(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】反応装置
(51)【国際特許分類】
G01N 30/60 20060101AFI20240917BHJP
B01J 8/06 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
G01N30/60 A
G01N30/60 B
G01N30/60 P
B01J8/06
(21)【出願番号】P 2021047447
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2024-03-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「機能性化学品の連続精密生産プロセス技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】591245543
【氏名又は名称】東京理化器械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】長田 慶秀
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109506(JP,A)
【文献】特開2015-192934(JP,A)
【文献】特開2016-101556(JP,A)
【文献】特開2014-032134(JP,A)
【文献】特開平7-024227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
B01J 8/00-8/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応触媒を充填したカラムの入口端から複数の反応原料を導入してカラム内で反応させ、カラムの出口端から反応生成物を導出する反応装置において、
前記カラムの出入口両端に設けられる一対のカラムエンドと、前記カラムの出入口両端と前記一対のカラムエンドとの間に組み込まれる一対のフィルタ部材と、前記カラムと前記一対のカラムエンドとを固着させる一対のナットとを備え、
出口側カラムエンドは、複数の温度センサをそれぞれ内挿支持する複数のポートを有し、前記カラムと前記出口側カラムエンドとを固着したときに、前記複数のポートが出口側フィルタ部材を介してカラム内に連通し、
前記出口側フィルタ部材は、フィルタエレメントと、該フィルタエレメントを取り付ける円盤状のフィルタ本体とで構成され、
前記フィルタ本体には、前記複数のポートにそれぞれ連通する孔を備えた複数のセンサ挿通部と、該複数のセンサ挿通部を避けた領域を窪ませたフィルタ嵌合凹部とが設けられ、
前記フィルタエレメントは、金網層と、該金網層の表層に配置されたリテーナとが一体で前記フィルタ嵌合凹部に嵌合され、
前記フィルタ嵌合凹部の周縁部には、前記リテーナを接合する環状のレーザ溶接部が形成されていることを特徴とする反応装置。
【請求項2】
前記複数のポートは、前記カラムの中心軸上に設けられた中央側ポートと、該中央側ポートの外周側に設けられた外周側ポートの2つからなり、
前記フィルタ本体は、前記中央側ポートに対応する中央側センサ挿通部と、前記外周側ポートに対応する外周側センサ挿通部とを有し、これら2つのセンサ挿通部が前記フィルタ嵌合凹部によって互いに隔てられ、
前記レーザ溶接部は、前記中央側センサ挿通部の外周縁部と、前記外周側センサ挿通部の内周縁部とに形成されていることを特徴とする請求項1記載の反応装置。
【請求項3】
前記フィルタ嵌合凹部の深さは、前記フィルタエレメントの厚みに対応し、前記フィルタエレメントを前記フィルタ嵌合凹部に取り付けた状態で、前記リテーナの上面が前記フィルタ嵌合凹部から突出することなく面一又は凹状に配置され、
前記レーザ溶接部は、前記リテーナの周端縁と前記フィルタ嵌合凹部の周端縁との間に形成された突合せ全周レーザ溶接部であることを特徴とする請求項1又は2記載の反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応装置に関し、詳しくは、反応触媒を充填したカラムの入口端から反応流体を導入してカラム内で反応させ、カラムの出口端から反応生成物を導出する反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反応触媒を充填したカラムを有する反応装置(フローリアクタ)において、その出入口両端部開口部にフィルタが設けられており、当該フィルタをその外周にて保持するパッキンとして、フッ素樹脂やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の樹脂が用いられることが知られている(例えば、特許文献1、2を参照。)。また、上記フィルタとして、金網を積層したフィルタエレメントを用いることが知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-109506号公報
【文献】特開2014-32134号公報
【文献】特開平7-24227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に示されるように、フィルタ外周に用いるパッキンを樹脂で作った場合、フィルタが、特許文献3に示されるような積層金網のフィルタエレメントであれば、気孔率が高く目詰まりを生じにくい。また、仮に目詰まりが起きても超音波洗浄で容易に回復することができる。但し、フローリアクタではカラムを200℃前後に保って運転することがあるが、パッキンが樹脂製の場合は、耐熱温度の点から、変形やクリープなどを起こして、反応装置の運転中にトラブルを生じる可能性がある。
【0005】
そこで、パッキンの材質を樹脂からステンレスに変え、フィルタエレメントの外周とステンレス製リングをアルゴン溶接で接合すると、濾過性能に問題のないフィルタを得ることができる。但し、アルゴン溶接を行うと、溶接部において「焼け」を生じるために、溶接後に酸洗いが必須となり、その酸洗いによって、狭隘な金網の中に酸化物が生成し網目の中に残留する心配が生じる。
【0006】
このように、ステンレス製リングのフィルタ本体と円盤状の積層金網を組み合わせたフィルタは容易に製作できる。その上で、カラム内に充填された触媒粒子の反応中の温度を測定するために、フィルタに貫通穴を設け、当該貫通穴に温度センサを挿入することがある。その際、挿入する温度センサが一本の場合には、円盤の中央に穴を設けたドーナツ型とすれば良い。しかし、カラム内において反応温度の径方向の分布を知りたい場合には、温度センサを複数挿入する必要があり、カラムの内壁近くに温度センサ用の貫通穴を追加して設ける必要がある。そのためには、フィルタの形状は円盤状ではなく、例えば、円を一部切り欠いたD字型となり、さらにその内部に丸穴を設けたもの(D字型ドーナツ状)となる(
図3(a)を参照。)。
【0007】
このD字型ドーナツ状のフィルタを溶接するために、ステンレス製リングのフィルタ本体には、対応するD字型の掘り込み部(フィルタ嵌合凹部)を設ける必要がある。しかしながら、上記掘り込み部をD字型にした場合、場所によって径方向の肉厚が一様ではないので、当該フィルタとリングの接合をアルゴン溶接で行うと、場所によって蓄熱量に違いが生じ、溶接後にリング全体として歪みを生じてしまう。また、当該歪みが生じることで、リングの鍔部の平坦性が失われてしまうので、リングのシール性能に悪影響を及ぼす。また、フィルタ中央の貫通穴の溶接部分は径が小さいために溶接時に変形してしまうので、アルゴン溶接自体を行うことが困難なものとなる。
【0008】
そこで、本発明は、積層金網のフィルタエレメントと外周部のパッキンリング(フィルタ本体)を適切に溶接し、フローリアクタ等の反応装置のカラムにおいて温度センサを複数挿入することが可能な反応装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の反応装置は、反応触媒を充填したカラムの入口端から複数の反応原料を導入してカラム内で反応させ、カラムの出口端から反応生成物を導出する反応装置において、前記カラムの出入口両端に設けられる一対のカラムエンドと、前記カラムの出入口両端と前記一対のカラムエンドとの間に組み込まれる一対のフィルタ部材と、前記カラムと前記一対のカラムエンドとを固着させる一対のナットとを備え、出口側カラムエンドは、複数の温度センサをそれぞれ内挿支持する複数のポートを有し、前記カラムと前記出口側カラムエンドとを固着したときに、前記複数のポートが出口側フィルタ部材を介してカラム内に連通し、前記出口側フィルタ部材は、フィルタエレメントと、該フィルタエレメントを取り付ける円盤状のフィルタ本体とで構成され、前記フィルタ本体には、前記複数のポートにそれぞれ連通する孔を備えた複数のセンサ挿通部と、該複数のセンサ挿通部を避けた領域を窪ませたフィルタ嵌合凹部とが設けられ、前記フィルタエレメントは、金網層と、該金網層の表層に配置されたリテーナとが一体で前記フィルタ嵌合凹部に嵌合され、前記フィルタ嵌合凹部の周縁部には、前記リテーナを接合する環状のレーザ溶接部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記複数のポートは、前記カラムの中心軸上に設けられた中央側ポートと、該中央側ポートの外周側に設けられた外周側ポートの2つからなり、前記フィルタ本体は、前記中央側ポートに対応する中央側センサ挿通部と、前記外周側ポートに対応する外周側センサ挿通部とを有し、これら2つのセンサ挿通部が前記フィルタ嵌合凹部によって互いに隔てられ、前記レーザ溶接部は、前記中央側センサ挿通部の外周縁部と、前記外周側センサ挿通部の内周縁部とに形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、前記フィルタ嵌合凹部の深さは、前記フィルタエレメントの厚みに対応し、前記フィルタエレメントを前記フィルタ嵌合凹部に取り付けた状態で、前記リテーナの上面が前記フィルタ嵌合凹部から突出することなく面一又は凹状に配置され、前記レーザ溶接部は、前記リテーナの周端縁と前記フィルタ嵌合凹部の周端縁との間に形成された突合せ全周レーザ溶接部であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の反応装置によれば、フィルタエレメントを構成する金網層の表層にリテーナが設けられ、前記リテーナとフィルタ嵌合凹部とがレーザ溶接によって溶接されているので、溶接点の周囲に熱を逃がすことが可能となり、リテーナより下層の金網層は保護され、適切な溶接がなされる。さらに、レーザ溶接を用いることによって溶接後の酸洗いや洗浄が不要になり、フィルタに酸化物などが残留する心配がない。
【0013】
また、出口側フィルタ部材において、複数のセンサ挿通部を設けてもフィルタの機能を保つことが可能となり、複数の温度センサにより、カラム内の長さ方向だけでなく、径方向の温度分布を知りたいといったニーズに、確実に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1(a)】従来例の円盤状のフィルタとリングの構造を示す図である。
【
図1(b)】従来例の円盤状のフィルタがリングと溶接された状態を示す図である。
【
図2(a)】本発明の一形態例の反応装置を示す断面図である。
【
図2(b)】本発明の一形態例の反応装置の構成を示す図である。
【
図3(a)】上記形態例の反応装置におけるフィルタの構造を示す図である。
【
図3(b)】上記形態例の反応装置におけるフィルタエレメントがリングと溶接された状態を示す図である。
【
図4(a)】上記形態例の反応装置におけるフィルタエレメントを構成する各層の輪郭形成前の状態を示す図である。
【
図4(b)】上記形態例の反応装置におけるフィルタエレメントを構成する各層の輪郭形成後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記のように、D字型のフィルタエレメントとリング(フィルタ本体)の溶接にはアルゴン溶接を用いることが困難であるので、本発明ではレーザ溶接を用いることを試みた。レーザビームは溶接スポットが小さく、溶接点に集中したパワーで母材同士を溶かし合わせるため、周囲への熱の影響は最小となる。また、レーザ溶接は歪みや焼けを生じないため、溶接後の酸洗いが不要になるなど、大きなメリットがある。
【0016】
但し、積層金網のフィルタエレメントでは、レーザ溶接のパワーが集中することによって網目を構成するワイヤが焼け切れてしまうという問題があった。
図1は、従来例の円盤状フィルタ12を示す。当該フィルタ12は、
図1(a)に示すように、複数枚の円形の金網層2~6を重ねた状態で加熱圧縮した後に真空にすることで金網層同士が拡散接合して一体化したものである。この際に用いられる金網層は、上から順に、保護層2、濾過層3、保護層4、強度層5、強度層6となっている。これらの金網層2~6は拡散接合により一体化されてフィルタエレメント1とした後、鍔部35を有するステンレス製リング(フィルタ本体)10と溶接される(
図1(b)を参照。)。このうち、濾過層3とその上下の保護層2、4はワイヤの線径が細いので、そのままレーザ溶接を行うと、ワイヤが過熱し焼け切れて金網にピンホールを生じてしまい、カラム7中の触媒粒子が流出してしまう恐れがある。この点を解消するために、本発明では、
図3(a)に示すように、ステンレスの薄板をD字形状に切り抜いたリテーナ9を金網層2~6の表層に設けた。
【0017】
上記リテーナ9は、中央側センサ挿通部43を取り囲む穴部39と、輪郭をなす周辺部40と、穴部39と周辺部40とを接続するリブ部41とから構成されている。リブ部41は、穴部39の位置決め機能を有し、その領域は、濾過面積が十分確保可能な程度に小さく形成され、本形態例においては、穴部39から放射状に延びる3本の板状部材からなる。
【0018】
上記リテーナ9を設けてD字型フィルタ13を作製する際には、保護層2、濾過層3、保護層4、強度層5、強度層6を積層した複数枚の金網層2~6の表層にリテーナ9を配置して、拡散接合を行って全体を一体化している。
【0019】
図2は、本形態例の反応装置100を示すものである。この反応装置100は、
図2(a)、(b)に示されるように、触媒粒子を充填したカラム7と、該カラム7の出入口両端にそれぞれ設けられる一対のカラムエンド20、20と、カラム入口側に設けられる、
図1に示されるような従来型の円盤状フィルタ(入口側フィルタ部材)12と、カラム出口側に設けられるD字型フィルタ(出口側フィルタ部材)13と、各フィルタの鍔部35、36に取り付けられてカラム7とカラムエンド20、20の間を密封するフィルタ用Oリング(保持部材)21、21、21、21と、カラム7とカラムエンド20、20とを固着するナット22、22と、2つの原料入口配管23、24と、生成物出口配管25とを備えている。また、当該反応装置100の出口側には、D字型フィルタ13の有する2つの貫通穴のそれぞれに温度センサ26、26が、温度センサ用Oリング27、27を介して、カラム7内に挿入されている。
【0020】
カラム7は、ステンレス鋼などの金属材料によって形成された管状の本体部28と、当該本体部28の両端外周にそれぞれ設けられたフランジ部29とを有している。本体部28には触媒粒子が充填されている。フランジ部29の外周には、ナット22に固着するためのネジ部30が設けられている。
【0021】
カラムエンド20は、略円筒状の本体部31と、該本体部31のカラム装着側外周に設けられたフランジ部32と、側面に設けられた円形の嵌合凹部33とを有している。フランジ部32の外周には、ナット22に固着するための平面部34が設けられている。なお、出口側のカラムエンド20には、複数の温度センサを内挿支持するための複数のポートが設けられている。上記形態例においては、カラム7の中心軸上に設けられた中央側ポート45と、当該中央側ポート45の外周側に設けられた外周側ポート46の2つが設けられている。
【0022】
フィルタ用Oリング21は、入口側のカラムエンド20の嵌合凹部33内に嵌入された円盤状フィルタ12の鍔部35の表裏と、出口側のカラムエンド20の嵌合凹部33内に嵌入されたD字型フィルタ13の鍔部36の表裏とにそれぞれ装着されるもので、Oリング21の内径は、各鍔部35、36の外形よりも僅かに小さく設定されている。
【0023】
ナット22は、カラム7とカラムエンド20とを固着するための接続部品であり、内周面にネジ部37が設けられている。当該ネジ部37は、カラム7のネジ部30と係合されて、カラム7及びカラムエンド20を物理的に固定する。
【0024】
原料入口配管23、24は、入口側のカラムエンド20に設けられる配管であり、当該原料入口配管23、24を通じて反応原料が円盤状フィルタ12を通過した後にカラム7内に導入され、カラム7内に充填されている触媒粒子を介してカラム7内で反応が起こるようになっている。
【0025】
生成物出口配管25は出口側のカラムエンド20に設けられる配管であり、カラム7内で反応後の生成物がカラム7からD字型フィルタ13を通過して、当該生成物出口配管25を通じて外部に導出されるようになっている。
【0026】
温度センサ26は、カラム7内での反応時の温度を測定するためのセンサであり、カラム7中央部とカラム7内壁周辺にそれぞれ内挿されている。温度センサ26は、カラムエンド20の貫通部に対し、温度センサ用Oリング27により密閉状態で保持されている。また、カラム7中央部に内挿される温度センサ26は、D字型フィルタ13の中央部に設けられた中央側センサ挿通部43を通過している。また、カラム7内壁周辺に内挿される温度センサ26は、D字型フィルタ13の切り欠き部38に設けられた外周側センサ挿通部44を通過している。
【0027】
カラム7の本体部28とカラムエンド20、20の嵌合凹部33との間には、入口側に円盤状フィルタ(入口側フィルタ部材)12が、出口側にD字型フィルタ(出口側フィルタ部材)13が設けられ、各フィルタの鍔部35、36でフィルタ用Oリング(保持部材)21を介して保持されている。
【0028】
上記円盤状フィルタ(入口側フィルタ部材)12は、従来例として
図1に示したものと同一のフィルタであり、円盤状のフィルタエレメント1とステンレス製リング(入口側フィルタ本体)10とを溶接したものである。
【0029】
上記D字型フィルタ(出口側フィルタ部材)13は、
図3(a)、(b)に示されるフィルタであり、円形から一部を切り欠いたD字形状かつ内部に丸穴が設けられたD字型ドーナツ状のフィルタエレメント8とステンレス製リング(出口側フィルタ本体)11とを溶接したものである。
【0030】
ステンレス製リング(出口側フィルタ本体)11には、上記中央側センサ挿通部43、外周側センサ挿通部44と、これらのセンサ挿通部を避けた領域を窪ませたD字型のフィルタ嵌合凹部42とが設けられている。フィルタ嵌合凹部42の深さは、フィルタエレメント8の厚みに対応しており、これにより、フィルタエレメント8をフィルタ嵌合凹部42に取り付けた状態で、フィルタ嵌合凹部42の開口端とリテーナ9の板面とが面一又は僅かに凹状になるように形成されている。これにより、D字型フィルタ13の取り付け状態の安定化やカラム7に充填される触媒の均一化を図ることが可能となる。
【0031】
また、上記形態例のD字型ドーナツ状のフィルタエレメント8を作成する際は、
図4(a)に示すように、当該フィルタエレメント8よりも大きな四角形の金網素材と、後加工できないリブ部41を先に形成したリテーナ素材とを重ねて、上記円盤状のフィルタエレメント1と同様に拡散接合で一体化した後に、レーザ加工機などで内外径を切り抜くことで、
図4(b)に示すように、D字型ドーナツ状の輪郭を作ることができる。
【0032】
なお、拡散接合で一体化した金網の周囲の切断面にはワイヤの切断面が露出しているため、そのままフィルタとして用いると、カラム7内の触媒粒子が流出してしまう恐れがある。これを避けるために、積層金網の切断面のみをアルゴン溶接で封止してもよい。封止後に、封止面を切削して仕上げると、D字型ドーナツ状のフィルタエレメント8が完成する。
【0033】
続いて、完成したフィルタエレメント8を、フィルタ嵌合凹部42をD字型に加工した出口側フィルタ本体11の当該フィルタ嵌合凹部42に嵌入した状態で環状にレーザ溶接を行い、フィルタエレメント8のリテーナ9部分と上記出口側フィルタ本体11とを溶接する。レーザ溶接部分は中央側センサ挿通部43の外周縁部と、外周側センサ挿通部44の内周縁部とに形成され、リテーナ9の周端縁とフィルタ嵌合凹部42の周端縁との間に突合せ全周レーザ溶接部47が形成される(
図3(b)を参照。)。こうしてD字型フィルタ13が完成する。この様にすると、フィルタエレメント8とフィルタ本体11の溶接を適切に行うことができるとともに、カラム7内に温度センサを複数内挿することができるようになる。この際、溶接後のフィルタに、過熱によるピンホールは生じず、フィルタ、リングともに大きな歪みは生じなかった。
【0034】
よって、本発明の反応装置によれば、フィルタエレメントを構成する金網層の表層にリテーナが設けられ、前記リテーナとフィルタ嵌合凹部とがレーザ溶接によって溶接されていることから、リテーナによって熱の逃げ道が十分確保されており、リテーナより下層の金網層は保護され、金網層への熱影響を考慮する必要がなく、適切な溶接がなされる。さらに、レーザ溶接を用いることによって溶接後の酸洗いや洗浄が不要になり、フィルタに酸化物などが残留する心配がない。
【0035】
また、出口側フィルタ部材において、複数のセンサ挿通部を設けてもフィルタの機能を保つことが可能となり、複数の温度センサを、カラム内の長さ方向だけでなく、径方向の温度分布を知りたいといったニーズに、確実に答えることができる。
【0036】
なお、上記形態例は、カラム7内に温度センサを2本挿入することを想定して、フィルタの形状をD字型ドーナツ状としたが、温度センサを3本以上挿入する場合には、その本数に応じて切り欠き部38を出口側フィルタ本体11に複数設けて、D字型ドーナツ状以外の態様としてもよい。また、温度センサを2本挿入する場合においても、濾過面積の確保等を考慮した上で、出口側フィルタ本体11やフィルタ嵌合凹部42の形状をD字型以外の形状としても良い。また、金網層2~6は、必ずしもすべて必要ではなく、濾過層1枚とそれを保護する粗い層2枚の合計3枚を備えていれば、フィルタエレメントを構成することが可能である。また、リテーナ9のリブ部41について、上記形態例においては3箇所設けているが、濾過面積の確保等を考慮した上で、1箇所以上設けていれば良い。
【符号の説明】
【0037】
1・・・円盤状のフィルタエレメント、2、4・・・金網層(保護層)、3・・・金網層(濾過層)、5、6・・・金網層(強度層)、7・・・カラム、8・・・D字型ドーナツ状のフィルタエレメント、9・・・リテーナ、10・・・ステンレス製リング(入口側フィルタ本体)、11・・・ステンレス製リング(出口側フィルタ本体)、12・・・円盤状フィルタ(入口側フィルタ部材)、13・・・D字型フィルタ(出口側フィルタ部材)、20・・・カラムエンド、21・・・フィルタ用Oリング(保持部材)、22・・・ナット、23、24・・・原料入口配管、25・・・生成物出口配管、26・・・温度センサ、27・・・温度センサ用Oリング、28・・・本体部、29・・・フランジ部、30・・・ネジ部、31・・・本体部、32・・・フランジ部、33・・・嵌合凹部、34・・・平面部、35、36・・・鍔部、37・・・ネジ部、38・・・切り欠き部、39・・・穴部、40・・・周辺部、41・・・リブ部、42・・・掘り込み部(フィルタ嵌合凹部)、43・・・中央側センサ挿通部、44・・・外周側センサ挿通部、45・・・中央側ポート、46・・・外周側ポート、47・・・突合せ全周レーザ溶接部、100・・・反応装置