(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】コンテンツデータの帰属主体であるブロックチェーン基盤上のトークン保有者が、当該コンテンツデータに埋め込まれた電子透かしによって、当該コンテンツデータと当該帰属主体との双方向の一意対応を証明及び検証する情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G06F 21/64 20130101AFI20240917BHJP
G06F 21/16 20130101ALI20240917BHJP
【FI】
G06F21/64
G06F21/16
(21)【出願番号】P 2023105487
(22)【出願日】2023-06-12
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】523239239
【氏名又は名称】SBI金融経済研究所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100220951
【氏名又は名称】長野 聡
(72)【発明者】
【氏名】中山 靖司
(72)【発明者】
【氏名】岩村 充
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 賢爾
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 俊彦
【審査官】上島 拓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0372132(US,A1)
【文献】特開2020-068388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0012765(US,A1)
【文献】国際公開第2023/101933(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/64
G06F 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書等記録その他のコンテンツデータの原著作者又は前記原著作者から委託を受けた管理者(以下、単に、原著作者、という。)
のコンピューターが、
前記コンテンツデータを対象としてブロックチェーン基盤上で発行されたトークンの保有者又は前記保有者から委託を受けた管理者(以下、単に、保有者、という。)の
コンピューターから移転依頼を受けて、前記コンテンツデータに埋め込まれた
前記トークンを識別する情報(以下、トークンID、という。)及び前記コンテンツデータの帰属主体である前記トークンの保有者を識別する情報(以下、帰属主体識別子、という。)を含む電子透かしを破棄し、代わりに同じトークンID及び次の帰属主体識別子が含まれる情報を前記コンテンツデータに
新たな電子透かしとして埋め込み、前記コンテンツデータを前記トークンに含まれている前記コンテンツデータその他の情報の直接又は間接の保管場所を示す情報(以下、コンテンツURI、という。)が示す保管場所に保管する一方、前記保有者
のコンピューターが、前記トークンを譲受人である次の帰属主体に前記ブロックチェーン基盤上で移転し、前記次の帰属主体
のコンピューターが、
前記コンテンツデータに埋め込まれた新たな電子透かしと前記トークンの双方に含まれるトークンID及び前記次の帰属主体識別子を比較参照することで、前記
新たな電子透かしが
埋め込まれた前記コンテンツデータと前記トークンとが互いに一意に対応していることを検証することを特徴とする情報処理システム。
【請求項4】
文書等記録その他のコンテンツデータの原著作者のコンピューターが、前記コンテンツデータを対象としてブロックチェーン基盤上で発行されたトークンの保有者のコンピューターから依頼を受けて、前記コンテンツデータに埋め込まれたトークンID及び帰属主体識別子を含む電子透かしを破棄し、代わりに同じトークンID及び次の帰属主体識別子又は存在しない帰属主体の識別子が含まれる情報を前記コンテンツデータに新たな電子透かしとして埋め込み、前記コンテンツURIが示す保管場所に保管し、
前記保有者のコンピューターが、前記ブロックチェーン基盤上で前記トークンを前記次の帰属主体に対して移転することで前記次の帰属主体のコンピューターが、前記コンテンツデータに埋め込まれた新たな電子透かしと前記トークンの双方に含まれるトークンID及び帰属主体識別子を比較参照することで、前記新たな電子透かしが埋め込まれた前記コンテンツデータと前記トークンとが互いに一意に対応していることを検証すること、又は前記保有者のコンピューターが、前記ブロックチェーン基盤上で前記トークンを前記存在しない帰属主体に対して移転することで、前記トークンを消却すること、
を各コンピューターに実行させるプログラム
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、ブロックチェーンネットワーク基盤上で発行されるノンファンジブル・トークン(以下、NFTという。)と記録媒体に電子的に記録されたデジタル画像その他の当該NFTの対象物であるコンテンツデータ及び当該コンテンツデータに埋め込まれる電子透かしに関する。
【背景技術】
【0002】
当該コンテンツデータの人間の眼に見える外観を損なわず、他方でその変更(無権限の場合には改竄)、複製及び削除を事後に検証する方法として、当該コンテンツデータに電子透かしを埋め込む方法が知られている。
他方、当該コンテンツデータと当該コンテンツデータに対して何等かの権利及び権利に至らない支配権限(以下、帰属関係、という。)を有する主体(以下、帰属主体、という。)との関係を示す方法、及び、当該帰属主体が、他の主体(以下、譲受人、という。)に対して当該帰属関係を移転し、移転したことを当該譲受人その他の第三者に示す方法として、ブロックチェーンネットワーク基盤上で、当該帰属主体に対して、当該コンテンツデータを対象とするNFTを発行し、当該帰属主体が、当該NFTを当該譲受人に移転し、移転したことをブロックチェーン基盤上でのマイニングにより当該基盤内で自律的に証明するサービスが提供されている。例えば、当該サービスは、イーサリアム・プラットフォームで提供されていて、ERC-721などの標準規格も公表されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「電子透かしは、著作権保護技術」(独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)https://www.inpit.go.jp/blob/katsuyo/pdf/chart/fdenki12.pdfでは、コンテンツデータの人間の眼に見える外観を損なわず、他方でその改竄(無権限での変更)、無権限でのコピー及び削除を事後に検証する方法として、電子透かしの様々な方法が紹介されている。
【文献】イーサリアム財団による技術提案であるERC(Ethereum Request for Comments)の1つにNFTにかかるERC-721が提案、公開されている。https://ethereum.org/ja/developers/docs/standards/tokens/erc-721/ イーサリアムの仕組みでは、インターネットで通信するイーサリアム・ブロックチェーン基盤におけるアカウントは、保有者のアカウントと、当該基盤上で保有者アカウントからメッセージの送信による仕事の依頼を受けて、仕事をするコントラクト(スマートコントラクトと呼ばれる)のアカウント、の二種類がある。コントラクトのする仕事として、対象となるコンテンツデータの保管場所その他の関連情報を識別する情報、トークンを識別する情報を含むNFTを作成するもの、移転するもの、などが作成できる。コントラクトが仕事をすることをトランザクションと呼ぶ。また、トランザクションの結果、トランザクションを含むブロックが形成され、それまでのブロックに連続される。そのことの正当性は、ブロックチェーン基盤上のノード参加者により検証される。
【文献】株式会社ナンバーワンソリューションズ(〒153-0043 東京都目黒区東山3-15-1出光池尻ビル7F)の以下のWEBには、詳細不明ながら、「デジタルデータに著作者の情報やコメント、用途などをメタ情報(付帯情報)として付与」、「電子透かしファイルにハッシュ化したメタデータを挿入」との記述がある。https://no1s.biz/press/3807/
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004―139184公報、拒絶査定(特許出願2002―300911) コンテンツデータの編集の度に、当該コンテンツデータを識別する識別情報を割り当て、当該割り当てられた識別情報を電子透かしとして当該コンテンツデータが記録されている記憶媒体に記録を物理的に追加することを内容としている。しかしながら、編集の度に電子透かしを埋め込み直すことは、公知事実から容易に想起できるとして拒絶査定された。当該コンテンツデータと当該識別情報を含む電子透かしとを分離するには技術と時間を要するという意味で一体として当該コンテンツデータとして記憶媒体に記録されていることから、当該電子透かしを削除したり、当該コンテンツデータに他の電子透かしを埋め込んだりした場合には、事後的に元の当該電子透かしが元の状態でないことを検証できることから、当該コンテンツデータと元の当該電子透かしは、一意的な対応(一方に他方が一つ,かつ、ただ一つ対応する)関係となる。電子透かしは人の眼には見えないため、当該コンテンツデータの外観が、人の眼には同じように見えても、元の電子透かしでない状態が確認できることで、当該コンテンツデータは、もはや元の当該コンテンツデータではないと検証できる。
【文献】特許第7158073号 コンテンツデータと当該コンテンツデータに対して帰属主体(ユーザー、と特許文献2ではされている、所有者と、特許文献4ではされているが、所有とは有体物に対する概念なので、帰属主体という用語を以下用いる)が有する帰属関係(特許文献2では、当該コンテンツデータの使用許諾情報、とされている。)を特定し、記憶する許諾情報記憶部と、当該コンテンツデータを示す情報(コンテンツデータの情報そのもの、または当該コンテンツデータその他の関連情報の保管場所を示すURI(以下、まとめて、コンテンツURIという、URIとはUniform Resource Identifierの略で、インターネット上にあるあらゆるファイルを認識するための識別子の総称である。))と当該コンテンツデータの使用許諾情報を含むNFTを、当該帰属主体のウオレットに発行するNFT発行部を備えることを特徴とする取引支援システムを内容とする。発明が解決しようとする課題として、著作権を管理するために電子透かしをコンテンツに埋め込むことは手間がかかることが挙げられている。当該帰属主体間でのNFTの取引にあたっては、譲受人をNFTの保有者(特許文献2では、オーナー、とされている。)として設定するトランザクションをブロックチェーン基盤上で発行できる取引処理部も備えるとされている(項番0029)。電子透かしを使わないで、当該コンテンツデータと当該帰属主体との当該帰属関係をインターネット上で明らかにするシステムである。
【文献】特許第6710401号 コンテンツデータ(対象物、と特許文献3では書かれている)に付与された、インターネット上のブロックチェーン基盤上において取引可能なトークンID(NFT識別子、と特許文献3では書かれている)を含むデータを用いて、インターネットへのアクセスを可能として、NFTに対する操作を実行させるために、当該ブロックチェーン上において実行されるスマートコントラクトを呼び出す方法を内容としている。その上で、当該コンテンツデータを有体物とした場合、当該有体物に付与された二次元コードをスキャンすることで、当該二次元コードが示す、当該トークンIDが含まれているURIを読み取り、スマートコントラクトがNFTの当該帰属主体(所有者、と特許文献3では書かれている)を変更し、新たな帰属主体へ送信するシステムを内容としている(項番0070)。ここでは、当該有体物に付与された二次元コードは、トークンID及びコンテンツURIの情報を含んでいるが、帰属主体識別子を含んでいない。このため帰属主体の変更に伴い、二次元コードの変更を伴わないこととされている。このため、当該コンテンツデータの原著作者又はその管理者(以下、単に原著作者、という。以下のすべての主体も自らふるまう場合のみならず、管理者に事務委託する場合も含む。)は、当該コンテンツに付与された二次元コードからは、帰属関係を有する帰属主体(NFTの保有者)を特定できない。帰属主体の変更に対して、システム内で無効を主張できない(譲渡禁止契約などシステム外での主張はここでは別のことである)。さらに、二次元コードは対象物と一体不可分にはなっておらず、誰もが別のコンテンツに張り替えることができるため、コンテンツと二次元コードのお互いが一意に対応していることを仕組みとして担保できていない。
【文献】特開2020―068388、特許査定 コンテンツデータに対する帰属主体識別子(所有者情報、と特許文献4ではされている。)として当該帰属主体(権利者、と特許文献4ではされている。)のアドレス(インターネット上のアドレス)が設定され、当該コンテンツデータに対して当該帰属主体が有する帰属関係の内容(権利の種別、と特許文献4ではされている)を含み、トークンIDによって他のトークンと識別されるトークンにかかるメタデータ(当該コンテンツデータやその他のトークンにかかる情報の保管場所を示す前記コンテンツURIが含まれる。特許文献4では、トークンデータと書かれている。)を生成し、インターネット上の分散台帳に当該帰属主体識別子と当該トークンIDと当該メタデータを登録することができる。また、当該帰属主体が、トークンを譲渡する場合には、当該帰属主体識別子を、譲渡人である当該帰属主体のアドレスから譲受人(特許文献4では、提供先、と書かれている。)のアドレスに変更する。これらを特徴とするコンテンツ契約システムを内容としている。帰属主体識別子、トークンID及びコンテンツURIが、NFTに含まれる。また、特許文献4では、当該コンテンツデータに、当該帰属主体識別子に設定された当該譲受人のアドレスに対応する情報を付して提供してもよい、とされ、さらに、当該コンテンツデータを提供する際に電子透かし等により、当該コンテンツデータの当該譲受人の情報を特定可能な情報として付加することにより、当該コンテンツデータが不正に流通した際であっても、不正な流通元である当該譲受人を特定することが可能になる、とされている(項番0096)。ここでは、電子透かし等に含める情報としては、当該コンテンツデータの当該譲受人の情報のみが記載されており、トークンIDは記載されていない。当該コンテンツデータの当該譲受人が、当該コンテンツデータの原著作者等の同意を得ないで、帰属関係で有している権利を越えて、さらに第三者に当該コンテンツデータに対応する当該NFTを譲渡する、流通させる場合が想定されている。即ち、当該原著作者は、当該コンテンツデータに含まれる当該電子透かしに含まれる帰属主体識別子の情報から、NFTが現在の帰属主体から次の帰属主体に無断譲渡、移転された場合、当該コンテンツデータの帰属主体は、現在の帰属主体であって、譲渡、移転されたNFTが含む次の帰属主体との帰属関係を無効と主張し得る。一方で、原著作者は、NFTに含まれるコンテンツURIが示す場所にある当該コンテンツデータの当該電子透かしには、トークンIDの情報が含まれていないため、当該電子透かしからトークンIDを読み取り、スマートコントラクトに対してNFTの帰属主体を変更し、新たな帰属主体へ送信することはできず、当該コンテンツデータと一意対応するNFTを生成することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インターネットの発達により、デジタルアートや文書記録等電磁的に記録されたコンテンツデータの原著作品やその複製物を、当該原著作品やその複製物に対して帰属関係を有する原著作者や当該原著作者から譲渡を受けた帰属主体が、第三者に対して、当該帰属関係(原著作者の場合には、利用権など二次的な権利を含む。)を生成、移転、消却する需要が増えている。しかしながらコンテンツデータは、電磁的に記録されているために、複製物の作成が容易であるほか、原著作品と全く同じ複製物を作成することも可能である。このため原著作者や現在の帰属主体が、当該コンテンツデータの原著作品やその複製物との互いに一意的な(一方に他方が一つ,かつ、ただ一つ対応する)当該帰属関係を生成し、維持できること、また一意的な帰属関係を維持しつつ、当該帰属関係を移転、消滅させる需要が強くなっている。こうした需要に対して、権威ある管理者(例えば公的な主体など)が関与することなく、譲渡人である当該帰属主体と譲受人との間で自律的に、移転、譲渡ができるためには、解決すべき課題は二つある。
第一は、当該コンテンツデータの原著作者が、コピーを作成し、予め原著作者と現在の帰属主体が合意していた以外の第三者を別の帰属主体として帰属関係を新たに設定できないようにする、又は少なくとも二重の帰属関係設定がなされていないか事後検証できるようにすることである。コピー作成と二重の帰属関係設定を事前に阻止することは、契約などで抑止することはできても、完全に阻止することはできない。しかしながら、事後に事前同意先以外へ二重の帰属関係設定がなされていないことを、現在の帰属主体が検証できることで、原著作者による二重の帰属関係設定を強力に牽制できる。
第二は、現在の帰属主体が、コンテンツデータと自らの帰属関係が、帰属関係のとおりに生成され、維持されていることを自ら証明できること(自律的な帰属証明)である。当該証明は、当該現在の帰属主体が、コンテンツデータを直接把持できないことから、何等かの当該帰属関係を、第三者に頼まず、自ら証明できる方法を要する。また、当該帰属関係を前提に、当該現在の帰属主体が、当該帰属関係を譲受人に譲渡し、譲受人が自ら新しい帰属関係を当該コンテンツデータとの間で一意的に持ったことを確認、検証できればよい。
【0006】
第一の課題解決にあたっては、電磁的に記録された当該コンテンツデータは、複製することが容易であり、当該原著作品とその複製品、又は当該複製品同士を個別に識別する方法が必要である。その上で、当該コンテンツデータがデジタルアート作品である場合には、識別する方法が当該作品に添付され美観を損なうことは作品の価値を棄損することから、人の肉眼では見えないが、機械などで識別可能とする方法が考えられ、そうした機能を持つものとして、現在の帰属主体を識別する情報(帰属主体識別子)を含んだ電子透かしを人間が肉眼では識別できないかたちで当該コンテンツデータに埋め込むことが考えられる(特許文献1)。電子透かしの具体的な方法についても、改竄が困難な方法が、複数提案されている(非特許文献)が、当該コンテンツデータに埋め込むのに適切なものが選択されればよい。また、帰属主体が変更される度に、前の電子透かしを含む当該コンテンツデータを破棄して、新たな電子透かしを含むコンテンツデータを今一度作成するか、当該電子透かしのみを削除し、新しい帰属主体(譲受人)を識別する情報を含んだ電子透かしを埋め込まれた当該コンテンツデータを作成すればよい。当該新しい帰属主体は、当該新しい電子透かしを確認し、前の電子透かしが存在しないことを確認することで、自らが新しい帰属主体であることを確認できる。こうすることで当該電子透かしを含む当該コンテンツデータに対し、帰属主体は一意に定まる。
しかしながら、非特許文献及び特許文献1に書かれている当該電子透かしだけでは、譲渡人である現在の帰属主体が、当該コンテンツデータを譲受人である当該新しい帰属主体に移転することについての合意の証拠が残らない。また、当該コンテンツデータと帰属主体との帰属関係の存在を確認するためには、その都度、時間と手間をかけて、電子透かしを確認しなければならない、という問題がある。帰属関係の生成、移転、消却にかかる合意の証拠や当該帰属関係と一意対応する電子透かし以外の何らかの記録をコスト安く作成できないか、という第二の課題が残る。
【0007】
第二の課題に対しては、コンテンツデータの現在の帰属主体が、当該コンテンツデータと自らとの間に帰属関係があることを証明する方法として、インターネット上でブロックチェーン基盤を用いて、NFTを発行する方法が知られている(特許文献2乃至4)。当該NFTを構成する情報には、NFT保有者である当該帰属主体を識別するための帰属主体識別子、当該NFTを他のNFTと区別するトークンID、及びコンテンツURI(当該コンテンツデータその他の情報の所在場所を示すURI)が含まれる(非特許文献2)。当該コンテンツデータの原著作者は、新たに帰属主体となることを求める者に対して、これを認め、トークンID、コンテンツURIを提供する。これを受け、原著作者自ら、又は当該帰属主体となろうとするものが、ブロックチェーン基盤上でNFT発行を依頼するメッセージを送信して、NFTが発行される。その後、当該NFT保有者となった当該帰属主体が、NFTを構成する情報を用いて、当該コンテンツデータに対する帰属関係を新たに有したことを確認する。また、当該帰属関係を前提に当該帰属主体は、譲受人である次の新しい帰属主体に当該NFTの移転を求めるメッセージをコントラクトに送信し、当該コントラクトがNFTの帰属主体識別子を当該帰属主体の識別子(現在の帰属主体のアドレスなど)から譲受人である次の帰属主体の識別子(次の帰属主体のアドレスなど)に置き換え、トークンID(コントラクトアドレスに対して一意対応する、非特許文献2)を維持して、NFTを移転する。新しいNFT保有者となった次の帰属主体が、新しいNFTを構成する情報を用いて、当該コンテンツデータに対する帰属関係を有したことを確認する。この方法によることで、譲渡人である現在の帰属主体が、当該NFTを譲受人である当該新しい帰属主体に移転することについての合意の証拠とブロックチェーン基盤における移転の正当性の証明が可能となり、第二の問題を解決することが出来る。
しかしながら、特許文献2の方法では、当該コンテンツデータに、NFTにかかるデータ(トークンID及び帰属主体識別子)を当該コンテンツデータと一意対応するような情報として、付加しないことから、当該コンテンツデータとNFTは、NFT内に含まれるコンテンツURI(当該コンテンツデータの保管場所などを示す。)によって関係付けられているものの、当該コンテンツデータは、NFTのコンテンツURIにより参照されている一方、当該コンテンツデータからは、特定のNFTを参照していない。即ち、当該コンテンツデータ内には、NFTに関する情報が存在しないため、当該コンテンツデータを参照するNFTとして別のトークンIDを持つ違う種類のNFTを複数作成したりすることが可能となり、事後的にそうして作成された新しいNFTが、当該帰属主体が有する元のNFTとの関係で無効なものであると検証することができないという問題がある。すなわち、当該コンテンツデータの原著作者は、同じコンテンツデータから、異なる種類の複数のNFTを発行することができるので、現在の帰属主体は、当該コンテンツデータと保有しているNFTとが互いに一意的な関係にあると、自ら証明することはできない。
【0008】
この点、特許文献3の方法は、コンテンツデータ等の対象物に付与した「スマートコントラクトの呼び出しに用いられるデータ(ユニフォームリソースロケータに含まれるとの記述がある)」によってNFTを一意に指し示すことが可能である。
しかしながら、特許文献3の方法は対象物は有体物であることが望ましいとされ(トレーディングカードを例として挙げている)、二次元コード等で表されたユニフォームリソースロケータを付与することで対象物と関連させているが、二次元コードを付与する方法では簡単に他の対象物と差し替える等の改ざんが容易であるなど耐改ざん性といったセキュリティの観点から考慮されているわけではなく、帰属主体を特定する方法としては適切ではない。なお、対象物は有体物に限定されず、デジタルデータなどの無体物であっても良いとされるが、その際、コンテンツデータに二次元コードで表わされる情報を付与する方法については触れられていない。対象物であるデジタル画像中に見える形で表示するのか、単にデータとして追加するのか等の方法についての言及はないほか、当該コード等が改ざんされるリスクへの認識やそれへの解決策も示されていない。
また、対象物に付与するとされる二次元コードなどのユニフォームリソースロケータには、帰属主体識別子が含まれていない。このため、当該コンテンツデータの原著作者は、当該ユニフォームリソースロケータからは帰属関係を有する帰属主体(NFTの保有者)を特定できない。このため、現在の帰属主体による、帰属関係の移転に対して、システム内で無効を主張できない(譲渡禁止契約などシステム外での主張はここでは別のことである)。特許文献3の方法では、当該コンテンツデータとNFTは、コンテンツURIによって関係付けられているものの、両者の関係は、当該コンテンツデータは、NFTに含まれるコンテンツURI及び帰属主体識別子により参照されている一方、当該コンテンツデータに付与されたユニフォームリソースロケータ等は、トークンID(特許文献3ではNFTを識別するためのデータを含むことができると書いている。)を参照しているが、当該帰属主体識別子を含んでいない。
ユニフォームリソースロケータに帰属主体識別子が含まれていないために、コンテンツデータとNFTとが互いに一意的な関係にあると、原著作者は、当該コンテンツデータのみからは、自ら証明することはできない、という問題が残る。
【0009】
一方、特許文献4の方法では、コンテンツデータに、現在の帰属主体であるNFT保有者のアドレス(帰属主体識別子となる。)を電子透かし等によって埋め込んでもいいとされるが当該電子透かしには、トークンIDの情報が含まれていないため、原著作者は当該コンテンツデータと互いに一意に対応するNFTを生成することはできない。これは、特許文献4の方法では、当該コンテンツデータとNFTは、帰属主体識別子及びコンテンツURIによって関係付けられているものの、両者の関係は、当該コンテンツデータは、NFT内のコンテンツURIから一意に参照されている一方、当該コンテンツデータに埋め込まれた当該電子透かしの情報からはトークンIDを特定できないことから対応するNFTをを一意に参照できないためである。当該電子透かしに、トークンIDが含まれていないために、コンテンツデータとNFTとが互いに一意的な関係にあると、原著作者は、当該コンテンツデータのみからは、自ら証明することはできない、という問題が残る。
【0010】
非特許文献3には、「デジタルデータに著作者の情報やコメント、用途などをメタ情報(付帯情報)として付与」と記載されており、コンテンツデータに電子透かしで埋め込むと解しうる記述があるが、NFTを一意に特定するトークンID、NFT保有者である帰属主体識別子を含むとの記述はない。こうした情報が電子透かしに含まれなければ、コンテンツデータとNFTとの双方向の一意性は確保できない。よって、詳細不明ながら、本発明には新規性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明は、情報処理システムであって、コンテンツデータと当該コンテンツデータを対象としてブロックチェーン基盤上で発行されたトークンとが互いに一意に対応していることを、当該コンテンツデータに埋め込まれた電子透かしと当該トークンの双方に含まれるトークンID及び帰属主体識別子を比較参照することで検証することを特徴とする。
【0012】
[0011]の情報処理システムであって、当該コンテンツデータの原著作者が、当該トークンの保有者の移転依頼を受けて、当該コンテンツデータに埋め込まれた電子透かしを破棄し、代わりに同じトークンID及び次の帰属主体識別子が含まれる電子透かしを作成し、作成した当該電子透かしを当該コンテンツデータに埋め込み、コンテンツURIが示す保管場所に保管する一方、当該トークンの保有者が、当該トークンを譲受人である別の帰属主体に当該ブロックチェーン基盤上で移転し、当該帰属主体が、当該電子透かしが変更された当該コンテンツデータと当該トークンとが互いに一意対応していることを検証することを特徴としてもよい。
【0013】
[0011]又は[0012]の情報処理システムであって、当該原著作者が、当該トークンの保有者の消却依頼を受けて、当該コンテンツデータに埋め込まれた電子透かしを破棄し、代わりに同じトークンID及び存在しない帰属主体の識別子が含まれる電子透かしを作成し、当該電子透かしを当該コンテンツデータに埋め込み、当該コンテンツURIが示す保管場所に保管する一方、当該保有者がトークンを存在しない帰属主体に対して当該ブロックチェーン基盤上で移転することで、当該トークンを消却することを特徴としてもよい。
【0014】
[0011]又は[0012]又は[0013]の情報処理システムであって、当該コンテンツデータの管理を、分散系システムとブロックチェーン基盤上のスマートコントラクトが連動システムするシステムとして実装することを特徴としてもよい。
【0015】
[0011]又は[0012]又は[0013]又は[0014]の情報処理システムであって、当該コンテンツデータの原著作物及び当該帰属権利者が生じ、移転し、消滅する毎に当該電子透かしを埋め込む電子透かし原本処理部を有することを特徴としてもよい。
【0016】
[0011]又は[0012]又は[0013]又は[0014]又は[0015]の情報処理システムであって、当該電子透かし原本処理部を、分散系システムとブロックチェーン基盤上のスマートコントラクトが連動するシステムとして実装することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
インターネット上において、コンテンツデータの原著作者や当該原著作者から当該コンテンツデータに対する支配権等の帰属関係の譲渡を受けた現在の帰属主体が、原著作品である当該コンテンツデータ又はその複製物であるコンテンツデータとの一意的な帰属関係を維持できていることを自ら検証できる。また、現在の帰属主体が、当該一意的な帰属関係を維持しつつ、当該帰属関係をインターネット上のブロックチェーン基盤上で発行、移転、消却されるNFTに表象させ、保有する当該NFTと当該コンテンツデータとの互いに一意的な関係を、当該NFTをブロックチェーン基盤上で次の帰属主体に譲渡し、その証明を権威ある管理者(例えば公的な主体など)が関与することなく、譲渡人である当該帰属主体と譲受人である次の帰属主体との間で自律的に証明できる。また、譲受人である次の帰属主体が、当該コンテンツデータの原著作品やその複製物である当該コンテンツデータとの一意的な当該帰属関係が移転されたことを自ら検証できる。
その後、譲受人である次の帰属主体は、いつでも、当該コンテンツデータが存すること、当該コンテンツデータとNFTが互いに一意対応していることを検証できる。次の帰属主体は、他のNFTについても、そのNFT内の情報から、第三者が当該コンテンツデータを不正に流通させていないか、当該コンテンツデータとNFTの双方に含まれる情報を突合して、当該コンテンツデータに含まれる情報が当該NFTを指し示し、逆に当該NFTに含まれる情報が、当該コンテンツデータに含まれることを指し示すことで、一意性を検証できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の情報処理システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態のノード又はアカウントの概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態のノード又はアカウント(ブロックチェーンネットワーク上と電子透かし原本処理部を含む分散系システム上の双方を含む)として機能するコンピューターの概略ブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態のコンテンツデータとそれに埋め込まれる電子透かし、及び電子透かしとNFTとそれらに含まれる情報の概略図である
【
図5】[0011]に掲げるコンテンツデータに埋め込まれた電子透かしと生成予定のNFTとの双方に含まれるトークンID及び帰属主体識別子を比較参照して一意性を確認後、NFTを生成する情報処理の各ステップを説明するための説明図である(一意性確認後にNFTを生成するステップの説明図)。
【
図6】[0012]に掲げるNFTを移転し、その後譲受人がコンテンツデータに埋め込まれた新しい電子透かしとNFTとの双方に含まれるトークンID及び帰属主体識別子を比較参照して一意性を確認、検証し、移転を確定させる情報処理の各ステップを説明するための説明図である(NFT移転後、譲受人が一意性検証し、移転を確定させるステップの説明図)。
【
図7】[0013]に掲げるNFTを消却する情報処理の各ステップを説明するための説明図である(NFTを消却するステップの説明図)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について述べる。なお、本発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
実施形態にかかる方法は、インターネットにつながるブロックチェーン基盤上でNFTを発行、移転、消却し(非特許文献2)、当該NFT内に含まれるのと同じトークンID及び帰属主体識別子を含む電子透かし(非特許文献1)を電子透かし原本処理部を含む分散系ネットワーク上で作成し、NFTがコンテンツURIにより保管場所を示しているコンテンツデータに当該電子透かしを電子透かし原本処理部において埋め込む(非特許文献1)ことを含む。コンテンツデータに埋め込まれた電子透かしの改変や削除には技術と時間を要する(非特許文献1)ことから、コンテンツデータと電子透かしにはお互いに一意性(一方に他方が一つ、かつ、ただ一つ対応する)がある。また、当該NFTの保有者(当該コンテンツデータの帰属主体)や当該保有者(譲渡人)から移転を受けた次の保有者(次の帰属主体、譲受人)は、保有するNFT内と電子透かしに含まれるトークンID及び帰属主体識別子が同じであることを確認することで、保有するNFTと当該コンテンツデータにも一意性がある。もってコンテンツデータと保有するNFTにも一意性があることが検証される。ここで、ブロックチェーン基盤は、イーサリアム財団によるイーサリアム・ブロックチェーン基盤が考えられるが、それに限定されないほか、複数のブロックチェーン基盤が接続されていてもよい(
図1、13)。インターネット環境が考えられるが、閉じたネットワーク内でも同じことが実現できる。電子透かしは、非特許文献1に示される各種のもののうちの1つで、どれであってもよい。
<情報処理システムのシステム構成>
【0021】
[0020]の実施形態に係る方法では、インターネットに接続するブロックチェーン基盤(
図1 11)、電子透かし原本処理部を含む分散系システム(
図1 12)のネットワークの2つのネットワークが存する。
分散系システム(
図1 12)は、電子透かし原本処理部において、コンテンツデータ(
図4 30)や当該コンテンツにかかるメタデータ(
図4 33)などを保管及び当該コンテンツデータに埋め込む電子透かし(
図4 31)を作成、保管し、また当該コンテンツデータXに当該電子透かしを埋め込み(
図4 30)、埋め込まれた当該コンテンツデータ(電子透かし入り)を保管する。当該分散系システム(11)は、コンテンツURIが保管場所を示すメタデータ(NFTにかかる付随情報やコンテンツ識別子)を保管してもよく(
図4)、コンテンツURIがコンテンツ識別子の保管場所ではなく、直接コンテンツの保管場所を示す管理、保管を行ってもよい(
図4)。
当該コンテンツデータを管理する原著作者A(管理者を含む)、当該コンテンツデータと帰属関係を新たに設定し帰属主体となる意向を有するB、Bから帰属関係を譲り受けて次の帰属主体になる意向を有するC、その他ブロックチェーンネットワーク基盤にノードを持つマイナーやバリデターであるD、E、Fは、各々、アカウント(
図1 10A、10B、10C)やノード(
図1 10D、10E、10F、その他)を持ち、処理部(
図2 14)と通信部(
図2 15)を持つコンピューター(
図2、
図3 20)から分散系システム(
図1 12)やブロックチェーン基盤(
図1 11)と通信する。
ブロックチェーン基盤(
図1 11)は、ノード(10D、10E、10Fほか(いずれも
図1)、分散系システムと通信できてもできなくてもよい。)とブロックチェーン基盤と通信できるアカウント(10B、10C(いずれも、
図1)、分散系システムとの通信も可能とする。)を備える、ノードであってもよいが、ノードでなくともよい。)
当該ノードやアカウントは、基盤バス(28)上にCPU(21)、入出力装置(22)、R/W部(23)、ブロックチェーン基盤とのI/F(インターフェイス、24)、分散系システムI/F(インターフェイス、25)、記憶部(26、記憶媒体を有する)、メモリ(27)を備える(
図3)。
コンテンツデータの原著作者(管理人を含む)Aは、コンテンツデータ及びメタデータと電子透かしを管理する分散系システム(12)に管理者としてアクセスし、またブロックチェーン基盤(11)のアカウント(10B、10C)と通信できる。ノード(10D、10E、10Fほか)と通信できてもよい。当該コンテンツデータの帰属主体となる意向を有し、帰属主体となるB(譲渡人)及び次の帰属主体であるC(譲受人)は、分散系システムにアクセスし、またブロックチェーン基盤と通信できるアカウントを備える(10B、10C、
図1)。イーサリアム・ブロックチェーン基盤では、ノード又はアカウントから、NFTの生成、移転又は消却を求めるメッセージ(トークンID、コンテンツURI、帰属主体識別子を含み、これらの情報をNFT内に持つことを求める)が、NFTを生成する又は過去に生成したコントラクトに送信、受信されると、コントラクトがトランザクションを行い、当該情報を持つNFTを生成、移転又は消去する(非特許文献2、ERC-721)。
<1.一意性検証後にNFT生成するステップの例>
【0022】
図5を例示として、[0011]に掲げるコンテンツデータに埋め込まれた電子透かしと生成予定のNFTとの双方に含まれるトークンID及び帰属主体識別子を比較参照して、同じ内容であることを確認後、NFTを生成する情報処理の各ステップを説明する(
図5)。
【0023】
コンテンツデータX(例えば、電子画像、以下同じ。)の原著作者(含むその管理者、以下同じ。)Aは、分散系システム(12)と通信し、当該コンテンツデータX及びそのメタデータを管理、保管する。原著作者Aは、別にインターネット上の例えば、イーサリアム・ブロックチェーン基盤(11、それに限らない他のブロックチェーン基盤でもよい)上にノード又はアカウントを有してもよい。また、イーサリアム・ブロック基盤上にはアカウント(ノードでもよい)を有して(10B、10C)、NFTの帰属主体(初期保有者)となる意向を持つB、現在の帰属主体(初期保有者)Bから移転を受けて次の帰属主体となる意向を持つC、またノード(10D、10E、10F、その他)を有するノード参加者(D、E、F、その他)が存する。また、当該アカウント(10B、10C)は分散系システム(12)と通信可能とする。
【0024】
原著作者Aは、当該コンテンツデータXの暗号学的ダイジェストの値(ハッシュ#値)を作成し、それを当該ブロックチェーン基盤上のノードに送信し、公開しておく(S51)。これは、ブロックチェーン基盤のノードやアカウントなどの参加者が、真正な当該コンテンツデータXか否か不明なコンテンツデータX’について、当該コンテンツデータX’のダイジェストを計算して、上記公開済みのダイジェストの値と突合することで、当該コンテンツデータX’が当該コンテンツデータXと同じものであることを確認できるようにするためである。これにより当該コンテンツデータXに何らかの権利(帰属関係)を有する帰属主体は、保有するNFTと当該コンテンツデータが一意的な関係を有することを検証することができるほか、当該コンテンツデータが変更、改竄されていないことを確認できる。もっとも、これは、コンテンツデータXが公開される場合に限り、原著作者Aのみがアクセスできるなど公開されていない場合には、検証する者は、原著作者Aに対して開示を求める必要がある。
【0025】
当該コンテンツデータXに対して帰属関係を新たに設定し帰属主体となることを希望するBは、アカウント10Bのコンピューターから(以下、アカウント、ノード名だけを記載し、そのコンピューターから、の記述は省略する。)分散系システム(12)に対して、当該コンテンツデータXに対する帰属関係の設定とその証としてNFTの発行を依頼する(S52)。
依頼を受けて、当該コンテンツデータXの原著作者Aは、▲1▼発行するNFTのトークンID、▲2▼帰属主体となるBの識別子(Bのアドレスなど)、その他の情報(ブロックチェーンを示す識別子、コントラクトアドレスほか)を含む電子透かしBを作成し、当該コンテンツデータXに埋め込み、コンテンツデータXBを作成し、分散系システムに保管する(S53)。そのうえで、コンテンツデータその他の情報の直接又は間接の保管場所を示すコンテンツURI・Bを分散系システム(12)を通じてB(アカウント10B)に送信する(S54)。
これを受けて、Bは、アカウント10Bから、分散系システム(12)と通信し、当該コンテンツデータXBが自分が帰属主体となることを求めた当該コンテンツデータXと外見が一致していること、及び電子透かしBに自らが帰属主体となることを示す▲1▼発行するNFTのトークンID、▲2▼帰属主体B識別子が含まれていること、を確認する(S55)。確認後、Bは、当該ブロックチェーン基盤においてBを保有者とするNFT発行依頼メッセージ(▲1▼トークンID、▲2▼帰属主体B識別子、▲3▼コンテンツURI・B、その他情報、ETHを含む)を、NFTを生成するコントラクト(当該コントラクトは、同時にNFT移転、消却する機能を持つものであってもよい。)に対してブロードキャストする(S56)。
これを受けて、NFTを作成するコントラクトは、NFTを作成するトランザクションを起こし、マイニング(またはバリデート(2022年9月からイーサリアム財団は正当性検証のための手段をマイニングによるPOWからバリデートによるPOSに変更した))をするノード(10D、10E、10Fその他)は、NFT発行の正当性を検証し、ブロックをチェーンに追加する(S57)。
Bは、発行された当該NFTの保有者となる(S58)。
【0026】
Bは、S55で、帰属主体となろうとする当該コンテンツデータXBと一体として埋め込まれ、容易に改竄できない電子透かしBに▲1▼トークンID、▲2▼帰属主体B識別子が埋め込まれていることを確認後、S56で自ら、▲1▼トークンID、▲2▼帰属主体B識別子、▲3▼コンテンッURI・Bを含むNFT生成を求めるメッセージ送信をNFT生成のトランザクションを起こすコントラクトに送信することでコンテンツデータXB(外見はコンテンツデータXに同じ)とNFTとが一意性を持つことを確認できる。
その後、NFT保有者Bは、いつでも、アカウント10Bから、分散系システム(12)と通信し、当該コンテンツデータXBが存すること、当該コンテンツデータに埋め込まれた電子透かしBとNFT内の▲1▼トークンID、▲2▼帰属主体B識別子が同じであることを確認し、当該コンテンツデータとNFTが一意対応していることを検証できる。
他のNFTについても、そのNFT内の情報に▲1▼トークンID、▲2▼帰属主体B識別子、▲3▼コンテンツURI・Bがあれば、▲3▼のURIに接続して、コンテンツデータが当該コンテンツデータXBでない場合には原著作者Aが当該コンテンツデータXBを削除又は改変していないか否か検証できる。また、当該コンテンツデータXBに埋め込まれた電子透かしB内の▲1▼トークンID、▲2▼帰属主体B識別子に変化がないかを確認し、当該コンテンツデータが改変、削除されていないか、を確認できる。
<2.NFTを移転後、譲受人が一意性検証し、移転を確定させるステップの例>
【0027】
図6を例示として、[0012]に掲げるNFTを移転し、その後譲受人がコンテンツデータに埋め込まれた新しい電子透かしとNFTとの双方に含まれるトークンID及び帰属主体識別子を比較参照して一意性を確認、検証し、NFT移転を確定させる情報処理の各ステップを説明する(
図6)。
【0028】
コンテンツデータXに電子透かしBを埋め込んだコンテンツデータXB(外見は当該コンテンツデータXと同じ)の帰属主体であるBは、当該コンテンツデータXBを対象とするNFTを保有している。B(譲渡人)は、コンテンツデータXBとBとの帰属関係をC(譲受人)に移転し、NFTをC(譲受人)に譲渡する意向を持っている。
Bはアカウント10Bから、原著作者Aに対して分散系システム(12)を通じて、コンテンツデータXBとBとの帰属関係をC(譲受人)に移転し、NFTをC(譲受人)に譲渡する意向を伝える(S61)。
依頼を受けて、原著作者Aは、▲1▼発行するNFTのトークンID(Bの保有するNFTと同じ)、▲2▼帰属主体となるCの識別子(Cのアドレスなど)、その他の情報(ブロックチェーンを示す識別子、コントラクトアドレスほか)を含む電子透かしCを作成し、当該コンテンツデータXに埋め込み、コンテンツデータXC(外見はコンテンツデータXと同じ)を作成し、分散系システムに保管する(S62)。そのうえで、コンテンツデータその他の情報の直接又は間接の保管場所を示すコンテンツURI・Cを、分散系システム(12)を通じてB(アカウント10B)とC(アカウント10C)に送信する(S63)。
これを受けて、Bは、アカウント10Bから、分散系システム(12)と通信し、当該コンテンツデータXCが、当該コンテンツデータXと外見が一致していること、及び電子透かしCにC(譲受人)が帰属主体となることを示す▲1▼移転するNFTのトークンID、▲2▼帰属主体C識別子が含まれていること、を確認する(S64)。確認後、Bは、当該ブロックチェーン基盤においてC(譲受人)を保有者とするNFT移転依頼メッセージ(▲1▼トークンID、▲2▼帰属主体C識別子、▲3▼コンテンツURI・C、その他情報、ETHを含む)を、NFTを移転するコントラクト(当該コントラクトは、同時にNFT生成、消却する機能を持つものであってもよい。)に対してブロードキャストする(S65)。
これを受けて、NFTを移転するコントラクトは、NFTを移転するトランザクションを起こし、マイニング(またはバリデート)をするノード(10D、10E、10Fその他)は、NFT移転の正当性を検証し、ブロックをチェーンに追加する(S66)。
【0029】
[0028]までで、NFTはB(譲渡人)からC(譲受人)に、譲受人が確認後巻き戻せるという意味で暫定的に移転されたが、その後、以下、コンテンツデータXCの帰属主体となったC(譲受人)自らが、コンテンツデータXCとNFTとの一意性を、コンテンツデータXCに埋め込まれた電子透かしCとNFT内の▲1▼トークンID、▲2▼帰属主体C識別子の同一を確認することで、検証し、それをマイナー(バリデター)が正当性の検証を行う手順(以下のS67)が加わることで、C(譲受人)自身が、確認、検証して、NFT譲渡を受ける、すなわちコンテンツデータXCの帰属主体となることができる。
即ち、C(譲受人)は、アカウント10Cから分散系システム(12)と通信し、移転されたNFT内の内のコンテンツURI・CによりコンテンツデータXCを確認し、NFT内と電子透かし内CのトークンID及び帰属主体C識別子の一致を確認する(S67)。確認後、C(譲受人)は、アカウント10Cから、ブロックチェーン基盤上で、他のノードにNFTのC(譲受人)への移転を確定させるメッセージを送信する(S68)。これを受けて、NFTの移転を確定させるコントラクト(当該コントラクトは、同時にNFT生成、消却する機能を持つものであってもよい。)は、トランザクションを起こし、マイニング(またはバリデート)をするノード(10D、10E、10Fその他)は、NFT移転を確定させることの正当性を検証し、ブロックをチェーンに追加する(S69)。
C(譲受人)は、移転された当該NFTの保有者となる(S70)。
【0030】
Cは、S67で、帰属関係の譲渡を受け、帰属主体となろうとする当該コンテンツデータXCと一体として埋め込まれ、容易に改竄できない電子透かしCに▲1▼トークンID、▲2▼帰属主体C識別子が埋め込まれていることを確認後、S68で自ら、▲1▼トークンID、▲2▼帰属主体識別子、▲3▼コンテンツURI・Cを含むNFT移転の受領の確定を求めるメッセージ送信をNFT移転のトランザクションを起こすコントラクトに送信する、ことでコンテンツデータXC(外見はコンテンツデータXに同じ)とNFTとが一意性を持つことを確保できる。また、他のNFTが、▲1▼トークンID、▲2▼別の帰属主体識別子、▲3▼コンテンツURI・Cを含んでいることを発見した場合には、分散系システム(11)において保管されているコンテンツデータXCの電子透かしを確認することで、原著作者Aが、電子透かしを入れ換えて、コンテンツデータXCを対象とする他のNFTを発行していないか、確認できる。もっとも、本システム外で、原著作者が、帰属主体になろうとする者Qの依頼で、当該コンテンツデータXQと一体として埋め込まれ、容易に改竄できない電子透かしQに▲1▼別のトークンID、▲2▼帰属主体Q識別子を埋め込んで、これらの情報を持つ別のNFT・Qを発行することのチェックはできない(禁止するのであれば契約などの縛りが別に必要)。
<3.NFTを消却するステップの例>
【0031】
図7を例示として、[0013]に掲げるNFTを消却する情報処理の各ステップを説明する(
図7)。
【0032】
コンテンツデータXに電子透かしCを埋め込んだコンテンツデータXC(外見は当該コンテンツデータXと同じ)の帰属主体であるCは、当該コンテンツデータXCを対象とするNFTを保有している。帰属主体であるCは、コンテンツデータXCとCとの帰属関係及び帰属関係を表しているNFTを消却する意向を持っている。例えば、帰属関係を原著作者Aに売却して、権利を消滅させる場合が考えられるが、これに限らない。
Cはアカウント10Cから、原著作者Aに対して分散系システム(12)を通じて、コンテンツデータXCとCとの帰属関係を消滅させ、NFTを消却する意向を伝える(S71)。
依頼を受けて、原著作者Aは、▲1▼発行するNFTのトークンID(Cの保有するNFTと同じ)、▲2▼帰属主体が不在(null)であることを示すnull識別子(存在しないアドレスなど)、その他の情報(ブロックチェーンを示す識別子、コントラクトアドレスほか)を含む電子透かしZを作成し、当該コンテンツデータXに埋め込み、コンテンツデータXZ(外見はコンテンツデータXと同じ)を作成し、分散系システムに保管する(S72)。そのうえで、コンテンツデータその他の情報の直接又は間接の保管場所を示すコンテンツURI・Zを分散系システム(12)を通じてC(アカウント10C)に送信する(S73)。
これを受けて、Cは、アカウント10Cから、分散系システム(12)と通信し、当該コンテンツデータXZが、当該コンテンツデータXと外見が一致していること、及び電子透かしZに帰属主体が不在であることを示す▲1▼消却するNFTのトークンID、▲2▼帰属主体null識別子が含まれていること、を確認する(S74)。確認後、Cは、当該ブロックチェーン基盤においてNFT移転の消却メッセージ(▲1▼トークンID、▲2▼帰属主体null識別子、▲3▼コンテンツURI・Z、その他情報、ETHを含む)を、NFTを消却するコントラクト(当該コントラクトは、同時にNFT生成、移転する機能を持つものであってもよい。)に対して送信する(S75)。
これを受けて、NFTを消却するコントラクトは、NFTを消却するトランザクションを起こし、マイニング(またはバリデート)をするノード(10D、10E、10Fその他)は、NFT消却の正当性を検証し、ブロックをチェーンに追加する(S76)。
【符号の説明】
【0033】
10 情報処理システム(インターネット上のブロックチェーン基盤と分散系システムと、インターネット上のブロックチェーン基盤および分散系システムとの通信部を有するブロックチェーン基盤の複数ノード及び複数アカウントと、からなる)
10A、10B、10C 分散系システム及びインターネット上のブロックチェーン基盤と通信できるアカウント(ブロックチェーン基盤上のノードであってもよい)
10D、E、F インターネット上のブロックチェーン基盤のノード、分散系システムとの通信もできる
11 インターネット上のブロックチェーン基盤 12 分散系システム
13 別のインターネット上のブロックチェーン基盤
14 ノード又はアカウントにおける処理部
15 ノード又はアカウントにおける通信部
20 ノード又はアカウントにおけるコンピューター
21 CPU 22 記憶部 23 メモリ 24 入出力I/F 25 R/W部
26 インターネット上のブロックチェーン基盤I/F 27 分散系システムI/F
28 基盤バス
30 コンテンツデータ 31 電子透かし 32 NFT 33 メタデータ
S51~S76 情報処理のステップ(「ステップ」を「S」と略する)
【要約】 (修正有)
【課題】コンテンツデータと帰属主体とが互いに一意に対応することを検証する情報処理システム及びブロックチェーンデータ構造を提供する。
【解決手段】インターネットに接続するブロックチェーン基盤及び電子透かし原本処理部を含む分散系システムのネットワークの、2つのネットワークを有する情報処理システムであって、コンテンツデータ30と、当該コンテンツデータを対象としてブロックチェーン基盤上で発行されたノンファンジブル・トークン(NFT)32とが、互いに一意に対応していることを、コンテンツデータ30に埋め込まれた電子透かし31と、NFT32の双方と、に含まれるトークンID及び帰属主体識別子を比較参照することで検証する。
【選択図】
図4