(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】注湯ライン用載置台送り装置
(51)【国際特許分類】
B22D 47/00 20060101AFI20240917BHJP
B22D 5/00 20060101ALI20240917BHJP
B22D 5/04 20060101ALI20240917BHJP
B22D 45/00 20060101ALI20240917BHJP
B65G 19/02 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
B22D47/00
B22D5/00 Z
B22D5/04 Z
B22D45/00 A
B65G19/02 Z
(21)【出願番号】P 2020165570
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】592089799
【氏名又は名称】メタルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】石黒 克茂
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/108071(WO,A1)
【文献】特開2020-069501(JP,A)
【文献】特開2004-082146(JP,A)
【文献】特開2015-174088(JP,A)
【文献】特開2018-065168(JP,A)
【文献】特開2007-301608(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0198002(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 1/00-47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注湯ラインにおいて鋳型を夫々載置した複数の載置台を搬送方向に沿って一列に並べて搬送する搬送路と、
前記搬送路の下方において前記搬送路に並設され前記搬送路に沿って移動する移動体と、
前記移動体を前記搬送路に沿って往復動することで、前記載置台を前記載置台の前記搬送方向の長さである1ピッチずつ前記搬送路に沿って移動させる移動体駆動装置と、
各前記載置台に夫々設けられた被係合部と、
前記移動体に設けられ、前記搬送路上
の搬送の際に、隣接する前記載置台が相互に所定の隙間
を維持するように前記被係合部に係合する複数の係合部と、
前記複数の係合部を前記被係合部に対し、前記移動体が往復動する際の往路において係合させ、前記移動体が往復動する際の復路において離脱させる係脱装置と、
を備えた注湯ライン用載置台送り装置。
【請求項2】
隣り合う前記係合部の間隔は、前記載置台の前記搬送方向に沿った長さに前記所定の隙間を加えた長さで設定されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記被係合部は、各前記載置台の下面の前記搬送方向における前方端部または各前記載置台の下面の後方端部に設けられている請求項1に記載の注湯ライン用載置台送り装置。
【請求項4】
前記係合部および前記被係合部は、前記載置台と前記載置台に載置される前記鋳型とが合成する重心を含む前記搬送方向および垂直方向に延在する平面上に配置されている請求項1
ないし請求項3のいずれか1項に記載の注湯ライン用載置台送り装置。
【請求項5】
前記移動体は、前記搬送方向に沿って相互に連結された複数の小移動体により構成され、前記複数の小移動体は、夫々前記係合部を備えるとともに、前記複数の小移動体は、一つの前記移動体駆動装置により駆動される請求項1ないし
請求項4のいずれか1項に記載の注湯ライン用載置台送り装置。
【請求項6】
前記複数の小移動体は、隣接する前記小移動体が球面軸受を介して夫々接続されている
請求項5に記載の注湯ライン用載置台送り装置。
【請求項7】
前記各載置台による搬送が停止した際に、前記各載置台の停止状態を維持する停止状態維持装置をさらに備える請求項1ないし
請求項6のいずれか1項に記載の注湯ライン用載置台送り装置。
【請求項8】
前記停止状態維持装置は、
前記載置台の側面に設けられ前記搬送方向に交差する方向に突出する棒状の突出部を備えた被係止部と、
前記搬送路の上部に設けられ前記被係止部に係脱可能に設けられる係止部と、を備え、
前記係止部は、
前記載置台の搬送に伴って前記突出部が一方の前記搬送方向へ移動する際に傾斜面の裾野から頂部に向かって上下方向の相対変位を前記突出部との間に生じさせる上り傾斜面部と、
前記突出部が前記一方の搬送方向へさらに移動する際に傾斜面の頂部から裾野に向かって上下方向の相対変位を前記突出部との間に生じさせる下り傾斜面部と、
前記上り傾斜面と前記下り傾斜面との間に連続して谷状に設けられ、前記突出部の上面または下面に、垂直よりも傾斜した方向から当接する二つの対向した保持面を有する保持部と、
前記上り傾斜面部、前記下り傾斜面部および前記保持部を、前記突出部に向かって上方向あるいは下方向に付勢する付勢部と、
を備える
請求項7に記載の注湯ライン用載置台送り装置。
【請求項9】
前記被係合部は、前記搬送方向に対して直角な方向に延在する平板状部材であり、
前記係合部は、前記被係合部の前記搬送方向の移動を前記搬送方向の上流側より規制する上流側支持壁部と前記搬送方向の下流側より規制する下流側支持壁部とを備え、
前記係脱装置は、前記搬送方向に延在し前記上流側支持壁部および下流側支持壁部を連動して回転させる回転軸を備え、前記回転軸を回転させることで前記上流側支持壁部および下流側支持壁部を前記被係合部に対して係合あるいは離脱するように進退させる請求項1ないし
請求項8のいずれか1項に記載の注湯ライン用載置台送り装置。
【請求項10】
前記移動体における複数の前記係合部は、前記係脱装置における一つの前記回転軸によって駆動する
請求項9に記載の注湯ライン用載置台送り装置。
【請求項11】
複数の前記被係合部は、前記搬送方向に対して直角な方向に延在する平板状部材であり、
複数の前記係合部は、前記被係合部を前記搬送方向の上流側および下流側から挟持して支持する二つのローラを備え、
前記係脱装置は、前記ローラを前記被係合部に向かって直線上に進退させる進退装置を備える請求項1ないし
請求項8のいずれか1項に記載の注湯ライン用載置台送り装置。
【請求項12】
複数の前記進退装置は、前記搬送方向に延在する一つの進退用回転軸によって進退する
請求項11に記載の注湯ライン用載置台送り装置。
【請求項13】
前記係合部は、前記搬送路に並べられた複数の前記載置台の下面の前記後方端部の前記被係合部に夫々係合する係合部と、前記搬送路に搬入される直前の搬入位置に位置決めされた前記載置台の下面の前記前方端部の前記被係合部に係合する係合部とを備え、
前記搬入位置に搬入された前記載置台の下面の前記前方端部の前記被係合部に係合する前記係合部は、前記搬送路の上流端に並べられた前記載置台に対して前記搬入位置に搬入された前記載置台を、前記所定の隙間を設けて係合する
請求項3に記載の注湯ライン用載置台送り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶湯を鋳型に注入する注湯ラインにおいて鋳型を載置した載置台を搬送する載置台送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳造ラインにおいて、鋳型(鋳枠付き鋳型および鋳枠なし鋳型)が載せられた複数の搬送台車(載置台)を一列にレール上に並べて搬送する。特に、溶湯を鋳型に注入する注湯ラインでは、一列に並べた複数の搬送台車によって、砂で成型した鋳型を搬送したり、搬送された搬送台車上で鋳型に溶湯を注入する作業をしたり、液体状態の溶湯が注入された鋳型を一列に並べた複数の搬送台車で搬送したりする作業が必要である。
【0003】
そして、注湯ラインの上流側に新たな鋳型を載置した搬送台車を搬入する際に、並べた列に対して直交する方向から搬入する必要がある。この搬入作業時において、既に並んでいる搬送台車の上流端部(最後部)にある搬送台車と新たに搬入される搬送台車の接触を防止するため、隙間を設けて配置するように設定している。また、溶湯からの熱膨張を考慮して搬送台車は、搬送方向の長さが小さめに制作されており、搬送台車が冷えると搬送台車間の隙間が大きくなってしまう。
【0004】
ところが、このような隙間に起因して搬送時において隣接する搬送台車間で衝突が生じる場合がある。このような搬送台車間の衝突は、搬送台車の当たり面を傷めたり、凝固前の溶湯が鋳型内で揺らされて鋳型の内壁を変形させて製品精度を低下させたりする。
【0005】
そのため、特許文献1が公開する技術では、衝撃を小さくするため、停止状態にあった時に設けた隙間が詰まるまで低速で搬送し、その後高速で搬送し、さらに停止前に低速となるように搬送ローラの回転を制御して搬送している。
特許文献2には、複数の鋳枠を搬送方向に沿って搬送路に並べて搬送することが記載されている。そして、搬送路の側方に並行に設けられた移動体の複数の係合部に、各鋳枠の側面に設けられた被係合部を夫々係合させ、各鋳枠を所定の位置関係で保持することで、搬送時に各鋳枠が互いに衝突するのを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第2559334号公報
【文献】特開2020-69501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1において、低速で搬送する時間を必要とするため、特に生産量が多く求められる高速の鋳造ラインにおいては、求められた要請を満たすことのない低い効率の搬送となっていた。
特許文献2は、一列に並べられた複数の鋳枠を互いに衝突させることなく、かつ迅速に搬送できるという優れたものである。しかし、凝固する前の溶湯を含む複数の鋳型を確実に搬送するには、さらなる工夫が要求された。
【0008】
本発明は、注湯ラインにおける鋳型を載置した複数の載置台間で相互に生ずる衝突を防止するとともに、注湯される複数の鋳型の搬送を迅速かつ確実に行うことのできる注湯ライン用の載置台送り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る注湯ライン用載置台送り装置は、注湯ラインにおいて鋳型を夫々載置した複数の載置台を搬送方向に沿って一列に並べて搬送する搬送路と、前記搬送路の下方において前記搬送路に並設され前記搬送路に沿って移動する移動体と、を備えている。
また、前記移動体を前記搬送路に沿って往復動することで、前記載置台を前記載置台の搬送方向の長さである1ピッチずつ前記搬送路に沿って移動させる移動体駆動装置を備えている。
【0010】
また、各前記載置台に夫々設けられた被係合部と、前記移動体に設けられ、前記搬送路上において、隣接する前記載置台が相互に所定の隙間を設けて配されるように前記被係合部に係合する複数の係合部と、を備えている。
さらに、前記複数の係合部を前記被係合部に対し、前記移動体が往復動する際の往路において係合させ、前記移動体が往復動する際の復路において離脱させる係脱装置を、備えている。
【0011】
これによると、各載置台は、停止時および搬送時において、低速搬送領域を設けなくとも、隣接する載置台が干渉したり相互に衝突したりすることがなく、迅速かつ確実に注湯作業および注湯された鋳型の搬送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明を実施した第一実施形態の注湯ライン用載置台送り装置の概要を示す平面図である。
【
図2】注湯ライン用載置台送り装置の搬送路の側面図である。
【
図3】
図1におけるA部分の回転軸の構造を一部断面で示す平面図である。
【
図4】
図1におけるA部分を拡大して示す側面図である。
【
図5】上流端における係合部と被係合部とを示す説明図である。
【
図6】
図1におけるB部分を拡大して示す側面図である。
【
図7】下流端における係合部と被係合部とを示す説明図である。
【
図10】搬送路を下流側から見た一部断面で示す図である。
【
図11】搬送路の中央部を下流側から見た一部断面で示す図である。
【
図13】接続装置を側方から見た断面図で示す図である。
【
図14】搬送路を裏側から見て一部拡大して示す側面図である。
【
図15】搬送路の停止状態維持装置を下流側から見た一部断面で示す図である。
【
図16】停止状態維持装置の係止部を示す平面図である。
【
図17】係止部と被係止部の係止構造を示す模式図である。
【
図18】第二実施形態の注湯ライン用載置台送り装置の上流端を拡大して示す側面図である。
【
図19】第二実施形態の係合部を拡大して示す平面図である。
【
図20】第二実施形態の係合部を拡大して示す側面図である。
【
図21】第二実施形態の上流端に使用される係合部を拡大して示す平面図である。
【
図22】第二実施形態の上流端に使用される係合部を拡大して示す側面図である。
【
図23】第二実施形態における進退装置で係合部を上昇させた状態を示す図である。
【
図24】第二実施形態における進退装置で係合部を下降させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第一実施形態)
本発明に係る注湯ライン用載置台送り装置を、溶湯を鋳型に注入する注湯ラインを中心に具体化した第一実施形態について、
図1~
図17を参照して以下に説明する。
図1は、本発明に係る注湯ライン用載置台送り装置1を含む鋳造ラインCLの一部の設備概要を示している。この設備では、造型ラインMLで造型され載置台6に載置された鋳型Mが、注湯ラインPLに搬入され、載置台6に載置されて注湯ラインPLで搬送されている間に注湯される。そして注湯された鋳型Mが冷却エリアCAに搬出され、冷却エリアCAで冷却されながら搬送される。
【0014】
本明細書において、載置台6が注湯ラインPLの搬送路2に沿って搬送される方向を「搬送方向」という。載置台6の搬送を水の流れに例えて、注湯ラインPLにおいて搬送の基点になる側を「上流側」、搬送の終点になる側を「下流側」という。搬送方向において上流方向を「後方」といい、下流方向を「前方」というものとする。搬送路2の搬送方向に延在する中心線を想定した場合に、その中心線より遠い側を「外側」、近い側を「内側」というものとする。
【0015】
(注湯ライン用載置台送り装置)
注湯ライン用載置台送り装置1は、
図1および
図2に示すように、搬送路2、移動体3、移動体駆動装置4、停止状態維持装置5を備え、搬送路2には複数の載置台6(例えば、搬送台車)が搬送方向に沿って並べられている。載置台6には被係合部61が設けられ、移動体3には被係合部61と係合する係合部31が設けられている。注湯ラインPLの搬送路2には、注湯設備7が並設されている。
【0016】
注湯ラインPLの搬送路2に並設されている注湯設備7は、図略の溶解炉、保持炉、トリベ71、およびトリベ71を搬送路2に対向した所定の注湯位置に移動させる移動機構72、トリベ71を傾動させる傾動機構73を備えている。注湯設備7は、公知技術であるため詳細な説明は省略する。
【0017】
(搬送路)
搬送路2は、複数の載置台6を搬送方向に沿って並べて搬送するもので、
図2に示すように、支柱21、梁部材22、レール支持部材23およびレール24を備えている。
レール24は、支柱21、梁部材22、レール支持部材23により床面Fより高架に設置されている(
図10参照)。
【0018】
支柱21は、例えば、中空の断面矩形状の鉄製部材により形成されている。支柱21は、搬送方向に沿って、二本ずつ対に複数本並べられている。
各支柱21の上部には、梁部材22が設けられている。梁部材22は、例えば、中空の断面矩形状の鉄製部材により形成されている。梁部材22は、対となった各支柱21の間に、搬送方向に対して直角な方向に夫々横架されている。
【0019】
レール支持部材23は、例えば、鉄製部材により断面が矩形状に形成されている。レール支持部材23は、各支柱21の上端に支持され、搬送方向に沿って二本が対となって延在している。
レール支持部材23の上端面には、レール24が敷設されている。レール24の下部は、図略の固定金具によりレール支持部材23に固定されている。
【0020】
(移動体)
移動体3は、
図4に示すように、レール24の下方であって、対となった支柱21の間に搬送方向に沿って延在するように設けられている。移動体3は、複数の載置台6を搬送路2に沿ってまとめて搬送するための仲介手段となるものである。
【0021】
移動体3は、移動体レール32によって移動する。移動体レール32は、レール支持部材23の下方であって、支柱21の内側に搬送方向に沿って一対延在する。移動体レール32は、
図15に示すように、例えば鉄製で、対向する内側が開口する断面コ字状部材で形成されている。
【0022】
移動体3は、
図2に示すように、複数(本実施形態では三つ)の小移動体、すなわち上流側小移動体3a、中央部小移動体3bおよび下流側小移動体3cを備えている。上流側小移動体3aは、搬送方向の載置台6の長さの約二つと半分の長さに形成されている。中央部小移動体3bは、搬送方向の載置台6の長さの約三つと半分の長さに形成されている。下流側小移動体3cは、搬送方向の載置台6の長さの約四つ分の長さに形成されている。移動体3の全体の長さは、搬送路2より載置台6一つ分短い長さで形成されている。中央部小移動体3bの下部には、後述する移動体駆動装置4が設けられている。
【0023】
各小移動体3a,3b,3cは、中実の断面長方形の角型鋼材より形成され、移動体レール32の内側底面を走行する車輪33を夫々三対ずつ備えている。
隣接する小移動体(3aと3b、3bと3c)が存在する各小移動体(3aと3b、3bと3c)の端部には、
図4に示すように、後述する接続装置34に接続される接続部3dが隣接する小移動体(3aと3b、3bと3c)側に向って突設されている。接続部3dは、搬送方向に沿って延在し、断面の長辺が水平に配置される矩形平板状に形成されている。接続部3dは、中心軸が垂直方向に延在する接続穴(図示せず)が貫設されている。
【0024】
(係合部)
各小移動体3a,3b,3cは、複数の係合部31を備えている。係合部31は、
図4に示すように、載置台6に設けられた被係合部61に係合して移動体3の移動に連動させて載置台6を搬送方向に移動させる。被係合部61は、後述するように平板状部材で形成されている(
図10参照)。
【0025】
複数の係合部31は、搬送方向に延在する回転軸35の外周部に夫々一体に設けられ、隣り合う係合部31の間隔は、
図4および
図6に示すように、被係合部61を配置する間隔に対応して設定されている。すなわち、載置台6の搬送方向に沿った長さ(1ピッチ)に所定の隙間(隣接する載置台との間の隙間)を加えた間隔で各係合部の間隔は設定されている。
【0026】
このような間隔で各係合部31を設定することで、各係合部31は、搬送路2に並べられた各載置台6の下面の後方端部に設けられた被係合部61に係合する。ただし、上流側小移動体3aにおいて、搬入位置CIPに位置決めされた載置台6を搬送路2の上流端に搬入するため、上流端の係合部31には、載置台6の下面の前方端部に設けられた被係合部61に係合する上流端の係合部31が追加して設けられている。そのため係合部31は、上流端の軸受36の両側に軸受36を挟むように二つ設けられている(
図5参照)。
【0027】
この二つの係合部は、搬入位置CIPの載置台6の前方端部の被係合部61と、搬送路2の上流端に位置決めされた載置台6の後方端部の被係合部61とに、係合した際に、かかる載置台6間に、所定の隙間tを生じるように設定されている。
【0028】
この所定の隙間tは、搬送路2に対して直角な方向から搬入位置CIPに搬入される載置台6と、搬送路2の上流端に位置決めされた載置台6との間の必要な隙間と同様なものである。そのため、直角な方向から搬入するために必要な隙間を維持した状態で、搬入位置CIPから新たに搬送路2に搬入される載置台6を搬送することができる。そして、隣接する載置台6の間で所定の隙間tを維持しているため、搬送において衝突防止のための特別な制御をして低速走行させる必要がない。
【0029】
各係合部6は、後述する回転軸35の半径方向に突出する上流側支持壁31aと下流側支持壁31bとを備えている(
図5および
図7参照)。上流側支持壁31aと下流側支持壁31bとは、回転軸35の軸心方向に間を空けて並んで設けられている。上流側支持壁31aと下流側支持壁31bとの間に被係合部61を挟持し、上流側支持壁31aは被係合部61の搬送方向の移動を搬送方向の上流側より規制し、下流側支持壁31bは被係合部61の搬送方向の移動を搬送方向の下流側より規制する。上流側支持壁31aと下流側支持壁31bとは、回転軸35の回転中心を含む平面で切断すると断面コ字状に形成されている。
【0030】
回転軸35は、
図3に示すように、各小移動体3a,3b,3cの上面に組付けられた複数の軸受36に支承されている。回転軸35の長さは、上流側小移動体3aにおいて、搬送方向に沿った載置台6の二つ分の長さを少し超える長さに形成されている。回転軸の長さは、中央部小移動体3bにおいて、同じく載置台6の三つ分の長さを少し超える長さに形成されている。下流側小移動体3cにおいて、同じく載置台6の四つ分の長さを少し超える長さに形成されている。
【0031】
回転軸35は、係合部駆動用電動モータ37によって回転する。係合部駆動用電動モータ37として、例えば、減速機付き電動モータを使用する。係合部駆動用電動モータ37は、
図4に示すように、各小移動体3a,3b,3cの下面中間部に、例えば図略のボルト・ナットにより締結され、係合部駆動用電動モータ37の出力軸には、駆動スプロケット37aが組み付けられている。回転軸35には、係合部駆動用電動モータ37の駆動スプロケット37aに対向する位置に従動スプロケット37bが組み付けられている。駆動スプロケット37aと従動スプロケット37bとの間には、無限軌道のローラチェーン38が掛装されている。
【0032】
回転軸35、係合部駆動用電動モータ37、駆動スプロケット37a、従動スプロケット37bおよびローラチェーン38により、係脱装置が構成される。
回転軸35を係合部駆動用電動モータ37により回転させると、係合部31は回転軸35とともに回転軸35周りに回転し、係合部31が最上部となる回転位相に位置決めされたときに、被係合部61に係合可能となり、係合部31が最上部となる回転位相から外れたときに、被係合部61から離脱する。
【0033】
回転軸35には、回転軸35の回転位相を検知する図略の回転角度センサ(例えばロータリエンコーダ)が回転軸35に設けられている。係合部駆動用電動モータ37による回転は、回転角度センサにより送信される信号に基づいて、後述する制御装置によって回転方向および回転位相が制御される。
【0034】
(移動体駆動装置)
移動体駆動装置4は、
図4に示すように、中央部小移動体3bの下面に組付けられたラック41、中央部小移動体3bの下方に位置する支柱21の間に設けられた支持横部材25に固定された移動体駆動用電動モータ42、移動体駆動用電動モータ42の出力軸に組付けられたピニオン43を備えている。
【0035】
移動体駆動用電動モータ42に連動するピニオン43を正回転および逆回転させることで、ピニオン43に噛合するラック41に搬送方向の力を伝達し、中央部小移動体3bを搬送方向に沿って往復動させる。移動体駆動用電動モータ42として、例えば減速機付き電動モータを使用する。移動体駆動用電動モータ42は、制御装置によって駆動が制御されている。
【0036】
ラック41は、搬送方向に沿って載置台6の搬送方向の長さである約1ピッチと1ピッチの半分の長さで延在している。ラック41を1ピッチ分(実際には、1ピッチに隣接する載置台6の間の隙間tと1ピッチを合算した距離)移動させることで、複数の載置台6は、間欠的に1ピッチずつ移動する。
【0037】
(載置台)
載置台6は、
図8に示すように、載置台本体62、転動輪63、被係合部61、被係止部64およびライナー部65を備えている。
複数の載置台6は、夫々鋳型Mを載置して搬送路2のレール24上に並べられて移動する。
【0038】
載置台本体62は、例えば鉄製の板で長方形状に形成されている。載置台本体62の四つの縁は、
図9に示すように、折り曲げられて所定の幅で下方に突出している。長辺側の縁の下部には、回転しない車軸63aを固定する軸支持穴63bが形成されている。軸支持穴63bは、搬送方向に直角な方向に対となって形成され、載置台本体62の前後方向に並べて計四か所設けられている。軸支持穴63bには車軸63aが嵌入されて固定されている。各車軸63aの内側には、ベアリングを介して転動輪63が回転自在に組付けられている。各車軸63aの外側端部には車軸63aよりも径の大きな円柱状の蓋体63cが複数のボルトによって締結されている。
【0039】
(被係止部)
蓋体63cのうち、一か所(例えば上流側から見て右側前方の位置)の蓋体は、円柱の高さ方向が他の三か所の蓋体63cよりも大きく形成され、外側に向かって突出する棒状の突出部64aを形成している。突出部64aは、被係止部64に相当する。被係止部64は、搬送路に固定された後述する停止状態維持装置5の係止部51に係脱可能に係止する。
【0040】
(被係合部)
載置台本体62の前後の短辺側の縁の下部には、被係合部61が下方に向かって突設されている。被係合部61は、矩形の平板状部材で形成され、搬送方向に対して直角な方向に延在している。被係合部61は、移動体3に設けられた係合部31に係合して、移動体3より加わる搬送方向の力を載置台6に伝える。被係合部61の搬送方向に直角な方向の中心は、載置台6と載置台6に載置される鋳型Mが合成する重心Gを含む平面VPであって(
図15参照)、搬送方向および垂直方向に延在する平面VP上に配置されている。仮に何らかの原因で、被係合部61に衝撃が生じた場合にも、回転力が衝撃によって生じないので、回転力に起因する溶湯による鋳型Mの損傷を防止することができる。
【0041】
(ライナー部)
載置台本体62の短辺側の前面および後面には、
図8に示すように、ライナー部65が設けられている。ライナー部65は、例えば焼き入れされた鉄製で搬送方向に突出する円柱形状に形成されている。例えば、次工程にある冷却エリアCAの搬送路において、複数の載置台6が並べられてプッシャー装置PDやクッション装置(図略)で、挟持されたとき、隣接する載置台6同士がライナー部65で相互に接触する。ライナー部65は、載置台本体62の接触による損傷を防止し、ライナー部65が損傷した場合には、ライナー部65だけが取り換えられるようになっている。
【0042】
(停止状態維持装置)
停止状態維持装置5は、各載置台6による搬送が停止した際に、各載置台6の停止状態を維持する。
停止状態維持装置5は、
図14に示すように、載置台6に設けられた被係止部64と、搬送路2に設けられた係止部51とを備えている。
被係止部64は、前述したように各載置台6の転動輪63の上流側から見て右側(下流側から見て左側)前方の位置の車軸63aの外側の側面に設けられている。被係止部64は、搬送方向に対して直角に交差する方向に外側に突出する丸い棒状の突出部64aを備えている。
【0043】
(係止部)
係止部51は、搬送路2の上部外側に載置台6の停止位置に対向させて複数配置されている。
係止部51は、
図14に示すように、台座板511、軸支持部512、回動軸513、アーム514、車515、ストッパーボルト516およびコイルばね517を備えている。
【0044】
台座板511は、
図15に示すように、例えば断面L字型の鉄製板材で形成され、一体となった垂直壁511aと水平壁511bとを備えている。垂直壁511aと水平壁511bとは、共に搬送方向に延在している。垂直壁511aは、垂直方向に延在し、レール支持部材23の側面に例えばボルト・ナットにより締結されている。水平壁511bは、垂直壁511aがレール支持部材23の側面に締結された際に、搬送路2の外側方向に水平に突出するようになっている。
【0045】
軸支持部512は、
図14に示すように、台座板511の水平壁511bの上面に、例えばボルト・ナットで固定される台座部512aと台座部512aの中央上部に連続して形成された軸受部512bとを備えている。軸受部512bは、搬送方向に対して直角な水平方向に延在する軸受中心を備えている。
【0046】
軸受部512bには、回動軸513が回動自在に嵌挿されている。回動軸513には、シーソー状態に揺動するアーム514の中間部が組み付けられている。アーム514は、例えば鉄製で略短冊状に形成され、搬送方向に延在し、広い面積部分の矩形状部を垂直に配置し、狭い面積部分の矩形状部を水平方向に重なるように配置している。水平方向に重なるとは、常に水平であるわけではないが、アーム514が揺動した場合に、水平方向に一致する場合が生じる状態であることをいう。
【0047】
アーム514は、回動軸513から一方が搬送方向に沿って長く突出した長尺部と、回転軸から他方が搬送方向に沿って短く突出した短尺部とを備えている。長尺部の先端上部には円弧状の凹部が形成され、凹部の両端部には対の車515が組み付けられている。車515の回転軸は、
図16に示すように、搬送方向に対して直角な方向に延在し、長尺部より搬送路2の内側に向かって突出している。対となった車515は対向する外周間に隙間を設けて配置されている。この隙間は、被係止部64の突出部64aの外径より狭く設定されている。二つの車515の隙間は、谷状に形成され、二つの車515の外周の内側上部は、夫々被係止部64の下面に当接する保持面515hを有する保持部516を構成する(
図17参照)。
【0048】
上流側に配置された車515の外側上面は、
図17に示すように、突出部64aが一方の搬送方向へ移動する際に傾斜面の裾野から頂部に向かって上方向の相対変位を突出部64aに生じさせる上り傾斜面部515uを構成する。下流側に配置された車515の外側上面は、突出部64aが前記一方の搬送方向へ移動する際に傾斜面の頂部から裾野に向かって下方向の相対変位を突出部64aに生じさせる下り傾斜面部515dを構成する。この係止部51の説明では、二つの車515の間の谷状部の中心に近い方を「内側」、遠い方を「外側」と表現している。各車515の外周部の上端が頂部であり、各車515の外周は下方に向かって頂部より連続する裾野が形成されている。
【0049】
アーム514の長尺部の中間部において、搬送方向の直角な方向の外方に向かって突出する水平の板片514aが突設されている。板片514aの下面と台座板511の上面との間には、圧縮状態のコイルばね517が配置され、長尺部はコイルばね517によって上方に付勢されている。
【0050】
アーム514の短尺部の先端下面は、台座板511に突設されたストッパーボルト516の先端に当接して、アーム514のコイルばね517による過度な傾動を規制している。
【0051】
なお、本実施形態では、係止部51の上り傾斜面部515u、下り傾斜面部515dおよび保持部516は、二つの車515で構成したが、これに限定されない。例えば、上り傾斜面部、下り傾斜面部は直線状或いは曲線状の傾斜面でよく、保持部は、対向する谷状となる傾斜面で構成することができる。
【0052】
(接続装置)
各小移動体3a,2b,3cの間は接続装置34により接続されている。接続装置34として、例えば球面軸受が使用されている。
接続装置34は、
図12および
図13に示すように、接続装置本体341、二つの球面軸受342、二つの接続軸343を備えている。
【0053】
接続装置本体341は、例えば、一般構造用圧延鋼材により搬送方向に延在する細い平板状に形成され、搬送方向の両側の端部には搬送方向に垂直に直交する中心軸を有する挿入口341aが設けられている。
【0054】
挿入口341aは、上縁内周に半径方向内側に突出する係止リブ(図示せず)が夫々形成されている。挿入口341aには、球面軸受342の外輪(図示せず)が下方から圧入され、球面軸受342の外輪の軸方向の幅は、内輪(図示せず)の幅よりも短く形成されている。球面軸受342は、公知技術であるため、説明を省略する。なお、球面軸受を接続装置に使用した例として、特開2020-69501号公報を挙げることができる。
接続装置34は、球面軸受342の内輪と外輪との相互の滑りによって、隣接する小移動体(3aと3b,3bと3c)間に発生する全方向の位置ずれをガタツキ無く滑らかに吸収する。
【0055】
搬送路2の下流端は、載置台6を搬送方向の直角な方向に移動させることで、搬送路2に並行に設けられた冷却エリアCAの搬送路に移動させるトラバーサTVが設けられている。トラバーサは、公知技術あるので、説明を省略する。
冷却エリアCAの搬送路は、プッシャー装置PDとクッション装置(図略)とで並べられた複数の載置台6を挟持して1ピッチずつ搬送するもので、公知技術であるため、説明を省略する。
【0056】
(制御装置)
制御装置は、図示はしないが、係合部駆動用電動モータ37、移動体駆動用電動モータ42の駆動を制御する。また、トラバーサTVおよび冷却エリアCAにおけるプッシャー装置PD、クッション装置(図略)の作動を制御する。
【0057】
(作動)
次に、上記のように構成された注湯ライン用載置台送り装置1の作動について以下に説明する。
図1に示すように、搬送路2上には、鋳型Mが載置された複数の載置台6が一列に並べられている。載置台6に並べられた複数の鋳型Mのうち、搬送路2の下流側の幾らかは、トリベ71により溶湯を注入された鋳型Mが並んでいる。
【0058】
搬送路2の下流端に離接する搬出位置COPは、下流側のトラバーサTVで冷却エリアCAに載置台6が搬出され、空いたスペースとなっている。搬送路2の上流端に隣接する搬入位置CIPには、上流側のトラバーサTVによって、造型ラインMLで造型された新たな鋳型Mが、載置台6に載置されて位置決めされている。
【0059】
移動体3は、上流側に移動されて位置決めされている。移動体3の複数の係合部31は、載置台6の被係合部61に係合していない離脱した状態で、夫々保たれている。
各載置台6は、停止状態維持装置5によって、各々所定の位置に位置決めされている。所定の位置は、隣接する載置台6の間に例えば10mmの間隔の所定の隙間tを設けて位置決めされている。
停止状態維持装置5は、載置台6に設けられた被係止部64の突出部64aが、コイルばね517を押圧することで上流側に配置された車515の頂点を通過し、搬送路2に設けられた係止部51の二つの車515の間に嵌まり込む。
【0060】
このようにコイルばね517を利用して停止状態を維持する構造であるため、特別な動力を必要とすることなく、安価かつ確実な方法で実施することができる。
【0061】
次に、制御装置は、係合部駆動用電動モータ37を駆動させ、各移動体3a,3b,3cに搬送方向に沿って設けられた回転軸35を回転させ、係合部31の上流側支持壁31aおよび下流側支持壁31bを最上部の回転位相になる位置まで移動させる。移動体3a,3b,3cの各係合部31は、載置台6の被係合部61に係合する。原則的に載置台6の上流側(後方部)の被係合部61に係合する(
図6および
図7参照)。
【0062】
ただし、搬入位置CIPに位置決めされた載置台6は、下流側(前方部)の被係合部61が、上流側小移動体3aの回転軸35の上流側端部に特別に付加された係合部31に係合している(
図4および
図5参照)。そして、搬入位置CIPに位置決めされる際に、上流端の載置台6との間で必要とされた隙間(所定の隙間t)が維持されたままで、搬入位置CIPの載置台6は位置決めされている。
【0063】
次に、制御装置は、移動体駆動用電動モータ42を駆動させ、移動体駆動用電動モータ42の出力軸に連結されたピニオン43を回転させる。ピニオン43の回転は、中央部小移動体3bの下面に搬送方向に延在して設けられたラック41によって直線運動に変換され、移動体3を1ピッチ下流側へ移動させる。移動体3は、係合した複数の載置台6を同時に1ピッチ下流側へ移動させる。隣接する載置台6の間は、移動体3の各係合部31によって所定の隙間が維持された状態で移動される。ただし、この実施形態における1ピッチは、載置台6の搬送方向に沿った長さに加えて所定の隙間10mmを加えた長さをいうものとする。
【0064】
この載置台6の移動の際、停止状態維持装置5において、載置台6に設けられた被係止部64の突出部64aが、コイルばね517を押圧することで下流側に配置された車515の頂点を通過する。これによって、載置台6の被係止部64は、搬送路2に設けられた係止部51から離脱する。
【0065】
このようにして、隣接する載置台6の間で衝突を生じさせることなく、安全かつ迅速に鋳型M(特に注湯され溶湯が凝固していない鋳型)を搬送することができる。
1ピッチ下流側へ移動した複数の載置台6は、夫々停止状態維持装置5によって、各々所定の位置(1ピッチ下流側の停止状態維持装置5)に位置決めされる。
【0066】
次に、制御装置は、係合部駆動用電動モータ37を駆動させ、各移動体3a,3b,3cの回転軸35を回転させ、係合部31の上流側支持壁31aおよび下流側支持壁31bを最上部の回転位相より下方となる位置(例えば180度回転させて回転位相が最下部となる位置)まで移動させる。
【0067】
このように上流側支持壁31aおよび下流側支持壁31bが移動することによって、被係合部61に対して係合部31は離脱する。
制御装置は、移動体駆動用電動モータ42を駆動させて、移動体3を上流側へ1ピッチ移動させ、次の搬送準備を行う。
【0068】
上記の記載で明らかなように、第一実施形態における注湯ライン用載置台送り装置1は、注湯ラインPLにおいて鋳型Mを夫々載置した複数の載置台6を搬送方向に沿って一列に並べて搬送する搬送路2と、搬送路2の下方において搬送路2に並設され搬送路2に沿って移動する移動体3と、を備えている。
また、移動体3を搬送路2に沿って往復動することで、載置台6を載置台6の搬送方向の長さである1ピッチずつ搬送路2に沿って移動させる移動体駆動装置4を備えている。
【0069】
また、各載置台6に夫々設けられた被係合部61と、移動体3に設けられ、搬送路2上において、隣接する載置台6が相互に所定の隙間を設けて配されるように被係合部61に係合する複数の係合部31と、を備えている。
さらに、複数の係合部31を被係合部61に対し、移動体3が往復動する際の往路において係合させ、移動体3が往復動する際の復路において離脱させる係脱装置(35,37,37a,37b,38)を、備えている。
【0070】
これによると、各載置台6は、停止時および搬送時において、低速搬送領域を設けなくとも、隣接する載置台6が干渉したり相互に衝突したりすることがなく、迅速かつ確実に注湯作業および注湯された鋳型Mの搬送を行うことができる。
【0071】
また、被係合部61は、各載置台6の下面の搬送方向における前方端部または各載置台6の下面の後方端部に設けられている。
これによると、被係合部を各載置台の下面に設けることで、注湯作業時に飛散する湯玉を載置台の上面で受け、各載置台の下面の被係合部の係合機能に影響を与えるのを防止することができる。
【0072】
また、係合部31および被係合部61は、載置台6と載置台6に載置される鋳型Mとが合成する重心Gを含む搬送方向および垂直方向に延在する平面VP上に配置されている(
図15参照)。
これによると、係合部31から被係合部61に生じる力が、載置台6および鋳型Mに回転方向の加速度を与えることがない。溶湯が凝固前の注湯済み鋳型Mをより安定させて搬送することができる。
【0073】
また、移動体3は、搬送方向に沿って相互に連結された複数の小移動体3a,3b,3cにより構成され、小移動体3a,3b,3cは、夫々係合部31を備えるとともに、複数の小移動体3a,3b,3cは、一つの移動体駆動装置4により駆動される。
【0074】
これによると、搬送方向に延在する移動体を、複数の小移動体に分割し、夫々を接続している。このようにすることで、例えば、搬送時に生じる移動体の振動を全体に及ぼすことなく、各小移動体の中で収めることができ、より安全な搬送作業を行うことができる。移動体の製作について、大きな設備を必要とすることなく、小さな移動体3a,3b,3cということでコンパクトな設備で製作できる。
【0075】
移動体3a,3b,3cの搬送においても、コンパクトな運搬装置を使って、容易に運搬することができる。設備のレイアウトに合わせた小移動体3a,3b,3cを組み合わせることができ、設備設計上の柔軟性を持たせることができる。
また、複数の小移動体3a,3b,3cは、一つの移動体駆動装置4により駆動されるので、設備コストの大幅な削減を図ることができる。
【0076】
また、複数の小移動体3a,3b,3cは、隣接する小移動体3a,3b,3cが球面軸受342を介して夫々接続されている。
これによると、隣接する小移動体3a,3b,3c間に生じる変位を球面軸受342で吸収して、各載置台6に各係合部31を正しく対向させることができる。
【0077】
各載置台6による搬送が停止した際に、各載置台6の停止状態を維持する停止状態維持装置5をさらに備える。
これによると、鋳型Mを載置した載置台6の搬送が停止した際に、各載置台6の停止状態が維持されるので、係合部31から被係合部61が離脱された場合にも、各載置台6は相互に一定の相対位置で保持される。そのため、復路で移動した移動体3の係合部31による載置台6の被係合部61への係合を容易におこなうことができる。
【0078】
また、停止状態維持装置5は、載置台6の側面に設けられ搬送方向に交差する方向に突出する棒状の突出部64aを備えた被係止部64と、搬送路2の上部に設けられ被係止部64に係脱可能に設けられる係止部51と、を備えている。
【0079】
また、係止部51は、載置台6の搬送に伴って突出部64aが一方の搬送方向へ移動する際に傾斜面の裾野から頂部に向かって上下方向の相対変位を突出部64aとの間に生じさせる上り傾斜面部515u(上流側の車515の上流側の外側外周面)と、突出部64aが前記一方の搬送方向へさらに移動する際に傾斜面の頂部から裾野に向かって上下方向の相対変位を突出部64aとの間に生じさせる下り傾斜面部515d(下流側の車515の下流側の外側外周面)と、を備えている(
図17参照)。
【0080】
また、上り傾斜面部515u(上流側の車515の上流側の外側外周面)と下り傾斜面部515d(下流側の車515の下流側の外側外周面)との間に連続して谷状に設けられ、突出部64aの下面に、垂直よりも傾斜した方向から当接する二つの対向した保持面515h(上流側の車515の下流側の内側外周面、下流側の車の上流側の内側外周面)を有する保持部518と、上り傾斜面部515u、下り傾斜面部515dおよび保持部518を、突出部64aに向かって上方向に付勢する付勢部(コイルばね514)と、を備える。
【0081】
これによると、載置台6に設けられた被係止部64の突出部64aは、まず、上り傾斜面に接触してアーム514の長尺側を下方に押し下げながら付勢力に抗して頂部まで移動する。次に、突出部64aが頂部を乗り越えると、付勢力でアーム514の長尺側が押しあがり、突出部64aは、二つの車515の間にある谷状の保持部518に嵌まり込み二つの保持面515hに接触して保持される。この状態で載置台6の停止状態が維持される。停止状態の解放は、突出部64aが付勢力に抗しながら保持部518から下り傾斜面部515dの頂部を乗り越えることで、行われる。
このように、停止状態を維持するのは、二つの傾斜面部515u,515dを利用したコイルばね517の付勢力であり、特別な動力を使用しないため、大幅な設備コストの低減を図ることができる。
【0082】
また、被係合部61は、搬送方向に対して直角な方向に延在する平板状部材であり、係合部31は、被係合部61の搬送方向の移動を搬送方向の上流側より規制する上流側支持壁31aと搬送方向の下流側より規制する下流側支持壁31bとを備えている。
これによると、被係合部61は、平板状部材であり、簡素な形状で係合部31の上流側支持壁31aおよび下流側支持壁31bと容易に係合することができ、また、容易に離脱することができる。
【0083】
係脱装置(回転軸35、係合部駆動用電動モータ37、駆動スプロケット37a、従動スプロケット37bおよびローラチェーン38)は、搬送方向に延在し上流側支持壁31aおよび下流側支持壁31bを連動して回転させる回転軸35を備え、回転軸35を回転させることで上流側支持壁31aおよび下流側支持壁31bを被係合部61に対して係合あるいは離脱するように進退させる。
【0084】
これによると、搬送方向に延在する回転軸35で、上流側支持壁31aおよび下流側支持壁31bを操作して係合あるいは離脱することができるので、コンパクトな機構の係脱装置を実現することができる。
【0085】
また、移動体3における複数の係合部31は、係脱装置における一つの回転軸35によって駆動する。
これによると、複数の被係合部61に対する複数の係合部31の係脱を、簡素な機構で容易に同期させて行うことができる。
【0086】
(第二実施形態)
第二実施形態の注湯ライン用載置台送り装置101は、
図18に示すように、移動体3に設けられる係合部の構造が、第一実施形態のものと相違する。
その他の構成同様であるため、説明を省略する。
【0087】
以下、主に相違点について説明する。
第二実施形態の係合部131は、垂直方向に延在する筒状のガイド131a、被係合部61を搬送方向の上流側および下流側から挟持して支持する二つのローラ131b,131c、二つのローラ131b,131cを上端に設けた係合棒132、係合棒132に沿って垂直に設けられたラック部材133(
図23参照)、ラック部材133に噛合するピニオン部材134、ピニオン部材134を回転させる進退用回転軸135、および進退用電動モータ137を備えている。
【0088】
ガイド131aは、各小移動体3a,3b,3cに夫々上下に貫通した状態で固定されて、複数個所に設けられている。隣り合うガイド131aの間隔は、第一実施形態の係合部31の配置位置と同様に、複数の載置台6の被係合部61を配置する間隔に対応して設定されている。ガイド131aには、円柱状の係合棒132が摺動可能に嵌挿される。
【0089】
二つのローラ131b,131cは、係合棒132の上端に設けられた上方が開放したコ字状の軸受装置132aの先端に夫々設けられている。二つのローラ131b,131cは、回転軸心が搬送方向に直角に設けられ、二つのローラ131b,131cの外周は、相互に間隔を空けて設けられている。二つのローラ131b,131cの外周の間隔は、平板状の被係合部61の厚みより、大きなガタが生じない程度に少し広く設定されている。
【0090】
上流端の係合部138は、
図22に示すように、二組のローラ131b,131c(計四つ)を備えている。第一実施形態と同様に、搬入位置CIPに搬入された載置台6の前方側の被係合部61と搬送路2の上流端に位置決めされた載置台6の後方側の被係合部61とに同時に係合させるためである。組み合わせたローラ131b,131cのうち、重なるローラ131b,131cについては、
図20に示すように、斜めにずらして配置することで、隣接する載置台6の間に所定の隙間tを確保するようにしている。
【0091】
係合棒132の片側面には、垂直方向に延在するラック部材133が組み付けられている。ラック部材133には後述するピニオン部材134が噛合する。
各小移動体3a,3b,3cの中央部下面には、進退用電動モータ137が組み付けられている。進退用電動モータ137の出力軸には出力ギヤが嵌合され、出力ギヤには進退用回転軸135の入力ギヤが噛合されている。これにより進退用電動モータ137の回転トルクが、進退用回転軸135に伝達されるようになっている。進退用回転軸135は、各小移動体3a,3b,3cの搬送方向に延在し、一つの進退用回転軸135で伝えられる回転トルクにより複数の係合部131を駆動させる。
進退装置は、ガイド131a、係合棒132、ラック部材133、およびピニオン部材134により主に構成される。
【0092】
上記の記載で明らかなように、第二実施形態の注湯ライン用載置台送り装置101は、以下の特徴を有している。
複数の被係合部61は、搬送方向に対して直角な方向に延在する平板状部材であり、複数の係合部131は、被係合部61を搬送方向の上流側および下流側から挟持して支持する二つのローラ131b,131cを備え、係脱装置(進退用回転軸135、および進退用電動モータ137)は、ローラ131b,131cを被係合部61に向かって直線上に進退させる進退装置(ガイド131a、係合棒132、ラック部材133、ピニオン部材134)を備える。
【0093】
これによると、被係合部61を、二つのローラ131b,131cの回転軸間に挟持するので、被係合部61の搬送方向の配置位置に若干のずれが生じていた場合でも、容易に係合することができる。
【0094】
また、複数の進退装置(ガイド131a、係合棒132、ラック部材133、ピニオン部材134)は、搬送方向に延在する一つの進退用回転軸135によって進退する(
図223および
図24参照)。
これによると、複数の被係合部61に対する複数の係合部131の係脱を、容易に同期させて行うことができる。
【0095】
なお、本実施形態において、載置台6を、レール24上を走行する搬送台車としたが、これに限定されない。例えばローラコンベア上を走行するパレットでもよい。
【0096】
本発明は、上記しかつ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0097】
1,101:注湯ライン用載置台送り装置、2:搬送路、3:移動体、3a:上流側小移動体、3b:中央部小移動体、3c:下流側小移動体、31:係合部、34:接続装置、342:球面軸受、35:回転軸、37:係合部駆動用電動モータ(係脱装置)、37a:駆動スプロケット(係脱装置)、37b:従動スプロケット(係脱装置)、38:ローラチェーン(係脱装置)、4:移動体駆動装置、5:停止状態維持装置、51:係止部、515:車、515u:上り傾斜面部、515d:下り傾斜面部、515h:保持面、517:コイルばね(付勢部)、518:保持部、6:載置台、61:被係合部、64:被係止部、64a:突出部、131:係合部、131a:ガイド(進退装置)、132:係合棒、133:ラック部材、134:ピニオン部材、135:進退用回転軸、137:進退用電動モータ、M:鋳型、PL:注湯ライン。