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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】乳化化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20240917BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
A61K8/06
A61Q19/00
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/41
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021152469
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2023044437
(43)【公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】小川 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】武藤 謙
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104399(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185315(WO,A1)
【文献】特開2019-189663(JP,A)
【文献】特開2014-231496(JP,A)
【文献】特開2014-009222(JP,A)
【文献】特開2004-307484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、下記成分(B)、下記成分(C)、下記成分(D)、下記成分(E)、および下記成分(F)を含有し、
成分(A)の含有割合が8.0~25.0質量%、成分(B)の含有割合が8.0~18.0質量%であり、
前記成分(B)は三価アルコールを含み、前記三価アルコールの含有割合が2.0~15.0質量%であり、
ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有割合が2.0~8.0質量%である乳化化粧料組成物。
成分(A):低級アルコール
成分(B):二価アルコールおよび/または三価アルコール
成分(C):増粘剤
成分(D):ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、HLB値が8.0~15.0であるノニオン性界面活性剤
成分(E):殺菌成分
成分(F):エデト酸ナトリウム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エタノール、イソプロピルアルコールなどの炭素数1~3の低級アルコールが細菌やウイルスに対して殺菌作用を有することは一般に知られており、低級アルコールを配合した液状の殺菌剤が広く使用されている。しかしながら、このような液状の殺菌剤は、液状であるために、手のひらなどの殺菌部位に塗布した際に流れ落ち、液だれするという問題がある。なお、スプレー剤型の殺菌剤は空気中に拡散してしまうなどの問題がある。さらに、高濃度の低級アルコールを含む殺菌剤を使用すると、手荒れの原因となるおそれがある。
【0003】
特許文献1および2には、20質量%以上の炭素数1~3の低級アルコールおよび殺菌剤を含有し、殺菌作用に加え保湿性を有する消毒用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-132711号公報
【文献】特開2018-158890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に開示の消毒用組成物は、低級アルコールを高濃度で含有する液状殺菌剤と比較すると、使用感に優れ、液だれも抑制されている。しかしながら、従来のハンドクリーム等の乳化化粧料組成物と比較すると、べたつきが強く、保湿感も不充分であり、使用感に問題があった。また、上記消毒用組成物は、液だれが抑制されているものの、ジェル状の形態を維持しながら滑り落ちるなどし、液だれの抑制についても改善の余地があった。さらに、低級アルコールを高配合する場合、アルコール臭が強いという問題もあった。
【0006】
従って、本発明の目的は、殺菌作用、べたつきのなさ、保湿感、および低アルコール臭に優れ、液だれが抑制された乳化化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、成分(A):低級アルコール、成分(B):二価アルコールおよび/または三価アルコール、成分(C):増粘剤、成分(D):ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、HLB値が8.0~15.0であるノニオン性界面活性剤、成分(E):殺菌成分、および成分(F):エデト酸ナトリウムを含有し、成分(A)および成分(B)の含有割合がそれぞれ特定の範囲内である乳化化粧料組成物によれば、殺菌作用、べたつきのなさ、保湿感、および低アルコール臭に優れ、液だれが抑制されることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記成分(A)、下記成分(B)、下記成分(C)、下記成分(D)、下記成分(E)、および下記成分(F)を含有し、
成分(A)の含有割合が8.0~25.0質量%、成分(B)の含有割合が8.0~18.0質量%である乳化化粧料組成物を提供する。
成分(A):低級アルコール
成分(B):二価アルコールおよび/または三価アルコール
成分(C):増粘剤
成分(D):ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、HLB値が8.0~15.0であるノニオン性界面活性剤
成分(E):殺菌成分
成分(F):エデト酸ナトリウム
【0009】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有割合は2.0~8.0質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の乳化化粧料組成物は、殺菌作用、べたつきのなさ、保湿感、および低アルコール臭に優れ、殺菌部位に塗布した際に液だれが起こりにくい。このため、本発明の乳化化粧料組成物は、安定性に優れつつ、使用感に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の乳化化粧料組成物は、低級アルコール、二価アルコールおよび/または三価アルコール、増粘剤、ノニオン性界面活性剤、殺菌成分、ならびにエデト酸ナトリウムを少なくとも含む。また、上記ノニオン性界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、HLB値が8.0~15.0である。なお、本明細書において、低級アルコールを「成分(A)」、二価アルコールおよび/または三価アルコールを「成分(B)」、増粘剤を「成分(C)」、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、HLB値が8.0~15.0であるノニオン性界面活性剤を「成分(D)」、殺菌成分を「成分(E)」、エデト酸ナトリウムを「成分(F)」とそれぞれ称する場合がある。
【0012】
すなわち、本発明の乳化化粧料組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、および成分(F)を少なくとも含む。本発明の乳化化粧料組成物は、上記成分(A)~(F)以外の成分を含んでいてもよい。また、本発明の乳化化粧料組成物に含まれる各成分、例えば、成分(A)~(F)および他の成分などの各成分は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0013】
[成分(A)]
成分(A)は低級アルコールである。成分(A)は、一価の低級アルコールであり、乳化化粧料組成物において殺菌作用を発揮する。成分(A)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0014】
成分(A)としては、炭素数1~4の一価アルコールが挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、1-ブタノールなどが挙げられる。
【0015】
本発明の乳化化粧料組成物中の成分(A)の含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、8.0~25.0質量%であり、好ましくは11.0~22.0質量%、より好ましくは12.0~18.0質量%である。上記含有割合が8.0質量%以上であることにより、殺菌作用に優れる。上記含有割合が25.0質量%以下であることにより、アルコール臭が抑制されており、保湿感に優れ、また乳化化粧料組成物の安定性に優れる。上記成分(A)の含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物中の全ての成分(A)の含有割合の合計である。
【0016】
[成分(B)]
成分(B)は二価アルコールおよび/または三価アルコールである。本発明の乳化化粧料組成物は、成分(A)とともに成分(B)を含むことにより、優れた殺菌作用を発揮する。成分(B)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0017】
上記二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の(ポリ)アルキレングリコールなどが挙げられる。中でも、炭素数2~12の二価アルコールが好ましく、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールがより好ましい。また、上記三価アルコールとしては、グリセリンが挙げられる。
【0018】
成分(B)としては、二価アルコールのみを配合することも、三価アルコールのみを配合することも、二価アルコールと三価アルコールとを組み合わせて配合することもできる。二価アルコールと三価アルコールとを組み合わせて配合すると、本発明の乳化化粧料組成物はより優れた殺菌作用を発揮する。
【0019】
本発明の乳化化粧料組成物中の成分(B)の含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、8.0~18.0質量%であり、好ましくは9.0~17.0質量%、より好ましくは10.0~16.0質量%である。上記含有割合が8.0質量%以上であることにより、殺菌作用および保湿感に優れる。上記含有割合が18.0質量%以下であることにより、べたつきのなさに優れる。上記成分(B)の含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物中の全ての成分(B)の含有割合の合計である。
【0020】
本発明の乳化化粧料組成物中の二価アルコールの含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、2.0~18.0質量%であることが好ましく、より好ましくは5.0~17.0質量%、さらに好ましくは10.0~15.0質量%である。上記含有割合が2.0質量%以上であると、殺菌作用および保湿感によりいっそう優れる。上記含有割合が18.0質量%以下であると、べたつきのなさによりいっそう優れる。上記二価アルコールの含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物中の全ての二価アルコールの含有割合の合計である。
【0021】
本発明の乳化化粧料組成物中の三価アルコールの含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、0.5~15.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.0~13.0質量%、さらに好ましくは2.0~10.0質量%である。上記含有割合が0.5質量%以上であると、殺菌作用および保湿感によりいっそう優れる。上記含有割合が15.0質量%以下であると、べたつきのなさによりいっそう優れ、乳化化粧料組成物の安定性にもより優れる。上記三価アルコールの含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物中の全ての三価アルコールの含有割合の合計である。
【0022】
[成分(C)]
成分(C)は増粘剤である。成分(C)を配合することにより、殺菌部位に塗布した際の液だれを抑制することができ、また乳化化粧料組成物の安定性に優れる。成分(C)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0023】
成分(C)としては、例えば、水溶性を有する、天然高分子、半合成高分子、合成高分子などの水溶性増粘剤が挙げられる。上記水溶性を有する天然高分子としては、例えば、アラビアゴム、トラガントガム、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン、カラギーナン、ペクチンなどが挙げられる。上記水溶性を有する半合成高分子としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロースなどのセルロース系増粘剤が挙げられる。上記水溶性を有する合成高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール;カルボキシビニルポリマー;ポリビニルメチルセルロース;ポリアミド樹脂;ポリエチレングリコール;ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体(アルキル変性カルボキシビニルポリマー)、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)クロスポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス-25)コポリマーおよび(アクリレーツ/ネオデカン酸ビニル)クロスポリマーなどのアクリル系増粘剤が挙げられる。中でも、水溶性を有する半合成高分子および水溶性を有する合成高分子が好ましく、より好ましくはセルロース系増粘剤およびカルボキシビニルポリマーである。
【0024】
なお、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーやアクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体を用いる場合は、通常、塩基性物質で中和して用いられる。塩基性物質としては、例えば、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン類;アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基;アルギニン等の塩基性アミノ酸などが挙げられる。また、塩基性物質の添加量は、カルボキシビニルポリマーやアクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体を中和するのに充分な量であり、これら成分の種類や使用量に応じて適宜配合すればよい。
【0025】
本発明の乳化化粧料組成物中の成分(C)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、0.05~0.8質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~0.5質量%である。上記含有割合が0.05質量%以上であると、殺菌部位に塗布した際の液だれをより抑制することができ、乳化化粧料組成物の安定性により優れる。上記含有割合が0.8質量%以下であると、べたつきのなさにより優れる。上記成分(C)の含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物中の全ての成分(C)の含有割合の合計である。
【0026】
[成分(D)]
成分(D)は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、且つHLB値が8.0~15.0であるノニオン性界面活性剤である。このような成分(D)を用いることにより、成分(A)および成分(B)を上述の含有割合で含む場合であっても、殺菌部位に塗布した際の液だれを抑制することができ、また乳化化粧料組成物の安定性に優れる。成分(D)は、ノニオン性界面活性剤を一種のみ含有していてもよいし、二種以上を含有していてもよい。
【0027】
成分(D)のHLB値は8.0~15.0であり、好ましくは9.0~13.0である。上記HLB値が上記範囲内であることにより、成分(A)および成分(B)を上述の含有割合で含む場合であっても、殺菌部位に塗布した際の液だれを抑制することができ、また乳化化粧料組成物の安定性に優れる。上記HLB値は、本発明の乳化化粧料組成物における全てのノニオン性界面活性剤におけるHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値をいい、各ノニオン性界面活性剤のHLB値は上記範囲外であってもよい。上記各ノニオン性界面活性剤のHLB値は、グリフィン(Griffin)法により算出することができる。そして、ノニオン性界面活性剤全体のHLB値は、ノニオン性界面活性剤中の質量割合に応じて算出される。例えば、ノニオン性界面活性剤としてHLB値がaであるものをx質量部、HLB値がbであるものをy質量部用いた場合、ノニオン性界面活性剤全体のHLB値は、a×x/(x+y)+b×y/(x+y)で算出される。
【0028】
成分(D)は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを少なくとも含む。上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4~10)グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリ(2~10)グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ポリ(2~10)グリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、セスキオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2~10)グリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、ジステアリン酸ポリ(6~10)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ポリ(10)グリセリル等の、ポリグリセリン重合度が2~10のポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0029】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物であってもよい。上記ポリグリセリン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物としては、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリルなどが挙げられる。上記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0030】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレンオキシド付加物としては、中でも、HLB値(各化合物の単独のHLB値)が上述の範囲内であるものが好ましい。
【0031】
成分(D)は、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外のその他のノニオン性界面活性剤を含んでいてもよい。上記その他のノニオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、およびこれらのアルキレンオキシド付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンステロールおよびその誘導体、ポリオキシエチレンラノリンおよびその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、シュガーエステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油などが挙げられる。
【0032】
本発明の乳化化粧料組成物中の成分(D)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、2.0~8.0質量%であることが好ましく、より好ましくは2.5~6.0質量%である。上記含有割合が2.0質量%以上であると、乳化化粧料組成物の安定性により優れる。上記含有割合が8.0質量%以下であると、べたつきのなさにより優れる。上記成分(D)の含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物中の全ての成分(D)の含有割合の合計である。
【0033】
本発明の乳化化粧料組成物中のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、2.0~8.0質量%であることが好ましく、より好ましくは2.5~6.0質量%である。上記含有割合が2.0質量%以上であると、殺菌部位に塗布した際の液だれをより抑制することができ、また乳化化粧料組成物の安定性により優れる。上記含有割合が8.0質量%以下であると、べたつきのなさにより優れる。上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物中の全てのポリグリセリン脂肪酸エステルの含有割合の合計である。
【0034】
成分(D)中のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有割合は、特に限定されないが、成分(D)100質量%に対して、60.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80.0質量%以上、さらに好ましくは90.0質量%以上、特に好ましくは95.0質量%以上である。上記含有割合が60.0質量%以上であると、殺菌部位に塗布した際の液だれをより抑制することができ、また乳化化粧料組成物の安定性により優れる。
【0035】
[成分(E)]
成分(E)は、成分(E)は殺菌成分であり、特に、成分(A)、成分(B)、および成分(B)以外の多価アルコールに該当するもの以外の殺菌成分である。成分(A)および成分(B)と組み合わせて成分(E)を用いることにより、本発明の乳化化粧料組成物は充分な殺菌作用を発揮する。成分(E)は、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用していてもよい。
【0036】
成分(E)としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、フェノール、トリクロロカルバニリド、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、トリクロカルバン等のハロカルバン、ピロクトンオラミン、ジンクピリチオン、サリチル酸、ソルビン酸、塩化リゾチーム、フェノールスルホン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0037】
本発明の乳化化粧料組成物中の成分(E)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02~1.0質量%である。上記含有割合が0.01質量%以上であると、殺菌作用により優れる。上記含有割合が5.0質量%以下であると、乳化化粧料組成物の安定性により優れる。上記成分(E)の含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物中の全ての成分(E)の含有割合の合計である。
【0038】
[成分(F)]
成分(F)はエデト酸ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム)であり、広範な金属に対してキレート効果を奏するキレート剤である。成分(A)、成分(B)、および成分(E)と組み合わせて成分(F)を用いることにより、本発明の乳化化粧料組成物は充分な殺菌作用を発揮する。成分(F)は、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用していてもよい。
【0039】
成分(F)としては、例えば、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウムが挙げられる。
【0040】
本発明の乳化化粧料組成物中の成分(F)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、0.01~0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.03~0.3質量%である。上記含有割合が0.01質量%以上であると、殺菌作用により優れる。上記含有割合が0.5質量%以下であると、乳化化粧料組成物の安定性により優れる。上記成分(F)の含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物中の全ての成分(F)の含有割合の合計である。
【0041】
[その他の成分]
本発明の乳化化粧料組成物は、上記成分(A)~(F)等の上述の各成分以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。上記その他の成分しては、特に限定されず、例えば、化粧品や医薬部外品に通常用いられる成分等が挙げられる。具体的には、例えば、水;油性成分;高級アルコール;成分(B)以外の多価アルコール;グリチルリチン酸およびその塩等の抗炎症剤;メントール等の清涼剤;リン酸およびその塩類、クエン酸およびその塩類、乳酸およびその塩類、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のpH調整剤;香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;防腐剤;成分(F)以外の金属イオン封鎖剤;色素;顔料;ビタミン類;アミノ酸類;収斂剤;美白剤;動植物抽出物;中和剤;制汗成分;消臭成分;酸;アルカリなどが挙げられる。上記その他の成分は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0042】
本発明の乳化化粧料組成物は、上記その他の成分として、油性成分および水を含むことが好ましい。本明細書において、油性成分を「成分(G)」、水を「成分(H)」とそれぞれ称する場合がある。
【0043】
成分(G)は油性成分であり、例えば、植物油、エステル油、シリコーン油、炭化水素油、ロウなどが挙げられる。成分(G)は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0044】
上記植物油としては、例えば、マカデミアナッツ油、ユーカリ油、ヤシ油、アボカド油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ククイナッツ油、シア脂(シアバター)、カカオバター、アーモンド油、ヒマワリ油、ローズヒップ油、オリーブスクワラン、カメリアオイル、キウイフルーツシード油、ツバキ油、杏仁油、ゴマ油、大豆油、ホホバ油、ヒマシ油、ヘーゼルナッツ油、メドウフォーム油、ハッカ油、アルガンオイル、カロットオイル、ラベンダー油、シュガースクワラン、ダマスクバラ花ロウ、センチフォリアバラ花ロウ、ソケイ花ワックス、椿油、これらの水素添加物(例えば、水素添加ヒマシ油、水素添加ホホバ油、水素添加パーム油、水素添加アボカド油、水素添加大豆油等)などが挙げられる。
【0045】
上記エステル油としては、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸プロピレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソノニル、アジピン酸ジイソプロピル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、リンゴ酸ジイソステアリル、トリエチルヘキサン酸エリスリチル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、(エチルヘキサン酸/ステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ヘキサ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ジペンタエリスリチル、安息香酸アルキル(C12-15)などが挙げられる。
【0046】
上記シリコーン油としては、特に限定されないが、例えば、メチルポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン)、高重合メチルポリシロキサン等のジメチルシリコーン油;メチルフェニルポリシロキサン等のメチルフェニルシリコーン油;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーン;メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノールなどが挙げられる。
【0047】
上記炭化水素油としては、例えば、α-オレフィンオリゴマー、ワセリン、イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)、イソドデカンなどが挙げられる。
【0048】
上記ロウとしては、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ラノリン、ヒマワリ種子ロウなどが挙げられる。
【0049】
本発明の乳化化粧料組成物中の成分(G)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、1.0~15.0質量%であることが好ましく、より好ましくは3.0~12.0質量%である。上記含有割合が1.0質量%以上であると、保湿感により優れ、また粘度が上昇し、殺菌部位に塗布した際の液だれをより抑制することができ、また乳化化粧料組成物の安定性により優れる。上記含有割合が15.0質量%以下であると、べたつきのなさにより優れ、また乳化化粧料組成物の安定性により優れる。上記成分(G)の含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物中の全ての成分(G)の含有割合の合計である。
【0050】
成分(H)は水であり、特に限定されないが、精製水が好ましい。本発明の乳化化粧料組成物中の成分(H)の含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、20.0~84.0質量%であることが好ましく、より好ましくは40.0~70.0質量%である。上記含有割合が20.0質量%以上であると、べたつきのなさにより優れ、また乳化化粧料組成物の安定性により優れる。上記含有割合が84.0質量%以下であると、保湿感により優れ、また乳化化粧料組成物の安定性により優れる。
【0051】
上記高級アルコールは、本発明の乳化化粧料組成物において乳化助剤として作用し、乳化化粧料組成物の安定性をよりいっそう向上させる。上記高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。上記高級アルコールは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0052】
本発明の乳化化粧料組成物中の高級アルコールの含有割合は、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、0.5~8.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.0~5.0質量%である。上記含有割合が0.5質量%以上であると、乳化化粧料組成物の安定性によりいっそう優れる。上記含有割合が8.0質量%以下であると、べたつきのなさにより優れる。
【0053】
本発明の乳化化粧料組成物は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤を少量しか含まないまたは実質的に含まないことが好ましい。すなわち、本発明の乳化化粧料組成物は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤を含まないか、または本発明の乳化化粧料組成物中のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤の合計の含有割合が、本発明の乳化化粧料組成物100質量%に対して、1質量%以下(好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下)であることが好ましい。上記界面活性剤の含有割合が1質量%以下であると、組成物の安定性により優れ、また、塗布時のべたつきをより抑制することができる。
【0054】
本発明の乳化化粧料組成物は、乳化組成物であり、好ましくは、水中油(O/W)型の乳化化粧料組成物である。本発明の乳化化粧料組成物の剤型としては、例えば、クリーム、乳液などが挙げられる。
【0055】
本発明の乳化化粧料組成物は、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨などとして用いられる。具体的には、フェイス用化粧料(保湿化粧料、マッサージ化粧料等)、ボディ用化粧料(保湿化粧料、マッサージ化粧料、デオドラント化粧料等)、ハンド用化粧料などに好ましく用いられる。
【0056】
本発明の乳化化粧料組成物は、皮膚(肌)に塗布して用いられる皮膚化粧料組成物であることが好ましい。本発明の乳化化粧料組成物を使用する部位としては、特に限定されず、例えば、顔面(例えば、額、目元、目じり、頬、口元等)や、腕、肘、掌、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中などが挙げられる。
【0057】
本発明の乳化化粧料組成物は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、ホモミキサーで攪拌し、各成分を乳化する方法などが挙げられる。
【0058】
本発明の乳化化粧料組成物は、低級アルコール[成分(A)]と、二価アルコールおよび/または三価アルコール[成分(B)]と、殺菌成分[成分(E)]と、エデト酸ナトリウム[成分(F)]とを組み合わせて配合することにより、成分(A)および成分(B)の含有割合が低くても、優れた殺菌作用を発揮する。また、成分(A)の含有割合が低いことにより、低アルコール臭とすることができる。そして、界面活性剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、HLB値が8.0~15.0であるノニオン性界面活性剤[成分(D)]を配合することにより、安定的な乳化状態を形成することができる。そして、増粘剤[成分(C)]を配合することにより、べたつきを抑制しつつ充分に増粘させることができ、保湿感に優れ、液だれが生じにくい。このため、本発明の乳化化粧料組成物は、安定性に優れつつ、使用感に優れる。
【実施例
【0059】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。また、表中の「-」は、配合しなかったことを示す。ここで実施例4は参考例1と読み替えるものとする。
【0060】
実施例および比較例
表に記した各成分(成分(A)~(H))およびその他の成分を用い、実施例および比較例の各化粧料組成物を常法により調製した。
【0061】
表に記載の主な成分は、以下の通りである。
【0062】
<成分(C)>
疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース:商品名「サンジェロース60L」、大同化成工業株式会社製
<ノニオン性界面活性剤>
ポリオキシエチレンセチルエーテル:商品名「EMALEX120」、日本エマルジョン株式会社製
モノステアリン酸デカグリセリル:商品名「NIKKOL DECAGLYN 1-SV」、日本サーファクタント工業株式会社製
ジステアリン酸デカグリセリル:商品名「NIKKOL DECAGLYN 2-SV」、日本サーファクタント工業株式会社製
モノオレイン酸ポリグリセリル:商品名「NIKKOL DGMO-CV」、日本サーファクタント工業株式会社製
モノステアリン酸グリセリル:商品名「CUTINA GMS-V」、BASFジャパン株式会社製
【0063】
(評価)
実施例および比較例で得られた各化粧料組成物について以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。表中の「-」は、評価を行っていないことを示す。なお、比較例8では乳化組成物が得られなかったため、その他の評価を行っていない。
【0064】
(1)液だれのなさ
実施例および比較例で得られた各化粧料組成物を、手の甲に塗布し、塗布中の液だれを評価した。そして、液だれのなさについて、下記の基準に従って判定した。
[判定基準]
A(優良):手の甲から垂れ落ちない。
B(良好):Aに比べて緩さを感じるが、手の甲から垂れ落ちない。
C(不良):手の甲から垂れ落ちる。
【0065】
(2)保湿感
実施例および比較例で得られた各化粧料組成物を、手の甲に塗布し、肌になじんだと感じられた後の保湿感を評価した。そして、保湿感について、下記の基準に従って判定した。
[判定基準]
A(優良):塗布部の肌に潤いとしっとりとした感触が強く感じられる。
B(良好):塗布部の肌に潤いとしっとりとした感触が感じられる。
C(不良):塗布部の肌に潤いとしっとりとした感触が全く感じられない、或いはわずかに感じられる程度である。
【0066】
(3)べたつきのなさ
実施例および比較例で得られた各化粧料組成物を、手の甲に塗布し、肌になじんだと感じられた後のべたつきを評価した。そして、べたつきのなさについて、下記の基準に従って判定した。
[判定基準]
A(優良):塗布後にべたつきが感じられない。
B(良好):塗布後にべたつきがわずかに感じられる。
C(不良):塗布後にべたつきが明らかに感じられる。
【0067】
(4)アルコール臭のなさ
実施例および比較例で得られた各化粧料組成物を、手の甲に塗布し、肌になじませている間のアルコール臭を評価した。そして、アルコール臭のなさについて、下記の基準に従って判定した。
[判定基準]
A(優良):アルコール臭が感じられない。
B(良好):アルコール臭がわずかに感じられる。
C(不良):アルコール臭が明らかに感じられる。
【0068】
(5)殺菌作用
実施例および比較例で得られた各化粧料組成物に、菌液1(大腸菌)および菌液2(黄色ブドウ状球菌)を加えて5分間撹拌した後、寒天培地に混釈して48時間培養し、菌数の評価を行った。評価は、各化粧料組成物を加える前の菌液中の菌数に対して各化粧料組成物と接触したことにより死滅した菌数の割合を算出した。そして、殺菌作用について、下記の基準に従って判定した。
[判定基準]
A(優良):菌液1および菌液2の両方において99.99%以上の菌が死滅した。
B(良好):菌液1および菌液2の両方において99.9%以上、99.99%未満の菌が死滅した、または菌液1および菌液2のいずれか一方において99.9%以上、99.99%未満の菌が死滅し、その他方において99.99%以上の菌が死滅した。
C(不良):菌液1および菌液2の少なくとも一方において99.9%未満しか菌が死滅しなかった。
【0069】
(6)安定性
実施例および比較例で得られた各化粧料組成物を、透明ガラス容器にそれぞれ封入し、5℃から45℃を24時間サイクルで変温する恒温槽に1週間静置した。1週間静置後の各化粧料組成物を目視にて観察した。そして、安定性について、下記の基準に従って判定した。
[判定基準]
A(優良):分離や凝集は見られず、クリーム状である。
B(良好):わずかに分離や凝集は見られるものの、クリーム状である。
C(不良):明らかに分離や凝集が見られ、不均一である。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表に示すように、本発明の乳化化粧料組成物(実施例)は、殺菌作用、べたつきのなさ、保湿感、低アルコール臭、および安定性に優れ、また液だれが抑制されていると評価された。一方、成分(A)の含有割合が低い場合(比較例1)、成分(F)を配合しない場合(比較例9)、および成分(F)の代わりに他のキレート剤を用いた場合(比較例10および11)、いずれも、殺菌作用に劣ると評価された。成分(A)の含有割合が高い場合(比較例2および3)、アルコール臭が強いと評価された。成分(B)の含有割合が低い場合(比較例4)、保湿感に劣ると評価された。成分(B)の含有割合が高い場合(比較例5)、べたつきのなさに劣ると評価された。ノニオン性界面活性剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いなかった場合(比較例6および7)、液だれが起こり、使用感に劣ると評価された。ノニオン性界面活性剤のHLB値が低い場合(比較例8)、乳化せず乳化組成物を作製することができなかった。
【0073】
さらに、以下に、本発明の乳化化粧料組成物の処方例を示す。
処方例1:ハンドクリーム
エタノール 15.0質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
グリセリン 5.0質量%
カルボキシビニルポリマー 0.4質量%
モノステアリン酸デカグリセリル(HLB:9.5) 3.0質量%
モノオレイン酸ポリグリセリル(HLB:5.5) 1.0質量%
塩化ベンザルコニウム 0.08質量%
エデト酸二ナトリウム 0.08質量%
シア脂 2.0質量%
ミリスチン酸イソプロピル 1.0質量%
流動パラフィン 1.0質量%
ベヘニルアルコール 1.5質量%
セタノール 0.3質量%
香料 0.1質量%
精製水 残部
【0074】
処方例2:ハンドクリーム
エタノール 18.0質量%
1,3-ブチレングリコール 4.0質量%
グリセリン 10.0質量%
キサンタンガム 0.3質量%
ジステアリン酸デカグリセリル(HLB:9.5) 5.0質量%
塩化ベンゼトニウム 0.05質量%
エデト酸二ナトリウム 0.2質量%
イソノナン酸イソノニル 1.0質量%
スクワラン 2.0質量%
ミツロウ 1.0質量%
ベヘニルアルコール 1.0質量%
セタノール 0.8質量%
香料 0.08質量%
精製水 残部