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特許7555598合成ペプチド免疫原のための免疫刺激薬としての人工無差別Tヘルパー細胞エピトープ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】合成ペプチド免疫原のための免疫刺激薬としての人工無差別Tヘルパー細胞エピトープ
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240917BHJP
   C07K 14/045 20060101ALI20240917BHJP
   C07K 14/05 20060101ALI20240917BHJP
   C07K 14/11 20060101ALI20240917BHJP
   C07K 14/28 20060101ALI20240917BHJP
   C07K 14/33 20060101ALI20240917BHJP
   C07K 14/445 20060101ALI20240917BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20240917BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240917BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240917BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20240917BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20240917BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240917BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240917BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240917BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240917BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 39/135 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 39/187 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 39/245 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 39/21 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240917BHJP
   C07K 14/235 20060101ALI20240917BHJP
   C07K 14/155 20060101ALN20240917BHJP
   C07K 14/09 20060101ALN20240917BHJP
   C07K 14/035 20060101ALN20240917BHJP
   C07K 14/185 20060101ALN20240917BHJP
   C07K 14/08 20060101ALN20240917BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240917BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20240917BHJP
   C07K 5/10 20060101ALN20240917BHJP
   C07K 5/08 20060101ALN20240917BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/045 ZNA
C07K14/05
C07K14/11
C07K14/28
C07K14/33
C07K14/445
C07K14/435
C07K7/06
C07K7/08
C07K14/195
A61P31/22
A61P31/18
A61P31/14
A61P37/04
A61P35/00
A61P37/02
A61K39/39
A61K39/00 G
A61K39/00 H
A61K39/135
A61K39/187
A61K39/245
A61K39/21
A61K47/64
C07K14/235
C07K14/155
C07K14/09
C07K14/035
C07K14/185
C07K14/08
C07K14/47
C07K14/54
C07K5/10
C07K5/08
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2021535938
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 US2019067532
(87)【国際公開番号】W WO2020132275
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】62/782,253
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591015142
【氏名又は名称】ユナイテッド・バイオメディカル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】UNITED BIOMEDICAL INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チャン イ
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-226646(JP,A)
【文献】特開2005-112860(JP,A)
【文献】特表2002-518461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式で表される、ペプチド免疫原構築物:
(A)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X
または
(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(A)-X
または
(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X
または
{(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X}
(式中、
各Aは、独立して、アミノ酸であり、
各Bは、独立して、異種スペーサーであり、
各Thは、独立して、配列番号1~52からなる群から選ばれる無差別人工Thエピトープであり、
前記標的抗原部位は、
(a)配列番号56、57、58、59、または60のアミノ酸配列を有するAβペプチド、
(b)配列番号61のアミノ酸配列を有するアルファ-シンペプチド、
(c)配列番号62のアミノ酸配列を有するIgE EMPDペプチド、
(d)配列番号63、69、70、または71のアミノ酸配列を有するTauペプチド、
(e)配列番号64または72のアミノ酸配列を有するIL-31ペプチド、及び
(f)配列番号145のアミノ酸配列を有するIL-6ペプチド
からなる群より選択されるB細胞エピトープであり、
Xは、アミノ酸、α-COOH、またはα-CONHであり、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
mは、1、2、3、または4であり、
oは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
pは、1、2、3、または4である)。
【請求項2】
記異種スペーサーが、アミノ酸、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号53)、Lys-Lys-Lys-εNLys(配列番号54)、Gly-Gly、Pro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro(配列番号55)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される請求項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項3】
前記異種スペーサーが、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号53)、及びLys-Lys-Lys-εNLys(配列番号54)からなる群より選択される請求項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項4】
前記異種スペーサーがε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号53)又はLys-Lys-Lys-εNLys(配列番号54)である請求項1に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項5】
Thエピトープが配列番号6、7、11~17、19~28、32~38、40及び43~52からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項6】
Thエピトープが配列番号32~52からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項7】
Thエピトープが配列番号34及び36~52からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項8】
Thエピトープが配列番号32~38、40及び43~52からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項9】
Thエピトープが配列番号34、36~38、40及び43~52からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項10】
Thエピトープが配列番号34、36、38、41、及び42からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項11】
前記標的抗原部位が、
(b)配列番号61のアミノ酸配列を有するアルファ-シンペプチド、
(c)配列番号62のアミノ酸配列を有するIgE EMPDペプチド、
(d)配列番号63、69、70、または71のアミノ酸配列を有するTauペプチド、
(e)配列番号64または72のアミノ酸配列を有するIL-31ペプチド、及び
(f)配列番号145のアミノ酸配列を有するIL-6ペプチド
からなる群より選択される請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項12】
前記標的抗原部位が、
(b)配列番号61のアミノ酸配列を有するアルファ-シンペプチド、
(c)配列番号62のアミノ酸配列を有するIgE EMPDペプチド、及び
(f)配列番号145のアミノ酸配列を有するIL-6ペプチド
からなる群より選択される請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項13】
前記標的抗原部位が(b)配列番号61のアミノ酸配列を有するアルファ-シンペプチドである請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項14】
前記標的抗原部位が(b)配列番号61のアミノ酸配列を有するアルファ-シンペプチドであり、Thエピトープが配列番号13、16、17、33、36、41、及び42からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項15】
配列番号149、151、159、161、167、169及び170からなる群から選択される配列を有する請求項1に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項16】
前記標的抗原部位が(c)配列番号62のアミノ酸配列を有するIgE EMPDペプチドである請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項17】
前記標的抗原部位が(c)配列番号62のアミノ酸配列を有するIgE EMPDペプチドであり、Thエピトープが配列番号13、16、17、24、28、33、36、38、及び41からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項18】
配列番号178、179、180、188、190、191、196、199、及び201からなる群から選択される配列を有する請求項1に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項19】
前記標的抗原部位が(f)配列番号145のアミノ酸配列を有するIL-6ペプチドである請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項20】
前記標的抗原部位が(f)配列番号145のアミノ酸配列を有するIL-6ペプチドであり、Thエピトープが配列番号16、17、28、34、及び38からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項21】
配列番号207、208、209、226、及び230からなる群から選択される配列を有する請求項1に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項22】
前記標的抗原部位が(e)配列番号64または72のアミノ酸配列を有するIL-31ペプチドである請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項23】
前記標的抗原部位が(e)配列番号64または72のアミノ酸配列を有するIL-31ペプチドであり、Thエピトープが配列番号16、17、28、34、及び38からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項24】
前記標的抗原部位が(d)配列番号63、69、70、または71のアミノ酸配列を有するTauペプチドである請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項25】
前記標的抗原部位が(d)配列番号63、69、70、または71のアミノ酸配列を有するTauペプチドであり、Thエピトープが配列番号16、17、28、34、及び38からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項26】
前記標的抗原部位が(a)配列番号56、57、58、59、または60のアミノ酸配列を有するAβペプチドであり、Thエピトープが配列番号32~52からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項27】
前記標的抗原部位が(a)配列番号56、57、58、59、または60のアミノ酸配列を有するAβペプチドであり、Thエピトープが配列番号16、17、28、34、及び38からなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物を含む、医薬組成物。
【請求項29】
請求項13~15のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物、及び医薬上許容可能なアジュバント又は担体を含む医薬組成物。
【請求項30】
パーキンソン病を予防するか及び/又は処置する請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
請求項16~18のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物、及び医薬上許容可能なアジュバント又は担体を含む医薬組成物。
【請求項32】
アレルギー疾患を予防するか及び/又は処置する請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
請求項19~21のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物、及び医薬上許容可能なアジュバント又は担体を含む医薬組成物。
【請求項34】
自己免疫疾患を予防するか及び/又は処置する請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
自己免疫疾患が関節リウマチである請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
請求項22又は23に記載のペプチド免疫原構築物、及び医薬上許容可能なアジュバント又は担体を含む医薬組成物。
【請求項37】
アトピー性皮膚炎を予防するか及び/又は処置する請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
請求項24~27のいずれか一項に記載のペプチド免疫原構築物、及び医薬上許容可能なアジュバント又は担体を含む医薬組成物。
【請求項39】
タウ異常症を予防するか及び/又は処置する請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
タウ異常症がアルツハイマー病である請求項39に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2018年12月19日に出願された米国仮特許出願第62/782,253号の利益を主張するPCT国際出願であり、これは、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
免疫応答は、抗原提示細胞及びTヘルパー(Th)細胞間の共同的相互作用を必要とする。有効な抗体応答の誘発は、抗原提示細胞が主題の免疫原の標的抗原性部位を認識すること、及び、Tヘルパー細胞がTヘルパー細胞エピトープを認識することを必要とする。一般に、主題の免疫原上のTヘルパーエピトープは、そのB細胞エピトープ(複数可)または関連エフェクターT細胞(例えば、細胞傷害性Tリンパ球またはCTL)エピトープ(複数可)とは異なる。B細胞及び関連エフェクターT細胞エピトープは、B細胞及び関連細胞によって認識される所望の標的免疫原上の部位であり、これにより、所望の標的部位に対する抗体またはサイトカインの産生がもたらされる。標的の自然なコンフォメーションにより、抗体または関連エフェクターT細胞が直接結合する部位が決定される。Th細胞応答の誘発は、標的タンパク質のプロセシングされたペプチドフラグメント及び関連クラスII主要組織適合遺伝子複合体(MHC)間に形成される抗原提示細胞の膜上の複合体を認識するTh細胞受容体を要求する。従って、標的タンパク質のペプチドプロセシング及び3方向認識が、Th細胞応答のために要求される。1)重要なMHCクラスII接触残基が様々なMHC結合ペプチド(Thエピトープ)内に可変的に配置されており、2)異なるMHC結合ペプチドが可変長及び異なるアミノ酸配列を有し、3)MHCクラスII分子が宿主の遺伝的構成に依存して非常に多様であり得るので、3つの部分の複合体を規定するのは困難である。特定のThエピトープに対する免疫応答は、部分的には、宿主のMHC遺伝子によって決定され、Thエピトープの反応性は、集団の個体間で異なる。単一種内の種及び個体間で反応するThエピトープ(すなわち、無差別Thエピトープ)は、同定が困難である。
【0003】
抗原プロセシング細胞による適切なペプチドプロセシング、遺伝的に決定されたクラスIIMHC分子によるペプチドの提示、ならびにTh細胞上の受容体によるMHC分子及びペプチド複合体の認識などのT細胞認識の各成分ステップのために、複数の要因が要求される。幅広い応答性を提供するための無差別Thエピトープ認識の要件は、決定するのが困難であり得る。
【0004】
免疫応答に対する抗体及び関連サイトカインの誘導のために、免疫原が、B細胞エピトープ/エフェクターT細胞エピトープ及びTh細胞決定基(複数可)の両方を含まなければならないことは明らかである。一般に、担体タンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン;KLH)は、標的免疫原の免疫原性を増加させるために、標的免疫原に結合して、Th応答を得る。しかし、標的免疫原の免疫原性を強化するために大きなキャリアタンパク質を使用することには、多くの欠点がある。特に、(a)化学結合がサイズ及び組成の不均一をもたらし得る反応、例えば、グルタルアルデヒドとのコンジュゲーションを含むので(Borras-Cuesta et al., Eur J Immunol, 1987; 17: 1213-1215);(b)担体タンパク質がアレルギー反応及び自己免疫反応などの望ましくない免疫応答の可能性をもたらし(Bixler et al., WO89/06974);(c)大きなペプチド担体タンパク質が標的部位ではなく担体タンパク質に主に誤った方向に向けられた無関係な免疫応答を誘発し(Cease et al., Proc Natl Acad Sci USA, 1987; 84: 4249-4253);(d)担体タンパク質が以前に同じキャリアタンパク質を含む免疫原で免疫された宿主におけるエピトープ抑制の可能性も導入するので、明確な安全で効果的なペプチド-担体タンパク質複合体を製造することは困難である。続いて、宿主が同じ担体タンパク質が別のハプテンに結合している別の免疫原で免疫される時、得られた免疫応答は、担体タンパク質の場合に強化され、ハプテンの場合に抑制される(Schutze et al., J Immunol, 1985; 135: 2319-2322)。
【0005】
上記のリスクを回避するために、従来のキャリアタンパク質を使用せずにT細胞の援助を誘発することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、予防的及び治療的使用のための標的抗原に対する機能的部位特異的抗体を刺激するための無差別人工Tヘルパー細胞(Th)エピトープを提供する。本開示はまた、Thエピトープを含有するペプチド免疫原構築物、Thエピトープを含有する組成物、Thエピトープを製造及び使用する方法、ならびにThエピトープを含有するペプチド免疫原構築物で作製された抗体に関する。
【0007】
開示された人工Tヘルパー細胞(Th)エピトープは、ペプチド免疫原構築物を生成するために、任意のスペーサーを介してB細胞エピトープ(複数可)及び/またはエフェクターT細胞エピトープ(複数可)(「標的抗原部位(複数可)」)に結合することができる。開示されたThエピトープは、標的抗原部位に対する高レベルの抗体及び/または細胞性応答の産生を伴う強力なTヘルパー細胞媒介性免疫応答を誘導する能力をペプチド免疫原に与える。開示されたペプチド免疫原構築物は、ペプチド免疫原における大きな担体タンパク質及び病原体由来のTヘルパー細胞部位の、標的抗原部位の免疫原性を改善するように特別に設計された開示の人工Thエピトープとの有利な置換を提供する。開示のThエピトープを含有する比較的短いペプチド免疫原構築物は、Thエピトープに対する著しい炎症反応または免疫反応を引き起こすことなく、特定の標的抗原部位に対する高レベルの抗体及び/またはエフェクター細胞関連サイトカインを誘発する。
【0008】
ペプチド免疫原構築物により誘発される免疫応答(抗体力価、Cmax、抗体産生の開始、応答期間などを含む)は、以下を変化させることによって調節することができる:(a)B細胞エピトープに化学結合しているThエピトープの選択、(b)B細胞エピトープの長さ、(c)ペプチド免疫原構築物を含有する製剤に使用されるアジュバント、ならびに/または、(d)免疫化あたり投薬量を含む投与計画ならびに各免疫化に対する初回免疫及び追加免疫の時点。それ故、標的抗原部位に対する特異的免疫応答は、開示されたThエピトープを使用して設計することができ、これにより、任意の患者または対象の個々の特性に個別化医療を調整することが容易になり得る。
【0009】
本発明の開示された人工Thエピトープを含有するペプチド免疫原構築物は、以下の式によって表すことができる:
(A)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X
または
(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(A)-X
または
(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X
または
{(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X}
(式中、
各Aは、独立して、アミノ酸であり、
各Bは、独立して、異種スペーサーであり、
各Thは、独立して、人工Thエピトープであり、
標的抗原部位は、B細胞エピトープ、CTLエピトープ、ペプチドハプテン、非ペプチドハプテン、またはそれらの免疫学的な反応性アナログであり、
Xは、アミノ酸、α-COOH、またはα-CONHであり、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
mは、1、2、3、または4であり、
oは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
pは、0、1、2、3、または4である)。
【0010】
標的抗原部位としてのペプチドハプテンの例は、ベータアミロイド(Aβ)タンパク質(Aβ1-14)(配列番号56)のアミノ酸1~14である。非ペプチドハプテンの例としては、腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)または小分子薬物が含まれる。
【0011】
本開示はまた、人工Thエピトープを含有するペプチド免疫原構築物を含む組成物に関する。そのような組成物は、所望の標的抗原部位に対する免疫化宿主の抗体応答を誘発することができる。標的抗原部位は、病原性生物、通常免疫サイレントである自己抗原、または腫瘍関連標的に由来してもよい。
【0012】
開示の組成物は、感染症からの保護免疫を提供するワクチン、正常な生理学的プロセスの機能不全に起因する障害の処置のための免疫療法、がんの処置のための免疫療法、望ましくは、正常な生理学的プロセスに介入及び改変する薬剤を含む、多くの多様な医学及び獣医学的用途において有用である。
【0013】
本発明のThエピトープに共有結合し得る標的抗原の一部には、数例として、アルツハイマー病の処置用のベータ-アミロイド(Aβ)、パーキンソン病の処置用のアルファ-シヌクレイン(α-Syn)、アレルギー性疾患の処置用の膜結合IgEの外膜近位ドメイン(またはIgE EMPD)、アルツハイマー病を含むタウオパチーの処置用のTau、及びアトピー性皮膚炎の処置用のインターロイキン31(IL-31)の部分が含まれる。より具体的には、標的抗原には、Aβ1-14(米国特許第9,102,752号に記載)、α-Syn111-132(国際PCT出願第PCT/US2018/037938号に記載)、IgE EMPD1-39(国際PCT出願第PCT/US2017/069174号に記載)、Tau379-408(国際PCT出願第PCT/US2018/057840号に記載)、及びIL-3197-144(国際PCT出願第PCT/US2018/065025号に記載)、ならびに、表3A及び表3Bに記載の標的抗原部位が含まれる。
【0014】
本開示はまた、ペプチド免疫原構築物(開示の人工Thエピトープ及び抗原提示エピトープを含む)を、それを必要とする対象に投与することにより、対象の疾患または状態を予防及び/または処置するための方法を提供する。一部の実施形態では、ペプチド免疫原構築物は、実施例12に示されるように、陽性対照の免疫原性炎症性応答よりも少なくとも約3倍低い免疫原性炎症性応答を対象に生じさせる。
【0015】
本開示はまた、開示の人工Thエピトープを含有するペプチド免疫原構築物により産生される抗体に関する。ペプチド免疫原構築物により産生される抗体は、人工Thエピトープに対してではなく、標的抗原部位に高度に特異的である。
【0016】
参考文献:
本出願において引用された各特許、刊行物、及び非特許文献は、あたかもそれぞれが個別に参照により組み込まれたかのように、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
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30. WANGによる国際PCT出願PCT/US2018/057840, “Tau Peptide Immunogen Constructs” (filed 2018-10-26).
31. WANGによる国際PCT出願PCT/US2018/065025, “Peptide Immunogens of IL-31 and Formulations Thereof for the Treatment and/or Prevention of Atopic Dermatitis” (filed 2018-12-11).
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本明細書に記載のTヘルパー細胞エピトーププラットフォームの例示的な製剤及び特徴を示す概略図。Aは、UBITh(登録商標)を含む、Thエピトープ担体を含有するペプチド免疫原を有する製剤に含まれ得る構成要素を要約した概略図である。Bは、UBITh(登録商標)を含む、本明細書に記載のTヘルパー細胞エピトーププラットフォームのいくつかの特徴及び技術的利点をまとめる。
図2】本明細書に記載のTヘルパー細胞エピトーププラットフォームを使用して得ることができる理論上の結果を示すグラフ。
図3】アルファシヌクレイン(上部パネル)及びIgE EMPD(下部パネル)に由来する短い非免疫原性Bエピトープペプチドを含む、選択された個々のThエピトープペプチドによるペプチド免疫原構築物の免疫原性の強化。アルファシヌクレイン(上部パネル)の棒グラフの下の数字は、表5に記載のペプチド免疫原構築物に対応し、IgE EMPD(下部パネル)の棒グラフの下の数字は、表6に記載のペプチド免疫原構築物に対応する。
図4A】表8に示される個々のThエピトープに共有結合しているα-Syn(G111-G132)、IgE-EMPD(G1-C39)、及びIL-6(C73-C83)を含有する別々の3つのペプチド免疫原構築物の混合物でモルモットを免疫した後に得られたELISAによる抗α-シヌクレイン抗体力価を示すグラフである。これらのグラフで評価された特定のα-シヌクレインペプチド免疫原構築物が表5にまとめられる。図4Aは、評価されたペプチド免疫原構築物の全てに対する抗体力価データを含有する。
図4B】表8に示される個々のThエピトープに共有結合しているα-Syn(G111-G132)、IgE-EMPD(G1-C39)、及びIL-6(C73-C83)を含有する別々の3つのペプチド免疫原構築物の混合物でモルモットを免疫した後に得られたELISAによる抗α-シヌクレイン抗体力価を示すグラフである。これらのグラフで評価された特定のα-シヌクレインペプチド免疫原構築物が表5にまとめられる。図4Bは、ペプチド免疫原構築物が異なる速度で同様のCmax値に達することができることを強調するために、図4Aに示されるデータのサブセットを含有する。
図5】表8に示される個々のThエピトープに共有結合しているα-Syn(G111-G132)、IgE-EMPD(G1-C39)、及びIL-6(C73-C83)を含有する別々の3つのペプチド免疫原構築物の混合物でモルモットを免疫した後に得られたELISAによる抗IgE EMPD抗体力価を示すグラフ。これらのグラフで評価された特定のIgE EMPDペプチド免疫原構築物は、表6にまとめられる。
図6】表8に示される個々のThエピトープに共有結合しているα-Syn(G111-G132)、IgE-EMPD(G1-C39)、及びIL-6(C73-C83)を含有する別々の3つのペプチド免疫原構築物の混合物でモルモットを免疫した後に得られたELISAによる抗IL-6抗体力価を示すグラフ。これらのグラフで評価された特定のIL-6ペプチド免疫原構築物は、表7にまとめられる。
図7】表9に示されるペプチド免疫原構築物でモルモットを免疫した後に得られたELISAによる抗DPR(ジペプチドリピート)抗体力価を示すグラフ。
図8】2つのペプチド免疫原Aβ1-14-εK-KKK-MvF5 Th(配列番号67)及びAβ1-14-εK-HBsAg3 Th(配列番号68)を含有する異なる量のAβワクチン(UB-311)でモルモットを免疫した後に得られたELISAによる抗Aβ1-28力価を示すグラフ。
図9】2つのペプチド免疫原Aβ1-14-εK-KKK-MvF5 Th(配列番号67)及びAβ1-14-εK-HBsAg3 Th(配列番号68)を含有するAβワクチン(UB-311)の異なる初回免疫投薬量及び追加免疫投薬量でモルモットを免疫した後に得られたELISAによる抗Aβ1-28力価を示すグラフ。
図10】3ヶ月の追加免疫療法(上部パネル)中にAβワクチン(UB-311)で、または6ヶ月の追加免疫療法(下部パネル)中にヒト対象をAβワクチン(UB-311)で免疫した後に得られたELISAによる抗Aβ1-28抗体力価を示すグラフ。各グラフのボックス部分は、研究の全てのヒト対象の平均力価を強調する。
図11】MONTANIDE ISA50Vをアジュバントとして使用した、異なる量の、表10に示されるLHRHペプチド免疫原構築物(配列番号239~241)の混合物でブタを免疫した後に得られた抗LHRH抗体力価及びテストステロン濃度を示すグラフ。図11Aは、100μg量のLHRH製剤でラットを免疫した後に得られた抗体力価及びテストステロン濃度を示す。図11Bは、300μg量のLHRH製剤でラットを免疫した後に得られた抗体力価及びテストステロン濃度を示す。
図12】異なるアジュバント(すなわち、MONTANIDE ISA51またはADJUPHOS)を含有する製剤中の配列番号243の異なる量のIL-6ペプチド免疫原構築物またはプラセボ対照でラットを免疫した後に得られたELISAによる抗IL-6抗体力価を示すグラフ。
図13】異なる量の配列番号178のIgE-EMPDペプチド免疫原構築物でマカクを免疫した後に得られた抗IgE-EMPD抗体力価を示すグラフ。図13Aは、CpG3を使用して安定化免疫刺激複合体として製剤化された、アジュバントとしてADJUPHOSを使用して得られた抗体力価を示す。図13Bは、CpG3を使用して安定化免疫刺激複合体として製剤化された、アジュバントとしてMONTANIDE ISA51を使用して得られた抗体力価を示す。
図14】異なるアジュバントを使用して表10に示されるLHRHペプチド免疫原構築物(配列番号239~241)の混合物の異なる量でブタを免疫した後に得られた抗LHRH抗体力価及びテストステロン濃度を示すグラフ。図14Aは、Emulsigen Dをアジュバントとして使用して得られた抗体力価を示す。図14Bは、MONTANIDE ISA50Vをアジュバントとして使用して得られた抗体力価を示す。
図15】正常ドナーのナイーブ末梢血単核細胞における無差別及び人工Thペプチド応答性T細胞の検出。
図16】腫瘍関連炭水化物抗原(TACA):GD3、GD2、Globo-H、GM2、フルコシルGM1、PSA、Le、Le、SLe、SLe、及びSTnの構造。
図17】グリカン結合UBITh(登録商標)ペプチドの固相ペプチド合成スキームによる例示的な段階的合成。
図18】グリカン結合UBITh(登録商標)ペプチドの固相ペプチド合成スキームによる例示的な段階的合成。
図19】グリカン結合UBITh(登録商標)ペプチドの固相ペプチド合成スキームによる例示的な段階的合成。
図20】グリカン結合UBITh(登録商標)ペプチドの固相ペプチド合成スキームによる例示的な段階的合成。
図21】グリカン結合UBITh(登録商標)ペプチドの固相ペプチド合成スキームによる例示的な段階的合成。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、予防的及び治療的使用のための標的抗原に対する機能的部位特異的抗体を刺激するための無差別人工Tヘルパー細胞(Th)エピトープを提供する。本開示はまた、Thエピトープを含有するペプチド免疫原構築物、Thエピトープを含有する組成物、Thエピトープを製造及び使用する方法、ならびにThエピトープを含有するペプチド免疫原構築物により作製された抗体に関する。
【0019】
開示の人工Tヘルパー細胞(Th)エピトープは、ペプチド免疫原構築物を生成するために、任意のスペーサーを介してB細胞エピトープ及び/またはエフェクターT細胞エピトープ(例えば、細胞傷害性T細胞;CTL)(「標的抗原部位(複数可)」)に結合させることができる。開示のThエピトープは、治療効果のための標的抗原部位に対する高レベルの抗体及び/または細胞性応答(例えば、サイトカイン)の産生を伴う強力なTヘルパー細胞媒介性免疫応答を誘導する能力をペプチド免疫原に与える。開示されたペプチド免疫原構築物は、ペプチド免疫原における大きな担体タンパク質及び病原体由来のTヘルパー細胞部位の、標的抗原部位の免疫原性を改善するように特別に設計された開示の人工Thエピトープとの有利な置換を提供する。開示のThエピトープを含有する比較的短いペプチド免疫原構築物は、Thエピトープに対する著しい炎症反応または免疫反応を引き起こすことなく、特定の標的抗原部位に対する高レベルの抗体及び/またはエフェクター細胞関連サイトカインを誘発する。
【0020】
ペプチド免疫原構築物により誘発される免疫応答(抗体力価、Cmax、抗体産生の開始、応答期間などを含む)は、以下を変化させることによって調節することができる:(a)B細胞エピトープに化学結合しているThエピトープの選択、(b)B細胞エピトープの長さ、(c)ペプチド免疫原構築物を含有する製剤に使用されるアジュバント、ならびに/または、(d)免疫化あたり投薬量を含む投与計画ならびに各免疫化に対する初回免疫及び追加免疫の時点。それ故、標的抗原部位に対する特異的免疫応答は、開示されたThエピトープを使用して設計することができ、これにより、任意の患者または対象の個々の特性に個別化医療を調整することが容易になり得る。
【0021】
人工Thエピトープを含有する開示のペプチド免疫原構築物は、免疫化された宿主において、所望の標的抗原部位に対する抗体及び/またはサイトカイン応答を誘発することができる。標的抗原部位は、特定のタンパク質、がん抗原関連炭水化物、小分子薬物化合物、または任意の標的ペプチドもしくはタンパク質に由来する任意のアミノ酸配列であり得る。一部の実施形態では、本開示は、アミロイドβ(Aβ)、口蹄疫(FMD)カプシドタンパク質、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)由来の糖タンパク質、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、及び他の任意のペプチドまたはタンパク質配列に標的化された抗体を誘発するペプチド免疫原を提供するために使用することができる無差別人工Thエピトープについて記載する。
【0022】
特定の実施形態では、標的抗原部位は、通常は免疫サイレントである自己抗原または腫瘍関連新抗原標的(例えば、Aβ、Tau、アルファシヌクレイン、ジペプチドタンパク質、IgE EMPD、IL-6、CGRP、アミリン、IL-31、新抗原など)から取得される。自己抗原及び腫瘍関連新抗原部位の非限定的で代表的な配列が表3Aに示される。他の実施形態では、標的抗原部位は、病原性生物(例えば、FMDV、PRRSV、CSFV、HIV、HSVなど)から取得される。病原性抗原部位の非限定的で代表的な配列が表3Bに示される。
【0023】
本発明のペプチドまたは標的抗原部位は、医学及び獣医学用途に有用であり得る。例えば、開示の人工Thエピトープを含有するペプチド免疫原構築物は、感染症もしくは神経変性疾患に対する防御免疫を提供するワクチン組成物、または正常な生理学的プロセスの機能不全から生じた障害を処置する医薬組成物、がん、2型糖尿病を処置するための免疫療法において、または正常な生理学的プロセスに介入する薬剤として使用することができる。
【0024】
一般
本明細書で使用されるセクションの見出しは、単に構成上の目的のためのものであり、記載の主題を制限するものとして解釈されるべきではない。本出願で引用される全ての参考文献または参考文献の一部は、いかなる目的においても、全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0025】
別途説明のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」、及び「the」には、文脈が別途明確に示さない限り、複数の指示対象が含まれる。同様に、「または」という語は、文脈が別途明示しない限り、「及び」が含まれることが意図される。従って、「AまたはBを含む」は、A、もしくはB、またはA及びBを含むことを意味する。ポリペプチドについて与えられた全てのアミノ酸サイズ、及び全ての分子量または分子質量の値は概算であり、説明のために提供されることがさらに理解されるべきである。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法及び材料が開示の方法の実践または試験に使用することができるが、好適な方法及び材料は、以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合は、用語の説明を含む本明細書が優先されることになる。加えて、材料、方法、及び例は、単なる例示であり、限定を意図するものではない。
【0026】
ペプチド免疫原構築物
本明細書で使用される「ペプチド免疫原」または「ペプチド免疫原構築物」という用語は、単一のより大きなペプチドを形成するために、共有結合(例えば、従来のペプチド結合またはチオエステル)を通して、異種スペーサーを含んでまたは含まずに、標的抗原部位に共有結合している人工Thエピトープを含む分子を指す。通常、ペプチド免疫原構築物は、(a)異種無差別人工Thエピトープ;(b)B細胞エピトープまたはエフェクターT細胞エピトープ(例えば、CTL)などの標的抗原部位;及び、(c)任意の異種スペーサー、を含有する。
【0027】
ペプチド免疫原に無差別人工Thエピトープが存在すると、ペプチド免疫原で免疫化した後の動物の標的抗原部位に対する強いTh細胞媒介免疫応答及び高レベルの抗体が誘導され得る。開示されたペプチド免疫原構築物は、ペプチド免疫原における大きな担体タンパク質及び病原体由来のTヘルパー細胞部位の、標的抗原部位の免疫原性を改善するように特別に設計された開示の人工Thエピトープとの有利な置換を提供する。開示のThエピトープを含有する比較的短いペプチド免疫原構築物は、Thエピトープに対する著しい炎症反応または免疫反応を引き起こすことなく、特定の標的抗原部位に対する高レベルの抗体及び/またはエフェクター細胞関連サイトカインを誘発する。
【0028】
本発明の開示された人工Thエピトープを含有するペプチド免疫原構築物は、以下の式によって表すことができる:
(A)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X
または
(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(A)-X
または
(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X
または
{(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X}
(式中、
各Aは、独立して、アミノ酸であり、
各Bは、独立して、異種スペーサーであり、
各Thは、独立して、人工Thエピトープであり、
標的抗原部位は、B細胞エピトープ、CTLエピトープ、ペプチドハプテン、非ペプチドハプテン、またはそれらの免疫学的な反応性アナログであり、
Xは、アミノ酸、α-COOH、またはα-CONHであり、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
mは、1、2、3、または4であり、
oは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
pは、0、1、2、3、または4である)。
【0029】
本開示のペプチド免疫原は、約20~約100のアミノ酸を含み得る。一部の実施形態では、ペプチド免疫原構築物は、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、または約100のアミノ酸残基を含有する。
【0030】
開示のIL-31ペプチド免疫原構築物の様々な構成要素が以下に記載される。
【0031】
A-アミノ酸
本開示の免疫原性ペプチドにおける各Aは、独立して、異種アミノ酸である。
【0032】
本明細書で使用される「異種」という用語は、標的抗原部位(例えば、B細胞エピトープ)の野生型アミノ酸配列の一部でないか、またはそれと相同でないアミノ酸配列を指す。従って、Aの異種アミノ酸配列は、標的抗原部位のタンパク質またはペプチドに天然には見られないアミノ酸配列を含有する。構成要素Aの配列が標的抗原部位に対して異種であるので、標的抗原部位の天然のアミノ酸配列は、構成要素Aが標的抗原部位に共有結合している場合、N末端またはC末端方向のいずれにも延長されない。
【0033】
一部の実施形態では、各Aは、独立して、非天然または天然アミノ酸である。
【0034】
天然アミノ酸には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンが含まれる。
【0035】
非天然アミノ酸には、ε-Nリジン、β-アラニン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、チロキシン、γ-アミノ酪酸、ホモセリン、シトルリン、アミノ安息香酸、6-アミノカプロン酸(Aca;6-アミノヘキサン酸)、ヒドロキシプロリン、メルカプトプロピオン酸(MPA)、3-ニトロチロシン、ピログルタミン酸などが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
一部の実施形態では、nは、0であり、アミノ酸が式中のその位置に付加されないことを示す。他の実施形態では、nは、1であり、任意の天然または非天然アミノ酸から選択される。特定の実施形態では、nは、1より大きく、各Aは、独立して、同じアミノ酸である。他の実施形態では、nは、1より大きく、各Aは、独立して、異なるアミノ酸である。
【0037】
B-任意の異種スペーサー
本開示の免疫原性ペプチドにおける各Bは、任意の異種スペーサーである。構成要素Bの任意の異種スペーサーは、独立して、アミノ酸、-NHCH(X)CHSCHCO-、-NHCH(X)CHSCHCO(εN)Lys-、-NHCH(X)CHS-スクシンイミジル(εN)Lys-、-NHCH(X)CHS-(スクシンイミジル)-、及び/またはそれらの任意の組み合わせである。スペーサーは、構成要素Aについて上に記載される1つ以上の天然または非天然アミノ酸残基を含有し得る。
【0038】
上述のように、「異種」という用語は、標的抗原部位(例えば、B細胞エピトープ)の野生型アミノ酸配列の一部でないか、またはそれと相同でないアミノ酸を指す。従って、スペーサーがアミノ酸である場合、スペーサーは、標的抗原部位のタンパク質またはペプチドに天然には見られないアミノ酸配列を含有する。構成要素Bの配列が標的抗原部位に対して異種であるので、標的抗原部位の天然のアミノ酸配列は、構成要素Bが標的抗原部位に共有結合している場合、N末端またはC末端方向のいずれにも延長されない。
【0039】
スペーサーは、Thエピトープと標的抗原部位の分離を強化する柔軟なヒンジスペーサーであり得る。一部の実施形態では、柔軟なヒンジ配列は、プロリンリッチであり得る。特定の実施形態では、柔軟なヒンジは、配列Pro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro(配列番号55)を有し、これは、免疫グロブリン重鎖に見られる柔軟なヒンジ領域からモデル化される。式中、Xaaは、任意のアミノ酸であり得る。一部の実施形態では、Xaaは、アスパラギン酸である。一部の実施形態では、スペーサーによって提供されたコンフォメーションの間隔は、提示されたペプチド免疫原と適切なTh細胞及びB細胞の間のより効率的な相互作用を可能し得る。Thエピトープに対する免疫応答は、免疫反応性を改善するために強化することができる。
【0040】
o>1である場合、各Bは、独立して、同じかまたは異なる。一部の実施形態では、Bは、Gly-Gly、Pro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro(配列番号55)、εNLys、εNLys-Lys-Lys-Lys(配列番号53)、Lys-Lys-Lys-εNLys(配列番号54)、Lys-Lys-Lys、-NHCH(X)CHSCHCO-、-NHCH(X)CHSCHCO(εNLys)-、-NHCH(X)CHS-スクシンイミジル-εNLys-、もしくは-NHCH(X)CHS-(スクシンイミジル)-、及び/またはそれらの任意の組み合わせである。例示的な異種スペーサーが表2に示される。
【0041】
標的抗原部位
標的抗原部位には、外来もしくは自己ペプチドもしくはタンパク質、B細胞エピトープ、CTLエピトープ、ペプチドハプテン、非ペプチドハプテン、またはそれらの免疫学的な反応性アナログを含む任意の標的ペプチドまたはタンパク質由来の任意のアミノ酸配列が含まれ得る。標的抗原部位は、特定のタンパク質、がん抗原関連炭水化物、小分子薬物化合物、または任意の標的ペプチドもしくはタンパク質に由来する任意のアミノ酸配列であり得る。一部の実施形態では、本開示は、アミロイドβ(Aβ)、口蹄疫(FMD)カプシドタンパク質、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)由来の糖タンパク質、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、及び他の任意のペプチドまたはタンパク質配列に標的化された抗体を誘発するペプチド免疫原を提供するために使用することができる無差別人工Thエピトープについて記載する。
【0042】
特定の実施形態では、標的抗原部位は、通常は免疫サイレントである自己抗原または腫瘍関連新抗原標的(例えば、Aβ、Tau、アルファシヌクレイン、ジペプチドタンパク質、IgE EMPD、IL-6、CGRP、アミリン、IL-31、新抗原など)から取得される。自己抗原及び腫瘍関連新抗原部位の非限定的で代表的な配列が表3Aに示される。他の実施形態では、標的抗原部位は、病原性生物(例えば、FMDV、PRRSV、CSFV、HIV、HSVなど)から取得される。病原性抗原部位の非限定的で代表的な配列が表3Bに示される。
【0043】
特定の実施形態では、標的抗原部位は、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)(例えば、米国特許第6,025,468号、同第6,228,987号、同第6,559,282号、及び米国特許公報第US2017/0216418号);アミロイドβ(Aβ)(例えば、米国特許第6,906,169号、同第7,951,909号、同第8,232,373号、及び同第9,102,752号);口蹄疫カプシドタンパク質(例えば、米国特許第6,048,538号、同第6,107,021号、及び米国特許公報第2015/0306203号);HIV感染の予防及び処置のためのHIVビリオンエピトープ(例えば、米国特許第5,912,176号、同第5,961,976号、及び同第6,090,388号);ブタサーコウイルス2型(PCV2)由来のカプシドタンパク質(例えば、米国特許公報第2013/0236487号)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)由来の糖タンパク質(例えば、米国特許公報第2014/0335118号)、IgE(例えば、米国特許第7,648,701号及び同第6,811,782号)、アルファ-シヌクレイン(α-Syn)(国際PCT出願第PCT/US2018/037938号)、膜結合型IgEの細胞外膜近接ドメイン(またはIgE EMPD)(国際PCT出願第PCT/US2017/069174号)、Tau(国際PCT出願第PCT/US2018/057840号)、及びインターロイキン-31(IL-31)(国際PCT出願第PCT/US2018/065025号)、マラリアの予防用のプラスモディウムのCS抗原;動脈硬化の予防及び処置用のCETP;2型糖尿病の予防及び処置用のIAPP(Amylin)、ならびに他の任意のペプチドまたはタンパク質配列の一部に由来する。全ての特許及び特許刊行物は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
他の実施形態では、標的抗原部位は、腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)及び小分子薬物化合物を含む非ペプチドハプテンである。TACASの例としては、さらに実施例11ならびに図16及び17に考察されるようなGD3、GD2、Globo-H、GM2、フコシルGM1、GM2、PSA、Le、Le、SLe、SLe、Tn、TF、及びSTnが挙げられる。
【0045】
Th-Tヘルパーエピトープ
ペプチド免疫原構築物中の無差別人工Tヘルパー細胞(Th)エピトープは、標的抗原部位の免疫原性を強化し、これにより、合理的な設計で最適化された標的B細胞エピトープに対する特定の高力価抗体の産生が促進される。
【0046】
本明細書で使用される「無差別」という用語は、種間及び単一種の個体間で反応性であるThエピトープを指す。
【0047】
Thエピトープと関連して使用される「人工」という用語は、自然界には見られないアミノ酸配列を指す。従って、本開示の人工Thエピトープは、標的抗原部位に対する異種配列を有する。上述のように、「異種」という用語は、標的抗原部位の野生型配列の一部ではない、またはそれと相同でないアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を指す。従って、異種Thエピトープは、標的抗原部位に天然には見られないアミノ酸配列に由来するThエピトープである。Thエピトープが標的抗原部位に対して異種であるので、標的抗原部位の天然のアミノ酸配列は、異種Thエピトープが標的抗原部位に共有結合している場合、N末端またはC末端方向のいずれにも延長されない。
【0048】
Thエピトープは、任意の種(例えば、ヒト、ブタ、ウシ、イヌ、ラット、マウス、モルモットなど)に由来するアミノ酸配列を有し得る。Thエピトープは、複数の種のMHCクラスII分子への無差別結合モチーフも有し得る。特定の実施形態では、Thエピトープは、免疫応答の開始及び調節につながるTヘルパー細胞の最大活性化を可能にする複数の無差別MHCクラスII結合モチーフを含む。Thエピトープは、好ましくは、それ自体が免疫サイレントであり、すなわち、ペプチド免疫原構築物により生成された抗体は、たとえあったとしても、Thエピトープにほとんど向けられず、それにより、標的抗原部位に向けられた非常に集中的な免疫応答を可能にする。
【0049】
エピトープは、サイズが約15~約50アミノ酸残基の範囲に及び得る。一部の実施形態では、Thエピトープは、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、または約50のアミノ酸残基を有し得る。エピトープは、共通の構造的特徴及び特定のランドマーク配列を共有し得る。一部の実施形態では、Thエピトープは、両親媒性ヘリックス、すなわち、周囲の面を占めるヘリックス荷電極性残基の一面を占める疎水性アミノ酸残基を有するアルファ-ヘリックス構造を有する。
【0050】
WO1999/066957のThエピトープ及び開示、ならびに対応する米国特許第6,713,301号は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
無差別Th決定基は、免疫原性の低いペプチドを増強するのに効果的であり得る。うまく設計された無差別Th/B細胞エピトープキメラペプチドは、遺伝的に多様な集団のほとんどのメンバーのB細胞部位を標的とした抗体応答を伴うTh応答を誘発することができる。一部の実施形態では、Th細胞は、十分に特性決定された無差別Th決定基にペプチド担体を共有結合させることにより、標的抗原ペプチドに供給することができる。
【0052】
無差別Thエピトープは、追加の1次アミノ酸パターンを含有し得る。一部の実施形態では、無差別Thエピトープは、Rothbard配列を含有し得、無差別Thエピトープは、荷電残基(例えば、-Gly-)、続いて、2~3つの疎水性残基、続いて、荷電または極性残基(Rothbard and Taylor,EMBO J,1988;7:93-101)を含有する。無差別Thエピトープは、1、4、5、8規則に従い得、正荷電残基に4、5、及び8位の疎水性残基が続き、同じ面に位置する1、4、5、及び8位を有する両親媒性ヘリックスと一致する。一部の実施形態では、疎水性及び荷電及び極性アミノ酸の1、4、5、8パターンは、単一のThエピトープ内で繰り返すことができる。一部の実施形態では、無差別T細胞エピトープは、Rothbard配列または1、4、5、8規則に従うエピトープのうちの少なくとも1つを含有し得る。他の実施形態では、Thエピトープは、複数のRothbard配列を含有する。
【0053】
病原体に由来する無差別Thエピトープには、B型肝炎表面Th細胞エピトープ(HBsAg Th)、B型肝炎コア抗原Th細胞エピトープ(HBc Th)、百日咳毒素Th細胞エピトープ(PT Th)、破傷風毒素Th細胞エピトープ(TT Th)、麻疹ウイルスFタンパク質Th細胞エピトープ(MVF Th)、Chlamydia trachomatis主要外膜タンパク質Th細胞エピトープ(CT Th)、ジフテリア毒素Th細胞エピトープ(DT Th)、Plasmodium falciparum スポロゾイト周囲Th細胞エピトープ(PF Th)、Schistosoma mansoniトリオースリン酸イソメラーゼTh細胞エピトープ(SM Th)、及びEscherichia coli TraT Th細胞エピトープ(TraT Th)、Clostridium tetani、Bordetella pertussis、コレラ毒素、インフルエンザMP1、インフルエンザNSP1、エプスタインバーウイルス(EBV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)が含まれるが、これらに限定されない。本開示で使用されるThエピトープの例が表1に示される。
【0054】
一部の実施形態では、本開示のThエピトープは、類似のアミノ酸配列を含有するペプチドの混合物を含有するコンビナトリアルThエピトープであり得る。コンビナトリアル人工Thエピトープとも呼ばれる構造化合成抗原ライブラリー(SSAL)は、特定の位置で置換された不変残基の構造フレームワークの周りに構成されたアミノ酸配列を有する多数のThエピトープを含む。SSALエピトープの配列は、多様なMHC制限要素の認識を得るために、比較的不変の残基を保持し、他の残基を変化させることにより決定される。SSALエピトープの配列は、無差別Thの1次アミノ酸配列をアラインさせ、骨格フレームワークとしてThペプチドの固有な構造に関与する残基を選択して保持し、既知のMHC制限要素に従って残りの残基を変化させることによって決定することができる。MHC制限要素の好ましいアミノ酸を有する不変及び可変位置は、MHC結合モチーフを得るために使用することができ、これは、ThエピトープのSSALを設計するために使用することができる。
【0055】
コンビナトリアル配列として提示された異種Thエピトープペプチドは、その特定のペプチドの相同体の可変残基に基づいて、ペプチドフレームワーク内の特定の位置に表されるアミノ酸残基の混合物を含有する。一部の実施形態では、Thエピトープライブラリ配列は、無差別Thエピトープの構造モチーフを維持し、ハプロタイプの広い範囲に対する反応性に適応するように設計される。一部の実施形態では、SSALのメンバーは、縮重のThエピトープSSAL1 Th1とし得、麻疹ウイルスのFタンパク質から取得される無差別エピトープ(例えば、配列番号1~5)からモデル化される。他の実施形態では、SSALの部材は、縮重ThエピトープSSAL2 Th2であり得、HBsAg1から取得される無差別エピトープ(例えば、配列番号19~24)からモデル化した。
【0056】
合成後のコンビナトリアル人工Thエピトープ(またはSSAL)の混合物中に存在するペプチドの総数は、各可変位置で利用可能な選択肢の数を掛け合わせることによって計算することができる。例えば、配列番号16は、5つの可変位置を含有し、各可変位置が2つの異なる残基の選択肢を有するので、32の異なるペプチドの組み合わせを表す(すなわち、2x2x2x2x2=2=32)。同様に、配列番号5は、524,288の異なるペプチドの組み合わせを表す(すなわち、2x4x2x4x2x4x4x4x2x4x2x4=2x4=524,288)。コンビナトリアル人工Thエピトープ配列には、(a)可変配列に包含される全てのペプチドの混合物、及び、(b)組み合わせ内に単一配列を含有する個々の各ペプチド、が含まれる。
【0057】
一部の実施形態では、荷電残基GluまたはAspは、Thの疎水面を囲む電荷を増加するために、1位に付加させることができる。一部の実施形態では、両親媒性ヘリックスの疎水面は、2、5、8、9、10、13、及び16の疎水性残基により維持することができる。一部の実施形態では、2、5、8、9、10、及び13のアミノ酸残基は、広範囲のMHC制限要素に結合する能力を有するファサードを提供するために変更することができる。一部の実施形態では、アミノ酸残基の変化は、人工Thエピトープの免疫応答性の範囲を拡大し得る。
【0058】
人工Thエピトープは、既知の無差別Thエピトープの全ての特性及び特徴を組み込み得る。一部の実施形態では、人工Thエピトープは、SSALのメンバーである。一部の実施形態では、人工Th部位は、部位特異的標的に対する抗体応答の強化を提供するために、自己抗原及び外来抗原から取得されたペプチド配列と組み合わすことができる。一部の実施形態では、人工Thエピトープ免疫原は、有効且つ安全な抗体応答を提供し、高い免疫効力を示し、広範な反応応答性を示し得る。
【0059】
理想化人工Thエピトープも提供される。これらの理想化人工Thエピトープは、WO95/11998に開示される既知の2つの天然Thエピトープ及びSSALペプチドプロトタイプに基づいてモデル化される。SSALSは、遺伝的に多様な集団のメンバー間で広範な免疫応答を誘発することを意図されるコンビナトリアルMHC分子結合モチーフ(Meister et al.,1995)を組み込む。麻疹ウイルス及びB型肝炎ウイルス抗原のThエピトープに基づいて、SSALペプチドプロトタイプを設計し、複数のMHC結合モチーフを導入することによって変更した。複数のMHC結合モチーフを単純化、追加、及び/または変更することにより、他のThエピトープの設計を、他の既知のThエピトープからモデル化して、一連の新規人工Thエピトープを生成した。様々な標的抗原部位を有する合成ペプチド免疫原に、無差別人工Th部分を組み込んだ。得られたキメラペプチドは、標的抗原部位に対する有効な抗体応答を刺激することができた。
【0060】
表1に「SSAL1 Th1」と示されるプロトタイプの人工ヘルパーT細胞(Th)エピトープ、4つのペプチド(配列番号1~4)の混合物は、麻疹ウイルスのFタンパク質の無差別Thエピトープからモデル化された理想化Thエピトープである(Partidos et al.1991)。表1に「MVF Th(UBITh(登録商標)5)」(配列番号6)と示されるモデルThエピトープは、麻疹ウイルスFタンパク質の残基288~302に対応する。「Rothbard規則」に従い、エピトープの疎水面を囲む電荷を増加させるために荷電残基Glu/Aspを1位に付加すること;4、6、12、及び14位に荷電残基またはGlyを付加または保持すること;ならびに、7及び11位に荷電残基またはGlyを付加または保持することによって、MVF Th(配列番号6)をSSAL1 Th1プロトタイプ(配列番号1~4)に改変した。Thエピトープの疎水面は、2、5、8、9、10、13、及び16の位置に残基を含む。無差別エピトープと一般的に関連する疎水性残基を、これらの位置で置換して、コンビナトリアルTh SSALエピトープ、SSAL1 Th1(配列番号1~4)を得た。プロトタイプSSAL1 Th1(配列番号1~4)の別の重要な特徴は、1及び4位が、MHC結合モチーフを模倣するために、9位のいずれかの側のパリンドロームとして不完全に繰り返されることである。さらに、SSAL1 Th1のこの「1、4、9」パリンドロームパターンを、配列番号2(表1)において改変して、元のMvFモデルTh(配列番号6)の配列をより厳密に反映した。
【0061】
コンビナトリアル人工Thエピトープは、一連の単一配列エピトープを提供するために単純化することができる。例えば、配列番号5のコンビナトリアル配列は、配列番号1~4で表される単一配列のThエピトープに単純化することができる。これらの単一配列Thエピトープは、免疫原性の強化を提供するために標的抗原部位に結合させることができる。
【0062】
一部の実施形態では、Thエピトープの免疫原性は、非極性及び極性非荷電アミノ酸、例えば、Ile及びSerで、N末端を伸長すること、ならびに、荷電及び疎水性アミノ酸、例えば、Lys及びPheで、C末端を延長することによって改善されてもよい。加えて、Thエピトープへのリジン残基または複数のリジン残基(例えば、KKK)の付加は、水中のペプチドの溶解度を改善し得る。さらなる改変には、共通のMHC結合モチーフAxTxILによるC末端の置換が含まれていた(Meister et al、1995)。
【0063】
人工Thエピトープは、既知の天然ThエピトープまたはSSALペプチドプロトタイプであり得る。一部の実施形態では、SSAL由来のThエピトープは、遺伝的に多様な集団のメンバー間で広範な免疫応答を誘発することが意図されたコンビナトリアルMHC分子結合モチーフを組み込み得る。一部の実施形態では、複数のMHC結合モチーフを導入することによって修飾されたSSALペプチドプロトタイプは、麻疹ウイルス及びB型肝炎ウイルス抗原のThエピトープに基づいて設計することができる。一部の実施形態では、人工Thエピトープは、一連の新規人工Thエピトープを生成するために、複数のMHC結合モチーフを単純化、付加、及び/または修飾することができる。一部の実施形態では、新たに適合させた無差別人工Th部位は、様々な標的抗原部位を有する合成ペプチド免疫原に組み込むことができる。一部の実施形態では、得られる生じるキメラペプチドは、標的抗原部位に対する有効な抗体応答を刺激し得る。
【0064】
本開示の人工Thエピトープは、クラスII MHC分子の結合部位を含む天然または非天然アミノ酸の連続配列であり得る。一部の実施形態では、人工Thエピトープは、標的抗原部位に対する抗体応答を強化または刺激することができる。一部の実施形態では、Thエピトープは、連続または不連続アミノ酸セグメントで構成され得る。一部の実施形態では、Thエピトープの全てのアミノ酸が、MHC認識に関与しているわけではない。一部の実施形態では、本発明のThエピトープは、免疫強化ホモログ、交差反応性ホモログ、及びそれらのセグメントなどの免疫学的に機能的なホモログを含み得る。一部の実施形態では、機能的Thホモログは、さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のアミノ酸残基の保存的置換、付加、欠失、及び挿入を含み、ThエピトープのTh刺激機能を提供し得る。
【0065】
エピトープは、標的部位に直接結合させることができる。一部の実施形態では、Thエピトープは、任意の異種スペーサー、例えば、Gly-Glyまたは(ε-N)Lysなどのペプチドスペーサーを介して、標的部位に結合させることができる。スペーサーは、B細胞エピトープからThエピトープを物理的に分離し、Thエピトープまたは機能的ホモログを標的抗原部位と結合させることによって作成された任意の人工2次構造の形成を破壊して、Th及び/またはB細胞応答との干渉を排除し得る。
【0066】
表1に示されるように、Thエピトープには、理想化人工Thエピトープ及びコンビナトリアル理想化人工Thエピトープが含まれる。一部の実施形態では、Thエピトープは、配列番号1~52の無差別Th細胞エピトープ、その任意の相同体、及び/またはその任意の免疫学的アナログである。Thエピトープには、Thエピトープの免疫学的アナログも含まれる。免疫学的Thアナログには、免疫強化アナログ、交差反応性アナログ、及び標的抗原部位に対する免疫応答を強化または刺激するのに十分なこれらのThエピトープのいずれかのセグメントが含まれる。
【0067】
Thエピトープペプチドの機能的免疫学的アナログも有効であり、本発明の一部として含まれる。機能的免疫学的Thアナログには、ThエピトープのTh刺激機能を本質的に改変しないThエピトープ中の1~約5つのアミノ酸残基の保存的置換、付加、欠失、及び挿入が含まれ得る。保存的置換、付加、及び挿入は、標的抗原部位について上述したように、天然または非天然アミノ酸を用いて達成することができる。表1は、Thエピトープペプチドに対する機能的アナログの別のバリエーションを同定する。特に、MvF1及びMvF2 Thの配列番号6及び7は、N末端及びC末端にそれぞれの2つのアミノ酸の欠失(配列番号6及び7)または組み入れ(配列番号16及び17)によりアミノ酸フレームが異なるという点で、MvF4及びMvF5の配列番号16及び17の機能的アナログである。これらの2つの一連のアナログ配列間の違いは、これらの配列内に含有されるThエピトープの機能に影響を与えない。従って、機能的免疫学的Thアナログには、麻疹ウイルス融合タンパク質MvF1-4 Th(配列番号6~18)及び肝炎表面タンパク質HBsAg 1-3 Th(配列番号19~31)に由来する、いくつかのバージョンのThエピトープが含まれる。
【0068】
ペプチド免疫原構築物中のThエピトープは、キメラTh/B細胞部位ペプチド免疫原を産生するために、標的抗原部位のN末端またはC末端のいずれかに共有結合させることができる。一部の実施形態では、Thエピトープは、化学的カップリングまたは直接合成によって標的抗原部位に共有結合させることができる。一部の実施形態では、Thエピトープは、標的抗原部位のN末端に共有結合している。他の実施形態では、Thエピトープは、標的抗原部位のC末端に共有結合している。特定の実施形態では、複数のThエピトープは、標的抗原部位に共有結合している。複数のThエピトープが標的抗原部位に結合している場合、各Thエピトープは、同じアミノ酸配列または異なるアミノ酸配列を有し得る。加えて、複数のThエピトープが標的抗原部位に結合している場合、Thエピトープは、任意の順序で配置することができる。例えば、Thエピトープが、標的抗原部位のN末端に連続的に結合させることができるか、もしくは標的抗原部位のC末端に連続的に結合させることができるか、または、Thエピトープが、標的抗原部位のN末端に共有結合させることができるが、別のThエピトープが、標的抗原部位のC末端に共有結合している。標的抗原部位に関して、Thエピトープの配置に制限はない。
【0069】
一部の実施形態では、Thエピトープは、標的抗原部位に直接共有結合している。他の実施形態では、Thエピトープは、以下にさらに詳細に記載される異種スペーサーを介して標的抗原部位に共有結合している。
【0070】
合成方法
本開示のペプチド免疫原は、化学的方法を使用して合成することができる。一部の実施形態では、本開示のペプチド免疫原は、固相ペプチド合成を使用して合成することができる。一部の実施形態では、本発明のペプチドは、α-NHまたは側鎖アミノ酸を保護するために、t-BocまたはFmocを使用する自動Merrifieldペプチド固相合成法を使用して合成される。
【0071】
コンビナトリアル配列として提示される異種Thエピトープペプチドは、その特定のペプチドの相同体の可変残基に基づいて、ペプチドフレームワーク内に特定の位置に表されるアミノ酸残基の混合物を含有する。コンビナトリアルペプチドの集合体は、合成プロセス中に指定位置に、1つの特定のアミノ酸の代わりに、指定された保護アミノ酸の混合物を付加することによって、1つのプロセスで合成することができる。そのようなコンビナトリアル異種Thエピトープペプチドアセンブリは、多様な遺伝的背景を有する動物の広いThエピトープカバレッジを可能にすることができる。異種Thエピトープペプチドの代表的なコンビナトリアル配列には、表1に示される配列番号5、10、13、16、24、及び27が含まれる。本発明のエピトープペプチドは、遺伝的に多様な集団からの動物及び患者に幅広い反応性及び免疫原性を提供する。
【0072】
興味深いことに、Thエピトープ、B細胞エピトープ、及び/またはThエピトープ及びB細胞エピトープを含有するペプチド免疫原構築物の合成中に導入され得る不整合及び/またはエラーは、ほとんどの場合、処置された動物の所望の免疫応答を妨げないか、または阻止しない。実際、ペプチド合成中に導入され得る不整合/エラーにより、標的ペプチド合成とともに複数のペプチドアナログが生成される。これらのアナログには、アミノ酸の挿入、欠失、置換、及び早期終結が含まれ得る。上記のように、そのようなペプチドアナログは、免疫診断のための固相抗原として、またはワクチン接種のための免疫原として、免疫学的用途で使用される場合、抗原性及び免疫原性への寄与因子としてペプチド調製物に適する。
【0073】
Thエピトープを含むペプチド免疫原構築物は、標的抗原部位と並行して、単一の固相ペプチド合成で同時に生成される。Thエピトープには、Thエピトープの免疫学的アナログも含まれる。免疫学的Thアナログには、免疫強化アナログ、交差反応性アナログ、及び標的抗原部位に対する免疫応答を強化または刺激するのに十分なこれらのThエピトープのいずれかのセグメントが含まれる。
【0074】
所望のペプチド免疫原の完全な組み立て後、固相樹脂は、樹脂からペプチドを切断し、アミノ酸側鎖上の官能基を除去するために処理することができる。遊離ペプチドは、HPLCで精製し、生化学的に特性決定することができる。一部の実施形態では、遊離ペプチドは、アミノ酸分析を使用して生化学的に特性決定される。一部の実施形態では、遊離ペプチドは、ペプチド配列を使用して特性決定される。一部の実施形態では、遊離ペプチドは、質量分析法を使用して特性決定される。
【0075】
本発明のペプチド免疫原は、チオエーテル結合の形成を通してハロアセチル化及びシステイン化ペプチドを使用して合成することができる。一部の実施形態では、システインは、Th含有ペプチドのC末端に付加することができ、システイン残基のチオール基は、Nαクロロアセチル変性基またはリジン残基のマレイミド誘導体化α基もしくはε-NH基などの求電子性基への共有結合を形成するために使用することができる。得られる合成中間体は、標的抗原部位ペプチドのN末端に結合させることができる。
【0076】
より長い合成ペプチドコンジュゲートは、核酸クローニング手法を使用して合成することができる。一部の実施形態では、本発明のThエピトープは、組み換えDNA及びRNAを発現することによって合成することができる。本発明のTh/標的抗原部位ペプチドを発現する遺伝子を構築するために、アミノ酸配列は、核酸配列に逆翻訳することができる。一部の実施形態では、アミノ酸配列は、遺伝子が発現される生物に最適化されたコドンを使用して、核酸配列に逆翻訳される。ペプチドをコードする遺伝子を作成することができる。一部の実施形態では、ペプチドをコードする遺伝子は、ペプチド及び必要な調節エレメントをコードする重複オリゴヌクレオチドを合成することによって作製することができる。合成遺伝子は、所望の発現ベクターに組み立てて挿入することができる。
【0077】
本開示の合成核酸配列には、ペプチドまたはコードされたThエピトープの免疫学的特性を変更しない非コード配列の変化で特性決定される、本発明のThエピトープをコードする核酸配列、Thエピトープを含むペプチド、その疫学的に機能的な相同体、及び核酸構築物が含まれ得る。合成遺伝子は、好適なクローニングベクターに挿入することができ、組み換え体が得ることができ、特性決定することができる。次に、Thエピトープ及びThエピトープを含むペプチドは、選択された発現系及び宿主に適切な条件下で発現させることができる。Thエピトープまたはペプチドは、精製及び特性決定することができる。
【0078】
医薬組成物
本開示は、本開示のペプチド免疫原を含む医薬組成物についても記載する。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、ペプチド免疫原の投与のための薬学的に許容される送達システムとして使用することができる。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、免疫学的に有効な量の1つ以上のペプチド免疫原を含み得る。
【0079】
本発明のペプチド免疫原は、免疫原性組成物として製剤化することができる。一部の実施形態では、免疫原性組成物は、ワクチン組成物中の、日常的に提供されるアジュバント、乳化剤、薬学的に許容される担体、または他の成分を含み得る。本発明で使用することができるアジュバントまたは乳化剤には、ミョウバン、不完全Freundアジュバント(IFA)、リポシン、サポニン、スクアレン、L121、EMULSIGEN、モノホスホリル脂質A(MPL)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)、QS21、及びISA720、ISA51、ISA35、ISA206、及び他の有効なアジュバント及び乳化剤が含まれる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、即時放出用に製剤化することができる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、持続放出用に製剤化することができる。
【0080】
医薬組成物に使用されるアジュバントには、油、アルミニウム塩、ビロソーム、リン酸アルミニウム(例えば、ADJU-PHOS(登録商標))、水酸化アルミニウム(例えば、ALHYDROGEL(登録商標))、リポシン、サポニン、スクアレン、L121、Emulsigen(登録商標)、モノホスホリル脂質A(MPL)、QS21、ISA35、ISA206、ISA50V、ISA51、ISA720、ならびに他のアジュバント及び乳化剤が含まれ得る。
【0081】
一部の実施形態では、医薬組成物は、MONTANIDE(商標)ISA51(油中水型エマルションを生成するための植物油及びオレイン酸マンニドからなる油アジュバント組成物)、TWEEN(登録商標)80(ポリソルベート80またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアートとしても知られる)、CpGオリゴヌクレオチド、及び/またはそれらの任意の組み合わせを含有する。他の実施形態では、医薬組成物は、アジュバントとしてEMULSIGENまたはEMULSIGEN Dを含む水中油中水型(すなわち、w/o/w)エマルションである。
【0082】
図1Aは、UBITh(登録商標)を含む、Thエピトープ担体を含有するペプチド免疫原を有する製剤に含まれ得る構成要素を要約した概略図である。図1Aに示される例示的製剤としては、2つの別々のペプチド免疫原構築物が挙げられる。各ペプチド免疫原構築物は、(a)所望のエピトープに対する高度に標的化された抗体を誘発するように設計されるカスタム機能B細胞エピトープ、(b)免疫原性を強化するために免疫系へのB細胞エピトープの提示を最適化するのに役立つリンカー、及び(c)それ自体が免疫サイレントであるが、B細胞エピトープに対する強力な応答を促進するのに役立つThエピトープを含有する。製剤は、組成物が使用される特定の用途に適する薬学的に許容されるアジュバントまたは担体も含有する。さらに、組成物は、CpGオリゴヌクレオチドを使用して安定化免疫刺激複合体に製剤化することができる(さらに以下に説明)。
【0083】
図1Bは、UBITh(登録商標)を含む、本明細書に記載のTヘルパー細胞エピトーププラットフォームのいくつかの特徴及び技術的利点をまとめる。例えば、本明細書に記載のThエピトーププラットフォームは、長時間作用型であるが、追加免疫がない状態で可逆的である。Thエピトーププラットフォームは、B細胞エピトープに対する特異性の高い抗体を生成し、リンカーまたはThエピトープ配列に対して生成される抗体は、たとえあったとしても、ほとんどない。さらに、Thエピトーププラットフォームは、様々なB細胞エピトープとともに使用することができ、これにより、ペプチド免疫原構築物の無限の組み合わせが可能になる。
【0084】
一部の実施形態では、組成物は、ワクチンとして使用するために製剤化される。ワクチン組成物は、皮下、経口、筋肉内、腹腔内、非経口、または経腸投与を含む任意の便利な経路によって投与することができる。一部の実施形態では、免疫原は、単回投与で投与される。一部の実施形態では、免疫原は、複数回投与にわたって投与される。
【0085】
医薬組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射可能なものとして調製することができる。tauペプチド免疫原構築物を含有する液体ビヒクルは、注射前に調製することもできる。医薬組成物は、好適な任意の適用様式、例えば、i.d.、i.v.、i.p.、i.m.、鼻腔内、経口、皮下などで、及び好適な送達デバイス中で、投与することができる。特定の実施形態では、医薬組成物は、静脈内、皮下、皮内、または筋肉内投与のために製剤化される。経口及び鼻腔内適用を含む、他の投与様式に適する医薬組成物を調製することもできる。
【0086】
本発明の組成物は、有効量の1つ以上ペプチド免疫原及び薬学的に許容される担体を含み得る。一部の実施形態では、好適な投薬単位形態の組成物は、対象の体重1kgあたり、約0.5μg~約1mgのペプチド免疫原を含有し得る。一部の実施形態では、好適な投薬単位形態の組成物は、対象の体重1kgあたり、約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約60μg、約70μg、約80μg、約90μg、約100μg、約200μg、約300μg、約400μg、約500μg、約600μg、約700μg、約800μg、約900μg、または約1000μgのペプチド免疫原を含有し得る。一部の実施形態では、好適な剤形の組成物は、対象の体重1kgあたり、約100μg、約150μg、約200μg、約250μg、約300μg、約350μg、約400μg、約450μg、または約500μgのペプチド免疫原を含有し得る。一部の実施形態では、好適な投薬単位形態の組成物は、対象の体重1kgあたり、約0.5μg~約1mgのペプチド免疫原を含有し得る。一部の実施形態では、好適な投薬単位形態の組成物は、約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約60μg、約70μg、約80μg、約90μg、約100μg、約200μg、約300μg、約400μg、約500μg、約600μg、約700μg、約800μg、約900μg、または約1000μgのペプチド免疫原を含有し得る。一部の実施形態では、好適な剤形の組成物は約100μg、約150μg、約200μg、約250μg、約300μg、約350μg、約400μg、約450μg、または約500μgのペプチド免疫原を含有し得る。
【0087】
複数回投与で送達される場合、組成物は、1回の投与毎に適切量に分割することができる。一部の実施形態では、用量は、約0.2mg~約2.5mgである。一部の実施形態では、用量は、約1mgである。一部の実施形態では、用量は、約1mgであり、注射で投与される。一部の実施形態では、用量は、約1mgであり、筋肉内投与される。一部の実施形態では、投与後に、反復(追加免疫)投与が続き得る。投薬量は、対象の年齢、体重、及び全体的な健康状態に応じて最適化することができる。
【0088】
ペプチド免疫原の混合物を含むワクチンは、より広範な集団において免疫有効性の強化を提供し得る。一部の実施形態では、ペプチド免疫原の混合物は、MVF Th及びHBsAg Thに由来するTh部位を含む。一部の実施形態では、ペプチド免疫原の混合物を含むワクチンは、標的抗原部位に対する免疫応答の改善を提供し得る。
【0089】
Th/標的抗原部位コンジュゲートに対する免疫応答は、生分解性マイクロ粒子の中または上への捕捉による送達で改善することができる。一部の実施形態では、ペプチド免疫原は、アジュバントを含んでまたは含まずにカプセル化することができ、そのようなマイクロ粒子は、免疫刺激アジュバントを運び得る。一部の実施形態では、マイクロ粒子は、免疫応答を増強するために、ペプチド免疫原と同時投与することができる。
【0090】
免疫刺激複合体
本開示は、また、CpGオリゴヌクレオチドとの免疫刺激複合体の形態のtauペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物に関する。そのような免疫刺激複合体は、アジュバント及びペプチド免疫原安定剤として機能するように特別に適合される。免疫刺激複合体は、免疫応答を生じさせるために、免疫系の細胞へのtauペプチド免疫原を効率的に提示し得る微粒子の形態である。免疫刺激複合体は、非経口投与用の懸濁液として製剤化されてもよい。免疫刺激複合体は、また、経口投与後の宿主の免疫系の細胞にtauペプチド免疫原を効率的に送達するための無機塩またはin-situゲル化ポリマーと組み合わせた懸濁液として、w/oエマルションの形態で製剤化されてもよい。
【0091】
安定化免疫刺激複合体は、静電結合を介して、陰イオン分子、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの組み合わせと、tauペプチド免疫原構築物を複合化することによって形成することができる。安定化免疫刺激複合体は、免疫原送達システムとして医薬組成物に組み込まれてもよい。
【0092】
特定の実施形態では、tauペプチド免疫原構築物は、5.0~8.0の範囲のpHで正荷電の陽イオン部分を含有するように設計される。tauペプチド免疫原構築物、または構築物の混合物の陽イオン部分の正味電荷は、配列内の、各リジン(K)、アルギニン(R)、またはヒスチジン(H)に対して+1の電荷を、各アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)に対して-1の電荷を、他のアミノ酸に対して0の電荷を割り当てることによって計算される。電荷は、tauペプチド免疫原構築物の陽イオン部分内で合計され、正味の平均電荷として表される。好適なペプチド免疫原は、正味の平均正電荷が+1である陽イオン部分を有する。好ましくは、ペプチド免疫原は、+2より大きい範囲の正味の正電荷を有する。一部の実施形態では、tauペプチド免疫原構築物の陽イオン部分は、異種スペーサーである。特定の実施形態では、tauペプチド免疫原構築物の陽イオン部分は、スペーサー配列が(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号53)、またはLys-Lys-Lys-ε-N-Lys(配列番号54)である場合、+4の電荷を有する。
【0093】
本明細書に記載の「陰イオン分子」は、5.0~8.0の範囲のpHで負電荷を有する任意の分子を指す。特定の実施形態では、陰イオン分子は、オリゴマーまたはポリマーである。オリゴマーまたはポリマーの正味の負電荷は、オリゴマーの各ホスホジエステルまたはホスホロチオエート基に-1電荷を割り当てることによって計算される。好適な陰イオンオリゴヌクレオチドは、8~64ヌクレオチド塩基を有する一本鎖DNA分子であり、CpGモチーフのリピート数は、1~10の範囲である。好ましくは、CpG免疫刺激一本鎖DNA分子は、18~48ヌクレオチド塩基を含有し、CpGモチーフのリピート数は、3~8の範囲である。
【0094】
より好ましくは、陰イオンオリゴヌクレオチドは、式:5’XCGX3’(式中、C及びGは、メチル化されておらず、X1は、A(アデニン)、G(グアニン)、及びT(チミン)からなる群から選択され、Xは、C(シトシン)またはT(チミン)である)で表される。または、陰イオンオリゴヌクレオチドは、式:5’(XCG(X3’(式中、C及びGは、非メチル化され、Xは、A、T、またはGからなる群より選択され、Xは、CまたはTである)で表される。特定の実施形態では、CpGオリゴヌクレオチドは、CpG1(配列番号146)、CpG2(配列番号147)、またはCpG3(配列番号148)であり得る。
【0095】
得られる免疫刺激複合体は、通常、1~50ミクロンの範囲のサイズを有する粒子の形態であり、相互作用種の相対的な電荷の化学量論及び分子量を含む多くの因子の関数である。微粒子化された免疫刺激複合体は、in vivoでの特定の免疫応答のアジュバント化及び上方調節を提供するという利点を有する。さらに、安定化免疫刺激複合体は、油中水型エマルション、無機塩懸濁液、及びポリマーゲルを含む様々なプロセスによる医薬組成物の調製に適する。
【0096】
用途
本開示の人工Thエピトープを含有するペプチド免疫原は、医学及び獣医学用途に有用であり得る。一部の実施形態では、ペプチド免疫原は、感染症に対する防御免疫を得るワクチン、正常な生理学的プロセスの機能不全から生じる障害を処置するための免疫療法、がんを処置するための免疫療法、及び正常な生理学的プロセスに介入またはこれを改変する薬剤として使用することができる。
【0097】
本開示の人工Thエピトープは、様々な微生物、タンパク質、またはペプチドの標的B細胞エピトープと組み合わせる場合、免疫応答を誘発し得る。一部の実施形態では、本開示の人工Thエピトープは、1つの標的抗原部位に結合することができる。一部の実施形態では、本開示の人工Thエピトープは、2つの標的抗原部位に結合することができる。
【0098】
本開示の人工Thエピトープは、様々な疾患及び状態を予防及び/または処置するために、標的抗原部位に結合することができる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、神経変性疾患、感染性疾患、動脈硬化症、前立腺癌、雄臭の予防、動物のイムノキャストレーション、子宮内膜症の処置、乳癌及び性腺ステロイドホルモンの影響を受ける他の婦人科癌の予防及び/または処置に、ならびに男性及び女性の避妊に使用することができる。例えば、人工Thエピトープは、以下のタンパク質の抗原部位に結合することができる:
a.家畜の成長を促進するソマトスタチン。
b.アレルギー疾患を処置するIgE。
c.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症及び免疫障害を処置及び/または予防するTh細胞のCD4受容体。
d.口蹄疫(FMD)を予防するFMDウイルスカプシドタンパク質。
e.HIV感染を予防及び処置するHIVビリオンエピトープ。
f.マラリアを予防及び処置するPlasmodium falciparumのスポロゾイト周囲抗原。
g.動脈硬化を予防及び処置するCETP。
h.アルツハイマー病を処置またはそれに対して予防接種するAβ。
i.パーキンソン病を処置またはそれに対して予防接種するアルファ-シヌクレイン。
j.アルツハイマー病を含むタウ異常症を処置及びそれに対して予防接種するTau。
k.アトピー性皮膚炎を処置するIL-31。
l.片頭痛を予防及び処置するCGRP。
m.2型糖尿病を予防及び処置するIAPP(アミリン)。
【0099】
異種人工Thエピトープの使用は、神経変性疾患に関与するタンパク質(例えば、Aβ、アルファ-シヌクレイン、Tau)を標的とするために特に重要であることが判明している。具体的には、対象に投与される時、標的とされた神経変性タンパク質の内因性Thエピトープを含有するペプチド免疫原は、脳の炎症を引き起こし得る。対照的に、神経変性タンパク質の抗原部位に結合している異種人工Thエピトープを含有するペプチド免疫原構築物は、脳の炎症を引き起こさない。
【0100】
図2は、本出願に記載のThエピトーププラットフォームを使用して得ることができる理論的な結果を示すグラフである。グラフは、ThエピトープにコンジュゲートされたB細胞エピトープを含有するペプチド免疫原構築物は、開始時間が早く、Cmaxにすばやく到達することを示す。Cmaxは、最小有効濃度(MEC)及び最小治療濃度(MTC)間にある治療範囲内にある。以下の実施例は、使用されるThエピトープ、ペプチド免疫原構築物の投薬量、及びアジュバントを変化させることにより、Cmax、作用持続時間、開始時間、及びtmaxは、全て、制御及び/または調整することができることを示す。
【0101】
アミロイドβ
Aβペプチドは、アルツハイマー病の発症及び進行の中心であると考えられる。Aβオリゴマー及びAβ原線維の有毒な形態は、アルツハイマー病及び認知症の病態につながるシナプス及びニューロンの死に関与していることが示唆される。良好なアルツハイマー病の疾患修飾療法には、脳内のAβの性質に影響を与える製品が含まれ得る。
【0102】
本開示のペプチド免疫原は、Th細胞エピトープ及びAβ標的化ペプチドを含み得る。一部の実施形態では、Th細胞エピトープは、Th1またはTh2である。一部の実施形態では、ペプチド免疫原は、Th1及びTh2を含み得る。Aβ標的ペプチド、またはB細胞エピトープは、Aβ1-14、Aβ1-16、Aβ1-28、Aβ17-42、またはAβ1-42であり得る。一部の実施形態では、Aβ標的化ペプチドは、Aβ1-14である。本明細書で使用される場合、Aβx-yという用語は、全長野生型Aβタンパク質のアミノ酸xからアミノ酸yまでのAβ配列を指す。
【0103】
本開示のペプチド免疫原は、複数のAβ標的化ペプチドを含み得る。一部の実施形態では、ペプチド免疫原は、2つのAβ標的化ペプチドを含み得る。一部の実施形態では、ペプチド免疫原は、1つのAβ1-14及び1つのAβ1-42ペプチドを含み得る。一部の実施形態では、ペプチド免疫原は、2つのAβ1-14標的化ペプチドを含み得る。一部の実施形態では、ペプチド免疫原は、2つのAβ1-14標的化ペプチドを含み得、それぞれは、キメラペプチドとして異なるTh細胞エピトープに結合している。
【0104】
本開示は、2つのAβ1-14標的化ペプチドを含むAβ1-14ペプチドワクチンも提供し、それぞれは、キメラペプチドとして異なるTh細胞エピトープに結合している。一部の実施形態では、キメラAβ1-14ペプチドは、T細胞の炎症反応性を最小限にするために、Th1バイアス送達システムで製剤化することができる。一部の実施形態では、キメラAβ1-14ペプチドは、T細胞の炎症反応性を最小限にするために、Th2バイアス送達システムで製剤化することができる。
【0105】
特定の実施形態
(1)配列番号32~52からなる群より選択される無差別人工Tヘルパー細胞(Th)エピトープ。
【0106】
(2)以下の式で表されるペプチド免疫原構築物:
(A)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X
または
(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(A)-X
または
(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X
または
{(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X}
(式中、
各Aは、独立して、アミノ酸であり、
各Bは、独立して、異種スペーサーであり、
各Thは、独立して、(1)に記載の無差別人工Thエピトープであり、
前記標的抗原部位は、外来抗原タンパク質、自己抗原タンパク質、またはそれらの免疫学的な反応性アナログ由来のB細胞エピトープであり、
Xは、アミノ酸、α-COOH、またはα-CONHであり、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
mは、1、2、3、または4であり、
oは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
pは、0、1、2、3、または4である)。
【0107】
(3)前記標的抗原部位が、口蹄疫(FMD)カプシドタンパク質、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)由来の糖タンパク質、豚熱ウイルス(CSFV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)からなる群より選択される外来抗原タンパク質由来のB細胞エピトープである、(2)に記載のペプチド免疫原構築物。
【0108】
(4)前記標的抗原部位が、
(a)配列番号56、57、58、59、または60のアミノ酸配列を有するAβペプチド、
(b)配列番号61のアミノ酸配列を有するアルファ-シンペプチド、
(c)配列番号62のアミノ酸配列を有するIgE EMPDペプチド、
(d)配列番号63、69、70、または71のアミノ酸配列を有するTauペプチド、
(e)配列番号64または72のアミノ酸配列を有するIL-31ペプチド、及び
(f)配列番号145のアミノ酸配列を有するIL-6ペプチド
からなる群より選択される自己抗原タンパク質由来のB細胞エピトープである、(2)に記載のペプチド免疫原構築物。
【0109】
(5)構成要素Bの前記異種スペーサーが、アミノ酸、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号53)、Lys-Lys-Lys-εNLys(配列番号54)、Gly-Gly、Pro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro(配列番号55)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、(2)に記載のペプチド免疫原構築物。
【0110】
(6)前記異種スペーサーが、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号53)、及びLys-Lys-Lys-εNLys(配列番号54)からなる群より選択される、(2)に記載のペプチド免疫原構築物。
【0111】
(7)(2)に記載のペプチド免疫原構築物を含む医薬組成物。
【0112】
(8)薬学的に有効な量の(7)に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、前記対象の疾患、状態、または病気を予防及び/または処置する方法。
【0113】
(9)前記標的抗原部位が、口蹄疫(FMD)カプシドタンパク質、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)由来の糖タンパク質、豚熱ウイルス(CSFV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)からなる群より選択される外来抗原タンパク質由来のB細胞エピトープである、(8)に記載の方法。
【0114】
(10)前記標的抗原部位が、
(a)配列番号56、57、58、59、または60のアミノ酸配列を有するAβペプチド、
(b)配列番号61のアミノ酸配列を有するアルファ-シンペプチド、
(c)配列番号62のアミノ酸配列を有するIgE EMPDペプチド、
(d)配列番号63、69、70、または71のアミノ酸配列を有するTauペプチド、
(e)配列番号64または72のアミノ酸配列を有するIL-31ペプチド、及び
(f)配列番号145のアミノ酸配列を有するIL-6ペプチド
からなる群より選択される自己抗原タンパク質由来のB細胞エピトープである、(8)に記載の方法。
【0115】
(11)以下の式で表されるペプチド免疫原構築物:
(A)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X
または
(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(A)-X
または
(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X
または
{(A)-(Th)-(B)-(標的抗原部位)-(B)-(Th)-(A)-X}
(式中、
各Aは、独立して、アミノ酸であり、
各Bは、独立して、異種スペーサーであり、
各Thは、独立して、配列番号1~52からなる群より選択される無差別人工Thエピトープであり、
前記標的抗原部位は、CTLエピトープ、腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)、新抗原由来のB細胞エピトープ、小分子薬物、またはそれらの免疫学的な反応性アナログであり、
Xは、アミノ酸、α-COOH、またはα-CONHであり、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
mは、1、2、3、または4であり、
oは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
pは、0、1、2、3、または4である)。
【0116】
(12)前記標的抗原部位が、配列番号76~144からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するCTLエピトープである、(11)に記載のペプチド免疫原。
【0117】
(13)前記標的抗原部位が、配列番号76~82からなる群より選択されるHIV由来のCTLエピトープである、(12)に記載のペプチド免疫原。
【0118】
(14)前記標的抗原部位が、配列番号83~106からなる群より選択されるHSV由来のCTLエピトープである、(12)に記載のペプチド免疫原。
【0119】
(15)前記標的抗原部位が、配列番号107~123からなる群より選択されるFMDV由来のCTLエピトープである、(12)に記載のペプチド免疫原。
【0120】
(16)前記標的抗原部位が、配列番号124~142からなる群より選択されるPRRSV由来のCTLエピトープである、(12)に記載のペプチド免疫原。
【0121】
(17)前記標的抗原部位が、配列番号143~144からなる群より選択されるCSFV由来のCTLエピトープである、(12)に記載のペプチド免疫原。
【0122】
(18)前記標的抗原部位は、GD3、GD2、Globo-H、GM2、フコシルGM1、GM2、PSA、Le、Le、SLe、SLe、Tn、TF、及びSTnからなる群より選択されるTACAである、(11)に記載のペプチド免疫原。
【0123】
(19)前記標的抗原部位が、配列番号73~75からなる群より選択される新抗原由来のB細胞エピトープである、(11)に記載のペプチド免疫原。
【0124】
(20)前記標的抗原部位が、小分子薬物である、(11)に記載のペプチド免疫原。
【0125】
(21)構成要素Bの前記異種スペーサーが、アミノ酸、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号53)、Lys-Lys-Lys-εNLys(配列番号54)、Gly-Gly、Pro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro(配列番号55)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、(11)に記載のペプチド免疫原構築物。
【0126】
(22)前記異種スペーサーが、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号53)、及びLys-Lys-Lys-εNLys(配列番号54)からなる群より選択される、(11)に記載のペプチド免疫原構築物。
【0127】
(23)(11)に記載のペプチド免疫原構築物を含む医薬組成物。
【0128】
(24)薬学的に有効な量の(23)に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、前記対象の疾患、状態、または病気を予防及び/または処置する方法。
【0129】
(25)前記疾患、状態、または病気が、HIVであり、前記標的抗原部位が、配列番号76~82からなる群より選択されるHIV由来のCTLエピトープである、(24)に記載の方法。
【0130】
(26)前記疾患、状態、または病気が、HSVであり、前記標的抗原部位が、配列番号83~106からなる群より選択されるHSV由来のCTLエピトープである、(24)に記載の方法。
【0131】
(27)前記疾患、状態、または病気が、FMDVであり、前記標的抗原部位が、配列番号107~123からなる群より選択されるFMDV由来のCTLエピトープである、(24)に記載の方法。
【0132】
(28)前記疾患、状態、または病気が、PRRSVであり、前記標的抗原部位が、配列番号124~142からなる群より選択されるPRRSV由来のCTLエピトープである、(24)に記載の方法。
【0133】
(29)前記疾患、状態、または病気が、CSFVであり、前記標的抗原部位が、配列番号143~144からなる群より選択されるCSFV由来のCTLエピトープである、(24)に記載の方法。
【0134】
(30)前記疾患、状態、または病気が、CSFVであり、前記標的抗原部位が、配列番号143~144からなる群より選択されるCSFV由来のCTLエピトープである、(24)に記載の方法。
【0135】
(31)前記疾患、状態、または病気が、がんであり、前記標的抗原部位は、GD3、GD2、Globo-H、GM2、フコシルGM1、GM2、PSA、Ley、Lex、SLex、SLea、Tn、TF、及びSTnからなる群より選択されるTACAである、(24)に記載の方法。
【0136】
(32)前記疾患、状態、または病気ががんであり、前記標的抗原部位が、配列番号73~75からなる群より選択される新抗原由来のB細胞エピトープである、(24)に記載の方法。
【0137】
(33)対象の免疫応答を調整するための方法であって、
(a)前記標的抗原部位が、一定のままであり、各ペプチド免疫原構築物上の前記Thエピトープが異なる、(11)に記載の複数のペプチド免疫原構築物を調製すること、
(b)複数の医薬組成物を調製することであって、このそれぞれが、(a)で調製された前記ペプチド免疫原構築物の1つ及び薬学的に許容されるアジュバントまたは担体を含む、前記複数の医薬組成物を調製すること、
(c)異なる対象に(b)で調製された前記各医薬組成物を投与すること、
(d)前記対象のそれぞれの免疫応答を監視すること、ならびに
(e)所望の免疫応答を生じる前記医薬組成物を選択すること、
を含む、前記方法。
【0138】
(34)前記各医薬組成物中の前記薬学的に許容されるアジュバントまたは担体が同じである、(33)に記載の方法。
(35)前記各医薬組成物中の前記薬学的に許容されるアジュバントまたは担体が異なる、(33)に記載の方法。
【実施例
【0139】
実施例1
ペプチド及びペプチド免疫原構築物の調製
ペプチド免疫原構築物を含むペプチドは、自動固相合成を使用して合成し、分取HPLCで精製し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析、アミノ酸分析、及び逆相HPLCで特性決定した。
【0140】
Aβワクチン(UB-311)は、2つのペプチド免疫原を含み、それぞれが、N末端Aβ1-14ペプチドを有し、アミノ酸スペーサーを介して、2つの病原体タンパク質であるB型肝炎表面抗原及び麻疹ウイルス融合タンパク質に由来する異なるTh細胞エピトープペプチド(UBITh(登録商標)エピトープ)に合成的に結合している。具体的には、麻疹ウイルス融合タンパク質に結合しているペプチド免疫原は、Aβ1-14-εK-KKK-MvF5 Th(配列番号67)であり、B型肝炎表面抗原に結合しているペプチド免疫原は、Aβ1-14-εK-HBsAg3 Th(配列番号68)であった。
【0141】
UB-311は、ミョウバン含有Th2バイアス送達システムに製剤化し、等モル比でペプチドAβ1-14-εK-HBsAg3及びAβ1-14-εK-KKK-MvF5 Thを含有していた。2つのAβ免疫原をポリアニオン性CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合して、ミクロンサイズの粒子の安定した免疫刺激複合体を形成した。等張化用の塩化ナトリウム及び防腐剤としての0.25%の2-フェノキシエタノールとともに、アルミニウム無機塩(ADJU-PHOS(登録商標))を最終製剤に添加した。
【0142】
いくつかの例示的な標的抗原部位(B細胞エピトープ及びCTLエピトープ)の配列が、それぞれ、表3A及び3Bに示される。Thエピトープに共有結合している標的抗原部位として、Aβ1-14、ラットIL-672-82、及びIgE-EMPD1-39を含有するいくつかの例示的なペプチド免疫原構築物の配列が表4に示される。様々なThエピトープに共有結合しているα-シヌクレイン111-132を含有するペプチド免疫原構築物の配列が表5に示される。様々なThエピトープに共有結合しているIgE-EMPDG1-C39を含有するペプチド免疫原構築物の配列が表6に示される。様々なThエピトープに共有結合しているヒトIL-673-83を含有するペプチド免疫原構築物の配列が表7に示される。UBITh(登録商標)1に共有結合しているジペプチドリピート(DPR)配列を含有するペプチド免疫原構築物の配列が表9に示される。様々なThエピトープに共有結合しているLHRHを含有するペプチド免疫原構築物の配列が表10に示される。
【0143】
実施例2
病原体由来の異種Tヘルパーエピトープの評価、ならびに、選択されたBエピトープペプチドの免疫原性を強化するアルファ-シヌクレイン111-132、IgE EMPD1-39、及びIL-673-83ペプチド免疫原構築物の設計へのそれらの組込み
a.ペプチド免疫原合成
機能特性について広範に特性決定されている、アルファ-シヌクレイン(AA 111-132;配列番号61);IgE EMPD(AA 1-39;配列番号62);及びIL-6(AA 73-83;配列番号145)由来の3つの短いB細胞エピトープペプチドを、代表的な標的抗原部位として使用した。これらの3つのB細胞エピトープを、以下に示される式に従うペプチド免疫原構築物にして、代表的な無差別人工Thエピトープ(配列番号1~52から選択)が3つの個々の標的抗原部位を免疫原性にする能力を評価した。
(Th)-(B)-(標的抗原部位)-X
(式中、
Thは、本明細書に開示の人工Thエピトープから選択され、mは、1であり、
(B)は、配列番号53または54のアミノ酸配列を有するスペーサーであり、
標的抗原部位は、配列番号61、62、または145のB細胞エピトープであり、
Xは、アミノ酸-CONHであった)。
【0144】
生成されたα-シヌクレイン、IgE EMPD、及びIL-6ペプチド免疫原構築物のアミノ酸配列が、それぞれ、表5、6、及び7に示される。
【0145】
b.ペプチド免疫原構築物を含有する製剤及び免疫化
代表的な免疫原性研究をモルモットで行い、表1に示されるそれぞれの異種Tヘルパーエピトープの相対的な有効性を評価した。様々なα-シヌクレイン、IgE EMPD、及びIL-6ペプチド免疫原が生成された後、同じThエピトープ配列を含有する構築物を、表8に示される1:1:1の比で一緒に混合した。例えば、表8に示される配合物番号1を調製するために、UBITH(登録商標)1エピトープ(配列番号149、178、及び207)を含有するα-シヌクレイン、IgE EMPD、及びIL-6構築物を一緒に混合した。α-シヌクレイン、IgE EMPD、及びIL-6ペプチド免疫原構築物の混合物を、アジュバントMONTANIDE ISA50V2と混合し、次に、CpG3オリゴヌクレオチドを使用して安定化免疫刺激複合体として製剤化した。表8に示される29の製剤のそれぞれは、0.5mLの容量に合計135μgのペプチド(ペプチドあたり45μg)を含有した。
【0146】
筋肉内(i.m.)注射により、初回免疫の0、3、及び6週間後(wpi)に、製剤をモルモット(群あたり3匹)に投与した。抗体力価レベルを評価するために、血清サンプルを、0、3、6、及び8wpiに採取した。
【0147】
c.免疫原性の結果
初回免疫の8週間後(8wpi)に得られた結果を使用して、異なるα-シヌクレイン(図3上部パネル)、IgE(図3下部パネル)、及びIL-6(表15)ペプチド免疫原構築物を評価した。α-シヌクレインの研究を通じて得られた免疫原性データを含有するグラフが図4Aに示され;IgE-EMPDが図5に示され;IL-6が図6に示される。
【0148】
全てのThエピトープは、3つの短いB細胞エピトープペプチドの免疫原性を様々な程度に強化することができた。具体的には、Thエピトープ:KKKMvF3 Th(配列番号13)、Clostridium tetani TT2 Th(配列番号36)、EBV EBNA-1 Th(配列番号42)、MvF5 Th;UBITh(登録商標)1(配列番号17)、EBV BHRF1 Th(配列番号41)、MvF4 Th;UBITh(登録商標)3(配列番号16)、及びコレラ毒素Th(配列番号33)により、α-シヌクレインペプチド(配列番号61)の免疫原性が他のThエピトープよりも強化された(図3上部パネル及び図4A)。これらのペプチド免疫原構築物は、表5中、それぞれ、製剤番号13、22、21、01、19、03、及び11で表される。
【0149】
IgE EMPDペプチド(配列番号62)では、Clostridium tetani TT4 Th(配列番号38)、UBITh(登録商標)1(配列番号17)、UBITh(登録商標)3(配列番号16)、HBsAg1 Th;SSAL2 Th2(配列番号24)、KKKMvF3 Th(配列番号13)、Clostridium tetani TT2 Th(配列番号36)、コレラ毒素Th(配列番号33)、EBV BHRF1 Th(配列番号41)、及びHBsAg3 Th;UBITH(登録商標)2(配列番号28)のThエピトープにより、IgE EMPDの免疫原性が他のThエピトープよりも強化された(図3の下部パネル及び図5)。これらのペプチド免疫原構築物は、表6中、それぞれ、製剤番号24、01、03、14、13、22、11、19、及び02で表される。
【0150】
IL-673-83環状ペプチド(配列番号145)では、HBsAg3 Th;UBITH(登録商標)2(配列番号28)、UBITh(登録商標)1(配列番号17)、UBITh(登録商標)3(配列番号16)、Clostridium tetani TT1 Th(配列番号34)、及びClostridium tetani TT4 Th(配列番号38)のThエピトープは、IL-6の得られる免疫原性を強化するのに最も強力であることが判明した(表15及び図6)。これらのペプチド免疫原構築物は、表7中に、それぞれ製剤番号02、01、03、20、及び24で表される。
【0151】
これらの結果は、本明細書に開示の異なる人工Thエピトープを使用する場合、単一の標的B細胞エピトープに対する異なる免疫原性を得ることができることを示す。霊長類を含む異なる種における各ペプチド免疫原構築物の免疫原性の慎重な較正が、最終的なThペプチドの選択及び最終ワクチン製剤の開発における成功を保証するために必要である。
【0152】
c.C max までの速度
異なるThエピトープに共有結合しているα-シヌクレインペプチド免疫原構築物の免疫原性データのさらなる分析により、いかにThエピトープが利用されるかに応じて、特定のCmaxが異なる速度で達成することができることを明らかになる。図4Bには、図4Aで報告された免疫原性データのサブセットが含有される。具体的には、α-シヌクレインペプチド(配列番号61)に共有結合しているKKKMvF3 Th(配列番号13)及びEBV EBNA-1 Th(配列番号42)のThエピトープを含有する製剤番号13及び21で免疫化されたモルモットは、8wpiまで同じCmaxを達成するが、異なる速度で達成する。特に、KKKMvF3 Th(配列番号13)を含有するα-シヌクレインペプチド免疫原構築物は、EBV EBNA-1Th(配列番号42)を含有するα-シヌクレインペプチド免疫原構築物よりも速く、Cmaxに到達する。同様に、UBITh(登録商標)1(配列番号17)を含有するα-シヌクレインペプチド免疫原構築物は、EBV BHRF1 Th(配列番号41)を含有するα-シヌクレインペプチド免疫原構築物よりも速く、Cmaxに到達し;Clostridium tetani TT1 Th(配列番号34)を含有するα-シヌクレインペプチド免疫原構築物は、インフルエンザMP1_1 Th(配列番号48)を含有するα-シヌクレインペプチド免疫原構築物よりも速く、Cmaxに到達する。図4Bに示される結果は、Thエピトープの選択が、抗体力価がCmaxに到達する速度に影響を及ぼし得ることを示す。
【0153】
d.概要
この実験の結果は、ペプチド免疫原構築物により誘発される免疫応答(抗体力価、Cmax、抗体産生の開始、応答期間などを含む)は、B細胞のエピトープに化学結合しているThエピトープの選択により調節することができることを示す。それ故、標的抗原部位に対する特異的免疫応答は、ペプチド免疫原構築物中のB細胞エピトープにコンジュゲートされるThエピトープを変化させることによって設計することができ、これにより、任意の患者または対象の個々の特性に個別化医療を調整することが容易になり得る。
【0154】
実施例3
ペプチド免疫原構築物の免疫原性は、B細胞エピトープ配列の長さに依存して変動し得る
3つのジペプチドリピート(DPR)ペプチド免疫原構築物の免疫化及び評価は、以下に詳細に記載される。
【0155】
a.予防接種及び血清の収集
表9に示される配列番号236、237、及び238のアミノ酸配列を有する3つのDPRペプチド免疫原構築物を生成した。各ペプチド免疫原をMONTANIDE(商標)ISA51及びCpGで製剤化して、初回免疫として400μg/mlの用量で、ならびに注射の3、6、9、及び12週間後(WPI)に追加免疫用量として100μg/mlでモルモットを免疫化した(1群あたり3匹のモルモット)。
【0156】
b.抗体力価の評価
ELISAアッセイを実施して、デザイナーDPRペプチド免疫原構築物の免疫原性を評価した。DPR B細胞エピトープペプチドまたはペプチド免疫原構築物を使用して、標的ペプチドとして役立つプレートウェルをコーティングした。モルモットの免疫血清を、10倍段階希釈により1:100から1:100,000に希釈した。カットオフA450を0.5に設定したA450nmの線形回帰分析により、Log10として表される試験された血清の力価を計算した。全てのペプチド免疫原は、プレートウェルでコーティングされたBエピトープペプチドに対して強い免疫原性力価を誘導した。
【0157】
c.抗体特異性分析のためのペプチドベースのELISA試験
免疫血清試料を評価するためのELISAアッセイを、以下のように開発した。
【0158】
10mMのNaHCO緩衝液pH9.5中2μg/mLで動物を免疫するために使用された100μLの同じDPRペプチド免疫原構築物(すなわち、配列番号236、237、または238)で96ウェルプレートのウェルを37℃で1時間、個別にコーティングした。
【0159】
d.ELISA試験によるDPRに対する抗体反応性の評価
非特異的タンパク質結合部位をブロックするために1時間37℃で、PBS中の3重量%ゼラチン250μLとともに、ペプチドでコーティングされたウェルをインキュベートし、続いて、0.05体積%のTWEEN(登録商標)20を含有するPBSで3回洗浄し、乾燥させた。分析されるべき血清を、20体積%の正常なヤギ血清、1重量%のゼラチン、及び0.05体積%のTWEEN(登録商標)20を含有するPBSで(別途記載のない限り)1:20に希釈した。希釈された標本(例えば、血清、血漿)の100マイクロリットル(100μL)を各ウェルに添加し、37℃で60分間反応させた。次に、未結合抗体を除去するために、PBS中0.05体積%のTWEEN(登録商標)20で、ウェルを6回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート種(例えば、マウス、モルモット、またはヒト)特異的ヤギ抗IgGを標識トレーサーとして使用して、陽性ウェルで形成された抗体/ペプチド抗原複合体と結合させた。予め滴定された最適の希釈の、PBS中0.05体積%のTWEEN(登録商標)20を含む1体積%の正常ヤギ血清中の、100マイクロリットルのペルオキシダーゼ標識ヤギ抗IgGを、各ウェルに添加し、37℃でさらに30分間インキュベートした。PBS中0.05体積%のTWEEN(登録商標)20でウェルを6回洗浄し、未結合抗体を除去し、クエン酸ナトリウム緩衝液中の0.04重量%の3’,3’,5’,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)及び0.12体積%の過酸化水素を含有する基質混合物100μLとさらに15分間反応させた。この基質混合物を使用して、着色生成物を形成することによってペルオキシダーゼ標識を検出した。1.0MのHSO 100μLを添加することによって、反応を停止させ、450nmでの吸光度(A450)を決定した。様々なDPR由来ペプチド免疫原を投与された免疫動物の抗体力価の決定のために、1:100から1:10,000への血清の10倍段階希釈を試験し、カットオフA450を0.5に設定したA450の線形回帰分析で、Log10として表される試験血清の力価を計算した。
【0160】
e.免疫原性の評価
動物由来の免疫前及び免疫血清試料を実験免疫化プロトコールに従って収集し、56℃で30分間加熱して、血清補体因子を不活性化した。DPRペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物の投与後、プロトコールに従って血液試料を得、特定の標的部位(複数可)に対する免疫原性を評価した。連続希釈した血清を試験し、陽性力価を逆希釈のLog10として表した。所望のB細胞応答の強化を提供するために利用されるThエピトープに対する低い~無視できる抗体反応性を維持しながら、標的抗原内の所望のエピトープ特異性に対する高力価のB細胞抗体応答を誘発する能力について、特定の医薬組成物の免疫原性を評価した。
【0161】
f.マウス免疫血清中のDPRレベルのイムノアッセイ
抗DPR抗体を捕捉抗体として、ビオチン標識抗DPR抗体を検出抗体として使用したサンドイッチELISA(Cloud-clon、SEB222Mu)によって、DPR由来ペプチド免疫原を投与されたマウスの血清DPRレベルを測定した。要約すると、抗体を、96ウェルプレート上、コーティング緩衝液(15mMのNaCO、35mMのNaHCO、pH9.6)中の100ng/ウェルで固定し、4℃で一晩インキュベートした。200μL/ウェルのアッセイ希釈剤(PBS中の0.5%のBSA、0.05%のTWEEN(登録商標)-20、0.02%のProClin300)を用いて、コーティングされたウェルを室温で1時間ブロックした。プレートを200μL/ウェルの洗浄緩衝液(0.05%のTWEEN(登録商標)-20を含むPBS)で3回洗浄した。精製された組み換えDPRを使用して、5%のマウス血清を含むアッセイ希釈液に標準曲線(2倍連続希釈により156~1,250ng/mLの範囲に及ぶ)を作成した。50マイクロリットル(50μL)の希釈した血清(1:20)及び標準液をコーティングされたウェルに添加した。インキュベーションを室温で1時間実施した。全てのウェルを吸引し、200μL/ウェルの洗浄緩衝液で6回洗浄した。捕捉されたDPRを、100μLの検出抗体溶液(アッセイ希釈液中50ng/mlのビオチン標識HP6029)とともに室温で1時間インキュベートした。次に、ストレプトアビジンポリ-HRP(1:10,000希釈、Thermo Pierce)を使用して、結合したビオチン-HP6029を1時間(100μL/ウェル)検出した。全てのウェルを吸引し、200μL/ウェルの洗浄緩衝液で6回洗浄し、100μL/ウェルの1MのHSOを加えることによって反応を停止した。4つのパラメーターロジスティック曲線フィットを生成するSoftMax Proソフトウェア(Molecular Devices)を使用することによって標準曲線を作成して、全ての試験された試料中のDPRの濃度を計算するために使用した。Prismソフトウェアを使用することによって、Student t検定を使用して、データを比較した。
【0162】
g.抗DPR抗体の精製
アフィニティーカラム(Thermo Scientific,Rockford)を使用することによって、異なる配列(配列番号236、237、または238)のペプチドを含有するDPRペプチド免疫原構築物で免疫したモルモットまたはマウスの注射の3~15週間後(WPI)に収集された血清から抗DPR抗体を精製した。簡潔には、緩衝液(0.1Mのリン酸及び0.15Mの塩化ナトリウム、pH7.2)で平衡化した後、400μLの血清をNabプロテインGスピンカラムに添加し、10分間エンド-オーバー-エンド混合し、1分間5,800xgの遠心分離を行った。カラムを結合緩衝液(400μL)で3回洗浄した。その後、溶出緩衝液(400μL、0.1MのグリシンpH2.0)をスピンカラムに添加して、5,800xgで1分間遠心分離した後に抗体を溶出させた。溶出した抗体を中和緩衝液(400μL、0.1MのTris pH8.0)と混合し、BSA(ウシ血清アルブミン)を標準として用いてOD280のNan-Dropを使用することによって、これらの精製抗体の濃度を測定した。
【0163】
h.結果
免疫化されたモルモット血清由来のDPRペプチドまたはペプチド免疫原に対する免疫原性力価をELISAにより評価した。
【0164】
図7は、3つの異なるDPRペプチド免疫原構築物で免疫したモルモットの15週間にわたる抗血清の特性を示す。0、3、6、9、12、及び15wpiのモルモットの抗血清を10倍段階希釈で希釈した。ELISAプレートをDPRペプチドまたはペプチド免疫原でコーティングした。カットオフA450を0.5に設定したA450nmの線形回帰分析により、Log10として表される試験血清の力価を計算した。
【0165】
次に、ポリGAペプチド(配列番号236、237、及び238)を含有するDPRペプチド免疫原構築物のELISAデータを、図7に示されるグラフとしてプロットし、動物を免疫するために使用された同じペプチド免疫原を分析用のELISAプレートに結合させた。全てのDPR免疫原構築物は、対応するDPRペプチドまたはペプチド免疫原に対して高い免疫原性を示した。ELISAの結果は、検出可能な抗体力価が、0週目の免疫化の前に、各群で観察されなかったことを示した。データは、DPRペプチド免疫原構築物中のジペプチドリピートの長さが、抗体力価に中程度の影響を与え得ることを示す。具体的には、図7に示されるように、ポリGA10、15、及び25リピート構築物(それぞれ、配列番号236、237、及び238)は、互いに比較して異なる免疫原性を有する。
【0166】
興味深いことに、B細胞エピトープペプチドの長さは、ペプチド免疫原構築物の免疫原性プロファイルに影響を有し得る。図7(左のグラフ)は、GA10ペプチド免疫原構築物(配列番号236)の免疫原性が定期的な追加免疫で経時的に着実に増加することを示すが、図7(中央のグラフ)は、GA15ペプチド免疫原構築物(配列番号237)の免疫原性が減少前の約9wpiにピークに達することを示し、図7(右のグラフ)は、GA25ペプチド免疫原構築物(配列番号238)の免疫原性が定期的な追加免疫で経時的に着実に増加することを示す。
【0167】
図7の結果は、免疫応答が、ペプチド免疫原構築物で使用されるB細胞エピトープの長さに応じて影響を受け得ることを示す。
【0168】
i.概要
この実験の結果は、ペプチド免疫原構築物で誘発される免疫応答(抗体力価、Cmax、抗体産生の開始、応答期間などを含む)が、ペプチド免疫原構築物で使用されるB細胞エピトープの長さで調節することができることを示す。それ故、標的抗原部位に対する特異的免疫応答は、ペプチド免疫原構築物中のB細胞エピトープの長さを変化させることによって設計することができ、これにより、任意の患者または対象の個々の特性に個別化医療を調整することが容易になり得る。
【0169】
実施例4
ペプチド免疫原構築物の免疫原性は、投与されたペプチドの量及び投与レジメンに依存して変動し得る
様々な用量の免疫化及び評価、ならびにペプチド免疫原構築物の投与計画は、以下に詳細に記載される。
【0170】
a.UB-311ワクチン(Aβペプチド免疫原)
Aβワクチン(UB-311)は、2つのペプチド免疫原を含み、それぞれが、N末端Aβ1-14ペプチドを有し、アミノ酸スペーサーを介して、2つの病原体タンパク質であるB型肝炎表面抗原及び麻疹ウイルス融合タンパク質に由来する異なるTh細胞エピトープペプチド(UBITh(登録商標)エピトープ)に合成的に結合している。具体的には、麻疹ウイルス融合タンパク質に結合しているペプチド免疫原は、Aβ1-14-εK-KKK-MvF5 Th(配列番号67)であり、B型肝炎表面抗原に結合しているペプチド免疫原は、Aβ1-14-εK-HBsAg3 Th(配列番号68)であった。
【0171】
UB-311は、ミョウバン含有Th2バイアス送達システムに製剤化し、等モル比でペプチドAβ1-14-εK-HBsAg3及びAβ1-14-εK-KKK-MvF5 Thを含有していた。2つのAβ免疫原をポリアニオン性CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合して、ミクロンサイズの粒子の安定した免疫刺激複合体を形成した。等張化用の塩化ナトリウム及び防腐剤としての0.25%の2-フェノキシエタノールとともに、アルミニウム無機塩(ADJU-PHOS(登録商標))を最終製剤に添加した。
【0172】
b.モルモットにおける異なる用量のUB-311
0μg、1μg、3μg、10μg、30μg、100μg、300μg、600μg、及び1,000μgの総ペプチド免疫原構築物を含有する用量で、0、3、及び6wpiに、Aβワクチン(UB-311)をモルモットに投与した。血清サンプルを、0、3、5、7、及び9wpiに採取して、抗体力価を評価した。
【0173】
図8は、各免疫投与について得られた抗体力価の結果を示すグラフである。結果は、免疫化に使用されるペプチドの量が抗体力価にかなりの影響を与え得ることを示すが、最適な技術的効果は、各用量について評価すべきである。具体的には、図8は、投与されたペプチドの用量を0μgから600μgに増加させることが、免疫原性の増加に直接対応することを示す。しかし、1,000μgのペプチド免疫原が投与される場合、免疫原性は、ペプチド免疫原構築物の低用量と比較して、実質的に低減され得る(300μg及び600μgを1,000μgと比較)。従って、ペプチド免疫原構築物により得られる最適な免疫原性は直線的ではなく、各ペプチド免疫原構築物について慎重に評価すべきである。
【0174】
c.モルモットにおけるUB-311の異なる投与計画は、免疫原性に影響を与え得る
Aβワクチン(UB-311)の投与計画を評価して、初回免疫投与量及び追加免疫投与量として投与されたペプチド免疫原構築物の量が組成物の全体的な免疫原性に影響を及ぼし得るかどうかを判定した。
【0175】
UB-311ワクチンを、投与された異なる初回免疫及び追加免疫投与量で、0、3、及び6wpiにモルモットに投与した。具体的には、動物の第1群を、0週WPIにUB-311の100μgの用量で初回免疫し、UB-311の400μgの2回用量で追加免疫したが、動物の第2群を、0週wpiにUB-311の400μgの用量で初回免疫し、UB-311の100μgの2回用量で追加免疫した。この実験の結果が図9に示される。
【0176】
図9は、投与計画がUB-311組成物の免疫原性(Cmax及び持続時間)に影響を及ぼし得ることを示す。具体的には、低用量(100μgのUB-311)で初回免疫し且つ高用量(400μgのUB-311)で追加免疫した動物は、高用量(400μgのUB-311)で初回免疫し且つ低用量(100μgのUB-311)で追加免疫した動物と比較してより高く長いCmaxを達成した。
【0177】
この研究の結果は、投与計画がペプチド免疫原構築物の免疫原性に影響を与え得ることを示す。
【0178】
図10は、投与計画がペプチド免疫原構築物の免疫原性に影響を及ぼし得るさらなる実施例を提供する。具体的には、図10(上部パネル)は、Aβワクチン(UB-311)を用いる3ヶ月の追加免疫計画(上部パネル)または6ヶ月の追加免疫計画(下部パネル)で300μgのAβワクチン(UB-311)でヒト対象を免疫化した後に得られたELISAによる抗Aβ1-28抗体力価を示す。各グラフのボックス部分は、研究の全てのヒト対象の平均力価を強調する。
【0179】
図10の結果は、異なる免疫原性プロファイルが、対象に提供される投与計画に応じて達成することができることを示す。
【0180】
d.ラットにおけるLHRHペプチド免疫原構築物の異なる投与計画
異なる量のLHRHペプチド免疫原構築物を含有する製剤の投与計画を評価して、ペプチド免疫原構築物の総量が製剤の免疫原性に影響を及ぼし得るかどうかを判定した。
【0181】
具体的には、3匹のラットを、表10に示される3つのペプチドを含有するLHRH組成物で免疫した。ラットの第1群を、100μgの3つのLHRHペプチド免疫原で免疫した一方、ラットの第2群を、300μgの3つのLHRHペプチド免疫原で免疫した。免疫原性及びテストステロン濃度を評価し、図11A及び11Bに報告される。
【0182】
図11Aは、100μg量のLHRH製剤でラットを免疫した後に得られた抗体力価及びテストステロン濃度を示す。図11Bは、300μg量のLHRH製剤でラットを免疫した後に得られた抗体力価及びテストステロン濃度を示す。図11A及び11Bは、LHRHペプチド免疫原構築物では、300μgの高用量が、低用量のLHRHペプチド免疫原構築物と比較して、より高い抗LHRH力価及びテストステロン濃度のより高い低減をもたらすことを示す。
【0183】
それ故、図11A及び11Bの結果は、ペプチド免疫原構築物の投薬量レベル及び達成される技術的効果間に直接的な相関関係があることを示す。
【0184】
e.概要
この実験の結果は、ペプチド免疫原構築物により誘発される免疫応答(抗体力価、Cmax、抗体産生の開始、応答の持続時間などを含む)は、異なる投与計画を使用することによって調節することができることを示す。それ故、標的抗原部位に対する特異的免疫応答は、患者または対象の投与計画を変化させることによって設計することができ、これにより、任意の患者または対象の個々の特性に個別化医療を調整することが容易になり得る。
【0185】
実施例5
ペプチド免疫原構築物の免疫原性は、使用されるアジュバントに依存して変動し得る
異なるアジュバントで製剤化されたIL-6、IgE EMPD、及びLHRHペプチド免疫原構築物の免疫化及び評価を以下に記載されるように評価した。
【0186】
a.IL-6ペプチド免疫原構築物
異なるアジュバントを利用するIL-6ペプチド免疫原構築物を含有する製剤の免疫原性を評価した。CIAラットでのPOC研究は、関節リウマチ及び他の自己免疫疾患における潜在的な免疫療法への適用を意味するIL-6誘導病因に対して高い免疫原性及び治療有効性を有する設計されたペプチド免疫原構築物を示した。以下の研究は、ペプチド免疫原構築物の最適化及びアジュバントの選択ならびにCIA Lewisラットの用量決定に焦点を当てた。
【0187】
同じペプチド免疫原(配列番号243)及びCpGでそれぞれ製剤化された異なるアジュバントとしてのMONTANIDE ISA51及びADJU-PHOSをラットCIA免疫化研究で評価した。5群のそれぞれに割り当てられた5匹のラットは、2つのアジュバント製剤のうちの1つを投与され、合計10群は、これら2つの異なるアジュバントを投与された。-7、7、14、21、及び28日目に初回免疫ならびに追加免疫で、i.m.経路により、0.5ml中の5、15、45、150μgの異なる用量を処置群の全ての動物に注射し、35日目まで臨床観察を行った。ペプチド免疫原を含まない2つの異なるアジュバントプラセボ群に、製剤中のアジュバントビヒクルのみを注射した。
【0188】
プレートウェル中でコーティングされたラットIL-6組み換えタンパク質に対して、ELISAにより、抗IL-6力価を測定した。結果は、2つの異なるアジュバントビヒクルを注射された2つのプラセボ群のいずれも検出可能な抗IL-6抗体力価が見られなかったことを示したが、両方のアジュバント製剤でIL-6免疫原構築物(配列番号243)で免疫した全ての処置群は、ELISAによるラットIL-6に対する抗体を生じた。一般的に言えば、結果は、特に、ISA 51製剤を用いた群について、用量依存的な様式が観察されたことを示した(図12)。ISA 51製剤は、免疫ラットにおいてADJUPHOS製剤よりも高い免疫応答を誘導し、ADJUPHOSアジュバントで調製された製剤について免疫原性が4(log10)以下であったのと比べ、ISA 51製剤の免疫原性は全ての投与からそれぞれ4を超えるlog10値を有していた。
【0189】
図12は、ISA51/CpGまたはADJU-PHOS/CpGのいずれかで製剤化された異なる用量の配列番号243で免疫化されたラットにおける43日間にわたる抗体応答の動態を示す。ELISAプレートを組み換えラットIL-6でコーティングした。血清を、4倍段階希釈により1:100から1:4.19x10に希釈した。各血清試料の4パラメーターのロジスティック曲線に非線形回帰で0.45のカットオフを組み込むことによってLog10として表される試験された血清の力価を計算した。
【0190】
この実験の結果は、アジュバントの選択がペプチド免疫原構築物の免疫原性に重要な技術的影響を有し得ることを示す。
【0191】
b.IgE EMPDペプチド免疫原構築物
異なるアジュバントを利用するIgE EMPDペプチド免疫原構築物を含有する製剤の免疫原性を評価した。マカクにおけるPOC研究は、IgE EMPDに対し高い免疫原性及び治療有効性を有する設計されたペプチド免疫原構築物が、潜在的な免疫療法用途を暗示する病因を誘導したことを示していた。以下の研究は、IgE EMPDペプチド免疫原構築物を使用して、ペプチド免疫原構築物の最適化及びアジュバントの選択に焦点を当てた。
【0192】
同じIgE EMPDペプチド免疫原(配列番号178)及びCpGで製剤化された異なるアジュバントとしてのADJU-PHOS及びMONTANIDE ISA 51を、マカク免疫化研究で評価した。
【0193】
図13A及び13Bは、異なるアジュバント中の様々な量の配列番号178のIgE-EMPDペプチド免疫原構築物でマカクを免疫した後に得られた抗IgE-EMPD抗体力価を示すグラフを示す。図13Aは、CpG3を使用する安定化免疫刺激複合体として製剤化されたアジュバントとしてADJUPHOSを使用して得られた抗体力価を示す一方、図13Bは、CpG3を使用して安定化された免疫刺激複合体として製剤化されたアジュバントとしてMONTANIDE ISA51を使用して得られた抗体力価を示す。
【0194】
この実験の結果は、異なるアジュバントで製剤化されたIgE EMPDペプチド免疫原構築物が、ADJUPHOSを含有する製剤と比較して、MONTANTIDE ISA51と併用した場合、より免疫原性が高いことを示す(図13A及び13B)。それ故、異なるアジュバントの使用は、ペプチド免疫原構築物の異なる技術的効果(免疫原性)を生じ得る。
【0195】
c.LHRHペプチド免疫原構築物
異なるアジュバントを利用するLHRHペプチド免疫原構築物を含有する製剤の免疫原性を評価した。ブタにおけるPOC研究は、LHRHに対する高い免疫原性及び治療有効性を有する設計されたペプチド免疫原構築物が、潜在的な免疫療法用途を暗示する病因を引き起こしたことを示した。以下の研究は、ペプチド免疫原構築物の最適化及びLHRHペプチド免疫原構築物を使用してアジュバントの選択に焦点を当てた。
【0196】
同じ濃度の同じLHRHペプチド免疫原(配列番号239~241)で製剤化された異なるアジュバントとしてのEmulsigen D及びMONTANIDE ISA50Vを、ブタの免疫化研究で評価した。
【0197】
図14A及び14Bは、異なるアジュバント中の配列番号239~241の様々な量のLHRHペプチド免疫原構築物でブタを免疫した後に得られた抗LHRH抗体力価を示すグラフを示す。図14Aは、アジュバントとしてEmulsigen Dを使用して得られた抗体力価を示す一方、図14Bは、アジュバントとしてMONTANIDE ISA50Vを使用して得られた抗体力価を示す。
【0198】
この実験の結果は、異なるアジュバントで製剤化されたLHRHペプチド免疫原構築物が、Emulsigen Dを含有する製剤と比較して、MONTANTIDE ISA50Vで製剤化された場合、異なる技術的効果(テストステロン濃度の低減)を有することを示す(図15A及び14B)。それ故、異なるアジュバントの使用は、ペプチド免疫原構築物の異なる技術的効果(効果の持続時間、すなわち、この場合、イムノキャストレーション)を生じ得る。
【0199】
d.概要
この実験の結果は、ペプチド免疫原構築物で誘発される免疫応答(抗体力価、Cmax、抗体産生の開始、応答期間などを含む)が、同じ濃度のペプチド免疫原構築物を含有する製剤に使用されるアジュバントの選択で調節することができることを示す。それ故、標的抗原部位に対する特異的免疫応答は、B細胞エピトープに化学的に結合しているThエピトープまたは製剤に使用されるアジュバントのいずれかを変化させることによって設計することができ、これにより、任意の患者または対象の個々の特性に個別化医療を調整することが容易になり得る。
【0200】
実施例6
Aβペプチドを標的とするがThエピトープを標的としないモルモットにおけるペプチド免疫原構築物の排他的免疫原性
0及び4週目に、ペプチド免疫構築物である等モル比で一緒に製剤化されたAβ1-14-εK-KKK-MvF5(配列番号67)及びAβ1-14-εK-HBsAg3(配列番号68)で6匹のモルモットを免疫した。8週目に、動物から採血し、血清試料を採取して、ELISA試験により抗Aβペプチド及び抗Thエピトープ抗体力価(log10)を決定した。6匹のモルモット全ての抗体応答は、表11に示されるように、2つの人工Thエピトープ(MvF5 Th及びHBsAg3 Th)ではなくAβ1-42ペプチドを特異的に標的した。
【0201】
実施例7
UB-311ワクチンで免疫した動物由来のヒヒ及びマカクの末梢血単核細胞(PBMC)培養物における細胞性免疫応答
UB-311で免疫されたヒヒ及びカニクイザル由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll-hypaque勾配遠心分離で分離した。ペプチド誘導性増殖及びサイトカイン産生では、細胞(ウェルあたり2×10)を単独で、または添加された個々のペプチドドメイン(Aβ1-14、Aβ1-42、UBITh(登録商標)、及び非関連ペプチドを含む)とともに培養した。マイトジェン(PHA、PWM、Con A)を陽性対照として使用した(1%v/vの培養液で10μg/mL)。6日目に、1μCiの3H-チミジン(3H-TdR)を、3つの複製培養ウェルのそれぞれに添加した。18時間のインキュベーション後、細胞を採取し、3H-TdRの組み込みを測定した。刺激指数(S.I.)は、抗原の不存在下でのcpmで除した抗原の存在下でのcpmを表し;S.I.>3.0は、有意と考えられた。
【0202】
カニクイザルPMBC培養物由来のサイトカイン分析(IL-2、IL-6、IL-10、IL-13、TNFα、IFNγ)を、培地のアリコート単独で、またはペプチドドメインもしくはマイトジェンの存在下で実施した。サル特異的サイトカインサンドイッチELISAキット(U-CyTech Biosciences,Utrecht,The Netherlands)を使用して、キットの使用説明書に従って個々のサイトカインの濃度を決定した。
【0203】
免疫化された動物の15、21、及び25.5週目にマカクから収集された全血から、PMBCを単離した。様々なAβペプチド(Aβ1-14及びAβ1-42)の存在下で、単離PBMCを培養した。
【0204】
Aβ1-14ペプチドを培地に添加した時、リンパ球による増殖応答は観察されなかった。しかし、Aβ1-42ペプチドをPBMC培養物に添加した時、陽性の増殖応答が見られた。
【0205】
15、21、及び25.5週目に収集されたPBMC試料を、AβペプチドまたはPHAマイトジェンの存在下でのサイトカイン分泌についても試験した。表12に示されるように、3つのサイトカイン(IL-2、IL-6、TNFα)は、Aβ1-14ペプチドではなく、全長Aβ1-42ペプチドに応答して検出可能な分泌を示し、サイトカイン分泌の上方調節は、プラセボワクチン試料と比較した場合UBITh(登録商標)ADワクチン処置試料で検出されなかった。Aβペプチドの存在下で試験された他の3つのサイトカイン(IL-10、IL-13、IFNγ)は、全てのPBMC培養物でアッセイ検出限界を下回った。
【0206】
Aβ17-42ペプチドドメインを有さず、外来Tヘルパーエピトープを有するN末端Aβ1-14ペプチド免疫原のみを有するUB-311ワクチンでマカクを免疫した。これにより、Aβ1-42ペプチドの存在下、PBMC培養物で示される陽性増殖結果が、UB-311ワクチン応答とは関連しなかったが、むしろネイティブ全長Aβに対するバックグラウンド応答であったことが示される。
【0207】
これらの結果は、Aβ1-14及び外来Tヘルパーエピトープのみを有するUB-311ワクチンの安全性を支持し、これにより、正常なマカクのネイティブ全長Aβペプチドに対して潜在的な炎症性抗自己細胞媒介性免疫応答を生じないことが示される。対照的に、AN-1792ワクチンの臨床試験研究における脳炎と関連する有害事象は、一部では、そのワクチンの単量体または原線維/凝集Aβ1-42免疫原内にT細胞エピトープが包含されることによるものであった。
【0208】
実施例8
UB311ワクチンで免疫化されたアルツハイマー病患者由来のPBMCのリンパ球増殖分析及びサイトカイン分析。
アルツハイマー病患者由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll-hypaque勾配遠心分離で単離した。ペプチド誘導性増殖及びサイトカイン産生のために、細胞(ウェルあたり2.5x10)を、単独で、またはAβ1-14(配列番号56)、Aβ1-16(配列番号57)、Aβ1-28(配列番号59)、Aβ17-42(配列番号58)、Aβ1-42(配列番号60)、及び無関連の38merペプチド(p1412)を含む、個々のペプチドドメインを(10μg/mLの最終濃度で)添加して3連で培養した。培養物を5%のCO、37℃で72時間インキュベートし、次に、100μLの上清を各ウェルから除去し、サイトカイン分析のために-70℃で凍結した。0.5μCiのH-チミジン(H-TdR、Amersham、カタログ番号TRK637)を含有する培地10μlを各ウェルに添加し、18時間インキュベートし、続いて、液体シンチレーション計数によって放射性同位元素の組み込みを検出した。マイトジェンフィトヘマグルチニン(PHA)を、リンパ球増殖の陽性対照として使用した。AβペプチドまたはPHAマイトジェンなしで単独で培養された細胞を、陰性対照及び陽性対照として使用した。3連の陰性対照培養の1分あたりの平均カウント数(cpm)で除した、Aβペプチドを含む3連の実験培養の平均cpmとして、刺激指数(SI)を計算し、SI>3.0は、有意な増殖応答と考えられた。
【0209】
a.増殖分析
UB-311ワクチンで接種されたアルツハイマー病患者由来の0週目(ベースライン)及び16週目(3回目の投与の4週間後)に収集された全血から末梢血単核細胞試料を単離し、次に、様々なAβペプチドの不存在下または存在下で培養した。表13に示されるように、Aβ1-14、他のAβペプチド、またはp1412(関連しない対照ペプチド)が培地に添加された場合、リンパ球による有意な増殖応答が観察されなかった。予想通り、PHAマイトジェンが培地に添加された場合、陽性増殖応答が示された。UB-311免疫(P=0.87)前後のPHAと同様の応答の観察結果は、研究対象者の免疫機能の有意な変化を示唆していない(表13)。
【0210】
統計分析。0週目及び16週目間のリンパ球増殖の差を、対応のあるt検定で調べた。統計的有意性レベルが、両側検定で決定された(p<0.05)。Rバージョン2.14.1を、全ての統計分析に使用した。
【0211】
b.サイトカイン分析
細胞単独を含むか、またはAβペプチドドメインもしくはPHAの存在下での培養物のアリコートで、PBMC培養物のサイトカイン分析(IL-2、IL-6、IL-10、TNF-α、IFN-γ)を実施した。ヒト特異的サイトカインサンドイッチELISAキット(U-CyTech Biosciences,Utrecht,The Netherlands)を使用して、製造者の指示に従って、個々のサイトカインの濃度(pg/mL)を決定した(Clin Diag Lab Immunol.5(1):78-81(1998))。
【0212】
0週目及び16週目でUB-311ワクチンを投与されたアルツハイマー病患者から採取されたPBMC試料を、3日間培養された後の細胞単独(陰性対照)を含むか、またはAβペプチド、p1412(非関連ペプチド)もしくはPHAマイトジェン(陽性対照)の存在下でのサイトカイン分泌についても試験した。キットの定量化可能な範囲は、5~320pg/mLである。5pg/mL未満または320pg/mLを超える任意の測定濃度は、それぞれ、定量限界未満(BQL)または定量限界超(AQL)と示された。しかし、統計的に考慮して、BQLまたはAQLを、それぞれ、下限定量限界(5pg/mL)または上限定量限界(320pg/mL)と置き換えた。0週目及び16週目の各サイトカインの平均濃度が表14に示される。予想通り、IL-2を除いて、陽性対照であるPHAの存在下でサイトカイン産生が有意に増加させた。Aβ1-14または他のAβペプチドによる刺激に応答したサイトカインの産生は、ベースライン(0週目)及び16週目で観察されたが、ほとんどの値は、対応する陰性対照(細胞単独)と同様であった。
【0213】
免疫後の細胞性免疫応答の変化を評価するために、16週目のベースラインからの平均サイトカイン濃度の変化は、陰性対照と比較して、対応のあるWilcoxon符号順位検定で調べた。4つのサイトカイン(IFN-γ、IL-6、IL-10、TNF-α)は、全長Aβ1-42ペプチドに応答して分泌の顕著な増加を示し;この観察は、Aβ1-42凝集体の配座エピトープによるものであり得る。サイトカイン分泌の上方調節は、Aβ1-14または他のAβペプチドでは検出されなかった。
【0214】
c.概要
UB-311ワクチンは、2つのペプチド免疫原を含有し、その各々は、N末端Aβ1-14ペプチドが、それぞれ、MvF5 Th及びHBsAg3 Thエピトープに合成的に結合している。In vitroリンパ球増殖及びサイトカイン分析を使用して、細胞性免疫応答に対するUB-311ワクチンの免疫化の影響を評価した。表13に示されるように、Aβ1-14ペプチドまたは他のAβペプチドを培地に添加した場合、リンパ球による増殖応答が観察されなかった。UB-311ワクチンで免疫された患者のリンパ球によるサイトカイン分泌の上方調節は、Aβ1-14及びAβ1-42を除く他のAβペプチドによる処置では検出されず、これは、処置前の0週レベルと比較した時の16週目でのUB-311免疫化後の4つのサイトカイン(IFN-γ、IL-6、IL-10、TNF-α)の相当の増加を誘発した(表14)。Th2タイプT細胞応答によるサイトカイン放出の増加は、上方調節がAβ1-14単独では検出されなかったので、UB-311ワクチン応答とは無関係である可能性が高い。Aβ1-42に対する応答は、Aβ1-42で同定されるネイティブTヘルパーエピトープと関連し得るネイティブAβに対するバックグラウンド応答であると推測される。PHAに応答したIL-2産生の欠如が観察され、これは、正常ヒトPBMCを用いる類似の実験条件下で、Katial RK,et al.in Clin Diagn Lab Immunol 1998;5:78-81より報告された結果と一致している。結論として、これらの結果は、UB-311ワクチンが、第I相臨床試験に参加した軽度から中等度のアルツハイマー病患者において潜在的炎症性抗自己細胞性免疫応答を生じなかったことを示し、それにより、さらに、UB-311ワクチン安全性が示された。
【0215】
実施例9
無差別人工Th応答性細胞を、陰性対照と比較して中程度の免疫原性炎症応答で正常献血者のナイーブ末梢血単核細胞(PMBC)で検出することができる
ELISpotアッセイを用いて、正常献血者のナイーブ末梢血単核細胞で無差別人工Th応答細胞を検出して、強力なマイトジェンフィトヘマグルチニン(PHA)及び陰性対照と比較した場合の炎症性応答を誘発する能力を評価した。
【0216】
ELISpotアッセイは、サンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)手法を用いる。T細胞活性化の検出のために、分析物としてIFN-γまたは関連サイトカインが検出された。選択された分析物に特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれかを、PVDF(ビニリデンジフルオリド)で裏打ちされたマイクロプレートにプレコートした。適切に刺激された細胞を、ウェルにピペットし、指定された期間、加湿された37℃のCOインキュベーターにマイクロプレートを配置した。このインキュベーション期間中、分泌細胞の直近の固定された抗体は、分泌された分析物に結合した。あらゆる細胞及び未結合物質を洗い流した後、選択分析物に特異的なビオチン化ポリクローナル抗体をウェルに添加した。あらゆる未結合ビオチン化抗体を洗浄して除去した後、ストレプトアビジンにコンジュゲートしているアルカリホスファターゼを添加した。続いて、未結合酵素を洗浄により除去し、基質溶液(BCIP/NBT)を添加した。青黒色の沈殿物が形成され、サイトカインの局在部位にスポットとして現れた。個々の各スポットは、分析物を分泌する個々の細胞を表す。スポットは、自動ELISpotリーダーシステムで、または実体顕微鏡を使用して手動で、計数した。
【0217】
実施されたin vitro研究では、10μg/mLの培養物のPHAを、陽性対照として使用した。UBITh(登録商標)1(配列番号17)及びUBITh(登録商標)5(配列番号6)ペプチドを、通常の正常献血者の末梢血単核細胞に存在する応答細胞の数について試験した。配列番号33~52の無差別人工Thエピトープペプチドの混合物を別の陽性対照として調製した。標準的なT細胞刺激細胞培養条件では、培地のみを陰性対照として使用した。要約すると、マイトジェン(10μg/mLのPHA)、またはTh抗原(10μg/mLのUBITh(登録商標)1、UBITh(登録商標)5、またはマルチThの混合物)で刺激された100μL/ウェルのPBMC(2x10細胞)を、COインキュベーター内、37℃で48時間インキュベートした。ウェル/プレートの上清を収集した。プレート上の細胞を洗浄し、標的分析物であるIFN-γの検出のために処理した。
【0218】
図15に示されるように、無差別人工UBITh(登録商標)1またはUBITh(登録商標)5エピトープペプチドに対する応答性細胞について、代表的なドナー1、2、及び3を試験した。圧倒的なIFN-γELISPOT数は、常に、ナイーブドナー(PHAで培養されたPBMC;数が多すぎて計数できず)で検出されたが、対照培地で培養されたPBMCは、5~50のバックグラウンドIFN-γ ELISPOT数を与えた。UBITh(登録商標)1またはUBITh(登録商標)5で培養されたナイーブドナーPBMCの場合、20~約120の中程度のELISPOT数が検出された。配列番号33~52を有する複数のThペプチドの混合物もまた、予想通り20~約300になるELISPOT数との比較のためにナイーブドナーPBMCとともに培養した。UBITh(登録商標)1またはUBITh(登録商標)5ペプチドで引き起こされるそのような刺激応答は、陰性対照と比較して約3~5倍である。
【0219】
要約すれば、無差別人工Th応答細胞は、シグネチャーサイトカインを分泌することによって、B細胞抗体産生及び対応するエフェクターT細胞応答を助ける免疫応答を開始させるように準備ができているナイーブドナーPBMCで容易に検出することができる。本明細書では、これらのThエピトープペプチドのこの刺激的性質を説明するために、一例としてIFN-γを使用した。しかし、そのような刺激性炎症応答は、ワクチン接種プロセス中に望ましくない炎症性病態生理学的応答を引き起こさないために、好適なエフェクター細胞応答(抗体産生のためのB細胞、標的抗原細胞の殺傷のための細胞傷害性T細胞)を開始させるのに十分に中程度である。
【0220】
実施例10
個別化がん免疫療法のためのネオエピトープベースのペプチド免疫原構築物及びその製剤
本発明者らは、がん処置におけるT細胞の大変革の真っ只中にいる。ここ数年、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)などの新しい治療法及びキメラ抗原受容体(CAR-T)などの養子細胞治療は、がんに罹患する何百万人もの人々に新たな希望をもたらしている。ICI薬物は、自身の免疫系、特に、自身のT細胞が、がんと戦うことを阻止するがんにより作られた自然の障壁の克服を助ける。例えば、CAR-T療法は、特定の腫瘍細胞に対する免疫応答を開始させるように、患者のT細胞を操作する。これらの新しい治療法は、より正確に腫瘍を攻撃するようT細胞を「教育」するように設計された将来の治療法をもたらす。
【0221】
がんに罹患する何百万人もの人々に新たな希望を与える方法として、個別化された、または新抗原のがんワクチンに関して、期待感が高まっている。新抗原は、個別化された腫瘍変異であり、ほとんどの個体の免疫系で異物と見なされる。それ故、個別化ワクチンは、これらの新抗原を標的とし、これは、腫瘍を見つけて殺すように免疫系を教育する。
【0222】
生物情報科学、プロテオミクス、細胞ベースのアッセイ、及び非標準的な方法は、真の新抗原の効率的な同定に広く適用されている。マイクロサテライト及びエクソンのミススプライシングにおける、INDEL、すなわち、短い挿入及び欠失、により形成されるRNAフレームシフト(FS)バリアントは、高い免疫原性の新抗原の豊富な供給源である。
【0223】
全ての可能な(例えば、400K)FS(フレームシフト)腫瘍由来ペプチドを含有するアレイは、患者の血液1滴からの抗体反応性の検出に適用させることができ、それにより、がんの診断及び新抗原CTLエピトープの同定用の優れたツールが提供される。
【0224】
MHCタイピングは、RNAseqを使用して実施することができるが、NetMHC及びNetMHCpanは、新抗原結合親和性を予測するために使用することができる。
【0225】
in vitro HLAにとらわれないアッセイでは、患者の腫瘍由来の同定された各変異を表すポリペプチドは、それ自体の抗原提示細胞(APC)に個別に送達され、次に、これは、プロセシングされ、様々なエフェクターT細胞により認識される細胞表面上にペプチドを提示される。T細胞がペプチドを認識して結合する場合、サイトカイン応答が引き起こされるであろう。真の抗原は、測定し、「良い」(すなわち、もしくは刺激性)または「悪い」(すなわち、抑制性)ことが決定される。患者のT細胞、すなわちCD4(ヘルパーT細胞)及びCD8(キラーT細胞)の両方が応答する実際の抗原は、ネオエピトープペプチド免疫原構築物の設計のためのネオエピトープとして同定及び選択することができる。
【0226】
それ故、患者が既存の応答を有する実験的に確認された新抗原を含むことにより、患者の免疫系が既に初回免疫されている個別化がんワクチンが開発される。
【0227】
要約すると、本開示に記載の設計原理を用いる、BまたはCTLネオエピトープを含む特定の実験的に確認された新抗原に由来するネオエピトープペプチドには、高度に免疫原性を付与することができる。選択されたネオエピトープに共有結合している無差別人工Thエピトープの関与により、そのようなネオエピトープペプチド免疫原構築物は、新抗原に対する抗体の誘導及び維持ならびにエフェクターCTL機能の誘導、ならびに持続性B及びCTL応答ならびに強力な抗腫瘍免疫をもたらすB及びCTL記憶細胞の生成を促進し得る。
【0228】
メラノーマ新抗原に対する選択された標的エピトープ配列、神経膠腫に対するヒストン3バリアントH3.3K27M、及び結腸直腸癌に対するKRAS(DからGへの変異体)を有する代表的な公知の新抗原は、表3Aのそれぞれ配列番号73、74、及び75として示される。
【0229】
本開示の設計されたネオエピトープペプチド免疫原構築物及びその製剤は、さらに、安全性、免疫原性、及び有効性について臨床試験で評価することができ、これは、以下の3つの部分からなる:
1)疾患の証拠はないが再発のリスクが高いがん患者における、単剤療法としての安全性及び免疫原性の研究。
2)進行性または転移性固形腫瘍患者における、FDA承認の免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせたネオエピトープワクチンの安全性、免疫原性、及び有効性の研究。
3)免疫チェックポイント阻害薬を用いる処置後に、それに応答することができないか、またはがんが進行している、再発性または難治性固形腫瘍患者における、単剤療法としてのネオエピトープワクチンの安全性、免疫原性、及び有効性の研究。
【0230】
皮膚メラノーマ、非小細胞肺癌(NSCLC)、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、または尿路上皮癌に対する処置(例えば、外科的切除、ネオアジュバント、及び/もしくはアジュバント化学療法、ならびに/または放射線療法)が完了しており且つCTまたはMRIで疾患の証拠を示さない適格患者は、これらの癌免疫療法に参加し得る。
【0231】
実施例11
がん免疫療法のための腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)-Bエピトープ免疫原構築物及びその製剤
腫瘍細胞は、表面オリゴ糖の不均一性、切断、及び過剰発現をもたらす異常なグリコシル化パターンにより特性決定される。糖類構造の3つの主要なカテゴリーは、図16に示されるように、GD3、GD2、Globo-H、GM2、フコシルGM1、PSA、Le、Le、SLe、SLe、及びSTnとして示される潜在的な腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)と同定されている。
(1)ムチン関連o-グリカン:Tn、TF、及びSTn
(2)ガングリオシドGM3、GM2、GD2、GD3、フコシルGM1、及び中性グロボシドglobol Hを含むスフィンゴ脂質
(3)血液型抗原:SLe、LeLe、SLe、及びLe
【0232】
Globol Hは、糖脂質として乳癌細胞表面に発現し、魅力的な腫瘍マーカーである。オリゴ糖合成へのグリカルアセンブリアプローチを使用して、Globol H六糖を合成した。Globa Hは、B-ハプテンとして機能し、免疫原性ペプチド構築物を形成するために、表2に示されるThヘルパーペプチドとの共有結合固定化を可能にするために、還元末端に官能基を与えることができる。このタイプの用途における開示のThエピトープの使用は、Danishefsky及びLivingstonにより以前に記載される、KLHまたは他の従来のキャリアタンパク質を使用する他のアプローチよりもはるかに用途が広い(ウェブサイト:glycopedia.eu/Hetero-TACA-vaccines-based-on-protein-carriers)。
【0233】
各ポリペプチドのN末端またはタンパク質のリジン(K)残基の側鎖にある1級アミンは、N-ヒドロキシスクシンイミド脱離基の放出を伴って安定したアミド結合を形成するために、pH7~9で、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)タイプの架橋リンカー試薬の標的として利用可能である。加えて、異なる鎖長のリンカーとともに、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)(H.L.Chiang,et al.Vaccine.2012 30(52),7573-7581)、p-ニトロフェニルエステル(PNP)(S.J.Danishefsky,et al.Acc.Chem.Res.2015,48(3),643-652)は、表2に示されるThヘルパーペプチドへの重要なTACAコンジュゲートリンカーとして機能することもできる。
【0234】
本開示の人工Thエピトープは、以下を含むがんワクチン組成物で使用することができる:(a)本質的にGlobol Hまたはその免疫原性フラグメントのグリカンを含む免疫原性組成物;(b)表2に示される無差別人工Tヘルパーエピトープペプチドに共有結合している免疫原性フラグメント。表2に示されるエピトープペプチド(例えば、UBITh(登録商標))は、固相ペプチド合成(SPPS)及びC末端からN末端への脱保護/カップリングを伴うFmoc化学により段階的に個別に調製される。標的ペプチド配列は、それに従って構築された。
【0235】
グリカンは、固相樹脂上で直接アミド結合を形成することにより、スペーサーを含んでまたは含まずに、人工Thエピトープペプチドに結合させることができ、カップリング反応は、Kaiser試験で監視される。2つの方策が、このカップリングに利用することができる:(1)活性化脱離基を有するグリカン誘導体の調製、続く、樹脂結合スペーサー結合Thペプチドのカップリング(N末端は、遊離アミンを有する)、または、(2)活性化エステルとなる樹脂結合N末端アミン基の変換、続く、グリカンとのカップリング反応。樹脂結合及びスペーサーThペプチドにグリカンを直接カップリングすると、樹脂結合遊離アミン基上の活性化基とのより効率的なカップリング反応、続いて、標準的な樹脂が遊離する切断反応による、カップリングされたグリカンペプチドの樹脂からの放出が可能になるであろう。多糖及び長鎖ペプチドなどの2つの遊離大型分子間の立体障害は、グリカン-ペプチドカップリング反応をより困難にし、それにより、より低い効率になり、収率が低くなる。
【0236】
一部の態様では、B-ハプテン結合Tヘルパー担体は、表2に記載のスペーサー結合Th-ペプチドである。
【0237】
一部の実施形態では、リンカーは、p-ニトロフェニルリンカー、N-ヒドロキシスクシンイミドリンカー、p-ニトロフェニルエステル(PNPエステル)、またはN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)である。NHSエステルは、N-ヒドロキシスクシンイミド脱離基の放出とともに、安定したアミド結合を形成するために、pH7~9で1級アミンと反応し得る。
【0238】
以下の略語が、この実施例で使用される:PNP:p-ニトロフェニルエステル;NPC:N-ニトロフェニルクロロホルマート;DSS(ジスクシンイミジルスベラート);及びNHS:N-ヒドロキシスクシンイミド;MBS:m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル。
【0239】
様々な実施形態を実証する化学反応及び調製の以下のステップが含まれる(図17~21)。
【0240】
1.p-ニトロフェニル(PNP)基を有する活性化UBITh(登録商標)の調製
人工Thエピトープ(例えば、UBITh(登録商標))担体は、自動固相合成及びFmoc化学で合成することができる。伸長ペプチド鎖上のN末端アミノ酸のFmoc脱保護後に、遊離アミノ基は、10%のトリエチルアミンを含有するDMF溶液中の4-ニトロフェニルクロロホルマート(NPC、10当量)で処理することにより、活性4-ニトロフェニル基に変換することができる。得られたペプチド-樹脂混合物は、試薬及び4-ニトロフェノール残留物を除去するために、DCM溶液で洗浄することができる。p-ニトロフェニル基を有する所望の活性化UBITh(登録商標)は、グリカンとのさらなるコンジュゲーションのために得ることができる。
【0241】
2.N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を有する活性化UBITh(登録商標)の調製
UBITh(登録商標)ペプチド担体は、自動固相合成及びFmoc化学を使用して合成することができる。伸長ペプチド鎖上のN末端アミノ酸のFmoc脱保護後に、遊離アミノ基は、DMF溶液中のDSSで処理することによって、活性N-ヒドロキシスクシンイミドに変換することができる。得られるペプチド-樹脂は、試薬の残留物を除去するために、DCM溶液で洗浄することができる。N-ヒドロキシスクシンイミド基を有する所望の活性化UBITh(登録商標)は、グリカンとのさらなるコンジュゲーションのために得ることができる。
【0242】
3.Globol HコンジュゲートUBITh(登録商標)ペプチドの合成
末端アミン基を有するGlobol H六糖アナログ(2)の調製は、ワンポット合成方策に従って行うことができる(C.Y.Huang,et al.,Proc.Natl Acad Sci USA 2006,103,15-20)。要約すると、Globol Hの溶液は、活性化UBITh(登録商標)樹脂に導入することができ、次に、穏やかに3時間混合する。樹脂からの切断及び完全な脱保護の後、粗Globol HコンジュゲートUBITh(登録商標)ペプチドは、分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析計及び逆相HPLC分析で特性決定することができる。
【0243】
4.Globol H活性化エステルの調製
Globol Hヘキシルアミン(2)は、無水DMF溶液に溶解させることができる。次に、p-ニトロフェニルアジパートジエステルは、添加し、室温で2~4時間撹拌することができる。反応は、遊離アミン基の消失を確認するために、TLC及びKaiser試験で監視することができる。DMF溶媒は、加熱せずに減圧下で除去することができ、次に、得られた残留物は、ジクロロメタン及び0.5%の酢酸を含む水で3回抽出することができる。得られた水溶液は、濃縮し、逆相カラム(RP-C18)クロマトグラフィー(1%の酢酸を含むMeOH/HOを用いた定組成溶出)で精製することができる。
【0244】
5.GM3活性エステルの調製
GM3ガングリオシドアナログの合成及び精製は、以前に記載されている(Jacques S, et al., J. Am. Chem. Soc., 2012 134 (10): 4521-4)。GM3アナログアミンX(4.5mg;5.2μmol)は、ジメチルホルムアミド(1.5mL)に溶解させ、トリエチルアミン(3.0当量)を添加することができる。次に、p-ニトロフェニルアジパートジエステル(10.0当量)を添加することができる。反応は、TLC(CHCl-MeOH-HO-AcOH;4:5:1:0.5)で監視して、完了させることができる。反応物のpHは、酢酸で5.0に調整し、続いて、トルエン(3×)と共蒸発させることができる。残留物は、濃縮することができ、得られた残留物は、1%の酢酸を含有するMeOH-HOの勾配を使用するHPLC(Beckman C18-シリカセミ分取カラム)で精製することができる。1H NMRスペクトルは、CDODで取得することができる。
【0245】
6.Tn活性エステルの調製
糖類Tnは、以前の報告(T. Toyokuni, et al., Bioorg Med Chem. 1994, 11, 1119-32;及びS. D. Scott, et al., J. Am. Chem. Soc., 1998, 120 (48), 12474-85)に基づいて合成することができる。乾燥CHCl(25mL)中のTnアナログ6(mmol)、NHS(160mg、1.39mmol)、及びEDC(268mg、1.40mmol)は、室温で1時間撹拌することができる。混合物は、無色シロップとしてスクシンイミド-エステル誘導体(7)を得るために、予冷HO(3×30mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮することができる。
【0246】
7.シアリルLewis x(sLe )活性エステル(9)の調製
sLe四糖誘導体(8)の調製は、公開された合成方策(G. Kuznik, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 7 (5): 577-580, 1997)で達成することができる。NPC(2当量)のDMF/DCM溶液に添加された化合物(8)は、室温に温め、さらに30分間撹拌した。濃縮された粗混合物は、DCM及び水溶液で洗浄することができる。得られた水溶液は、減圧下で処理し、RP C18カラムで精製することができる。
【0247】
8.糖複合体を生成する基本手順
個々の樹脂結合スペーサー組み込みThペプチド上の個々のグリカンの標準カップリング反応は、カルボジイミドカップリング反応を介して、標準の固相ペプチド合成装置(複数可)により施された標準ペプチド結合形成カップリング手順に従う。
【0248】
樹脂結合グリカン-ペプチドは、標準ペプチド合成手順に従い、樹脂から取り除き、回収し、沈殿させ、凍結乾燥させることができる。
【0249】
T細胞ペプチドエピトープ(例えば、UBITh(登録商標))担体は、自動固相合成及びFmoc化学で合成することができる。伸長ペプチド鎖上のN末端アミノ酸のFmoc脱保護後に、遊離アミノ基は、さらなるコンジュゲーション反応に利用可能にすることができる。活性化脱離基修飾を伴う、Globo H、TN、GM3、SLeなどの合成糖アナログは、DMF溶液中に溶解し、UBITh(登録商標)ペプチドのN末端アミンとの反応のためにSPPS系に添加することができる。反応は、Kaiser試験で監視することができる。樹脂からの切断及び完全な脱保護の後、糖コンジュゲートUBITh(登録商標)ペプチドは、分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析計及び逆相HPLC分析で特性決定することができる。
【0250】
要約すれば、この実施例では、個々のグリカンの表2に示される個々のThヘルパーエピトープペプチドへの効果的なコンジュゲーションが、詳細に記載され、そのような炭水化物-ペプチド免疫原構築物が、その後のワクチン製剤のために効率的に調製されることが可能になる。人工Thエピトープを使用するこれらの炭水化物ワクチン製剤は、臨床プロトコールでのがん患者の免疫療法を可能にするために、通常がん細胞上に存在する標的化炭水化物抗原に対する集中的な抗体応答を提供し得る。
【0251】
実施例12
ウイルス感染症に対するユニバーサルT細胞ワクチンの開発のための無差別人工Tヘルパーエピトープ(複数可)の、エフェクター細胞エピトープ(例えば、CTLエピトープ)との結合によるエフェクターT細胞機能の強化及びその製剤
緒言
Tヘルパー細胞は、表面マーカーCD4を運び、ポリペプチドヘテロダイマー(例えば、α/βと称される)で構成されるT細胞受容体として既知の表面受容体を発現する。Tヘルパー細胞は、通常、抗原提示細胞(APC)の表面上にある、クラスII MHCタンパク質と会合してウイルスペプチドを認識する。これらの相互作用により、十分に高い結合親和性を提供するTヘルパー細胞の活性化、増殖、及び分化がもたらされる。
【0252】
Tヘルパー細胞(CD4T細胞)は、エフェクター機能を誘発及び調節する先天性免疫系及び適応免疫系の両方の細胞に、可溶性メディエーター及び受容体-リガンドの相互作用を提供する。これらの細胞は、不均一な集団であり、現在まで、Th1、Th2、Th17、及びT濾胞性ヘルパー(Tfh)細胞を含むいくつかのサブセットが特性決定されている。T細胞ヘルパー及び細胞傷害性サブセットの成長及び機能を抑制する調節性CD4T細胞(Treg)も存在する。
【0253】
エフェクターT細胞の各タイプは、重要な転写調節因子で制御され、細胞表面分子の異なるアレイを発現し、「シグネチャー」サイトカインを分泌し、これらは、ともに、免疫系のアーム内でそのT細胞サブセットの特定の役割を促進する。
【0254】
Tfh細胞は、B細胞濾胞を目標にする固有の能力により、他のヘルパーのサブセットと区別され、Ig V領域遺伝子の体細胞超変異(SHM)を受けており且つ抗原に対する親和性を変化させている抗原特異的B細胞への支援を提供する。Tfh細胞は、B細胞の分化のため及びウイルスに対する高親和性のアイソタイプスイッチ抗体応答を生じるために不可欠なサイトカインIL-21を分泌する。Tfh媒介性シグナルにより、免疫化抗原に対する親和性が高いB細胞が確実に選択され、次に、これは、長寿の形質細胞または記憶B細胞になるように分化し得る。SHMのプロセスを通して自己反応性B細胞クローンの出現の可能性及び選択されたクローンの寿命のために、Tfh細胞からB細胞への正の選択シグナルの送達を制御するために、厳格な耐性メカニズムが存在することが最も重要である。
【0255】
Th1細胞は、主に、細胞傷害性応答の増強に関与する。これらの細胞は、サイトカインIL-2及びIFN-γの分泌を部分的に介して、細胞傷害性T細胞前駆体の成熟を刺激することによって、ウイルス感染症に対する細胞性応答を促進する。Th1細胞は、また、腫瘍壊死因子(TNF)を分泌し、遅延型過敏性反応を媒介し、IgG2a抗体の産生を促進する。Th1細胞は、ウイルス感染症の部位のマクロファージ及び他のT細胞を活性化することによって、免疫応答を大幅に増強する。この応答は、多くのウイルス感染症の病因の認識された部分である遅延型過敏性反応の基礎である。
【0256】
Th2及びTh17細胞を含む他のTh細胞は、また、炎症または特定の抗体アイソタイプの生成を促進することによって、ウイルス感染症に対する免疫応答に寄与する。
【0257】
一部のT細胞は、他のT細胞及び/またはB細胞応答を下方調節し得る。調節性T細胞(T-reg)として既知のCD4T細胞の異なるサブセット。T-regの2つの基本タイプがある:(1)負の選択時に胸腺で産生され、主に自己免疫疾患の制御に関与すると考えられるtTreg、及び、(2)免疫応答中に誘導され、免疫応答の終了及び免疫系のホメオスタシスへの回復に関与するiTreg。T-reg細胞は、また、防御及び免疫媒介性病態間のバランスを維持するのに役立ち得る。
【0258】
ペプチドワクチン接種におけるヘルパーT細胞の影響は絶大である。活性化時のCD4Tヘルパー細胞は、同族Tヘルパーエピトープを含むことによって、強力な持続可能なCD8T細胞応答を提供し得る。CD4 T細胞の局所免疫調節機能の観点から、標的化されたウイルスまたは腫瘍の抗原に由来する標的組織において同族の援助を活性化することが好ましい。外来抗原、さらに腫瘍関連タンパク質は多くの場合、免疫系のホットスポットとして機能する免疫原性ストレッチ(Thエピトープ)を含有する。BまたはエフェクターT細胞を標的とする選択された無差別人工Thエピトープ(例えば、CTLエピトープ)の共有結合を通してこの本発明に設計及び記載されるペプチド免疫原構築物は、最適で保護的なCD8 T細胞応答の誘導用のAPC、CD4、及びCD8 T細胞の密接な相互作用を促進し得る。
【0259】
ウイルス特異的ユニバーサルT細胞ワクチンに組み込むための標的抗原部位としてのCTLエピトープペプチドの例
1.HIV CTLワクチン構成要素:
抗レトロウイルス療法(ART)にもかかわらず、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-1は、主に休止記憶CD4+T細胞で、安定した潜伏保有宿主中で持続する。この保有宿主は、HIV-1感染症の治癒に対する主要な障壁を提示する。保有宿主を一掃するために、潜伏HIV-1の薬理学的再開が、in vitro及びin vivoの両方で試験されている。残っている重要な問題は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含むウイルス特異的免疫機構が、潜伏が反転した後、ART処置患者の感染細胞を除去し得るかどうかである。大規模なデータマイニングの後、ユニバーサルHIV T細胞ワクチンの設計に組み込まれる、表3Bに示されるCTLエピトープを代表する特定のペプチド(配列番号76~82)を用いて、試験されたあらゆる慢性的に感染した患者の未変異潜伏HIV-1からエピトープを認識し得るCTLを同定した。慢性的に感染した患者は、広域スペクトルのウイルス特異的CTL応答を保持する。本発明の無差別人工Thエピトープ(配列番号1~52)との個別に共有結合を有するこれらのCTLエピトープペプチドを組み込むこのHIVユニバーサルT細胞ワクチンを通してこの応答の適切な追加免疫は、潜伏保有宿主の消失をもたらすことが予想される。
【0260】
2.HSV CTLワクチン構成要素
単純ヘルペスウイルスは、高い割合の世界人口に感染し、ウイルスゲノムが感覚ニューロンに保持される潜伏感染を確立するが、ビリオンが生成されない。この潜伏状態のウイルスの周期的復活は、口及び唇の粘膜表面、生殖管、ならびに眼の角膜、少ない頻度で、皮膚及び脳に影響し得る病変をもたらす。HSV-2は、産道からそれに罹患する新生児を死に至らしめ得;角膜HSV-1感染症は、失明の主要な感染源であり;脳HSV-1感染症は、致死的になり得るウイルス性脳炎の症例の約4分の1を占める。臨床試験に進んでいるHSV-1ワクチンは、主に、Ab産生に設計しており、大部分の効果がなかった。証拠は、マウス及びヒトの両方においてHSV感染症を制御する上でCD8 T細胞の重要な役割を示唆する。
【0261】
HSV1型(HSV-1)は、前初期(α)、早期(β)、漏出性後期(γ1)、及び真性後期(γ2)と順番に遺伝子を発現し、ウイルスDNA合成は、γ2遺伝子発現のみに絶対的な前提条件である。γ1タンパク質糖タンパク質B(gB)は、急性感染三叉神経節(TG)のCD8 エフェクターT細胞及び潜伏感染したTGのCD8メモリT細胞の両方の50%が認識される強い免疫優性CD8 T細胞エピトープ(gB498-505)を含有する。
【0262】
大規模なデータマイニング及び完全なデータ分析により、C57BL/6マウスのHSV特異的CD8 T細胞レパートリー全体が、HSV CTLワクチン設計の検討に含まれていた。さらに、HSV-1 gBエピトープの異なるセットが、症状のある個体対無症状の個体のCD4 T細胞により認識されることが判明している。これらのうち、gB166-180、gB661-675、及びgB666-680は、自己HSV-1及びワクシニアウイルス(gB[VVgB]を発現)に感染したLCLを溶解させるCD4 CTLにより標的とされた。gB166-180及びgB666-680は、HSV-1-血清陽性の健康な「無症候性」個体由来のCD4 T細胞で優先的に認識されるようにみえたが、gB661-675は、重篤な「症候性」個体由来のCD4 T細胞で優先的に認識されるようにみえた。効果的な免疫療法ヘルペスワクチンは、潜在的な「症候性」gB661-675エピトープを除外するであろう。加えて、無症候性の個体で高度に認識される3つのVP11/12 CD8エピトープも同定し、これは、眼ヘルペスの「ヒト化」HLA-A*02:01トランスジェニックマウスモデルで、強力な防御免疫を誘発することが判明した。
【0263】
一連のHSV CTLエピトープは、ユニバーサルマルチエピトープベースのHSV T細胞ワクチンの開発のための、この本発明の設計に組み込まれる、表3B(配列番号83~106)に示されるCTLエピトープを代表する特定のペプチドを用いて同定される。
【0264】
3.ブタ産業におけるFMDV、PRRSV、及びCSFVユニバーサルT細胞ワクチン
口蹄疫ウイルス(FMDV)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、及びブタコレラウイルス(CSFV)は、ブタ業界で衰弱させるように働く病原体である。これらの病原体に対する効果的なワクチンの開発は、ブタ産業において実質的に重要なものである。
【0265】
ワクチン接種時に誘導された中和抗体は、疾患及びウイルス透過の制御に非常に効果的であるが、クロスサブタイプ保護を付与せず、抗原の変化により効果がなくなることがある。細胞性免疫応答、特に、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の産生は、様々なウイルスに対する効率的で交差防御的なペプチドワクチンの開発における潜在力のために、多くの注目を集めている。例えば、CTLエピトープペプチドは、組み換えウイルスベクター及びペプチドワクチンを含む交差防御ヒトインフルエンザワクチンの開発に使用することができ、FMDV血清型Oについて同定されたCTLエピトープペプチドは、他のFMDV血清型に対して交差反応性であった。しかし、ほとんどの分析は、特定のウイルスタンパク質に限定され、ごく少ないCTLエピトープしか同定することができなかった。
【0266】
大規模なデータマイニング、設計、合成、労働集約的で時間のかかる免疫原性及び機能アッセイ手順の後、デザイナーCTLペプチドの大規模なセットの評価により、様々なFMDV、PRRSV、及びCSFVウイルスタンパク質に由来する選択されたウイルス特異的CTLエピトープの検証が可能になっている。これらのエピトープを代表する選択されたCTLペプチドは、配列番号107~145を含む表3Bに示される。
【0267】
本発明者らの選択及び同定のプロセスでは、一部の課題を解決するために、以下のいくつかの課題:(1)遺伝的変異、(2)特定の表面タンパク質からの不完全なスクリーニング、及び(3)非ブタ白血球抗原に基づく不適切な予測を解決するようにブタウイルス配列の分析のためにバイオインフォマティクスのパイプラインが統合された。この本発明のペプチド免疫原構築物をもたらす、無差別人工Thエピトープペプチドの適切な結合による、これらのCTLエピトープペプチドの組み込みは、持続的な記憶及び長い持続時間のCTL応答を有するT細胞ワクチンの開発につながるであろう。頻繁に豚産業を破壊するFMDV、PRRSV、CSFV、及び他のウイルス感染に対するそのような高精度の有効なペプチドベースのブタワクチン商業的開発は、畜産業界にとって最も重要であろう。
【0268】
【表1】
【0269】
【表2】
【0270】
【表3】
【0271】
【表4】
【0272】
【表5】
【0273】
【表6】
【0274】
【表7】
【0275】
【表8】
【0276】
【表9】
【0277】
【表10】
【0278】
【表11】
【0279】
【表12】
【0280】
【表13】
【0281】
【表14】
【0282】
【表15】
【0283】
【表16】
【0284】
【表17】
【0285】
【表18】
【0286】
【表19】
【0287】
【表20】
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
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