(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】伸縮吸音パネル
(51)【国際特許分類】
E04B 1/86 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
E04B1/86 U
E04B1/86 X
(21)【出願番号】P 2020121987
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000220169
【氏名又は名称】東京ブラインド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 武志
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-122914(JP,U)
【文献】実公昭53-004902(JP,Y2)
【文献】実開昭49-094441(JP,U)
【文献】特開平08-042015(JP,A)
【文献】特開昭53-146452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E06B 3/48
E06B 3/90-3/94
A47G 5/00-5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離L10を空けて並列して配置した第一支柱と第二支柱との間に、距離L10方向で、柔軟性を備える第一シートの両端辺と、柔軟性を備える第二シートの両端辺とを、それぞれの内面を対向させて取り付けて、以下のように構成したことを特徴とする伸縮吸音パネル。
(1) 前記第一支柱と第二支柱とを、並列を維持して、かつ最も離れて距離L10で、最も近づいて距離L20に移動可能となるような伸縮機構で連結した。
(2) 前記第一シートが吸音性能を備えた材料から構成され、前記第二シートが遮音性能を備えた材料から構成され、かつ、前記第一シートの内面と前記第二シートの内面との間に常に空気層が形成されるように構成した。
(3) 前記第一シート及び前記第二シートは、前記伸縮機構の収縮により、前記支柱間の距離が変わることに追随して、たるむことなく、前記空気層を維持できるように支柱に取り付けられた。
(4) 前記第一シートの内面と前記第二シートの内面との間に伸縮機構が配置され、前記伸縮機構は、水平方向にパンタグラフ状に開閉する主伸縮機構と垂直方向にパンタグラフ状に開閉する案内伸縮機構とを連連結して構成された。
(5) 前記主伸縮機構は、内ピン周りに回転自在の連結棒をX状に配置して主伸縮パーツを一直線上に並ぶように配置して、隣接する前記主伸縮パーツの両端で各連結棒を外ピンで回転自在に連結されて構成された。
(6) 前記案内伸縮機構は、内ピン周りに回転自在の連結棒をX状に配置して案内伸縮パーツを一直線上に並ぶように配置して、隣接する前記案内伸縮パーツの両端で各連結棒を外ピンで回転自在に連結されて構成された。
(7) 前記主伸縮機構の各内ピンと前記案内伸縮パーツの一外ピンとが連結された。
【請求項2】
以下のように形成したことを特徴とする
請求項1に記載の伸縮吸音パネル。
(1) 第一シートと第二シートは、支柱の軸方向と平行な多数の折り目が形成され、前記支柱間の距離が最も短いL20の際に、前記両シートはそれぞれ折り畳まれ、かつ前記両シートが互いに接触しないような構造とした。
(2) 前記第一シートは、空気を通す多数の微小間隙を備えた柔軟な表面部材の内面に、柔軟な吸音部材を積層して構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に折りたたみあるいは伸長して開閉できる伸縮吸音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
当社では、これまで、吸音板の背後の空気層を挟んで遮音板を配置した構成とすると、きわめて吸音性能が高い装置を構成できる知見を利用して、様々な発明をしてきた(例えば、特許文献1、2)。例えば、ついたてのような1枚パネルの構造のもの(特許文献1)、縦型ブラインドのように、レールに吸音板を吊った構造のもの(特許文献2)などを提案している。
パンタグラフ状の機構を使用して、長さを伸縮できる構造のアコーデオンパネルやアコーデオンドアは各種提案されている(特許文献3、4)。これらは、開閉時の操作性を高める工夫や(特許文献3)、折り畳み時のスクリーンの乱れをなくし、スムーズな折り畳みを目的としていた(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-264029号公報
【文献】特開2012-202197号公報
【文献】特開2010-77709号公報
【文献】実用新案登録第3216491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のアコーディオン型のパネルの提案は、いずれも開閉機構の提案であり、アコーディオン式のパネルなどは、単に空間を仕切る装置としか位置づけられてなかった。したがって、アコーディオン式のパネルに、新たな機能の提案を付与するものは無かった。また、アコーディオン式のパネルで、吸音効果を掲げるための従来技術があったとしても、それは表面に張る素材そのものの吸音効果に過ぎず、とりわけ両表面に張る素材の両方が共同してアコーディオン式のパネル全体で吸音効果を達成する装置はなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、吸音性能を備えた第一シートと遮音性能を備えた第二シートとを、内面を対向させてかつ空気層を介在させた状態で支柱に固定したので、前記問題点を解決した。
【0006】
即ちこの発明は、距離L10を空けて並列して配置した第一支柱と第二支柱との間に、距離L10方向で、柔軟性を備える第一シートの両端辺と、柔軟性を備える第二シートの両端辺とを、それぞれの内面を対向させて取り付けて、以下のように構成したことを特徴とする伸縮吸音パネルである。
(1) 前記第一支柱と第二支柱とを、並列を維持して、かつ最も離れて距離L10で、最も近づいて距離L20に移動可能となるような伸縮機構で連結した。
(2) 前記第一シートが吸音性能を備えた材料から構成され、前記第二シートが遮音性能を備えた材料から構成され、かつ、前記第一シートの内面と前記第二シートの内面との間に常に空気層が形成されるように構成した。
(3) 前記第一シート及び前記第二シートは、前記伸縮機構の収縮により、前記支柱間の距離が変わることに追随して、たるむことなく、前記空気層を維持できるように支柱に取り付けられた。
(4) 前記第一シートの内面と前記第二シートの内面との間に伸縮機構が配置され、前記伸縮機構は、水平方向にパンタグラフ状に開閉する主伸縮機構と垂直方向にパンタグラフ状に開閉する案内伸縮機構とを連連結して構成された。
(5) 前記主伸縮機構は、内ピン周りに回転自在の連結棒をX状に配置して主伸縮パーツを一直線上に並ぶように配置して、隣接する前記主伸縮パーツの両端で各連結棒を外ピンで回転自在に連結されて構成された。
(6) 前記案内伸縮機構は、内ピン周りに回転自在の連結棒をX状に配置して案内伸縮パーツを一直線上に並ぶように配置して、隣接する前記案内伸縮パーツの両端で各連結棒を外ピンで回転自在に連結されて構成された。
(7) 前記主伸縮機構の各内ピンと前記案内伸縮パーツの一外ピンとが連結された。
【0008】
さらに、前記発明において、以下のように形成したことを特徴とする伸縮吸音パネルである。
(1) 第一シートと第二シートは、支柱の軸方向と平行な多数の折り目が形成され、前記支柱間の距離が最も短いL20の際に、前記両シートはそれぞれ折り畳まれ、かつ前記両シートが互いに接触しないような構造とした。
(2) 前記第一シートは、空気を通す多数の微小間隙を備えた柔軟な表面部材の内面に、柔軟な吸音部材を積層して構成した。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、吸音性能を備えた第一シートと遮音性能を備えた第二シートとを、内面を対向させてかつ空気層を介在させた状態で支柱に取り付けたので、第一シート側から入った音は第一シートの吸音素材で吸音され、かつ空気層を通って、遮音性能を備えた第二シートで反射して再度空気層を通って第一シート側に到達する。よって、この発明の伸縮吸音パネルでは、吸音側で発生した騒音を首尾よく軽減できる効果がある。
また、第一シートと第二シートは、支柱間の距離がL20とL10とで伸縮しても、これに追随してたわまず、かつ空気層が維持できる。よって、この発明の伸縮吸音パネルでは、支柱間の距離すなわちL20とL10との間で幅を可変しても、前記のような第一シート(吸音)、空気層および第二シート(遮音)の組合せによる吸音効果を維持できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の伸縮吸音パネルで、閉じた状態を表し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、である。
【
図2】この発明の伸縮吸音パネルで、開いた状態を表し、(a)は平面図、(b)は一部を破切した正面図、である。
【
図3】この発明の伸縮吸音パネルの吸音シートおよび遮音シートであり、開いた状態の拡大平面図の一部を概略して表してある。
【
図4】この発明の伸縮吸音パネルの主伸縮機構であり、開いた状態の拡大平面図の一部を概略して表してある。
【
図5】この発明の伸縮吸音パネルの案内伸縮機構であり、開いた状態の拡大平面図の一部を概略して表してある。
【
図6】この発明の他の伸縮吸音パネルで、少し開いた状態の拡大平面図で、概略して表してある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の伸縮吸音パネル60は、支柱20、20を任意間隔で保持できる伸縮機構50で連結し、伸縮機構50の一側に吸音シート1、他側に遮音シート10を取り付けて構成する(
図1、
図2)。
【0012】
1.吸音シート1、遮音シート10の構成
【0013】
(1) 吸音シート(第一シート)1は、樹脂製繊維を織って形成した表面部材3の一面(内面)4のほぼ全体に、繊維材料を圧縮してフェルト状に成形した吸音部材6を重ねて構成してある(
図3)。表面部材3は樹脂製繊維を織っているので、繊維と繊維との間に隙間が形成され、隙間を通して音が通過できる構造となってる。
【0014】
(2) 遮音シート(第二シート)10は、吸音シート1と同様の大きさで、樹脂製のシート材料で形成され、一面11と他面11aとの間(厚さ方向)で音を通過できない構造となっている(
図3)。
【0015】
(3) 吸音シート1および遮音シート10は、いずれも柔軟な材料からなり、例えば、設定した折り畳み線で自由に折り畳み可能となるような性質を備えた材料である。したがって、吸音シート1の吸音材料6も表面部材3の折り畳みに追随して折り畳みできるような柔軟な材料で形成されている。
また、吸音シート1の一面2側(すなわち吸音材料6側)と、遮音シート10の一面11には、高さ方向で上部および下部に、幅方向のほぼ全長にわたり、伸縮機構50取り付けるための取付用テープ31が取り付けてある(
図3)。
【0016】
2.支柱20
【0017】
(1) 2つの支柱20、20を対向して配置して、一方を第一支柱20A、他方を第二支柱20Bとする。第一支柱20A、第二支柱20Bとも、支柱本体21の下端に脚部25を連結して構成する。支柱本体21は、他の支柱の対向側の面に高さ方向でほぼ全高さに亘る凹部22が形成されている。支柱本体21の高さは、吸音シート1、遮音シート10の全体を保持できるように、吸音シート1および遮音シート10の高さより大きく形成されている。
【0018】
(2) 支柱本体21の対向面の反対側の面に、他の伸縮吸音パネル60の支柱20と連結するための磁石23、23を取り付けてある。また、伸縮吸音パネル60が移動可能となるように、脚部25の底面にはローラー26が取り付けてある(
図1、
図2)。
【0019】
(3) なお、支柱20、20は主にアルミなどの型材を想定しているが、伸縮機構50と吸音シート1、遮音シート10を保持できれば、材質や構造は任意である。
【0020】
3.伸縮機構50
【0021】
(1) 伸縮機構50は、水平方向にパンタグラフ状に開閉伸縮する主伸縮機構30に、垂直方向にパンタグラフ状に開閉伸縮する案内伸縮機構40を連結して構成し(
図2)、支柱20A、20B間の高さ方向で上部と下部に設けて、構成する(
図2)。
【0022】
(2) 2つの連結棒31、31をX字状に配置して、X字状の中心(連結棒31、31の中心)に内ピン33を取り付け、内ピン33周りに連結棒31、31を回転自在に形成して、主伸縮パーツ32を構成する。多数の主伸縮パーツ32、32を、その内ピン33が一直線上に並ぶように並列して、隣接する主伸縮パーツ32、32で、当接する連結棒31、31の自由端部を外ピン35で互いに回転自在となるように接続して、主伸縮機構30を構成する。すなわち、主伸縮機構30は、いわゆるパンタグラフ状を連続した構造となっている。
連結棒31の半分の長さで半連結棒37を形成し、主伸縮機構30の両端部では、両連結棒31、31にそれぞれ半連結棒37の一端部を外ピン35、35で互いに回転自在に接続する。主伸縮機構30の両端部で、接続した2つの半連結棒37、37の他端部を重ねて、その他端部を端部内ピン33aで連結してある(
図4)。
したがって、主伸縮機構30では、長さ方向で両端にあたる端部内ピン33a、33aの間で、一平面内で自由に伸縮できるように構成されている。
【0023】
(3) 同様に、2つの連結棒41、41をX字状に配置して、X字状の中心(連結棒41、41の中心)に内ピン43を取り付け、内ピン43周りに連結棒41、42を回転自在に形成して、案内伸縮パーツ42を構成する。多数の案内伸縮パーツ42、42を、その内ピン43、43が一直線上に並ぶように並列して、隣接する案内伸縮パーツ42、42で、当接する連結棒41、41の自由端部を外ピン45、45で互いに回転自在に接続して、案内伸縮機構40を構成する。すなわち、案内伸縮機構40は、いわゆるパンタグラフ状を連続した構造となっている。
したがって、案内伸縮機構40では、長さ方向で一端にある端部外ピン45、45(端部外ピン45a、45a)と、他端にある端部外ピン45、45(端部外ピン45a、45a)と、の間で、一平面内で自由に伸縮できるように構成されている。
【0024】
(4) 支柱本体21と同程度の長さの縦棒材51、51を主伸縮機構30の外ピン35の数と同じ数を用意する。連結棒31、31が水平方向に並ぶように(連結棒31が水平方向に開閉伸縮するように)主伸縮機構30を配置して、二つの主連結機構30、30を所定間隔で垂直方向に並べ、各外ピン35、35の位置に縦棒材51を配置する。すなわち、各縦棒材51の上端部および下端部に主伸縮機構30、30が配置された構造となり、各縦棒材51を対応する各外ピン35に連結する。
上側の主伸縮機構30の下方に、一の案内伸縮機構40を、その連結棒41、41が垂直方向に並ぶように(連結棒41、41が垂直方向に開閉伸縮するように)、配置する。主伸縮機構30の各内ピン33、33に、案内伸縮機構40の上側に位置する外ピン45、45を連結する。したがって、案内伸縮機構40の下側に位置する外ピン45、45は、連結されずにフリーな状態となっており、また、案内伸縮機構40の両端の外ピン45、45を、端部外ピン45a、45aとする。したがって、上側の主伸縮機構30とその下方に取り付けた一の案内伸縮機構40とは連動して伸縮する。
同様に、下側の主伸縮機構30の上方に、他の案内伸縮機構40を、その連結棒が垂直方向に並ぶように(連結棒41、41が垂直方向に開閉伸縮するように)、配置する。主伸縮機構30の内ピン33に、案内伸縮機構40の下側に位置する外ピン45、45を連結する。したがって、案内伸縮機構40の上側に位置する外ピン45、45は、連結されずにフリーな状態となっており、案内伸縮機構40の両端の外ピン45、45を、端部外ピン45a、45aとする。したがって、下側の主伸縮機構30とその上方に取り付けた他の案内伸縮機構40とは連動して伸縮する。
【0025】
(5)以上のようにして、伸縮機構50を構成する。
【0026】
4.伸縮吸音パネル60の構成
【0027】
(1) 支柱20A、20Bの凹部22に挿入できる縦方向に長い(≒H1)挿入角材53の2本を、間隔を空けて鉛直方向に配置し、両挿入角材53、53の間に、伸縮機構50(主伸縮機構30、案内伸縮機構40)を配置する。
両挿入角材53の対向面に、両主伸縮機構30の端部内ピン33aを回転自在に連結する(
図4)。また、案内伸縮機構40の位置に合わせて、縦長孔を形成した受け金具55をそれぞれ固定し、各受け金具55の縦長孔に、案内伸縮機構40の端部外ピン45aを摺動自在に連結する(
図5)。
【0028】
(2) 伸縮機構50の外側の一面に、吸音シート1を、その吸音部材6を伸縮機構50側に向けて、伸縮機構50の主伸縮機構30の連結棒31、31の外縁に沿って、ジグザク状に折り曲げて配置し、吸音シート1の両端の縦縁部を挿入角材53に保持する。
同様に、伸縮機構50の外側の他面に、遮音シート10を、伸縮機構50の主伸縮機構30の連結棒31、31の外縁に沿って、ジグザク状に折り曲げて配置し、遮音シート10の両端の縦縁部を挿入角材53に保持する。
また、吸音シート1および遮音シート10の各取付用テープ18は、伸縮機構50で上下にある主伸縮機構30の高さ位置に合わせて配置され、各取付用テープ18を主伸縮機構30の連結棒31、31および半連結棒37に取り付ける。これにより、伸縮機構50の伸縮、すなわち連結棒31および半連結棒37の回動に追随して、吸音シート1および遮音シート10が折り畳まれるように形成される。したがって、伸縮機構50の伸縮によっても吸音シート1および遮音シート10が伸縮機構50から離れて垂れるおそれが無く、さらに、吸音シート1の一面(内面)2と遮音シート10の一面(内面)11が近づくことを防止でき、安定した空気層15を構成できる(
図2(a)、
図3、
図4)。
また、ここで、吸音シート1および遮音シート10は主伸縮機構30の内ピン33部分では、比較的緩く曲げられ、内ピン33から離れた状態で配置される(
図3)。したがって、吸音シート1および遮音シート10の距離が距離L0以上近づくことを防止できる(
図3)。
【0029】
(3) 以上のようにして、伸縮機構50、吸音シート1および遮音シート10を固定した挿入角材53を、支柱20A、20Bの凹部22に挿入して固定し、支柱20A、20Bに伸縮機構30、吸音シート1および遮音シート10を取り付けた伸縮吸音パネル60を構成する(
図1、
図2)。吸音シート1および遮音シート10の間には、全幅にわたり伸縮機構30があるので、吸音シート1の一面2(内面。吸音材料6側)と遮音シート10の一面11(内面)が接触することなく、必ず適度の空気層15が形成される。また、挿入角材53の一面に吸音シート1、他面に遮音シート10を取り付けたので、その位置でも吸音シート1の他面2(内面。吸音材料6側)と遮音シート10の一面11(内面)が接触することがない。
【0030】
5.伸縮吸音パネル60の使用
【0031】
(1) 伸縮吸音パネル60は、支柱20A、20B間の距離を最大長さL10(
図2)、最小L20(
図1)の間で適宜幅を選択して、間仕切りなどとして使用することができる。最小幅L20では、平面面積を小さくして収納する際に便利である(
図1)。
したがって、吸音シート1、遮音シート10の幅は、支柱20A、20Bの距離が長さL10の時に主伸縮機構30の各連結棒31、31の外面に沿って、たるまずに配置される。また、吸音シート1、遮音シート10は、支柱20A、20Bの距離が長さL20の時に主伸縮機構30の各連結棒31、31の外面に沿って、たるまずに折り畳まれるように配置される。よって、吸音シート1、遮音シート10の横幅および厚さはこのような条件で形成されている。
【0032】
(2) 伸縮吸音パネル60は、支柱20A,20B間の距離を広げて伸ばし、吸音シート1を騒音発生源側に向けて配置すれば、騒音が遮音シート10の外方に漏れる音を軽減できる。
すなわち、この伸縮吸音パネル60に到達した音の一部は吸音シート1の表面部材3に吸収され、さらに表面部材3の繊維間の隙間を通過してた音成分は、その一部が吸音部材6の繊維材料で減衰される。さらに吸音部材6を通過した音成分は、空気層15を通過して遮音シート10の内面で反射され、再度、空気層15を通って、吸音シート1の吸音部材6の繊維材料で減衰される。さらに、吸音シート1の表面部材3の繊維にも吸収され、吸音シート1の側に至り、以上の過程を通って、発生した音は大幅に減衰される。
また、この際、伸縮吸音パネル60の吸音シート1側、遮音シート10側のどちらに騒音発生源があったとしても、遮音シート10の遮音性能に応じて、伸縮吸音パネル60を挟んだ他側に漏れる音を軽減できる。
【0033】
(4) 伸縮吸音パネル60は、支柱20A,20B間の距離をL10とした場合に、適切な大きさ(吸音シート1と遮音シート10との距離)で安定した空気層15が形成されるので最も吸音効果が発揮でき、好ましい。また、伸縮吸音パネル60は、距離をL10と距離L20との間で適宜幅で使用して使用することができ、この場合にも必ず空気層15が形成されるので、吸音効果を発揮することができる。
【0034】
6.他の実施形態
【0035】
(1) 前記実施形態で、伸縮機構50は、主伸縮機構30と案内伸縮機構40とから構成したが、案内収縮機構40を省略することもできる(図示していない)。
【0036】
(2) また、前記実施形態で、伸縮機構50(主伸縮機構30と案内伸縮機構40)は、支柱20A、20Bの間隔を伸縮できる構造であれば、連結棒31、31(連結棒41、41)を内ピン33、外ピン35(内ピン43、外ピン45)で接合したパンタグラフ状の構造以外でも、他の構造を採用することもできる。例えば、伸縮式のロッド(中空パイプ)から伸縮機構50を構成して、支柱20A、20Bを伸縮機構50を構成することもできる(
図6参考)。
【0037】
(3) また、前記実施形態で、伸縮機構50は、並列した吸音シート1と遮音シート10の間の空気層15内に配置したが、並列した吸音シート1の外面2a側、遮音シート10の外面11a側に配置する構造とすることもできる(
図6の伸縮機構50A参照)。
【0038】
(4) また、前記実施形態で、吸音シート1と遮音シート10の幅および高さは共通にすることが望ましが、多少幅、高さを違えることもできる(図示していない)。
【0039】
(5) また、前記実施形態で、吸音シート1は、柔軟な表面部材3の一面(内面)4に、柔らかい吸音材料6を取り付けて構成したが、柔軟な表面部材3の内面に、やや硬めで幅が狭い吸音材料6、6を、折り畳みの折り目で分割された状態で取り付けた構造とすることもできる(図示していない)。
【0040】
(6) また、前記実施形態において、いわゆるロールスクリーンのように、吸音シート1を収容したシート収容筒62を支柱20Bとし、遮音シート10を収容したシート収容筒62を支柱20Aとして、支柱20A、20Bを伸縮機構50で連結して伸縮吸音パネル60とすることもできる(
図6)。この場合、シート収容筒62(支柱20B)から引き出した吸音シート1は他側のシート収容筒62(支柱20A)に係止し、同様にシート収容筒62(支柱20A)から引き出した遮音シート10は他側のシート収容筒62(支柱20B)に係止する。また、吸音シート1の内面2、遮音シート10の内面11間に伸縮ロッド型の伸縮機構50を配置して、伸縮機構50の軸方向の両端を支柱20A、20Bに固定する。この伸縮吸音パネル60では、吸音シート1と遮音シート10は折り畳まれず、常時平面を維持して、吸音シート1と遮音シート10間に空気層15を確保できる。
なお、ここで、シート収容筒62と支柱20A(20B)とを兼ねたが、シート収容筒60に別材の支柱20A(20B)を連結することもできる(図示していない)。また、伸縮機構50は伸縮ロッドから構成したが、パンタグラフ状、その他の構造とすることもできる(図示していない)。
また、伸縮機構50は、吸音シート1の内面2、遮音シート10の内面11間に配置したが、吸音シート1の外面2a、遮音シート10の外面11a側に伸縮機構50Aを配置することもできる(
図6)。伸縮機構50Aを使用した場合にも、吸音シート1と遮音シート10とは、常に平面を持して、両シート1、10が接触することなく、吸音シート1の内面2、遮音シート10の内面11間に、常に一定の厚さの吸音層15を維持できる。
【符号の説明】
【0041】
1 吸音シート(第一シート)
2 吸音シートの内面(一面)
2a 吸音シートの外面(他面)
3 表面部材
4 表面部材の内面(一面)
6 吸音部材
10 遮音シート
11 遮音シートの内面(一面)
11 遮音シートの外面(他面)
15 空気層
18 取り付けテープ
20、20A、20B 支柱
21 支柱本体
22 支柱本体の凹部
23 磁石
25 脚部
26 ローラー
30 主伸縮機構
31 連結棒
32 主伸縮パーツ
33 内ピン
33a 端部内ピン
34 外ピン
37 半連結棒
40 案内伸縮機構
41 連結棒
42 案内伸縮パーツ
43 内ピン
45 外ピン
45a 端部外ピン
50、50A 伸縮機構
51 縦棒材
53 挿入角材
55 受け金具(縦長孔付き)
60 伸縮吸音パネル
62 シート収容筒