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特許7555548ポリマーと金属との接着結合のための、TiとAlとを同一条件で表面処理する方法
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  • 特許-ポリマーと金属との接着結合のための、TiとAlとを同一条件で表面処理する方法 図1
  • 特許-ポリマーと金属との接着結合のための、TiとAlとを同一条件で表面処理する方法 図2
  • 特許-ポリマーと金属との接着結合のための、TiとAlとを同一条件で表面処理する方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】ポリマーと金属との接着結合のための、TiとAlとを同一条件で表面処理する方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/26 20060101AFI20240917BHJP
   C25D 11/06 20060101ALI20240917BHJP
   C25D 11/18 20060101ALI20240917BHJP
   C25D 11/16 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
C25D11/26 302
C25D11/06 Z
C25D11/18 312
C25D11/16 301
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023142556
(22)【出願日】2023-09-01
【審査請求日】2023-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516247731
【氏名又は名称】ジオネーション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591117206
【氏名又は名称】株式会社東亜電化
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金孝眞
(72)【発明者】
【氏名】鄭在洪
(72)【発明者】
【氏名】三浦 修平
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0418135(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第114606560(CN,A)
【文献】特開平03-197696(JP,A)
【文献】特開昭63-143291(JP,A)
【文献】国際公開第2010/073916(WO,A1)
【文献】特開2015-232155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00-4/04
C23G 1/00-5/06
C25D 11/02-11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーとTi又はポリマーとAlとの組み合わせによるポリマーと金属との接着結合のための、TiとAlとを同一条件で表面処理する方法であって、
前記金属の表面を脱脂洗剤を用いて汚染物を除去する脱脂処理段階、
前記金属の表面をアルカリ溶液を用いてエッチングする1次エッチング処理段階、
前記金属の表面のスマットを除去するデスマット処理段階、
前記金属の表面を強酸性溶液を用いて2次エッチングする活性化処理段階、
活性化処理された前記金属の表面に多孔質を形成する酸化アノダイジング処理段階、及び
前記アノダイジング処理した前記金属の表面を乾燥する乾燥段階を含み、
前記酸化アノダイジング処理段階において、
硫酸:濃度1~3g/L、燐酸:濃度2~7g/L、クロム酸:濃度1~5g/L、シュウ酸:濃度1~5g/L、及びフッ酸:濃度0.5~2g/Lのうちの一つ以上と、硫酸ナトリウム:濃度5~10g/L、燐酸塩:濃度1~5g/L、及びシュウ酸塩:濃度1~3g/Lのうちの一つ以上を含む混合酸性溶液:pH4.5~5.5を用いて、添加剤であるトリアジンチオール誘導体及びそれらの塩:濃度0.01~0.10g/Lを添加して、30~50℃で1.0~2.55A/dm の電流密度で300~1200秒間、アノダイジング処理することを特徴とするポリマーと金属との接着結合のための、TiとAlとを同一条件で表面処理する方法。
【請求項2】
前記酸化アノダイジング処理段階において、前記添加剤であるトリアジンチオール誘導体及びそれらの塩は、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール(TT)、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールモノナトリウム(TTN)、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールトリエタノールアミン(F-TEA)、
6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(AF)、
6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモナトリウム(AFN)、
6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DB)、
6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(DBN)、
6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DA)、
6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(DAN)、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールジ(テトラブチルアンモニウム塩)(F2A)、
6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールテトラブチルアンモニウム塩(DBA)、
6-ジオクチル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DO)、
6-ジオクチル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(DON)、
6-ジラウリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DL)、
6-ジラウリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(DLN)、
6-ステアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(ST)、
6-ステアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノカリウム(STK)、
6-オレイルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DL)、及び
6-オレイルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノカリウム(OLK)のトリアジンチオール誘導体及びそれらの塩のうちの一つを使用することを特徴とする請求項に記載のポリマーと金属との接着結合のための、TiとAlとを同一条件で表面処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーと金属の接着結合のための同一条件の金属の表面処理方法に係り、種類が全く異なる金属であるTiとAlを同一の処理条件で表面処理を行い、表面に多孔性酸化被膜を形成する表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーとTiの接合体とポリマーとAlの接合体は、防水性を要する電子部品及びスマートフォン等に多く用いられているが、TiとAlの表面処理工程の条件が互いに異なるので、同時作業ができず、その都度工程の条件を変えながらTi(特許文献1)とAl(特許文献2)のそれぞれを作業し、時間、費用の面において問題があった。特に部品が少量である場合は、より多くの時間と費用の無駄があった。
上記問題を解決するために、TiとAlとを同一条件で表面処理ができるように、それぞれの表面処理条件(溶液、濃度、温度、時間及び電流など)を1つの表面処理条件で表面処理ができる方法を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-048407号公報
【文献】特許第4600701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が目的とするところは、上述の問題を解決するための種類が全く異なる金属であるTiとAlを同一条件で表面処理を行い、表面に多孔性酸化被膜を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のポリマーとTi又はポリマーとAlとの組み合わせによるポリマーと金属の接着結合のための同一条件の金属の表面処理方法は、
前記金属の表面を脱脂洗剤を用いて汚染物を除去する脱脂処理段階、
前記金属の表面をアルカリ溶液を用いてエッチングする1次エッチング処理段階、
前記金属の表面のスマットを除去するデスマット処理段階、
前記金属の表面を強酸性溶液を用いてエッチングする活性化処理段階、
活性化処理された前記金属の表面に多孔質を形成する酸化アノダイジング処理段階、及び
前記アノダイジング処理した前記金属の表面を乾燥する乾燥段階、を含むことを特徴とする。
【0006】
前記酸化アノダイジング処理段階において、
硫酸:濃度1~3g/L、燐酸:濃度2~7g/L、クロム酸:濃度1~5g/L、シュウ酸:濃度1~5g/L、及びフッ酸:濃度0.5~2g/Lのうちの一つ以上と、硫酸ナトリウム:濃度5~10g/L、燐酸塩:濃度1~5g/L、及びシュウ酸塩:濃度1~3g/Lのうちの一つ以上を含む混合酸性溶液:pH4.5~5.5を用いて、添加剤であるトリアジンチオール誘導体及びそれらの塩:濃度0.01~0.10g/Lを添加して、30~50℃で1.0~2.5A/dmの電流密度で300~900秒間、アノダイジング処理することを特徴とする。
【0007】
前記酸化アノダイジング処理段階において、前記添加剤であるトリアジンチオール誘導体及びそれらの塩は、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール(TT)、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールモノナトリウム(TTN)、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールトリエタノールアミン(F-TEA)、
6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(AF)、
6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモナトリウム(AFN)、
6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DB)、
6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(DBN)、
6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DA)、
6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(DAN)、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールジ(テトラブチルアンモニウム塩)(F2A)、
6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールテトラブチルアンモニウム塩(DBA)、
6-ジオクチル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DO)、
6-ジオクチル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(DON)、
6-ジラウリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DL)、
6-ジラウリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(DLN)、
6-ステアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(ST)、
6-ステアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノカリウム(STK)、
6-オレイルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DL)、及び
6-オレイルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノカリウム(OLK)のトリアジンチオール誘導体及びそれらの塩のうちの一つを使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、種類が全く異なる金属であるTiとAlを同一条件で表面処理を行い、表面に多孔性酸化被膜を形成して、それぞれのTiとAlのポリマー間の接合力を測定した結果、引張力、熱衝撃後引張力、恒温恒湿後引張力でTiとAlのそれぞれを表面処理した結果と同一又は優秀な接合力を有する効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ポリマーとTi又はポリマーとAlとの組み合わせによるポリマーと金属の接着結合のための同一条件の金属の表面処理方法を示すフローチャートである。
図2】(a)引張試験の試片のTi又はAlの金属部材の形状を示す平面図である。(b)引張試験の試片のTi又はAlの金属部材の形状を示す側面図である。(c)引張試験の試片のTi又はAlの金属部材とポリマーとの金属接合体を説明する図である。ゲートからポリマーが射出されTi又はAlの金属部材と接合する。
図3】(a)本発明による表面処理に好適なTiの多孔性酸化被膜の表面形状の写真(倍率:10倍)である。(b)本発明による表面処理に好適なAlの多孔性酸化被膜の表面形状の写真(倍率:10倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1に示す本発明によるポリマーと金属の接着結合のための同一条件の金属の表面処理方法を説明する。
本発明の一実施形態のポリマーとTi又はポリマーとAlとの組み合わせによるポリマーと金属の接着結合のための同一条件の金属の表面処理方法は、
(a)金属の表面を脱脂洗剤を用いて汚染物を除去する脱脂処理段階、
(b)脱脂処理後、金属の表面を水で洗浄する水洗処理段階、
(c)金属の表面をアルカリ溶液を用いてエッチングする1次エッチング処理段階、
(d)1次エッチング処理した金属の表面を水で洗浄する水洗処理段階、
(e)金属の表面のスマットを除去するデスマット処理段階、
(f)デスマット処理した金属の表面を水で洗浄する水洗処理段階、
(g)金属の表面を強酸性溶液を用いて2次エッチングする活性化処理段階、
(h)活性化処理した金属の表面を水で洗浄する水洗処理段階、
(i)活性化処理された金属の表面に多孔質を形成する酸化アノダイジング処理段階、
(j)アノダイジング処理した金属の表面を水で洗浄する水洗処理段階、及び
(k)水で洗浄された金属の表面の水分を除去する乾燥段階、を含むことを特徴とする。
【0011】
(a)段階では、アルミニウム脱脂洗剤で洗浄するか、又は水溶性有機溶剤に60℃で3分間浸漬する方法で金属表面の汚染を除去する。
【0012】
(b)段階は、金属の表面を水で洗浄する水洗処理段階で水溶性有機溶剤を洗浄する。
【0013】
(c)段階は、KOH、アルカリ金属類の水酸化物、又はこれらが含まれるソーダ灰(NaCO、無水炭酸ナトリウム)、アンモニアなどが含まれるアルカリ系列金属エッチング剤で40℃で2分間金属表面をエッチングを行い、金属表面にエッチングの跡を形成して、表面を粗くする。
【0014】
(d)段階は、前記1次エッチング処理した金属の表面を水で洗浄して金属表面のアルカリ溶液を除去する。
【0015】
(e)段階で、硝酸、硫酸、フッ酸、酸性フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、過酸化水素水などが含まれるスマット除去剤で25℃で1分間金属の表面のスマットを除去する。
【0016】
(f)段階で、前記デスマット処理した金属の表面を水で洗浄してスマット除去剤を除去する。
【0017】
(g)段階で、金属の表面を硫酸、酢酸、有機酸、フッ素酸などの強酸性溶液に40℃で30秒間金属表面を2次エッチングする活性化処理をする、
【0018】
(h)段階で、前記活性化処理した金属の表面を水で洗浄する。
【0019】
(i)段階は、硫酸:濃度1~3g/L、燐酸:濃度2~7g/L、クロム酸:濃度1~5g/L、シュウ酸:濃度1~5g/L、及びフッ酸:濃度0.5~2g/Lのうちの一つ以上と、硫酸ナトリウム:濃度5~10g/L、燐酸塩:濃度1~5g/L、及びシュウ酸塩:濃度1~3g/L)のうちの一つ以上を含む混合酸性溶液:pH4.5~5.5を用いて、添加剤であるトリアジンチオール誘導体及びそれらの塩:濃度0.01~0.10g/Lを添加して、30~50℃で1.0~2.5A/dmの電流密度で300~900秒間アノダイジング処理をすることでエッチングされた金属の表面に多くのボア(穴)を有する酸化膜を形成して、形成された多孔性ボアと共にボアにトリアジンチオール誘導体及びそれらの塩を侵入させる。それで金属とポリマーとの間の結合力を増加させて接合性を向上させる。
【0020】
(i)段階での、添加剤であるトリアジンチオール誘導体及びそれらの塩は、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール(TT)、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールモノナトリウム(TTN)、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールトリエタノールアミン(F-TEA)、
6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(AF)、
6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモナトリウム(AFN)、
6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DB)、
6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(DBN)、
6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DA)、
6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(DAN)、
1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールジ(テトラブチルアンモニウム塩)(F2A)、
6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールテトラブチルアンモニウム塩(DBA)、
6-ジオクチル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DO)、
6-ジオクチル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(DON)、
6-ジラウリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DL)、
6-ジラウリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム(DLN)、
6-ステアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(ST)、
6-ステアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノカリウム(STK)、
6-オレイルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(DL)、及び
6-オレイルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノカリウム(OLK)のトリアジンチオール誘導体及びそれらの塩のうちの一つを使用する。
【0021】
(j)段階は、アノダイジング処理した金属の表面を水で60℃で30秒間洗浄する水洗処理段階である。
【0022】
(k)段階で洗浄された金属の表面を熱風で80℃で5分間乾燥する段階である。
【0023】
本発明に使用可能なポリマーは熱可塑性樹脂であり、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate、PBT)、ポリフェニレンスルファイド(polyphenylene sulfide、PPS)、ポリフタルアミド(polyphthalamide、PPA)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリアリールエーテルケトン(polyaryletherketone、PAEK)、ポリエーテルエーテルケトン(polyether-ether-ketone、PEEK)などが用いられることができ、これらに限定されず、多様な高分子樹脂が適用されることができる。
実験に使われた試片のポリマーはSABIC社のWF008NXQ 7N1A4352であるポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate、PBT)である。
【0024】
ポリマーとTi又はAlとの接合体の製造のための表面処理について、従来例と本発明とを比較する。下記表1にTiの従来例1、表2にAlの従来例2、及び表3に本発明の表面処理の工程をまとめる。
【0025】
【表1】
【0026】
表1のTiの従来例1で工程順番7の酸化アノダイジング処理段階で硫酸:濃度180g/L溶液を用いて、添加剤である1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール:濃度0.01~0.10g/Lを添加して、60℃で0.55A/dmの電流密度で900秒間アノダイジング処理する。
【0027】
【表2】
【0028】
表2のAlの従来例2で工程順番7の酸化アノダイジング処理段階で苛性ソーダ(濃度30g/L)、酸燐酸ナトリウム(濃度3g/L)と燐酸(濃度10g/L)の混合アルカリ溶液を用いて、添加剤である1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール(濃度0.01~0.10g/L)を添加して、50℃で5.0A/dmの電流密度で900秒間アノダイジング処理する。
【0029】
【表3】
【0030】
表3の発明の実施例で工程順番9の酸化アノダイジング処理段階で硫酸(濃度1~30g/L)と硫酸ナトリウム(濃度5~15g/L)の混合酸性溶液(pH4~6)を用いて、添加剤である1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール(濃度0.01~0.10g/L)を添加して、30~50℃で1.0~2.5A/dmの電流密度で300~1200秒間アノダイジング処理する。
【0031】
このように従来例1~2、発明例1~15、及び比較例1~7を下表のような条件でそれぞれの試片を製作した。
【0032】
【表4】
(ここでSTは「standard」の略で、「従来の条件」の意味である。)
【0033】
図2(a)は引張試験のために製作された従来例1~2、発明例1~15、比較例1~7に使われた試片の金属部材の平面図であり、Ti(Grade 5)又はAl(Al 6061)で製作され、サイズは横12mm、縦40mm、厚さ3mmに製作し、図2(c)はTi(Grade 5)又はAl(Al 6061)それぞれの試片にポリマーを結合させたもので、横12mm、縦42mm、厚さ3mmのポリマーをゲートから縦方向に射出してTi又はAlに結合させる。
【0034】
図2(c)のポリマーTi又はAl金属接合体3は、Ti又はAl金属部材1にポリマー部材2が射出成形により一体化成形されたものである。射出成形は、金型にTi又はAl金属部材1を装填しておき、接合する部位にポリマー(熱可塑性樹脂)を圧入することで、Ti又はAl金属部材1とポリマー部材2を一体化成形する。熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を使用できる。Ti又はAl金属部材1とポリマー部材2の接触面積は、直線状に接合したので、約36mm(=12mm×3mm)である。図2(c)のポリマーTi又はAl金属接合体3は、接合強度を調べるため、引張試験用の試験片として使用する。
【0035】
図3は本発明による表面処理に好適な(a)Tiの多孔性酸化被膜の表面形状(b)Alの多孔性酸化被膜の表面形状画像である。
金属の表面に多くのボア(穴)を有する酸化膜を形成していることが分かる。
【0036】
〔実験例1〕
<引張力実験>
試験機:MMS社HZ-1003A
実験方法:
1)引張試験用試片を準備。
2)試片を引張力試験機ジグに取付。
3)5mm/Min速度で引張力試験。
4)射出したポリマーと金属が剥離時点の値を記録。
【0037】
〔実験例2〕
<熱衝撃後引張力実験>
試験機:SUKSAN社SE-TS-05
試験方法:
1)低温室に試験する試料片を設置。
2)試験条件設定:パターン設定温度[-40~80℃]/30min/150回反復。
3)熱衝撃試験後試料引張及びリーク試験。
【0038】
〔実験例3〕
<恒温恒湿後引張力実験>
試験機:SUKSAN社SE-CT-02
試験方法:
1)高温高湿保存室に試料片を設置。
2)試験条件設定:(パターン設定温度[80℃]/湿度[95%]/時間[200hr]。
3)熱衝撃試験後試料引張及びリーク試験。
【0039】
従来例1~2、発明例1~15、及び比較例1~7の試料片で、それぞれ引張実験、放置時間による結合力測定及び密閉実験などを実施した。結果を下記表5にまとめる。
【0040】
【表5】
【0041】
実施例で試験結果は以下のとおりである。
発明例1ではTi、Al試片の何れも優秀な結果を得た。
比較例1はTi試片は引張力が劣位な結果を得て、その一方でAl試片は良好な結果を得た。
発明例2はTi試片は引張力が良好な結果を得て、またAl試片は優秀な結果を得た。
発明例3はTi試片という引張力が優秀な結果を得て、またAl試片は良好な結果を得た。
発明例4はTi、Al試片の何れもが良好な結果を得た。
比較例2はTi試片は引張力が劣位な結果を得て、その一方でAl試片は良好な結果を得た。
比較例3はTi試片は引張力がやや劣る結果を得て、その一方でAl試片は良好な結果を得た。
比較例4はTi試片は引張力が良好な結果を得て、その一方でAl試片はやや劣る結果を得た。
比較例5はTi試片は引張力が良好な結果を得て、その一方でAl試片は劣位な結果を得た。
比較例6はTi試片は引張力がやや劣る結果を得て、その一方でAl試片は良好な結果を得た。
発明例5はTi、Al試片の何れもが良好な結果を得た。
発明例6はTi、Al試片の何れもが良好な結果を得た。
比較例7はTi試片は引張力が劣位な結果を得て、その一方でAl試片は良好な結果を得た。
発明例7はTi、Al試片の何れもが良好な結果を得た。
発明例8はTi、Al試片の何れもが優秀な結果を得た。
発明例9はTi、Al試片の何れもが優秀な結果を得た。
発明例10はTi試片は引張力が優秀な結果を得て、またAl試片は良好な結果を得た。
発明例11はTi、Al試片の何れもが良好な結果を得た。
発明例12はTi、Al試片の何れもが良好な結果を得た。
発明例13はTi、Al試片の何れもが良好な結果を得た。
発明例14はTi、Al試片の何れもが良好な結果を得た。
発明例15はTi、Al試片の何れもが優秀な結果を得た。
【0042】
従来例で試験結果は次の通りである。
従来例1はTi試片は引張力が劣位な結果を得て、その一方でAl試片は良好な結果を得た。
従来例2はTi試片は引張力が良好な結果を得て、その一方でAl試片は劣位な結果を得た。
【0043】
従来例1のようにAl専用条件で製作したAl試片と発明例のそれぞれの条件で製作したAl、Ti試片の試験結果は同一又は優秀な試験結果を得ることができた。
また、従来例2のようにTi専用条件で製作したTi試片と発明例のそれぞれの条件で製作したTi、Al試片の試験結果は同一又は優秀な試験結果を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明はポリマーとTi又はAlとの接合体の製造方法で、Ti又はAlの同一条件での表面処理を通じて、ポリマーとTi又はAlとの接合力を強化して部品の密閉性を向上させる効果を奏する。
【符号の説明】
【0045】
1 Ti又はAl金属部材
2 ポリマー部材
3 ポリマーTi又はAl金属接合体
10 孔
20 射出ゲート
【要約】      (修正有)
【課題】種類が全く異なる金属であるTiとAlを同一条件で表面処理を行い、表面に多孔性酸化被膜を形成する方法を提供する。
【解決手段】本発明のポリマーとTi又はポリマーとAlとの組み合わせによるポリマーと金属との接着結合のための同一条件の金属の表面処理方法は、
前記金属の表面を脱脂洗剤を用いて汚染物を除去する脱脂処理段階、
前記金属の表面をアルカリ溶液を用いてエッチングする1次エッチング処理段階、
前記金属の表面のスマットを除去するデスマット処理段階、
前記金属の表面を強酸性溶液を用いてエッチングする活性化処理段階、
活性化処理された金属の表面に多孔質を形成する酸化アノダイジング処理段階、及び
前記アノダイジング処理した金属の表面を乾燥する乾燥段階を含むことを特徴とする。
【選択図】図3
図1
図2
図3