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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/02 20060101AFI20240917BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20240917BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20240917BHJP
   F28F 21/06 20060101ALI20240917BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
F28F1/02 B
F28D1/053 A
F28F9/02 301Z
F28F21/06
F28F21/08 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020154798
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048783
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394014777
【氏名又は名称】株式会社コージン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】安在 英司
(72)【発明者】
【氏名】池田 良成
(72)【発明者】
【氏名】郷原 広道
(72)【発明者】
【氏名】加藤 遼一
(72)【発明者】
【氏名】稲場 道弘
(72)【発明者】
【氏名】砂子 哲也
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-145096(JP,A)
【文献】特開平08-110191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/02,9/02,21/06-21/08
F28D 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って、熱媒体の流通路が内部を貫通する金属製の本体部と、
前記流通路に連通する流入口及び流出口の一方である第1口が設けられ、前記第1方向において前記本体部の一方側に位置する第1端部を覆う樹脂製の第1ヘッダーと、を備え、
前記本体部は、
前記第1方向に交差する第2方向と前記第1方向との双方に沿って延びる平坦面の表面と、
前記第1方向及び前記第2方向の双方に交差する第3方向において、前記表面とは反対側に配置される平坦面の裏面と、
前記第2方向の一方側にある、前記表面の第1端縁と前記裏面の第1端縁とを連結する第1側面と、
前記第2方向の他方側にある、前記表面の第2端縁と前記裏面の第2端縁とを連結する第2側面と、を有し、
前記本体部と、前記第1ヘッダーとは、前記表面の一部の第1接合面と、前記裏面の一部の第2接合面と、前記第1側面の一部の第3接合面と、前記第2側面の一部の第4接合面とで接合され、
前記第3接合面は、前記表面の第1端縁及び前記裏面の第1端縁よりも前記第2方向に突出する曲面であり、前記第4接合面は、前記表面の第2端縁及び前記裏面の第2端縁よりも前記第2方向に突出する曲面であり、
前記流通路は、前記本体部における前記第2方向の一方側の端及び他方側の端に位置する一対の第1流通路と、当該一対の第1流通路の間に位置し且つ前記第2方向に等間隔に並んで配置される複数の第2流通路と、を備え、
前記第1方向から見て、前記一対の第1流通路のそれぞれは半円であり、前記複数の第2流通路のそれぞれは前記第3方向の高さが前記第2方向の幅よりも長い矩形状であり、且つ、前記複数の第2流通路における前記第3方向の高さはそれぞれ同じである
熱交換器。
【請求項2】
前記第1側面の部位のうち前記第3方向の中央部が最も前記第2方向の外側に突出し、
前記第2側面の部位のうち前記第3方向の中央部が最も前記第2方向の外側に突出する、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1側面の側縁部の曲率半径及び前記第1側面の部位のうち前記第3方向の中央部の曲率半径が、前記本体部の前記表面と前記裏面との前記第3方向に沿った第1距離の略2分の1であり、
前記第2側面の側縁部の曲率半径及び前記第2側面の部位のうち前記第3方向の中央部の曲率半径が、前記第1距離の略2分の1である、
請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第3接合面の部位のうち前記表面の前記第1端縁に隣接する部位の曲率半径と、前記第3接合面の部位のうち前記裏面の前記第1端縁に隣接する部位の曲率半径と、前記第3接合面の部位のうち最も第2方向の外側に突出した部位の曲率半径と、が同じであり、
前記第4接合面の部位のうち前記表面の前記第2端縁に隣接する部位の曲率半径と、前記第4接合面の部位のうち前記裏面の前記第2端縁に隣接する部位の曲率半径と、前記第4接合面の部位のうち最も第2方向の外側に突出した部位の曲率半径と、が同じである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記流通路に連通する流入口及び流出口の他方である第2口が設けられ、前記第1方向において前記本体部の他方側に位置する第2端部を覆う樹脂製の第2ヘッダーを備え、
前記第2ヘッダーは、前記本体部の前記表面の一部の第5接合面と、前記裏面の一部の第6接合面と、前記第1側面の一部の第7接合面と、前記第2側面の一部の第8接合面とで接合され、
前記第7接合面は、前記表面の第1端縁及び前記裏面の第1端縁よりも前記第2方向に突出する曲面であり、前記第8接合面は、前記表面の第2端縁及び前記裏面の第2端縁よりも前記第2方向に突出する曲面である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第1側面の部位のうち前記第3方向の中央部が最も前記第2方向の外側に突出し、
前記第2側面の部位のうち前記第3方向の中央部が最も前記第2方向の外側に突出する、
請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記第1側面の側縁部の曲率半径及び前記第1側面の部位のうち前記第3方向の中央部の曲率半径が、前記本体部の前記表面と前記裏面との前記第3方向に沿った第1距離の略2分の1であり、
前記第2側面の側縁部の曲率半径及び前記第2側面の部位のうち前記第3方向の中央部の曲率半径が、前記第1距離の略2分の1である、
請求項5または6に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記第7接合面の部位のうち前記表面の前記第1端縁に隣接する部位の曲率半径と、前記第7接合面の部位のうち前記裏面の前記第1端縁に隣接する部位の曲率半径と、前記第7接合面の部位のうち最も第2方向に突出した部位の曲率半径と、が同じであり、
前記第8接合面の部位のうち前記表面の前記第2端縁に隣接する部位の曲率半径と、前記第8接合面の部位のうち前記裏面の前記第2端縁に隣接する部位の曲率半径と、前記第8接合面の部位のうち最も第2方向に突出した部位の曲率半径と、が同じである、
請求項5から7のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記第1ヘッダーは、
前記第1口を有し、前記本体部の前記第1端部の外側を覆う有底筒状の第1筒状体と、
前記第1筒状体の外側を覆うカバー部と、前記本体部に接合される接合部と、を有する第2筒状体と、
を備える、
請求項1から8のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記第2ヘッダーは、
前記第2口を有し、前記本体部の前記第2端部の外側を覆う有底筒状の第3筒状体と、
前記第3筒状体の外側を覆うカバー部と、前記本体部に接合される接合部と、を有する第4筒状体と、
を備える、
請求項5から8のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記第1ヘッダーは、繊維を含む樹脂である、
請求項1から10のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記第2ヘッダーは、繊維を含む樹脂である、
請求項5から8のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項13】
前記第2ヘッダーは、繊維を含む樹脂である、
請求項10に記載の熱交換器。
【請求項14】
前記第1ヘッダーを形成する樹脂中の前記繊維の配向度が、0.60以上であることを特徴とする請求項11に記載の熱交換器。
【請求項15】
前記第2ヘッダーを形成する樹脂中の前記繊維の配向度が、0.60以上であることを特徴とする請求項12または13に記載の熱交換器。
【請求項16】
前記本体部の前記流通路には、前記第1方向に沿って延びる隔壁が設けられる、
請求項1から15のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項17】
前記本体部は、アルミニウム又はアルミニウム合金である、
請求項1から16のいずれか1項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、例えば、特許文献1に記載されたように、内部に流通路が設けられた金属製の本体部と、本体部の一端部に接合され流入部を有する樹脂製の第1ヘッダーと、本体部の他端部に接合され流出部を有する樹脂製の第2ヘッダーと、を備える。金属製の本体部は、表面、裏面及び両側面を備え、これらの表面、裏面及び両側面は、それぞれ平坦面である。また、第1ヘッダーと本体部との接合方法は、射出成形、熱圧着又は熱融着である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-70527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、本体部における表面と側面との角部、及び裏面と側面との角部は、曲率半径が小さい角アールである。従って、熱交換器の温度が上昇すると、本体部の表面に接合された第1ヘッダー又は第2ヘッダーの樹脂部分は表側に向けて膨張し、裏面に接合された樹脂部分は裏側に向けて膨張し、側面に接合された樹脂部分は側方側に向けて膨張する。そして、本体部の表面と側面との角部に接合された樹脂部分は、表側から側方側にかけて膨張方向が急激に変化する。また、本体部の裏面と側面との角部に接合された樹脂部分は、裏側から側方側にかけて膨張方向が急激に変化する。従って、熱交換器の温度が変化すると、本体部の表面と側面との角部に接合された樹脂部分及び裏面と側面との角部に接合された樹脂部分に亀裂等の損傷が生じて気密性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、金属製の本体部に接合される樹脂製のヘッダーに亀裂等の損傷が生じにくい熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様に係る熱交換器は、第1方向に沿って、熱媒体の流通路が内部を貫通する金属製の本体部と、前記流通路に連通する流入口及び流出口の一方である第1口が設けられ、前記第1方向において前記本体部の一方側に位置する第1端部を覆う樹脂製の第1ヘッダーと、を備え、前記本体部は、前記第1方向に交差する第2方向と前記第1方向との双方に沿って延びる表面と、前記第1方向及び前記第2方向の双方に交差する第3方向において、前記表面とは反対側の裏面と、前記第2方向の一方側にある、前記表面の第1端縁と前記裏面の第1端縁とを連結する第1側面と、前記第2方向の他方側にある、前記表面の第2端縁と前記裏面の第2端縁とを連結する第2側面と、を有し、前記本体部と、前記第1ヘッダーとは、前記表面の一部の第1接合面と、前記裏面の一部の第2接合面と、前記第1側面の一部の第3接合面と、前記第2側面の一部の第4接合面とで接合され、前記第3接合面は、前記表面の第1端縁及び前記裏面の第1端縁よりも前記第2方向に突出する曲面であり、前記第4接合面は、前記表面の第2端縁及び前記裏面の第2端縁よりも前記第2方向に突出する曲面である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属製の本体部に接合される樹脂製のヘッダーに亀裂等の損傷が生じにくい熱交換器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る冷却装置を示す模式的な平面図である。
図2図2は、実施形態に係る金属製の本体部を示す模式的な平面図である。
図3図3は、図2の本体部を第1方向から見た正面図である。
図4図4は、図1の第1ヘッダーの第1筒状体を示す模式的な平面図である。
図5図5は、図1の第2ヘッダーの第1筒状体を示す模式的な平面図である。
図6図6は、第1ヘッダーと本体部との接合部分を拡大した断面図である。
図7図7は、図1のVII-VII線による断面図である。
図8図8は、実施形態に係る本体部の表面側を斜め上方から見た模式的な斜視図である。
図9図9は、実施形態に係る本体部の裏面側を斜め上方から見た模式的な斜視図である。
図10図10は、比較例に係る本体部を第1方向から見た正面図であり、図3に対応する図である。
図11図11は、図7の模式図であり、温度上昇時に第1ヘッダーの接合部が膨張する方向を矢印で示す。
図12図12は、比較例に係る冷却装置の模式図であって図11に対応し、温度上昇時に第1ヘッダーの接合部が膨張する方向を矢印で示す。
図13図13は、実施例において、第1ヘッダーの接合部を拡大した模式図である。
図14図14は、比較例において、第1ヘッダーの接合部を拡大した模式図である。
図15図15は、実施例での第1ヘッダー中の繊維の配向度を測定した部位を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。なお、図面において、Xは第1方向、Yは第2方向、及びZは第3方向を示す。また、+Xは第1方向の一方側、-Xは第1方向の他方側、+Yは第2方向の一方側、-Yは第2方向の他方側、+Zは第3方向の一方側、-Zは第3方向の他方側を示すものとする。さらに、第2方向Yは、第1方向Xと直交(交差)し、第3方向Zは、第1方向X及び第2方向Yとの双方と直交(交差)する。
【0010】
まず、実施形態に係る冷却装置について説明する。なお、冷却装置は、熱交換器の一例であり、本実施形態に係る熱交換器は、冷却装置に限定されない。図1は、実施形態に係る冷却装置を示す模式的な平面図である。図2は、実施形態に係る金属製の本体部を示す模式的な平面図である。図3は、図2の本体部を第1方向から見た正面図である。図4は、図1の第1ヘッダーの第1筒状体を示す模式的な平面図である。図5は、図1の第2ヘッダーの第1筒状体を示す模式的な平面図である。図6は、第1ヘッダーと本体部との接合部分を拡大した断面図である。図7は、図1のVII-VII線による断面図である。図8は、実施形態に係る本体部の表面側を斜め上方から見た模式的な斜視図である。図9は、実施形態に係る本体部の裏面側を斜め上方から見た模式的な斜視図である。
【0011】
図1に示すように、冷却装置1(熱交換器)は、金属製の本体部2と、第1ヘッダー3と、第2ヘッダー4と、を備える。冷却装置1(熱交換器)は、例えば半導体部品等の電子機器の冷却に適用可能であるが、冷却対象は電子機器に限定されない。本体部2の材質は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金である。
【0012】
図1から図3、及び図7から図9に示すように、本体部2は、表面21と、裏面22と、第1側面23と、第2側面24と、を有する。表面21は、第1方向Xと第2方向Yとの双方に沿って延びる平坦面である。表面21は、平面視で矩形状である。表面21におけるY方向の+Y側の端縁は、第1端縁211であり、表面21におけるY方向の-Y側の端縁は、第2端縁212である。第1端縁211及び第2端縁212は、X方向に延びる。
【0013】
裏面22は、第3方向Zにおいて、表面21とは反対側に位置する平坦面である。第1側面23は、表面21の第1端縁211と裏面22の第1端縁221とを連結する。第2側面24は、表面21の第2端縁212と裏面22の第2端縁222とを連結する。第1側面23及び第2側面24は、X方向に延びる。
【0014】
図7に示すように、本体部2の内部には、第1方向Xに沿って、熱媒体の流通路25,26が貫通する。流通路26は、第1方向Xから見て半円である。流通路26は、+Y側の端と-Y側の端とに位置する。流通路25は、第1方向Xから見て縦長の矩形状である。流通路25は、+Y側から-Y側まで等間隔に配置される。第2方向Yに隣接する一対の流通路25,25の間には隔壁27が設けられる。即ち、第2方向Yに沿って見ると、流通路25と隔壁27とが交互に並ぶ。
【0015】
さらに、図7及び図9に示すように、第1側面23は、+Y側に突出する曲面である。具体的には、図9に示すように、第1側面23の一部である第3接合面203及び第7接合面207(詳細には後述する)は、第1方向Xから見て、+Y側(本体の外側)に突出する円弧である。そして、図8に示すように、第2側面24は、-Y側に突出する曲面である。具体的には、第2側面24の一部である第4接合面204及び第8接合面208(詳細には後述する)は、第1方向Xから見て、-Y側(本体の外側)に突出する円弧である。
【0016】
図4及び図6に示すように、第1ヘッダー3は、第1筒状体31と、第2筒状体32とを備える。第1ヘッダー3の材質は、例えば樹脂であり、さらに詳しくは繊維を含む樹脂である。樹脂としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド:Poly Phenylene Sulfide Resin)が適用可能である。繊維は、例えば、ガラス繊維が適用可能である。第1筒状体31は、流入口(第1口)311と、ベース312と、を有する。流入口(第1口)311は、第1方向Xに延びる円筒である。流入口311は、ベース312と一体成形されている。ベース312は、+Y側及び-Y側に取付部313が一対に設けられる。取付部313には貫通孔が設けられ貫通孔に金属製のリング314が嵌合される。第1ヘッダー3は、リング314の内周側に締結具を通して被取付部材などに固定可能である。
【0017】
図6に示すように、ベース312の内部には連通路317が設けられ、連通路317は、本体部2の流通路25,26に繋がっている。従って、流入口311に流入した熱媒体は、連通路317から流通路25,26に流れる。ベース312の外面には、突起部315と溝部316とが設けられる。突起部315及び溝部316は、第2方向Y及び第3方向Zに沿って第1筒状体31の全周に亘って延びる。第2筒状体32は、カバー部33と、接合部34と、を有する。カバー部33の内周面には、内周側に突出する突起331が設けられる。カバー部33は、第1筒状体31の外側を覆う。突起331は、溝部316に嵌合する。接合部34は、カバー部33と一体に設けられる。接合部34の内周面は、接合面341である。ここで、本体部2の外面全体、即ち、表面21、裏面22、第1側面23及び第2側面24の表面層の全体には、樹脂と反応性を有する反応性皮膜20が形成されている。反応性皮膜とは、例えばベーマイト被膜である。従って、図6に示すように、第3接合面203の表面層にも反応性皮膜20が設けられ、反応性皮膜20と接合部34の接合面341とが接合されている。
【0018】
ここで、図8及び図9に示すように、本体部2において、+X側の端部は第1端部210であり、-X側の端部は第2端部220である。表面21の+X側には第1接合面201が位置し、裏面22の+X側には第2接合面202が位置し、第1側面23の+X側には第3接合面203が位置し、第2側面24の+X側には第4接合面204が位置する。ここで、第4接合面204のX方向の幅は、例えば2mmである。また、第4接合面204における+X側の端と第2側面24の+X側の端との距離は、例えば、6mmである。なお、第4接合面204以外の接合面についても、第4接合面204と同じ幅に設定することができる。また、第4接合面204以外の接合面についても、本体部2のX方向の端との距離を6mmに設定することができる。一方、表面21の-X側には第5接合面205が位置し、裏面22の-X側には第6接合面206が位置し、第1側面23の-X側には第7接合面207が位置し、第2側面24の-X側には第8接合面208が位置する。第1ヘッダー3は、本体部2の第1端部210の外側を覆う有底筒状の形状を有する。これらの第1接合面201から第4接合面204は、第1ヘッダー3に接合される。
【0019】
第2ヘッダー4は、第3筒状体41と、第4筒状体(図示せず)とを備える。第2ヘッダー4の材質は、例えば樹脂であり、さらに詳しくは繊維を含む樹脂である。樹脂としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド:Poly Phenylene Sulfide Resin)が適用可能である。繊維は、例えば、ガラス繊維が適用可能である。第3筒状体41は、流出口(第2口)411と、ベース412と、を有する。流出口(第2口)411は、第1方向Xに延びる円筒である。流出口411は、ベース412と一体成形されている。ベース412は、+Y側及び-Y側に取付部413が一対に設けられる。取付部413には貫通孔が設けられ貫通孔に金属製のリング414が嵌合される。
【0020】
なお、図7を参照して、本体部2の第1側面23の近傍における断面形状を説明する。詳細には図6に示すように、本体部2の外面全体の表面層には反応性皮膜20が形成されているが、以下の説明では反応性皮膜20を省略する。本体部2の表面21の第1接合面201には、第1ヘッダー3の接合部34の一部である上方接合部343が接合される。本体部2の裏面22の第2接合面202には、第1ヘッダー3の接合部34の一部である下方接合部344が接合される。本体部2の第1側面23の第3接合面203には、第1ヘッダー3の接合部34の一部である側方接合部342が接合される。具体的には、側方接合部342の内周面である接合面341と第3接合面203とが接合される。前述したように、第1側面23は+Y側に突出する曲面であり、具体的には、+Y側(本体の外側)に突出する円弧の断面である。また、側方接合部342も第1側面23に沿った形状である。即ち、側方接合部342は、+Y側に突出する曲面であり、具体的には、+Y側に突出する円弧の断面である。換言すると、第3接合面203は、表面21の第1端縁211及び裏面22の第1端縁221よりも第2方向Yに突出する曲面であり、第4接合面204は、表面21の第2端縁212及び裏面22の第2端縁222よりも第2方向Yに突出する曲面である。なお、図7に示すように、第1側面23の部位のうち第3方向Zの中央部230が最も第2方向Yの外側に突出し、図8に示すように、第2側面24の部位のうち第3方向Zの中央部240が最も第2方向Yの外側に突出する。なお、中央部とは表面21から裏面22の距離(本体部の厚さ)の略半分の箇所である。
【0021】
また、第1側面23の側縁部の曲率半径及び第1側面23の部位のうち第3方向Zの中央部230の曲率半径は、例えば5mmである。本体部2の表面21と裏面22との第3方向Zに沿った第1距離T1(図7参照)は、例えば10mmである。従って、第1側面23の側縁部の曲率半径及び第1側面23の部位のうち第3方向Zの中央部230の曲率半径は、本体部2の第1距離T1(図7参照)の略2分の1である。
【0022】
さらに同様に、第2側面24の側縁部の曲率半径及び第2側面24の部位のうち第3方向Zの中央部240の曲率半径も、例えば5mmである。従って、第2側面24の側縁部の曲率半径及び第2側面24の部位のうち第3方向Zの中央部240の曲率半径は、本体部2の第1距離T1(図7参照)の略2分の1である。
【0023】
そして、図7に示すように、第3接合面203の部位のうち表面21の第1端縁211に隣接する部位の曲率半径(例えば5mm)と、第3接合面203の部位のうち裏面22の第1端縁221に隣接する部位の曲率半径(例えば5mm)と、第3接合面203の部位のうち最も第2方向Yの外側に突出した部位の曲率半径(例えば5mm)と、が同じである。
【0024】
さらに同様に、第4接合面204の部位のうち表面21の第2端縁212に隣接する部位の曲率半径(例えば5mm)と、第4接合面204の部位のうち裏面22の第2端縁222に隣接する部位の曲率半径(例えば5mm)と、第4接合面204の部位のうち最も第2方向Yの外側に突出した部位の曲率半径(例えば5mm)と、が同じである。
【0025】
さらにまた、第2ヘッダー4の接合面の曲率も第1ヘッダー3と同様である。本体部2と第2ヘッダー4とは、第5接合面205と、第6接合面206と、第7接合面207と、第8接合面208とで接合される。第7接合面207は、表面21の第1端縁211及び裏面22の第1端縁221よりも第2方向Yに突出する曲面であり、第8接合面208は、表面21の第2端縁212及び裏面22の第2端縁222よりも第2方向Yに突出する曲面である。
【0026】
第7接合面207の部位のうち表面21の第1端縁211に隣接する部位の曲率半径(例えば5mm)と、第7接合面207の部位のうち裏面22の第1端縁221に隣接する部位の曲率半径(例えば5mm)と、第7接合面207の部位のうち最も第2方向Yに突出した部位の曲率半径(例えば5mm)と、が同じである。また、第8接合面208の部位のうち表面21の第2端縁212に隣接する部位の曲率半径(例えば5mm)と、第8接合面208の部位のうち裏面22の第2端縁222に隣接する部位の曲率半径(例えば5mm)と、第8接合面208の部位のうち最も第2方向Yに突出した部位の曲率半径(例えば5mm)と、が同じである。
【0027】
次いで、実施形態に係る冷却装置1の製造方法を簡単に説明する。まず、本体部2をアルミニウムの押出加工によって成形する。これにより、図8及び図9に示すような、流通路25,26と隔壁27とを有するアルミニウム製の本体部2が成形される。次に、本体部2の外面全体を粗面化し、樹脂と反応性を有する反応性皮膜20が表面層に形成される。この反応性皮膜20は、例えば、表面に微細なファスナー状凹部を有する。こののち、図6に示すように、本体部2の第1端部210に第1筒状体31を嵌め、この状態で金型の内部に収納する。そして、図6に示すように、第1筒状体31及び本体部2の第1接合面201から第4接合面204の外側に溶融樹脂を流し込んで冷却及び固化させる。この際、例えば、PAL-fit(登録商標)技術を適用し、本体部2の反応性皮膜20のファスナー状凹部に溶融樹脂が流れ込んで固化すると、第2筒状体32の接合部34の接合面341が本体部2の反応性皮膜20に強固に接合される。なお、本実施形態による本体部2と第2筒状体32との接合は、PAL-fit(登録商標)技術に限定されず、通常のインサート成形でも適用可能である。これにより、本体部2に第1ヘッダー3を接合することができる。また、同様にして、本体部2に第2ヘッダー4を接合することにより、冷却装置1を製造することができる。
【0028】
次に、図10は、比較例に係る本体部を第1方向から見た正面図であり、図3に対応する図である。図11は、図7の模式図であり、温度上昇時に第1ヘッダーの接合部が膨張する方向を矢印で示す。図12は、比較例に係る冷却装置の模式図であって図11に対応し、温度上昇時に第1ヘッダーの接合部が膨張する方向を矢印で示す。
【0029】
図10に示すように、比較例に係る本体部2Aは、第3方向に沿って延びる平坦な第1側面23Aを備え、角部211A及び角部221Aに角アールが設けられている。角部211A及び角部221Aの角アールの曲率半径は、図3に示す円弧形状の第1側面23の曲率半径よりも小さい。
【0030】
次いで、実施形態に係る冷却装置1と比較例に係る冷却装置1Aとについて、第1ヘッダー3の接合部34に亀裂が入るメカニズムを簡単に説明する。第1ヘッダー3の材質は樹脂であり、本体部2の材質はアルミニウム等の金属であるため、第1ヘッダー3の線膨張率は本体部2の線膨張率よりも高い。従って、冷却装置1の温度が上昇すると、本体部2に対して第1ヘッダー3の方がより大きく膨張するため、第1ヘッダー3が本体部2から剥がれるように外側に向かって膨張する。なお、第1ヘッダー3の膨張方向は、第1ヘッダー3の表面の法線方向である。
【0031】
ここで、図11に示すように、実施形態に係る冷却装置1において、第1側面23及び側方接合部342は、断面が円弧形状である。従って、冷却装置1の温度が上昇すると、上方接合部343は矢印D1に示すように+Z側に膨張し、下方接合部344は矢印D3に示すように-Z側に膨張する。また、側方接合部342は全体的には+Y側に膨張するが、側方接合部342において、第1端縁211に対向する部位から裏面22の第1端縁221に対向する部位に至るまで、膨張する方向が矢印D2に示すように徐々に変化する。即ち、側方接合部342の膨張方向は、第1端縁211に対向する部位では、ほぼ+Z側に向かうが、側方接合部342の円弧形状の部位では、矢印D2の向きが図11の上側から徐々に左側に変化する。即ち、側方接合部342の膨張方向は、矢印D2に示すように放射状に分散する。
【0032】
これに対して、図12に示すように、比較例に係る冷却装置1Aでは、第1側面23A(接合面203A)及び側方接合部342Aは、平坦である。従って、冷却装置1Aの温度が上昇すると、上方接合部343Aは矢印d1に示すように+Z側に膨張し、下方接合部344Aは矢印d3に示すように-Z側に膨張する。また、側方接合部342Aは全体的には+Y側に膨張するが、角部211A及び角部221Aでは、角アールの曲率半径が実施形態よりも大幅に小さいため、側方接合部342Aの膨張方向が急激に変化する。即ち、側方接合部342Aのうち、角部211Aの膨張方向を示す矢印d4は、矢印d1から矢印d2まで90度変化する。また、同様に、角部221Aの膨張方向を示す矢印d5は、矢印d2から矢印d3まで90度変化する。従って、比較例の本体部2A方が実施形態の本体部2よりも角部での第1ヘッダー3の樹脂の膨張方向が急激に変化する。従って、膨張により樹脂に作用する応力のベクトル方向が急激に変化するため、樹脂に亀裂が生じやすくなる。換言すると、実施形態は側方接合部342が円弧のため、樹脂の膨張方向が比較例よりも緩やかに変化するため、樹脂に亀裂が生じにくくなる。
【0033】
なお、図7に示すように、第1側面23の部位のうち第3方向Zの中央部230が最も第2方向Yの外側に突出し、図8に示すように、第2側面24の部位のうち第3方向Zの中央部240が最も第2方向Yの外側に突出する。このため、+Z側と-Z側とで本体部2の膨張の大きさが均等になって、樹脂全体の膨張も平均化されて樹脂に亀裂が生じにくくなる。
【0034】
さらに、第1側面23の側縁部の曲率半径及び第1側面23の部位のうち第3方向Zの中央部230の曲率半径は、本体部2の第1距離T1(図7参照)の略2分の1である。第2側面24についても同様である。このため、第1側面23および第2側面24の側縁部と、本体部2の表面21および裏面22とが滑らかに繋がる。
【0035】
なお、第3接合面203の部位のうち表面21の第1端縁211に隣接する部位の曲率半径(例えば5mm)と、第3接合面203の部位のうち裏面22の第1端縁221に隣接する部位の曲率半径(例えば5mm)と、第3接合面203の部位のうち最も第2方向Yの外側に突出した部位の曲率半径(例えば5mm)と、が同じである。このように、第1側面23の主要な部位の曲率半径が同一となるため、本体部2の膨張の大きさが均等になって樹脂に亀裂が生じにくくなる。
【0036】
ここで、本実施形態では、第1ヘッダー3及び第2ヘッダー4の少なくともいずれかは、後述する図13及び図14に示すように、樹脂マトリックスに繊維5を含んでもよい。繊維5と樹脂マトリックスとは、材質が異なるため、繊維5と樹脂マトリックスとの界面では剥離(亀裂)が特に生じやすくなる。具体的には、樹脂マトリックスの方が繊維5よりも線膨張係数が大きいため、繊維5及び樹脂マトリックスを加熱した場合、樹脂マトリックスの膨張に繊維5が追従することができずに繊維5と樹脂マトリックスとの界面で剥離しやすくなる。以上より、図12で説明した樹脂の亀裂は、樹脂マトリックスに繊維5を含んだ場合に、より生じやすくなる。なお、第1ヘッダー3及び第2ヘッダー4の少なくともいずれかを形成する樹脂中の繊維5の配向度が、0.60以上であることが好ましい。ここで、繊維5の配向度は、ソフトウェアはMoldflow Insight2019(Autodesk社製)を用いて解析を行った。
【0037】
以上説明したように、実施形態に係る冷却装置1は、熱媒体の流通路25,26が内部を貫通する本体部2と、流入口311が設けられ、第1端部210を覆う樹脂製の第1ヘッダー3と、を備える。本体部2は、表面21と、裏面22と、表面21の第1端縁211と裏面22の第1端縁221とを連結する第1側面23と、表面21の第2端縁212と裏面22の第2端縁222とを連結する第2側面24と、を有する。本体部2と第1ヘッダー3とは、第1接合面201と、前記裏面の一部の第2接合面202と、前記第1側面の一部の第3接合面203と、前記第2側面の一部の第4接合面204とで接合される。第3接合面203は、表面21の第1端縁211及び裏面22の第1端縁221よりも第2方向Yに突出する曲面である。第4接合面204は、表面21の第2端縁212及び裏面22の第2端縁222よりも第2方向Yに突出する曲面である。
【0038】
従って、本実施形態では、冷却装置1の温度が上下しても樹脂製の第1ヘッダー3に亀裂等の損傷が生じにくいというメリットがある。以下に詳述する。図11に示すように、冷却装置1の温度が上昇すると、第1ヘッダー3の部位のうち本体部2の表面21に接合された上方接合部343は矢印D1に示すように+Z側に膨張し、下方接合部344は矢印D3に示すように-Z側に膨張する。また、側方接合部342は全体的には+Y側に膨張するが、側方接合部342において、第1端縁211に対向する部位から裏面22の第1端縁221に対向する部位に至るまで、膨張する方向が矢印D2に示すように徐々に変化する。即ち、側方接合部342の膨張方向は、第1端縁211に対向する部位では、ほぼ+Z側に向かうが、側方接合部342の円弧形状の部位では、矢印D2の向きが図11の上側から徐々に左側に変化する。即ち、側方接合部342の膨張方向は、矢印D2に示すように放射状に分散する。
【0039】
これに対して、図12に示すように、比較例に係る冷却装置1Aでは、冷却装置1Aの温度が上昇すると、上方接合部343Aは矢印d1に示すように+Z側に膨張し、下方接合部344Aは矢印d3に示すように-Z側に膨張する。また、側方接合部342Aのうち、角部211Aの膨張方向を示す矢印d4は、矢印d1から矢印d2にかけて膨張方向が急激に変化する。また、同様に、角部221Aの膨張方向を示す矢印d5は、矢印d2から矢印d3にかけて膨張方向が急激に変化する。しかし、実施形態は側方接合部342が曲面のため、樹脂の膨張方向が比較例の角部よりも緩やかに変化し、樹脂に亀裂が生じにくくなる。
【0040】
実施形態に係る冷却装置1は、流出口411が設けられ、第2端部220を覆う樹脂製の第2ヘッダー4を備える。本体部2と第2ヘッダー4とは、第5接合面205と、第6接合面206と、第7接合面207と、第8接合面208とで接合される。第7接合面207は、表面21の第1端縁211及び前記裏面22の第1端縁221よりも第2方向Yに突出する曲面であり、第8接合面208は、表面21の第2端縁212及び裏面22の第2端縁222よりも第2方向Yに突出する曲面である。従って、第1ヘッダー3で説明した内容と同様に、冷却装置1の温度が変化しても樹脂製の第2ヘッダー4にも亀裂等の損傷が生じにくいというメリットがある。
【0041】
第1ヘッダー3は、第1筒状体31と、第2筒状体32とを備える。第2筒状体32は、第1筒状体31の外側を覆うカバー部33と、本体部2に接合される接合部34と、を有する。従って、本体部2と接合する部分を第2筒状体32のみにすることができる。このため、第1ヘッダー3の全体を本体部2にインサート成形する場合と比較して、少ない量の樹脂で接合でき、溶融樹脂が冷却する際に一部の溶融樹脂が冷却不良となりにくく、接合不良も生じにくい。
【0042】
第1ヘッダー3及び第2ヘッダー4は、繊維5を含む樹脂であるため、繊維5を含まない樹脂と比較すると、第1ヘッダー3及び第2ヘッダー4の靱性及び強度が向上する。ただし、前述したように、本実施形態では、第1ヘッダー3及び第2ヘッダー4が繊維5を含む樹脂であっても亀裂等の損傷が生じにくい。
【0043】
本体部2の流通路25,26には、第1方向Xに沿って延びる隔壁27が設けられる。従って、熱媒体と接触する面積が大きくなるため、冷却装置1の冷却効率がより向上する。
【0044】
本体部2は、アルミニウム又はアルミニウム合金であるため、冷却装置1の重量が軽量される。また、アルミニウム又はアルミニウム合金は、他の金属よりも熱伝導率が高いため、冷却装置1の冷却効率がより向上する。
【0045】
[実施例]
以下、この実施形態について具体的な実施例を示す。まず、実施例に用いる冷却装置の成形条件及び成形結果について説明する。下記表1に示すように、実施例1及び実施例2(図3の形状であって側面全体の曲率半径が5mmで且つ本体部のZ方向の厚さが10mm)では、本体部の表面処理として、本体部のアルミニウムを塩酸に浸漬したのちベーマイト処理をした。また、第1ヘッダーの第1筒状体を本体部に嵌合させたのち、金型の内部に収容し、溶融樹脂を充填させて第2筒状体で第1筒状体及び本体部を外側から覆う成形をした。溶融樹脂の材質は、PPS(ポリフェニレンサルファイド:Poly Phenylene Sulfide Resin)である。溶融樹脂は、フィラー剤が50体積%配合されており、強化材としてガラス繊維を含んでいる。溶融樹脂の射出圧、射出速度、保圧及び射出保圧時間は表1のとおりである。第2筒状体の成形結果は、実施例1及び実施例2ともに亀裂等の損傷及びリーク(漏れ)がなかった。
【0046】
【表1】
【0047】
一方、下記表2に示すように、比較例1、比較例2及び比較例3(図10の形状であって角部の曲率半径が2mm)では、溶融樹脂の保圧以外は、実施例1及び実施例2と同じ条件とし、第2筒状体の成形結果も、全て亀裂等の損傷及びリーク(漏れ)がなかった。
【0048】
【表2】
【0049】
次いで、実施例1及び実施例2に係る冷却装置と、比較例1、比較例2及び比較例3に係る冷却装置と、について、液槽式ヒートショック試験装置を用いたヒートショック試験を行った。ヒートショック試験においては、具体的には、冷却装置を-40℃に10分間保持したのち125℃に10分間保持することを1サイクルとし、200サイクルごとに気密試験を行い、気密性がNGの場合は漏れた部位を顕微鏡で観察した。気密試験においては、0.5MPaにて5分間保持して、漏れ(リーク)の有無を調べた。
【0050】
実施例1では、7400サイクルで漏れ(リーク)が生じた。実施例2では、2000サイクルで漏れ(リーク)が生じなかったため、試験を中止した。
【0051】
一方、比較例1では、385サイクルで漏れ(リーク)が生じたため、図14に示すように顕微鏡観察を行った結果、第1ヘッダーの樹脂層のうち本体部の角アールの近傍(二点鎖線で囲んだ部位)で本体部に沿って続く長い亀裂6が発見された。比較例2で及び比較例3では、それぞれ400サイクルで漏れ(リーク)が生じた。
【0052】
次いで、実施例1及び比較例1に係る第1ヘッダーの樹脂中の繊維の配向度を測定した。図15は、実施例での第1ヘッダー中の繊維の配向度を測定した部位を示す模式図である。また、下記表3には、各部位ごとの繊維の配向度を記載している。
【0053】
【表3】
【0054】
表3に示すように、実施例1においては、図15の部位P1からP7の全ての部位で、配向度が0.6以上である。これに対して、比較例1では、部位P4及びP7の2か所において配向度が0.6未満となっている。部位P1からP7の全ての部位で、実施例1の配向度が比較例1の配向度よりも高い値を示している。従って、配向度が高い実施例1の方が比較例1の第1ヘッダーよりも、熱によって膨張と収縮を繰り返した際に損傷を受けにくいことが裏付けられた。なお、図15において、金型には、溶融樹脂が流入するゲート100が設けられ、また、溶融樹脂のオーバーフローは、実施例1及び比較例1の双方で行っていない。
【0055】
以上の結果から、実施例1及び実施例2の方が、比較例1、比較例2及び比較例3よりも長い時間に亘って亀裂が生じにくく耐久性が高いことが裏付けられた。
【符号の説明】
【0056】
1 冷却装置(熱交換器)
2 本体部
21 表面
211 第1端縁
212 第2端縁
22 裏面
221 第1端縁
222 第2端縁
23 第1側面
24 第2側面
25 流通路
26 流通路
27 隔壁
201 第1接合面
202 第2接合面
203 第3接合面
204 第4接合面
205 第5接合面
206 第6接合面
207 第7接合面
208 第8接合面
210 第1端部
220 第2端部
3 第1ヘッダー
31 第1筒状体
311 流入口(第1口)
32 第2筒状体
33 カバー部
34 接合部
4 第2ヘッダー
41 第3筒状体
411 流出口(第2口)
5 繊維
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15