(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】散薬配分装置及び散薬分包装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20240917BHJP
B65B 1/30 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
A61J3/00 310F
B65B1/30 B
(21)【出願番号】P 2021082522
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2024-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】大村 司郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 繁幸
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特許第6777832(JP,B1)
【文献】特開2000-211747(JP,A)
【文献】特開2020-089655(JP,A)
【文献】特開平10-291501(JP,A)
【文献】特許第6852932(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
B65B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に散薬が収容され、収容された散薬を少量ずつ放出する散薬供給装置と、
前記散薬供給装置から放出された散薬を受け取り、回転することにより外周近傍に散薬が均等に配分される配分円盤と、
前記配分円盤が載置されて前記配分円盤を回転駆動する回転駆動部と、
前記回転駆動部の下方に設けられ、前記散薬供給装置を除く、前記配分円盤及び前記回転駆動部の総重量を測定することにより、前記散薬供給装置から前記配分円盤に供給された散薬の重量を測定する秤量部と、を有し、
前記散薬供給装置は、
内部に散薬を収容する内部が円筒状の第1の薬剤収容部と、
前記第1の薬剤収容部の下部に設けられ、内部が下方へ向け径が縮小する逆円錐部と、前記逆円錐部の下方に形成された円筒部とを備えた第2の薬剤収容部と、
前記第1の薬剤収容部の下部と前記第2の薬剤収容部とを仕切るとともに、前記第1の薬剤収容部から前記第2の薬剤収容部に散薬を供給する仕切り部と、
前記逆円錐部から前記円筒部に渡って延び、前記逆円錐部から前記円筒部に対応する部分の外周部に前記円筒部の内壁に近接したスクリューが形成され、回転することにより、前記逆円錐部内の散薬を前記スクリューの凹部に沿って下方に移送して前記円筒部の下端から放出させる散薬放出軸と、
を有することを特徴とする散薬配分装置。
【請求項2】
前記散薬放出軸は、
前記スクリューの最下部の凹部にのみ前記凹部から径方向に突出して形成され、前記スクリューの凹部によって移送される散薬をほぐす山部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の散薬配分装置。
【請求項3】
前記仕切り部は、
回転することにより前記第1の薬剤収容部から第2の薬剤収容部に散薬を供給する回転体を有し、
前記第1の薬剤収容部内に前記回転体を回転駆動する散薬供給軸をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の散薬配分装置。
【請求項4】
前記仕切り部は、
前記第1の薬剤収容部の下部を塞ぐとともに前記第1の薬剤収容部から散薬を落下させる孔部と、下側に中心部から外周方向に向かうガイド壁とが形成された底蓋と、
前記底蓋の下部に回転可能に設けられ、その上面が前記ガイド壁の下面と接して回転することにより、前記底蓋の孔部を介して落下した散薬を載置するとともに、回転に伴って散薬を前記ガイド壁に沿って内周側から外周側に移送し、外周端に形成される放出口から前記第2の薬剤収容部に放出する回転体とを有し、
前記第1の薬剤収容部内に、前記底蓋に形成された貫通孔を通して設けられ、前記回転体を回転駆動する散薬供給軸をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の散薬配分装置。
【請求項5】
前記散薬供給軸と前記散薬放出軸とは、同一の回転中心を有する異なる軸であり、かつ独立して回転させられる、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の散薬配分装置。
【請求項6】
前記第2の薬剤収容部に設けられ、前記第2の薬剤収容部に収容されている散薬の量を検出するセンサを有し、前記センサによって前記第2の薬剤収容部内の散薬の量が第1の所定量よりも少なくなったことを検出したとき前記散薬供給軸を回転させて、前記第1の薬剤収容部から前記第2の薬剤収容部への散薬の供給を開始し、前記センサによって前記第2の薬剤収容部内の散薬の量が前記第1の所定量よりも多い第2の所定量よりも多くなったことを検出したとき前記散薬供給軸の回転を停止させて前記第1の薬剤収容部から前記第2の薬剤収容部への散薬の供給を停止する、
ことを特徴とする請求項5記載の散薬配分装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項記載の散薬配分装置と、
前記配分円盤から1包分ずつ散薬を放出して包装する包装装置と、
を有することを特徴とする散薬分包装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散薬を配分円盤に少量ずつ供給して配分する散薬配分装置及び散薬を配分円盤から1包分ずつ供給して包装する散薬分包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の散薬分包装置は、一処方分の散薬の重量を薬剤師が計量して、その計量した散薬をホッパに収容していた。そのホッパは底面が水平面からやや下方に傾斜した振動面を有し、振動面を振動させることによって内部の散薬が放出口を介して放出され、配分円盤の外周に設けられた凹溝に撒かれることによって、リング状の散薬の山を形成している。そして、リング状の散薬の山から1包分ずつ放出されて包装紙に収容されている。
【0003】
しかしながらこれでは、薬剤師がその都度散薬の重量を計量しなければならず、薬剤師の負担が大きいものであった。これを解消するために、散薬を収容した容器から作動装置を利用して散薬を配分円盤に放出し、配分円盤の重量を測定することにより放出した散薬の重量を計量するようにしたものがある(特許文献1)。
【0004】
また、散薬ではないが粉粒体を定量供給する技術として、逆円錐形状のホッパの底部に外周面にネジ溝を形成したスクリュー軸を回転自在に挿入し、スクリュー軸を回転させることによって粉粒体をホッパの下方から排出する技術が知られている(特許文献2)。
【0005】
一般の散薬の定量放出ホッパでは、計量目標値に対する一致度が求められるだけであるが、配分円盤秤量方式では、配分円盤に撒かれる途中の流量の一定性が求められる。この一定性が変動すると、配分円盤の円周360°の範囲で、堆積した散薬の質量の不均一が発生し、各包に収容される散薬の質量が異なったものとなるからである。計量目標値が大きい場合は、散薬放出完了までの配分円盤の回転回数が十分多くなることで、この質量不均一は円周方向に拡散される。しかしながら新生児や小児用の処方にあっては、その処方全量が0.5g等の小量になる場合があり、この0.5gの放出完了までの配分円盤の回転回数が減少して、配分円盤の円周360°方向での質量誤差が十分に拡散されない虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6777832号公報
【文献】特開2000-211747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の技術では、極少量の散薬を配分円盤に均等に供給することは考慮されておらず、少量の散薬を配分した場合は配分円盤上に捲かれた散薬は円周方向で不均一なものとなってしまう。
【0008】
また、特許文献2の垂直なスクリュー方式を散薬収容容器に適用した場合、スクリュー上部に散薬が大量にあると、その重量によりスクリューの回転に大きな力が必要となり、場合によってはスクリューを回転させることができず、結果として内部の散薬を放出できなくなる虞があった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、配分円盤上に配分される散薬の均一性が向上する散薬配分装置及び散薬分包装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の散薬配分装置は、内部に散薬が収容され、収容された散薬を少量ずつ放出する散薬供給装置と、散薬供給装置から放出された散薬を受け取り、回転することにより外周近傍に散薬が均等に配分される配分円盤と、配分円盤が載置されて配分円盤を回転駆動する回転駆動部と、回転駆動部の下方に設けられ、散薬供給装置を除く、配分円盤及び回転駆動部の総重量を測定することにより、散薬供給装置から配分円盤に供給された散薬の重量を測定する秤量部と、を有し、散薬供給装置は、内部に散薬を収容する内部が円筒状の第1の薬剤収容部と、第1の薬剤収容部の下部に設けられ、内部が下方へ向け径が縮小する逆円錐部と、逆円錐部の下方に形成された円筒部とを備えた第2の薬剤収容部と、第1の薬剤収容部の下部と第2の薬剤収容部とを仕切るとともに、第1の薬剤収容部から第2の薬剤収容部に散薬を供給する仕切り部と、逆円錐部から円筒部に渡って延び、逆円錐部から円筒部に対応する部分の外周部に円筒部の内壁に近接したスクリューが形成され、回転することにより、逆円錐部内の散薬をスクリューの凹部に沿って下方に移送して円筒部の下端から放出させる散薬放出軸と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の散薬分包装置の円盤配分部の斜視図。
【
図2】実施形態の散薬分包装置の円盤配分部の正面図。
【
図5】実施形態の薬剤収容容器の下部の一部を示す斜視図。
【
図6】実施形態の散薬放出軸と円筒部とを示す模式図。
【
図8】実施形態の仕切り板と回転体とを示す断面図。
【
図14】実施形態の散薬分包装置の円盤配分部と秤量部を示す斜視図。
【
図15】実施形態の散薬分包装置の円盤配分部と秤量部を示す正面図。
【
図16】実施形態の散薬分包装置の円盤配分部と回転駆動部の分解正面図。
【
図18】実施形態の散薬分包装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る散薬分包装置について、図面を用いて説明する。
【0013】
図1は本実施形態の散薬分包装置の一部である円盤配分部の斜視図で、
図2は散薬分包装置の正面図である。
図1及び
図2において、円盤配分部は、秤量装置10とその上部に配置された回転駆動部30と、回転駆動部30の上部に設置された散薬の配分円盤20とから構成されている。秤量装置10は分包装置の筐体連結部16に固定されている。
【0014】
配分円盤20の上部には図示しない筐体に固定された散薬供給装置60が設けられている。この散薬供給装置60は、図示しない筐体に固定された支持部材61に着脱自在に固定された散薬収容容器62と、散薬収容容器62内の回転軸(散薬供給軸)を回転駆動するモータ63とを有する。50は配分円盤20から散薬を1包分ずつ掻き出す掻き出し部で、この掻き出し部50で掻き出された散薬は落下ホッパ51によって後述する包装装置に送られる。
【0015】
次に、散薬供給装置60について、
図3乃至
図6を用いて詳細に説明する。
図3は、散薬収容容器62の主たる部品の構成を表した分解斜視図、
図4は、散薬収容容器62の断面図であり、
図4(a)は、シャッタ622を閉じた状態を示し、
図4(b)はシャッタ622を開いた状態を示している。
【0016】
散薬収容容器62は、上部に設けられ、内部が円筒状に形成され、内部に大量の散薬が収容可能な第1の薬剤収容部610を有している。そして、第1の薬剤収容部610の上部には上蓋619が開閉可能に設けられている。また、第1の薬剤収容部610の下部には、第1の薬剤収容部610に比して少量の散薬が収容される第2の薬剤収容部620が設けられている。第1の薬剤収容部610と第2の薬剤収容部620との間には、仕切り板660(仕切り部)を挟み込んだ構造となっている。
【0017】
第1の薬剤収容部610の内部にはモータ63によって回転駆動される散薬供給軸630が設けられている。この散薬供給軸630の上部には図示を省略しているが、モータ63の回転軸によって回転させられる動力伝達機構が取付けられている。この動力伝達機構はモータ63の回転軸を歯車で減速したものが一般的であるが、ゴムローラの接触式でもベルトによる駆動であっても、また、磁気を使った非接触ローラでも構わない。
【0018】
また、散薬供給軸630の下部は、後に詳述する仕切り板660の回転体に接続され、回転体が回転することにより、第1の薬剤収容部610から第2の薬剤収容部620に散薬が供給されるようになっている。
【0019】
また、この散薬供給軸630の下部は、第2の薬剤収容部620から散薬を外部に放出するスクリュー633が下部に形成された散薬放出軸632と軸方向に着脱自在に接続されており、散薬供給軸630の回転とともに、第2の薬剤収容部620内の散薬が外部に放出される。
【0020】
第1の薬剤収容部610の内部が略円筒状であるのに対し、第2の薬剤収容部620は、その上部は略円筒状であるが下部には内部が下方へ向けて径が縮小する逆円錐部626が形成されている。また、この逆円錐部626の下方には、逆円錐部626と一体に形成された円筒部628が設けられている。
【0021】
円筒部628の下部には散薬放出口639が形成されており、この散薬放出口639は散薬を放出しないときはシャッタ622によって閉鎖されるようになっている。シャッタ開閉機構640はシャッタ622の開閉を行う機構で、シャッタ駆動部642がスプリング644によって上方に付勢されることによってシャッタ622は閉鎖される。また、シャッタ駆動レバー64が図示しないモータによって下方に駆動されることによってシャッタ駆動部642が下方に押圧され、シャッタ622が回動軸623を支点として回動し、シャッタ622が開放される。
【0022】
前述のとおり、散薬放出軸632の下部は、逆円錐部626から円筒部628に対応する部分に渡って延び、逆円錐部626から円筒部628に対応する部分の外周部に円筒部628の内壁に近接したスクリュー633が形成されている。スクリュー633の外周と円筒部628の内壁との間隙は収容されている散薬が落下しない程度に近接していれば、一部は接触していてもよい。このように構成することで、散薬放出軸632が回転することによって、逆円錐部626内の散薬はスクリュー633の凹部に沿って下方に移送され、円筒部628の下部の散薬放出口639から放出される。
【0023】
図5は散薬収容容器62を下方から見た斜視図で、散薬放出口639を塞ぐシャッタ622を開放した状態を示している。
図4及び
図5から判るように、散薬放出軸632の下部は、円筒部628の下部に設けられた軸受け638によって支承されている。
【0024】
図6は散薬放出軸632のスクリュー633と円筒部628との関係を模式的に示したものであり、
図6(a)は断面図を示し、
図6(b)は散薬放出軸632のスクリュー633を下方から見た図である。
図6(a)において、散薬放出軸632は上方から見て時計方向120に回転するようになっている。また、
図6(b)では、スクリュー633を下方から見た図であるので、その回転方向は反時計方向の回転である。
【0025】
散薬放出軸632のスクリュー633はリードがピッチLで形成されており、スクリュー633の凹部に散薬Pが収容され、散薬放出軸632が回転することによって散薬Pが下方に移送され、下端部で外部に放出される。
【0026】
スクリュー633の回転のみによって散薬Pが移送されると、スクリュー633の下部ではスクリュー633の凹部の散薬Pが円筒部628の内壁との摩擦によって圧縮されて塊り(いわゆる「だま」)になる場合がある。その場合、スクリュー633が回転してスクリュー633の下部の散薬放出口639から散薬Pを放出すると、塊りになったまま散薬Pが落下し、結果として配分円盤20の円周上で不均一な散薬Pの配分となる虞がある。
【0027】
これを防止するためには、たとえばスクリュー633の最下部の凹部650にのみ、凹部650のリードの1/2Lの位置に凹部から径方向に突出した山部652を形成し、山部652の先端によってスクリュー633の凹部に収容されている散薬Pの塊をほぐす効果を出す応用も考えられる。ここで、この山部652の高さは、
図6(b)から判るように回転方向の先端部から徐々に高くなるように形成され、さらに、この山部652の幅(散薬放出軸632の軸方向の厚さ)は、
図6(a)から判るように回転方向の先端部から徐々に幅が大きくなるように形成されている。従って、散薬供給軸632をこのような形状にすれば、散薬Pが塊のまま放出されずに、配分円盤20に散薬を均一に撒くことができる。
【0028】
なお、
図4に示すように散薬放出軸632には、散薬放出軸632から径方向に突出して形成された2つの支持部635が設けられ、これらの支持部635の先端には逆円錐部626の内壁面近傍に沿って設けられた攪拌部材637が形成されている。この攪拌部材637は散薬放出軸632の回転に伴って一緒に回転し、逆円錐部626の内壁近傍の散薬Pを散薬放出軸632側に移送する機能を有している。
【0029】
すなわち、攪拌部材637の形状は
図4(a)の矢印A方向から見た
図7に示すように、三角柱となっており、三角柱の1つの側面637aが逆円錐部626の内壁と対向し、その側面637aと接しない辺が支持部635に接続されている。さらに、攪拌部材637の回転方向先端の辺637bを挟む2つの側面で形成される角度θが鋭角に形成されている。
【0030】
散薬放出軸632のスクリュー633によって散薬Pを下方に移送すると、散薬放出軸632近傍の散薬Pのみが放出され、いわゆる「蟻地獄」のように逆円錐部626の中央部に散薬Pが少なくなるが、攪拌部材637をこのような三角柱形状で構成することによって、逆円錐部626の内壁近傍の散薬Pを散薬放出軸632近傍に集めることができるものである。なお、この実施の形態では、攪拌部材637を散薬放出軸632の周りに1つのみ設けたが、2つ以上設けても良いことは勿論である。
【0031】
なお、同様の撹拌部材は第1の薬剤収容部610内の散薬供給軸630にも設けられている。すなわち、散薬供給軸630には、径方向に突出して形成された2つの支持部612が設けられ、これらの支持部612の先端には第1の薬剤収容部610の内壁面近傍に沿って設けられた攪拌部材614が形成されている。この攪拌部材614は散薬供給軸630の回転に伴って一緒に回転し、第1の薬剤収容部610内の散薬Pを散薬供給軸630側に移送する機能を有している。
【0032】
次に、
図8乃至
図10を用いて第1の薬剤収容部610から第2の薬剤収容部620に散薬を供給する構造と仕組みの一例について説明する。
図8は、第1の薬剤収容部610と第2の薬剤収容部620、およびその間の仕切り板660(仕切り部)の断面図である。
【0033】
図9は、仕切り板660の上部を形成し、第1の薬剤収容部610の下部を塞ぐ底蓋661を示すもので、(a)は真上から見た図、(b)は側面図、(c)は真下から見た図である。さらに、
図10は仕切り板660の下部を形成し、底蓋661の下面と接触する回転体670を示すもので、同様に(a)は真上から見た図、(b)は側面図、(c)は真下から見た図になっている。さらに
図11は底蓋661と回転体670とを組み合わせようとする状態を示すもので、(a)は底蓋661を斜め下から見た図、(b)は回転体670を斜め上から見た図である。
【0034】
図8に示すように第1の薬剤収容部610の下部には仕切り板660(仕切り部)の底蓋661と回転体670とが組合せて設けられている。そして、仕切り板660を構成する底蓋661には、中央に散薬供給軸630を通すための貫通孔666と、貫通孔666に隣接して、第1の薬剤収容部610に収容された散薬が落下するように2つの孔部662aと662bとが形成されている。
【0035】
一方、底蓋661の下側(裏側)には、貫通孔666の周囲に下側に突出した第1のガイド壁663が形成されている。また、第1のガイド壁663から外周方向に向かう第2のガイド壁664aと664bとが形成されている。この第2のガイド壁664aと664bは第1のガイド壁663から、それぞれ孔部662aと662bを囲むような位置に形成され、孔部662aと662bに到達した後は第1のガイド壁663との間隔が等間隔となるように延びている。そして、第2のガイド壁664aと664bの終端はそれぞれガイド壁が形成されずに、それぞれ第2のガイド壁664bと664aとの間に第1の薬剤収容部610の散薬の放出口665aと665bとを形成している。なお、これらのガイド壁663と664a、664bはすべて同じ高さで形成されている。
【0036】
また、
図8および
図11に示すように、底蓋661の下部には回転体670が設けられ、回転体670の上面がガイド壁663と664a、664bの下面と接して設けられている。この回転体670は円盤状の構造体で、中央上側に底蓋661の貫通孔666に嵌合するための円柱状凸部672が形成されている。円柱状凸部672の外径は、底蓋661の貫通孔666の内面に回転自在に接するとともに、回転体670の径は底蓋661の下側(裏側)のガイド壁664a、664bとも接する大きさとなっている。さらに、底蓋661の裏面に設けられた、ガイド壁664a、664bと接する部分には、回転体670とともに回転するシリコン製の第2の回転体673が回転体670の表面に接着した構造を有する。
【0037】
底蓋661及び回転体670をこのように構成することにより、底蓋661の孔部662aと662bから落下した散薬は第2の回転体673の上に載置される。そして、回転体670が回転すると、
図9および
図11に矢印669a、669bで示すように、散薬が第2の回転体673の上に載って移送され、第1のガイド壁663と、第2のガイド壁664a、664bとによって回転方向の移送が規制されることによって、第2のガイド壁664a、664bに沿って回転体670の外周方向および回転方向に移送される。
【0038】
そして、最終的に第2のガイド壁664aと664bと間の放出口665aと665bから散薬が第2の薬剤収容部620に放出される。なお、仕切り板はこのような構造に限定されるものではなく、第1の薬剤収容部610から第2の薬剤収容部620に供給される散薬の量の精度は必要ないことから、散薬供給軸630によって回転される回転体であれば、その他の構造も適用できる。
【0039】
なお、
図4及び
図8において、薬剤案内体615は第1の薬剤収容部610の散薬供給軸630の下部に形成され、第1の薬剤収容部610内部の散薬が孔部662aと662bに導かれるようにガイドする案内体である。
【0040】
これまで説明してきた実施形態においては、第2の薬剤収容部620から外部に散薬を放出するスクリュー633と、第1の薬剤収容部610から第2の薬剤収容部620に散薬を供給する回転体670とは単一のモータ63で共通の回転軸である散薬放出軸632及び散薬供給軸630によって回転駆動させられている。そのため、第2の薬剤収容部620からスクリュー633により外部に放出される散薬量と、第1の薬剤収容部610から第2の薬剤収容部620に供給される散薬量に差があると、長時間放出を繰り返すことにより、第2の薬剤収容部620の散薬量が少なくなったり、逆に、第2の薬剤収容部620に散薬が満杯となる虞がある。
【0041】
特に第2の薬剤収容部620に散薬がなくなった場合には、配分円盤20に撒かれる散薬の量が均一でなくなり、結果として1包ずつ包装した際の配分精度に問題が生じる虞がある。また、第2の薬剤収容部620に散薬が満杯となった場合は、散薬の放出量が均一でなくなったり、散薬の重量によりスクリュー633の回転に大きな力が必要となり、場合によってはスクリュー633を回転させることができず、散薬の放出ができなくなるという虞もある。
【0042】
この第2の薬剤収容部620の散薬の量が増減する原因は、第2の薬剤収容部620から散薬を放出させるスクリュー633の散薬放出軸632と、第1の薬剤収容部610から第2の薬剤収容部620に散薬を供給する回転体670の散薬供給軸630とが同じモータ63で回転しているためである。
【0043】
この課題は、スクリュー633と回転体670とをそれぞれ独立して回転させる構造とし、第2の薬剤収容部620に収容されている散薬の量を検出して、第1の所定の量よりも少なくなった場合に第1の薬剤収容部610から第2の薬剤収容部620に散薬を供給し、第2の薬剤収容部620に収容されている散薬の量が第1の所定量よりも多い第2の所定量よりも多くなったときに散薬の供給を停止することで解決を図ることが可能となる。
【0044】
この課題を解消するための散薬供給装置の変形例について、
図12及び
図13を用いて詳細に説明する。
図12は駆動部を省略した散薬供給容器162の断面図で、
図13は散薬供給軸と散薬放出軸の駆動部を示す斜視図である。
【0045】
図12において、散薬供給容器162が、内部に大量の散薬を収容し、上蓋719を上部に有する第1の薬剤収容部710と、内部の散薬を外部に放出するスクリュー733を内部に有する第2の薬剤収容部720とを、仕切り板760を挟み込んだ構造になっているのは、第1の実施形態と同様である。変形例が第1の実施形態と異なっているのは、主に回転軸の構成と駆動部とである。
【0046】
第1の薬剤収容部710から第2の薬剤収容部720に散薬を供給するための回転体770を回転させるための散薬供給軸730は、その下部を回転体770と嵌合した形態で、散薬供給容器162の上部まで設けられている。この散薬供給軸730は中空で形成されており、散薬供給軸730の軸の内部には散薬放出用の第2の回転軸790が、散薬供給軸730と同一の回転中心で設けられ、かつ、独立して回転可能に設けられている。また、第2の回転軸790は、その上端が散薬供給容器162の上部で散薬供給軸730よりも上部に突設した形態で設けられている。この第2の回転軸790は、第2の薬剤収容部720から外部に散薬を放出するスクリュー733を下部に有する散薬放出軸732と嵌合する形態で接続されている。
【0047】
そして、
図13に示すように、散薬供給軸730の上部には散薬供給受動ローラ194が設けられ、この散薬供給受動ローラ194はアイドルローラ195を介して、散薬供給用モータ197の軸に取付けられた散薬供給駆動ローラ196に接している。また、第2の回転軸790の上部には散薬放出受動ローラ203が設けられ、この散薬放出受動ローラ203はアイドルローラ204を介して、散薬放出用モータ205の軸に取付けられた散薬放出駆動ローラ206に接している。これら各ローラは第1の実施形態と同様にゴムローラ等の接触式でも歯車やベルトによる駆動であっても、磁気を使った非接触ローラであっても目的を果たすことができる。なお、719は散薬収容容器の上蓋を示している。
【0048】
散薬の放出にあたっては、散薬放出用モータ205を駆動して第2の回転軸790を回転駆動し、下部で嵌合している散薬放出軸732およびスクリュー733を回転させることにより、第2の薬剤収容部720から散薬を外部に放出する。
【0049】
一方、第2の薬剤収容部に必要な量の散薬があるか否かについては、たとえば第2の薬剤収容部720に設けた透過センサS1により検出するようになっている。具体的には、低レベル(L)に散薬がない場合(第1の所定量よりも少なくなった場合)には、散薬供給用モータ197を駆動して散薬供給軸730、および回転体770を回転させることによって、第1の薬剤収容部710内にある散薬を第2の薬剤収容部720に供給する。
【0050】
また、第2の薬剤収容部720に散薬が十分供給されたか否かは、透過センサS2により検出するようになっている。具体的には、高レベル(H)まで散薬がない状態では供給を継続する。そして、散薬の高さがHレベルまで到達した場合(第1の所定量よりも多い第2の所定量よりも多くなったとき)には、散薬供給用モータ197を停止させる。このように、センサS1とセンサS2とで第2の薬剤収容部720内の散薬の量の状態を検出しながら、散薬供給用モータ197を回転制御することにより、第2の薬剤収容部720内には、常に外部に放出可能な適量な散薬の量が存在することになる。
【0051】
このように第2の薬剤収容部720内部の散薬の量は、少なく、かつ一定であることからスクリュー733に係る重さが小さく、精度が良く安定した放出が可能となる。その結果、配分円盤20の外周に撒かれる散薬は円周方向で均一なものとなる。
【0052】
次に、
図2及び
図14乃至
図18を用いて散薬分包装置について説明する。
図14は円盤配分部から配分円盤20を取り外した状態の斜視図で、
図15は円盤配分部から配分円盤20を取り外した状態の正面図である。
図16は回転駆動部30を分解し、モータ32とプーリ38とを回転駆動部30のベース31から上方に移動した状態を示す図である。
【0053】
図14乃至
図16に示されるように、秤量装置10の被測定物載置部12には回転駆動部30のベース31が固定されている。
図16の分解図に示されるように、ベース31にはベアリング35が固定されており、このベアリング35の周囲にはプーリ38が回転可能に設けられている。このプーリ38の上部には配分円盤ベース36が固定されており、この配分円盤ベース36の上部には配分円盤20が着脱自在に固定されている。
【0054】
プーリ38の外周にはタイミングギヤが形成されており、ベース31に固定されたモータ32の軸に取り付けられたタイミングギヤ33とプーリ38との間にはタイミングベルト34が掛渡されている。
【0055】
このような構成とすることにより、秤量装置10は、その秤量装置10の被測定物載置部12に固定されている回転駆動部30のベース31を含み、ベース31上に設けられているモータ32、プーリ38、ベアリング35、配分円盤ベース36、及び配分円盤20等の総重量を測定することが可能である。換言すると、配分円盤20に散薬が供給されていない状態では回転駆動部30等の風袋の重量を測定していることになる。
【0056】
図2に戻って説明すると、配分円盤20の上部に設けられた散薬供給装置60から散薬を配分円盤20の溝に少量ずつ落下させる。この散薬供給装置60は分包装置の筐体に固定されており、秤量装置10の重量測定対象とはなっていない。したがって、秤量装置10は被測定物載置部12に固定された回転駆動部30、配分円盤20等の総重量に、散薬収容容器62から配分円盤20に供給された散薬の重量を加算した重量を測定することになる。このため、秤量装置10が測定した重量から前述した風袋の重量を差し引くことにより、散薬収容容器62から配分円盤20に実際に供給した散薬の重量を算出することができる。
【0057】
散薬収容容器62から配分円盤20に散薬を供給するときは、モータ32によって配分円盤20を回転させながら散薬供給装置60のモータ63を回転させることによって散薬収容容器62から散薬を配分円盤20上に落下させる。これによって配分円盤20上に環状の散薬の山が形成される。
【0058】
また、50は配分円盤20に形成された環状の散薬を一包分ずつ落下ホッパ51に落下させるための掻き出し部である。この掻き出し部50は、レバー53がモータ52によって、軸54を中心にして上下に回動可能である。このレバー53の先端にはディスク55が取り付けられ、モータ56で矢印56a方向に回転可能である。散薬を回転する配分円盤20に捲くときはレバー53が反時計方向に回動してディスク55が配分円盤20から離れ、配分円盤20から散薬を分配するときはレバー53が時計方向に回動してディスク55が配分円盤20と接する。
【0059】
そして、ディスク55が回転することによって配分円盤20上に捲かれた散薬を1包分ずつ落下ホッパ51に落下させ、2つ折りされた分包紙57間に収容されるものである。これら掻き出し部50については周知の技術であり、例えば特開2019-202801号公報記載のものである。
【0060】
ここで、配分円盤20の下には秤量装置10が設けられており、散薬を収容する分包紙57を特開2019-202801号公報記載のように水平方向に搬送することができない。すなわち、配分円盤20から放出された散薬を落下ホッパ51に落下させ、水平搬送される包装紙に収容させるためには、落下ホッパ51を縦に長いものにする必要が生じる。これは、長い落下ホッパ中を散薬が通過することとなり、落下ホッパに付着する散薬が多くなることから、包装される散薬の重量が不正確なものとなる虞がある。また、落下ホッパ51が大きくなることから分包装置も大型となる虞がある。
【0061】
このため、
図2に示すように包装装置70は斜め搬送の包装装置が用いられている。すなわち、2つ折りされた分包紙57を巻き付けたロール(図示省略)を有する水平搬送の包装装置70が、その包装装置の70の底面が分包装置に対して斜めに装着されるようになっている。このロールから前方に引き出された分包紙57は前面側で右斜め下方に搬送される。
【0062】
そして、
図2に示すように、配分円盤20から配分された散薬は、配分円盤20のすぐ下で落下ホッパ51に落下させ、2つ折りされた分包紙57間に収容する。この散薬が収容された分包紙57は包装装置70内で1包ずつにシールされて、図中右下方向に斜め搬送され、秤量装置10の下を通って分包薬剤集積部75に集積される。このように、包装装置70の分包紙57の搬送路を斜め搬送とすることにより、配分円盤の下方に秤量装置10を設けても装置を大型化することなく構成することができる。散薬が収容された分包紙57は分包薬剤集積部75に設けられたリールによって巻き取るようにしてもよいし、機体外に搬送排出するようにしてもよい。
【0063】
図17は散薬分包装置のブロック図である。
図17において、300は散薬分包装置で、その全体制御部310は薬局の処方箋システム400に接続されている。全体制御部310には包装装置70と円盤配分部330の円盤配分制御部340が接続されている。円盤配分部330の円盤配分制御部340には、配分円盤20の回転用の第1のモータ32、掻き出しディスクレバー駆動用の第2のモータ52、ディスク回転用の第3のモータ56、散薬供給装置60の駆動用モータ63及び秤量部10がそれぞれ接続されている。
【0064】
次に、このように構成された円盤配分部の秤量動作について
図18を参照しながら説明する。
【0065】
散薬の分包動作が開始されると、全体制御部310は処方箋システム400から処方すべき散薬の種類と一処方分の散薬の重量情報とを取得する(ST1)。全体制御部110は取得した散薬の重量情報を円盤配分部330の円盤配分制御部340に出力する。その後、円盤配分制御部340は、回転駆動部30のモータ32を駆動して配分円盤20を回転させて(ST2)、配分円盤20への散薬の供給の準備が完了する。そして、散薬が供給される前に、配分円盤20及び回転駆動部30等の風袋の重量が測定される(ST3)。この風袋の重量は散薬が供給された後に測定された重量から減算されて散薬のみの重量を演算してもよいし、風袋の重量を測定した値をゼロ基準として散薬のみの重量を得るようにしてもよい。
【0066】
その後、円盤配分制御部340は、シャッタ開閉用(開閉アーム駆動用)モータ(図示せず)を動作させてシャッタ駆動レバー64を駆動し、散薬収容容器62のシャッタ622を開放し(ST4)、散薬供給装置60の駆動モータ63を回転駆動させることによって(ST5)、散薬収容容器62から散薬を少量ずつ配分円盤20に落下する。このように散薬を落下させながら秤量装置10によって配分円盤20へ落下された散薬の重量を測定する(ST6)。
【0067】
その後、散薬を供給しつつ、測定した散薬の重量が1処方量の重量に達したか否かを判断し(ST7)、供給された散薬の重量が1処方量の重量に達するまで継続される。1処方量の重量に達すると、散薬供給装置60の駆動用モータ63の駆動を停止するとともに、シャッタ開閉用(開閉アーム駆動用)モータを動作させて、散薬収容容器62のシャッタ622を閉鎖し、さらに回転駆動部30のモータ32を停止させる(ST8)。
【0068】
配分円盤20に一処方分の散薬が供給されると、第2のモータ52を回転させ、掻き出し用のディスク55が配分円盤20に接するように移動した後、第3のモータ56と配分円盤20を間欠的に回転し、掻き出し部50によって1包分ずつ散薬を落下ホッパ51に落下させる掻き出し動作が行われる(ST9)。落下ホッパ51に落下された散薬は包装装置70によって1包ずつシールして分包薬剤集積部75に集積される。
【0069】
以上のように構成された実施形態によれば、大量の散薬を第1の薬剤収容部に収容するとともに、第2の薬剤収容部からは安定して精度よく外部に散薬の放出が可能となり、ひいては少量の散薬であっても配分円盤20の周方向に均等に撒くことができる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態、変形例を説明したが、これらの実施形態、変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態、変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。たとえば、第1の薬剤収容部と第2の薬剤収容部の仕切り構造については、2つの孔と裏面にガイド壁を形成した仕切り板とその下部に回転体を組み合わせることで、孔から落ちた薬剤を回転体に受け、ガイド壁に沿って外周部に設けられた放出口から第2の薬剤収容部に供給する例を示したが、必ずしもこれに限る必要はない。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
10・・・秤量部
20・・・配分円盤
30・・・回転駆動部
50・・・掻き出し部
51・・・落下ホッパ
60・・・散薬供給装置
62・・・散薬収容容器
63・・・散薬供給用モータ
70・・・包装装置
610・・・第1の薬剤収容部
614・・・攪拌部材
620・・・第2の薬剤収容部
624・・・薬剤収容部本体
626・・・逆円錐部
628・・・円筒部
630・・・散薬供給軸
632・・・散薬放出軸
633・・・スクリュー
635・・・支持部
637・・・攪拌部材
637a・・・三角柱の1つの辺
637b・・・回転方向先端の辺
650・・・最下部の凹部
652・・・山部
660・・・仕切り板
661・・・底蓋
662・・・孔部
663・・・第1のガイド壁
664・・・第2のガイド壁
670・・・回転体