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特許7555691ネジ節鉄筋用カプラーおよびそのカプラーが具備されたネジ節鉄筋
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】ネジ節鉄筋用カプラーおよびそのカプラーが具備されたネジ節鉄筋
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
E04C5/18 102
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024520493
(86)(22)【出願日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2023017830
(87)【国際公開番号】W WO2023219150
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2024-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2022078707
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000170484
【氏名又は名称】合同製鐵株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】砂山 直昭
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-532029(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0075660(KR,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0409526(KR,Y1)
【文献】特開2003-239458(JP,A)
【文献】特開2014-005703(JP,A)
【文献】特開平11-229557(JP,A)
【文献】実開昭56-162721(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/18
E04G 21/12
F16B 7/04
F16B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する鉄筋それぞれの端部を挿入し、前記対向する鉄筋を軸方向に締結するカプラーであって、
前記カプラーは、主筒と、該主筒の軸方向における両端部のそれぞれにおいて該主筒と螺合可能な副筒と、を備え、
前記主筒は、
外周部に形成される雄ネジ部と、
内周部に形成される雌ネジ部と、を含み、
前記副筒は、
前記軸方向における前記主筒側の内周部に形成され、前記主筒の雄ネジ部と螺合する第1雌ネジ部と、
前記軸方向における前記主筒側とは反対側の内周部に形成され、前記鉄筋のネジ節と螺合する第2雌ネジ部と、を含み、
前記主筒の雌ネジ部の位相と、前記副筒の第1雌ネジ部の位相と、前記副筒の第2雌ネジ部の位相と、が同じとなるように構成され、
前記主筒の雄ネジ部と前記副筒の第1雌ネジ部とが螺合し、且つ、前記主筒の雌ネジ部及び前記副筒の第2雌ネジ部と前記鉄筋のネジ節とが螺合し、
前記主筒の雄ネジ部のネジピッチが、前記鉄筋のネジ節のネジピッチと異なるように構成されている、
ネジ節鉄筋用カプラー。
【請求項2】
対向する鉄筋それぞれの端部を挿入し、前記対向する鉄筋を軸方向に締結するカプラーであって、
前記カプラーは、主筒と、該主筒の軸方向における両端部のそれぞれにおいて該主筒と螺合可能な副筒と、を備え、
前記主筒は、外周部に形成される雄ネジ部を含み、
前記副筒は、
前記軸方向における前記主筒側の内周部に形成され、前記主筒の雄ネジ部と螺合する第1雌ネジ部と、
前記軸方向における前記主筒側とは反対側の内周部に形成され、前記鉄筋のネジ節と螺合する第2雌ネジ部と、を含み、
前記副筒の第1雌ネジ部の位相と、前記副筒の第2雌ネジ部の位相と、が同じとなるように構成され、
前記主筒の雄ネジ部と前記副筒の第1雌ネジ部とが螺合し、且つ、前記副筒の第2雌ネジ部と前記鉄筋のネジ節とが螺合し、
前記主筒の雄ネジ部のネジピッチが、前記鉄筋のネジ節のネジピッチと異なるように構成されている、
ネジ節鉄筋用カプラー。
【請求項3】
前記主筒の雄ネジ部には、前記鉄筋のネジ節のピッチより大きいピッチの雄ネジが形成されている、
請求項1または2に記載されたネジ節鉄筋用カプラー。
【請求項4】
前記主筒の雄ネジ部には、前記鉄筋のネジ節のピッチより小さいピッチの雄ネジが形成されている、
請求項1または2に記載されたネジ節鉄筋用カプラー。
【請求項5】
対向する鉄筋それぞれの端部を挿入し、前記対向する鉄筋を軸方向に締結するカプラーであって、
前記カプラーは、主筒と、該主筒の軸方向における両端部のそれぞれにおいて該主筒と螺合可能な副筒と、を備え、
前記主筒は、
内周部の一部に形成される第1雌ネジ部と、
前記第1雌ネジ部よりも前記軸方向における端部側の内周部に形成される第2雌ネジ部と、を含み、
前記副筒は、
外周部に形成され、前記主筒の第2雌ネジ部と螺合する雄ネジ部と、
内周部に形成され、前記鉄筋のネジ節と螺合する雌ネジ部と、を含み、
前記主筒の第1雌ネジ部の位相と、前記主筒の第2雌ネジ部の位相と、前記副筒の雌ネジ部の位相と、が同じとなるように構成され、
前記主筒の第2雌ネジ部と前記副筒の雄ネジ部とが螺合し、且つ、前記主筒の第1雌ネジ部及び前記副筒の雌ネジ部と前記鉄筋のネジ節とが螺合し、
前記副筒の雄ネジ部のネジピッチが、前記鉄筋のネジ節のネジピッチと異なるように構成されている、
ネジ節鉄筋用カプラー。
【請求項6】
対向する鉄筋それぞれの端部を挿入し、前記対向する鉄筋を軸方向に締結するカプラーであって、
前記カプラーは、主筒と、該主筒の軸方向における両端部のそれぞれにおいて該主筒と螺合可能な副筒と、を備え、
前記主筒は、内周部の一部に形成される雌ネジ部を含み、
前記副筒は、
外周部に形成され、前記主筒の雌ネジ部と螺合する雄ネジ部と、
内周部に形成され、前記鉄筋のネジ節と螺合する雌ネジ部と、を含み、
前記主筒の雌ネジ部の位相と、前記副筒の雌ネジ部の位相と、が同じとなるように構成され、
前記主筒の雌ネジ部と前記副筒の雄ネジ部とが螺合し、且つ、前記副筒の雌ネジ部と前記鉄筋のネジ節とが螺合し、
前記副筒の雄ネジ部のネジピッチが、前記鉄筋のネジ節のネジピッチと異なるように構成されている、
ネジ節鉄筋用カプラー。
【請求項7】
前記副筒の雄ネジ部には、前記鉄筋のネジ節のピッチより大きいピッチの雄ネジが形成されている、
請求項5または6に記載されたネジ節鉄筋用カプラー。
【請求項8】
前記副筒の雄ネジ部には、前記鉄筋のネジ節のピッチより小さいピッチの雄ネジが形成されている、
請求項5または6に記載されたネジ節鉄筋用カプラー。
【請求項9】
前記主筒の長手方向中央部位である中央胴の外面には、前記副筒に所望トルクを及ぼす際の反力取り面が形成されている、
請求項1、2、5、または6に記載されたネジ節鉄筋用カプラー。
【請求項10】
請求項1、2、5、または6に記載のネジ節鉄筋用カプラーを具備するネジ節鉄筋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネジ節鉄筋用カプラーに係り、詳しくは、対向するネジ節鉄筋の端部が挿入されるカプラー内に、鉄筋とカプラーとの緩みを防止して、軸力を伝達する鉄筋を長くするため締結するカプラーに関し、また、そのカプラーが具備されたネジ節鉄筋にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物や土木構築物を鉄筋コンクリートにより構築する際、コンクリート補強材として用いられる異形鉄筋(ネジ節鉄筋又は竹節鉄筋)は、工場出荷から工事現場までの運搬の利便性を考慮して例えば12メートルの定尺ものとして製造される。
【0003】
しかし、使用にあたってはその適用建物の大きさや適用箇所の長さに合わせる都合上、工事現場で継ぎ足されることが多い。ネジ節鉄筋も竹節鉄筋(竹節鉄筋は本発明の対象外)も、圧延工程でのロールに形成されたカリバーで徐々に変形して成形されるが、ロールは僅かずつであるが荒れや消耗をきたす。表面研削により肌荒れを除去して継続的に使用することができるとはいえロール径の減少は避けられず、節ピッチが製造時期により僅かであるが違ったものになる。一方、カプラーの接合用孔に形成される歯形は、鉄筋の正規寸法のネジ節ピッチに合わせつつも鉄筋の成形公差を考慮して鋳造成形される。したがって、カプラーと鉄筋とのねじピッチ差を吸収してかみ合わせることができるものの、かみ合わせ隙間が残るのは致しかたない。
【0004】
その歯面相互の隙間にグラウト(例えばモルタル)を詰めてガタの発生を防止したり、小ネジをカプラー外から鉄筋の表面に向けて立て、抜け止めを図ったりする。前者の例が特許文献1や特許文献2に、後者の例が特許文献3や特許文献4に提案されている。いずれにしても、締結の完璧を期すためカプラーの長大化や締結負荷の強大化を招いている。よって、ガタの発生や抜け止め防止の効果を発揮するトルク管理(低トルクでの締結実現
・締結力の均一化)が容易なカプラーの出現が待ち望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第4666326号
【文献】特開2018―178365
【文献】米国特許第5046878号
【文献】米国特許第7107735号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ネジ山相互の軋み(きしみ)を利用し、スリーブに、グラウトやネジロック剤を必ずしも導入することなく、対向ネジ節鉄筋を接合するカプラーおよびそのカプラーが具備されたネジ節鉄筋を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明に係るネジ節鉄筋用カプラーは、図1を参照して、対向する鉄筋4L,4Rそれぞれの端部を挿入し、対向する鉄筋4L,4Rを締結するカプラーに適用される。その特徴とするところは、
カプラー10は主筒11と該主筒11の軸方向に対称あって該軸方向の両端部のそれぞれにおいて該主筒11と螺合可能な副筒12,13とを備え、
主筒11は、
外周部に形成される雄ネジ部(端部雄ネジM6,M7)と、
内周部に形成される雌ネジ部(縦通ネジ孔H5)と、を含み、
副筒12,13は、
軸方向における主筒11側の内周部に形成され、主筒11の雄ネジ部(端部雄ネジM6,M7)と螺合する第1雌ネジ部(端部雌ネジF8,F9)と、
軸方向における主筒11側とは反対側の内周部に形成され、鉄筋4L,4Rのネジ節M4と螺合する第2雌ネジ部(ナット部雌ネジF14,F15)と、を含み、
主筒の雌ネジ部(縦通ネジ孔H5)の位相と、副筒の第1雌ネジ部(端部雌ネジF8,F9)の位相と、副筒の第2雌ネジ部(ナット部雌ネジF14,F15)の位相と、が同じとなるように構成され、
主筒11の雄ネジ部(端部雄ネジM6,M7)と副筒12,13の第1雌ネジ部(端部雌ネジF8,F9)とが螺合し、且つ、主筒11の雌ネジ部(縦通ネジ孔H5)及び副筒12,13の第2雌ネジ部(ナット部雌ネジF14,F15)と鉄筋4L,4Rのネジ節M4とが螺合し、
主筒11の雄ネジ部(端部雄ネジM6,M7)のネジピッチが、鉄筋4L,4Rのネジ節M4のネジピッチと異なるように構成されている、
ことである。
【0008】
第二の発明に係るネジ節鉄筋用カプラーは、図12に示すように、主筒11、副筒12,13のねじの雌雄を逆にした主筒11A、副筒12A,13Aを備える構成であり、軋みを利用した所望するロックを達成することができる。
【0009】
図6に示すごとく、主筒11の左半部胴外周および右半部胴外周には、鉄筋のネジ節M4のピッチPより大きいピッチP,Pの端部雄ネジM6,M7が形成される。
【0010】
また、図11(b)に示すように、主筒11の左半部胴外周および右半部胴外周には、鉄筋4L,4Rのネジ節M4のピッチPより小さいピッチP,Pの端部雄ネジM6,M7が形成されている。
【0011】
図12に示すごとく、主筒11Aの第1雌ネジ部(縦通ネジ孔H5)の位相と、主筒11Aの第2雌ネジ部(端部雌ネジ孔H6,H7)の位相と、副筒12A,13Aの雌ネジ部(ナット部雌ネジF14,F15)の位相と、が同じとなるように構成されている。主筒11Aの第2雌ネジ部(端部雌ネジ孔H6,H7)と副筒12A,13Aの雄ネジ部ナット部雌ネジF14,F15)とが螺合し、且つ、主筒11Aの第1雌ネジ部(縦通ネジ孔H5)及び副筒12A,13Aの雌ネジ部(ナット部雌ネジF14,F15)と鉄筋4L,4Rのネジ節M4とが螺合する。また、副筒12A,13Aの雄ネジ部(端部雄ネジM8,M9)のネジピッチP ,P が、鉄筋4L,4RのネジピッチP と異なる。
【0012】
図4にあるように、主筒11の長手方向中央部の外面には、ナット部14,15に所望
トルクを及ぼす際の反力取り面11Cが形成される。
【0013】
主筒11の長手方向中間部位には、挿入鉄筋4L,4Rの先端位置を確認するため覗きうる軸方向に延びるスリット17が形成されている。このスリット17の対向箇所にも同形のスリット18が形成される。
【0014】
図11(c)に示すごとく、鉄筋の反カプラー側端部が定着板機能を発揮する曲がり部25を有している。
【発明の効果】
【0015】
第一の発明によれば、主筒と、主筒の軸方向における両端部のそれぞれにおいて主筒と螺合可能な副筒とからなるカプラーとしたので、接続される鉄筋はそれぞれ同等構成品で接合され、同じ要領のトルク負荷作業で締結できる。成形公差内にあるネジ節を持った鉄筋なら、ネジ節ピッチに製作公差内の違いがあっても鉄筋締結の均質化が図られる。主筒の雄ネジ部のネジピッチと、鉄筋のネジ節のネジピッチとに違いを持たせているから、ネジの螺進に伴いピッチの小さいネジ山が受けるネジの面接触圧の増大化によりネジ面の表面に働く摩擦力が大きくなる。圧迫による軋みにより僅かといえどもネジ山の肌荒れが現れると、それ以後の螺進や後退が阻止され、負荷トルクに相応する逆トルクが作用しないかぎり、ネジ山の過螺着の解脱は生じなくなる。第二の発明によれば副筒の雄ネジ部のネジピッチと、鉄筋のネジ節のネジピッチとに違いを持たせているから、ネジの螺進に伴いピッチの小さいネジ山が受けるネジの面接触圧の増大化によりネジ面の表面に働く摩擦力が大きくなる。圧迫による軋みにより僅かといえどもネジ山の肌荒れが現れると、それ以後の螺進や後退が阻止される。
【0016】
主筒の外周に、鉄筋のネジ節のピッチより大きいピッチの外周ネジが形成され、または小さいピッチの外周ネジが形成されるから、このピッチ差で、ネジの面接触圧によりネジの表面に働く摩擦力が大きく作用してネジ相互の軋みで強固な締結がなされる。さらに、締結の利便性を述べれば、本発明に係るカプラーでは、ネジ節鉄筋を回転させることなく締結することもできる。
【0017】
筒の外周に、鉄筋のネジ節のピッチより大きいピッチの雄ネジ部(端部雌ネジが形成され、または小さいピッチの雄ネジ部(端部雌ネジが形成されるから、このピッチ差で、ネジの面接触圧によりネジの表面に働く摩擦力が大きく作用してネジ相互の軋みで強固な締結がなされる。
【0018】
主筒の長手方向中央部位である中央胴の外面に反力取り面が形成されていると、ナット部に所望トルクを及ぼす際の反力取りが容易となる。主筒の長手方向中間部位である中央胴に軸方向に延びるスリットが形成されているなら、挿入鉄筋の先端位置を確認することができる。このスリットの対向箇所にも同形のスリットが形成されていれば見透すことができ、挿入鉄筋の先端位置を確認しやすくなる。
【0019】
鉄筋の反カプラー側端部に曲がり部を持たせておけば、定着板機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一の発明に係るネジ節鉄筋用カプラーによる鉄筋締結完了図。
図2】ネジ節鉄筋用カプラーによる鉄筋締結手順の前半の工程図。
図3】両鉄筋の噛み合わせ並びにゲージを用いたピッチ合わせの処理を含む鉄筋締結後半の工程図。
図4】主筒の外観斜視図。
図5】ネジ節鉄筋の単体斜視図および部分拡大図。
図6】主筒の縦断面図。
図7】副筒の外観斜視図。
図8】副筒の縦断面図。
図9】副筒における噛み合い始め点Qを示すネジ端面図。
図10】ゲージによる等ピッチ設定工程図。
図11】異なるピッチ形態の鉄筋締結手順の後半の工程図および定着作用のある鉄筋への適用図。
図12】主筒と副筒の螺着の雌雄を逆にした第二の発明の鉄筋締結完了図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係るネジ節鉄筋用カプラーについて、その実施の形態を表した図面に基づき詳細に説明する。この発明は、図2(a)に示す対向するネジ節鉄筋4L,4Rを
図3(c)に示すように締結するために使用するものである。すなわち、グラウトの使用不使用のいずれにおいても、ネジ山相互の軋(きし)みを利用して鉄筋を強固に接合しようとするものである。
【0022】
図2(a)に示す二本の鉄筋4L,4Rの対向端部が挿入されるカプラー10は、鉄筋4
との螺合の緩みを防止して、軸力を伝達する鉄筋の伸長を図る。このカプラー10は一つの主筒11と左右対称配置にあるすなわち鉄筋ごとの副筒12,13とを備える。よって、カプラー10は三つの構成品からなる極めてシンプルで嵩張りの少ないものである。なお、いずれの構成品も金属製の剛体であるが、後に触れるが、原則鋳造品とされる。
【0023】
その主筒11は鉄筋より例えば1.4倍前後の大きさの外径を持った図4に示す外観の筒体で、中央胴11Cが締結時に反トルク掛けすることができる多角形表面(図示は六角
面)をなし、その左半部胴、右半部胴の外面には後述する雄ネジM6,M7が形成されて
いる。その主筒11内に形成される軸方向の孔は、噛みあい隙間(背隙も含めて)が残るとしても鉄筋4L,4Rのネジ節M4(図5を参照)と螺合する貫通ネジ孔H5(図4を参照)
となっている。
【0024】
ちなみに、この貫通ネジ孔H5(この明細書において「縦通しネジ孔H5」と称する場合もある)は左半部胴内も右半部胴内も通常右ねじとされるが、所定の締結性能を発揮する鉄筋4L,4Rのネジ山M4との噛み合わせ接合に充分な数の雌ネジF5(図6参照例えば5~6)を備える。この貫通ネジ孔H5の一方の開口端から他方の開口端までのねじ山のピッチは一定であり、貫通ネジ孔H5における螺旋が途切れていても(図示せず)、途切れていなくても(図6中のE部の覗き孔のある箇所でも貫通ネジ孔H5は途切れていない)、左半部胴および右半部胴ではネジ位相も同じとされている。すなわち、一本の鉄筋4でもこのネジ孔H5を螺合貫入できるようにしている(図2(c)を参照)。というのは、このネジ孔H5と前述した副筒12,13の後述するナット部雌ネジF14,F15とは、図3(b)のように副筒12,13が奥深く被さった状態で、ネジ位相が一致するねじを形成しているからである。なお、符号のプレフィックスのHは孔部を指すこと、Mは雄ネジを、Fは雌ネジを、Pはピッチであることを表し、以後も部材や部分の把握の利便を図っておく。
【0025】
なお、ネジ孔H5は成形ロールの摩耗を考慮したネジ節ピッチの成形公差を許容した鉄筋なら、締結に必要な噛みあいを果たす数の雌ネジF5(図6を参照)となっていることは言うまでもない。すなわち、主筒11の中にある貫通ネジ孔H5の雌ネジF5は、鉄筋が
許容最大ピッチ品であれ許容最小ピッチ品であっても所望ピッチ数の噛みあいを満たしたうえで、歯面の相互干渉のないノーマルな螺着が可能な範囲の数の螺旋となっている。
【0026】
例えば、D35(呼び径が35mm)の鉄筋を対象とする場合には、この主筒11は、一
方で例えば5~6ピッチ分の噛みあいが必要であり左右合わせて12ピッチ分、それに中央の鉄筋端突合せ空間E(図6を参照)を加えても精々計300mm程度の長さのカプラーとなる。
【0027】
この図6に示すごとく、主筒11の左半部胴の外周および右半部胴の外周には貫通ネジ
孔H5と同心であるとともに、貫通ネジ孔H5の位相と一致する位相を備え、鉄筋4のネジ節M4のピッチP図5を参照)に等しくないピッチP,P(図4及び図6を参照)の外周ネジ6,7が形成されている。それは例えば、P=P+2mmといった寸法
が選定される。なお、2mmの差を与えているのは、軋みを生じさせるためであるほかに、鉄筋のピッチ成形公差(例えば±0.2mm)の幾つかの積りがあっても数ピッチ分は吸
収させ得るようにしておく意図である。
【0028】
副筒12,13は図7のような外観を有するが、主筒11の左半部胴の外周(図6を参
照)と右半部胴の外周をそれぞれ覆うスリーブ部8,9と、このスリーブ部と同軸をなし
スリーブ部の片側端に一体形成されたナット部14,15とを備える。このスリーブ部内には上記した外周ネジ6,7(図4図6を参照)に噛み合うスリーブ内周ネジF8,F9(図2(b)、図7を参照)が設けられており、ナット部14,15にはこのスリーブ内周
ネジF8.F9の位相と一致する位相を備えた鉄筋のネジ節M4が螺合するナット部雌ネジF14,F15(図2(b)、図7図8を参照)が形成されている。すなわち、ナット部雌ネジF14,F15のネジピッチP14,P15(図3(c)を参照)は鉄筋公差最小成形品(製作図面の基準寸法どおりの品の意)におけるネジ節ピッチPに等しくされている。なお、ナット部雌ネジF14,F15による鉄筋4との噛みあいネジ山数は、主筒11の左半部胴の外周および右半部胴の外周における締結効果を発揮する噛み合いネジ山数が充てられる。
【0029】
したがって、カプラー10には図2(b)に示すように、貫通ネジ孔H5とナット部雌
ネジF14,F15とが形成され、ナット部雌ネジF14、貫通ネジ孔H5の雌ネジF5、
ナット部雌ネジF15とで、一定ピッチPのネジ孔が形成され、左右の鉄筋4L,4R
の端部を抱え込むことができる。
【0030】
図3(b)の如く、結果的に、貫通ネジ孔H5の雌ネジF5、外周ネジ6,7の端部雄ネジM6,M7(この明細書において「雄ネジM6、M7」と称する場合もある)、スリーブ内周雌ねじF8,F9(この明細書において「スリーブ内周ネジF8,F95」または「端部雌ネジF8,F9」と称する場合もある)、ナット部雌ネジF14,F15のすべてのネジの位相が同じであるようにされている。位相が同じとはネジが噛み合い始めるときネジ端の回動角度が同じと言う意味である。すなわち、ここで言う回動とは雄ネジの先端が雌ネジの開口に落とし込まれる時点、噛み込みが開始する時点の図9における回動角度θのことである。噛み合い始めるときの回動角が同じ、すなわち、噛合開始の回動角度位置が同じとは、例えば、螺着(螺旋)開始点Qがある角度を基準とした点Uからの進み角度(例えば2π/3rad 120度)で噛合を一勢に開始させるという意味である。
【0031】
このような構成のネジ群によれば、ナット部14,15(図7を参照)に締結強度を保持し得る所望トルクを及ぼし、多角形断面の反力トルク掛け面11C(図4を参照)で反力をとりながら回転螺進させることにより、ナット部14,15のナット部雌ネジF14,F15が鉄筋4L,4RのネジM4と密着圧接して摩擦力を発揮させる (図3(c)を参照、軋み発現の意)。これにより、鉄筋の意図しない回転や軸方向変位を阻止しておくことが
できる。
【0032】
ところで、主筒11の長手方向中間部位にある貫通ネジ孔H5には、図6に示すごとく、挿入鉄筋4L,4Rの先端位置を観察するため覗きうる軸方向に延びるスリット17が形成されている。このスリットの対向箇所にも同形のスリット18が主筒11に形成されていれば見透して、鉄筋4の突合せ端を容易に把握でき、鉄筋の挿入深さを見誤ることがなくなる。
【0033】
なお、主筒11の左半部胴の外周および右半部胴の外周に形成される外周ネジ6,7(
図6を参照)に貫通ネジ孔H5の雌ネジF5の位相と一致する位相を備えさせることや、
鉄筋のネジ節M4(図5を参照)が螺合するナット部雌ネジF14,F15(図7を参照)にスリーブ内周ネジF8, F9(図3(b)を参照)の位相と一致する位相を備えさせること
は、切削(機械加工)操作で達成することは容易でない。図3(b)を見ても分かるように、すべての歯面が同時初期噛み合わせをさせておく必要があるが、これを達成させる加工は鋳造に頼らざるをえない。それに関しては本発明の趣旨と直接の関わりがないので、その点についてここでは触れないことにする。
【0034】
次に、鉄筋締結手順を述べる。図2(a)を参照して、二本のネジ節鉄筋4L,4Rの接続部位に、主筒11と二つの副筒12,13を配置する。副筒12,13は同一仕様(
呼び径、ピッチ,位相等が同一)のものでよく、姿勢が単に左右対称に配置される。まず
図2(b)のように、外周ネジM6,M7にスリーブ内周ネジ F8,F9を噛み合わせ
て、主筒11の一方の側に副筒12をネジ位相を一致させるべく奥深く, 他方の側にも
副筒13をネジ位相を一致させるべく奥深く螺着させる。中央胴11Cは角状断面であり(図4を参照)、副筒12,13はその箇所までをカバーしえない形状・寸法となっているが、左半部胴、右半部胴の殆どが覆われる。副筒12,13は、スリット17,18を覆うことはないものの、相互に近接した状態に配置される。その初期噛み合わせの後に、ネジ節鉄筋4Rをネジ節鉄筋4Lに接近させる(図2(c)を参照)。
【0035】
組上げられたカプラー10からは、例えばネジ節鉄筋4Lの先端4Leが覗き出るまで
図3(a)の如く1ピッチ程度突出させ、ネジ形ゲージ19(図10を参照)を当て、ネジの螺旋の連続性を保つ。すなわち、位相の不揃いを生じなくする。図3(b)のようにカプラー10の全体を移動(回転により右行)させる。副筒12のナット部雌ネジF14、主
筒11の貫通ネジ孔H5の雌ネジF5、副筒13のナット部雌ネジF15が連続するので、ネジ節鉄筋4Lへの移動操作は、難しいものでない。すなわち、ネジ節鉄筋4Rとネジ節鉄筋4Lの対向端が予め決められた隙間E(図3(b)を参照)を保持させるようにしておき、カプラー10をネジ節鉄筋4Rに向けて螺進させる。
【0036】
スリット17,18(図4を参照)を覗き込んで、図3(b)、(c)のようにネジ節鉄筋4L,4Rの対向端が主筒11の貫通ネジ孔H5に位置しているかを確認する。確認が得られれば、副筒12,13をそれぞれ逆回転して副筒12,13を矢印21,22方向へ離反させる。
【0037】
そこで、副筒12,13は外周ネジ6,7をたどるように移動するが、ナット部雌ネジF14,F15がネジ節鉄筋にガイドされるが如く移動しようとする。副筒を例えば一回転させると、外周ネジ6にガイドされての移動量は1ピッチPとなる。同時に、副筒12,13は、ネジ節鉄筋4Rに螺合しているので、P+2mm(=P6)歩まねばならない(図6を参照)。副筒12,13が剛体ゆえにこれは到底無理な話であるが、カプラー10
のネジ山に軋みトルクを及ぼすと、鉄筋のネジ節が螺合するナット部雌ネジF14,F15が鉄筋4RのネジM4と歯面干渉が生じて損傷させ、ナット部雌ネジF14,F15が螺合する鉄筋4Rのネジにより軋み状態におかれる。
【0038】
と言うことは、それ以上螺進はもとより後退する(緩む)ことすらできなくなる、ところで、締結誤りを発見した場合などの締結解除操作において、ねじ山の再生は不完全にしても修復可能なときはロック状態が解脱される。
【0039】
上記例とは逆にP=P6+2mm(すなわちP6=P-2mm)なら、副筒12,13を右回転して図11(b)のように矢印23,24方向へ接近させる。ナット部雌ネジF1
4,F15はネジ節鉄筋4Rに案内されて移動しようとするから外周ネジM6,M7での
軋みが先に生じる。
【0040】
副筒12,13も外周ネジ6,7に沿った移動をしようとするが、副筒12,13が鉄筋の雄ネジM4に沿って例えば一回転分移動すると、外周ネジ6に沿ってピッチP6+2
mm歩まねばならなくなるからである。
【0041】
これらの操作説明から分かるように、ネジ節鉄筋4L,4Rのいずれをも軸方向へ移動させることはあっても、螺進・螺合のために回転させる必要はない。すなわち、主筒11や副筒12,13の回転操作だけで締結が達成される。
【0042】
以上の動作を実現するうえで不可欠な構成は、以下のように表現される。図1を参照して、
対向する同一仕様(同一直径・同一ピッチ・同一ネジ位相)の鉄筋4L,4Rの端部が挿入されるカプラー内に鉄筋とカプラーとの緩みを防止して、軸力を伝達する鉄筋を長くしておくため締結するカプラーであって、
カプラー10は一つの主筒11と左右対称姿勢にあって主筒11の左半部胴および右半部胴の外周に螺着される二つの副筒12,13とを備え、
主筒11内に形成される軸方向の孔は、鉄筋4L,4Rのネジ節M4が螺合する縦通ネジ孔H5であり、
左右の半部胴の外周は縦通ネジ孔H5と同心でこの縦通ネジ孔H5より大径の外周ネジH6,H7が形成され、そこに端部雄ネジM6,M7が設けられ,
端部雄ネジM6,M7は貫通ネジ孔H5の雌ネジF5の位相と一致する位相を備え、鉄筋4L,4Rのネジ節M4のネジピッチPとは異なるピッチP,Pを持ち、副筒1
2,13は端部雄ネジM6,M7に螺着する端部雌ネジF8,F9を備えるスリーブ部8,9と、このスリーブ部と同軸をなしスリーブ部の片側端に一体形成されたナット部14,15とを備え、
ナット部14,15には鉄筋4L,4Rのネジ節M4が螺合しスリーブ部8,9の端部雌ネジF8,F9の位相と一致する位相を備えたナット部雌ネジF14,F15が形成されている。
【0043】
ここで、(1)P=P14+2mm又は P=P15+2mmなら、副筒12、13を相互に離反させるとP14,P15で軋みが生じる。(2) P14= P +2mm又は P15= P+2mmなら、副筒12、13を相互に接近させるとP, Pで軋みが生じる。ところで、P≡P14≡P15、P≡P≡P≡Pとしているから、ノーマルな噛み
合い部を除き、ピッチ差がある噛み合い部で軋みが時として連鎖反応的に生じる。
【0044】
本発明は上に記したように、ネジ歯面の強力接触に基因する軋みを利用したロックであるが、図1の構成のみならず、主筒11、副筒12,13のねじの雌雄を逆にした図12の如くの構成も軋みを利用した所望するロックを達成することができる。
【0045】
その構成は、以下のように表現される。
対向する鉄筋4L,4Rの端部が挿入されるカプラー内に鉄筋とカプラーとの緩みを防止して、軸力を伝達する鉄筋を長くしておくため締結するカプラーにおいて、
カプラー10Aは一つの主筒11Aと左右対称姿勢にあって主筒の左半部胴および右半部胴の内孔に螺着される二つの副筒12A,13Aとを備え、
主筒11A内に形成される軸方向の孔は、鉄筋のネジ節M4が螺合する縦通ネジ孔H5
であり、
左右の半部胴の内孔には縦通ネジ孔H5と同心で、この縦通ネジ孔H5より大径の端部雌ネジ孔H6,H7が形成され、そこには端部雌ネジF6,F7が設けられ、
この端部雌ネジF6,F7は貫通ネジ孔H5の雌ネジF5の位相と一致する位相を備え、鉄筋4L,4Rのネジ節M4のネジピッチPとは異なるピッチP,Pを持ち、
副筒12A,13Aは端部雌ネジF6,F7に螺着する端部雄ネジM8,M9を備えるスリーブ部8A,9Aと、このスリーブ部と同軸をなしスリーブ部の片側端に一体形成されたナット部14A,15Aとを備え、
このナット部14A,15Aには鉄筋4L,4Rのネジ節M4が螺合し端部雄ネジM8,M9の位相と一致する位相を備えたナット部雌ネジF14,F15が形成されていることである。
【0046】
ここで、(1) P=P14+2mm又は P=P15+2mmなら、副筒12A,13Aが相互に離反させるとP14,P15で軋みが生じる。(2) P14= P +2mm又は P
= P+2mmなら、副筒12A,13Aを相互に接近させるとP, Pで軋みが生じる。ところで、P≡P14≡P15、P≡P≡P≡Pとしているから、ノーマルな噛み合い部を除き、ピッチ差がある噛み合い部で軋みが生じる。
【0047】
以上の説明から以下のことが分かる。接続される鉄筋はそれぞれ同等構成品で接合され、同じ要領のトルク負荷作業で締結できる。成形公差内にあるネジ節を持った鉄筋なら、ネジ節ピッチにバラツキがあっても鉄筋締結の均質化が図られる。主筒の左半部胴外周および右半部胴外周の外周ネジ(又は端部雌ネジ)と、鉄筋のネジ節とにピッチの違いを持たせているから、ネジの面接触圧の増大化によりネジの表面に働く摩擦力が大きくなる。圧迫によりネジ山の表面に荒れが現れると、それ以後の螺進や後退が阻止され、ノーマルな噛み合い部を除き、ピッチ差がある噛み合い部で軋みが生じる。
【0048】
主筒の左半部胴外周および右半部胴外周に、鉄筋のネジ節のピッチより大きいピッチの外周ネジ(又は端部雌ネジ)が形成され、または小さいピッチの外周ネジ(又は端部雌ネジ)が形成されているから、このピッチの違いで、ネジの面接触圧によりネジの表面に働く摩擦力が大きく作用するネジの特定が可能となり、主筒の材質選定も容易となる。
【0049】
主筒の長手方向中央部位である貫通ネジ孔の外面に反力取り面が形成されていると、
多角形ナット部に所望トルクを及ぼす際の反力受け操作が容易となる。
【0050】
主筒の長手方向中間部位である貫通ネジ孔に軸方向に延びるスリットが形成されているなら、挿入鉄筋の先端位置を確認することができる。このスリットの対向箇所にも同形のスリットが形成されていれば見透すことができ、挿入鉄筋の先端位置を確認しやすくなる。
【0051】
貫通ネジ孔は左半部胴も右半部胴も通常右ネジとされるとして説明したが、鉄筋が左ネジなら、副筒を相互に逆回転して副筒を接近させる操作で表面荒れを発生させることになる。
【0052】
ところで、鉄筋の反カプラー側端部に曲がり部を備えさせておくと、鉄筋に定着機能をも持たせておくことができる。定着箇所は予め計画されているといえども変更を要する場合の対応が迅速となる利点がある。なお、本発明においては、グラウト(モルタル・接着
剤・ネジロック剤等)を併用することを排除する意図のないことを付言しておく。すなわ
ち、本発明の構成において、グラウトなどを導入してはいけないというものでなく、グラウトの注入は原則として必要ないことが多いというものであり、公知の要領でグラウトをしてロックのために併用してもよいことは言うまでもない。なお、主筒、副筒のねじの雌雄を逆にした主筒、副筒を備える構成においても、軋みを利用した所望するロックを達成することができる。
【符号の説明】
【0053】
4,4L,4R:ネジ節鉄筋、M4:ネジ節:4Le:ネジ節鉄筋の先端、6,7;外
周ネジ、H6,H7;端部雌ネジ孔、F6,F7;端部雌ネジ、M6,M7;端部雄ネジ、10,10A;カプラー、11,11A;主筒、11C:中央胴(反力取り面)、12,12A,13,13A;副筒、H5:縦通ネジ孔、F5:雌ネジ、8,8A、9,9A;スリーブ部、F8, F9:スリーブ内周ネジ、M8,M9:スリーブ部雄ネジ、14,1
4A、15,15A:ナット部、F14,F15:ナット部雌ネジ、17,18:スリット、19:ゲージ、21,22:離反方向への矢印、23,24:接近方向への矢印、25:曲がり部、P:公差最小成形品におけるネジ節のピッチ、P,P;端部雄(又は
雌)ネジのネジピッチ、E:鉄筋端突合せ空間、Q:副筒における螺着(螺旋)開始点、U
:点Qを規定するある角度基準点、θ:噛み込み開始時点の回動角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12