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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】美髪剤及び美髪方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9711 20170101AFI20240917BHJP
   A45D 7/00 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 8/9717 20170101ALI20240917BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240917BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
A61K8/9711
A45D7/00 Z
A61K8/34
A61K8/44
A61K8/60
A61K8/73
A61K8/9717
A61K8/9789
A61Q5/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019108768
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020200273
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-07-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】516128016
【氏名又は名称】株式会社グランクラス
(73)【特許権者】
【識別番号】507362410
【氏名又は名称】株式会社ヴィーヴォ
(73)【特許権者】
【識別番号】501146513
【氏名又は名称】株式会社ジェイ クラフト
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】谷 和雄
(72)【発明者】
【氏名】中原 愛
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 安久
(72)【発明者】
【氏名】上野 博司
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】木村 敏康
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-52153(JP,A)
【文献】特開2010-248121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/9711
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製水と、ヒアルロン酸ナトリウム、グリセリン、ラフィノース、及びベタインのみでなる四成分と、乾燥固形分で5~20重量%の海藻エキスとのみからなることを特徴とする美髪剤。
【請求項2】
海藻エキスは、褐藻又は紅藻の抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の美髪剤。
【請求項3】
シャンプーの後、請求項1又は2のいずれかに記載の美髪剤を髪に塗布し、この状態で所定時間だけ髪に熱を加え、髪を洗い流す工程を有することを特徴とする美髪方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の美髪剤を髪に塗布した後、髪にマイナスイオンを付与する工程を加えることを特徴とする請求項3記載の美髪方法。
【請求項5】
髪を洗い流した後に、髪にプラスイオンを付与する工程を加えることを特徴とする請求項3又は4記載の美髪方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、髪の補修効果が確実で、しかもその効果が長期に亘り、さらにはパーマやカラーの効果が持続すると共にダメージを抑制し、回数を重ねる毎にしだいに健康な髪に戻すことが期待できる美髪剤及び美髪方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の頭髪の一般的な物理的、化学的性質は、以下のとおりである。主成分はケラチンタンパク、1本あたりの含有水分量は約11~13%、pHは4.5~5.5である。また、太さは0.05~0.1mm、強度は1本で100~150gの重量物を持ち上げることができ、酸性に強く(アルカリ性に弱い)、110℃の環境下に10分程度、180℃の環境下であれば10秒程度で脆くなる。
【0003】
髪は、中心にあるメデュラ(髄質)と、メデュラを取り囲むコルティックス(皮質)、さらにコルティックスを取り囲んで髪の表面を覆ったキューティクル(毛小皮)で構成されている。
【0004】
さらに、コルティックスはコルティックス細胞で構成されており、このコルティックス細胞内には約60%が、髪の色を決定するメラニン、硬い繊維状のケラチンといったタンパク質、でなる髪を形成するマクロフィブリルと称される物質で構成されている。
【0005】
髪は、マトリックスタンパクと非ケラチンタンパクの「間充物質」により、上記マクロフィブリル同士をつなぎ(マトリックスタンパク)、隙間を埋める(非ケラチンタンパク)ことでメデュラを囲んだ状態で1本を形成している。
【0006】
間充物質は、髪を潤して水分を閉じ込め髪に弾力やしなやかさ、ハリなどを与える作用があり、硬い繊維状の(コルティックス細胞を構成する)ケラチンを含有したマクロフィブリルよりも軟らかくて滑らかな物性がある。
【0007】
また、間充物質は、髪においてパーマやカラーリングなどの「薬剤」の影響を受けやすく、反応しやすいという特性があり、この特性を利用して、例えばパーマ用の薬剤の作用をダイレクトに受けて移動することでパーマをかけ、例えばカラーリング用の薬剤を取り込んで染料を内部に閉じ込めることで髪が染めているのである。
【0008】
一方、間充物質は、(軟らかくて)結晶化していない、つまり安定していないので、上記薬剤によらずとも流失しやすく、間充物質が減るあるいは喪失すると、髪のしなやかさが失われ、潤いやハリ、弾力を失い、パサパサ、ゴワゴワ、してまとまりにくくなるほか、上記とは逆でパーマがかかりにくい、カラーリングしても髪が染まりにくい又は染めた色が落ちやすい、といった現象が生じやすくなる。すなわち、いわゆる「髪のダメージ」と言われる現象のほとんどが、間充物質の減少あるいは喪失に起因している。
【0009】
上記のとおり、間充物質は、薬剤によらずとも、乾燥や紫外線、間違ったヘアケアなどが原因で流出する。キューティクルは、間充物質を含有して構成されるコルティックスの周囲に5~6層状に毛根から先端に向けてタケノコの皮にように重なって、該コルティックスを外の衝撃や刺激から保護している。
【0010】
したがって、キューティクルは、例えばパーマ液やカラー剤などの薬剤の影響で剥離したり、紫外線を浴びて破壊されたり、髪の絡まったままで強引にブラッシングする、頻繁にブラッシングをする、ことで破損されたりする。キューティクルがコルティックスを保護している間は、間充物質の流出を防止できるが、当然、キューティクルが剥離すると間充物質が流出することとなる。また、髪をカットするとコルティックスやメデュラがむき出しになるので、間充物質の流出が生じる。
【0011】
さらに、キューティクルの剥離や破損によってコルティックスが露出し、間充物質が流出することだけでなく、髪の上記物性上、熱風を比較的長時間当て続けたり、ヘアアイロンを頻繁に使用したりすることで、熱によりコルティックス細胞内の(硬い繊維状の)ケラチンが変性し、間充物質が凝固して、潤いやハリが失われることとなる。
【0012】
従来、髪のケアとして、いわゆるリンスやトリートメント(以下、トリートメント剤と総称する)が用いられている。なお、いわゆるシャンプーは主にヒトの油脂成分を含めた汚れを落とすことを主目的としているので、ここでは髪のケア材料の対象としない。
【0013】
トリートメント剤の成分構成は、概ね、高級アルコール成分、柔軟成分、シリコン系成分、補修成分、とされている。高級アルコールは、髪からすぐに流れ落ちないように留まるように低流動性化と、油脂成分を補給するために配合され、具体的には例えばステアリルアルコール、セテアリルアルコール、セタノールが用いられる。
【0014】
柔軟成分は、髪に発生する静電気防止(マイナス極化防止)と、髪に帯電した静電気同士の反発を抑制していわゆる櫛通り(指通り)やまとまりを良くするために配合され、具体的にはカチオン系界面活性剤、例えばベヘントリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリドが用いられる。
【0015】
シリコン系成分は、端的にはキューティクル(髪の表層)をコーティングして手触り(すべり)を改善したり、ツヤを出したり、シャンプー後のきしみ感を抑制するために配合され、具体的にはアモジメチコン、シクロペンタシロキサンが用いられる。
【0016】
補修成分は、以下の補修しようとする対象によって各種トリートメント剤の特徴が現れる最も重要な成分とされている。補修とは、いずれもキューティクルが剥離してコルティックスが露出していることを前提に、間充物質における喪失又は不足する成分の補填を行うこと、頭皮の性状を良好にすること、パーマやカラーの状態を維持すること、を意味する。なお、以下の全ての補修を対象としたトリートメント剤は存在しないわけではないが、概ね補修対象をいずれかに絞って、具体的成分の配合濃度を高くすることでその補修の効果を向上させるようにしている。
【0017】
補修対象と用いられる具体的成分は、例えば次のとおりである。
・コルティックスのタンパク質の補填(ハリ・コシの質感改善)
加水分解ケラチン、加水分解シルク、ぺリセア、ヘマチン、クレアチン
・間充物質の水分の補填(パサつき改善)
1,3-ブチレングリコール、グリセリン、リピジュア、ヒアルロン酸、ハチミツ
【0018】
・コルティックスの水分の補填(パサつき、くせ毛の改善)
加水分解ヒアルロン酸、ぺリセア、加水分解コラーゲン
・間充物質の油分の補填(ツヤ・柔軟性の改善)
ホホバ種子油、ツバキ油、オリーブオイル、メドウフォーム油、セラミド
【0019】
・頭皮の性状を良好にする(育毛環境の改善)
グリチルリチン酸2K、センブリエキス、チョウジエキス、アルギニン
・パーマやカラーの維持(残留薬液除去と効果維持)
ヘマチン
【0020】
また、上記補修成分として、例えば特許文献1,2のように、保湿効果やキューティクル保護効果を目的としてアミノ酸やミネラルを多く含み、化合物と較べて人体の皮膚などの影響が少ない「海藻エキス」を用いてもよいことが知られている。
【0021】
特許文献1(特開2010-248115号公報)には、ツヤ感やまとまり感を満足させることを目的とした毛髪化粧料を、紅藻エキスとトリグリセリルを配合して得ること、また、前記紅藻エキスの配合量が全体に占める割合で0.001~0.2重量%とすること、が開示されている。
【0022】
特許文献2(特開2010-248121号公報)には、シリコン等で髪表層をコーティングしてダメージを一時的に隠ぺいするだけでは、長期使用によって更なるダメージを受ける点を課題として、この課題を解決するために、褐藻類から、メタノール、エタノールなどの低級アルコールを含む溶媒を用いて抽出した抽出物からなる毛髪保護剤が開示されている。
【0023】
さらに、特許文献2には、毛髪保護剤の使用態様(実施例)として、褐藻類から低級アルコールによって抽出した粉末の褐藻エキス(抽出物)を精製水に溶解して該褐藻エキスを全体の3.0重量%とした毛髪保護剤Aとすること、また、前記褐藻エキスの抽出過程で生じた残差物から得たフコイダンが全体の1.2重量%の濾液を毛髪保護剤Bとすること、さらに、これらをさらに希釈して用いることが開示されている。
【0024】
しかしながら、海藻エキスをトリートメント剤に用いるには、次の問題があった。すなわち、トリートメント剤に含まれる様々な天然由来成分や化合物成分のうち、カチオン系界面活性剤との相性が悪く、カチオン系界面活性剤に対する過量を同時配合すると、髪に使用する前に凝集や沈殿といった化学反応が生じて、海藻エキスによる効果が十分に発揮できる濃度を配合することができないといった問題がある。
【0025】
この観点からすると、特許文献1は紅藻エキスと共にカチオン性化合物類(陽イオン海面活性剤)を適宜配合してもよいとの記載があるが、特許文献1において紅藻エキスの配合量は毛髪化粧料全体に占める割合において0.001~0.2質量%と極めて微量であることから、上記凝集が生じることはない。つまり低濃度であるがゆえに海藻エキスによる髪のダメージ補修効果を十分に発揮できない。
【0026】
一方、特許文献2は、ストレートパーマやウェーブパーマ、カラーのいわゆる第1液や第2液に、上記毛髪保護剤Aや毛髪保護剤Bを直接使用する例が開示されているから、パーマやカラーの化合物薬液との相性上、物性変化を伴う反応が生じる可能性を考慮して微量とせざるを得ないと推測できる。
【0027】
つまり、従来は、海藻エキスはトリートメント剤の成分としては一般的に用いられる天然由来成分や化合物による効果を凌駕することが認められているものの、カチオン系界面活性剤との相性が悪く微量にしか配合できず、その結果、海藻エキスを配合しているにも拘わらず、微量であるがゆえに補修成分として十分に機能することがなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【文献】特開2010-248115号公報
【文献】特開2010-248121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明が解決しようとする問題は、海藻エキスはトリートメント剤の成分としては一般的に用いられているものの、カチオン系界面活性剤との相性が悪く、微量にしか配合できず、その結果、海藻エキスを配合しているにも拘わらず、微量であるがゆえに補修成分として十分に機能することがなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の美髪剤は、精製水と、アニオン系成分、すなわち陰イオン性の成分のみでなるベース剤と、5~20重量%の海藻エキスとを配合してなることを主要な特徴とした。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、アニオン系成分のみでベース剤を構成することで、5~20重量%の高濃度で海藻エキスを配合することが可能となり、その結果、髪の補修効果が確実で、しかもその効果が長期に亘り、さらにはパーマやカラーの効果が持続すると共にダメージを抑制し、回数を重ねる毎にしだいに健康な髪に戻すことが期待できるといった海藻エキスによる髪を美しくする美髪効果を十分に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施に用いた美髪装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施に用いた美髪装置の使用状況を示す図である。
図3】本発明の実施に用いた美髪装置の他の構成を示す部分縦断面図である。
図4】本発明の実施に用いた他の構成の美髪装置の使用状況を示す図である。
図5】本発明の実施に用いた美髪装置の髪接触部の他の構成を示す図である。
図6】本発明の実施に用いた美髪装置の髪接触部の他の構成を示す図である。
図7】本発明の実施に用いた美髪装置の髪接触部の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、海藻エキスがカチオン系界面活性剤との相性が悪く、微量にしか配合できず、海藻エキスを配合しているにも拘わらず、微量であるがゆえに補修成分として十分に機能することがなかったという課題を、精製水と、アニオン系成分のみでなるベース剤と、5~20重量%の海藻エキスとを配合することで解消した。
【0034】
カチオン(陽イオン)系界面活性剤は髪における柔軟、帯電防止、殺菌効果があり、トリートメント、コンディショナー、髪の柔軟剤にほぼ必須な材料とされているが、昨今では前記殺菌効果を呈するほどの刺激が髪の地肌を痛めるなど問題視されており、いわゆるカチオン系界面活性剤に代えてアンホ(両性)界面活性剤を用いたものや、ノンカチオンと称されるカチオン系界面活性剤を含まないトリートメントなどもある。
【0035】
アンホ界面活性剤を用いたトリートメント、カチオン系界面活性剤を含まないノンカチオンと称されるトリートメントは、いずれも、カチオン系界面活性剤ほどの柔軟効果を得ることができないため、髪のキシキシと引っかかる感触(指通りの悪さ)が目立つため、シリコンを配合するなどの措置を講じる必要がある。シリコンを配合すると指通りは良好となるものの、髪表面上の感覚的な効果であって、キューティクルが剥離してコルティックスの露出により間充物質が流出した髪のメデュラ(髄質)を補修することができないと共に、補修成分をメデュラに向けて浸透させることもできない。
【0036】
また、アンホ界面活性剤を用いたトリートメント、カチオン系界面活性剤を含まないノンカチオンと称されるトリートメントにおいて、さらにシリコン等を配合しないトリートメントもあるが、基本的に油脂成分を潤沢に配合することでシリコンの機能を代替しているに過ぎないので、コルティックス内のメデュラに向けて間充物質を浸透させることができても、キューティクルの補修はできていないため、洗い流すことですぐにまた間充物質やシリコン代替成分が流れ落ちてしまうこととなる。
【0037】
以上に鑑みて、本発明者等は、種々鋭意研究を重ね、いままで少量配合されていた海藻エキスを、高濃度配合して髪に塗布することで、コルティクスに間充物質の補充とダメージを受けたキューティクルの補修とが(少量配合と較べて)効果的に行えることはもちろん、特筆すべきは、その効果が長期に亘り、パーマやカラーの効果が持続すると共にダメージを抑制し、これらが好循環することで使用回数を重ねる毎にしだいに健康な髪に戻ることを究明した。
【0038】
ところが、海藻エキスだけを髪に塗布すると、海藻エキスそのものが糖質であることから粘性が高すぎて、上手く塗布できないなど扱いが困難であったため、市販のトリートメントにおける海藻エキスの含有割合を高めてみたが、従来技術のとおり、他の成分、特にカチオン系の成分が配合されている場合は僅かしか配合できず、これを超えて配合しようとすると、他の成分との反応が生じて髪に上記の好効果が得られないことが判明した。
【0039】
本発明は、以上の経緯を経て、海藻エキスを多量配合すること、多量配合の海藻エキスを扱いやすくすること及び扱いやすくすることで海藻エキスの機能(効果)を高めてなお好効果を得ることのできる美髪剤を得るべく、上記構成とした。
【0040】
本発明では、アニオン系成分のみでなるベース剤とすることで、ベース剤と海藻エキスとが反応して凝集など生じることはなく、よって、5~20重量%の従来の配合量と較べると10倍~100倍もの多量配合が可能となった。
【0041】
そして、海藻エキスが5重量%より低い配合量であると、多量配合の海藻エキスの効果を十分に発揮することができず、20重量%より高い配合も可能であるが、20重量%を超えると、べたついて髪に塗布しにくいなど扱いが困難になる可能性がある。
【0042】
また、本発明の美髪剤は、上記構成において、砂糖大根の抽出物の陰イオン性のアニオン系成分をベース剤とすれば、化学成分の存在しない天然由来成分で全体を構成することができるから、化学成分を含有する場合と較べて、髪や頭被への刺激が少ないと共に、髪への親和性が高く、海藻エキスの効果がより一層高くなる。
【0043】
さらに、本発明の美髪剤は、上記構成において、ベース剤が、ヒアルロン酸ナトリウム、グリセリン、ラフィノース、ベタイン、のいずれか、または複数でなる構成であってもよい。これらはすべて陰イオン性のアニオン系成分であると共に砂糖大根から抽出可能な成分である。
【0044】
「ヒアルロン酸ナトリウム」は、水に溶けやすく、髪や肌に馴染みやすく、保湿効果がある。
「グリセリン」は、保湿効果、柔軟効果を有し、そもそも皮膚成分であることから、地肌の調整作用も有している。
【0045】
「ラフィノース」は、吸水した水分を離さず維持し、吸湿性を持たない特性を有すると共に、髪を脂質と水分がサンドイッチ状に積層したラメラ構造に正す作用があり、髪のバリア機能を付与することとなる。
「ベタイン」は、陽イオンと陰イオンを持つ両面界面活性剤であるが、本発明では界面活性効果に関しては不要であって、主に(過度でない)洗浄効果と、吸湿及び保湿並びに水分保持と、帯電防止効果を目的として配合する。
【0046】
このようにすることで、多量配合の海藻エキスの効果を損なうことなく、髪のダメージ要因の個々に補修することが可能となる。
【0047】
また、本発明は、上記構成において、海藻エキスを褐藻又は紅藻から抽出すればよい。海藻は、ウミトラノオ、コンブ、ヒジキ、ヒバマタ、ホンダワラ、モズク、ラッパモク、ワカメが属する「褐藻類」、アサクサノリ、テングサが属する「紅藻類」、オサ、アオノリ、カサノリ、サボテングサ、フサイワヅタ、ミルが属する「緑藻類」に大別される。
【0048】
そして、これら海藻から抽出されるエキスとは、低分子窒素化合物、単糖・オリゴ糖、有機酸、ミネラルなどを指す水溶性低分子化合物群と、水溶性のタンパク質や多糖が含まれる水溶性高分子化合物群との可溶性成分すべてを意味する。
【0049】
髪の補修成分として特に必要となるのは、アミノ酸やタンパク質であることから、これら成分が豊富で増粘多糖質の褐藻類、紅藻類から、水溶性高分子化合物を抽出する手法によって抽出した海藻エキスを採用することで、髪の補修効果が向上する。
【0050】
また、本発明の美髪剤を用いた髪のダメージ補修方法は、髪に塗布し、この状態で所定時間だけ髪に熱を加え、髪を洗い流す工程を行うことで、海藻エキスの効果が確実に発揮される。
【0051】
本発明の美髪剤は、髪に塗布する段階では、粘性を呈した感触であるが、塗布の後、熱を加えることで、水分が揮発して糖質濃度が上がるので急速に粘性が上がり、さらにべたべたとした感触となる。このとき、髪に確実に付着して髪に補修成分を浸透させやすくなる。
【0052】
そして、塗布した本発明の美髪剤は、熱を加えられることで上記のとおり流動性が低くなる一方、髪も熱を帯びる。一般的に髪に熱を加えることはダメージ要因ではあるが、ダメージとは間充物質が流出する孔ができる又は広がることを意味するから、いま、流動性の低くなって髪に密着している本発明の美髪剤は、髪に熱を帯びることで、間充物質が流出しようとする孔から、海藻エキスが浸透・吸収されることとなる。その後、髪を洗い流すことで、表層にある余剰分の海藻エキスは流れ落ちるが、定着した海藻エキスは、間充物質の補充と共にキューティクルの補修が行われているため、洗い流す程度では流出することがない。
【0053】
また、本発明の美髪剤を用いた髪のダメージ補修方法は、上記において、本発明の美髪剤を髪に塗布した後、髪にマイナスイオンを付与する工程を加えてもよい。こうすることで、コルティックス内に通じる孔が熱を与えることと相乗してより確実に拡き、海藻エキスをコルティクスに浸透(定着)させやすくなる。
【0054】
さらに、本発明の美髪剤を用いた髪のダメージ補修方法は、上記において、髪を洗い流した後に、髪にプラスイオンを付与する工程を加えてもよい。こうすることで、定着した海藻エキスをコルティックスに閉じ込めることができる。
【0055】
また、上記の本発明の美髪剤を用いた髪のダメージ補修方法において、マイナスイオン、プラスイオンを付与するためには、髪に接触させ、プラス又はマイナスの電極とされた髪接触部と、この髪接触部を髪に接触させた者の身体に接触させ、該髪接触部の電極と反対の極性の電極とされた身体接触部と、これら髪接触部と身体接触部とを直流電源を介して電気的に接続して電流制御する制御部と、を備えた美髪装置を用いればよい
【0056】
上記構成によれば、髪に電圧を印加することによって髪の表面を形成しているキューティクルが開き又は閉じるのを促進し、髪への本発明の美髪剤の浸透を促進し又は髪に浸透した本発明の美髪剤を確実に保持させることができる。
【0057】
例えば、上記の制御部は、直流電源の電流方向を切り替えて髪接触部の極性を切り替える構成としてもよい。
【0058】
また、例えば上記の制御部は、直流電源の電圧周波数により切り替えて髪接触部の極性を切り替えるとしてもよい。
【0059】
このようにすることで、マイナスイオンだけ、プラスイオンだけ、あるいは両方、の使い分けと使い分けのタイミングを任意で行うことができ、特に電圧周波数によって切り替える構成を採用した場合は、髪に刺激を与え、髪にうるおいを与えることができる。
【0060】
さらに、例えば、上記の髪接触部は、櫛、ブラシ状、1対のヘラで髪を挟む構成、のいずれかとすれば、本発明の美髪剤を塗布した後、あるいは美髪剤を洗い流した後、の髪の状況に応じた髪接触部を使用して適切かつ確実にイオン付与を行うことができるようになる。
【実施例
【0061】
以下、本発明の具体例と効果を確認するために行った各種実験について図面を参照して説明する。まず、本発明の美髪剤を用いた本発明の美髪方法に用いられる美髪装置の構成とその動作について図1図7を参照して説明する。
【0062】
美髪装置1は、図1に示すように、本発明の美髪剤を用いた本発明の美髪方法においてマイナスイオン又はプラスイオン、あるいは両イオンを髪に付与するためのものであって、本体2に、髪に接触させかつ正又は負の電極となる髪接触部3と、髪を処理される者の身体に接触させかつ上記髪接触部3における電極と反対の電極となる身体接触部4と、髪接触部3と身体接触部4とに電気的に接続した直流電源5と、電流・電圧制御を行う制御部6と、を有している。
【0063】
詳細には、上記本体2は、本実施例では、合成樹脂等の電気絶縁性材料から形成された一定長さを有する円柱状の把手部2Aと、この把手部2Aの先端部から該把手部2Aの長さ方向に髪接触部3が突設されている。
【0064】
そして、上記髪接触部3は、本実施例では、一定長さを有する棒状の基体3aの外周面に該基体3Aの長さ方向に小間隔毎に複数本の一定長さの複数の櫛歯3bを同一方向に突設することによって形成されている。そして、櫛歯3bは、少なくとも表面が金属等の導電性材料から形成されて正又は負の電極となるように構成されている。
【0065】
また、上記身体接触部4は、上記本体2とは別体に形成され、少なくとも表面が金属等の導電性材料から形成された一定長さを有する円柱状体からなり、髪接触部3の櫛歯3bとは反対の電極となるように構成されている。
【0066】
上記本体2と直流電源5とが導線6によって電気的に接続されていると共に、身体接触部4と直流電源5とが導線7によって電気的に接続されることで、本体2における髪接触部3の櫛歯3bの各々と身体接触部4とが直流電源5を介して電気的に接続される。
【0067】
更に、直流電源5には制御部8を有し、また、直流電流の流れ方向を切り換えるための電流スイッチ5Aが設けられている。制御部8は、電流スイッチ5Aの操作により、直流電流の流れ方向を一定方向に常時維持するモードと、直流電流の流れ方向を所定周波数でもって連続的に反転させるモードを切り替えるようになっている。
【0068】
また、直流電源5には、出力スイッチ32が設けられ、制御部8は、出力スイッチ32の操作により、本体2の櫛歯3bと身体接触部4との間の電圧(V)が任意に調整できるようになっている。
【0069】
制御部8は、電流スイッチ5Aの直流電流の流れ方向を一定方向に常時維持するモードにセットする操作により、本体2における髪接触部3の櫛歯3bを常時、正電極又は負電極に維持すると共に、上記身体接触部4を櫛歯3bの電極とは反対の電極に常時、維持するよう制御する。
【0070】
また、制御部8は、電流スイッチ5Aを、直流電流の流れ方向を所定周波数でもって反転させるモードにセットする操作により、本体2における髪接触部3の櫛歯3bと身体接触部4との間において、正電極と負電極とを所定の周波数でもって反転させるよう制御する。なお、上記周波数は、上記直流電源5に設けた周波数調整スイッチ5Cの操作で制御部8により調整される。
【0071】
上記構成の美髪装置1の動作について説明する。なお、上記美髪方法を実施する際の操作条件は後述する。美髪装置1を、直流電源5の電源を入れ、電流スイッチ5Aを調整して、直流電源5から身体接触部4方向に向かって直流電流が常時流れるように、即ち、上本体1における髪接触部3の櫛歯3bが常時、負電極に、身体接触部4が常時、正電極となるように設定すると次のように動作する。
【0072】
このとき、本体2の櫛歯3bと身体接触部4との間の電圧(V)を直流電源5の出力スイッチ5Bによって調整しておく。なお、本体2の櫛歯3bと身体接触部4との間の電圧(V)としては2~30Vが好ましく、12~18Vがより好ましい。
【0073】
また、本体2の櫛歯3bと身体接触部4の間の電圧(V)は、櫛歯3bが負電極で、身体接触部4が正電極である限り、一定であっても、所定周波数で変動させてもよいが、電圧(V)を変動させることによって髪に刺激を与え、髪にうるおいを与えることができることから、所定周波数で変動させるのがさらに好ましい。
【0074】
本体3の櫛歯3bと身体接触部4との間の電圧(V)を所定周波数で変動させる場合の周波数としては、0.1~100Hzが好ましく、6~12Hzがより好ましい。
【0075】
図2に示すように、美髪装置1の身体接触部4を、髪を処理される者Pに握らせる一方、美髪装置1における本体2の把持部2Aを、例えば、操作者C(例えば美容師等)が把持して、例えば本発明の美髪剤を塗布した髪Hを本体2の櫛歯3bで梳く。なお、本体2を把持する者は、髪を処理される者Pであってもよい。
【0076】
すると、直流電源5から出た直流電流は、美髪装置1の本例では身体接触部4から身体及び髪を介して本体2の櫛歯3bを通って直流電源5に戻る。この状態においては、本体2の櫛歯3bには負電圧が印加され、この櫛歯3bが接触している髪Hには負電圧が印加されており、髪Hは膨潤、軟化し、髪Hの表面を形成しているキューティクルが拡がる。
【0077】
負電極とされた本体2の櫛歯3bによって髪Hを梳くことで、一本一本の髪Hのキューティクルが確実に開き、本発明の美髪剤の髪H内への浸透を促進させることができる。
【0078】
一方、美髪装置1を、直流電源5の電源を入れた上で、直流電源5の電流スイッチ5Aを調整して、直流電源5から本体2の櫛歯3b方向に向かって直流電流が常時流れるように、即ち、本体2における髪接触部3の櫛歯3bが常時、正電極に、身体接触部4が常時、負電極となるように設定すると次のように動作する。
【0079】
このとき、本体2の櫛歯3bと身体接触部4との間の電圧(V)を直流電源5の出力スイッチ5Bによって調整しておく。なお、本体2の櫛歯3bと身体接触部4との間の電圧(V)としては2~30Vが好ましく、12~18Vがより好ましい。
【0080】
本体2の櫛歯3bと身体接触部4との間の電圧(V)は、櫛歯3bが正電極で、身体接触部4が負電極である限り、一定であっても、所定周波数で変動させてもよいが、電圧(V)を変動させることによって髪に刺激を与え、髪にうるおいを与えることができることから、所定周波数で変動させることが好ましい。
【0081】
本体2の櫛歯3bと身体接触部4との間の電圧(V)を所定周波数で変動させる場合の周波数としては、0.1~100Hzが好ましく、6~12Hzがより好ましい。
【0082】
図2に示すように、美髪装置1の身体接触部4を、髪を処理される者Pに握らせる一方、美髪装置1における本体2の把持部2Aを、例えば、操作者Cが把持して、本発明の美髪剤が塗布され、所定時間経過で洗い流された状態の髪Hを本体2の櫛歯3bで梳く。なお、本体2を把持し操作する者は、髪を処理される者Pであってもよい。
【0083】
すると、直流電源5から出た直流電流は、美髪装置1における本体2の櫛歯3bから髪H及び身体を介して美髪装置1の身体接触部4を通って直流電源5に戻る。この状態においては、本体2の櫛歯3bには正電圧が印加され、この櫛歯3bが接触している髪には正電圧が印加されており、髪Hは引き締められ、髪Hの表面を形成しているキューティクルが閉じる。
【0084】
また、例えば、美髪装置1は、直流電源5の電流スイッチ5Aを、直流電流の流れ方向を所定の周波数でもって連続的に反転させるモードに設定して使用することができる。
【0085】
上記電流スイッチ5Aを上記モードに設定することによって、本体2における髪接触部3の櫛歯3bと身体接触部4との間において、正電極と負電極とを所定の周波数でもって反転させることができる。
【0086】
上記周波数は、直流電源5の周波数調整スイッチ5Cによって調整され、0.1~100Hzが好ましく、6~12Hzがより好ましい。また、本体1の櫛歯3bと身体接触部4との間の電圧(V)を直流電源5の出力スイッチ5Bによって調整しておく。このとき、本体2の櫛歯3bと身体接触部4との間の電圧(V)としては2~30Vが好ましく、12~18Vがより好ましい。
【0087】
しかる後、上記要領と同様に、美髪装置1の身体接触部4を、髪Hを処理される者Pに握らせる一方、美髪装置1における本体2の把持部2Aを、例えば操作者Cが把持して、本発明の美髪剤を塗布した髪Hを本体2の櫛歯3bで梳く。なお、本体2を把持し操作する者は、髪を処理される者Pであってもよい。
【0088】
すると、髪Hに接触させている本体2の櫛歯3bは、正電圧と負電圧とが所定周波数で反転、印加され、この櫛歯3bが接触している髪は、正電圧と負電圧とが所定周波数で交互に印加される。
【0089】
そして、負電圧が髪に印加されている時は、上述の如く、髪Hが膨潤、軟化して、キューティクルが確実に拡いて発明の美髪剤の浸透が促進されると共に、正電圧が髪に印加されている時は、髪が引き締められて、髪表面のキューティクルが閉じて、髪に浸透させたトリートメント薬剤や育毛(発毛)薬剤を髪内に確実に維持させることができる。
【0090】
このとき、本体2の櫛歯3bを頭皮に接触させながら髪を梳くことによって、頭皮に正電圧と負電圧とを所定周波数でもって交互に印加させ、頭皮内の生体電解質に刺激を与えて頭皮にマッサージ作用を施し、頭皮内の血流を活発化させることができる。
【0091】
なお、上記のように、本体2における髪接触部3の櫛歯3bと身体接触部4との間において、正電極と負電極とを所定の周波数でもって反転させた場合には、処理の最後に、直流電源5の電流スイッチ5Aを調整して、本体2における髪接触部3の櫛歯3bが常時、正電極に、身体接触部4が常時、負電極となるように設定し、櫛歯3bが接触している髪に正電圧を印加して、髪の表面を形成しているキューティクルを確実に閉じさせて、髪に浸透させたトリートメント薬剤や育毛(発毛)薬剤を髪内に確実に保持させるようするのが好ましい。
【0092】
次に、美装置1では、本体2と身体接触部4とを別体としたものを説明したが、両者が一体化したものであってもよい。詳細には、図3に示す、本体6は、図1に示した美髪装置1と同様に、合成樹脂等の電気絶縁性材料から形成された一定長さを有する円柱状の把手部21Aと、この把手部21Aの先端部から該把手部21Aの長さ方向に突設した髪接触部21Bとからなる。
【0093】
そして、髪接触部21Bは、一定長さを有する棒状の基体21aの外周面に該基体21aの長さ方向に小間隔毎に複数本の一定長さの櫛歯21bを同一方向に複数突設することによって形成されている。そして、櫛歯21bは、少なくとも表面が金属等の導電性材料から形成されて正又は負の電極となる。
【0094】
また、身体接触部21Cは、少なくとも表面が金属等の導電性材料から形成された板状体に形成され、本体21の把手部21Aの基端部外周面に一体的に設けられており、髪処理具本体1における髪接触部21Bの櫛歯21bとは反対の電極となる。
【0095】
さらに、本体21の把手部21A内部には直流電源21D、例えば、全体の電圧が電気回路により昇降可能に構成された直列状態の複数個の乾電池が収納されており、髪接触部21Bの櫛歯21bと身体接触部21Cとは直流電源21Dを介して電気的に接続されている。
【0096】
そして、本体21には、直流電流の流れ方向を切り換えるための電流スイッチ21Eが一体的に設けられている。この電流スイッチ21Eは、図1に示した美髪装置1と同様に、直流電流の流れ方向を一定方向に常時維持するモードと、直流電流の流れ方向を所定の周波数でもって連続的に反転させるモードを設定操作するためのものである。
【0097】
なお、櫛歯21bと身体接触部21Cとの間の電圧(V)は本体21の把手部21Aに一体に設けられた出力スイッチ(図示せず)によって調整される。このとき、本体21の櫛歯21bと身体接触部21Cとの間の電圧(V)としては2~30Vが好ましく、12~18Vがより好ましい。
【0098】
上記電流スイッチ21Eを、直流電流の流れ方向を一定方向に常時維持するモードにセットすることによって、本体21における髪接触部21Bの櫛歯21bを常時、正電極又は負電極に維持すると共に、身体接触部21Cを櫛歯21bの電極とは反対の電極に常時、維持することができる。
【0099】
また、電流スイッチ21Eを、直流電流の流れ方向を所定の周波数で反転させるモードとすることによって、本体21における髪接触部21Bの櫛歯21bと身体接触部21Cとの間において、正電極と負電極とを所定の周波数で反転させることができる。なお、上記周波数は、本体21の把手部21Aに一体的に設けられた周波数調整スイッチ(図示せず)によって調整され、0.1~100Hzが好ましく、6~12Hzがより好ましい。
【0100】
上記構成の美髪装置1の使用は、図4に示すように、髪を処理したい者P自身が本体21の把手部21Aを身体接触部21Cと掌を接触させた状態に把持しなければならないこと以外は、図1に示した状況と同じであるので、図3における説明は省略する。
【0101】
なお、図1及び図3に示した美髪装置1は、髪接触部3,21Bを棒状の当て基体の外周面に該当て基体の長さ方向に小間隔毎に複数本の一定長さの櫛歯3b,21bを同一方向に突設することによって形成した場合を説明したが、髪接触部3,21Bによって髪に正電圧又は負電圧を印加することができれば、髪接触部3,21Bの形状は特に限定されない。
【0102】
また、例えば、図5に示すように、本体22をブラシ状としてもよい。この場合、平面縦長長方形状の板状の先部22aとこの先部22aの基端面に突設された基部とからなる当て基体22Aにおける先部22aの片面全面に、複数の一定長さの櫛歯22bを縦横に小間隔毎に格子状に同一方向に複数突設してなる髪接触部22であってもよい。なお、櫛歯22bの少なくとも表面は、金属等の導電性材料から形成され、また、櫛歯22bは身体接触部4(21C)と直流電源5(21D)を介して電気的に接続される。
【0103】
さらに、図6に示すような髪接触部23としてもよい。髪接触部23は、一定長さの棒状の基体23Aの先部に、ローラ23Bを基体23Aの軸芯回りに回転自在に被嵌させた構成としている。この場合には、ローラ23Bが正又は負の電極となり、直流電源5(21D)を介して身体接触部4(21C)と電気的に接続される。なお、上記ローラ23Bの少なくとも外周面は、金属等の導電性材料から形成される。
【0104】
また、図7に示すような髪接触部24としてもよい。髪接触部24は、表面が少なくとも金属等の導電性材料から形成された一定長さの棒状のものとされている。この場合には、棒状の髪接触部24が正又は負の電極となり、直流電源5(21D)を介して身体接触部4(21C)と電気的に接続される。
【0105】
さらに、例えば、図示しないが、髪接触部3,21Bを1対のヘラで髪を挟んで移動させる構成としてもよい。この場合、櫛歯3b,21bに代えて導電性の金属でなる平板上の導電ヘラと、この該導電ヘラと対になる非導電性の受ヘラ(又は板材、あるいは円柱棒材)とからなる構成としてもよい。
【0106】
次に、本発明の美髪剤についての効果を確認するためにおこなった試験について説明する。本実施例における美髪剤は次の構成とした(実施例)。褐藻エキス重量14.00重量%、砂糖大根から抽出したアニオン成分であるヒアルロン酸ナトリウム重量0.06重量%、グリセリン重量4.00重量%、ラフィノース重量3.00重量%、ベタイン重量3.00重量%、精製水重量75.94%。
【0107】
試験は、まず、海藻エキスを高濃度配合した上記実施例と、海藻に代わる成分としてコラーゲン(比較例1)、ケラチン(比較例2)を実施例と同量(14.00重量%)配合した比較例1,2と、海藻エキス含有(0.01重量%)と記された市販品の比較例3とを用いた。
【0108】
試験方法は、(同一の)シャンプーにより髪の汚れを落とし、十分にシャンプーを洗い落とし、同一被験者の同じ領域のほぼ同一量の束に向けて、実施例、比較例1~3を各々塗布して、一旦、乾かして、その後、実施例、比較例1~3を洗い流して、乾燥させた状態の、髪の根本、中間、先端、において髪の輪をつくり弾力によりどの程度拡径したかを評価した。
【0109】
評価は、髪の根本、中間、先端、とするほぼ同一箇所で10~12mmの輪を作り、手を放して、輪が10mm以上で拡径した場合は「◎」、輪が5mm以上、10mm未満で拡径した場合は「〇」、輪が1mm以上、5mm未満で拡径した場合は「△」、ほぼ拡径しなかった場合は「×」とした。この結果を以下の表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
以上の結果から、本実施例のように海藻エキスを高濃度に配合することで、微量配合の市販品に比べて髪の弾力に差が生じることが判明した。また、同等とされる成分を海藻エキスと同量配合しても、海藻エキスの効果におよばないことが判明した。
【0112】
次に、本発明の美髪方法に関する効果を確認する実験について説明する。試験は、髪質、髪の長さ、髪のダメージがほぼ同じ被験者3人の同一領域の髪の束について実施例と上記比較例3の市販品を用い、方法1~8の違いによる上記の髪の弾力の相違を見た。
方法1:シャンプー → 比較例3塗布 → 乾燥 → 流す → 乾燥 → 弾力試験
方法2:シャンプー → 実施例 塗布 → 乾燥 → 流す → 乾燥 → 弾力試験
【0113】
方法3:シャンプー → 比較例3塗布 → マイナスイオン付与 →
乾燥 → 流す → 乾燥 → 弾力試験
方法4:シャンプー → 実施例 塗布 → マイナスイオン付与 →
乾燥 → 流す → 乾燥 → 弾力試験
【0114】
方法5:シャンプー → 比較例3塗布 → 乾燥 → 流す →
プラスイオン付与→ 乾燥 → 弾力試験
方法6:シャンプー → 実施例 塗布 → 乾燥 → 流す →
プラスイオン付与→ 乾燥 → 弾力試験
【0115】
方法7:シャンプー → 比較例3塗布 → マイナスイオン付与 →
乾燥 → 流す →プラスイオン付与 → 乾燥 → 弾力試験
方法8:シャンプー → 実施例 塗布 → マイナスイオン付与 →
乾燥 → 流す →プラスイオン付与 → 乾燥 → 弾力試験
【0116】
方法1及び方法2に関しては、被験者3人の、それぞれ頭部全領域について、(同一の)シャンプーにより髪の汚れを落とし、十分にシャンプーを洗い落とし、被験者全員の同じ領域のほぼ同一量の束に向けて、実施例、比較例3を各々塗布して、一旦、乾かして、その後、実施例、比較例3を洗い流して、乾燥させた状態の、髪の根本、中間、先端、において髪の輪をつくり弾力によりどの程度拡径したかを評価した。
【0117】
方法3及び方法4に関しては、上記方法1及び方法2において、実施例、比較例3を各々塗布して、一旦、乾かすまでの間、すなわち実施例、比較例3を各々塗布した後に、上記図1及び図2に示す美髪装置1を用いて同一条件のマイナスイオンを付与し、その後は方法1及び方法2と同様の工程を経て、髪の根本、中間、先端、において髪の輪をつくり弾力によりどの程度拡径したかを評価した。
【0118】
方法5及び方法6に関しては、上記方法1及び方法2において、実施例、比較例3を洗い流した後、乾かすまでの間、すなわち、実施例、比較例3を洗い流した後に、上記図1及び図2に示す美髪装置1を用いて同一条件のプラスイオンを付与し、その後は方法1及び方法2と同様の工程を経て、髪の根本、中間、先端、において髪の輪をつくり弾力によりどの程度拡径したかを評価した。
【0119】
方法7及び方法8に関しては、上記方法1及び方法2において、実施例、比較例3を各々塗布した後に、上記図1及び図2に示す美髪装置1を用いて同一条件のマイナスイオンを付与し、乾燥させ、実施例、比較例3を洗い流した後に、上記図1及び図2に示す美髪装置1を用いて同一条件のプラスイオンを付与し、その後は方法1及び方法2と同様の工程を経て、髪の根本、中間、先端、において髪の輪をつくり弾力によりどの程度拡径したかを評価した。
【0120】
評価は、髪の根本、中間、先端、とするほぼ同一箇所で10~12mmの輪を作り、手を放して、輪が10mm以上で拡径した場合は「◎」、輪が5mm以上、10mm未満で拡径した場合は「〇」、輪が1mm以上、5mm未満で拡径した場合は「△」、ほぼ拡径しなかった場合は「×」とした。この結果を以下の表2に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
以上の試験結果から、本実施例の美髪剤を用いた方法2は、比較例3の市販品を用いた方法1よりも弾力が戻ったことが確認できた。また、マイナスイオンを付与した方法3及び方法4においては、コルティックス内へ通じる孔が拡がることで補修成分が該コルティックス内へ浸透しやすくなるため、実施例、比較例3を用いた場合の特に中間から先端に向けた弾力が方法1及び方法2と較べて各々上がったが、方法3に較べて方法4はやはり高濃度の海藻エキスを用いている点で効果は高かった。
【0123】
さらに、プラスイオンを付与した方法5及び方法6においては、コルティックス内へ通じる孔が閉じることで該コルティックス内へ浸透した補修成分が再流出しにくくなるため、実施例、比較例3を用いた場合の特に中間から先端に向けた弾力が方法3及び方法4と較べて各々上がったが、方法5に較べて方法6はやはり高濃度の海藻エキスを用いている点で効果は高かった。
【0124】
また、マイナスイオンを付与した後に、プラスイオンを付与した方法7及び方法8においては、コルティックス内へ通じる孔を拡げて補修成分を該コルティックス内へ浸透しやすくし、浸透させた後に、コルティックス内へ通じる孔を閉じることで該コルティックス内へ浸透した補修成分が再流出しにくくなるため、実施例、比較例3を用いた場合の特に先端に向けた弾力が方法5及び方法6と較べて各々上がったが、方法7に較べて方法8はやはり高濃度の海藻エキスを用いている点で効果は高かった。
【符号の説明】
【0125】
1 美髪装置
2 本体
3 髪接触部
4 身体接触部
8 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7