(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板およびそれを備える側溝構築用部材、ならびにプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いる構造物の施工方法および側溝構築用部材を用いる側溝の施工方法
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20240917BHJP
E02D 29/02 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
E03F5/04 Z
E03F5/04 A
E02D29/02 301
(21)【出願番号】P 2021072156
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】502045884
【氏名又は名称】株式会社赤羽コンクリート
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利典
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 宏
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-306487(JP,A)
【文献】特開平9-13479(JP,A)
【文献】特開2010-261280(JP,A)
【文献】特開2001-173079(JP,A)
【文献】特開平6-336755(JP,A)
【文献】特開2012-207384(JP,A)
【文献】特開2004-36162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/04
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎地盤上に載置され、上部に構造物形成用部材が載置されるプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板であって、
前記プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板は、対向して延びる一対の側板部と、前記一対の側板部の下部同士を連結する矩形平板状の底板部と、前記一対の側板部間において前記底板部から上方に突出し、前記一対の側板部の対向方向に延びる複数の梁部とを備え、
前記複数の梁部の上面は、前記底板部の上面から上方に離間した略同一の平面上にあり、前記複数の梁部の上には前記構造物形成用部材が載置可能であり、
前記側板部は、上面が、前記複数の梁部の上面よりも上方に突出しており、
さらに、前記側板部は、前記梁部の形成部位の前記側板部の前記上面より、下方に延びかつ前記側板部を貫通する作業用切欠部を備え、前記作業用切欠部は、前記側板部の外部側方から前記構造物形成用部材と前記梁部との間に、高さ調整用の楔部材を挿入可能であることを特徴とするプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板。
【請求項2】
前記作業用切欠部は、下面より上方に向かって幅が広がる凹部となっており、前記作業用切欠部の前記下面は、前記梁部の上面と略面一となっている請求項1に記載のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板。
【請求項3】
前記プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板は、前記作業用切欠部の前記側板部の側面における開口幅より幅が小さく、かつ、先端に向かって肉薄となる複数の前記楔部材を備えている請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板。
【請求項4】
前記構造物形成用部材は、プレキャストコンクリート製の側溝形成用部材である請求項1ないし3のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板。
【請求項5】
前記構造物形成用部材は、プレキャストコンクリート製の擁護壁形成用部材である請求項1ないし3のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板。
【請求項6】
基礎地盤上に側溝を構築するための側溝構築用部材であって、
前記側溝構築用部材は、請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板と、
対向する一対の側壁部と、前記一対の側壁部の上端同士を連結する上壁部と、前記一対の側壁部の下端に形成された下端開口部と、前記上壁部に設けられた開口部とを備え、前記一対の側壁部の下端を前記プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板の前記複数の梁部上に載置可能であるプレキャストコンクリート製の側溝形成用部材と、
前記プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板の前記作業用切欠部の前記側板部の側面における開口幅より幅が小さく、かつ、先端に向かって肉薄となる複数の前記楔部材とを備えることを特徴とする側溝構築用部材。
【請求項7】
請求項3に記載の前記楔部材を備えるプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いる構造物の施工方法であって、
請求項3に記載の前記楔部材を備えるプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を準備する工程と、
前記構造物形成用基板を載置する前記基礎地盤にモルタル材を敷設する基礎地盤処理工程と、
前記モルタル材が敷設された前記基礎地盤上に前記構造物形成用基板を載置する構造物形成用基板載置工程と、
前記構造物形成用基板の前記梁部上に前記構造物形成用部材を載置する構造物形成用部材載置工程と、
前記楔部材を前記作業用切欠部より、前記構造物形成用部材の底面と前記梁部の上面間に前記楔部材を挿入し、前記構造物形成用部材の高さを調整する構造物形成用部材高さ調整工程と、
前記構造物形成用基板の前記底板部上に生コンクリートを打設して、前記構造物形成用部材と前記構造物形成用基板とを連結する生コンクリート打設工程とを行うことを特徴とするプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いた構造物の施工方法。
【請求項8】
前記生コンクリート打設工程において、前記楔部材は、打設された生コンクリート中に埋設される請求項7に記載のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いた構造物の施工方法。
【請求項9】
請求項6に記載の基礎地盤上に側溝を形成するための側溝構築用部材を用いる側溝の施工方法であって、
請求項6に記載の側溝構築用部材を準備する工程と、
前記構造物形成用基板を載置する前記基礎地盤にモルタル材を敷設する基礎地盤処理工程と、
前記モルタル材が敷設された前記基礎地盤上に前記構造物形成用基板を載置する構造物形成用基板載置工程と、
前記構造物形成用基板の前記梁部上に、前記側溝形成用部材の前記一対の側壁部の下端を載置する側溝形成用部材載置工程と、
前記楔部材を前記作業用切欠部より、前記側溝形成用部材の前記側壁部の底面と前記梁部の上面間に前記楔部材を挿入し、前記側溝形成用部材の高さを調整する側溝形成用部材高さ調整工程と、
前記構造物形成用基板の前記底板部上に生コンクリートを打設して、前記側溝形成用部材と前記構造物形成用基板とを連結するとともに、前記側溝の底面部を形成する生コンクリート打設工程とを行うことを特徴とするプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いた側溝の施工方法。
【請求項10】
前記生コンクリート打設工程は、形成される側溝の底面に勾配が形成されるように行うものである請求項9に記載の側溝の施工方法。
【請求項11】
前記生コンクリート打設工程において、前記楔部材は、打設された生コンクリート中に埋設される請求項9または10に記載の側溝の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板およびそれを備える側溝構築用部材、ならびにプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いる構造物の施工方法および側溝構築用部材を用いる側溝の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現場で型枠を組み立ててコンクリート製の構造物が形成される。これに対し、近年、作業者の不足や工期の短縮化の要望に対応するため、多少コストが上昇したとしても現場での作業や工数を減らすために、予め製造したコンクリート製品(プレキャストコンクリート製の基板等)を用いて対応することが求められている。
そのような状況下、本願出願人も、特許文献1(特開2010-150902号公報)において、側溝等を基礎地盤上に配置するためのコンクリート製の残置型枠(目的とする構造物の一部として残置される型枠)を提案している。このような残置型枠は、側溝を浮かせるように構成された梯子状のフレームを備え、当該フレームの上に側溝を置き、生コンクリートを側溝の内側および外側から打設することによって、目的とする構造物を一体的に形成することができる。また、基礎コンクリートを成形するための型枠作業が省略される他、基礎コンクリートの硬化を待つ時間が省略されるため、工期の短縮化が実現される。
【0003】
また、特許文献2(実公昭54-007010号公報)に開示されているコンクリート製土台枠は、所定のコンクリートブロックの脚部を嵌合するための嵌合凹部を備えており、そのようなコンクリートブロックが嵌合された土台枠内にコンクリートを充填してなるコンクリート製水路が開示されている。
さらに、特許文献3(特開平6-316940号公報)に開示されている基礎ブロックは、両側縁部に形成される載置部と、載置部の中間に位置する充填部および充填部に位置する貫通孔を備えており、充填部に生コンクリートを充填し、コンクリート製の建設製品を載置部に載置することにより、建設製品が基礎ブロックに結合されるとともに、建設製品を地面に確実に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-150902号公報
【文献】実公昭54-007010号公報
【文献】特開平6-316940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、構造物形成用基板を工場で予め製造する場合には、不可避的に寸法誤差(製造誤差)が生じる。また、工場から現場に構造物形成用基板を運搬する際に、破損が生じるおそれもある。そのため、プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いてコンクリート製の構造物を形成する場合、所望の構造物が得られないおそれがある。
また、特許文献3に開示の基礎ブロックにおいては、載置部が両側縁部に形成されており、その中間に位置する充填部が凹状に形成されているため、建設製品(構造物形成用部材)を上手く基礎ブロック上に載置できない(基礎ブロックの側方や充填部に落ち込んでしまう)可能性がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、基礎地盤上に載置され、上部に構造物形成用部材が載置されるプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板であって、現場において製造誤差を修正可能で、所望の構造物を得ることができる構造物形成用基板およびそれを備える側溝構築用部材、ならびにプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いる構造物の施工方法および側溝構築用部材を用いる側溝の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 基礎地盤上に載置され、上部に構造物形成用部材が載置されるプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板であって、
前記プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板は、対向して延びる一対の側板部と、前記一対の側板部の下部同士を連結する矩形平板状の底板部と、前記一対の側板部間において前記底板部から上方に突出し、前記一対の側板部の対向方向に延びる複数の梁部とを備え、
前記複数の梁部の上面は、前記底板部の上面から上方に離間した略同一の平面上にあり、前記複数の梁部の上には前記構造物形成用部材が載置可能であり、
前記側板部は、上面が、前記複数の梁部の上面よりも上方に突出しており、
さらに、前記側板部は、前記梁部の形成部位の前記側板部の前記上面より、下方に延びかつ前記側板部を貫通する作業用切欠部を備え、前記作業用切欠部は、前記側板部の外部側方から前記構造物形成用部材と前記梁部との間に、高さ調整用の楔部材を挿入可能であるプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板。
【0008】
(2) 前記作業用切欠部は、下面より上方に向かって幅が広がる凹部となっており、前記作業用切欠部の前記下面は、前記梁部の上面と略面一となっている上記(1)に記載のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板。
(3) 前記プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板は、前記作業用切欠部の前記側板部の側面における開口幅より幅が小さく、かつ、先端に向かって肉薄となる複数の前記楔部材を備えている上記(1)または(2)に記載のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板。
(4) 前記構造物形成用部材は、プレキャストコンクリート製の側溝形成用部材である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板。
(5) 前記構造物形成用部材は、プレキャストコンクリート製の擁護壁形成用部材である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板。
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(6) 基礎地盤上に側溝を構築するための側溝構築用部材であって、
前記側溝構築用部材は、上記(1)または(2)に記載のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板と、
対向する一対の側壁部と、前記一対の側壁部の上端同士を連結する上壁部と、前記一対の側壁部の下端に形成された下端開口部と、前記上壁部に設けられた開口部とを備え、前記一対の側壁部の下端を前記プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板の前記複数の梁部上に載置可能であるプレキャストコンクリート製の側溝形成用部材と、
前記プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板の前記作業用切欠部の前記側板部の側面における開口幅より幅が小さく、かつ、先端に向かって肉薄となる複数の前記楔部材とを備える側溝構築用部材。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(7) 上記(3)に記載の前記楔部材を備えるプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いる構造物の施工方法であって、
上記(3)に記載の前記楔部材を備えるプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を準備する工程と、
前記構造物形成用基板を載置する前記基礎地盤にモルタル材を敷設する基礎地盤処理工程と、
前記モルタル材が敷設された前記基礎地盤上に前記構造物形成用基板を載置する構造物形成用基板載置工程と、
前記構造物形成用基板の前記梁部上に前記構造物形成用部材を載置する構造物形成用部材載置工程と、
前記楔部材を前記作業用切欠部より、前記構造物形成用部材の底面と前記梁部の上面間に前記楔部材を挿入し、前記構造物形成用部材の高さを調整する構造物形成用部材高さ調整工程と、
前記構造物形成用基板の前記底板部上に生コンクリートを打設して、前記構造物形成用部材と前記構造物形成用基板とを連結する生コンクリート打設工程とを行うプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いた構造物の施工方法。
(8) 前記生コンクリート打設工程において、前記楔部材は、打設された生コンクリート中に埋設される上記(7)に記載のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いた構造物の施工方法。
【0010】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(9) 上記(6)に記載の基礎地盤上に側溝を形成するための側溝構築用部材を用いる側溝の施工方法であって、
上記(6)に記載の側溝構築用部材を準備する工程と、
前記構造物形成用基板を載置する前記基礎地盤にモルタル材を敷設する基礎地盤処理工程と、
前記モルタル材が敷設された前記基礎地盤上に前記構造物形成用基板を載置する構造物形成用基板載置工程と、
前記構造物形成用基板の前記梁部上に、前記側溝形成用部材の前記一対の側壁部の下端を載置する側溝形成用部材載置工程と、
前記楔部材を前記作業用切欠部より、前記側溝形成用部材の前記側壁部の底面と前記梁部の上面間に前記楔部材を挿入し、前記側溝形成用部材の高さを調整する側溝形成用部材高さ調整工程と、
前記構造物形成用基板の前記底板部上に生コンクリートを打設して、前記側溝形成用部材と前記構造物形成用基板とを連結するとともに、前記側溝の底面部を形成する生コンクリート打設工程とを行うプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いた側溝の施工方法。
(10) 前記生コンクリート打設工程は、形成される側溝の底面に勾配が形成されるように行うものである上記(9)に記載の側溝の施工方法。
(11) 前記生コンクリート打設工程において、前記楔部材は、打設された生コンクリート中に埋設される上記(9)または(10)に記載の側溝の施工方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板は、対向して延びる一対の側板部と、一対の側板部の対向方向に延びる複数の梁部とを備え、複数の梁部の上に構造物形成用部材が載置可能であり、側板部は、上面が、複数の梁部の上面よりも上方に突出しており、さらに、側板部は、梁部の形成部位の側板部の上面より、下方に延びかつ側板部を貫通する作業用切欠部を備え、作業用切欠部は、側板部の外部側方から構造物形成用部材と梁部との間に、高さ調整用の楔部材を挿入可能となっている。これにより、現場において、構造物形成用基板や構造物形成用部材の、製造誤差や意図しない破損による誤差を修正可能で、所望の構造物を得ることができる。
【0012】
また、本発明の側溝構築用部材は、所定のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板と、対向する一対の側壁部の下端をプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板の複数の梁部上に載置可能であるプレキャストコンクリート製の側溝形成用部材とを備え、さらに、プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板の作業用切欠部の側板部の側面における開口幅より幅が小さく、かつ、先端に向かって肉薄となる複数の楔部材とを備える。これにより、現場において、構造物形成用基板や側溝形成用部材の、製造誤差や意図しない破損による誤差を修正可能で、所望の側溝を得ることができる。
【0013】
また、本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いる構造物の施工方法は、楔部材を作業用切欠部より、構造物形成用部材の底面と梁部の上面間に挿入し、構造物形成用部材の高さを調整する構造物形成用部材高さ調整工程を行う。これにより、現場において、構造物形成用基板や構造物形成用部材の、製造誤差や意図しない破損による誤差を修正可能で、所望の構造物を得ることができる。
また、本発明の側溝構築用部材を用いる側溝の施工方法は、楔部材を作業用切欠部より、側溝形成用部材の側壁部の底面と梁部の上面間に挿入し、側溝形成用部材の高さを調整する側溝形成用部材高さ調整工程を行う。これにより、現場において、構造物形成用基板や側溝形成用部材の、製造誤差や意図しない破損による誤差を修正可能で、所望の側溝を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板の実施例を示す正面図である。
【
図2】
図2は、本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板の実施例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板の実施例を示す右側面図である。
【
図6】
図6は、本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いた構造物(側溝)の施工方法の実施例における基礎地盤処理工程および構造物形成用基板載置工程を説明するための説明図である。
【
図7】
図7は、本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いた構造物(側溝)の施工方法の実施例における構造物形成用部材載置工程を説明するための説明図である。
【
図9】
図9は、本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いた構造物(側溝)の施工方法の実施例における構造物形成用部材高さ調整工程を説明するための説明図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す部分の背面図であり、
図9に示す構造物形成用部材高さ調整工程を説明するための説明図である。
【
図11】
図11は、本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を用いた構造物(側溝)の施工方法の実施例における生コンクリート打設工程を説明するための説明図である。
【
図14】
図14は、本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を構成する楔部材の正面図である。
【
図15】
図15は、本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を構成する楔部材の平面図である。
【
図16】
図16は、本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板の他の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板を図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板1は、基礎地盤7上に載置され、上部に構造物形成用部材8が載置されるプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板1であって、対向して延びる一対の側板部10,20と、一対の側板部10,20の下部同士を連結する矩形平板状の底板部40と、一対の側板部10,20間において底板部40から上方に突出し、一対の側板部10,20の対向方向に延びる複数の梁部50とを備える。複数の梁部50の上面51は、底板部40の上面41から上方に離間した略同一の平面上にあり、複数の梁部50の上には構造物形成用部材8が載置可能である。側板部10,20は、上面11,21が、複数の梁部50の上面51よりも上方に突出しており、さらに、梁部50の形成部位の側板部10,20の上面11,21より、下方に延びかつ側板部10,20を貫通する作業用切欠部30を備え、作業用切欠部30は、側板部10,20の外部側方から構造物形成用部材8と梁部50との間に、高さ調整用の楔部材6を挿入可能である。
【0016】
具体的には、
図1および
図2に示すように、構造物形成用基板1は、全体として平面視で長手矩形形状となっている。一対の側板部10,20は、それぞれ、構造物形成用基板1の長手方向に延び、短手方向において対向している。
また、
図4に示すように、一対の側板部10,20間の距離は、上面11,21に向かって広くなっている。一対の側板部10,20間の内壁は、側板部10,20の外壁方向に傾斜している。また、この実施例では。一対の側板部10,20間の外壁は、側板部10,20の内壁方向に傾斜している。一対の側板部10,20は、上面11,21に向かって、徐々に肉薄となっている。
【0017】
図2および
図4に示すように、一対の側板部10,20の下部同士は矩形平板状の底板部40によって連結されている。本実施例では、底板部40には、生コンクリートの通過を許容するような貫通孔が設けられていない。言い換えれば、構造物形成用基板1では、底板部40が形成されている部分において、生コンクリートが、構造物形成用基板1の上側(構造物形成用部材8側)と下側(基礎地盤7側)との間を流通しない。
【0018】
一対の側板部10,20間には、底板部40から上方に突出し、一対の側板部10,20の対向方向(構造物形成用基板1の短手方向)に延びる複数(ここでは、7つ)の梁部50が形成されている。本実施例では、構造物形成用基板1の長手方向両端に位置する2つの梁部50の幅寸法(構造物形成用基板1の長手方向における寸法)が、他の5つの梁部50の幅寸法よりも小さくなっている。
【0019】
図5に示すように、複数の梁部50の上面51は、底板部40の上面41から上方に離間した略同一の平面上にある。言い換えれば、全ての梁部50の高さ寸法[底板部40の上面41(または構造物形成用基板1の下面)と梁部50の上面51との間の距離]が略同一[
図5中:H1(H2)]とされている。
【0020】
構造物形成用基板1の複数の梁部50の上には構造物形成用部材が載置可能である。そのような構造物形成用部材は、プレキャストコンクリート製の側溝形成用部材(後述する側溝形成用部材を含む)であってもよい。また、そのような構造物形成用部材は、プレキャストコンクリート製の擁護壁形成用部材であってもよい。
【0021】
構造物形成用基板1においては、
図4および
図5に示すように、側板部10,20は、いずれも、その上面11,21が、複数の梁部50の上面51よりも上方に突出している。言い換えれば、側板部10,20の高さ寸法[底板部40の上面41(または構造物形成用基板1の下面)と側板部10,20の上面11,21との間の距離]は、上述した梁部50の高さ寸法よりも大きくなっている。
【0022】
側板部10,20は、梁部50の形成部位において、側板部10,20の上面11,21より下方に延びかつ側板部10,20を構造物形成用基板1の短手方向において貫通する作業用切欠部30を備える。本実施例の構造物形成用基板1では、
図2に示すように、側板部10,20の各々において、構造物形成用基板1の長手方向に離隔する2つの梁部50の形成部位に作業用切欠部30が形成されており、合計4つの作業用切欠部30を備える。
【0023】
また、
図5に示すように、作業用切欠部30は、構造物形成用基板1の長手方向において所定の長さ(作業用切欠部30の下面31の長手方向寸法):L1に亘って形成されており、後述するように、作業用切欠部30を通じて、側板部10,20の外部側方から構造物形成用部材8と梁部50との間に、高さ調整用の楔部材6を挿入可能となっている。なお、構造物形成用基板1では、作業用切欠部30(下面31)の長手方向寸法:L1は、梁部50(上面51)の長手方向寸法と略同一となっている。
【0024】
より具体的には、
図1および
図5に示すように、作業用切欠部30は、下面31より上方に向かって幅が広がる凹部となっており、作業用切欠部30の下面31は、梁部50の上面51と略面一となっている。言い換えれば、
図4に示すように、作業用切欠部30の下面31と梁部50の上面51とは略同一平面上において連続する面となっている。
このような、側板部10,20、作業用切欠部30、底板部40、および梁部50を備える構造物形成用基板1は、工場で一体的に成形することが可能である。
【0025】
プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板1は、作業用切欠部30の側板部10,20の側面における開口幅(上述のL1)より幅が小さく、かつ、先端に向かって肉薄となる複数の楔部材6(
図9および
図10参照)を備えている。より具体的には、楔部材6は、
図14に示すように、正面視で、1つの角(
図14中θで示す角)が略直角とされ、かつ先端側(
図14における左側)が最も小さい角度とされた、横長の略直角三角形形状となっている。楔部材6の高さ寸法(
図14における上下方向寸法)は、作業用切欠部30の上下方向寸法(
図1における上下方向寸法)よりも小さくなっている。また、楔部材6は、
図15に示すように、平面視で、略長方形形状となっている。
【0026】
また、この実施例の楔部材6は、後端が厚く先端に向かって薄くなる板状部材となっている。なお、楔部材は、金属板の後端部を折り曲げ、傾斜平板部とその後端に下方に折曲した折曲部を有するものであってもよい。
楔部材6の形成材料としては、コンクリート材、合成樹脂、ゴム、金属などが使用できる。特に、楔部材6は、構造物形成用基板1と構造物形成用部材間への挿入時に、プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板1および構造物形成用部材8に損傷を与えないものが好ましい。このため、楔部材6の形成材料としては、合成樹脂、ゴム材が好適である。合成樹脂、ゴムとしては、ある程度の硬度を有するものが好ましく、硬質もしくは半硬質の合成樹脂およびゴムが好ましい。具体的には、硬質もしくは半硬質の合成樹脂およびゴムとしては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、MS樹脂(メタクリレート-スチレン共重合体)、ポリ塩化ビニル(硬質塩化ビニル)、ポリアミド(6ナイロン,66ナイロン)等の合成樹脂が好ましく、ブチルゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴムが好ましい。
なお、構造物形成用基板1は、そこに形成された作業用切欠部30の数(ここでは、4つ)と同等の数、またはそれより少ない数の楔部材6を備えていることが好ましい。
【0027】
また、本発明の基礎地盤上に側溝を構築するための側溝構築用部材は、プレキャストコンクリート製の側溝形成用部材8と、上述のプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板1と、複数の上述の楔部材6とを備える。
この実施例の側溝構築用部材では、
図7および
図8に示す構造物形成用部材としてのプレキャストコンクリート製の側溝形成用部材8を用いている。
側溝形成用部材8は、対向する一対の側壁部82,83と、一対の側壁部82,83の上端同士を連結する上壁部84(ここでは、長手方向の両端部に形成された2本の梁状の連結部)と、一対の側壁部82,83の下端に形成された下端開口部86[ここでは、側溝形成用部材8は、下部に底面部(一対の側壁部82,83の下部同士を連結する部分)を備えていない]と、上壁部84に設けられた開口部85とを備え、一対の側壁部82,83の下端をプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板1の複数の梁部50上に載置可能である。なお、
図7に示すように、側溝形成用部材8の対向する一対の側壁部82,83の外面間の距離[幅方向寸法(
図7における左右方向寸法)]は、構造物形成用基板1の一対の側板部10,20の内面間の距離[幅方向寸法(
図7における左右方向寸法)]よりも若干小さくなっている。
【0028】
次いで、本発明の構造物形成用基板1を用いる構造物の施工方法を図面に示した実施例を用いて説明する。
【0029】
本発明の構造物の施工方法は、プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板1および楔部材6を準備する工程と、構造物形成用基板1を載置する基礎地盤7にモルタル材71を敷設する基礎地盤処理工程と、モルタル材71が敷設された基礎地盤7上に構造物形成用基板1を載置する構造物形成用基板載置工程と、構造物形成用基板1の梁部50上に構造物形成用部材8を載置する構造物形成用部材載置工程と、楔部材6を作業用切欠部30より、構造物形成用部材8の底面81と梁部50の上面51間に楔部材6を挿入し、構造物形成用部材8の高さを調整する構造物形成用部材高さ調整工程と、構造物形成用基板1の底板部40上に生コンクリート9を打設して、構造物形成用部材8と構造物形成用基板1とを連結する生コンクリート打設工程とを行う。
【0030】
本実施例では、構造物形成用部材8として、
図7および
図8に示すような、プレキャストコンクリート製の側溝形成用部材8を用い、そのような側溝形成用部材8と上述した構造物形成用基板1と楔部材6とを備える側溝構築用部材を用いる側溝の施工方法について説明する。
ここで、側溝構築用部材は、基礎地盤上に側溝を構築するための側溝構築用部材であって、プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板1と、対向する一対の側壁部82,83と、一対の側壁部82,83の上端同士を連結する上壁部84(ここでは、長手方向の両端部に形成された2本の梁状の連結部)と、一対の側壁部82,83の下端に形成された下端開口部86[ここでは、側溝形成用部材8は、下部に底面部(一対の側壁部82,83の下部同士を連結する部分)を備えていない]と、上壁部84に設けられた開口部85とを備え、一対の側壁部82,83の下端をプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板1の複数の梁部50上に載置可能であるプレキャストコンクリート製の側溝形成用部材8と、プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板1の作業用切欠部30の側板部10,20の側面における開口幅より幅が小さく、かつ、先端に向かって肉薄となる複数の楔部材6とを備える。
【0031】
すなわち、本発明の側溝の施工方法は、上述した側溝構築用部材(プレキャストコンクリート製の構造物形成用基板1、側溝形成用部材8、および楔部材6)を準備する工程と、構造物形成用基板1を載置する基礎地盤7にモルタル材71を敷設する基礎地盤処理工程と、モルタル材71が敷設された基礎地盤7上に構造物形成用基板1を載置する構造物形成用基板載置工程と、構造物形成用基板1の梁部50上に、側溝形成用部材8の一対の側壁部82,83の下端を載置する側溝形成用部材載置工程と、楔部材6を作業用切欠部30より、側溝形成用部材8の側壁部82,83の底面81と梁部50の上面51間に楔部材6を挿入し、側溝形成用部材8の高さを調整する側溝形成用部材高さ調整工程と、構造物形成用基板1の底板部40上に生コンクリート9を打設して、側溝形成用部材8と構造物形成用基板1とを連結するとともに、側溝の底面部を形成する生コンクリート打設工程とを行う。
【0032】
まず、側溝構築用部材を準備する工程では、上述したプレキャストコンクリート製の構造物形成用基板1、側溝形成用部材8、および楔部材6を準備する。
ここで準備される構造物形成用基板1は、プレキャストコンクリート製、すなわち、現場での側溝(構造物)の施工に先立って予め工場(現場と異なる場所)で製造されるものである。また、楔部材6も、構造物形成用基板1と合わせて(または構造物形成用基板1を構成するものとして)予め製造される。構造物形成用基板1、側溝形成用部材8、および楔部材6は、製造された場所から現場に運搬されて、準備される。
【0033】
そして、構造物形成用基板1を載置する基礎地盤7にモルタル材71を敷設する基礎地盤処理工程を行う。
この工程では、構造物形成用基板1を載置する基礎地盤7に、モルタル材71を敷設する。ここでは、モルタル材71として、所謂空モルタルと言われる(ドライモルタルや空練りモルタルとも言われる)、セメントと砂とを水が入っていない(または僅かに入っている)状態で練り混ぜたものが使用されることが好ましい。なお、この基礎地盤処理工程の一環として、モルタル材71の敷設に先立って、基礎地盤7の下地処理[砕石(基礎地盤上ないし基礎地盤中の石を砕くこと)や転圧等]を行ってもよい。このようなモルタル材71を用いた基礎地盤処理工程は、従来、構造物形成用基板1や構造物形成用部材(側溝形成用部材8)を基礎地盤7上に載置する前に実施されていた基礎コンクリートの打設と比べて、簡易に実施することができる。
【0034】
次いで、モルタル材71が敷設された基礎地盤7上に構造物形成用基板1を載置する構造物形成用基板載置工程を行う。
この工程では、
図6に示すように、モルタル材71が敷設された基礎地盤7上に構造物形成用基板1を載置する。
【0035】
続いて、プレキャストコンクリート製の側溝形成用部材8(構造物形成用部材)を載置する側溝(構造物)形成用部材載置工程を行う。
この工程では、
図7および
図8に示すように、構造物形成用基板1の梁部50上に、側溝形成用部材8の側壁部82,83の下端を載置する。ここでは、1つの構造物形成用基板1に2つの側溝形成用部材8を長手方向に並べて載置する。各側溝形成用部材8は、それぞれ、複数の梁部50上に載置され、長手方向において安定する。また、
図7に示すように、側溝形成用部材8の下部[構造物形成用基板1(梁部50)に載置される部分]の幅方向寸法(
図7の左右方向寸法)は、構造物形成用基板1の一対の側板部10,20の対向方向寸法よりも小さくされている。これにより、側溝形成用部材8は、構造物形成用基板1上において、側板部10,20に乗り上げることなく、一対の側板部10,20間に安定して載置される。
【0036】
続いて、側溝(構造物)形成用部材高さ調整工程を行う。
この工程では、楔部材6を作業用切欠部30より、側溝形成用部材8の側壁部82,83(構造物形成用部材)の底面(下端面)81と梁部50の上面51間に挿入し、側溝形成用部材8の高さを調整する。具体的には、
図9および
図10に示すように、楔部材6を側板部10の外部側方から先端部(肉薄部)より側溝形成用部材8(底面81)と梁部50(上面51)との間に挿入していく。楔部材6は、基端に向かって徐々に肉厚となっており、楔部材6の挿入量を調整することで、側溝形成用部材8の高さを調整できる。言い換えれば、楔部材6を側溝形成用部材8(底面81)と梁部50(上面51)との間に挿入し、その挿入量を調整することで、構造物形成用基板1や側溝形成用部材8(構造物形成用部材)の製造誤差や破損によるズレやガタツキ、さらには、上述した基礎地盤処理工程、構造物形成用基板載置工程、および側溝(構造物)形成用部材載置工程の施工中に起こる誤差や破損等を修正することができ、所望の側溝(構造物)を得ることができる。
なお、本実施例では、各側溝形成用部材8の各側壁部82,83に対応した部位(4箇所)に作業用切欠部30が設けられており、長手方向および短手方向において適切に高さ調整が可能である。
【0037】
また、本実施例では、
図9に示すように、楔部材6の略直角とされた角(
図14中θで示す角)が、梁部50の上面51と略面一とされた作業用切欠部30の下面31上に配置される。これにより、楔部材6の外面(
図9における右端の面)が略垂直となり、楔部材6を側板部10の外部側方から先端部(肉薄部)より側溝形成用部材8(底面81)と梁部50(上面51)との間に挿入する作業が容易となる。
【0038】
また、
図9および
図13に示すように、楔部材6は、側壁部11,21(
図9では側壁部11)から外方に突出しないように挿入されることが好ましい。言い換えれば、楔部材6は、側溝(構造物)形成用部材高さ調整工程後において、側壁部11,21から上方に突出しないものであることが好ましい。また、楔部材6としては、側溝(構造物)形成用部材高さ調整工程後において、後端部が、側壁部11,21から側部外方に突出しない長さを有するものであることが好ましい。
【0039】
続いて、生コンクリート打設工程を行う。
この工程では、構造物形成用基板1の底板部40上に生コンクリート9を打設して、側溝形成用部材8(構造物形成用部材)と構造物形成用基板1とを連結するとともに、側溝の底面部を形成する。
図11および
図12に示すように、生コンクリート9は、構造物形成用基板1の側板部10,20の高さを超えない量において打設されることが好ましい。言い換えれば、構造物形成用基板1は、側板部10,20が、その上面11,21が、複数の梁部50の上面よりも上方に突出しているため、底板部40上に打設された生コンクリート9が、構造物形成用基板1の側方外部に流出することが抑制される。また、
図12に示すように、打設された生コンクリート9の一部は、側溝形成用部材8(側壁部82,83の外側面)と側板部10,20(の内側面)との間に進入して、硬化する。これにより、側溝形成用部材8(構造物形成用部材)の下部が構造物形成用基板1上において強固に固定される。
【0040】
なお、このような側溝の施工方法においては、現場において側溝形成用部材8を載置した後、生コンクリート9の打設(側溝の底面部の形成)工程において、道路の勾配に関係なく水路(側溝の底面部)の勾配(水の流れ)を自由に設定することもできる。すなわち、生コンクリート打設工程は、形成される側溝の底面に勾配が形成されるように行うことができる(水路の勾配は極めて小さく図面では認識できない程度であるため、
図11においては勾配を省略している)。なお、そのような側溝の底面部の形成は、生コンクリートを打設して側溝形成用部材(構造物形成用部材)と構造物形成用基板とを連結するとともに、側溝の底面部の一部(基礎コンクリート部)を形成した後、さらに基礎コンクリート部上に、側溝の底面の勾配を調整するための調整コンクリート部を形成(打設)することにより行ってもよい。
【0041】
また、上述したように、構造物形成用基板1の底板部40には、底板部40上に打設された生コンクリート9の基礎地盤7への到達を許容するような貫通孔は形成されていない。そのため、基礎地盤7と構造物形成用部材1とは生コンクリート9によって連結されない。なお、底板部40は、完全に貫通孔が形成されていないものではなく、保管・運搬時の水抜き用の比較的小さな貫通孔は形成されていてもよい。
【0042】
そして、
図13に示すように、生コンクリート9の打設によって(生コンクリート打設工程において)、楔部材6は、打設された生コンクリート9中に埋設されることが好ましい。この実施例の施工方法では、作業用切欠部30内に、生コンクリート9が流入し、楔部材6の側面および上面は、生コンクリート9により覆われたものとなる。そして、生コンクリート9を打設し、その硬化後に、構造物形成用基板1および側溝形成用部材8の側部には、土砂が投入され、側溝(構造物)が形成される。
【0043】
なお、作業用切欠部30の下面31は梁部50の上面51と略面一でなくてもよい。楔部材6の挿入性を考えると、作業用切欠部30の下面31は、梁部50の上面51と略面一、または梁部50の上面51よりも下方にあることが好ましい。また、作業用切欠部30(下面31)の長手方向寸法(L1)は、梁部50(上面51)の長手方向寸法と略同一でなくてもよい。
【0044】
なお、作業用切欠部30の数は上述の実施例の数に限られない。例えば、全ての梁部50の形成部位(上述した構造物形成用基板1では14箇所)において作業用切欠部30が形成されていてもよい。また、作業用切欠部30は、側板部10,20にそれぞれ異なる数で形成されていてもよく、側板部10,20のいずれか一方のみに形成されていてもよい。
【0045】
構造物形成用基板の内部に、補強用の鉄筋を埋設してもよい。例えば、
図16および
図17に示す構造物形成用基板1aのように、作業用切欠部30が形成された側板部10,20の強度を向上させるために、側板部10,20内に構造物形成用基板1aの長手方向に延びる鉄筋15,25を埋設してもよい。また、構造物形成用部材8を載置する梁部50の強度を向上させるために、梁部50内(または底板部40の梁部50形成部位内)に、それぞれ、構造物形成用基板1aの短手方向に延びる鉄筋55を埋設してもよい。なお、このような鉄筋15,25,55が埋設された構造物形成用基板1aは、予め鉄筋15,25,55を結合した鉄筋組立体を準備し、構造物形成用基板1aの鉄筋15,25,55の配置部(
図17における鉄筋15,25,55よりも下側の部分)にコンクリート材を打設した後、鉄筋15,25,55(鉄筋組立体)を載置し、続いて、構造物形成用基板1aの残りの部分を形成するコンクリート材を打設することにより製造することができる。
【符号の説明】
【0046】
1,1a 構造物形成用基板
10,20 側板部
11,21 上面
30 作業用切欠部
31 下面
40 底板部
41 上面
50 梁部
51 上面
6 楔部材
7 基礎地盤
71 モルタル材
8 構造物形成用部材(側溝形成用部材)
81 底面
82,83 側壁部
84 上壁部
85 開口部
86 下端開口部
9 生コンクリート