(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】マッサージシステム
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
A61H7/00
(21)【出願番号】P 2021011543
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2023-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000112406
【氏名又は名称】ファミリーイナダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】稲田 二千武
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-137317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームを有し、前記ロボットアームによるマッサージをユーザに施すマッサージ施設用のマッサージシステムであって、
プログラムに従うマッサージ動作を前記ロボットアームに行わせる制御部と、
前記制御部からの制御信号に応じてロボットアームを移動させる移動装置と、
オペレータから、前記マッサージ動作に用いる設定位置の設定操作を受け付ける設定部と、を備え、
前記制御部は、前記ロボットアームに、前記設定位置に基づく施療位置に対する前記マッサージ動作を行わせ
、
前記オペレータが前記ロボットアームをガイドすることによって前記設定位置を識別可能に構成され、
前記移動装置は、前記ロボットアームの移動を禁止または解除するロック手段を備え、
前記ロボットアームは、前記設定位置の設定時に、前記ガイドが可能な設定モードと、前記ガイドを前記ロック手段でロックしたマッサージモードと、を切り替え可能に構成されているマッサージシステム。
【請求項2】
前記設定位置は、前記ユーザの体格に応じた基準位置を含む
請求項1に記載のマッサージシステム。
【請求項3】
前記設定位置は、前記マッサージ動作の調整を指定する特定位置を含む
請求項1又は2に記載のマッサージシステム。
【請求項4】
前記設定位置は、前記ユーザの体格に応じた基準位置と、前記マッサージ動作の調整を指定する特定位置と、を含み、
前記設定部は、前記基準位置と前記特定位置とを区別して設定可能に構成されている
請求項1に記載のマッサージシステム。
【請求項5】
前記設定部は、前記ガイド中に操作可能な位置に配置された、前記ロボットアームの位置が前記設定位置であることを決定させるための操作部を含む
請求項
1~4のいずれか一項に記載のマッサージシステム。
【請求項6】
マーカを読み取る読取装置をさらに備え、
前記制御部は、前記読取装置が、前記ユーザの身体の前記設定位置に対応した位置に設置された前記マーカを読み取ることによって、前記設定位置を認識可能に構成されている
請求項1~
5のいずれか一項に記載のマッサージシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マッサージシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
被施療者に物理的な刺激を与える行為であるマッサージは、従来、マッサージ師などと呼ばれる施療者によって行われるものである。そのため、施療者によってマッサージ技術がばらついたり、負担があったりする場合がある。
【0003】
この点、特許第6733973号公報(以下、特許文献1)などでは、ロボットハンドを有するボットボディケアシステムを利用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
特許文献1で提案されているようなマッサージ装置(ボディケア機器)は、施療台とは別個の装置で、施療台に対してセットされて用いられる。つまり、施療台に就いた被施療者に対するマッサージ装置の位置が固定されていない。そのため、被施療者に対するマッサージ装置の位置が予め設定された施療位置とは異なる場合、マッサージ装置がプログラム通りのマッサージ動作を行っていても被施療者に対して予定されたマッサージ効果を与えられない場合がある。そこで、被施療者の施療位置に適切に設置することができるマッサージシステムが望まれる。
【0006】
ある実施の形態に従うと、マッサージシステムは、ロボットアームを有し、ロボットアームによるマッサージをユーザに施すマッサージ施設用のマッサージシステムであって、プログラムに従うマッサージ動作をロボットアームに行わせる制御部と、オペレータから、マッサージ動作に用いる設定位置の設定操作を受け付ける設定部と、を備え、制御部は、ロボットアームに、設定位置に基づく施療位置に対するマッサージ動作を行わせる。更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るマッサージシステム、及び、その用いられ方の概要を表した概略図である。
【
図2】
図2は、マッサージシステムに含まれるマッサージ装置の構成、及び、マッサージ装置のロボットアームを利用した設定位置の設定操作を説明する図である。
【
図3】
図3は、マッサージシステムに含まれる演算装置の構成を表した概略ブロック図である。
【
図4】
図4は、マッサージシステムを用いての、ユーザに対するマッサージの施療の流れを説明する図である。
【
図5】
図5は、マッサージ装置のロボットアームを利用した設定位置の設定操作の他の例を説明する図である。
【
図6】
図6は、演算装置で用いられる学習モデルの機械学習の方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<1.マッサージシステムの概要>
【0009】
(1)ある実施の形態に従うマッサージシステムは、ロボットアームを有し、ロボットアームによるマッサージをユーザに施すマッサージ施設用のマッサージシステムであって、プログラムに従うマッサージ動作をロボットアームに行わせる制御部と、オペレータから、マッサージ動作に用いる設定位置の設定操作を受け付ける設定部と、を備え、制御部は、ロボットアームに、設定位置に基づく施療位置に対するマッサージ動作を行わせる。
【0010】
マッサージ施設は、施療者によってユーザにマッサージを施すことが可能な施設である。マッサージ施設は、例えば、マッサージ店、鍼灸院、エステ、接骨院などである。施療者は、ユーザにマッサージを施す者であり、例えばマッサージ師又はエステティシャン、整体師や柔道整復師である。
【0011】
設定位置は、例えば、被施療者以外の者によって設定操作が行われる。被施療者以外の者は、例えば、マッサージ師などである施療者又はマッサージ施設のスタッフである。
【0012】
設定位置は、ロボットアームを有するマッサージ装置でのマッサージ動作に用いる位置であって、例えば、ユーザの体格に応じた基準位置を含むことができる。また、設定位置は、マッサージ動作の調整を指定する位置としての特別位置を含むことができる。特別位置は、例えば、凝りの強い箇所などの重点施療位置、マッサージを所望しない箇所などの禁忌施療位置などを指す。
【0013】
マッサージシステムでは、ロボットアームにより、オペレータの設定操作によって設定された、マッサージ動作に用いる設定位置より得られる施療位置に対するマッサージ動作が行われるようになる。つまり、ロボットアームの位置を、被施療者の施療位置に適切に設置することができる。これにより、ユーザに適した施療位置に対してマッサージを施すことができる。
【0014】
(2)好ましくは、設定位置は、ユーザの体格に応じた基準位置を含む。基準位置は、ユーザの体格に応じた位置であって、例えば、肩位置、腰位置、ツボ位置などである。これらが設定されることで、ユーザの体格が識別され、適切な施療位置に対するマッサージ動作が行われるようになる。
【0015】
(3)好ましくは、設定位置は、マッサージ動作の調整を指定する特定位置を含む。マッサージ動作の調整は、例えば、マッサージの強度及び内容の少なくとも一方の調整を含む。マッサージの内容は、例えば、マッサージ位置や、マッサージ動作の対応する手技、などを含んでもよい。特別位置は、例えば、凝りの強い箇所などの重点施療位置、マッサージを所望しない箇所などの禁忌施療位置などを含む。これにより、ユーザに適したマッサージや、ユーザの所望するマッサージを施すことができる。
【0016】
(4)好ましくは、設定位置は、ユーザの体格に応じた基準位置と、マッサージ動作の調整を指定する特定位置と、を含み、設定部は、基準位置と特定位置とを区別して設定可能に構成されている。これにより、基準位置と特定位置との両方を設定可能である。
【0017】
(5)好ましくは、制御部は、オペレータがロボットアームをガイドすることによって設定位置を識別可能に構成されている。これにより、オペレータはロボットアームを利用して設定位置の設定操作を行うことができる。
【0018】
(6)好ましくは、ロボットアームは、設定位置の設定時に、ガイドが可能な設定モードとなるよう構成されている。設定モードは、例えば、ロボットアームが人の手によって位置を移動させることができる状態であって、一例として、移動を制限するロックが解除された状態である。これにより、オペレータはロボットアームを利用して設定位置の設定操作を行うことができる。
【0019】
(7)好ましくは、設定部は、ガイド中に操作可能な位置に配置された、ロボットアームの位置が設定位置であることを決定させるための操作部を含む。操作部は、例えば、ボタンなどのオペレータの接触が必要なものである。設定部がガイド中に操作可能な位置に配置されていることで、ガイド中のオペレータが操作しやすい。
【0020】
(8)好ましくは、マッサージシステムは、マーカを読み取る読取装置をさらに備え、制御部は、読取装置が、ユーザの身体の設定位置に対応した位置に設置されたマーカを読み取ることによって、設定位置を認識可能に構成されている。読取装置は、例えばカメラである。読取装置にマーカを読み取らせることで設定位置を設定することができる。
【0021】
<2.マッサージシステムの例>
【0022】
図1を参照して、本実施の形態に係るマッサージシステム(以下、システム)100は、ロボットアーム10を有するマッサージ装置1を含み、ロボットアーム10によるマッサージをユーザ(被施療者)PT1に施すシステムである。
【0023】
本システム100は、マッサージ施設で用いられることが想定された、マッサージ施設用のマッサージシステムである。マッサージ施設は、施療者PT2によってユーザPT1にマッサージを施すことが可能な施設である。マッサージ施設は、例えば、マッサージ店、鍼灸院、エステ、接骨院などである。施療者PT2は、ユーザにマッサージを施す者であり、例えば、マッサージ師又はエステティシャン、整体師や柔道整復師である。
【0024】
システム100は、ユーザPT1に対して、マッサージ装置1を用いた第1のマッサージを行い(ステップS1)、その後、施療者PT2による第2のマッサージを施す(ステップS2)ように用いられる。ユーザPT1に対するマッサージは、第1のマッサージに続く第2のマッサージで終了してもよいし、第2のマッサージの後、さらに、第1のマッサージが行われてもよい。
【0025】
第1のマッサージは、マッサージ装置1によって自動で行われる自動マッサージである。第2のマッサージは、第1のマッサージの後に行われる、施療者PT2による手動マッサージである。言い換えると、第2のマッサージは、第1のマッサージの仕上げマッサージであり、第1のマッサージは仕上げ前マッサージである。以降の例では、第1のマッサージをマッサージ装置1による仕上げ前マッサージとし、第2のマッサージを施療者PT2による仕上げマッサージとする。
【0026】
マッサージ装置1は後述する移動機能を有することで施療台に対して移動可能である。ユーザPT1にマッサージを施す際、マッサージ装置1を、ユーザPT1の乗った施療台に移動させてセットする。
【0027】
施療台は、マッサージを受けるユーザPT1が乗る台であって、例えば、ベッド型、マット型、又は、施療用椅子型のうちのいずれであってもよい。施療台に乗ることは、施療台がベッド又はマットの場合にはベッド又はマットに平臥すること、施療台が施療用椅子の場合には施療用椅子に座ること、を指す。以降の説明では、施療台をベッドとし、ユーザPT1は施療を受ける際にベッドに平臥するものとする。なお、平臥することは、うつ伏せになることと、仰向けになることとの両方を含み得、どちらであってもよい。以降の説明では、うつ伏せになることを指す。
【0028】
図1の例では、被施療者であるユーザPT1は、第1のマッサージ室R1に設置されたベッド21に平臥する。ステップS1で、マッサージ装置1がベッド21にセットされ、ユーザPT1に対して仕上げ前マッサージが施療される。その後、
図1の例では、ユーザPT1は第2のマッサージ室R2に移動してベッド22に平臥する。他の例として、ユーザPT1は第1のマッサージ室R1にとどまり、施療者PT2が仕上げマッサージを施すために第1のマッサージ室R1に入室してもよい。このとき、マッサージ装置1は、図示しない他のマッサージ室に移動されて用いられてもよいし、第1のマッサージ室R1において他のユーザに対して用いられてもよい。ステップS2で、ユーザPT1に対しては、第2のマッサージ室R2において施療者PT2による仕上げマッサージが施療される。
【0029】
システム100は、演算装置3を有する。演算装置3はマッサージ装置1に有線又は無線で接続されて、ロボットアーム10に、プログラムに従うマッサージ動作を行わせる制御部として機能する。演算装置3は、
図1の例では、マッサージ装置1とは異なる装置である。他の例として、演算装置3は、マッサージ装置1に内蔵されていてもよい。
【0030】
演算装置3は、インターネットなどのネットワーク7を介して他の装置と通信可能である。一例として、演算装置3は、サーバ5にアクセス可能である。なお、サーバ5が演算装置3に搭載されている記憶装置である場合、演算装置3は、他の装置と通信可能でなくてもよい。
【0031】
サーバ5には、他の装置がアクセス可能であってもよい。
図1の例の場合、端末装置9がアクセス可能である。端末装置9は、一例として、施療者PT2の携帯する端末装置であって、具体的には、スマートフォンやタブレット端末などである。
【0032】
マッサージ装置1は、一例として、ベッド21に平臥したユーザPT1にマッサージを施療可能に、ベッド21近傍に設置される。
図2は、ベッド21にマッサージ装置1を配置した状態の概略図であって、ベッド21の上面から見下ろした図である。
【0033】
図2を参照して、マッサージ装置1は、ロボットアーム10を有する。ロボットアーム10は、1本以上のロボットアームからなる。一例として、ロボットアーム10は、左右一組のロボットアーム10L,10Rを含む。ロボットアーム10L,10Rを代表させてロボットアーム10と称する。ロボットアーム10は、他の例として、3本以上のロボットアームから構成されてもよい。また、ロボットアーム10は、他の例として、1本のみであってもよい。
【0034】
ロボットアーム10は、移動装置12に接続されている。一例として、ロボットアーム10の基端が移動装置12に接続されている。移動装置12は、ロボットアーム10を、ベッド21に対して移動させるように構成されている。
【0035】
ロボットアーム10のベッド21に対する移動は、ベッド21の近傍までロボットアーム10を移動させてくることを含む。この移動のために、移動装置12は、一例として、床面に対する位置に設けられた図示しないキャスターを含む。キャスターは、演算装置3からの制御信号に従って回転してもよいし、施療者PT2などのオペレータの手動により回転してもよい。これにより、ベッド21から離れた位置よりベッド21近傍にロボットアーム10を移動させることができる。
【0036】
ロボットアーム10のベッド21に対する移動は、ベッド21の長手方向に移動させることを含む。この移動のために、移動装置12は、一例として、ベッド21の長手方向に平行に設置されたレール11に沿って移動可能に構成されている。レール11のベッド21に対する位置関係は予め規定され、演算装置3に記憶されているものとする。
【0037】
移動装置12は、演算装置3からの制御信号に従う向き、移動量、及び、移動速度でレール11に沿ってロボットアーム10を移動させる。これにより、移動装置12に接続されたロボットアーム10を、ベッド21の長手方向に移動させることができる。
【0038】
ロボットアーム10は、施療部を有する。ロボットアーム10は、多方向に回転可能な1以上のジョイント17を有する。多方向への回転は、1軸回転のジョイントが複数組み合わされることで実現されてもよいし、それぞれ多方向に回転可能な1以上のジョイントによって実現されてもよい。また、ジョイント17はボールジョイントでもよい。
図2の例では、ロボットアーム10は、多方向に回転可能な1つのジョイント17を有する。ジョイント17は、演算装置3からの制御信号に従う回転方向、回転量、及び、回転速度で回転する。
【0039】
ジョイント17が演算装置3からの制御信号に従う回転方向、回転量、及び、回転速度で回転することによって、施療部のロボットアーム10の基端に対する位置が変化する。ここでの位置は、ベッド21に平行な面上の位置、及び、高さ方向の位置を含む。
【0040】
施療部は、一例として、マッサージハンド10aであって、ロボットアーム10の先端に設けられている。マッサージハンド10aは駆動機構(図示せず)を有し、ロボットアーム10によって保持された位置において、演算装置3からの制御信号に従って駆動する。これにより、マッサージハンド10aはユーザPT1の施療位置に所定の圧力で接して動作し、物理的な刺激を与える。マッサージハンド10aの動作は、一例として、揉みや叩き動作を含む。
【0041】
演算装置3からの制御信号に従って、ロボットアーム10がベッド21の長手方向に移動し、ジョイント17が回転することで、ロボットアーム10の先端に設置されたマッサージハンド10aが、演算装置3からの制御信号に従う位置に移動する。これにより、マッサージハンド10aが、ユーザPT1の施療位置に対してマッサージ動作を行うことができる。
【0042】
演算装置3は、ロボットアーム10のジョイント17から、回転方向、回転量、及び、回転速度を示す信号を受け付ける。また、演算装置3は、マッサージハンド10aの図示しない駆動機構から駆動状況を示す信号を受け付ける。また、演算装置3は、移動装置12から、移動の向き、移動量、及び、移動速度を示す信号を受け付ける。
【0043】
演算装置3は、移動装置12からの信号、及び、ロボットアーム10のジョイント17からの信号に基づいて、マッサージハンド10aの位置を識別可能に構成されている。すなわち、演算装置3は、移動装置12からの信号に基づいてロボットアーム10の基端の、ベッド21に対する位置を識別し、ジョイント17から信号に基づいてマッサージハンド10aのロボットアーム10の基端に対する位置を識別する。これにより、演算装置3は、マッサージハンド10aのベッド21に対する位置を識別可能である。
【0044】
マッサージハンド10aは、図示しないセンサを含み、センサ信号を演算装置3に入力してもよい。センサは、一例として圧力センサである。圧力センサは、ユーザPT1の施療位置から受ける圧力を検出し、検出結果を示す信号を演算装置3に入力する。また、センサは、他の例として回転センサである。回転センサは、マッサージハンド10aの揉み動作や叩き動作に必要なモータの回転トルクや回転速度などを検出し、検出結果を示す信号を演算装置3に入力する。
【0045】
センサは、マッサージハンド10aによる施療の反力を検出しており、具体的には、施療部位の硬さ(つまり、こり具合)に応じて変化する施療の反力を検出している。そのため、センサ信号の示す情報は、マッサージハンド10aによる施療効果を示す情報と言える。
【0046】
マッサージ装置1は、マッサージ動作を行う動作モード(以下、マッサージモードとも称する)と、ユーザPT1に対する位置の設定を行う動作モード(以下、設定モードとも称する)と、の2つの動作モードを有する。
【0047】
マッサージモードにおいて、演算装置3は、マッサージ動作プログラム321(
図3)に従って、マッサージハンド10aを施療位置とするために、移動装置12及びロボットアーム10のジョイント17の駆動を制御する。これにより、マッサージハンド10aを、ユーザPT1に対してマッサージに適した位置に移動させることができる。
【0048】
設定モードにおいて、演算装置3は、移動装置12及びロボットアーム10のジョイント17の駆動を制御しない。そのため、施療者PT2などのオペレータのガイドによってロボットアーム10やマッサージハンド10aが移動可能となる。オペレータのガイドは、ロボットアーム10やマッサージハンド10aをオペレータの手で移動方向に押す、ロボットアーム10のジョイント17を回転させる、などである。
【0049】
設定モードにおいて、演算装置3は、移動装置12からの信号、及び、ロボットアーム10のジョイント17からの信号に基づいて、マッサージハンド10aのベッド21に対する位置を識別する。これにより、オペレータのガイドによって移動されたマッサージハンド10aのベッド21に対する位置が識別される。
【0050】
好ましくは、移動装置12は、ロック部12aを含む。ロック部12aは、移動装置12を、オペレータのガイドが可能な状態と不可な状態とを切り替えるための機構である。一例として、レール11に沿う移動を阻止(ロックオン)、又は、阻止を解除(ロックオフ)するロック機構である。具体的には、ロック部12aは、マッサージモードにおいてはロックオンとなり、設定モードにおいてはロックオフとなる。ロックオンは、物理的に移動を阻止することであってもよいし、ガイドによって移動された移動装置12を演算装置3によって移動前の位置に復帰させることであってもよい。
【0051】
また、ロボットアーム10のジョイント17にも、同様のロック部17aが含まれていてもよい。ロック部17aはジョイント17の回転をオペレータのガイドによって回転可能な状態と不可な状態と切り替えるための機構である。
【0052】
ロック部12a,17aは、一例として、演算装置3からの制御信号に従って、ロックオンとロックオフとが切り替えられる。ロックオンとロックオフとの切替は、後述する操作部に対するオペレータの操作によってなされてもよい。これにより、マッサージモードのときには誤って手などが当たってもロボットアーム10が移動することなく、マッサージ動作が継続される。
【0053】
マッサージ装置1は、オペレータによる操作を受け付ける操作部の一例として、タッチパネル13を有する。オペレータによる操作は、後述の設定位置の設定操作を含む。
【0054】
タッチパネル13は、オペレータにより操作しやすい位置に配置されており、一例として、ロボットアーム10の付け根部分に配置されている。これにより、ベッド21の近傍にいるオペレータから操作しやすくなる。
【0055】
タッチパネル13は、ユーザ操作に従う操作信号を演算装置3に入力する。演算装置3は、操作信号に従う処理を実行する。タッチパネル13に対するユーザ操作は、一例として、マッサージコースの選択結果を指定する操作である。この場合、演算装置3は、操作信号に示された、選択されたマッサージコースに対応したプログラムに従う処理を実行する。これにより、マッサージコースが選択され、選択されたマッサージコースに従う仕上げ前マッサージがユーザPT1に施される。
【0056】
好ましくは、マッサージ装置1は、オペレータによる操作を受け付ける操作部の一例として、設定ボタン13A,13Bを有する。設定ボタン13A,13Bは、それぞれ、後述する基準位置であることを指示するボタン、及び、後述する特別位置であることを指示するボタンである。
【0057】
設定ボタン13A,13Bは、オペレータがロボットアーム10のガイド中に操作可能な位置に配置されている。一例として、
図2のA部分の拡大図に表されたように、ロボットアーム10Rのマッサージハンド10a付近に配置されている。これにより、基準位置や特別位置を設定するためにマッサージハンド10aに手を添えた状態でロボットアーム10をガイド中のオペレータが操作しやすくなる。なお、設定ボタン13A,13Bは、他の例として、他方のロボットアーム10Lに設けられていてもよいし、ロボットアーム10R及びロボットアーム10Lのそれぞれに設けられていてもよい。
【0058】
設定ボタン13A,13Bは、オペレータなどによる操作に従う操作信号を演算装置3に入力する。演算装置3は、操作信号に従う処理を実行する。設定ボタン13A,13Bに対するユーザ操作は、後述する、設定位置の設定操作である。この場合、演算装置3は、操作信号を用いて、後述する識別処理を実行する。
【0059】
マッサージ装置1は、マイク14を有する。マイク14は、ベッド21に横になった状態のユーザPT1の発話による音声の入力を受け付けて、音声データを演算装置3に渡す。そのため、マイク14は、ベッド21にうつ伏せの状態のユーザPT1からの音声が入力可能な位置に配置される。
【0060】
マッサージ装置1は、スピーカ15を有する。スピーカ15は、演算装置3から渡された音声データに基づく音声を、演算装置3からの制御信号に従って出力する。スピーカ15は、ベッド21にうつ伏せの状態のユーザPT1に音声が届く位置に配置される。
【0061】
図3を参照して、演算装置3は、プロセッサ31とメモリ32とを有するコンピュータで構成される。プロセッサ31は、例えば、CPUである。メモリ32は、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、RAMなどを含む。または、メモリ32は、一次記憶装置であってもよいし、二次記憶装置であってもよい。
【0062】
メモリ32は、プロセッサ31で実行されるマッサージ動作プログラム321を記憶している。プロセッサ31は、マッサージ動作プログラム321を実行することによって、マッサージ装置1に仕上げ前マッサージを行わせるための演算処理(以下、演算処理と略する)を実行する。
【0063】
演算装置3は、ネットワーク7を介してサーバ5などの他の装置と通信可能な通信装置33を有する。なお、演算装置3がサーバ5を搭載している場合、演算装置3は、通信装置33を有しなくてもよい。
【0064】
プロセッサ31の実行する演算処理は、識別処理311を含む。識別処理311は、設定位置を識別する処理を含む。設定位置は、マッサージ装置1でのマッサージ動作に用いる位置であって、ユーザPT1の体格に応じた基準位置を含む。設定の方法については後述する。
【0065】
演算処理は、モード切替処理312を含む。モード切替処理312は、マッサージモードと設定モードとを切り替えることを含む。マッサージモードと設定モードとを切り替えることは、具体的には、プロセッサ31は、マッサージモードとするときに移動装置12のロック部12aをロックオンとし、設定モードにおいてはロックオフとする制御信号をロック部12aに出力する。
【0066】
演算処理は、動作制御処理313を含む。動作制御処理313は、マッサージ装置1にマッサージ動作を行わせるための処理を含む。プロセッサ31は、動作制御処理313において、例えばタッチパネル13からの操作信号などによって指定されたマッサージ動作を行わせるためのプログラムに従って、ロボットアーム10を移動させるための制御信号を移動装置12、及び、又は、ロボットアーム10のジョイント17に出力する。また、プロセッサ31は、動作制御処理313において、マッサージハンド10aを駆動させる制御信号を、図示しないマッサージハンド10aの駆動機構に出力する。
【0067】
演算処理は、連携処理314を含む。連携処理314は、マッサージ装置1による仕上げ前マッサージと、その後に行われる施療者PT2による仕上げマッサージとを連携させるための処理を指す。連携処理314は、情報生成処理315を含む。情報生成処理315は、施療者PT2へ提供するための提供情報を生成することを含む。
【0068】
提供情報は、仕上げ前マッサージの施療内容を示す情報を含む。仕上げ前マッサージの施療内容を示す情報は、例えば、選択されたマッサージコースを示す情報や、実際の動作時間を示す情報、などを含む。提供情報がこれらの仕上げ前マッサージの施療内容を示す情報を含むことによって、仕上げマッサージにおいて、施療者PT2は、仕上げ前マッサージの施療内容を踏まえて仕上げマッサージを行うことができる。
【0069】
提供情報は、仕上げ前マッサージによる施療効果を示す情報を含む。仕上げ前マッサージによる施療効果を示す情報は、例えば、マッサージ動作中に上記の圧力センサや回転センサなどのセンサによって得られた値や、マッサージ動作中にマイク14によって得られた音声データに基づく情報、などである。施療効果を示す情報は、具体的には、ユーザPT1の施療後の身体状態を示す情報であり、例えば、凝りが解消した部分、コリが残っている部分などである。提供情報に含まれるこれらの情報は、ユーザPT1の身体を模式的に示したマップで出力されてもよい。
【0070】
提供情報がこれらの仕上げ前マッサージによる施療効果を示す情報を含むことによって、仕上げマッサージにおいて、施療者PT2は、仕上げ前マッサージによる施療効果を踏まえて仕上げマッサージを行うことができる。なお、具体的な生成方法については後述する。
【0071】
連携処理314は、情報出力処理316を含む。情報出力処理316は、仕上げ前マッサージの施療後に提供情報を出力することを含む。出力先は、施療者PT2の携帯する端末装置9であってよい。これにより、施療者PT2に提供情報が提供される。
【0072】
出力先は、サーバ5であってもよい。この場合、プロセッサ31は、提供情報を通信装置33に渡し、サーバ5に送信させる。好ましくは、プロセッサ31は、提供情報をユーザPT1のユーザID(identification)などの識別情報に関連付けてサーバ5に送信させる。これにより、
図3に示されたように、サーバ5にユーザPT1のユーザIDと関連付けて提供情報を記憶させることができる。
【0073】
連携処理314は、音声出力処理317を含む。音声出力処理317は、仕上げ前マッサージの施療に関連する期間中に、ユーザPT1との対話用の音声をスピーカ15から出力させることを含む。プロセッサ31は、音声出力処理317と並行して情報生成処理315を実行し、マイク14からの音声データを用いて提供情報を生成する。すなわち、プロセッサ31は、仕上げ前マッサージの施療に関連する期間中に、ユーザPT1と対話することで得られた音声データより提供情報を生成する。
【0074】
仕上げ前マッサージの施療に関連する期間は、一例として、仕上げ前マッサージの施療中である。これにより、仕上げ前マッサージの施療中におけるユーザPT1との対話に基づいて提供情報が生成される。この場合、仕上げ前マッサージの効果などの音声データを得ることができる。
【0075】
仕上げ前マッサージの施療に関連する期間は、他の例として、仕上げ前マッサージの終了後であってもよい。これにより、仕上げ前マッサージの施療後におけるユーザPT1との対話に基づいて提供情報が生成される。この場合、仕上げ前マッサージの効果や、仕上げマッサージの希望などの音声データを得ることができる。
【0076】
仕上げ前マッサージの施療に関連する期間は、他の例として、仕上げ前マッサージの開始前であってもよい。これにより、仕上げ前マッサージの施療前におけるユーザPT1との対話に基づいて提供情報が生成される。この場合、仕上げ前マッサージへの期待や、仕上げマッサージの希望などの音声データを得ることができる。
【0077】
図4を用いて、本システム100を用いての、ユーザPT1に対するマッサージの施療の流れを説明する。
図4の処理は、ユーザPT1を
図1の第1のマッサージ室R1に案内してベッド21に平臥させると開始される。ベッド21には、予め、マッサージ装置1が配置されている。
【0078】
図4を参照して、マッサージ装置1の使用の開始にあたって、マッサージ装置1のユーザPT1に対する位置の設定が行われる。使用の開始は、例えば、オペレータが、タッチパネル13に表示されているスタートボタンを押す、などによって演算装置3に指示される。
【0079】
演算装置3のプロセッサ31は、動作モードを設定モードに切り替える(ステップS100)。ステップS100でプロセッサ31は、ロック部12a,17aに制御信号を出力し、ロックオフとする。
【0080】
設定モードでは、施療者PT2などのオペレータが、手などによってロボットアーム10をガイドして、設定位置を認識させる。
図2を用いて、一例として、基準位置P1,P2,P3を設定する場合について説明する。基準位置P1,P2,P3は、それぞれ、ユーザPT1の左肩、右肩、腰の中央の位置である。
【0081】
図2を参照して、オペレータは、基準位置P1にマッサージハンド10aが達する位置までロボットアーム10Rをベッド21の長手方向にガイドする。これにより、移動装置12は矢印Sの方向に移動する。オペレータは、マッサージハンド10aを基準位置P1とするユーザPT1の左肩に置き、その状態で、基準位置の設定を指示する設定ボタン13Aを押す。次に、オペレータは、マッサージハンド10aを基準位置P2とするユーザPT1の右肩に置き、その状態で、基準位置の設定を指示する設定ボタン13Aを押す。最後に、オペレータは、マッサージハンド10aを基準位置P3とするユーザPT1の腰の中央に置き、その状態で、基準位置の設定を指示する設定ボタン13Aを押す。
【0082】
演算装置3のプロセッサ31は、設定モードにおいて設定ボタン13Aの操作信号の入力を受け付けることによって識別処理311を実行し、その際のマッサージハンド10aの位置を、順に、基準位置P1,P2,P3と識別する。
【0083】
プロセッサ31は、予め規定された基準位置P1,P2,P3が識別されると、その位置に基づいてユーザPT1の体格を識別する(ステップS101)。詳しくは、
図2を参照して、プロセッサ31は、基準位置P1,P2の間隔WをユーザPT1の肩幅と識別する。また、プロセッサ31は、基準位置P1,P2の中点と基準位置P3との間隔HをユーザPT1の肩から腰までの長さと識別する。プロセッサ31は、マッサージに必要な体格に対する間隔W,Hを予め記憶しておき、得られた間隔W,Hを用いて、マッサージに必要なユーザPT1の体格を識別する。
【0084】
設定位置は、他の例として特別位置を含む。特別位置は、マッサージ動作の調整を指定する位置である。マッサージ動作の調整は、強度の調整、マッサージ内容の調整を含む。マッサージの内容は、例えば、マッサージ位置や、マッサージ動作の対応する手技、などを含んでもよい。特別位置は、具体的には、凝りの強い箇所などの重点施療位置、又は、マッサージを所望しない箇所などの禁忌施療位置である。これらは、オペレータが施療前にユーザPT1から聞き取るなどして把握し、位置の設定によってマッサージ装置1に設定する。
【0085】
特別位置P4を設定する場合、
図2を参照して、オペレータは、特別位置P4にマッサージハンド10aが達する位置までロボットアーム10Rをベッド21の長手方向にガイドする。これにより、移動装置12は矢印Sの方向に移動する。オペレータは、マッサージハンド10aを特別位置P4とするユーザPT1の部位に置き、その状態で、特別位置の設定を指示する設定ボタン13Bを押す。
【0086】
演算装置3のプロセッサ31は、設定モードにおいて設定ボタン13Bの操作信号の入力を受け付けることによって識別処理311を実行し、その際のマッサージハンド10aの位置を特別位置P4と識別する(ステップS103)。
【0087】
位置の設定は、上の方法に限定されない。他の例として、
図5のB部分の拡大図に表されたように、ロボットアーム10RのユーザPT1に向く側にカメラ13Cなどの読取装置を備え、ユーザPT1の上面に設置したマーカM1~M4を読み取るようにしてもよい。カメラ13Cもまた、他の例として、他方のロボットアーム10Lに設けられていてもよいし、ロボットアーム10R及びロボットアーム10Lのそれぞれに設けられていてもよい。この場合、基準位置P1,P2,P3を示すマーカM1,M2,M3をそれぞれユーザPT1の左肩、右肩,腰の中央に設置することで、プロセッサ31にユーザPT1の体格を識別させることができる。また、特別位置P4を示すマーカM4を特別位置P4とする位置に設置することで、プロセッサ31に特別位置P4を識別させることができる。
【0088】
なお、この例では、2本のロボットアーム10R,10Lのうちの1本のロボットアーム10Rを用いて位置の設定を行うものとしている。この場合、1本のロボットアーム10を用いて設定された位置によって、複数ロボットアームそれぞれのマッサージ動作における位置が設定されることになる。なお、他の例として、すべてのロボットアームを用いて位置の設定が行われてもよい。
【0089】
マッサージ装置1は、ベッド21に対して位置が固定されていない可動式であるため、ベッド21の近傍にマッサージ装置1を移動させて設置すると、ベッド21に対する位置、つまり、ユーザPT1に対する位置が施療位置に対して適切な位置でない可能性もある。しかしながら、このように位置が設定されることで、以降のマッサージ動作においてマッサージハンド10aを適切に施療位置に移動させることができる。つまり、ベッド21に対して可動式のマッサージ装置1を用いた場合であっても、ユーザPT1との位置関係を適した位置関係することができる。これにより、ユーザPT1に対して効果的なマッサージを施すことができる。
【0090】
以上の位置の設定が終了すると、プロセッサ31は、動作モードをマッサージモードに切り替える(ステップS105)。このとき、プロセッサ31は、マッサージ動作のプログラムに対して、ステップS101で識別したユーザPT1の体格や、ステップS103で識別した特別位置を適用する。適用することは、プログラムに従うマッサージの位置を、ユーザPT1に応じた位置にすること、特別位置におけるマッサージ強さやマッサージ内容をユーザPT1に応じたものとすること、などを含む。
【0091】
その上で、プロセッサ31はマッサージ動作を開始する(ステップS106)。これにより、マッサージ装置1ではプログラムされたマッサージ動作が行われ、ユーザPT1に対しては、プログラムされた仕上げ前マッサージが施療される。このため、マッサージ師の技量に関わらず、高品質の施療が行われる。また、ステップS101,S103で設定された位置に応じたマッサージ動作が行われることで、ユーザPT1に適した仕上げ前マッサージが施療される。
【0092】
マッサージ動作中において、プロセッサ31は、所定のタイミングでスピーカ15から対話用の音声を出力し(ステップS107)、マイク14からの音声データの入力を受け付ける(ステップS109)。ステップS107で出力される対話用音声は、一例として、マッサージ動作の終了時に出力される。この場合、ステップS107で出力される対話用音声は、「疲れがとれましたか?」などの、施療効果の質問が想定される。このときにステップS109で入力される音声データは、上記質問の回答であって、施療効果を示す「はい」「いいえ」などの音声となる。
【0093】
なお、ステップS107で出力される対話用音声は、他の例として、マッサージ動作の動作中に出力される。この場合、「痛くありませんか?」などの、施療中の感想や要望についての質問が想定される。このときにステップS109で入力される音声データは、上記質問の回答であって、施療中の感想や要望を示す「はい」「もっと強くしてください」などの音声となる。
【0094】
なお、プロセッサ31は、マッサージ動作終了後においても同様に対話用の音声を出力し、マイク14からの音声データの入力を受け付けてもよい。この場合、出力される対話用音声は、「仕上げマッサージをしてほしいところは?」などの、仕上げマッサージに対する要望の質問が想定される。このときに入力される音声データは、上記質問の回答であって、仕上げマッサージへの要望を示す「右肩」「左腕」などの音声となる。
【0095】
このように入力された音声データに基づいて、プロセッサ31は、情報生成処理315を実行し、提供情報を生成する(ステップS111)。一例として、情報生成処理315においてプロセッサ31は学習モデル51を有し、学習モデル51に得られた音声データを入力することで提供情報を得る。
【0096】
学習モデル51は、
図6に表されたような機械学習された学習モデルである。すなわち、
図6を参照して、学習モデル51は、音声データを入力データ、及び、仕上げマッサージに関する情報を出力データとした、複数のデータの組み合わせを教師モデルとして機械学習されている。例えば、特定の質問「疲れがとれましたか?」に対する「はい」の音声データを入力データ、「仕上げマッサージの時間を通常とする」ことを表すデータを出力データとして学習されている。また、「いいえ」の音声データを入力データ、「仕上げマッサージの時間を長めとする」ことを表すデータを出力データとして学習されている。また、質問「仕上げマッサージをしてほしいところは?」に対する「右肩」の音声データを入力データ、「右肩重点的に」の指示を表すデータを出力データとして学習されている。また、「左上」の音声データを入力データ、「左上重点的に」の指示を表すデータを出力データとして学習されている。
【0097】
学習モデル51の機械学習は音声データを教師モデルとしたものに限定されない。又は、学習モデル51は、音声データに加えて、他のデータを教師モデルとして学習されたものであってもよい。他の例として、学習モデル51は、マッサージ装置1でのマッサージ位置やマッサージ時間などの履歴(例えば動作履歴)を入力データとし、その後の仕上げマッサージでのマッサージ位置やマッサージ時間を出力データとして機械学習されていてもよい。また、他の例として、学習モデル51は、設定位置とされた重点施療位置や禁忌施療位置を入力データとし、その後の仕上げマッサージでのマッサージ位置やマッサージ時間を出力データとして機械学習されていてもよい。なお、入力データや出力データは、ユーザの身体を模式的に示したマップデータであってもよい。
【0098】
このような学習モデル51を利用することで、ステップS111でプロセッサ31は、音声データを学習モデル51に入力することによって、学習モデル51から出力される提供情報を容易に得ることができる。
【0099】
なお、他の例として、プロセッサ31は、音声データに対応した提供情報を予め記憶しておき、入力された音声データに対応した提供情報を出力するようにしてもよい。例えば、プロセッサ31は、特定の用語に応じた提供情報を予め記憶しておき、入力された音声データに音声分析を行って得られた用語に対応する提供情報を読み出すようにしてもよい。
【0100】
さらに、プロセッサ31は、入力された音声データに基づいて、要望に従うマッサージ動作となるようにマッサージ動作のプログラムのパラメータを変更してもよい。これにより、ユーザPT1は、マッサージ師と対話しながらマッサージを受けている場合と同様に、適したマッサージを受けられるようになる。
【0101】
プロセッサ31は、一連のマッサージ動作を終了した後(ステップS113)、ステップS111で生成した提供情報を出力する(ステップS115)。仕上げ前マッサージが終了すると、ユーザPT1は
図1の第2のマッサージ室R2に案内される。ユーザPT1は、ベッド22に平臥して施療者PT2による仕上げマッサージを待機する。
【0102】
ステップS115での出力は、一例として、通信装置33に、施療者PT2の携帯する端末装置9や、端末装置9でアクセス可能なサーバ5などに提供情報を送信させることを含む。これにより、第2のマッサージ室R2にてユーザPT1に対して仕上げマッサージを行う施療者PT2に提供情報が提供される。
【0103】
提供情報は、例えば、
図4に示された「マッサージ時間は短めです」などの、仕上げ前マッサージに連携して仕上げマッサージを行うための情報である。これにより、施療者PT2は、仕上げ前マッサージの後に仕上げマッサージを行うことができる。つまり、本システム100では、仕上げ前マッサージをマッサージ装置1が行うため、施療者PT2の負担を軽減させることができる。また、少ない施療者PT2で効率よくマッサージサービスを提供することができる。
【0104】
これは、例えば、
図1に例示されたように、本システム100を用いて、仕上げ前マッサージと仕上げマッサージとを異なる空間にてユーザPT1に施すことも可能にする。このような場合、仕上げマッサージを行う施療者PT2は、仕上げ前マッサージ中や仕上げ前マッサージ後のユーザPT1の様子を把握していない場合もある。そのような場合であっても、その際の音声データに基づく提供情報が提供されることで、仕上げ前マッサージに連携した仕上げマッサージを行うことができる。
【0105】
また、提供情報がサーバ5にユーザPT1の識別情報を関連付けて記憶されることで、提供情報を、マッサージに関するカルテ情報として利用することができる。具体的には、ユーザPT1ごとに、仕上げ前マッサージの内容とともに提供情報を蓄積しておくことで、次回の施療時の参考などに用いることが可能になる。
【0106】
なお、提供情報は、ユーザPT1に提供されてもよい。その場合、マッサージ装置1は、ユーザPT1用の出力装置をさらに備えてもよい。ユーザPT1用の出力装置は、一例として、ベッド21に平臥したユーザPT1から見やすい位置に設置されたディスプレイである。又は、ユーザPT1に提供される提供情報は、スピーカ15から音声出力されてもよい。この場合、例えば、対話形式で出力されてもよい。これにより、ユーザPT1も、仕上げマッサージのための情報を知ることができる。
【0107】
さらに、ユーザPT1に提供される提供情報は、施療者PT2に提供される提供情報と異なるものであってもよい。この場合、プロセッサ31は、ステップS111で施療者PT2に提供される提供情報と共にユーザPT1に提供される提供情報を生成する。ユーザPT1に提供される提供情報は、例えば、施療者PT2に提供される提供情報と表現が異なったり、説明が付加されていたりしてもよい。これにより、ユーザPT1にも施療者PT2にも有用な情報を提供することができる。
【0108】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 :マッサージ装置
3 :演算装置
5 :サーバ
7 :ネットワーク
9 :端末装置
10 :ロボットアーム
10L :ロボットアーム
10R :ロボットアーム
10a :マッサージハンド
11 :レール
12 :移動装置
12a :ロック部
13 :タッチパネル
13A :設定ボタン
13B :設定ボタン
13C :カメラ
14 :マイク
15 :スピーカ
17 :ジョイント
17a :ロック部
21 :ベッド
22 :ベッド
31 :プロセッサ
32 :メモリ
33 :通信装置
51 :学習モデル
100 :システム
311 :識別処理
312 :モード切替処理
313 :動作制御処理
314 :連携処理
315 :情報生成処理
316 :情報出力処理
317 :音声出力処理
321 :マッサージ動作プログラム
M1 :マーカ
M2 :マーカ
M3 :マーカ
M4 :マーカ
P1 :基準位置
P2 :基準位置
P3 :基準位置
P4 :特別位置
PT1 :ユーザ(被施療者)
PT2 :施療者
R1 :第1のマッサージ室
R2 :第2のマッサージ室
S :矢印