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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240917BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20240917BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20240917BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
G03G21/00 538
G03G21/14
G03G15/20 555
G03G21/16 104
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020017440
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2020134935
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019028862
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野島 浩二
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-060106(JP,A)
【文献】特開2017-120284(JP,A)
【文献】特開2015-219432(JP,A)
【文献】特開2018-185399(JP,A)
【文献】特開2004-117738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 21/14
G03G 15/20
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型剤を含有するトナーを用いてトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により形成されたトナー像を転写ニップ部にてシートに転写する転写部と、
前記転写部により転写されたトナー像を定着ニップ部にてシートに熱定着する定着部と、
前記転写ニップ部と前記定着ニップ部との間のシート搬送路に対向された吸気口を有するダクトと、
前記ダクトに設けられたフィルタと、
前記定着部のシート出口近傍のエアを排出するための第一ファンと、
前記吸気口から前記ダクトに取り込んだエアを外部へ排出するための第二ファンと、
前記第一ファンと前記第二ファンを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、シートに画像を形成する信号が入力された場合、前記定着部が目標温度に達する前に前記第二ファンの動作を開始し、前記第二ファンの動作を開始してから一枚目のシートが前記定着ニップ部を通り過ぎるまでの間に、前記第一ファンの動作を開始する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着部は、前記定着ニップ部が前記転写ニップ部よりも上方に位置するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
記定着部よりも上方にシートを搬送するシート搬送機構を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第一ファンは、一枚目のシートに対する画像形成動作の開始時又は開始後に、動作を開始する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
シートを収容するシート収容部を備え、
前記第一ファンは、一枚目のシートを前記シート収容部から前記画像形成部へ搬送開始したとき又は搬送開始した後に、動作を開始する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記定着部は、前記定着ニップ部にてシートを挟持搬送する一対の回転体と、前記回転体を加熱する加熱部とを有し、
前記制御部は、前記定着部の周辺温度をTa(℃)、前記回転体の表面温度をTb(℃)、離型剤が気化する温度をTws(℃)としたとき、
Tb(℃)≧Tws(℃)
Tws-Ta(℃)>所定温度(℃)
の両方を満たす場合に前記第二ファンを動作させる、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
記制御部は、連続画像形成の間に一時的に画像形成を中断して前記画像形成部が調整用画像を形成して画像形成装置の調整を行う動作を実行する場合に、前記第一ファンの出力を低下又は停止させ、画像形成の再開に伴い前記第一ファンの出力を上げる、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
記制御部は、連続画像形成の間に一時的に画像形成を中断して前記画像形成部が調整用画像を形成して画像形成装置の調整を行う動作を実行する場合に、前記第二ファンの出力を維持する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、画像形成の再開に伴い、一枚目のシートが前記定着ニップ部を通過し終わるまでに前記第一ファンの出力を上げる、
ことを特徴とする請求項又はに記載の画像形成装置。
【請求項10】
シートに画像を形成する信号が入力された場合に、前記制御部は前記第一ファンの出力を停止させる、
ことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記定着部は、円筒形状のフィルムと、前記フィルムの内部に設けられたヒータと、前記フィルムと前記定着ニップ部を形成するための回転体とを有し、
記フィルムを介した前記ヒータの熱により、前記トナー像がシートに定着される、
ことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記ダクトは、前記転写ニップ部と前記定着ニップ部との間において、前記シート搬送路に対して前記フィルム側に設けられている、
ことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記第一ファンは、シートの搬送方向において前記定着ニップ部よりも下流側に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記第二ファンは、前記定着部の加熱の開始と同時又は前記定着部への加熱の開始後に開始される、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記第二ファンは、前記定着部の加熱の開始後であって、前記定着部の温度が上昇している期間に開始される
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記第一ファンは、一枚目のシートに対する画像形成動作の開始後に開始される、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリあるいは複合機などの電子写真技術を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は装置本体内に、未定着のトナー像が形成された記録材に対し熱と圧力を加えることにより、記録材(シートとも呼ぶ)にトナー像を定着させる定着装置を備えている。定着装置は、定着ベルトと、定着ベルトに当接して加圧するための加圧ローラとを有し、この定着ベルトと加圧ローラとの間に形成される定着ニップ部を、記録材が加圧及び加熱された状態で挟持搬送されることにより、記録材にトナー像が定着される。
【0003】
ところで、トナーが定着ベルトに多量に付着してしまうと、画像不良の原因となることから、これを避けるべく、トナーとしてワックス(離型剤)を含むものが用いられている。この場合、トナーが加熱されると、ワックスが溶解して定着ベルトの表面を覆い、そのワックスの離型作用により、その後にトナーが定着ベルトに付着し難くなる。ただし、定着ベルトに付着したワックスは、定着ベルトの表面温度が一定温度以上の高温になると気化(ガス化)し始める。そして、気化したワックスが周囲の空気により冷やされると、数nm~数百nm程度の微粒子状のダストとなって装置本体内を浮遊し得る。この微粒子状のダストは粘着性を有しており、より周囲の温度が高くなるといくつかが集まってより大きな塊状のダストとなって、装置本体内の各所に付着し固着する虞がある。そこで、従来では、これらのダストを回収するための濾過機構を備えた画像形成装置が提案されている(特許文献1)。濾過機構は、装置本体内の空気を吸引するための吸引ファンと、吸引される空気に含まれるダストを濾過するフィルタとを有している。
【0004】
また、画像形成装置には、装置本体内から外部へ排気を行う排気ファンを有する排気機構が設けられている。即ち、定着装置によるトナー像の定着の際には記録材が加熱されるので、場合によっては記録材に含まれる水分が気化され得る。そして、気化された水分が冷やされると、装置本体内に結露が生じる。こうした結露を防止するために、排気機構によって装置本体内から外部へ排気できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-120284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の装置の手法では、装置本体内に生じたダストと水蒸気の両方を適切に装置本体内から除去するという点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたもので、装置本体内に生じるダストと水蒸気の両方を適切に除去することができる画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る画像形成装置は、離型剤を含有するトナーを用いてトナー像を形成する画像形成部と、前記画像形成部により形成されたトナー像を転写ニップ部にてシートに転写する転写部と、前記転写部により転写されたトナー像を定着ニップ部にてシートに熱定着する定着部と、前記転写ニップ部と前記定着ニップ部との間のシート搬送路に対向された吸気口を有するダクトと、前記ダクトに設けられたフィルタと、前記定着部のシート出口近傍のエアを排出するための第一ファンと、前記吸気口から前記ダクトに取り込んだエアを外部へ排出するための第二ファンと、前記第一ファンと前記第二ファンを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、シートに画像を形成する信号が入力された場合、前記定着部が目標温度に達する前に前記第二ファンの動作を開始し、前記第二ファンの動作を開始してから一枚目のシートが前記定着ニップ部を通り過ぎるまでの間に、前記第一ファンの動作を開始する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置本体内に生じるダストと水蒸気の両方を適切に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図。
図2】(a)定着装置を示す断面図、(b)はベルトユニットを示す分解斜視図。
図3】(a)定着ニップ部の近傍を示す断面図、(b)定着ベルトの層構成を示す一部断面図、(c)加圧ローラの層構成を示す断面図。
図4】定着ローラと加圧ローラとの加圧について説明する概略図。
図5】制御部を説明するための制御ブロック図。
図6】(a)ダストの生成過程を説明する図、(b)ダストの付着現象を説明する図、(c)トナーの加熱温度と周囲の空間温度の関係によって、ダストの有無と粒子の大きさが決まることを説明するためのグラフ。
図7】(a)ダスト発生温度を測定するための実験装置を示す模式図、(b)ヒータ温度とダスト濃度の関係を示すグラフ。
図8】(a)定着処理の進行に伴い拡大する定着ベルト上のワックス付着領域の様子を示す図、(b)ワックスの付着領域とダストの発生領域の関係を示す図。
図9】定着ベルトの周辺の気流の流れを説明する図。
図10】(a)ダスト放出量の測定装置について説明する模式図、(b)ダスト放出量の測定結果を示すグラフ。
図11】(a)ダストの瞬間エミッションレートと過冷却度の時間推移を示すグラフ、(b)ダストの放出が終わる時間と過冷却度の関係について説明するグラフ。
図12】フィルタユニットと排気機構について説明する概略図。
図13】(a)排気機構を示す分解斜視図、(b)フィルタユニットを示す斜視図、(c)記録材の通過位置を説明する図。
図14】(a)フィルタユニットを示す分解斜視図、(b)フィルタユニットの動作を説明する図。
図15】第一実施形態のファン制御処理を示すフローチャート。
図16】調整動作が入っていない場合における、(a)定着ベルトの表面温度の時間推移を示す図、(b)第二ファンの動作シーケンスを示す図、(c)第一ファンの動作シーケンスを示す図。
図17】調整動作が入った場合における、(a)定着ベルトの表面温度の時間推移を示す図、(b)第二ファンの動作シーケンスを示す図、(c)第一ファンの動作シーケンスを示す図。
図18】調整動作とダスト放出の関係を説明するグラフであり、(a)調整動作中に第一ファンを停止した場合、(b)調整動作中に第一ファンを停止しなかった場合。
図19】第二実施形態のファン制御処理を示すフローチャート。
図20】(a)定着ベルトの表面温度の時間推移を示す図、(b)過冷却度の時間推移を示す図、(c)空間温度の時間推移を示す図。
図21】第二実施形態における、(a)定着ベルトの表面温度の時間推移を示す図、(b)第二ファンの動作シーケンスを示す図、(c)第一ファンの動作シーケンスを示す図。
図22】第三実施形態のファン制御処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一実施形態]
<画像形成装置>
本実施形態について説明する。まず、本実施形態の画像形成装置について図1を用いて説明する。図1に示す画像形成装置100は、装置本体100a内に4色(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)の画像形成部PY、PM、PC、PKを中間転写ベルト8に対向させて配置した、中間転写タンデム方式のカラー画像形成装置である。画像形成装置100で利用可能な記録材P(シート)としては、例えば普通紙、厚紙、ラフ紙、凹凸紙、コート紙等の用紙、OHPシート、プラスチックフィルム、布など、といった様々な種類のシート材が挙げられる。画像形成装置100は、制御部500によって制御される。制御部500については後述する。なお、本実施形態の場合、画像形成部PY~PK、一次転写ローラ5Y~5K、中間転写ベルト8、二次転写内ローラ76、二次転写外ローラ77により、記録材Pにトナー像を形成する画像形成ユニット200が構成されている。また、カセット72、給紙ローラ73、搬送パス74、レジストローラ75は、給紙部800を構成している。そして、本実施形態の画像形成装置100は、記録材Pを垂直方向に搬送する縦搬送型の装置であり、シート搬送機構としての給紙部800により定着装置103を通過させた記録材Pが定着装置103よりも上方に搬送されるようになっている。
【0012】
画像形成装置100の記録材の搬送プロセスについて説明する。記録材Pは、シート収容部としてのカセット72内に積載される形で収納されており、給紙ローラ73により画像形成タイミングにあわせて1枚ずつ搬送パス74に給紙される。また、不図示の手差しトレイや積載装置に積載された記録材Pが1枚ずつ搬送パス74に給紙されてもよい。記録材Pは搬送パス74の途中に配置されたレジストローラ75へ搬送されると、レジストローラ75により記録材Pの斜行補正やタイミング補正が行われた後に二次転写部T2へと送られる。二次転写部T2は、対向する二次転写内ローラ76及び二次転写外ローラ77により形成される転写ニップ部である。転写ローラとしての二次転写内ローラ76は、記録材Pに対するトナー像の転写部を形成するために中間転写ベルト8を内側から圧接する。二次転写部T2では、二次転写外ローラ77に対し電源70により二次転写電圧が印加され、二次転写外ローラ77と二次転写内ローラ76との間に電流が流れることにより、トナー像が中間転写ベルト8から記録材Pへ二次転写される。
【0013】
上記した二次転写部T2までの記録材Pの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部T2まで送られて来る画像の形成プロセスについて説明する。まず、画像形成部PY~PKについて説明する。ただし、画像形成部PY~PKは、現像装置4Y、4M、4C、4Kで用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外、ほぼ同一に構成される。そこで、以下では代表してイエローの画像形成部PYを例に説明し、その他の画像形成部PM、PC、PKについては説明を省略する。なお、図示の都合上、後述の現像容器41Yと現像ローラ42Yについては画像形成部PYのみに符号を付してある。
【0014】
画像形成部PYは、主に感光ドラム1Y、帯電装置2Y、現像装置4Y、及び感光ドラムクリーナ6Y等から構成される。回転駆動される感光ドラム1Yの表面は、帯電装置2Yにより予め表面を一様に帯電され、その後、画像情報の信号に基づいて駆動される露光装置3によって静電潜像が形成される。次に、感光ドラム1Y上に形成された静電潜像は、現像装置4Yによるトナー現像を経て可視像化される。現像装置4Yは、現像剤を収容した現像容器41Y、現像剤を担持して回転する現像ローラ42Y(現像スリーブとも呼ぶ)を有し、現像ローラ42Yに対し現像電圧が印加されることにより、静電潜像をトナー像に現像する。その後、画像形成部PYと中間転写ベルト8を挟んで対向配置される一次転写ローラ5Yにより所定の加圧力及び一次転写電圧が与えられ、感光ドラム1Y上に形成されたトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。一次転写後の感光ドラム1Y上に僅かに残る転写残トナーは、感光ドラムクリーナ6Yにより除去され、再び次の作像プロセスにそなえる。
【0015】
中間転写ベルト8は、テンションローラ10、二次転写内ローラ76、及び張架ローラとしてのアイドラローラ7a、7bによって張架され、図中矢印R2方向へと移動するように駆動される。本実施形態の場合、二次転写内ローラ76は中間転写ベルト8を駆動する駆動ローラを兼ねている。上述の画像形成部PY~PKにより処理される各色の作像プロセスは、中間転写ベルト8上に一次転写された移動方向上流の色のトナー像上に順次重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト8上に形成され、二次転写部T2へと搬送される。なお、二次転写部T2を通過した後の転写残トナーは、転写クリーナ装置11によって中間転写ベルト8から除去される。
【0016】
以上、それぞれ説明した搬送プロセス及び作像プロセスをもって、二次転写部T2において記録材Pとフルカラートナー像のタイミングが一致し、中間転写ベルト8から記録材Pにトナー像が二次転写される。その後、記録材Pは定着装置103へと搬送され、定着装置103により加圧及び加熱されることにより、トナー像が記録材P上に溶融固着される。こうしてトナー像が定着された記録材Pは、排出ローラ78により排出トレイ601上に排出される。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、フィルタユニット50、冷却機構300、排気機構350を有する。これらフィルタユニット50、冷却機構300、排気機構350については、後述する(図12乃至図14(b)参照)。また、本実施形態の画像形成装置100は、装置本体100a内(装置本体内)の温度を検出するための機内温度センサ65と、装置本体100a外の温度(外気温)を検出するための機外温度センサ66とを有している。なお、本明細書において特に断りなく単に上流、下流と言う場合は、定着装置103における記録材Pの搬送方向に関し上流、下流を指すものとする。
【0018】
<定着装置>
次に、本実施形態の定着装置103について、図2(a)乃至図4を用いて説明する。本実施形態の定着装置103は、円筒に形成された無端状の定着ベルト(以下、単にベルトと記す)を用いてトナー像を記録材Pに熱定着させることが可能な、低熱容量の定着装置である。なお、ベルト105はローラ形状の定着ローラであってもよい。
【0019】
図2(a)に示すように、定着部としての定着装置103は、ベルトユニット101と、加圧回転体としての加圧ローラ102と、加熱部としてのプレート状のヒータ101aと、筐体110とを備えている。筐体110には、開口したシート入口400と開口したシート出口600とが設けられている。このシート入口400とシート出口600により、ベルトユニット101と加圧ローラ102との協働によりそれらの間に形成される定着ニップ部101bに記録材Pを通過させることができる。本実施形態では、シート入口400がシート出口600よりも重力方向下方に配置されているため、記録材Pが重力方向下方から上方に向けて搬送される(所謂、縦パス搬送)。シート出口600よりも下流側には、定着ニップ部101bを通過した記録材Pの搬送をガイドするガイド15が設けられている。
【0020】
ベルトユニット101は、加圧ローラ102に当接してベルト105と加圧ローラ102との間に定着ニップ部101bを形成し、定着ニップ部101bにおいてトナー像を記録材Pに定着させるユニットである。ベルトユニット101は、図2(a)、図2(b)に示すように、複数の部材で構成された組み立て体である。ベルトユニット101は、面状のヒータ101aと、ヒータ101aを保持するヒータホルダ104と、ヒータホルダ104を支持する加圧ステー104aとを有する。また、ベルトユニット101は、エンドレス状のベルト105と、ベルト105の幅方向(回転軸線方向)の一端側と他端側とをそれぞれ保持するフランジ106L、106Rとを有する。
【0021】
ヒータ101aは、ベルト105の内面に当接してベルト105を加熱する。本実施形態ではヒータ101aとして、通電によって発熱するセラミックヒータを用いている。セラミックヒータは、図示を省略したが、細長で薄板状のセラミック基板と、この基板面に具備された抵抗層とを備えており、抵抗層に通電することで全体が速やかに発熱する低熱容量のヒータである。このヒータ101aを保持するヒータホルダ104は、横断面が半円弧状をしており、ベルト105の周方向の形状を規制している。ヒータホルダ104の材料には、耐熱性の樹脂を用いることが望ましい。
【0022】
加圧ステー104aは、ヒータ101a及びヒータホルダ104を長手方向で均一にベルト105に押し当てる部材である。加圧ステー104aは、高い加圧力がかかっても撓みにくい材質であることが望ましい。本実施形態では、加圧ステー104aの材質としてステンレス鋼であるSUS304を用いた。加圧ステー104a上には、サーミスタTHが設けられている。サーミスタTHは、ベルト105の温度に応じた信号を制御部500に出力する。
【0023】
ベルト105は、記録材Pに接触して記録材Pに熱を付与する回転体である。ベルト105は、薄膜のフィルム部材によって円筒状(シリンダー形状)に形成されたベルト(フィルム)であり、全体的に可撓性を有している。ベルト105は、ヒータ101a、ヒータホルダ104、加圧ステー104aを外側から覆うように設けられている。
【0024】
フランジ106L、106Rは、ベルト105の幅方向端部を回転可能に保持する一対の部材である。フランジ106L、106Rは、図2(b)に示すように、それぞれフランジ部106aとバックアップ部106bと被押圧部106cとを有する。フランジ部106aはベルト105の端面を受け止めてベルト105の回転軸線方向への移動を規制する部分であり、ベルト105の径よりも大きな外形に形成されている。バックアップ部106bは、ベルト105の端部内面を保持してベルト105の円筒形状を保つ部分である。被押圧部106cはフランジ部106aの外面側に設けられており、後述する加圧バネ108L、108R(図4参照)による押圧力を受ける。
【0025】
次に、一対の回転体としてのベルト105(第一回転体)と加圧ローラ102(第二回転体)の構成、並びに定着ニップ部101bについて、図3(a)乃至図4を用いて説明する。ベルト105は、複数の層によって構成されている。図3(b)に示すように、ベルト105は内側から外側に順に、基層105aと、プライマ層105bと、弾性層105cと、離型層105dを備えている。基層105aは、ベルト105の強度を確保するための層である。基層105aはSUS(ステンレス)等の金属製のベース層であり、熱ストレスと機械的ストレスに耐えられるように、例えば30μm程度の厚みに形成されている。プライマ層105bは、基層105aと弾性層105cを接着するための層である。プライマ層は基層105aの上に、プライマを5μm程度の厚みで塗布することによって形成されている。弾性層105cは、定着ニップ部101bにてトナー像を圧接する際に変形して離型層105dをトナー像に密着させる役目を果たす。弾性層105cとしては、耐熱ゴムを用いることができる。離型層105dは、トナーや紙粉がベルト105に付着するのを防止するための層である。離型層105dとしては、離型性と耐熱性に優れたPFA等のフッ素系樹脂を用いることができる。離型層105dは、伝熱性を考慮して例えば20μmの厚さに形成されている。
【0026】
図3(a)に示すように、加圧ローラ102は、ベルト105の外周面に当接してベルト105との間に定着ニップ部101bを形成するためのニップ形成部材である。加圧ローラ102は、複数の層によって構成されたローラ部材である。図3(c)に示すように、加圧ローラ102は、金属(アルミや鉄)の芯金102aと、シリコンゴム等で形成された弾性層102bと、弾性層102bを被覆する離型層102cとを有している。離型層102cは、PFA等のフッ素系樹脂を材料するチューブであり弾性層102b上に接着されている。なお、加圧ローラ102はベルト状の加圧ベルトであってもよい。
【0027】
図4に示すように、芯金102aの一端側は軸受113を介して筐体110の一端側の側板107Lに回転可能に支持されている。芯金102aの他端側は軸受113を介して筐体110の他端側の側板107Rに回転可能に支持されている。このとき、加圧ローラ102のうち、弾性層102bと離型層102cを有する部分は、側板107Lと側板107Rの間に位置する。芯金102aの他端側はギアGに接続されており、ギアGが駆動モータ(不図示)から駆動を受けると、加圧ローラ102は矢印R102(図3(a)参照)の方向に回転駆動される。
【0028】
そして、ベルトユニット101は、加圧ローラ102に対して近接離間する方向にスライド移動できるように側板107Lと側板107Rとに支持されている。詳細には、フランジ106L、106Rが側板107Lと側板107Rのガイド溝(不図示)に嵌め合わさるように設けられている。そして、バネ支持部109Lと109Rに支持された加圧バネ108L、108Rにより、フランジ106L、106Rの被押圧部106cは、加圧ローラ102に向かう方向に所定の押圧力で押圧されている。
【0029】
上記の押圧力により、フランジ106L、106R、加圧ステー104a、ヒータホルダ104の全体が加圧ローラ102の方向に付勢される。ここで、ベルトユニット101はヒータ101aを有する側が加圧ローラ102を向いている。そのため、ヒータ101aは、ベルト105を加圧ローラ102に向けて押圧する。このような構成により、ベルト105及び加圧ローラ102が変形し、ベルト105と加圧ローラ102との間に定着ニップ部101b(図3(a)参照)が形成される。
【0030】
このように、ベルトユニット101と加圧ローラ102が密着した状態で加圧ローラ102が回転すると、定着ニップ部101bにおけるベルト105と加圧ローラ102との摩擦力により、ベルト105に回転トルクが作用する。ベルト105は、加圧ローラ102に対して従動回転する。このときのベルト105の回転速度は、加圧ローラ102の回転速度にほぼ対応している。つまり、本実施形態の場合、加圧ローラ102はベルト105を回転駆動する駆動ローラとしての機能を担っている。なお、ベルト105の内周面とヒータ101aとが摺動するため、ベルト105の内面にグリスを塗布して摺動抵抗を低減することが望ましい。
【0031】
<制御部>
図1に示すように、画像形成装置100は制御部500を備えている。制御部500について、図5を用いて説明する。ただし、制御部500には図示した以外にも画像形成装置100を動作させるためのモータや電源、上記の画像形成部PY~PK等の各種機器が接続されているが、ここでは発明の本旨でないのでそれらの図示及び説明を省略する。
【0032】
制御部500は、画像形成動作などの画像形成装置100の各種制御を行うものであり、例えばCPU(Central Processing Unit)501と、メモリ502とを有する。メモリ502は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などにより構成されている。メモリ502は、画像形成装置100を制御するための各種プログラムや各種データが記憶される。CPU501はメモリ502に記憶されている各種プログラムを実行可能であり、各種プログラムを実行して画像形成装置100を動作させ得る。本実施形態の場合、CPU501は、メモリ502に記憶されている「画像形成ジョブ処理(プログラム)」(不図示)や「ファン制御処理(プログラム)」(後述する図15図19図22参照)を実行可能である。なお、メモリ502は、各種プログラムの実行に伴う演算処理結果などを一時的に記憶することもできる。
【0033】
画像形成ジョブとは、記録材Pに画像形成するプリント信号に基づいて、画像形成開始してから画像形成動作が完了するまでの一連の動作のことである。即ち、画像形成を行うにあたり必要となる予備動作(所謂、前回転)を開始してから、画像形成工程を経て、画像形成を終了するにあたり必要となる予備動作(所謂、後回転)が完了するまでの一連の動作のことである。具体的には、プリント信号を受けた後の前回転時(画像形成前の準備動作)から、後回転(画像形成後の動作)までのことを指し、画像形成期間、紙間を含む。
【0034】
制御部500には入出力インタフェースを介して、入力装置310が接続されている。入力装置310は、ユーザによる画像形成ジョブなどの各種プログラムの開始指示や各種データ入力などが可能な、例えば操作パネルやパーソナルコンピュータ等の外部端末などである。入力装置310から画像形成ジョブの開始指示がなされた場合、CPU501はメモリ502に記憶されている「画像形成ジョブ処理」を実行する。CPU501は、「画像形成ジョブ処理」の実行に基づいて画像形成装置100の動作を制御する。
【0035】
また、制御部500には入出力インタフェースを介して、上記したサーミスタTH、機内温度センサ65、機外温度センサ66、ヒータ101aが接続されている。制御部500は、サーミスタTHの検出結果に基づきヒータ101aの温度を調整し得る。さらに、制御部500には入出力インタフェースを介して、給紙部800、後述する第一ファン63、第二ファン61、第三ファン62、第四ファン64(図13(a)、図13(b)参照)が接続されている。本実施形態の場合、制御部500は後述の「ファン制御処理」(図15図19図22参照)の実行により、機内温度センサ65や機外温度センサ66の検出結果に基づき、給紙部800、第一ファン63、第二ファン61、第四ファン64などを制御し得る。
【0036】
<定着処理>
ここで、制御部500による画像形成ジョブ時における定着装置103の制御(定着処理と呼ぶ)と定着動作について、図2(a)を参照しながら説明する。制御部500は入力装置310から画像形成ジョブの開始指示を受け付けると、給紙部800により記録材Pを上述の二次転写部T2に向かって搬送させ、記録材Pの先端を二次転写部T2に突き当てた状態で記録材Pを待機させる。一方で、制御部500は駆動モータ(不図示)により加圧ローラ102を回転方向(矢印R102)に所定の速度で回転駆動させ、ベルト105を従動回転させる。また、制御部500は、電源回路(不図示)を介してヒータ101aに通電を開始する。この通電により発熱したヒータ101aは、定着ニップ部101bにおいて、内面がヒータ101aに密着して摺動しながら回転するベルト105を加熱する。加熱されたベルト105は、初期温度Ts(後述する図20(a)参照)から上昇し次第に高温になっていく。ここで、サーミスタTHは加圧ステー104aの頂面に配設され、回転するベルト105の内面に弾性的に接触しているため、サーミスタTHは回転するベルト105の温度を検出し、その検出結果を制御部500に送信している。制御部500はベルト105の表面温度Tbが目標温度Tpとなるように(図20(a)参照)、サーミスタTHの出力する信号に基づいてヒータ101aへの通電を制御する。本実施形態の場合、目標温度Tpは約170℃である。
【0037】
ベルト105が目標温度Tpまで加熱され定着装置103の定着準備が完了し、且つ制御部500が画像形成部PY~PKを画像形成開始可能な状態にあると判断した時、制御部500は画像形成部PY~PKを動作させる。また、制御部500は画像形成部PY~PKを動作させつつ、二次転写部T2に待機していた記録材Pを定着装置103に向かって搬送させる。この時、制御部500は画像形成開始を意味する信号(本発明ではITOP信号と称する)を発する。ITOP信号が発生してから、カセット72から記録材Pの搬送が開始される。そして、ITOP信号が発生してから一枚目の記録材Pの先端が定着ニップ部101bに到達するまでの時間は、常に一定である(例えば1秒以下)。このITOP信号は、後述するようにファンの動作制御に用いられる。
【0038】
二次転写部T2でトナー像を転写された記録材Pは、定着装置103に向かって搬送され、定着ニップ部101bによって挟持搬送される。記録材Pは定着ニップ部101bに挟持搬送される過程で、ベルト105を介してヒータ101aの熱が付与される。記録材P上の未定着トナー像はヒータ101aの熱によって溶融され、定着ニップ部101bにかかっている圧力によって記録材Pに定着される。定着ニップ部101bを通過した記録材Pは、ガイド15によって排出ローラ78へと案内されて、排出ローラ78により排出トレイ601上に排出される(図1参照)。なお、一般に画像形成装置100の制御部500は画像形成ジョブの開始指示を受けた後に、最適な画像を形成するために必要な条件が整っているか否かを自動的に判断し、必要に応じて画像濃度調整動作を行う。この動作は、中間転写ベルト8上に調整用画像を形成して、その濃度を濃度センサ(不図示)でチェックし、現像に関わる設定値を調整することにより行う。また他にも、記録材Pの位置を検出してシート搬送機構の動作を自動調整することもある。こうした調整動作は十数秒を要し、ベルト105が目標温度Tpまで加熱された後に行われることもある。本実施形態の調整動作は、所定時間以上の動作時間を有する動作とする。本実施形態では、連続画像形成ジョブの実行中に調整動作が行われる場合があり、その場合、画像形成動作の中断が十数秒以上といった所定時間に亘って続くものである。目標温度Tpに到達したからといって、記録材Pが一定時間後にかならず定着ニップ部101bに到達するわけではない。記録材Pが定着ニップ部101bに到達する時間が決定される時刻は、調整動作が完了して、ITOP信号が発生される時刻である。
【0039】
上記のように、本実施形態の調整動作は、連続画像形成を行っている間に開始される場合がある。例えば、制御部500は100枚の記録材Pに対し連続で画像形成する連続画像形成ジョブの開始指示を受けて画像形成を開始し、20枚の記録材Pに対する画像形成をした時点で上記の調整動作を要すると判定する場合がある。その場合、制御部500は実行中の画像形成を一時的に停止(中断)させる。そして、制御部500は調整動作の完了後、画像形成部PY~PKが画像像形成開始可能であるか否かを判定し、画像像形成開始可能であると判定した場合に、上述したITOP信号を発して画像形成を再開する。その後、制御部500は残りの記録材P(ここでは80枚)に対する画像形成を完了させるまで画像形成を続ける。
【0040】
<ダストについて>
定着装置103では、記録材Pに高温のベルト105を接触させることで記録材Pにトナー像が定着される。この場合に、上記した定着処理を行った際に、記録材Pが定着ニップ部101bを通過するときに、一部のトナーSがベルト105に付着してしまうことがある(オフセット現象などと呼ばれる)。ベルト105に付着したトナーSは、画像不良の原因となる。そこで、本実施形態ではベルト105へのトナーSの付着を抑制するために、例えばパラフィンからなるワックス(離型剤)を含有するトナーSを用いている。このトナーSは、加熱されるとワックスが溶解して表面から染み出すため、定着処理時にトナーSに熱が加えられてワックスが溶解すると、その溶解したワックスによってベルト105の表面が覆われる。表面がワックスによって覆われると、ワックスの離型作用によりベルト105に対しトナーSが付着し難くなる。
【0041】
なお、本実施形態では純粋なワックスの他に、ワックスの分子構造を含んだ化合物も含めてワックスと呼んでいる。例えば、トナーの樹脂分子と炭化水素鎖等のワックス分子構造が反応した化合物などである。また、離型剤としては、ワックスの他にシリコンオイル等の離型作用を有する物質を用いてもよい。
【0042】
ただし、ベルト105に付着したワックスの一部は、ベルト105の表面温度が所定温度以上になると気化(ガス化)する。そして、気化したワックス成分が空気中で冷やされると固形化し、粒径が数nm~数百nm程度の微粒子状のダスト(UFP:Ultra Fine Particles)が生じる。この微粒子状のダスト(UFP)が生じる現象は核生成と呼ばれ、核生成は熱によって気化したワックスがより低い温度環境にさらされて過冷却されることにより生じる。過冷却の程度は、揮発物を徐々に加熱した時にダストが発生し始める温度であるダスト発生温度Tws(図7(b)参照)と、周囲において核生成が生じている空間の空間温度Taとの差分である過冷却度ΔTによってあらわすことができる(式(1))。
過冷却度ΔT(℃)=ダスト発生温度Tws(℃)-空間温度Ta(℃)・・・式(1)
【0043】
過冷却度ΔTが大きいほど、気化したワックスは急速に冷却されて核生成を生じやすくなる。これは、所定体積の空間において、より多くの箇所で核生成が起きることを意味する。つまり、過冷却度ΔTが大きいほど、より多くのダスト(UFP)が生じる。そして、過冷却度ΔTが小さくなるにつれて、核生成が起きる箇所が減る。また、その際には、生成した核に微粒子状のダストが凝集していくため、より大きい塊のダストとなる。即ち、過冷却度ΔTが大きい場合に小さい粒径のダスト(UFP)が数多く発生し、過冷却度ΔTが小さい場合に数は少ないが大きい粒径のダストが生じ得る。
【0044】
ダストは粘着性を有するワックスであるため、装置本体100a内の各所に付着しやすい。例えば、定着装置103の熱に起因する上昇気流によってダストがガイド15や排出ローラ78の周辺まで運ばれた場合には、ガイド15や排出ローラ78にダストが付着して固着してしまう。それを取り除くため、清掃間隔の頻度を多くする必要があり、メンテナンスの負荷が大きくなってしまう。
【0045】
<ダストの性質>
上記したダストの性質について、図6(a)乃至図6(c)を用いて説明する。図6(a)はダストの生成過程を説明する図、図6(b)はダストの付着現象を説明する図、図6(c)はトナーの加熱温度と周囲の空間温度の関係によって、ダストの有無と粒子の大きさが決まることを説明するためのグラフである。
【0046】
図6(a)に示すように、加熱源20aの上に沸点が150℃以上200℃以下の高沸点物質20を置き、200℃前後に加熱すると、高沸点物質20から揮発物21a(ガス)が発生する。揮発物21aは周囲の空気に触れると過冷却されて空気中で凝縮して、数nm程度の粒径の微小ダスト21b(UFP)に変化する。そして、微小ダスト21bの周囲に揮発物21aが集まって凝集する上に、また微小ダスト21b同士が衝突することにより、微小ダスト21bはより大きな塊のダスト21cへと成長する。この時、空気中における揮発物21aの凝集/ダスト化は、図6(c)に示すように、加熱温度が低く、空間温度が高いほど、即ち図中右下の方向(過冷却度が小さくなる方向)に向かうほど阻害される。これは、加熱温度が低い(過冷却度→小)とダスト生成の種となる揮発物21aの揮発量が少なくなり、空間温度が高い(過冷却度→小)と揮発物21aの飽和蒸気圧が上がり、揮発物21a(ガス分子)は気体状態を維持し易くなるためである。つまり、過冷却度ΔTが小さいほどダスト(UFP)の生成が阻害される。図6(c)中の線L1と線L2は、ダスト生成現象が変わる領域を模式的に表したものである。加熱温度と空間温度が、図6(c)に示す線L1より右下の領域に入ったとき、ダスト(UFP)は生成され難くなる。
【0047】
反対に、空気中におけるダスト生成は、加熱温度が高く、空間温度が低いほど、即ち図中の線L1より左上の方向に向かう(過冷却度→大)ほど促進される。これは、加熱温度が高いほどダスト生成の種となるガスの揮発量が多くなり、空間温度が低いほど揮発物21aの飽和蒸気圧が下がり、揮発物21a(ガス分子)の粒子化を促進するためである。つまり、過冷却度ΔTが大きいほどダスト生成が促進され、多数のダストが生成される。さらに、過冷却度ΔTが大きくなって線L2より左上の領域に入ると、ダストのサイズはより小さくなるが個数が増す。これは、過冷却度ΔTが大きくなると、核生成する箇所も増えるためである。
【0048】
次に、図6(b)において、微小ダスト21b(UFP)とより大きなダスト21cを含んだ空気αが、気流22に沿って壁23に向かう場合を考える。この時、微小ダスト21bよりも大きなダスト21cの方が壁23に付着しやすく、拡散され難い。これは、ダスト21cは慣性力が大きく、壁23に勢いよく衝突するためである。したがって、環境を高温に保ってダストの大粒径化を促進すればするほど、ダストは定着装置内に付着し易くなり(多くは定着ベルトに付着)、結果として定着装置外に拡散され難くなる。
【0049】
このように、微粒子状のダスト(UFP)は高温下で合体が促進されて大粒径化する性質と、大粒径化によって周辺物体に付着し易くなるという二つの性質を持っている。なお、ダストの合体のし易さは、ダストの成分と温度、濃度に依存する。例えば、粘着しやすい成分が高温になって柔らかくなり、また高濃度下でダスト同士が衝突する確率が上がると、合体し易くなる。
【0050】
<ダスト発生温度>
揮発物を徐々に加熱した時に微粒子状のダスト(UFP)が発生し始める温度であるダスト発生温度Twsは過冷却度ΔTの算出に用いられる、トナーに固有の物性値である。このダスト発生温度Twsについて、図7(a)及び図7(b)を用いて説明する。図7(a)はダスト発生温度を測定するための実験装置を示す模式図であり、図7(b)はヒータ温度とダスト濃度の関係を示すグラフである。
【0051】
トナーに固有のダスト発生温度Twsは、内容積0.5mのチャンバを用いて測定される。測定条件として、チャンバは温度23±2℃、湿度50±5%、換気率4回/hに設定され、内部に設置されたヒータ101aは常温(23±2℃)からスタートして3℃/分の温度上昇レートで温度上昇される。ヒータ101a上には、ワックスを含有するトナーが載せられている。トナーに含まれるワックスが気化して発生するダストは、チャンバに接続されたナノ粒子粒径分布計測器「FMPS Model 3091(TSI製)」によって測定される。
【0052】
ナノ粒子粒径分布計測器の測定結果として得られたヒータ温度とダスト濃度の関係から(図7(b)参照)、ダストが発生しない領域(ここでは170℃以下)のダスト濃度の平均値と標準偏差を算出する。そして、測定系のダスト濃度ばらつきを「平均値+3×標準偏差」として計算する。このとき、測定系ばらつきである「平均値+3×標準偏差」を超えたダスト濃度を初めて検出した時の温度を、ダスト発生温度とする。ここでは、179℃がダスト発生温度(℃)であった。なお、ダストが発生するダスト発生温度は、上記した図6(c)から明らかなように、チャンバ内の空間温度に依存する。空間温度が低い程、ダストが発生する時の加熱温度も低くなる。上記測定条件により測定したダスト発生温度は、図6(c)にあてはめると線L1上の点D1であらわされる。
【0053】
ただし、画像形成装置100では、実際のダスト発生温度Twsが図7(a)に示したダスト発生温度の測定装置を用いて測定した温度に比べて、例えば約20℃低くなる。これは、画像形成装置100において、ダストはベルト105に付着したワックスから発生し、画像形成装置100においてダストが発生するベルト105の近傍の空間の温度は、ヒータ101aの上方の空間温度より低くなり易いからである。即ち、加熱されたベルト105の表面近傍の空間温度は、ベルト105の回転に伴って発生する気流によって外気から冷気を引き込むため、ベルト105から離れた箇所の空間温度に比べて低い温度になりやすい。一方で、図7(a)の装置において、ヒータ101a上方の空間温度は、熱対流による気流(ベルト105の回転による気流より弱い)によって冷やされるため、温度の低下幅はベルト105に比べて緩やかである。その結果、ベルト105の表面近傍の空間温度は、画像形成装置100がチャンバ内の温度と同じ23℃の環境下に置かれたとしても、ヒータ101aの上方の空間温度よりも低くなる。
【0054】
図6(c)を用いて説明すると、加熱されたベルト105の表面近傍の空間温度は、線L1上において点D1より空間温度が低い方向、即ち線L1上を左下の方向にシフトした温度になる。その結果、ダストが発生する温度も下がる。この温度低下幅は、発明者の実験によれば、本実施形態においては約20℃であった。上記の温度低下幅を予め定めた調整温度値Z(℃)とすると、画像形成装置100のダスト発生温度Tws(℃)は一般式として式(2)で表される。
画像形成装置のダスト発生温度Tws(℃)=実験装置のダスト発生温度(℃)-Z(℃)・・・式(2)
【0055】
<ダスト発生箇所>
次に、ダストの発生箇所について、図3(b)を参照しながら図8(a)乃至図9を用いて説明する。図8(a)は、定着処理の進行に伴い拡大するベルト105上のワックス付着領域を示す図である。図8(b)は、ワックスの付着領域とダストの発生領域の関係を示す図である。図9は、ベルト105の周辺の気流の流れを説明する図である。
【0056】
本発明者等が検証したところ、ベルト105に付着したワックスに起因して生じる微粒子状のダストD(UFP)は、定着ニップ部101bの下流側よりも定着ニップ部101bの上流側においてダスト放出量が多いことが分かった。以下そのメカニズムについて説明する。
【0057】
定着ニップ部101bを通過した直後のベルト105の表面(離型層105d)は記録材Pによって熱を奪われているため、その温度は100℃程度まで低下している。一方、ベルト105の内面(基層105a)の温度は、ヒータ101aとの接触によって高温に保たれている。そのため、ベルト105が定着ニップ部101bを通過した後、高温に保たれた基層105aの熱が、プライマ層105bと弾性層105cを経由して離型層105dに伝わっていく。そのため、ベルト105の表面(離型層105d)の温度は、ベルト105が回転する過程で、定着ニップ部101bを通過した後に上昇してゆき、定着ニップ部101bの入口側付近で最も高い温度に達する。
【0058】
他方、記録材P上のトナーSから染み出したワックスは、定着処理が行われるときにベルト105とトナー像の界面に介在する。その後、ワックスの一部はベルト105に付着する。図8(a)に示すように、記録材Pの先端側の一部が定着ニップ部101bを通過した段階では、トナーSからベルト105に移行したワックスは領域135aに存在している。なお、領域135aにおけるベルト105の表面温度は、ベルト105の表面の熱が定着ニップ部101bにおいて記録材Pに奪われるため、低くなっている。ベルト105の表面温度が低いと、ワックスが揮発し難いため、領域135aではダストDがほとんど発生しない。
【0059】
記録材Pが定着ニップ部101bを進行すると、ワックスはベルト105の略全周(135b)に存在した状態となる。このうち、領域135cではベルト105の表面温度が高温になる。これは、定着ニップ部101bにおいてヒータ101aに加熱されたベルト105裏面の熱が、熱伝導によってベルト105の表面に移行するからである。また、領域135aのベルト105と比べて、領域135cのベルト105は定着ニップ部101bを通過してからの経過時間が長い。経過時間が長い分、熱伝導によってベルト105の表面温度がより高くなる。このように領域135cではベルト105の表面温度が高いので、ワックスが揮発し易い。そして、領域135cから揮発したワックスが凝縮して、微粒子状のダストDが発生する。上記のことから、領域135cの近傍、即ち定着ニップ部101bの入口付近(上流側)には多くのダストDが存在する。
【0060】
また、定着ニップ部101bの入口付近のダストDは、図9に示すエアフローによって矢印W方向に拡散していく。即ち、図9に示すように、ベルト105がR105方向に回転していると、ベルト105の表面付近にはR105方向に沿ったエアフローF1が発生する。また、記録材PがX方向に沿って搬送されると、記録材Pの搬送方向Xに沿ったエアフローF2が発生する。さらに、定着ニップ部101bの近傍においてエアフローF1とエアフローF2が衝突すると、定着ニップ部101bから離れていく方向(W方向)に沿ってエアフローF3が発生する。後述するフィルタユニット50(図12参照)は、エアフローF3によってダストDが運ばれていく方向であるW方向に配置されている。
【0061】
なお、ダストDが定着ニップ部101bの入口付近で発生して、図9におけるW方向、即ち図1においてフィルタユニット50が配置されている方向に運ばれる現象は、記録材Pが搬送されている間に起きる現象である。制御部500がプリント開始命令信号を受け取った後、第一枚目の記録材Pが搬送されるまでの間、ベルト105は定着動作を直ちに開始できるように加熱される。この時、ベルト105上には、前回プリント時に定着ニップ部101bで記録材Pを定着する際に、記録材P上のトナー像から移行したワックスが残留している。そして、残留ワックスからダストDが発生する。その場合はベルト105の熱が記録材Pに奪われないため、ベルト105の外周における定着ニップ部101bの下流付近、即ち図8(a)における領域135aの温度が高くなり、そこからダストDが発生する。このダストDはフィルタユニット50が配置されている方向(図1参照)に向かわず、第一ファン63によって吸引され、画像形成装置100の外部に排出される。
【0062】
なお、領域135aにおいてダストDが発生する現象は、上述の調整動作が入った時に生じ得る。調整動作が入ると記録材Pの搬送が停止し、ベルト105の熱が記録材Pに奪われなくなるためである。調整動作の直前にトナー像からベルト105に移行したワックスは領域135aにおいて揮発し、ダストDを発生させる。
【0063】
<ダスト放出量>
次に、定着装置103で発生するダストの放出量について、図10(a)及び図10(b)を用いて説明する。図10(a)はダスト放出量の測定装置について説明する模式図であり、図10(b)は、ダスト放出量の測定結果を示すグラフである。ダスト放出量は、ドイツ環境ラベル「ブルーエンジェルマーク」に則った試験装置(チャンバ容積:6m、換気率:2m/h)を用い、ナノ粒子粒径分布計測器(FMPS Model 3091(TSI製))により「RAL-UZ205」に従い測定した。概要を説明すると、チャンバ内に画像形成装置(以下、プリンタ)を設置し、5分間バックグラウンドを測定した後におよそ10分間に亘って画像形成を行い、測定開始から70分間チャンバ内のダスト濃度を測定する。
【0064】
そして、解析も同様に「RAL-UZ205」に従う。まず、チャンバの換気等による粒子消失係数β(1/s)を計算する。粒子消失係数βは、図10(b)に示すように、プリント終了後に粒子が減少している領域の一点を時刻taとし、「ta+25分」を時刻tbとする。この時のダスト濃度をそれぞれC1、C2とすると、粒子消失係数βは数1によって求められる。
【数1】
【0065】
また、ダスト濃度Cp(t)、測定時間t、連続する2つのデータ点間の時間差Δt、粒子消失係数β、チャンバ容積Vkとして、数2に従って、ダストの瞬間エミッションレート(瞬間ER:PER(t)(1/s))を求める。
【数2】
【0066】
上記の数2で表される瞬間ER(PER(t))は粒子の消失を計算に含んでいるため、プリンタが時間tにおいて単位時間あたりに放出したダストの量を示す。数2をプリント時間全域にわたって時間積分すれば、プリント中に放出したダストの放出量を求めることができる。
【0067】
<瞬間エミッションレートと過冷却度との関係>
図11(a)に、画像形成装置100を約11分間に亘って連続動作させた場合における、瞬間ERと過冷却度ΔTの時間推移の一例を示す。なお、この時のベルト105の表面温度は温度Bである。また、ここではプリント開始前60秒を基準として0秒にしている。
【0068】
図11(a)に示すように、瞬間ERはプリント開始後(60秒後)から増えていき、約120秒を頂点に次第に減少し、最終的にはほぼ「0」となる。プリント中であるにも関わらずダストが減少していくのは、過冷却度ΔTの減少によるものである。上記したように、ダストの放出量は、瞬間ER(数2参照)を時間積分することにより得られる。このとき、瞬間ERをプリント開始から積分していき、ダストの放出量が80%、90%、100%に到達したときの経過時間と過冷却度ΔTを求める。以下はその結果である。
【0069】
ダスト放出量が80%である場合は、経過時間207秒(プリント開始後147秒)、過冷却度ΔT120.9℃であった。ダスト放出量が90%である場合は、経過時間256秒(プリント開始後196秒)、過冷却度ΔT116.4℃であった。ダスト放出量が100%である場合は、経過時間395秒(プリント開始後335秒)、過冷却度ΔT109.6℃であった。これらはベルト105の表面温度Tbが温度Bの場合であり、温度Aの場合も同様な方法でダストの放出量が80%、90%、100%に到達したときの、経過時間と過冷却度ΔTを求めることができる。
【0070】
図11(b)に、ベルト105の表面温度Tbを温度A、温度Bと変えた時に得られた、画像形成ジョブの開始後からの経過時間(プリント開始前60秒を除いた時間)と過冷却度ΔTの関係を示す。なお、温度Aは温度Bよりも低い温度である。ダスト放出量がそれぞれ80%、90%、100%である場合の経過時間と過冷却度ΔTを比較すると、ベルト105の表面温度Tbを温度AからBに変えた場合、ダストの放出に要する時間は増えるが、過冷却度ΔTはほぼ一定である。つまり、過冷却度ΔTを測定することで、ダストの発生終了時点を正確に予測することができる。ここでダストが80%以上100%以下放出された時の過冷却度を、第一温度(ΔT_stop)とする。
【0071】
ダスト放出量が80%である場合は第一温度が120.9℃であり、ダスト放出量が90%である場合は、第一温度が116.4℃であり、ダスト放出量が100%である場合は、第一温度が109.6℃であった。この値は、トナーのワックスの沸点やワックス揮発物の凝集のし易さといったワックスの物性が大きく変わらない限り、ほぼ一定である。
【0072】
そして、ワックスの物性は一定の範囲内に留めなければならない。その場合、上記第一温度(ΔT_stop)の値は、画像形成装置の構成やトナーが変わっても、大きく変わることはない。それ故、上述した測定方法と測定条件に従って過冷却度ΔTを求めれば、異なるトナーを用いた場合や、異なる構造の画像形成装置を用いた場合でも、上記第一温度(ΔT_stop)の値に基づいてダストの放出終了時点を予測することができる。
【0073】
図1に示すように、本実施形態の場合、定着装置103の上流側(搬送方向上流側)には離型剤(ワックス)を含有するトナーが加熱されることにより生じる上記したダストを回収するために、フィルタユニット50が設けられている。また、フィルタユニット50に隣接して、定着装置103の上流側を冷却するために、冷却機構300が設けられている。他方、定着装置103の下流側(搬送方向下流側)には、記録材Pに含まれる水分が定着時の加熱により気化することに起因して生じる結露を防止するために、装置本体100a内の空気を外部へ排気する排気機構350が設けられている。これらフィルタユニット50、冷却機構300、排気機構350について、図12乃至図14(b)を用いて説明する。
【0074】
<フィルタユニット>
まず、フィルタユニット50について説明する。フィルタユニット50は、図12に示すように、記録材Pの搬送方向において、ベルトユニット101と二次転写外ローラ77との間に位置している。あるいは、記録材Pの搬送方向において、定着装置103の定着ニップ部101bと二次転写部T2との間に位置している。
【0075】
濾過機構としてのフィルタユニット50は、ダストDを含む空気を吸入することで、ダストDの回収を行う。図14(a)に示すように、フィルタユニット50は、ダストDを回収するためのフィルタ51と、空気を吸引するための第二ファン61と、ダクト52とを有している。ダクト52は、定着装置103のシート入口400(図12参照)近傍の空気がフィルタ51を通過するように空気を案内する。
【0076】
フィルタユニット50のダクト52は、シート入口400近傍の空気を機外に向けて案内するための案内部であり、二次転写部T2と定着ニップ部101bとの間の記録材Pのシート搬送路に対してベルト側(フィルム側)に設けられている。ダクト52は、シート入口400近傍の吸気口52aと、シート入口400近傍から離れた排気口52eを備えている。吸気口52aは定着ニップ部101bと二次転写部T2の間に位置する開口であり、搬送パス74において二次転写部T2と定着ニップ部101bとの間の記録材Pのシート搬送路に対向されている。また、吸気口52aは定着ニップ部101b側を向くように設けられている。このような構成により、吸気口52aはエアフローF3(図9参照)によって運ばれてくるダストDを受け止めることができる。排気口52eは、吸気口52aよりもその長手方向の外側において、ダクト52の複数の側面のうち吸気口52aとは反対側の側面に設けられている。上述したように排気口52eはファン吸気口61aに接続されている。
【0077】
フィルタユニット50の第二ファン61は、吸気口52aからダクト52内に取り込んだエアを外部へ排出するためのものである。図14(a)に示すように、第二ファン61はファン吸気口61aと排気口61bを有しており、ファン吸気口61aから排気口61bに向けてエアフローを発生させる。ファン吸気口61aは、ダクト52の排気口52eに接続され、ダクト52内の空気を吸引するための開口である。排気口61bは、装置本体100a(図1参照)の外側に向けて設けられ、ファン吸気口61aから吸引した空気を機外に向けて排出するための開口である。なお、本実施形態では、第二ファン61としてブロワファンを用いている。ブロワファンは高静圧を特徴としており、フィルタ51のような通気抵抗体があっても一定の風量(吸気量)を確保することができる。
【0078】
<フィルタ>
図14(b)に示すように、ダクト52は吸気口52aを覆うようにフィルタ51を取り付け可能である。詳細には、図14(a)に示すように、ダクト52は吸気口52aの縁部52cと、湾曲部52dを備えるリブ52bとを有している。縁部52cとリブ52bによって支持されるように、フィルタ51をダクト52に固定すると、吸気口52aはフィルタ51によって覆われる。本実施形態のフィルタ51は、耐熱性接着剤によって縁部52c及びリブ52bに隙間なく接着されている。そのため、吸気口52aを通過する空気はフィルタ51を必ず通過する。
【0079】
さらに、フィルタ51は縁部52cの湾曲部52dに沿って接着されている。したがって、フィルタ51はダクト52に湾曲した状態で保持される。本実施形態の場合、フィルタ51は、その短手方向の中央部がダクト52の内側に向かって突出している。言い換えるならば、フィルタ51の短手方向中央部は、定着ニップ部101bから離間する方向に湾曲している。このようにフィルタ51が湾曲した状態で保持されることで、限られたスペースの中でフィルタ51の表面積を増大させてフィルタ51によるダストの回収効率を向上できるので好ましい。
【0080】
上記のフィルタ51は、吸気口52aを通過する空気からダストを濾過(回収、除去)する濾過部材である。ベルト105に付着したワックスに起因して生じるダストを回収する場合、フィルタ51は静電不織布フィルタであることが望ましい。静電不織布フィルタとは静電気を保持した繊維を不織布状に形成したもので、ダストを高効率で濾過することができる。ただし、静電不織布フィルタは繊維が高密度であるほど濾過性能が高いが、半面、圧力損失が大きくなりやすい。この関係は、静電不織布の厚さを厚くした場合も同様である。また繊維の帯電強度(静電気の強さ)を高くすれば、圧力損失を一定にしたまま濾過性能を向上させることができる。静電不織布の厚さと繊維密度、及び繊維の帯電強度は、フィルタに求められる濾過性能に応じて適宜設定することが望ましい。
【0081】
本実施形態のフィルタ51に用いられる静電不織布は、通過風速が「10cm/s」のときにおける通気抵抗が約40Pa、回収率が95%程度になるように、繊維密度と厚さ、帯電強度が設定されている。なお、排気空気中のトナーを濾過しようとした場合、静電不織布は通過風速が10cm/sにおいて通気抵抗が10Pa以下で用いられる。したがって、本実施形態では、通気抵抗が比較的大きな静電不織布からなるフィルタ51が用いられる。
【0082】
フィルタ51に使用する静電不織布の通気抵抗は、使用が想定される通過風速(本実施形態の場合、「5cm/s以上70cm/s以下」)において30Pa以上150Pa以下のものが望ましい。静電不織布の通気抵抗が150Paよりも大きいと、プリンタ1に搭載可能な排気用のファンでは必要な風速を得ることが困難である。静電不織布の通気抵抗が30Pa未満であると、フィルタ51を通過する空気の風速について長手方向でムラが生じ易い。
【0083】
フィルタ51を通過する空気の風速が速ければ速いほど、フィルタ51を通過する単位時間あたりの空気の量は多くなる。しかしながら、フィルタ51を通過する空気の風速が速ければ速いほど、シート入口400の近傍の空気の温度を低下させやすい。そのため、ダストの回収効率を高める場合、フィルタ51を通過する空気の風速は適度な速さであることが望ましい。具体的には、フィルタ51を通過する際の空気の風速は5cm/s以上70cm/s以下であることが望ましい。本実施形態の場合、フィルタ51におけるダストの回収率は風速「5cm/s」においてほぼ100%、風速70cm/sにおいて約70%である。そのため、この範囲の風速であれば高い効率でダストを回収することができる。なお、第二ファン61は、フィルタ51を通過する空気の風速を「5cm/s」から「70cm/s」の範囲で調節することができる。
【0084】
フィルタ51は、記録材Pの搬送方向と直交する方向(定着ニップ部101bの長手に沿った方向)を長手とする細長い形状をしている。このような形状により、定着ニップ部101bの近傍で生じるダストを長手方向の広い範囲で回収できるようにしている。
【0085】
図13(c)の記録材P上に斜線で示した領域は、所定の幅サイズの記録材Pを使用した場合の画像形成が可能な領域Wp-maxを示している。なお、実際には図13(c)で見えている記録材Pの裏面側に画像が形成される。図13(c)に示すように、領域Wp-maxは記録材Pの幅サイズ以下の領域である。この領域において記録材P上にトナー像が形成されることから、この領域においてベルト105にワックスが付着して、この領域においてワックスからダストが生じ得る。
【0086】
本実施形態の定着装置103は、ベルト105の幅方向の中央を基準に記録材Pを搬送する中央基準搬送を採用しており、装置に導入可能な最小幅サイズの記録材Pにおける領域Wp-maxでは記録材Pの幅サイズによらずダストが生じやすい。そのため、ダストを効率良く回収するには、少なくともこの領域においてダストを確実に回収できるようにするのが望ましい。したがって、フィルタ51の寸法Wfは、最小幅サイズの記録材Pにおける領域Wp-maxよりも長いことが望ましい。あるいは、フィルタ51の寸法Wfは、最小幅サイズの記録材Pよりも長いことが望ましい。
【0087】
また、ダストは、装置に導入可能な最大幅サイズの記録材Pにおける領域Wp-maxにおいて発生し得る。そのため、ダストを確実に回収するためには、この領域の全域でダストを回収できるようにするのが望ましい。したがって、フィルタ51の寸法Wfは、最大幅サイズの記録材Pにおける領域Wp-maxよりも長いことが望ましい。あるいは、フィルタ51の寸法Wfは、最大幅サイズの記録材Pよりも長いことが望ましい。複数幅サイズの記録材Pを利用可能な場合であって、最も利用頻度の高い幅サイズの記録材Pが分かっている場合は、その記録材Pの領域Wp-maxにおいて「Wf>Wp-max」であることが望ましい。
【0088】
なお、本実施形態において、使用可能な記録材Pの最大サイズはA3サイズであり、使用可能な記録材Pの最小サイズはハガキサイズである。記録材Pの幅サイズ(搬送方向に交差する幅方向のサイズ)は、A3サイズが297mm、ハガキサイズが100mmである。上記の領域Wp-maxは、記録材Pの幅方向の全領域から端部の空白領域(非画像領域)3mmを除いた領域である。そのため、A3サイズの記録材Pにおける領域Wp-maxは291mm(=297-3-3)であり、ハガキサイズの記録材Pにおける領域Wp-maxは94mm(=100-3-3)である。
【0089】
フィルタ51は、図12に示すように、ベルト105の近傍に配置されている。また、フィルタ51は定着装置103に進入する記録材Pと対向する位置関係にある。ダストDの回収効率を考えた場合、フィルタ51は定着ニップ部101bにできるだけ近いことが望ましい。しかしながら、フィルタ51とベルト105を近づけ過ぎると、ベルト105からの輻射によりフィルタ51が熱的に劣化し、濾過性能が低下してしまう虞がある。そのため、フィルタ51は、定着ニップ部101bに対して適度な距離に配置されていることが望ましい。具体的には、フィルタ51とベルト105の間隔(最短距離)は5mm以上であることが望ましい。一方で、ダストDを確実に回収するために、フィルタ51は、定着ニップ部101bを基準として100mm以内に配置されていることが望ましい。
【0090】
上述したようにフィルタ51をダクト52の吸気口52aに取り付けると、フィルタ51に向けて空気を案内する構成が不要となる。そのため、フィルタユニット50を小型にすることができる。また、上述したように、長手方向に延びるフィルタ51をベルト105の近傍に配置すると、ダクトの吸気口52aにおける空気の通過風速が長手方向で均一になる。換言すると、吸気口52aに通気抵抗体であるフィルタ51を配置することで、フィルタ51の背面領域の全域を一定の負圧に保つことができる。即ち、図14(b)に示すポイント53a、53b、53cの負圧は、略同じ値になっている。これは、フィルタ51の通気抵抗が、ダクト52内の通気抵抗よりも格段に大きいためである。ポイント53aと53bと53cの負圧が同レベルであれば、フィルタ51に吸引される空気F4の風速は、フィルタ51の全面にわたって均一化される。風速が均一化された結果、フィルタユニット50は、ベルト105から発生するダストDを効率良く(最小限の風量で)回収することができる。
【0091】
フィルタユニット50による吸気量が小さいと、ベルト105の近傍に流れ込む空気の量も小さくなる。そのため、ベルト105の近傍の空気の温度低下を小さくすることができる。その結果、ダストの発生を抑制することができ、ダストの回収効率も向上する。また、ベルト105の温度低下を抑えられるため省エネにも有利である。
【0092】
<冷却機構>
冷却機構300について説明する。図12及び図13(b)に示すように、冷却機構300は冷却ダクト42と第四ファン64とを有する。冷却ダクト42は開口した冷却吸気口42aと排気口42bとを有し、冷却吸気部である第四ファン64が途中に設けられている。冷却吸気口42aは、図12に示すように、記録材Pの搬送方向に関しフィルタユニット50と定着装置103との間に配置される。また、冷却吸気口42aは、図13(b)に示すように、ベルト105の長手方向の中央付近に位置する。その位置から長手方向全域の熱気を吸引するため、また冷却ダクト42はフィルタ51のような通気抵抗体を持たないために、第四ファン64は風量が大きい軸流ファンが用いられる。冷却ダクト42は、定着装置103と二次転写部T2の間にある熱気を排出することにより、二次転写部T2の温度上昇を防ぐ役割を持つ。
【0093】
<排気機構>
排気機構350について説明する。水分を含む記録材Pが定着装置103で加熱されると、記録材Pに含まれていた水分が気化して水蒸気が発生する。この水蒸気によって、装置本体100a内における定着装置103より下流側の空間Cの湿度が高い状態になる(図1参照)。湿度が高いと結露を発生させ易いため、ガイド15上に水滴が付着しやすくなる。搬送されてきた記録材Pにガイド15上の水滴が付着すると、画像不良の発生を招く。そのため、記録材Pから発生する水蒸気によって空間Cの湿度が高くならないように、この空間Cの空気を排気するのがよい。そこで、本実施形態では、定着装置103のシート出口近傍の空気を排出するために、図13(a)に示すような、第一ファン63と第三ファン62とを有する排気機構350が、定着装置103の下流側に設けられている。
【0094】
次に、装置本体100a内における空気の流れ、エアフローについて説明する。ダストを効率良く回収するためには、装置本体100a内におけるエアフロー、特に定着装置103の周辺のエアフローについて適切に制御することが望ましい。そこで、定着装置103の周辺のエアフローに関わる構成について詳細に説明する。
【0095】
<第二ファン>
上述したフィルタユニット50において、第二ファン61の風量を大きくすると、空気を多く吸引できる一方で、シート入口400の近傍の空気の温度を低下させやすい。空気温度の低下は過冷却度ΔTを増加させ、ダスト発生を促進する。そのため、第二ファン61の風量は、適切に設定される必要がある。風量「20L/min」から「100L/min」が適切な範囲であり、本実施形態では「50L/min」に設定している。
【0096】
なお、フィルタ51はダストの他に、記録材Pから発生する紙粉や記録材P上の未定着トナー像から極微量飛散する飛散トナーを吸い込むことによって劣化する。フィルタ51へのダスト、紙粉、飛散トナーの付着は、フィルタ51の素材である静電不織布の帯電強度を低下させるためである。そのため、第二ファン61は、ダストが発生していない場合は停止していることが望ましい。
【0097】
<第一ファン、第三ファン>
排気機構350の第三ファン62は、ガイド15に結露が発生することを防止するためのファンである。第三ファン62はプリンタ1の外部から空気を機内に引き込んで、ガイド15に空気を吹き付けることで、空間C(図1参照)の湿度を低下させる。詳細には、第三ファン62から空気が吹き付けられることにより、ガイド15近傍の水蒸気が空間Cに拡散するため、ガイド15近傍の局所的な湿度の上昇が抑制される。第三ファン62のみを用いる場合であっても、ガイド15における結露を抑制可能である。しかしながら、そうした場合には水蒸気の排出先が排出ローラ78近傍の隙間のみとなるので、空間Cにおける湿度は次第に上昇してしまう。そこで、本実施形態では、さらに第一ファン63によってガイド15近傍の空気を装置本体100a外に排出できるようにしている。この場合、第一ファン63と第三ファン62とは同時に制御されることで、結露防止のためのエアフローを装置本体100a内に形成させる。即ち、第三ファン62により空気吹き付けによって空間Cから追い出された水蒸気は、排出トレイ601に向け装置本体100a外に排出される他に、第一ファン63によっても装置本体100a外に排出されるようになる。なお、第一ファン63と第三ファン62により形成されるエアフローは、定着装置103で発生する熱を排熱する役目も有している。
【0098】
<第四ファン>
冷却機構300の第四ファン64は、図12に示すように、二次転写部T2付近の温度上昇を防ぐため、記録材Pの搬送方向に関し定着装置103と二次転写部T2との間の空間の空気を排気する作用を有する。二次転写部T2において中間転写ベルト8と二次転写外ローラ77の温度が上がりすぎると、トナーが柔らかくなって転写プロセスに影響を及ぼすため、第四ファン64はこれらの部材を冷却するために周辺の空気を排気する。第四ファン64の風量は、第二ファン61の「50L/min」と比べて大きい「500L/min」程度に設定されている。ただし、第四ファン64によりベルト105の周辺空間の温度を下げた場合には、上記した過冷却度ΔTが増大する。この過冷却度ΔTの増大はダストの増加につながるため、第四ファン64は過冷却度ΔTが十分に小さくなった時のみ動作させるべきである。なお、過冷却度ΔTが大きい時、ベルト105の周辺の温度は低くなることが、上記した式(1)よりわかる。そのため、過冷却度ΔTが大きい場合には、第四ファン64を停止させたとしても問題にならない。
【0099】
<ファン制御処理>
本実施形態では、第一ファン63と第二ファン61の動作開始タイミングを制御することにより、フィルタ51によるダストの除去を効果的に行うとともに、定着装置103の周辺の結露を防止できるようにしている。即ち、ベルト105に付着したワックスにより生じる微粒子状のダストが第一ファン63により装置本体外に排出されないように、第一ファン63よりも先に第二ファン61を動作させてフィルタ51により微粒子状のダストを回収させる。その後、第一ファン63を動作させて排気を行わせる。ただし、その際に第一ファン63の動作開始を遅くし過ぎると、装置本体100a内に結露が生じやすくなる。そこで、本実施形態では、微粒子状のダストの排出抑制と結露防止とを両立すべく、第一ファン63と第二ファン61の動作開始タイミングを調整している。特に、本実施形態は定着装置103が冷えた状態から立ち上げられて(例えば電源オンに伴う起動時など)、画像形成ジョブを行う場合などに有効である。
【0100】
以下、第一実施形態のファン制御処理について、図1図5図12乃至図13(c)等を参照しながら図15乃至図18(b)を用いて説明する。図15に示すファン制御処理は、制御部500(詳しくはCPU501)により画像形成装置100の電源オンにあわせて開始される。
【0101】
図15に示すように、制御部500は入力装置310から画像形成ジョブの開始指示があるか否かを判定する(S1)。画像形成ジョブの開始指示がない場合(S1のNo)、制御部500は本ファン制御処理の進行を待機する。他方、画像形成ジョブの開始指示がある場合(S1のYes)、制御部500は第二ファン61の動作を開始する(S2)。上述したように、ダストDは一枚目の記録材Pが定着ニップ部101bに到達する前であっても、ベルト105上に残留したワックスから発生する。そのため、制御部500は第二ファン61を、一枚目の記録材の搬送開始時刻とは関係なく、ベルト105の温度が上昇する前に動作させている。この時の時刻を「t1」(開始指示)で示す(図16(a)参照)。この際に、制御部500はベルト105と加圧ローラ102を回転させると同時にヒータ101aの通電を開始する。そして、制御部500は、入力装置310から画像形成ジョブの開始指示を受け付けてから所定の待機時間(例えば1秒)が経過したか否かを判定する(S3)。
【0102】
画像形成ジョブの開始指示を受け付けてから所定の待機時間が経過していない場合(S3のNo)、制御部500は所定の待機時間が経過するまで本ファン制御処理の進行を待機する。画像形成ジョブの開始指示を受け付けてから所定の待機時間が経過した場合に(S3のYes)、制御部500は画像形成ジョブを開始する(S4)。本実施形態では画像形成ジョブの開始指示を受け付けた後(時刻t1)、約10秒後に画像形成ジョブが開始される。この時の時刻をプリント開始時刻(前述のITOP信号が発せられた時刻である)「t2」で示す(図16(a)参照)。そして、制御部500は第一ファン63の動作を開始する(S5)。
【0103】
本実施形態の場合、第一ファン63の動作を開始する時刻は、一枚目の記録材Pの先端が定着ニップ部101bに到達する時刻の所定時間前から、一枚目の記録材Pの後端が定着ニップ部101bを抜けるまでの間である。一枚目の記録材Pの先端が定着ニップ部101bに到達する時刻の所定時間前の時刻を「t3」で示し、一枚目の記録材Pの後端が定着ニップ部101bを抜ける時刻を「t5」で示す(図16(c)参照)。そして、第一ファン63の動作を開始する時刻を「t3」から「t5」までの間にある「t4」で示す(図16(c)参照)。ここで時刻t3は第一ファン63を動作させることができる最も早い時刻であり、時刻t2(ITOP信号が発生する時刻)と同時かそれより後になる。
【0104】
第一ファン63は記録材Pが定着ニップ部101bを通過し終わる前に動作させる必要があるが、時刻t2よりも前は一枚目の記録材Pが定着ニップ部101bに到達していないため、第一ファン63を動作させる必要がない。一方で、時刻t2より早い時刻に第一ファン63を動作させてしまうと、動作後に上述の調整動作が入った時に、記録材Pが搬送されない状態で第一ファン63が動作しつづけてしまう。記録材Pが搬送されない状態において、ダストは上述の領域135aで発生し、その大半は第一ファン63に吸引され、画像形成装置100外に排出される。そのため、時刻t3は調整動作が確実に完了している時刻t2以後にする必要がある。一枚目の記録材Pの先端が定着ニップ部101bに到達する時刻は、「プリント開始」の時刻「t2」を基準に、プロセススピード、記録材Pの搬送方向に関し二次転写部T2の最下流端から定着ニップ部101bの最上流端までの間隔によって求められる。なお、定着ニップ部101bの最上流端に記録材検出センサ(不図示)を設けておき、記録材検出センサが記録材Pの先端を検出した時刻を一枚目の記録材Pの先端が定着ニップ部101bに到達する時刻としてもよい。このように、第一ファン63の動作開始は、画像形成動作開始時又は画像形成した後とする構成や、カセット72から一枚目の記録材Pの搬送を開始したとき又は搬送開始した後とする構成であってもよい。
【0105】
なお、上記の「所定時間」は画像形成ジョブ時のプロセススピードによって変えてよい。即ち、プロセススピードが速ければ「所定時間」は長くしてよいし、プロセススピードが遅ければ「所定時間」は短くしてよい。即ち、結露防止のための有効なエアフローが形成されるまでの時間が確保できればよい。本実施形態の場合、記録材Pの搬送方向に関し、二次転写部T2の最下流端から定着ニップ部101bの最上流端までの間隔が10cmほどであり、プロセススピードが320mm/sである。この場合、記録材Pの先端が二次転写部T2を抜けてから定着ニップ部101bに到達するまでにかかる時間は約0.3秒ほどであるので、上記「所定時間」は0.1秒であればよい。また、時刻「t5」は、ダスト排出抑制の観点ではなるべく遅い時刻に、結露防止の観点ではなるべく早い時刻にすることが望ましい。本実施形態においては、一枚目の記録材Pの後端が定着ニップ部101bを抜ける時刻を「t5」としている。以上述べたように、第一ファン63の動作時刻「t4」は時刻「t3」と時刻「t5」の間であればいつでもよいが、本実施形態では時刻「t3」の0.1秒後としている。
【0106】
こうして、第一ファン63が時刻「t4」に動作を開始した後、制御部500は引き続き、調整動作を行うか否かを判定する(S6)。調整動作を行わない場合(S6のNo)、制御部500は画像形成ジョブを終了するか否かを判定する(S101)。画像形成ジョブを終了する場合(S101のYes)、制御部500は第一ファン63と第二ファン61を停止する(S102)。
【0107】
次に、制御部500が画像形成開始後に調整動作を行うと判定した場合(S6のYes)のファン動作について、図15のステップS7~S100の処理及び図17(a)乃至図18(b)を用いて説明する。制御部500は、連続画像形成ジョブの実行中に一時的に画像形成を停止すると判定した場合(S6のYes)、制御部500は第一ファン63を停止させる(S7、図17(c)の時刻tcs)。なお、この時、第二ファン61はダスト除去のために動作し続ける。
【0108】
制御部500は、調整動作の終了に伴い一時停止した連続画像形成ジョブを再開するか否かを判定する(S8)。調整動作の終了に伴い一時停止した連続画像形成ジョブを再開する場合(S8のYes)、制御部500はITOP信号を発して画像形成を再開して、画像形成再開後の一枚目の記録材Pの後端が定着ニップ部101bを抜けたか否かを判定する(S9)。制御部500は、画像形成再開後の一枚目の記録材Pの後端が定着ニップ部101bを抜けた場合(S9のYes)、一枚目の記録材Pの後端が定着ニップ部101bを抜ける時刻tr(図17(c)参照)に、第一ファン63の動作を再開する(S100)。こうして、調整動作の間に第一ファン63を停止する理由は、記録材Pの搬送停止中に上述の領域135aで発生するダストDが第一ファン63によって画像形成装置100外に排出されることを防ぐためである。なお、本実施形態では、画像形成開始後に調整動作が行われる場合、第二ファン61が動作された状態に維持される(図17(b)参照)。
【0109】
ここで、図18(a)に、調整動作中に第一ファン63を停止した場合、つまり図15に示したステップS7~S100の処理を行った場合のダストの瞬間ERの時間推移を示す。また、図18(b)に、調整動作中に第一ファン63を停止しなかった場合のダストの瞬間ERの時間推移を示す。
【0110】
図18(b)に示すように、調整動作中に第一ファン63を停止しなかった場合、1回目の調整動作を開始したタイミングでは瞬間ERが増えている、つまりダストが増えている。他方、2回目の調整動作を開始したタイミングでは瞬間ERが増えていない、つまりダストが増えていない。これは、画像形成が進むことにより、上述の過冷却度ΔT(式(1)参照)が低下した結果、ダスト発生が解消されるためである(数2参照)。
【0111】
図18(a)に示すように、調整動作中に第一ファン63を停止した場合には、1回目の調整動作を開始したタイミングではダストの瞬間ERが上昇しない。図17(c)に示すように、本実施形態では第一ファン63に関し、時刻tcsに動作を停止し、結露防止のため時刻trに動作を再開している。ただし、第一ファン63は、時刻tcsと時刻trの範囲で時刻tcsより遅いタイミングで動作が停止され、時刻trより早いタイミングで動作が再開されてもよい。そして、画像形成装置100の構造上、結露が生じやすい場合には、第一ファン63の停止時間を短縮すると、結露防止の観点で有効である。あるいは、第一ファン63を完全に停止させるのではなく、半速にする等してファンパワーを弱めてもよい。さらに、時刻trに第一ファン63を動作する場合に、図17(c)に示したような時刻tcs以前と同じDutyで動作することに限らず、より高いDutyで動作してよいし、より低いDutyで動作してもよい。また、画像形成装置100が結露を生じにくい構造、つまり記録材Pから発生する水蒸気を排出し易い構造である場合には、時刻trより後に第一ファン63の動作を再開させてもよい。例えば、画像形成再開後の三枚目の記録材Pの後端が定着ニップ部101bを抜ける時刻に、第一ファン63の動作を再開させるなどしてよい。
【0112】
以上のように、本実施形態では、第一ファン63を動作開始するよりも先に第二ファン61を動作開始する。そして、第二ファン61を動作開始した後、一枚目の記録材Pの先端が定着ニップ部101bに到達する時刻の所定時間前から、一枚目の記録材Pの後端が定着ニップ部101bを抜けるまでの間に、第一ファン63の動作を開始する。こうして第一ファン63を動作開始するよりも先に第二ファン61を動作開始させることで、微粒子状のダストがフィルタ51に回収されることになり、第一ファン63を動作させても微粒子状のダストが装置本体外に排出され難い。また、第一ファン63が速すぎず遅すぎないタイミングで動作開始されることから、第二ファン61を動作開始させてから第一ファン63を動作開始させても、装置本体100a内に結露が生じ難い。このように、第一ファン63と第二ファン61の動作開始タイミングを調整することで、微粒子状のダストの排出抑制と結露防止との両立を実現できる。さらに、画像形成開始後に調整動作が行われた場合には、第二ファン61を動作させた状態で第一ファン63を停止させることにより、ダストの排出抑制と結露防止の効果をより高めている。
【0113】
なお、本実施形態におけるダストDの排出抑制効果は、一枚目の記録材Pの画像形成が開始する前に、画像濃度調整動作等の調整動作が入った時に特に高い効果を示す。上述したように、一枚目の記録材Pの画像形成が開始する前であっても、ベルト105の温度が上昇すれば、ベルト105上に残留したワックスからダストDが発生する。この時、ダストDの一部は、上述したようにフィルタ51が配置されている方向(図9におけるW方向)に向かわず、定着ニップ部101bの下流側に向かう。この時、第一ファン63が動作していると、ダストDは第一ファン63によって画像形成装置100の外部に排出されてしまう。しかし、本実施形態によれば、第一ファン63が動作を開始する時刻は、一枚目の記録材Pの先端が定着ニップ部101bに到達する時刻を基準として決定される。即ち、ベルト105が目標温度Tpに到達した後に調整動作が入った場合、第一ファン63は直ちに動作せず、調整動作完了後に動作する。そのため、調整動作中に定着ニップ部101bの下流側に向かったダストDは、第一ファン63に吸引されることがない。ダストDは既に動作している第二ファン61の吸引力によってフィルタ51の方向に引き戻され、除去される。
【0114】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態のファン制御処理について説明する。本実施形態では、第二ファン61を過冷却度ΔTに応じて制御する。即ち、本実施形態では上述した過冷却度ΔTによってダストの発生を予測し、ダストの発生が予測される場合に第二ファン61を動作させるようにしている。以下、第二実施形態のファン制御処理について、図1図5図12乃至図13(c)等を参照しながら図19乃至図21(c)を用いて説明する。図19に示すファン制御処理は、制御部500(詳しくはCPU501)により画像形成装置100の電源オンにあわせて開始される。
【0115】
<ファン制御処理>
図19に示すように、制御部500は直ちに第一ファン63の動作を開始する(S11)。この時の時刻を「t10」で示す(図21(c)参照)。そして、制御部500は入力装置310から画像形成ジョブの開始指示があるか否かを判定する(S12)。画像形成ジョブの開始指示がない場合(S12のNo)、制御部500は本ファン制御処理の進行を待機する。他方、画像形成ジョブの開始指示がある場合(S12のYes)、制御部500は第一ファン63を停止する(S13)。この時の時刻を「t11」(開始指示)で示す(図21(c)参照)。このように、画像形成ジョブの開始に伴って、ベルト105を回転させ加熱する前に第一ファン63を動作させ、その後、ベルト105を回転させ加熱する際に第一ファン63を停止させる。こうして第一ファン63を画像形成ジョブの開始前に動作させることによって、前回の画像形成ジョブ時に装置本体100a内に残留する水蒸気を含む空気を排気できるようにしている。
【0116】
なお、画像形成ジョブ開始前の第一ファン63の動作は、機内温度センサ65の検出値(Tin)が機外温度センサ66の検出値(Tout)よりも低い場合に行うとしてよい。即ち、その場合には暖かい外気が低温の装置本体100a内に流入し、装置本体100a内の湿度が上昇する虞がある。その状態で、画像形成ジョブを開始した場合に、記録材Pの加熱によって発生する水蒸気が装置本体100a内の湿度をさらに上昇させてしまい、装置本体100a内で結露を生じさせる可能性がある。これを防ぐために、本実施形態では画像形成ジョブの開始前に第一ファン63を動作させ、装置本体100a内の空気を外気によって暖めることにより、画像形成ジョブ時に結露が生じ難いようにしている。また、ベルト105を加熱すると同時に第一ファン63を停止することにより、ベルト105の周辺の温度上昇を早めることができる。温度上昇を早めることにより、過冷却度ΔTを下げることができるので、ベルト105に付着したワックスに起因するダストの発生を抑制できる。
【0117】
次に、制御部500は画像形成ジョブの開始に伴い以下の条件式(3)と式(4)の両方を満たすか否かを判定する(S14)。
ベルト105の表面温度Tb(℃)≧ダスト発生温度Tws(℃)・・・式(3)
ダスト発生温度Tws(℃)-測定点Toの空間温度Ta(℃)>第一温度(℃)・・・式(4)
【0118】
上記の式(3)は、ベルト105の表面温度Tbがダストを発生させ得る温度に到達したか否かを判定するための式である。図20(a)において、ベルト105の表面温度Tbが矢印Aの範囲に入れば式(3)を満たす。なお、上記式(3)のダスト発生温度Twsは、実験で得られたダスト発生温度から例えば20℃を差し引いた温度である。これは、図7(a)の実験装置におけるダスト発生温度と、定着装置103におけるダスト発生温度の違いを考慮したものであってよい。即ち、ベルト105の周辺温度は、ベルト105の回転に伴う周辺気流の引き込みにより低下する。そして、温度低下によって過冷却度ΔTが増大するため、本実施形態の場合には図7(a)の実験装置よりも20℃低い温度でダストが発生した。そこで、式(3)では実験で得られたダスト発生温度から20℃(調整温度値)を差し引いたものをダスト発生温度Twsとして、ベルト105の表面温度Tbと比較している。
【0119】
他方、上記の式(4)は、上記した式(1)の過冷却度ΔT(=Tws―Ta)が、微粒子状のダストの放出終了条件を満足するか否かを判定するための式である。この式(4)を満たさない場合、ダストの放出が終了したつまりはダストが発生しないと判定される。図20(b)において、過冷却度ΔTが矢印Bの範囲に入れば式(4)を満たす。上述したように、本実施形態の場合、ダスト放出量が80%である場合の過冷却度ΔTは120.9℃、90%である場合の過冷却度ΔTは116.4℃、100%である場合の過冷却度ΔTは109.5℃である。ダストの放出が100%完了した時に第二ファン61の動作を切り替えるためには、式(4)の第一温度を109℃とすればよい。しかし多くの場合、ダストが80%以上放出されればガイド15等の部品のダスト汚れを十分に軽減し得る。そのため、式(4)の閾値としての第一温度は、測定点Toがベルト105から二次転写部T2の方向に向かって6mm離れた位置にある場合に(図12の図中h参照)、109℃以上121℃以下の範囲で適宜設定されればよい。
【0120】
上記の式(3)及び式(4)を満たす場合は、ダストの発生条件が満たされている。そこで、式(3)及び式(4)を満たす場合(S14のYes)、制御部500は第二ファン61を動作開始する(S15)。この時の時刻を「t12」で示す(図21(b)参照)。このようにして、本実施形態では画像形成ジョブ開始前に第二ファン61を動作させる。これは、ベルト105に残留するワックスに起因して生じるダストを除去するためである。なお、この時、第四ファン64は非動作とする。第四ファン64の動作により、ダストがフィルタ51を経由せずに排出されることを防ぐためである。なお、上記した式(3)、式(4)の少なくともいずれかを満たさない場合(S14のNo)、制御部500は第一ファン63の動作を開始し(S18)、ステップS19の処理へジャンプする。
【0121】
<測定点>
ここで、上述した図12を用いて、式(4)の過冷却度ΔT(Tws-Ta)の算出に用いる空間温度Taを測定するための測定点Toについて説明する。空間温度Taは、ベルト105の周囲において核生成が生じている空間の温度である。
【0122】
核生成が生じている空間の範囲を正確に測定することは難しいが、発明者がベルト105の周辺のダスト濃度を測定した結果、ベルト105から二次転写部T2の方向に向かって20mm以下の範囲で核生成が生じていた。また、測定点Toの位置がベルト105に近すぎる場合、ベルト105の熱の影響を強く受けてしまうので正しく測定できない可能性がある。そのため、測定点Toはベルト105から少なくとも1mm以上離す必要がある。そこで、測定点Toは、ベルト105の断面の面心且つベルト105の幅方向中央を通り、記録材Pの搬送方向と平行な直線に沿って、ベルト105の表面から二次転写部T2に向かって1mm以上20mm以下の範囲内にあればよい。本実施形態では、上述のようにベルト105から測定点Toまでの距離を6mmとした。
【0123】
測定点Toの空間温度Taの求め方としては、測定点Toに設けた温度センサ(不図示)を用いて検出する方法、あるいは機内温度センサ65や機外温度センサ66の温度情報と各ファンの動作情報とから予測する方法が挙げられる。本実施形態では後者の方法を用いて、制御部500が空間温度Taを予測している。以下、制御部500による空間温度Taの予測方法の一例を説明する。
【0124】
<空間温度の予測>
機内温度センサ65により検出された装置内温度を「Tin」、機外温度センサ66により検出された外部温度を「Tout」、サーミスタTHの温度に基づくベルト105の表面温度を「Tb」とする。そして、第一ファン63の動作時Dutyを「FAN3_duty」、第二ファン61の動作時Dutyを「FAN1_duty」、第三ファン62の動作時Dutyを「FAN2_duty」、第四ファン64の動作時Dutyを「FAN4_Duty」とする。そうした場合、制御部500は式(5)に従って空間温度Taを予測する。動作時Dutyは、最大回転数を100%とする回転比率(%)である。
空間温度Ta(予測値)=Tin+(A×Tb)-(B×Tout×FAN1_duty)-(C×Tout×FAN2_duty)-(D×Tout×FAN3_duty)-(E×Tout×FAN4_duty)・・・式(5)
【0125】
上記した式(5)右辺の第一項は、空間温度Taが装置内温度Tinをベースに予測されることを示している。第二項は、測定点Toの空間温度Taが、ベルト105の表面温度Tbの熱によって上昇することを示す。そのため、第二項の符号はプラスとなる。また、第三項から第六項は、空間温度Taが測定点Toに外気(外部温度Tout)を引き込む作用を持つファンの動作に影響されることを意味する。外部温度Toutは装置内温度Tinや表面温度Tbに比べて低いため、各ファンの動作によって空間温度Taは下がる方向にシフトする。そのため第三項から第六項の符号はマイナスになる。なお、式(5)中の記号「A、B、C、D、E」は定数であり、測定点Toで実験により実測した空間温度と、上記の式5による空間温度の予測値とが一致するように予め決められている。
【0126】
なお、ベルト105の表面温度Tbは、サーミスタTHの検出結果から10℃を差し引いた値であってよい。これは、本実施形態の場合、熱伝導抵抗を有するベルト105の表面温度TbがサーミスタTHの検出結果より約10℃低くなるからである。また、空間温度Taの予測に用いるパラメータとして、他にも記録材Pのサイズや搬送速度、搬送枚数、その他ファンの動作時Duty、さらには各ファンの動作頻度を含めてもよい。
【0127】
図19の説明に戻って、制御部500は、入力装置310から画像形成ジョブの開始指示を受け付けてから所定の待機時間が経過したか否かを判定する(S16)。画像形成ジョブの開始指示を受け付けてから所定の待機時間が経過していない場合(S16のNo)、制御部500は所定の待機時間が経過するまで本ファン制御処理の進行を待機する。画像形成ジョブの開始指示を受け付けてから所定の待機時間が経過した場合(S16のYes)、制御部500は画像形成ジョブを開始して(S17)、第一ファン63の動作を開始する(S19)。画像形成ジョブを開始した時の時刻を「t13」(プリント開始)で示し(図21(a)参照)、第一ファン63の動作を開始時の時刻を「t15」で示す(図21(c)参照)。
【0128】
本実施形態の場合、第一ファン63の動作を開始する時刻は、一枚目の記録材Pの先端が定着ニップ部101bに到達する時刻の所定時間前(例えば0.1秒前)から、複数枚(例えば3枚)の記録材Pが定着ニップ部101bを通過するまでの間である。こうして時刻「t15」(図21(c)参照)に第一ファン63を再び動作させるのは、複数枚の記録材Pを定着装置103によって加熱した時に発生する水蒸気を排出して、装置本体100a内の結露を防止するためである。
【0129】
そして、制御部500は画像形成ジョブの開始後、以下の式(6)を満たすか否かを判定する(S20)。
空間温度Ta(予測値)≧第二温度・・・式(6)
【0130】
第二温度は、図20(c)に示すように例えば90℃に設定されている。空間温度Ta(予測値)がこの温度に到達した場合、即ち空間温度Taが図20(c)における矢印Cの領域に入って上記の式(6)を満たす場合は、二次転写部T2の温度が画像不良を生じさせ得る温度に上昇したものと看做すことができる。
【0131】
上記の式(6)を満たす場合(S20のYes)、制御部500は第二ファン61を動作させる(S21)。第二ファン61は第一ファン63と比べて風量が少ないものの、ベルト105の幅方向全域の熱気を吸気できるため、冷却効率が高い。第二ファン61の動作により、フィルタ51の劣化は進んでしまう可能性があるが、本実施形態では画像品質維持を優先して第二ファン61を動作させている。
【0132】
上記の式(6)を満たさない場合(S20のNo)、制御部500は上記した式(3)と式(4)の両方を満たすか否かを判定する(S22)。上記した式(3)と式(4)の両方を満たす場合(S22のYes)、制御部500はダストが発生するものと看做して第二ファン61を動作させる(S23)。他方、上記した式(3)、式(4)の少なくともいずれかを満たさない場合(S22のNo)、制御部500は第二ファン61を停止して(S24)、二次転写部T2周辺の空気を排気させる。上記のように、画像形成ジョブ中に上記した式(3)、式(4)の少なくともいずれかを満たさなくなった場合、例えば図20(b)に示す経過時間207秒に到達した場合、制御部500は第二ファン61を停止させる。このように、画像形成ジョブ中にダストの発生を予測して、ダストが発生している間のみ第二ファン61を動作させフィルタ51に回収させることにより、フィルタ51の長寿命化を図ることができる。なお、上記した式(3)、式(4)の少なくともいずれかを満たさなくなった場合、上記のように第二ファン61を停止させるのではなく、第二ファン61を低い動作時Duty(例えば50%)で動作させてもよい。
【0133】
そして、制御部500は画像形成ジョブを終了するか否かを判定する(S25)。画像形成ジョブを終了しない場合(S25のNo)、制御部500はステップS20の処理に戻って上記したS20~S25の処理を繰り返す。他方、画像形成ジョブを終了する場合(S25のYes)、制御部500は第一ファン63と第二ファン61を停止し(S26)、本ファン制御処理を終了する。
【0134】
以上のように、本実施形態においても、第一ファン63を動作開始するよりも先に第二ファン61が動作開始され、第一ファン63を動作させても微粒子状のダストが装置本体外に排出され難い。また、第二ファン61を動作開始させてから第一ファン63を動作開始させても、装置本体100a内に結露が生じ難い。したがって、微粒子状のダストの排出抑制と結露防止との両立を実現できる、という効果が得られる。
【0135】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態のファン制御処理について、図22を用いて説明する。なお、図22では、第一実施形態のファン制御処理(図15参照)並びに第二実施形態のファン制御処理(図19参照)と同じ処理に同じ符号を付し、それらの処理の詳しい説明は省略する。
【0136】
図22に示すように、画像形成ジョブの開始指示がある場合(S1のYes)、制御部500は画像形成ジョブの開始に伴い上記した式(3)と式(4)の両方を満たすか否かを判定する(S14)。上記した式(3)、式(4)の少なくともいずれかを満たさない場合(S14のNo)、制御部500は第一ファン63の動作を開始する(S18)。その後、制御部500は画像形成ジョブを終了するか否かを判定する(S200)。画像形成ジョブを終了しない場合(S200のNo)、制御部500は画像形成ジョブが終了するまで待機する。他方、画像形成ジョブを終了する場合(S200のYes)、制御部500は第一ファン63を停止し(S201)、本ファン制御処理を終了する。
【0137】
他方、式(3)及び式(4)を満たす場合(S14のYes)、制御部500は上述したステップS14~S17、S19の処理を適宜に実行する。そして、制御部500は第一ファン63の動作を開始した場合(S19)、上述したステップS6~S9、S100~S102の処理を適宜に実行する。即ち、式(3)と式(4)の両方を満たす場合であって、且つ連続画像形成の間に一時的に画像形成を中断する場合には、第一ファン63を停止(S7)、または出力を低下させる。
【0138】
上述の第二実施形態で述べたように、式(3)、(4)を満たす場合はダストがほとんど発生しない状態であるため、第二ファン61を動作させる必要はない。また、第一ファン63を調整動作の有無に関わらず動作させ続けたとしても、ダストへの影響はない。第一ファン63を動作させ続けることにより、画像形成部PY~PK周辺の温度上昇を確実に抑制する効果を得ることができる。また、第二ファン61の動作を抑制することにより、フィルタ51の消耗が抑制される。
【0139】
[他の実施形態]
なお、上述した各実施形態では、画像形成装置100として中間転写タンデム方式のカラー画像形成装置を例に説明したがこれに限らない。上述した各実施形態は、搬送ベルトに担持され搬送される記録材に、感光ドラム1Y~1Kからトナー像が直接転写される直接転写方式の画像形成装置にも適用可能である。また、単色のトナー像を形成可能な画像形成装置(例えば、モノクロ機など)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0140】
50…濾過機構(フィルタユニット)、51…フィルタ、52…ダクト、52a…吸気口、61…第二ファン、63…第一ファン、72…シート収容部(カセット)、100…画像形成装置、100a…装置本体、101a…加熱部(ヒータ)、101b…定着ニップ部、102…第二回転体(加圧ローラ)、103…定着部(定着装置)、105…第一回転体(定着ベルト)、200…画像形成ユニット、500…制御部、800…シート搬送機構(給紙部)、P…シート(記録材)
図1
図2
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