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特許7555709航空機用タービンエンジンの機械式減速歯車装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】航空機用タービンエンジンの機械式減速歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/36 20060101AFI20240917BHJP
   F02C 7/32 20060101ALI20240917BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20240917BHJP
【FI】
F02C7/36
F02C7/32
F16H57/04 D
F16H57/04 K
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020011527
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2020143669
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】1902311
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(73)【特許権者】
【識別番号】516247122
【氏名又は名称】サフラン・トランスミッション・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン・ルイ・シモン
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ブリュノ・フランソワ・フォリア
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0277055(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0225353(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0004297(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/00- 9/58
F23R 3/00- 7/00
F16H 57/00-57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空機用タービンエンジン(1)の機械式減速歯車装置(6)であって、
- 回転軸線(X)を有するサンギヤ(7)と、
- サンギヤ(7)周りに延在し、前記回転軸線(X)周りの回転において不動となるように構成されるリングギヤ(9)と、
- サンギヤ(7)およびリングギヤ(9)と噛み合い、前記回転軸線(X)の周りを回転するように構成されたプラネタリキャリアによって支持されたプラネタリギヤ(8)と、
- 回転不能なステータ部分(15)と、前記プラネタリキャリアと一体になって回転するロータ部分(14)とを備える潤滑油分配器(13)と、
- リングギヤ(9)と一体になっている少なくとも1つの環状オイルデフレクタ(26、26’)と、
を備え、
分配器(13)の前記ステータ部分(15)はデフレクタ(26、26’)と一体であり、
デフレクタ(26)が、貫通孔(28)の環状の列が形成された切頭錐台部分(26b)を備える、
ことを特徴とする機械式減速歯車装置(6)。
【請求項2】
デフレクタ(26)は、リングギヤ(9)の環状フランジ(9c)に取り付けるための環状フランジ(27)を備える、請求項1に記載の機械式減速歯車装置(6)。
【請求項3】
リングギヤ(9)は、それぞれがギヤと取付ハーフフランジ(9ab、9bb)とを備えたリム(9aa、9ba)を具備する2つのハーフリングギヤ(9a、9b)を備え、取付ハーフフランジは、共に固定され、かつ、デフレクタ(26)のフランジ(27)に固定される、請求項2に記載の機械式減速歯車装置(6)。
【請求項4】
リングギヤ(9)は、それぞれがギヤと取付ハーフフランジ(9ab、9bb)とを備えたリム(9aa、9ba)を具備する2つのハーフリングギヤ(9a、9b)を備え、デフレクタ(26)は、ハーフリングギヤ(9b)のリムに固定されるか、またはハーフリングギヤ(9b)との単一部品として形成される、請求項1に記載の機械式減速歯車装置(6)。
【請求項5】
デフレクタ(26)は、ハーフリングギヤ(9b)の周囲に延在する外周部(26a)を備える、請求項3または4に記載の機械式減速歯車装置(6)。
【請求項6】
デフレクタ(26)が、概ね前記回転軸線(X)に対して半径方向に延在する内周部分(26c)を備える、請求項1~5のいずれかに記載の機械式減速歯車装置(6)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の機械式減速歯車装置(6)であって、分配器(13)の前記ステータ部(15)が、
- 油出口オリフィス(21)を備え、分配器(13)の前記ロータ部分(14)と密封状態で係合するように構成された外側円筒面(15a)と、
- 内部油回路であって、環状キャビティ(22)を備え、環状キャビティ(22)は、一方では概ね軸方向に延在する油路(23)であって、前記環状キャビティ(22)を前記油出口オリフィス(21)に接続する油路(23)に接続され、他方では前記環状キャビティ(22)から概ね半径方向に延在する少なくとも1つの供給チャネル(24)に接続される内部油回路と、
を備える機械式減速歯車装置(6)。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載の機械式減速歯車装置(6)を備える、航空機用タービンエンジン(1)。
【請求項9】
空機用タービンエンジン(1)の機械式減速歯車装置(6)であって、
- 回転軸線(X)を有するサンギヤ(7)と、
- サンギヤ(7)周りに延在し、前記回転軸線(X)周りの回転において不動となるように構成されるリングギヤ(9)と、
- サンギヤ(7)およびリングギヤ(9)と噛み合い、前記回転軸線(X)の周りを回転するように構成されたプラネタリキャリアによって支持されたプラネタリギヤ(8)と、
- 回転不能なステータ部分(15)と、前記プラネタリキャリアと一体になって回転するロータ部分(14)とを備える潤滑油分配器(13)と、
- リングギヤ(9)と一体になっている少なくとも1つの環状オイルデフレクタ(26、26’)と、
を備え、
分配器(13)の前記ステータ部分(15)はデフレクタ(26、26’)と一体であり、
リングギヤ(9)は、それぞれがギヤと取付ハーフフランジ(9ab、9bb)とを備えたリム(9aa、9ba)を具備する2つのハーフリングギヤ(9a、9b)を備え、デフレクタ(26)は、ハーフリングギヤ(9b)のリムに固定されるか、またはハーフリングギヤ(9b)との単一部品として形成される、
機械式減速歯車装置(6)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、タービンエンジン、特に航空機用タービンエンジンの機械式減速歯車装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
技術水準は特に、国際公開第2010/092263号、仏国特許出願公開第2987416号明細書、仏国特許出願公開第3041054号明細書、欧州特許出願公開第2518279号明細書および欧州特許出願公開第2554874号明細書を含む。
【0003】
機械式減速歯車装置の役割は、機械システムの入力軸と出力軸との間の速度およびトルク比を修正することである。
【0004】
新世代のバイパスタービンエンジン、特に高希釈率を有するものは、ファンのシャフトを駆動するための機械式減速歯車装置を備える。通常、減速歯車装置は、動力タービンのシャフトの急速回転速度と呼ばれる回転速度を、ファンを駆動するシャフトのためのより遅い回転速度に変換することを目的とする。
【0005】
このような減速歯車装置は、サンギヤと呼ばれる中央ピニオンと、リングギヤと、サンギヤとリングギヤとの間で接触しているプラネタリギヤと呼ばれるピニオンとを備える。プラネタリギヤは、プラネタリキャリアと呼ばれるシャーシによって支持される。サンギヤ、リングギヤおよびプラネタリキャリアは、その回転軸がタービンエンジンの長手方向軸線Xと一致するので遊星歯車機構である。遊星歯車機構は、それぞれ、遊星軸の周りに同じ動作直径に亘って均等に分配された異なる回転軸を有する。これらの軸は長手方向軸線Xと平行である。
【0006】
いくつかの減速歯車装置のアーキテクチャがある。バイパスタービンエンジンの最新技術では、減速歯車装置は遊星型またはエピサイクリック型である。他の同様の用途では、いわゆる差動型または混合型アーキテクチャがある。
- 遊星型減速歯車装置では、プラネタリキャリアは固定され、リングギヤはサンギヤとは逆方向に回転する、装置の出力軸を構成する。
- エピサイクリック型減速歯車装置では、リングギヤは固定され、プラネタリキャリアはサンギヤと同じ方向に回転する、装置の出力軸を構成する。
- 差動型減速歯車装置では、どの要素も回転固定されていない。リングギヤは、サンギヤおよびプラネタリキャリアの回転方向とは反対の方向に回転する。
【0007】
減速歯車装置は、1つ以上の噛み合い段階を備えることができる。この噛み合いは、例えば、接触、摩擦、または磁界によって、様々な方法で保証される。平歯車装置または山歯歯車装置と同様に、接触によるいくつかのタイプの噛み合いがある。
【0008】
減速歯車装置は潤滑されなければならず、減速歯車装置の回転成分への潤滑油の入力は問題となり得る。油は、減速歯車装置がエピサイクリック型である場合には、プラネタリキャリアの回転不能のステータ部分と、回転する一体型ロータ部分とを具備する分配器によって減速歯車装置に運ばれる。分配器のステータ部分はロータ部分のシールと係合し、このシールは、ステータ部分が動作時に減速歯車装置に対して移動かつ傾斜し、ロータ部分の移動に追従しなければならない間、保証される必要がある。現在の技術では、ステータ部分がタービンエンジンのステータケーシングへのロッド接続によって回転不能にされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2010/092263号
【文献】仏国特許出願公開第2987416号明細書
【文献】仏国特許出願公開第3041054号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2518279号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2554874号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、この技術に対する、簡単で、効果的かつ経済的な改良を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、タービンエンジン、特に航空機用タービンエンジンの機械式減速歯車装置のプラネタリキャリアに関し、この減速歯車装置は、
- 回転軸を有するサンギヤと、
- サンギヤの周りに延在し、前記軸の周りの回転において不動であるように構成されるリングギヤと、
- サンギヤおよびリングギヤと噛み合い、前記軸の周りを回転するように構成された、プラネタリキャリアによって維持されるプラネタリギヤと、
- 回転不能なステータ部分と、前記プラネタリキャリアの回転する一体型ロータ部分とを備える潤滑油分配器と、
- リングギヤと一体の、少なくとも1つの環状オイルデフレクタと、を備え、
前記分配器の前記ステータ部分は、前記デフレクタと一体であることを特徴とする。
【0012】
従来技術では、デフレクタが油の排出およびリサイクルの観点から、半径方向外側に突出した油を捕捉して案内する単一の機能を有する。本発明では、デフレクタがこの機能を有し、さらに、作動分配器のステータ部分とロータ部分との間の相対運動および相対傾斜を制限するために、分配器のステータ部分を支持する別の機能を有し、これにより、特に、これらの部分の間の良好なシールを保証することが可能になる。
【0013】
以下に提案する解決策は、リングギヤがエンジンからの参照で固定されているエピサイクリック型減速歯車装置と互換性がある。それは、一体型であろうとケージキャリア/ケージ型であろうと、任意のタイプのプラネタリキャリアの任意のタイプの歯車装置(平歯車、山歯歯車)に適合し、転動要素(玉軸受、ころ軸受、円錐ころ軸受など)から構成される遊星歯車軸受、または流体軸受に適合する。
【0014】
本発明による減速歯車装置は、互いに個別に取られるか、または互いに組み合わされる、以下の特徴の内の1つまたは複数を備えることができる。
- デフレクタは、リングギヤの環状フランジに取り付けるための環状フランジを備える。
- リングギヤはそれぞれがギヤと取付ハーフフランジとを備えたリムを具備する2つのハーフリングギヤを備え、これら取付ハーフフランジは共にデフレクタのフランジに固定される。
- 前記リングギヤはそれぞれがギヤと取付ハーフフランジとを備えたリムを具備する2つのハーフリングギヤを備え、フェルールが前記ハーフリングギヤの一方のリムに固定されるか、又は前記ハーフリングギヤの一方と単一の部品として形成される。
- デフレクタは、ハーフリングギヤの周りに延在する外周部分を備える。
- デフレクタは、前記軸に対してほぼ半径方向に延在する内周部分を備える。
- デフレクタは、環状に列をなす貫通孔を備えることができる。
- デフレクタは、前記空間が形成される切頭錘台部分を備える。
- 分配器の前記ステータ部分は以下を備える。
- 油出口オリフィスを備え、分配器の前記ロータ部分と密封状態で係合するように構成された外側円筒面および、
- 環状キャビティを備える内部オイル回路であって、該環状キャビティが、一方では概して軸方向に延在し、前記キャビティを前記オリフィスに接続する列に接続され、他方では、前記キャビティから概して半径方向に延在する少なくとも1つの供給チャネルに接続されている。
【0015】
本発明は更に、上述したような機械式減速歯車装置を有するタービンエンジン、特に航空機用のタービンエンジンに関する。
【0016】
他の特徴および利点は、添付の図面を参照した本発明の非限定的な実施形態の以下の説明から明らかになるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を用いたタービンエンジンの概略的な軸方向断面図である。
図2】機械式減速歯車装置の軸方向部分断面図である。
図3】機械式減速歯車装置の別の軸方向部分断面図であり、本発明の先行技術を示す。
図4】機械式減速歯車装置の別の軸方向部分断面図であり、本発明を示す。
図5図4の減速歯車装置の斜視図である。
図6図4と同様の図であり、本発明の別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1はタービンエンジン1を示し、このタービンエンジン1は、通常、ファンSと、低圧圧縮機1aと、高圧圧縮機1bと、環状燃焼室1cと、高圧タービン1dと、低圧タービン1eと、排気管1hとを備える。高圧圧縮機1bと高圧タービン1dは高圧シャフト2によって接続され、高圧(HP)体を形成している。低圧圧縮機1aと低圧タービン1eは低圧シャフト3によって接続され、低圧(LP)体を形成している。
【0019】
ファンSは、減速歯車装置6により低圧シャフト3に連結されたファン軸4によって駆動される。この減速歯車装置6は、一般に遊星型またはエピサイクリック型である。
【0020】
以下の説明は、プラネタリキャリアとサンギヤとが回転可能であり、減速歯車装置のリングギヤが参照しているエンジンフレーム内に固定されている、エピサイクリック型の減速歯車装置に関する。
【0021】
減速歯車装置6は、タービンエンジンの前部に配置されている。本出願では、「上流」および「下流」という表現は、タービンエンジンの延長軸またはロータの回転軸に沿った、タービンエンジン内のガスの一般的な流れを指す。ここでは、エンジンケーシングまたはステータ5を形成する上流部分5aおよび下流部分5bを概略的に備える固定構造が、減速歯車装置6を取り囲むエンクロージャEを形成するように配置される。このエンクロージャEは、ここではファンシャフト4の通過を可能にする軸受のレベルのシールによって上流で閉じられ、LPシャフト3の通過のレベルのシールによって下流で閉じられる。
【0022】
図2はエピサイクリック型減速歯車装置6を示す。入口において、減速歯車装置6は、例えばインナースプライン7aを介してLPシャフト3に連結されている。従って、LPシャフト3は、サンギヤ7と呼ばれるプラネタリピニオンを駆動する。従来、回転軸がタービンエンジンの回転軸線Xと組み合わされたサンギヤ7は、回転軸線Xの周りに同じ直径に亘って均等に分配されたプラネタリギヤ8と呼ばれる一連のピニオンを駆動する。この直径は、サンギヤ7とプラネタリギヤ8との間の作動距離の2倍に等しい。プラネタリギヤ8の数は、一般に、この種の用途では3個~7個の間に規定される。
【0023】
全てのプラネタリギヤ8は、プラネタリキャリア10と呼ばれるシャーシによって支持されている。各プラネタリギヤ8は、それ自体の軸Yの周りを回転し、リングギヤ9と噛み合う。
【0024】
出口では、以下のことが起こる。
・ このエピサイクリック型歯車装置の構成では、すべてのプラネタリギヤ8がタービンエンジンの軸線Xの周りで回転してプラネタリキャリア10を駆動する。リングギヤはリングギヤキャリア12を介してエンジンケーシング又はステータ5に固定され、プラネタリキャリア10はファンシャフト4に固定されている。
・ 別の遊星歯車型装置の構成では、全てのプラネタリギヤ8がエンジンケーシングまたはステータ5に固定されたプラネタリキャリア10によって維持される。各プラネタリギヤはリングギヤを駆動し、このリングギヤはリングギヤキャリア12を介してファンシャフト4に連結されている。
【0025】
各プラネタリギヤ8は、例えばころ軸受または流体軸受型の軸受11を使用して回転自在に取り付けられている。各軸受11はプラネタリキャリア10の1つの軸10aに取り付けられ、全ての軸はプラネタリキャリア10の1つ以上の構造シャーシ10aを使用して互いに対して位置決めされる。プラネタリギヤの数に等しい数の軸10bおよび軸受11がある。操作、取付け、製造、制御、修理または交換の理由で、軸10bおよびシャーシ10aを数個の部品に分離することができる。
【0026】
上記と同じ理由で、減速歯車装置の歯車は、それぞれが中央平面Pを有する複数のはすばに分離することができ、この例では、2つのハーフリングギヤに分離されたリングギヤを有する、複数のはすばを有する減速歯車装置の動作を詳述する。
・ 前側ハーフリングギヤ9aは、リム9aaと、取付ハーフフランジ9abとからなる。リム9aaには、減速歯車装置の歯車の前側はすばが配置されている。この上流側はすばは、サンギヤ7の歯と噛み合うプラネタリギヤ8の歯と噛み合う。
・ 下流側ハーフリングギヤ9bは、リム9baと取付ハーフフランジ9bbとからなる。リム9baには、減速歯車装置の歯車の下流側はすばが配置されている。この下流側はすばは、サンギヤ7の歯と噛み合うプラネタリギヤ8の歯と噛み合う。
【0027】
はすばの幅がサンギヤ7、プラネタリギヤ8およびリングギヤ9の間で重なって噛み合うために変化する場合、はすばの幅は全て上流側はすばの中央平面Pおよび下流側はすばの別の中央平面Pを中心とする。2列のころを有するころ軸受の場合、各列の転動体も、好ましくは2つの中央平面上に中心を置くが、必ずしもその必要は無い。
【0028】
上流側リングギヤ9aの取付ハーフフランジ9abと下流側リングギヤ9bの取付ハーフフランジ9bbは、リングギヤの取付フランジ9cを形成する。リングギヤ9は、リングギヤの取付フランジ9cとリングギヤキャリアの取付フランジ12aとを、例えばボルト止めによって組み立てることにより、リングギヤキャリアに固定される。
【0029】
図2の矢印は、減速歯車装置6における油の進行を示している。油は分配器13内のステータ部5から、1つ以上のタイプの構造に特有であるので、この図では特定されていない種々の手段によって減速歯車装置6に到達する。分配器13は、インジェクタ13aおよびアーム13bを備えている。インジェクタ13aはギヤを潤滑する機能を有し、アーム13bは軸受を潤滑する機能を有する。油は、インジェクタ13aに向かって運ばれ、ギヤを潤滑するために端部13cを通って現れる。油もアーム13bに向かって運ばれ、軸受の入口ダクト13dを経て循環する。次いで、油は1つ以上の緩衝ゾーン10c内の軸を通って循環し、次いで、プラネタリギヤの軸受を潤滑するために、オリフィス10dを通って現れる。
【0030】
図3は、ロータ部分14とステータ部分15とを有する油分配器13のより具体的な実施例を示す。
【0031】
ロータ部分14はプラネタリキャリア10と一体で回転し、軸線Xを中心とするほぼ環状の形状を有する。この部分14は、プラネタリギヤ8の軸受11の入口ダクト13dに係合されたノズル14aと、緩衝ゾーン10cから油を供給するための油出口オリフィス16とを備えている。
【0032】
ロータ部分14は、その内周に、油入口オリフィス17を備えた内側円筒面14bを備えている。ロータ部分14は、一方ではオリフィス17に対して実質的に半径方向の第1のチャネル19によって、および実質的にL字形の第2のチャネル20によってオリフィス16に接続される環状チャンバ18をさらに備える。
【0033】
分配器13のステータ部分15は、図示されていないタービンエンジンのケーシングと一体である。実際には、部分15が減速歯車装置6の角度偏位を回避するために使用されるアームによってケーシングに接続される。
【0034】
ステータ部分15、は軸線X周りにほぼ環状の形状を有し、ロータ部分14に係合し、油出口オリフィス21を備える円筒形外面15aを具備する円筒形本体を備えている。表面14bおよび15aは、分配器13の内部油回路間のシールを保証するように作動するとき、互いに係合する。
【0035】
ステータ部分15の内部油回路は環状キャビティ22を備え、この環状キャビティ22は、一方では実質的に軸方向に延在してキャビティ22をオリフィス21に接続する油路23に接続され、他方では、キャビティ22から実質的に半径方向に延在する少なくとも1つの供給チャネル24に接続する。供給チャネル24は、油入り口オリフィス25を形成するために、ステータ部分15の外面に亘って半径方向外向きに開いている。
【0036】
図3の減速歯車装置6は、環状のオイルデフレクタ26を更に備えている。このデフレクタ26はリングギヤ9と一体であり、リングギヤ9が固定されているので、減速歯車装置のステータの一部を形成する。デフレクタ26は、薄い環状フェルールの形で提供される。デフレクタ26はリングギヤ9に固定され、特に、リングギヤのフランジ9cに取り付けるための環状フランジ27を含む半径方向外周縁部を備える。デフレクタ26はハーフリングギヤ9bの周りに、ここでは下流に延在し、固定されていない半径方向内周縁部を備える。
【0037】
軸方向断面において、デフレクタ26は、ほぼ湾曲した形状を有する。デフレクタ26は、作動中に、遠心回転されて半径方向外向きに放出された油を捕捉し、この油をリングギヤ9のフランジ9cに送り、そこでこの油を排出て再循環させることができるように構成されている。
【0038】
しかしながら、上述したように、分配器13のロータ部分14とステータ部分15との間のシールを保証するために、いかなる相対運動も制限されなければならず、また(ステータ部分15の周りのロータ部分14の回転の外側で)これらの部分のいかなる相対傾斜も防止されなければならない。
【0039】
本発明は、この問題を克服することを可能にするものであり、図4および図5の第1の実施形態を提案し、この実施形態では、デフレクタ26が、該デフレクタ26のステータ部分15を支持するための追加の機能をデフレクタ26に与えるように修正される。減速歯車装置のステータ要素、この場合はリングギヤ9によるステータ部分15の保守は、上述の相対運動および傾斜を制限するか、または防止することさえ可能にする。
【0040】
このために、デフレクタ26は延長され、ここではリングギヤ9からステータ部分15まで延在している。デフレクタ26は図3のものと同様の半径方向外周部分26aを備え(かつリングギヤ9に取り付けるためのフランジ27を備え)、さらに、それに加えて2つの追加部分、すなわち、半径方向内周部分26cおよび中間部分26b(部分26a、26cの間に位置する)を備える。
【0041】
中間部分26aは、通常、切頭錐台形状を有し、図示の例では、部品26の質量および可撓性を適合させるために使用される貫通孔28の環状の列を備える。これらの孔は、部品26の正しい動作のためには必ずしも必要ではない。
【0042】
内側部分26cは軸線Xに対して実質的に半径方向に延在し、任意の適切な手段、例えば、溶接又は締まり嵌めによってステータ部分15に固定することができる。変形例では、デフレクタ26がステータ部分15との単一部品として形成することができる。
【0043】
図示の例では、ステータ部分15が下流側からロータ部分14に係合し、その入口オリフィス25が減速歯車装置6の下流側に位置する場合、このステータ部分15へのデフレクタ26の接続は、このオリフィス25のすぐ上流側に位置することができる。
【0044】
図6の実施形態では、従来技術のデフレクタ26は保存されており、追加のデフレクタ26’が減速歯車装置6に装備されている。
【0045】
デフレクタ26’は、図4および図5のデフレクタ26と同様の部分26b’、26c’を備える。デフレクタ26’の周縁部は、ここではリングギヤのフランジに固定されていないが、ハーフリングギヤの一方、ここでは下流9bのリム9baに直接接続されている。デフレクタ26’は、図示の例のように、溶接によってリム9baに固定することもできるし、このリムを有する単一部品として形成することもできる。
【0046】
デフレクタ26の内周自由縁部はデフレクタ26’の外周を取り囲み、デフレクタ26’から低い半径方向隙間29だけ離間している。
【0047】
したがって、本発明によって提案される解決策は、2つの機能を1つの同じ部分に統合することからなり、アーキテクチャの設計をより単純にする。さらに、デフレクタは減速歯車装置の角度ずれを回避するために、従来技術の上述のアームよりも効果的な手段である。
【符号の説明】
【0048】
1 タービンエンジン
2 高圧シャフト
3 低圧シャフト
4 ファン軸
5 ステータ
6 減速歯車装置
7 サンギヤ
8 プラネタリギヤ
9 リングギヤ
10 プラネタリキャリア
11 軸受
12 リングギヤキャリア
13 潤滑油分配器
14 ロータ部分
15 ステータ部分
19 第1のチャネル
20 第2のチャネル
21 オリフィス
22 環状キャビティ
26 オイルデフレクタ
27 環状フランジ
E エンクロージャ
S ファン
X タービンエンジンの回転軸線 Y プラネタリギヤの軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6