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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】安全弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
F16K17/04 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021037788
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022138021
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】松村 大介
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-274349(JP,A)
【文献】特開2013-133889(JP,A)
【文献】特開2016-003596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0363229(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられる弁座と、
前記ハウジング内に往復動可能に収容され主流路の流体圧により前記弁座に着座または離間する弁体と、
前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢手段と、を備えた安全弁であって、
前記ハウジングと前記弁体との間を通った流体を絞って排出流路に向けて流す絞り部と、
前記弁体の背面側に仕切られ前記排出流路と連通する区画空間と、を備え
前記区画空間と前記排出流路は、前記弁体の往復動方向に延びる連通路により連通しており、
前記ハウジングとは別体の通路部材を備え、前記通路部材には、その中央に前記連通路が設けられており、その外周に前記絞り部が設けられている安全弁。
【請求項2】
前記絞り部は、前記排出流路側が前記通路部材の中央に向けて傾斜している請求項に記載の安全弁。
【請求項3】
前記通路部材が前記弁体をガイドするようになっている請求項またはに記載の安全弁。
【請求項4】
前記通路部材と前記弁体とにより前記区画空間が形成されている請求項ないしのいずれかに記載の安全弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過剰な内部圧力を放出させる安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
配管や流体機器において内部流体の圧力が何らかの影響により異常に高まったときに開弁して内部流体を放出させ、圧力の降下とともに閉弁する安全弁が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される安全弁は、直線状に対向して配置される主流路と排出流路との間に連通して配置されるハウジングと、ハウジングに設けられる弁座と、ハウジング内に往復動可能に収容される弁体と、弁体を閉弁方向に付勢するスプリングと、を備えている。通常時には、スプリングの付勢力により閉弁されており、主流路と排出流路とが非連通状態となっている。また、主流路の流体圧が所定以上になると、弁体がスプリングによる付勢力に抗して移動して弁座から離れて開弁し、主流路内の流体の一部を排出流路へと逃がして主流路の流体圧を一定以下に維持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-145478号公報(第5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の安全弁にあっては、主流路と排出流路とが直線状に対向して配置されることから、開弁時に主流路の流体が弁体の開弁方向に流れるため、流体の流れが弁体の開弁方向への移動に影響を与えることが回避されている。しかしながら、特許文献1のような安全弁にあっては、主流路の流体圧に応じた弁開度となるため、弁開度が全開とならず、主流路の流体圧を即座に放出することができない虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、主流路の流体圧を迅速に低下させることができる安全弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の安全弁は、
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられる弁座と、
前記ハウジング内に往復動可能に収容され主流路の流体圧により前記弁座に着座または離間する弁体と、
前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢手段と、を備えた安全弁であって、
前記ハウジングと前記弁体との間を通った流体を絞って排出流路に向けて流す絞り部と、
前記弁体の背面側に仕切られ前記排出流路と連通する区画空間と、を備えている。
これによれば、開弁時に、弁体には主流路の流体圧が開弁方向に作用することに加え、絞り部のベンチュリ効果により区画空間内の流体が排出流路に放出されるように作用することで、弁体は開弁方向に引き寄せられるため、弁体を開弁方向に大きくストロークさせることができ、主流路の流体圧を迅速に低下させることができる。また、閉弁時に、排出流路から流体が区画空間に導入されるまでに時間を要することから、いわゆるダンパ効果をもって弁体は円滑かつゆっくりと弁座に着座するようになっている。
【0008】
前記区画空間と前記排出流路は、前記弁体の往復動方向に延びる連通路により連通していてもよい。
これにより、連通路が弁体の往復動方向に延びているため、弁体の開弁方向への移動により連通路を通じて区画空間内の流体を排出流路にスムーズに放出することができる。
【0009】
前記ハウジングとは別体の通路部材を備え、前記通路部材には、その中央に前記連通路が設けられており、その外周に前記絞り部が設けられていてもよい。
これにより、通路部材に対して連通路と絞り部とを一体に形成できるため、連通路と絞り部とを精度よく製造しやすい。
【0010】
前記絞り部は、前記排出流路側が前記通路部材の中央に向けて傾斜していてもよい。
これにより、絞り部を通過した流体の流れを連通路に向けて導くことができるので、区画空間内の流体を排出流路に引き込みやすい。
【0011】
前記通路部材が前記弁体をガイドするようになっていてもよい。
これにより、弁体とハウジングとの間に流路を大きく形成することができる。
【0012】
前記通路部材と前記弁体とにより前記区画空間が形成されていてもよい。
これにより、通路部材を利用して区画空間を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る実施例1における閉弁状態の安全弁を示す断面図である。
図2】ガイド部材の部分を図1とは一部異なる位置で切断した断面図である。
図3】開弁状態の安全弁を示す断面図である。
図4】絞り部の周辺を流れる流体の圧力分布を概略的に示す説明図である。
図5】本発明に係る実施例2における開弁状態の安全弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る安全弁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。尚、本実施例は、温水洗浄便座装置に組み込まれる安全弁を例にして説明するが、その他の用途にも適用可能である。
【実施例1】
【0015】
実施例1に係る安全弁につき、図1から図4を参照して説明する。以下、図1の正面側から見て左右側を安全弁の左右側として説明する。詳しくは、温水洗浄便座装置の主流路2が配置される紙面右側を安全弁1の右側、排出流路3が配置される紙面左側を安全弁1の左側として説明する。
【0016】
本発明の安全弁1は、例えば、温水洗浄便座装置における給水配管に組み込まれ、給水配管内の流体圧が何らかの影響により異常に高まったときに、給水配管外に流体を逃がし、給水配管の流体圧が常に所定圧力以下になるように調整し、給水配管やこれに接続される機器を保護するものである。
【0017】
図1に示されるように、安全弁1は、後述する主流路2及び排出流路3の一部を構成するハウジング4と、ハウジング4に設けられる弁座5と、ハウジング4の内部空間S1内に左右に往復動可能に収容される弁体6と、ハウジング4に固定され後述する連通路71を有する通路部材7と、弁体6を弁座5に向けて付勢する付勢手段としてのスプリング8と、を主に備えている。
【0018】
ハウジング4は、弁座5が形成された主流路2側の第1ハウジング41と通路部材7が配置される排出流路3側の第2ハウジング42とにより構成されている。第1ハウジング41の左方には、右方に凹む段状の凹部41aが形成されており、左端の大径部分には第2ハウジング42の大径部が螺合・固定可能となっており、やや小径の部分には後述するパッキン9を介して第2ハウジング42の中径部が配置され、右端の最小径の部分41bが右方に延びて形成されている。尚、凹部41aの大径部分には、第2ハウジング42の大径部がカシメにより固定されていてもよい。
【0019】
第1ハウジング41の右方には、左右に貫通して延びる貫通孔が形成されており、該貫通孔の右側の部分が第1流路21となっており、左側の部分が流路23となっている。また、第1流路21と流路23との接続部分には、上方に分岐する第2流路22が形成されている。第1流路21は給水配管における上流側の流体管に接続されており、第2流路22は給水配管における下流側の流体管に接続されている。すなわち、第1流路21、第2流路22、及び流路23は、主流路2の一部を構成している。
【0020】
また、凹部41aの最小径の部分41bの右端に設けられた底部は、その径方向中央から左方に筒状に突出した部位を有しており、筒状の部位の左端が弁座5となっており、筒状の部位の中空部は第1流路21、第2流路22に連通する流路23となっている。
【0021】
第2ハウジング42は左右方向に延びる段付きの貫通孔を備えており、該貫通孔の右側の部位42aは左側の部位31よりも大径をなしている。貫通孔における左側の部位31は、給水配管の外部に連通するドレン管に接続されており、排出流路3の一部を構成している。尚、以下、貫通孔における右側の部位42aを大径部42a、左側の部位31を第3流路31という。
【0022】
ハウジング4の内部空間S1は、第1ハウジング41の凹部41aにおける最小径の部分41b、第2ハウジング42の大径部42a、パッキン9により区画された第1ハウジング41と第2ハウジング42との隙間により構成されており、主流路2と排出流路3とに連通している。
【0023】
弁体6は、ハウジング4に対し軸方向に相対的に移動可能、具体的には通路部材7の軸部72に対し軸方向に相対移動可能な可動部材61と、可動部材61の右端部に固定されるシール部材62とから主に構成されている。尚、シール部材62は、ゴムや合成樹脂等の弾性部材により構成されている。
【0024】
可動部材61は、右端の径方向に延びる底壁部61aと、底壁部61aの外縁から左方に延びる筒状の外筒部61bと、底壁部61aの中央から左方に延びる筒状の内筒部61cと、を有している。内筒部61cには、通路部材7の軸部72が軸方向に相対摺動可能に挿入されている。弁体6において実質的に弁座5に接離するシール部材62の背面側(すなわち左側)には、可動部材61の底壁部61a及び内筒部61cと、通路部材7の軸部72とにより内部空間S1と仕切られた区画空間S2が形成されている。
【0025】
また、内筒部61cにはスプリング8の右端部が外嵌されており、通路部材7の軸部72にはスプリング8の左端部が外嵌されている。また、底壁部61aの左面には、スプリング8の右端部が当接している。また、底壁部61aの右面には、右方に突出する突出部61dが形成されており、突出部61dを覆うようにシール部材62が固着されている。
【0026】
次いで、通路部材7の構成について図1及び図2に基づいて説明する。尚、図2は、通路部材7の構造をわかりやすく説明するために、通路部材7を図1の位置とは一部異なる位置で切断した状態を示している。
【0027】
図1及び図2に示されるように、通路部材7は、基部73と、基部73から右方に延びる小径の軸部72と、基部73の外径に環状に張り出す膨出部74と、を有している。基部73は、その左端部が第3流路31内に延びており、その右端部の軸部72が内筒部61c内に延びている。また、基部73の左端部の外周面は、左方に向けて先細りするテーパ部73aとなっている。
【0028】
また、通路部材7の中央には、基部73と軸部72とに亘って左右方向に貫通して延びる連通路71が形成されており、この連通路71は、区画空間S2と第3流路31とを連通している。尚、ここでいう通路部材7の中央とは、通路部材7の数学的な径方向の中心である必要はなく、通路部材7における膨出部74の外周よりも内側の位置を意味している。
【0029】
また、膨出部74は、その左端面が第2ハウジング42の大径部42aの底部に固着されているとともに、左右方向に貫通するように外径側から切り欠かれた切欠き部74aが周方向に等配されている。また、膨出部74の右面には、スプリング8の左端部が当接している。
【0030】
テーパ部73aの右端部は、膨出部74の左端面よりも右側の位置となるように形成されている。すなわち、通路部材7における切欠き部74aの左端部とハウジング4の内周面とにより絞り部75が形成されており、絞り部75により内部空間S1と第3流路31とが連通されている。この絞り部75の断面積は、絞り部75の上流側及び下流側の流路である内部空間S1及び第3流路31の断面積よりも小さく形成されている。また、絞り部75は、連通路71の周囲に等配されている。尚、絞り部75の数量は自由に変更でき、偶数個または奇数個でもよいが、等配されていることが好ましい。
【0031】
図1及び図2に示されるように、安全弁1は、通常時において、弁体6がスプリング8によって付勢され、シール部材62が弁座5に押し付けられることで閉弁しており、給水配管を流れる流体は、主流路2を構成する第1流路21から第2流路22と流れるようになっている。また、安全弁1の閉弁状態にあっては、ハウジング4の内部空間S1、区画空間S2、及び第3流路31内には空気が存在している。以下、説明の便宜上、給水配管を流れる流体を水、内部空間S1、区画空間S2、及び第3流路31内の流体を空気として説明する。
【0032】
また、図3に示されるように、何らかの原因によって主流路2の水圧が所定値を超えて上昇した場合には、その主流路2の水圧により弁体6がスプリング8の付勢力に抗して左側に移動して安全弁1が開弁する。これにより、主流路2の水は、ハウジング4の内部空間S1、詳しくは内部空間S1におけるハウジング4の内周面と弁体6の外周面との隙間の流路を通り、その後切欠き部74a、絞り部75を通って第3流路31に放出される。尚、安全弁1の全開状態にあっては、弁体6の左端面が通路部材7の膨出部74の右面に当接し、弁体6の開弁方向への移動が規制される。
【0033】
主流路2と排出流路3は左右方向に直線状に対向して配置されているので、主流路2の水は内部空間S1を弁体6の開弁方向に向けて流れ、水の流れによる損失が少なく、弁体6の開弁方向への移動に影響がない。
【0034】
また、安全弁1が開弁した際には、主流路2の水圧により内部空間S1内の空気が絞り部75を通過して第3流路31に放出されるように押し出される。該空気は、断面積が小さい絞り部75を通過するときに流速が増加し断面積が広い第3流路31に流入する際に流体の流れる領域及びその周囲の領域を相対的に負圧とし、該負圧により連通路71を通じて相対的に圧力の高い区画空間S2内の空気が第3流路31に放出され、これにより弁体6が開弁方向へ引き寄せられるようになっている。これによれば、安全弁1の開弁初期には、主流路2の水圧に加え、絞り部75で発生する負圧により、弁体6を開弁方向へ大きくストロークさせ、弁開度を全開にして主流路2の流体圧を迅速に低下させることができる。
【0035】
次に、絞り部75の周辺を流れる流体(すなわち空気または水)の圧力分布を説明する。図4に示されるように、絞り部75の上流近傍の流体圧P1’は、内部空間S1内を流れる流体の流体圧P1よりも高くなっている(P1’>P1)。また、絞り部75直後の流体圧P2は流体圧P1よりも低くなっている(P1>P2)。また、絞り部75よりも下流の下流近傍の流体圧P2’は流体圧P2よりもさらに低くなっている(P2>P2’)。また、絞り部75の下流近傍位置よりもさらに下流に向かうにつれて流体圧が徐々に高くなり、流体圧P1よりも低い流体圧で安定するようになっている。
【0036】
このように、連通路71の左端部は、最も負圧が大きい、すなわち最も絶対圧が低い(流体圧P2’)絞り部75の下流近傍に配置されているので、区画空間S2内の空気を第3流路31に引き込みやすくなっている。
【0037】
また、安全弁1の閉弁時に、排出流路3から流体が区画空間S2に導入されるまでに時間を要することから、いわゆるダンパ効果をもって弁体6は円滑かつゆっくりと弁座5に着座するようになっている。
【0038】
また、区画空間S2と排出流路3とを連通する連通路71は、弁体6の往復動方向に延びているため、弁体6が開弁方向への移動したときに、連通路71を通じて区画空間S2内の空気を排出流路3にスムーズに放出することができる。
【0039】
また、ハウジング4とは別体の通路部材7の中央に連通路71が設けられており、連通路71の周囲に絞り部75を構成するテーパ部73a及び切欠き部74aが等配されている。これによれば、通路部材7に対して連通路71とテーパ部73a及び切欠き部74aを一体に形成できるため、連通路71と絞り部75とを精度よく製造しやすくい。また、絞り部75は等配されているので、流体をバランスよく流すことができる。
【0040】
また、絞り部75を構成するテーパ部73aは、連通路71の左端部、すなわち連通路71の排出流路3側の端部に向けて傾斜しているので、絞り部75を通過した流体を連通路71に向けて導くことができ、区画空間S2内の空気を第3流路31に引き込みやすい。
【0041】
また、通路部材7は弁体6をガイドするようになっている。詳しくは、通路部材7の軸部72には弁体6の内筒部61cが軸方向に相対摺動可能に挿入されており、軸部72と内筒部61cとの相対摺動により弁体6が安定して往復動可能となっている。このように弁体6が通路部材7によりガイドされるため、弁体6とハウジング4との間に流路を大きく形成することができ、流体の流れを円滑に且つ流量を多くすることができる。
【0042】
また、弁体6の内筒部61cは流体が流れる方向(すなわち排出流路3側)を向いて開口しているため、流体が内筒部61cと軸部72との隙間から回り込んで区画空間S2内に入り込みにくくなっており、区画空間S2内の流体圧が低い状態を維持できるようになっている。
【0043】
また、通路部材7と弁体6とにより区画空間S2が形成されており、通路部材7を利用して区画空間S2を構成することができることから、区画空間S2を構成するための部材を新たに用意しなくてよく、部品点数を減らして構造を簡素にすることができる。
【0044】
また、連通路71は、左端部から右端部に向かうにつれて漸次細くなっている。これによれば、連通路71の区画空間S2に近い位置で絞りが形成されるので、開弁時に水圧によって弁体6が左方に移動させられると、区画空間S2から連通路71に押し出された空気はベンチュリ効果により連通路71の左端側で相対的に負圧となって区画空間S2内の流体を排出流路3に向けて効果的に引き込みやすくなっている。
【0045】
また、通路部材7はバネ受けとして機能している。これによれば、ハウジング4とは別体の通路部材7をハウジング4に対して位置調整することでスプリング8を適正に配置することができるため、安全弁1の組み立てが簡便である。
【0046】
また、通路部材7の膨出部74の右面にスプリング8の左端部が当接しており、絞り部75よりも上流側に離間してスプリング8が配置されるので、スプリング8により絞り部75が塞がれることが防止され、絞り部75に向けて流れる流体の流れを阻害しない。
【0047】
また、通路部材7が弁体6の開弁方向への移動規制部として機能している。これによれば、ハウジング4に移動規制部を設けなくてよいため、ハウジング4の構造を簡素にできる。
【0048】
また、弁体6の左端面が通路部材7の膨出部74の右面に当接し、弁体6の開弁方向への移動が規制される構造である。すなわち、絞り部75よりも上流側に離間した位置で弁体6の開弁方向への移動が規制されるので、弁体6により絞り部75が塞がれることが防止され、絞り部75に向けて流れる流体の流れを阻害しない。
【実施例2】
【0049】
次に、実施例2に係る安全弁につき、図5を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0050】
図5に示されるように、本実施例2の安全弁10は、弁体600及び通路部材700の構成以外、前記実施例1と同一構成となっている。弁体600の可動部材610は、右端の底壁部610aの外縁から側壁部610bが左方に延びており、内部に左方に開口する凹部611が形成されている。
【0051】
通路部材700は、基部730の右端から外径に張り出す環状板部760と、環状板部760の外縁から右方に延びる筒状部770と、を有しているとともに、前記実施例1の軸部72が設けられていない。この通路部材700には、環状板部760と筒状部770とにより右方に開口する凹部780が形成されている。
【0052】
弁体600は、通路部材700の筒状部770に左右方向に相対摺動可能に挿入配置されている。弁体600と通路部材700との間には、凹部611と凹部780とにより区画空間S2が形成されている。尚、ここでは図示しないが、側壁部610bの外周面と筒状部770の内周面との間には相対摺動を許容しつつ、流体の進入を抑制するようなリング部材が配置されることが好ましい。
【0053】
このように、弁体600は、通路部材700の筒状部770にガイドされるため、弁体600の往復動が安定するようになっているとともに、筒状部770の外周面とハウジング4の内周面との間に大きな流路を確保できる。
【0054】
また、弁体600の外周面に通路部材700が外嵌されることから、内部空間S1を流れる流体の流体圧が弁体600の背面側に回り込み、弁座5に向けて移動させる方向に作用しないため、弁体600を開弁方向へ移動させやすい。
【0055】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0056】
例えば、前記実施例1,2では、連通路が左右方向に延びる形態を例示したが、連通路が屈曲または蛇行して延びていてもよい。
【0057】
また、前記実施例1,2では、連通路が区画空間側に先細りするテーパ形状をなしていたが、連通路が左右方向に断面一定で延びていてもよい。
【0058】
また、前記実施例1,2では、連通路が通路部材に設けられる形態を例示したが、ハウジングに設けられていてもよい。また、連通路は複数設けられていてもよい。
【0059】
また、前記実施例1,2では、通路部材とハウジングとの間で絞り部を構成する形態を例示したが、通路部材またはハウジングのいずれかに設けられていてもよい。また、絞り部は等配されていなくてもよい。例えば絞り部は少なくとも1つ設けられていてもよい。
【0060】
また、前記実施例1,2では、絞り部の排出流路側が通路部材の中央に向けて傾斜している形態を例示したが、連通路に負圧が作用すれば左右方向に直線状、または外径方向に向けて傾斜していてもよい。
【0061】
また、前記実施例1,2では、弁体と通路部材とにより区画空間が形成される形態を例示したが、区画部材を別途用意し、弁体と区画部材とにより区画空間を形成してもよい。
【0062】
また、前記実施例1,2では、通路部材が付勢手段のバネ受けとなっている形態を例示したが、ハウジングがバネ受けとなっていてもよい。
【0063】
また、前記実施例1,2では、通路部材が弁体の開弁方向への移動規制部となっている形態を例示したが、ハウジングが開弁方向への移動規制部となっていてもよい。
【0064】
また、前記実施例1,2では、付勢手段としてコイルバネ状のスプリングを例示したが、弁体を弁座に向けて付勢できるものであれば自由に変更してもよい。
【0065】
また、前記実施例1,2では、ハウジングが主流路及び排出流路の一部を構成する形態を例示したが、ハウジングに主流路及び排出流路に連通していればよく、ハウジングに主流路及び排出流路の一部が設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 安全弁
2 主流路
3 排出流路
4 ハウジング
5 弁座
6 弁体
7 通路部材
8 スプリング(付勢手段)
10 安全弁
71 連通路
72 軸部
75 絞り部
600 弁体
700 通路部材
S1 内部空間
S2 区画空間
図1
図2
図3
図4
図5