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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】防災建築物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20240917BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E04H9/02 331Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024061601
(22)【出願日】2024-04-05
【審査請求日】2024-07-30
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519072486
【氏名又は名称】松村 行史
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】松村 行史
【審査官】齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513763(JP,A)
【文献】特開2013-2270(JP,A)
【文献】特開2022-1725(JP,A)
【文献】特開2014-202064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を下方から支持する可動土台と、
鉛直方向と平行をなして前記可動土台を囲むように配置された少なくとも2本の支柱と、
前記支柱に設置されて前記可動土台を上下方向へ移動させる昇降手段と、を備え、
前記昇降手段は、
前記支柱に設置されて入力軸に入力されたトルクを増大して出力軸から出力するギヤボックスと、
前記支柱に設置された第1の定滑車と、
この第1の定滑車の下方において前記支柱に設置された手動ウィンチと、
前記ギヤボックスの前記入力軸に一端が巻き取り可能に、かつ、他端が前記手動ウィンチによって巻き取り可能に設置された第1のワイヤロープと、
前記ギヤボックスの前記出力軸に一端が巻き取り可能に設置されるとともに前記第1の定滑車に掛け渡された第2のワイヤロープと、を備え、
前記第2のワイヤロープの他端が前記可動土台に連結され、又は前記第2のワイヤロープの他端と前記第1の定滑車の間の部分が前記可動土台に連結されていることを特徴とする防災建築物。
【請求項2】
前記昇降手段が、前記支柱に設置されて前記第1の定滑車と前記可動土台の間において前記第2のワイヤロープが掛け渡される第2の定滑車を備えていることを特徴とする請求項1に記載の防災建築物。
【請求項3】
前記昇降手段が前記可動土台の上面に設置された動滑車を備え、
前記第2のワイヤロープの他端が前記支柱に対し、前記第2の定滑車の近くに固定されるとともに、前記第1の定滑車と前記第2のワイヤロープの他端の間の部分が前記動滑車に掛け渡されるようにして前記第2のワイヤロープが前記可動土台に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の防災建築物。
【請求項4】
前記支柱を囲むように前記可動土台の外側に設置されたガイド部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の防災建築物。
【請求項5】
前記ギヤボックスの前記入力軸又は前記出力軸を回転させる電動モータと、
前記入力軸又は前記出力軸に対する前記電動モータの駆動力の伝達状態を切り替える電磁クラッチと、を備え、前記電動モータ及び前記電磁クラッチは前記支柱に設置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の防災建築物。
【請求項6】
前記支柱に設置されて前記電動モータ及び前記電磁クラッチに電力を供給する蓄電池を備えていることを特徴とする請求項5に記載の防災建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波、洪水、地震及び土石流などが発生した場合にそれらの影響を受けないように居住スペースや倉庫などの建物を上方へ移動させるための可動土台を備えた防災建築物に係り、特に、電力を使用できない場合でも可動土台とともに居住スペースや倉庫などの建物を安全に昇降させることが可能な防災建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
地震による建物の倒壊や火事による建物の焼失に対しては、建物の修復や建て直しを行うことによって、比較的短期間で元の生活に戻ることができる。これに対し、津波や河川の氾濫などによって建物が浸水してしまうと、水が引いたとしても内部に入り込んだ泥や粗大ゴミ等を除去しなければならないため、復旧に時間がかかるという課題があった。
【0003】
このような課題に対処するものとして、例えば、特許文献1には「浮上式人工地盤、および浮上式防災住宅」という名称で、通常時は水槽内で浮遊した状態にあり、洪水等によって水位が上昇した場合に、ガイド支柱に沿って浮上する構造の住宅に関する発明が開示されている。
特許文献1の図面に示されている符号を用いて説明すると、特許文献1に記載された浮上式防災住宅1は、水槽30に充填された貯留水Wに浮遊した状態で水面上に浮上する浮遊地盤20と、上方に向かって突設するように水槽20の外部領域に固定された複数のガイド支柱40と、ガイド支柱40がスライド自在に挿入される挿入孔50aを有し、浮遊地盤20に固定されている接続部材50と、接続部材50の挿入孔50aを画定する環状バネ52と、フロー穴22が設けられ、十字に組まれた状態で浮遊地盤20の底面20aに固定されているフラップ部材21を備えた構造となっている。
【0004】
このような構造によれば、貯留水Wに浮遊している状態の浮遊地盤20が環状バネ52を介してガイド支柱4に連結されていることから、地震が発生した場合でも、地震の揺れに伴って浮遊地盤20に加わる衝撃力が緩和されるため、周囲の水位の上昇に伴って浮遊地盤20が円滑に上昇する。これにより、地震や津波などによる被害を回避することができる。
【0005】
また、特許文献2には「リフトアップ装置およびこれを備えた建築物」という名称で、基礎と建物本体の間に介設されて、出水時に建物本体をリフトアップする装置とそれを備えた建築物に関する発明が開示さている。
特許文献2の図面に示されている符号を用いて説明すると、特許文献2に記載された戸建て住宅10は、べた基礎11上に設置された建物本体12と、建物本体12の四隅に配設された4本のガイド支柱と、べた基礎11と建物本体12の間に介設された2台のリフトアップ装置13を備えた構造となっている。
このような構造によれば、リフトアップ装置13によって建物本体12を安定した状態で昇降させることができる。
【0006】
さらに、特許文献3には「防災住宅」という名称で、居住スペースを垂直方向に昇降させて、その高さを調整することが可能な住宅に関する発明が開示されている。
特許文献3の図面に示されている符号を用いて説明すると、特許文献3に開示された発明は、1基のボックスカルパート2と一対のPCスラブ3からなる組立て家屋の構造体であって、ボックスカルパート2の梁上部に取り付けられた昇降機構4及び変換装置5と、可動土台14に接続された土台吊り上げ機具7を備えたことを特徴としている。
このような構造によれば、可動土台14に配置された居住スペースを昇降させて、その高さの調整を行うことが可能である。
【0007】
そして、特許文献4には「居住構造とそれを備えた免震住宅」という名称で、居住スペースの強度が高い居住構造と、この居住構造を備えるとともに、居住スペースを上方へ移動させることが可能な住宅に関する発明が開示されている。
特許文献4の図面に示されている符号を用いて説明すると、特許文献4に開示された発明は、底面が菱形をなすとともに4本の稜線の長さが全て等しい四角錐の各辺を構成するように組み合わされた8本の形鋼5dからなる基礎フレーム19aと、下端が上記菱形の2つの対角線をそれぞれ構成し、かつ、底面に直交するように設置された矩形状の一対の壁板2d、2dからなる居住スペース2を備えている。
【0008】
さらに、居住スペース2を囲むように設置されて鉛直方向と平行をなす4本の支柱3と、この4本の支柱3に対し、それらの長手方向へのみ移動可能に居住スペース2をそれぞれ連結する4つのガイド部材11aと、4本の支柱3を互いに連結するように支柱3の上端に設置された複数本の形鋼5a、5bからなる補強部材5と、形鋼9aからなる連結部材9と、この連結部材9に一部が連結されたワイヤロープ7と、このワイヤロープ7を介して居住スペース2を吊り上げ可能に補強部材5に設置されたウィンチ6と、このウィンチ6を駆動する電動モータを備えており、居住スペース2の底面が水平方向と平行をなすように設置されるとともに、連結部材9の下端が基礎フレーム19aの頭頂点に連結され、居住スペース2を平面視した場合に4本の支柱3と4つのガイド部材11aが、菱形の各頂点にそれぞれ近接して配置された構造となっている。
このような構造によれば、ウィンチ6によって居住スペース2を吊り上げることで津波や洪水等による被害を確実に避けることができる。また、移動時に居住スペース2の姿勢が変化し難いため、居住スペース2を短時間で正確に安全な高さまで移動させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2021-080760号公報
【文献】特開2022-142279号公報
【文献】特開2023-57511号公報
【文献】特許第6537218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された発明では、浮遊地盤20が水槽30の貯留水Wに浮遊した状態となっているが、河川の氾濫等により水槽30の水嵩が急激に増えた場合には、浮遊地盤20の上昇速度が水槽30の水位が上昇する速度に追い付かず、浮遊地盤20の上昇が円滑に行われないおそれがある。また、水槽30の水が大きく波打っている場合には、浮遊地盤20の傾きが大きくなるため、接続部材50の挿入孔50aの内面がガイド支柱40に接触してしまい、浮遊地盤20の上昇が妨げられる可能性が高い。
特許文献2に開示された発明では、出水時に建物本体12をリフトアップした場合、リフトアップ装置13の通し軸24が水没する構造となっているため、通し軸24の部分にゴミが詰まることにより一対のXリンク機構21が動作不能となり、建物本体12を下降させることができなくなるおそれがある。
特許文献3には、可動土台14の昇降機構4が停電時等に手動操作で対応できる機能を有していることが記載されているものの、特許文献3に開示された発明では、手動ハンドル15がボックスカルパート2の梁上部に設置されており、昇降機構4を手動操作する際に手動ハンドル15の場所まで移動する必要があることから、迅速に対応できないという課題があった。
特許文献4に開示された発明では、電動モータに電力が供給されない場合に、ウィンチ6によって居住スペース2を吊り上げることができないという課題があった。
【0011】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、電力を使用できない場合でも可動土台とともに居住スペースや倉庫などの建物を安全に昇降させることが可能な防災建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る防災建築物は、建物を下方から支持する可動土台と、鉛直方向と平行をなして可動土台を囲むように配置された少なくとも2本の支柱と、支柱に設置されて可動土台を上下方向へ移動させる昇降手段と、を備え、昇降手段は、支柱に設置されて入力軸に入力されたトルクを増大して出力軸から出力するギヤボックスと、支柱に設置された第1の定滑車と、この第1の定滑車の下方において支柱に設置された手動ウィンチと、ギヤボックスの入力軸に一端が巻き取り可能に、かつ、他端が手動ウィンチによって巻き取り可能に設置された第1のワイヤロープと、ギヤボックスの出力軸に一端が巻き取り可能に設置されるとともに第1の定滑車に掛け渡された第2のワイヤロープと、を備え、第2のワイヤロープの他端が可動土台に連結され、又は第2のワイヤロープの他端と第1の定滑車の間の部分が可動土台に連結されていることを特徴とする。
【0013】
第1の発明において、手動ウィンチを操作して第1のワイヤロープを巻き取ると、ギヤボックスの入力軸の回転に伴って出力軸が回転することにより、第2のワイヤロープがギヤボックスの出力軸に巻き取られる結果、第2のワイヤロープの他端又は第1の定滑車と第2のワイヤロープの他端の間の部分が連結された可動土台が第2のワイヤロープによって吊り上げられる。このとき、ギヤボックスは、第1のワイヤロープによって入力軸に入力されたトルクを増大して出力軸から出力するという作用を有する。
また、この状態において、手動ウィンチを逆方向へ回転させると、第1のワイヤロープが手動ウィンチから繰り出されることにより、第1のワイヤロープ及び第2のワイヤロープの張力が低下する結果、可動土台が自重によって下方へ移動する。
すなわち、第1の発明においては、手動ウィンチを操作することで、可動土台によって下方から支持されている建物が可動土台とともに上昇又は下降するという作用を有する。
さらに、可動土台を上昇させて建物が可動土台ごと第2のワイヤロープによって吊り上げられた状態にすると、地面からの震動が建物に直接伝わるおそれがないという作用を有する。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、昇降手段が、支柱に設置されて第1の定滑車と可動土台の間において第2のワイヤロープが掛け渡される第2の定滑車を備えていることを特徴とする。
第2の発明においては、第1の発明の作用に加え、第2のワイヤロープの第1の定滑車と可動土台の間の部分が支柱の長手方向に沿って上下方向へ移動するように第2の定滑車によって案内されるという作用を有する。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、昇降手段が可動土台の上面に設置された動滑車を備え、第2のワイヤロープの他端が支柱に対し、第2の定滑車の近くに固定されるとともに、第1の定滑車と第2のワイヤロープの他端の間の部分が動滑車に掛け渡されるようにして第2のワイヤロープが可動土台に連結されていることを特徴とする。
第3の発明においては、第2の発明の作用に加え、可動土台が吊り上げられる際に、第2のワイヤロープに生じる張力の2倍の大きさの上向きの力が動滑車に加わるという作用を有する。
【0016】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかにおいて、支柱を囲むように可動土台の外側に設置されたガイド部材を備えていることを特徴とする。
第4の発明においては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加え、可動土台が吊り上げられる際に、可動土台がガイド部材により支柱の長手方向に沿って上下方向へ正確に案内されるという作用を有する。
【0017】
第5の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかにおいて、ギヤボックスの入力軸又は出力軸を回転させる電動モータと、入力軸又は出力軸に対する電動モータの駆動力の伝達状態を切り替える電磁クラッチと、を備え、電動モータ及び電磁クラッチは支柱に設置されていることを特徴とする。
第5の発明においては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加え、電動モータの駆動力がギヤボックスの入力軸又は出力軸に伝達されると、手動ウィンチを用いる場合よりも高速で可動土台が上下方向へ移動するという作用を有する。
【0018】
第6の発明は、第5の発明において、支柱に設置されて電動モータ及び電磁クラッチに電力を供給する蓄電池を備えていることを特徴とする。
第6の発明においては、第5の発明の作用に加え、津波などの災害の発生により発電所からの送電がストップした場合でも、電動モータ及び電磁クラッチを稼働させるために必要な電力が蓄電池によって賄われるという作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明によれば、電力を使用できない場合であっても手動ウィンチを操作して可動土台を安全な高さまで第2のワイヤロープで吊り上げることによって、可動土台に設置されている建物内の居住者の人命や財産を津波や洪水等から守ることができる。また、第1の発明によれば、余震が発生した段階で可動土台を上昇させておくことで、余震に続いて本震が発生した場合でも、建物に対する本震の影響を小さく抑えることが可能である。
【0020】
第2の発明によれば、第2のワイヤロープの第1の定滑車と可動土台の間の部分が第2の定滑車によって支柱の長手方向に沿って上下方向へ正確に案内されるため、第1の発明の効果に加え、可動土台に設置されている建物を短時間で安全な高さまで移動させることができるという効果を奏する。
【0021】
第3の発明によれば、第2の発明の効果に加え、手動ウィンチで第1のワイヤロープを巻き取る際に大きな力を必要としないため、手動ウィンチの操作が容易になるという効果を奏する。
【0022】
第4の発明では、第1の発明乃至第3の発明の効果を奏することに加え、可動土台が吊り上げられる際に、ガイド部材により可動土台が支柱の長手方向に沿って上下方向へ正確に案内されることから、可動土台に設置されている建物を短時間で安全な高さまで移動させることができるという第2の発明の効果がより一層発揮される。
【0023】
第5の発明では、第1の発明乃至第3の発明の効果に加え、手動ウィンチを操作する場合よりも短時間で建物を安全な高さまで移動させることができるという効果を奏する。
【0024】
第6の発明によれば、第5の発明の効果に加え、蓄電池から供給される電力によって電動モータを駆動できるため、災害により発電所からの送電がストップした場合でも、津波などの影響を受け難い高さまで建物を短時間で上昇させることにより、速やかに居住者の安全を確保するとともに居住者の財産を守ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る防災建築物の実施例1の正面図である。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ図1に示した防災建築物における居住スペースの正面図及び側面図である。
図3】基礎フレームの平面図である。
図4】(a)は支柱の正面図であり、(b)は支柱を上方から鉛直方向の下向きに見た図であり、(c)は支柱の地中に埋設された部分の状態を示した図である。
図5】(a)及び(b)はそれぞれギヤボックスの正面図及び平面図である。
図6】(a)及び(b)はそれぞれ手動ウィンチの正面図及び平面図である。
図7】(a)は手動ウィンチの動作を模式的に示した図であり、(b)はギヤボックスの動作を模式的に示した図である。
図8】(a)は第2のワイヤロープから動滑車に作用する力を説明するための模式図であり、(b)は第2のワイヤロープによって可動土台が吊り上げられる様子を模式的に示した図である。
図9図1に示した防災建築物において可動土台とともに居住スペースが上昇した状態を示す図である。
図10】本発明の実施の形態に係る防災建築物の実施例2の正面図である。
図11】(a)はギヤボックス、電動モータ及び蓄電池の正面図であり、(b)は同図(a)におけるE方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の可動土台とそれを備えた防災建築物について、図1乃至図11を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の説明では、底面が水平方向と平行をなすように居住スペースが設置されるとともに、鉛直方向と平行に支柱が設置された状態を想定して、「上面」や「下面」あるいは「上部」や「下部」などの表現を用いている。
【実施例1】
【0027】
図1は本発明に係る防災建築物1aの外観の一例を示した正面図であり、図2(a)及び図2(b)はそれぞれ防災建築物1aにおける居住スペース2の正面図及び側面図である。また、図3は基礎フレーム4aの平面図である。なお、図2(a)及び図2(b)では居住スペース2の骨組みのみを示し、側板6の図示を省略している。
図1に示すように、防災建築物1aは、構造用鋼材からなり、地面GLに立設された4本の角筒状の支柱3と、水平に設置された基礎フレーム4aと、免震ゴムが下端に取り付けられるとともに基礎フレーム4aの下面に設置された複数の支持脚4bからなり、平面視略矩形状をなす可動土台4と、この可動土台4の上面に設置されて可動土台4によって下方から支持されている居住スペース2と、支柱3に設置されて可動土台4を上下方向へ移動させる昇降手段5を備えている。
【0028】
図2(a)及び図2(b)に示すように、居住スペース2は直方体状の居室部2aと、この居室部2aの上に設けられた屋根裏2bからなり、居室部2aは矩形状をなす4枚の側板6(図1を参照)によって周囲を覆われている。
また、居室部2aは側板6の他に、木材又は鋼材からなる複数本の柱7a及び梁7bと、鋼材からなる筋違(図示せず)と、各階を仕切るように梁7bと平行に設置された床板8aや天井板8bを備えている。
【0029】
なお、防災建築物1aでは、発電所から電線を通して送られてくる電力を利用するため、居住スペース2に設置されたケーブル(図示せず)が電線からの引き込み線に対して切り離し可能な状態で接続されている。
また、居住スペース2には、水道管等の水道設備に対して切り離し可能な状態で接続される各種の配管が設置されている。しかしながら、図が煩雑になるのを避けるため、図1及び図2では、それらの図示を省略している。
【0030】
図3に示すように、基礎フレーム4aは、両端を除く部分が矩形の各辺を構成するように配置された鋼材からなる4本の大梁9a~9dと、互いに平行な大梁9c、9dの中点同士を結んだ直線を中心として左右対称に配置されて両端が大梁9c、9dにそれぞれ接続された鋼材からなる一対の大梁10a、10aと、互いに平行な大梁9a、9bの中点同士を結んだ直線を中心として左右対称に配置されて両端が大梁9a、9bにそれぞれ接続された鋼材からなる一対の大梁10b、10bを備えている。
また、大梁9a、9bと平行をなすように大梁10a、10aの間に均等に配置されて両端が大梁9c、9dにそれぞれ接続された鋼材からなる複数本の小梁10cと、大梁9c、9dと平行をなすように大梁10b、10bの間に均等に配置されて両端が大梁9a、9bにそれぞれ接続された鋼材からなる複数本の小梁10dを備えている。
【0031】
4本の支柱3は鉛直方向と平行をなすとともに、平面視した場合に可動土台4を囲むように上記矩形の四隅(大梁9a、9bと大梁9c、9dがそれぞれ交叉する箇所)に近接配置されている。
また、基礎フレーム4aには、大梁9aの端部と大梁9cの端部、大梁9aの端部と大梁9dの端部、大梁9bの端部と大梁9dの端部及び大梁9bの端部と大梁9cの端部に両端がそれぞれ固定された金属製又は硬質プラスチック製の紐状部材11a~11dが支柱3を囲むように取り付けられている。
すなわち、紐状部材11aと大梁9aの端部及び大梁9cの端部、紐状部材11bと大梁9aの端部及び大梁9dの端部、紐状部材11cと大梁9bの端部及び大梁9dの端部並びに紐状部材11dと大梁9bの端部と大梁9cの端部は、支柱3を囲むように可動土台4の四隅の外側に設置されたガイド部材をそれぞれ構成している。
【0032】
そして、上記ガイド部材は、可動土台4が吊り上げられる際に、可動土台4を支柱3の長手方向に沿って上下方向へ正確に案内するという機能を有している。そのため、防災建築物1aでは、可動土台4に設置されている居住スペース2を短時間で安全な高さまで移動させることが可能となっている。
なお、大梁10aと大梁10b、大梁10aと小梁10d及び小梁10cと小梁10dがそれぞれ交差する箇所には、居室部2aを構成する柱7aの下端を固定するための固定金具12が設置されている。
【0033】
図4(a)は支柱3の正面図であり、図4(b)は支柱3を上方から鉛直方向の下向きに見た図であり、図4(c)は支柱3の地中に埋設された部分の状態を示した図である。
昇降手段5は、図4(a)及び図4(b)に示すように支柱3の上部と下部にそれぞれ設置されたギヤボックス13及び手動ウィンチ14と、支柱3の上端3a及び側面3bにそれぞれ設置された第1の定滑車15a及び第2の定滑車15bと、基礎フレーム4aの大梁9cの端部上面18に設置された動滑車15cと、手動ウィンチ14に他端が巻き取られる第1のワイヤロープ16と、第2の定滑車15bの近傍において支柱3の側面3bに他端17aが固定された第2のワイヤロープ17を備えている。
すなわち、第2のワイヤロープ17は第2の定滑車15bに掛け渡された状態で他端17aと第2の定滑車15bの間の部分が動滑車15cを介して可動土台4に連結されている。
【0034】
このような構造の防災建築物1aにおいては、第2のワイヤロープ17の第1の定滑車15aと可動土台4の間の部分が支柱3の長手方向に沿って正確に上下方向へ移動するように第2の定滑車15bによって案内される。そのため、防災建築物1aでは、可動土台4に設置されている居住スペース2を短時間で安全な高さまで移動させることが可能となっている。
【0035】
図4(c)に示すように、支柱3の下端が埋設されている地中には、最下層に砕石19aが敷き詰められており、その上に「捨てコン」と呼ばれる無筋コンクリート層19bが形成されている。また、無筋コンクリート層19bの上には、ブロック状のベース20がコンクリートによって形成されており、このベース20の上に根巻きコンクリート21が形成されている。そして、支柱3の下端には、アンカーボルト22aが取り付けられるとともに、外周面に複数本のスタッドジベル22bが水平に取り付けられている。
なお、支柱3が立設される場所については、地耐力を高めるために必要な地盤改良や杭事業を事前に行っておくことが望ましい。
【0036】
図5(a)及び図5(b)はそれぞれギヤボックス13の正面図及び平面図であり、図6(a)及び図6(b)はそれぞれ手動ウィンチ14の正面図及び平面図である。なお、図5(b)ではハウジング23の天板23aの図示を省略している。
図5(a)及び図5(b)に示すように、ギヤボックス13は、第2のワイヤロープ17の挿通孔(図示せず)を有する矩形状の天板23aと、矩形の4辺に対応する天板23aの各端縁からそれぞれ垂直に延設された4枚の側板23bからなるハウジング23と、第1のドラム24及び小歯車26を有する入力軸28と、第2のドラム25及び大歯車27を有する出力軸29を備えている。また、互いに平行をなすように配置された入力軸28及び出力軸29の両端は、互いに平行をなす一対の側板23b、23bに設置された軸受け(図示せず)によってそれぞれ回転自在に保持されており、第1のドラム24及び第2のドラム25は、第1のワイヤロープ16の一端及び第2のワイヤロープ17の一端をそれぞれ巻き取り可能な構造となっている。
【0037】
さらに、第1のドラム24と小歯車26は入力軸28に対し、それぞれの回転中心が軸中心と一致するように設けられており、第2のドラム25と大歯車27は出力軸29に対し、それぞれの回転中心が軸中心と一致するように設けられている。
すなわち、第1のドラム24と小歯車26は入力軸28に対して同軸に設けられており、第2のドラム25と大歯車27は出力軸29に対して同軸に設けられている。そして、小歯車26は大歯車27と噛み合った状態となっている。
【0038】
図6(a)及び図6(b)に示すように、手動ウィンチ14は、第1のワイヤロープ16の他端が巻き取られる巻き取りドラム30と、この巻き取りドラム30の両側にそれぞれ設置された一対のサイドプレート31、31と、巻き取りドラム30に取り付けられたドラム軸32と、このドラム軸32の両端を回転自在に保持した状態で支柱3に設置される取付金具33と、一端がドラム軸32に連結され、他端にグリップ34aが設けられたハンドル34を備えている。
すなわち、手動ウィンチ14は、作業者がグリップ34aを手で握ってハンドル34を回転させると、ドラム軸32とともに巻き取りドラム30が回転することにより、第1のワイヤロープ16が巻き取りドラム30に巻き取られる構造となっている。
【0039】
図7(a)は手動ウィンチ14の動作を模式的に示した図であり、図7(b)はギヤボックス13の動作を模式的に示した図である。また、図8(a)は第2のワイヤロープ17から動滑車15cに作用する力を説明するための模式図であり、図8(b)は第2のワイヤロープ17によって可動土台4が吊り上げられる様子を模式的に示した図である。さらに、図9図1に示した防災建築物1aにおいて可動土台4とともに居住スペース2が上昇した状態を示す図である。
なお、図7及び図8に示した黒い太線の矢印は力が作用する向きのみを表しており、矢印の長さと力の大きさの間には特に関係が無い。
【0040】
図7(a)に示すように、手動ウィンチ14において作業者がハンドル34のグリップ34aを手で握ってドラム軸32(図6(b)を参照)の軸中心の周りに矢印Aで示した方向へ回転させると、ハンドル34の他端に連結されたドラム軸32とともに巻き取りドラム30が回転し、第1のワイヤロープ16が巻き取りドラム30に巻き取られる。
ただし、ハンドル34の回転半径は巻き取りドラム30の半径の2倍であることから、このとき、グリップ34aに加わる力の大きさをTとすると、第1のワイヤロープ16には2Tの大きさの張力が発生する。
【0041】
図5(b)に示したように第1のワイヤロープ16は第1のドラム24に巻回されているため、第1のワイヤロープ16が巻き取りドラム30によって巻き取られると、図7(b)に示すように、ギヤボックス13の第1のドラム24が矢印Bで示した方向へ回転し、それに伴って、第1のドラム24とともに入力軸28に設けられている小歯車26も第1のドラム24と一体になって矢印Bで示した方向へ回転する。そして、小歯車26と噛み合っている大歯車27が矢印Cで示した方向へ回転し、それに伴って、大歯車27とともに出力軸29に設けられている第2のドラム25も大歯車27と一体になって矢印Cで示した方向へ回転する。その結果、第2のドラム25によって第2のワイヤロープ17が巻き取られる。
【0042】
ただし、第1のドラム24の直径は小歯車26の直径の2倍であり、第1のワイヤロープ16に生じている張力の大きさが2Tであることから、大歯車27は小歯車26から大きさが4Tの接線方向の力を受ける。そして、大歯車27の直径は第2のドラム25の直径の5倍であることから、第2のワイヤロープ17は第2のドラム25によって20Tの大きさの力で巻き取られる。
すなわち、このとき第2のワイヤロープ17に生じる張力の大きさは20Tとなる。
【0043】
第2のワイヤロープ17が第2のドラム25によって巻き取られると、第1の定滑車15a及び第2の定滑車15b並びに動滑車15cが図8(a)に矢印Dで示した方向へ回転する結果、基礎フレーム4aに固設されている動滑車15cとともに可動土台4が第2のワイヤロープ17によって吊り上げられる(図8(b)を参照)。このとき、第2のワイヤロープ17の張力の大きさが20Tであることから、第2のワイヤロープ17によって大きさ40Tの上向きの力が動滑車15cに加わる。
すなわち、防災建築物1aでは可動土台4が吊り上げられる際に第2のワイヤロープ17の張力の2倍の大きさの上向きの力が動滑車15cに加わることで、手動ウィンチ14で第1のワイヤロープ16を巻き取る際に必要な力が低減されるため、手動ウィンチ14の操作が容易となる。
【0044】
このように、防災建築物1aでは、手動ウィンチ14を大きさTの力で回転させると、可動土台4が1つの昇降手段5から20Tの大きさの上向きの力を受けるが、防災建築物1aは4つの昇降手段5を備えている。したがって、図1に示した防災建築物1aにおいて4本の支柱3にそれぞれ設置されている4個の手動ウィンチ14のハンドル34のグリップ34aを大きさTの力で回転させた場合、図9に示すように居住スペース2は可動土台4とともに160Tの大きさの力で吊り上げられる。
このとき、仮に、居住スペース2と可動土台4の合計重量を2tonとすると、手動ウィンチ14のハンドル34のグリップ34aを回転させるために必要な力は12.5kgとなる。このことから、防災建築物1aは、手動ウィンチ14を手動で十分に操作できる構造であることが分かる。
なお、ギヤボックス13は上述の構造に限定されるものではない。例えば、第1のドラム24の直径を小歯車26の直径の6倍にするとともに、大歯車27の直径を第2のドラム25の直径の10倍にすることもできる。この場合、手動ウィンチ14のハンドル34のグリップ34aを回転させる大きさTの力に対し、居住スペース2が可動土台4とともに吊り上げられる力は大きさが960Tとなる。このとき、仮に、居住スペース2と可動土台4の合計重量を30tonとすると、手動ウィンチ14のハンドル34のグリップ34aを回転させるために必要な力は31.25kgとなる。したがって、この場合も、防災建築物1aでは手動ウィンチ14の手動操作が十分に可能であると言える。
【0045】
以上説明したように、防災建築物1aにおいて、手動ウィンチ14を操作して第1のワイヤロープ16を巻き取ると、ギヤボックス13の入力軸28が回転し、この入力軸28に設置された小歯車26と噛合するように大歯車27が設置されている出力軸29が回転することにより、第2のワイヤロープ17がギヤボックス13の出力軸29に巻き取られる結果、可動土台4が第2のワイヤロープ17と動滑車15cを介して吊り上げられる。
このとき、ギヤボックス13の作用により、第1のワイヤロープ16によって入力軸28に加えられるトルクが増大されて出力軸29から出力されるため、第1のワイヤロープ16の張力よりも第2のワイヤロープ17の張力の方が大きくなる。
【0046】
この状態において、手動ウィンチ14を逆方向へ回転させると、第1のワイヤロープ16が手動ウィンチ14から繰り出されることにより、第1のワイヤロープ16及び第2のワイヤロープ17の張力が低下する。その結果、可動土台4が自重によって下方へ移動する。
すなわち、防災建築物1aは、手動ウィンチ14を操作することで、可動土台4によって下方から支持されている居住スペース2が可動土台4とともに上昇又は下降する構造となっている。したがって、防災建築物1aによれば、電力を使用できない場合であっても手動ウィンチ14を操作して可動土台4を安全な高さまで吊り上げることにより、可動土台4に設置されている居住スペース2で生活をしている居住者の人命を津波や洪水等から守ることができる。なお、余震が発生した段階で可動土台4を上昇させておくと、居住スペース2は可動土台4ごと第2のワイヤロープ17によって吊り上げられた状態となるため、余震に続いて本震が発生したとしても地面GLからの震動が居住スペース2に直接伝わることはない。したがって、防災建築物1aによれば、居住スペース2に対する本震の影響を小さく抑えることができる。
【実施例2】
【0047】
図10は本発明に係る防災建築物1bの外観の一例を示した正面図である。また、図11(a)はギヤボックス13、電動モータ37及び蓄電池38の正面図であり、図11(b)は図11(a)におけるE方向矢視図である。なお、図1乃至図6に示した構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図10に示すように、防災建築物1bは、実施例1として既に説明した防災建築物1aにおいて、ギヤボックス13の出力軸29を回転させる駆動手段35がギヤボックス13の下方に位置するように支柱3の側面3bに設置されていることを特徴とする。
【0048】
図11(a)及び図11(b)に示すように、駆動手段35は、第1のワイヤロープ16を通すための開口部36cが設けられた矩形状の底板36aと、矩形の4辺に対応する底板36aの各端縁からそれぞれ垂直に延設された4枚の側板36bからなるハウジング36と、このハウジング36の内部において底板36aの上面に固定された電磁クラッチ付きの電動モータ37及び蓄電池38と、ギヤボックス13の出力軸29と平行に配置された電動モータ37の駆動軸37aに掛け渡された無端ベルト39を備えている。
【0049】
駆動手段35では、電磁クラッチがONの場合にのみ、蓄電池38から供給される電力によって稼働する電動モータ37の出力が駆動軸37aから無端ベルト39を介してギヤボックス13の出力軸29に伝達され、電磁クラッチがOFFの場合には、電動モータ37の出力自体が駆動軸37aに伝達されない構造となっている。なお、電磁クラッチは、通常、OFFの状態であり、蓄電池38から電力を供給されることによってONの状態に切り替わる構造となっている。そして、電磁クラッチがOFFの場合、ギヤボックス13の出力軸29は、手動ウィンチ14の操作によって容易に回転させることが可能となっている。
【0050】
このような構造の防災建築物1bにおいて、電動モータ37の駆動力がギヤボックス13の出力軸29に伝達されると、手動ウィンチ14を用いる場合よりも高速で可動土台4が上下方向へ移動する。したがって、防災建築物1bによれば、手動ウィンチ14を操作する場合よりも短時間で居住スペース2を安全な高さまで移動させることができる。
また、防災建築物1bでは、津波などの災害の発生により発電所からの送電がストップした場合でも、電動モータ37及び電磁クラッチを稼働させるために必要な電力が蓄電池38によって賄われるため、津波などの影響を受け難い高さまで居住スペース2を上昇させることで、居住者の安全を確保することができる。
【0051】
なお、防災建築物1a、1bでは、支柱3を角筒状としているが、これに限らず、支柱3を円筒状あるいは角柱状や円柱状とすることもできる。ただし、支柱3が筒状をしている場合、防災建築物1a、1bが設置される地域や場所によっては、支柱3の内部にコンクリートを充填することで支柱3の強度を高めることができるというメリットがある。また、支柱3の長さについては、例えば、津波の被害を受け易い沿岸部では10m以上、洪水や土石流が発生し易い山間部では3~5mとするなど、防災建築物1a、1bが設置される場所に応じて設定することが望ましい。さらに、支柱3の数も4本に限定されるものではなく、防災建築物1a、1bを支柱3が少なくとも2本以上設置された構造とすることもできる。
【0052】
さらに、防災建築物1a、1bは居住スペース2の代わりに、倉庫(車庫を含む)が可動土台4の上面に設置された構造であっても良い。このような構造であれば、可動土台4を上昇させることによって、倉庫内に収納されている居住者の財産を津波や洪水等から守ることができる。
また、防災建築物1bでは、電動モータ37の駆動軸37aがギヤボックス13の出力軸29に伝達される構造となっているが、ギヤボックス13の入力軸28と電動モータ37の駆動軸37aの間に無端ベルト39を架け渡して、電動モータ37の駆動力がギヤボックス13の入力軸28に伝達される構造とすることもできる。
このように、防災建築物1a、1bについていろいろな変形例が考えられるが、上述のいずれの場合であっても、図1乃至図11を用いて説明した本発明の作用及び効果は同様に発揮される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、津波の被害を受け易い沿岸部に限らず、洪水や土石流が発生し易い山間部においても利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1a、1b…防災建築物 2…居住スペース 2a…居室部 2b…屋根裏 3…支柱 3a…上端 3b…側面 4…可動土台 4a…基礎フレーム 4b…支持脚 5…昇降手段 6…側板 7a…柱 7b…梁 8a…床板 8b…天井板 9a~9d…大梁 10a、10b…大梁 10c、10d…小梁 11a~11d…紐状部材 12…固定金具 13…ギヤボックス 14…手動ウィンチ 15a…第1の定滑車 15b…第2の定滑車 15c…動滑車 16…第1のワイヤロープ 17…第2のワイヤロープ 17a…他端 18…端部上面 19a…砕石 19b…無筋コンクリート層 20…ベース 21…根巻きコンクリート 22a…アンカーボルト 22b…スタッドジベル 23…ハウジング 23a…天板 23b…側板 24…第1のドラム 25…第2のドラム 26…小歯車 27…大歯車 28…入力軸 29…出力軸 30…巻き取りドラム 31…サイドプレート 32…ドラム軸 33…取付金具 34…ハンドル 34a…グリップ 35…駆動手段 36…ハウジング 36a…底板 36b…側板 36c…開口部 37…電動モータ 37a…駆動軸 38…蓄電池 39…無端ベルト GL…地面
【要約】
【課題】電力を使用できない場合でも可動土台とともに居住スペースや倉庫などの建物を安全に昇降させることが可能な防災建築物を提供する。
【解決手段】本発明の防災建築物1aは、構造用鋼材からなり、地面GLに立設された4本の角筒状の支柱3と、水平に設置された基礎フレーム4aと、免震ゴムが下端に取り付けられるとともに基礎フレーム4aの下面に設置された複数の支持脚4bからなり、平面視略矩形状をなす可動土台4と、この可動土台4の上面に設置されて可動土台4によって下方から支持されている居住スペース2と、支柱3に設置されて可動土台4を上下方向へ移動させる昇降手段5を備えている。
【選択図】図1
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