(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】縦型再生アルミ材製造装置
(51)【国際特許分類】
C22B 21/06 20060101AFI20240917BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
C22B21/06
C22B7/00 A
C22B7/00 F
(21)【出願番号】P 2024102670
(22)【出願日】2024-06-26
【審査請求日】2024-06-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524242782
【氏名又は名称】有限会社キューテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100110537
【氏名又は名称】熊谷 繁
(74)【代理人】
【識別番号】100230190
【氏名又は名称】熊谷 祐
(72)【発明者】
【氏名】小畑 舜宰
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-012409(JP,A)
【文献】特開2006-343002(JP,A)
【文献】特開昭51-119604(JP,A)
【文献】特開昭62-112737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃タイヤを利用して乾溜ガスを発生させるための第1ボイラーと、
前記第1ボイラーと煙道を通じて接続された第1焼成炉と、
廃タイヤを利用して乾溜ガスを発生させるための第2ボイラーと、
前記第2ボイラーと煙道を通じて接続され、前記第1焼成炉の下に重ねられた第2焼成炉と、
前記第1焼成炉で発生するガスの排気煙道と、前記第2焼成炉で発生するガスの排気煙道が連結し、煙突へと繋がる排気管と、を備え、
前記第1焼成炉は、鉄付きアルミのスクラップ材の投入口と、底面にアルミ流出孔を有し、
前記第2焼成炉は、純アルミのスクラップ材の投入口と、上面にアルミ流入孔を有し、
前記第1焼成炉の前記アルミ流出孔及び前記第2焼成炉の前記アルミ流入孔は連結し、
前記第1焼成炉内では、前記第1ボイラーより発生した乾溜ガスを着火し、その熱で鉄付きアルミのスクラップ材のアルミを融解し、
前記融解したアルミは、前記アルミ流出孔を通じて第2焼成炉へ流出し、
前記第2焼成炉内では、前記第2ボイラーより発生した乾溜ガスを着火し、その熱で純アルミのスクラップ材と前記第1焼成炉から流入した融解したアルミを同時に加熱し、
再生アルミ材を生成することを特徴とする
再生アルミ材生成装置
【請求項2】
前記第1ボイラー又は及び第2ボイラーの外周部に水冷構造を設け、
前記水冷構造は、前記第1ボイラー又は及び第2ボイラーの外面に接する流路を有し、
前記流路は、冷却水を通過させて前記第1ボイラー又は及び第2ボイラーを冷却し、
前記冷却後の冷却水は、温湯として排出し、
前記排出された温湯は、ハウス栽培や住宅の床暖房
の暖房用温水や木
材、山菜又は野菜の乾燥用温水として利用できることを特徴とする
請求項1に係る再生アルミ生成装置
【請求項3】
第1ボイラーで廃タイヤを利用して乾溜ガスを発生させ、
前記第1ボイラーと煙道を通じて接続された第1焼成炉に鉄付きアルミのスクラップ材を投入し、
前記第1焼成炉では、前記第1ボイラーから流入させた乾溜ガスを着火し、発生した1000℃から1100℃の高温ガスで、前記鉄付きアルミのスクラップ材を加熱し、鉄と分離し、融解したアルミのみを第2焼成炉へ流入させ、
第2ボイラーでは、廃タイヤを利用して乾溜ガスを発生させ、煙道を通じて接続された第2焼成炉へ前記乾溜ガスを送り、
前記第2焼成炉では、前記第1焼成炉から流入し、第2焼成炉内に貯留した融解アルミを、
前記第2ボイラーから流入させた乾溜ガスを着火し、発生した650℃から800℃の高温ガスで加熱し、さらに、前記貯留した融解アルミ内に純アルミのスクラップ材を投入して同時に加熱し、
前記純アルミのスクラップ材が融解したアルミ及び、前記第1焼成炉から流入し、再加熱された融解アルミを第2焼成炉外へ流出させ、
再生アルミ材を生成することを特徴とする
再生アルミ材生成方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃タイヤ及び、アルミを含有するスクラップ材を主な資源とし、効率的で、かつ低コストで、不純物の少ない再生アルミ材を、再生段階でのアルミの減失を抑えて生成できる軽金属溶解設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SDGsは、「持続可能な開発目標」の略であり、2015年9月に国連サミットにおいて加盟国の全会一致で採択された世界が共通に掲げる目標であり、「SDGs12番ターゲット5」にて、“2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。”と設けられている。その中にある再生利用及び再利用の例として、鉄やアルミなどの金属製品を溶解して再生金属により新たな製品を作る、プラスティック製品をペレット化しておもちゃなどに利用する等の他、特許文献1に係る発明において「乾留ガス化炉において廃タイヤから乾留ガスを取り出し、前記乾留ガスを軽金属溶解炉で燃焼させ」とあるように、廃材からエネルギーを発生させる方法が挙げられ、その実現方法は多岐に渡る。
【0003】
前述した特許文献1に係る発明は、廃材(廃タイヤ)から発生させたエネルギーを利用し、かつ、そのエネルギーを用いて金属を溶解し再生金属を生成できる装置である。しかし、鉄付きアルミのスクラップ材を溶解し、鉄とアルミの融点の違いにより先に融点に達したアルミを取り出し、再生アルミ材を生成する場合、一度の溶解では再生アルミ材に含有する不純物が十分には取り除かれず、アルミの含有率を再生材として流通可能なレベルまで高めるためには、一度再生したアルミ材を同一の工程で加熱し、不純物を取り除く必要があり、手間とコストを2倍要することとなる。
【0004】
次に、前記鉄付きアルミのスクラップ材をアルミ含有率が再生材として流通可能なレベルにするには、1つの金属再生装置において第1及び第2の溶解工程を設けることも考えられる。特許文献2に係る発明は、「第1の溶解工程、第2の溶解工程および出銑工程を1サイクルの溶解処理として、この溶解処理を繰り返し実施する」含鉄材の溶解方法に関するものであるが、当該方法で再生アルミ材を生成する場合、あくまで当該発明は溶融鉄を出銑するための工程であるため、第2の溶解工程で含鉄材を溶解炉に装入すると、再生アルミ材に含有する不純物を取り除くことができない上、当該発明はサイクルタイムの短縮を目的とするものであり、不純物を取り除く目的とは異にするものである。
【0005】
また、本出願人は、
図1で示すように、2つの焼成炉を上下に配置し、上部の焼成炉で鉄付きアルミのスクラップ材を融解し、前記鉄付きアルミのスクラップ材から流出した融解アルミを2つの焼成炉を連結する孔から、下部の焼成炉へ誘導し、下部の焼成炉で再度融解アルミを加熱する方法を考えたところ、下部の焼成炉で加熱される融解アルミは、上部から少しずつ流入するため、加熱し続けることで気化しやすくなり、再生可能なアルミを減失する課題を生じた。この方法に限らず、アルミ材は融点が他の金属よりも低く、再生しやすい一方、例えば、缶アルミのスクラップ材やアルミ製エンジンを溶かし、リサイクル材を生成する場合、これらのスクラップ材を炉内に配置し加熱する方法では、一般的に20%から30%程度減失してしまうデメリットがあるため、事業における効率性を欠き、現在は国内でアルミの再生をする事業者よりも、アルミを含有するスクラップ材そのものを輸出する事業者が多く、国内でのリサイクル事業が拡大しにくい要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-343002公報
【文献】特許第7311771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、廃タイヤとアルミを含有するスクラップ材を主な資源とし、効率的で、かつ低コストで、不純物の少ない再生アルミ材を、再生段階でのアルミの減失を抑えて生成できる再生アルミ材生成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る再生アルミ材生成装置は、廃タイヤを利用して乾溜ガスを発生させるための第1ボイラー(乾溜ガス化炉)と、前記第1ボイラーと煙道を通じて接続された第1焼成炉(金属溶解炉)と、廃タイヤを利用して乾溜ガスを発生させるための第2ボイラーと、前記第2ボイラーと煙道を通じて接続され、前記第1焼成炉の下に重ねられた第2焼成炉(金属溶解炉)と、前記第1焼成炉で発生するガスの排気煙道と、前記第2焼成炉で発生するガスの排気煙道が連結し、煙突へと繋がる排気管と、を備え、前記第1焼成炉は、鉄付きアルミのスクラップ材の投入口と、底面にアルミ流出孔を有し、前記第2焼成炉は、純アルミのスクラップ材の投入口と、上面にアルミ流入孔を有し、前記第1焼成炉の前記アルミ流出孔及び前記第2焼成炉の前記アルミ流入孔は連結し、前記第1焼成炉内では、前記第1ボイラーより発生した乾溜ガスを着火し、その熱で鉄付きアルミのスクラップ材のアルミを融解し、前記融解したアルミは、前記アルミ流出孔を通じて第2焼成炉へ流出し、前記第2焼成炉内では、前記第2ボイラーより発生した乾溜ガスを着火し、その熱で純アルミのスクラップ材と前記第1焼成炉から流入した融解したアルミを同時に加熱し、再生アルミ材を生成することを特徴とする。
また、前記特徴に加え、前記第1ボイラー又は及び第2ボイラーの外周部に水冷構造を設け、前記水冷構造は、前記第1ボイラー又は及び第2ボイラーの外面に接する流路を有し、前記流路は、冷却水を通過させて前記第1ボイラー又は及び第2ボイラーを冷却し、前記冷却後の冷却水は、温湯として排出し、前記排出された温湯は、ハウス栽培や住宅の床暖房等の暖房用温水や木材等の乾燥用温水として利用できることを特徴とする。
さらに、前記課題を解決するために、本発明に係る再生アルミ材生成方法は、第1ボイラーで廃タイヤを利用して乾溜ガスを発生させ、前記第1ボイラーと煙道を通じて接続された第1焼成炉に鉄付きアルミのスクラップ材を投入し、前記第1焼成炉では、前記第1ボイラーから流入させた乾溜ガスを着火し、発生した1000℃から1100℃の高温ガスで、前記鉄付きアルミのスクラップ材を加熱し、鉄と分離し、融解したアルミのみを第2焼成炉へ流入させ、前記第2ボイラーでは、廃タイヤを利用して乾溜ガスを発生させ、煙道を通じて接続された第2焼成炉へ前記乾溜ガスを送り、前記第2焼成炉では、前記第1焼成炉から流入し、第2焼成炉内に貯留した融解アルミを、第2ボイラーから流入させた乾溜ガスを着火し、発生した650℃から800℃の高温ガスで加熱し、さらに、前記貯留した融解アルミ内に純アルミのスクラップ材を投入して同時に加熱し、前記純アルミのスクラップ材が融解したアルミ及び、前記第1焼成炉から流入し、再加熱された融解アルミを第2焼成炉外へ流出させ、再生アルミ材を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1焼成炉及び第2焼成炉にてスクラップ材を加熱するための熱源として、廃タイヤより発生した可燃性ガスを利用し、該可燃性ガスを焼成炉内に導き、着火し、高熱ガスを発生させ、該高熱ガスによって鉄付きアルミ材やアルミの含有率の高いアルミ材を融解させる構造は、燃料コストを低減し、複雑な温度管理が不要なメリットがある。また、第1焼成炉内の温度を1000℃~1100℃で保つことにより、ダイオキシンなどの有害・有毒物質やガス、及び臭気等の排出を防ぐことができる。
第1焼成炉で鉄付きアルミのスクラップ材を加熱し、取り出した融解アルミを、第2焼成炉へ流出し、再度の加熱を行うことで、第2焼成炉の融解アルミから製造された再生アルミ材に含まれる不純物を大きく低減することができる。
第1焼成炉から第2焼成炉に流入した融解アルミの溶湯の中に純アルミのスクラップ材を投入し、第2焼成炉で同時に加熱することにより、純アルミのスクラップ材の融解時の滅失及び流入した融解アルミの気化を防ぐことができ、不純物の少ない再生アルミ材を多く生成することができる。
廃タイヤの投入から再生アルミ材生成までの一連の流れを一体化した装置で完結させた本発明の構造は、人手を要する作業や管理を単純化でき、業務面での効率化をも実現できるものである。
各ボイラーの冷却後に排出された温湯をハウス栽培や住宅の床暖房等の暖房用温水や木材等の乾燥用温水として利用することで、廃タイヤの投入から再生アルミ材生成までの一連の流れで発生したエネルギーを効率的に活用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の再生アルミ材生成装置の側面断面図である。
【
図2】
図1を基に融解したアルミの流れを示した図である。
【
図3】本発明の再生アルミ材生成装置の操作動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の再生アルミ材生成装置の一実施例を添付図面に基づいて、以下に説明する。
本発明の再生アルミ材生成装置は、
図1の側面断面図に示すように、廃タイヤを利用して乾溜ガスを発生させるための第1ボイラー(乾溜ガス化炉)01と、前記第1ボイラーの下に重ねられた同じく廃タイヤを利用して乾溜ガスを発生させるための第2ボイラー(乾溜ガス化炉)02と、前記第1ボイラー01と煙道03aを通じて接続された鉄付きアルミのスクラップ材を加熱するための第1焼成炉(金属溶解炉)04と、前記第1焼成炉01の下に重ねられ、第2ボイラー02と煙道03bを通じて接続された純アルミのスクラップ材を加熱するための第2焼成炉(金属溶解炉)05と、前記第1焼成炉04で発生するガスや水蒸気が流出する排気煙道06aと、前記第2焼成炉05で発生するガスや水蒸気が流出する排気煙道06bが連結し、建物の外部に露出する煙突へと繋がる排気管07と、から構成される。
【0012】
第1ボイラー01及び第2ボイラー02は、前記第1ボイラー01及び第2ボイラー02の内部に廃タイヤ08を収納するための廃タイヤ投入孔09を有する乾溜ガス化炉を配置し、投入された前記廃タイヤ08を乾溜し、乾溜ガスを発生させる。投入する廃タイヤ08は、破砕圧縮等の作業は要さずに十分なガス化が可能である。図示していないが、乾溜後の廃タイヤ08の灰は灰出し扉を設けて取り出すことや、灰化後の前記第1ボイラー01及び第2ボイラー02の炉の冷却のために水冷構造を外周部に設ける等、乾溜ガス化炉が備えられる機能については、これに限りはない。
【0013】
第1焼成炉04は、前記第1ボイラー01と煙道03aを通じて接続された金属溶解炉であり、鉄付きアルミのスクラップ材の投入口10から、鉄付きアルミのスクラップ材11を投入し、前記煙道03aを通じて導かれた前記第1ボイラーで乾溜した乾溜ガスを着火させ、発生した高温ガスの温度を1000℃から1100℃に保ち、前記鉄付きアルミのスクラップ材11を加熱する。前記鉄付きアルミのスクラップ材11の鉄の融点が1536℃に対し、アルミの融点は約660℃であるため、アルミが先に融解し底面に流出する。そして、前記第1焼成炉04の底面に融解したアルミの流出孔12を設け、前記流出孔12を通じて融解したアルミのみを前記第1焼成炉の外に流出させる仕組みとすることで、鉄とアルミを分離することができる。この第1焼成炉04の炉内底面を傾斜させ、最低部に前記流出孔12を設けることで、前記鉄付きアルミのスクラップ材11から流出する融解アルミを効率よく前記流出孔12に集めることができる。
【0014】
第2焼成炉05は、前記第2ボイラー02と煙道03bを通じて接続された金属溶解炉であり、前記第1焼成炉04の底面の流出孔12と連結する流入孔(番号表示せず)を前記第2焼成炉05の上面に設け、前記煙道03bを通じて導かれた前記第2ボイラー02で乾溜した乾溜ガスを着火させ、発生した高温ガスの温度を650℃から800℃に保ち、第1焼成炉04及び前記第2焼成炉05を連結する前記流出孔12から流入する融解アルミの溶湯13を加熱し、純アルミのスクラップ材の投入口14から純アルミのスクラップ材15を投入し、前記融解アルミの溶湯13及び前記前記純アルミのスクラップ材15を同時に加熱し、第2焼成炉05の下部に融解したアルミの流出孔16を設け、前記流出孔16通じて、二度加熱することにより不純物が取り除かれた鉄付きアルミのスクラップ材11から融解したアルミと、第2焼成炉05に投入した純アルミのスクラップ材15から融解したアルミからなる溶湯を、前記第2焼成炉05の外に流出させることができる。この際、前記純アルミのスクラップ材15を投入するタイミングは、前記第2焼成炉内に、前記流出孔12から流入する融解アルミの溶湯がある程度溜まった状態で投入することが望ましい。なぜなら、前記純アルミのスクラップ材15は、融解アルミの溶湯に溶け出すように加熱されるため、気化による減失を大きく減らすことができるからである。この方法により、炉内で直接加熱するよりも多くの再生アルミ材を生成することが可能となる。
前記第1焼成炉04と同じく、前記第2焼成炉05の炉内底面を傾斜させ、傾斜の最低部に流出孔16を設けることで、効率よく前記流出孔16から融解したアルミを流出させることができる。
【0015】
前記第2焼成炉05に投入する純アルミのスクラップ材15は、アルミ製の窓枠・サッシのスクラップ材やフライパンや鍋などのスクラップ材等、様々あるが、缶飲料のアルミ缶のスクラップなど柔らかいアルミ素材は、圧縮して投入しても減失割合が大きいため、アルミを伸ばして成形するフライパンや鍋などのスクラップ材を用いることが望ましいが、これに限りはない。
【0016】
排気管07は、前記第1焼成炉で発生するガスや水蒸気が流出する排気煙道06aと、前記第2焼成炉で発生するガスや水蒸気が流出する排気煙道06bが連結した筒状の管であり、前記排気管07を建物の外部に露出する煙突17と接続し、建物の外へ燃焼後のガスや水蒸気などを排出する。本発明に係る縦型再生アルミ材生成装置は、焼成炉内のガスの温度が高温になることにより、有害・有毒ガス及び臭気等の排出を防ぐことができるが、前記排気煙道06a及び06bと前記排気管07の間に、排ガス分析計を設け、環境への配慮をより一層行う等、追加機能を設けても良い。
【0017】
このように、第1焼成炉及び第2焼成炉にてスクラップ材を加熱するための熱源として、廃タイヤより発生した可燃性ガスを利用し、該可燃性ガスを焼成炉内に導き、着火し、高熱ガスを発生させ、該高熱ガスによって鉄付きアルミ材やアルミの含有率の高い純アルミ材を融解させる構造は、燃料コストを低減し、複雑な温度管理が不要のメリットがある。また、第1焼成炉内の温度を1000℃~1100℃で保つことにより、ダイオキシンなどの有害・有毒物質やガス、及び臭気等の排出を防ぐことができる。
次に、第1焼成炉で鉄付きアルミのスクラップ材を加熱し、取り出した融解アルミを、第2焼成炉へ流出し、再度の加熱を行う工程を装置内に設けることで、第2焼成炉の融解アルミから製造された再生アルミ材に含まれる不純物を大きく低減することができる。
そして、第1焼成炉から第2焼成炉に流入した融解アルミの溶湯の中に純アルミのスクラップ材を投入し、第2焼成炉で同時に加熱することにより、純アルミのスクラップ材の融解時の滅失及び流入した融解アルミの気化を防ぐことができ、不純物の少ない再生アルミ材を多く生成することができる。
さらに、廃タイヤの投入から再生アルミ材生成までの一連の流れを一体化した装置で完結させた本発明の構造は、人手を要する作業や管理を単純化でき、業務面での効率化をも実現できるものである。加えて、各ボイラーの冷却後に排出された温湯をハウス栽培や住宅の床暖房等の暖房用温水や木材等の乾燥用温水として利用することで、廃タイヤの投入から再生アルミ材生成までの一連の流れで発生したエネルギーをも効率的に活用できるものである。
【0018】
続いて、本発明の縦型再生アルミ材生成装置の操作動作を
図3のフロー図に基づいて、以下に説明する。
乾溜ガス発生工程は、
図1,
図2に示す第1ボイラー(乾溜ガス化炉)01及び第2ボイラー(乾溜ガス化炉)02の側面にある廃タイヤ投入口09a及び09bから、廃タイヤ08を各ボイラー内へ投入する。そして、第1ボイラー及び第2ボイラーを点火作動させ、炉内の廃タイヤ08を乾溜し、乾溜ガスを発生させる。
高温ガス融解工程は、第1焼成炉04に鉄付きアルミのスクラップ材11を投入口10から、第1焼成炉04内へ投入し、第1ボイラーで発生させた乾溜ガスを第1焼成炉に流入させ、乾溜ガスを着火し、発生した高温ガスの温度を1000℃から1100℃に保ち、第1焼成炉内の鉄付きアルミのスクラップ材11を加熱する。鉄付きアルミのスクラップ材11より、先にアルミが融解し、第1焼成炉04の底面を伝って、底面に設けた融解アルミの流出孔12へ融解したアルミが流出する。
中高温ガス融解工程は、第2ボイラーで発生させた乾溜ガスを第2焼成炉05内に流入させ、乾溜ガスを着火し、発生した高温ガスの温度を650℃から800℃の間に保ち、前記第1焼成炉の前記流出孔12から流入した融解アルミの溶湯13を第2焼成炉05内に貯留させる。
融解アルミ混融工程は、発生した高温ガスの温度は650℃から800℃の間で保持し続け、第2焼成炉内に貯留させた融解アルミの溶湯13へ純アルミのスクラップ材15(アルミ製のフライパンや鍋のスクラップ)を投入口14から投入する。そして、純アルミのスクラップ材15及び第1焼成炉04から流出孔12を伝って流入した融解アルミを同時に加熱する。
再生アルミ生成工程は、第2焼成炉05内で加熱された融解アルミの溶湯は、第2焼成炉05内の底面を伝って、第2焼成炉の下部に設けた融解アルミの流出孔15へ流出し、流出孔15の流出先に再生アルミの鋳型18を設け、鋳型18に融解アルミを流し込み、再生アルミ材を生成する。
第1焼成炉内04で加熱した鉄付きアルミのスクラップ材11は、アルミの流出後には炉内に残った鉄材となり、第1ボイラー及び第2ボイラーにおいては乾溜後の廃タイヤは灰等となるため、それぞれの装置内から取り出す。また、乾溜ガス化炉である第1ボイラー及び第2ボイラーに炉の冷却のために水管等の水冷構造を外周部に設け、炉を冷却し、炉の冷却のために使用した水は、お湯となって排出されるため、様々な用途で使用させる。例えば、プール施設に温水を提供する、ビニールハウス等の温室栽培や住宅の床暖房に利用する、木材や山菜(野菜)等の乾燥に利用する、温泉施設で使用する、発電のエネルギー源とするなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0019】
01 第1ボイラー(乾溜ガス化炉)
02 第2ボイラー(乾溜ガス化炉)
03 煙道
03a 第1ボイラーと第1焼成炉を繋ぐ煙道
03b 第2ボイラーと第2焼成炉を繋ぐ煙道
04 第1焼成炉(金属溶解炉)
05 第2焼成炉(金属溶解炉)
06 排気煙道
06a 第1焼成炉で燃焼後のガスや水蒸気の排気煙道
06b 第2焼成炉で燃焼後のガスや水蒸気の排気煙道
07 排気管
08 廃タイヤ
09 廃タイヤ投入口
09a 第1ボイラーの廃タイヤ投入口
09b 第2ボイラーの廃タイヤ投入口
10 鉄付きアルミのスクラップ材の投入口
11 鉄付きアルミのスクラップ材
12 第1焼成炉の融解アルミ流出孔
13 第1焼成炉から流入した融解アルミの溶湯
14 純アルミのスクラップ材の投入口
15 純アルミのスクラップ材
16 第2焼成炉の融解アルミ流出孔
17 煙突
18 再生アルミの鋳型
19 融解アルミの移動方向
【要約】
【課題】廃タイヤとアルミを含有するスクラップ材を主な資源とし、効率的で、かつ低コストで、不純物の少ない再生アルミ材を生成できる再生アルミ材生成装置を提供する。
【解決手段】乾溜ガス化炉である第1ボイラー01及び第2ボイラー02内で、廃タイヤ08を利用して乾溜ガスを発生させ、前記第1焼成炉(金属溶解炉)04では、乾溜ガスを着火し、発生させた高温ガスで、投入した鉄付きアルミのスクラップ材11を加熱し、鉄と分離し、融解したアルミのみを流出孔12を通じて第2焼成炉(金属溶解炉)05へ流入させ、前記第2焼成炉05では、前記第2ボイラー02から流入させた乾溜ガスを着火し、発生させた高温ガスで、投入した純アルミのスクラップ材15と前記第1焼成炉04から流入した融解アルミを加熱し、融解した又は再加熱されたアルミを第2焼成炉05外へ流出させ、再生アルミ材を生成する。
【選択図】
図2