ディスプレイデバイスを提供する可能性を有する。一般に、標準GaNウェハは、マイクロLEDのアレイへとパターン化される。その後、マイクロLEDディスプレイが、マイクロLEDアレイおよびトランジスタの統合により生産される。しかしながら、この手法は、トランジスタ上でのマイクロLEDのモノリシック形成、画素間隔、色生成、ならびに個々のマイクロLED間の色および輝度の変動に起因する空間的均一性を含む、いくつかの製造上の懸念を有する。
【0009】
OLED技術は、マイクロディスプレイのためのマイクロLED技術の魅力的特徴の多くを共有する。それは、自己発光性であり、優れた画像品質を有し、LCDまたはLCoSと比較して非常に効率が良く、極めて高い色再現および広い色空間を有する。自己発光性OLEDデバイスは、各画素が画像によって必要とされる強度だけをもたらすという点で、バックライトデバイス(LCDなど)に勝る重要な利点を有する一方、バックライト付きの画素は、最大強度をもたらし、望ましくない光の吸収がそれに続く。さらには、トランジスタの上へのOLEDの形成は、OLED層が、真空蒸着され得るか、またはトランジスタバックプレーン上に直接被覆されることから、マイクロLEDの形成よりもはるかに容易かつ低費用である。その一方で、OLEDは、制限された輝度および寿命を有する。
【0010】
サンプルホールド型ディスプレイであるOLEDマイクロディスプレイ内の制御回路が、モーションブラーの問題に対処することも重要である(2018年12月28日付のhttps://www.blurbusters.com/faq/oled-motion-blur/、“Why Do Some OLEDs Have Motion Blur?”、および2015年1月15日付の、https://www.soundandvision.com/content/motion-resolution-issue-oled-tvs、“Is Motion Resolution an Issue with OLED TVs”を参照のこと)。
【0011】
サンプルホールドによって引き起こされるモーションブラーを低減する唯一の方法は、フレームが表示される時間量を短くすることである。これは、追加のリフレッシュ(より高いHz)を使用することによって、またはリフレッシュ間の黒色期間(フリッカ)により達成され得る。OLEDマイクロディスプレイの場合、最良のソリューションは、アクティブ領域全体を同時にオフにすること、または表示画像の一部のみが順番に一度にオフにされる「ローリング」技法のいずれかによって、表示画像を「シャッタ」することである。「ローリング」技法が好ましい。画素がオフにされる時間は、非常に短く、知覚できるフリッカを回避するために人間の眼による検出能の閾値をはるかに下回る。これは、選択線を通じて活性化されるとき、電流がOLEDに流れることを防ぎ、所望の時間期間の間OLED画素による発光を「オフ」にするシャッタトランジスタの包含によって、制御回路内で達成される。言い換えると、シャッタトランジスタは、画素を「オン」または「オフ」にするだけであり、電圧または電流を規制しないという点で、スイッチトランジスタである。しかしながら、画像が表示される時間(通常、フレーム時間と称される)の一部にわたって画素がオフにされるというこのソリューションは、眼で知覚されるのは、フレームにわたる平均輝度であることから、画素が「オン」であるときにはいつでも、OLEDによる増大した輝度の必要性を増加させるだけである。モーションブラーを低減するためのシャッタは、OLEDスタックに電力を供給する任意の方法、例えば、電流制御またはPWM、に適用され得る。
【0012】
シリコンバックプレーンを利用したOLEDマイクロディスプレイは、費用および製造可能性の観点から非常に魅力的である。例えば、Aliら、“Recent advances in small molecule OLED-on-Silicon microdisplays”、Proc.of SPIE Vol.7415 74150Q-1,2006;Jangら、J.Information Display,20(1),1-8(2019);Fujiiら、“4032ppi High-Resolution OLED Microdisplay”、SID 2018 DIGEST,p.613;米国特許第2019/0259337号、Prache、Displays、22(2),49(2001);Vogelら、2018 48th European Solid-State Device Research Conference,p.90,Sept.2018;およびWartenbergら、“High Frame-Rate 1”WUXGA OLED Microdisplay and Advanced Free-Form Optics for Ultra-Compact VR Headsets”、SID Proceedings,49(1),Paper 40-5,514(2018)を参照されたい。
【0013】
マイクロディスプレイは、明るい陽射しの中の屋外など、すべての環境条件下で有用であるために、超高輝度を必要とする。VRゴーグルなどの制御された環境条件下でさえ、超高輝度が、没入型の視覚体験を作り出すために必要とされる。ディスプレイからの超高輝度は、より小さく、より軽量で、低価格である、より効率性の低い光学素子の使用を可能にし、より競争力のあるヘッドセットをもたらす。現在、先行技術のOLEDマイクロディスプレイは、望むだけの輝度を提供しない。
【0014】
例えば、直列OLEDマイクロディスプレイの1つの製造業者によるプレスリリースは、2.5kニト(nit)ほどを送達することが可能であり得るフルカラー製品について説明するが、5kニトがより望ましい目標であることを認めている(2020年1月7日付の、https://www.kopin.com/kopin-to-showcase-latest-advances-in-its-lightning-oled-microdisplay-line-up-at-ces-2020/を参照のこと)。一部の製造業者は、目標は10kニト以上とすべきであることを提案している(2018年7月26日付の、https://hdguru.com/calibration-expert-is-10000-nits-of-brightness-enough/を参照のこと)。2020年6月20日の最近のプレスリリース(https://www.businesswire.com/news/home/20200630005205/en/Kopin-Announces-Breakthrough-ColorMax%E2%84%A2-Technology-Unparalleled-Color)は、>1000ニトを発光する直列(2スタック)OLEDディスプレイについて説明する。それはまた、「明度(>2000ニト)および色忠実度のさらなる改善が、OLED蒸着条件の最適化を通じて期待される。出力結合効率を強化するための構造体を組み込むことにより、OLEDマイクロディスプレイの明度は、数年以内に>5000ニトまで増大され得る。」と公表している。
【0015】
OLEDデバイスから放出される光の総量を増大させるための1つのソリューションは、複数のOLEDユニットを互いの上に積層することであるため、スタックから放出される合計の光は、各々個々のユニットによって放出される光の総和である。しかしながら、そのようなOLEDスタックから放出される合計の光が、個々のOLED発光ユニットの合計数に基づいて加算的である一方、OLEDスタックを駆動するのに必要とされる電圧もまた、各々独立したOLEDユニットを駆動するための電圧に基づいて加算的である。例えば、発光OLEDユニットが所与の電流で250ニトを生成するために3Vを必要とする場合、2つのそのようなユニットのスタックは、同じ電流で500ニトを送達するために6Vを必要とし、3つのユニットのスタックは、750ニトを送達するために9Vを必要とする、というようになる。
【0016】
OLEDスタックは、周知であり、例えば、米国特許第7273663号、米国特許第9379346号、米国特許第9741957号、米国特許第9281487号、および米国特許出願公開第2020/0013978号はすべて、発光OLEDユニットの複数のスタックを有するOLEDスタックであって、各々が中間接続層または電荷発生層によって分離される、OLEDスタックについて説明する。Springerら、Optics Express,24(24),28131(2016)は、2つおよび3つの発光ユニットを有するOLEDスタックであって、各ユニットが異なる色を有する、OLEDスタックについて報告する。最大6つの発光ユニットのOLEDスタックが報告されている(Spindlerら、“High Brightness OLED Lighting”、SID Display Week 2016,San Francisco CA,May23-27,2016)。
【0017】
しかしながら、より高い駆動電圧を必要とするマルチスタックOLEDのこの手法は、マイクロディスプレイ応用において適用するのが困難である。問題は、マイクロディスプレイも高解像度を有することを必要とすることであり、個々の画素のサイズができる限り小さくなければならないこと、およびマイクロディスプレイのアクティブ(発光)領域ができる限り多くの画素を含むことを要求する。これは、バックプレーンの制御回路内のトランジスタが小さく、しかし依然として、永久的な損傷または電流漏出なしに必要な電圧および電流を取り扱うのに十分なサイズのものであることを必要とする。
【0018】
通常、トランジスタは小さくなるほど、それらは、漏れ電流および他の故障機構が理由で高い電力を取り扱うことができないことに起因して、より低い定格電圧を有する。より小さく、より低い電圧のトランジスタは、ゲートにおいてより薄い絶縁層を有するため、それらは、より静的な漏れ電流も同様に有する。この理由のため、より高い電圧を取り扱うことができるより大きいトランジスタが、一般的に、より高い電圧を必要とするOLEDデバイスのために使用される。国際特許第WO2008/057372号公報は、マイクロディスプレイにおける画素回路サイズの低減と関連付けられた問題および先行技術について論じる。また、例えば、O.Prache、Journal of the Society for Information Display,10(2),133(2002)、O. Prache;“OLED Microdisplays,Displays,22,49-56(2001)を参照されたく、また、Howardら、“Microdisplays based upon organic light emitting diodes”,IBM J.of Res.& Dev.,45(1),15(2001)は、低電圧において大きいコントラスト比で高輝度をもたらすシリコンバックプレーン上のマイクロディスプレイの必要性を論じる。
【0019】
さらには、VDDにおける電源からVCATHODEにおけるカソード電圧を有するOLEDへ定電流を提供するためにMOSFET pチャネルトランジスタを使用するとき、全電圧は、トランジスタに電力供給し、OLEDを高明度へ「オン」にするために、大きくなければならない。しかしながら、低電圧pチャネルトランジスタが12V OLEDを制御するために使用された場合、黒色画素を作成するためにOLEDをオフにしようとするとき、トランジスタを通じた漏れ電流が高くなり、OLEDは、(Vanode-Vcathode)がOLED閾値電圧よりも高いままであるため、発光し続ける。OLEDマイクロディスプレイにおいて、駆動トランジスタを通じた漏れ電流は、OLEDマイクロディスプレイが暗いままでなければならないときにOLED画素が光を放出し続けるため、コントラストを低減することになる。この効果は、純粋な黒色(発光なし)をグレーにさせ、純粋な黒色と純粋な白色との間の階調の等級を減少させることになる。これは望ましくない。
【0020】
高輝度を有する、および発光のために高電圧要件を有するOLEDスタックを利用することによって、シリコンバックプレーン上のOLEDマイクロディスプレイの性能を増大させる必要性がある。しかしながら、シリコンバックプレーン上の制御回路は、OLEDのアクティブ領域内の解像度および画素ピッチを維持するために、サイズを著しく増加させることなく、増大した電圧および電流需要を取り扱うことができなければならない。特に、制御回路は、TFTを通じた漏れ電流を防ぐまたは最小限にすることによって、コントラストを維持しなければならない。コントラストは、画素が「オフ」、「黒色」、または非発光(典型的には、画像信号コード値(CV:Code Value)=0)でなければならないときと、画素が完全に「オン」、「白色」、または最大発光(典型的には、画像信号CV=255)でなければならないときとの、発光の差である。
【0021】
5V以下の動作範囲を有するアナログトランジスタが標準「低電圧」(LV)トランジスタと見なされるのは、バックプレーンを製造する半導体製造業界においては一般的である。通常、定格電圧に対して10%安全性限界が存在することも一般的であり、最大5.5Vまで「5Vトランジスタ」の寿命の劣化なしに信頼性の高い動作を可能にし、これは、OLED動的電圧範囲内のある程度の過電圧および駆動回路オーバーヘッド電圧を可能にするほど十分に高い。電圧限界は、通常、トランジスタ(ゲート、ソース、ドレイン、ボディ(バルクまたはウェルとも呼ばれる))に対する任意の接点対の間に適用するが、それは特に、トランジスタの性能がこれらの条件下で典型的には43,000動作時間にわたって指定の範囲内に留まるように、最大ゲート-ドレイン電圧に適用する。時として、トランジスタの設計に応じて、別の接点対のための電圧限界は、より高い(例えば、7V)ことがあるが、このトランジスタは、依然としてLVまたは5Vトランジスタと称される。5Vアナログトランジスタは、集積回路(IC)チップ間の通信のためのレガシーTTL論理電圧レベルとのその互換性が理由で、業界にわたって広く提供されている。入力-出力通信のための電圧(例えば、3.3Vおよび1.8V規格)における下降傾向に伴って、これらの5Vトランジスタは、場合によっては、中電圧(MV)トランジスタとも称され、LVラベルをより新しい「より低い電圧」アナログトランジスタへと移行する。LVおよびMVのような相対的なラベルは、時間と共に変化し得るが、この特許出願においては、用語LVまたは「低電圧」は、5V以下の定格トランジスタを指し、用語MVまたは「中電圧」は、5Vを上回る定格電圧を有するトランジスタを指す。より高電圧のアナログトランジスタも一般的には利用可能であるが、正確な電圧が、5VトランジスタとしてIC製作業界にわたって規格化されているわけではない。例えば、より高電圧のトランジスタは、多くの場合、自動車などの業界に必要とされる。
【0022】
現在、発光のために直列(1つのCGLによって分離される2つの発光OLEDユニット)OLEDスタックを使用する、低電圧5V駆動トランジスタを有するシリコンバックプレーンが利用可能である。例えば、Choら、Journal of Information Display,20(4),249-255,2019;2018年に公開された、https://www.ravepubs.com/oled-silicon-come-new-joint-venture/;Xiao、“Recent Developments in Tandem White Organic Light-Emitting Diodes”、Molecules,24,151(2019)を参照されたい。そのような例は、技術の要求に対して、輝度が不十分である。
【0023】
Hanら、“Advanced Technologies for Large-Sized OLED Displays”,Chapter 3,10.5772/intechopen.74869(2018)。このレビュー記事は、3スタック白色OLED配合組成の進歩、ならびに、2つの直列接続されたトランジスタを有するものを含むバックプレーン技術について説明するが、別々であり組み合わせではない。この参考文献はまた、そのような2つのトランジスタバックプレーンが、「大きい回線負荷および短い充電時間が理由で、大型の高解像度パネルにおいて採用するのは困難である」と記しており、そのため、それらのデバイスのために異なる種類のバックプレーン回路を採用する。
【0024】
Liuら、J.Cent.South Univ.,19,1276-1282(2012)は、Siチップマイクロディスプレイ上のOLED内の2つの直列接続されたpチャネルトランジスタを有する3T1C回路を開示する。
Zengら、“A Novel Pixel Circuit with Threshold Voltage Variation Compensation in Three-Dimensional AMOLED on Silicon Microdisplays”,P-27,SID 2019 Digest,p.1313は、シリコンバックプレーン上のAMOLEDディスプレイを駆動するための4T1C画素回路について説明する。それは、電源とOLEDとの間に直列で接続される2つのpチャネル低電圧トランジスタの使用を開示する。第1のトランジスタは、OLEDを駆動するためのものであり、OLEDに供給される電流を制御する。第2のトランジスタは、プログラム動作中にOLEDをオフにするためのスイッチトランジスタである。上記回路は、Vth変動を決定および補償するために追加のトランジスタも含む。
【0025】
米国特許第9,066,379号は、OLEDマイクロディスプレイに好適な制御回路について説明する。それは、電源とOLEDとの間に直列で接続される2つのpチャネル低電圧トランジスタの使用を開示する。第1のトランジスタは、OLEDを駆動するためのものであり、OLEDに供給される電流を制御する。第2のトランジスタは、OLEDをシャッタする(オフにする)ためのスイッチトランジスタである。この回路はまた、スイッチトランジスタとOLEDとの間に、中または高電圧pチャネルトランジスタである第3のトランジスタを必要とする。この第3のトランジスタの目的は、(Vss-Vcathode)がOLEDの「オフ」期間中にOLED閾値電圧よりも大きいときにはいつでもOLEDへの電流を防止することであると思われる。
【0026】
Pashminehら、“High-voltage circuits for power management on 65nm CMOS”,Adv.Radio Sci.,13,109-120,2015は、直列接続された(一般的には「積層」トランジスタとも呼ばれる)積層型低電圧CMOSトランジスタに基づく高電圧回路について説明する。
【0027】
Dawsonら、“The Impact of the Transient Response of Organic Light Emitting Diodes on the Design of Active Matrix OLED Displays”,International Electronic Devices Mtg 1998,875-878は、2つの直列接続されたpチャネルトランジスタを有する画素回路について説明する。
【0028】
Kwakら、“Organic Light Emitting Diode-on-Silicon Pixel Circuit Using the Source Follower Structure with Active Load for Microdisplays”,Japanese Journal of Applied Physics,50,03CC05(2011)は、3つの直列接続されたpチャネルトランジスタを有する画素回路、および過電圧保護回路について説明する。この参考文献は、「過電圧保護回路」が金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の故障を防ぐために必要とされ、これは、OLEDの動作電圧がMOSFETのものよりも高いためであると記載する。U5760477および米国特許第9066379号もまた、保護回路の使用について説明する。
【0029】
Vogelら、SID 2017 DIGEST,Article 77-1,pp 1125-1128は、OLED電圧動作範囲を延長するための低電圧OLED Siマイクロディスプレイ内の保護回路の使用を開示する。
【0030】
OLEDSのための過電圧保護を含む他の参考文献は、米国特許第6580657号、国際特許第WO2009072205号公報、および中国特許第200488960号に開示される。米国特許第9059123号、米国特許第9299817号、米国特許第9489886号、米国特許第20080316659号、および米国特許第20200202793号は、OLEDディスプレイの画素制御回路内のバイポーラ接合トランジスタなどのn-p接合ダイオードの使用を開示する。
【0031】
2つの直列接続されたトランジスタを開示する追加の特許参考文献としては、中国特許第109166525号、米国特許第20140125717号、米国特許第7196682号、米国特許第6229506号、米国特許第9262960号、米国特許第7443367号、米国特許第6930680号、米国特許第10614758号、国際特許第WO2019019590号公報、米国特許第6946801号、米国特許第7755585号、米国特許第8547372号、米国特許第8786591号、米国特許第8797314号、米国特許第9818344号、米国特許第2018/0211592号、および米国特許第10269296号が挙げられる。以下の参考文献は、3つの直列接続されたトランジスタを有する画素回路を開示する:米国特許第9324266号、米国特許第9384692号、米国特許第10600366号、米国特許第7180486号、米国特許第9858863号、および米国特許第20190279567号。
【0032】
米国特許第9059123および米国特許第9489886は、OLEDディスプレイの画素制御回路内のバイポーラ接合トランジスタなどのn-p接合ダイオードの使用を開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0033】
個別にアドレス指定可能な画素および制御回路を有するシリコンベースのバックプレーンの上に発光OLEDスタックを備えるマイクロディスプレイであって、発光OLEDスタックが、上部電極と下部電極との間に3つ以上のOLEDユニットを有し、シリコンベースのバックプレーンの制御回路が、個別にアドレス指定可能な画素ごとに、外部電源VDDとOLEDスタックの下部電極との間にチャネルが直列で接続されている少なくとも2つのトランジスタを備える、マイクロディスプレイについて説明される。
【0034】
上記のようなマイクロディスプレイであって、発光OLEDスタックの閾値電圧Vthが、少なくとも7.5V以上、または好ましくは、少なくとも10V以上である。
【0035】
上記のマイクロディスプレイのいずれかであって、OLEDスタックが、4つ以上のOLED発光ユニットを備える。
【0036】
上記のマイクロディスプレイのいずれかであって、OLED発光ユニットが各々、電荷発生層(CGL)によって互いから分離されるか、または、下部電極がセグメント化され、各セグメントがバックプレーン内の制御回路と電気接触状態にあるか、または、OLEDスタックが上面発光である。
【0037】
上記のマイクロディスプレイのいずれかであって、OLEDスタックは、セグメント化された下部電極と上部電極との間の物理的距離がすべての画素にわたって一定であるマイクロキャビティを形成する。
【0038】
上記のマイクロディスプレイのいずれかであって、チャネルが直列で接続されているトランジスタが共に、5V以下で定格されるか、または、電源に最も近いトランジスタが、駆動トランジスタであり、5V以下で定格され、OLEDの下部電極に最も近いトランジスタが、スイッチトランジスタであり、5V超で定格される。
【0039】
上記のマイクロディスプレイのいずれかであって、チャネルが直列で接続されている2つのトランジスタが共に、pチャネルトランジスタであるか、または、チャネルが直列で接続されている2つのトランジスタが各々、別個のウェルに位置する。
【0040】
上記のマイクロディスプレイのいずれかであって、制御回路が、追加的に、pチャネルトランジスタまたはダイオードを有する保護回路を備える。保護回路は、p-nダイオードを備え得、p-n接合ダイオードの陰極が、OLEDスタックの下部電極のノードに接続され、陽極が、電圧基準VREFまたは電流基準IREFに接続される。
【0041】
上記の保護回路であって、ダイオードがバイポーラ接合トランジスタである。バイポーラ接合トランジスタは、ベースが電圧源VPROTECTまたは電流源IPROTECTのいずれかに接続され、エミッタがOLEDスタックの下部電極に接続されるノードに接続され、コレクタが電圧源VDDに接続される、NPNトランジスタであり得る。BJTのベースは、絶縁され得る。
【0042】
上記の保護回路であって、バイポーラ接合トランジスタは、チャネルが直列で接続される2つのトランジスタとは別個のウェルに位置するか、または、チャネルが直列で接続される2つのトランジスタは共に、pチャネルトランジスタであり、各々が別個のnウェルに位置し、バイポーラ接合トランジスタは、別個のpウェルに位置するNPNトランジスタである。
【0043】
上記のマイクロディスプレイのいずれかであって、OLEDスタックの上に位置するRGB色フィルタアレイ(CFA)を追加的に備え、個々のR、G、B色フィルタが、R、G、B画素を作成するために、セグメント化された下部電極と一致するか、または、OLEDスタックの上に位置するRGBW色フィルタアレイ(CFA)を追加的に備え、個々のR、G、B、および透明もしくは欠損色フィルタが、R、G、B、およびW画素を作成するために、セグメント化された下部電極と一致する。
【発明の効果】
【0044】
本マイクロディスプレイは、小さい画素ピッチ寸法で非常に高い輝度およびコントラストを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】OLEDのための単純な先行技術制御回路を示す図である。
図2】少なくとも3つのOLEDユニットを有するOLEDスタックに好適である、チャネルが直列で接続されている2つのトランジスタを有する基本的な制御回路を示す図である。
図3図2の真性ボディダイオード接続のための1つの実施形態を示す図である。
図4図2の真性ボディダイオード接続のための別の実施形態を示す図である。
図5A】少なくとも3つのOLEDユニットを有するOLEDスタックに好適である、チャネルが直列で接続されている3つのトランジスタを有する基本的な制御回路を示す図である。
図5B】駆動トランジスタがレベルシフト回路により制御されることを除き、図5Aに類似した図である。
図6】ダイオード接続されたpチャネルMOSFETトランジスタを備える追加の保護回路を伴う、少なくとも3つのOLEDユニットを有するOLEDスタックに好適な基本的な制御回路を示す図である。
図7】ダイオードを備える類似の保護回路を示す図である。
図8】バイポーラ接合トランジスタ(BJT)を有する保護回路を伴う、少なくとも3つのOLEDユニットを有するOLEDスタックに好適な基本的な制御回路を示す図である。
図9図8に示される回路についての接続場所、接続、およびトランジスタウェルを例証する、Siバックプレーンを通る概略断面を示す図である。
図10】各々個々のスタックが3つのOLED発光ユニットを有する、3つの隣接する単色RGB OLEDスタックを伴うRGB マイクロディスプレイ100の断面図である。
図11】3つのOLED発光ユニットを有するマルチモーダルマイクロキャビティOLEDスタックおよびRGB色フィルタアレイを有するマイクロディスプレイ200の断面図である。
図12】追加の青色発光層を伴う3つのOLED発光ユニットを有するマルチモーダルマイクロキャビティOLEDスタックおよびRGB色フィルタアレイを有するマイクロディスプレイ300の断面図である。
図13】5つのOLED発光ユニットを有するマルチモーダルマイクロキャビティOLEDスタックおよびRGB色フィルタアレイを有するマイクロディスプレイ400の断面図である。
図14】いくつかの比較用および発明OLEDデバイスについての電圧に対する電流密度のプロットである。
図15】いくつかの比較用および発明OLEDデバイスについてのスペクトル(波長に対する強度としてプロットされる)を示す図である。
図16】D65白色点を生成するために色フィルタを有する比較用および発明OLEDデバイスについての、各色に必要なピーク電流密度のグラフである。
図17】いくつかの比較用および発明OLEDデバイスについての、デバイスが黒色を生成し、再びピーク白色輝度にあるように駆動されるときの、電圧に対する輝度のプロットである。
図18】いくつかの発明OLEDデバイスについての電圧に対する電流密度のプロットである。
図19】いくつかの発明OLEDデバイスについてのスペクトル(波長に対する強度としてプロットされる)を示す図である。
図20】D65白色点を生成するために色フィルタを有するいくつかの発明OLEDデバイスについての、各色に必要なピーク電流密度のグラフである。
図21】いくつかの発明OLEDデバイスについての、デバイスが黒色を生成し、再びピーク白色輝度にあるように駆動されるときの、電圧に対する輝度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示の目的のため、用語「の上(over)」または「より上(above)」は、関連した構造体が、別の構造体より上に、すなわち、基板とは反対の側面に、位置することを意味する。「上部」、「最上部」、「または上方」は、基板から離れた側面または表面を指す一方、「下部」又は「最下部」は、基板に最も近い側面または表面を指す。別途記載の内科医切り、「の上(over)」は、2つの構造体が直接接触状態にあり得るか、またはそれらの間に中間層が存在し得るかのいずれかとして解釈されるべきである。「層」とは、単一層が2つの側面または表面(最上部および最下部)を有すると理解されるべきであり、場合によっては、「層」は、まとめて考えられる複数の層を表し得、単一層に限定されない。
【0047】
発光ユニットまたは層について、Rは、赤色光(>600nm、望ましくは620~660nmの範囲内)を主に放出する層を示し、Gは、緑色光(500~600nm、望ましくは、540~565nmの範囲内)を主に放出する層を示し、Bは、青色光(<500nm、望ましくは、440~485nmの範囲内)を主に放出する層を示す。R、G、およびB層は、示された範囲外の光をある程度生成し得るが、その量は常に原色未満であるということに留意することが重要である。Y(黄色)は、大量のR光およびG光の両方を放出し、B光の量がはるかに少ない層を示す。「LEL」は、発光層を意味する。別途記載のない限り、波長は、真空値で表現され、インシチュ値で表現されない。
【0048】
個々のOLED発光ユニットは、単「色」の光(すなわち、R、G、B、または、Y、C(シアン)、もしくはW(白色)などの2つ以上の原色の組み合わせ、)を生成し得る。単色の光は、同じ色の1つ以上のエミッタを有する単一の層、または一次放出が同じ色に入る同じもしくは異なるエミッタを各々が有する複数の層によって、OLEDユニット内で生成され得る。単一のOLEDユニットはまた、2色の光を放出する単一のエミッタを有する1つの層、2つの異なるエミッタを有する1つの層、または単一であるが異なる色を各々が放出する複数の別個の層の組み合わせを有することによって、単一のOLEDユニット内に2つの色の組み合わせ(すなわち、R+G、R+B、G+B)を提供し得る。単一のOLEDユニットはまた、3つすべての色の光を放出する1つの層、または、単一の(しかし異なる)色を各々が放出し、その総和が白色である、複数の別個の層の組み合わせを有することによって、白色光(R、G、およびBの組み合わせ)を提供し得る。個々のOLED発光ユニットは、単一の発光層を有し得るか、または2つ以上の発光層(互いに直接隣接するか、もしくは中間層によって互いから分離されるかのいずれか)を有し得る。個々の発光ユニットはまた、発光を促進すること、および発光ユニットにわたる電荷輸送を管理することなどの望ましい効果を提供するために、正孔輸送層、電子輸送層、阻止層、および先行技術において知られているその他のものなど、様々な種類の非発光層を含み得る。
【0049】
OLED発光ユニットは複数の層を備え得るため、個々のユニットは、時として、複数のユニットを有するOLEDデバイスと混同され得る「スタック」と称される。本出願においては、「積層型」OLEDは、基板の上で互いの上に積層された少なくとも2つのOLED発光ユニットを有するため、デバイス内には複数の光源が存在する。本発明の積層型OLEDにおいて、個々のOLED発光ユニットは、電荷発生層(CGL)によって互いから分離され、別個におよび独立して制御される中間電極によって分離されない。OLED発光ユニットと考えられるためには、CGLによって別の光発生ユニットから分離されなければならない。故に、OLED発光ユニットのうちの1つに隣接するが、CGLによってそれから分離されない発光層は、別個のユニットと考えられない。スタック内で、個々のOLED発光ユニットのすべてまたは一部は、同じであり得るか、またはそれらはすべてお互いに異なり得る。OLEDスタック内で、個々のOLED発光ユニットは、上部陰極と下部陰極との間に任意の順で配置され得る。積層型OLEDは、単色であり得るか(OLEDスタックの全画素が同じ色の光、例えば、緑色光、を主に放出する)、または、マルチモーダル発光を有し得る(全画素が2つ以上の色の光(例えば、黄色または白色)を放出するか、もしくは異なる画素が、発光全体が2つ以上の色の光を含むように、異なる色の光を放出するか、のいずれか)。
【0050】
いくつかの場合において、OLEDスタックの閾値電圧(Vth)は、著しい発光が電圧軸へ戻り始めた後のI-V曲線の線形外挿法によって推測され得る。この方法は、OLEDについてのI-V応答曲線がそれらの応答範囲にわたって完全に線形ではない場合があることから正確ではないため、この様式で計算される値は正確ではない。このメトリックの一般的範囲は、+/-10%である。より正確には、閾値電圧は、陽極層における電流密度が0.2mA/cmを超えない電圧として規定され、少なくともいくらか信頼できる検出可能な輝度すなわち少なくとも5cd/A、が存在する。これが本出願で使用される方法である。
【0051】
以下において、トランジスタは、「オン」または「オフ」であると称され得る。「オフ」のトランジスタにおいて、ゲートに送信される信号は、電流が端子を通過しないように意図され、言い換えると、この信号(典型的には、CV=0)は、トランジスタが、「オフ」に切り替えられるのではなく、「オフ」へと規制されるように、電流がトランジスタを通過しないことを信号が要求することを指し示すものである。そのような場合、トランジスタが「オフ」であり得るとしても、依然としていくらかの漏れ電流が存在し得る。同様に、「オン」のトランジスタにおいて、ゲートに送信される信号は、少なくともいくらかの電流が端子を通過することになるように意図され、言い換えると、この信号(典型的には、CV=0より大きいが255より小さい)は、トランジスタが、「オン」に切り替えられるのではなく、「オン」へと規制されるように、画素からのある程度の発光を画像が要求することを指し示すものである。同様の方式で、画素またはOLEDは、画像の要件に従って「オン」または「オン」であると称され得、そのため、適切な信号が、画素またはOLEDに送信される。
【0052】
シリコンバックプレーンは、シリコンウェハ(スライスまたは基板とも呼ばれる)から得られる。それらは、集積回路の製作に使用される、結晶シリコン(c-Si)などの半導体の薄いスライスである。ウェハは、ウェハ内またはウェハ上に構築されるマイクロ電子デバイスのための基板としての役割を果たす。それは、ドーピング、イオン注入、エッチング、様々な材料の薄膜蒸着、およびフォトリソグラフィパターニングなどの多くの微細加工プロセスを経る。最終的に、個々の超小型回路は、ウェハダイシングによって分離され、集積回路としてパッケージングされる。シリコンは格子間隔を伴うダイヤモンド立方体構造を有しており、ウェハは、規則的な結晶構造を有する結晶から成長する。ウェハへと切断されるとき、表面は、結晶方位として知られるいくつかの相対的方向のうちの1つにおいて整列される。シリコンウェハは、通常、純度100%のシリコンではなく、それどころか、初期の不純物ドーピング濃度のボロン、リン、ヒ素、またはアンチモンで形成され、これが溶解物に追加されて、ウェハをバルクn型またはp型と規定する。背景については、“Flat Panel Display Manufacturing”,Souk,L.,Ed.,2018の7章を参照されたい。シリコンバックプレーンは、単結晶Siウェハであることが望ましい。
【0053】
積層型OLEDの動作のための制御回路を提供するために、薄膜トランジスタ(TFT)が、コンデンサ、抵抗器、接続ワイヤまたはバスバー、および同様のものなどの他の構成要素と一緒に、シリコンウェハの表面上に提供される。例えば、T.Arai、“High Performance TFT Technologies for the AM-OLED Display manufacturing”,Thesis,Nara Institute of Science and Technology,2016;M.K. Han,Proc.of ASID’06,8-12 Oct,New Delhi;米国特許第9066379号;および米国特許第10163998号を参照されたい。TFTは、TFT構造の部分としてシリコンウェハを組み込む場合とそうでない場合があるか、または、表面に蒸着される別個の材料から調製され得るということを理解されたい。
【0054】
TFTは、多種多様の半導体材料を使用して作製され得る。シリコンベースのTFTの特性は、シリコンの結晶状態に依存し、すなわち、半導体層は、アモルファスシリコン、微結晶シリコンのいずれかであり得るか、またはそれは、ポリシリコンへとアニーリングされ得る(低温度ポリシリコン(LTPS)およびレーザアニーリングを含む)。
【0055】
好適な制御回路を有するシリコンバックプレーンの製造は、非常によく知られ、また理解されている、予測可能な技術である。しかしながら、製造プロセスおよび設備の費用および複雑性が理由で、多くの場合、特定のバックプレーンを製造するために施設を建築することは実用的ではない。代わりに、業界においては、マイクロ電子デバイスの機能特性がより標準化されるようになったファウンドリーモデルが広く採用されてきた。この標準化は、設計が製造から分けられることを可能にした。適切な設計規則に従った設計は、互換性のある製造方法を有する異なる企業によって、より容易および安価に製造され得る。この理由のため、シリコンバックプレーン上の制御回路は、通常、バックプレーンの製造業者によって提供される様々なオプションから選択される標準部品の使用に限定される。例えば、シリコンバックプレーンの製造業者は、1.8V、2.5V、3.3V、5V、8V、および12Vで定格されるトランジスタの様々な標準設計を顧客の設計へと組み込むというオプションを提供し得るが、提供された設計に含まれないトランジスタを(多大な費用なしに)提供することはできない。
【0056】
本出願の目的のため、「低電圧」(LV)は、5V以下で安全かつ確実に動作するようにサイズ決定、設計、および定格されるアナログマイクロ電子部品と定義される。「高電圧」(HV)マイクロ電子デバイスは、通常、18~25Vの範囲内にあると考えられる。「中電圧」(MV)マイクロ電子デバイスは、通常、LVとHVとの間にあるものと考えられる。これらの定格電圧は、製造業者によって設定され、製造業者は、各トランジスタの設定最大電圧を超えることを推奨しないということに留意されたい。
【0057】
相補型金属酸化物半導体(CMOS)技術は、複雑な集積回路を実現するために、p型およびn型金属酸化物電界効果トランジスタ(MOSFET)を使用する。製造プロセスに応じて、利用可能な異なる電圧領域(すなわち、1.8V、2.5V、3.3V、5V、12Vなど)が存在する。すべての電圧領域において、MOSFETトランジスタは、ドレイン、ソース、ゲート、およびバルク/ウェルを有する。MOSFETのベースは基板であり、nチャネルFETの場合、基板は、低ドーピング率を有するp型ドープ基板またはウェルであり、pチャネルFETの場合、基板は、低ドーピング率を有するn型ドープウェルである。ソース領域およびドレイン領域は、nチャネルまたはpチャネルFETの場合、nまたはp型を有する高度にドープされた領域から形成される。制御されたチャネルが、ソースとドレインとの間に形成され、薄い酸化物により絶縁され、典型的には、ゲートとして作用するポリシリコンの層で被覆される。FETの4つすべての端子(ソース、ドレイン、ゲート、基板/ウェル)は、最終的にOLEDに接続する金属相互接続層に、金属接触によって接続される。
【0058】
マイクロディスプレイの発光面積は小さく、必要な画素ピッチを達成するために、画素ごとの制御回路に利用可能な空間は限られる。フルカラーマイクロディスプレイの場合、個々の画素ごとの制御回路によって占有される空間は、100平方ミクロンを超えるべきではなく、好ましくは、50平方ミクロンを超えるべきではない。すべての画素が同じ色を放出するモノクロマイクロディスプレイの場合、制御回路のための空間は、より少ない画素が必要とされるために、3~4倍大きくなり得る。
【0059】
好適な低電圧5Vトランジスタにおいて、すべての端子の任意の対の間の最大電圧は、デバイスに損傷を与えることなく5Vを超えることはできない。10%過電圧の典型的な安全マージンが、短期間は許容される。5V超で定格される中電圧トランジスタ(例えば、7.5Vで定格されるもの)は、一般に、5Vトランジスタと同じセットアップを有するが、より高い電圧に耐えるために、より厚いゲート酸化物およびより大きい幾何形状(チャネル幅および長さ)を有する。故に、MVトランジスタは、通常、対応するLVトランジスタよりも大きく、またより多くの空間を占有することになる。
【0060】
トランジスタは、それらの定格電圧に関係なく任意のサイズ範囲で作製され得るが、マイクロディスプレイ応用に好適な5Vで定格される低電圧MOSトランジスタは、20平方ミクロンを超えない、および好ましくは10平方ミクロンを超えない総面積を有する。マイクロディスプレイ応用のための5Vトランジスタの好適なチャネル面積(チャネル長さ×チャネル幅)は、1平方ミクロンを超えない、および好ましくは、0.30平方ミクロンを超えないものとする。2つのトランジスタ接点は各々、1平方ミクロンを超えない、および好ましくは、0.30平方ミクロンを超えないものとする。
【0061】
本出願の目的のため、保護回路のための好適なBJTは、一般的なセットアップがNPN型およびPNP型の両方において垂直であることである。NPN BJTの場合、コレクタは、低pドーピングを有する共通のシリコン基板(バルク)の内側の低ドープディープnウェルとして形成される。ベースは、ディープnウェルの内側のpウェルとして形成され、高度にドープされたp領域によって接続される。BJTのエミッタは、pウェルの内側の高度にドープされたn領域で形成される。エミッタ領域の典型的なサイズは、約500nm×500nmであり、および好ましくは、小さい画素サイズを可能にするために、0.30平方ミクロンを超えない。BJTのすべての端子(バルク、ベース、エミッタ、コレクタ)の任意の対の間の最大電圧は、デバイスに損傷を与えることなく5Vを超えることはできない。10%過電圧の典型的な安全マージンが、短期間は許容される。
【0062】
OLEDマイクロディスプレイ(多くの場合、「AMOLED」と呼ばれる)は、電気的活性化の際に光(発光)を発生させるOLED画素のアクティブマトリックスからなり、これは、シリコンチップに位置するトランジスタアレイ上に蒸着または統合されており、このアレイが、各々個々の画素に流れる電流を制御するために一連のスイッチとして機能する。典型的には、この連続した電流は、(発光をトリガするために)各画素における少なくとも2つのトランジスタによって制御され、一方のトランジスタが、他方のトランジスタを制御することに加えて、貯蔵コンデンサの充電を開始および停止し、この他方のトランジスタが、画素への定電流を作成するために必要とされるレベルで電圧源を提供する。いくつかの実施形態において、他方のトランジスタ(通常、駆動トランジスタと称される)によって提供される電流を制御するトランジスタ(通常、スキャンまたは選択トランジスタと称される)は、行に沿ったすべての画素にわたって共通である選択線によって制御される。スキャントランジスタによって渡される信号は、列内のすべての画素にわたって共通であるデータ線によって供給される。
【0063】
これは、先行技術のAMOLED画素設計の最も単純な形式を表す図1に例証される。画素メモリを有する最も単純なAMOLED画素は、2つのトランジスタおよび1つのコンデンサを使用する。電流駆動トランジスタMP2は、従来、供給電圧VDDからOLEDの陽極へ接続される。1つのトランジスタ(MP2)は、OLEDのための電流を駆動し、別のトランジスタMP1(スキャントランジスタとしても知られる)は、示されるように貯蔵コンデンサC1上への電圧をサンプリングして保持するためにスイッチとして作用する。駆動トランジスタMP2を通過する電流を制御するデータ線(VDATAを供給する)が存在する。MP1、および故に、コンデンサC1の充電、を制御する選択線が存在する。一般に、トランジスタは、固有キャパシタンスを有するため、トランジスタの固有キャパシタンスおよびトランジスタを通じた漏れ電流に応じて、追加のキャパシタンスが必要とされない場合がある。
【0064】
図1の後の図においては、存在するいかなるコンデンサも、明瞭性のために図面から省略されている。コンデンサの存在は任意選択であり、回路は、所望の通りに、コンデンサを有さなくてもよく、または任意の数のコンデンサを有してもよい。コンデンサの参照電圧は、VDDまたは何らかの他の電圧であり得る。
【0065】
閾値電圧(Vth)、キャリア移動度、または直列抵抗における変動は、OLED駆動TFTの電流の均一性、および結果的にディスプレイの明度に直接的に影響を及ぼすことになるということに留意されたい。不均一電流に影響を与える1つの主な因子は、OLED駆動トランジスタの閾値電圧(Vth)変動である。制御回路による他のタイプの補償が画素に対して必要とされ得る;例えば、経時的なOLED材料の経年劣化(aging)、劣化(degradation)、もしくはバーンイン、アクティブ領域にわたるムラ(mura)もしくは不均一性、または金属接続線内の電圧低下の場合である。加えて、TFTによって提供される制御回路は、例えばPWMによって画素に送達される電流のタイミングを制御することを必要とし得る。様々なタイプの補償および駆動スキームを含むOLEDのための制御回路の設計が強い関心の対象となっており、多くの手法が提案されてきた。そのような補償回路は、追加的に、3つ以上のスタックを有する積層型OLEDのための制御回路に存在し得る。
【0066】
3つ以上のスタックを有するOLEDスタックによって必要とされる高電圧/電流は、チャネルが直列で接続されている少なくとも2つのトランジスタを備える制御回路によって取り扱われ得るということが予想外に分かっている。これは、時として、「積層型トランジスタ」と称される。望ましくは、直列接続されたトランジスタのうちの一方は、低電圧駆動トランジスタであり、他方は、スイッチトランジスタである。この配置は、TFTを通じた著しい漏れ電流なしにOLED画素を駆動することを可能にし、その結果として、コントラストの損失なしに高明度が得られる。
【0067】
特に、駆動TFTおよびスイッチトランジスタは、駆動トランジスタの第1の端子が外部電源に電気的に接続され(およびこれにより近く)、駆動トランジスタの第2の端子がスイッチトランジスタの第1の端子に電気的に接続され、スイッチトランジスタの第2の端子がOLEDスタックの下部電極に電気的に接続される(およびこれにより近い)ように、直列で接続される。そのような配置は、OLEDスタックが、大量の漏れ電流または低電圧トランジスタへの物理的損傷なしに、個々のトランジスタが設計されるものよりも高い電圧で動作されることを可能にする。
【0068】
この基本的な制御回路配置は、図2に示され、pチャネル駆動トランジスタT1は、第1の端子(pチャネルトランジスタでは、ソース)においてVDD(外部電源)に接続され、第2の端子(pチャネルトランジスタにおいては、ドレイン)においてスイッチトランジスタT2に接続される。駆動トランジスタT1のゲートは、データ線およびインライン選択トランジスタT3を介して制御され、インライン選択トランジスタT3のゲートが選択線SELECT1によって制御される。スイッチトランジスタT2は、第1の端子(ソース)においてT1の第2の端子から電流を受信し(T1が「オン」のとき)、第2の端子(ドレイン)においてOLEDの下部電極に接続される。スイッチトランジスタT2のゲートは、選択線SELECT2によって直接制御される。駆動トランジスタT1およびスイッチトランジスタT2の両方が直列で制御される。T1およびT2の両方が「オン」であることが選択されるとき、電流がOLEDスタックの下部電極へ流れ、それが光を放出する。T2が「オフ」であることが選択される場合、T1が「オン」または「オフ」であるかに関係なく、OLEDスタックに電流は流れない。いくつかの実施形態において、スイッチトランジスタT2は、モーションブラーを防ぐためにシャッタ機能を提供することができる。T1が「オフ」である場合、T2が「オン」または「オフ」であるかは問題ではなく、OLEDは発光しない。
【0069】
図2では、VDDとOLED電極の下部電極との間に少なくとも2つの直列接続されたトランジスタを有するバックプレーンの制御回路は、駆動トランジスタおよびスイッチトランジスタである。この応用では、駆動トランジスタは、表示されている画像に従う適切なレベルでOLED画素へ流れる電圧および電流を規制するための機能を有し、スイッチトランジスタは、シャッタ機能を提供するために、OLED画素に流れる電流をオンおよびオフに切り替える目的を有する。例えば、マイクロディスプレイの動作中、スイッチトランジスタT2が、駆動トランジスタT1からOLEDスタックの下部電極へ流れる電力を遮断するため、フレーム時間の一部においては発光がない(黒色)。これは、貯蔵コンデンサ(図2では示されない)を充電するためにフレーム時間のごく一部(例えば、1200行を有するディスプレイの場合1/1200)においてのみオンであるスキャントランジスタT3とは異なる。多くの場合、同じ最大動作電圧では、スイッチトランジスタは、駆動トランジスタよりもサイズが小さくてもよい。しかしながら、スイッチトランジスタが、3つ以上のスタックを有するOLEDのための制御回路の場合のように、より高い電圧を取り扱うことが必要とされる場合、それは、駆動トランジスタよりも大きく、より高い電圧で定格され得る。
【0070】
望ましくは、駆動トランジスタ(T1)は、OLEDの下部電極のより近くに位置するスイッチトランジスタ(T2)よりも、電源VDDの近くに位置する。少なくとも駆動トランジスタがpチャネルMOSFETトランジスタであること、およびより好ましくは、駆動およびスイッチトランジスタの両方がpチャネルMOSFETトランジスタであることが好ましい。2つの直列接続されたトランジスタは、両方ともLV、両方ともMV、または一方がLVおよび一方がMVトランジスタであり得る。好ましくは、それらは、画素回路のオーバーサイズを低減するために、両方ともLVトランジスタである。しかしながら、いくつかの実施形態において、駆動トランジスタがLVである一方、スイッチトランジスタはMVである。
【0071】
pチャネルトランジスタのみが図2に例証されるが、nチャネルトランジスタ、またはnチャネルおよびpチャネルトランジスタの混合が使用され得る。そのような場合、nチャネルトランジスタとpチャネルトランジスタとの間の極性の違いを考慮して、回路を適切に再配置する必要がある。さらには、トランジスタ、コンデンサ、および抵抗器などの他のマイクロ電子部品が、必要に応じてこの制御回路に含まれ得る。
【0072】
先行技術において知られているように、MOSFETトランジスタは、所望の通りに実施するために真性ボディダイオード接続を必要とする。MOSFETトランジスタの構造に起因して、寄生ダイオードが本質的に存在し、それがトランジスタの動作に影響を及ぼし得る。一般的に、真性ボディダイオードは、バイアスを適用するために、内部的または外部的のいずれかで、電源に接続される。これらのボディ接続は、「バルク接続」または「トランジスタウェル」、ならびに他の用語で、称される。これは、図3に示され、IBD1、IBD2、およびIBD3が、別個の電圧源VDD2への真性ボディダイオード接続(T1、T2、およびT3のための)である。これらのトランジスタは、真性ボディダイオード接続のための同じウェルを共有することができる。しかしながら、T1およびT2に電力を供給するために使用される同じ電源VDDが、IBDのためにも同様に使用され得、すなわち、VDDおよびVDD2は共通ソースである。
【0073】
しかしながら、構成要素のうちのいずれかの動作電圧範囲の外側に出ることを回避するために、トランジスタのうちの1つ以上がSiバックプレーン上の独自の別個のウェル中に浮遊していることが望ましい場合がある。特に、第1の駆動トランジスタおよびスイッチトランジスタの両方がpチャネルトランジスタであるとき、各トランジスタは、独自の別個のnウェルに位置し得る。これは、同じnウェル内にある両方のトランジスタにより達成され得るものより大きい、OLEDの制御のための動的電圧範囲を許す。直列接続されたトランジスタのための、絶縁された、浮遊または異なるウェルの使用は、先行技術において知られており、例えば、米国特許第9066379号、米国特許第5764077号、米国特許第7768299号、米国特許第9728528号、および特開JP2016200828を参照されたい。
【0074】
これは図4に例証され、T1は、点線によって示されるように独自のウェルを占有し、接続を通じてIBD1を介してVDD2へバイアスされ、T2は、点線によって示されるように異なるウェルを占有し、これは、異なる別個の接続IBD2によってトランジスタソース(VDD)へバイアスされる。図4の実施形態において、各IBDに適用されるバイアスは異なるため、各nウェルは、互いと独立している。
【0075】
図2図4に示される実施形態は、3つ以上のスタックを有するOLEDを駆動するためのその設計および動作においていくつかの利点を有する。設計においては、この回路は、すべてのトランジスタが、大半のファウンドリーにおいて一般的に見られる比較的小さいLVトランジスタであることから、非常に小型であり得る。すべてのトランジスタは、すべてのnウェルがVDDにバイアスされているpチャネルトランジスタであり得、これにより、絶縁されたまたは浮遊しているウェルの必要性を除外する。これらの特徴は、小さいサイズで非常に高い解像度を有するマイクロディスプレイ設計のための超小型画素回路設計を可能にし得る。
【0076】
図5Aは、直列の3つのトランジスタを有する制御回路を示す。図5Aに示される回路は、電源VDDと駆動トランジスタT1のソースとの間に直列で接続される第3のトランジスタT4が存在することを除いて、図2に示されるものに類似する。示されるように、T4のゲートは、データ線およびインライン選択トランジスタT5を介して制御され、インライン選択トランジスタT3のゲートは、選択線SELECT3によって制御される。図5A内の線SELECT2およびSELECT3は、同じもしくは異なる電圧で信号を供給し得るか、同時に、もしくは異なる時間に、切り替えられ得るか、または動作条件に応じて切り替えられないままにされ得る。
【0077】
望ましくは、追加されたトランジスタT4は、第2の駆動トランジスタであり得、その結果として、電源VDDとOLEDの下部電極との間には、すべての直列の、2つの駆動トランジスタ(T4およびT1)ならびに1つのスイッチトランジスタ(T2)がある。この場合、T4のゲートに供給される信号もまた、T1に供給されるものと同じであり得、T3/SELECT1を介して供給され得る。図5Aは、データ制御のための1つのデータ線および2つの選択線を有する設計を示すが、同様の設計が2つのデータ線および1つの選択線により可能である。
【0078】
3つ以上の直列のトランジスタが存在する実施形態において、それらは、LVおよびMVトランジスタ両方の組み合わせであり得る。好ましくは、それらは、画素回路のサイズを低減するために、すべてLVトランジスタである。これらの複数のトランジスタは、pチャネル、nチャネル、または混合であり得る。すべてがpチャネルであることが好ましい。nチャネルおよびpチャネルトランジスタの混合が存在する場合、好ましくは、pチャネルトランジスタである少なくとも1つの駆動トランジスタが存在し、およびより好ましくは、それはLVトランジスタである。スイッチトランジスタは、好ましいLVトランジスタであるが、個々のトランジスタの電圧制限を観察しながらバックプレーン回路の動作範囲を拡大する必要があるとき、1つまたは複数のMVスイッチトランジスタを使用することが望ましい場合がある。
【0079】
複数の直列のトランジスタのうちのいずれかが1つのタイプのものである場合、同じタイプの複数の共通トランジスタは、設計のサイズを低減するために同じウェルを共有し得る。しかしながら、個々のトランジスタの電圧制限を観察しながらバックプレーン回路の動作範囲を拡大するには、同じタイプのトランジスタを別個のウェル領域に入れる必要があり得る。
【0080】
図5Bは、2つの駆動トランジスタがレベルシフト回路(LSC)によって制御される図5Aに示されるものと類似した2つの駆動トランジスタを有する制御回路の概略を示す。レベルシフト回路は、信号を1つの論理レベルまたは電圧領域から別のものへ変換するために使用される回路であり、多くの場合、システムの様々な部分の間の電圧不適合性を解決するために使用される。明瞭性のため、内部構成要素も、LSCへの接続のすべて(例えば、VDD、接地、および他の可能性のある入力接続)も示されない。この実施形態において、LSCは、信号SELECT1およびデータ線からの信号に基づいて駆動トランジスタT4およびT1のためのゲート電圧を、T4およびT1にわたる全電圧が常に2つの駆動トランジスタ間でほぼ均等に分けられるように設定する。知られているように、小さい論理トランジスタがこの機能のために使用され得る。
【0081】
OLEDベースのマイクロディスプレイは、多くの場合、トランジスタを通って流れる電力の量を制限して損傷を防ぐために、バックプレーンのMOSFETベースの制御回路内に保護回路を含む。そのようなデバイスからの発光を引き起こすために必要とされる高い電力が理由で、本目的のための3つ以上の積層ユニットを有するOLEDを用いたマイクロディスプレイのバックプレーンの制御回路内に保護回路を含むことが望ましい。保護回路は、OLEDが発光していないときOLEDの下部電極が所望の電圧レベルを下回らないように、OLEDの下部電極において電圧を維持または「クランプ」しなければならない。そのような保護回路は、「電圧維持」回路とも呼ばれ得る。
【0082】
制御回路内に存在する低電圧トランジスタを保護し、ファウンドリーによって設定されるようなトランジスタの指定の動作範囲内に留まるために、保護回路が、4μA/cm未満、またはより好ましくは、およそ7.5VのVthを有する3ユニット積層型OLEDの場合、2μA/cm以下の画素について、積層型OLEDの下部電極において黒色レベル電流(CV=0、または画素が「オフ」である)を維持することが望ましい。4ユニット積層型OLEDデバイスの場合、同様の黒色レベル電流が所望され、典型的なVthは、およそ10Vである。
【0083】
図6は、保護回路の追加を伴った、図2に示されるものに類似した概略制御回路を示す。この特定の実施形態において、保護回路は、一方の端においてT2のドレインとOLEDの下部電極との間に位置するノードに接続され、他方の端において電源(この例では、参照電圧VREF(すべての画素にわたって共通))に接続されるpチャネルトランジスタを備える。T6のゲートもノードに接続される。故に、ダイオード接続されたトランジスタT6が、T2の最低ドレイン電圧を制限して、その故障を防ぐ。図示されないこの回路の部分として他の電子部品が存在し得る。この配置は、pチャネルトランジスタの一方の端がVREFの代わりに接地に接続されることを除き、Kwakらによって説明されるものに類似する。
【0084】
しかしながら、3つ以上のユニットを有するOLEDを使用するより高い電圧要件によって引き起こされる問題は、図6に示されるものなどのMOSFETトランジスタを使用した保護回路の使用にも依然として当てはまる。この実施形態において、LV駆動およびスイッチトランジスタの保護を達成するためにLVまたはMV MOSFET トランジスタ(すなわち、T6)を使用することは、MV駆動およびスイッチトランジスタを使用することおよび保護回路を除外することと比較して、著しくより小さい画素設計を結果としてもたらさない。
【0085】
図7は、pチャネルトランジスタT6がダイオードD4で置き換えられることを除いて、図6に示されるものに類似した保護回路を示す。望ましくは、保護回路内のダイオードD4は、p-n接合ダイオードである。p-nダイオードは、1つの方向において電気の流れを可能にするが、他の(反対の)方向においては可能にしない回路素子である。P-nダイオードは、容易な電流の方向における順方向バイアス、または電流がほとんどあるいは全くない逆バイアスを有し得る。そのようなp-nダイオードは、様々な方式で、例えば、nウェル内の高度にドープされたp領域を有する垂直ダイオードとして、CMOSプロジェクトの内側に形成され得る。一方の端において、D4は、T2のドレインとOLEDの下部電極との間に位置するノードに接続され、他方の端において、参照電圧VREFまたは参照電流IREFのいずれかである電源45に接続される。
【0086】
図8は、図7に示されるものに類似した保護回路を示す。図8では、保護回路のダイオード D4は、具体的にはBJT1であり、BJT(バイポーラ接合トランジスタ)は、コレクタ(C)が、VDDに接続され、エミッタ(E)が、T2とOLEDスタックの下部電極との間のノードに接続され、ベース(B)が、電圧源VPROTECTまたは電流源IPROTECTのいずれかである電源50に接続される。保護回路内でBJTを使用する1つの利益は、ベース電流からコレクタ電流への電流増幅である。所望の場合、BJTのコレクタは、VDDとは異なる別個の電源に接続され得る。電源VPROTECTまたはIPROTECTは、すべての画素に共通であり得る。VPROTECTまたはIPROTECTは一定である場合とそうでない場合とがあるが、OLEDが発光している、または発光していないことが意図されるかどうかに応じて変化し得るということに留意されたい。これは、シャッタを通じてディスプレイの持続性を低減するためにスイッチトランジスタと共に使用されるときに有利になり得る。図8では、BJT1は、「NPN」タイプのBJTトランジスタ(好ましい)であるが、設計において適切な変更を伴って「PNP」トランジスタであってもよい。
【0087】
NPNタイプのBJTの場合、OLEDの下部電極におけるエミッタ電圧Vがベース電圧Vよりも大きく、Vがコレクタ電圧Vよりも小さいときはいつも(V>V<V)、BJTは停止モードにあり、電流は通されない。しかしながら、OLEDの下部電極における電圧Vが電圧Vよりも小さく、VがVよりも小さいときはいつも(V<V<V)、BJTは、順方向アクティブモードにある。このモードでは、ベース-エミッタ接合は順方向バイアスされ、ベース-コレクタ接合は逆バイアスされるため、コレクタ-エミッタ電流は、ベース電流にほぼ比例することになる。
【0088】
故に、図8において、BJT1のVがVDDであり、VPROTECT(Vである)がOLEDのVth未満であるように設定される場合、下部電極における電圧VがVth+VCATHODEよりも高いときはいつも、BJT1は「オフ」であるが、VがVth+VCATHODEを下回るときはいつも(すなわち、T1またはT2が「オフ」であるときはいつも)、下部電極における電圧はVth近くに維持される。故に、保護回路は、カソード電圧が特定の値を下回って減少する(より負の電圧)ときにはいつも、駆動およびスイッチトランジスタが、それらの定格を超えるそれらの端子にわたる電圧を有することを防ぐために、必要とされるときにいつでも十分な電流を提供するように設計される。さらには、ベース電圧B(VPROTECT)をOLEDのターンオン電圧より下に設定することによって(Vcathodeを上回るVth)、OLEDの下部電極に送達される電圧がVthより大きいか、またはそれに等しいときはいつも、電力損失が最小限にされる。
【0089】
図8に示される保護回路を利用するいくつかの実施形態において、BJTのベース電圧(V)は、いかなる外部電源からも絶縁される。すなわち、電源VPROTECTまたはIPROTECTとBJTのベースとの間に電気接続は存在しない。BJTは、図8に示されるような既存のコレクタおよびエミッタ接続と共に物理的に存在するが、ベース接続は、依然として存在するものの、いかなる外部ソースにも接続されない。そのような場合、Vが、任意の特定の値に意図的に維持されることも、任意の電圧または電流がそれに意図的に印加されることもない。Vは、OLEDを動作させるアクティブ制御回路の一部として留まる電圧VおよびVとは独立して「浮遊」することが許される。それにもかかわらず、高インピーダンスで内部的にベースをバイアスするバックプレーン内の寄生電流経路が存在し得る。このタイプの実施形態において、Vは、回路内での寄生電流の発生が理由で、OLEDの動作中に変化し得るということに留意されたい。
【0090】
他の実施形態において、BJTのVは、自己バイアスされ得る(時として、「ベースバイアス」を有すると称される)。BJTが自己バイアスされるとき、BJTのベースに印加される外部制御された入力信号は存在しないが、むしろ、BJTのベースに印加される信号は、一定供給電圧(すなわち、VDD)の値、およびトランジスタを接続した任意のバイアス抵抗器の値によって設定される。BJTのベースの自己バイアスを達成するための1つの方法は、「固定ベースバイアス回路」を形成することである。この配置では、BJTのベースは、単一の電流制限抵抗器により定電源(すなわち、VDD)に接続される。これは、BJTのベース電流(I)がVDDの所与の値に対して一定のままであり、したがって、BJTの動作点も固定されたままであることを可能にする。代替的に、単純な電圧分配器ネットワークが、必要とされるバイアス電圧を提供することができる。このタイプの実施形態において、バイアス電圧および結果として生じる各画素内の寄生電流は、OLEDの動作に応答することになるということに留意されたい。そのような応答は、トランジスタのための効果的な保護を提供することができる。
【0091】
図9は、図8に示される回路のためのトランジスタウェルの概略断面図である。T1、T2、T3は各々、VDDに接続される別個であるが絶縁されていないまたは浮遊していないnウェル内に位置し得、すべてBJT1(NPN BJT)のpウェルから分離されるということに留意されたい。簡便性のため、ソース(s)、ゲート(g)、およびドレイン(d)領域が、T1、T2、およびT3に対してマークされる。同様に、エミッタ(e)、ベース(b)、およびコレクタ(c)領域が、BJT1に対してマークされる。BJT1のコレクタ(c)領域は、ディープnウェルを通じてVDDに接続されるものとして示されるが、いくつかの実施形態において、それは、代替的に、VDDに直接的に接続され得る。
【0092】
図9はまた、トランジスタのすべてが存在するSi基板のディープnウェルのVDDへの真性ボディダイオード接続であるIBD5、ならびにSi基板全体のための接地への真性ボディダイオード接続であるIBD6を示す。保護回路内のBJTは、NPNまたはPNPトランジスタのいずれかであり得るということに留意されたい。BJTがNPNトランジスタである場合、トランジスタはpウェル内にある一方、BJTがPNPトランジスタである場合、それはnウェル内にある。
【0093】
BJTを備える保護回路の使用が好ましい。チャネルが直列で接続されている少なくとも2つのトランジスタを備える制御回路の一部として使用されるとき、BJTトランジスタ設計は、画素サイズがより小さい。加えて、順方向アクティブモードBJTのための固有増幅因子は、比較的小さい寄生電流がはるかに大きい保護電流を発生させることができることを意味する。したがって、参照/保護電圧源からの電流は、はるかに小さく、参照電圧相互接続における電圧低下は劇的に低減される。
【0094】
保護回路はまた、他の適切な回路構成要素を含むことによって下部電極における最小電圧をOLEDの閾値電圧より下に維持することに加えて、短絡保護、過渡スパイクなどの他の望ましくない効果を防ぐように設計され得る。しかしながら、場合によっては、本発明の積層型OLEDを使用するときに、そのような知られているタイプの保護回路を画素回路内に含むことが依然として有用であり得る。
【0095】
多くのOLEDスタック、特に、3つの発光ユニットを備えるものの場合、図2図5に示されるように制御回路内にスイッチトランジスタの第2の端子とOLEDの下部電極との間の電気接続に介在トランジスタが存在しないことが望ましい。介在とは、スイッチトランジスタとOLEDとの間の電気接続において、電流が別のトランジスタを直接通過しないことを意味する(すなわち、トランジスタの一方の端子がスイッチトランジスタに接続される一方、他方の端子がOLEDに接続され、その結果として、電流がOLEDの動作中の何らかの点において介在トランジスタを通過する)。スイッチトランジスタとOLEDとの間でインラインである他の(非トランジスタ)マイクロ電子部品が存在してもよい。
【0096】
スイッチトランジスタ-OLED接続とマイクロ電子部品(すなわち、非介在トランジスタまたはダイオード)の第1の端子と間の分岐(直接的にインラインではないことを意味する)接続が存在してもよく、OLED動作電流は、非介在トランジスタまたはダイオードを直接的に通過しない。例えば、この配置は、図4図6に例証され、非介在構成要素の一方の側がT2-OLED接続に接続され、他方の側が電源に接続される。
【0097】
望ましくは、駆動トランジスタは、低電圧(LV)トランジスタである。すなわち、それは、回路内の実際の負荷に関係なく、またはこれを考慮することなく、5V以下での安全かつ効果的な動作のために設計およびサイズ決定される。これは、マイクロディスプレイ解像度を最大限にするために画素サイズを最小限にするのを助けるために必要である。駆動トランジスタによって駆動される3つ以上のOLEDユニットを有するOLEDスタックは、通常、7.5Vを超える電圧を必要とするということに留意されたい。必要な場合、別個のウェル内の2つ以上の直列接続された低電圧駆動トランジスタ(図2に示されるような)が、より高い電圧の効果をさらに緩和するために使用され得る。
【0098】
駆動トランジスタはpチャネル薄膜トランジスタ(pチャネルMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)とも称される)であることが望ましい。pチャネルトランジスタの構造、特性、および調製は周知である。駆動トランジスタがpチャネルトランジスタであるとき、そのソースは、外部電源に電気的に接続され、そのドレインは、スイッチトランジスタの第1の端子に電気的に接続される。駆動電極のゲートは、電源から離れた別のデータ線によって制御される。
【0099】
OLEDスタックが3つのOLED発光ユニットを備えるとき、スイッチトランジスタは低電圧トランジスタであることが望ましい。すなわち、それは、回路内の実際の負荷に関係なく、またはこれを考慮することなく、5V以下での安全かつ効果的な動作のために設計およびサイズ決定される。OLEDの動作に必要な電流は、このトランジスタならびに駆動トランジスタを通って流れる。
【0100】
しかしながら、OLEDスタックが4つ以上のOLED発光ユニットを備える場合、動作電圧は、7.5Vをはるかに超える場合があり、スイッチトランジスタは、必要に応じて中電圧(例えば、7.5V~12Vのために設計される)または高電圧(18~25Vのために設計される)であり得る。代替的に、共通して選択されるかまたは独立して選択されるかのいずれかである、2つ以上の直列接続されたスイッチトランジスタが、より高い電圧の効果を緩和するために使用され得る。直列接続された複数のスイッチトランジスタは、すべてLV、またはLVおよびMVトランジスタの混合であり得る。
【0101】
スイッチトランジスタはpチャネルトランジスタであることが望ましい。スイッチトランジスタがpチャネルトランジスタであるとき、そのソースは、駆動トランジスタのドレインに接続され、そのドレインは、OLEDの下部電極に電気的に接続される。スイッチ電極のゲートは、電源ならびに駆動トランジスタを制御するデータおよび選択線から離れた選択線によって制御される。
【0102】
いくつかの実施形態において、駆動およびスイッチトランジスタの両方がpチャネルトランジスタであることが望ましく、両方が低電圧トランジスタであるか、または駆動トランジスタが低電圧であり、スイッチトランジスタが中電圧もしくは高電圧である。いくつかの実施形態において、制御回路内のすべてのトランジスタがpチャネルトランジスタであることも望ましい。
【0103】
駆動トランジスタおよびスイッチトランジスタは直列で電気的に接続されるが、2つのトランジスタの間に他の介在マイクロ電子部品が存在してもよい。介在部品は、インラインであり得、駆動トランジスタとスイッチトランジスタとの間の電流がインライン部品を直接通過する。駆動トランジスタとスイッチトランジスタとの間の接続に電気的に接続される他のマイクロ電子部品も存在してもよく、その結果として、駆動トランジスタから流れる電流は、この追加の部品ならびにスイッチトランジスタにも流れる。
【0104】
動作の最も基本的な形式において、電圧は、外部電源から駆動トランジスタに供給される。選択線は、データ線からの正しいデータ電圧が駆動トランジスタのゲートに印加されることを可能にするように設定されて、電源からの電流が駆動トランジスタを通ってスイッチトランジスタへ流れることを可能にする。スイッチトランジスタのための選択線は、正しい電荷がスイッチトランジスタに印加することを可能にするように設定されて、電流がスイッチトランジスタを通って各々個々の画素内のOLEDスタックの下部陽極へ流れることを可能にする。これが画素を「オン」にし、画素は、受信した電流に応じて光を放出する。表示された画像が、個々の画素からの発光がないこと、または低減された発光を要求するとき、駆動トランジスタのためのデータ電圧は、電流が駆動画素を通って流れることを防ぐか、またはこれを制限するように変更され得る。
【0105】
制御回路内の他の構成要素が、「オン」であるときにOLEDに電力供給することを意図とする電流、またはOLEDが「オフ」であることが意図されるとき駆動トランジスタを通じた漏れ電流のいずれかである、駆動トランジスタによって供給されている電流の制御に貢献し得る。
【0106】
シャッタ機能を提供することによってモーションブラーを防ぐか、または最小限にするために、スイッチトランジスタは、駆動トランジスタ(その画素に供給される電力を制御する)の動作に関係なく、特に、駆動トランジスタが「オン」である(電流を通す)とき、電流がOLEDに流れるのを防ぐことができる。画素にとって適時に、スイッチトランジスタは、OLED画素が、表示されるべき画像がその画素が「オン」であることを必要とする場合にさえ、「オフ」のままであるように選択され得る。これは、ディスプレイ内の画素のすべての区域または交代区域が「オフ」(非発光)であることを可能にし、これによりマイクロディスプレイ内のモーションブラーの知覚を最小限にする。
【0107】
マイクロディスプレイにおいて、外部電源からの電力は、OLEDスタックを駆動して所望のレベルの輝度を送達するために、可変電流または電圧として駆動トランジスタに送達され得る。これは、多くの場合、貯蔵コンデンサを充電することによって書き込み動作中に貯蔵される。電力レベルは、外部電源において制御され得るか、または送達される電力が一定である場合、電力は、バックプレーン内の他のマイクロ電子回路によって適切なレベルに設定され得る。これは、「電流制御」と呼ばれ、典型的には、大半のOLEDデバイスに電力供給するために使用される。代替的に、OLEDスタックに供給される電力は、一定であり得、設定された時間期間(フレーム)にわたる発光の合計量は、OLED画素が「オフ」である時間と比較してOLED画素が完全に「オン」である時間によって制御される。これは、パルス幅変調またはPWM制御と呼ばれる。
【0108】
説明されるような制御回路は、著しい漏出または損傷なしに、少なくとも駆動トランジスタの設計または定格電圧よりも高い電圧および電流需要を取り扱うことができるため、増大した発光量(およびより高い電圧)を有するOLEDスタックの使用が可能にされる。比較的より低いVth要件を有する、2つの発光ユニットを伴う直列OLEDデバイスは、比較的より高いVth要件を有する、3つ以上の発光ユニットを伴うOLEDスタックほど多くの光を放出しない。説明されるような回路は、7.5Vよりも大きい閾値電圧(Vth)を有する積層型発光OLEDと共に使用され得、より望ましくは、発光OLEDスタックのVthは、少なくとも10V以上である。代替的に、回路は、少なくとも2500ニト、または好ましくは少なくとも5000ニトの発光を有するフルカラーマイクロディスプレイを提供する積層型OLEDと共に使用され得る。
【0109】
バックプレーン上の制御回路を介して画素電極のうちの1つに電力を供給することによって各々個々の画素の明度を制御することが必要である画素化OLEDマイクロディスプレイを作製するための2つの基本的手法が存在する。第1の手法は、各画素に個々に赤色、緑色、もしくは青色光(それぞれR、G、B)、またはモノクロディスプレイの場合は同じ色を生成させることを伴う。この場合、発光OLEDスタックは、個々の下部電極セグメントより上の積層型発光ユニットのすべてが、R、G、およびB画素を作製するために同じ色の光(R、G、またはB光から選択される)を放出するように配置され得る。この特徴を有するいくつかの実施形態において、各色画素は、セグメント下部電極と上部電極との間の距離が放出される光の色に依存するマイクロキャビティを形成する。この場合、マイクロキャビティの長さは、発光される色に依存し、赤色、緑色、および青色画素によって異なる。
【0110】
第2の手法は、個々のRGB画素を生成するために、色フィルタアレイ(CFA)を有するすべての画素にわたって共通のマルチモーダル(白色)発光OLED層を有することである。第2の手法は、異なる配合組成の個々のOLED画素を作成する必要がないため、製造コストが低減されることになるという点で第1の手法に勝る利点を有する。
【0111】
積層型OLED内の個々のOLED発光ユニットの数は、OLEDの全体の厚さ、およびOLEDを動作させるために必要な電力を取り扱う制御回路の能力によってのみ制限される。OLEDユニットの数が増大するにつれて、発光の合計量は増大するが、パッケージの厚さ、製造プロセスの複雑さ、および閾値電圧もすべて同様に増大する。少なくとも3つの積層型発光ユニットを有するOLEDは、直列(2つのOLEDユニット)OLEDに勝る増大した輝度を提供する。しかしながら、少なくとも4つの積層型OLED発光ユニットを有するOLED、より好ましくは、少なくとも5つの積層型OLED発光ユニットを有するOLEDが好ましい。6~10以上もの積層型OLED発光ユニットを有するOLEDが企図され得る。
【0112】
OLEDスタックを駆動するための必要な電圧の増大を最小限にするために、電荷発生層(CGL;時として、コネクタまたは中間層とも称される)が、個々のOLED発光ユニットの間に位置する。これは、CGLが、電子および正孔が電圧印加の際に生成されるように構造化され、隣接する有機放射層に注入されるためである。故に、CGLの使用は、おそらくは1つの注入電子を複数の光子に変換することができ、より高い輝度を可能にする。特に、CGLは、スタック内の各発光ユニットの間に位置するのが望ましい。しかしながら、光発生ユニットが両側に隣接CGLを有する必要はない。スタックの上部および下部におけるOLED光発生ユニットは、通常、1つのみの隣接CGLを有する。典型的には、発光ユニットと上部電極または下部電極のうちの一方との間にCGLを使用する必要はないが、所望の場合はCGLが使用されてもよい。
【0113】
多くの異なる種類のCGLが提案されており、OLEDスタックにおいて使用され得る。例えば、米国特許第7728517号および米国特許出願公開第2007/0046189号を参照されたい。CGLの形成には、n型およびp型層の界面に位置するn-p半導体ヘテロ接合が、典型的には、電荷発生のために必要とされる。故に、CGLは、2つ以上の層を有することになる。例えば、nドープ有機層/透明導電層、nドープ有機層/絶縁材料、nドープ有機材料層/金属酸化物層、およびnドープ有機材料層/pドープ有機材料層がすべて報告されている。CGLのための望ましい金属酸化物は、MoOである。場合によっては、n層およびp層は、薄い中間層によって分離され得る。多くの場合、CGLは、n層が陽極により近く、p層が陰極により近いように配置される。
【0114】
CGLのための1つの望ましい配合組成は、nドーパント(例えば、Li)でドープされる電子輸送材料、同じ(しかしドープされない)電子輸送材料の薄い中間層、およびpドーパントでドープされる正孔輸送材料という3つの層を有する。好適な電子輸送および正孔輸送材料は、CGLにおける使用に好適なnドーパントおよびpドーパントと一緒に、周知であり、一般的に使用される。材料は、有機または無機であり得る。適切な材料の選択は、重大ではなく、どれもそれらの性能に基づいて選択され得る。CGLの厚さは、望ましくは、200~450Åの範囲になければならない。多くの場合において、CGLは、電荷輸送を改善することを助けるため、および電荷発生ドーパント(存在する場合)を発光ユニット内のLELから分けるのを助けるために、陽極側にETL、およびその陰極側にHTLを有する。
【0115】
CGLの使用は、OLED発光ユニットが互いの上に積層されるとき電圧増加を最小限にすることを助けるが、スタックによって必要とされる全電圧は、依然として、もっぱら各々個々のユニットによって必要とされるおよその電圧だけ増加する。少なくとも3つの積層型OLED発光ユニットを有するOLEDは、5V駆動トランジスタの推奨動作範囲を超える電圧を必要とすることが予期される。
【0116】
1つの実施形態において、個々の下部電極セグメントより上のOLEDスタック内のOLED発光ユニットのすべてが、同じ色、例えば、赤色、緑色、または青色を発光する。これは、画素化RGBマイクロディスプレイを結果としてもたらす。図10は、R、G、およびB画素を作成するために3つの異なるOLED副画素スタックを使用するマイクロディスプレイ100を例証する。各OLED副画素スタックは、同じ色を発光する3つのOLED発光ユニットを含み、各ユニットが、CGLによって別のユニットから垂直に分離される。
【0117】
マイクロディスプレイ100内には、図2図8に示されるものなどの制御回路のアレイ、ならびに入力信号に従って副画素に電力を供給する他の必要な構成要素を備えるシリコンバックプレーン3が存在する。トランジスタおよび制御回路を有する層3の上には、任意選択の平坦化層5が存在し得る。層5(存在する場合)の上には、個々の下部電極セグメント9と層3内の制御回路との間に電気接触を作るために任意選択の平坦化層を通って延びる電気接点7によって接続される個々の第1の電極セグメント9がある。個々の下部電極セグメント9は、画素定義層1によって横方向に互いから電気的に絶縁される。セグメント化された下部電極セグメント9の上には、電子もしくは正孔注入(EILまたはHIL)または電子もしくは正孔輸送(ETLまたはHTL)層などの非発光OLED層11がある。第1の発光OLEDユニット13は、OLED層11の上にある。層15は、第1の発光層13と第2の発光OLEDユニット17との間にあり、これらを分離する、電荷発生層である。第2の発光OLEDユニット17の上には、第2の発光OLEDユニット17と第3の発光OLEDユニット21との間にあり、これらを分離する、第2の電荷発生層19が存在する。第3の発光層21の上には、電子もしくは正孔輸送層または電子もしくは正孔注入層などの非発光OLED層23、および光が透過され得る透明上部電極25がある。OLEDマイクロキャビティは、カプセル化層27によって環境から保護される。示される実施形態において、単一のOLEDスタック内のすべての有機層は、画素定義層1によって隣接するスタックから水平に分離されるが、上部電極25およびカプセル化層27は、共通しており、アクティブ領域全体にわたって延びる。しかしながら、上部電極25は、連続的である必要はなく、所望の場合はセグメント化されてもよい。マイクロディスプレイ100において、同じ下部電極セグメント9より上のOLED発光ユニット13、17、21のすべてが、B、G、またはRのいずれかの同じ色の光を放出する。この特定のマイクロディスプレイは、マイクロキャビティデバイスではないが、マイクロキャビティ効果を使用した同様の画素化RGB設計が使用され得る。
【0118】
OLED発光の輝度および色純度を増大させる1つの周知の方法は、光学マイクロキャビティ効果を利用することによる。この効果は、反射面と、一部の光を通過させる半反射面との間に光共振器を作成することに基づく。2つの表面間の複数の反射は、2つの表面間の光学距離に応じて、定在波を作り出し、これにより、発光が、定在波の腹(anti-node)または節(node)で発生するかどうかに応じて、それぞれ、強め合う干渉効果および弱め合う干渉効果が理由で、一部の波長の光を強め、他を減少させる。腹は、反射体の間の合計空間に応じて、および最適化される波長に応じて、異なる場所で発生する。しかしながら、マイクロキャビティから放出される光は、視野角が視野面に対する垂直から逸脱すると色シフトおよび輝度の損失が存在し得るという極端な角度依存を示し得る。これは、多くの場合、投影光学系の限られた入射角に起因して、NED応用では問題ではない。
【0119】
マイクロキャビティ効果を使用することによって、OLEDスタックの輝度をさらに増大させることが望ましい。例えば、図10に示されるようなマイクロディスプレイ100は、下部電極の下に反射下部電極または反射層を使用し、上部電極がある程度の反射性を有するように上部電極を半透明にし、反射素子(下部電極9または下層の反射層)の最上面と上部電極の最下面との間の距離を調節してその特定の色の光に好適なマイクロキャビティを作成することによって、マイクロキャビティ効果を作成するように再設計され得る。
【0120】
図11は、R、G、およびB画素を作成するために色フィルタアレイ(CFA)と一緒に、すべての画素にわたって共通であるマルチモーダル(白色)OLEDマイクロキャビティを使用するマイクロディスプレイ200を例証する。マルチモーダルOLEDは、2つ以上の色の光を生成する。理想的には、マルチモーダルOLEDは、ほぼ等しい量のR、G、およびB光を有する白色光を生成する。典型的には、これは、およそ0.33、0.33のCIE、CIE値に対応する。しかしながら、これらの値からのいくらかの変動が、依然として許容であり、あるいは、RGB画素を作成するために使用される色フィルタの特性によっては望ましい。マイクロディスプレイ200もまた、マイクロキャビティ効果を組み込む。この実施形態において、マルチモーダルOLEDスタックは、異なる色を放出する3つのOLED発光ユニットを含み、各ユニットが、CGLによって別のユニットから垂直に分離され、反射面と上部電極との間の距離は、アクティブ領域にわたって一定である。
【0121】
マイクロディスプレイ200内には、図2図8に示されるものなどの制御回路のアレイ、ならびに入力信号に従って副画素に電力を供給する必要な構成要素を備えるシリコンバックプレーン3が存在する。トランジスタおよび制御回路を有する層3の上には、任意選択の平坦化層5が存在し得る。層5(存在する場合)の上には、個々の下部電極セグメント9と層3内の制御回路との間に電気接触を作るために任意選択の平坦化層を通って延びる電気接点7によって接続される個々の第1の電極セグメント9がある。この実施形態において、下部電極セグメント9は、基板1のより近くにある反射層9b、およびOLED層のより近くにある電極層9aという2つの層を有する。個々の下部電極セグメント9は、横方向に互いに電気的に絶縁される。セグメント化された下部電極セグメント9の上には、電子もしくは正孔注入または電子もしくは正孔輸送層などの非発光OLED層11がある。赤色OLED発光ユニット13Aは、OLED層11の上にある。層15は、赤色OLED光生成ユニット13Aと緑色OLED光生成ユニット17Aとの間にあり、これらを分離する、第1の電荷発生層である。緑色発光層17Aの上には、緑色OLED光生成ユニット17Aと青色OLED光生成ユニット21Aとの間にあり、これらを分離する、第2の電荷発生層19が存在する。青色OLED光生成ユニット21Aの上には、電子もしくは正孔輸送層または電子もしくは正孔注入層などの非発光OLED層23、および半透明上部電極25がある。これは、反射面9Bの最上面から、半反射電極でもある半透明上部電極25の最下面まで延びるOLEDマイクロキャビティ30を形成する。OLEDマイクロキャビティは、カプセル化層27によって環境から保護される。この実施形態においては、B、G、およびR光が下層の電極セグメント9に供給される電力に従って放出されるように、OLEDマイクロキャビティ30によって生成されるマルチモーダル発光をフィルタする色フィルタ29B、29G、および29Rを有する色フィルタアレイが存在する。
【0122】
図12は、青色OLED発光ユニット21AとOLED層23との間に位置する追加の青色OLED発光層22を有する、マイクロディスプレイ200の変異形、マイクロディスプレイ300を示す。この実施形態においては、青色OLEDユニット21Aと追加の青色発光層22との間にCGLは存在しない。マイクロディスプレイ200のように、マイクロディスプレイ300は、青色ユニット21Aおよび青色層22がCGLによって分離されない(そのため、層22は、別個の発光OLEDユニットとして数えられず、青色発光ユニット21Aの一部と考えられるべきである)ため、3つの(4つではない)OLED光生成ユニットを有する。青色ユニット21Aおよび青色LEL22が非電荷発生中間層によって分離されたとしても、依然としてスタック内には3つのLEDユニットのみが存在する。しかしながら、青色発光ユニット21Aと追加の青色発光層22との間に位置する中間CGLが存在していた場合、OLEDスタックは、4つのOLEDユニットを含むことになる。
【0123】
図13は、5つのOLED発光ユニットが存在することを除き、マイクロディスプレイ200に類似したマイクロキャビティ効果を有するマルチモーダルOLEDマイクロディスプレイ400の別の実施形態を示す。この場合、OLEDユニットのうちのいくつかは同じ色の光を放出し、他のユニットは、異なる色の光を放出する。特に、マルチモーダルマイクロディスプレイ400は、2つの青色OLED光生成ユニット、1つの緑色OLED光生成ユニット、1つの黄色OLED光生成ユニット、および1つの赤色OLED光生成ユニットを有し、それらのすべてがCGLによって分離される。
【0124】
マイクロディスプレイ400において、OLEDユニット13Aは、赤色発光である。それは、CGL15によって黄色発光OLEDユニット16から分離される。黄色発光OLEDユニット16は、CGL14によって緑色発光OLEDユニット17Aから分離される。緑色発光OLEDユニット17Aは、CGL19によって第1の青色発光OLEDユニット21Aから分離される。第2の青色発光ユニット32は、CGL24によって第1の青色発光OLEDユニット21Aから分離される。他の層のすべては、図12と同じである。
【0125】
先に述べたように、OLEDマイクロディスプレイは、基板としての役割を果たすシリコンバックプレーン上に構築される。一般的に言うと、バックプレーンは、均一の厚さで平坦である。シリコンバックプレーンは、通常、不透明であるため、OLEDスタックは、好ましくは上面発光である。しかしながら、透明バックプレーンが知られており、そのような場合、OLEDスタックは、上面または下面発光であり得る。基板の上面は、OLEDに面するものである。シリコンバックプレーンは、様々なタイプの下塗り層(すなわち、平坦化層、光管理層、遮光層など)を有し得、この下塗り層は、パターン化または非パターン化され得、上面または下面のいずれかにあり得る。
【0126】
下部電極セグメント(9または9a)は、陽極または陰極であり得、透明、反射性、不透明、または半透明であり得る。OLEDが上面発光である場合、下部電極は、Al、Au、Ag、もしくはMg、またはそれらの合金などの、少なくとも30nm、および望ましくは少なくとも60nmの厚さを有する、透明の金属酸化物または反射性金属で作製され得る。
【0127】
第1の電極が反射層の上にあるマイクロキャビティ応用において、第1の電極は透明でなければならない。しかしながら、他の応用において、第1の電極層9aおよび9bは、単一の反射電極にまとめられ得、その結果として、その最上反射面が、光学マイクロキャビティ(すなわち、図11内の30)の片側を形成する。
【0128】
OLEDスタックが上面発光マイクロキャビティであり、下部電極が透明であるとき、マイクロキャビティ30の第1の側面を定義する、下部電極の下の反射層が存在しなければならない。透明陽極が反射面の上に位置するとき、それは光学キャビティの一部である。反射層9bは、Al、Au、Ag、Mg、Cu、もしくはRh、またはそれらの合金などの反射性金属、誘電体鏡、または高反射コーティングであり得る。誘電体鏡は、基板上に蒸着される、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、および様々な金属酸化物などの材料の複数の薄層から構築される。高反射コーティングは、一方は高屈折率(硫化亜鉛(n=2.32)または二酸化チタン(n=2.4)など)、および一方は低屈折率(フッ化マグネシウム(n=1.38)または二酸化ケイ素(n=1.49))の2つの材料の複数の層からなる。層の厚さは、通常、反射されている光に対する波長に関して1/4波長である。反射層は、入射光の少なくとも80%、および最も好ましくは、少なくとも90%を反射することが望ましい。好ましい反射層は、300~2000Å、最も好ましくは800~1500Åの厚さを有するAlまたはAgである。
【0129】
望ましくは、OLEDスタックが下面発光であるとき、下部電極は、透明陽極であり、好ましくは、少なくとも70%、またはより望ましくは少なくとも80%の透過率を有して、可視光をできる限り透過しなければならない。下部透明電極は、任意の導電材料で作製され得るが、ITOもしくはAZOなどの金属酸化物、またはAgなどの金属の薄層が好ましい。導電性の乏しい材料(例えば、TiN)は、それらが薄くされることを前提に使用されてもよい。
【0130】
正孔注入層、正孔輸送層、または電子注入層、もしくは電子輸送層など、非発光層(すなわち、図10内の11および23)における使用に好適な電子輸送および正孔輸送材料は、周知であり、一般的に使用される。これらの層は、そのような材料の混合であってもよく、それらの性質を修正するためにドーパントを含んでもよい。それらは非発光であるため、それらは、発光材料を含まず、透明である。適切な材料の選択は、重大ではなく、どれもそれらの性能に基づいて選択され得る。
【0131】
マイクロキャビティ効果を利用する実施形態においては、マイクロキャビティ内の様々なOLEDユニット間の間隔ならびにマイクロキャビティのサイズが、効率を最大限にするために重要であることから、典型的には、所望の間隔を提供するために様々な非発光層の厚さを選択することが必要である。望ましくは、OLEDユニット間の間隔ならびにマイクロキャビティのサイズの調節は、適切な厚さの、正孔輸送層などの有機非発光層を使用することによってもたらされる。
【0132】
発光層は、典型的には、層の主成分であるホスト材料(またはホスト材料の混合物)、および発光化合物を有する。望ましくは、発光化合物は、燐光性であり、それは、これらがより高い効率を有するためである。しかしながら、場合によっては、一部のLELは、発光のための材料として蛍光またはTADF(熱活性型遅延蛍光)化合物を使用するが、他は燐光材料を使用する。特に、青色光OLED層は、蛍光もしくはTADF化合物またはそれらの組み合わせを使用し得る一方、非青色発光層は、緑色、黄色、橙色、もしくは赤色燐光化合物、またはそれらの組み合わせを使用し得る。発光層は、発光材料の組み合わせを使用し得る。LELのための適切な材料の選択は、周知であり、重大ではなく、どれもそれらの性能および発光特性に基づいて選択され得る。燐光エミッタを使用しているとき、時として、燐光エミッタによって生成される励起子を層内に閉じ込める必要がある。故に、燐光LELの片側または両側において、励起子阻止層が必要に応じて使用され得る。そのような材料およびそれらの適用は、周知である。加えて、寿命および輝度効率を向上させるために、発光層、特に青色発光層の周りにHBL(正孔阻止層)およびEBL層(電子阻止層)を追加することが望ましい場合がある。
【0133】
上部電極(すなわち、図10内の25)は、OLEDスタックが上面発光である場合は透明、OLEDスタックが下面発光である場合は反射性でなければならず、OLEDスタックがマイクロキャビティである場合、半透明ならびに半反射性でなければならず、すなわち、光の一部を反射し、残りを透過する。マイクロキャビティの場合、上部電極の最も下の内表面が、マイクロキャビティ30の第2の側面を規定する。望ましくは、半透明上部電極は、マイクロキャビティ効果を確立するために、LELによって放出される光の少なくとも5%、およびより望ましくは少なくとも10%を反射する。半透明の第2の電極の厚さは、それが反射光の量およびどれくらい透過されるかを制御することから、重要である。しかしながら、それは、電荷を効率的にOLEDに渡すことができない、またはピンホールもしくは他の欠陥を被る可能性があるため、過度に薄くすることはできない。上方電極層の厚さは、望ましくは、100~200Å、およびより望ましくは、125~175Åである。
【0134】
上部電極は、望ましくは、金属または金属合金の薄層である。好適な金属は、Ag、Mg、Al、およびCa、またはそれらの合金である。これらのうち、Agが好ましいが、それは、Agが比較的低い青色吸収を有するためである。電子輸送ならびに安定化を手伝うため、ITO、InZnO、またはMoOなど、電極表面上に透明金属酸化物の隣接層が存在し得る。代替的に、LiClなどの金属ハロゲン化物、キノリン酸リチウムなどの有機金属酸化物、または他の有機材料が使用されてもよい。
【0135】
カプセル化の間の損傷を防ぐために上方電極の上に保護または間隔層(図10図13には示されない)が存在し得る。
【0136】
上部電極25、および存在する場合、任意選択の保護層の上には、カプセル化27が蒸着または配置される。最低限、カプセル化は、上面および側面において発光領域を完全に被覆しなければならず、基板と直接接触状態にある。カプセル化は、空気および水の浸透に対して耐性がなければならない。それは、透明または不透明であり得る。それは、導電性であってはならない。それは、インシチュで形成され得るか、または側縁を密閉するための対策と一緒に別個の予め形成されたシートとして追加され得る。インシチュ形成の例は、薄膜カプセル化である。薄膜カプセル化は、所望の度合いの保護が達成されるまで無機材料の代替層および高分子層を用いた複数の層の蒸着を伴う。薄膜カプセル化を形成するための配合組成および方法は周知であり、いずれも所望の通りに使用され得る。代替的に、カプセル化は、少なくとも密閉領域および封入領域の上に装着される予め形成されたシートまたはカバースリップを使用してもたらされ得る。予め形成されたシートは、剛性が高い、または可撓性が高い場合がある。それは、ガラス(可撓性の高いガラス)、金属、または有機/無機バリア層で作製され得る。それは、より堅固な接続を達成するために、基板により近い熱膨張係数を有さなければならない。予め形成されたカプセル化シートは、シリコンもしくはエポキシ接着剤などの気密および防水接着剤を使用して、または、はんだもしくはガラスフリットなどの追加の密閉剤を必要とし得る超音波溶接もしくはガラスフリット溶接などの熱的手段によって、密閉領域に装着される必要があり得る。カバースリップの側縁および下縁は、特に、密閉領域に対するより良好な適合を有する、またはより良好な密閉を促進するように設計され得る。カバースリップおよび密閉領域は、密閉が形成される前にそれらが適所に部分的に適合または係止するように、一緒に設計され得る。さらには、カバースリップは、密閉領域へのより良好な接着を促進するために前処理され得る。
【0137】
本出願は、マイクロディスプレイ内の発光素子としてOLEDを使用することについて説明するが、同じ制御回路が、発光のために比較的高い電圧を必要とする任意の自己発光ディスプレイ技術において使用され得る。本発明は、OLEDだけでなく、少なくとも1000ニト、または好ましくは少なくとも5000ニトの発光を提供するために、5V超、好ましくは7.5V超、あるいは10V超を必要とする任意の他のディスプレイ技術にも限定されない。
【0138】
ディスプレイ内のクロストークは、1つの画素によって提供される発光輝度が、意図せず別の画素による影響を受ける場所である。これは、影響を受けた画素がもはや画像信号に従って正確な輝度を提供しないため、画像の品質が劣化され得ることから望ましくない。クロストークの量および性質によっては、色再現、コントラスト(最大輝度と最小輝度との差)、グレースケール、解像度、およびディスプレイ内の「ゴースト発生」などの重要な因子がすべて悪影響を受け得る。一般に、マイクロディスプレイ内のクロストークは、画素ピッチが小さい場合に特に問題となる。画素間のクロストークの量が15%以下、または好ましくは5%以下、および最も好ましくは3%以下であることが望ましい。
【0139】
説明される積層型マイクロキャビティOLEDデバイスは、必ず、内部発光ユニット間に規定の間隔を伴った厚さである。これは、マイクロキャビティ効果を提供して単一のマイクロキャビティ内のR、G、およびB発光を強化するために必須である。これは、光学機構および化学/電気機構の両方による増大されたクロストークをもたらし得る。クロストークの量を増大させ得るいくつかの光学プロセスとしては、OLEDデバイス内の光散乱および導波が挙げられる。クロストークを増大させ得るいくつかの化学/電気プロセスとしては、アクティブ画素領域から同じ層内の近傍非アクティブ画素領域への横方向のキャリア移動が挙げられる。
【0140】
クロストークを結果としてもたらすモードは複数存在すると考えられる。短距離(0.2~0.7μm)は、横方向の電荷キャリアおよび光学機構の組み合わせであるように思われる。中距離(3~7μm)相互作用は、横方向の電荷キャリア移動に主に起因するように思われるが、部分的には光学機構に起因し得る。長距離(50~200μm)相互作用は、アクティブ画素領域から非アクティブ領域への光散乱に主に起因するように思われる。画素ピッチに従った導波に基づいたクロストークへのさらに長距離の光学寄与が存在することも考えられる。
【0141】
OLEDデバイス内のキャリア移動に起因するクロストークの問題を最小限にするためのいくつかの有用な方法としては、以下が挙げられる。
-高いキャリア移動度を有する層(例えば、HIL、HTL、CGL、ETL、およびEIL)における層厚および組成を(「シート抵抗」を増大させるように)変化させることによって低減される横方向の電荷キャリア移動。特に、電荷キャリア(正孔または電子のいずれか)は、アクティブ領域内で生成され、点灯領域と非点灯領域との間の間隙にわたって横方向に移動することができる。この問題は、電極のうちの1つの隣または近くの層内で主に発生するように思われる。陽極の上の共通のHILおよびHTL層が、この問題の最大原因であり得ると考えられる。正孔が1つの陽極パッド上のHILの点灯領域内に生成されると、それらは近傍陽極パッドの非点灯領域へ移動することができ、正孔に起因する結果として生じる電圧が、OLEDのVthを超過し得るため、(名目上は非点灯の)画素が、いずれにせよ光を放出すると思われる。加えて、正孔は、導電性陽極パッドへ入り、非常に小さい水平抵抗で横方向に陽極を通って流れることができる。非点灯陽極パッドの反対側では、電流は、次の非点灯陽極パッドへのジャンプのためにHIL内へ(正孔として)戻ることができる。故に、キャリア移動の問題は、隣接する陽極パッド間のより短い距離だけに限定されない場合があり、より長い距離成分も有し得る。この理由のため、両方の電極、および時に陽極の、厚さおよび組成に対して細心の注意が払われなければならない。キャリア移動度の小さいより薄い有機層は、これらの望ましくないキャリア移動プロセスを最小限にすることを助けることができる。
-高いキャリア移動性を有する有機層のための材料選択。特に、材料は、クロストークへのそれらの貢献を最小限にするように選択され得る。HILに追加されるpドーパント(例えば、F4-TCNQ、F6-TCNNQ、またはHAT-CN)のタイプおよびレベルは、この点に関して、HILまたはHTLにおけるHTM(例えば、NPBまたはSpiro-TTBなどの芳香族アミン化合物)の選択と同様に重要であり得る。Pドーパントのみ、または非ドープHILもまた効果的であり得る。いくつかの場合において、非ドープHILおよびpドープHTLが使用され得る。MoOなどの無機HIL材料(有機材料と混合され得る)も利点を有し得る。
【0142】
OLEDデバイス内の光学プロセスに起因するクロストークの問題を最小限にするためのいくつかの有用な方法としては、以下が挙げられる。
-基板法線方向から高角度で進行する光を吸収するように特に設計される光学フィルタリング層の使用を含む、空気/ガラス界面と反射陽極との間の光導波を低減するための最適化色フィルタ。
-散乱部位の減少によって低減される光散乱。特に、陽極上またはその近くの小粒子デブリの量は、最小限にされなければならない。散乱はまた、蒸着に使用される組成およびプロセスに依存し得る陰極におけるラフネスから発生し得る。(例えば、Shenら、“Efficient Upper-Excited State Fluorescence in an Organic Hyperbolic Metamaterial”,Nano Lett.2018,18,3,1693-1698を参照のこと)
-陽極表面全体が、アクティブ画素領域および画素間の両方にわたってできる限り平坦および平滑でなければならない。特に、画素間のPDL(画素定義層)を形成し、画素領域内で陽極の表面の上に延びる突出、隆起、または他の構造物は、光を散乱させて画素領域内へ戻すのに有用であり、光が近傍(非点灯)画素に入るのを防ぎ得ることが知られている。しかしながら、この手法は、構造物を覆うより厚いOLED層が存在する場合はそれほど効果的でない。より厚い層内にトラップされた光は、層内で内側に反射される可能性が高く、その結果として、光は、構造物の上を反対側へと進行することができる。陽極および上を覆うOLED層が均一に平坦である場合、ディスプレイの層内で導波している光は、それが吸収されるか、またはディスプレイの縁に達するまで、不断であり続ける可能性が高い。
-導波光のための吸収体の使用。
-バックプレーンの絶縁体による光吸収。
-HILからの電荷が陽極に入る障壁を作成するためのHILおよび陽極の設計。
【0143】
クロストークを制御するために、名目上「オフ」(電源が入っておらず、そのため非発光)であるように、OLEDが駆動されるときにはいつも陽極における電圧を制御する、第2のスイッチトランジスタとOLEDの陽極との間に位置するノードに、さらなる別個の画素制御回路を追加することが有用であり得る。特に、画素制御回路は、駆動回路が、その画素が発光を有さない、または非常にわずかしか有さないことを要求するときにのみ、電圧をOLEDのVthより下に減少させなければならない。このやり方では、横方向のキャリア移動によって形成されるいかなる電圧も最小限にされ得る。
実験結果
【0144】
以下の実施例では、各材料の前の数字(例えば、200HIL)は、別途記載のない限り、オングストロームでの物理的な層厚である。すべての%は、重量である。すべてのデバイスは、同じ手順を使用して陰極の蒸着の後にカプセル化された。すべての材料は、市販のものを購入した。
【0145】
以下の実験デバイスに使用されるバックプレーンは、単一の結晶シリコンベースのバックプレーンであり、図6aおよび図6bに示される概略制御回路と共に受容されるように使用された。バックプレーンは、直列接続された低電圧(5Vで定格される)pチャネルトランジスタである駆動トランジスタ(T1)およびスイッチトランジスタ(T2)、ならびに画素ごとにNPN型バイポーラ接合トランジスタ(BJT1)を有する保護回路を含む。実験例のすべてにおいて、BJT1のベースは絶縁され、すなわち、ベースは、BJTのベース電圧が意図せず制御される、または任意の特定の電圧へと設定されることがないように、外部電源に接続されていなかった。バックプレーンは、下部電極/陽極として反射金属層を含んでいた。
【0146】
比較用2ユニット積層型OLEDデバイスA-1は、以下のように調製した。
層1(反射下部電極/陽極):供給通り
層2(正孔注入層HIL):200正孔輸送材料HTM1+6%pドーパントPD1
層3(正孔輸送層HTL1):410正孔輸送材料HTM1
層4(HTL2):50正孔輸送材料HTM2
層5(緑色LEL):100緑色ホストGH1および3%緑色燐光ドーパントGPD1
層6(黄色LEL):100GH1+10%GPD1+3%赤色燐光ドーパントRPD1
層7(電子輸送層ETL1):200電子輸送材料ETM1
層8~10(電荷発生層CGL1):270三層
層11A(HTL3):300HTM1
層11B(HTL4):280HTM1
層12(青色LEL2):200青色ホストBH1+4%蛍光性青色ドーパントBFD1
層13(ETL2):150ETM2
層14(電子注入層EIL):150ETM1+2%Li
層15(半透明陰極):105 75%Ag/25%Mg
【0147】
第2の比較用OLEDデバイスA-2は、層11Aおよび11Bの厚さがそれぞれ1090および4090へ増加されたことを除き、同様の様式で調製した。A1およびA-2の両方は、層5(G LEL)および層6(赤色LEL)が一緒に1つのユニット(G-Yスタック)を表し、層11(青色LEL)がCGLによって第1のユニットから分離される第2のユニット(Bスタック)を表す、2ユニット積層型OLEDである。層5および6は、それらがCGL(層8および9)によって互いから分離されない隣接するLELであることから、単一のユニットである。A-1およびA-2の両方は、マイクロキャビティデバイスであり、A-1のマイクロキャビティ厚が2320Aであり、A-2においては、マイクロキャビティは6920Aである。これらの2ユニット積層型OLEDデバイスは、現行の先行技術を表す。
【0148】
発明の3ユニット積層型OLEDB-1は、以下の追加の層が、層11A(その厚さは470へ調節された)と11B(4090で)との間に挿入されたことを除き、同様の様式で調製された。
層16(BLEL1):200BH1+4%BFD1
層17(ETL3):150ETM2
層18-20(CGL2):270三層(CGL1と同じ配合組成)
【0149】
OLEDデバイスB-1は、3ユニット積層型OLEDであり、層5および6が、第1のG-Yユニット(A-1のものと同じ)であり、層16が、追加された第2のBユニットであり、層12(A-1にあるように)が、第3のBユニットである。第2のユニット(層16)は、CGLによって第1のユニット(層5および6)および第3のユニット(層12)から分離される。すなわち、B-1は、A-1と比較してさらなるBユニットを含み、そのため、より高い輝度を有するが、増大された電圧要件を有することになる。OLED B-1は、デバイスA-2と同じマイクロキャビティ厚(6920A)を有するマイクロキャビティデバイスである。図14は、OLEDA-1、A-2(比較用2ユニットデバイス)およびB-1(発明の3ユニットデバイス)についての特徴的なI-V曲線(電圧に対する、mA/cmでの電流密度)を示すものであり、表1にも表集計される。
【表1】
【0150】
図14および表1において、OLEDA-1およびA-2は、ほぼ同じVthを有する。しかしながら、さらなるBユニットを伴うOLED B-1は、著しくより高いVthを有し、A-2と同じ電流密度を生成するためには、さらにより高い電圧(約2.5V高い)を必要とする。
【0151】
2ユニット積層型OLEDに勝る、マイクロキャビティ3ユニット積層型OLEDを有する利点は、A-1、A-2、およびB-1の色フィルタなしのスペクトル出力を比較する(nmでの波長に対する強度)、図15において見ることができる。より薄いマイクロキャビティを有するOLED A-1は、G発光と比較して比較的小さいBおよびR発光を有する。3色すべてに適切なマイクロキャビティを伴うOLED A-2は、Gと比較してより多くのBおよびR発光を有するが、依然としてB発光について制限される。追加のBユニットを伴うOLED B-2は、A-2と比較して大いに増大された青色発光を有する。
【0152】
上の結果は、マイクロディスプレイのためのR、G、およびB画素を作成する色フィルタの追加前の白色光OLEDデバイスについて言及する。先行技術において一般的に知られているように、W OLEDによって生成されるR、G、およびB光の相対量に対するいかなる固有の不均衡にも関係なく、ディスプレイ内の所望のR、G、およびB均衡(通常、D65白色点などの白色輝度に関して言及される)は、個々の色画素をその色の適切な輝度に駆動させることによって達成され得る。例えば、W OLEDが、緑色光と比較して不十分な青色光および余剰な赤色光を生成する場合、B画素は、より多くの青色光を生成するためにより高い電圧で駆動され得る一方、R画素は、より少ない赤色光が生成されるように、より低い電圧で駆動され得る。
【0153】
図16は、R、G、およびB副画素のための等しい面積を仮定して、D65白色点を生成するために色フィルタを使用したOLED デバイスA-1、A-2、およびB-1について各色に必要なピーク電流密度のプロットを示す。2ユニットデバイス(A-1およびA-2)によって必要とされるB内の電流密度は、3ユニットデバイスB-1よりもはるかに大きい。RおよびG内の電流密度は、3つすべてのデバイスにおいてほぼ同じである。3ユニットデバイスB-1は、同じ白色点において同じ標的輝度を達成するために、小さい電流密度、故に、小さい電力を必要とする。ディスプレイの寿命は、主に電流密度および温度の関数である、継続動作によるOLEDの効率低下の速度によって決定される。したがって、ディスプレイB-1は、A-1またはA-2の寿命よりも2倍超である寿命を有することになる。
【0154】
マイクロディスプレイのより小さいサイズを考えると比較的高い輝度を生成することを必要とするマイクロディスプレイにおいて、最大表示輝度で白色を表示しながら全電流(および電流密度)を各色についてほぼ同じ(またはできる限り近く)することが望ましい。これは、ニュートラルフェード(副画素の各色が、デバイス寿命にわたってほぼ同じ速度で輝度効率において劣化する)、高輝度(各画素が、その最大明度で駆動されて、増大した効率をもたらす)、高コントラスト(各画素のフルダイナミックレンジが利用可能である)、および増大した寿命(電流負荷が、画素の各色によって等しく共有される)に関して、いくつかの利点を結果としてもたらす。
【0155】
しかしながら、増大した輝度を提供するために3つ以上のユニットを伴うOLEDを使用することの利点は、必要とされる電圧の増加がある場合、相殺され得る。ディスプレイにおいて、各画素への電力は、バックプレーン内の制御回路によって供給および制御される。しかしながら、低減した面積内に大量の画素を必要とするマイクロディスプレイにおいては、トランジスタおよび他の回路部品のために限られた物理的空間しか存在しない。一般的に言うと、より高い電圧および電流要件は、より大きく、より厚く、またはより堅固な電子回路によって取り扱われなければならない。現在、OLEDマイクロディスプレイのサイズは、電子回路が、所望の画素サイズおよび密度(画素ピッチ)を達成するために5V以下を取り扱うように定格されることを決定づける。
【0156】
トランジスタなどの電子回路は、トランジスタのゲートに供給される電力があまりに長い間過度である場合、破局的に故障し得る。しかしながら、過電圧のすべてのレベルまたは時間が、トランジスタを永久に故障させるのではなく、多くの場合、トランジスタは、漏出により故障する。増大した漏出は、接合またはゲート酸化物が破局的故障を引き起こすには十分でない永久的損傷を被るとき、半導体デバイスの非破局的な過大応力から生じる共通の故障モードである。ゲートへの過大応力は、応力誘発性の漏れ電流をもたらし得る。
【0157】
仮想現実および同様の製品に使用されるマイクロディスプレイにおけるモーションブラーを解決することは、OLEDが、非常に短い時間期間にわたって非常に高い輝度を提供し、次いで別の時間期間の間オフにされる(オン/オフの合計期間は、フリッカを回避するために、人間の知覚範囲よりも小さい)ことを必要とする。これは、バックプレーン内の制御回路が、1つの期間において高輝度を生成するように電圧/電流を供給し、次いで別の期間の間はOLEDへの電力を遮断しなければならないことを意味する。制御回路内のトランジスタに供給される電力が、OLEDがオンにされる期間に高すぎる場合、電流は、トランジスタが「オフ」でなければならず、OLEDが完全にオフにならないとき、トランジスタを通じて漏れ出し得る。OLEDが「オン」になっているときのOLED輝度と「オフ」になっているはずであるときの輝度との差が、通常、「コントラスト」と称される。高コントラストは、画像を鮮鋭かつ鮮明に見せることから、マイクロディスプレイにとって望ましく、低コントラストは、画像をぼんやりかつ平坦に見せる。
【0158】
図17は、2ユニット比較用デバイスおよび発明の3ユニットデバイスについての曲線(カソード電圧に対する輝度)のセットを示す。上方の曲線セットは、デバイスがフル輝度(白色=CV255)で駆動され、駆動トランジスタが「オン」であるときである。下方の曲線セットは、デバイスが輝度なし(黒色=CV0)で駆動され、駆動トランジスタが名目上「オフ」であるときである。しかしながら、駆動トランジスタを通じた電流の漏出が、いくらかの少量の輝度を生成させ、陰極における電圧は非ゼロである。2つの曲線セットの差は、デバイスの「コントラスト」を表し、望ましくは、駆動トランジスタを通じた漏れ電流によって引き起こされる輝度を最小限にすることによって、できる限り高い。図17から分かるように、3つすべてのデバイスのコントラストは、ほぼ同じであり(10よりわずかに小さい)、カソード電圧の範囲にわたって比較的一定である。
【0159】
発明の3ユニットデバイスは、駆動トランジスタの設計限界を超えるより高い動作電圧を必要とするにもかかわらず、比較用2ユニットデバイスとほぼ同じ全体的コントラストを維持する。図16に示されるようにA-1またはA-2よりもB-1では、完全な白色を達成するために小さい電流密度が必要とされるが、B-1は、依然として、より多く(約2.5V、図14を参照のこと)の電圧を必要とする。本発明で使用されるバックプレーンを用いたより高い電圧OLEDでの増大された漏出の証拠はない。さらには、B-1における、より高い電圧要件(表1を参照のこと)に起因するいかなる破局的トランジスタ故障の証拠もなく、制御回路に関するデバイス寿命も影響を受けないように思われる。これらの結果は、A-1、A-2、およびB-1のためのバックプレーン内のトランジスタが、低電圧トランジスタが許容であり、かつ一般的に使用される1または2ユニットOLEDを駆動するのに好適なトランジスタを用いて設計されていたことから、予想外である。
【0160】
A-1、A-2、およびB-1と同じ低電圧バックプレーンを使用して、別の発明の3ユニットOLEDデバイスB-2を、以下のように調製した。
層1(下部電極/陽極):
層2(HIL):200HTM1+6%PD1
層3(HTL1):410HTM1
層4(HTL2):50HTM2
層5(緑色LEL):100GH1および3%GPD1
層6(黄色LEL):100GH1+10%GPD1+3%RPD1
層7(ETL1):200ETM1
層8~10(CGL1):270三層
層11(HTL3):570HTM1
層12(青色LEL2):250BH1+4%BFD1
層13(ETL2):150ETM2
層14~16(CGL2):270三層(CGL1と同じ配合組成)
層17(HTL4):3840HTM1
層18(BLEL1):250BH1+4%BFD1
層19(ETL3):150ETM2
層20(EIL):100ETM2+2%Li
層21(半透明陰極):105 75%Ag/25%Mg
【0161】
OLED B-2は、それが、第2のCGL(層14~16)によって第1の青色ユニット(層18)から分離される、第2の青色ユニット(層12)からCGL(層8~10)によって分離されるG-Yユニット(層5および6)を、Y-G/B/Bの順に(バックプレーンから)含むことから、B-1のような3ユニットデバイスである。B-1のように、B-2は、6910Åのマイクロキャビティを有するマイクロキャビティ白色光生成OLEDである。
【0162】
同様の様式で、発明の4ユニットOLEDデバイスC-1を以下のように調製した。
層1~11:B-2における層1~11と同じ
層12(青色LEL2):200BH1+4%BFD1(50Åの減少)
層13(ETL2):100ETM2(50Åの減少)
層14~16:B-2における層14~16と同じ
層17(HTL4):420HTM1(3420Åの減少)
層18(BLEL1):200BH1+4%BFD1(50Åの減少)
層19(ETL3):100ETM2(50Åの減少)
層20~22(CGL3):270三層(CGL1およびCGL2と同じ配合組成)
層23(HTL5):2620HTM1
層24(HTL6):50HTM2
層25(黄色LEL):200GH1+10%GPD1+3%RPD1
層26(ETL4):480ETM1
層27~28:B-2における層20~21と同じ
【0163】
OLED C-1は、それが、B-2における同じG-Yおよび2つのBユニットと一緒に追加のYユニット(層25)を、Y-G/B/B/Yの順で(バックプレーンから)含むことから、4ユニットデバイスである。C-1において、追加のYユニットは、CGL3(層20~22)によって第1のBユニット(層18)から分離される。C-1は、6910Åのマイクロキャビティを有するマイクロキャビティ白色光生成OLEDである。
【0164】
同様の様式で、発明の5ユニットOLEDデバイスD-1を以下のように調製した。
層1~10:C-1における層1~11と同じ
層11(HTL3):370HTM1(200Åだけ減少)
層12~16:C-1における層12~17と同じ
層18(ETL2):100ETM2(50Åの減少)
層14~16:C-1における層14~16と同じ
層17(HTL4):620HTM1(200Åの増加)
層18~22:C-1における層18~22と同じ
層23(HTL5):610HTM1(2010Åの減少)
層24(BLEL3):200BH1+4%BFD1
層25(ETL3):100ETM2
層26~28(CGL4):270三層(CGL1、CGL2、およびCGL3と同じ配合組成)
層29(HTL6):1440HTM1
層30~34:C-1における層24~28と同じ
【0165】
OLED D-1は、それが、C-1における、同じY、G-Y、および2つのBユニットと一緒に追加のBユニット(層24)を含むことから、5ユニットデバイスである。それは、合計で3つのBユニット、1つのYユニット、および1つのG-Yユニットを、Y-G/B/B/B/Yの順(バックプレーンから)で、すべてがCGLによって分離されて有する。C-1は、6910Åのマイクロキャビティを有するマイクロキャビティ白色光生成OLEDである。
【0166】
図18は、OLED B-2、C-1、およびD-1についての特徴的なI-V曲線を示すものであり、表2にも表集計される。
【表2】
【0167】
図18および表2に示されるように、OLED内の各ユニットの追加は、より大きい輝度を提供するが、Vthおよび動作電圧も約2.5V増大させる。
【0168】
追加のユニットをマイクロキャビティ3ユニットOLEDに追加する利点は、B-2(3ユニット)、C-1(4ユニット)、およびD-1(5ユニット)のスペクトル出力(色フィルタなし)を比較する図19において見ることができる。OLED B-2は、G/Yユニットに加えて2つのBユニットを有する。C-1にあるように別のYユニットを追加することは、B-2に対してGおよびR発光の量を増大させるが、B発光の点ではそれほどでもない。D-1にあるように第3のBユニットを追加することは、より高いGおよびR発光を保持したまま青色発光をさらに増大させる。
【0169】
図16に示される結果と同様に、図20は、OLED B-2、C-1、およびD-1を用いて、1500cd/mで均衡した白色輝度を(色フィルタを使用して)作成するために必要な各色画素についてのピーク電流密度の相対量を示す。C-1におけるさらなるYユニットの追加は、B-2と比較してRおよびG輝度の必要量を生成するのに必要とされる電流を減少させる。D-1におけるさらなるBユニットの追加は、C-1と比較してB光の必要量を生成するために必要とされる電圧をさらに減少させる。3つ以上のユニットを有するこれらのOLEDは、同じ輝度を達成するのにより小さい電流密度を必要とすることから、それらの稼働寿命は、より少ないユニットを有するOLEDよりも著しく長くなる。これらのデバイスのLT70(発光出力が70%だけ劣化する時間)寿命は、平均的な動画コンテンツの場合、少なくとも18,000時間であると予測される。
【0170】
図21図17と同様)は、OLED B-2、C-1、およびD-1についての曲線セット(カソード電圧に対する輝度)を示す。これらの例の3つすべてにおいて、コントラストは、ほぼ同じであり(10よりわずかに小さい)、カソード電圧の範囲にわたって比較的一定である。これらのデバイスの動作電圧が駆動トランジスタの設計制限の2または3倍であるときにさえコントラストが保持されるということは注目に値する。
【0171】
なぜ比較的高いVthを必要とする積層型OLEDは、高コントラストを維持するが、低電圧トランジスタを有するバックプレーンを使用するときバーンアウトまたは破壊を引き起こさないのかに関するいかなる特定の理論または推論にも限定されず、それは、直列接続されたトランジスタの使用に関連し得る。トランジスタ内の漏れ電流は、周知の問題であり、一般的に言うと、より高い電圧および電流が関与するほど、漏出の量が大きい。先に論じたように、この漏出は、それがVthよりも大きい場合にOLEDからの発光を引き起こし得る。直列接続されたトランジスタを通じた全漏出は、(第1のトランジスタの漏出)×(第2のトランジスタの漏出)であるため、この倍数的効果は、OLEDが、漏れ電流に起因して発光せず、そのため、コントラストが維持されるように、OLEDの下部電極における漏出を著しく十分に低減するのに十分であるということであり得る。
【0172】
動作中、実験用マイクロディスプレイのバックプレーン内の、チャネルが直列で接続されている少なくとも2つのトランジスタを備える制御回路は、3つ以上のスタックを有するOLEDを、LVトランジスタの指定の動作範囲よりも大きいオン-オフ電圧範囲で駆動させるときにさえ、駆動トランジスタT1が指定の範囲外の条件下で動作しないようにする小型回路の例である。OLEDのオン-オフ電圧範囲がLV動作範囲を超える場合、スイッチトランジスタのみがこれらの条件にさらされる。これは、駆動トランジスタが指定の動作範囲外で動作しなければならない他の画素回路設計よりも画像品質に及ぼす害が小さい。
【0173】
動作により、MOSFETデバイスは経年劣化し、これが、閾値電圧、閾値下の勾配、および飽和における相互コンダクタンスのようなそれらの特性のうちのいくつかにおいて、緩徐なシフトを結果としてもたらす。これらはすべて、pチャネルトランジスタにおいて見られる負バイアス温度不安定性(Negative Bias Temperature Instability:NBTI)およびホットキャリア注入(Hot Carrier Injection:HCI)の症状である。トランジスタの動作をトランジスタのための指定の電圧範囲内に制限することによって、トランジスタ特性が5年などの長期間にわたって狭く指定された範囲内に留まることを保証する。トランジスタを指定の電圧範囲外で動作させることは、トランジスタ特性の変化の速度を増大させ、それにより、その特性が指定の範囲内である期間を低減する。
【0174】
駆動トランジスタの特性が指定限界以内に留まることが重要であり、さもなければ、画像劣化(しばしばムラと呼ばれる)という結果になり得る。スイッチトランジスタの動作は、性能特性におけるその変化に対してより堅固であり、トランジスタ特性が指定の範囲外へシフトされたときにさえ満足のいく動作を保証する十分に幅広いゲート電圧で駆動され得る。故に、本発明の実験用積層型OLEDマイクロディスプレイのためのバックプレーン内で使用されるものを含む、図2図6に示される回路は、トランジスタの指定の動作範囲を超えることに起因して予期されるディスプレイ品質における予期される下落なしに、3つ以上のOLEDユニットと関連付けられたより高いオン-オフ電圧を取り扱うように設計される小型回路の例である。
【0175】
図2図6内の回路は、発光「オン」および発光「オフ」のためのSELECT2電圧の選択によってこれを達成すると考えられる。発光「オフ」の場合、SELECT2電圧の正当な選択は、VDDであり、これにより、T2を動作のサブスレッショルド領域内に置いて、電流を効果的に停止する。発光「オン」の場合、SELECT2電圧は、VDDを下回る5Vの低さで選択され得る。
【0176】
OLEDのオン-オフ電圧振幅が約4Vよりも小さい場合、画素が「黒色」を表示しているとき、黒色レベル電流が駆動トランジスタによって通常方式で設定されることになり、T1のドレインは、SELECT2「オン」電圧を上回ることになり、スイッチトランジスタT2は、導電性のままである。しかしながら、5つ以上のユニットを有するマルチユニット積層型OLEDの場合のように、OLEDのオン-オフ電圧振幅が約4Vよりも大きい場合、黒色レベル電流を作成するとき、T1のドレイン電圧(T2のソース電圧でもある)は、SELECT2「オン」電圧に近づき、スイッチトランジスタT2は、T1の低ドレイン電圧がT2の過電圧(Vgs-Vth)をゼロまたはわずかにマイナスへ減少させると、停止する。これが、T2をサブスレッショルド型に入れ、黒色レベルを作成する。マルチユニット積層型OLEDによって作成されるこれらの条件下で、駆動トランジスタT1は、黒色レベル電流を作成するようにT2を制御している。
【0177】
これらの理由のため、図2図6に示される単純な直列接続されたトランジスタ設計は、例えば図1に示される単一のトランジスタ駆動回路よりも経年劣化に関連したムラが少なく、低電圧トランジスタの電圧範囲を超過したオン-オフ電圧範囲でマルチユニット積層型OLEDを駆動させることができると考えられる。
【0178】
保護回路は、OLEDが「オフ」または非発光であることが意図されるときにはいつもOLEDの陽極における電圧をある特定のレベルより下に維持するように設計され、高コントラストを維持することを助け得る。カソード電圧が減少すると(より負の電圧)、保護回路は、駆動およびスイッチトランジスタをデバイスの最大定格に反する電圧レベルから保護するために、追加の電流を提供するように設計される。
【0179】
しかしながら、保護効果は、ベース電圧が意図的に制御されないように、BJTのベースが絶縁され、外部電源に接続されない実験的な例において、依然として観察される。積層型OLEDを欠くデバイスにおいて、OLEDディスプレイについての電圧に対する黒色電流の指数関数的なスロープ(0.75ディケード/ボルト)が、OLEDが存在している例に類似するということが観察されている。これは、保護回路が、BJTのベースが絶縁されるときにさえ、OLEDの陽極において何らかの電流および電圧制御を依然として提供していることを示唆する。いかなる特定の理論または推論に限定されることなく、近傍nウェル(例えば、スイッチトランジスタT2のnウェル)は、BJT BJT1のpウェル(ベース)へ移動する正孔のソースであり得る。これらの正孔がベース内にあると、それらは、空乏領域を越えてn型エミッタコンタクト(OLED陽極パッド)へ拡散し、順方向にベースエミッタダイオードを通って進行する。これは、エミッタからベース内への熱的に励起された電子の拡散、ならびに、ベースとコレクタとの間の大きい電場電位によって促進される、ベースおよび空乏領域を通じたコレクタ内への電子の輸送によって補完される。このシナリオでは、(駆動またはスイッチトランジスタの)近傍nウェルからの正孔は、通常は外部ベース接続に由来するベース内へ電荷(正孔)を提供する。OLED陽極電圧が非常に低レベルまで低下すると(例えば、3つ以上のOLEDユニットで黒色を示す)、駆動回路トランジスタのうちの1つの近傍nウェル(VDDにある)とBJTベース(OLED陽極電圧にある)との間の電位差は、非常に大きく、駆動-トランジスタウェルからBJTベース内への正孔の流れを増加させる。ベース電流におけるこの増加は、BJTによる増幅に起因するエミッタ電流を増加させる。
【0180】
しかしながら、保護回路によって提供される保護効果は、フレームごとに異なり、画像の新規フレームごとに適切にリセットされなければならない。BJTのベースが外部電源に接続され、フレームごとにアクティブ制御されているとき、これは問題ではない。BJTのベースが絶縁され、意図的に接続されない実施形態の場合、フレームごとのリセットは、画素がスイッチトランジスタによって「オフ」にされるとき、それがシャッタ効果を提供することから、提供され得る。故に、保護効果制御運動のこのような態様は、リセットを有するためにデータロード中に(またはフレーム時間の何らかの部分において)発光をオフにすることが必要であるため、直列接続された駆動およびスイッチトランジスタを有することに依存する。
【0181】
3つ以上のユニットを用いたOLED配合組成は、黒色レベル(Vth未満、例えば、2uA/cm2)から白色レベル(20mA/cm2)までの電圧範囲が比較的一定であり、約6V未満であるように設計され得る。図17および図21に示されるように、これは、約10,000:1のコントラストを結果としてもたらし得、また、電流密度の上限における電流効率低下に起因してわずかに小さくてもよい。この電圧範囲はおおよそ、LVトランジスタの許容動作範囲内にあり、保護回路は、駆動トランジスタおよび/またはスイッチトランジスタが電流を停止するとき、電流範囲の下限においてのみアクティブになる。故に、範囲の低電流端において、保護回路は、追加的に、OLEDを通る電流密度が約2uA/cmより低くなることを防ぐ。この効果は、上で論じられるように少なくとも2つの直列接続されたトランジスタを有することによって提供される保護であることに加えて、より高いコントラストを達成する能力も制限する。このわずかに上昇した黒色レベルおよび減少したコントラストと引き換えに、保護回路は、カソード電圧を下げることによって画素駆動回路に、より高いピーク明度を達成すること、または、LVトランジスタがそれらの指定の電圧範囲内で動作しているという保証を伴って、OLED経年劣化に起因する効率損失を補償することを強いることを可能にする。
【0182】
上の説明は、異なる個々の特徴の異なる組み合わせを伴い得るいくつかの異なる実施形態を説明する。実施形態のうちのいずれかからの個々の特徴は、適合しないときを除き、所望の通りに制限なく、任意の順序または程度で組み合わせあれ得る。
【0183】
上の説明において、説明の一部を形成する添付の図面に対して言及がなされ、またこれは、実践され得る例証的な特定の実施形態として示される。これらの実施形態は、当業者が本発明を実践することを可能にするために詳細に説明されるものであり、他の実施形態が利用され得ること、ならびに構造的、論理的、および電気的変更が、本発明の範囲から逸脱することなくなされ得るということを理解されたい。したがって、任意の例となる実施形態の説明は、限定的意味に取られるべきではない。本発明は例証の目的のために説明されているが、そのような詳細はその目的のためだけのものであること、ならびに、変異形が本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって作製され得るということを理解されたい。
【符号の説明】
【0184】
MP1 スイッチトランジスタ、 MP2 駆動トランジスタ、 C1 コンデンサ、 VDD 外部電源、 SELECT1~SELECT3 選択線、 T1 第1のpチャネル駆動トランジスタ、 T2 スイッチトランジスタ、 T3 インライン選択トランジスタ、 VCATHODE カソード電圧、 IBD1~IBD6 真性ボディダイオード、 VDD2 外部電源、 T4 第2のpチャネルスイッチトランジスタ、 T6 保護回路pチャネルトランジスタ、 D4 ダイオード、 VREF 参照電圧、 BJT1 バイポーラ接合トランジスタ、 LSC レベルシフト回路、 1 画素定義層、 3 シリコンバックプレーン、 5 任意選択の平坦化層、 7 電気接点、 9 第1の電極セグメント、 9A 第1の電極層、 9B 反射層、 11,23 非発光OLED層、 13 第1の発光OLEDユニット、 13A 赤色発光OLEDユニット、 15,19,24 電荷発生層、 16 黄色発光ユニット、 17 第2の発光OLEDユニット、 17A 緑色発光OLEDユニット、 21 第3の発光OLEDユニット、 21A 青色発光OLEDユニット、 22 青色発光層、 25 上部電極、 27 カプセル化、 29 色フィルタアレイ、 29B 青色フィルタ、 29G 緑色フィルタ、 29R 赤色フィルタ、 30 マイクロキャビティ、 32 第2の青色発光ユニット、 45,50 電源、 GND 接地、 100 RGB画素化OLED、 200 マルチモーダルOLEDマイクロキャビティデバイス、 300 マルチモーダルOLEDマイクロキャビティデバイス、 400 マルチモーダルOLEDマイクロキャビティデバイス。
【要約】
個別にアドレス指定可能な画素および制御回路を有するシリコンベースのバックプレーンの上に発光OLEDスタックを備えるマイクロディスプレイであって、発光OLEDスタックが、上部電極と下部電極との間に3つ以上のOLEDユニットを有し、シリコンベースのバックプレーンの制御回路が、外部電源VDDとOLEDスタックの下部電極との間にチャネルが直列で接続されている少なくとも2つのトランジスタを備える、マイクロディスプレイ。発光OLEDスタックは、好ましくは、少なくとも7.5V以上のVthを有する。制御回路は、p-nダイオード、好ましくは、バイポーラ接合トランジスタからなる保護回路を含み得る。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21